(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】分割型積層鉄心及び分割型積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20241017BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H02K15/02 E
H02K15/02 F
H02K1/18 B
H02K1/18 C
(21)【出願番号】P 2020178692
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】梅田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】荒川 広一
(72)【発明者】
【氏名】小宮 大輔
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-318763(JP,A)
【文献】特開平05-219696(JP,A)
【文献】特開2018-201300(JP,A)
【文献】特開2013-034294(JP,A)
【文献】特開2010-093997(JP,A)
【文献】特開2007-336608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板材が複数積層されて構成される分割型積層鉄心であって、
前記金属板材は、
無端環状を呈し、且つ、複数の分割片が前記金属板材の周方向において隣り合うように連結されることにより構成されており、
前記複数の分割片は、前記周方向において
隣り合うように並び且つ所定の切断線によって分割された第1の分割片及び第2の分割片を含み、
前記第1の分割片の第1の端面に形成されている剪断面と前記第2の分割片の第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接し、且つ、前記第1の端面と前記第2の端面とが完全には重なり合わないように、前記第1の端面及び前記第2の端面の境界によって構成される前記切断線を介して前記第1の分割片と前記第2の分割片とが仮接続されている、分割型積層鉄心。
【請求項2】
前記第1の分割片の端部と前記第2の分割片の端部との間には段差が形成されている、請求項1に記載の分割型積層鉄心。
【請求項3】
前記段差の大きさは前記金属板材の板厚の10%~40%である、請求項2に記載の分割型積層鉄心。
【請求項4】
前記第1の端面及び前記第2の端面はそれぞれ、ほぼ全域が剪断面である領域含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の分割型積層鉄心。
【請求項5】
金属板の所定の部位を所定の切断線に沿って切り曲げ加工して、第1の端面を含む切り曲げ片と、前記第1の端面に対応する第2の端面を含む母材部とを形成することと、
前記切り曲げ片を前記母材部に対して部分的にプッシュバック加工して、前記第1の端面に形成されている剪断面と前記第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接し、且つ、前記第1の端面と前記第2の端面とが完全には重なり合わないように、前記第1の端面及び前記第2の端面の境界によって構成される前記切断線を介して前記切り曲げ片と前記母材部とを仮接続することと、
前記切り曲げ片を前記母材部に完全に圧入することなく、前記部位を含むように前記金属板を打ち抜き加工して、
無端環状を呈
し、且つ、複数の分割片が周方向において隣り合うように連結されることにより構成された複数の金属板材を形成することと、
前記複数の金属板材を積層して積層体を形成することとを含む、分割型積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
プッシュバック加工することは、前記切り曲げ片と前記母材部との間に段差を形成するように、前記切り曲げ片と前記母材部とを仮接続することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記金属板の各加工に際して前記金属板を挟持するように構成された一対の挟持部材の少なくとも一方に開口部が形成されており、
前記一対の挟持部材によって前記金属板が挟持されるときに、仮接続された前記切り曲げ片及び前記母材部が前記開口部内に配置される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
切り曲げ加工することは、ダイに設けられたダイ孔に向けてパンチを進出させることにより、前記金属板を前記パンチで前記ダイ孔に対して部分的に押し込むことを含み、
前記パンチの進出方向から見て、前記パンチのうち前記切断線に対応する外形の少なくとも一部が、前記ダイ孔の輪郭よりも外方に位置している、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記積層体を形成することの後に、前記積層体を焼鈍することをさらに含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分割型積層鉄心及び分割型積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、金属板が切り曲げ加工及びプッシュバック加工されることにより、複数の切断線がヨーク材に予め設けられた打抜部材を、金属板から打ち抜くことと、金属板から打ち抜かれた複数の打抜部材を積層して、積層体を形成することとを含む、分割型固定子積層鉄心の製造方法を開示している。ヨーク材は、複数のヨーク片を含んでおり、隣り合うヨーク片の端部同士が切断線において仮接続されて構成されている。そのため、積層体に外力を付与することにより、切断線に沿ってヨーク材を複数のヨーク片に個片化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプッシュバック加工は、プッシュバックステーションにおいて、金属板のうち切り曲げ加工された部位を、ストリッパとダイとによって押圧することを含む。これにより、切り曲げ加工された部位は、金属板と面一となるように元の金属板に完全に押し戻され、打抜部材における切断線が形成される。しかしながら、この場合、切断線において仮接続されたヨーク片同士の締結力が強固となり、ヨーク材を個片化するのに大きな力を要する場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、より小さな力で個片化することが可能な分割型積層鉄心及び分割型積層鉄心の製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
分割型積層鉄心の一例は、環状を呈する金属板材が複数積層されて構成されていてもよい。金属板材は、その周方向において並び且つ所定の切断線によって分割された第1の分割片及び第2の分割片を含んでいてもよい。第1の分割片の第1の端面に形成されている剪断面と第2の分割片の第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接し、且つ、第1の端面と第2の端面とが完全には重なり合わないように、第1の端面及び第2の端面の境界によって構成される切断線を介して第1の分割片と第2の分割片とが仮接続されていてもよい。
【0007】
分割型積層鉄心の製造方法の一例は、金属板の所定の部位を所定の切断線に沿って切り曲げ加工して、第1の端面を含む切り曲げ片と、第1の端面に対応する第2の端面を含む母材部とを形成することを含んでいてもよい。当該方法の一例は、切り曲げ片を母材部に対して部分的にプッシュバック加工して、第1の端面に形成されている剪断面と第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接し、且つ、第1の端面と第2の端面とが完全には重なり合わないように、第1の端面及び第2の端面の境界によって構成される切断線を介して切り曲げ片と母材部とを仮接続することをさらに含んでいてもよい。当該方法の一例は、またさらに、切り曲げ片を母材部に完全に圧入することなく、部位を含むように金属板を打ち抜き加工して、環状の金属板材を形成することと、金属板材を複数積層することとを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る分割型積層鉄心及び分割型積層鉄心の製造方法によれば、より小さな力で個片化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、分割型の固定子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の固定子積層鉄心を構成する打抜部材を示す上面図である。
【
図6】
図6は、
図5における切り曲げ片及び母材部の各端面を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8における切り曲げ片及び母材部の各端面を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は、固定子積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図11】
図11は、プレス加工装置の一例を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、第2の打抜ユニットを構成する複数のダイの一例を示す上面図である。
【
図13】
図13は、逆クリアランスによる切り曲げ加工のためのダイ及びパンチの一例を示す上面図である。
【
図15】
図15は、正クリアランスによる切り曲げ加工のためのダイ及びパンチの一例を示す上面図である。
【
図17】
図17は、金属板のうち不完全プッシュバックされた部位と、ダイ及びストリッパとの関係の一例を示す断面図である。
【
図18】
図18は、打抜部材を形成する加工ユニットの一例を示す断面図であり、金属板から金属板材を打ち抜いて転積する様子を説明するための図である。
【
図19】
図19は、
図18の加工ユニットにおいて、固定子積層鉄心をプレス加工装置から排出する様子を説明するための図である。
【
図20】
図20は、金属板のプレス加工のレイアウトの一例を部分的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上側、下側、右側、左側というときは、符号の向きを基準とすることとする。
【0011】
[固定子積層鉄心の構成]
まず、
図1~
図9を参照して、固定子積層鉄心1(分割型積層鉄心)の構成について説明する。固定子積層鉄心1は、固定子(ステータ)の一部である。固定子は、固定子積層鉄心1に巻線(図示せず)が取り付けられることにより構成される。固定子と回転子(ロータ)とが組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。
【0012】
固定子積層鉄心1は、円筒形状を呈している。固定子積層鉄心1の中央部分には、中心軸Axに沿って延びるように固定子積層鉄心1を貫通する貫通孔1aが設けられている。貫通孔1aは、固定子積層鉄心1の高さ方向(積層方向)に延びている。貫通孔1a内には、回転子が配置可能である。
【0013】
固定子積層鉄心1は、複数の打抜部材W(金属板材、別の金属板材)が積み重ねられた積層体である。固定子積層鉄心1は、複数の打抜部材Wが転積されて構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺して、固定子積層鉄心1の平面度、平行度及び直角度を高めることを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定されていてもよい。
【0014】
固定子積層鉄心1は、ヨーク2と、複数のティース部3と、複数のカシメ部4を含む。ヨーク2は、環状を呈しており、中心軸Axを囲むように延びている
図1等に例示されるようにおり、ヨーク2は円環状を呈していてもよい。複数のティース部3は、ヨーク2の内縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク2の径方向に沿って延びている。すなわち、複数のティース部3は、ヨーク2の内縁から中心軸Axに向けて突出している。複数のティース部3は、ヨーク2の周方向において、略等間隔で並んでいてもよい。
図1等に例示されるように、固定子積層鉄心1は、12個のティース部3を含んでいてもよい。隣り合うティース部3の間には、巻線を配置するための空間であるスロット5が画定されている。
【0015】
カシメ部4は、例えば、ヨーク2に設けられていてもよい。図示はしていないが、カシメ部4は、例えば、各ティース部3に設けられていてもよい。積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、カシメ部4によって締結されていてもよい。複数の打抜部材W同士は、カシメ部4に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、例えば、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体を得た後、仮カシメを当該積層体から除去することによって、固定子積層鉄心1を得てもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(固定子積層鉄心1)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0016】
ここで、
図2~
図9を参照して、打抜部材Wについてさらに詳しく説明する。打抜部材Wは、後述する金属板MS(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、固定子積層鉄心1に対応する形状を呈している。
図3に示されるように、打抜部材Wの中央部分には、貫通孔Waが設けられている。打抜部材Wは、
図2及び
図3に示されるように、ヨーク2に対応するヨーク材W2と、各ティース部3に対応する複数のティース片W3とを有している。隣り合うティース片W3の間には、スロット5に対応するスロットW5が画定されている。
【0017】
ヨーク材W2には、ヨーク材W2の内周縁と外周縁との間を横断するように、複数の切断線CL1及び複数の切断線CL2(別の切断線)が設けられている。複数の切断線CL1,CL2は、ヨーク材W2の周方向において、略等間隔で交互に並んでいてもよい。
【0018】
図1及び
図3に例示されるように、ヨーク材W2には、切断線CL1,CL2が6本ずつ設けられていてもよい。この場合、ヨーク材W2は、12個のヨーク片W2a(第1の分割片、第2の分割片)で構成される。すなわち、ヨーク材W2は、切断線CL1,CL2によって分割された複数のヨーク片W2aを含んでいてもよい。複数のヨーク片W2aは、ヨーク材W2の周方向に並んでいてもよい。
【0019】
詳しくは後述するが、切断線CL1,CL2は、金属板MSを切り曲げ加工した後、切り曲げ部位を部分的にプッシュバック(本明細書において、「不完全プッシュバック」と称することがある。)して、金属板MSの元の位置に仮接続することにより、形成されている。すなわち、隣り合う一のヨーク片W2a及び他のヨーク片W2a同士は、切断線CL1,CL2を介して部分的に仮接続されている。そのため、
図2に示されるように、隣り合う一のヨーク片W2a及び他のヨーク片W2aの端部同士の間に段差が形成されている。段差の大きさは、打抜部材W(金属板MS)の板厚の10%~40%程度であってもよい。あるいは、打抜部材W(金属板MS)の板厚が0.50mm程度である場合には、段差の大きさは、例えば、0.05mm~0.2mm程度であってもよい。
【0020】
切断線CL1,CL2は、
図2~
図4及び
図7に例示されるように、凹凸形状を呈していてもよい。具体的には、ヨーク材W2の周方向において隣り合う一のヨーク片W2a(
図4の上側、
図7の左側)の端縁CLaが凹形状(中央が矩形状に窪んだ形状)を呈しており、他のヨーク片W2a(
図4の下側、
図7の右側)の端縁が凸形状(中央が矩形状に突出した形状)を呈していてもよい。
【0021】
詳しくは後述するが、切断線CL1は、逆クリアランスによる切り曲げ加工で形成されている。切断線CL1は、
図4に例示されるように、ヨーク材W2の周方向において隣り合う一のヨーク片W2a(
図4の上側)の端面S1a(第1の端面)及び他のヨーク片W2a(
図4の下側)の端面S1b(第2の端面)の境界によって構成されている。
【0022】
端面S1a,S1bはそれぞれ、
図6に示されるように、ほぼ剪断面SAによって構成されている。
図5及び
図6に示されるように、端面S1aと端面S1bとは、剪断面SAにおいて互いに部分的に当接している。すなわち、端面S1aと端面S1bとは、完全に重なり合ってはいない。
【0023】
詳しくは後述するが、切断線CL2は、正クリアランスによる切り曲げ加工で形成されている。切断線CL2は、
図7に例示されるように、ヨーク材W2の周方向において隣り合う一のヨーク片W2a(
図4の左側)の端面S2a及び他のヨーク片W2a(
図7の右側)の端面S2bの境界によって構成されている。
【0024】
端面S2a,S2bはそれぞれ、
図9に示されるように、剪断面SA及び破断面SBによって構成されている。剪断面SA及び破断面SBは、ヨーク片W2aの板厚方向(上下方向、積層方向)に並んでいる。一のヨーク片W2a(
図8及び
図9の左側)において、剪断面SAは上面側に位置しており、破断面SBは下面側に位置している。他のヨーク片W2a(
図8及び
図9の右側)において、剪断面SAは下面側に位置しており、破断面SBは上面側に位置している。
【0025】
図8及び
図9に示されるように、端面S2aと端面S2bとは、剪断面SAにおいて互いに部分的に当接している(
図8及び
図9における領域R参照)。すなわち、端面S2aと端面S2bとは、完全に重なり合ってはいない。一方で、端面S2a,S2bにおいて、剪断面SAと破断面SBとは当接していない。
【0026】
各ティース片W3は、ヨーク材W2の内縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク材W2の径方向に沿って延びている。すなわち、各ティース片W3は、ヨーク材W2の内縁から中心軸Axに向けて突出している。一つのティース片W3が一つのヨーク片W2aに一体的に設けられることにより、一つの板材W6が形成されていてもよい。すなわち、打抜部材Wは、ヨーク材W2の周方向において複数の板材W6が切断線CL1,CL2を介して仮接続されることにより構成されていてもよい。
【0027】
図1に戻って、固定子積層鉄心1は、上述のとおり複数の打抜部材Wが積層されたものである。より詳しくは、複数の打抜部材Wは、ヨーク材W2同士、ティース片W3同士及び切断線CL1,CL2同士が、積層方向において互いに重なり合うように積層されている。そのため、固定子積層鉄心1に所定の力を付与して固定子積層鉄心1を切断線CL1,CL2において個片化すると、一つの固定子積層鉄心1から、複数の鉄心片6(
図1の例では12個の鉄心片6)が得られる。鉄心片6は、複数の板材W6が積層された積層体である。換言すれば、固定子積層鉄心1も、打抜部材Wと同様に、複数の鉄心片6が組み合わされて構成されている。
【0028】
一つの鉄心片6は、一つのヨーク部2aと、一つのティース部3とで構成されている。ヨーク部2aは、ヨーク2が切断線CL1,CL2で分離されたときのヨーク2の一部分である。すなわち、固定子積層鉄心1は、中心軸Axの周方向において隣り合う鉄心片6がヨーク部2aの端部(切断線CL1,CL2)において仮接続されることにより一体化されたものである。
【0029】
積層方向において互いに重なり合う複数の切断線を切断線群Gと規定する場合、切断線群Gは、複数の切断線CL1のみで構成されていてもよい。切断線群Gは、複数の切断線CL2のみで構成されていてもよい。切断線群Gは、少なくとも一つの切断線CL1と、少なくとも一つの切断線CL2とを含んで構成されていてもよい。切断線群Gが切断線CL1,CL2を含む場合、
図2に例示されるように、積層方向において切断線CL1,CL2が交互に並んでいてもよいし、切断線CL1,CL2が規則的に又は不規則的に並んでいてもよい。
【0030】
[固定子積層鉄心の製造装置]
続いて、
図10を参照して、固定子積層鉄心の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板MSから固定子積層鉄心1を製造するように構成されている。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、プレス加工装置130と、焼鈍炉200と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0031】
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成されている。コイル材111は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置120は、金属板MSを上下から挟み込む一対のローラ121,122を含む。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板MSをプレス加工装置130に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。
【0032】
プレス加工装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成されている。プレス加工装置130は、例えば、送出装置120によって送り出される金属板MSを複数のパンチにより順次、切り曲げ加工または打ち抜き加工して、複数の打抜部材Wを形成するように構成されていてもよい。プレス加工装置130は、打ち抜き加工によって得られた複数の打抜部材Wを順次積層して固定子積層鉄心1を形成するように構成されていてもよい。プレス加工装置130によって形成された固定子積層鉄心1は、例えば、コンベアCvによって焼鈍炉200に搬送されてもよいし、人手によって焼鈍炉200に搬送されてもよい。プレス加工装置130の詳細については、後述する。
【0033】
焼鈍炉200は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成されている。焼鈍炉200は、プレス加工装置130から搬送された固定子積層鉄心1を、所定温度(例えば、750℃~800℃程度)で所定時間(例えば、1時間程度)加熱するように構成されている。焼鈍炉200によって固定子積層鉄心1が加熱されることにより、打抜部材Wに付着しているオイル(スタンピングオイル)が蒸発して除去されると共に、打抜部材Wの内部に残留している歪みが除去される。
【0034】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、プレス加工装置130、焼鈍炉200及びコンベアCvを動作させるための信号を生成するように構成されている。コントローラCtrは、送出装置120、プレス加工装置130、焼鈍炉200及びコンベアCvに当該信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0035】
[プレス加工装置の詳細]
続いて、
図11~
図19を参照して、プレス加工装置130の詳細について説明する。プレス加工装置130は、
図11に示されるように、下型140と、上型150と、プレス機160とを含む。下型140は、ベース141と、ダイホルダ142と、ダイプレート143(挟持部材)と、複数のガイドポスト144とを含む。
【0036】
ベース141は、例えば床面上に固定されており、プレス加工装置130全体の土台として機能する。ダイホルダ142は、ベース141上に支持されている。ダイホルダ142には、複数の排出孔C1~C5が形成されている。排出孔C1~C5は、ダイホルダ142の内部を上下方向に延びていてもよい。排出孔C1~C5には、金属板MSから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W、廃材等)が排出される。
【0037】
ダイプレート143は、複数のパンチP1~P5と共に金属板MSをプレス加工するように構成されている。ダイプレート143は、複数のダイD1~D5を含む。ダイD1~D5はそれぞれ、パンチP1~P5に対応する位置に配置されており、対応するパンチP1~P5が挿通可能なダイ孔D1a~D5aを含む。ダイD1~D5は、金属板MSの搬送方向において、上流側から下流側に向けてこの順に並んでいる。
【0038】
ダイD1は、パンチP1と共に、金属板MSを打抜加工するための第1の打抜ユニットを構成している。第1の打抜ユニットによって金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C1を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。ダイD2は、パンチP2と共に、金属板MSを切り曲げ加工するための第2の打抜ユニットを構成している。第2の打抜ユニットの詳細については後述する。
【0039】
ダイD3は、パンチP3と共に、金属板MSを打抜加工又は半抜加工するための第3の打抜ユニットを構成している。第3の打抜ユニットによって金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C3を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。ダイD4は、パンチP4と共に、金属板MSを打抜加工するための第4の打抜ユニットを構成している。第4の打抜ユニットによって金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C4を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0040】
ダイD5は、パンチP5と共に、金属板MSを打抜加工するための第5の打抜ユニットを構成している。第1の打抜ユニットによって金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wは、排出孔C5を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。第5の打抜ユニットの詳細については後述する。
【0041】
複数のガイドポスト144は、
図11に示されるように、ダイホルダ142から上方に向けて直線状に延びている。複数のガイドポスト144は、後述のガイドブッシュ151aと共に、上型150を上下方向に案内するように構成されている。なお、複数のガイドポスト144は、上型150から下方に向けて延びるように上型150に取り付けられていてもよい。
【0042】
上型150は、パンチホルダ151と、ストリッパ152(挟持部材)と、複数のパンチP1~P5と、パイロットピン(図示せず)とを含む。パンチホルダ151は、ダイホルダ142及びダイプレート143と対向するようにこれらの上方に配置されている。パンチホルダ151は、その下面側において複数のパンチP1~P5を保持するように構成されている。
【0043】
パンチホルダ151には、複数のガイドブッシュ151aが設けられている。複数のガイドブッシュ151aはそれぞれ、複数のガイドポスト144に対応するように位置している。ガイドブッシュ151aは円筒状を呈しており、ガイドポスト144がガイドブッシュ151aの内部空間を挿通可能である。なお、ガイドポスト144が上型150に取り付けられている場合には、ガイドブッシュ151aが下型140に設けられていてもよい。
【0044】
パンチホルダ151には、複数の貫通孔151bが設けられている。貫通孔151bの内周面には、階段状の段差が形成されている。そのため、貫通孔151bの上部の径は、貫通孔151bの下部の径よりも小さく設定されている。
【0045】
ストリッパ152は、パンチP1~P5で金属板MSをプレス加工する際にパンチP1~P5に食いついた金属板MSをパンチP1~P5から取り除くように構成されている。ストリッパ152は、ダイD1~D5とパンチホルダ151との間に配置されている。
【0046】
ストリッパ152は、接続部材153を介してパンチホルダ151と接続されている。接続部材153は、長尺状の本体部と、本体部の上端に設けられた頭部とを含む。接続部材153の本体部は、貫通孔151bの下部に挿通されており、貫通孔151b内を上下動可能である。接続部材153の本体部の下端は、ストリッパ152に固定されている。接続部材153の本体部の周囲には、パンチホルダ151とストリッパ152とを離間させる方向の付勢力をこれらに作用させるように構成された付勢部材154(例えば、圧縮コイルばねなど)が取り付けられていてもよい。
【0047】
接続部材153の頭部は、貫通孔151bの上部に配置されている。接続部材153の頭部の外形は、上方から見たときに、接続部材153の本体部の外形よりも大きく設定されている。そのため、接続部材153の頭部は、貫通孔151bの上部を上下動可能であるが、貫通孔151bの段差がストッパとして機能して、貫通孔151bの下部に移動できないようになっている。そのため、ストリッパ152は、パンチホルダ151に対して相対的に上下移動可能となるように、パンチホルダ151に吊り下げ保持されている。
【0048】
ストリッパ152には、パンチP1~P5に対応する位置に貫通孔がそれぞれ設けられている。各貫通孔はそれぞれ、上下方向に延びている。各貫通孔はそれぞれ、上方から見たときに、対応するダイ孔D1a~D5aと連通する。各貫通孔内にはそれぞれ、パンチP1~P5の下部が挿通されている。パンチP1~P5の下部はそれぞれ、各貫通孔内においてスライド可能である。
【0049】
プレス機160は、上型150を上下動させるように構成されている。プレス機160は、クランクシャフト161と、固定部材162と、連結部材163と、駆動機構164とを含む。クランクシャフト161は、主軸(クランクジャーナル)と、主軸から偏心して位置する偏心軸(クランクピン)と、これらを接続する接続部材(クランクアーム)とを含む。
【0050】
固定部材162は、固定壁等に固定されており、クランクシャフト161の主軸を回転可能に保持するように構成されている。連結部材163は、クランクシャフト161とパンチホルダ151とを連結している。連結部材163の一端部には、クランクシャフト161の偏心軸が回転可能に接続されている。連結部材163の他端部には、回転軸(図示せず)を介して、パンチホルダ151が接続されている。
【0051】
駆動機構164は、例えば、フライホイールやギアボックスなど(図示せず)を介して、クランクシャフト161の主軸に接続されている。駆動機構164は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作し、クランクシャフト161の主軸を回転させる。クランクシャフト161の主軸が回転すると、偏心軸が主軸周りを円運動する。これに伴い、パンチホルダ151が上死点と下死点との間で上下に往復運動する。
【0052】
ここで、上述した第2の打抜ユニットの構成について、
図12~
図17を参照して、より詳細に説明する。第2の打抜ユニットは、
図12に示されるように、逆クリアランスによる切り曲げ加工を行うための複数のユニットU1と、正クリアランスによる切り曲げ加工を行うための複数のユニットU2とを含む。複数のユニットU1と、複数のユニットU2とは、上方から見て全体として円形状を呈するように、ダイプレート143に配置されている。
図12に例示されるように、複数のユニットU1と、複数のユニットU2とは、これらが並ぶ方向(周方向)において、交互に配置されていてもよい。
【0053】
ユニットU1は、
図13及び
図14に示されるように、プッシュバックプレートUaと、付勢部材Ubと、ダイD2Aと、パンチP2Aとを含む。プッシュバックプレートUaは、ダイD2Aのダイ孔D2a内に配置されており、付勢部材Ubによって上方に向けて付勢されている。
【0054】
ダイD2Aのダイ孔D2aは、
図13に示されるように、上方から見て、略矩形状を呈する中央部と、中央部の一方の長辺Ea(
図13の左側の長辺)から外方に突出した突出部とを含む。当該一方の長辺Ea及び突出部の輪郭Ebの形状が、切断線CL1に対応している。
【0055】
パンチP2Aは、ダイD2Aと一対一で対応するように、ダイD2Aのダイ孔D2aの上方に配置されている。パンチP2Aは、上方から見て、ダイD2Aのダイ孔D2aと対応する形状を呈している。パンチP2Aは、上方から見て、略矩形状を呈する中央部と、中央部の一方の長辺Qa(
図13の左側の長辺)から外方に突出した突出部とを含む。
【0056】
パンチP2Aの一方の長辺Qa及び突出部の輪郭Qbは、ダイD2Aのダイ孔D2aの一方の長辺Ea及び突出部の輪郭Ebの外方に位置している。すなわち、上方から見て、パンチP2Aのうち一方の長辺Qa及び突出部の輪郭Qbを構成する部分は、ダイD2Aのダイ孔D2aのうち一方の長辺Ea及び突出部の輪郭Ebを構成する部分と重なり合っている。そのため、
図14に示されるように、パンチP2AとダイD2Aのダイ孔D2aとの重複部分には、逆クリアランスH1が存在している。逆クリアランスH1の大きさは、例えば、打抜部材W(金属板MS)の板厚の1%~2%程度であってもよい。あるいは、打抜部材W(金属板MS)の板厚が0.50mm程度である場合には、逆クリアランスH1の大きさは、例えば、5μm~10μm程度であってもよい。
【0057】
パンチP2AとダイD2Aのダイ孔D2aとによって金属板MSが切り曲げ加工されると、
図14に示されるように、切り曲げ片MSaと、金属板MSのうち切り曲げ片MSaに対応する部分である母材部MSbとが形成される。切り曲げ片MSaは、プッシュバックプレートUa及び付勢部材Ubによって、母材部MSbに部分的に圧入される(不完全プッシュバック加工)。切り曲げ片MSa及び母材部MSbの各端面の大部分には、剪断面SAが形成される。
【0058】
ユニットU2は、
図15及び
図16示されるように、プッシュバックプレートUaと、付勢部材Ubと、ダイD2Bと、パンチP2Bとを含む。プッシュバックプレートUaは、ダイD2Bのダイ孔D2a内に配置されており、付勢部材Ubによって上方に向けて付勢されている。
【0059】
ダイD2Bのダイ孔D2aは、
図15に示されるように、ダイD2Aのダイ孔D2aと同様の形状を呈している。すなわち、ダイD2Bのダイ孔D2aは、上方から見て、略矩形状を呈する中央部と、中央部の一方の長辺Ec(
図15の左側の長辺)から外方に突出した突出部とを含む。当該一方の長辺Ec及び突出部の輪郭Edの形状が、切断線CL1に対応している。
【0060】
パンチP2Bは、ダイD2Bと一対一で対応するように、ダイD2Bのダイ孔D2aの上方に配置されている。パンチP2Bは、上方から見て、ダイD2Bのダイ孔D2aと対応する形状を呈している。パンチP2Bは、上方から見て、略矩形状を呈する中央部と、中央部の一方の長辺Qc(
図15の左側の長辺)から外方に突出した突出部とを含む。
【0061】
パンチP2Bの一方の長辺Qc及び突出部の輪郭Qdは、ダイD2Aのダイ孔D2aの一方の長辺Ec及び突出部の輪郭Edの内側に位置している。そのため、
図16に示されるように、パンチP2BとダイD2Bのダイ孔D2aとの離間部分には、正クリアランスH2が存在している。正クリアランスH2の大きさは、例えば、打抜部材W(金属板MS)の板厚の1%~2%程度であってもよい。あるいは、打抜部材W(金属板MS)の板厚が0.50mm程度である場合には、正クリアランスH2の大きさは、例えば、5μm~10μm程度であってもよい。
【0062】
パンチP2BとダイD2Bのダイ孔D2aとの間で金属板MSが切り曲げ加工されると、
図15に示されるように、切り曲げ片MSc(別の切り曲げ片)と、金属板MSのうち切り曲げ片MScに対応する部分である母材部MSdとが形成される。切り曲げ片MScは、プッシュバックプレートUa及び付勢部材Ubによって、母材部MSdに部分的に圧入される(不完全プッシュバック加工)。切り曲げ片MScの端面には、上から下に向かう順に、破断面SB及び剪断面SAが形成される。母材部MSdの端面には、上から下に向かう順に、剪断面SA及び破断面SBが形成される。
【0063】
次に、上述した第5の打抜ユニットの構成について、
図18及び
図19を参照して、より詳細に説明する。ダイD5は、鉛直方向に沿って延びる中心軸周りに回転可能となるように、ダイプレート143に保持されている。ダイD5を保持する回転ホルダ171がダイプレート143に設けられており、回転ホルダ171を回転駆動させる駆動機構172が回転ホルダ171に接続されていてもよい。
【0064】
駆動機構172は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、ダイD5の中心軸周りにダイD5を回転させる。そのため、金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wが、先行して打ち抜かれた打抜部材W上に積み重ねられた後に、ダイD5が所定角度回転することで、後続の打抜部材Wが先行する打抜部材Wに対して転積される。駆動機構172は、例えば、回転モータ、歯車、タイミングベルト等の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0065】
排出孔C5内には、駆動機構173と、シリンダ174と、プッシャ175とが配置されている。駆動機構173は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、シリンダ174を上下方向に駆動するように構成されている。
【0066】
シリンダ174は、パンチP5によって金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wを支持するように構成されている。これにより、打ち抜かれた打抜部材Wの落下が防止される。シリンダ174は、例えば、シリンダ174上に打抜部材Wが積み重ねられるごとに間欠的に下方に移動するように、駆動機構173によって駆動されてもよい。シリンダ174上において打抜部材Wが所定枚数まで積層され、固定子積層鉄心1が形成されると、シリンダ174は、その表面がコンベアCvの表面と同一高さとなる位置まで降下するように、駆動機構173によって駆動されてもよい(
図19参照)。
【0067】
プッシャ175は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、シリンダ174上の固定子積層鉄心1をコンベアCvに払い出すように構成されている。コンベアCvに払い出された固定子積層鉄心1は、焼鈍炉200に搬送されて、加熱処理される。
【0068】
ところで、
図17に示されるように、ストリッパ152に複数の開口部Vが形成されていてもよい。開口部Vは、貫通孔であってもよいし、非貫通の凹部であってもよい。開口部Vは、第2の打抜ユニットにおいて金属板MSが不完全プッシュバック加工された部位がダイプレート143及びストリッパ152によって挟持され、切り曲げ片MSa,MScが母材部MSb,MSdに完全に圧入されるのを防ぐように構成されていてもよい。すなわち、第2の打抜ユニットにおいて金属板MSが不完全プッシュバック加工されてから、第5の打抜ユニットにおいて金属板MSから打抜部材Wが打ち抜かれるまで、金属板MSが間欠的に順送りされる際に、パンチホルダ151が下死点に至るタイミングで当該部位とストリッパ152とが重なり合う箇所に、複数の開口部Vが設けられていてもよい。この場合、ダイプレート143及びストリッパ152によって金属板MSが挟持される際に、当該部位が開口部V内に位置することとなる。なお、複数の開口部Vは、ダイプレート143に形成されていてもよいし、ダイプレート143及びストリッパ152の双方に形成されていてもよい。
【0069】
[固定子積層鉄心の製造方法]
続いて、
図20~
図22を参照して、固定子積層鉄心1の製造方法について説明する。
【0070】
金属板MSが送出装置120によって間欠的にプレス加工装置130に送り出され、金属板MSの所定部位が第1の加工ユニットに到達すると、プレス機160が動作して、上型150を下型140に向けて下方に押し出す。ストリッパ152が金属板MSに到達して、ストリッパ152とダイプレート143とで金属板MSが挟持された後も、プレス機160が上型150を下方に向けて押し出す。
【0071】
このとき、ストリッパ152は移動しないが、パンチホルダ151及びパンチP1~P5は引き続き降下する。そのため、パンチP1の先端部は、ストリッパ152の各貫通孔内を下方に移動し、さらにダイD1のダイ孔D1a近傍まで到達する。この過程で、パンチP1が金属板MSをダイD1のダイ孔D1aに沿って打ち抜く。これにより、複数の貫通孔R1及び複数の貫通孔R2が金属板MSに形成される(
図20の位置X1参照)。
【0072】
複数の貫通孔R1は、打抜部材WのスロットW5に対応する形状を呈しており、全体として円形を呈するように並んでいる。複数の貫通孔R2は、矩形状を呈しており、全体として円形を呈するように並んでいる。貫通孔R2は、貫通孔R1の径方向外方に位置している。打ち抜かれた廃材は、排出孔C1から排出される。その後、プレス機160が動作して、上型150を上昇させる。
【0073】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位が第2の加工ユニットに到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP2及びダイD2による金属板MSの切り曲げ加工及び不完全プッシュバック加工が行われる。これにより、貫通孔R1と貫通孔R2との間に切断線CL1,CL2が形成される(
図20の位置X2参照)。
【0074】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位が第3の加工ユニットに到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP3及びダイD3による金属板MSの打抜加工又は半抜加工が行われる。これにより、金属板MSの所定箇所に複数のカシメ部4が形成される(
図21の位置X3参照)。打ち抜かれた廃材は、排出孔C3から排出される。
【0075】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位が第4の加工ユニットに到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP4及びダイD4による金属板MSの打抜加工が行われる。これにより、円形状を呈する貫通孔R3が形成される(
図21の位置X4参照)。打ち抜かれた廃材は、排出孔C4から排出される。
【0076】
貫通孔R3は、打抜部材Wの貫通孔Waに対応する形状を呈しており、複数の貫通孔R1の内側と部分的に重なり合っている。そのため、貫通孔R3が貫通孔R1と連通することにより、複数のティース片W3が形成される。
【0077】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位が第5の加工ユニットに到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP5及びダイD5による金属板MSの打抜加工が行われる。これにより、打抜部材Wが形成される(
図22の位置X5参照)。
【0078】
打ち抜かれた打抜部材Wは、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対してダイ孔D5a内において積層されつつ、カシメ部4によって相互に締結される。このとき、打抜部材Wの転積を行うために、パンチP5による金属板MSの打抜加工が行われる前に、コントローラCtrが駆動機構172に指示して、ダイ孔D5a内の打抜部材Wと共にダイD5を所定角度回転させてもよい。6つの切断線CL1及び6つの切断線CL2が設けられると共に、切断線CL1,CL2が周方向において交互に並ぶ打抜部材Wを転積する場合、転積の角度は、例えば、30°であってもよいし、60°であってもよいし、90°であってもよい。この場合、固定子積層鉄心1のいずれの切断線群Gについても、積層方向において切断線CL1と切断線CL2とが交互に出現する。
【0079】
ダイ孔D5a内において、所定枚数の打抜部材Wが積層されると、固定子積層鉄心1が形成される(
図18参照)。固定子積層鉄心1は、プッシャ175によってコンベアCvに払い出され、焼鈍炉200に搬送される。その後、固定子積層鉄心1が焼鈍炉200において加熱処理されると、打抜部材Wから歪みが除去され、固定子積層鉄心1が完成する。
【0080】
[作用]
以上の例によれば、端面S1a,S1bが完全に重なり合わず、且つ、端面12a,S1bが剪断面SAにおいて互いに部分的に当接するように、隣り合う一のヨーク片W2a及び他のヨーク片W2a同士が切断線CL1を介して部分的に仮接続されている。また、端面S2a,S2bが完全に重なり合わず、且つ、端面S2a,S2bが剪断面SAにおいて互いに部分的に当接するように、隣り合う一のヨーク片W2a及び他のヨーク片W2a同士が切断線CL2を介して部分的に仮接続されている。換言すれば、隣り合う一のヨーク片W2a及び他のヨーク片W2aの間に段差が形成されている。この場合、特許文献1の分割型積層鉄心と比較して、隣り合う一のヨーク片W2a及び他のヨーク片W2a同士の締結力が小さくなる。そのため、鉄心片6同士をより小さな力で個片化することが可能となる。
【0081】
以上の例によれば、段差の大きさは、打抜部材Wの板厚の10%~40%に設定されうる。この場合、鉄心片6同士を個片化するための外力を固定子積層鉄心1に積極的に加えなければ、固定子積層鉄心1の形状が維持される傾向にある。そのため、鉄心片6同士の締結力を小さくしつつ、鉄心片6同士が意図せず不意に個片化されてしまうことを抑制できる。
【0082】
以上の例によれば、端面S1a,S1bは、ほぼ剪断面SAによって構成されている。破断面SBは比較的凹凸が激しいのに対して、剪断面SAは比較的平滑であるので、端面S1a,S1bにおける鉄心片6同士の締結力が比較的小さくなる。そのため、鉄心片6同士をさらに小さな力で個片化することが可能となる。
【0083】
以上の例によれば、ダイプレート143及びストリッパ152の少なくとも一方に開口部Vが形成されうる。パンチホルダ151が下死点に至るタイミング(ダイプレート143及びストリッパ152によって金属板MSが挟持されるタイミング)において、第2の打抜ユニットにおいて金属板MSが不完全プッシュバック加工された部位が開口部V内に配置されうる。この場合、金属板MSの加工に際して、金属板MSのうち当該部位以外の領域が、ダイプレート143及びストリッパ152で挟持される。そのため、金属板MSの加工時における金属板MSのずれを抑制しつつ、切り曲げ片MSa,MScの母材部MSb,MSdに対する不完全な圧入状態を維持することが可能となる。
【0084】
以上の例によれば、パンチP2Aの一方の長辺Qa及び突出部の輪郭Qbは、ダイD2Aのダイ孔D2aの一方の長辺Ea及び突出部の輪郭Ebの外方に位置していてもよい。すなわち、パンチP2Aのうち一方の長辺Qa及び突出部の輪郭Qbを構成する部分は、上方から見たときに、ダイD2Aのダイ孔D2aのうち一方の長辺Ea及び突出部の輪郭Ebを構成する部分と重なり合うオーバーラップ部を構成している。そのため、切り曲げ加工により切り曲げ片MSa及び母材部MSbが形成されると、切り曲げ片MSa及び母材部MSbの各端面のうちオーバーラップ部に対応する箇所がほぼ剪断面SAとなる。破断面SBと比較して剪断面SAは平滑であるので、当該箇所同士の締結力が小さくなる傾向にある。したがって、切断線CL1において打抜部材Wをより小さな力で個片化することが可能となる。
【0085】
以上の例によれば、切断線CL1,CL2が重なり合うように、複数の打抜部材Wを積層している。この場合、積層方向において、比較的締結力が小さい切断線CL1と、比較的締結力が大きい切断線CL2とが一列に並んだ切断線群Gが固定子積層鉄心1に構成される。そのため、切断線CL1,CL2の重なり合いの数を調節することにより、切断線群Gにおける締結力が変化する。したがって、固定子積層鉄心1を切断線群Gにおいて個片化するのに要する力をコントロールすることが可能となる。
【0086】
以上の例によれば、複数の打抜部材Wが積層されて固定子積層鉄心1が形成された後に、固定子積層鉄心1が焼鈍炉200において加熱処理されうる。焼鈍の際の打抜部材Wの熱膨張により、隣り合うヨーク片W2aの端面同士の締結力が大きくなることがある。しかしながら、上述のとおり、切り曲げ片MSa及び母材部MSbの各端面のうち、不完全プッシュバック加工された箇所又はオーバーラップ部に対応する箇所の締結力が小さくなっているので、焼鈍を経た後でも、切断線CL1において打抜部材Wをより小さな力で個片化することが可能となる。
【0087】
以上の例によれば、複数の打抜部材Wが転積されて固定子積層鉄心1が形成されうる。この場合、締結力の異なる複数種類の切断線CL1,CL2を一つの打抜部材Wに設けておき、当該打抜部材Wを適宜転積することにより、積層方向において重なり合う切断線CL1,CL2の種類を調節できる。そのため、打抜部材Wの種類を増やすことなく、固定子積層鉄心1を切断線群Gにおいて個片化するのに要する力をコントロールすることが可能となる。
【0088】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0089】
(1)以上の例では、隣り合う一のヨーク片W2a及び他のヨーク片W2a同士が、不完全プッシュバック加工により、切断線CL1,CL2を介して部分的に仮接続されていた。しかしながら、いずれかの切断線CL1,CL2において、隣り合うヨーク片W2a同士が完全にプッシュバックされてもよい。すなわち、いずれかの切断線CL1,CL2において、隣り合うヨーク片W2a同士の間に段差が存在していなくてもよい。この場合、ダイプレート143又はストリッパ152に形成される開口部Vの数を適宜減らしてもよい。
【0090】
(2)端面S1a,S1bは、剪断面SA及び破断面SBによって構成された領域と、ほぼ剪断面SAによって構成された領域とを含んでいてもよい。この場合、パンチのうち切断線に対応する外形の少なくとも一部が、ダイ孔の輪郭よりも外方に位置していてもよい。
【0091】
(3)少なくとも一つの切断線が、逆クリアランスH1を有するダイ及びパンチによって形成されていてもよい。全ての切断線が、逆クリアランスH1を有するダイ及びパンチによって形成されていてもよい。これらの場合、ダイ及びパンチの一部に逆クリアランスH1が存在していてもよいし、ダイ及びパンチの全体に逆クリアランスH1が存在していてもよい。
【0092】
(4)少なくとも一つの切断線が、正クリアランスH2を有するダイ及びパンチによって形成されていてもよい。全ての切断線が、正クリアランスH2を有するダイ及びパンチによって形成されていてもよい。
【0093】
(5)少なくとも一つの切断線が、クリアランスが略0mmに設定されたダイ及びパンチによって形成されていてもよい。全ての切断線が、クリアランスが略0mmに設定されたダイ及びパンチによって形成されていてもよい。
【0094】
(6)積層方向に並ぶ複数の切断線は、その全てが積層方向において重なり合っていなくてもよい。
【0095】
(7)以上の例では、上方から見たときに、切断線が凹凸形状を呈していたが、切断線がヨーク材W2の径方向に沿って延びる線分と、ヨーク材W2の周方向に沿って延びる線分とを含んでいれば、クランク状、階段状等の他の形状を呈していてもよい。各線分は、直線状、曲線状、弧状等の種々の形状を呈していてもよい。例えば、
図4において、少なくとも一方の角部が直線状に切り欠かれてもよい(例えば、台形状等であってもよい)し、少なくとも一方の角部が弧状(例えば円弧状)に切り欠かれてもよい。
【0096】
(8)以上の例では、内側に回転子が配置されるインナーロータタイプの固定子積層鉄心1について説明したが、外側に回転子が配置されるアウターロータタイプの固定子積層鉄心にも本技術を適用してもよい。
【0097】
(9)固定子積層鉄心1のみならず、回転子積層鉄心に本技術を適用してもよい。
【0098】
[他の例]
例1.分割型積層鉄心の一例は、環状を呈する金属板材が複数積層されて構成されていてもよい。金属板材は、その周方向において並び且つ所定の切断線によって分割された第1の分割片及び第2の分割片を含んでいてもよい。第1の分割片の第1の端面に形成されている剪断面と第2の分割片の第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接し、且つ、第1の端面と第2の端面とが完全には重なり合わないように、第1の端面及び第2の端面の境界によって構成される切断線を介して第1の分割片と第2の分割片とが仮接続されていてもよい。この場合、第1の分割片と第2の分割片とは、切断線を介して部分的に仮接続されている。そのため、第1の端面と第2の端面とが完全には重なり合っている特許文献1の分割型積層鉄心と比較して、第1の分割片と第2の分割片との締結力が小さくなっている。したがって、第1の分割片と第2の分割片とをより小さな力で個片化することが可能となる。
【0099】
例2.例1の鉄心において、第1の分割片の端部と第2の分割片の端部との間には段差が形成されていてもよい。この場合、例1の鉄心と同様の作用効果が得られる。
【0100】
例3.分割型積層鉄心の他の例は、環状を呈する金属板材が複数積層されて構成されていてもよい。金属板材は、その周方向において並び且つ所定の切断線によって分割された第1の分割片及び第2の分割片を含んでいてもよい。第1の分割片の第1の端面に形成されている剪断面と第2の分割片の第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接するように、第1の端面及び第2の端面の境界によって構成される切断線を介して第1の分割片と第2の分割片とが仮接続されていてもよい。第1の分割片の端部と第2の分割片の端部との間には段差が形成されていてもよい。この場合、例1の鉄心と同様の作用効果が得られる。
【0101】
例4.例3の鉄心において、第1の端面に形成されている剪断面と第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接し、且つ、第1の端面と第2の端面とが完全には重なり合わないように、第1の端面及び第2の端面の境界によって構成される切断線を介して第1の分割片と第2の分割片とが仮接続されていてもよい。この場合、例1の鉄心と同様の作用効果が得られる。
【0102】
例5.例2~例4のいずれかの鉄心において、段差の大きさは金属板材の板厚の10%~40%であってもよい。この場合、第1の分割片と第2の分割片とを個片化するための外力を積極的に積層体に加えなければ、積層体の形状が維持される傾向にある。そのため、第1の分割片と第2の分割片との締結力を小さくしつつ、第1の分割片と第2の分割片とが意図せず不意に個片化されてしまうことを抑制できる。
【0103】
例6.例1~例5のいずれかの鉄心において、第1の端面及び第2の端面はそれぞれ、ほぼ全域が剪断面である領域を含んでいてもよい。破断面は比較的凹凸が激しいのに対して、剪断面は比較的平滑であるので、第1の端面及び第2の端面における分割片同士の締結力が比較的小さくなる。そのため、第1の分割片と第2の分割片とをさらに小さな力で個片化することが可能となる。
【0104】
例7.分割型積層鉄心の製造方法の一例は、金属板の所定の部位を所定の切断線に沿って切り曲げ加工して、第1の端面を含む切り曲げ片と、第1の端面に対応する第2の端面を含む母材部とを形成することを含んでいてもよい。当該方法の一例は、切り曲げ片を母材部に対して部分的にプッシュバック加工して、第1の端面に形成されている剪断面と第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接し、且つ、第1の端面と第2の端面とが完全には重なり合わないように、第1の端面及び第2の端面の境界によって構成される切断線を介して切り曲げ片と母材部とを仮接続することをさらに含んでいてもよい。当該方法の一例は、またさらに、切り曲げ片を母材部に完全に圧入することなく、部位を含むように金属板を打ち抜き加工して、環状を呈する複数の金属板材を形成することと、複数の金属板材を積層して積層体を形成することとを含んでいてもよい。この場合、例1の鉄心と同様の作用効果が得られる。
【0105】
例8.例7の方法において、プッシュバック加工することは、切り曲げ片と母材部との間に段差を形成するように、切り曲げ片と母材部とを仮接続することを含んでいてもよい。この場合、例1の鉄心と同様の作用効果が得られる。
【0106】
例9.分割型積層鉄心の製造方法の他の例は、金属板の所定の部位を所定の切断線に沿って切り曲げ加工して、第1の端面を含む切り曲げ片と、第1の端面に対応する第2の端面を含む母材部とを形成することを含んでいてもよい。当該方法の他の例は、切り曲げ片を母材部に対して部分的にプッシュバック加工して、第1の端面に形成されている剪断面と第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接し、且つ、切り曲げ片と母材部との間に段差を形成するように、第1の端面及び第2の端面の境界によって構成される切断線を介して切り曲げ片と母材部とを仮接続することをさらに含んでいてもよい。当該方法の他の例は、またさらに、切り曲げ片を母材部に完全に圧入することなく、部位を含むように金属板を打ち抜いて、環状を呈する複数の金属板材を形成することと、複数の金属板材を積層して積層体を形成することとを含んでいてもよい。この場合、例1の鉄心と同様の作用効果が得られる。
【0107】
例10.例9の方法において、プッシュバック加工することは、第1の端面に形成されている剪断面と第2の端面に形成されている剪断面とが互いに当接し、且つ、第1の端面と第2の端面とが完全には重なり合わないように、第1の端面及び第2の端面の境界によって構成される切断線を介して切り曲げ片と母材部とを仮接続することを含んでいてもよい。この場合、例1の鉄心と同様の作用効果が得られる。
【0108】
例11.例8~例10のいずれかの方法において、金属板の各加工に際して金属板を挟持するように構成された一対の挟持部材の少なくとも一方に開口部が形成されていてもよい。一対の挟持部材によって金属板が挟持されるときに、仮接続された切り曲げ片及び母材部が開口部内に配置されていてもよい。この場合、金属板の加工に際して、金属板のうち、仮接続された切り曲げ片及び母材部以外の領域が、一対の挟持部材で挟持される。そのため、金属板の加工時における金属板のずれを抑制しつつ、切り曲げ片の母材部に対する不完全な圧入状態を維持することが可能となる。
【0109】
例12.例8~例11のいずれかの方法において、切り曲げ加工することは、ダイに設けられたダイ孔に向けてパンチを進出させることにより、金属板をパンチでダイ孔に対して部分的に押し込むことを含んでいてもよい。パンチの進出方向から見て、パンチのうち切断線に対応する外形の少なくとも一部が、ダイ孔の輪郭よりも外方に位置していてもよい。この場合、パンチ及びダイはそれぞれ、パンチの進出方向から見て、パンチとダイとが部分的に重なり合うオーバーラップ部を含む。そのため、切り曲げ加工により切り曲げ片及び母材部が形成されると、第1の端面及び第2の端面のうちオーバーラップ部に対応する箇所がほぼ剪断面となる。これにより、例6の鉄心と同様の作用効果が得られる。
【0110】
例13.例8~例12のいずれか方法において、積層体を形成することの後に、積層体を焼鈍することをさらに含んでいてもよい。焼鈍は、積層体を構成する金属板材の内部に残留している歪みを除去するための処理である。焼鈍時の加熱により金属板材が熱膨張するので、切断線を介して仮接続されている第1の端面及び第2の端面同士の締結力が大きくなることがある。しかしながら、例8又は例10のように、切り曲げ片が母材部に対して部分的にプッシュバック加工(不完全プッシュバック加工)された箇所の締結力が小さくなっているので、焼鈍を経た後でも、切断線において金属板材をより小さな力で個片化することが可能となる。
【符号の説明】
【0111】
1…固定子積層鉄心(分割型積層鉄心、積層体)、2…ヨーク、100…固定子積層鉄心の製造装置、130…プレス加工装置、143…ダイプレート(挟持部材)、152…ストリッパ(挟持部材)、200…焼鈍炉、CL1…切断線(切断線、別の切断線)、CL2…切断線(別の切断線)、Ctr…コントローラ(制御部)、D2…ダイ、D2a…ダイ孔(ダイ孔、別のダイ孔)、D2A…ダイ、D2B…ダイ(別のダイ)、G…切断線群、MS…金属板、MSa…切り曲げ片、MSb…母材部、MSc…切り曲げ片(別の切り曲げ片)、P2A…パンチ、P2B…パンチ(別のパンチ)、S1a…端面(第1の端面)、S1b…端面(第2の端面)、SA…剪断面、SB…破断面、U1,U2…ユニット、V…開口部、W…打抜部材(金属板材、別の金属板材)、W2…ヨーク材、W2a…ヨーク片(第1の分割片、第2の分割片)。