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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ロボット及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/02 20090101AFI20241017BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20241017BHJP
   H04W 4/02 20180101ALI20241017BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W84/18
H04W4/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020176157
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067445
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】520168055
【氏名又は名称】avatarin株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】深堀 昂
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 ケビン
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033323(JP,A)
【文献】特開2014-022881(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュネットワークを形成する固定されていない複数のロボットと無線通信可能な通信部と、
前記メッシュネットワークを構築するエリアに関するエリア情報、及び前記ロボットの位置情報に基づいて、前記メッシュネットワークを構成するノードとして機能する位置に自ロボットを移動させる移動制御部と、
を備え
前記移動制御部は、各前記ロボットにおけるデータ伝送能力に関する伝送能力情報に基づいて、通信経路の一部に選定されている他の前記ロボットにおける前記データ伝送能力が不足しているか否かを判定し、前記データ伝送能力が不足していると判定した場合に、前記データ伝送能力が不足している他の前記ロボットに近接する位置に自ロボットを移動させて、前記データ伝送能力が不足している他の前記ロボットを経由する経路を二重化するための経路を形成させる、
ロボット。
【請求項2】
前記移動制御部は、前記エリア内に位置し、かつ周辺に位置する他の前記ロボットとの距離が所定の範囲におさまるように自ロボットを移動させる、
請求項1記載のロボット。
【請求項3】
コンピュータを、
メッシュネットワークを形成する固定されていない複数のロボットと無線通信可能な通信部、
前記メッシュネットワークを構築するエリアに関するエリア情報、及び前記ロボットの位置情報に基づいて、前記メッシュネットワークを構成するノードとして機能する位置に自ロボットを移動させる移動制御部、
として機能させ
前記移動制御部は、各前記ロボットにおけるデータ伝送能力に関する伝送能力情報に基づいて、通信経路の一部に選定されている他の前記ロボットにおける前記データ伝送能力が不足しているか否かを判定し、前記データ伝送能力が不足していると判定した場合に、前記データ伝送能力が不足している他の前記ロボットに近接する位置に自ロボットを移動させて、前記データ伝送能力が不足している他の前記ロボットを経由する経路を二重化するための経路を形成させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、複数の通信ノードでメッシュネットワークを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-169019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、メッシュネットワークを形成する通信ノードとして、特定の場所に配置されたセンサノードが用いられている。この場合、各センサノードが測定するデータは、各センサノードが配置されている場所で測定可能なデータとなる。したがって、センサノードが配置されていない場所のデータを測定して収集することはできない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、メッシュネットワークを流動的に形成させることができるロボットを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様であるロボットは、メッシュネットワークを形成する固定されていない複数のロボットと無線通信可能な通信部と、前記メッシュネットワークを構築するエリアに関するエリア情報、及び前記ロボットの位置情報に基づいて、前記メッシュネットワークを構成するノードとして機能する位置に自ロボットを移動させる移動制御部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、メッシュネットワークを構築するエリアに配置された複数のロボットの位置情報に基づいて、メッシュネットワークを構成するノードとして機能できる位置に自ロボットを自律的に移動させることができる。したがって、ロボットを自律的に移動させながら、メッシュネットワークを流動的に形成させることが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記移動制御部は、前記エリア内に位置し、かつ周辺に位置する他の前記ロボットとの距離が所定の範囲におさまるように自ロボットを移動させることとしてもよい。この態様によれば、同一エリア内に配置された各ロボットを、それぞれの間隔が所定の範囲におさまる位置に自律的に移動させながら、メッシュネットワークを流動的に形成させることが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記移動制御部は、通信経路の一部に選定された他の前記ロボットにおけるデータ伝送能力が不足している場合に、当該データ伝送能力が不足している他の前記ロボットを経由する経路を二重化するための経路を形成する位置に自ロボットを移動させることとしてもよい。この態様によれば、通信経路を形成するロボットの中に、データ伝送能力が不足するロボットが発生した場合であっても、そのロボットを経由する経路を二重化させることができるため、安定した通信環境を提供することが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記移動制御部は、各前記ロボットにおけるデータ伝送能力に関する伝送能力情報に基づいて、前記通信経路の一部に選定された他の前記ロボットにおけるデータ伝送能力が不足しているか否かを判定し、当該データ伝送能力が不足していると判定した場合に、前記二重化するための経路を形成する位置に自ロボットを移動させることとしてもよい。この態様によれば、伝送能力情報に基づいてデータ伝送能力が不足しているかどうかを判定し、その判定結果に従って、データ伝送能力が不足しているロボットを経由する経路を二重化させることができる。
【0011】
本発明の他の態様であるプログラムは、コンピュータを、メッシュネットワークを形成する固定されていない複数のロボットと無線通信可能な通信部、前記メッシュネットワークを構築するエリアに関するエリア情報、及び前記ロボットの位置情報に基づいて、前記メッシュネットワークを構成するノードとして機能する位置に自ロボットを移動させる移動制御部、として機能させる。
【0012】
この態様によれば、メッシュネットワークを構築するエリアに配置された複数のロボットの位置情報に基づいて、メッシュネットワークを構成するノードとして機能できる位置に自ロボットを自律的に移動させることができる。したがって、ロボットを自律的に移動させながら、メッシュネットワークを流動的に形成させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メッシュネットワークを流動的に形成させることができるロボット及びプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るロボットを含むシステムの構成を例示する図である。
図2】実施形態に係るロボットの機能構成を例示するブロック図である。
図3】ロボットにより形成されるメッシュネットワークを説明するための模式図である。
図4】ロボットにより形成されるメッシュネットワークを説明するための模式図である。
図5】ロボットにより形成されるメッシュネットワークを説明するための模式図である。
図6】実施形態に係るロボットのハードウェア構成を例示するブロック図である。
図7】サーバ装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態に限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
[システムの構成]
図1を参照して、実施形態に係るロボットを含むシステムの例示的な構成について説明する。本実施形態において、システム1は、例えば、使用可能なロボット4の検索やロボット4を使用するための予約等の処理を行うことができる。
【0017】
図1に示すように、システム1は、サーバ装置2、一台以上の端末装置3、及び複数のロボット4を備える。各装置又はロボットは、他の装置又はロボットと、無線若しくは有線により(又はその両者により)通信可能に構成されている。各端末装置3は、それぞれ同様の構成を有してもよいし、異なる構成を有してもよい。各ロボット4は、それぞれ同様の構成を有してもよいし、異なる構成を有してもよい。以下に、それぞれの装置及びロボットの概要を説明する。
【0018】
サーバ装置2は、例えば、メッシュネットワークを形成するロボット4を管理する装置である。サーバ装置2は、サーバコンピュータ等の情報処理装置により構成される。サーバ装置2は、1つの情報処理装置により構成されてもよいし、複数の情報処理装置(例えば、クラウドコンピューティング又はエッヂコンピューティング)により構成されてもよい。
【0019】
端末装置3は、ロボット4の操作や、ロボット4の予約のために、ユーザにより使用される情報処理装置である。端末装置3は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistants)、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、特定用途の操作系等の汎用又は専用の情報処理装置である。
【0020】
ロボット4は、固定されていないロボットである。固定されていないとは、例えば、ロボット4が車輪等の移動のための駆動部を有する移動型である場合や、人が装着でき、マニピュレータ等の動作のための駆動部を有する装着型である場合を含む。
【0021】
移動型のロボットは、例えば、一輪、二輪又は多輪により走行するもの、キャタピラにより走行するもの、レールの上を走行するもの、飛び跳ねて移動するもの、二足歩行、四足歩行又は多足歩行するもの、スクリューにより水上又は水中を航行するもの、及びプロペラ等により飛行するものを含む。
【0022】
装着型のロボットは、例えば、MHD Yamen Saraiji, Tomoya Sasaki, Reo Matsumura, Kouta Minamizawa and Masahiko Inami, "Fusion: full body surrogacy for collaborative communication," Proceeding SIGGRAPH '18 ACM SIGGRAPH 2018 Emerging Technologies Article No. 7.にて公開されているものを含む。
【0023】
ロボット4には、以下のものもさらに含まれる。自動走行若しくは半自動走行が可能な車両や重機、ドローンや飛行機、スポーツスタジアム等に設置されてレールの上を移動可能なカメラを備えたロボット、宇宙空間に打ち上げられる衛星型ロボットであって姿勢制御やカメラの撮影方向の制御が可能なロボット。また、ロボット4は、いわゆるテレプレゼンスロボットやアバターロボットであってよい。
【0024】
ユーザは、端末装置3を介してロボット4の操作(例えば、ロボット4の移動やロボット4に搭載されたカメラの操作)を行う。ロボット4を操作するための信号は、端末装置3からサーバ装置2又はその他の装置を介して、ロボット4に送信される。当該操作するための信号が端末装置3からロボット4に直接送信されてもよい。ロボット4は、受信した信号に応じて動作し、ロボット4に搭載されたカメラ、マイク及びその他の装置を通じて取得された画像データ及び音声データ等、ロボット4がいる場所に関してロボット4が取得又は検知等したデータを端末装置3に送信する。これにより、ユーザは、端末装置3及びロボット4を介して、ロボット4がいる場所に自分もいるかのようなエクスペリエンスを得ることができる。ロボット4から送信されるデータは、サーバ装置2又はその他の装置を介して端末装置3に送信されてもよいし、端末装置3に直接送信されてもよい。
【0025】
[メッシュネットワーク]
本実施形態では、複数のロボット4が特定のエリアに配置され、その特定のエリアに配置された複数のロボット4がメッシュネットワークを形成する態様について説明する。メッシュネットワークは、複数の通信ノードが網の目(メッシュ)状の伝送経路を形成する通信ネットワークである。図2を参照して、具体的に説明する。
【0026】
図2は、あるエリアAに11台のロボット4が配置され、それら11台のロボット4によりメッシュネットワークが形成されていることを例示する。エリアAの大きさや、エリアAに配置するロボット4の台数は、任意に設定することができる。
【0027】
図2では、ユーザUが端末装置3を用いて、ロボットIDが“A11”であるロボット4eを遠隔操作する。ユーザUが遠隔操作するロボット4eは、例えば、以下のように選定される。
【0028】
最初に、ユーザUが端末装置3を操作して、エリアAの中で所望する場所又は位置を指定し、遠隔操作するロボット4を検索する。続いて、サーバ装置2は、ユーザUにより指定された場所又は位置に配置されたロボット4eを、ユーザUが遠隔操作するロボット4として選定する。
【0029】
図2では、端末装置3とロボット4eとの間の通信経路として、メッシュネットワーク上のロボット4a、ロボット4b、ロボット4c及びロボット4dを経由する経路が選定されている。したがって、端末装置3は、メッシュネットワーク上のロボット4a、ロボット4b、ロボット4c及びロボット4dを介して、ロボット4eと通信することになる。メッシュネットワーク上の通信経路は、例えば、以下のように選定される。
【0030】
最初に、サーバ装置2は、端末装置3とロボット4eとの間に介在し得るメッシュネットワーク上の各ロボット4の位置情報及び各ロボット4の状況情報を取得する。状況情報に含まれる状況には、例えば、ロボット4の起動状況、ロボット4の充電状況、ロボット4の通信状況及びロボット4の利用状況等がある。ロボット4の位置情報及びロボット4の状況情報の詳細については、後述する。
【0031】
続いて、サーバ装置2は、取得した各ロボット4の位置情報及び状況情報に基づいて、メッシュネットワーク上の通信経路として最適な経路を選定する。例えば、以下(1)乃至(6)の基準を適宜組み合わせる等して、最適な経路を選定することができる。その際、基準ごとに重みを付ける等して優先度を算定し、優先度の最も高い経路を選定することとしてもよい。
【0032】
(1)ロボット4の位置情報に基づいて、最短経路を形成するロボットを優先的に選定する。
(2)ロボット4の起動状況に基づいて、現在起動しているロボットを優先的に選定する。
(3)ロボット4の充電状況に基づいて、バッテリーの残容量が多いロボットを優先的に選定する。
(4)ロボット4の通信状況に基づいて、通信部の電波強度が高いロボットを優先的に選定する。
(5)ロボット4の利用状況に基づいて、直近に充電又はメンテナンスがなされたロボットを優先的に選定する。
(6)ロボット4の利用状況に基づいて、故障フラグがOFFになっているロボットを優先的に選定する。
【0033】
ここで、各ロボット4及びサーバ装置2は、例えば、エリア情報、ロボット情報、ロボットの位置情報、ロボットの状況情報及びロボットの伝送能力情報を、それぞれの記憶装置(記憶部)に記憶して管理する。
【0034】
エリア情報は、メッシュネットワークを構築するエリアに関する情報である。エリア情報には、例えば、エリアを識別するエリアID、当該エリアを含む地図情報、当該エリアの範囲を示す情報、及び当該エリアに配置可能なロボット4の台数等が含まれる。
【0035】
ロボット情報は、各ロボット4に関する情報である。ロボット情報には、例えば、ロボット4を識別するロボットID、当該ロボット4の通信可能な範囲に関する情報、当該ロボット4の能力に関する情報、及び当該ロボット4のカメラの性能に関する情報等が含まれる。
【0036】
ロボットの位置情報は、各ロボット4の位置に関する情報である。ロボット位置情報には、例えば、ロボットID、当該ロボット4が配置されているエリアのエリアID、及び当該ロボット4の現在位置等が含まれる。ロボット4の現在位置は、例えば、ロボット4に搭載されるGPS(Global Positioning System)機能により測定することができる。
【0037】
ロボットの状況情報は、各ロボット4の状況に関する情報である。ロボットの状況情報には、例えば、ロボットID、当該ロボット4の起動状況に関する情報、当該ロボット4の充電状況に関する情報、当該ロボット4の通信状況に関する情報、及び当該ロボット4の利用状況に関する情報等が含まれる。
【0038】
ロボットの伝送能力情報は、各ロボット4におけるデータ伝送能力に関する情報である。伝送能力情報には、例えば、ロボットID、他のロボット4のロボットID、並びに当該他のロボット4との間の通信に基づくスループット、伝送速度及び通信帯域等が含まれる。
【0039】
エリア情報、ロボット情報、ロボットの位置情報、ロボットの状況情報及びロボットの伝送能力情報に含まれる各データは、各ロボット4に対して設定又は各ロボット4で逐次測定されて、記憶装置に記憶され、さらにサーバ装置2に送信される。サーバ装置2は、各ロボット4から受信した各データに基づいて、エリア情報、ロボット情報、ロボットの位置情報、ロボットの状況情報及びロボットの伝送能力情報を集積して管理する。サーバ装置2は、同一エリアに配置される各ロボット4に対し、同一エリアに配置される他のロボット4から取得した各データを、定期的に送信する。各ロボット4は、サーバ装置2から受信した各データに基づいて、エリア情報、ロボット情報、ロボットの位置情報、ロボットの状況情報及びロボットの伝送能力情報を更新する。
【0040】
なお、各ロボット4及びサーバ装置2に記憶される上記各情報のデータ構成やそれぞれのデータの組合せは、上記に限定されず、運用に合わせて任意に設定することができる。
【0041】
[ロボットの機能的な構成]
図3を参照して、ロボット4の機能的な構成について説明する。これらの機能は、ロボット4のプロセッサ(制御部)が、記憶装置(記憶部)に記憶されたコンピュータプログラムを読み込んで実行することにより実現される。ロボット4のハードウェア構成については、後述する。
【0042】
図3に示すように、ロボット4は、機能的な構成として、例えば、通信部41、移動制御部42、及びデータベース43を有する。ロボット4が有する機能は、これらに限定されず、コンピュータが一般的に有する機能、及び他の機能を有してもよい。
【0043】
データベース43は、ロボット4で実行される処理に必要なデータ、及び当該処理により生成又は設定されたデータ等、各種のデータを記憶する。各種のデータには、上述したエリア情報、ロボット情報、ロボットの位置情報、ロボットの状況情報及びロボットの伝送能力情報が含まれる他、例えば、ロボット4を使用するユーザに関するユーザ情報が含まれる。
【0044】
通信部41は、例えば、メッシュネットワークを形成する複数のロボット4と無線通信する。通信部41は、ロボット4と直接通信してもよいし、サーバ装置2や他の装置を介してロボット4と通信してもよい。サーバ装置2や他の装置との通信には、無線による通信に加え、有線による通信が介在してもよい。
【0045】
移動制御部42は、例えば、エリア情報及びロボットの位置情報に基づいて、メッシュネットワークを構成するノードとして機能する位置に自ロボットを移動させる。エリア情報及びロボット位置情報は、データベース43から取得することができる。
【0046】
例えば、移動制御部42は、自ロボットと同じエリア内に位置し、かつ自ロボットの周辺に位置する他のロボットとの距離が所定の範囲におさまるように自ロボットを移動させる。図4を参照して、具体的に説明する。
【0047】
図4に示すように、ロボットIDが“A5”であるロボット4cは、同じエリアA内かつ周辺に位置する他のロボット4b、4d、4gから少し離れた位置に存在している。この場合、ロボット4cの移動制御部42は、他のロボット4b、4d、4gとの距離が、それぞれ所定の範囲におさまるように自ロボット4cを移動させる。
【0048】
自ロボット4cのエリアは、例えば、自ロボット4cのロボットIDである“A5”を用いて、データベース43のエリア情報を参照することで特定することができる。自ロボット4cの位置は、例えば、自ロボット4cのロボットIDである“A5”を用いて、データベース43のロボットの位置情報を参照することで特定することができる。自ロボット4cの周辺に位置する他のロボット4b、4d、4gの位置は、例えば、エリアAのエリアIDを用いて、データベース43のロボットの位置情報を参照することで特定することができる。
【0049】
所定の範囲は、各ロボット4に対して一律に同じ範囲を設定してもよいし、ロボット4ごとに異なる範囲を設定してもよい。また、所定の範囲として、各ロボット4の通信可能な範囲を設定してもよい。この際、各ロボット4の通信可能な範囲内で、それぞれ異なる範囲を設定してもよい。
【0050】
所定の範囲を、各ロボット4の通信可能な範囲に設定することで、同一エリア内に配置された各ロボット4を、それぞれ自律的に移動させ、かつメッシュネットワークを構成するノードとして確実に機能させることが可能となる。
【0051】
ここで、ロボット4は、例えばユーザが使用することによって存在する場所が変わり得るため、いつも決まった場所に存在するとは限らない。したがって、場所を移動したロボット4が、自律的にメッシュネットワークを構成する位置に移動することができる本機能は有用となる。また、メッシュネットワークを形成する各ロボット4が本機能を有することで、メッシュネットワークを流動的に形成させることが可能となる。
【0052】
なお、同じエリアA内かつ周辺に位置する他のロボット4は、上述したロボット4b、4d、4gに限定されず、任意に選定することができる。例えば、上記ロボット4b、4d、4gの他に、ロボット4f、4hを加えることとしてもよい。
【0053】
図3の説明に戻る。移動制御部42は、端末装置3とロボット4との間の通信経路の一部に選定された他のロボット4におけるデータ伝送能力が不足している場合に、データ伝送能力が不足している他のロボット4を経由する経路を二重化するための経路を形成する位置に自ロボット4を移動させる。図5を参照して、具体的に説明する。
【0054】
図5に示すように、端末装置3とロボット4eとの間の通信経路は、ロボット4aからロボット4b、4c、4dを経由してロボット4eに接続する経路と、ロボット4aからロボット4f、4g、4hを経由してロボット4eに接続する経路とによって、二重化されている。ここでは、ロボット4f、4g、4hが、基準となる定位置から、ロボット4b、4c、4dに近接する位置に移動し、通信経路を二重化している。
【0055】
この場合、最初に、ロボット4f、4g、4hの移動制御部42は、端末装置3とロボット4eとの間の通信経路を形成するロボット4a乃至4eのいずれかのデータ伝送能力が不足しているか否かを判定する。ロボット4a乃至4eのデータ伝送能力は、ロボット4a乃至4eのロボットIDを用いて、データベース43のロボットの伝送能力情報を参照することで特定することができる。
【0056】
データ伝送能力が不足しているか否かは、例えば、所定の下限値を定め、その下限値を下回る場合に、データ伝送能力が不足していると判定することができる。所定の下限値は、ネットワークの伝送基準等に基づいて適宜定めることができる。
【0057】
データ伝送能力が不足しているか否かの判定は、端末装置3とロボット4eとの間の通信経路が確立するときから切断するまでの間、継続的又は断続的に実行することが望ましい。
【0058】
続いて、ロボット4f、4g、4hの移動制御部42は、例えばロボット4b、4c、4dのデータ伝送能力が不足していると判定した場合に、ロボット4b、4c、4dに近接する位置に自ロボット4f、4g、4hをそれぞれ移動させ、図5に示すように通信経路を二重化させる。
【0059】
ここで、図5では、ロボット4f、4g、4hを移動させて、通信経路を二重化させているが、二重化させる経路は、これに限定されない。例えば、ロボット4cのデータ伝送能力が不足していると判定した場合に、ロボット4cに近接する位置にロボット4gを移動させ、通信経路を二重化させてもよい。この場合の通信経路は、ロボット4bとロボット4dとの間の経路が、ロボット4cを経由する経路と、ロボット4gを経由する経路との二つの経路によって二重化されることになる。
【0060】
このような機能を有することで、通信経路を形成するロボット4の中に、例えば通信帯域が不足するロボット4が発生した場合であっても、そのロボット4を経由する経路を二重化させることができるため、安定した通信環境を提供することが可能となる。
【0061】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るロボット4によれば、メッシュネットワークを構築するエリアに配置された複数のロボットの位置情報に基づいて、メッシュネットワークを構成するノードとして機能できる位置に自ロボットを自律的に移動させることができる。したがって、ロボット4を自律的に移動させながら、メッシュネットワークを流動的に形成させることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態に係るロボット4によれば、自ロボットと同一エリア内に位置し、かつ自ロボットの周辺に位置する他のロボットとの距離が所定の範囲におさまるように自ロボットを移動させることができる。したがって、同一エリア内に配置された各ロボット4を、それぞれの間隔が所定の範囲におさまる位置に自律的に移動させながら、メッシュネットワークを形成させることが可能となる。
【0063】
さらに、本実施形態に係るロボット4によれば、通信経路の一部に選定された他のロボットのデータ伝送能力が不足した場合であっても、データ伝送能力が不足した他のロボットを経由する経路を二重化するための経路を形成する位置に自ロボットを移動させることができる。したがって、ロボットによるメッシュネットワークにおいて、安定した通信環境を提供することが可能となる。
【0064】
[コンピュータのハードウェア構成]
図6を参照して、本実施形態におけるロボット4に搭載されるコンピュータ(情報処理装置)及びその他の主な構成の例示的なハードウェア構成を説明する。ロボット4は、ハードウェア構成として、例えば、プロセッサ401、RAM(Random Access Memory)402、ROM(Read only Memory)403、通信部404、入力部405、表示部406、駆動部407、及びカメラ408を備える。図6に示す構成は一例であり、ロボット4は、これらの構成のうち一部を備えなくてもよいし、これら以外の構成を備えてもよい。例えば、ロボット4は、スピーカ、マイク、各種センサを備えてもよい。
【0065】
プロセッサ401は、ロボット4の演算部であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ401は、RAM402又はROM403に記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。プロセッサ401は、ロボット4が備える他の構成と、プログラムとの協働により、上記実施形態で説明したロボット4の機能を実現する。
【0066】
また、プロセッサ401は、例えば、ロボットを介したコミュニケーションを制御するプログラム(コミュニケーションプログラム)を実行する。プロセッサ401は、入力部405や通信部404から種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部406に表示したり、RAM402に格納したりする。
【0067】
コミュニケーションプログラムは、RAM402やROM403等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部404により接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。ロボット4では、プロセッサ401がコミュニケーションプログラムを実行することで、ロボット4を制御するための様々な動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、ロボット4は、プロセッサ401とRAM402やROM403が一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0068】
RAM402及びROM403は、各種処理に必要なデータ及び処理結果のデータを記憶する記憶部である。ロボット4は、RAM402及びROM403以外に、ハードディスクドライブ(HDD)等の大容量の記憶部を備えてもよい。
【0069】
通信部404は、外部装置と有線又は無線により、ネットワークを介したデータ通信を行うための装置である。
【0070】
入力部405は、ロボット4の外部からデータを入力するためのデバイスである。入力部405は、ユーザからデータの入力を受け付けるものとして、例えば、キーボード及びタッチパネルを含むこととしてよい。また、入力部405は、音声入力のためのマイクを含んでもよい。
【0071】
表示部406は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示部406は、プロセッサ401による演算結果を視覚的に表示するものとして、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてもよい。表示部406は、ロボット4のカメラ408で撮影された画像を表示してもよい。
【0072】
駆動部407は、遠隔操作可能なアクチュエータを含み、車輪等の移動部やマニピュレータ等を含む。ロボット4が移動型のロボットである場合、駆動部407は、少なくとも車輪等の移動部を含むが、マニピュレータを含んでもよい。ロボット4が装着型である場合、駆動部407は、少なくともマニピュレータを含む。
【0073】
カメラ408は、静止画又は動画を撮像する撮像素子を含み、撮像した静止画又は動画を、通信部404を介して外部装置に送信する。
【0074】
図7を参照して、本実施形態におけるサーバ装置2及び端末装置3を実装するためのコンピュータ(情報処理装置)の例示的なハードウェア構成を説明する。ここでは、サーバ装置2のハードウェア構成について説明するが、端末装置3のハードウェア構成も同様であるため、その説明を省略する。
【0075】
図7に示すように、サーバ装置2は、ハードウェア構成として、例えば、プロセッサ201、メモリ202、記憶装置203、通信部204、入力部205、及び表示部206を備える。サーバ装置2は、これらの構成のうち一部を備えなくてもよい。また、サーバ装置2は、これらの構成以外に、汎用コンピュータ又は専用コンピュータが一般的に備える他の構成を備えてもよい。
【0076】
プロセッサ201は、例えば、CPUである。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されているプログラムを実行することにより、サーバ装置2における各種の処理を制御する制御部である。プロセッサ201は、サーバ装置2が備える他の構成と、プログラムとの協働により、サーバ装置2の機能を実現する。
【0077】
メモリ202は、例えばRAM等の記憶媒体である。メモリ202には、プロセッサ201によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータが、記憶装置203等から一時的に読み出される、又は予め記憶されている。
【0078】
記憶装置203は、例えばハードディスクドライブ等の不揮発性の記憶媒体である。記憶装置203は、オペレーティングシステム、各種プログラム、及びデータ等を記憶する。
【0079】
通信部204は、サーバ装置2の外部の装置と有線又は無線により、ネットワークを介したデータ通信を行うための装置である。通信部204は、サーバ装置2に取り外し可能に接続されてもよい。その場合、通信部204は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェースを介してサーバ装置2に接続される。
【0080】
入力部205は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスや、サーバ装置2の外部からデータを入力するためのデバイスである。入力部205の具体例として、キーボード、マウス、タッチパネル、ジョイスティック、各種センサ、ウェアラブルデバイスや、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置等がある。入力部205は、サーバ装置2に取り外し可能に接続されてもよい。その場合、入力部205は、例えばUSB等のインタフェースを介してサーバ装置2に接続される。
【0081】
表示部206は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示部206の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、ウェアラブルデバイスのディスプレイ等が挙げられる。表示部206は、サーバ装置2の外部に取り外し可能に接続されてもよい。その場合、表示部206は、例えばディスプレイケーブル等を介してサーバ装置2に接続される。また、入力部205としてタッチパネルが採用される場合に、表示部206は、入力部205と一体化して構成することも可能である。
【0082】
[変形例]
本実施形態におけるシステム1(又は、サーバ装置2、端末装置3若しくはロボット4)を実装するためのプログラムは、CD-ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリ等の各種の記録媒体に記録しておくことができる。また、記録媒体を通じて、又は通信ネットワーク等を介して上記のプログラムをダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
【符号の説明】
【0083】
1…システム、2…サーバ装置、3…端末装置、4…ロボット、41…通信部、42…移動制御部、43…データベース、201…プロセッサ、202…メモリ、203…記憶装置、204…通信部、205…入力部、206…表示部、401…プロセッサ、402…RAM、403…ROM、404…通信部、405…入力部、406…表示部、407…駆動部、408…カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7