(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】射出用ボールネジ機構の耐久試験機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20241017BHJP
G01M 13/02 20190101ALI20241017BHJP
【FI】
B29C45/17
G01M13/02
(21)【出願番号】P 2021066213
(22)【出願日】2021-04-09
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】川北 聖人
(72)【発明者】
【氏名】日原 啓太
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-017472(JP,A)
【文献】特開2003-294581(JP,A)
【文献】実開平01-070140(JP,U)
【文献】特開昭56-060331(JP,A)
【文献】特開平11-183327(JP,A)
【文献】特開2013-088170(JP,A)
【文献】特開2006-021443(JP,A)
【文献】特開2020-037225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/17
B29C 45/76
G01M 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出用サーボモータによって回転されて射出装置のスクリュを軸方向に駆動するようになっている射出用ボールネジ機構の耐久性を試験する耐久試験機であって、
前記耐久試験機は、試験機サーボモータと、試験機ボールネジ機構と、を備え、
前記試験機ボールネジ機構は前記射出用ボールネジ機構に連結され、
前記試験機サーボモータは、前記試験機ボールネジ機構を回転して、前記射出用ボールネジ機構の軸方向の駆動に対して負荷を作用させるように制御する
ようになっており、
前記射出用サーボモータによりスクリュを駆動する射出動作を模擬するとき、前記試験機サーボモータは、速度がゼロになるように制御するゼロ速度制御を実施し、前記ゼロ速度制御において第1トルクリミットを超えるトルクが検出されたときは回転位置の変動を許容する、射出用ボールネジ機構の耐久試験機。
【請求項2】
前記射出用サーボモータによりスクリュを駆動する保圧動作を模擬するとき、前記試験機サーボモータは、速度がゼロになるように制御するゼロ速度制御を実施し、前記ゼロ速度制御において第2トルクリミットを超えるトルクが検出されたときは回転位置の変動を許容する、請求項
1に記載の射出用ボールネジ機構の耐久試験機。
【請求項3】
スクリュが後退する計量動作を模擬するとき、前記試験機サーボモータは速度制御を実施して前記射出用ボールネジ機構を計量完了位置まで後退させる、請求項
1または2に記載の射出用ボールネジ機構の耐久試験機。
【請求項4】
前記試験機ボールネジ機構は前記射出用ボールネジ機構より基本定格荷重が大きいボールネジ機構が選定されている、請求項1~3のいずれかに記載の射出用ボールネジ機構の耐久試験機。
【請求項5】
第1固定プレートと、
該第1固定プレートに対して離間して設けられている第2固定プレートと、
前記第1固定プレートと前記第2固定プレートの間にスライド自在に設けられている第1可動プレートと、
前記第1可動プレートと前記第2固定プレートの間にスライド自在に設けられている第2可動プレートと、を備え、
前記射出用ボールネジ機構は前記第1固定プレートと前記第1可動プレートの間に設けられ前記第1可動プレートを軸方向に駆動するようになっており、
前記試験機ボールネジ機構は前記第2固定プレートと前記第2可動プレートの間に設けられ前記第2可動プレートを軸方向に駆動するようになっており、
前記第1可動プレートと前記第2可動プレートは連結部材によって連結されている、請求項
1~4のいずれかに記載の射出用ボールネジ機構の耐久試験機。
【請求項6】
前記耐久試験機は、第1スクリュ駆動装置と、該第1スクリュ駆動装置に対向して設けられている第2スクリュ駆動装置とを備え、
前記第1スクリュ駆動装置は、第1後プレートと、該第1後プレートに対して離間して設けられている第1前プレートと、前記第1後プレートと前記第1前プレートの間にスライド自在に設けられている第1中間プレートとを備え、
前記第2スクリュ駆動装置は、第2後プレートと、該第2後プレートに対して離間して設けられている第2前プレートと、前記第2後プレートと前記第2前プレートの間にスライド自在に設けられている第2中間プレートとを備え、
前記第1後プレートは前記第1固定プレートに、前記第1中間プレートは前記第1可動プレートに、前記第2後プレートは前記第2固定プレートに、前記第2中間プレートは前記第2可動プレートに、それぞれ相当し、
前記前記第1後プレートと前記第1中間プレートの間に前記射出用ボールネジ機構が、そして前記第2後プレートと前記第2中間プレートの間に前記試験機ボールネジ機構が設けられ、前記第1中間プレートと前記第2中間プレートが前記連結部材によって連結されている、請求項
5に記載の射出用ボールネジ機構の耐久試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機において射出装置のスクリュを軸方向に駆動する射出用ボールネジについて、その耐久性を試験する耐久試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出装置は、加熱シリンダと加熱シリンダ内に入れられているスクリュとを備えている。電動射出成形機においては、スクリュは電動モータによって駆動される。具体的には、射出装置はスクリュを回転する可塑化用モータと、スクリュを軸方向に駆動する射出用モータとを備えている。射出用モータはサーボモータからなり射出用ボールネジ機構が接続されている。したがって射出用モータの回転力が軸方向の駆動力に変換され、スクリュを軸方向に駆動するようになっている。
【0003】
ボールネジ機構は長期間の運転により劣化し、劣化したら交換する必要がある。射出成形機の稼働率を上げるためにボールネジ機構の交換時期を予測することは重要であり、そのためにはボールネジ機構の耐久性に関するデータが必要になる。ボールネジ機構の耐久性を試験する装置は色々あり、例えば特許文献1において提案されている。特許文献1に記載のボールネジ機構の耐久試験装置は、いわゆる、こじりモーメントによる荷重が作用しているボールネジ機構について、耐久性を試験するようになっている。つまり、ボールネジ機構には軸方向の荷重が作用するが、これと異なる方向の力が同時に作用するときの耐久性について試験するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のボールネジ機構の耐久試験装置は、こじりモーメントが作用する環境で使用されるボールネジ機構の寿命、つまり交換時期を予測することはできる。しかしながら、他の運転条件下で駆動されるボールネジ機構についての耐久性は調べることができない。ボールネジ機構の耐久性は、ボールネジ機構の運転の条件に影響を受けるからであり、運転条件が異なると耐久性の試験ができないからである。射出装置に設けられている射出用ボールネジ機構は、その作用する荷重と駆動長さ、つまりストロークが成形サイクルの各工程において複雑に変化する。このため、このような射出用ボールネジ機構について、精度良く耐久性を試験できる試験機が望まれていた。
【0006】
本開示において、射出用ボールネジ機構についてその耐久性を精度良く試験することができる、射出用ボールネジ機構の耐久試験機を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
耐久性試験の対象となる射出用ボールネジ機構は射出用サーボモータによって回転されるようになっている。射出用ボールネジ機構の耐久試験機を、試験機サーボモータと試験機ボールネジ機構とを備えるように構成する。そして試験機ボールネジ機構を射出用ボールネジ機構に連結する。射出用サーボモータを回転して射出用ボールネジ機構を駆動するとき、試験機サーボモータにより試験機ボールネジ機構を回転して、射出用ボールネジ機構の軸方向の駆動に対して負荷を作用させる制御をする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、射出用ボールネジ機構についてその耐久性を精度良く試験することができる
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の第1の形態に係る耐久試験機を示す上面図である。
【
図2】射出用ボールネジ機構と、本実施の形態に係る耐久試験機の試験機ボールネジ機構のそれぞれについて、成形サイクルの各工程において作用する軸荷重の変化と、駆動される速度の変化とを示すグラフである。
【
図3】射出用ボールネジ機構についての従来の耐久試験機を示す上面図である。
【
図4】本実施の第2の形態に係る耐久試験機を示す上面図である。
【
図5】本実施の第3の形態に係る耐久試験機を示す上面図である。
【
図6】本実施の第4の形態に係る耐久試験機を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
本実施の形態を説明する。
<第1の実施の形態に係る耐久試験機>
本実施の第1の形態に係る射出用ボールネジ機構の耐久試験機1Aは、
図1に示されているように、複数のプレートを備えている。すなわち、固定部である第1固定プレート3と、この第1固定プレート3に対して離間して設けられている第2固定プレート4と、第1、第2固定プレート3、4の間に設けられている第1可動プレート6と第2可動プレート7とを備えている。第1、第2固定プレート3、4は複数本、例えば4本のガイドバー8、8、…によって連結され、第1、第2可動プレート6、7は、ガイドバー8、8、…によってスライド自在にガイドされている。このような第1、第2可動プレート6、7は連結部材9によって連結され、一体的にスライドするようになっている。
【0013】
<射出用ボールネジ機構>
第1固定プレート3と第1可動プレート6の間には耐久試験の対象となる射出用ボールネジ機構10が設けられている。射出用ボールネジ機構10は、本来は射出装置に設けられてスクリュを軸方向に駆動するボールネジ機構であるが、耐久試験機1Aにスクリュはない。射出用ボールネジ機構10を構成しているボールネジ11は第1固定プレート3に対して軸方向の移動が規制された状態で回転可能に支持されており、その先端が貫通して反対側の面から若干突き出している。そしてボールナット12は第1可動プレート6に固定されている。
【0014】
<射出用サーボモータ>
第1固定プレート3には射出用ボールネジ機構10を駆動するための射出用サーボモータ14が設けられている。射出用サーボモータ14の駆動軸には射出用駆動プーリ15が設けられ、第1固定プレート3から突き出たボールネジ11の先端には射出用従動プーリ16が設けられている。射出用駆動プーリ15と射出用従動プーリ16には射出用タイミングベルト18が掛け回されている。従って、射出用サーボモータ14を回転すると射出用ボールネジ機構10が駆動されて第1可動プレート6がスライドされることになる。
【0015】
<試験機ボールネジ機構>
第2固定プレート4と第2可動プレート7の間には試験機ボールネジ機構20が設けられている。試験機ボールネジ機構20は試験対象の射出用ボールネジ機構10に負荷を与えるためのものであり、射出用ボールネジ機構10よりも基本定格荷重が大きいボールネジ機構が選定されている。つまり大型で耐久性の高いボールネジ機構が採用されている。試験機ボールネジ機構20を構成しているボールネジ21は第2固定プレート4に対して軸方向の移動が規制された状態で回転可能に支持され、その先端が貫通して若干突き出している。そしてボールナット22は第2可動プレート7に固定されている。
【0016】
<試験機サーボモータ>
第2固定プレート4には試験機ボールネジ機構20を駆動するための試験機サーボモータ24が設けられている。試験機サーボモータ24には射出用サーボモータ14より最大出力が大きいサーボモータが選定されている。試験機サーボモータ24の駆動軸には試験機駆動プーリ25が設けられ、第2固定プレート4から突き出たボールネジ21の先端には試験機従動プーリ26が設けられている。試験機駆動プーリ25と試験機従動プーリ26には試験機タイミングベルト28が掛け回されている。従って、試験機サーボモータ24を回転すると試験機ボールネジ機構20が駆動されて第2可動プレート7がスライドされることになる。
【0017】
<ロードセル>
本実施の形態に係る耐久試験機1Aには、射出用ボールネジ機構10と試験機ボールネジ機構20とに作用する軸力を検出する第1ロードセル30と第2ロードセル31とが設けられている。第1ロードセル30は射出用ボールネジ機構10のボールナット12と第1可動プレート6との間に、そして第2ロードセル31は試験機ボールネジ機構20のボールナット22と第2可動プレート7との間に、それぞれ設けられている。第1、第2可動プレート6、7は連結部材9によって連結されているので、第1、第2ロードセル30、31からはほぼ等しい軸力が検出されることになる。つまり、本来ロードセルは1個で足りるはずであるが、本実施の形態においては2個設けられている。
【0018】
<コントローラ>
本実施の形態に係る耐久試験機1Aにはコントローラ34が設けられている。射出用サーボモータ14と試験機サーボモータ24はコントローラ34に接続されており、コントローラ34によって制御されるようになっている。コントローラ34には第1、第2ロードセル30、31も接続され、射出用ボールネジ機構10、試験機ボールネジ機構20に作用する軸力が検出されるようになっている。
【0019】
コントローラ34には、射出用サーボモータ14と試験機サーボモータ24を制御するために必要な各種設定値が予め設定されている。射出用サーボモータ14に対しては、成形サイクルにおける射出動作、保圧動作、計量動作を模擬するための設定値が格納されている。設定値の具体的な内容については後で説明するが、それぞれの動作を模擬するために、射出動作設定、保圧動作設定、計量動作設定が格納されている。
【0020】
一方、試験機サーボモータ24に対しては、コントローラ34において射出動作と保圧動作のそれぞれに対応して第1トルクリミットと第2トルクリミットとが設定されている。これらは試験機サーボモータ24によって試験機ボールネジ機構20をゼロ速度制御するための設定値であり、詳しくは後で説明する。また試験機サーボモータ24のために、計量動作に対応するように設定計量速度がコントローラ34に設定されている。設定計量速度は、計量動作においてスクリュを後退させるための設定値であり、試験機ボールネジ機構20の軸方向の速度が設定されている。
【0021】
<耐久試験機の作用>
本実施の第1の形態に係る耐久試験機1Aは、射出用ボールネジ機構10を成形サイクルに準じて繰り返し駆動するとき、実際の成形サイクルにおいて発生する軸力と同等の負荷を与えて耐久性を試験する試験機である。成形サイクルを実施するとき、射出用ボールネジ機構10には、射出工程、保圧工程、計量工程の各工程において軸力が作用する。耐久試験機1Aは、これら工程において作用する射出用ボールネジ機構10に対する軸力を再現するようになっている。つまり、射出用サーボモータ14と射出用ボールネジ機構10とに対して、射出工程、保圧工程、計量工程の各工程における動作、つまり射出動作、保圧動作、計量動作について、耐久試験機1Aにおいて模擬させることができる。以下、成形サイクルの各動作に則して、
図2を参照してこれを説明する。なお、以下の成形サイクルの各動作の説明で、耐久試験機の構成については、
図1も適宜参照する。
【0022】
<射出動作>
射出工程として模擬する射出動作では、コントローラ34は射出用サーボモータ14を射出動作設定に従って制御する。コントローラ34には射出動作設定として、速度制御をするための設定速度が格納されている。射出用サーボモータ14は設定速度に従って速度制御して、射出動作を模擬する。
図2において符号41のグラフは、設定速度を示している。設定速度は三角形状に変化しており、0~0.2秒において一定の加速度で加速して、0.2~0.4秒において一定の加速度で減速させるようにしている。しかしながら、設定速度は必ずしもこのような変化に限定する必要はない。例えば、設定速度は台形状に変化させるようにしてもよいし、2段階、あるいは多段階に変化させるようにしてもよい。
【0023】
射出用サーボモータ14を符号41のような設定速度に基づいて制御すると、射出用ボールネジ機構10の速度、つまり第1可動プレート6の速度は符号42に示されているように変化する。なお、符号43のグラフは、試験機ボールネジ機構20の速度、つまり第2可動プレート7の速度を示している。符号42の射出用ボールネジ機構10の速度と、符号43の試験機ボールネジ機構20の速度は、互いに方向が逆で、それぞれの大きさが実質的に等しくなっている。
【0024】
このような射出動作に対応して、コントローラ34は試験機サーボモータ24をゼロ速度制御する。ゼロ速度制御では、検出されるトルクが第1トルクリミットを下回る限り速度がゼロに維持されるように速度制御する。しかしながら第1トルクリミット以上のトルクが作用するとき、回転位置の変動を許容する。つまり、第1トルクリミット以上のトルクが作用したらボールネジ機構20のボールナット22が後退、つまり第2可動プレート7が後退することになる。
図2において符号45のグラフは、第1トルクリミットを示している。ただし、試験機サーボモータ24における第1トルクリミットを、試験機ボールネジ機構20における軸荷重に変換して示している。
図2の符号46には、第1ロードセル30において検出される軸荷重の変化が示されている。射出用ボールネジ機構10には、射出工程において射出材料の抵抗による軸力がスクリュに作用するが、これが再現されていることがわかる。
【0025】
<保圧動作>
本実施の形態において、保圧工程として模擬する保圧動作として、射出用サーボモータ14を速度制御する。従って、コントローラ34に設定されている保圧動作設定は、速度制御するための設定速度と、保圧動作を完了するための完了位置とからなる。コントローラ34は射出用サーボモータ14を設定速度で制御して完了位置に達したら停止する。これによって保圧動作を模擬する。
【0026】
なお、保圧動作を模擬するために、射出用サーボモータ14をトルク制御することも可能である。この場合には保圧動作設定として、射出用サーボモータ14をトルク制御するための設定トルクを設定すればよい。さらには保圧動作を完了させるために保圧時間を設定したり、完了位置を設定すればよい。このように保圧動作を模擬すると、スクリュに一定の軸力を印加する圧力制御を模擬したことになる。
【0027】
前記したように、本実施の形態においては保圧動作として射出用サーボモータ14は速度制御する。この保圧動作に対応して、コントローラ34は試験機サーボモータ24について第2トルクリミットに基づいてゼロ速度制御をする。つまり第2トルクリミットを下回る限り速度をゼロにする速度制御をし、第2トルクリミット以上のトルクが作用するとき回転位置の変動を許容する。つまり第2可動プレート7の後退を許容する。
【0028】
図2において符号48には、第2トルクリミットに対応する軸荷重、つまり試験機ボールネジ機構20における軸荷重が示されている。これは保圧工程において樹脂圧力によってスクリュに作用する軸荷重を模擬するためのものである。実際の成形サイクルの保圧工程において作用する軸荷重はこれより小さい値であるが、耐久試験を行うにあたり負荷を大きくするために第2トルクリミットは大きな値で設定され、従って符号48で示されている軸荷重も大きな値になっている。保圧工程において保圧動作を実施する射出用ボールネジ機構10については、作用する軸荷重が、符号49で示されているように変化している。射出用ボールネジ機構10の軸荷重の変化は、符号48の軸荷重に概ね追随していることがわかる。
【0029】
<計量動作>
本実施の形態において、計量工程として模擬する計量動作では、コントローラ34は射出用サーボモータ14をゼロ速度制御する。ゼロ速度制御をするために、コントローラ34に設定されている計量動作設定には、計量用トルクリミットが格納されている。射出用サーボモータ14は計量用トルクリミットを下回る限り速度をゼロにする速度制御をし、計量用トルクリミット以上のトルクが作用するとき回転位置の変動を許容する。つまり第1可動プレート6の後退を許容する。これによって工程動作を模擬する。この計量動作に対応して、コントローラ34は試験機サーボモータ24について設定計量速度により速度制御をする。これによって射出用ボールネジ機構10は、
図2において符号52で示されているように、後退する。後退量が、計量完了位置に達したら試験機サーボモータ24を停止し、射出用サーボモータ14によるトルク制御を終了する。
【0030】
以下、同様にして射出動作、保圧動作、計量動作を繰り返す。これによって射出用ボールネジ機構10の耐久性を試験することができる。
【0031】
計量工程を模擬する計量動作では、本実施の形態においては射出用サーボモータ14はゼロ速度制御している。しかしながら、射出用サーボモータ14をトルク制御してもよい。この場合には、コントローラ34に設定されている計量動作設定にはトルク制御のための設定トルクが格納される。このようにするとスクリュに一定の背圧が印加した状態を模擬することができる。
【0032】
<従来の耐久試験機>
従来の耐久試験機と比較する。
図3には、従来の耐久試験機100が示されている。耐久試験機100は、第1、第2固定プレート101、102と、可動プレート104とを備えている。第1、第2固定プレート101、102は複数本のガイドバー106、106によって連結され、可動プレート104はガイドバー106、106によってガイドされるようになっている。試験対象の射出用ボールネジ機構108は第1固定プレート101と可動プレート104の間に設けられ、射出用サーボモータ109が第1固定プレート101に設けられている。そして射出用サーボモータ109と射出用ボールネジ機構108は動力伝達機構110によって接続されている。
【0033】
このような従来の耐久試験機100においては、射出用ボールネジ機構108に負荷を与えるために、第2固定プレート102と可動プレート104の間に複数個の皿バネ112、112、…からなるバネ体111、111が設けられている。つまり皿バネ112、112、…の弾性力によって射出用ボールネジ機構108に軸力、つまり負荷を付与するようになっている。耐久試験機100にはコントローラ115が設けられ、射出用サーボモータ109を制御するようになっているとともに、可動プレート104に設けられているロードセル116が接続されている。
【0034】
従来の耐久試験機100によって実施する射出用ボールネジ機構108の耐久試験では、実際の成形サイクルと同等の条件下での試験はできない。皿バネ112、112、…からなるバネ体111、111による軸力は、射出用ボールネジ機構108の駆動位置にのみ基づいて生じるからである。つまり一定の軸力からなる負荷が発生した条件下で、射出用ボールネジ機構108を所定長さ駆動する、等の試験ができないからである。このような従来の耐久試験機100で射出用ボールネジ機構108の耐久試験を実施するとき、
図2において符号120で示されているように、コントローラ115によって射出用サーボモータ109を制御して射出用ボールネジ機構108を駆動する。そうすると、符号121で示されているように、射出用ボールネジ機構108に作用する軸力が変化する。このような運転で実施する試験は、射出動作、保圧動作、計量動作を模擬した耐久試験にはなっていない。
【0035】
<第2の実施の形態に係る耐久試験機>
耐久試験機1Aは色々な変形が可能である。
図4には、その変形例として第2の実施の形態に係る耐久試験機1Bが示されている。この耐久試験機1Bは、射出装置においてスクリュを駆動するために設けられている一般的なスクリュ駆動装置、つまり第1スクリュ駆動装置60と、第2スクリュ駆動装置70とを利用している。
【0036】
第1スクリュ駆動装置60は、第1後プレート61と、第1前プレート62と、これらの間にスライド自在に設けられている第1中間プレート63とを備えている。第1後プレート61と第1前プレート62はガイドバー64、64…によって連結され、第1中間プレート63はガイドバー64、64、…によってガイドされるようになっている。同様に、第2スクリュ駆動装置70は、第2後プレート71と、第2前プレート72と、これらの間にスライド自在に設けられている第2中間プレート73とを備えている。第2後プレート71と第2前プレート72はガイドバー74、74…によって連結され、第2中間プレート73はガイドバー74、74、…によってガイドされるようになっている。このような第1、第2スクリュ駆動装置60、70が対向して配置されている。
【0037】
この第2の実施の形態に係る耐久試験機1Bにおいては、いくつかの部材が、第1の実施の形態に係る耐久試験機1A(
図1参照)の各部材に相当している。すなわち、第1後プレート61は第1固定プレート3に、第1中間プレート63は第1可動プレート6に、第2後プレート71は第2固定プレート4に、第2中間プレート73は第2可動プレート7に、それぞれ相当している。従って、
図4において、第1の実施の形態に係る耐久試験機1Aの各部材との関係を示すために、例えば第1後プレート61に対しては符号「61(3)」を、第1中間プレート63に対しては符号「63(6)」を、それぞれ付している。
【0038】
この第2の実施の形態に係る耐久試験機1Bにおいても、第1の実施の形態に係る耐久試験機1Aと同様に、射出用ボールネジ機構10と試験機ボールネジ機構20とが設けられている。つまり射出用ボールネジ機構10は「第1固定プレート3」に相当する第1後プレート61と「第1可動プレート6」に相当する第1中間プレート63の間に設けられ、試験機ボールネジ機構20は「第2固定プレート4」に相当する第2後プレート71と「第2可動プレート7」に相当する第2中間プレート73の間に設けられている。そして、第1、第2中間プレート63、73は互いに連結部材9によって連結されている。
【0039】
第1の実施の形態に係る耐久試験機1Aに設けられているのと同様の部材、例えば射出用サーボモータ14、第1ロードセル30等についても、この第2の実施の形態に係る耐久試験機1Bに設けられている。従って、これらについて説明を省略する。当業者であれば容易に理解されるように、この第2の実施の形態に係る耐久試験機1Bも、射出用ボールネジ機構10を成形サイクルに準じて繰り返し駆動するとき、実際の成形サイクルにおいて発生する軸力と同等の負荷を与えて耐久性を試験することができる。
【0040】
<第3の実施の形態に係る耐久試験機>
図5には第3の実施の形態に係る耐久試験機1Cが示されている。この実施の形態に係る耐久試験機1Cは、第1の実施の形態に係る耐久試験機1A(
図1参照)と次の点で相違している。まず、第1、第2可動プレート6、7の代わりに共通の可動プレート78が設けられている。従って、
図5において可動プレート78に対しては符号「78(6、7)」を付している。
【0041】
次に、試験機ボールネジ機構20と試験機サーボモータ24はそれぞれ2個ずつ設けられている。すなわち第1、第2試験機ボールネジ機構20A、20Bと、第1、第2試験機サーボモータ24A、24Bが設けられている。第1試験機ボールネジ機構20Aは第1試験機駆動プーリ25A、第1試験機従動プーリ26A、第1試験機タイミングベルト28Aとによって第1試験機サーボモータ24Aの駆動力が伝達されるようになっている。そして、第2試験機ボールネジ機構20Bは第2試験機駆動プーリ25B、第2試験機従動プーリ26B、第2試験機タイミングベルト28Bとによって第2試験機サーボモータ24Bの駆動力が伝達されるようになっている。
【0042】
この第3の実施の形態に係る耐久試験機1Cにおいては、ロードセルは第1ロードセル30のみが設けられている。この実施の形態においては、試験機ボールネジ機構20A、20Bは2個になっているのでそれぞれに作用する軸力は約1/2になり、基本定格荷重が小さいボールネジ機構であっても採用することができる。
【0043】
<第4の実施の形態に係る耐久試験機>
図6には第4の実施の形態に係る耐久試験機1Dが示されている。この実施の形態において、耐久試験機1Dは2プレート式スクリュ駆動装置80を備え、これに設けられている2台の射出用ボールネジ機構、すなわち第1、第2射出用ボールネジ機構10A、10Bを一括で耐久試験するようになっている。2プレート式スクリュ駆動装置80は、固定プレート81と、この固定プレート81に対してスライドする可動プレート82とを備えている。可動プレート82は、リニアガイド84、84によってスライドするようになっている。そして固定プレート81と可動プレート82の間に、第1、第2射出用ボールネジ機構10A、10Bが設けられ、固定プレート81に設けられている第1、第2射出用サーボモータ14A、14Bによってそれぞれ駆動されるようになっている。
【0044】
より詳しく説明すると、第1射出用ボールネジ機構10Aのボールネジ11Aは、第1射出用駆動プーリ15A、第1射出用従動プーリ16A、第1試験機タイミングベルト28Aによって第1射出用サーボモータ14Aの回転力が伝達されるようになっている。そして第2射出用ボールネジ機構10Bのボールネジ11Bは、第2射出用駆動プーリ15B、第2射出用従動プーリ16B、第2試験機タイミングベルト28Bによって第2射出用サーボモータ14Bの回転力が伝達されるようになっている。従って、これらを駆動するとボールナット12A、12Bに対してボールネジ11A、11Bが回転して可動プレート82がスライドすることになる。
【0045】
一方、試験機ボールネジ機構20や試験機サーボモータ24が設けられている第2固定プレート4、第2可動プレート7等については、第1の実施の形態に係る耐久試験機1D(
図1参照)と実質的に同様に構成されている。従って、これらの部材については説明を省略する。第4の実施の形態においては、可動プレート82と第2可動プレート7とが連結部材9によって連結されている。この第4の実施の形態に係る耐久試験機1Dも第1の実施の形態に係る耐久試験機1Aと同様に、実際の成形サイクルにおいて発生する軸力と同等の負荷を与えて耐久性を試験することができる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0047】
1A、1B、1C、1D 耐久試験機
3 第1固定プレート 4 第2固定プレート
6 第1可動プレート 7 第2可動プレート
8 ガイドバー 9 連結部材
10 射出用ボールネジ機構 11 ボールネジ
12 ボールナット 14 射出用サーボモータ
20 試験機ボールネジ機構 21 ボールネジ
22 ボールナット 24 試験機サーボモータ
30 第1ロードセル 31 第2ロードセル
34 コントローラ 60 第1スクリュ駆動装置
61 第1後プレート 62 第2前プレート
63 第1中間プレート 64 ガイドバー
70 第2スクリュ駆動装置 71 第2後プレート
72 第2前プレート 73 第2中間プレート
74 ガイドバー 78 可動プレート
80 2プレート式スクリュ駆動装置 81 固定プレート
82 可動プレート 84 リニアガイド