(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ワーク生産システム
(51)【国際特許分類】
B23P 21/00 20060101AFI20241017BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20241017BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20241017BHJP
B65G 35/06 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B23P21/00 307E
G05B19/418 B
B23P19/00 302H
B65G35/06 K
(21)【出願番号】P 2020200995
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 毅
(72)【発明者】
【氏名】山田 巧
(72)【発明者】
【氏名】大平 倫之
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136292(JP,A)
【文献】特開2003-306144(JP,A)
【文献】特開2001-219322(JP,A)
【文献】特開平06-156694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00 - 21/00
G05B 19/418
B65G 35/00 - 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる生産処理工程を経て所定のワークを生産するワーク生産システムであって、生産過程のワークを支持するワーキングパレットと、異なる生産処理工程を実施可能に構成し、かつ一方向に順次連結可能に構成することにより、前記ワーキングパレットを順次移送可能にした複数の標準モジュールと、複数の前記標準モジュールを連結したモジュール群ユニットの始端側と終端側に配することにより、前記ワーキングパレットの移送方向を変換する一対の方向変換モジュールと、前記ワーキングパレットを各標準モジュールに対して順次移送する第一駆動機構部及び前記ワーキングパレットを終端側の方向変換モジュールから始端側の方向変換モジュールに逆移送する第二駆動機構部を有する駆動ユニットと、各標準モジュールに配した一対のコイルメンバを順次連結するとともに、終端側又は始端側の方向変換モジュールにおける一対のコイルメンバの端部同士を結合して1ターンのコイルとして構成した送電コイル,及び前記ワーキングパレットに配設し、かつ前記一対のコイルメンバ間に位置することにより前記送電コイルから非接触により給電される受電コイルを有するワイヤレス給電方式により構成し、前記ワーキングパレットに対して給電可能な給電機能部とを具備してなることを特徴とするワーク生産システム。
【請求項2】
前記標準モジュールは、前記ワーキングパレットをガイドする第一レールメンバを備え、この第一レールメンバは、この標準モジュールに連結した他の標準モジュールの第一レールメンバに対して、相互間移送を可能に配設することを特徴とする請求項1記載のワーク生産システム。
【請求項3】
前記標準モジュールは、前記第一レールメンバに対して離間した位置に、前記ワーキングパレットをガイドする第二レールメンバを備え、この第二レールメンバは、この標準モジュールに連結した他の標準モジュールの第二レールメンバに対して、相互間移送を可能に配設することを特徴とする請求項2記載のワーク生産システム。
【請求項4】
前記方向変換モジュールは、前記ワーキングパレットを縦方向へ移送するエレベータモジュールにより構成することを特徴とする請求項1記載のワーク生産システム。
【請求項5】
前記方向変換モジュールは、前記ワーキングパレットをガイドする単レールを備え、この単レールを支持する昇降板を昇降させることにより、この方向変換モジュールに連結した標準モジュールの前記第一レールメンバ,又は前記第二レールメンバに対して、相互間移送を可能に配設することを特徴とする請求項3記載のワーク生産システム。
【請求項6】
前記駆動ユニットは、前記ワーキングパレットを前記標準モジュール内で進退移動させる第三駆動機構部を備えることを特徴とする請求項1記載のワーク生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる生産処理工程を経て所定のワークを生産する際に用いて好適なワーク生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、省人化を目的として自動化した製造装置であって、複数の異なる生産処理工程を経て所定のワーク(製品)の組立を行うことができる典型的な製造装置としては、特許文献1に開示されるワイヤハーネスの製造装置が知られている。
【0003】
同文献1により開示される製造装置は、1台の装置で、1種以上のワイヤハーネスが製造可能なワイヤハーネス製造装置の提供を目的としたものであり、具体的には、電線を送給する電線送給装置と、送給された電線を任意の長さに切断する電線切断装置と、該電線の両端部の被覆を皮むきする皮むき装置と、皮むきされた電線端部に端子を圧着する第1の端子圧着装置と、皮むきされた電線端部に端処理を施す端処理装置と、2種類以上の端処理された電線の払い出し装置を備え、端処理された2種類以上のワイヤハーネスを製造可能に構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したワイヤハーネス製造装置をはじめ、ワークを生産するための従来の製造装置は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、全体が一台の専用装置として一体型に構成されるため、特定のワークの生産に限定されてしまう。例示した製造装置では、各種ワイヤハーネスには対応できるとしても、対応できるワークの範囲には限界があるとともに、ワイヤハーネス以外のワークには適用できないなど、汎用性及び拡張性(発展性)に劣る難がある。なお、仮に、他のワークの生産に拡張するとしても、基本的に、再利用性及び転用性に適さない構造により構成されるため、大掛かりな変更及び大幅なコストを強いられ、多品種少量生産には対応できない問題があった。
【0007】
第二に、大型の製造装置を設置する必要があるため、設置スペースの確保や設備の構築が大掛かりになるとともに、設置に伴う大変な労力と時間が強いられる。しかも、装置自身のレイアウトが固定されるため、設置時の柔軟性に劣るとともに、ワークの生産終了などにより、使用が終了した場合には、無駄な資材が大量に発生する虞れがあり、資源保護の観点からも望ましいものではない。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したワーク生産システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、複数の異なる生産処理工程を経て所定のワークWを生産するワーク生産システム1を構成するに際して、生産過程のワークWを支持するワーキングパレット2…と、異なる生産処理工程(S1,S3,S5…)を実施可能に構成し、かつ一方向に順次連結可能に構成することにより、ワーキングパレット2…を順次移送可能にした複数の標準モジュールMs,Ms…と、複数の標準モジュールMs…を連結したモジュール群ユニットUmの始端側と終端側に配することにより、ワーキングパレット2…の移送方向を変換する一対の方向変換モジュールMr,Mfと、ワーキングパレット2…を各標準モジュールMs…に対して順次移送する第一駆動機構部3a及びワーキングパレット2…を終端側の方向変換モジュールMfから始端側の方向変換モジュールMrに逆移送する第二駆動機構部3bを有する駆動ユニット3と、各標準モジュールMs…に配した一対のコイルメンバ11p,11p…を順次連結するとともに、終端側又は始端側の方向変換モジュールMr,Mfにおける一対のコイルメンバ11p,11pの端部同士を結合して1ターンのコイルとして構成した送電コイル11,及びワーキングパレット2…に配設し、かつ一対のコイルメンバ11p,11p間に位置することにより送電コイル11から非接触により給電される受電コイル12を有するワイヤレス給電方式により構成し、ワーキングパレット2…に対して給電可能な給電機能部4とを具備してなることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、標準モジュールMsは、ワーキングパレット2をガイドする第一レールメンバ15を備え、この第一レールメンバ15は、この標準モジュールMsに連結した他の標準モジュールMsの第一レールメンバ15に対して、相互間移送を可能に配設することができる。また、標準モジュールMsは、第一レールメンバ15に対して離間した位置に、ワーキングパレット2をガイドする第二レールメンバ16を備え、この第二レールメンバ16は、この標準モジュールMsに連結した他の標準モジュールMsの第二レールメンバ16に対して、相互間移送を可能に配設することができる。他方、方向変換モジュールMr,Mfは、ワーキングパレット2を縦方向Fvへ移送するエレベータモジュールMvにより構成することができるとともに、方向変換モジュールMr,Mfは、ワーキングパレット2をガイドする単レール17,17を備え、この単レール17,17を支持する昇降板66を昇降させることにより、この方向変換モジュールMr,Mfに連結した標準モジュールMs,Msの第一レールメンバ15,又は第二レールメンバ16に対して、相互間移送を可能に配設することができる。さらに、駆動ユニット3には、ワーキングパレット2を標準モジュールMs内で進退移動させる第三駆動機構部3cを設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係るワーク生産システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 基本的には、ワーキングパレット2…を順次移送可能にした複数の標準モジュールMs,Ms…と、複数の標準モジュールMs…を連結したモジュール群ユニットUmの始端側と終端側に配することにより、ワーキングパレット2…の移送方向を変換する一対の方向変換モジュールMr,Mfの組合わせにより構成するため、組合わせの形態及び数量を変更することにより、複数の異なる生産処理工程を、標準化したモジュールMs…,Mr,Mfにより容易に構成できる。この結果、生産できるワークWの範囲を飛躍的に拡大可能となり、汎用性及び拡張性(発展性)を高めることができるとともに、開発コスト及び製品コストの低減化を図ることが可能になり、多品種少量生産に最適なワーク生産システム1を提供できる。
【0013】
(2) 設置スペースの確保が容易になるため、設置に伴う労力と時間を削減できるとともに、全体のシステム構成を柔軟に構築できる。特に、標準化したモジュールMs…,Mr,Mfの組合わせにより、一方向への合理的な生産ラインを構築できるため、他のワークの生産に拡張する場合にも、一部のモジュールMs…の追加,削除,変更により、柔軟かつ容易に対応させることが可能になり、再利用性及び転用性に優れるとともに、大幅なコスト削減に寄与できる。しかも、無駄な資材の発生を回避できるため、資源保護にも貢献できる。
【0014】
(3) 給電機能部4として、連結した各標準モジュールMs…に沿って配設した送電コイル11と、ワーキングパレット2に配設することにより送電コイル11から非接触により給電される受電コイル12とを有するワイヤレス給電方式により構成したため、ワーキングパレット2…に対して、非接触の状態で給電可能になり、ケーブル類の取り廻しを排除し、煩雑性の無いシンプルな給電機能部を構成できる。しかも、ワーキングパレット2…の位置、更には静動の有無に左右されることなく、連続して給電を行うことができるとともに、複数のワーキングパレット2…に対して、同時に安定した給電を行うことができる。
【0015】
(4) 送電コイル11を、各標準モジュールMs…に配したコイルメンバ11p,11p…同士を順次連結することにより1ターンのコイルとして構成したため、標準モジュールMs,Ms…の組付と同時に送電コイル11も組付けることができるとともに、標準モジュールMs,Ms…の数量に応じて、送電コイル11の長さも適合させることが可能になり、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システム1に最適な給電機能部4を構築することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、標準モジュールMsを構成するに際し、ワーキングパレット2をガイドする第一レールメンバ15を設け、この第一レールメンバ15を、この標準モジュールMsに連結した他の標準モジュールMsの第一レールメンバ15に対して、相互間移送を可能に配設すれば、標準モジュールMs,Ms…の組付けと同時に、第一レールメンバ15…が連続する全体の移送レールを構築できるため、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システム1に最適な形態として実施できる。
【0017】
(6) 好適な態様により、標準モジュールMsを構成するに際し、第一レールメンバ15に対して離間した位置に、ワーキングパレット2をガイドする第二レールメンバ16を設け、この第二レールメンバ16を、この標準モジュールMsに連結した他の標準モジュールMsの第二レールメンバ16に対して、相互間移送を可能に配設すれば、標準モジュールMs,Ms…の組付けと同時に、第二レールメンバ16…が連続する全体の戻しレールを構築できるため、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システム1に最適な形態として実施できる。
【0018】
(7) 好適な態様により、方向変換モジュールMr,Mfを構成するに際し、ワーキングパレット2を縦方向Fvへ移送するエレベータモジュールMvにより構成すれば、生産システム1全体の横幅方向におけるサイズダウンを図ることができるため、特に、設置スペースが限られている場所に設置する際における最適な形態として実施できる。
【0019】
(8) 好適な態様により、方向変換モジュールMr,Mfを構成するに際し、ワーキングパレット2をガイドする単レール17,17を設け、この単レール17,17を移動させることにより、この方向変換モジュールMr,Mfに連結した標準モジュールMs,Msの第一レールメンバ15,又は第二レールメンバ16に対して、相互間移送を可能に配設すれば、単レール17,17を一方向(昇降方向)へ移動させるのみでワーキングパレット2…の方向変換を実現できるため、部品点数の少ないシンプルな方向変換機構を構築することができる。
【0020】
(9) 好適な態様により、駆動ユニット3に、ワーキングパレット2を標準モジュールMs内で進退移動させる第三駆動機構部3cを設ければ、標準モジュールMs内においてワーキングパレット2の位置の移動や調整が可能になるため、多様な生産処理工程を構築できるとともに、生産処理工程の処理精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の好適実施形態に係るワーク生産システムの一部分を省略して原理的に示す右側面視の断面構成図(
図3中A-A断面)、
【
図2】同ワーク生産システムの一部分を原理的に示す平面視の断面構成図、
【
図3】同ワーク生産システムの一部分を原理的に示す後面側の断面構成図(
図2中B-B断面)、
【
図4】同ワーク生産システムにおける駆動ユニットの左側面視の構成図(
図3中C-C断面)、
【
図5】同ワーク生産システムのワーキングパレット及び第三駆動機構部の平面視の抽出拡大図、
【
図6】同ワーク生産システムの給電機能部における送電コイルと受電コイルの関係を示す断面図、
【
図7】同ワーク生産システムにおける給電機能部の構成図、
【
図8】同ワーク生産システムにおける制御系及び駆動系のシステム構成を示すブロック系統図、
【
図9】同ワーク生産システムとして構築した具体的システム構成図、
【
図10】同具体的システム構成図における具体的処理手順を説明するためのフローチャート、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係るワーク生産システム1の構成について、
図1-
図8を参照して説明する。
【0024】
ワーク生産システム1は、
図1に示すように、システム本体を構成する、複数の標準モジュールMs,Ms…,及び一対の方向変換モジュールMr,Mfを備えるとともに、システム本体とは別体となり、システム本体内で移送される複数のワーキングパレット(以下、パレットと略記)2…を備える。したがって、生産過程のワークWは、このパレット2により支持される。なお、実施形態で示すワーク生産システム1では、生産時におけるワークWの移送方向(順方向)を前方向として説明する。
【0025】
パレット2は、
図1-
図3及び
図5に示すように、パレット本体部21を有し、このパレット本体部21に、各種パーツ類Wa,Wb…を保持するチャック機構Ca,Cb…等を備えている。
図3に示すように、パレット本体部21の下面21dの中間位置には、後述する、第一レールメンバ15…,第二レールメンバ16…,単レール17…にガイドされて移送されるスライダ部22を有する。また、後述する受電コイル12を配設し、この受電コイル12は、
図3及び
図6に示すように、スライダ部22に対して左側に位置する下面21dから下方へ突出させる。さらに、
図1,
図3及び
図5に示すように、パレット本体部21の右端面21qには、この右端面21qから横方向に形成した上下二つの係合孔23a,23bを有する。
【0026】
一方、標準モジュールMsは、標準となる基本構成を備えており、この基本構成をベースとして、使用する生産処理工程に対応する具体的な付属構成を備える。基本構成において、31はフレーム体を示す。このフレーム体31は、
図3に示すように、離間して配した左側板31pと右側板31qを備えるとともに、この左側板31pの下端位置と右側板31qの下端位置間を連結する横方向Fhの基礎板31b、この基礎板31bの上方に配し、左側板31pと右側板31q間に架設した支持板31s、この支持板31sの上方に配し、左側板31pと右側板31q間に架設した下中間板31d、この下中間板31dの上方に配し、左側板31pと右側板31q間に架設した上中間板31u、をそれぞれ備える。なお、
図1に示すように、基礎板31bの下面における四個所には移動用のキャスタ32…を設ける。
【0027】
そして、フレーム体31の前端は、位置決めして他のフレーム体31の後端に、図示を省略した結合具により結合可能に構成するとともに、フレーム体31の後端は、位置決めして他のフレーム体31の前端に、図示を省略した結合具により結合可能に構成する。これにより、必要な生産処理工程に対応した数量の標準モジュールMs,Ms…を順次移送方向に連結することができ、連結した複数の標準モジュールMs,Ms…によりモジュール群ユニットUmが構成される。
【0028】
また、
図1-
図3に示すように、上中間板31uの上面における中間位置には、長手方向が前後方向となる第一レールメンバ15を取付け固定する。この第一レールメンバ15は、後述するパレット2…の順方向となる移送方向Fmへガイドする機能を備える。このため、標準モジュールMsのフレーム体31に対して、他の標準モジュールMsのフレーム体31を結合した際には、他の第一レールメンバ15と同一直線上に連続的に並ぶことによりパレット2…の相互間移送が可能になるように配設する。このような第一レールメンバ15を設ければ、標準モジュールMs,Ms…の組付けと同時に、第一レールメンバ15…が連続する全体の移送レールを構築できるため、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システム1に最適な形態として実施できる。
【0029】
さらに、上中間板21uの上面における第一レールメンバ15の左方位置(左側板31p側)には、
図6に示すように、一定の間隔により平行に配した一対のコイルメンバ11p,11pを取付ける。なお、11bは、コイルメンバ11pを取付け固定するための基板を示す。このコイルメンバ11p,11pは、標準モジュールMsのフレーム体31に対して他の標準モジュールMsのフレーム体31を結合した際に、
図7(a)に示すように、相隣るコイルメンバ11pと11pの端部同士を、接続部材41により接続可能に構成する。これにより、
図7(b)に示すように、各標準モジュールMs,Ms…に配したコイルメンバ11p,11p…同士が接続部材41…により順次連結され、1ターンのコイルによる送電コイル11が構成されるとともに、この送電コイル11は、連結した標準モジュールMs,Ms…に沿って配設される。この送電コイル11は、前述したパレット2…に配設した受電コイル12…と組合わさることにより、送電コイル11から非接触により受電コイル12…に送電を行うワイヤレス給電方式による本実施形態における給電機能部4を構成する。
【0030】
このように、コイルメンバ11p…により送電コイル11を構成すれば、標準モジュールMs,Ms…の組付と同時に送電コイル11も組付けることができるとともに、標準モジュールMs,Ms…の数量に応じて、送電コイル11の長さも適合させることが可能になり、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システム1に最適な給電機能部4を構築することができる。また、給電機能部4を、このような送電コイル11及び受電コイル12…を有するワイヤレス給電方式により構成すれば、パレット2…に対して、非接触の状態で給電可能になるため、ケーブル類の取り廻しを排除し、煩雑性の無いシンプルな給電機能部を構成できる。しかも、パレット2…の位置、更には静動の有無に左右されることなく、連続して給電を行うことができるとともに、複数のパレット2…に対して、同時に安定した給電を行うことができる。
【0031】
図7は、給電機能部4の全体構成を示す。1ターンにより構成される送電コイル11の両端には、ワイヤレス給電回路42を接続する。ワイヤレス給電回路42は、出力部を送電コイル11の両端に接続したインバータ42i,及びこのインバータ42iの入力部を接続した直流電源部42pを備え、この直流電源部42pの一次側は商用交流電源43に接続する。なお、42tは平滑部を示す。これにより、例示するワイヤレス給電回路42は、直流電源部42pにより商用交流電源43が直流変換され、インバータ42iの入力部に付与される。この結果、インバータ42iにより6.78〔MHz〕帯の高周波電力が生成され、送電コイル11の両端に付与される。6.78〔MHz〕帯を使用すれば、基板上に送電コイル11を設置できるとともに、小型軽量化を実現可能となり、しかも、周囲の金属を加熱させない利点がある。また、生産処理時には、送電コイル11の内側エリアに、常時、各受電コイル12…が位置するため、送電コイル11の高周波(電波)は、非接触により、受電コイル12により受電され、パレット2…に設けられた
図7及び
図8に示す受電処理回路47に供給される。受電処理回路47では、DC電源部47pにより直流化処理され、パレット2…において必要となるチャック機構等の駆動系47dに供給されるとともに、検査装置等を含む信号処理系47cに付与される。
【0032】
また、下中間板21dの上面における中間位置には、第二レールメンバ16を、上述した第一レールメンバ15と同様に取付け固定する。これにより、第二レールメンバ16は、第一レールメンバ15に対して離間した位置に配設され、パレット2…の逆方向Frへの移送をガイドする機能を備える。このため、フレーム体31に対して他のフレーム体31を結合した際には、他の第二レールメンバ16と同一直線上に連続的に並ぶことによりパレット2…の相互間移送が可能になる。このような第二レールメンバ16を設ければ、標準モジュールMs,Ms…の組付けと同時に、第二レールメンバ16…が連続する全体の戻しレールを構築できるため、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システム1に最適な形態として実施できる。
【0033】
さらに、右側板31qには、
図4及び
図5に示すように、パレット2を標準モジュールMs内で前後方向へ移動させる第三駆動機構部3cを設ける。例示する第三駆動機構部3cは、一対のプーリ間に無端タイミングベルト51cbを架け渡して構成したコンベア部51c,及び一方のプーリを回転させるモータ51dmを用いた調整回転駆動部51dを備えるとともに、この無端タイミングベルト51cbの下ベルト部の下面における所定位置に固定したロケートピン機構部52を備える。このロケートピン機構部52は、
図5に示すように、ロケートピン部52pとこのロケートピン部52pを進退変位させるソレノイドを用いたピン駆動部52dを備える。これにより、ピン駆動部52dを駆動制御し、ロケートピン部52pを突出変位させれば、パレット本体部21の右端面21qに設けた上側の係合孔23aに対して実線で示す位置まで挿入できるとともに、ピン駆動部52dを駆動制御し、ロケートピン部52pを引込変位させれば、係合孔23aから仮想線で示す位置に離脱させることができる。このような第三駆動機構部3cを設ければ、標準モジュールMs内においてパレット2の位置の移動や調整が可能になるため、多様な生産処理工程を構築することができるとともに、生産処理工程の処理精度を高めることができる。
【0034】
そして、支持板31sの上面には、中継基板33を配設するとともに、基礎板31bの上面には、中継バルブ34を配設する。以上、一台の標準モジュールMsについて説明したが、他の標準モジュールMsもこのような共通となる基本構成を備えている。このような標準モジュールMs,Ms…は、パレット2…の移送方向Fmである一方向に順次連結することによりモジュール群ユニットUmとして構成され、各標準モジュールMs,Ms…に対して、パレット2…を順次移送可能となる。
【0035】
他方、方向変換モジュールMr,Mfは、パレット2…の移送方向Fmを変換する機能を備える。例示の場合、方向変換モジュールMr,Mfは、パレット2を縦方向Fvへ移送するエレベータモジュールMvにより構成した。この種の方向変換モジュールMr,Mfは、標準モジュールMsの形態により、横方向Fhへ移送する方式により構成することも可能であるが、エレベータモジュールMvにより構成し、実施形態で示す標準モジュールMs…と組合わせれば、生産システム1全体の横幅方向におけるサイズダウンを図ることができるため、特に、設置スペースが限られている場所に設置する際における最適な形態として実施できる。
【0036】
方向変換モジュールMr,Mfは、一対の方向変換モジュールMr,Mf、即ち、始端側に配する方向変換モジュールMrと終端側に配する方向変換モジュールMfにより構成する。始端側の方向変換モジュールMrは、標準となる基本構成を備えており、61はフレーム体を示す。このフレーム体61は、
図2に示すように、離間して配した左側板61pと右側板61qを備えるとともに、この左側板61pの下端位置と右側板61qの下端位置間を連結する横方向Fhの基礎板61b、この基礎板61bの上方に配し、左側板61pと右側板61q間に架設した支持板61s、後側の側面を閉塞する後側板61rをそれぞれ備えて構成する。なお、基礎板61bの下面における四個所には移動用のキャスタ62…を備える。そして、フレーム体61の前端は、位置決めして前述した標準モジュールMsにおけるフレーム体31の後端に、図示を省略した結合具により結合可能に構成する。
【0037】
また、
図1及び
図2に示すように、左側板61pには、離間して配した前後一対の始端側昇降機構部63,63を配設するとともに、後側板61rの右側位置には、ガイド機構部65を配設する。そして、方向変換モジュールMrの内部には、前述した標準モジュールMsに備える下中間板31d(又は上中間板31u)よりも稍サイズを小さくした昇降板66を配し、この昇降板66を、昇降機構部63,63により昇降可能に支持するとともに、ガイド機構部65によりガイド可能に支持する。この場合、昇降機構部63,63の昇降駆動には、電磁駆動アクチュエータ又はエア駆動アクチュエータを利用できるとともに、駆動方式は、リニアモータ等による直接駆動方式であってもよいし、モータとベルト伝達機構等を用いた間接駆動方式であってもよい。なお、昇降板66には、昇降機構部63,63及びガイド機構部65の干渉を回避する切欠部を設ける。これにより、昇降板66は、
図1に示すように、実線で示す下降位置Xd又は仮想線で示す上昇位置Xuに選択的に昇降移動させることができ、下降位置Xdでは、標準モジュールMsにおける下中間板31dの高さに一致し、上昇位置Xuでは、標準モジュールMsにおける上中間板31uの高さに一致する。
【0038】
さらに、昇降板66の上面における中間位置には、単レール17を標準モジュールMsにおける第一レールメンバ15と同様に取付ける。これにより、方向変換モジュールMrのフレーム体61に対して、標準モジュールMsのフレーム体31を結合した際には、この方向変換モジュールMrに結合した標準モジュールMsの第一レールメンバ15又は第二レールメンバ16に対して相互間移送が可能になる。このように構成すれば、単レール17,17を一方向(昇降方向)へ移動させるのみでパレット2…の方向変換を実現することができるため、部品点数の少ないシンプルな方向変換機構を構築することができる。
【0039】
そして、実施形態の場合、支持板61sの上面に、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)を含む配電盤67を配設するとともに、基礎板61bの上面に、エアコンプレッサレギュレータ68を配設する。また、方向変換モジュールMrの外面における所定位置には、タッチパネル付ディフプレイを含む操作パネル69を配設する。以上、一方(始端側)の方向変換モジュールMrについて説明したが、他方(終端側)の方向変換モジュールMfも同様の基本構成を備えている。この場合、終端側の方向変換モジュールMfは、
図1に示すように、始端側の方向変換モジュールMrに対して、後側板61rの代わりに、前側板61fを設けた点、配電盤67及びエアコンプレッサレギュレータ68の代わりに、中継基板33及び中継バルブ34を配設した点、操作パネル69を設けない点を除いて、始端側の方向変換モジュールMrと同様に構成することができる。なお、64,64は、終端側の方向変換モジュールMfにおける昇降機構部を示す。
【0040】
また、ワーク生産システム1は、
図4に示す駆動ユニット3を備える。この駆動ユニット3には、第一駆動機構部3a,第二駆動機構部3b及び第三駆動機構部3c…が含まれる。この場合、第三駆動機構部3cは、前述したように、各標準モジュールMs単位で各右側板31q…に配設される。他方、第一駆動機構部3a及び第二駆動機構部3bは、各モジュールMs…,Mr及びMfの全体を通して機能するため、
図2-
図4に示すように、モジュール群ユニットUmに、一対の方向変換モジュールMr,Mfを設置した状態で組付けることができる。
【0041】
第一駆動機構部3aは、パレット2…を各標準モジュールMs,Ms…に対して順次移送する機能を備えるため、
図4に示すように、終端側の方向変換モジュールMfにおける右側板61qに設けた従動プーリ53fと始端側の方向変換モジュールMrにおける右側板61qに設けた駆動プーリ53r間に無端タイミングベルト53bを架け渡して構成したコンベア部53,及び駆動プーリ53rを回転させるモータ54mを用いた送り回転駆動部54を備えるとともに、この無端タイミングベルト53bの上ベルト部の上面に固定した複数のロケートピン機構部55…を備えて構成する。この場合、各ロケートピン機構部55…は、使用する標準モジュールMs…及び方向変換モジュールMrに対応した数量だけ用意し、
図3及び
図4に示すように、各標準モジュールMs…及び始端側の方向変換モジュールMrに停止した各パレット2…における下側の係合孔23b…に対面する位置を選定して固定する。
【0042】
このように構成することにより、パレット2…を次の標準モジュールMs…及び方向変換モジュールMfに移送する際には、各ロケートピン機構部55…を駆動制御し、ロケートピン部55p…(
図3参照)を突出変位させれば、各パレット2…における係合孔23b…に挿入できるため、この後、送り回転駆動部54を駆動制御し、無端タイミングベルト53bを、パレット2…同士の相互(ピッチ)間に対応する移送ストロークだけ移動させれば、各パレット2…を次の標準モジュールMs…に移送することができるとともに、最終段の標準モジュールMsにおけるパレット2は、終端側の方向変換モジュールMfにおける上昇位置Xuへ移送することができる。また、始端側の方向変換モジュールMrにおける上昇位置Xuにおけるパレット2は、初段の標準モジュールMsへ移送することができる。そして、一回の移送が終了したなら各ロケートピン機構部55…を駆動制御し、ロケートピン部55p…を引込変位させれば、パレット2…から離脱させることができるため、送り回転駆動部54を逆回転制御し、無端タイミングベルト53bを、移送ストローク分だけ逆方向へ移動させ、元の位置に復帰させる。
【0043】
第二駆動機構部3bは、パレット2…を終端側に配した方向変換モジュールMfから始端側に配した方向変換モジュールMrまで逆移送する機能を備えるため、
図4に示すように、終端側の方向変換モジュールMfにおける右側板61qに設けた従動プーリ56fと始端側の方向変換モジュールMrにおける右側板61qに設けた駆動プーリ56r間に無端タイミングベルト56bを架け渡して構成したコンベア部56,及び駆動プーリ56rを回転させるモータ57mを用いた戻り回転駆動部57を備えるとともに、この無端タイミングベルト56bの上ベルト部の上面に固定した単一のロケートピン機構部58を備えて構成する。この場合、ロケートピン機構部58は、終端側の方向変換モジュールMfの下降位置Xdに停止した昇降板66上のパレット2における下側の係合孔23bに対面させて固定する(
図3参照)。
【0044】
また、ロケートピン機構部58には、突出位置及び引込位置に変位したロケートピン部58pの位置を保持するラッチングソレノイド等を用いることができる。これにより、方向変換モジュールMfの下降位置Xdにパレット2が位置したなら、ロケートピン機構部58に対して、例えば、接触式の接続端子を介して給電し、ロケートピン部58pを突出変位させて係合孔23bに挿入するとともに、この後、戻り回転駆動部57を駆動制御し、無端タイミングベルト56bを移動させることにより、パレット2を始端側の方向変換モジュールMrの下降位置Xdまで移送することができる。この場合、パレット2は、方向変換モジュールMf内の単レール17から第二レールメンバ16…が連続する戻しレールを介して始端側の方向変換モジュールMrの下降位置Xdまでの逆方向Frへ戻される。この際、ロケートピン機構部58は、接触端子から離れて無給電状態になるが、ラッチングソレノイドの自己保持機能により、ロケートピン部58pは突出変位した位置に保持される。一方、始端側の方向変換モジュールMrの下降位置Xdにおいては、ロケートピン機構部58に対して、接触式の接続端子を介して給電し、ロケートピン部58pを引込変位させれば、係合孔23bから離脱させることができるため、昇降機構部63,63を駆動制御し、昇降板66を上昇させることにより、パレット2を上昇位置Xuにセットすることができる。
【0045】
以上、主に機械系の構成について説明したが、
図8には、ワーク生産システム1における制御系及び駆動系の構成をブロック系統で示す。
【0046】
図8において、71はシステムコントローラであり、このシステムコントローラ71にはディスプレイを含む前述した操作パネル69が付属する。システムコントローラ71は、CPU及び内部メモリ71m等を内蔵するコンピュータ機能を備え、内部メモリ71mには、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため包括的な制御プログラム(ソフトウェア)を格納するプログラムエリア71mpを有するとともに、各種データ(データベース)類を書込可能なデータエリア71mdが含まれる。
【0047】
また、このシステムコントローラ71には前述した配電盤67を接続するとともに、この配電盤67には各標準モジュールMs…に設置した各中継基板33…を順次接続する。さらに、配電盤67には、始端側の方向変換モジュールMrに配設した回転駆動部54,57を接続するとともに、始端側昇降機構部63,63の駆動アクチュエータを接続する。なお、終端側の方向変換モジュールMfに配設した終端側昇降機構部64,64の駆動アクチュエータは、中継基板33を介して制御される。さらに、始端側の方向変換モジュールMr内に位置するロケートピン機構部(ラッチングソレノイド)58は、配電盤67を介して制御されるとともに、終端側の方向変換モジュールMf内に位置するロケートピン機構部(ラッチングソレノイド)58は、中継基板33…を経由して制御される。なお、方向変換モジュールMr内に配設したエアコンプレッサレギュレータ68は、外部のコンプレッサ(不図示)に接続するとともに、各標準モジュールMs…に設置した各中継バルブ34…を順次接続する。
【0048】
一方、各標準モジュールMs…に設置した中継基板33には、調整回転駆動部51dを接続するとともに、電磁駆動アクチュエータを構成するロケートピン機構部(ソレノイド)52,55を接続する。また、中継バルブ34には、圧縮エアを必要とするエア駆動アクチュエータ35を接続することができる。
【0049】
次に、本実施形態に係るワーク生産システム1の設置方法(組立方法)について、
図1-
図8を参照して説明する。
【0050】
まず、生産を行うワークWに対し、必要となる異なる複数の生産処理工程を設定し、この生産処理工程に対応する数量の標準モジュールMs…を用意する。そして、各標準モジュールMs…を、
図1に示すように、移送方向Fmとなる一方向に順次連結してモジュール群ユニットUmを構成する。
【0051】
この際、
図7に示すように、各標準モジュールMs…におけるコイルメンバ11p,11p…同士を接続部材41…により接続することにより、1ターンの送電コイル11を組立てる。また、
図1に示すように、任意の標準モジュールMsに備える中継基板33のコネクタ入力端子と相隣る標準モジュールMsに備える中継基板33のコネクタ出力端子を、コネクタケーブル33cにより接続するとともに、任意の標準モジュールMsに備える中継バルブ34の入力継手と相隣る標準モジュールMsに備える中継バルブ34の出力継手を接続管34pにより接続する。
【0052】
次いで、
図1に示すように、初段に配した標準モジュールMsに対して始端側の方向変換モジュールMrを連結するとともに、最終段に配した標準モジュールMsに対して終端側の方向変換モジュールMfを連結する。また、始端側の方向変換モジュールMrに備える配電盤67のコネクタ出力端子と相隣る標準モジュールMsに備える中継基板33のコネクタ入力端子をコネクタケーブル33cにより接続するとともに、エアコンプレッサレギュレータ68の出力継手と相隣る標準モジュールMsに備える中継バルブ34の入力継手を接続管34pにより接続する。さらに、終端側の方向変換モジュールMfに備える中継基板33のコネクタ入力端子と相隣る標準モジュールMsに備える中継基板33のコネクタ出力端子をコネクタケーブル33cにより接続するとともに、方向変換モジュールMfに備える中継バルブ34の入力継手と相隣る標準モジュールMsに備える中継バルブ34の出力継手を接続管34pにより接続する。なお、方向変換モジュールMfに備える中継バルブ34の出力継手はキャップ等により閉塞する。
【0053】
一方、必要な長さの無端タイミングベルト53bを用意し、各左側板61q及び61qに取付けられた一対のプーリ53rと53f間に架け渡すとともに、無端タイミングベルト53b上の所定位置にロケートピン機構部55…を固定することにより第一駆動機構部3aを構成する。なお、無端タイミングベルト53bの下ベルト部は、プーリ53r及び53fには掛からないため、この下ベルト部に両端結合部を設けることができる。さらに、必要な長さの無端タイミングベルト56bを用意し、各左側板61q及び61qに取付けられた一対のプーリ56rと56f間に架け渡すとともに、無端タイミングベルト56b上の所定位置にロケートピン機構部58を固定することにより第二駆動機構部3bを構成する。なお、無端タイミングベルト56bの下ベルト部は、プーリ56r及び56fには掛からないため、この下ベルト部に両端結合部を設けることができる。
【0054】
この後、各生産処理工程に対応した生産ロボット等の生産を自動で行うロボットEr,E1,E2…En,Efを用意し、
図1-
図3に示すように、対応する方向変換モジュールMr,各標準モジュールMs…,方向変換モジュールMfに対する左側位置にそれぞれ設置する。このように本実施形態に係るワーク生産システム1は、生産工場等に容易に設置することができる。
【0055】
次に、本実施形態に係るワーク生産システム1を用いた具体的なワークWの生産方法について、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0056】
なお、
図9は、ワイヤハーネス部品Wgを生産するワーク生産システム1として構築した具体的システム構成を示すとともに、
図10は、
図9に示す具体的システム構成における具体的処理手順を説明するためのフローチャートを示す。
【0057】
まず、始端側の方向変換モジュールMrにおける上昇位置Xuに待機しているパレット2に二本のワイヤハーネス(電線材)Woをセットする(ステップS1)。なお、ワイヤハーネス(電線材)Woのセットは自動で行ってもよいし手動で行ってもよい。そして、予め設定した生産処理時間Tp(例示は、5〔秒〕)の経過後、パレット2は、皮剥処理工程P1を行う次の標準モジュールMsに移送される(ステップS2)。この場合、移送方向Fmは順送り方向となる。この移送処理は、前述した第一駆動機構部3aの駆動制御により行われる。皮剥処理工程P1では、皮剥きを自動で行う皮剥処理ロボットE1によりワイヤハーネス(電線材)Woの端部の皮剥きが行なわれる(ステップS3)。この際、ワイヤハーネス(電線材)Woの先端位置が位置センサ等によりセンシングされ、湾曲等により正規の位置にないときは、位置情報が送信され、第三駆動機構部3cにより位置調整を行うことができ、この際の処理に必要な電力は、ワイヤレス給電方式による給電機能部4から供給される。
【0058】
この後、生産処理時間Tpが経過したなら、パレット2は、圧着処理工程P2を行う次の標準モジュールMsに移送される(ステップS4)。圧着処理工程P2では、接続端子の圧着処理を自動で行う端子圧着ロボットE2によりワイヤハーネス(電線材)Woの端部に、連続部材のカッティング及びカッティングされた接続端子の圧着処理が行われる(ステップS5)。この後、生産処理時間Tpが経過したなら、パレット2は、画像検査工程P3を行う次の標準モジュールMsに移送される(ステップS6)。画像検査工程P3では、圧着処理工程P2で行われた処理が正常に行われたか否かを、検査ロボットE3を用いた画像処理による検査が行われる(ステップS7)。
【0059】
この後、生産処理時間Tpが経過したなら、パレット2は、コネクタ挿入処理工程P4を行う次の標準モジュールMsに移送される(ステップS8)。コネクタ挿入処理工程P4では、ワイヤハーネス(電線材)Woの接続端子が、部品供給ロボットE4から供給されるコネクタに対して挿入処理される(ステップS9)。この後、生産処理時間Tpが経過したなら、パレット2は、パーツ供給処理工程P5を行う次の標準モジュールMsに移送される(ステップS10)。パーツ供給処理工程P5では、パーツ供給ロボットE5から、コネクタを付したワイヤハーネスWoの反対側の端子に、パーツ供給ロボットE5からパーツが供給される(ステップS11)。
【0060】
この後、生産処理時間Tpが経過したなら、パレット2は、組付処理工程P6を行う次の標準モジュールMsに移送される(ステップS12)。組付処理工程P6では、組付ロボットE6を用いて、前段で供給されたパーツとワイヤハーネスWoの組付処理、具体的には、ハンダ付け処理,ネジ止め処理,ケーシング装着処理,シーリング処理等の一又は二以上の処理が行われる(ステップS13)。なお、この組付処理工程P6は、第一組付処理工程,第二組付処理工程,第三組付処理工程等のように、分散させて設けることも可能である。この後、生産処理時間Tpが経過したなら、パレット2は、通電試験工程P7を行う終端側の方向変換モジュールMfに移送される(ステップS14)。通電試験工程P7では、前段で組付けされたワイヤハーネス部品Wgの通電試験が試験ロボットE7を用いて行なわれる(ステップS15)。
【0061】
そして、ワイヤハーネス部品Wg(製品)に対する試験ロボットE7による試験が終了したなら、不図示のピッキングロボットにより、パレット2からワイヤハーネス部品を取出す製品取出工程が行われる(ステップS16)。この場合、試験結果により、良品の場合には、良品ライン上に取出され、外観検査,梱包が行われるとともに、不良品の場合には不良品コンテナ内に取出される。
【0062】
一方、生産が継続する場合、終端側の方向変換モジュールMfでは、製品取出工程の終了後、昇降機構部64,64が駆動制御され、空のパレット2を載置した昇降板66が下降位置Xdまで下降する(ステップS17,S18)。そして、下降位置Xdの空のパレット2は、前述した第二駆動機構部3bにより、始端側の方向変換モジュールMrの下降位置Xdまで逆移送される(ステップS19)。この場合の移送方向は、
図9に示す逆方向Frとなる。この後、方向変換モジュールMrの下降位置Xdの昇降板66は、昇降機構部63,63により上昇位置Xuまで上昇し、この位置で空のパレット2が待機する(ステップS20)。以上、一つのパレット2について説明したが、設定された数量のパレット2…が生産処理時間Tp単位で順次移送されることになる。
【0063】
このように、本実施例に係るワーク生産システム1は、基本的な構成として、生産過程のワークWを支持するパレット2…と、異なる生産処理工程(S1,S3,S5…)を実施可能に構成し、かつ一方向に順次連結可能に構成することにより、パレット2…を順次移送可能にした複数の標準モジュールMs,Ms…と、複数の標準モジュールMs…を連結したモジュール群ユニットUmの始端側と終端側に配することにより、パレット2…の移送方向を変換する一対の方向変換モジュールMr,Mfと、パレット2…を各標準モジュールMs…に対して順次移送する第一駆動機構部3a及びパレット2…を終端側の方向変換モジュールMfから始端側の方向変換モジュールMrに逆移送する第二駆動機構部3bを有する駆動ユニット3と、パレット2…に対して給電可能な給電機能部4とを備えるため、組合わせの形態及び数量を変更することにより、複数の異なる生産処理工程を、標準化したモジュールMs…,Mr,Mfにより容易に構成できる。この結果、生産できるワークWの範囲を飛躍的に拡大可能となり、汎用性及び拡張性(発展性)を高めることができるとともに、開発コスト及び製品コストの低減化を図ることが可能になり、多品種少量生産に最適なワーク生産システム1を提供できる。しかも、設置スペースの確保が容易になるため、設置に伴う労力と時間を削減できるとともに、全体のシステム構成を柔軟に構築できる。特に、標準化したモジュールMs…,Mr,Mfの組合わせにより、一方向への合理的な生産ラインを構築できるため、他のワークの生産に拡張する場合にも、一部のモジュールMs…の追加,削除,変更により、柔軟かつ容易に対応させることが可能になり、再利用性及び転用性に優れるとともに、大幅なコスト削減に寄与できる。しかも、無駄な資材の発生を回避できるため、資源保護にも貢献できる。
【0064】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0065】
例えば、複数の異なる生産処理工程は、例示した生産処理工程(S1,S3,S5…)のみならず、生産を行うための各種処理工程を適用できるとともに、その工程数も任意である。同様に、ワークWとして、ワイヤハーネス部品Wgを例示したが、ワイヤハーネスWoを含む他の各種部品を適用できるとともに、ワイヤハーネスを含まない部品にも適用可能である。なお、第一駆動機構部3a,第二駆動機構部3b及び第三駆動機構部3cの構成は一例として示したものであり、同一の機能を有する各種構成により置換可能である。また、方向変換モジュールMr,Mfは、エレベータモジュールMrv,Mfvにより構成することが望ましいが、水平方向(横方向)へ移動させる場合を排除するものではない。この場合、標準モジュールMsの上中間板31uと下中間板31dは、水平方向(横方向)に配置する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、複数の異なる生産処理工程を経て所定のワークを生産する各種のワーク生産システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1:ワーク生産システム,2…:ワーキングパレット,3:駆動ユニット,3a:第一駆動機構部,3b:第二駆動機構部,3c:第三駆動機構部,4:給電機能部,11:送電コイル,11p…:コイルメンバ,12…:受電コイル,15:第一レールメンバ,16:第二レールメンバ,17:単レール,66:昇降板,Ms…:標準モジュール,Mr:方向変換モジュール(始端側),Mf:方向変換モジュール(終端側),Mv:エレベータモジュール,(S1,S3,S5…):生産処理工程,W:ワーク,Fh:横方向,Fm:移送方向,Fv:縦方向,Um:モジュール群ユニット