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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】部品実装システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20241017BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H05K13/08 D
H05K13/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020182777
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073028
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 勇太
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴紘
(72)【発明者】
【氏名】西田 賢志郎
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-103411(JP,A)
【文献】特開2006-214820(JP,A)
【文献】特開2007-335524(JP,A)
【文献】国際公開第2022/180663(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して前記基板に部品を実装する部品実装機が、前記基板の搬送方向に沿ってn台(nは2以上の整数)配置された部品実装ラインと、
前記部品実装機ごとに設けられ、前記部品実装機で保持する前記基板の画像を撮像する撮像装置と、
前記基板が前記搬送方向の上流側からk番目(kは1以上(n-1)以下の整数)の前記部品実装機から(k+1)番目の前記部品実装機に搬送される前の搬送前画像及び前記基板が前記搬送方向の上流側からk番目の前記部品実装機から(k+1)番目の前記部品実装機に搬送された後の搬送後画像を入力し、前記搬送前画像及び前記搬送後画像を利用して、k番目及びk番目よりも上流に配置された前記部品実装機によって実装された前記部品の少なくとも一部の搬送の前後での位置のずれ量を求めると共に、前記位置のずれ量が位置ずれ許容範囲を超えたならば、k番目の前記部品実装機から(k+1)番目の前記部品実装機へのk番目の搬送過程で不具合が発生したと判定する不具合判定を行う制御装置と、
を備え、前記制御装置は、前記搬送前画像と前記搬送後画像の差分画像を取得し、前記差分画像に基づいて前記不具合判定を行う部品実装システム。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装システムであって、
前記部品実装ラインよりも前記搬送方向の下流側に設けられ、n番目の前記部品実装機から搬送された前記基板上の前記部品のそれぞれにつき予め定めた目標位置からのずれが外観検査許容範囲に収まっているか否かを判定する外観検査装置
を備え、
前記制御装置は、前記外観検査装置において前記外観検査許容範囲を超えたと判定されたならば、1番目から(n-1)番目の搬送過程にそれぞれについて前記不具合判定を行う、
部品実装システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の部品実装システムであって、
前記k番目の搬送過程の前記不具合判定を行うタイミングを任意に設定するタイミング設定装置
を備えた部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に対して部品を実装する複数の実装機が基板の搬送方向に沿って配置された部品実装ラインにおいて、部品が適切な位置に実装されない事態(以下、位置ずれと称する)が発生した際に、原因を特定する方法が知られている。例えば、特許文献1には、各実装機に設けられたカメラで基板の画像を撮像し、各カメラで撮像した画像と基板に部品が適切に実装された際のマスターデータとの相違点を検出し、位置ずれの発生原因を特定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-103411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の方法を用いて、下流側の部品実装機へ基板を搬送する搬送過程に位置ずれの原因があると特定するまでには、以下のような処理を行う必要がある。具体的には、まず、下流側の部品実装機に基板が搬送される前の画像を撮像し、搬送前の画像とそれに対応するマスターデータとを比較し、相違点が検出されていないことを確認する。そして、下流側に配置された実装機に搬送されたあとの基板の画像を撮像し、搬送後の画像とそれに対応するマスターデータとの比較を行い、相違点を検出されたことを確認する。すなわち、搬送前の画像及び搬送後の画像のそれぞれをマスターデータと比較する必要があり、効率的に位置ずれの原因の特定を行うことができなかった。
【0005】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、部品を実装した後に、基板を下流側の部品実装機へ搬送する搬送過程で位置ずれが発生している場合において、位置ずれの原因の特定を効率的に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の部品実装システムは、
基板を保持して前記基板に部品を実装する部品実装機が、前記基板の搬送方向に沿ってn(nは2以上の整数)台配置された部品実装ラインと、
前記部品実装機ごとに設けられ、前記部品実装機で保持する前記基板の画像を撮像する撮像装置と、
前記基板が前記搬送方向の上流側からk番目(kは1以上(n-1)以下の整数)の前記部品実装機から(k+1)番目の前記部品実装機に搬送される前の搬送前画像及び前記基板が前記搬送方向の上流側からk番目の前記部品実装機から(k+1)番目の前記部品実装機に搬送された後の搬送後画像を入力し、前記搬送前画像及び前記搬送後画像を利用して、k番目及びk番目よりも上流に配置された前記部品実装機によって実装された前記部品の少なくとも一部の搬送の前後での位置のずれ量を求めると共に、前記位置のずれ量が位置ずれ許容範囲を超えたならば、k番目の前記部品実装機から(k+1)番目の前記部品実装機へのk番目の搬送過程で不具合が発生したと判定する不具合判定を行う制御装置と、
を備えたものである。
【0007】
この部品実装装システムでは、制御装置は、基板が搬送方向の上流側からk番目の部品実装機から(k+1)番目の部品実装機に搬送される前の搬送前画像及び基板が搬送方向の上流側からk番目の部品実装機から(k+1)番目の部品実装機に搬送された後の搬送後画像を入力する。また、制御装置は、搬送前画像及び搬送後画像を利用して、k番目及びk番目よりも上流に配置された部品実装機によって実装された部品の少なくとも一部の搬送の前後での位置のずれ量を求める。更に、制御装置は、位置のずれ量が位置ずれ許容範囲を超えたならば、k番目の部品実装機から(k+1)番目の部品実装機へ搬送するk番目の搬送過程で不具合が発生したと判定する。すなわち、搬送方向の上流側に位置する部品実装機で撮像された画像と下流側に位置する部品実装機で撮像された画像とを比較することにより、搬送過程に不具合が発生したか否かを判定する。そのため、不具合が発生した搬送過程を特定するにあたり、搬送前の画像及び搬送後の画像をマスターデータと比較する必要はない。よって、ずれ量が位置ずれ許容範囲を超過する事態が、不具合が発生した搬送過程に起因したものであるという原因特定を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】部品実装システム1の概略構成を示す斜視図。
図2】部品実装機10の外観斜視図。
図3】制御装置60と管理装置80との電気的な接続関係を示すブロック図。
図4】部品実装ルーチンの一例を示すフローチャート。
図5】部品実装機10で部品を実装する様子を示す図。
図6】目標実装位置データ95の一例を示す図。
図7】不具合判定ルーチンの一例を示すフローチャート。
図8】搬送前画像Im1の一例を示す図。
図9】搬送後画像Im2の一例を示す図。
図10】搬送後画像Im2の一例を示す図。
図11】検査結果90の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本開示の発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の部品実装システム1の概略を示す構成図である。図2は、部品実装機10の外観斜視図、図3は、制御装置60と管理装置80との電気的な接続関係を示すブロック図である。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、図1,2に示した通りとする。
【0010】
部品実装システム1は、図1に示すように、印刷機2と、印刷検査機3と、部品実装ライン12と、外観検査装置13と、システム全体を管理する管理装置80と、を備える。印刷機2は、基板S上にはんだを印刷して回路パターンを形成する。印刷検査機3は、印刷機2で印刷されたはんだの状態を検査する。複数の部品実装機10は、部品を基板Sに実装する実装動作を行なうと共に基板Sに部品が実装されたか否かの実装検査を行なう。印刷機2と印刷検査機3と部品実装ライン12と外観検査装置13とは、基板Sの搬送方向(左から右へ向かう方向)に並べて設置されて生産ラインを構成する。
【0011】
部品実装ライン12は、図1に示すように、基板Sの搬送方向(X軸方向)に沿って配置されたn台(nは2以上の整数、ここでは5台)の部品実装機10を有する。部品実装機10は、図2に示すように、部品を供給する部品供給装置21と、基板Sを搬送する基板搬送装置22と、部品を吸着する吸着ノズルを有するヘッド40と、ヘッド40をX軸方向及びY軸方向に移動させるヘッド移動装置30と、実装機全体をコントロールする制御装置60(図3参照)と、を備える。また、部品実装機10は、これらの他に、吸着ノズルに吸着させた部品の吸着姿勢を撮像するためのパーツカメラ23や、交換用の吸着ノズルを収容するノズルステーション24、基板Sを撮像するためのマークカメラ43なども備えている。マークカメラ43は、下方が撮像領域であり、基板Sの基準位置や部品を配置する基準位置などを示す基板Sに付された基準マークM1,M2を読み取るカメラである。なお、部品実装ライン12に配置されたn台の部品実装機10について、基板Sの搬送方向の上流から順に、1番目の部品実装機10、2番目の部品実装機10、…、n番目の部品実装機10と称することとする。
【0012】
外観検査装置13は、部品実装ライン12の下流側に配置されている。外観検査装置13は、図示しないカメラでn番目の部品実装機10から搬送されてきた基板Sを上方から撮像し、撮像した画像に基づき基板S上の部品のそれぞれにつき、実際の実装位置と予め定めた目標実装位置とのずれ量が外観検査許容範囲に収まっているか否かを判定する、検査装置である。
【0013】
部品供給装置21は、例えば、所定間隔で部品を収容したキャリアテープが巻回されたテープリールと、駆動モータの駆動によりテープリールからキャリアテープを引き出して部品供給位置まで送り出すテープ送り機構と、を備えるテープフィーダとして構成される。この部品供給装置21(テープフィーダ)は、部品実装機10が備える図示しないフィーダ台に着脱可能に取り付けられる。
【0014】
基板搬送装置22は、Y軸方向に間隔を空けて配置される一対のコンベアレールを備えており、一対のコンベアレールを駆動することにより基板Sを図1の左から右(搬送方向)へと搬送する。
【0015】
ヘッド移動装置30は、図2に示すように、一対のX軸ガイドレール31と、X軸スライダ32と、X軸アクチュエータ33(図3参照)と、一対のY軸ガイドレール35と、Y軸スライダ36と、Y軸アクチュエータ37(図3参照)と、を備える。一対のY軸ガイドレール35は、Y軸方向に互いに平行に延在するように筐体11の上段に設置される。Y軸スライダ36は、一対のY軸ガイドレール35に架け渡され、Y軸アクチュエータ37の駆動によりY軸ガイドレール35に沿ってY軸方向に移動する。一対のX軸ガイドレール31は、X軸方向に互いに平行に延在するようにY軸スライダ36の下面に設置される。X軸スライダ32は、一対のX軸ガイドレール31に架け渡され、X軸アクチュエータ33の駆動によりX軸ガイドレール31に沿ってX軸方向に移動する。X軸スライダ32にはヘッド40が取り付けられており、ヘッド移動装置30は、X軸スライダ32とY軸スライダ36とを移動させることで、ヘッド40をX軸方向とY軸方向とに移動させる。
【0016】
ヘッド40は、吸着ノズルをZ軸(上下)方向に移動させるZ軸アクチュエータ41(図3参照)と、吸着ノズルをZ軸周りに回転させるθ軸アクチュエータ42(図3参照)とを備える。ヘッド40は、吸着ノズルの吸引口に負圧源を連通させることで、吸引口に負圧を作用させて部品を吸着することができる。また、ヘッド40は、吸着ノズルの吸引口に正圧源を連通させることで、吸引口に正圧を作用させて部品の吸着を解除することができる。
【0017】
制御装置60は、図3に示すように、CPU61を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU61の他に、ROM62と、HDD63と、RAM64と、入出力インタフェース65とを備える。これらは、バス66を介して電気的に接続されている。制御装置60には、X軸スライダ32の位置を検知するX軸位置センサ34からの位置信号や、Y軸スライダ36の位置を検知するY軸位置センサ38からの位置信号、マークカメラ43からの画像信号、パーツカメラ23からの画像信号などが入出力インタフェース65を介して入力されている。一方、制御装置60からは、部品供給装置21への制御信号や、基板搬送装置22への制御信号、X軸アクチュエータ33への駆動信号、Y軸アクチュエータ37への駆動信号、Z軸アクチュエータ41への駆動信号、θ軸アクチュエータ42への駆動信号、パーツカメラ23への制御信号、マークカメラ43への制御信号などが入出力インタフェース65を介して出力されている。また、制御装置60は、管理装置80と双方向通信可能に接続されており、互いにデータや制御信号のやり取りを行っている。
【0018】
管理装置80は、例えば、汎用のコンピュータであり、図3に示すように、CPU81とROM82とHDD83(又はSSD)とRAM84と入出力インタフェース85などを備える。これらは、バス86を介して電気的に接続されている。この管理装置80には、マウスやキーボード等の入力デバイス87から入力信号が入出力インタフェース85を介して入力されている。管理装置80は、外観検査装置13と双方向通信可能に接続されている。また、管理装置80からは、ディスプレイ88への画像信号が入出力インタフェース85を介して出力されている。HDD83は、基板Sの生産ジョブを記憶している。ここで、基板Sの生産ジョブには、各部品実装機10においてどの部品をどの順番で基板Sへ実装するか、また、そのように部品を実装した基板Sを何枚作製するかなどの生産スケジュールが含まれる。管理装置80は、オペレータが入力デバイス87を介して入力したデータに基づいて生産ジョブを生成し、生成した生産ジョブを各部品実装機10へ送信することで、各部品実装機10に対して生産の開始を指示する。
【0019】
次に、こうして構成された本実施形態の部品実装システム1における部品実装機10の動作について、図4図6を用いて説明する。図4は部品実装ルーチンの一例を示すフローチャート、図5は部品実装機10で部品を実装する様子を示す図、図6は目標実装位置データ95の一例を示す図である。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)及び前後方向(Y軸)は、図5に示した通りとする(上下方向(Z軸)は、紙面垂直方向)。
【0020】
部品実装ルーチンは、1~n番目の部品実装機10のそれぞれに備えられた制御装置60のROM62に記憶されており、部品実装機10に基板Sが搬送されてくると開始される。部品実装ルーチンは、1~n番目の部品実装機10のそれぞれにおいて実行される。m番目(mは1~nのいずれかの整数)の部品実装機10のCPU61は、本ルーチンが開始されると、まず、搬送後画像Im2を撮像する(S100)。具体的には、CPU61は、マークカメラ43を制御して、部品実装機10に搬送された直後の状態、すなわち、図5に示す状態Aの基板Sの画像を撮像し、HDD63に記憶する。続いて、CPU61は、基板Sの位置を検出する(S110)。具体的には、搬送後画像Im2から基準マークM1,M2を検出して、基準マークM1,M2の位置に基づき基板Sの位置を検出する。
【0021】
続いて、CPU61は、搬送後画像Im2を管理装置80に出力する(S120)。すると、管理装置80のCPU81は、その搬送後画像Im2をm番目の部品実装機10と対応づけてHDD83に記憶する。
【0022】
続いて、CPU61は、基板Sに部品を実装する(S130)。具体的には、CPU81は、まず、HDD83に記憶された目標実装位置データ95から、部品P1~P4の基板Sに対する目標実装位置を取得する。ここで、目標実装位置データ95は、図6に示すように、基板Sを、基板Sの左前の角を原点OとするXY平面とした場合に、各部品の中心のX軸座標、各部品の中心のY軸座標、及び各部品の長辺とY軸に平行な線とがなす角度Q(図9参照)を、部品に対応付けて記憶させたデータである。そして、CPU81は、S110で取得した基板Sの位置に対して、目標実装位置データ95から取得した目標実装位置に部品P1~P4が実装されるように、ヘッド移動装置30及びヘッド40を制御する。
【0023】
続いて、CPU61は、搬送前画像Im1を撮像する(S140)。具体的には、CPU61は、マークカメラ43を制御して、搬送方向の下流側に搬送される直前の状態、すなわち、図5に示す状態Bの基板Sの画像を撮像し、HDD63に記憶する。
【0024】
続いて、CPU61は、搬送前画像Im1を管理装置80に出力する(S150)。すると、管理装置80のCPU81は、その搬送前画像Im1をm番目の部品実装機10と対応づけてHDD83に記憶する。その後、CPU61は、基板搬送装置22を制御して基板Sを下流側に搬送し(S160)、本ルーチンを終了する。
【0025】
次に、外観検査装置13の動作について説明する。外観検査装置13は、図示しないカメラでn番目の部品実装機10から搬送されてきた基板Sを上方から撮像し、撮像した画像に基づき基板S上の部品のそれぞれにつき、実際の実装位置と予め定めた目標実装位置とのずれが外観検査許容範囲に収まっているか否かを検査し、その検査結果を管理装置80に出力する。具体的には、外観検査装置13は、位置ずれが外観検査許容範囲を超えた部品があったならば検査に異常があった旨を管理装置80に出力し、そのような部品がなかったならば検査が良好だった旨を管理装置80に出力する。
【0026】
次に、管理装置80の動作について、図7図11を用いて説明する。図7は不具合判定ルーチンの一例を示すフローチャート、図8はk番目の搬送前画像Im1の一例を示す図、図9及び図10はk番目の搬送後画像Im2の一例を示す図、図11は検査結果90の一例を示す図である。
【0027】
不具合判定ルーチンは、管理装置80のROM82に記憶されている。本ルーチンは、外観検査装置13から検査に異常があった旨が入力されると、開始される。
【0028】
管理装置80のCPU81は、本ルーチンが開始されると、まず、kに初期値1をセットし(S200)、k番目の搬送過程の搬送前の位置ずれを演算する(S210)。具体的には、CPU81は、k番目の部品実装機10が管理装置80に入力した搬送前画像Im1において、基準マークM1,M2の位置に基づき基板Sの位置を検出する。続いて、CPU81は、基板S上の部品P1~P4のそれぞれについて、中心のX軸座標の値、中心のY軸座標の値及び角度Qを求める。このときの基板S上の部品P1~P4は、k番目の部品実装機10が実装した部品やk番目よりも上流に配置された部品実装機10が実装した部品である。次に、CPU81は、目標実装位置データ95から、部品P1~P4の目標実装位置のX軸座標の値、目標実装位置のY軸座標の値及び目標の角度Qを取得する。次に、CPU81は、基板S上の部品P1~P4のそれぞれについて、目標実装位置のX軸座標と実際の実装位置のX軸座標との差、目標実装位置のY軸座標と実際の実装位置のY軸座標との差及び目標の角度Qと実際の角度Qとの差(搬送前の位置ずれ)を算出する。そして、CPU81は、図11の搬送前の位置ずれ欄90aに示すように、部品と搬送前の位置ずれとを対応付けてHDD83に記憶する。
【0029】
続いて、CPU81は、k番目の搬送過程の搬送後の位置ずれを演算する(S220)。具体的には、CPU81は、(k+1)番目の部品実装機10が入力した搬送後画像Im2について、S210と同様の処理を行い、(k+1)番目の部品実装機10に搬送された後の基板S上の部品P1~P4のそれぞれについて、搬送後の位置ずれを求める。そして、CPU81は、図11の搬送後の位置ずれ欄90bに示すように、部品と搬送後の位置ずれとを対応付けてHDD83に記憶する。
【0030】
続いて、CPU81は、k番目の搬送過程の搬送前後の位置ずれ量を演算する(S230)。具体的には、CPU81は、部品P1~P4ごとに、S210で取得した搬送前の位置ずれとS220で取得した搬送後の位置ずれとの差を求めて、位置ずれ量(搬送前後でのX座標の値の差、Y座標の値の差及び角度Qの値の差)を取得する。そして、CPU81は、図11の位置ずれ量の欄90cに示すように、部品と位置ずれ量とを対応付けてHDD83に記憶する。k番目の搬送過程では、k番目の部品実装機10が実装した部品のほかk番目よりも上流に配置された部品実装機10が実装した部品も位置ずれを起こすことがあるが、S230ではこれらの部品の位置ずれ量を演算する。
【0031】
続いて、CPU81は、k番目の搬送過程に不具合が発生したか否かを判定する(S240)。具体的には、CPU81は、S230で取得した位置ずれ量のうち、X軸座標の値の差、Y軸座標の値の差及び角度Qの値の差のうち少なくとも1つが予め定めた位置ずれ許容範囲を超えたならば、k番目の搬送過程に不具合が発生したと判定する。例えば、k番目の搬送過程の搬送前画像Im1が図8に示すような画像であり、搬送後画像Im2が図9に示すような画像であり、搬送前後の位置ずれ量が図11に示すような値となっているならば、搬送の前後で部品P4の中心のX軸座標の値と、部品P4の角度Qとが予め定めた位置ずれ許容範囲を超えているとして、k番目の搬送過程に不具合が発生したと判定する。一方、S230で算出した位置ずれ量のうち、X軸座標の値の差、Y軸座標の値の差及び角度Qの値の差のいずれもが予め定めた位置ずれ許容範囲を超えていないならば、k番目の搬送過程に不具合は発生していないと判定する。例えば、k番目の搬送過程の搬送前画像Im1が図8に示すような画像であり、搬送後画像Im2が図10のような画像ならば、位置ずれ量が位置ずれ許容範囲内であるとして、k番目の搬送過程に不具合は発生していないと判定する。
【0032】
S240でk番目の搬送過程に不具合が発生したと判定したならば、CPU81は、k番目の搬送過程に不具合が発生した旨をHDD83に記憶する(S250)。その後、CPU81は、kの値を1インクリメントし(S260)、kがnに達したか否かを判定し(S270)、kがnに達していなければS210以降の処理を実行する。一方、S260でkがnに達していたならば、CPU81は不具合判定の結果をディスプレイ88に表示させ(S280)、本ルーチンを終了する。
【0033】
S250において、HDD83に不具合が発生した搬送過程が記憶されていた場合には、CPU81は何番目の搬送過程で不具合が発生したかをディスプレイ88に表示させる。一方、HDD83に不具合が発生した搬送過程が1つも記憶されていなかった場合には、CPU81は、いずれの搬送過程でも不具合が発生していなかった旨をディスプレイ88に表示させる。
【0034】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の部品実装システム1が本開示の部品実装システムに相当し、部品実装ライン12が部品実装ラインに相当し、部品実装機10が部品実装機に相当し、マークカメラ43が撮像装置に相当し、管理装置80が制御装置に相当する。また、外観検査装置13が外観検査装置に相当する。
【0035】
以上詳述した部品実装システム1では、管理装置80は、基板Sが搬送方向の上流側からk番目の部品実装機10から(k+1)番目の部品実装機10に搬送される前の搬送前画像Im1及び基板Sが搬送方向の上流側からk番目の部品実装機10から(k+1)番目の部品実装機10に搬送された後の搬送後画像Im2を入力する。また、管理装置80は、搬送前画像Im1及び搬送後画像Im2を利用して、k番目及びk番目よりも上流に配置された部品実装機10によって実装された部品P1~P4の搬送の前後での位置のずれ量を求める。更に、管理装置80は、位置のずれ量が位置ずれ許容範囲を超えたならば、k番目の部品実装機から(k+1)番目の部品実装機へ搬送するk番目の搬送過程で不具合が発生したと判定する。すなわち、搬送方向の上流側に位置する部品実装機10で撮像された画像と下流側に位置する部品実装機10で撮像された画像とを比較することにより、搬送過程に不具合が発生したか否かを判定する。そのため、不具合が発生した搬送過程を特定するにあたり、搬送前画像Im1及び搬送後画像Im2をマスターデータと比較する必要はない。よって、ずれ量が位置ずれ許容範囲を超過する事態が、不具合が発生した搬送過程に起因したものであるという原因特定を効率的に行うことができる。
【0036】
また、部品実装システム1では、部品実装ライン12よりも搬送方向の下流側に設けられ、n番目の部品実装機10から搬送された基板S上の部品のそれぞれにつき予め定めた目標位置からのずれ量が外観検査許容範囲に収まっているか否かを判定する外観検査装置13を備えており、管理装置80は、外観検査装置13において外観検査許容範囲を超えたと判定されたならば、1番目から(n-1)番目の搬送過程にそれぞれについて不具合判定を行う。そのため、外観検査装置13で外観検査許容範囲を超えた際に、搬送過程の不具合判定を行うことができる。よって、不具合の特定を行うことによる生産効率の低下を抑制することができる。
【0037】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば上述した実施形態では、搬送前画像Im1から搬送前の位置ずれを取得し、搬送後画像Im2から搬送後の位置ずれを取得し、搬送前の位置ずれと搬送後の位置ずれとの差から位置ずれ量を求め、位置ずれ量に基づいて不具合判定を行ったがこれに限られない。例えば、搬送前画像Im1と搬送後画像Im2の差分画像を取得し、差分画像に基づいて不具合判定を行ってもよい。こうすれば、基板S上の目標実装位置に対する各部品の実装位置のずれを求める必要がない。
【0039】
上述した実施形態では、不具合判定ルーチンは、外観検査装置13から、基板S上に実装された部品のそれぞれにつき、目標実装位置からの位置ずれが、予め定めた外観検査許容範囲を超えた旨の検査結果が入力されたときに開始されたがこれに限られない。例えば、部品実装システム1は、搬送過程の不具合判定を行うタイミングを任意に設定するタイミング設定装置を備えており、タイミング設定装置により不具合判定ルーチンが開始されるタイミングを任意に設定できるものとしてもよい。こうすれば、例えば、そのタイミングを部品実装ライン12の運転開始時に設定した時は、搬送過程で不具合が発生したか否かの確認を行ったうえで、運転を開始することができる。この場合、タイミング設定装置は管理装置80とは別の装置として設けられてもよいし、管理装置80がタイミング設定装置を兼ねていてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、部品実装ルーチンにおいて、搬送前画像の撮像(S140)及び搬送前画像の管理装置80への出力(S150)を常時行っていたがこれに限られない。例えば、外観検査装置13から、各部品実装機10で基板Sに実装した部品のそれぞれにつき、目標実装位置からの位置ずれが、予め定めた外観検査許容範囲を超えた旨の検査結果が入力されたときにのみ搬送前画像の撮像(S140)及び搬送前画像の管理装置80への出力(S150)を行うものとしてもよい。また、搬送後画像の管理装置80への出力(S120)についても、目標実装位置からの位置ずれが予め定めた外観検査許容範囲を超えた旨の検査結果が入力されたときにのみ行うものとしてもよい。
【0041】
上述した実施形態において、n番目の部品実装機10が搬送前画像Im1を管理装置80に出力し、外観検査装置13が搬送後画像Im2を管理装置80に出力するものとしてもよい。この場合、管理装置80は、S210~S240の処理を行い、n番目の部品実装機10から外観検査装置13への搬送過程で不具合が発生したか否かの不具合判定を行うようにしてもよい。
【0042】
上述した実施形態において、外観検査装置13において位置ずれが外観検査許容範囲を超えた部品を特定して検査に異常があった旨を出力してもよい。その場合、その部品を実装した部品実装機10からその直下の部品実装機10への搬送過程について不具合が発生したか否かを判定するようにしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、位置ずれ量を演算する対象となる基板S上の部品(以下、対象部品という)は、k番目の部品実装機10によって実装された部品のすべてと、k番目よりも上流に配置された部品実装機10によって実装された部品のすべてを含むとしたが、それらのうちの一部の部品を含むとしてもよい。例えば、対象部品は、k番目の部品実装機10によって実装された部品のすべてを含んでいてもよいし、一部を含んでいてもよいし、まったく含んでいなくてもよい。また、対象部品は、k番目よりも上流に配置された部品実装機10によって実装された部品のすべてを含んでいてもよいし、一部を含んでいてもよいし、まったく含んでいなくてもよい。但し、対象部品は、少なくとも1つの部品を含む。対象部品の設定は、搬送前の基板S上に実装されている部品の中から、オペレータが適宜選択して管理装置80に入力してもよい。あるいは、外観検査装置13によって異常があった部品を対象部品に設定してもよい。
【0044】
本開示の部品実装システムは以下のように構成してもよい。
【0045】
本開示の部品実装システムにおいて、前記部品実装ラインよりも前記搬送方向の下流側に設けられ、n番目の前記部品実装機から搬送された前記基板上の前記部品のそれぞれにつき予め定めた目標位置からのずれが外観検査許容範囲に収まっているか否かを判定する外観検査装置を備えていてもよく、前記制御装置は、前記外観検査装置において前記外観検査許容範囲を超えたと判定されたならば、1番目から(n-1)番目の搬送過程にそれぞれについて前記不具合判定を行うものとしてもよい。こうすれば、外観検査装置で外観検査許容範囲を超えた際に、搬送過程の不具合判定を行うことができる。そのため、不具合の特定を行うことによる生産効率の低下を抑制することができる。
【0046】
本開示の部品実装システムにおいて、前記k番目の搬送過程の前記不具合判定を行うタイミングを任意に設定するタイミング設定装置を備えていてもよい。こうすれば、例えば、そのタイミングを実装ラインの運転開始時に設定した時は、搬送過程で不具合が発生したか否かの確認を行ったうえで、運転を開始することができる。
【0047】
本開示の部品実装システムにおいて、前記位置のずれ量は、(k+1)番目の前記部品実装機に搬送される前に、前記基板上の目標位置に対するk番目の前記部品実装機で実装された前記部品の実装位置のずれと、(k+1)番目の前記部品実装機に搬送された後に、前記基板上の目標位置に対するk番目の前記部品実装機で実装された前記部品の実装位置のずれとの差としてもよい。
【0048】
本開示の部品実装システムにおいて、前記位置のずれ量は、前記搬送前画像と前記搬送後画像との差分に基づいて算出されるものとしてもよい。こうすれば、基板上の目標位置に対する部品の実装位置のずれを求める必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、部品実装装置や部品実装装置を組み込んだ部品実装システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 部品実装システム、2 印刷機、3 印刷検査機、10 部品実装機、11 筐体、12 部品実装ライン、13 外観検査装置、21 部品供給装置、22 基板搬送装置、23 パーツカメラ、24 ノズルステーション、30 ヘッド移動装置、31 X軸ガイドレール、32 X軸スライダ、33 X軸アクチュエータ、34 X軸位置センサ、35 Y軸ガイドレール、36 Y軸スライダ、37 Y軸アクチュエータ、38 Y軸位置センサ、40 ヘッド、41 Z軸アクチュエータ、42 θ軸アクチュエータ、43 マークカメラ、60 制御装置、61 CPU、62 ROM、63 HDD、64 RAM、65 入出力インタフェース、66 バス、80 管理装置、81 CPU、82 ROM、83 HDD、84 RAM、85 入出力インタフェース、86 バス、87 入力デバイス、88 ディスプレイ、90 検査結果、95 目標実装位置データ、D 搬送方向、Im1 搬送前画像、Im2 搬送後画像、M1 基準マーク、M2 基準マーク、O 原点、P1~P4,P11,P12 部品、Q 角度、S 基板。
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