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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】攪拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/41 20220101AFI20241017BHJP
   B01F 27/09 20220101ALI20241017BHJP
   B01F 27/2121 20220101ALI20241017BHJP
   B01F 35/60 20220101ALI20241017BHJP
【FI】
B01F35/41
B01F27/09
B01F27/2121
B01F35/60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021061798
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157520
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 司
(72)【発明者】
【氏名】渡部 剛久
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-200775(JP,A)
【文献】特開2018-171561(JP,A)
【文献】特開2019-076822(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0053132(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1729045(KR,B1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0471347(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/00 - 35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を攪拌するための攪拌装置であって、
前記流体内に配置されるプロペラと、
前記プロペラに連結され、前記プロペラから上方へと延び、少なくともその一部が前記流体から露出するように配置される回転軸と、
前記回転軸を回転駆動するためのモータと、
前記回転軸が破断予想部分で破断した場合に、前記回転軸のうち前記破断予想部分を基準として前記プロペラ側に位置する第1軸部分、及び前記プロペラの落下を防止するための安全装置と、を備え、
前記破断予想部分は、前記回転軸において曲げと捻じりの複合応力により破断することが予想される部分であり、
前記回転軸は、前記第1軸部分と、前記流体の上方に設けられる支持部によって支持され、前記破断予想部分を基準として前記プロペラとは反対側に位置する第2軸部分と、を有し、
前記安全装置は、前記第1軸部分に設けられる第1部分と、前記支持部に直接的または間接的に固定され、前記破断予想部分が破断したとき、前記第1部分に下側から当接することで、前記第1軸部分及び前記プロペラが落下することを防止するための第2部分と、を有し、
前記破断予想部分は、前記回転軸のうち一体成形されて前記回転軸の軸線方向に延びる部分の一部であることを特徴とする、攪拌装置。
【請求項2】
流体を攪拌するための攪拌装置であって、
前記流体内に配置されるプロペラと、
前記プロペラに連結され、前記プロペラから上方へと延び、少なくともその一部が前記流体から露出するように配置される回転軸と、
前記回転軸を回転駆動するためのモータと、
前記回転軸が破断予想部分で破断した場合に、前記回転軸のうち前記破断予想部分を基準として前記プロペラ側に位置する第1軸部分、及び前記プロペラの落下を防止するための安全装置と、を備え、
前記破断予想部分は、前記回転軸において曲げと捻じりの複合応力により破断することが予想される部分であり、
前記回転軸は、前記第1軸部分と、前記流体の上方に設けられる支持部によって支持され、前記破断予想部分を基準として前記プロペラとは反対側に位置する第2軸部分と、を有し、
前記安全装置は、前記第1軸部分に設けられる第1部分と、前記支持部に直接的または間接的に固定され、前記破断予想部分が破断したとき、前記第1部分に下側から当接することで、前記第1軸部分及び前記プロペラが落下することを防止するための第2部分と、を有し、
前記回転軸は、前記プロペラに連結される第1回転軸と、前記プロペラとは反対側で前記第1回転軸に連結され、前記破断予想部分を含む第2回転軸と、を有し、
前記第1軸部分は、前記第1回転軸と、前記第2回転軸のうち前記第1回転軸側の端部から前記破断予想部分までの第3軸部分を含み、
前記第2軸部分は、前記第2回転軸のうち前記破断予想部分から前記第1回転軸とは反対側の端部までの第4軸部分を含む、攪拌装置。
【請求項3】
前記第2軸部分と前記支持部との間に介在する介在部をさらに備え、
前記介在部の一部を構成し、少なくとも前記第2回転軸の一部を内包する筒状の筐体と、
前記介在部の他の一部を構成し、前記筐体内で前記第2回転軸を回転可能に支持する軸受と、をさらに備え、
前記破断予想部分は、前記第2回転軸のうち前記軸受に支持される部分の直下に位置する、請求項2に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記第1部分は、前記第1軸部分から前記回転軸の軸方向に直交する方向へと突出する突部であり、
前記第2部分は、前記筐体の前記プロペラ側の端部から前記プロペラ側へと延びる第3部分と、前記第3部分の前記プロペラ側の端部から前記回転軸側へと延びる第4部分と、を有し、
前記第1部分は、前記回転軸の軸方向において、前記筐体の前記プロペラ側の端部と前記第4部分との間に設けられ、
前記第2部分は、前記破断予想部分が破断したとき、その前記第4部分が前記第1部分に下側から当接することで、前記第1軸部分及び前記プロペラが落下することを防止する、請求項3に記載の攪拌装置。
【請求項5】
前記第1回転軸は、前記プロペラ側の端部から前記第2回転軸側の端部の近傍までの主部と、前記主部の前記第2回転軸側の端部に連結され、前記第2回転軸側の端部の近傍から前記第2回転軸側の端部までの副部と、を有し、
前記第1部分は前記副部に設けられる、請求項2乃至4のいずれかに記載の攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1で提案されているような攪拌装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、槽内の水を攪拌するための縦軸型の攪拌装置が記載されている。この攪拌装置は、水中に配置されるプロペラ(第1インペラ)と、プロペラに連結され、プロペラから上方へと延び、その一部が水面から露出するように配置される回転軸と、を備える。プロペラは、回転軸と一体的に回転することで、下向き又は外向きの水流を発生させ、水面から下方へと回転軸に沿って流れる水流と、水面上に回転軸の周囲から該回転軸側へと流れる水流と、を発生させるように構成される。回転軸のうち水中に浸漬する浸漬部と水面から露出する露出部との境界付近には、回転軸の回転に伴い動作する除去具が設けられる。除去具は、回転軸が回転した際に、回転軸の付近の水面に浮かぶスカムと接触し、かつスカムを水面から除去するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-15705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の攪拌装置では、プロペラが回転することにより回転軸に曲げと捻じりの複合応力が生じる。この複合応力により回転軸が破断した場合、回転軸のうち破断部分よりもプロペラ側の部分及びプロペラが槽内に落下してしまう。
液体が満たされた槽内に回転軸の一部やプロペラが落下すると、例えば、落下した部材を槽内から除去するために、一度槽内の液体を排出する作業などを行う必要が生じ、復旧に多大な時間とコストを消費することになる。
【0006】
そこで、本開示は、回転軸が破断した場合であっても、回転軸のうち破断部分よりもプロペラ側の部分及びプロペラが落下することを防止することが可能な、攪拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る攪拌装置は、流体を攪拌するための攪拌装置であって、前記流体内に配置されるプロペラと、前記プロペラに連結され、前記プロペラから上方へと延び、少なくともその一部が前記流体から露出するように配置される回転軸と、前記回転軸を回転駆動するためのモータと、前記回転軸が破断予想部分で破断した場合に、前記回転軸のうち前記破断予想部分を基準として前記プロペラ側に位置する第1軸部分、及び前記プロペラの落下を防止するための安全装置と、を備え、前記破断予想部分は、前記回転軸において曲げと捻じりの複合応力により破断することが予想される破断予想部分であり、前記回転軸は、前記第1軸部分と、前記流体の上方に設けられる支持部によって支持され、前記破断予想部分を基準として前記プロペラとは反対側に位置する第2軸部分と、を有し、前記安全装置は、前記第1軸部分に設けられる第1部分と、前記支持部に直接的または間接的に固定され、前記破断予想部分が破断したとき、前記第1部分に下側から当接することで、前記第1軸部分及び前記プロペラが落下することを防止するための第2部分と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第1軸部分に設けられる第1部分と、支持部に直接的または間接的に固定され、破断予想部分が破断したとき、第1部分に下側から当接することで、第1軸部分及びプロペラが落下することを防止するための第2部分と、を有する安全装置を備えるので、回転軸が破断した場合であっても、回転軸のうち破断部分よりもプロペラ側の部分及びプロペラが落下することを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回転軸が破断した場合であっても、回転軸のうち破断部分よりもプロペラ側の部分及びプロペラが落下することを防止することが可能な、攪拌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る攪拌装置が貯留槽の架台に取り付けられた様子を示す概略図である。
図2】本開示の一実施形態に係る攪拌装置の全体構成を示す概略図である。
図3】本開示の一実施形態に係る攪拌装置が備える第2シャフト及びその周辺部分を示すシャフトの軸方向に沿った断面図である。
図4】本開示の一実施形態に係る攪拌装置が備える安全装置の斜視図である。
図5A】本開示の一実施形態に係る攪拌装置が備える安全装置及びその周辺部分を示すシャフトの軸方向に沿った断面図であって、第2シャフトが破断予想部分で破断する前の状態を示す概略図である。
図5B】本開示の一実施形態に係る攪拌装置が備える安全装置及びその周辺部分を示すシャフトの軸方向に沿った断面図であって、第2シャフトが破断予想部分で破断した後の状態を示す概略図である。
図6A】本開示の一実施形態に係る攪拌装置が備える安全装置の第1変形例を示す概略図である。
図6B】本開示の一実施形態に係る攪拌装置が備える安全装置の第2変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に係る攪拌装置について図面を参照して説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0012】
(貯留槽T)
図1は、本実施形態に係る攪拌装置が貯留槽の架台に取り付けられた様子を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る攪拌装置10は、貯留槽T(槽)内の汚水W(流体)を攪拌するために設けられる。貯留槽Tは、例えば、合併浄化槽又は排水処理槽などであっっても良いし、その他の槽であっても良い。貯留槽Tは上部に開口を有し、この開口の少なくとも一部を塞ぐために蓋C(支持部の一部)が設けられる。蓋Cには挿通孔IHが設けられ、挿通孔IHの少なくとも一部を塞ぐように、架台F(支持部の他の一部)が架設される。攪拌装置10は、架台Fに対して取り付け板98を介して取り付けられる。蓋C、架台Fは共に前記開口において攪拌装置10を支持する支持部として構成される。
【0013】
(攪拌装置10)
図1に示すように、攪拌装置10は、貯留槽Tに貯えられた汚水W内に配置されるプロペラ12と、プロペラ12に連結され、プロペラ12から上方へと延び、少なくともその一部が汚水Wから露出するように配置されるシャフト20(回転軸)と、シャフト20を回転駆動するためのモータ70と、シャフト20に設けられる安全装置80と、を備える。
【0014】
(シャフト20)
図2は、本実施形態に係る攪拌装置の全体構成を示す概略図である。図2に示すように、シャフト20は、プロペラ12に連結される第1シャフト22(第1回転軸)と、プロペラ12とは反対側で第1シャフト22に連結される第2シャフト32(第2回転軸)と、を有する。第1シャフト22と第2シャフト32とは、互いに同軸状に連結される。
【0015】
(第1シャフト22)
第1シャフト22は、プロペラ12に連結されるシャフト主部24(主部)と、シャフト主部24と第2シャフト32との間に介在するシャフト副部26(副部)と、を有する。シャフト主部24とシャフト副部26とは、互いに同軸状に連結される。
【0016】
図3は、本実施形態に係る攪拌装置が備える第2シャフト及びその周辺部分を示すシャフトの軸方向に沿った断面図である。シャフト主部24は、軸孔24cを有し、主として中空に形成される。シャフト主部24の第2シャフト32側の端部24bには、円板状のフランジ25が設けられる。また、シャフト副部26のプロペラ12側の端部26aには、シャフト主部24のフランジ25に対応するように円板状のフランジ27が設けられる。
【0017】
フランジ25、27は、例えば、互いに複数本のボルトで固定されても良い。また、該複数本のボルトそれぞれの頭部がフランジ25またはフランジ27に溶接されていても良く、その他、フランジ同士の締結に用いられる方法を用いることができる。例えばこのようにして、シャフト主部24の端部24bにシャフト副部26の端部26aが強固に連結されても良い。
【0018】
シャフト副部26のプロペラ12とは反対側の端部26bには、安全装置80の一部を構成するフランジ82(第1部分)が設けられる。フランジ82は、シャフト副部26の軸部から軸方向に直交する方向へと突出する突部である。フランジ82の機能については後述する。
【0019】
(第2シャフト32)
第2シャフト32は、シャフト副部26に連結される。具体的には、第2シャフト32のプロペラ12側の端部が、シャフト副部26の軸孔26cに挿入され、該軸孔26cの内壁にキー材44を介して連結される。なお、第2シャフト32のプロペラ12側の端部は、シャフト副部26に対してナットなどの固定具を用いて固定されても良い。第2シャフト32のプロペラ12側の端面32aは、シャフト副部26の軸孔26cのプロペラ12側の開口から露出し、シャフト主部24の軸孔24c内に位置する。第2シャフト32は、該プロペラ12側の端面32aから上方へと延び、プロペラ12とは反対側の端部32bがモータ70の駆動軸72に連結される。第2シャフト32と駆動軸72の連結方法は図示しないが、各種回転軸間の連結方法が採用可能である。
【0020】
上記のような構造によれば、モータ70のトルクが、第2シャフト32、シャフト副部26、シャフト主部24の順に伝達される。
【0021】
本実施形態では、攪拌装置10が、第2シャフト32の一部を内包する筒状の第1筐体40(筐体)をさらに備える。第1筐体40のプロペラ12側の端部40aには、フランジ41が設けられ、第1筐体40のプロペラ12とは反対側の端部40bには、フランジ42が設けられる。
【0022】
第1筐体40の軸孔40cには、第1筐体40内で第2シャフト32を回転可能に支持する複列円錐ころ軸受50(軸受)が設けられる。なお、見た目の煩雑さを避けるため、図3において複列円錐ころ軸受50の断面は簡略化して示してある。ここで、フランジ41の下面に図1に示す取り付け板98が取り付けられる。すなわち、本実施形態では、第2シャフト32が、第1筐体40、複列円錐ころ軸受50及び取り付け板98を介して、汚水Wの上方に設けられる架台Fによって支持される。したがって、本実施形態では、第1筐体40、複列円錐ころ軸受50及び取り付け板98が、後述する第2軸部分92と架台F(支持部の一部)との間に介在する介在部60を構成する。
【0023】
本実施形態では、攪拌装置10が、第2シャフト32のうち第1筐体40よりも上方部分及びモータ70の駆動軸72を内包する筒状の第2筐体45をさらに備える。第2筐体45の端部45aには、フランジ46が設けられる。このフランジ46が、第1筐体40のフランジ42に対して固定される。第2筐体45の軸孔45cには、第2筐体45内で第2シャフト32を回転可能に支持する円筒ころ軸受52が設けられる。なお、見た目の煩雑さを避けるため、図3において円筒ころ軸受52の断面は簡略化して示してある。
【0024】
(安全装置80)
図4は、本実施形態に係る攪拌装置が備える安全装置の斜視図である。図3、4に示すように、本実施形態では、安全装置80が、上記したシャフト副部26と、第1筐体40の下面に設けられる落下防止部85(第2部分)と、を有する。
【0025】
落下防止部85は、第1筐体40の端部40aの下面のうち軸孔40cの一方側を該端部40aの下面に沿って延びる板状の基部86aと、基部86aのうち第1筐体40の径方向の外側端部からプロペラ12側へと延びる板状の中央部86b(第3部分)と、を有する。また、落下防止部85は、基部86aに対応して設けられ、第1筐体40の端部40aの下面のうち軸孔40cの他方側を該端部40aの下面に沿って延びる板状の基部86cと、中央部86bに対応して設けられ、基部86cのうち第1筐体40の径方向の外側端部からプロペラ12側へと延びる板状の中央部86d(第3部分)と、をさらに有する。
【0026】
落下防止部85の基部86a、86cは、第1筐体40及び取り付け板98にボルトなどの固定具を用いて固定されても良い。落下防止部85は、中央部86bのプロペラ12側の端部と中央部86dのプロペラ12側の端部とを接続する先端部87(第4部分)をさらに有する。先端部87には、シャフト副部26の軸部を挿通するための孔88が設けられる。
【0027】
平面視において、落下防止部85の孔88は円形状である。平面視において、同孔88の直径は、シャフト副部26の軸部の直径よりも大きく、シャフト副部26のフランジ82(第1部分)の直径よりも小さい。落下防止部85の先端部87の一部87aは、同先端部87の他の一部から取り外し可能であっても良い。これにより、平面視において、落下防止部85の孔88の内部にシャフト副部26の軸部を容易に配置することが可能となる。
【0028】
シャフト副部26のフランジ82(第1部分)は、シャフト20の軸方向において、第1筐体40のプロペラ12側の端部40aと、落下防止部85の先端部87との間に設けられる。また、シャフト副部26のフランジ27は、シャフト20の軸方向において、落下防止部85の先端部87よりもプロペラ12側に設けられる。
【0029】
攪拌装置10では、プロペラ12が回転することでシャフト20に曲げと捻じりの複合応力が生じる。シャフト20は、この複合応力により破断することが予想される破断予想部分90(図3において第2シャフト32に破線を付した部分)を有する。破断予想部分90は、前記複合応力が大きくなる部分であり、例えば、公知の計算方法などにより導出可能である。なお、破断予想部分90は、シャフト20の任意の位置(本実施形態では、第2シャフト32の任意の位置)に設計することが可能である。本実施形態では、破断予想部分90は、図3に示すように、第2シャフト32のうち複列円錐ころ軸受50に支持される部分の直下に位置するように設計されている。
【0030】
図3に示すように、シャフト20は、破断予想部分90を基準としてプロペラ12側に位置する第1軸部分91と、破断予想部分90を基準としてプロペラ12とは反対側に位置する第2軸部分92と、をさらに有する。第1軸部分91は、第1シャフト22と、第2シャフト32のうち第1シャフト22側の端部から破断予想部分90までの部分(第3軸部分)を含む。一方、第2軸部分92は、第2シャフト32のうち破断予想部分90から第1シャフト22とは反対側の端部32bまでの部分(第4軸部分)を含む。
【0031】
(効果)
主として図5A、5Bに基づき、本実施形態に係る攪拌装置10により得られる作用効果について説明する。図5Aは、本実施形態に係る攪拌装置が備える安全装置及びその周辺部分を示すシャフトの軸方向に沿った断面図であって、第2シャフトが破断予想部分で破断する前の状態を示す概略図である。また、図5Bは、同断面図であって、第2シャフトが破断予想部分で破断した後の状態を示す概略図である。
【0032】
図5A、5Bに示すように、プロペラ12が回転することでシャフト20に曲げと捻じりの複合応力が生じ、破断予想部分90が破断したとき、落下防止部85の先端部87が、フランジ82に下側から当接することで、第1軸部分91及びプロペラ12が落下することを防止することができる。
【0033】
ここで、従来のように攪拌装置10が安全装置80を備えていない場合、破断予想部分90が破断すると、第1軸部分91及びプロペラ12が貯留槽Tの汚水W内に落下してしまう。このような場合、例えば、貯留槽Tから汚水Wを排出し、そのあとで貯留槽Tから第1軸部分91及びプロペラ12を取り除く必要があり、手間や時間が掛かってしまう。一方、本実施形態では、攪拌装置10が安全装置80を備えているので、第1軸部分91及びプロペラ12が貯留槽Tの汚水W内に落下することを防止でき、従来のように上記した手間や時間が掛かることがない。
【0034】
本実施形態では、シャフト20が、プロペラ12に連結される第1シャフト22と、第1シャフト22とモータ70との間に介在する第2シャフト32と、を有し、さらに、第2シャフト32に破断予想部分90が規定される。この構成によれば、シャフト20が破断予想部分90で破断した場合に、第2シャフト32のみを交換すれば良いので、シャフト20の全てを交換する必要がない。したがって、本実施形態では、シャフト20が破断予想部分90で破断した場合の復旧を容易に行うことができる。なお、第2シャフト32は、1つのみ設けられても良いし、複数設けられても良い。また、モータ70と第2シャフと32との間に例えば減速機などが介在しても良い。
【0035】
なお、本実施形態では、破断予想部分90が、比較的交換が容易な第2シャフト32のうち複列円錐ころ軸受50に支持される部分の直下に位置している。
【0036】
本実施形態では、破断予想部分90を基準としてプロペラ12側に位置する第1軸部分91に設けられる第1部分が図4に示すようなフランジ82(突部)であり、破断予想部分90が破断したとき、第1部分に下側から当接する第2部分が、同図に示すような落下防止部85であるので、破断予想部分90が破断したとき、第1軸部分91及びプロペラ12が落下することを簡単な構造で防止することができる。
【0037】
(変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0038】
(第1変形例)
図6Aは、上記実施形態に係る攪拌装置が備える安全装置の第1変形例を示す概略図である。なお、本変形例に係る攪拌装置10´は、第1シャフト22がシャフト主部24及びシャフト副部26を有さずに一つの部材で構成されること、及び安全装置80´の構造を除いて、上記実施形態に係る攪拌装置10と同様の構造である。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0039】
図6Aに示すように、安全装置80´の第1部分82´は、第1シャフト22のプロペラ12とは反対側の端部から軸方向に直交する方向へと突出する基部と、該基部の第1シャフト22とは反対側の端部からプロペラ12とは反対側へと延びる中央部と、該中央部のプロペラ12とは反対側の端部から第2シャフト32側へと延びる先端部と、を有する。また、安全装置80´の落下防止部85´(第2部分)は、第2シャフト32の第2軸部分であって前記第1部分82´の先端部よりもプロペラ12側の位置から軸方向に直交する方向へと突出する突部である。平面視において、第1部分82´の先端部の少なくとも一部が、落下防止部85´の少なくとも一部と重なるように配置される。
【0040】
上記のような構造であっても、安全装置80´は、破断予想部分90が破断したとき、落下防止部85´が、第1部分82´の先端部に下側から当接することで、第1軸部分91及びプロペラ12が落下することを防止することが可能となる。
【0041】
(第2変形例)
図6Bは、上記実施形態に係る攪拌装置が備える安全装置の第2変形例を示す概略図である。なお、本変形例に係る攪拌装置10´´は、第1シャフト22がシャフト主部24及びシャフト副部26を有さずに一つの部材で構成されること、及び安全装置80´´の構造を除いて、上記実施形態に係る攪拌装置10と同様の構造である。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0042】
図6Bに示すように、安全装置80´´の第1部分82´´は、上記第1変形例の第1部分82´と同様の基部、中央部及び先端部を有する。なお、第1部分82´´の先端部は、第1シャフト22の第2シャフト32側の端部と、環状部材102の下面との間に配置される。ここで、環状部材102の軸孔には、第2シャフト32のうちプロペラ12側の端部が挿通される。また、環状部材102の内壁が、キー材104を介して第2シャフト32に連結される。そして、第1シャフト22の第2シャフト32側の端部、第1部分82´´の先端部、及び環状部材102が、ボルトなどの固定具で互いに固定される。
【0043】
また、安全装置80´´の落下防止部85´´(第2部分)は、第1筐体40、取り付け板98に固定されたコの字断面を有するリング状の部材であって、コの字断面の凹部が外側を向くように構成されている。そして、第1部分82´´の先端部の少なくとも一部が、落下防止部85´´の内部に位置するように配置される。
【0044】
上記のような構造であっても、安全装置80´´は、破断予想部分90が破断したとき、落下防止部85´´が、第1部分82´´の先端部に下側から当接することで、第1軸部分91及びプロペラ12が落下することを防止することが可能となる。
【0045】
(その他の変形例)
上記実施形態では、第1部分が第1軸部分91から突出する円板状のフランジ82(突部)である場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、第1部分が、例えば、第1軸部分91から突出する棒状の突部であっても良い。このように第1部分が棒状の突部である場合、例えば、該第1部分が、軸方向の同じ位置で円周方向に等間隔で複数設けられても良い。また、第1部分は、上記以外の態様で第1軸部分91から軸方向に直交する方向へと突出する突部であっても良い。
【0046】
或いは、第1部分は、例えば、図6Aに示す第1部分82´の先端部を厚くし、該先端部のうち第2軸部分92側の端面に設けられる凹部であっても良い。第1部分がこのような凹部である場合、同図において、落下防止部85´(第2部分)の少なくとも一部が、平面視において、該凹部の内部に位置するように配置されても良い。このような構造であっても、安全装置80´は、破断予想部分90が破断したとき、落下防止部85´が、第1部分82´の先端部に設けられる前記凹部の上部に下側から当接することで、第1軸部分91及びプロペラ12が落下することを防止することが可能となる。
【0047】
また、第1部分は、例えば、プロペラ12側に向かうに連れて軸方向に直交する方向の横断面積が小さくなるようなテーパ状であっても良い。そして、第2部分は、この第1部分を挿通するための孔が設けられ、軸方向に直交する方向に延在する板状であっても良い。第2部分を挿通するための孔は、軸方向から見て、テーパ状の第1部分のうちプロペラ12とは反対側の端部よりも小さく、テーパ状の第1部分のうちプロペラ12側の端部よりも大きい。このような構造であっても、安全装置は、破断予想部分90が破断したとき、第2部分が、第1部分に下側から当接することで、第1軸部分91及びプロペラ12が落下することを防止することが可能となる。
【0048】
上記実施形態では、第1筐体40(筐体)が第2シャフト32(第2回転軸)の一部を内包する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、一つの筐体が第2回転軸の全てを内包しても良い。
【0049】
上記実施形態では、シャフト20(回転軸)が第1シャフト22(第1回転軸)及び第2シャフト32(第2回転軸)を有する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、回転軸がプロペラからモータまで延びる一つの部材で構成されても良い。
【0050】
上記実施形態では、複列円錐ころ軸受50(軸受)が第1筐体40(筐体)内で第2シャフト32(第2回転軸)を回転可能に支持する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、円筒ころ軸受が筐体内で第2回転軸を回転可能に支持しても良いし、或いは、その他の軸受が筐体内で第2回転軸を回転可能に支持しても良い。
【0051】
上記実施形態では、落下防止部85(第2部分)の基部86a、86cが、第1筐体40及び取り付け板98にボルトなどの固定具を用いて固定されることで、該落下防止部85(第2部分)が間接的に蓋C及び架台F(支持部)に固定される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、落下防止部85(第2部分)の基部86a、86cが、介在部60及び取り付け板98を介さずに、直接的に蓋C(支持部の一部)または架台F(支持部の他の一部)に固定されても良い。
【0052】
上記実施形態では、支持部が蓋C及び架台Fで構成される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、支持部が、蓋Cのみで構成されても良いし、架台Fのみで構成されても良いし、又は、他の構造であっても良い。
【0053】
(まとめ)
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る攪拌装置は、流体を攪拌するための攪拌装置であって、前記流体内に配置されるプロペラと、前記プロペラに連結され、前記プロペラから上方へと延び、少なくともその一部が前記流体から露出するように配置される回転軸と、前記回転軸を回転駆動するためのモータと、前記回転軸が破断予想部分で破断した場合に、前記回転軸のうち前記破断予想部分を基準として前記プロペラ側に位置する第1軸部分、及び前記プロペラの落下を防止するための安全装置と、を備え、前記破断予想部分は、前記回転軸において曲げと捻じりの複合応力により破断することが予想される部分であり、前記回転軸は、前記第1軸部分と、前記破断予想部分を基準として前記プロペラとは反対側に位置する第2軸部分と、を有し、前記安全装置は、前記第1軸部分に設けられる第1部分と、前記支持部に直接的または間接的に固定され、前記破断予想部分が破断したとき、前記第1部分に下側から当接することで、前記第1軸部分及び前記プロペラが落下することを防止するための第2部分と、を有することを特徴とする。
【0054】
上記構成によれば、第1軸部分に設けられる第1部分と、支持部に直接的または間接的に固定され、破断予想部分が破断したとき、第1部分に下側から当接することで、第1軸部分及びプロペラが落下することを防止するための第2部分と、を有する安全装置を備えるので、回転軸が破断した場合であっても、回転軸のうち破断部分よりもプロペラ側の部分及びプロペラが落下することを防止することが可能となる。
【0055】
前記回転軸は、前記プロペラに連結される第1回転軸と、前記プロペラとは反対側で前記第1回転軸に連結され、前記破断予想部分を含む第2回転軸と、を有し、前記第1軸部分は、前記第1回転軸と、前記第2回転軸のうち前記第1回転軸側の端部から前記破断予想部分までの第3軸部分を含み、前記第2軸部分は、前記第2回転軸のうち前記破断予想部分から前記第1回転軸とは反対側の端部までの第4軸部分を含んでも良い。
【0056】
上記構成によれば、回転軸が、プロペラに連結される第1回転軸と、第1回転軸とモータとの間に介在する第2回転軸と、を有し、さらに、第2回転軸に破断予想部分が規定される。この構成によれば、回転軸が破断予想部分で破断した場合に、第2回転軸のみを交換すれば良いので、回転軸の全てを交換する必要がない。したがって、回転軸が破断予想部分で破断した場合の復旧を容易に行うことができる。なお、第2回転軸は複数設けられても良い。また、モータと第2回転軸との間に例えば減速機などが介在しても良い。
【0057】
前記第2軸部分と前記支持部との間に介在する介在部をさらに備え、前記介在部の一部を構成し、少なくとも前記第2回転軸の一部を内包する筒状の筐体と、前記介在部の他の一部を構成し、前記筐体内で前記第2回転軸を回転可能に支持する軸受と、をさらに備え、前記破断予想部分は、前記第2回転軸のうち前記軸受に支持される部分の直下に位置しても良い。
【0058】
上記構成によれば、回転軸のうちモータから離れたいっそう好適な部分を破断予想部分として規定することが可能となる。
【0059】
前記第1部分は、前記第1軸部分から前記回転軸の軸方向に直交する方向へと突出する突部であり、前記第2部分は、前記筐体の前記プロペラ側の端部から前記プロペラ側へと延びる第3部分と、前記第3部分の前記プロペラ側の端部から前記回転軸側へと延びる第4部分と、を有し、前記第1部分は、前記回転軸の軸方向において、前記筐体の前記プロペラ側の端部と前記第4部分との間に設けられ、前記第2部分は、前記破断予想部分が破断したとき、その前記第4部分が前記第1部分に下側から当接することで、前記第1軸部分及び前記プロペラが落下することを防止しても良い。
【0060】
上記構成によれば、破断予想部分が破断したとき、第1軸部分及びプロペラが落下することを簡単な構造で防止することができる。
【0061】
例えば、前記第1回転軸は、前記プロペラ側の端部から前記第2回転軸側の端部の近傍までの主部と、前記主部の前記第2回転軸側の端部に連結され、前記第2回転軸側の端部の近傍から前記第2回転軸側の端部までの副部と、を有し、前記第1部分は前記副部に設けられても良い。
【符号の説明】
【0062】
10 攪拌装置
12 プロペラ
20 シャフト(回転軸)
22 第1シャフト(第1回転軸)
24 シャフト主部
26 シャフト副部
32 第2シャフト(第2回転軸)
40 第1筐体(筐体)
44 キー材
45 第2筐体
50 複列円錐ころ軸受(軸受)
52 円筒ころ軸受
60 介在部
70 モータ
72 駆動軸
80 安全装置
82 フランジ(第1部分)
85 落下防止部(第2部分)
86a、86b 基部
87 先端部
90 破断予想部分
91 第1軸部分
92 第2軸部分
98 取り付け板
C 蓋(支持部の一部)
F 架台(支持部の他の一部)
IH 挿通孔
T 貯留槽
W 汚水(流体)
WS 液面
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B