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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】水道用サドル付分水栓
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/06 20060101AFI20241017BHJP
   E03B 7/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
F16L41/06
E03B7/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020172237
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063808
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直也
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3033377(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0234114(US,A1)
【文献】特開2009-215862(JP,A)
【文献】特開平06-319219(JP,A)
【文献】特開2011-047391(JP,A)
【文献】実開昭60-153511(JP,U)
【文献】特開2000-329273(JP,A)
【文献】特開平07-310827(JP,A)
【文献】実開平05-050280(JP,U)
【文献】実開昭59-043776(JP,U)
【文献】登録実用新案第3183487(JP,U)
【文献】特開平09-053621(JP,A)
【文献】米国特許第06416102(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/06
E03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配水管の外周に配置されて前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するサドルと、
前記配水管を挟んで前記サドルに対向配置されて前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するバンドと、
前記サドルと前記バンドとを前記配水管に連結固定するためのボルト及びナットと、を備え、
前記サドルの一対のフランジ部、及び、前記バンドの一対のフランジ部は、絶縁体上または絶縁体下を介在して前記ボルトが挿通されるボルト挿通孔をそれぞれ有し、前記ボルトに螺合された前記ナットを締め付けることで前記配水管の外周に取り付けられる水道用サドル付分水栓であって、
前記バンドの一対のフランジ部のボルト挿通孔に挿通されると共に、前記サドルの一対のフランジ部のボルト挿通孔にそれぞれ挿通された前記ボルトには、前記バンドの一対のフランジ部と、前記サドルの一対のフランジ部との間に、ストッパが少なくとも一つ配置され、
前記ナットは、前記サドルの一対のフランジ部、前記絶縁体上、または、その両方に前記ストッパが当接するまで締め付けて固定され
前記ストッパは、前記ボルトに螺合されたストッパ用のナットから成ること
を特徴とする水道用サドル付分水栓。
【請求項2】
配水管の外周に配置されて前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するサドルと、
前記配水管を挟んで前記サドルに対向配置されて前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するバンドと、
前記サドルと前記バンドとを前記配水管に連結固定するためのボルト及びナットと、を備え、
前記サドルの一対のフランジ部、及び、前記バンドの一対のフランジ部は、絶縁体上または絶縁体下を介在して前記ボルトが挿通されるボルト挿通孔をそれぞれ有し、前記ボルトに螺合された前記ナットを締め付けることで前記配水管の外周に取り付けられる水道用サドル付分水栓であって、
前記バンドの一対のフランジ部のボルト挿通孔に挿通されると共に、前記サドルの一対のフランジ部のボルト挿通孔にそれぞれ挿通された前記ボルトには、前記バンドの一対のフランジ部と、前記サドルの一対のフランジ部との間に、ストッパが少なくとも一つ配置され、
前記ナットは、前記サドルの一対のフランジ部、前記絶縁体上、または、その両方に前記ストッパが当接するまで締め付けて固定され、
前記ストッパは、前記ボルトを挿入した筒状のストッパ用の絶縁体下から成ること
を特徴とする水道用サドル付分水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道本管等の配水管から給水管を分岐する箇所に設置される水道用サドル付分水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サドル付分水栓は、水道本管等の配水管から各住宅等に水を供給する給水管を分岐する際に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のサドル分水栓を金属製の配水管に取り付ける場合は、分水栓本体に設けられたサドルと、バンドとで配水管を挟持して、サドルとバンドとをボルト・ナットで締結することで、サドル分水栓を配水管に固定している。そのボルト・ナットを締め付ける際には、ボルト・ナットの締め付けを完了する位置がわからない。そのため、特に、金属製の配水管にサドル分水栓を取り付ける場合、締付力が弱いときは、管周方向のずれや、管軸方向のずれが発生することがある。また、ボルト・ナットの締付力が強い場合は、サドル分水栓、配水管が変形したり、破損したりすることがある。
【0004】
つまり、ボルト・ナットの締付けが不十分な場合は、サドル付分水栓と配水管の孔軸とのずれによるコア挿入の施工ミスや、分水栓通水部と配水管の孔軸とのずれによる通水量の低下(圧力損失の増加)が発生する問題がある。さらには、地震等発生時にサドル付分水栓の配水管からの取付け位置のずれが発生し易くなる問題がある。また、ボルト・ナットの締付けが強すぎる場合は、サドル付分水栓や配水管に負荷が掛かり、製品寿命の短縮や性能低下を招く問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-215275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のサドル分水栓は、ボルト・ナットを締め付ける際に、所望の締付力で締結しなければならないので、トルク管理が必要であり、トルクレンチ(トルクを測る専用工具)を使用しなければならなかった。このため、サドル分水栓を配水管に取り付ける場合は、トルクレンチを使用しなければならず、スパナ等の工具で締結作業を行うことが煩わしいという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するために創作されたものであって、トルクレンチ(専用工具)を使用しなくても、所定の締結力で取り付けることができる水道用サドル付分水栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、配水管の外周に配置されて前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するサドルと、前記配水管を挟んで前記サドルに対向配置されて前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するバンドと、前記サドルと前記バンドとを前記配水管に連結固定するためのボルト及びナットと、を備え、前記サドルの一対のフランジ部、及び、前記バンドの一対のフランジ部は、絶縁体上または絶縁体下を介在して前記ボルトが挿通されるボルト挿通孔をそれぞれ有し、前記ボルトに螺合された前記ナットを締め付けることで前記配水管の外周に取り付けられる水道用サドル付分水栓であって、前記バンドの一対のフランジ部のボルト挿通孔に挿通されると共に、前記サドルの一対のフランジ部のボルト挿通孔にそれぞれ挿通された前記ボルトには、前記バンドの一対のフランジ部と、前記サドルの一対のフランジ部との間に、ストッパが少なくとも一つ配置され、前記ナットは、前記サドルの一対のフランジ部、前記絶縁体上、または、その両方に前記ストッパが当接するまで締め付けて固定され、前記ストッパは、前記ボルトに螺合されたストッパ用のナットから成ることを特徴とする。
また、本発明は、配水管の外周に配置されて前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するサドルと、前記配水管を挟んで前記サドルに対向配置されて前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するバンドと、前記サドルと前記バンドとを前記配水管に連結固定するためのボルト及びナットと、を備え、前記サドルの一対のフランジ部、及び、前記バンドの一対のフランジ部は、絶縁体上または絶縁体下を介在して前記ボルトが挿通されるボルト挿通孔をそれぞれ有し、前記ボルトに螺合された前記ナットを締め付けることで前記配水管の外周に取り付けられる水道用サドル付分水栓であって、前記バンドの一対のフランジ部のボルト挿通孔に挿通されると共に、前記サドルの一対のフランジ部のボルト挿通孔にそれぞれ挿通された前記ボルトには、前記バンドの一対のフランジ部と、前記サドルの一対のフランジ部との間に、ストッパが少なくとも一つ配置され、前記ナットは、前記サドルの一対のフランジ部、前記絶縁体上、または、その両方に前記ストッパが当接するまで締め付けて固定され、前記ストッパは、前記ボルトを挿入した筒状のストッパ用の絶縁体下から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、トルクレンチ(専用工具)を使用しなくても、所定の締結力で取り付けることができる水道用サドル付分水栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るサドル付分水栓の一部断面を有する正面図である。
図2】サドル付分水栓の拡大側面図である。
図3】ストッパの設置状態を示す要部拡大正面図である。
図4】本発明の実施形態に係るサドル付分水栓の第1変形例を示す図で、ストッパの設置状態を示す要部拡大正面図である。
図5A】本発明の実施形態に係るサドル付分水栓の第2変形例を示す図で、ストッパの設置状態を示す要部拡大正面図である。
図5B図5Aに示すストッパの平面図である。
図6A】本発明の実施形態に係るサドル付分水栓の第3変形例を示す図で、ストッパの設置状態を示す要部拡大正面図である。
図6B図6Aに示すストッパの要部横断面図である。
図7】本発明の実施形態に係るサドル付分水栓の第4変形例を示す図で、ストッパの設置状態を示す要部拡大正面図である。
図8】本発明の実施形態に係るサドル付分水栓の第5変形例を示す図で、ストッパの設置状態を示す要部拡大正面図である。
図9A】本発明の実施形態に係るサドル付分水栓の第6変形例を示す図で、ストッパの設置状態を示す要部拡大正面図である。
図9B図9Aに示すストッパの平面図である。
図9C図9Bに示すストッパの側面図である。
図9D】ナットを締め込むことで平座金によって押し潰されて広がっているときのストッパの状態を示す要部平面図である。
図10A図9Bに示す第6変形例のストッパの変形例であるストッパの正面図である。
図10B図10Aに示すストッパの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図3を参照して本発明の実施形態に係る水道用サドル付分水栓(以下適宜「サドル付分水栓100」という。)を説明する。なお、方向を説明する際は、図1に示すサドル付分水栓100側を上、一対のボルトB1及びナットN1側を左右として説明する。
なお、サドル付分水栓100は、分水栓本体1の給水管接続用雄ねじ部1e、及び、栓棒13を除いて、全体が左右対称形状に形成されているため、左右の一方側を主に説明して他方側の説明は適宜省略する。また、同じ構成のものは、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0013】
<サドル付分水栓>
図1に示すサドル付分水栓100は、水道本管等の金属製の配水管P1から各住宅等に水を供給するための給水管(図示省略)を分岐するのに使用される分水栓である。サドル付分水栓100は、分水栓本体1と、左右にフランジ部2bを有するサドル2と、左右にフランジ部3bを有するバンド3と、一対のボルトB1と、一対のボルトB1にそれぞれ螺着されるナットN1と、フランジ部2b,3b間に配置されたストッパ4と、を備えて成る。換言すると、サドル付分水栓100は、分水栓本体1に設けられた止水機構10と、サドル2、バンド3、一対のボルトB1、一対のナットN1及びストッパ4から成るサドル機構20と、を主に備えて成る。サドル付分水栓100は、配水管P1の材質や径の大きさに合わせて、適宜大きさ、形状を変えたものが使用される。
【0014】
サドル付分水栓100は、サドル2のフランジ部2bのボルト挿通孔2cと、バンド3のフランジ部3bのボルト挿通孔3cと、ストッパ4を介してボルトB1を挿通し、ボルトB1に螺合されたナットN1を締め付けることで、配水管P1の外周に取り付けられる。
【0015】
<分水栓本体>
分水栓本体1は、止水機構10の外ケースを形成する筐体である。分水栓本体1は、縦孔1aと、横孔1bとを有し、正面視して略十字形状に形成された金属製の中空部材から成る。分水栓本体1には、前記縦孔1aと、前記横孔1bと、雄ねじ部1cと、サドル連結用雄ねじ部1dと、給水管接続用雄ねじ部1eと、コア挿設孔1fと、が形成されている。分水栓本体1は、縦孔1aと、横孔1bと、縦孔1a及び横孔1bの中央部に配置された球弁12と、横孔1bの右端部に設けられた栓棒13と、によって止水機構10を主に構成している。
【0016】
縦孔1aは、分水栓本体1の軸心線に沿って上下方向に貫通して形成されている。縦孔1aの中央部には、球弁12が配置されている。縦孔1aの上側開口部の外周部には、キャップ11を螺着するための雄ねじ部1cが形成されている。縦孔1aの下側のコア挿設孔1fには、コア7が装着されている。そのコア挿設孔1fは、サドル連結用雄ねじ部1dの軸心側に軸心線に沿って形成されている。
【0017】
また、配水管P1にコア7を取り付けるための穿孔孔P1aを配水管P1に穿孔する場合は、穿孔機(図示省略)が使用される。穿孔機は、図1に示すサドル機構20を配水管P1に締結することで、配水管P1に取り付けられたサドル付分水栓100の縦孔1aに、上側開口から挿入される。その穿孔機(図示省略)によって配水管P1に穿孔孔P1aが穿孔される。穿孔孔P1aが穿孔された後、縦孔1aの下端部のコア挿設孔1fには、前記コア7が装着される。コア挿設孔1fの外側には、サドル連結用雄ねじ部1dが形成されている。サドル連結用雄ねじ部1dには、サドル2に形成された分水栓連結用雌ねじ部2dが螺着される。
【0018】
横孔1bは、縦孔1aに直交するように分水栓本体1の上下方向中央部に左右方向に貫通して形成されている。横孔1bの左端部の外側には、給水管接続用雄ねじ部1eが形成されている。その給水管接続用雄ねじ部1eには、給水管(図示省略)を分水栓本体1に取り付けるための給水支管継手(図示省略)が螺着される。横孔1bの右端部には、球弁12に連結された栓棒13が装着されている。
【0019】
<サドル機構>
サドル機構20は、サドル2とバンド3とを配水管P1の周囲に取り付けるための機構である。サドル機構20は、サドル2と、バンド3と、ボルトB1と、ナットN1と、ストッパ4と、絶縁体上5と、絶縁体下6と、平座金8と、を備えて主に構成されている。サドル機構20は、ボルトB1を、バンド3のフランジ部3bのボルト挿通孔3cに挿通してストッパ用のナット41に螺合させ、サドル2のフランジ部2bのボルト挿通孔2cに挿通して、ボルトB1の先端側のナットN1と螺合させて成る。
【0020】
<サドル>
図1に示すように、サドル2は、配水管P1の上側外周部を抱持するように、配水管P1の外周に配置された上側半体である。サドル2は、分水栓本体1の下端部に取り付けられている。サドル2は、抱持部2aと、フランジ部2bと、ボルト挿通孔2cと、分水栓連結用雌ねじ部2dと、段差部2eと、を有している。サドル2は、平面視して左右方向に延びる帯状の金属から成り、中央部に分水栓連結用雌ねじ部2dを有し、左右両端部にボルト挿通孔2cをそれぞれ有している。サドル2は、正面視して略Ω字状に形成されて、中央部の抱持部2aが円弧状に形成されて、両端部のフランジ部2bが平板状に形成されている。
【0021】
抱持部2aは、配水管P1を片側(上側)から抱持する部分である。抱持部2aは、正面視して円弧状に形成されている。
フランジ部2bは、抱持部2aの左右両端部から外方向に突出形成された左右一対の平板状部分である。
ボルト挿通孔2cは、ボルトB1の雄ねじ部B1cが挿入される孔である。ボルト挿通孔2cは、一対のフランジ部2bにそれぞれ形成されている。
分水栓連結用雌ねじ部2dは、分水栓本体1のサドル連結用雄ねじ部1dが螺着されるねじ孔である。分水栓連結用雌ねじ部2dは、抱持部2aの中央部に形成されている。
段差部2eは、絶縁体上5の係止爪5cが係止する箇所である。段差部2eは、フランジ部2b内に形成されている。
【0022】
<バンド>
バンド3は、配水管P1を挟んでサドル2に対向配置されて、サドル2とで配水管P1を抱持するための下側半体である。バンド3は、正面視して円弧状に形成された抱持部3aと、抱持部3aの左右両端部から外方向に突出形成された一対のフランジ部3bと、一対のフランジ部3bにそれぞれ形成されたボルト挿通孔3cと、フランジ部3b内に形成された段差部3eと、を有している。バンド3は、サドル2に対して、正面視して略対称な形状に形成されている。バンド3は、正面視して略逆Ω字状に形成されて、中央部の抱持部3aが円弧状に形成され、両端部のフランジ部3bが平板状に形成されている。バンド3は、平面視して左右方向に延びる帯状の金属から成り、左右両端部にボルト挿通孔3cをそれぞれ有している。
【0023】
<ボルト>
図1図3に示すボルトB1は、サドル2とバンド3とを配水管P1の外周部に連結固定するための一対の締結部材である。ボルトB1は、頭部B1aと、円柱形状の胴部B1bと、胴部B1bの先端側に形成された雄ねじ部B1cと、を有する市販のボルトから成る。ボルトB1は、絶縁体ガイド9と、バンド3のボルト挿通孔3cに装着された絶縁体下6と、を挿通してストッパ用のナット41を螺合し、さらに、サドル2のボルト挿通孔2cに装着された絶縁体上5を挿通し、平座金8を介在してナットN1と螺合される。
【0024】
<ナット>
ナットN1は、ボルトB1の雄ねじ部B1cに螺合させて締め付けることで、サドル2のフランジ部2bに、平座金8及び絶縁体上5を介在してストッパ4が当接するまで締め付けて、サドル2をバンド3に固定するための締結具である。ナットN1は、市販の六角ナットから成る。ナットN1は、サドル2のボルト挿通孔2cに内嵌された絶縁体上5と、絶縁体上5の上に載置された平座金8と、を挿通したボルトB1の雄ねじ部B1cに螺着される。ナットN1は、スパナ等の締付工具で締め付けた際に、ナットN1の下面が平座金8を介在して絶縁体上5に当接した状態で、サドル2のフランジ部2bがストッパ4(ストッパ用のナット41)に当接するまで締め込むことで、予め設定した設定トルク(標準締付トルク)で締め付けることができるようになっている。
【0025】
<ストッパ>
図1図3に示すように、ストッパ4は、ボルトB1の雄ねじ部B1cに螺合させたナットN1を締め付けた際に、平座金8及び絶縁体上5を介在してフランジ部2bがストッパ4に当接したらナットN1の締め付けを停止させることで、所定の締付力で締結される締付停止具である。ボルトB1の雄ねじ部B1cに螺合されたストッパ4は、バンド3のフランジ部3bと、サドル2のフランジ部2bとの間に配置される。
【0026】
<ストッパ用のナット>
ストッパ用のナット41は、ボルトB1の雄ねじ部B1cに螺合させた締付用のナットN1の締め付け可能な範囲を規制して締付力を一定にするための締付停止具である。ナット41は、市販の六角ナットから成る。
【0027】
<絶縁体上>
絶縁体上5は、ボルト挿通孔2c内に押し込んで装着されて、ボルト挿通孔2cの内壁及び開口縁周辺部に配置される弾性絶縁体である。絶縁体上5は、円筒状に形成された円筒部5aと、円筒部5aの上端部に形成された鍔部5bと、円筒部5aの下端部に形成された係止爪5cと、が一体形成された樹脂製の筒状部材から成る。
【0028】
円筒部5aは、ボルト挿通孔2cの内壁に内嵌するように配置された円筒部分である。
鍔部5bは、円筒部5aの上端の開口縁から径方向外側に延設された円環状の板部である。鍔部5bは、平座金8がサドル2に直接触れるのを防ぐ機能を有している。
係止爪5cは、段差部2eに係止されて、絶縁体上5がサドル2から容易に離脱しないように保持するための係止部分である。
【0029】
<絶縁体下>
絶縁体下6は、絶縁体上5と同様、ボルト挿通孔3c内に押し込んで装着されて、ボルト挿通孔3cの内壁及び開口縁周辺部に配置される弾性絶縁体である。絶縁体下6は、円筒状に形成された円筒部6aと、円筒部6aの下端部に形成された鍔部6bと、円筒部6aの上端部に形成された係止爪6cと、鍔部6bの前端及び後端から下方向に突出した突出片から成るガイド覆着部6dと、が一体形成された樹脂製の略筒状部材から成る。
【0030】
<絶縁体ガイド>
絶縁体ガイド9は、図2に示すように、絶縁体下6の側面視して逆凹形状に折曲形成された鍔部6b及びガイド覆着部6d内に装着される部材である。絶縁体ガイド9は、ステンレス鋼板等の金属板によって形成されている。絶縁体ガイド9は、不図示のボルト挿入孔を有する座金部9aと、座金部9aの前端及び後端から下方向に突出した折曲片9bと、を有して成る。前後の折曲片9b間には、ボルトB1の頭部B1aが挿着される。
【0031】
<平座金>
平座金8は、市販のものから成る。平座金8は、ナットN1の下面と、絶縁体上5の鍔部5bとの間に介在されている。
【0032】
<コア>
図1に示すように、コア7は、配水管P1内と、サドル付分水栓100の縦孔1aの下端のコア挿設孔1fに取付けられ、穿孔孔P1aの錆による縮小を抑制する略円筒形状の部材である。コア7の下端部は、サドル付分水栓100の縦孔1a内に挿入した穿孔機(図示省略)によって穿孔された穿孔孔P1aに挿着されている。コア7の上端部は、コア挿設孔1fに装着されている。
【0033】
[サドル付分水栓の作用]
次に、図1図3を参照して、本発明の実施形態に係るサドル付分水栓100の作用を、取付手順に沿って説明する。
【0034】
まず、図1に示すように、ボルトB1の雄ねじ部B1cをバンド3に装着した絶縁体下6に下側から挿入する。その雄ねじ部B1cにストッパ用のナット41を螺合させて、予め設定したバンド3からストッパ4の上面までの距離L2(図3参照)の位置に取り付ける。
【0035】
次に、ストッパ用のナット41から上方向に突出している雄ねじ部B1cを、サドル2に装着した絶縁体上5に下側から挿入し、さらに、平座金8を嵌め込む。続いて、その雄ねじ部B1cに、ナットN1を嵌めて、サドル2のフランジ部2bがストッパ用のナット41に当接するまでスパナ等の工具で締め付ける。
【0036】
作業者は、締め付けたナットN1によってサドル2のフランジ部2bが、ストッパ4と当接したことを視認することで、サドル2とバンド3との間の距離L1を、常に、バンド3からストッパ4の上面までの距離L2にすることができる。これにより、作業者は、ナットN1の締付が完了する位置がわかるため、トルクレンチを使わずに、スパナ等の工具であっても、所定の締結力(トルク)でナットN1を締め付けることが可能となる。このため、サドル付分水栓100を配水管P1に取り付ける際のナットN1の締付トルクの管理が不要となり、取付作業を簡素化することができる。
【0037】
以上のように、本発明は、図1あるいは図3に示すように、配水管P1の外周に配置されて配水管P1に固定するための一対のフランジ部2bを有するサドル2と、配水管P1を挟んでサドル2に対向配置されて配水管P1に固定するための一対のフランジ部3bを有するバンド3と、サドル2とバンド3とを配水管P1に連結固定するためのボルトB1及びナットN1と、を備え、サドル2の一対のフランジ部2b、及び、バンド3の一対のフランジ部3bは、絶縁体上5または絶縁体下6を介在してボルトB1が挿通されるボルト挿通孔2c,3cをそれぞれ有し、ボルトB1に螺合されたナットN1を締め付けることで配水管P1の外周に取り付けられるサドル付分水栓100であって、バンド3の一対のフランジ部3bのボルト挿通孔3cに挿通されると共に、サドル2の一対のフランジ部2bのボルト挿通孔2cにそれぞれ挿通されたボルトB1には、バンド3の一対のフランジ部3bと、サドル2の一対のフランジ部2bとの間に、ストッパ4が少なくとも一つ配置され、ナットN1は、サドル2の一対のフランジ部2b、絶縁体上5、または、その両方にストッパ4が当接するまで締め付けて固定される。
【0038】
かかる構成によれば、サドル付分水栓100は、ナットN1を、サドル2の一対のフランジ部2b、絶縁体上5、または、その両方にストッパ4が当接するまで締め付けて固定されることで、ナットN1をボルトB1に締結される位置がストッパ4に当接する位置に定められるので、常に締結力を一定にさせることができる。この場合、作業者は、締め付けたナットN1によってサドル2のフランジ部2bが、ストッパ4と当接したことを視認することで、サドル2とバンド3との間の距離L1を、常に、バンド3からストッパ4の上面までの距離L2にすることができるため、所定の締結力でナットN1を締め付けることが可能となる。このため、ストッパ4は、ボルトB1とナットN1を締結する際の締め付けの目印となるので、トルクレンチ(専用工具)を使わずにスパナで締め付けたとしても、配水管P1をサドル2とバンド3とで挟持する締付力を所定の締結力(トルク)で、常に安定した力で保持することができる。
【0039】
また、ストッパ4は、ボルトB1に螺合されたストッパ用のナット41から成る。
【0040】
かかる構成によれば、ストッパ4は、ボルトB1に螺合されるナット41から成るので、市販のナットを使用することができるため、特別な部品を使用せず済むため、コスト及び部品管理工数の低減を図ることができる。
【0041】
[第1変形例]
以上、本実施形態に係るサドル付分水栓100について、図1図3を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0042】
図4は、本発明の実施形態に係るサドル付分水栓100の第1変形例を示す図で、ストッパ4Aの設置状態を示す要部拡大正面図である。
【0043】
前記実施形態で説明したストッパ4(図3参照)は、図4に示すストッパ4Aのように、ボルトB1を挿入した筒状のストッパ用の筒体41Aから成るものであってもよい。
この場合、ストッパ用の筒体41Aは、図4に示すように、上端部に鍔を有する円筒体や、単成る円筒状のものでも、横断面視して多角形の筒体等であってもよい。また、筒体41Aは、樹脂製のものでも、金属製のものでもよい。
【0044】
このように構成することで、ストッパ4Aは、サドル2とバンド3との間のボルトB1に挿入されている。作業者は、ナットN1を締め付ける際に、サドル2が下降してストッパ4Aの上端にサドル2のフランジ部2bの下面が当接するまで締め付けて、ストップさせる。このため、ナットN1を締め付けた場合、サドル2とバンド3との間の距離L1は、常に、バンド3からストッパ4Aの上面までの距離L3に規制されるため、常に、所定の締結力(トルク)でナットN1を締め付けることが可能となる。
【0045】
[第2変形例]
図5Aは、本発明の実施形態に係るサドル付分水栓100の第2変形例を示す図で、ストッパ4Bの設置状態を示す要部拡大正面図である。図5Bは、図5Aに示すストッパ4Bの平面図である。
【0046】
前記実施形態及び第1変形例で説明したストッパ4,4A(図3及び図4参照)は、図5A及び図5Bに示すストッパ4Bのように、ボルトB1の外周面に装着されたストッパ用の係合部材41Bから成るものであってもよい。
この場合、係合部材41Bは、ボルトB1の外周面に装着できるように、平面視して半円形、U字形状、あるいは、C字形状に形成された樹脂製または金属製の部材から成る。例えば、係合部材41Bは、塩化ビニル管を半割して横断面視して半円形にしたものであってもよい。
【0047】
このように構成することで、ストッパ4Bは、ボルトB1の外周面に容易に装着させることができるので、ストッパ4Bの取付作業を簡素化することができる。この場合も、作業者は、ナットN1を締め付ける際に、サドル2が下降してストッパ4Bの上端にサドル2のフランジ部2bの下面が当接するまで締め付けることで、常に、所定の締結力(トルク)でナットN1を締め付けることが可能となる。
【0048】
[第3変形例]
図6Aは、本発明の実施形態に係るサドル付分水栓100の第3変形例を示す図で、ストッパ4Cの設置状態を示す要部拡大正面図である。図6Bは、図6Aに示すストッパ4Cの横断面図である。
【0049】
前記実施形態で説明したストッパ4(図3参照)は、図6A及び図6Bに示すストッパ4Cのように、上下方向に伸縮するストッパ用の伸縮部材41Cから成るものであってもよい。
この場合、伸縮部材41Cは、上下方向に伸縮するように、大径部41Caと、小径部41Cbとを有して伸縮する2つの部材から成る。大径部41Caと小径部41Cbとは、横断面視してC字形状に形成されている。
また、伸縮部材41Cは、上下方向に伸縮する樹脂製のものや、金属製のもので、横断面視して略半円形、円形、あるいは、U字形状のものでもよい。
【0050】
このように構成することで、ストッパ4Cは、上下方向に伸縮するので、配水管P1の口径が変化してサドル2とバンド3との間の距離が変わったとしても、伸縮部材41Cが伸縮することで、口径毎に調整することができるため、口径毎にストッパを用意する必要がなく部品点数の削減ができる。この場合も、作業者は、ナットN1を締め付ける際に、サドル2が下降してストッパ4Cの上端にサドル2のフランジ部2bの下面が当接する位置まで締め付けることで、常に、所定の締結力(トルク)でナットN1を締め付けることが可能となる。
【0051】
[第4変形例]
図7は、本発明の実施形態に係るサドル付分水栓100の第4変形例を示す図で、ストッパ4Dの設置状態を示す要部拡大正面図である。
【0052】
前記実施形態で説明したストッパ4(図3参照)は、図7に示すストッパ4Dのように、ボルトB1を挿入した筒状のストッパ用の絶縁体下41Dから成るものであってもよい。
この場合、絶縁体下41Dは、前記実施形態で説明した絶縁体下6(図1参照)の鍔部6bから上方向(サドル2方向)に一体に突出形成した樹脂製の円筒形状のものから成る。
【0053】
このように構成することで、ストッパ4Dは、ボルトB1の外周面に沿って軸方向に延設されているので、ナットN1を締め付けて、サドル2が絶縁体下41Dに当接するまで締め付けることで、所定の締付力で締め付けることができる。
【0054】
[第5変形例]
図8は、本発明の実施形態に係るサドル付分水栓100の第5変形例を示す図で、ストッパ4Eの設置状態を示す要部拡大正面図である。
【0055】
また、前記実施形態で説明したストッパ4(図3参照)は、図8に示すストッパ4Eのように、ボルトB1を挿入した筒状のストッパ用の絶縁体上41Eから成るものであってもよい。
この場合、絶縁体上41Eは、前記実施形態で説明した絶縁体上5(図1参照)の鍔部5bから下方向(バンド3方向)に一体に突出形成した樹脂製の円筒形状のものから成る。
【0056】
このように構成することで、ストッパ4Eは、ボルトB1の外周面に沿って軸方向に延設されているので、ナットN1を締め付けて、絶縁体上41Eの下端がバンド3に当接するまで締め付けることで、所定の締付力で締め付けることができる。
【0057】
[第6変形例]
図9Aは、本発明の実施形態に係るサドル付分水栓100の第6変形例を示す図で、ストッパ4Fの設置状態を示す要部拡大正面図である。図9Bは、図9Aに示すストッパ4Fの平面図である。図9Cは、図9Bに示すストッパ4Fの側面図である。図9Dは、ナットN1を締め込むことで平座金8によって押し潰されて広がっているときのストッパ4Fの状態を示す要部平面図である。
【0058】
また、前記実施形態のサドル付分水栓100は、図9A図9Cに示すように、配水管P1の外周に配置されて配水管P1(図1参照)に固定するための一対のフランジ部2bを有するサドル2と、配水管P1を挟んでサドル2に対向配置されて配水管P1に固定するための一対のフランジ部3bを有するバンド3と、サドル2とバンド3とを配水管P1に連結固定するためのボルトB1及びナットN1と、を備え、サドル2の一対のフランジ部2b、及び、バンド3の一対のフランジ部3bは、ボルトB1が挿通されるボルト挿通孔2c,3c(図1参照)をそれぞれ有し、ボルトB1に螺合されたナットN1を締め付けることで配水管P1の外周に取り付けられるサドル付分水栓100(図1参照)であって、サドル2の一対のフランジ部2bのボルト挿通孔2c(図1参照)に挿通されてボルトB1が挿通される円筒部5a(図1参照)と、当該一対のフランジ部2bのナットN1側の表面に配置された鍔部5bと、を有する絶縁体上5を備え、一対のフランジ部2bのボルト挿通孔2c(図1参照)に挿通されてボルトB1には、上からナットN1、平座金8、ストッパ4F、絶縁体上5が順に配置され、ナットN1は、ストッパ4Fが押し潰されて平座金8の外周部から径方向外側にはみ出すまで締め付けて固定されるようにしてもよい。
この場合、平座金8は、ストッパ4Fの外径よりも大ききな外径のものを使用することが好ましい。
【0059】
このように構成することで、ストッパ4Fは、鍔部5bと、ナットN1との間に平座金8を介在して配置されるので、締付力に応じてストッパ4Fが平座金8に押し潰されて、平座金8よりも径方向外側に広がるように変形する。このため、作業員は、ストッパ4Fの広がり状況(広がった大きさ)で締付力を確認して、常に一定の締付力で締結させることが可能となる。
【0060】
[第6変形例のストッパの変形例]
図10Aは、図9Bに示す第6変形例のストッパ4Fの変形例であるストッパ4Gの正面図である。図10Bは、図10Aに示すストッパ4Gの側断面図である。
【0061】
また、図9B図9C図10A図10Bに示すように、ストッパ4F,4Gは、ボルトB1が挿通される円板状あるいはせっ頭円錐状の環状部材41F,41Gから成るものであってもよい。
【0062】
このように構成することで、第6変形例と同様、ストッパ4F,4Gは、鍔部5bと、ナットN1との間に平座金8を介在して配置されるので、締付力に応じてストッパ4F,4Gが平座金8に押し潰されて径方向外側に広がるように変形する。このため、作業員は、ストッパ4F,4Gの広がり状況(広がった大きさ)で締付力を確認して、常に所定の締付力で締結させることが可能となる。
【0063】
[その他の変形例]
例えば、図6A及び図6Bに示す伸縮部材41Cは、上下方向に伸縮する蛇腹形状のもので、横断面視して略半円形あるいは円形のものであってもよい。
また、図6A及び図6Bに示す伸縮部材41Cは、円筒圧縮コイルばねであってもよい。
例えば、図9A図9Cに示すストッパ用の環状部材41Fは、上からナットN1、ストッパ4F、平座金8、絶縁体上5が順に配置され、上方向から見てナットN1の頂点より広がる又は平座金8が見えなくなるまで変形させて確認できるように平座金8と同形状であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 分水栓本体
2 サドル
2b フランジ部
2c,3c ボルト挿通孔
3 バンド
3b フランジ部
4,4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G ストッパ
5 絶縁体上
5a 円筒部
5b 鍔部
6 絶縁体下
8 平座金
41 ストッパ用のナット
41A ストッパ用の筒体
41B ストッパ用の係合部材
41C ストッパ用の伸縮部材
41D ストッパ用の絶縁体下
41E ストッパ用の絶縁体上
41F,41G ストッパ用の環状部材
100 サドル付分水栓
B1 ボルト
N1 ナット
P1 配水管
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B