(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】タモの柄
(51)【国際特許分類】
A01K 77/00 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
A01K77/00 A
(21)【出願番号】P 2021071225
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 信広
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-061268(JP,U)
【文献】特開2006-288206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0014523(US,A1)
【文献】特開2008-211975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
元筒体、及び、前記元筒体と振出形式で継がれて振り出した際にもっとも先端となる第1筒体を有する竿本体と、
前記元筒体の先端部に着脱自在に内嵌される小径部、及び、前記小径部と一体的に形成され前記元筒体の先端部の内径より大きい外形の大径部を有し、前記小径部と前記大径部を前記元筒体の軸方向に貫通する貫通孔が形成されたキャップと、
前記貫通孔を通じて前記第1筒体の先端部に設けられた雌ネジ部に着脱自在に螺合する雄ネジ部、及び、前記雄ネジ部と一体的に形成され、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部にねじ込まれた状態で前記大径部と当接し、且つ、用品が着脱自在に係止される
外形が環状の係止部を有するプラグと、
を備えたタモの柄。
【請求項2】
前記プラグは、
前記雄ネジ部が形成された主軸と、
前記主軸に連続して形成され、前記キャップの大径部に当接するフランジと、
を有する請求項1に記載のタモの柄。
【請求項3】
前記フランジは、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部にねじ込まれた状態で前記キャップを前記第1筒体の先端部に押圧する、
請求項2に記載のタモの柄。
【請求項4】
前記係止部は、前記環状の一部が開閉可能なカラビナ状である、
請求項1から3のいずれかに記載のタモの柄。
【請求項5】
前記用品は、一端が前記元筒体に取り付けられ、他端が前記係止部に係止される携行ストラップである、
請求項1から4のいずれかに記載のタモの柄。
【請求項6】
元筒体、及び、前記元筒体と振出形式で継がれて振り出した際にもっとも先端となる第1筒体を含み、前記元筒体の先端部に内嵌され、且つ、前記第1筒体の先端部の内側に設けられた雌ネジ部を露出させた状態で前記第1筒体の先端部に外嵌されるキャップを有するタモの柄に、タモ網と取り換えて適用され、
前記第1筒体の先端部に設けられた雌ネジ部に着脱自在に螺合する雄ネジ部と、
前記雄ネジ部と一体的に形成され、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部にねじ込まれた状態で前記キャップと当接し、且つ、用品が着脱自在に係止される
外形が環状の係止部と、
を備えたプラグ。
【請求項7】
前記プラグは、
前記雄ネジ部が形成された主軸と、
前記主軸に連続して形成され、前記キャップに当接するフランジと、
を有する
請求項6に記載のプラグ。
【請求項8】
フランジは、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部にねじ込まれた状態で前記キャップを前記第1筒体の先端部に押圧する、
請求項7に記載のプラグ。
【請求項9】
前記係止部は、前記環状の一部が開閉可能なカラビナ状である、
請求項6から8のいずれかに記載のプラグ。
【請求項10】
前記用品は、一端が前記元筒体に取り付けられ、他端が前記係止部に係止される携行ストラップである、
請求項6から9のいずれかに記載のプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒットした魚をランディングする際に使用されるタモの柄の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
実釣において、ヒットした魚を確実に取り込むためにタモが使用される。タモは、タモの柄及びこれに取り付けられたタモ網を有する。タモ網は、魚を掬う網本体と、これを支持する枠体とを有し、この枠体がタモの柄の先端に着脱自在に螺合される。タモの柄は、一般に複数のブランクを有し、各ブランクが振出形式で継がれている(たとえば特許文献1及び特許文献2参照)。複数のブランクのうち最も細径で前記枠体が螺合されるものが第1番竿と称され、最も大径のブランクが元竿と称される。釣人は、元竿を把持してタモの柄を伸長させ、第1番竿に取り付けられたタモ網で魚を掬う。魚が取り込まれた後、タモの柄はコンパクトに縮められて収納状態とされる。
【0003】
特許文献1(
図2参照)に開示されたタモの柄は、第1番竿の先端部内側にネジ部が形成されると共に、前記先端部にゴム製の筒状キャップが外嵌されている。この筒状キャップは、前記先端部を囲繞しつつ前記ネジ部を露出させる。筒状キャップの外径は元竿の先端部内径に対応しており、タモの柄が収納状態のときに、筒状キャップが元竿に着脱自在に圧入される。このタモの柄が使用されるときは、前記ネジ部にタモ網の枠体が螺合されるようになっている。
【0004】
同文献に開示されたタモの柄では、前記筒状キャップが第1番竿に確実に取り付けられていなければ、釣人が意図しないときに筒状キャップが第1番竿から脱落するおそれがある。その一方で、筒状キャップが第1番竿に固着されると、振出形式で継がれたタモの柄の分解その他のメンテナンスが困難になる。そのため、第1番竿の先端部に雄ネジ部、筒状キャップの内側に雌ネジ部が形成され、両者が螺合することによりキャップが第1番竿から容易に外れない構造が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-288206号公報
【文献】特開2006-191898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のタモの柄では、タモ網が外されると、前記ネジ部が露出した状態となるため、このネジ部内にゴミや異物が混入するおそれがある。このような異物混入により、タモ網の着脱時にネジ部が損傷を受け、タモの柄の伸縮時にブランクが損傷を受ける。さらに、第1番竿その他のタモの柄を構成するブランクは、一般にいわゆる繊維強化樹脂により成形されるため、第1番竿の製造において、その先端部に前記筒状キャップと螺合する雄ネジ部が成形される工程が含まれると、製造工程全体が複雑化する。その結果、タモの柄の製造コストが上昇する。
【0007】
ところで、タモの柄は、一般に携行用のストラップを備えている。このストラップは、取付ベルトを介して前記元竿に着脱自在に設けられており、タモの柄の持ち運びに便利である。ストラップは、タモの柄が使用されるときには元竿から外されるため、しばしば釣場に置き忘れられてしまう。そのため、従来、釣場でのストラップの紛失を防止したいという要請がある。
【0008】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、ブランク内への異物混入を防止しつつ収納状態を維持できると共にストラップその他の用品の紛失を防止できる簡単且つ安価な構造を備えたタモの柄を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係るタモの柄は、竿本体、キャップ及びプラグを備える。竿本体は、元筒体、及び、前記元筒体と振出形式で継がれて振り出した際にもっとも先端となる第1筒体を有する。キャップは、前記元筒体の先端部に着脱自在に内嵌される小径部、及び、前記小径部と一体的に形成され前記元筒体の先端部の内径より大きい外形の大径部を有し、前記小径部と前記大径部を前記元筒体の軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。プラグは、前記貫通孔を通じて前記第1筒体の先端部に設けられた雌ネジ部に着脱自在に螺合する雄ネジ部、及び、前記雄ネジ部と一体的に形成され、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部にねじ込まれた状態で前記大径部と当接し、且つ、用品が着脱自在に係止される係止部を有する。
【0010】
この構成によれば、キャップが第1筒体の先端部に外嵌される。すなわち、キャップの貫通孔に第1筒体が挿入され、キャップの小径部が第1筒体の軸方向に沿って第1筒体の先端部を囲繞するように嵌め合わされる。竿本体が収納状態とされたとき、第1筒体に嵌め合わされた小径部は、元筒体の先端部の内側に着脱自在に嵌め込まれる。
【0011】
キャップは両端が開放された筒状を呈するから、第1筒体に装着された状態で前記雌ネジ部がキャップの端面に露出する。これにより、タモ網が容易に第1筒体に対して着脱される。タモ網が第1筒体から取り外されると、プラグが前記雌ネジ部にねじ込まれる。すなわち、タモ網が使用されないときにも前記雌ネジ部が閉塞される。しかも、この雌ネジ部にプラグがねじ込まれることにより、このプラグがキャップの大径部に当接するから、キャップは、第1筒体に締結される。したがって、キャップが第1筒体から脱落することが防止される。
【0012】
実釣にてタモの柄が使用されるときに、補器その他の用品(たとえば、タモの柄の携行ストラップ)が外される。同時に、前記プラグも外される。したがって、タモの柄から取り外された用品は、プラグの係止部に係止される。つまり、このプラグと用品とが一緒に保管される。
【0013】
(2) 前記プラグは、前記雄ネジ部が形成された主軸と、前記主軸に連続して形成され、前記キャップの大径部に当接するフランジとを備えているのが好ましい。
【0014】
この構成では、前記主軸が前記雌ネジ部と螺合するので、プラグを第1筒体に装着する作業が容易である。しかも、この主軸が第1筒体にねじ込まれると、前記フランジがキャップに当接して第1筒体に押しつけて固定する。このフランジにより、キャップに生じる面圧が抑えられるので、キャップの損傷が防止される。
【0015】
(3) 前記フランジは、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部にねじ込まれた状態で前記キャップを前記第1筒体の先端部に押圧するものであるのが好ましい。
【0016】
この構成では、プラグが第1筒体に装着されると、フランジがキャップを第1筒体に押しつけて固定する。すなわち、プラグ自体がキャップを第1筒体に固定する。したがって、プラグの構造がシンプルなものとなる。
【0017】
(4) 前記係止部の外形は環状であるのが好ましい。
【0018】
この構成では、さまざまな用品が係止部に容易に係合することができる。
【0019】
(5) 前記係止部は、前記環状の一部が開閉可能なカラビナ状であるのが好ましい。
【0020】
この構成では、係止部が用品に係合するフックとしても使用されるので、さまざまな用品が係止部により簡単且つ確実に係合することができる。
【0021】
(6) 前記用品は、一端が前記元筒体に取り付けられ、他端が前記係止部に係止される携行ストラップである。
【0022】
この場合、用品としてタモの柄に装備される携行ストラップがプラグに取り付けられるので、携行ストラップの紛失が防止される。
【0023】
(7) 本発明に係るプラグは、元筒体、及び、前記元筒体と振出形式で継がれて振り出した際にもっとも先端となる第1筒体を含み、前記元筒体の先端部に内嵌され、且つ、前記第1筒体の先端部の内側に設けられた雌ネジ部を露出させた状態で前記第1筒体の先端部に外嵌されるキャップを有するタモの柄に、タモ網と取り換えて適用される。このプラグは、前記第1筒体の先端部に設けられた雌ネジ部に着脱自在に螺合する雄ネジ部と、前記雄ネジ部と一体的に形成され、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部にねじ込まれた状態で前記キャップと当接し、且つ、用品が着脱自在に係止される係止部とを備えている。
【0024】
本発明に係るプラグが適用されるタモの柄は、キャップが第1筒体の先端部に外嵌されている。すなわち、キャップは、第1筒体の軸方向に沿って第1筒体の先端部を囲繞するように嵌め合わされており、この状態で、第1筒体の先端部に設けられた雌ネジが露出する。このキャップは、第1筒体に対して固着されている必要はない。竿本体が収納状態とされたとき、第1筒体に嵌め合わされたキャップは、元筒体の先端部の内側に着脱自在に嵌め込まれる。
【0025】
プラグが前記雌ネジ部にねじ込まれることにより、この雌ネジ部が閉塞され、ゴミ等の侵入が防止される。しかも、このプラグが前記雌ネジ部にねじ込まれることにより、キャップが第1筒体に締結されるので、キャップが第1筒体から脱落することが防止される。
【0026】
実釣にてタモの柄が使用されるときに、補器その他の用品(たとえば、タモの柄の携行ストラップ)が外される。同時に、前記プラグも外される。したがって、タモの柄から取り外された用品は、プラグの係止部に係止される。つまり、このプラグと用品とが一緒に保管される。
【0027】
(8) 前記プラグは、前記雄ネジ部が形成された主軸と、前記主軸に連続して形成され、前記キャップに当接するフランジとを備えているのが好ましい。
【0028】
この構成では、前記主軸が前記雌ネジ部と螺合するので、プラグを第1筒体に装着する作業が容易である。しかも、この主軸が第1筒体にねじ込まれると、前記フランジがキャップに当接して第1筒体に押しつけて固定する。このフランジにより、キャップに生じる面圧が抑えられるので、キャップの損傷が防止される。
【0029】
(9) 前記フランジは、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部にねじ込まれた状態で前記キャップを前記第1筒体の先端部に押圧するものであるのが好ましい。
【0030】
この構成では、プラグが第1筒体に装着されると、フランジがキャップを第1筒体に押しつけて固定する。すなわち、プラグ自体がキャップを第1筒体に固定する。したがって、プラグの構造がシンプルなものとなる。
【0031】
(10)前記係止部の外形は環状であるのが好ましい。
【0032】
この構成では、さまざまな用品が係止部に容易に係合することができる。
【0033】
(11)前記係止部は、前記環状の一部が開閉可能なカラビナ状であるのが好ましい。
【0034】
この構成では、係止部が用品に係合するフックとしても使用されるので、さまざまな用品が係止部により簡単且つ確実に係合することができる。
【0035】
(12) 前記用品は、一端が前記元筒体に取り付けられ、他端が前記係止部に係止される携行ストラップである。
【0036】
この場合、用品としてタモの柄に装備される携行ストラップがプラグに取り付けられるので、携行ストラップの紛失が防止される。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、第1筒体の雌ネジ部を塞ぐようプラグが設けられるので、タモの柄が使用されないとき(収納時)にも、この雌ネジ部及び竿本体内に異物が混入することが防止される。また、プラグの装着によりキャップは第1筒体に固定されるから、タモの柄の収納時にキャップの紛失が防止される。さらに、キャップは第1筒体に嵌め込まれるだけの構造であるから、第1筒体の構造がシンプルであり、タモの柄の製造コストも抑えられる。加えて、プラグが第1筒体から取り外されると、キャップも簡単に第1筒体から取り外される(引き抜かれる)ので、振出式に継がれた竿本体が分解され、これらのメンテナンス作業が容易である。取り外されたプラグに携行ストラップ等の用品が係止され得るから、携行ストラップの紛失が防止されるという利点もある。しかも、この携行ストラップが係止されたプラグを釣人の身体に係合させることにより、タモの紛失も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタモの柄10の一部分解斜視図である。
【
図2】
図2は、タモの柄10の使用状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、タモの柄10の先端部を拡大した図である。
【
図5】
図5は、タモの柄10に設けられたキャップ32の斜視図である。
【
図6】
図6は、タモの柄10に設けられたプラグ33の正面図である。
【
図7】
図7は、タモの柄10に設けられたプラグ33の斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態の変形例に係るプラグ63の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係るタモの柄の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0040】
1.タモについて
【0041】
図1は、本発明の一実施形態に係るタモの柄10の一部分解斜視図である。
図2は、タモの柄10の使用状態を示す斜視図である。同図が示すように、タモの柄10にタモ網12が装着されるようになっており、両者が組み付けられた状態でタモ11が構成される。
【0042】
魚釣りの際に、いわゆるヒットした魚をランディングするためにタモ11が使用される。タモ11は、伸縮自在なタモの柄10及びタモ網12を有する。通常、両者は分離されているが、現場(釣り場)で釣りに供される場合、タモ網12がタモの柄10の先端に着脱自在に取り付けられる。釣人は、ランディングの際にタモの柄10を操作して伸長させ、タモ網12にてヒットした魚を掬い取る。タモ網12は、網本体13と、これを支持する枠体14とを有する。枠体14は、雄ネジ15が形成された軸16を有し、この軸16がタモの柄10の先端に螺合されるようになっている。
【0043】
2.タモの柄の概略及びポイント
【0044】
タモの柄10は、4本のブランク17~20を有し、これらが振出形式で継がれている。すなわち、最も大径のブランク20(特許請求の範囲に記載された「元筒体」に相当)の内側に他のブランク17(特許請求の範囲に記載された「第1筒体」に相当)~ブランク19が入れ子状に配置されており、柄本体30(特許請求の範囲に記載された「竿本体」に相当)を構成している。タモの柄10が使用されるときはブランク17~19がブランク20から軸方向21に引き出される。このとき、ブランク17は、柄本体30のもっとも先端に配置される。本実施形態では、柄本体30は4本のブランク17~20からなるが、柄本体30を構成するブランクの数は、特に制限を受けない。
【0045】
各ブランク17~20は、既知の要領で成形される。たとえば、カーボン繊維にて強化された樹脂シート(プリプレグ)が所定形状に裁断され、これがマンドレルの周囲に巻回された状態で所定の温度で焼成される。その後、マンドレルが引き抜かれることによって、円筒状のブランク17~20が成形される。ブランク20の後端部に尻栓22が着脱自在に螺合され、携行ストラップ23(特許請求の範囲に記載された「用品」に相当)が着脱自在に装着される。ブランク17の先端部31の内周面に雌ネジ部45が形成されている(
図4参照)。この雌ネジ部45は、既知の手段で形成され、たとえばブランク17が焼成される際に一体的に成形されることもあり、また、焼成後にネジ溝が成形されることもある。
【0046】
尻栓22及び携行ストラップ23も既知の構造である。一般に、携行ストラップ23は、フック25、26を備えたストラップ本体24と、アンカーベルト27とを有する。ストラップ本体24は、調整リング44を介して長さ調整が可能である。このストラップ本体24の一端28及び他端29に、それぞれ、フック25、26が設けられている.。ブランク20にアンカーベルト27が着脱自在に巻き付けられており、フック25は、アンカーベルト27に係合している。なお、柄本体30は、携行ストラップ23以外にもさまざまな用品(たとえば、撒き餌のすくいや、他の釣人の釣糸が絡んだりした際の回収フック、自宅等で保管する際の係止フックなど)が装着され得る。
【0047】
本実施形態の特徴とするところは、ブランク17の先端部31にキャップ32が着脱自在に設けられている点、及び前記先端部31にプラグ33が着脱自在に設けられている点である。このプラグ33は、竿本体30が収納状態とされ(
図1参照)、且つタモの柄10が使用されないときに、ブランク17に装着される。携行ストラップ23は、フック25及びアンカーベルト27を介してブランク20に取り付けられ、フック26が、後述のようにプラグ33に係合されるようになっている。
図2が示すように、釣り場にてタモ11が使用されるときは、携行ストラップ23及びプラグ33が取り外される。すなわち、プラグ33は、タモ網12と取り換えて使用されるものである。
【0048】
3.キャップの構造
【0049】
図3は、タモの柄10の先端部を拡大した図である。
図4は、
図3におけるIV-IV断面図である。
図5は、キャップ32の斜視図である。
【0050】
図4及び
図3が示すように、キャップ32は、ブランク17に設けられ、ブランク20に嵌め込まれるようになっている。
図4及び
図5が示すように、キャップ32は、いわゆる段付きの円筒状を呈し、小径部35及び大径部36を有する。キャップ32の材質は、典型的にはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)からなり、前記小径部35及び大径部36は一体的に形成されている。もっとも、キャップ32の材質は、NBRと同等の弾性、耐候性等を備えていれば他のものであってもよい。
【0051】
キャップ32の中心に貫通孔37が設けられている。この貫通孔37は、キャップ32の軸方向、すなわちブランク17の軸方向21に沿って貫通している。したがって、キャップ32の両端面に開口が形成されている。
図4が示すように、貫通孔37の先端側及び後端側にそれぞれ縮径孔部38及び拡径孔部39が形成されている。すなわち、貫通孔37の先端部は縮径され、後端部は拡径されている。貫通孔37の内径は、ブランク17の先端部31の外径に対応している。前記縮径孔部38の内径は、前記先端部31の外径よりも小さく設定されている。
【0052】
キャップ32は、その小径部35がブランク17の先端部31を覆うように嵌め合わせられ、軸方向21の後端側(同図において右側)へスライドされつつ押し込まれる。キャップ32は、前記拡径孔部39を備えているので、容易にブランク17の先端部31と嵌合することができる。貫通孔37の内径とブランク17の先端部31の外径との間に所定のはめあい公差が設定されている。したがって、キャップ32はブランク17に一定の保持力で保持され、釣人が意図する場合に、キャップ32をブランク17から引き抜くことができる。キャップ32に前記縮径孔部38が設けられているので、ブランク17の先端面がキャップ32と当接し、キャップ32は、ブランク17の先端に位置決めされる。この状態で、ブランク20に設けられた雌ネジ部45がキャップ32の貫通孔37を通じて露出する。なお、前記縮径孔部38及び拡径孔部39は、形成されていなくてもよい。
【0053】
キャップ32の小径部35の長さ40及び大径部36の長さ41は(
図5参照)、適宜設計され得る。本実施形態では、長さ40、41は、それぞれ25mm、10mmである。
【0054】
キャップ32の小径部35の後端側部分42は、軸方向21の後端側に向かって漸次縮径されている。小径部35の周面に軸方向21に沿う溝43が設けられている。この溝43は、小径部35の周方向に均等に並設されている。小径部35の外径は、ブランク20の先端部34の内径に対応しており、
図4が示すように、小径部35がブランク20の先端部34の内側に嵌め込まれる。
【0055】
図4が示すように、小径部35の外径とブランク20の先端部34の内径との間に所定のはめあい公差が設定されている。したがって、キャップ32は、一定の保持力でブランク20に内嵌され、釣人が意図する場合に、キャップ32をブランク20から引き抜くことができる。
【0056】
小径部35の後端側部分42が縮径されているので、釣人は、キャップ32を容易にブランク20に嵌め込むことができる。前記小径部35に溝43が設けられているから、キャップ32は、前記軸方向21に沿ってブランク20の内部に容易に押し込まれる。
【0057】
キャップ32の大径部36の外径寸法は、特に限定されるものではないが、ブランク20の先端部34の内径よりも大きく設定されていればよい。この大径部36は、前記小径部35に連続しているから、この小径部35がブランク20に嵌め込まれると、ブランク20の先端が大径部36に当接する(
図4参照)。これにより、キャップ32は、安定的にブランク20に嵌め込まれ、挿抜自在な状態となる。
【0058】
4.プラグの構造
【0059】
図6及び
図7は、それぞれ、プラグ33の正面図及び斜視図である。
【0060】
プラグ33は、主軸51と係止部52とを有する。本実施形態では、プラグ33は、ガラス繊維等を含んだポリエステル樹脂からなり、主軸51及び係止部52は、一体的に形成されている。なお、プラグ33の材質は、ガラス繊維等を含んだポリエステル樹脂に限定されるものではなく、他の金属、鉄鋼材又はステンレス鋼材等も採用され得る。
【0061】
主軸51は、円柱状を呈し、その周面に雄ネジ部53が形成されている。この雄ネジ部53は、
図4が示すように、ブランク17の先端部31に設けられた雌ネジ部45と螺合するようになっている。すなわち、主軸51は、ブランク17の先端部31にねじ込まれるようになっている。このとき、主軸51の中心線は、ブランク17の軸方向21と一致する。本実施形態では、主軸51にフランジ54が設けられている。このフランジ54は、円盤状を呈し、その外径は、キャップ32の大径部36の外径に対応している。したがって、主軸51がブランク17の先端部31にねじ込まれた状態で、フランジ54がキャップ32の大径部36に当接し、キャップ32をブランク17の先端部31に押圧する。
【0062】
係止部52は、本実施形態では円環状を呈し、主軸51に溶接されている。なお、いわゆる削出加工によりプラグ33が形成されてもよい。係止部52の外径及び内径は特に限定されるものではないが、前記携行ストラップ23のフック26が容易に係止され得るサイズであればよい。本実施形態では、係止部52は、前記フランジ54の中央に立設されている。すなわち、係止部52の中心55を貫く仮想中心線56は、前記軸方向21と直交する(
図7参照)。
【0063】
もっとも、係止部52は、フランジ54に対して他の姿勢で固定されていてもよいし、フランジ54が省略され、係止部52が主軸51に固定されていてもよい。その場合、主軸51がブランク17の先端部31にねじ込まれると、係止部52がキャップ32の大径部36に当接し、キャップ32をブランク17の先端部31に押圧する。
【0064】
5.タモの柄の使用要領
【0065】
タモ11(
図2参照)が収納されるとき、タモ網12がタモの柄10から外され、柄本体30が縮短され収納状態とされる。
図1が示すように、ブランク17の先端部31に設けられたキャップ32がブランク20に挿入される。このとき、
図4が示すように、キャップ32の小径部35は、ブランク20の先端部34の内側に着脱自在に嵌め込まれる。
【0066】
この状態で、キャップ32の端面にブランク17に形成された雌ネジ部45が露出し、この雌ネジ部45にプラグ33がねじ込まれる。すなわち、タモ網12が使用されないときに、前記雌ネジ部45が閉塞される。しかも、この雌ネジ部45にプラグ33がねじ込まれることにより、このプラグ33がキャップ32の大径部36に当接してキャップ32をブランク17に締結する。したがって、タモの柄10が使用されないときに、前記雌ネジ部45及びブランク17の内部に異物が混入することがなく、キャップ32もブランク17から脱落し紛失することが防止される。タモの柄10が収納状態とされたとき、携行ストラップ23が柄本体30に装着される。このとき、携行ストラップ23のフック26は、プラグ33の係止部52に係止される。
【0067】
加えて、ブランク17からプラグ33及びキャップ32が取り外されると、振出式に継がれた柄本体30が分解され、各ブランク17~20のメンテナンス作業が容易である。キャップ32はブランク17に嵌め込まれるだけの構造であるから、ブランク17の構造がシンプルであり、タモの柄10の製造コストも抑えられるという利点もある。
【0068】
他方、タモの柄10が使用されるときは、携行ストラップ23が外されると共に、プラグ33も外される。このとき、携行ストラップ23は、プラグ33の係止部52に係止され、プラグ33と携行ストラップ23とが一緒に保管される。したがって、釣り場において携行ストラップ23の紛失が防止されるという利点もある。しかも、この携行ストラップ23が係止されたプラグ33を釣人の身体に係合させることにより、釣り場でのタモ11の紛失も防止される。
【0069】
図4が示すように、本実施形態では、プラグ33の主軸51がブランク17の雌ネジ部45と螺合するので、プラグ33をブランク17に装着する作業が容易である。しかも、この主軸51がブランク17にねじ込まれると、フランジ54がキャップ32をブランク17に押しつけて固定する。したがって、キャップ32に生じる面圧が抑えられ、キャップ32の損傷が防止される。しかも、キャップ32をブランク17に押しつける手段としてフランジ54が採用されるので、プラグ33の構造がシンプルなものとなる。
【0070】
図6及び
図7が示すように、プラグ33の係止部52が環状に形成されているので、携行ストラップ23のみならず、さまざまな用品がプラグ33に容易に係合するという利点がある。
【0071】
6.プラグの変形例
【0072】
図8は、本実施形態の変形例に係るプラグ63の正面図である。
【0073】
このプラグ63が前記プラグ33(
図6参照)と異なるところは、プラグ33の係止部52が円環状に形成されていたのに対し、プラグ63の係止部64は、カラビナが採用されている点である。なお、その他の構成については、プラグ33と同様である。
【0074】
図8が示すように、プラグ63は、主軸51と係止部64とを有する。プラグ33と同様に、主軸51にフランジ54が設けられている。
【0075】
係止部64は、軸方向21に延びるカラビナ本体65と、ゲート66とを有する。この本変形例では、この係止部64は、既知の一般的なカラビナが採用されている。すなわち、ゲート66がピン67を介してカラビナ本体65に連結されている。ゲート66は、ピン67を中心に回動可能であり、常時、同図が示すようにカラビナ本体65側に弾性的に付勢されている。すなわち、常時、ゲート66は閉じた姿勢となっている。ゲート66は、同図において時計回りに回動することにより、開放される。
【0076】
この変形例では、係止部64がカラビナからなるので、携行ストラップ23その他の用品に対して係合するフックとして機能する。したがって、さまざまな用品が係止部64に簡単且つ確実に係合する。
【0077】
なお、本変形例では、係止部64が既知のカラビナにより構成されているが、係止部64は、一部を切り欠かれた環状本体に対してゲートが開閉するような、いわゆるカラビナ状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10・・・タモの柄
17・・・ブランク
20・・・ブランク
21・・・軸方向
23・・・携行ストラップ
24・・・ストラップ本体
25・・・フック
26・・・フック
28・・・一端
29・・・他端
30・・・柄本体
31・・・先端部
32・・・キャップ
33・・・プラグ
34・・・先端部
35・・・小径部
36・・・大径部
37・・・貫通孔
38・・・縮径孔部
39・・・拡径孔部
45・・・雌ネジ部
51・・・主軸
52・・・係止部
53・・・雄ネジ部
54・・・フランジ
63・・・プラグ
64・・・カラビナ