(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20241017BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20241017BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F41/04 C
H01F5/00 M
(21)【出願番号】P 2021073769
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 道隆
(72)【発明者】
【氏名】小久保 郁也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 拓也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 真輝
(72)【発明者】
【氏名】米山 将基
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-155701(JP,A)
【文献】特開2008-166407(JP,A)
【文献】特開2008-251640(JP,A)
【文献】特開2009-117664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00
H01F 17/00
H01F 41/04
H01L 21/28
H01L 27/04
H01L 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを含む複数の導体層と複数の絶縁樹脂層が交互に積層された構造を有するコイル部品であって、
径方向に隣接する前記スパイラルパターン間に位置し、前記絶縁樹脂層で埋め込まれたスペース領域の径方向におけるアスペクト比は2~4であり、
前記スパイラルパターンの周方向に沿った側面は、下部領域よりも上部領域における表面粗さの方が大きいことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記下部領域よりも前記上部領域の方が広いことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記上部領域の表面粗さSaは0.2μm以上であり、前記下部領域の表面粗さSaは0.1μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記側面のうち、前記スパイラルパターンの最内周ターンの内周壁及び前記スパイラルパターンの最外周ターンの外周壁の前記下部領域の方が、他の側面の前記下部領域よりも表面粗さが大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを含む導体層を形成する第1の工程と、
前記スパイラルパターンの上面及び周方向に沿った側面の上部領域を選択的に粗面化する第2の工程と、
前記導体層を埋め込む絶縁樹脂層を形成する第3の工程と、を備え、
前記第1乃至第3の工程を繰り返すことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項6】
径方向に隣接する前記スパイラルパターン間に位置するスペース領域の径方向におけるアスペクト比は2~4であり、
前記第2の工程においては、前記スパイラルパターンの前記側面の下部領域における粗化処理液の循環を抑制することを特徴とする請求項5に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを含む複数の導体層と複数の絶縁樹脂層が交互に積層された構造を有するコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを含む複数の導体層と複数の絶縁樹脂層が交互に積層された構造を有するコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。このような構造を有するコイル部品においては、スパイラルパターンと絶縁樹脂層の密着性を高めるために、スパイラルパターンの表面が粗面化されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スパイラルパターンの表面を過度に粗面化すると断面積が減少し、直流抵抗が増加するという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、粗面化による直流抵抗の増加を抑えることが可能なコイル部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを含む複数の導体層と複数の絶縁樹脂層が交互に積層された構造を有するコイル部品であって、径方向に隣接するスパイラルパターン間に位置し、絶縁樹脂層で埋め込まれたスペース領域の径方向におけるアスペクト比は2~4であり、スパイラルパターンの周方向に沿った側面は、下部領域よりも上部領域における表面粗さの方が大きいことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、スパイラルパターンの側面の上部領域が大きく粗面化されている一方、下部領域においては粗面化が抑えられていることから、絶縁樹脂層に対する密着性を確保しつつ、断面積の減少による直流抵抗の増加を抑えることが可能となる。
【0008】
本発明において、下部領域よりも上部領域の方が広くても構わない。これによれば、絶縁樹脂層に対する密着性をより高めることが可能となる。
【0009】
本発明において、上部領域の表面粗さSaは0.2μm以上であり、下部領域の表面粗さSaは0.1μm以下であっても構わない。これによれば、絶縁樹脂層に対する密着性を十分に確保しつつ、断面積の減少による直流抵抗の増加をより抑えることが可能となる。
【0010】
本発明において、スパイラルパターンの側面のうち、スパイラルパターンの最内周ターンの内周壁及びスパイラルパターンの最外周ターンの外周壁の下部領域の方が、他の側面の下部領域よりも表面粗さが大きくても構わない。これによれば、スパイラルパターンと絶縁樹脂層の密着性をより高めることが可能となる。
【0011】
本発明によるコイル部品の製造方法は、スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを含む導体層を形成する第1の工程と、スパイラルパターンの上面及び周方向に沿った側面の上部領域を選択的に粗面化する第2の工程と、導体層を埋め込む絶縁樹脂層を形成する第3の工程とを備え、第1乃至第3の工程を繰り返すことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、スパイラルパターンの上面及び側面の上部領域を選択的に粗面化していることから、側面の下部領域が過度に粗面化されることによる直流抵抗の増加を抑えることが可能となる。
【0013】
本発明において、径方向に隣接するスパイラルパターン間に位置するスペース領域の径方向におけるアスペクト比は2~4であり、第2の工程においては、スパイラルパターンの側面の下部領域における粗化処理液の循環を抑制しても構わない。このような条件で粗面化を行えば、スパイラルパターンの側面の上部領域の表面粗さを下部領域の表面粗さよりも大きくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、粗面化による直流抵抗の増加を抑えることが可能なコイル部品及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の構造を説明するための略断面図である。
【
図3】
図3は、導体層20,40の略平面図である。
【
図4】
図4は、導体層30,50の略平面図である。
【
図6】
図6は、スパイラルパターンSP1の形状を説明するための拡大図である。
【
図7】
図7は、コイル部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図8】
図8は、コイル部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図9】
図9は、コイル部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図10】
図10は、変形例によるスパイラルパターンSP1の形状を説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の構造を説明するための略断面図である。
【0018】
第1の実施形態によるコイル部品1は表面実装型のチップ部品であり、
図1に示すように、磁性部材Mと、磁性部材Mに埋め込まれたコイルパターンCとを備える。コイルパターンCの構成については後述するが、本実施形態においてはスパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンSP1~SP6からなる。
【0019】
磁性部材Mは、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などからなる金属磁性体フィラーと樹脂バインダーを含む複合部材であり、コイルパターンCに電流を流すことによって生じる磁束の磁路を構成する。樹脂バインダーとしては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。磁性部材Mは、コイルパターンCの軸方向における両側、コイルパターンCの内径領域、コイルパターンCの径方向における外側領域に設けられている。
【0020】
図1に示すように、絶縁樹脂層70~76と導体層10,20,30,40,50,60は、軸方向に交互に積層されている。導体層10の平面形状は
図2に示され、導体層20,40の平面形状は
図3に示され、導体層30,50の平面形状は
図4に示され、導体層60の平面形状は
図5に示されている。導体層10,20,30,40,50,60はそれぞれスパイラルパターンSP1~SP6を有しており、スパイラルパターンSP1~SP6の上面又は下面が絶縁樹脂層70~76で覆われている。スパイラルパターンSP1~SP6の側面は、それぞれ絶縁樹脂層71~76の一部で覆われている。ここで、スパイラルパターンSP1~SP6の上面及び下面とは、コイル軸に対して略垂直な面を指し、スパイラルパターンSP1~SP6の側面とは、径方向に対して略垂直な面を指す。
【0021】
スパイラルパターンSP1~SP6は、絶縁樹脂層71~75に形成されたビアホールを介して互いに接続されることにより、1つのコイル導体を構成している。導体層10,20,30,40,50,60の材料としては、銅(Cu)を用いることが好ましい。絶縁樹脂層70~76のうち、少なくとも絶縁樹脂層71~75については非磁性材料が用いられる。最下層に位置する絶縁樹脂層70や、最上層に位置する絶縁樹脂層76については、磁性を有していても構わない。
【0022】
導体層10は、絶縁樹脂層70上に形成された1層目の導体層であり、
図2に示すように、スパイラル状に約3ターン巻回されたスパイラルパターンSP1と、2つの電極パターン11,12を有している。スパイラルパターンSP1の下面は絶縁樹脂層70で覆われ、スパイラルパターンSP1の側面及び上面は絶縁樹脂層71で覆われている。これにより、スパイラルパターンSP1と磁性部材Mの間には、絶縁樹脂層71が介在する。電極パターン11は、スパイラルパターンSP1の外周端に接続されている。電極パターン12は、スパイラルパターンSP1とは独立して設けられている。
【0023】
導体層20は、導体層10の上面に絶縁樹脂層71を介して形成された2層目の導体層であり、
図3に示すように、スパイラル状に約3ターン巻回されたスパイラルパターンSP2と、2つの電極パターン21,22を有している。スパイラルパターンSP2の下面は絶縁樹脂層71で覆われ、スパイラルパターンSP2の側面及び上面は絶縁樹脂層72で覆われている。これにより、スパイラルパターンSP2と磁性部材Mの間には、絶縁樹脂層72が介在する。電極パターン21,22は、いずれもスパイラルパターンSP2とは独立して設けられている。
【0024】
導体層30は、導体層20の上面に絶縁樹脂層72を介して形成された3層目の導体層であり、
図4に示すように、スパイラル状に約3ターン巻回されたスパイラルパターンSP3と、2つの電極パターン31,32を有している。スパイラルパターンSP3の下面は絶縁樹脂層72で覆われ、スパイラルパターンSP3の側面及び上面は絶縁樹脂層73で覆われている。これにより、スパイラルパターンSP3と磁性部材Mの間には、絶縁樹脂層73が介在する。電極パターン31,32は、いずれもスパイラルパターンSP3とは独立して設けられている。
【0025】
導体層40は、導体層30の上面に絶縁樹脂層73を介して形成された4層目の導体層であり、
図3に示すように、スパイラル状に約3ターン巻回されたスパイラルパターンSP4と、2つの電極パターン41,42を有している。スパイラルパターンSP4の下面は絶縁樹脂層73で覆われ、スパイラルパターンSP4の側面及び上面は絶縁樹脂層74で覆われている。これにより、スパイラルパターンSP4と磁性部材Mの間には、絶縁樹脂層74が介在する。電極パターン41,42は、いずれもスパイラルパターンSP4とは独立して設けられている。
【0026】
導体層50は、導体層40の上面に絶縁樹脂層74を介して形成された5層目の導体層であり、
図4に示すように、スパイラル状に約3ターン巻回されたスパイラルパターンSP5と、2つの電極パターン51,52を有している。スパイラルパターンSP5の下面は絶縁樹脂層74で覆われ、スパイラルパターンSP5の側面及び上面は絶縁樹脂層75で覆われている。これにより、スパイラルパターンSP5と磁性部材Mの間には、絶縁樹脂層75が介在する。電極パターン51,52は、いずれもスパイラルパターンSP5とは独立して設けられている。
【0027】
導体層60は、導体層50の上面に絶縁樹脂層75を介して形成された6層目の導体層であり、
図5に示すように、スパイラル状に約2.5ターン巻回されたスパイラルパターンSP6と、2つの電極パターン61,62を有している。スパイラルパターンSP6の下面は絶縁樹脂層75で覆われ、スパイラルパターンSP6の側面及び上面は絶縁樹脂層76で覆われている。これにより、スパイラルパターンSP6と磁性部材Mの間には、絶縁樹脂層76が介在する。電極パターン62は、スパイラルパターンSP6の外周端に接続されている。電極パターン61は、スパイラルパターンSP6とは独立して設けられている。
【0028】
そして、スパイラルパターンSP1の内周端とスパイラルパターンSP2の内周端は、導体層20の一部であり絶縁樹脂層71を貫通して設けられたビア導体81を介して接続される。スパイラルパターンSP2の外周端とスパイラルパターンSP3の外周端は、導体層30の一部であり絶縁樹脂層72を貫通して設けられたビア導体82を介して接続される。スパイラルパターンSP3の内周端とスパイラルパターンSP4の内周端は、導体層40の一部であり絶縁樹脂層73を貫通して設けられたビア導体83を介して接続される。スパイラルパターンSP4の外周端とスパイラルパターンSP5の外周端は、導体層50の一部であり絶縁樹脂層材74を貫通して設けられたビア導体84を介して接続される。スパイラルパターンSP5の内周端とスパイラルパターンSP6の内周端は、導体層60の一部であり絶縁樹脂層75を貫通して設けられたビア導体85を介して接続される。これにより、スパイラルパターンSP1~SP6が直列に接続され、複数ターンからなるコイル導体が形成される。また、電極パターン11,21,31,41,51,61は磁性部材Mから露出し、一方の外部端子として用いられる。電極パターン12,22,32,42,52,62は磁性部材Mから露出し、他方の外部端子として用いられる。
【0029】
図6は、スパイラルパターンSP1の形状を説明するための拡大図であり、径方向に対して垂直な断面を示している。
図6にはスパイラルパターンSP1の断面が示されているが、他のスパイラルパターンSP2~SP6の断面についても同様である。
【0030】
図6に示すように、スパイラルパターンSP1は、軸方向における高さがHであり、径方向における幅がWである。したがって、スパイラルパターンSP1の径方向におけるアスペクト比はH/Wであり、その値は0.5~1.5程度である。また、径方向に隣接するスパイラルパターンSP1間に位置するスペース領域の径方向における幅はSである。したがって、スペース領域の径方向におけるアスペクト比はH/Sであり、その値は2~4である。
図1に示すように、スペース領域は絶縁樹脂層71で埋め込まれる。
【0031】
さらに、スパイラルパターンSP1の表面は、周方向に沿った側面90と、軸方向に対して略垂直な上面93及び底面94を有している。このうち、側面90と上面93は絶縁樹脂層71と接する面であり、底面94は絶縁樹脂層70と接する面である。そして、本実施形態においては、側面90が上面93側に位置する上部領域91と底面94側に位置する下部領域92に分かれており、下部領域92よりも上部領域91における表面粗さの方が大きい。具体的には、上部領域91の表面粗さSa(ISO25178に定義されたもの)は0.2μm以上であることが好ましく、下部領域92の表面粗さSaは0.1μm以下であることが好ましい。上面93の表面粗さSaについても0.2μm以上であることが好ましい。底面94の表面粗さSaについては、絶縁樹脂層70の表面性がほぼそのまま反映される。
【0032】
このように、本実施形態においては、スパイラルパターンSP1~SP6の上面93及び側面90の上部領域91が大きく粗面化されていることから、絶縁樹脂層71~76に対する高い密着性を確保することができる。一方、側面90の下部領域92についてはほとんど粗面化されていないことから、断面積の減少による直流抵抗の増加を抑えることが可能となる。ここで、上部領域91の軸方向における高さをH1とし、下部領域92の軸方向における高さをH2とした場合、H1>H2であることが好ましい。但し、高さH1が大きすぎると断面積の減少によって直流抵抗が増加することから、高さH1を高さH2の1.5~2倍の範囲に設定することが好ましい。
【0033】
次に、本実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0034】
まず、
図7に示すように、基材95の表面に絶縁樹脂層70を形成した後、絶縁樹脂層70の表面に導体層10を形成する。導体層10は、スパイラルパターンSP1と犠牲パターンVP1,VP2を含んでいる。犠牲パターンVP1はコイルパターンCの内径領域に位置し、犠牲パターンVP2はコイルパターンCの外側領域に位置する。導体層10の形成方法としては、絶縁樹脂層70の表面に薄いシード層を形成した後、シード層の表面にレジストパターンを形成し、この状態で電解メッキを行うことによって形成することができる。この段階では、スパイラルパターンSP1の上面93及び側面90の表面粗さSaは小さく、いずれも0.1μm以下である。
【0035】
次に、
図8に示すように、導体層10を粗化処理液96に晒すことによって表面を粗化する。この時、スパイラルパターンSP1の上部領域91においては粗化処理液96の循環が促進され、下部領域92においては粗化処理液96の循環が抑制される条件で粗面化処理を行う。このような条件は、粗化処理液96の供給条件、撹拌条件、温度条件などを調整することによって実現できる。特に、スペース領域のアスペクト比が2~4であれば、上記の条件を容易に実現することができ、これによってスパイラルパターンSP1の上面93及び側面の上部領域91が選択的に粗面化され、上面93の表面粗さSaは0.3μm以上となり、側面の上部領域91の表面粗さSaは0.2μm以上となる。側面の下部領域92についても粗化処理液96に晒されるため、実際には若干の粗面化が進行するが、上述の通り、粗化処理液96の循環を抑制することにより表面粗さSaを0.1μm以下に保つことが可能である。
【0036】
次に、
図9に示すように、スペース領域を埋めるよう、導体層10の表面に絶縁樹脂層71を形成する。絶縁樹脂層71の形成は、ラミネート法によって行うことができる。そして、
図7~
図9に示した工程を繰り返し行うことによってコイルパターンCを形成した後、犠牲パターンVP1,VP2を除去し、コイルパターンCを磁性部材Mで埋め込めば、本実施形態によるコイル部品1が完成する。
【0037】
このように、本実施形態においては、スパイラルパターンSP1~SP6の上面93及び側面の上部領域91が選択的に粗面化される条件で粗面化処理を行っていることから、スパイラルパターンSP1~SP6と絶縁樹脂層71~76の密着性を高めつつ、直流抵抗の増加を抑えることが可能となる。
【0038】
また、スパイラルパターンSP1の径方向における間隔よりも、スパイラルパターンSP1と犠牲パターンVP1,VP2の径方向における間隔の方が大きい場合、粗化処理液96を用いて表面を粗化すると、
図10に示すように、スパイラルパターンSP1の最内周ターンの内周壁やスパイラルパターンSP1の最外周ターンの外周壁は、上部領域91だけでなく下部領域92も粗化され、その表面粗さSaは0.2μm以上となる。つまり、スパイラルパターンSP1の周方向に沿った側面のうち、スパイラルパターンSP1の最内周ターンの内周壁及びスパイラルパターンSP1の最外周ターンの外周壁の下部領域92の方が、他の側面の下部領域92よりも表面粗さが大きくなる。これによれば、スパイラルパターンSP1~SP6と絶縁樹脂層71~76の密着性をより高めることが可能となる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 コイル部品
10,20,30,40,50,60 導体層
11,12,21,22,31,32,41,42,51,52,61,62 電極パターン
70~76 絶縁樹脂層
81~85 ビア導体
90 側面
91 上部領域
92 下部領域
93 上面
94 底面
95 基材
96 粗化処理液
C コイルパターン
M 磁性部材
SP1~SP6 スパイラルパターン
VP1,VP2 犠牲パターン