(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】水道メータ及びその蓋体係止構造
(51)【国際特許分類】
G01F 15/14 20060101AFI20241017BHJP
G01F 1/06 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G01F15/14
G01F1/06 Z
(21)【出願番号】P 2021009532
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】河合 雄大
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-132637(JP,A)
【文献】特開2011-085507(JP,A)
【文献】特開2000-171272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0186381(US,A1)
【文献】米国特許第05017039(US,A)
【文献】特開2006-058208(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102652199(CN,A)
【文献】実開昭57-151461(JP,U)
【文献】特開2008-064557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00,1/06-1/075,15/00-15/18
E03B 9/00-9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道メータの上部にヒンジ連結されて、水平な回動軸を中心に回動する蓋体を、前記水道メータの上面のメータ表示部を覆う閉状態に係止する水道メータの蓋体係止構造において、
前記蓋体の前記閉状態における前記回動軸の真下近傍位置と、前記水道メータの上面のうち前記回動軸の真下近傍位置と、に形成され、前記回動軸を中心とする円の接線方向で互いに対向して前記蓋体を前記閉状態に係止する蓋側係止部及びメータ側係止部と、
前記蓋側係止部又は前記メータ側係止部を支持し、前記蓋体の回動時の前記蓋側係止部と前記メータ側係止部との摺接に伴って弾性変形する弾性変形部と、を備える水道メータの蓋体係止構造。
【請求項2】
前記弾性変形部は、前記蓋体に形成されかつ前記閉状態で略水平に延びる梁状をなして前記蓋側係止部を下面に備える請求項1に記載の水道メータの蓋体係止構造。
【請求項3】
前記弾性変形部は、上下に貫通する上下貫通孔により前記蓋体の一部を前記梁状に切り離してなる請求項2に記載の水道メータの蓋体係止構造。
【請求項4】
前記蓋体に設けられ、前記閉状態で前記水道メータの上面に重なるキャップ状又は板状の蓋本体部と、
前記蓋本体部から側方に突出し、前記回動軸の軸方向で対向する1対の蓋側連結部と、
前記蓋本体部の側方で、前記水道メータの上面から突出し、前記1対の蓋側連結部の間に配置されるメータ側連結部と、
前記1対の蓋側連結部から互いに接近する方向に突出して、前記回動軸上に並ぶ1対のヒンジ突部と、
前記メータ側連結部の両側面に陥没形成されて、前記1対のヒンジ突部を回転可能に受容する1対のヒンジ凹部と、を備え、
前記蓋側係止部及び前記弾性変形部は、一方又は両方の前記蓋側連結部の下部に配置されている請求項1から3の何れか1の請求項に記載の水道メータの蓋体係止構造。
【請求項5】
前記メータ側連結部及び前記蓋側連結部は、前記閉状態の前記蓋本体部より上方に突出すると共に上端部に前記回動軸を有する請求項4に記載の水道メータの蓋体係止構造。
【請求項6】
前記メータ側連結部の両側面には、
L形に曲がって一端が前記1対のヒンジ凹部の下部に連絡され、他端が前記メータ側連結部の外面に開口する1対の導入溝と、
各前記導入溝と各前記ヒンジ凹部との間を連絡しかつ開口幅が前記ヒンジ凹部の内径より小さい絞り部とが備えられ、
前記1対のヒンジ突部は、円柱の外周面に平坦なカット面を有した構造をなし、前記蓋本体部の起立状態で前記カット面が上下方向と略平行になって前記絞り部を通過する請求項4又は5に記載の水道メータの蓋体係止構造。
【請求項7】
前記メータ側連結部には、前記蓋体が前記閉状態から120~180度回転したところで当接する開位置ストッパ部が備えられている
請求項4から6の何れか1の請求項に記載の水道メータの蓋体係止構造。
【請求項8】
前記水道メータの上面のうち前記閉状態の前記蓋体に覆われる位置に水道メータの識別情報をレーザーマーキングするための印字部が設けられている請求項1から7のうち何れか1の請求項に記載の水道メータの蓋体係止構造。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1の請求項に記載の水道メータの蓋体係止構造を有する水道メータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回動する蓋体が閉状態に係止される水道メータ及びその蓋体係止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水道メータでは、上面から突出する係止片が、蓋体のうち回動軸から離れた端部に係止して、蓋体が閉状態に係止される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-292096(段落[0067]、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の水道メータでは、蓋体を閉状態に係止する係止力がばらついていたので、その対策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、水道メータの上部にヒンジ連結されて、水平な回動軸を中心に回動する蓋体を、前記水道メータの上面のメータ表示部を覆う閉状態に係止する水道メータの蓋体係止構造において、前記蓋体の前記閉状態における前記回動軸の真下近傍位置と、前記水道メータの上面のうち前記回動軸の真下近傍位置と、に形成され、前記回動軸を中心とする円の接線方向で互いに対向して前記蓋体を前記閉状態に係止する蓋側係止部及びメータ側係止部と、前記蓋側係止部又は前記メータ側係止部を支持し、前記蓋体の回動時の前記蓋側係止部と前記メータ側係止部との摺接に伴って弾性変形する弾性変形部と、を備える水道メータの蓋体係止構造である。
【0006】
請求項2の発明は、前記弾性変形部は、前記蓋体に形成されかつ前記閉状態で略水平に延びる梁状をなして前記蓋側係止部を下面に備える請求項1に記載の水道メータの蓋体係止構造である。
【0007】
請求項3の発明は、前記弾性変形部は、上下に貫通する上下貫通孔により前記蓋体の一部を前記梁状に切り離してなる請求項2に記載の水道メータの蓋体係止構造である。
【0008】
請求項4の発明は、前記蓋体に設けられ、前記閉状態で前記水道メータの上面に重なるキャップ状又は板状の蓋本体部と、前記蓋本体部から側方に突出し、前記回動軸の軸方向で対向する1対の蓋側連結部と、前記蓋本体部の側方で、前記水道メータの上面から突出し、前記1対の蓋側連結部の間に配置されるメータ側連結部と、前記1対の蓋側連結部から互いに接近する方向に突出して、前記回動軸上に並ぶ1対のヒンジ突部と、前記メータ側連結部の両側面に陥没形成されて、前記1対のヒンジ突部を回転可能に受容する1対のヒンジ凹部と、を備え、前記蓋側係止部及び前記弾性変形部は、一方又は両方の前記蓋側連結部の下部に配置されている請求項1から3の何れか1の請求項に記載の水道メータの蓋体係止構造である。
【0009】
請求項5の発明は、前記メータ側連結部及び前記蓋側連結部は、前記閉状態の前記蓋本体部より上方に突出すると共に上端部に前記回動軸を有する請求項4に記載の水道メータの蓋体係止構造である。
【0010】
請求項6の発明は、前記メータ側連結部の両側面には、L形に曲がって一端が前記1対のヒンジ凹部の下部に連絡され、他端が前記メータ側連結部の外面に開口する1対の導入溝と、各前記導入溝と各前記ヒンジ凹部との間を連絡しかつ開口幅が前記ヒンジ凹部の内径より小さい絞り部とが備えられ、前記1対のヒンジ突部は、円柱の外周面に平坦なカット面を有した構造をなし、前記蓋本体部の起立状態で前記カット面が上下方向と略平行になって前記絞り部を通過する請求項4又は5に記載の水道メータの蓋体係止構造である。
【0011】
請求項7の発明は、前記メータ側連結部には、前記蓋体が前記閉状態から120~180度回転したところで当接する開位置ストッパ部が備えられている請求項4から6の何れか1の請求項に記載の水道メータの蓋体係止構造である。
【0012】
請求項8の発明は、前記水道メータの上面のうち前記閉状態の前記蓋体に覆われる位置に水道メータの識別情報をレーザーマーキングするための印字部が設けられている請求項1から7のうち何れか1の請求項に記載の水道メータの蓋体係止構造である。
【0013】
請求項9の発明は、請求項1から8の何れか1の請求項に記載の水道メータの蓋体係止構造を有する水道メータである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1及び9の構成では、互いに係合して蓋体を閉状態に係止する蓋側係止部及びメータ側係止部が、蓋体の回動軸の真下近傍位置に配置されて、従来の水道メータの蓋体係止構造に比べて係合部分が回動軸に近いので、係止力のばらつきが抑えられる。また、水道メータの上面のうち回動軸から離れた位置に配置されていた従来の係止片を廃止することができるので、その分、水道メータの上面で使用可能な領域が増える。これにより、メータ表示部を従来より広くしたり、請求項8の構成のように、水道メータの上面にレーザーマーキングするための印字部を設けることもできる。
【0015】
請求項2の水道メータの蓋体係止構造では、弾性変形部が略水平に延びる梁状をなしているので、蓋体を成形品にする場合に、弾性変形部が非アンダーカット形状になり、アンダーカット形状であった係止片を有する従来のものより安価に製造することができる。なお、弾性変形部は、片持ち梁状であってもよいし、両持ち梁状であってもよい。
【0016】
ここで、弾性変形部は、蓋体の外面から突出していてもよいが、請求項3の構成のように、弾性変形部を、上下に貫通する上下貫通孔により蓋体の一部を梁状に切り離してなる構成とすれば、弾性変形部が上下貫通孔を挟んで対向する壁部によって保護される。また、請求項4の構成によれば、蓋体に1対のヒンジ突部が備えられているので、例えば蓋側連結部にピン孔を設けた場合のようなアンダーカット形状にもならず、安価に製造することができる。
【0017】
請求項5の構成によれば、蓋側連結部とメータ側連結部とが、閉状態の蓋本体部より上方に突出していて、その上端部に回動軸を有するので、蓋側係止部及びメータ側係止部が回動軸から離され、蓋体の回動に伴って蓋側係止部とメータ側係止部とがすれ違う距離が長くなり、それら蓋側係止部とメータ側係止部とをスムーズに係合させることができる。
【0018】
請求項6の水道メータでは、蓋体の姿勢を変更することで蓋体の1対のヒンジ突部をメータ本体の1対のヒンジ凹部に回転可能に係合させることができ、蓋体の取り付け作業が容易になる。
【0019】
請求項7の構成によれば、蓋体は、閉状態から120~180度回転したところで開位置ストッパ部に当接して開状態が維持されるので、メータ表示部の視認性が確保されると共に、閉状態に戻す操作を容易に行うことができる。また、蓋体の裏面を容易に視認することができるので、蓋体の裏面を印字部又はシール貼り付け部等として利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の一実施形態に係る水道メータの斜視図
【
図4】メータ側連結部の(A)側面図、(B)正断面図
【
図5】蓋体の(A)上方から見た斜視図、(B)下方から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図8を参照して、本開示の蓋体係止構造を有する水道メータ10の一実施形態について説明する。
図1に全体を示された本実施形態の水道メータ10は、例えば羽根車式であって、円筒状のメータケース12に図示しない羽根車を収容している。また、メータケース12から1対の接続管12A,12Bが側方に延び、それらの先端部に水道管が接続される。そして、水道管を流れる水道水の流量に応じて羽根車が回転する。
【0022】
メータケース12の上には、計測ユニット40Uが重ねられている。また、計測ユニット40Uの外側には、下方に向かうに従って拡径した筒形のユニットカバー13が嵌合されて、その下端部がメータケース12の上端部に嵌合固定されている。そして、ユニットカバー13の上壁部20とメータケース12との間に計測ユニット40Uが挟まれて固定されている。また、上壁部20には、計測ユニット40Uの上面に備えたメータ表示部40を視認可能にするための表示開口20Aが形成されている。そのメータ表示部40には、羽根車の回転量に基づいて計測ユニット40U内の回路が演算した水道水の流量が表示される。
【0023】
なお、本実施形態の水道メータ10は、羽根車式であるが、本開示の技術を、例えば、電磁流量計と呼ばれる電磁式の水道メータや、渦流量計と呼ばれる渦式の水道メータに適用してもよい。
【0024】
ところで、ユニットカバー13の上壁部20は、水道メータ10の上部に位置するので水道メータ10の上壁部20でもあり、上壁部20の上面は水道メータ10の上面10Gでもある。その水道メータ10の上面10Gの前記メータ表示部40を不使用時に覆っておくために、水道メータ10の上部には蓋体30が回動可能に連結されている。以下、蓋体30を連結するための構造について以下詳説する。
【0025】
上壁部20は、例えば樹脂の射出成形により、ユニットカバー13の筒壁13Aとは別体に製造されてから筒壁13Aの上部に固定されている。また、上壁部20の上面でもある水道メータ10の上面10Gは、
図2に示すように全体が円形をなし、その円の中心から離れた位置で真っ直ぐ延びる境界線L1で第1領域R1と第2領域R2とに仕切られている。そして、広い側の第1領域R1が蓋体30によって覆われる。
【0026】
以下、水道メータ10の上面10Gにおいて、境界線L1と平行な方向を「横方向」といい、境界線L1と直交する水平方向を「前後方向」という。また、前後方向のうち境界線L1から第1領域R1に向かう側を「前側」といい、その反対側を「後側」といい、さらには、横方向のうち第1領域R1を第2領域R2より手前にして水道メータ10の上面10Gを見たときの右側(
図2の右側)を単に「右側」といい、その反対側を単に「左側」ということとする。
【0027】
前述の表示開口20Aは、第1領域R1のうち境界線L1寄りに配置されて、横方向に延びている。また、表示開口20A内のメータ表示部40は、透明なガラスで覆われ、境界線L1に近い側を上にして流量の計測結果を表示する。なお、流量の計測結果は、メータ表示部40の長手方向の一端側を上にして表示されるようにしてもよい。
【0028】
第1領域R1のうち表示開口20Aを除いた全体は、平坦面になっていて、その平坦面のうち表示開口20Aより前側は印字部21Rになっている。その印字部21Rには、水道メータ10の識別情報が例えばレーザーマーキングされる。なお、印字部21Rに、水道メータ10の識別情報を印字したシールを貼付してもよい。
【0029】
図3に示すように、第2領域R2には、蓋体30を回転可能に支持するためのメータ側連結部50が備えられている。メータ側連結部50は、第2領域R2の横方向の中間部から段付き状に突出するブロック50Hの両側面に1対のサイド突部22を備えた形状をなしている。1対のサイド突部22は、メータ側連結部50の両側面における前後方向の中間位置より前側全体を段付き状に突出させてなる。なお、ブロック50Hは、上壁部20の全体とは別個に成形されてから上壁部20の全体に固定されているが、ブロック50Hを上壁部20の全体と一体に成形してもよい。
【0030】
1対のサイド突部22の横方向を向く側面(メータ側連結部50の側面でもある)の上部には、1対のヒンジ凹部23が形成されている。それら1対のヒンジ凹部23は断面円形をなし、それらの中心軸が蓋体30の回動軸J1をなし、境界線L1と平行に延びている。
【0031】
各サイド突部22の側面のうちヒンジ凹部23より下側には、L形の導入溝24が形成され、導入溝24の上端部がヒンジ凹部23の下部に連絡される一方、下端部がサイド突部22のうち第1領域R1側を向く前面(メータ側連結部50の前面50Bでもある)に開口している。
【0032】
図4(A)に示すように、ヒンジ凹部23と導入溝24との間は、ヒンジ凹部23の直径より絞られた絞り部24Tになっている。具体的には、導入溝24の前端部の両内側面は、水平面になって対向している。そして、導入溝24の前端部における下側の内側面が直角に曲がって上方に延び、回動軸J1からヒンジ凹部23の半径分だけ後方に離れた位置でヒンジ凹部23の内周面に連続している。一方、導入溝24の前端部における上側の内側面は、回動軸J1の下方で折り返されてヒンジ凹部23の内周面の下部に連続している。
【0033】
図4(B)に示すように、導入溝24の上部の底面(つまり、絞り部24Tの底面)からは、堰部24Sが突出している。堰部24Sの上部には、ヒンジ凹部23の内側面が形成され、堰部24Sの下部には、上下方向に対して傾斜する斜面24Uが形成されている。
【0034】
なお、
図3に示すように、1対のサイド突部22の前面を含むメータ側連結部50の前面50Bは、略鉛直になっていて、1対のサイド突部22の上面を含むメータ側連結部50の上面50Aは、略水平になっている。また、メータ側連結部50の前面50Bと上面50Aとの角部には、円弧状の面取り面が形成されている。
【0035】
第2領域R2のうちメータ側連結部50の両横部分は、第1領域R1の上面より段付き状に高い土手部52になっている。土手部52は、横方向に延び、その前後方向における幅は、サイド突部22と同じになっている。また、
図2に示すように、前述のメータ側連結部50は、第2領域R2の横方向において僅かに右側寄りに配置され、メータ側連結部50より左側部分の土手部52には係合溝25Mが形成されている。係合溝25Mは、土手部52の幅方向の中央に位置して回動軸J1と平行に延びている。また、
図4(A)に示すように、係合溝25Mの1対の内側面と土手部52の上面との角部は円弧状に面取りされている。そして、土手部52のうち係合溝25Mより前側(第1領域R1側)の内側面を有する壁部が、蓋体30の後述する蓋側係止部35Tと係合するメータ側係止部51になっている。なお、土手部52の上面と土手部52の前面との間の角部は、面取りされていない所謂、ピン角状態になっている。
【0036】
次に、蓋体30の構造について詳説する。蓋体30は、樹脂の射出成形により全体を一体成形されている。なお、
図7に示すように蓋体30が水道メータ10の上面10Gに当接してメータ表示部40を覆った状態を閉状態といい、その閉状態における蓋体30の各部位における「上面」、「下面」等を単に「上面」、「下面」等ということとする。
【0037】
図5(A)に示すように、蓋体30は、平面形状が第1領域R1と略同一の蓋本体部31を有する。蓋本体部31は、第1領域R1より一回り小さいカット円状の天板31Fの外縁部から平板壁31Aと円弧壁31Bとが垂下した構造をなし、全体が扁平なキャップ形になっている。また、
図7に示すように、平板壁31Aは、天板31Fの直線状の外縁部から鉛直下方に垂下される一方、円弧壁31Bは、天板31Fの円弧状の外縁部から下方に向かうに従って外側に向かうように垂下している。そして、平板壁31A及び円弧壁31Bの下面が面一の水平面をなして、水道メータ10の上面10Gにおける第1領域R1の外縁部に当接する。また、円弧壁31Bにおける前端部の下端部からは前端突部30Sが前方に突出していて、その前端突部30Sが水道メータ10の上面10Gより前方に張り出し、蓋体30を開く際に前端突部30Sに指先を掛けることができる。
【0038】
図5(A)に示すように、蓋本体部31の後部における横方向の両端部には、1対の蓋側連結部32,33が設けられている。1対の蓋側連結部32,33は、蓋本体部31の後面(即ち、平板壁31Aの外面)から後方に突出すると共に蓋本体部31の上面より上方に突出している。また、
図5(B)に示すように、1対の蓋側連結部32,33の下面は、平板壁31Aの下面より上方に位置している。さらには、前述した水道メータ10の上面10Gの左右の土手部52に対応して右側の蓋側連結部33より左側の蓋側連結部32の方が横方向に幅広になっている(
図6参照)。
【0039】
図5(A)に示すように、1対の蓋側連結部32,33の互いの対向面は、互いに平行な鉛直面になっていて、それら対向面の上端部から、互いに接近するように1対のヒンジ突部34が突出している。1対のヒンジ突部34は、共に水平に延びる円柱体の下部を水平にカットして平坦面34Hを備え、断面D形になっている。また、1対のヒンジ突部34の外径は、前述の1対のヒンジ凹部23の内径と略同一になっていて、それらヒンジ凹部23に1対のヒンジ突部34が受容されて蓋体30が水道メータ10の上部に回転可能に支持される。
【0040】
ここで、1対のヒンジ突部34を1対のヒンジ凹部23に受容するには、例えば、平坦面34Hが鉛直になるように蓋本体部31を起立させて1対のヒンジ突部34を1対の導入溝24に前方から収容し、蓋体30を上方に引っ張り上げればよい。すると、各ヒンジ突部34の先端が導入溝24の上部で堰部24Sの斜面24Uと摺接し、1対の蓋側連結部32,33が僅かに互いに離れるように弾性変形する。そして、各ヒンジ突部34が堰部24Sを乗り越えて1対の蓋側連結部32,33が弾性復帰し、1対のヒンジ突部34が1対のヒンジ凹部23に受容される。このようにして蓋体30は、水道メータ10の上部に容易に組み付けられる。また、一度組み付けられると、蓋体30の起立姿勢を維持した状態で1対の蓋側連結部32,33を広げない限り、蓋体30は水道メータ10の上部から外れない。
【0041】
また、蓋体30は、閉状態から上方に回動すると、
図8に示すように、閉状態から180度回動した位置でメータ側連結部50の上面50Aに蓋本体部31が当接して開状態に保持される。なお、蓋体30は、重力により開状態に保持されるものであれば、どのような姿勢で開位置で保持されてもよい。但し、蓋体30の裏面を、前述の印字部21Rのように情報を掲載する部分として利用できるようにするために、閉状態から120~180度回転した位置で開位置に保持されることが好ましい。さらには、上記構造ではメータ側連結部50の上面50Aが、開位置ストッパ部となって蓋体30に当接するが、例えば、開位置ストッパ部がメータ側連結部50の側面から突出した構造をなして蓋側連結部32と当接するようにしてもよい。
【0042】
図5(A)に示すように、一方の蓋側連結部32には、上下に貫通する上下貫通孔32Kが備えられている。上下貫通孔32Kは、上下方向の上端から途中位置までは、平断面が四角形をなし、蓋側連結部32のうち蓋本体部31より上方に突出した部分の上面と前面とに開口している。また、
図5(B)に示すように、上下貫通孔32Kは、上下方向の途中位置から下端までは、平断面が横方向に延びた台形状をなしている。そして、上下貫通孔32Kの下端開口で前後方向で対向しかつ平行な1対の開口縁のうち蓋本体部31側の開口縁の中央から、反対側の開口縁に向かって片持ち梁状の弾性変形部35が張り出している。
【0043】
図5(B)に示すように、弾性変形部35の下面は、蓋側連結部32の全体の下面と面一になっていて、その弾性変形部35の下面から蓋側係止部35Tが突出している。蓋側係止部35Tは、弾性変形部35の先端の縁部に沿って横方向に延びる突条構造をなし、その断面形状は例えば半円状をなしている。そして、蓋体30が閉状態になると、
図7に示すように、蓋側係止部35Tが水道メータ10の係合溝25Mに収まる。これにより、水道メータ10の土手部52のうち係合溝25Mより前側のメータ側係止部51と、蓋側係止部35Tとが回動軸J1を中心とする円の接線方向で対向した状態で係合し、これにより蓋体30が閉状態に係止される。
【0044】
蓋体30を閉状態から上方に回動すると、蓋側係止部35Tがメータ側係止部51に摺接して弾性変形部35が弾性変形し、蓋側係止部35Tとメータ側係止部51との係合が解除される。そして、蓋体30を閉状態から開くように回動すると、180度回動したところでメータ側連結部50の上面50Aと当接して開位置に位置決めされる。また、蓋体30を閉じる方向に回動すると、蓋体30が閉状態になる直前に、蓋側係止部35Tの先端が係合溝25Mより前側の土手部52の上面に摺接して弾性変形部35が弾性変形し、蓋体30が閉状態になったところで、蓋側係止部35Tが係合溝25Mに収まり、上述の通り蓋体30が閉状態に係止される。
【0045】
本実施形態の水道メータ10の構成に関する説明は以上である。次に、水道メータ10の作用効果について説明する。本実施形態の水道メータ10では、
図7に示すように、互いに係合して蓋体30を閉状態に係止する蓋側係止部35T及びメータ側係止部51が、蓋体30の回動軸J1の真下近傍位置に配置されて、従来の水道メータの蓋体係止構造に比べて係合部分が回動軸に近いので、蓋体30を閉状態に係止する係止力のばらつきが抑えられる。また、
図8に示すように、蓋体30が開いた状態でも、メータ側係止部51は蓋体30に隠れて、従来の係止片のように水道メータ10の上面10Gの蓋体30から離れた位置で突出するようなことはないので、従来の係止片のように異物と当接して破損するようなことがなくなり、耐久性が向上する。さらには、従来の係止片を廃止した分、水道メータ10の上面10Gで使用可能な領域が増え、これにより、メータ表示部40を従来より広くしたり、上面10Gに印字部21Rを設けることもできる。
【0046】
ところで、蓋体30は上下方向で扁平な形状をなしているので、蓋体30の上下方向で型開きされる成形金型で成形される。これに対し、本実施形態の蓋体30の係止構造では、蓋側係止部35T及びメータ側係止部51が、回動軸J1を中心とする円の接線方向で互いに対向して蓋体30を閉状態に係止するので、それら蓋側係止部35T及びメータ側係止部51の互いに係合面を上下方向と平行にすることができる。つまり、蓋側係止部35T及びメータ側係止部51を、非アンダーカット形状にすることでき、アンダーカット形状の係止片を有する従来のものより安価に製造することができる。また、弾性変形部35が略水平に延びる梁状をなして蓋側係止部35Tを下面に備えるので、弾性変形部35も非アンダーカット形状にすることができる。
【0047】
また、弾性変形部35は、蓋体30を上下に貫通する上下貫通孔32Kにより蓋体30の一部を梁状に切り離してなるので、弾性変形部35が上下貫通孔32Kを挟んで対向する壁部によって保護される。さらには、蓋体30に1対のヒンジ突部34が備えられているので、例えば蓋側連結部32,33にピン孔を設けた場合のようなアンダーカット形状にもならず、安価に製造することができる。
【0048】
また、蓋側連結部32,33とメータ側連結部50とが、閉状態の蓋本体部31より上方に突出して、その上端部に回動軸J1を有するので、蓋側係止部35T及びメータ側係止部51が回動軸J1から離され、蓋体30の回動に伴って蓋側係止部35Tとメータ側係止部51とがすれ違う距離が長くなり、それら蓋側係止部35Tとメータ側係止部51とをスムーズに係合させることができる。
【0049】
さらには、蓋体30は、閉状態から180度回転したところで開位置ストッパ部に相当するメータ側連結部50の上面に当接して開状態が維持されるので、メータ表示部40の視認性が確保されると共に、閉状態に戻す操作を容易に行うことができる。また、蓋体30の裏面が容易に視認可能になるので、蓋体30の裏面を印字部又はシール貼り付け部等として利用することもできる。
【0050】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態の水道メータ10では、弾性変形部35の長手方向の先端に蓋側係止部35Tが配置されていたが、例えば、弾性変形部35を両持ち梁状にして、その長手方向の中央に蓋側係止部35Tを配置してもよい。
【0051】
(2)また、前記実施形態の水道メータ10では、蓋側係止部35Tが、土手部52の係合溝25Mに受容される構造であったが、土手部52のうち係合溝25Mより前側部分だけをメータ側係止部51として残し、係合溝25Mより後側部分を排除してもよい。即ち、メータ側係止部51を段差部構造にしてもよい。
【0052】
(3)また、蓋体30の下面に係合溝を設ける一方、水道メータ10の上面10Gに弾性変形部を設けて、その上面からメータ側係止部を突出させて係合溝に受容されるようにしてもよい。
【0053】
(4)また、前記実施形態の水道メータ10では、弾性変形部35及び蓋側係止部35Tとメータ側係止部51とが水道メータ10の上面10Gと蓋体30のうち上下方向で対向する部分に配置されていたが、中心軸J1の軸方向で対向する位置に配置してもよい。具体的には、例えば、1対の蓋側連結部32,33の対向面の少なくとも一方と、1対のサイド突部22の少なくとも一方の側面とに、弾性変形部35及び蓋側係止部35Tとメータ側係止部51とを配置してもよい。
【0054】
(5)前記実施形態では、蓋体30にヒンジ突部34が配置される一方、水道メータ10の上部にヒンジ凹部23が配置されていたが、その逆の配置としてもよい。
【0055】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0056】
10 水道メータ
10G 上面
20A 表示開口
21R 印字部
23 ヒンジ凹部
24 導入溝
24T 絞り部
30 蓋体
31 蓋本体部
32,33 蓋側連結部
32K 上下貫通孔
34 ヒンジ突部
35 弾性変形部
35T 蓋側係止部
40 メータ表示部
50 メータ側連結部
50A 上面(開位置ストッパ部)
50B 前面
51 メータ側係止部
J1 回動軸