(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】乗物用座席及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20241017BHJP
A47C 7/72 20060101ALI20241017BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20241017BHJP
B64D 11/06 20060101ALI20241017BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20241017BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/72
A47C27/14 A
A47C27/14 C
B64D11/06
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2020151835
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2022-04-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121430
【氏名又は名称】嶋田 義之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】草野 亮介
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】横溝 顕範
【審判官】澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216496(JP,A)
【文献】特開2013-112315(JP,A)
【文献】特開2017-147222(JP,A)
【文献】特開2018-197035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N2/00-90
B60L50/00-90
H01M10/00-667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の身体を弾性的に支持するための発泡樹脂体のシートパッドと、
リチウムイオン電池モジュールと、を備え、
前記リチウムイオン電池モジュールは樹脂を含んで構成された正極集電体及び樹脂を含んで構成された負極集電体を備えるリチウムイオン電池と、前記リチウムイオン電池を覆う樹脂の外装フィルムとを有する可撓性であり、
前記シートパッドの内部に前記リチウムイオン電池モジュールを収容するための収容スペースが形成され、
前記リチウムイオン電池モジュールは前記シートパッドの収容スペースの中に
少なくともその着座者と対向する面が前記収容スペースの内面に接して収容された乗物用座席。
【請求項2】
請求項1において、
前記リチウムイオン電池モジュールが前記シートパッドの収容スペースの中に収容された電池内蔵シートパッドの共振周波数値が3.4Hz以下であることを特徴とする乗物用座席。
【請求項3】
請求項1において、
前記リチウムイオン電池モジュールは着座による前記シートパッドの変形に伴って変形するように前記シートパッドの収容スペースに収容された乗物用座席。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記リチウムイオン電池モジュールはシート状またはプレート状であり、前記シートパッドの収容スペースは前記シートパッドにおける着座者と対向する面に沿うように形成された乗物用座席。
【請求項5】
請求項4において、
前記リチウムイオン電池モジュールの両面が前記収容スペースの内面に接している乗物用座席。
【請求項6】
請求項4において、
前記リチウムイオン電池モジュールの一方の面に設置され
、前記リチウムイオン電池モジュールとともに前記シートパッドの収容スペースの中に収容された弾性補助部材をさらに備える乗物用座席。
【請求項7】
着座者の身体を弾性的に支持するための発泡樹脂体のシートパッドと、リチウムイオン電池モジュールと、を備える乗物用座席の製造方法であって、
前記リチウムイオン電池モジュールとして、樹脂を含んで構成された正極集電体及び樹脂を含んで構成された負極集電体を備えるリチウムイオン電池と、前記リチウムイオン電池を覆う樹脂の外装フィルムとを有する可撓性のリチウムイオン電池モジュールを用意するリチウムイオン電池モジュール用意工程と、
前記シートパッドの内部に前記リチウムイオン電池モジュールを収容するための収容スペースが形成されるように前記リチウムイオン電池モジュールの外形に対応する外形の中子を型の中に配置して前記シートパッドを発泡成形する発泡成形工程と、
前記リチウムイオン電池モジュールを前記シートパッドの収容スペースの中に
少なくともその着座者と対向する面が前記収容スペースの内面に接
するように収容する収容工程と、を含む乗物用座席の製造方法。
【請求項8】
着座者の身体を弾性的に支持するための発泡樹脂体のシートパッドと、リチウムイオン電池モジュールと、を備える乗物用座席の製造方法であって、
前記リチウムイオン電池モジュールとして、樹脂を含んで構成された正極集電体及び樹脂を含んで構成された負極集電体を備えるリチウムイオン電池と、前記リチウムイオン電池を覆う樹脂の外装フィルムとを有する可撓性のリチウムイオン電池モジュールを用意するリチウムイオン電池モジュール用意工程と、
前記シートパッドの内部に前記リチウムイオン電池モジュールを収容するための収容スペースが形成され、且つ、前記リチウムイオン電池モジュールが前記シートパッドの収容スペースの中に
少なくともその着座者と対向する面が前記収容スペースの内面に接して収容されるように前記リチウムイオン電池モジュールを型の中に配置して前記シートパッドを発泡成形する発泡成形工程と、を含む乗物用座席の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等の乗物用の座席及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機等の乗物において、座席に設置されたディスプレイ等の娯楽機器や各種電気機器等のため、乗物の主たる電源から電線を介して座席に電力が供給されるようになっている。一方、多くの座席に電気を供給するために配線が煩雑となることがある。また、多くの座席に電気を供給することで乗物における他の用途のための電力が不足する場合がある。このため、各座席に電池を設置したいというニーズがある。このようなニーズに対し、燃料電池を備えた航空機用の座席が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、燃料電池は水素及び酸素(空気)の供給、生成される水の排出等のためにシステム構成が複雑であるという問題がある。これに対し、リチウムイオン電池を備えた自動車用の座席が知られている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6389454号公報
【文献】特開2008-284946号公報
【文献】特開2010-083191号公報
【文献】特開2015-071754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リチウムイオン電池は、外力が作用して変形すると内部のセパレータの損傷等が生じて異常な発熱をすることがある。したがって、着座による座席の変形がリチウムイオン電池に及ばないよう、着座によって変形するシートパッドとリチウムイオン電池との間に隙間を設ける必要があった。また、リチウムイオン電池の冷却のためにもリチウムイオン電池の周囲に隙間を設ける必要があった。さらに、リチウムイオン電池が着座者の座り心地を損なわないようにするためにも、シートパッドとリチウムイオン電池との間に隙間を設ける必要があった。このため、リチウムイオン電池の設置構造が複雑になるという問題があった。また、座り心地をよくするためには共振周波数を所定値以下(例えば4Hz以下)に抑制することが好ましい(特許文献4参照)。しかしながら、リチウムイオン電池の金属の集電体のために共振周波数を所定値以下に抑制することが困難な場合があった。本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであって、電池を備えていながら構造が簡単で快適な乗物用座席を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る乗物用座席は、着座者の身体を弾性的に支持するための発泡樹脂体のシートパッドと、リチウムイオン電池モジュールと、を備え、リチウムイオン電池モジュールは樹脂を含んで構成された正極集電体及び樹脂を含んで構成された負極集電体を備えるリチウムイオン電池と、リチウムイオン電池を覆う樹脂の外装フィルムとを有する可撓性であり、シートパッドの内部にリチウムイオン電池モジュールを収容するための収容スペースが形成され、リチウムイオン電池モジュールはシートパッドの収容スペースの中に収容スペースの内面に接して収容されている。
【0006】
この乗物用座席は、リチウムイオン電池モジュールがシートパッドの収容スペースの中に収容スペースの内面に接して収容されるので、リチウムイオン電池モジュールとシートパッドとの間に隙間が設けられる構成と比べて構造が簡単である。また、リチウムイオン電池は、樹脂を含んで構成された正極集電体及び樹脂を含んで構成された負極集電体を備えるので、共振周波数を低い値に抑制することができる。
【0007】
リチウムイオン電池モジュールがシートパッドの収容スペースの中に収容された電池内蔵シートパッドの共振周波数値が3.4Hz以下であるとよい。
【0008】
一説によれば、人が不快と感じる振動の周波数は6Hz付近である。また別の説によれば、人が不快と感じる振動の周波数は振動の方向によって異なる。この説では人が不快と感じる上下方向の振動の周波数は5Hz付近である。電池内蔵シートパッドの共振周波数値が3.4Hz以下に抑制されることで、周波数が6Hz付近の振動も周波数が5Hz付近の振動も著しく抑制される。
【0009】
なお、上記のリチウムイオン電池モジュールは着座によるシートパッドの変形に伴って変形するようにシートパッドの収容スペースに収容されていてもよい。上記のリチウムイオン電池モジュールは可撓性であるので、着座によってシートパッドとともに変形しても、リチウムイオン電池の内部のセパレータの損傷等が生じにくい。したがって、異常な発熱が生じにくい。また上記のリチウムイオン電池モジュールは可撓性であるので、着座者の座り心地を損なうことがなく快適である。
【0010】
また、上記のリチウムイオン電池モジュールはシート状またはプレート状であり、シートパッドの収容スペースはシートパッドにおける着座者と対向する面に沿うように形成されていてもよい。シート状またはプレート状のリチウムイオン電池モジュールがシートパッドにおける着座者と対向する面に沿うように配置されるので、着座によるリチウムイオン電池の局部的な変形が軽減される。また、このリチウムイオン電池モジュールの配置は着座者の座り心地の向上にも寄与する。
【0011】
さらに、上記のリチウムイオン電池モジュールの両面が収容スペースの内面に接していてもよい。リチウムイオン電池モジュールはシートパッドによって挟まれるようにして保持されるので構造が簡単である。
【0012】
また、リチウムイオン電池モジュールの一方の面に設置された弾性補助部材をさらに備えていてもよい。弾性補助部材を備えることでシートパッドの弾性を調整できる。また、リチウムイオン電池モジュールの変形を抑制することもできる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る乗物用座席の製造方法は、着座者の身体を弾性的に支持するための発泡樹脂体のシートパッドと、リチウムイオン電池モジュールと、を備える乗物用座席の製造方法であって、リチウムイオン電池モジュールとして、樹脂を含んで構成された正極集電体及び樹脂を含んで構成された負極集電体を備えるリチウムイオン電池と、リチウムイオン電池を覆う樹脂の外装フィルムとを有する可撓性のリチウムイオン電池モジュールを用意するリチウムイオン電池モジュール用意工程と、シートパッドの内部にリチウムイオン電池モジュールを収容するための収容スペースが形成されるようにリチウムイオン電池モジュールの外形に対応する外形の中子を型の中に配置してシートパッドを発泡成形する発泡成形工程と、リチウムイオン電池モジュールをシートパッドの収容スペースの中に収容スペースの内面に接して収容する収容工程と、を含む。
【0014】
この製造方法により、電池を備えていながら構造が簡単で快適な上記の乗物用の座席を容易に製造することができる。
【0015】
また、本発明の他の一態様に係る乗物用座席の製造方法は、着座者の身体を弾性的に支持するための発泡樹脂体のシートパッドと、リチウムイオン電池モジュールと、を備える乗物用座席の製造方法であって、リチウムイオン電池モジュールとして、樹脂を含んで構成された正極集電体及び樹脂を含んで構成された負極集電体を備えるリチウムイオン電池と、リチウムイオン電池を覆う樹脂の外装フィルムとを有する可撓性のリチウムイオン電池モジュールを用意するリチウムイオン電池モジュール用意工程と、シートパッドの内部にリチウムイオン電池モジュールを収容するための収容スペースが形成され、且つ、リチウムイオン電池モジュールがシートパッドの収容スペースの中に収容スペースの内面に接して収容されるようにリチウムイオン電池モジュールを型の中に配置してシートパッドを発泡成形する発泡成形工程と、を含む。
【0016】
この製造方法によれば中子を使用する必要がない。また、発泡成形工程が収容工程を兼ねている。したがって、電池を備えていながら構造が簡単で快適な上記の乗物用の座席をさらに容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池を備えていながら構造が簡単で快適な乗物用座席を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態の乗物用座席の構成を模式的に示す側方から見た断面図
【
図2】同乗物用座席のクッションパッドの構成を模式的に示す斜視図
【
図3】同乗物用座席に備えられるリチウムイオン電池モジュールの構成を拡大して模式的に示す断面図
【
図4】同リチウムイオン電池モジュールに備えられるリチウムイオン電池の一部をさらに拡大して模式的に示す断面図
【
図5】同乗物用座席の製造方法を示すフローチャート
【
図6】同乗物用座席のクッションパッドの発泡成形工程を模式的に示す断面図
【
図7】同発泡成形工程後に中子が取出されたクッションパッドの構成を模式的に示す断面図
【
図8】同クッションパッドへのリチウムイオン電池モジュールの収容工程を模式的に示す断面図
【
図9】本発明の第2実施形態の乗物用座席の構成を模式的に示す断面図
【
図10】本発明の第3実施形態の乗物用座席の構成を模式的に示す断面図
【
図11】本発明の第4実施形態の乗物用座席の構成を模式的に示す断面図
【
図12】本発明の第5実施形態の乗物用座席の製造方法の発泡成形工程を模式的に示す断面図
【
図13】同第5実施形態の乗物用座席の製造方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び2に示されるように、本発明の第1実施形態の乗物用座席10は、着座者の身体を弾性的に支持するための発泡樹脂体のクッションパッド(シートパッド)12と、リチウムイオン電池モジュール14と、を備えている。なお、乗物用座席10は、例えば航空機の乗客用の座席として使用される。リチウムイオン電池モジュール14は座席に設置されるディスプレイ等の娯楽機器や各種電気機器等のための補助電源として利用される。
図3及び4に示されるように、リチウムイオン電池モジュール14は樹脂を含んで構成された正極集電体24及び樹脂を含んで構成された負極集電体32を備えるリチウムイオン電池16と、リチウムイオン電池16を覆う樹脂の外装フィルム18とを有しており可撓性である。クッションパッド12の内部にリチウムイオン電池モジュール14を収容するための収容スペース20が形成され、リチウムイオン電池モジュール14はクッションパッド12の収容スペース20の中に収容スペース20の内面に接して収容されている。
【0020】
クッションパッド12は、乗物用座席10の座部のシートパッドを構成している。収容スペース20はクッションパッド12の座面(着座者と対向する面)に沿うように形成されている。なお、乗物用座席10はシートパッドとして、背もたれ部にもバックパッド22を備えている。クッションパッド12及びバックパッド22の材料は、例えばポリウレタン等の可撓性の発泡樹脂である。クッションパッド12及びバックパッド22は表皮材(図示省略)で覆われている。また、クッションパッド12及びバックパッド22は所定のフレーム(図示省略)等に組付けられる。
【0021】
リチウムイオン電池モジュール14はシート状またはプレート状であり、クッションパッド12の座面に沿う姿勢で収容スペース20に収容されている。リチウムイオン電池モジュール14の両面が収容スペース20の内面に接している。リチウムイオン電池モジュール14は着座によるクッションパッド12の変形に伴って変形するようにクッションパッド12の収容スペース20の中に収容されている。なお、リチウムイオン電池モジュール14の端子14A、14Bの先端部はクッションパッド12の外側まで延在している。
【0022】
リチウムイオン電池16は、正極集電体24、正極活物質層26、セパレータ28、負極活物質層30及び負極集電体32を有し、これらの層がこの順で積層されている。さらに、リチウムイオン電池16は、正極活物質層24及び負極活物質層30を隔てるセパレータ28の外縁部を積層方向の両側から挟んでセパレータ28を保持し、且つ、正極活物質層26及び負極活物質層30の外周を囲む枠材34を有している。正極集電体24は、正極活物質層26を覆うようにその外縁部において枠材34の一方側に固定されている。負極集電体32は、負極活物質層30を覆うようにその外縁部において枠材34の他方側に固定されている。
【0023】
正極集電体24は例えば導電性樹脂の樹脂集電体、あるいは非導電性の高分子材料と導電性のフィラーとが混合された樹脂集電体である。導電性樹脂は例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリオキサジアゾール等である。非導電性の高分子材料は例えばポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)等である。導電性のフィラーは金属及び/または導電性カーボンである。金属は例えばニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金、鉄、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン、およびカリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物である。導電性カーボンは例えばアセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種である。負極集電体32は正極集電体24と同様の樹脂集電体である。
【0024】
正極活物質層26は、正極活物質粒子と電解液とが混合されたものである。なお、正極活物質層26は、例えばスラリー、ファニキュラー、またはペンデュラーと称される半固体状である。正極活物質粒子は、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiFePO4、三元系材料等である。正極活物質粒子の表面は被覆用樹脂で被覆されていてもよい。また、正極活物質層26は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤は、例えばアセチレンブラック等のカーボン材料やアルミニウム等の金属である。なお、正極活物質粒子を被覆する被覆用樹脂も、導電助剤と同様の材料の導電性フィラーを含んでいてもよい。また、正極活物質層26は、バインダを含んでいてもよい。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン等である。電解液は、電解質及び非水溶媒を含有する。電解質は、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3等である。非水溶媒は、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等またはこれらの混合物である。正極活物質層26は、正極集電体24、セパレータ28及び枠材34で囲まれるスペースに収容されている。
【0025】
負極活物質層30は、負極活物質粒子と電解液とが混合されたものである。なお、負極活物質層30も、例えばスラリー、ファニキュラー、またはペンデュラーと称される半固体状である。負極活物質粒子は、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、黒鉛等の炭素系活物質、金属、合金、または酸化物である。負極活物質粒子の表面も被覆用樹脂で被覆されていてもよい。また、負極活物質層30も、正極活物質層26に含まれる導電助剤と同様の導電助剤を含んでいてもよい。負極活物質粒子を被覆する被覆用樹脂も、導電助剤と同様の材料の導電性フィラーを含んでいてもよい。また、負極活物質部は、バインダを含んでいてもよい。バインダは、例えばスチレンブタジエンコポリマー等の水系ポリマーである。負極活物質層30に含まれる電解液は、正極活物質層26に含まれる電解液と同様である。負極活物質層30は、負極集電体32、セパレータ28及び枠材34で囲まれるスペースに収容されている。
【0026】
セパレータ28はポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの微多孔膜である。枠材34の材料は、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン-プロピレン-ジエンゴム:EPDM)、イソシアネート系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂等である。枠材34の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、もしくは無水マレイン酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0027】
リチウムイオン電池16は一方の面が正極集電体24、他方の面が負極集電体32であるシート状またはプレート状の単セルである。リチウムイオン電池モジュール14は積層された複数のリチウムイオン電池16を有している。隣接するリチウムイオン電池16の正極集電体24と負極集電体32とが接して電気的に直列に接続される。また、リチウムイオン電池モジュール14は、リチウムイオン電池16を1つだけ有していてもよい。積層された複数のリチウムイオン電池16、または1つのリチウムイオン電池16は外装フィルム18で覆われている。外装フィルム18は、例えば、ポリプロピレン(PP)、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等である。
【0028】
次に、乗物用座席10の作用について説明する。乗物用座席10は、リチウムイオン電池モジュール14がクッションパッド12の収容スペース20の中に収容スペース20の内面に接して収容されるので、リチウムイオン電池モジュール14とクッションパッド12との間に隙間が設けられる構成と比べて構造が簡単である。さらに、リチウムイオン電池モジュール14の両面が収容スペース20の内面に接しており、リチウムイオン電池モジュール14はクッションパッド12によって挟まれるようにして保持されるので、この点でも構造が簡単である。また、正極集電体24及び負極集電体32は樹脂を含んで構成された樹脂集電体であるので、金属集電体よりも共振周波数を低い値に抑制することができる。リチウムイオン電池モジュール14がクッションパッド12の収容スペース20の中に収容された電池内蔵クッションパッド(電池内蔵シートパッド)の共振周波数値は3.4Hz以下であることが好ましい。
【0029】
また、リチウムイオン電池モジュール14は可撓性であるので、着座によってクッションパッド12とともに変形しても、リチウムイオン電池16の内部のセパレータ28の損傷等が生じにくい。したがって、異常な発熱が生じにくい。またリチウムイオン電池モジュール14が可撓性であるので、着座者に違和感を与えにくい。したがって、乗物用座席10は座り心地がよく快適である。さらに、リチウムイオン電池モジュール14がシート状またはプレート状であり、クッションパッド12の座面に沿うように配置されるので、着座によるリチウムイオン電池16の局部的な変形が軽減される。また、このリチウムイオン電池モジュール14の配置は着座者の座り心地の向上にも寄与する。
【0030】
次に
図5に示されるフローチャートに沿って、乗物用座席10の製造方法について説明する。まず、樹脂を含んで構成された正極集電体24及び樹脂を含んで構成された負極集電体32を備えるリチウムイオン電池16と、リチウムイオン電池16を覆う樹脂の外装フィルムとを有する可撓性のリチウムイオン電池モジュール14を用意する(S102:リチウムイオン電池モジュール用意工程)。
【0031】
次に、
図6に示されるように、リチウムイオン電池モジュール14の外形に対応する外形の中子36を型38の中に配置してクッションパッド12を発泡成形する(S104:発泡成形工程)。なお、リチウムイオン電池モジュール14の外形に対応する外形の中子36は、リチウムイオン電池モジュール14の外形と同じ外形の中子である。また、リチウムイオン電池モジュール14の外形に対応する外形の中子36は、リチウムイオン電池モジュール14の外形が少し縮小された外形の中子でもよい。なお、中子36における端子14A、14Bに対応する部分は、端子14A、14Bを含む形状の1枚の板状である。この板状の部分において中子36は型38に挟まれて保持される。発泡成形後、
図7に示されるように、中子36が取出され、クッションパッド12の内部にリチウムイオン電池モジュール14を収容するための収容スペース20が形成される。
【0032】
次に、
図8に示されるように、クッションパッド12の収容スペース20の中にリチウムイオン電池モジュール14を収容する(S106:収容工程)。なお、リチウムイオン電池モジュール14の端子14A、14Bの先端部はクッションパッド12の開口部の外側に延在させる。リチウムイオン電池モジュール14は、クッションパッド12の収容スペース20の中に両面が収容スペース20の内面に接して収容される。
【0033】
なお、バックパッド22も同様に発泡成形により作成される。その後、これらクッションパッド12及びバックパッド22は表皮材で覆われ、さらに所定のフレーム等に組み付けられて乗物用座席10が完成する。以後、同様に乗物用座席10の製造が繰り返される。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図9に示されるように、第2実施形態の乗物用座席50は、リチウムイオン電池モジュール14の一方の面に設置された弾性補助部材52をさらに備えている。他の構成は第1実施形態の乗物用座席10と同じであるので、同じ構成については
図1~8と同一符号を付することとして説明を省略する。弾性補助部材52は弾性を有する板状体でリチウムイオン電池モジュール14の下面に接して設置されている。したがって、弾性補助部材52も座面に沿って配置されている。弾性補助部材52の材料は例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいはこれらの樹脂を含むGFRP、CFRP等である。弾性補助部材52を備えることでクッションパッド12の弾性を調整することができる。また、リチウムイオン電池モジュール14の変形を抑制することもできる。また、弾性補助部材52はリチウムイオン電池モジュール14とともにクッションパッド12によって挟まれるようにして保持されるので、構造が簡単である。
【0035】
乗物用座席50を製造するためには、発泡成形工程S104において、リチウムイオン電池モジュール14及びその下面に設置された弾性補助部材52の外形に対応する外形の中子を用いる。例えば、リチウムイオン電池モジュール14及びその下面に設置された弾性補助部材52の外形の中子である。また、リチウムイオン電池モジュール14及びその下面に設置された弾性補助部材52の外形が少し縮小された外形の中子でもよい。例えば、リチウムイオン電池モジュール14の外形と同じ外形の中子でもよい。また、収容工程S106において、クッションパッド12の収容スペース20の中にリチウムイオン電池モジュール14とともに弾性補助部材52を収容する。なお、収容スペース20の中に弾性補助部材52を挿入した後にリチウムイオン電池モジュール14を挿入してもよい。また、収容スペース20の中にリチウムイオン電池モジュール14を挿入した後に弾性補助部材52を挿入してもよい。
【0036】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図10に示されるように、第3実施形態の乗物用座席60は、背もたれ部のバックパッド22(シートパッド)の収容スペース62の中にリチウムイオン電池モジュール14を備えている。収容スペース62は、バックパッド22における着座者の背中に対向する面(シートパッドにおける着座者と対向する面)に沿うように形成されている。したがって、シート状またはプレート状のリチウムイオン電池モジュール14は、バックパッド22における着座者の背中に対向する面に沿って配置されている。他の構成は第1実施形態の乗物用座席10と同じであるので、同じ構成については
図1~8と同一符号を付することとして説明を省略する。乗物用座席60も、リチウムイオン電池モジュール14がバックパッド22の収容スペース62の中に収容スペース62の内面に接して収容されるので、リチウムイオン電池モジュール14とバックパッド22との間に隙間が設けられる構成と比べて構造が簡単である。さらに、リチウムイオン電池モジュール14の両面が収容スペース62の内面に接しており、リチウムイオン電池モジュール14はバックパッド22によって挟まれるようにして保持されるので、この点でも構造が簡単である。また、正極集電体24及び負極集電体32は樹脂を含んで構成された樹脂集電体であるので、金属集電体よりも共振周波数を低い値に抑制することができる。リチウムイオン電池モジュール14がバックパッド22の収容スペース62の中に収容された電池内蔵バックパッド(電池内蔵シートパッド)の共振周波数値は3.4Hz以下であることが好ましい。
【0037】
また、リチウムイオン電池モジュール14は可撓性であるので、着座によってバックパッド22とともに変形しても、リチウムイオン電池16の内部のセパレータ28の損傷等が生じにくい。したがって、異常な発熱が生じにくい。またリチウムイオン電池モジュール14が可撓性であるので、着座者に違和感を与えにくい。したがって、乗物用座席60は座り心地がよく快適である。さらに、リチウムイオン電池モジュール14がシート状またはプレート状であり、バックパッド22における着座者の背中に対向する面に沿うように配置されるので、着座によるリチウムイオン電池16の局部的な変形が軽減される。また、このリチウムイオン電池モジュール14の配置は着座者の座り心地の向上にも寄与する。
【0038】
乗物用座席60を製造するためには第1実施形態と同様に、発泡成形工程S104においてリチウムイオン電池モジュール14の外形に対応する外形の中子を用いて収容スペース62が形成されたバックパッド22が成形され、収容工程S106においてバックパッド22の収容スペース62にリチウムイオン電池モジュール14が挿入される。
【0039】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図11に示されるように、第4実施形態の乗物用座席70は第3実施形態に対し、リチウムイオン電池モジュール14の一方の面に設置された弾性補助部材52をさらに備えている。他の構成は第3実施形態の乗用車用座席60と同じであるので、同じ構成については
図10と同一符号を付することとして説明を省略する。弾性補助部材52はリチウムイオン電池モジュール14の後面に接して設置されている。したがって、弾性補助部材52は背もたれ部における着座者の背中に対向する面に沿って配置されている。弾性補助部材52を備えることでバックパッド22の弾性を調整することができる。また、リチウムイオン電池モジュール14の変形を抑制することもできる。また、弾性補助部材52はリチウムイオン電池モジュール14とともにバックパッド22によって挟まれるようにして保持されるので、構造が簡単である。
【0040】
乗物用座席70を製造するためには第2実施形態と同様に、バックパッド22の発泡成形工程S104において、リチウムイオン電池モジュール14及びその後面に設置された弾性補助部材52の外形に対応する外形の中子が用いられる。例えば、リチウムイオン電池モジュール14及びその後面に設置された弾性補助部材52の外形の中子である。また、リチウムイオン電池モジュール14及びその後面に設置された弾性補助部材52の外形が少し縮小された外形の中子でもよい。例えば、リチウムイオン電池モジュール14の外形と同じ外形の中子でもよい。また、収容工程S106において、バックパッド22の収容スペース62の中にリチウムイオン電池モジュール14とともに弾性補助部材52を収容する。なお、収容スペース62の中に弾性補助部材52を挿入した後にリチウムイオン電池モジュール14を挿入してもよい。また、収容スペース62の中にリチウムイオン電池モジュール14を挿入した後に弾性補助部材52を挿入してもよい。
【0041】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1~第4実施形態では、発泡成形工程S104において中子36を用いてクッションパッド12(またはバックパッド22)に収容スペース20(または62)が形成され、収容工程S106において収容スペース20(または62)の中にリチウムイオン電池モジュール14が収容される。これに対し第5実施形態では、発泡成形工程S104において中子は用いられず、
図12に示されるようにクッションパッド12(またはバックパッド22)の内部にリチウムイオン電池モジュール14を収容するための収容スペース20(または62)が形成され、且つ、リチウムイオン電池モジュール14がクッションパッド12(またはバックパッド22)の収容スペース20(または62)の中に収容スペース20(または62)の内面に接して収容されるように、リチウムイオン電池モジュール14が型38の中に配置されてクッションパッド12(またはバックパッド22)が発泡成形される。また、発泡成形工程S104においてリチウムイオン電池モジュール14は、端子14A、14Bにおいて型38に保持される。なお、第2及び第4実施形態のように弾性補助部材52が備えられる場合は予め弾性補助部材52はリチウムイオン電池モジュール14の下面(または後面)に接着剤等により取付けられ、弾性補助部材52は発泡成形工程S104においてリチウムイオン電池モジュール14とともに保持される。
図13に示されるように、第5実施形態では発泡成形工程S104が収容工程を兼ねており、発泡成形工程S104の後に収容工程は実行されない。他の構成は第1~第4実施形態と同じであるので、同じ構成については
図1~11と同一符号を付することとして説明を省略する。第5実施形態によれば、発泡成形工程S104において中子を用いる必要がない。また、発泡成形工程S104が収容工程を兼ねるので、乗物用座席10、50、60、70をさらに容易に製造することができる。
【0042】
なお、上記第1実施形態ではリチウムイオン電池モジュール14は座部のクッションパッド12に備えられ、第3実施形態ではリチウムイオン電池モジュール14は背もたれ部のバックパッド22に備えられているが、座部のクッションパッド12と背もたれ部のバックパッド22の両方にリチウムイオン電池モジュール14が備えられてもよい。この場合、第2実施形態のように座部のクッションパッド12に弾性補助部材52が設置されていてもよい。また、第4実施形態のように背もたれ部のバックパッド22に弾性補助部材52が設置されていてもよい。また、クッションパッド12及びバックパッド22の両方に弾性補助部材52が設置されていてもよい。
【0043】
また、上記第2実施形態では弾性補助部材52はクッションパッド12の中のリチウムイオン電池モジュール14の下面に接して設置されているが、弾性補助部材52はクッションパッド12の中のリチウムイオン電池モジュール14の上面に接して設置されていてもよい。また、2つの弾性補助部材52がクッションパッド12の中のリチウムイオン電池モジュール14の両面に接して設置されていてもよい。同様に、上記第4実施形態では弾性補助部材52はバックパッド22の中のリチウムイオン電池モジュール14の後面に接して設置されているが、弾性補助部材52はバックパッド22の中のリチウムイオン電池モジュール14の前面に接して設置されていてもよい。また、2つの弾性補助部材52がバックパッド22の中のリチウムイオン電池モジュール14の両面に接して設置されていてもよい。
【0044】
また、上記第1~第5実施形態では乗物用座席10、50、60、70が使用される乗物として航空機が例示されているが、乗物用座席10、50、60、70は、バス等の自動車、船舶等の他の乗物にも適用可能である。
【0045】
[実施例]
図1及び2に示されるような、リチウムイオン電池モジュールがクッションパッド(シートパッド)の中に収容された電池内蔵シートパッドを作成した。リチウムイオン電池モジュールの構成は以下のとおりである。なお、枠材は2枚で構成される。より詳細には、正極側枠材と負極側枠材がセパレータを挟んでいる。
単セルのサイズ:900mm×900mm×600μm
枠材のサイズ:900mm×900mm×250μm×2枚
枠材の孔のサイズ:880mm×880mm
正極集電体及び負極集電体のサイズ:900mm×900mm×50μm
セパレータのサイズ:885mm×885mm×25μm×1枚
枠材の材料:エチレン-酢酸ビニル共重合体(商品名「メルセン(登録商標)G7055」)
正極集電体及び負極集電体の材料:ポリプロピレン(商品名「サンアロマー(登録商標)PL500A」、サンアロマー(株)製)(B-1)75質量%、アセチレンブラック(AB)(デンカブラック(登録商標))20質量%、変性ポリオレフィン樹脂(三洋化成工業(株)製ユーメックス(登録商標)1001)5質量%
セパレータの材料:ポリプロピレンの微多孔膜(商品名「セルガード(登録商標)3501」)
正極活物質:ニッケル・アルミ・コバルト酸リチウム(コア-シェル(樹脂)構造)100質量%、アセチレンブラック0.1質量%
負極活物質:難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)(コア-シェル(樹脂)構造)100質量%、アセチレンブラック1.6質量%
電解液:エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)、Li[(FSO
2)2N](LiFSI)2mol/L
リチウムイオン電池(単セル)の積層数:10枚
外装フィルム:3層構造のラミネートフィルム(ポリプロピレン(PP)、アルミニウム、ナイロン)
【0046】
クッションパッド(シートパッド)は以下のように作製し、諸物性を測定した。ポリオールA-1(60部)、A-2(40部)、A-3(2部)、A-4(1部)のポリオールプレミックスと、NCO指数が100部となる量の有機ポリイソシアネート成分B-1と、触媒C-1(0.4部)、C-2(0.02部)と、発泡剤D-1(2.3部)と、整泡剤E-1(0.6部)とを、下記の発泡条件により軟質ポリウレタンフォームを金型内で発泡してフォームを形成した後、金型から取り出し一昼夜放置して軟質ポリウレタンフォームを得た。
(発泡条件)
金型サイズ:400mm×400mm×100mm(高さ)
金型温度:65℃
金型材質:アルミニウム
ミキシング方法:高圧ウレタン発泡機(PEC社製)によりポリオールプレミックスと有機ポリイソシアネートとを15MPaで混合。
【0047】
軟質ポリウレタンフォームの原料のうち、ポリオール成分は次の通りである。
A-1:ペンタエリスリトールにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒として用いてPOを付加し、次いでEOを付加させて得られた、官能基数4.0、水酸基価30、末端EO単位の含有量10.0%、末端水酸基の1級OH化率90%、モノオール含量0.03meq/g、ジオール含量16%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール
A-2:ペンタエリスリトールに水酸化カリウムを触媒として用いてPOとEOをブロック付加させて得られた平均官能基数4.0、水酸基価28、末端EO単位の含有量12.0%、末端水酸基の1級OH化率80%、モノオール含量0.07meq/g、ジオール含量0.0%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、及びグリセリンに水酸化カリウムを触媒として用いてPOとEOをブロック付加させて得られた平均官能基数3.0、水酸基価34、末端EO単位の含有量14.0%、末端水酸基の1級OH化率82%、モノオール含量0.06meq/g、ジオール含量0.0%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールの混合物(重量比:20:80)中で、スチレンとアクリロニトリル(重量比:30/70)を共重合させた重合体ポリオール(重合体含量33.0%)、水酸基価22
A-3:ソルビトールのPO付加物、水酸基価490
A-4:トリエタノールアミン、水酸基価1120
【0048】
また、軟質ポリウレタンフォームの原料のうち、ポリオール成分以外の物は次の通りである。
B-1:TDI-80(2,4-及び2,6-TDI、2,4-体の比率が80%)/粗製MDI(平均官能基数:2.9)=80/20(重量比)
C-1:エアプロダクツジャパン(株)製「DABCO-33LV」(トリエチレンジアミンの33%ジプロピレングリコール溶液)
C-2:東ソー(株)製「TOYOCAT ET」(ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルの70%ジプロピレングリコール溶液)
D-1:水
E-1:EVONIK社製「TEGOSTAB B8737」(ポリシロキサン系整泡剤)
【0049】
このようにして得られた、リチウムイオン電池モジュールが設置される前の軟質ポリウレタンフォームの諸物性を測定した。測定結果は以下のとおりである。
コア密度:57.3kg/m3(JIS K6400に準拠)
フォーム硬さ(25%-ILD):271N/314cm2(JIS K6400に準拠)
反発弾性:64%(JIS K6400に準拠)
圧縮残留ひずみ率:2.5%(JIS K6400に準拠)
湿熱圧縮残留ひずみ率:9.7%(JIS K6400に準拠、温度50℃、湿度95%)
共振周波数:3.2Hz(JASO B407の試験方法に準拠)
【0050】
上記諸物性の測定後、ポリウレタンフォームの高さ50mmの部位に収容スペースを形成し、リチウムイオン電池モジュールを挿入した。このようにして得られた電池内蔵シートパッドの共振周波数を測定した。測定結果は以下のとおりである。
共振周波数:3.4Hz
【0051】
[比較例]
上記実施例に対し以下のようにリチウムイオン電池の正極集電体、及び負極集電体が異なる電池内蔵シートパッドを作成した。他の構成は実施例と同じである。
正極集電体の材料:カーボンコートアルミニウム
正極集電体の厚み:20μm
負極集電体の材料:銅箔
負極集電体の厚み:35μm
【0052】
実施例と同様に比較例の電池内蔵シートパッドの共振周波数を測定した。測定結果は以下のとおりである。
共振周波数:5.7Hz
【0053】
比較例の電池内蔵シートパッドの共振周波数は5.7Hzであり、人が不快と感じると言われている周波数6Hz、或いは5Hzに近い値であった。これに対し、実施例の電池内蔵シートパッドの共振周波数は3.4Hzであり、6Hz、或いは5Hzよりも著しく小さかった。すなわち実施例によれば比較例よりも快適な乗物用座席が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、航空機等の乗物の座席に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
10、50、60、70 乗物用座席
12 クッションパッド(シートパッド)
14 リチウムイオン電池モジュール
14A、14B 端子
16 リチウムイオン電池
18 外装フィルム
20、62 収容スペース
22 バックパッド(シートパッド)
24 正極集電体
26 正極活物質層
28 セパレータ
30 負極活物質層
32 負極集電体
34 枠材
36 中子
38 型
52 弾性補助部材
S102 リチウムイオン電池モジュール用意工程
S104 発泡成形工程
S106 収容工程