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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241017BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20241017BHJP
   B60L 58/20 20190101ALI20241017BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241017BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
H02J7/02 F
B60L58/20
B60L58/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021046084
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144890
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】長澤 稔
(72)【発明者】
【氏名】小熊 宏和
(72)【発明者】
【氏名】大石 新
(72)【発明者】
【氏名】山田 保雄
(72)【発明者】
【氏名】金丸 善博
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-162251(JP,A)
【文献】特開2020-150705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0313595(US,A1)
【文献】特開2006-067644(JP,A)
【文献】特開2013-247836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/02
B60L 58/20
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1蓄電装置を有する第1電力回路と、
閉回路電圧に対する使用電圧範囲が前記第1蓄電装置と重複しかつ静的電圧が前記第1蓄電装置よりも低い第2蓄電装置を有する第2電力回路と、
前記第1電力回路と前記第2電力回路との間で電圧を変換する電圧変換器と、
前記第1電力回路と回転電機との間で電力を変換する電力変換器と、
前記電圧変換器及び前記電力変換器を操作することにより前記第1及び第2蓄電装置の充放電を制御する電力制御手段と、を備える電源システムであって、
前記第1蓄電装置の閉回路電圧に相当する第1電圧パラメータを取得する第1電圧パラメータ取得手段と、
前記第2蓄電装置の静的電圧に相当する第2電圧パラメータを取得する第2電圧パラメータ取得手段と、を備え、
前記電力制御手段は、前記第2電圧パラメータが前記第1電圧パラメータ以下になるように前記第2蓄電装置から電力を放電させることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記第1蓄電装置の残量に応じて増減する第1残量パラメータを取得する第1残量パラメータ取得手段と、
前記第1蓄電装置の出力上限である第1出力上限を取得する第1出力上限取得手段と、を備え、
前記第2蓄電装置は、前記第1蓄電装置よりも出力密度が高くかつエネルギ密度が低く、
前記電力制御手段は、
前記第1残量パラメータが残量閾値以上である場合、前記第2電圧パラメータが前記第1電圧パラメータ以下になるように前記第2蓄電装置から電力を放電させ、
前記第1残量パラメータが前記残量閾値未満でありかつ前記第1出力上限が出力閾値より大きい場合、前記第1残量パラメータが前記残量閾値以上である場合より前記第2蓄電装置の放電を制限することを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記第1電圧パラメータ取得手段は、前記第1蓄電装置の閉回路電圧の実効値を前記第1電圧パラメータとして取得することを特徴とする請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記第1電圧パラメータ取得手段は、前記第1蓄電装置から前記出力閾値に相当する電力が出力されているときにおける前記第1蓄電装置の閉回路電圧を前記第1電圧パラメータとして取得することを特徴とする請求項2に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関する。より詳しくは、2つの蓄電装置を備える電動車両用の電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動力発生源として駆動モータを備える電動輸送機器や、動力発生源として駆動モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両等の電動車両の開発が盛んである。このような電動車両には、駆動モータに電気エネルギを供給するために蓄電装置(バッテリ、及びキャパシタ等)や燃料電池等の電源装置も搭載されている。また近年では、電動車両に特性が異なる複数の電源装置を搭載するものも開発されている。
【0003】
特許文献1には、駆動モータやインバータ等によって構成される駆動部と第1蓄電装置とを接続する電力回路と、この電力回路と電圧変換器を介して接続された第2蓄電装置と、この電圧変換器をスイッチング制御する制御装置と、を備える電動車両の電源システムが示されている。制御装置は、運転者からの要求に応じて電圧変換器を通過する電流である通過電流に対する目標電流を設定するとともに、通過電流が目標電流になるように電圧変換器のスイッチング制御を行い、第1蓄電装置から出力される電力と第2蓄電装置から出力される電力とを合成し、駆動モータに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-169311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この電源システムのように、2つの蓄電装置を電圧変換器で接続した場合、第2蓄電装置から出力される電力は、基本的には電圧変換器のスイッチング制御によって制御することが可能である。しかしながら例えば加速時のように駆動モータで大きな電力が要求されると、第1蓄電装置を流れる電流が増加し、第1蓄電装置の閉回路電圧が第2蓄電装置の静的電圧より低くなってしまう場合がある。この場合、第2蓄電装置が放電に転じてしまい、電圧変換器を第2蓄電装置側から第1蓄電装置側へ意図しない電流が流れてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、高電圧の第1蓄電装置と低電圧の第2蓄電装置とを接続する電圧変換器において、第2蓄電装置からの意図しない放電を抑制できる電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る電源システム(例えば、後述の電源システム1)は、第1蓄電装置(例えば、後述の第1バッテリB1)を有する第1電力回路(例えば、後述の第1電力回路2)と、閉回路電圧に対する使用電圧範囲が前記第1蓄電装置と重複しかつ静的電圧が前記第1蓄電装置よりも低い第2蓄電装置(例えば、後述の第2バッテリB2)を有する第2電力回路(例えば、後述の第2電力回路3)と、前記第1電力回路と前記第2電力回路との間で電圧を変換する電圧変換器(例えば、後述の電圧変換器5)と、前記第1電力回路と回転電機(例えば、後述の駆動モータM)との間で電力を変換する電力変換器(例えば、後述の電力変換器43)と、前記電圧変換器及び前記電力変換器を操作することにより前記第1及び第2蓄電装置の充放電を制御する電力制御手段(例えば、後述の電子制御ユニット群7)と、前記第1蓄電装置の閉回路電圧に相当する第1電圧パラメータ(例えば、後述の第1電圧パラメータCCV1)を取得する第1電圧パラメータ取得手段(例えば、後述のマネジメントECU71、第1バッテリECU74、及び第1バッテリセンサユニット81)と、前記第2蓄電装置の静的電圧に相当する第2電圧パラメータ(例えば、後述の第2電圧パラメータOCV2)を取得する第2電圧パラメータ取得手段(例えば、後述の第2バッテリECU75、及び第2バッテリセンサユニット82)と、を備え、前記電力制御手段は、前記第2電圧パラメータが前記第1電圧パラメータ以下になるように前記第2蓄電装置から電力を放電させることを特徴とする。
【0008】
(2)この場合、前記電源システムは、前記第1蓄電装置の残量に応じて増減する第1残量パラメータ(例えば、後述の第1SOC)を取得する第1残量パラメータ取得手段(例えば、後述の第1バッテリECU74、及び第1バッテリセンサユニット81)と、前記第1蓄電装置の出力上限である第1出力上限(例えば、後述の第1出力上限P1_lim)を取得する第1出力上限取得手段(例えば、後述の第1バッテリECU74、及び第1バッテリセンサユニット81)と、を備え、前記第2蓄電装置は、前記第1蓄電装置よりも出力密度が高くかつエネルギ密度が低く、前記電力制御手段は、前記第1残量パラメータが残量閾値(例えば、後述のランプ点灯閾値)以上である場合、前記第2電圧パラメータが前記第1電圧パラメータ以下になるように前記第2蓄電装置から電力を放電させ、前記第1残量パラメータが前記残量閾値未満でありかつ前記第1出力上限が出力閾値(例えば、後述の出力閾値Pe0)より大きい場合、前記第1残量パラメータが前記残量閾値以上である場合より前記第2蓄電装置の放電を制限することが好ましい。
【0009】
(3)この場合、前記第1電圧パラメータ取得手段は、前記第1蓄電装置の閉回路電圧の実効値を前記第1電圧パラメータとして取得することが好ましい。
【0010】
(4)この場合、前記第1電圧パラメータ取得手段は、前記第1蓄電装置から前記出力閾値に相当する電力が出力されているときにおける前記第1蓄電装置の閉回路電圧を前記第1電圧パラメータとして取得することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明の電源システムでは、第1蓄電装置を有する第1電力回路と、閉回路電圧に対する使用電圧範囲が第1蓄電装置と重複しかつ静的電圧が第1蓄電装置よりも低い第2蓄電装置を有する第2電力回路とを電圧変換器で接続し、第1電力回路と回転電機とを電力変換器で接続する。電力制御手段は、電力変換器及び電圧変換器を操作することによって第1蓄電装置及び第2蓄電装置の充放電を制御する。ここで何らかの理由によって第2蓄電装置からの放電を禁止又は抑制したい場合、電力制御手段は回転電機における要求電力の全て又は大部分が第1蓄電装置から出力される電力で賄われるように電圧変換器や電力変換器を操作する。しかしながら第1蓄電装置を流れる電流が増加すると、第1蓄電装置の閉回路電圧が第2蓄電装置の静的電圧より低くなってしまい、第2蓄電装置から意図せず電力が出力される場合がある。これに対し本発明では、第1蓄電装置の閉回路電圧に相当する第1電圧パラメータを第1電圧パラメータ取得手段によって取得し、第2蓄電装置の静的電圧に相当する第2電圧パラメータを第2電圧パラメータ取得手段によって取得し、電力制御手段は、第2電圧パラメータが第1電圧パラメータ以下になるように第2蓄電装置から電力を放電させる。よって本発明によれば、第2蓄電装置の静的電圧が第1蓄電装置の閉回路電圧を下回ってしまうことによって第2蓄電装置が意図せず放電に転じてしまうのを防止することができる。
【0012】
(2)ところで上述のような2つの蓄電装置の電力によって走行する電動車両では、第1蓄電装置の出力上限と第2蓄電装置の出力上限とを合わせたシステム出力上限が所定の出力閾値未満となった場合に、残走行可能距離を0とするものがある。本願出願人による特願2020-061200号には、第1蓄電装置を容量型とし、第2蓄電装置を出力型とした電源システムにおいて、第1蓄電装置に蓄えられている電力を使い切る前に第2蓄電装置の出力上限が急速に減少してしまい、残走行可能距離が急激に0まで落ち込んでしまうことを防止する技術が示されている。この特願2020-061200号に示された電源システムでは、第1蓄電装置の第1残量パラメータが残量閾値未満でありかつ第1出力上限が出力閾値より大きい場合、第1残量パラメータが残量閾値より大きい場合より第2蓄電装置の放電を制限する。これにより特願2020-061200号に示された電源システムでは、第1蓄電装置の第1出力上限が出力閾値を下回るまで、第2蓄電装置に補助電力を確保することができるので、第1蓄電装置に蓄えられている電力を使い切り、走行距離を延ばすことができる(以下、このような制御を「レンジ延長制御」ともいう)。
【0013】
これに対し本発明では、電力制御手段は、第1残量パラメータが残量閾値以上である場合、第2電圧パラメータが第1電圧パラメータ以下になるように第2蓄電装置から電力を放電させる積極放電制御を実行し、第1残量パラメータが残量閾値未満である場合に、上述のように第2蓄電装置の放電の制限を伴うレンジ延長制御を実行する。これにより、第1蓄電装置に蓄えられている電力を使い切るためのレンジ延長制御を開始するまでの間に第2蓄電装置に過剰な電力が蓄えられている場合には、レンジ延長制御の実行中に第2蓄電装置から意図しない電力が放電されないように第2蓄電装置の残量を積極的に減らすことができる。
【0014】
(3)本発明において、第1電圧パラメータ取得手段は、第1蓄電装置の閉回路電圧の実効値を第1電圧パラメータとして取得する。第1蓄電装置の閉回路電圧の瞬時値は、回転電機を含む負荷変動に応じて変動する。これに対し本発明では、第1蓄電装置の閉回路電圧の実効値を第1電圧パラメータとすることにより、第2蓄電装置からの放電を過剰に抑制してしまうことによる運転性能の悪化を防止することができる。
【0015】
(4)本発明において、第1電圧パラメータ取得手段は、第1蓄電装置から出力閾値に相当する電力が出力されているときにおける第1蓄電装置の閉回路電圧を第1電圧パラメータとして取得する。本発明によれば、第2電圧パラメータがこのように定義された第1電圧パラメータ以下になるまで積極放電制御を実行することにより、レンジ延長制御の実行中に第2蓄電装置から意図せず電力が放電されてしまうことをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る電源システムを搭載する車両の構成を示す図である。
図2】第1バッテリ及び第2バッテリの使用電圧範囲を比較した図である。
図3】電圧変換器の回路構成の一例を示す図である。
図4】電力マネジメント処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図5】コンバータ通過電力上限を算出する手順を示すフローチャートである。
図6】レンジ延長制御によってコンバータ通過電力上限を算出する具体的な手順を示すフローチャートである。
図7】インバータ通過電力上限を算出する手順を示すフローチャートである。
図8】第1SOCがランプ点灯閾値の近傍まで低下した時における第1出力上限及びシステム出力の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る電源システム1を搭載する電動車両V(以下、単に「車両」という)の構成を示す図である。
【0018】
車両Vは、駆動輪Wと、この駆動輪Wに連結された回転電機としての駆動モータMと、この駆動モータMと後述の第1バッテリB1及び第2バッテリB2との間での電力の授受を行う電源システム1と、を備える。なお本実施形態では、車両Vは、主として駆動モータMで発生する動力によって加減速するもの例に説明するが、本発明はこれに限らない。車両Vは、動力発生源として駆動モータMとエンジンとを搭載する所謂ハイブリッド車両としてもよい。
【0019】
駆動モータMは、図示しない動力伝達機構を介して駆動輪Wに連結されている。電源システム1から駆動モータMに三相交流電力を供給することによって駆動モータMで発生させたトルクは、図示しない動力伝達機構を介して駆動輪Wに伝達され、駆動輪Wを回転させ、車両Vを走行させる。また駆動モータMは、車両Vの減速時には発電機の機能を発揮し、回生電力を発電するとともに、この回生電力の大きさに応じた回生制動トルクを駆動輪Wに付与する。駆動モータMによって発電された回生電力は、電源システム1のバッテリB1,B2に適宜充電される。
【0020】
電源システム1は、第1バッテリB1が接続された第1電力回路2と、第2バッテリB2が接続された第2電力回路3と、これら第1電力回路2と第2電力回路3とを接続する電圧変換器5と、駆動モータMを含む各種電気負荷を有する負荷回路4と、これら電力回路2,3,4及び電圧変換器5を操作することにより、これら回路2,3,4における電力の流れやバッテリB1,B2の充放電を制御する電子制御ユニット群7と、を備える。電子制御ユニット群7は、それぞれコンピュータであるマネジメントECU71と、モータECU72と、コンバータECU73と、第1バッテリECU74と、第2バッテリECU75と、を備える。
【0021】
第1バッテリB1は、化学エネルギを電気エネルギに変換する放電と、電気エネルギを化学エネルギに変換する充電との両方が可能な二次電池である。以下では、この第1バッテリB1として、電極間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う所謂リチウムイオン蓄電池を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。
【0022】
第1バッテリB1には、第1バッテリB1の内部状態を推定するための第1バッテリセンサユニット81が設けられている。第1バッテリセンサユニット81は、第1バッテリECU74において第1バッテリB1の残量に相当する充電率(バッテリの蓄電量を百分率で表したもの)や温度等を取得するために必要な物理量を検出し、検出値に応じた信号を第1バッテリECU74へ送信する複数のセンサによって構成される。より具体的には、第1バッテリセンサユニット81は、第1バッテリB1の端子電圧を検出する電圧センサ、第1バッテリB1を流れる電流を検出する電流センサ、及び第1バッテリB1の温度を検出する温度センサ等によって構成される。
【0023】
第2バッテリB2は、化学エネルギを電気エネルギに変換する放電と、電気エネルギを化学エネルギに変換する充電との両方が可能な二次電池である。以下では、この第2バッテリB2として、電極間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う所謂リチウムイオン蓄電池を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。第2バッテリB2は、例えばキャパシタを用いてもよい。
【0024】
第2バッテリB2には、第2バッテリB2の内部状態を推定するための第2バッテリセンサユニット82が設けられている。第2バッテリセンサユニット82は、第2バッテリECU75において第2バッテリB2の充電率や温度等を取得するために必要な物理量を検出し、検出値に応じた信号を第2バッテリECU75へ送信する複数のセンサによって構成される。より具体的には、第2バッテリセンサユニット82は、第2バッテリB2の端子電圧を検出する電圧センサ、第2バッテリB2を流れる電流を検出する電流センサ、及び第2バッテリB2の温度を検出する温度センサ等によって構成される。
【0025】
ここで第1バッテリB1の特性と第2バッテリB2の特性とを比較する。
第1バッテリB1は、第2バッテリB2よりも出力重量密度が低くかつエネルギ重量密度が高い。また第1バッテリB1は第2バッテリB2よりも容量が大きい。すなわち、第1バッテリB1は、エネルギ重量密度の点で第2バッテリB2よりも優れる。なお、エネルギ重量密度とは、単位重量あたりの電力量[Wh/kg]であり、出力重量密度とは、単位重量あたりの電力[W/kg]である。したがって、エネルギ重量密度が優れている第1バッテリB1は、高容量を主目的とした容量型の蓄電器であり、出力重量密度が優れている第2バッテリB2は、高出力を主目的とした出力型の蓄電器である。このため電源システム1では、第1バッテリB1を主電源として用い、第2バッテリB2をこの第1バッテリB1を補う副電源として用いる。
【0026】
図2は、電源システム1における第1バッテリB1及び第2バッテリB2の使用電圧範囲を比較した図である。図2において、左側は第1バッテリB1の使用電圧範囲を示す図であり、右側は第2バッテリB2の使用電圧範囲を示す図である。図2において、横軸はバッテリを流れる電流を示し、縦軸はバッテリの電圧を示す。
【0027】
図2に示すように、バッテリB1,B2の静的電圧(すなわち、バッテリに電流が流れていない状態における電圧であって、開回路電圧ともいう)は、充電率が高くなるほど高くなる特性がある。したがってバッテリB1,B2の静的電圧に対する使用電圧範囲の上限は、充電率が最大値(例えば、100%)のときにおける各々の静的電圧であり、下限は、充電率が最小値(例えば、0%)のときにおける各々の静的電圧である。図2に示すように、第2バッテリB2の静的電圧に対する使用電圧範囲の上限は、第1バッテリB1の静的電圧に対する使用電圧範囲の上限よりも低い。このため車両Vの走行中、第2バッテリB2の静的電圧は、基本的には第1バッテリB1の静的電圧よりも低く維持される。
【0028】
図2に示すように、バッテリB1,B2の閉回路電圧(すなわち、バッテリに電流が流れている状態における電圧)も、充電率が高くなるほど高くなる特性がある。またバッテリB1,B2には内部抵抗が存在することから、その閉回路電圧は、放電電流が大きくなるほど静的電圧から低くなり、充電電流が大きくなるほど静的電圧から高くなる特性がある。したがってバッテリB1,B2の閉回路電圧に対する使用電圧範囲の上限は、各々の静的電圧に対する使用電圧範囲の上限よりも高く、下限は、各々の静的電圧に対する使用電圧範囲の下限よりも低くなっている。換言すれば、バッテリB1,B2の閉回路電圧に対する使用電圧範囲は、各々の静的電圧に対する使用電圧範囲を含む。図2に示すように、第1バッテリB1の閉回路電圧に対する使用電圧範囲は、第2バッテリB2の閉回路電圧に対する使用電圧範囲と重複する。
【0029】
また充電電流が大きくなりすぎるとバッテリB1,B2の劣化が促進されることから、これらバッテリB1,B2の閉回路電圧に対する使用電圧範囲の上限は、これらバッテリB1,B2の状態に基づいて、これらバッテリB1,B2が劣化しないように定められる。以下では、これらバッテリB1,B2の閉回路電圧の使用範囲の上限を、劣化上限電圧ともいう。
【0030】
また放電電流が大きくなりすぎると、バッテリB1,B2の劣化が促進されることから、これらバッテリB1,B2の閉回路電圧に対する使用電圧範囲の下限は、これらバッテリB1,B2の状態に基づいて、これらバッテリB1,B2が劣化しないように定められる。以下では、これらバッテリB1,B2の閉回路電圧に対する使用電圧範囲の下限を、劣化下限電圧ともいう。
【0031】
図1に戻り、第1電力回路2は、第1バッテリB1と、この第1バッテリB1の正負両極と電圧変換器5の高圧側の正極端子及び負極端子とを接続する第1電力線21p,21nと、これら第1電力線21p,21nに設けられた正極コンタクタ22p及び負極コンタクタ22nと、を備える。
【0032】
コンタクタ22p,22nは、外部からの指令信号が入力されていない状態では開成して第1バッテリB1の両電極と第1電力線21p,21nとの導通を絶ち、指令信号が入力されている状態では閉成して第1バッテリB1と第1電力線21p,21nとを接続するノーマルオープン型である。これらコンタクタ22p,22nは、第1バッテリECU74から送信される指令信号に応じて開閉する。なお正極コンタクタ22pは、第1電力回路2や負荷回路4等に設けられる複数の平滑コンデンサへの突入電流を緩和するためのプリチャージ抵抗を有するプリチャージコンタクタとなっている。
【0033】
第2電力回路3は、第2バッテリB2と、この第2バッテリB2の正負両極と電圧変換器5の低圧側の正極端子及び負極端子とを接続する第2電力線31p,31nと、これら第2電力線31p,31nに設けられた正極コンタクタ32p及び負極コンタクタ32nと、第2電力線31pに設けられた電流センサ33と、を備える。
【0034】
コンタクタ32p,32nは、外部からの指令信号が入力されていない状態では開成して第2バッテリB2の両電極と第2電力線31p,31nとの導通を絶ち、指令信号が入力されている状態では閉成して第2バッテリB2と第2電力線31p,31nとを接続するノーマルオープン型である。これらコンタクタ32p,32nは、第2バッテリECU75から送信される指令信号に応じて開閉する。なお正極コンタクタ32pは、第1電力回路2や負荷回路4等に設けられる複数の平滑コンデンサへの突入電流を緩和するためのプリチャージ抵抗を有するプリチャージコンタクタとなっている。
【0035】
電流センサ33は、第2電力線31pを流れる電流、すなわち電圧変換器5を流れる電流である通過電流に応じた検出信号をコンバータECU73へ送信する。なお本実施形態では、通過電流の向きは、第2電力回路3側から第1電力回路2側を正とし、第1電力回路2側から第2電力回路3側を負とする。
【0036】
負荷回路4は、車両補機42と、駆動モータMが接続された電力変換器43と、これら車両補機42及び電力変換器43と第1電力回路2とを接続する負荷電力線41p,41nと、を備える。
【0037】
車両補機42は、バッテリヒータ、エアコンプレッサ、DCDCコンバータ、及び車載充電器等の複数の電気負荷によって構成される。車両補機42は、負荷電力線41p,41nによって第1電力回路2の第1電力線21p,21nに接続されており、第1電力線21p,21nにおける電力を消費することによって作動する。車両補機42を構成する各種電気負荷の作動状態に関する情報は、例えばマネジメントECU71へ送信される。
【0038】
電力変換器43は、負荷電力線41p,41nによって、車両補機42と並列になるように第1電力線21p,21nに接続されている。電力変換器43は、第1電力線21p,21nと駆動モータMとの間で電力を変換する。電力変換器43は、例えば、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT)をブリッジ接続して構成されるブリッジ回路を備えた、パルス幅変調によるPWMインバータであり、直流電力と交流電力とを変換する機能を備える。電力変換器43は、その直流入出力側において第1電力線21p,21nに接続され、その交流入出力側において駆動モータMのU相、V相、W相の各コイルに接続されている。電力変換器43は、モータECU72の図示しないゲートドライブ回路から所定のタイミングで生成されるゲート駆動信号に従って各相のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより、第1電力線21p,21nにおける直流電力を三相交流電力に変換して駆動モータMに供給したり、駆動モータMから供給される三相交流電力を直流電力に変換して第1電力線21p,21nに供給したりする。
【0039】
電圧変換器5は、第1電力回路2と第2電力回路3とを接続し、これら両回路2,3の間で電圧を変換する。この電圧変換器5には、既知の昇圧回路が用いられる。
【0040】
図3は、電圧変換器5の回路構成の一例を示す図である。電圧変換器5は、第1バッテリB1が接続される第1電力線21p,21nと、第2バッテリB2が接続される第2電力線31p,31nと、を接続し、これら第1電力線21p,21n及び第2電力線31p,31nの間で電圧を変換する。電圧変換器5は、第1リアクトルL1と、第2リアクトルL2と、第1ハイアーム素子53Hと、第1ローアーム素子53Lと、第2ハイアーム素子54Hと、第2ローアーム素子54Lと、負母線55と、低圧側端子56p,56nと、高圧側端子57p,57nと、図示しない平滑コンデンサと、を組み合わせて構成されるフルブリッジ型のDCDCコンバータである。
【0041】
低圧側端子56p,56nは、第2電力線31p,31nに接続され、高圧側端子57p,57nは第1電力線21p,21nに接続される。負母線55は、低圧側端子56nと高圧側端子57nとを接続する配線である。
【0042】
第1リアクトルL1は、その一端側が低圧側端子56pに接続され、その他端側が第1ハイアーム素子53Hと第1ローアーム素子53Lとの接続ノード53に接続される。第1ハイアーム素子53H及び第1ローアーム素子53Lは、それぞれ、IGBTやMOSFET等の既知のパワースイッチング素子と、このパワースイッチング素子に接続された還流ダイオードと、を備える。これらハイアーム素子53H及びローアーム素子53Lは、高圧側端子57pと負母線55との間で、直列に、この順で接続される。
【0043】
第1ハイアーム素子53Hのパワースイッチング素子のコレクタは高圧側端子57pに接続され、そのエミッタは第1ローアーム素子53Lのコレクタに接続される。第1ローアーム素子53Lのパワースイッチング素子のエミッタは、負母線55に接続される。第1ハイアーム素子53Hに設けられる還流ダイオードの順方向は、第1リアクトルL1から高圧側端子57pへ向かう向きである。また第1ローアーム素子53Lに設けられる還流ダイオードの順方向は、負母線55から第1リアクトルL1へ向かう向きである。
【0044】
第2リアクトルL2は、その一端側が低圧側端子56pに接続され、その他端側が第2ハイアーム素子54Hと第2ローアーム素子54Lとの接続ノード54に接続される。第2ハイアーム素子54H及び第2ローアーム素子54Lは、それぞれ、IGBTやMOSFET等の既知のパワースイッチング素子と、このパワースイッチング素子に接続された還流ダイオードと、を備える。これらハイアーム素子54H及びローアーム素子54Lは、高圧側端子57pと負母線55との間で、直列に、この順で接続される。
【0045】
第2ハイアーム素子54Hのパワースイッチング素子のコレクタは高圧側端子57pに接続され、そのエミッタは第2ローアーム素子54Lのコレクタに接続される。第2ローアーム素子54Lのパワースイッチング素子のエミッタは、負母線55に接続される。第2ハイアーム素子54Hに設けられる還流ダイオードの順方向は、第2リアクトルL2から高圧側端子57pへ向かう向きである。また第2ローアーム素子54Lに設けられる還流ダイオードの順方向は、負母線55から第2リアクトルL2へ向かう向きである。
【0046】
電圧変換器5は、コンバータECU73の図示しないゲートドライブ回路から所定のタイミングで生成されるゲート駆動信号に従い、第1ハイアーム素子53H及び第2ローアーム素子54Lと、第1ローアーム素子53L及び第2ハイアーム素子54Hとを交互にオン/オフ駆動することにより、第1電力線21p,21nと第2電力線31p,31nとの間で電圧を変換する。
【0047】
第2バッテリB2の静的電圧は、基本的には第1バッテリB1の静的電圧よりも低く維持される。したがって基本的には、第1電力線21p,21nの電圧は第2電力線31p,31nの電圧よりも高い。そこでコンバータECU73は、第1バッテリB1から出力される電力と第2バッテリB2から出力される電力との両方を用いて駆動モータMを駆動する場合には、電圧変換器5において昇圧機能が発揮されるように電圧変換器5を操作する。昇圧機能とは、低圧側端子56p,56nが接続されている第2電力線31p,31nにおける電力を昇圧して、高圧側端子57p,57nが接続されている第1電力線21p,21nに出力する機能をいい、これにより第2電力線31p,31n側から第1電力線21p,21n側へ正の通過電流が流れる。また第2バッテリB2の放電を抑制し、第1バッテリB1から出力される電力のみで駆動モータMを駆動する場合、コンバータECU73は、電圧変換器5をオフにし、第1電力線21p,21nから第2電力線31p,31nへ電流が流れないようにする。
【0048】
また減速時に駆動モータMから第1電力線21p,21nに出力される回生電力によって第1バッテリB1や第2バッテリB2を充電する場合には、コンバータECU73は、電圧変換器5において降圧機能を発揮されるように電圧変換器5を操作する。降圧機能とは、高圧側端子57p,57nが接続されている第1電力線21p,21nにおける電力を降圧して、低圧側端子56p,56nが接続されている第2電力線31p,31nに出力する機能をいい、これにより第1電力線21p,21n側から第2電力線31p,31n側へ負の通過電流が流れる。
【0049】
図1に戻り、第1バッテリECU74は、主に第1バッテリB1の状態監視及び第1電力回路2のコンタクタ22p,22nの開閉操作を担うコンピュータである。第1バッテリECU74は、第1バッテリセンサユニット81から送信される検出値を用いた既知のアルゴリズムに基づいて、第1バッテリB1の内部状態を表す様々なパラメータ、より具体的には、第1バッテリB1の温度、第1バッテリB1の内部抵抗、第1バッテリB1の静的電圧、第1バッテリB1の閉回路電圧、第1バッテリB1から出力可能な電力に相当する第1出力上限、及び第1バッテリB1の充電率に相当する第1SOC等を算出する。以上より本実施形態において、第1バッテリB1の出力上限である第1出力上限を取得する第1出力上限取得手段は、第1バッテリセンサユニット81及び第1バッテリECU74によって構成される。また本実施形態において、第1バッテリB1の残量に応じて増減する第1残量パラメータとしての第1SOCを取得する第1残量パラメータ取得手段は、第1バッテリセンサユニット81及び第1バッテリECU74によって構成される。第1バッテリECU74において取得した第1バッテリB1の内部状態を表すパラメータに関する情報は、例えばマネジメントECU71へ送信される。
【0050】
第2バッテリECU75は、主に第2バッテリB2の状態監視及び第2電力回路3のコンタクタ32p,32nの開閉操作を担うコンピュータである。第2バッテリECU75は、第2バッテリセンサユニット82から送信される検出値を用いた既知のアルゴリズムに基づいて、第2バッテリB2の内部状態を表す様々なパラメータ、より具体的には、第2バッテリB2の温度、第2バッテリB2の内部抵抗、第2バッテリB2の静的電圧、第2バッテリB2の閉回路電圧、第2バッテリB2から出力可能な電力に相当する第2出力上限、及び第2バッテリB2の充電率に相当する第2SOC等を算出する。以上より本実施形態において、第2バッテリB2の静的電圧を取得する第2電圧パラメータ取得手段は、第2バッテリセンサユニット82及び第2バッテリECU75によって構成される。第2バッテリECU75において取得した第2バッテリB2の内部状態を表すパラメータに関する情報は、例えばマネジメントECU71へ送信される。
【0051】
マネジメントECU71は、主に電源システム1全体における電力の流れを管理するコンピュータである。マネジメントECU71は、後に図4を参照して説明する電力マネジメント処理を実行することにより、駆動モータMで発生するトルクに対する指令に相当するトルク指令信号と、電圧変換器5を通過する電力であるコンバータ通過電力に対する指令に相当するコンバータ通過電力指令信号とを生成する。
【0052】
またマネジメントECU71には、充電要求ランプ91と、モニタ92と、残走行距離メータ93と、が接続されている。これら充電要求ランプ91、モニタ92、及び残走行距離メータ93は、それぞれドライバが視認可能な位置に設けられている。
【0053】
充電要求ランプ91は、ドライバに対し第1バッテリB1の充電を促すための報知手段の1つである。マネジメントECU71は、第1SOCが所定のランプ点灯閾値(例えば、後述の図6参照)より大きい場合には充電要求ランプ91を消灯し、第1SOCがランプ点灯閾値以下になった場合には充電要求ランプ91を点灯する。これによりドライバに対し第1バッテリB1の充電を促す。なお第1SOCと第1出力上限とは概ね比例する関係にあることから、マネジメントECU71は、第1出力上限と所定の閾値とを比較することによって充電要求ランプ91を消灯又は点灯させてもよい。
【0054】
残走行距離メータ93は、ドライバに対し走行可能な距離である残走行可能距離を報知するための報知手段の1つである。マネジメントECU71は、第1SOC、第2SOC、第1出力上限、及び第2出力上限を用いた既知のアルゴリズムによって残走行可能距離を算出し、この数値を残走行距離メータ93に表示する。ここでマネジメントECU71は、第1出力上限と第2出力上限との和であるシステム出力上限が所定の出力閾値(例えば、後述の図8参照)未満である場合には、残走行可能距離を0とする。
【0055】
モニタ92は、電源システム1の状態に関する警告情報を、文字や図形等によって表示することにより、ドライバに対し電源システム1の状態を放置する情報表示装置である。なおこの警告情報の内容や、モニタ92に警告情報を表示するタイミングについては、後に図5を参照しながら説明する。
【0056】
モータECU72は、主に、電力変換器43を操作し、第1電力回路2と駆動モータMとの間における電力の流れ、すなわち電力変換器43を通過する電力であるインバータ通過電力の流れを制御するコンピュータである。なお以下においてインバータ通過電力は、第1電力回路2から駆動モータMへ電力が流れる場合、すなわち駆動モータMの力行運転時である場合に正とする。またインバータ通過電力は、駆動モータMから第1電力回路2へ電力が流れる場合、すなわち駆動モータMの回生運転時である場合に負とする。モータECU72は、マネジメントECU71においてインバータ通過電力に対する指令に基づいて算出されるトルク指令信号に基づいて、この指令に応じたトルクが駆動モータMにおいて発生するように電力変換器43を操作する。
【0057】
コンバータECU73は、主に、電圧変換器5を操作し、第1電力回路2と第2電力回路3との間における電力の流れ、すなわち電圧変換器5を通過する電力であるコンバータ通過電力の流れを制御するコンピュータである。なお以下においてコンバータ通過電力は、第2電力回路3から第1電力回路2へ電力が流れる場合、すなわち第2バッテリB2から電力を放電し、第1電力回路2を供給する場合に正とする。またコンバータ通過電力は、第1電力回路2から第2電力回路3へ電力が流れる場合、すなわち第1電力回路2における電力で第2バッテリB2を充電する場合に負とする。コンバータECU73は、マネジメントECU71から送信されるコンバータ通過電力指令信号に応じて、指令に応じたコンバータ通過電力が電圧変換器5を通過するように電圧変換器5を操作する。より具体的には、コンバータECU73は、コンバータ通過電力指令信号に基づいて、電圧変換器5における通過電流に対する目標である目標電流を算出するとともに、電流センサ33によって検出される通過電流(以下、「実通過電流」ともいう)が目標電流になるように、既知のフィードバック制御アルゴリズムに従って電圧変換器5を操作する。
【0058】
図4は、電力マネジメント処理の具体的な手順を示すフローチャートである。この電力マネジメント処理は、残走行可能距離が0になるまで、すなわちシステム出力上限が出力閾値以下になるまで、マネジメントECU71において所定の周期で繰り返し実行される。
【0059】
始めにS1では、マネジメントECU71は、車両補機42において要求されている電力である要求補機電力Pauxを算出し、S2に移る。マネジメントECU71は、車両補機42から送信される各種電気負荷の作動状態に関する情報に基づいて要求補機電力Pauxを算出する。
【0060】
S2では、マネジメントECU71は、電力変換器43におけるインバータ通過電力に対する要求に相当する要求インバータ通過電力Pmot_dを算出し、S3に移る。マネジメントECU71は、ドライバによるアクセルペダルやブレーキペダル等のペダル類P(図1参照)の操作量に基づいてドライバによる要求駆動トルクを算出し、この要求駆動トルクを電力に換算することによって要求インバータ通過電力Pmot_dを算出する。
【0061】
S3では、マネジメントECU71は、電圧変換器5におけるコンバータ通過電力に対する上限に相当するコンバータ通過電力上限Pcnv_maxを算出し、S4に移る。なおコンバータ通過電力上限Pcnv_maxを算出する具体的な手順については、後に図5を参照しながら詳細に説明する。
【0062】
S4では、マネジメントECU71は、電力変換器43におけるインバータ通過電力に対する上限に相当するインバータ通過電力上限Pmot_maxを算出し、S5に移る。なおインバータ通過電力上限Pmot_maxを算出する具体的な手順については、後に図6を参照しながら詳細に説明する。
【0063】
S5では、マネジメントECU71は、要求インバータ通過電力Pmot_dがインバータ通過電力上限Pmot_max以下であるか否かを判定する。
【0064】
S5における判定結果がYESである場合(Pmot_d≦Pmot_maxである場合)、マネジメントECU71は、S2において算出した要求インバータ通過電力Pmot_dを電力変換器43におけるインバータ通過電力に対する目標に相当する目標インバータ通過電力Pmot_cmdとし(S6参照)、S8に移る。
【0065】
S5における判定結果がNOである場合(Pmot_d>Pmot_maxである場合)、マネジメントECU71は、S4の処理によって算出したインバータ通過電力上限Pmot_maxを目標インバータ通過電力Pmot_cmdとし(S7参照)、S8に移る。
【0066】
S8では、マネジメントECU71は、電圧変換器5におけるコンバータ通過電力に対する目標に相当する目標コンバータ通過電力Pcnv_cmdを算出した後、S9に移る。より具体的には、マネジメントECU71は、コンバータ通過電力上限Pcnv_max以下の範囲内において、第1バッテリB1及び第2バッテリB2から所定の割合で充放電されるように、目標コンバータ通過電力Pcnv_cmdを算出する。
【0067】
またマネジメントECU71は、後述の積極放電制御要求フラグの値が“1”である場合、目標コンバータ通過電力Pcnv_cmdを0より大きくかつコンバータ通過電力上限Pcnv_max以下の正値に設定する。これによりマネジメントECU71は、積極放電制御要求フラグの値が“1”である場合、第2バッテリB2から電力を放電させ、第2SOCを積極的に低下させる積極放電制御を実行する。
【0068】
またマネジメントECU71は、後述のレンジ延長制御において、コンバータ通過電力上限Pcnv_maxを第2バッテリB2の第2出力上限より小さくすることにより、第2バッテリB2の放電を第2出力上限より制限している間であり(後述の図6のS42参照)、かつ第2SOCが所定の目標第2SOC未満である場合には、目標コンバータ通過電力Pcnv_cmdを積極的に0未満にし、第1電力回路2における電力で第2バッテリB2を積極的に充電することが好ましい。
【0069】
S9では、マネジメントECU71は、S8で算出した目標コンバータ通過電力Pcnv_cmdに応じたコンバータ通過電力指令信号を生成し、これをコンバータECU73へ送信し、S10に移る。これにより第2バッテリB2には目標コンバータ通過電力Pcnv_cmdに応じた電力が充放電される。
【0070】
S10では、マネジメントECU71は、S6又はS7で算出した目標インバータ通過電力Pmot_cmdに基づいてトルク指令信号を生成し、これをモータECU72へ送信し、電力マネジメント処理を終了する。より具体的には、マネジメントECU71は、目標インバータ通過電力Pmot_cmdをトルクに変換することによって目標駆動トルクを算出し、この目標駆動トルクに応じたトルク指令信号を生成する。モータECU72は、このトルク指令信号に基づいて電力変換器43を操作する。これにより第1電力回路2と駆動モータMとの間には、目標インバータ通過電力Pmot_cmdに応じた電力が流れる。
【0071】
図5は、コンバータ通過電力上限Pcnv_maxを算出する手順を示すフローチャートである。
【0072】
始めにS20では、マネジメントECU71は、第1出力上限P1_limを取得し、S21に移る。次にS21では、マネジメントECU71は、第2出力上限P2_limを取得し、S22に移る。次にS22では、マネジメントECU71は、充電要求ランプ91が点灯中であるか否か、すなわち第1SOCがランプ点灯閾値未満であるか否かを判定する。
【0073】
マネジメントECU71は、S22の判定結果がNOである場合、すなわち第1SOCがランプ点灯閾値以上である場合には、S23に移る。S23では、マネジメントECU71は、第1バッテリB1の閉回路電圧に相当する第1電圧パラメータCCV1を取得し、S24に移る。以下では、マネジメントECU71は、第1バッテリB1の閉回路電圧の実効値を第1電圧パラメータCCV1として算出する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。マネジメントECU71は、例えば第1バッテリB1から後述のレンジ延長制御における出力閾値Pe0に相当する電力が出力されているときにおける第1バッテリB1の閉回路電圧を第1電圧パラメータCCV1として算出してもよい。
【0074】
S24では、マネジメントECU71は、第2バッテリB2の静的電圧に相当する第2電圧パラメータOCV2を取得し、S25に移る。
【0075】
S25では、マネジメントECU71は、第2電圧パラメータOCV2は第1電圧パラメータCCV1より大きいか否かを判定する。マネジメントECU71は、S25の判定結果がNOである場合、第2バッテリB2から意図しない電力が放電されるおそれは無いと判断し、S26に移る。S26では、マネジメントECU71は、積極放電制御要求フラグの値を“0”にリセットした後、S27に移る。S27では、マネジメントECU71は、S20及びS21で取得した出力上限P1_lim,P2_limを用いた通常制御に基づいてコンバータ通過電力上限Pcnv_maxを算出し、図4のS4の処理に移る。
【0076】
マネジメントECU71は、S25の判定結果がYESである場合、第2バッテリB2から意図しない電力が放電されるおそれがあると判断し、S28に移る。S28では、マネジメントECU71は、第2電圧パラメータOCV2が第1電圧パラメータCCV1以下になるように第2バッテリB2から積極的に電力を放電させる積極放電制御を開始するべく、積極放電制御要求フラグの値を“1”にした後、S29に移る。S29では、マネジメントECU71は、第2出力上限P2_limをコンバータ通過電力上限Pcnv_maxとし、図4のS4の処理に移る。これによりマネジメントECU71は、積極放電制御を実行する(図4のS8参照)。
【0077】
マネジメントECU71は、S22の判定結果がYESである場合、すなわち第1SOCがランプ点灯閾値未満である場合には、S30に移る。
【0078】
S30では、マネジメントECU71は、モニタ92に、所定の警告情報を表示し、S31に移る。以下で説明するように、第1SOCがランプ点灯閾値未満である場合、第2バッテリB2の出力が制限されるため、ドライバの要求を実現できなくなってしまい、ドライバが違和感を覚えるおそれがある。そこでS30では、マネジメントECU71は、現在、駆動モータMへの出力電力が制限されている状態である旨のメッセージ、及び速やかに第1バッテリB1を充電するよう促す旨のメッセージをモニタ92に表示する。
【0079】
S31では、マネジメントECU71は、積極放電制御要求フラグの値を“0”にリセットした後、S32に移る。S32では、マネジメントECU71は、図6を参照して説明するレンジ延長制御を実行することによってコンバータ通過電力上限Pcnv_maxを算出し、図4のS4の処理に移る。
【0080】
図6は、レンジ延長制御によってコンバータ通過電力上限Pcnv_maxを算出する具体的な手順を示すフローチャートである。
【0081】
S41では、マネジメントECU71は、第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0以下であるか否かを判定する。ここで出力閾値Pe0は、例えば、第1バッテリB1をできるだけ速やかに充電する必要がある車両Vが、外部充電設備へ到達できるよう市街地を走行するために最低限必要な電力の値に設定される。
【0082】
マネジメントECU71は、S41の判定結果がNOである場合、すなわち第1SOCがランプ点灯閾値未満であり(図5のS22参照)、かつ第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0より大きい場合(図6のS41参照)には、S42に移る。S42では、マネジメントECU71は、コンバータ通過電力上限Pcnv_maxを0とし、すなわち第2バッテリB2の放電を禁止し、図4のS4の処理に移る。
【0083】
マネジメントECU71は、S41の判定結果がYESである場合、すなわち第1SOCがランプ点灯閾値未満であり(図5のS22参照)、かつ第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0以下である場合(図6のS41参照)には、S43に移る。S43では、マネジメントECU71は、第2バッテリB2に対するブースト許可出力P2bstを算出し、S44に移る。より具体的には、マネジメントECU71は、出力閾値Pe0から第1出力上限P1_limを減算することによって、ブースト許可出力P2bstを算出する(P2bst=Pe0-P1_lim)。すなわち、出力閾値Pe0と第1出力上限P1_limとの差分をブースト許可出力P2bstとする。
【0084】
S44では、マネジメントECU71は、ブースト許可出力P2bstをコンバータ通過電力上限Pcnv_maxとし、図4のS4の処理に移る。すなわち、マネジメントECU71は、第1SOCがランプ点灯閾値未満であり、かつ第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0以下である場合には、コンバータ通過電力上限Pcnv_maxを0より大きな値とし、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の出力電力を合成することによって出力閾値Pe0を確保できるよう、第2バッテリB2の放電を許可する。すなわちマネジメントECU71は、第1SOCがランプ点灯閾値未満でありかつ第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0以下である場合、第1SOCがランプ点灯閾値未満でありかつ第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0より大きい場合より、コンバータ通過電力上限Pcnv_maxを大きな値にし、第2バッテリB2の放電を許容する。
【0085】
図7は、インバータ通過電力上限Pmot_maxを算出する手順を示すフローチャートである。
【0086】
始めにS51では、マネジメントECU71は、第1出力上限P1_limを取得し、S52に移る。S52では、マネジメントECU71は、第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0以下であるか否かを判定する。
【0087】
マネジメントECU71は、S52の判定結果がNOである場合、すなわち第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0より大きい場合には、S53に移り、S51で取得した第1出力上限P1_limと図4の処理によって算出したコンバータ通過電力上限Pcnv_maxとの和から、図3のS1で取得した要求補機電力Pauxを減算することにより、インバータ通過電力上限Pmot_maxを算出し(Pmot_max=P1_lim+Pcnv_max-Paux)、図4のS5の処理に移る。
【0088】
マネジメントECU71は、S52の判定結果がYESである場合、すなわち第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0以下である場合には、S54に移る。S54では、マネジメントECU71は、出力閾値Pe0をインバータ通過電力上限Pmot_maxとし(Pmot_max=Pe0)、図4のS5の処理に移る。
【0089】
図8は、第1SOCがランプ点灯閾値の近傍まで低下した時における第1出力上限P1_lim(破線)及びシステム出力Psys(実線)の変化を示す図である。ここでシステム出力Psysとは、第1バッテリB1から出力される電力と第2バッテリB2から出力される電力との和である。なお図8の例では、理解を容易にするため、要求補機電力Pauxは0とし、要求インバータ通過電力Pmot_dを常に最大とした場合を示す。
【0090】
第1SOCがランプ点灯閾値より大きい場合、第1バッテリB1及び第2バッテリB2から電力が持ち出されることにより、第1SOCの低下とともに第1出力上限P1_limも低下する。このためシステム出力Psysは、第1出力上限P1_limの低下とともに経路C1をたどり、徐々に低下する。
【0091】
ここでマネジメントECU71は、第1SOCがランプ点灯閾値以下になるまでの間において、第2バッテリB2の静的電圧に相当する第2電圧パラメータOCV2が第1バッテリB1の閉回路電圧に相当する第1電圧パラメータCCV1より大きい場合、第2出力上限P2_limをコンバータ通過電力上限Pcnv_maxとし(図5のS29参照)、第2電圧パラメータOCV2が第1電圧パラメータCCV1以下になるまで第2バッテリB2の電力を放電させる積極放電制御を実行する(図4のS8、図5のS23、S24、S25、及びS28参照)。これにより、第1SOCがランプ点灯閾値以下まで低下した時点では、第2電圧パラメータOCV2を第1電圧パラメータCCV1未満にすることができる。
【0092】
このような積極放電制御を実行した後、マネジメントECU71は、第1SOCがランプ点灯閾値以下になったことに応じてレンジ延長制御を開始する(図5のS32参照)。またこのレンジ延長制御では、マネジメントECU71は、第1バッテリB1の第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0より大きい場合には、コンバータ通過電力上限Pcnv_maxを0とし(図6のS41、及びS42参照)、第2バッテリB2の放電を禁止する。このためシステム出力Psysは、経路C2をたどり、第1出力上限P1_limまで低下する。
【0093】
その後マネジメントECU71は、第1バッテリB1の第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0まで低下したことに応じて、第1出力上限P1_limをインバータ通過電力上限Pmot_maxとし、第1電力回路2から駆動モータMへ供給される電力を第1出力上限P1_lim以下に制限する(図7のS52、S54参照)。またマネジメントECU71は、第1出力上限P1_limが出力閾値Pe0まで低下すると、第1バッテリB1による不足分を補うように第2バッテリB2の放電を許可する(図6のS41、S43、S44参照)。このためシステム出力Psysは、出力閾値Pe0上の経路C3をたどる。その後、第1出力上限P1_limが低下し、第1出力上限P1_lim及び第2出力上限P2_limの和であるシステム出力上限が出力閾値Pe0未満になると、残走行可能距離が0となる。これにより、残走行可能距離が0になるまで、第1バッテリB1に蓄えられている電力を使い切ることができる。また電源システム1では、このように第2バッテリB2の放電の禁止を伴うレンジ延長制御を開始する前に、第2電圧パラメータOCV2が第1電圧パラメータCCV1以下になるまで積極放電制御を実行することにより、レンジ延長制御の実行中であり第2バッテリB2の放電を禁止している間に第2バッテリB2が意図せず放電に転じてしまい、結果として第1バッテリB1に蓄えられている電力を使い切る前に残走行可能距離が0になってしまうことを防止することができる。
【0094】
本実施形態に係る電源システム1によれば、以下の効果を奏する。
(1)電源システム1では、第1バッテリB1を有する第1電力回路2と、閉回路電圧に対する使用電圧範囲が第1バッテリB1と重複しかつ静的電圧が第1バッテリB1よりも低い第2バッテリB2を有する第2電力回路3とを電圧変換器5で接続し、第1電力回路2と駆動モータMとを電力変換器43で接続する。電子制御ユニット群7は、電力変換器43及び電圧変換器5を操作することによって第1バッテリB1及び第2バッテリB2の充放電を制御する。ここで何らかの理由によって第2バッテリB2からの放電を禁止又は抑制したい場合、電子制御ユニット群7は駆動モータMにおける要求インバータ通過電力Pmot_dの全て又は大部分が第1バッテリB1から出力される電力で賄われるように電圧変換器5や電力変換器43を操作する。しかしながら第1バッテリB1を流れる電流が増加すると、第1バッテリB1の閉回路電圧が第2バッテリB2の静的電圧より低くなってしまい、第2バッテリB2から意図せず電力が出力される場合がある。これに対し電子制御ユニット群7は、第2バッテリB2の静的電圧に相当する第2電圧パラメータOCV2が第1バッテリB1の閉回路電圧に相当する第1電圧パラメータCCV1以下になるように第2バッテリB2から電力を放電させる。よって電源システム1によれば、第2バッテリB2の静的電圧が第1バッテリB1の閉回路電圧を下回ってしまうことによって第2バッテリB2が意図せず放電に転じてしまうのを防止することができる。
【0095】
(2)電子制御ユニット群7は、第1SOCがランプ点灯閾値以上である場合、第2電圧パラメータOCV2が第1電圧パラメータCCV1以下になるように第2バッテリB2から電力を放電させる積極放電制御を実行し、第1SOCがランプ点灯閾値未満である場合に、第2バッテリB2の放電の制限を伴うレンジ延長制御を実行する。これにより、第1バッテリB1に蓄えられている電力を使い切るためのレンジ延長制御を開始するまでの間に第2バッテリB2に過剰な電力が蓄えられている場合には、レンジ延長制御の実行中に第2バッテリB2から意図しない電力が放電されないように第2バッテリの第2SOCを積極的に減らすことができる。
【0096】
(3)電源システム1において、マネジメントECU71は、第1バッテリB1の閉回路電圧の実効値を第1電圧パラメータCCV1として取得する。第1バッテリB1の閉回路電圧の瞬時値は、駆動モータMを含む負荷変動に応じて変動する。これに対し電源システム1では、第1バッテリB1の閉回路電圧の実効値を第1電圧パラメータCCV1とすることにより、第2バッテリB2からの放電を過剰に抑制してしまうことによる運転性能の悪化を防止することができる。
【0097】
(4)電源システム1において、マネジメントECU71は、第1バッテリB1から出力閾値Pe0に相当する電力が出力されているときにおける第1バッテリB1の閉回路電圧を第1電圧パラメータCCV1として取得する。電源システム1によれば、第2電圧パラメータOCV2がこのように定義された第1電圧パラメータCCV1以下になるまで積極放電制御を実行することにより、レンジ延長制御の実行中に第2バッテリB2から意図せず電力が放電されてしまうことをより確実に防止することができる。
【0098】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0099】
V…電動車両
M…駆動モータ(回転電機)
1…電源システム
2…第1電力回路
21p,21n…第1電力線
B1…第1バッテリ(第1蓄電装置)
3…第2電力回路(第2電力回路)
31p,31n…第2電力線
B2…第2バッテリ(第2蓄電装置)
4…負荷回路
43…電力変換器
5…電圧変換器
7…電子制御ユニット群7(電力制御手段)
71…マネジメントECU(第1電圧パラメータ取得手段)
72…モータECU
73…コンバータECU
74…第1バッテリECU(第1出力上限取得手段、第1残量パラメータ取得手段、第1電圧パラメータ取得手段)
75…第2バッテリECU(第2電圧パラメータ取得手段)
81…第1バッテリセンサユニット(第1出力上限取得手段、第1残量パラメータ取得手段、第1電圧パラメータ取得手段)
82…第2バッテリセンサユニット(第2電圧パラメータ取得手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8