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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/68 20060101AFI20241017BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B65D85/68 B
F25D23/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021089036
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022181849
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 正大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎二
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸司
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-246841(JP,A)
【文献】特開2019-138559(JP,A)
【文献】特開2007-254016(JP,A)
【文献】実開昭57-120480(JP,U)
【文献】特開2017-193372(JP,A)
【文献】国際公開第2009/131449(WO,A1)
【文献】実開昭48-097374(JP,U)
【文献】実開昭57-101772(JP,U)
【文献】特許第6287734(JP,B2)
【文献】実開昭61-205235(JP,U)
【文献】特開平10-305807(JP,A)
【文献】特公昭54-043957(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/68
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き出し式の扉および回動式の扉を備えた箱体が、ストレッチフィルムで包装された冷蔵庫であって、
前記引き出し式の扉および前記回動式の扉には、パッキンが設けられており、
前記引き出し式の扉は、第1引き出し式扉と、前記第1引き出し式扉より幅の広い第2引き出し式扉と、を有し、
前記ストレッチフィルムが前記第2引き出し式扉を押圧する押圧力は、28N以上かつ86N以下である冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記ストレッチフィルムは、断面が筒状であって、穴を中心として外側へ伸展可能である冷蔵庫。
【請求項3】
請求項2に記載の冷蔵庫において、
前記ストレッチフィルムの穴が、前記箱体の天面に対応する場所に位置する冷蔵庫。
【請求項4】
請求項3に記載の冷蔵庫において、
前記ストレッチフィルムには、伸展していない部分が存在し、当該部分によって前記穴が覆われる冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記ストレッチフィルムの上端は、前記箱体の上端よりも高く、
前記ストレッチフィルムの下端は、最下段扉の下端よりも高い冷蔵庫。
【請求項6】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記ストレッチフィルムには、開梱するときの目印が付されており、
前記目印は、隣接する上下の扉の間に存在する冷蔵庫前面側の凹み部分を跨ぐように鉛直方向に伸びる冷蔵庫。
【請求項7】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記箱体に運搬用取っ手を有し、
前記運搬用取っ手と前記ストレッチフィルムとにより空間が形成される冷蔵庫。
【請求項8】
請求項7に記載の冷蔵庫において、
前記空間に、電源プラグまたは電源コードが収納される冷蔵庫。
【請求項9】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記ストレッチフィルムは、伸展していないときの厚さが、50μm以下である冷蔵庫。
【請求項10】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記ストレッチフィルムが前記回動式の扉を押圧する押圧力も、99N以下である冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫は、扉が開放するのを抑制するために、一般に、包装された上で、運搬される。冷蔵庫の包装の一態様として、例えば特許文献1には、袋状のストレッチフィルムからなるガゼット袋を、冷蔵庫の上から被せて包装することが記載されている(段落0013-0018、図3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-246841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ストレッチフィルムで冷蔵庫を包装することは開示されているものの、押付力が過剰に加わる場合の懸念については開示も示唆もされていない。
【0005】
今回、発明者らは、実際にストレッチフィルムで冷蔵庫の扉を固定することを検討したところ、固定力が強過ぎても好ましくないことを見出した。すなわち、固定力が強過ぎると、開梱後に冷蔵庫の使用者が扉を開放するのに大きな力が必要となってしまうことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題に鑑み、本発明は、引き出し式の扉および回動式の扉を備えた箱体が、ストレッチフィルムで包装された冷蔵庫であって、前記ストレッチフィルムが前記引き出し式の扉を押圧する押圧力を、99N以下とした。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る冷蔵庫の前面視斜視図。
図2】本実施形態に係る冷蔵庫の上部付近の背面図。
図3】本実施形態に係る冷蔵庫の運搬用取っ手を示す斜視図。
図4】本実施形態の冷蔵庫に、ストレッチフィルムを包装した状態を示す前面斜視図。
図5A】包装工程の前半を示す図。
図5B】包装工程の後半を示す図。
図6】ストレッチフィルムが引き出し式の扉を押圧する押圧力と、当該引き出し式の扉の開放に必要な力と、の関係を示すグラフ。
図7】シングル扉の比較的小型の冷蔵庫について、包装後の各断熱扉に加わる押付力と、下段冷凍室扉および野菜室扉のパッキン潰れ量と、を示す表。
図8】フレンチ扉の比較的大型の冷蔵庫について、包装後の各断熱扉に加わる押付力と、下段冷凍室扉および野菜室扉のパッキン潰れ量と、を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図を用いて詳細に説明する。
【0009】
まず、本実施形態に係る冷蔵庫1の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る冷蔵庫の前面視斜視図である。図1に示すように、冷蔵庫1は、上から冷蔵室2、製氷室3および上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の順に、貯蔵室を有しており、各室の前面開口部には、これらの開口部を開閉する断熱扉が設けられている。各貯蔵室の配置については、これに限るものではない。
【0010】
断熱扉は、ヒンジ(図示せず)を中心に回動する回動式の冷蔵室扉2a,2bと、引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aから構成されている。また、各断熱扉の内壁面の外周には、扉閉状態とのきに貯蔵室の開口縁との間で密閉性を高めるパッキンが設けられている。なお、各断熱扉の内部には、真空断熱材が配置されており、この真空断熱材以外の空間には硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材を充填してある。
【0011】
冷蔵庫1の断熱箱体は、鋼板製の外箱と、合成樹脂製の内箱と、を備え、外箱と内箱とによって形成される空間に、真空断熱材や発泡断熱材が設けられ、断熱箱体内の各貯蔵室と外部とを断熱している。外箱は、天面板71、左右の側面板72、背面板73(図2参照)および底面板(図示せず)とで構成される。天面板71と側面板72は一体的に折り曲げ加工によって形成され、背面板73と底面板は後付けで天面板71と側面板72に固定されて一体化されるものである。
【0012】
さらに、冷蔵庫1には、各貯蔵室を所定の温度帯に冷却するための冷却器(図示せず)が設けられている。そして、冷媒を圧縮する圧縮機(図示せず)、圧縮機から送られた冷媒を放熱する放熱手段(図示しない凝縮器および放熱パイプ)、放熱手段から送られた冷媒を減圧する減圧手段(図示しないキャピラリーチューブ)および減圧手段から送られた冷媒が蒸発して空気を冷却する冷却器が接続され、冷凍サイクルを構成している。
【0013】
図2は、本実施形態に係る冷蔵庫の上部付近の背面図である。図2に示すように、背面板73の左右両側の上端には、ハンドル部13を有する運搬用取っ手が設けられている。この運搬用取っ手は、合成樹脂で成形されたものであり、冷蔵庫1を立てた状態から寝かす際や、冷蔵庫1を寝かせた状態で移動させる際などに使用される。なお、本実施形態の運搬用取っ手は、背面板73の上端に形成された絞り部の傾斜面に取り付けられるため、背面板73の平坦面よりも後方には突出しないようになっている。
【0014】
図3は、本実施形態に係る冷蔵庫の運搬用取っ手を示す斜視図である。図3に示すように、運搬用取っ手10は、ベース部11と、このベース部11の左右に形成される内側台部12aおよび外側台部12bと、これら台部の間に架け渡されるハンドル部13と、を有している。
【0015】
各台部は、ベース部11から後方へ突出して形成され、複数のねじボス14が形成されている。運搬用取っ手10は、ねじ(図示せず)がねじボス14に挿通され、背面板73に螺着されることで、冷蔵庫1に固定される。ハンドル部13は、ベース部11から離間して形成されているため、作業者が冷蔵庫1を運搬する際に、手で握ることが可能となっている。外側台部12bの下方には、電源コード8が挿通される凹部15が形成されている。この凹部15には、電源コード8が凹部15から飛び出さないようにするフック16が形成されている。
【0016】
図4は、本実施形態の冷蔵庫に、ストレッチフィルムを包装した状態を示す前面斜視図である。図4に示すように、ストレッチフィルム20には、冷蔵庫1の前面側に対応する位置に、開梱するときの目印21が付されている。この目印21は、隣接する上下の断熱扉の間に存在する冷蔵庫前面側の凹み部分、例えば下側の断熱扉の手掛け部分、を跨ぐように鉛直方向に伸びている。この凹み部分が冷蔵庫1の前面側に存在していると、伸展したストレッチフィルム20との間に隙間が形成されるため、作業者が指で押し付けることで、ストレッチフィルム20に容易に穴を開けることが可能である。また、目印21が冷蔵庫前面側を鉛直方向に伸びているため、作業者が開梱する際に、目印21に沿ってストレッチフィルム20が左右に引き裂かれることを促すことができる。このように左右に引き裂くことにより、再度梱包が必要になったときでも、引き裂いたストレッチフィルム20を再度利用することが可能となる。なお、ストレッチフィルム20に付される目印21は、印刷やテープでも良いし、ストレッチフィルム20に加工して形成される凹凸であっても良い。また、目印21は、冷蔵庫1の前面に対応する場所だけでなく、冷蔵庫1の天面や底面に対応する場所まで伸びているのが望ましい。
【0017】
さらに、ストレッチフィルム20は、詳細は後述するように、冷蔵庫1の天面側から下方へ被せていくようにして装着されるため、ストレッチフィルム20の上端は、箱体の上端よりも高くなる。一方、ストレッチフィルム20の下端は、図4に示すように、箱体や最下段扉(野菜室扉6a)の下端よりも高い位置までとなっている。本実施形態のストレッチフィルム20は、断熱扉の固定が主目的であり、箱体の保護には発泡スチロール30やダンボール40が使用されるためである。また、ストレッチフィルム20が箱体の下端まで達していないので、床面と接触せず清潔感が保たれる他、ストレッチフィルム20の使用量を抑制できる。
【0018】
ここで、図4のように、冷蔵庫1に対してストレッチフィルム20を被せるとき、冷蔵庫1から出張るものがあったり、ストレッチフィルム20との間に空間があったりすると、ストレッチフィルム20が意図せず破れる可能性もある。そこで、本実施形態では、図2に示すように、運搬用取っ手10とストレッチフィルム20とで形成される空間に、電源プラグ9および電源コード8の一部を収納するようにした。
【0019】
また、運搬用取っ手10の凹部を覆うように伸展したストレッチフィルム20は、作業者が指で押し付けることで、容易に穴を開けることが可能である。したがって、運搬用取っ手10の部分のストレッチフィルム20のみを作業者が引き裂いて取り除くことで、ストレッチフィルム20の本体は残ったままで冷蔵庫1を運搬できる。すなわち、ストレッチフィルム20を新たに包装し直さなくても、運搬中の扉開放や接触による傷付きを防止できる。
【0020】
次に、図5Aおよび図5Bを用いて、冷蔵庫1をストレッチフィルム20で包装する工程を説明する。図5Aは、包装工程の前半を示す図であり、図5Bは、包装工程の後半を示す図である。
【0021】
まず、ロール状に巻かれたストレッチフィルム20を包装設備の上部へ搬送する(ステップS1)。なお、ストレッチフィルム20は、ガゼット型と呼ばれる折り畳み構造となっている。
【0022】
次に、巻取機構が、ストレッチフィルム20の先端部4隅を把持し、折り畳まれた状態から引き離し広げる動作を行う(ステップS2)。
【0023】
さらに、巻取機構は、引き離されたストレッチフィルム20を4方向へ広げて、包装に使用する分だけ巻き取る(ステップS3)。
【0024】
その後、切断機構が、ストレッチフィルム20をカットする(ステップS4)。
【0025】
次に、引張機構が、冷蔵庫1の水平方向の4隅に対応した4か所でストレッチフィルム20を把持し、4方向へそれぞれ同時に引っ張り、冷蔵庫1の水平断面サイズよりも大きくなるようにストレッチフィルム20を伸展させる(ステップS5)。
【0026】
そして、引張機構がストレッチフィルム20を引っ張った状態で、上下移動機構によりストレッチフィルム20を下降させる(ステップS6)。このとき、ストレッチフィルム20の終端部は伸展していないので、この終端部が冷蔵庫1の天面に引っ掛かる。そして、上下移動機構が下降するに従い、上方に位置するストレッチフィルム20から順に引張機構による張力が解放されて行く。これにより、上方のストレッチフィルム20から順に元の状態に収縮し、冷蔵庫1の上方の側面から下方の側面へかけてストレッチフィルム20が巻き付くことになる。また、冷蔵庫1の天面に引っ掛かる部分より上方のフィルム長が十分長くなるように、ステップS4でストレッチフィルム20をカットしておくことにより、上方のフィルムを折り畳んで埃などの混入を防止できる。
【0027】
カットされたストレッチフィルム20の先端が、最下段の貯蔵室(野菜室6)の上端を通過し、最下段の貯蔵室の扉(野菜室扉6a)の固定に必要な量まで達すると、引張機構による張力がすべて解放され、冷蔵庫1の包装が完了する(ステップS7)。
【0028】
前述の特許文献1に記載のストレッチフィルムは、切断したフィルムの上部(冷蔵庫の天面側)を溶着して袋状にする必要があるが、本実施形態では、フィルムが冷蔵庫1の天面角部に引っ掛かり、フィルムが下がってくることはないため、溶着せずにそのまま用いることができる。また、本実施形態に係る包装によれば、冷蔵庫1の箱体の天面に対応する場所にストレッチフィルム20の穴が位置するため、開梱の作業も容易となる。さらに、ステップS3において、冷蔵庫1の箱体の天面に引っ掛かる部分から箱体の下部に至るまでの寸法以上に、余分にストレッチフィルム20を巻取り、ステップS4において、カットするようにしても良い。ストレッチフィルム20のうち、余分に設けた部分は、冷蔵庫1を包装した後も伸展していないので、当該部分を、天面板71を覆うように畳むことで、冷蔵庫1の天面が汚れず長期保管も可能となる。
【0029】
以下、ストレッチフィルム20が各断熱扉を押し付ける押付力の適正な値について、検討した結果を説明する。図6は、ストレッチフィルムが引き出し式の扉を押圧する押圧力と、当該引き出し式の扉を開梱後に開放する際に必要な力と、の関係を示すグラフである。なお、図6の点線は、これらの関係を近似した直線である。また、図6の丸で示す測定結果は、引き出し式の扉の対象として、下段冷凍室扉5aを用いた場合の結果と、野菜室扉6aを用いた場合の結果と、が含まれている。
【0030】
図6を参照すれば分かる通り、ストレッチフィルム20の押圧力が大きくなると、梱包後に引き出し式の扉を開放する際に必要となる力が大きくなる。ここで、扉開放力が52Nを超えると、操作性が極端に下がる。この扉開放力52Nに対応するストレッチフィルム20の押圧力を、図6の点線で示す近似式に基づいて計算すると、99Nとなる。よって、引き出し式の扉に対する押圧力が99N以下となるようにストレッチフィルム20を包装することで、使用者による操作性の低下を抑制することが可能である。なお、扉への押圧力は、左右方向中央より左右方向両端が大きくなり易いが、回動式の扉(冷蔵室扉2a,2b)は、左右方向両端にはヒンジがあるため、ストレッチフィルム20の押圧による操作性への影響は低い。また、製氷室扉3aや上段冷凍室扉4aは、比較的小さな扉であるため、同様に、ストレッチフィルム20の押圧による操作性への影響は低い。
【0031】
ストレッチフィルム20による過大な押付力は、操作性の低下だけでなく、他の面でも影響を及ぼす。例えば、扉が有するパッキンの復元量が小さくなって、開梱後の使用時に密閉性が低下し、冷却性能の低下や消費電力量の増加を招く可能性がある。さらに、引き出し式の扉(特に、下段冷凍室扉5aおよび野菜室扉6a)は、ヒンジで支えられた回動式の扉(冷蔵室扉2a,2b)と比べて、パッキンの潰れ量が大きくなり易い。したがって、開梱後に、引き出し式の扉が、回動式の扉に対して相対的に後方へ引っ込んだ状態となり、引き出し式の扉と回動式の扉との間に段差が生じる可能性もあるため、外観上好ましくない。
【0032】
そこで、本実施形態では、最も潰れやすいパッキンである、下段冷凍室扉および野菜室扉のパッキンの潰れ量が2mm以下となるように、ストレッチフィルム20を包装するようにした。
【0033】
図7は、箱体の寸法が幅600mおよび奥行664mmであって、冷蔵室扉がシングル扉の比較的小型の冷蔵庫について、包装後の各断熱扉に加わる押付力と、下段冷凍室扉および野菜室扉のパッキン潰れ量と、を示す表である。一方、図8は、箱体の寸法が幅685mおよび奥行738mmであって、冷蔵室扉がフレンチ扉の比較的大型の冷蔵庫について、包装後の各断熱扉に加わる押付力と、下段冷凍室扉および野菜室扉のパッキン潰れ量と、を示す表である。なお、図7および図8における押圧力は、各扉における複数の箇所で測定した押圧力を平均した値が示されている。
【0034】
図7および図8に示すように、同じ厚さのストレッチフィルム20を用いた場合、大型の冷蔵庫の方が、小型の冷蔵庫よりも、包装後の各扉に加わる押圧力が大きくなることが分かる。これは、大型の冷蔵庫の方がストレッチフィルム20の伸展量が大きく、収縮しようとする力が強いためである。また、ストレッチフィルム20が厚いほど、包装後の各扉に加わる押圧力が大きくなることも分かる。
【0035】
次に、パッキンの潰れ量が2mm以下という条件を満たすような、ストレッチフィルム20の厚さを検討する。なお、ストレッチフィルム20の厚さは、伸展していないときの厚さを基準とする。
【0036】
小型の冷蔵庫では、図7に示すように、ストレッチフィルム20の厚さが70μm以下であれば、条件を満たすことが分かる。しかし、大型の冷蔵庫では、図8に示すように、ストレッチフィルム20の厚さが50μm以下でないと、条件を満たさないことが分かる。したがって、冷蔵庫の大きさに応じて、ストレッチフィルム20の厚さを変えても良い。ただし、生産効率を考慮すると、使用するストレッチフィルム20は共用化した方が望ましい。そこで、本実施形態では、厚さが50μm以下の共通のストレッチフィルム20を異なる機種の冷蔵庫の包装に利用するようにした。
【0037】
なお、包装前に50μmの厚みのストレッチフィルム20は、包装後に開梱したときには、冷蔵庫の角部に面していた部分が33μmまで復元し、他の部分では45μmまで復元していることが確認された。冷蔵庫の角部では、他の部分と比べて大きな力で引っ張られ、大きく伸展するためと考えられる。
【0038】
また、図7および図8によれば、下段冷凍室扉および野菜室扉のパッキンの潰れ量を2mm以下とするには、ストレッチフィルム20による押付力が最も大きくなる冷蔵室扉において、押付力が99N以下であれば良いことも分かる。この押付力99Nの根拠は、図7のフィルム厚さ70μmの場合における冷蔵室扉の押付力に基づくものである。
【符号の説明】
【0039】
1…冷蔵庫、2…冷蔵室、2a…冷蔵室扉、3…製氷室、3a…製氷室扉、4…上段冷凍室、4a…上段冷凍室扉、5…下段冷凍室、5a…下段冷凍室扉、6…野菜室、6a…野菜室扉、71…天面板、72…側面板、73…背面板、8…電源コード、9…電源プラグ、10…運搬用取っ手、11…ベース部、12a…内側台部、12b…外側台部、13…ハンドル部、14…ねじボス、15…凹部、16…フック、20…ストレッチフィルム、21…目印、30…発泡スチロール、40…ダンボール
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8