(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】エレベーターの空調装置およびエレベーターの空調方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20241017BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
F24F7/06 H
F24F9/00 A
F24F9/00 G
(21)【出願番号】P 2021074957
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 延明
(72)【発明者】
【氏名】島田 勝博
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-062134(JP,A)
【文献】特開平11-092060(JP,A)
【文献】特開平04-007288(JP,A)
【文献】特開平05-000787(JP,A)
【文献】特開2006-151542(JP,A)
【文献】特開昭62-096292(JP,A)
【文献】特開2016-120988(JP,A)
【文献】特開平09-025075(JP,A)
【文献】特開2005-247559(JP,A)
【文献】特開2018-002418(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0048178(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0052596(KR,A)
【文献】中国実用新案第208218148(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F
B66B 1/14
B66B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と送風機とを備えエレベーターの乗りカゴに設置される装置本体と、
前記装置本体と前記乗りカゴとを接続し、前記装置本体で調整された温調空気の供給によって前記乗りカゴの乗降口にエアカーテンを形成する供給管と、
前記装置本体と前記乗りカゴとを接続し、前記乗りカゴ内の空気を前記装置本体に取り込む吸引管と、
前記乗りカゴ内の温度を検知するための温度センサーと、
前記温度センサーからの温度情報と、前記乗りカゴの乗降口に設けたカゴドアの開閉情報に基づいて、前記装置本体の駆動を制御する制御部
とを備え、
前記制御部は、
前記装置本体による冷房運転の実施において前記カゴドアが開く際に、前記温度センサーからの情報に基づいて前記乗りカゴ内の温度が所定温度未満の場合に、前記熱交換器の駆動を停止させて前記送風機のみの駆動として前記エアカーテンを形成し、
前記装置本体による暖房運転の実施において前記カゴドアが開く際に、前記温度センサーからの情報に基づいて前記乗りカゴ内の温度が所定温度以上の場合に、前記熱交換器の駆動を停止させて前記送風機のみの駆動として前記エアカーテンを形成する
エレベーターの空調装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記乗りカゴの乗降口に設けたカゴドアの開閉情報に基づき、前記カゴドアが開き始めてから閉じるまでの間には前記装置本体の出力を低下させる
請求項1に記載のエレベーターの空調装置。
【請求項3】
前記供給管は、前記乗りカゴの乗降口の上部において前記乗りカゴに接続され、下方に向かって前記温調空気を吹き出す
請求項1に記載のエレベーターの空調装置。
【請求項4】
前記吸引管は、前記乗りカゴの乗降口とは逆側の上部において前記乗りカゴに接続される
請求項3に記載のエレベーターの空調装置。
【請求項5】
熱交換器と送風機とを備えエレベーターの乗りカゴに設置される装置本体と、
前記装置本体と前記乗りカゴとを接続し、前記装置本体で調整された温調空気の供給によって前記乗りカゴの乗降口にエアカーテンを形成する供給管と、
前記装置本体と前記乗りカゴとを接続し、前記乗りカゴ内の空気を前記装置本体に取り込む吸引管
と、
前記乗りカゴ内の温度を検知するための温度センサーとを備えた空調装置によるエレベーターの空調方法であって、
制御部は、
温度センサーからの温度情報と、前記乗りカゴの乗降口に設けたカゴドアの開閉情報に基づいて、前記装置本体の駆動を制御し、
前記装置本体による冷房運転の実施において前記カゴドアが開く際に、前記温度センサーからの情報に基づいて前記乗りカゴ内の温度が所定温度未満の場合に、前記熱交換器の駆動を停止させて前記送風機のみの駆動として前記エアカーテンを形成し、
前記装置本体による暖房運転の実施において前記カゴドアが開く際に、前記温度センサーからの情報に基づいて前記乗りカゴ内の温度が所定温度以上の場合に、前記熱交換器の駆動を停止させて前記送風機のみの駆動として前記エアカーテンを形成する
エレベーターの空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの空調装置およびエレベーターの空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの空調装置およびエレベーターの空調方法に関する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、「乗りかごの上部から床面へ向けて空気を排出することにより、乗りかごと建物の乗り場との間の空気の移動を遮蔽するエアカーテン装置を備えている。…エアカーテン装置20は、外気を吸入する吸入口20Aと、…吸入口20Aが吸入した空気を乗りかご3内へ排出する排出口20Bと、…から構成されている。」と記載され、「乗りかご3内の室温と乗り場1A内の室温との温度差が予め設定した値T1以上ある階床に乗りかご3が到着したときに限り、エアカーテン装置20を動作させるようにしているので、乗りかご3内の室温の変化に伴う快適性の低下を効率良く抑制することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した構成の空調装置では、乗りカゴに対して出入りする乗降客に対して、外気によって形成されたエアカーテンを吹き付けられる。このため、エアカータンが吹き付けられた乗降客は、必ずしも心地の良さを感じているとは限らなかった。
【0005】
そこで本発明は、乗りカゴに対して出入りする乗降客および乗りカゴ内の乗客に心地よさを提供することが可能なエレベーターの空調装置およびエレベーターの空調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、熱交換器と送風機とを備えエレベーターの乗りカゴに設置される装置本体と、前記装置本体と前記乗りカゴとを接続し、前記装置本体で調整された温調空気の供給によって前記乗りカゴの乗降口にエアカーテンを形成する供給管と、前記装置本体と前記乗りカゴとを接続し、前記乗りカゴ内の空気を前記装置本体に取り込む吸引管と、前記乗りカゴの乗降口に設けたカゴドアの開閉情報に基づいて、前記装置本体の駆動を制御する制御部を備えたエレベーターの空調装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乗りカゴに対して出入りする乗降客および乗りカゴ内の乗客に心地よさを提供することが可能なエレベーターの空調装置およびエレベーターの空調方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るエレベーターの空調装置の全体構成を説明するための斜視図である。
【
図2】実施形態に係るエレベーターの空調装置の機能ブロック図である。
【
図3】実施形態に係るエレベーターの空調装置の全体構成を説明するための構成図(その1)である。
【
図4】実施形態に係るエレベーターの空調装置の全体構成を説明するための構成図(その2)である。
【
図5】実施形態に係るエレベーターの空調方法の第1例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に係るエレベーターの空調方法の第2例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係るエレベーターの空調方法の第3例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のエレベーターの空調装置およびエレベーターの空調方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
≪エレベーターの空調装置≫
図1は、実施形態に係るエレベーターの空調装置の全体構成を説明するための斜視図である。
図2は、実施形態に係るエレベーターの空調装置1の機能ブロック図である。これらの図に示すエレベーターの空調装置1は、エレベーターの乗りカゴ2の天面21上に固定され、乗りカゴ2内の温度や湿度などの調整を行う。この空調装置1は、装置本体10と、装置本体10から延設された供給管11および吸引管12と、温度センサー13と、装置本体10の駆動を制御する制御部14とを備える。
【0011】
装置本体10は、空気の温度や湿度を調整した温調空気[Ar]を供給する。このような装置本体10は、
図2を参照し、例えばヒートポンプのような熱交換器101、および送風ファンのような送風機102など、エアコンディショナーを構成する標準的な駆動部を有する。
【0012】
図1を参照し、供給管11は、装置本体10と乗りカゴ2とを接続するように配置される。この供給管11は、装置本体10によって温度や湿度が調整された温調空気[Ar]を、乗りカゴ2内に供給する。また吸引管12は、装置本体10と乗りカゴ2とを接続するように配置される。この吸引管12は、乗りカゴ2内の空気を吸引して装置本体10に送り込む。これにより、エレベーターの空調装置1は、乗りカゴ2内の空気を、装置本体10を介して循環させる構成となっている。
【0013】
図3および
図4は、実施形態に係るエレベーターの空調装置の全体構成を説明するための構成図(その1)および(その2)である。これらの
図3および
図4は、乗りカゴ2の内部を側方から見た場合の図であり、乗りカゴ2が有するカゴドア2dが設けられた前面22、前面22と対向する背面23、さらに天面21、および床面24とに対して垂直な方向から乗りカゴ2の内部を見た図である。このうち
図3は、前面22に形成された乗降口22aが、カゴドア2dによって閉じられた状態の図であり、
図4は、乗降口22aが開いた状態の図である。
【0014】
これらの
図3、
図4に示すように、エレベーターの空調装置1の供給管11は、乗りカゴ2において、カゴドア2dが設けられた前面22側の上部において、乗りカゴ2に接続されている。乗りカゴ2に対する供給管11の接続口は、装置本体10で調整した温調空気[Ar]の供給口11aとなる。
【0015】
この供給口11aは、例えばカゴドア2dおよび乗降口22aの上部に配置され、乗りカゴ2の床面24に向かって、カゴドア2dおよび乗降口22aと平行に温調空気[Ar]を吹き出す。また供給口11aは、床面24に向かって吹き出した温調空気[Ar]が、カゴドア2dおよび乗降口22aの全面に広がり、エアカーテン[Ca]を形成するような形状および配置状態で設けられている。
【0016】
吸引管12は、乗りカゴ2において、カゴドア2dが設けられた前面22とは逆側の背面23側の上部において、乗りカゴ2に接続されている。乗りカゴ2に対する吸引管12の接続口は、乗りカゴ2内の空気を吸引する吸引口12aとなる。この吸引口12aは、供給管11の供給口11aとの関係において、供給管11からエアカーテン[Ca]を形成するように供給された温調空気[Ar]が、乗りカゴ2内の全域に行きわたるように配置される。
【0017】
図1~
図4を参照し、温度センサー13は、吸引管12内、または乗りカゴ2内において吸引管12の吸引口12aに近い位置に配置され、吸引管12から装置本体10に送り込まれる乗りカゴ2内の空気の温度を検知する。
【0018】
制御部14は、温度センサー13、およびエレベーターの乗りカゴ2の駆動を制御するエレベーター駆動制御部3と、無線または有線接続され、温度センサー13およびエレベーター駆動制御部3から取得した情報に基づいて装置本体10の駆動を制御する。このような制御部14は、CPU、ROM、およびRAMによって構成された計算機によって構成されたもので、例えばマイクロコンピュータである。この制御部14は、CPUが、ROMやRAMに記録されたプログラムを実行することにより、装置本体10の駆動を制御する。
【0019】
制御部14による装置本体10の駆動の制御は、エレベーター駆動制御部3から取得したカゴドア2dの開閉情報に基づいて、カゴドア2dが開く際に、装置本体10の出力を低下させる。また制御部14は、温度センサー13から取得した温度情報に基づく制御も実施する。なお、この制御部14による装置本体10の駆動の制御は、以降のエレベーターの空調方法において詳細に説明する。
【0020】
このような制御部14は、装置本体10に近接して配置されていてもよいし、装置本体10とは離れた位置に配置され、無線または有線による通信によって、装置本体10の駆動を制御する構成あってもよい。さらに制御部14は、エレベーターの駆動制御部3(
図2参照)の一部であってもよい。
【0021】
≪エレベーターの制御方法…第1例≫
図5は、実施形態に係るエレベーターの空調方法の第1例を示すフローチャートであって、
図1~
図4に示した制御部14によって実施される装置本体10の制御の手順を示している。このフローチャートに示すエレベーターの空調方法は、制御部14を構成するCPUが、ROMやRAMに保存されたプログラムを、装置本体10に実行させることにより実現される。このフローチャートは、エレベーターの駆動の開始に伴う空調装置1の運転として、周期的に繰り返される。空調装置1の運転は、ここでは冷房運転である場合を例示するが、暖房運転であってもよい。以下、
図5のフローチャートに基づいて、
図1~
図4を参照してエレベーターの空調方法の第1例を説明する。
【0022】
[ステップS000]
ステップS000において、制御部14は、カゴドア2dが開いた状態にあるか閉じた状態にあるかの判断を実施する。この際、制御部14は、エレベーター駆動制御部3から取得したカゴドア2dの開閉情報に基づいて判断を実施する。この判断において、例えば制御部14は、エレベーター駆動制御部3からの情報に基づいて、カゴドア2dが開く直前の例えば数秒前に、「開いた状態」と判断してステップS001に進んでもよい。
【0023】
一方、制御部14は、エレベーター駆動制御部3からの情報に基づいて、カゴドア2dが閉じた状態であって、かつ「開いた状態」と判断される以外の場合には、「閉じた状態」と判断してステップS002に進む。
【0024】
[ステップS001]
ステップS001において、制御部14は、装置本体10の熱交換器101の駆動を停止させ、送風機102のみの駆動による送風運転を実施する。これにより、カゴドア2dが開く直前の数秒前からカゴドア2dが開いて閉じるまでの間においては、乗りカゴ2内の空気を熱交換せずにそのまま温調空気[Ar]としたエアカーテン[Ca]が乗降口22aに沿って形成される。
【0025】
[ステップS002]
一方、ステップS002において、制御部14は、カゴドア2dが閉じた状態の乗りカゴ2内の温度が、設定温度(例えば25℃)以上であるか否かの判断を実施する。この場合、制御部14は、温度センサー13から取得した吸引管12の吸引口12a付近の温度情報によって、この判断を実施する。制御部14は、設定温度(例えば25℃)以上である(YES)と判断した場合には、ステップS003に進む。
【0026】
一方、制御部14は、25℃以上ではない(NO)と判断した場合には、ステップS001に進み、送風機102のみの駆動による送風運転を実施し、乗りカゴ2内の空気を熱交換せずにそのまま温調空気[Ar]として乗りカゴ2内に供給する。
【0027】
なお、空調装置1の運転が暖房運転である場合、制御部14は、本ステップS002において乗りカゴ2内の温度が設定温度以下であるか否かの判断を実施することとする。
【0028】
[ステップS003]
ステップS003において、制御部14は、装置本体10の熱交換器101および送風機102を駆動させ、熱交換によって冷却した温調空気[Ar]を送り出す冷房運転を実施する。これにより、熱交換器101によって冷却された温調空気[Ar]が、カゴドア2dと平行なエアカーテン[Ca]を形成しつつ、カゴドア2dが閉じた状態の乗りカゴ2内に供給され、乗りカゴ2内が冷却される。
【0029】
なお、空調装置1の運転が暖房運転である場合、制御部14は、本ステップS003において、装置本体10の熱交換器101および送風機102を駆動させ、熱交換によって加熱した温調空気[Ar]を送り出す暖房運転を実施する。これにより、熱交換器101によって暖房された温調空気[Ar]が、カゴドア2dと平行なエアカーテン[Ca]を形成しつつ、カゴドア2dが閉じた状態の乗りカゴ2内に供給され、乗りカゴ2内が暖房される。
【0030】
<第1例の効果>
以上説明した第1例によれば、乗りカゴ2内の空気を循環させて温度調整する空調装置1の供給管11から温調空気[Ar]を供給することよって、乗降口22aにエアカーテン[Ca]が形成される。このため、乗りカゴ2内の空気を逃がすことなく、かつ乗りカゴ2に出入りする乗客に対して、温度調整された温調空気[Ar]が吹き付けられ、乗りカゴ2の乗降客に対して心地よさを提供することができる。
【0031】
しかも、カゴドア2dが開いた状態においては、冷房機能を停止させて送風のみとすることにより、外気との温度差が大きく冷たすぎる(または暖かすぎる)温調空気[Ar]が、乗りカゴ2の乗降客に対して吹き付けられることを防止でき、これによっても乗降客に不快感を与えることなく心地よさを提供することができる。
【0032】
また、乗りカゴ2内の温度湿度を調整するための空調装置1によって、エアカーテン[Ca]を形成する構成であるため、エアカーテン[Ca]を形成するための機器を別体として設ける必要がなく、エレベーターの空調設備、およびエレベーターの簡略化を図ることが可能である。
【0033】
≪エレベーターの制御方法…第2例≫
図6は、実施形態に係るエレベーターの空調方法の第2例を示すフローチャートであって、
図1~
図4に示した制御部14によって実施される装置本体10の制御の手順を示している。このフローチャートに示す第2例は、
図5に示した第1例のフローチャートの一部を変更した変形例であり、ステップS000とステップS002は第1例と共通である。したがって、以下においては、共通するステップの説明は省略し、変更したステップS001’およびステップS003’のみを説明する。
【0034】
[ステップS001’]
ステップS001’は、ステップS000においてカゴドア2dが「開いた状態」と判断されて進んだステップである。また本ステップS001’は、ステップS000においてカゴドア2dが「閉じた状態」と判断され、かつステップS002において乗りカゴ2内が所定温度以上ではない(NO)と判断されて進んだステップでもある。
【0035】
本ステップS001’において、制御部14は、装置本体10の熱交換器101の駆動を、通常の冷房運転での設定温度(25℃)よりも高い温度の弱冷房に設定して熱交換器101を駆動させ、送風機102を通常に駆動させた弱冷送風運転を実施する。これにより、カゴドア2dが開く直前の数秒前からカゴドア2dが開いた状態においては、乗りカゴ2内の空気を弱冷房の温調空気[Ar]としたエアカーテン[Ca]が乗降口22aに沿って形成される。
【0036】
なお、本ステップS001’においては、熱交換器101の設定温度を高くした弱冷送風運転とするのに変えて、熱交換器101の設定温度は通常の冷房時の設定温度(例えば25℃)として送風機102による送風の強度を弱めた弱風/通常冷房運転としてもよい。さらに、また熱交換器101の設定温度を高くした弱冷房とし、かつ送風機102による送風の強度を弱めた弱風/弱冷房運転としてもよい。
【0037】
なお、空調装置1の運転が暖房運転である場合、制御部14は、本ステップS001’において、熱交換器101および送風機102の少なくとも一方の出力を弱めた運転を行う。
【0038】
[ステップS003’]
ステップS003’は、ステップS002においてカゴドア2dが閉じられた状態の乗りカゴ2内が、所定温度以上である(YES)と判断されて進んだステップである。本ステップS003’において、制御部14は、装置本体10の熱交換器101の駆動を、通常の冷房運転での設定温度(25℃)よりも低い強冷房に設定して熱交換器101を駆動させ、かつ送風機102による送風の強度を強めた強風/強冷房運転を実施する。これにより、乗りカゴ2内を設定温度(25℃以下)に戻す。
【0039】
なお、空調装置1の運転が暖房運転である場合、制御部14は、本ステップS003’において、熱交換器101および送風機102の高めた運転を行う。これにより、乗りカゴ2内を設定温度以上に戻す。
【0040】
<第2例の効果>
以上説明した第2例は、乗りカゴ2内の空気を循環させて温度調整する空調装置1の供給管11から温調空気[Ar]を供給することよって、乗降口22aにエアカーテン[Ca]を形成するため、第1例と同様の効果を得ることができる。さらに、カゴドア2dが閉じた状態において乗りカゴ2内が設定温度よりも高い場合には、空調装置1の出力を高めて乗りカゴ2内の温度を素早く回復させつつ、カゴドア2dが開いた状態においては装置本体10を弱冷送風運転とすることで、乗りカゴ2内の冷房雰囲気を維持することが可能である。
【0041】
≪エレベーターの制御方法…第3例≫
図7は、実施形態に係るエレベーターの空調方法の第3例を示すフローチャートであって、
図1~
図4に示した制御部14によって実施される装置本体10の制御の手順を示している。このフローチャートに示す第3例は、
図5に示した第1例のフローチャートにステップS002’を追加した変形例であり、ステップS000~ステップS003は第1例と共通である。したがって、以下においては、共通するステップの説明は省略し、追加したステップS002’のみを説明する。
【0042】
[ステップS002’]
ステップS002’は、ステップS000においてカゴドア2dが「開いた状態」と判断されて進んだステップである。本ステップS002’において、制御部14は、カゴドア2dが開いた状態の乗りカゴ2内の温度が所定温度(例えば28℃)以上であるか否かの判断を実施する。この所定温度は、空調装置1による冷房運転において、乗りカゴ2内の温度として設定された設定温度(例えば25℃)よりも高目に設定された温度であることとする。この場合、制御部14は、温度センサー13から取得した吸引管12の吸引口12a付近の温度情報によって、この判断を実施する。
【0043】
制御部14は、所定温度(例えば28℃)以上である(YES)と判断した場合には、ステップS003に進み、装置本体10の熱交換器101および送風機102を駆動させ、熱交換によって冷却した温調空気[Ar]を送り出す冷房運転を実施する。
【0044】
一方、制御部14は、所定温度(例えば28℃)以上ではない(NO)と判断した場合、すなわち所定温度(例えば28℃)未満の場合には、ステップS001に進む。そして、ステップS100において、装置本体10の熱交換器101の駆動を停止させ、送風機102のみの駆動による送風運転を実施する。
【0045】
なお、空調装置1の運転が暖房運転である場合、制御部14は、本ステップS002’において乗りカゴ2内の温度が所定温度を超えているか否かの判断を実施することとする。この所定温度は、空調装置1による暖房運転において、乗りカゴ2内の温度として設定された設定温度(例えば28℃)よりも低目に設定された温度であることとする。
【0046】
<第3例の効果>
以上説明した第3例は、乗りカゴ2内の空気を循環させて温度調整する空調装置1の供給管11から温調空気[Ar]を供給することよって、乗降口22aにエアカーテン[Ca]を形成するめ、第1例と同様の効果を得ることができる。さらに、カゴドア2dが開いた状態においては、乗りカゴ2内の温度が所定温度(例えば28℃)以上であれば、装置本体10を冷房運転とすることで、カゴドア2dが開いた状態においての乗りカゴ2内の温度上昇を抑えることができる。
【0047】
なお、本第3例は、第2例と組み合わせることも可能であり、
図7のフローチャートにおけるステップS001およびステップS003を、
図6のフローチャートにおけるステップS001’およびステップS003’に置き換えてもよい。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…空調装置、
2…乗りカゴ
2d…カゴドア
3…エレベーター駆動制御部
10…装置本体
11…供給管
11a…供給口
12…吸引管
12a…吸引口
13…温度センサー
14…制御部
21…天面
22…前面
22a…乗降口
23…背面
24…床面
101…熱交換器
102…送風機
[Ar]…温調空気
[Ca]……エアカーテン