(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20241017BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20241017BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20241017BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
A61F13/511 100
A61F13/512
A61F13/49 311Z
A61F13/511 400
A61F13/532 200
(21)【出願番号】P 2021089183
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2020091931
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑畑 耕平
(72)【発明者】
【氏名】富田 美奈
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-153735(JP,A)
【文献】特開2010-227143(JP,A)
【文献】特開2019-76499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸領域を有し、着用状態において該凹凸領域が着用者の肌に当接する肌当接シートを具備し、着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向と直交する横方向を有する吸収性物品であって、
前記凹凸領域は、第1方向及び該第1方向と直交する第2方向を有し、第2方向の長さよりも第1方向の長さが長い凸部と、第1方向又は第2方向における該凸部間に位置する凹部とをそれぞれ複数有しており、
前記凹部は、前記凸部に比して繊維材料の坪量が少ない低坪量部を有しており、
前記肌当接シートよりも非肌対向面側に、弾性部材が第1方向に沿って配されており、
前記凹凸領域には、第2方向に沿って複数の前記低坪量部が並んだ低坪量部列が第1方向に間欠的に複数列形成されており、
前記凸部
における、第1方向において前記凹部と重なる部分が、
前記弾性部材の収縮によって、該凸部の内部に向かって折れるように変形する内折れ部
となっている、吸収性物品。
【請求項2】
前記内折れ部は、前記低坪量部よりも肌対向面側に位置している、請求項
1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
複数列の前記低坪量部列が、第1方向において等間隔で形成されている、請求項
1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記低坪量部が、前記肌当接シートを貫通する開孔からなる、請求項1~
3の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記凸部は、前記肌当接シートの構成繊維が第2方向に沿って配向した部分を有している、請求項1~
4の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記凸部は、前記肌当接シートの構成繊維が第1方向に沿って配向した部分を有している、請求項1~
5の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記凸部は、前記弾性部材を最大に伸長させたとき、下記式(1)を満たす、請求項1~
6の何れか1項に記載の吸収性物品。
La>H1 ・・・(1)
La:第1方向における前記凸部の長さL1の半分
H1:前記凸部の高さ
【請求項8】
前記肌当接シートは、積層された第1シート及び第2シートが複数の接合部において互いに接合されている複合シートであり、
第1シートは、前記凹部以外の部位において第2シートから離れる方向に突出した前記凸部を形成しており、
第1方向に沿う伸長状態において前記複合シートは、第2シートにより形成された面が平坦である、請求項1~
7の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記弾性部材は前記横方向に沿って伸縮可能であり、
前記弾性部材と前記凹凸領域とが、前記縦方向における前記吸収性物品の端部で重なっている、請求項1~
8の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記弾性部材は前記縦方向に沿って伸縮可能であり、
前記弾性部材と前記凹凸領域とが、前記縦方向における前記吸収性物品の中央部で重なっている、請求項1~
9の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
吸収性材料を含む吸収性コアを具備しており、
前記吸収性コアは、前記吸収性材料の坪量が低く、且つ前記縦方向に延びるコア低坪量部を有しており、
前記弾性部材と、前記凹凸領域と、前記コア低坪量部とが重なっている、請求項
10に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、尿とりパッド、失禁パッド、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品は、一般的に着用者の肌と当接するシートを具備している。肌触りや通気性等の観点から、斯かるシートの肌対向面に凹凸形状が形成された、吸収性物品が知られている。
例えば、特許文献1には、第1層及び第2層が積層してなる表面シートにおいて、所定のパターンで配された第一圧縮凹部と、第1層からなる隆起部とが形成されており、該隆起部に第二層まで達しない第二圧縮凹部が形成されている、吸収性物品が記載されている。
【0003】
本出願人は、先に、第1不織布と第2不織布との積層体を含む表面シートにおいて、第1不織布と第2不織布とが開孔の周縁部において互いに融着された融着部と、第1不織布が融着部以外の部位において第2不織布から離れる方向に突出した凸部とがそれぞれ複数形成されており、融着部が、サブレイヤに向かって突出する突起部を複数有し、表面シートがサブレイヤ側に押圧された場合に、突起部によってサブレイヤが部分的に押圧されるようになされている、吸収性物品を提案している(特許文献2)。
【0004】
また、本出願人は、先に、幅方向に延びる弾性部材が配された弾性領域と吸収性コアとの間に、弾性部材が配されていない非弾性領域を有しており、表面シートが、所定のパターンで配された凸部、並びに該凸部間において連続した縦溝部及び横溝部が形成された凹凸領域を前記非弾性領域と重なる部位に有しており、該縦溝部は、蛇行の程度が該横溝部よりも大きい、吸収性物品を提案している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-263296号公報
【文献】特開2018-088997号公報
【文献】特開2019-076499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
凹凸形状が形成されたシートにおいて、着用者の肌と当接する凸部は、一般的に、その大きさが大きいほど着用者の肌に追従し易いので、良好な肌触りが得られ易い。しかしながら、前記凸部と、一方向に伸縮性を有する弾性部材とが重なっている場合、該弾性部材の収縮によって凸部全体が潰れることがあり、その潰れた部分が肌と密着することで、通気性が低下する場合がある。特許文献1~3は、弾性部材の収縮によって凸部が潰れることを解決する技術を開示するものではない。
【0007】
したがって、本発明の課題は、凸部による肌触りを損なうことなく、弾性部材の収縮による凸部の潰れを効果的に抑制できる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、凹凸領域を有し、着用状態において該凹凸領域が着用者の肌に当接する肌当接シートを具備し、着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向と直交する横方向を有する吸収性物品に関する。
前記凹凸領域は、第1方向及び該第1方向と直交する第2方向を有し、第2方向の長さよりも第1方向の長さが長い凸部と、第1方向又は第2方向における該凸部間に位置する凹部とをそれぞれ複数有していることが好ましい。
前記凹部は、前記凸部に比して繊維材料の坪量が少ない低坪量部を有していることが好ましい。
前記肌当接シートよりも非肌対向面側に、弾性部材が第1方向に沿って配されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凸部による肌触りを損なうことなく、弾性部材の収縮による凸部の潰れを効果的に抑制できる吸収性物品が提供される。斯かる吸収性物品は、通気性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側(内面側)を模式的に示す展開平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の使い捨ておむつの表面シート(肌当接シート)を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す肌当接シートの凹凸領域Pの一部を拡大して示す拡大平面図である。
【
図5】
図5は、肌当接シートにおいて弾性部材と重なっている凸部の平面図及びこれに対応する断面図であって、
図5(a)が変形前の該凸部を示す図であり、
図5(b)が変形後の該凸部を示す図である。
【
図6】
図6は、肌当接シートの凹凸領域と弾性部材との配置関係の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、肌当接シートの凹凸領域と弾性部材との配置関係の別の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、肌当接シートの凹凸領域と弾性部材との配置関係のさらに別の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、さらに別の実施形態における肌当接シートの断面構造の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、肌当接シートにおける凹凸領域のさらに別の実施形態を示す
図4相当図である。
【
図11】
図11は、肌当接シートにおける凹凸領域のさらに別の実施形態を示す
図4相当図である。
【
図12】
図12は、肌当接シートにおける凹凸領域のさらに別の実施形態を示す
図4相当図である。
【
図13】
図13は、肌当接シートにおける凹凸領域のさらに別の実施形態を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明に係る弾性部材に用いることができる、伸縮シートを示す一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつ1(以下、単におむつ1ともいう)の基本的な構造が示されている。
おむつ1は、
図1及び
図2に示すように、液透過性の表面シート12、液不透過性の裏面シート13、及び両シート12,13間に配置された吸収体14を具備する。裏面シート13に関し、液不透過性とは、液難透過性も含む概念であり、裏面シート13が液を全く通さない場合の他、撥水性のシート等からなる場合等も含まれる。表面シート12は、後述するように、肌対向面に凹凸領域P,PSを有するものであるが、
図1及び
図2では該凹凸領域P,PSの凹凸を省略して図示している。
【0012】
図1は、おむつ1の展開且つ伸長状態を示す図である。おむつ1は、着用者の前後方向に対応する縦方向X
1と、該縦方向X
1と直交する横方向Y
1とを有している。また、おむつ1は、縦方向X
1の全長を3等分して、着用時に着用者の前側に配される腹側部A、着用時に着用者の後側に配される背側部B、及び腹側部Aと背側部Bとの間に位置する股下部Cとに区分することができる。
おむつ1は、展開型の使い捨ておむつであり、背側部Bの両側縁部にファスニングテープ17が設けられており、腹側部Aの外表面に、そのファスニングテープ17を止着するランディングゾーン18が設けられている。
【0013】
本明細書において、おむつ1の「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1を展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで広げた状態をいう。また、「肌対向面」は、おむつ又はその構成部材(例えば吸収体)に着目したときに、おむつの着用時に着用者の肌に向けられる面であり、「非肌対向面」は、おむつの着用時に着用者の肌とは反対側に向けられる面である。つまり、肌対向面は、着用者の肌に相対的に近い側の面であり、非肌対向面は、着用者の肌から相対的に遠い側の面である。「着用時」及び「着用状態」は、おむつの適正な着用位置が維持されて着用された状態を指す。
【0014】
おむつ1における吸収体14は、吸収性コア14aと該吸収性コア14aを包むコアラップシート14bとを備えている。
吸収性コア14aは、例えばパルプ繊維等の吸液性繊維の積繊体や、吸液性繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体から構成することができる。吸液性繊維としては、例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース等のセルロース系の親水性繊維が挙げられる。セルロース系の親水性繊維以外に、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成樹脂からなる繊維を界面活性剤等により親水化したものを用いることもできる。
コアラップシート14bとしては、例えば、ティッシュペーパーや透水性の不織布が用いられる。コアラップシート14bは、1枚で吸収性コア14aの全体を包んでいてもよいし、2枚以上を組み合わせて吸収性コア14aを包んでいてもよい。裏面シート13としては、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート等が用いられる。
【0015】
おむつ1の縦方向X1の両側には、立体ギャザー形成用弾性部材15aを有する立体ギャザー形成用シート15が配されており、該立体ギャザー形成用弾性部材15aの収縮により、着用状態における股下部Cに、着用者の肌側に向かって起立する立体ギャザーが形成される。
また、股下部Cにおける脚周りに配される部位には、レッグ部弾性部材16が伸長状態で配されており、その収縮により、着用状態における股下部Cに着用者の脚周りへのフィット性を向上させるレッグギャザーが形成される。
本実施形態において立体ギャザー形成用弾性部材15a及びレッグ部弾性部材16それぞれは、その伸縮方向がおむつ1の縦方向X1と一致している。
【0016】
本実施形態のおむつ1は、背側部Bにおいて、吸収体4の縦方向X1の端縁から同方向X1外方に延出したウエストフラップ部WFを有している。ウエストフラップ部WFは、吸収体4の縦方向X1の端縁よりも同方向X1の外方に延出する部材からなる部分である。本実施形態においてウエストフラップ部WFは、吸収体4の前記端縁から縦方向X1の外方に延出した立体ギャザー形成用シート15、表面シート12、及び裏面シート13からなる。これらシートは、吸収体4の前記端縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。ウエストフラップ部WFは、おむつ1の着用時に着用者の腰周りに対応する。
【0017】
本実施形態のおむつ1では、
図1に示すように、背側部Bにおけるウエストフラップ部WFに、ウエスト弾性部材19が、横方向Y
1に延びるように伸長状態で配されている。このウエスト弾性部材19の収縮により、着用者の背側のウエスト部に配される部分にウエストギャザーが形成されるようになされている。本実施形態においてウエスト弾性部材19は、ウエストフラップ部WFにおける表面シート12と裏面シート13との間に、横方向Y
1に沿って伸長状態で固定されている。おむつ1は、腹側部Aにおけるウエストフラップ部WFに、前記ウエスト弾性部材19を有していてもよい。本実施形態においてウエスト弾性部材19は、その伸縮方向がおむつ1の横方向Y
1と一致している。
【0018】
おむつ1は、該おむつの着用状態において着用者の肌に当接する肌当接シート10を具備している。肌当接シート10は、複数の凸部及び凹部が形成された凹凸領域を有しており、着用状態において該凹凸領域、より具体的には凸部が着用者の肌に当接する。
本実施形態のおむつ1は、表面シート12が肌当接シート10であり、該表面シート12の肌対向面に凹凸領域を有している。
【0019】
本実施形態の表面シート12、即ち肌当接シート10は、
図3に示すように、横方向Y
1の中央に位置する中央領域M及び該中央領域Mの両側に位置する一対のサイド領域S,Sを有している。中央領域M及び一対のサイド領域S,Sそれぞれは凹凸領域を有しており、これら両領域M,Sにおいて凸部及び凹部が相異なる配置パターンで形成されている。以下、中央領域Mにおける凹凸領域Pを「中央凹凸領域P」といい、サイド領域Sにおける凹凸領域PSを「サイド凹凸領域PS」という。
【0020】
本実施形態の肌当接シート10は、中央凹凸領域Pが、第1方向Y及び該第1方向Yに直交する第2方向Xを有している。本実施形態において第1方向Yはおむつ1の横方向Y1と一致し、第2方向Xはおむつ1の縦方向X1と一致している。中央凹凸領域Pは、中央領域Mの全域に亘って形成されている。
中央凹凸領域Pは、第2方向Xの長さよりも第1方向Yの長さが長い凸部41を複数有している。以下、この第1方向Yに長い凸部41を、「長凸部41」ともいう。凹凸領域Pは、長凸部41と、第1方向Y及び第2方向Xの何れか一方における長凸部41間に位置する凹部31とをそれぞれ複数有していてもよい。
【0021】
本実施形態の長凸部41は、平面視において略ひし形の形状を有しており、その長軸方向が第1方向Yと一致しており、短軸方向が第2方向Xと一致している。
中央凹凸領域Pには、
図3及び
図4に示すように、長凸部41が第1方向Y及び第2方向Xに分散した状態に形成されている。
より詳細には、長凸部41は、
図3に示すように、千鳥状に配置されており、第2方向Xに沿って複数の長凸部41が並んだ縦方向凸部列R5が、第1方向Yに複数列形成されている。
第1方向Yにおいて隣り合う縦方向凸部列R5どうしは、長凸部41の配置位置が、第2方向Xに半ピッチ分ずれている。第1方向Yにおいて隣り合う縦方向凸部列R5の長凸部41は、該長凸部41の一部分どうしが、第2方向Xにおいて重複するように配されている。
長凸部41の第2方向Xにおける位置が互いに一致する縦方向凸部列R5どうしが、第1方向Yにおいて等間隔で形成されている。斯かる構成により、長凸部41と後述する大凹部31との各大きさを容易に揃え、凹凸領域Pによる肌触り及び通気性をより向上させることができる。
また中央凹凸領域Pにおいては、第1方向Yに沿って複数の長凸部41が並んだ横方向凸部列R6が、第2方向Xに複数列形成されている。長凸部41の第1方向Yにおける位置が互いに一致する横方向凸部列R6どうしが、第2方向Xにおいて等間隔で形成されている。
【0022】
本実施形態において中央凹凸領域Pは、第1方向Y及び第2方向Xにおける長凸部41間に位置する凹部31,33を複数有している。中央凹凸領域Pは、大きさが異なる2種類の凹部31,33を有している。以下、大きさが大きい方の凹部31を「大凹部31」といい、大きさが小さい方の凹部33を「小凹部33」という。
【0023】
本実施形態において中央凹凸領域Pは、縦方向凸部列R5における長凸部41の第2方向Xの端縁どうし間であって、且つ横方向凸部列R6における長凸部41の第1方向Yの端縁どうし間に大凹部31を有している。
本実施形態の大凹部31は、長凸部41に比して繊維材料の坪量が少ない低坪量部32を有している。低坪量部32は、長凸部41に比して繊維材料の坪量が少なく且つ該繊維材料が存在する低積繊部であってもよく、繊維材料が存在せず、肌当接シート10を貫通する開孔であってもよい。後述する長凸部41の変形をより容易にする観点から、低坪量部32は、前記開孔であることが好ましい。
本実施形態の大凹部31は、低坪量部32の周縁部にエンボス加工等によって繊維材料が高密度化された高密度部35を有している〔
図5(a)の断面図参照〕。これに代えて、大凹部31は、低坪量部32の周縁部に高密度部35を有していなくともよい。
図4及び
図5の平面図では、高密度部35の図示を省略している。
【0024】
大凹部31に形成された低坪量部32も、
図3及び
図4に示すように、千鳥状に配置されている。より詳細には、複数の低坪量部32は、第2方向Xに沿って並んだ縦方向低坪量部列R1が、第1方向Yに間欠的に複数列形成されている。第1方向Yにおいて隣り合う縦方向低坪量部列R1どうしは、低坪量部32の配置位置が、第2方向Xに半ピッチ分ずれている。
複数列の縦方向低坪量部列R1は、第1方向Yにおいて等間隔で形成されている。第1方向Yにおける縦方向低坪量部列R1どうしの間隔は、該低坪量部列を形成する低坪量部の大きさが異なっている場合、該縦方向低坪量部列R1を第1方向Yに2等分する中心線どうし間の距離とする。
また中央凹凸領域Pにおいては、第1方向Yに沿って複数の低坪量部32が並んだ横方向低坪量部列R2が、第2方向Xに複数列形成されている。
図4に、第1方向Yにおいて縦方向低坪量部列R1と縦方向凸部列R5とが重なる領域を符号fで示す。
【0025】
中央凹凸領域Pにおいて、長凸部41と大凹部31とは、第1方向Y及び第2方向Xに交互に配列した状態に形成されている。即ち、長凸部41と大凹部31とが、第2方向Xに沿って交互に並んだ縦方向凹凸列R10が第1方向Yに沿って複数列形成されている。
また、第1方向Yに隣り合う縦方向凹凸列R10どうしは、長凸部41の配置位置及び大凹部31の配置位置それぞれが、第2方向Xに半ピッチ分ずれている。
【0026】
本実施形態の中央凹凸領域Pは、大凹部31の第1方向Y両側それぞれに、第2方向Xにおいて長凸部41を挟む一対の小凹部33,33を有している。一対の小凹部33,33は、第2方向Xに沿って直列しており、その一対の小凹部33,33からなる列が第1方向Yに一定の間隔で複数列形成されている。第1方向Yにおいて隣り合う一対の小凹部33,33からなる列は、当該列を形成する小凹部33の位置が第2方向Xにおいて一致している。
【0027】
おむつ1では、肌当接シート10よりも非肌対向面側に、弾性部材が第1方向Yに沿って配されている。本実施形態においては、表面シート12である肌当接シート10よりも非肌対向面側に、第1方向Yに沿ってウエスト弾性部材19が伸長状態で配されており、該ウエスト弾性部材19が第1方向Yに沿って伸縮性を発現するようになされている。
本実施形態のおむつ1は、ウエストフラップ部WFにおいて中央凹凸領域Pとウエスト弾性部材19とが重なっている。
【0028】
本実施形態の長凸部41は、大凹部31と第1方向Yに重なる部分aを有している〔
図5(a)参照〕。第1方向Yに伸縮性を発現するウエスト弾性部材19が収縮したとき、中央凹凸領域Pは第1方向Yに圧縮され、肌当接シート10が変形する。具体的には、大凹部31が第1方向Yに圧縮されるので、これに伴い長凸部41における大凹部31と第1方向Yに重なる部分aも第1方向Yに圧縮される。第1方向Yに圧縮された長凸部41は、大凹部31と第1方向Yに重なる部分aが内部に向かって折れるように変形する〔
図5(b)参照〕。弾性部材の収縮による斯かる変形を、以下、「内折れ」ともいい、該内折れ可能な部分を「内折れ部a」ともいう。
このように、本実施形態のおむつ1では、長凸部41を部分的に変形させることで、長凸部41による肌触りを損なうことなく、弾性部材19の収縮によって凸部全体が潰れることを効果的に抑制することができる。これにより、中央凹凸領域Pにおいて長凸部41の凸形状が良好に維持されるので、着用者の肌に肌当接シート10が密着することが抑制されるとともに、着用状態におけるおむつ1内の蒸れも抑制されて、優れた通気性が奏される。
肌触り及び通気性をより向上させる観点から、長凸部41は、弾性部材19の収縮によって内折れが生じ、該弾性部材19の伸長により内折れ前の状態に戻ることが好ましい。
【0029】
本実施形態の中央凹凸領域Pでは、長凸部41が第1方向Yにおいて縦方向低坪量部列R1と重なっている。大凹部31は、他の部分に比して低剛性である低坪量部32を有している。斯かる構成により、弾性部材19の収縮によって大凹部31が第1方向Yにより圧縮され易い〔
図5(b)参照〕。この圧縮に伴い、長凸部41において大凹部31と第1方向Yに重なる部分aも、同方向Yにより容易に圧縮されるので、長凸部41の内折れがより生じ易い〔
図5(b)参照〕。
本実施形態において、内折れ部aは、低坪量部32よりも肌対向面側に位置している。また、弾性部材19は、低坪量部32よりも非肌対向面側に位置している。
【0030】
おむつ1内の通気性を向上させる観点から、内折れは複数箇所の長凸部41で生じさせることが好ましい。例えば、凹凸領域Pは、第1方向Yにおいて縦方向低坪量部列R1と縦方向凸部列R5とが重なった領域fを複数有していることが好ましい。
【0031】
長凸部41に内折れをより容易に生じさせる観点から、弾性部材19の伸長応力は、好ましくは8cN/10mm以上、より好ましくは10cN/10mm以上であり、また好ましくは50cN/10mm以下、より好ましくは40cN/10mm以下であり、また好ましくは8cN/10mm以上50cN/10mm以下、より好ましくは10cN/10mm以上40cN/10mm以下である。伸長応力は以下の方法により測定される。
【0032】
〔伸長応力の測定方法〕
展開且つ伸長状態のおむつから、凹凸領域Pと重なる位置に配された弾性部材であって、該弾性部材において伸縮性を発現している領域を、その伸縮方向に50mm切り出す。この切り出したサンプル片を、テンシロン引張試験機(ORIENTEC社製「RTC-1210A」)における一対のチャックに挟む。このときのチャック間距離は10mmとする。次いで、50mm/minの速度でチャック間の距離が40mmとなるまでサンプル片を伸長させた後、該チャック間の距離を38mmまで戻したときの引張り荷重(cN/10mm)を測定する。斯かる測定を3回繰り返し、これらの平均(チャック間の距離を38mmまで戻したときの引張り荷重の平均)を伸長応力(cN/10mm)とする。
【0033】
長凸部41に内折れをより容易に生じさせる観点から、低坪量部32が低積繊部である場合、該低坪量部32における繊維材料の坪量は、以下の範囲内であることが好ましい。
低坪量部32における繊維材料の坪量は、長凸部41における繊維材料の坪量に対して、好ましくは10%以下、より好ましくは20%以下である。
低坪量部32における繊維材料の坪量は、好ましくは30g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下である。
【0034】
内折れした長凸部41における内折れ部aは、該長凸部41の内部に陥没する谷部vと、該谷部よりも肌対向面側に位置する山部mとにより形成されている〔
図5(b)参照〕。山部mをより形成し易くする観点から、長凸部41は、肌当接シート10の構成繊維が第2方向Xに沿って配向した部分を有していることが好ましい。当該第2方向Xに沿って配向した部分は、低坪量部32を圧縮する力、即ち第1方向Yに収縮する力を受けにくいので、内折れ部aにおける山部mを形成し易い。
また、谷部vをより形成し易くする観点から、長凸部41は、肌当接シート10の構成繊維が第1方向Yに沿って配向した部分を有していることが好ましい。当該第1方向Yに沿って配向した部分は、低坪量部32を圧縮する力、即ち第1方向Yに収縮する力を受け易いので、内折れ部aにおける谷部vを形成し易い。
内折れ部aをより容易に形成させる観点から、長凸部41は、肌当接シート10の構成繊維が第1方向Yに沿って配向した部分と、該第1方向Yに沿って配向した部分の第1方向Yの両側それぞれに該構成繊維が第2方向Xに沿って配向した部分とを有していることが好ましい。
【0035】
シートにおける繊維の配向は、例えば以下の方法で確認することができる。まず、評価対象のシートを、コールドスプレー等を用いてはがすなどして吸収性物品から取り出す。取り出したシートを、カッター等を用いて、第2方向Xに沿う長さ2cm、第1方向Yに沿う長さ2cmの平面視四角形形状に切り取り、これを測定片とする。測定片は、長凸部41が含まれるように切り出す。次いで、顕微鏡(例えばキーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX-1000)を用いて、測定片における長凸部を倍率60~200倍で観察する。一定の観察領域内(例えば1mm四方)において観察される任意の繊維それぞれについて、該領域内において繊維の長さが最大となるような二点を定める。次いで、この両端間を結ぶ直線と、第1方向Yとのなす角度を測定する。この測定を少なくとも3つの観察領域について行い、計30本以上の繊維について測定した角度の算術平均値から、繊維配向方向を求める。繊維配向方向は、第1方向Yとのなす角度が45度以下の場合、第1方向Yに配向すると判断し、第1方向Yとのなす角度が45度超の場合、第2方向Xに配向すると判断する。繊維配向の測定においては、該領域内において10本以上の繊維を確認できる倍率で観察することが好ましい。
【0036】
長凸部41に内折れをより容易に生じさせる観点から、長凸部41は、弾性部材19を最大に伸長させたとき、下記式(1)を満たすことが好ましい。
La>H1 ・・・(1)
La:第1方向Yにおける長凸部41の長さL1の半分
H1:長凸部41の高さ
第1方向Yにおける長凸部41の長さL1は、同方向Yにおける長凸部41の最大長さである(
図4参照)。
また、前記H1は、肌当接シート10に0.05kPaの荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定する。厚み測定器としては、例えばレーザー変位計(KEYENCE社製、LK-080)を用いることができる。
【0037】
上記と同様の観点から、第1方向Yにおける長凸部41の長さの半分(L1/2)をLaとし、長凸部41の高さをH1〔
図5(a)参照〕としたとき、H1に対するLaの比率であるLa/H1は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であり、また好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下であり、また好ましくは1.5以上15.0以下、より好ましくは2.0以上10.0以下である。
【0038】
上記と同様の観点から、第1方向Yにおける長凸部41の長さをL1(
図4参照)とし、第2方向Xにおける長凸部41の長さをL2(
図4参照)としたとき、L2に対するL1の比率であるL1/L2は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上であり、また好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下であり、また好ましくは1.5以上5.0以下、より好ましくは1.8以上3.0以下である。
【0039】
低坪量部32をより圧縮させて、長凸部41における内折れをより生じさせ易くする観点から、第2方向Xにおける長凸部41の長さをL2(
図4参照)とし、第2方向Xにおける低坪量部32の長さをL5(
図4参照)としたとき、L2に対するL5の比率であるL5/L2が、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上であり、また好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下であり、また好ましくは0.3以上0.8以下、より好ましくは0.4以上0.7以下である。
【0040】
第1方向Yにおいて低坪量部32を圧縮する力をより受け易くして、長凸部41における内折れをより生じさせ易くする観点から、第2方向Xにおける長凸部41の長さをL2(
図4参照)とし、第1方向Yにおける低坪量部32の長さをL6(
図4参照)としたとき、L2に対するL6の比率であるL6/L2が、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上であり、また好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下であり、また好ましくは0.3以上1.5以下、より好ましくは0.4以上1.0以下である。
【0041】
本実施形態の長凸部41は、大凹部31と第1方向に重なる部分a、即ち内折れ部aを
第1方向Yにおいて1個のみ有している。
第1方向Yにおける長凸部41の長さをL1(
図4参照)とし、第1方向Yにおける内折れ部aの長さをL10〔
図5(b)参照〕としたとき、L1に対するL10の比率であるL10/L1は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上であり、また好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下であり、また好ましくは0.2以上0.8以下、より好ましくは0.3以上0.7以下である。第1方向Yにおける内折れ部aの長さL10は、内折れした長凸部41における谷部vの第1方向Yに沿う最大長さである〔
図5(b)参照〕。
後述する第3及び第4実施形態のように、長凸部41が第1方向Yに沿って内折れ部aを複数有している場合は、第1方向Yにおける内折れ部aの長さL10は、第1方向Yにおける複数の内折れ部aの長さの総和とする。例えば、第3実施形態のように、1個の長凸部41が、2個の内折れ部a
1,a
2を有している場合、第1方向Yにおける内折れ部の長さL10は、該2個の内折れ部a
1,a
2の第1方向Yにおける長さの合計である。
【0042】
凹凸領域Pにおける肌触りをより向上させる観点から、長凸部41及び低坪量部32の寸法は以下の範囲内であることが好ましい。
第1方向Yにおける長凸部41の長さL1(
図4参照)は、好ましくは4.0mm以上、より好ましくは6.0mm以上であり、また好ましくは35.0mm以下、より好ましくは25.0mm以下であり、また好ましくは4.0mm以上35.0mm以下、より好ましくは6.0mm以上25.0mm以下である。
第2方向Xにおける長凸部41の長さL2(
図4参照)は、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上であり、また好ましくは7.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下であり、また好ましくは2.0mm以上7.0mm以下、より好ましくは3.0mm以上5.0mm以下である。
長凸部41の高さH1〔
図5(a)参照〕は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上であり、また好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下であり、また好ましくは0.5mm以上4.0mm以下、より好ましくは0.8mm以上3.0mm以下である。
【0043】
第1方向Yにおける低坪量部32の長さL6(
図4参照)は、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.0mm以上であり、また好ましくは10.0mm以下、より好ましくは7.0mm以下であり、また好ましくは0.8mm以上10.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上7.0mm以下である。
第2方向Xにおける低坪量部32の長さL5(
図4参照)は、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.0mm以上であり、また好ましくは6.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下であり、また好ましくは0.8mm以上6.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上4.0mm以下である。
【0044】
本実施形態の中央凹凸領域Pは、大凹部31とともに小凹部33を有している(
図3参照)。本実施形態の小凹部33は、低坪量部として、開孔を有している(図示せず)。小凹部33は、低坪量部を有しないものであってもよい。
本実施形態の長凸部41は、第1方向Yに伸縮性を発現する弾性部材が収縮しても、第2方向Xにおいて小凹部33間に挟まれた部分に内折れは生じない。このように、中央凹凸領域Pは、長凸部41の内折れに寄与しない凹部33を有していてもよい。
長凸部41の内折れに寄与しない凹部33としては、例えば、第1方向Yにおける長さが0.5mm未満である凹部や、低坪量部を有さず、エンボス加工等の圧密化によって形成された凹部等が挙げられる。
【0045】
本実施形態のおむつ1において、ウエスト弾性部材19は横方向Y1に沿って伸縮可能である。このウエスト弾性部材19と中央凹凸領域Pとが、縦方向X1におけるおむつ1の端部、具体的には背側部Bにおけるウエストフラップ部WFで重なっている。本実施形態のおむつ1は、着用状態において着用者の腰周り(ウエスト部)に、内折れ可能な長凸部41を有する中央凹凸領域Pが配されるので、肌当接シート10が該腰周りにフィットし易いとともに、該凹凸領域Pによって通気性がより良好に維持されて蒸れが生じ難い。
【0046】
本実施形態のおむつ1では、
図6に示すように、ウエストフラップ部WFにおいて肌当接シート10である表面シート12と、裏面シート13との間にウエスト弾性部材19が伸長状態で配されており、該表面シート12とウエスト弾性部材19とが直接接触した状態で重なっている。斯かる構成は、弾性部材19の収縮力(伸長応力)を大凹部31又は低坪量部32に付与させ易く、長凸部41の内折れをより容易に生じさせる点で好ましい。
【0047】
肌当接シート10と、第1方向に沿って伸縮性を発現するように配された弾性部材とは、該肌当接シート10と該弾性部材との間に他の部材を介在させた状態で重なっていてもよい。例えば、
図7及び
図8に示すように、間に吸収体14を介在させた状態で、肌当接シート10である表面シート12と、第1方向Yに沿って伸縮性を発現するように配された弾性部材19とが重なっていてもよい。この場合、大凹部31又は低坪量部32に弾性部材19の収縮力(伸長応力)をより付与させる観点から、吸収性コア14aが、吸収性材料の坪量が低いコア低坪量部14cを有し、前記弾性部材19と、内折れ可能な長凸部41を有する凹凸領域Pと、該コア低坪量部14cとが重なっていることが好ましい。
コア低坪量部14cは、吸収性コア14aにおける該コア低坪量部14c以外の部分に比して該吸収性コア14aの形成材料の坪量が少なく且つ該形成材料が存在する低積繊部であってもよく、形成材料が存在せず、吸収性コア14aを貫通する貫通部であってもよい。
【0048】
低坪量部32に弾性部材19の収縮力(伸長応力)をより付与させる観点から、コア低坪量部14cが低積繊部である場合、吸収性コア14aは、コア低坪量部14cにおける吸収性材料の坪量が、該コア低坪量部14c以外の部分における吸収性材料の坪量に対して、好ましくは0%超、より好ましくは20%以上であり、また好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下であり、また好ましくは0%超80%以下、より好ましくは20%以上60%以下である。
上記と同様の観点から、コア低坪量部14cが低積繊部である場合、コア低坪量部14cにおける吸収性材料の坪量は、好ましくは0g/m2超、より好ましくは40g/m2以上であり、また好ましくは500g/m2以下、より好ましくは400g/m2以下であり、また好ましくは0g/m2超500g/m2以下、より好ましくは40g/m2以上400g/m2以下である。
【0049】
図7に示す実施形態では、長凸部41の第1方向Y及び弾性部材19の延在方向が、おむつの横方向Y
1と一致している。一方、コア低坪量部14cは、縦方向X
1に延在している。
図8に示す実施形態では、長凸部41の第1方向Y、弾性部材19の延在方向、及びコア低坪量部14cの延在方向が、おむつの縦方向X
1と一致している。このように、前記凹凸領域Pにおける長凸部41の第1方向Yと、コア低坪量部14cの延在方向とが一致していると、肌当接シート10のフィット性をより向上できる点で好ましい。
【0050】
図7及び
図8に示すように、横方向Y
1に沿って伸縮可能な弾性部材19の収縮によって、凹凸領域Pにおける内折れ可能な凸部41に内折れが生じるものであってもよく、縦方向X
1に沿って伸縮可能な弾性部材の収縮によって、凹凸領域Pにおける内折れ可能な凸部41に内折れが生じてもよい。即ち、凹凸領域Pにおける長凸部41の第1方向と、おむつ1の横方向Y
1とを一致させてもよく、該第1方向と縦方向X
1とを一致させてもよい。
図8に示す実施形態において、縦方向X
1に沿って伸縮可能な弾性部材と、内折れ可能な長凸部41を有する凹凸領域Pとが、縦方向X
1におけるおむつ1の中央部で重なっていることが好ましく、股下部Cで重なっていることがより好ましい。斯かる構成により、肌当接シート10と着用者の肌との密着をより効果的に抑制し、吸収体14に吸収された尿等の排泄物に起因する蒸れや、吸収体14に一旦吸収された液が着用者の体圧等の影響で表面シート12側に移行する、いわゆる液戻りをより抑制することができる。
【0051】
本実施形態の肌当接シート10において、サイド凹凸領域PSは千鳥状に配置された凸部47と凹部37とを有している。サイド凹凸領域PSにおける凸部47は、弾性部材の収縮によって内折れが生じてもよく、該弾性部材の収縮によって内折れが生じなくてもよい。
サイド凹凸領域PSにおける凸部47に内折れが生じる場合、上述した中央凹凸領域Pについての説明が適宜適用される。
【0052】
図9~
図13には、本発明に係る肌当接シートの他の実施形態が示されている。後述する第2~第6実施形態の肌当接シートについては、
図1~8に示す実施形態(第1実施形態)と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
【0053】
上述した第1実施形態の肌当接シート10は、
図5及び
図6に示すように、単層構造であり、長凸部41の内部が中実である。この肌当接シート10の非肌対向面は、第1方向Yに沿う伸長状態において平坦である。「第1方向Yに沿う伸長状態」とは、内折れ可能な凸部41を有する肌当接シート10を以下のように伸長させた状態のことを意味する。
展開状態にしたおむつ1を第1方向Yに沿って設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで広げ、該おむつ1の肌当接シート10に油性ペンを用いて、第1方向Yに一定間隔L0(例:100mm)をあけて2つの印を付ける。次いで、おむつ1から肌当接シート10を取り出し、該シート10における2つの印間の距離が前記の一定間隔L0の長さとなるまで、第1方向Yに肌当接シート10を伸長させる。この状態を「第1方向Yに沿う伸長状態」とする。
【0054】
単層構造のシートに代えて、第2実施形態の肌当接シート10aは、
図9に示すように、積層された第1シート21及び第2シート22が複数の接合部36において互いに接合されている複合シートであってもよい。この場合、第1シート21は、凹部31,33以外の部位において第2シート22から離れる方向に突出した長凸部41を形成している。
第1方向Yに沿う伸長状態においてこの複合シート10aは、第2シート22により形成された面、即ち非肌対向面が平坦である。斯かる複合シート10aでは、長凸部41の内部が中空であり、且つ第1シート21と第2シート22との二層構造であるので、低坪量部32が圧縮する力が第1シート21に集中し易く、第1シート21により形成される長凸部41に内折れが生じ易い。
【0055】
図10及び
図11に示す第3及び第4実施形態の肌当接シート10b,10cは、凹凸領域Pのパターンが第1実施形態の肌当接シート10と異なっている。
第3実施形態の肌当接シート10bは、
図10に示すように、長凸部41が千鳥状に配されており、第2方向Xにおける長凸部41間に、4個の低坪量部32aを有する凹部31aが形成されている。この長凸部41と凹部31aとが第2方向Xに沿って交互に配された縦方向凹凸列R11が、第1方向Yに沿って複数列形成されている。
第3実施形態において第1方向Yに隣り合う縦方向凹凸列R11どうしは、長凸部41の配置位置及び凹部31aの配置位置それぞれが、第2方向Xに半ピッチ分ずれている。
また、第1方向Yにおける長凸部41間に、第2方向Xに沿って並んだ2個の低坪量部32a(一対の低坪量部32a,32a)が2組配されており、これら4個の低坪量部32aと長凸部41とが第2方向Xに沿って交互に並んでいる。
縦方向凹凸列R11は、第2方向Xに沿って間欠的に並んだ複数の長凸部41からなる長凸部列R4と、該長凸部41間において第2方向Xに並んだ一対の低坪量部32a,32aが同方向Xに沿って間欠的に並んだ2列の低坪量部列R3とから構成されている。
第3実施形態では、縦方向凹凸列R11において各長凸部41が、第1方向Yに並ぶ2個の低坪量部32aそれぞれと同第1方向Yに重なった領域f
1,f
2を有している。換言すると、長凸部41は、第1方向Yにおいて低坪量部32aと重なった領域を2箇所有している。長凸部41において、これら低坪量部32a,32aと第1方向Yに重なる領域f
1,f
2では、弾性部材19の収縮によって優先的に内折れが生じる。即ち第3実施形態の長凸部41は、内折れ部a
1,a
2を第1方向Yに沿って複数有しており、第1方向Yに伸縮性を発現する弾性部材の収縮によって、複数の内折れ部a
1,a
2それぞれにおいて内折れが生じる。
【0056】
第3実施形態において長凸部41は2箇所の内折れ部a
1,a
2を第1方向Yに沿って有していたが、長凸部41は、3箇所以上の内折れ部を第1方向Yに沿って有していてもよい。
第4実施形態の肌当接シート10cは、
図11に示すように、長凸部41が千鳥状に配されており、第2方向Xにおける長凸部41間に、四角形の大低坪量部32bと、該大低坪量部32bの略対角方向外側に位置する4個の小低坪量部32cとを有する凹部31bが形成されている。この長凸部41と凹部31bとが第2方向Xに沿って交互に配された縦方向凹凸列R13が、第1方向Yに沿って複数列形成されている。
第4実施形態において第1方向Yに隣り合う縦方向凹凸列R13どうしは、長凸部41の配置位置及び凹部31bの配置位置それぞれが、第2方向Xに半ピッチ分ずれている。
縦方向凹凸列R13において、大低坪量部32bと長凸部41とが第2方向Xに沿って交互に並んでいる。
また、大低坪量部32bの第1方向Y両側それぞれに配された2個の小低坪量部32cが第2方向Xに沿って並んでおり、これら2個の低坪量部32cと長凸部41とが第2方向Xに沿って交互に並んでいる。
縦方向凹凸列R13は、第2方向Xに沿って間欠的に並んだ複数の長凸部41からなる長凸部列R8と、該長凸部41間において第2方向Xに並んだ一対の小低坪量部32c,32cが同方向Xに沿って間欠的に並んだ2列の低坪量部列R7と、第2方向Xに沿って間欠的に並んだ大低坪量部列R9とから構成されている。
第4実施形態では、縦方向凹凸列R13において各長凸部41が、第1方向Yにおいて、大低坪量部32bと第1方向Yに重なった領域f
4、及び2個の小低坪量部32cと同第1方向Yに重なった領域f
3,f
5の3箇所を有している。これら3箇所の領域f
3,f
4,f
5では、第3実施形態と同様に、弾性部材19の収縮によって優先的に内折れが生じる。即ち第4実施形態の長凸部41は、内折れ部a
3,a
4,a
5を第1方向Yに沿って3箇所有しており、第1方向Yに伸縮性を発現する弾性部材の収縮によって、これら3箇所の内折れ部a
3,a
4,a
5それぞれにおいて内折れが生じる。
【0057】
第1~第4実施形態における凹凸領域は、長凸部41及び凹部31が散点状に配されたものであったが、長凸部41及び凹部31それぞれが一方向に連続するものであってもよい。
第5実施形態の肌当接シート10dは、
図12に示すように、肌対向面が畝溝形状になっている。具体的には、第1方向Yに延びる畝部を形成する連続凸部41aと、該連続凸部41aと同方向に延びる溝部を形成する連続凹部31dとが、第2方向Xに沿って交互に配置されている。斯かる肌当接シート10dの肌対向面は、連続凸部41a及び連続凹部31dの延びる方向と直交する方向で見たときに、波形の凹凸形状になっている(図示せず)。
第5実施形態における連続凹部31dは、第1方向Yに沿って複数の低坪量部32を間欠的に有しており、第2方向Xに隣り合う連続凹部31dにおける低坪量部32の配置位置が第1方向Yにおいて一致している。即ち、連続凸部41aと連続凹部31dの低坪量部32とが第2方向Xに沿って交互に並んだ縦方向凹凸列R15が、第1方向Yに沿って複数列形成されている。
第5実施形態では、第2方向Xに沿って並ぶ縦方向凹凸列R15において各連続凸部41aが、低坪量部32と同第1方向Yに重なった領域f
9を複数箇所有している。これら複数箇所の領域f
9では、第3実施形態と同様に、弾性部材19の収縮によって優先的に内折れが生じる。即ち第5実施形態の長凸部41は、内折れ部a
9を第1方向Yに沿って複数有しており、第1方向Yに伸縮性を発現する弾性部材の収縮によって、複数の内折れ部a
9それぞれにおいて内折れが生じる。
【0058】
第5実施形態のように、凹凸領域が連続凸部41aと連続凹部31dとを有している場合、第1方向Yにおける長凸部の長さL1は、該連続凸部41aを単位面積(30mm四方)当りの凸部と仮定したとき、該凸部の第1方向Yの全長(30mm)とする。
また、第1方向Yにおける内折れ部a9の長さの総和L10は、該連続凸部41aを単位面積(30mm四方)当りの凸部と仮定したとき、該単位面積当たりの凸部に存在する内折れ部a9の第1方向Yにおける長さの総和とする。斯かる内折れ部a9の第1方向Yにおける長さの総和L10は、任意に選択した10個の連続凸部41aそれぞれから、さらに任意に選択した5箇所の単位面積当りの凸部についての平均値である。この場合、「単位面積当たりの凸部」は、該凸部における内折れ部a9の数が最大個数となるような範囲に設定する。
【0059】
第6実施形態における肌当接シート10eは、
図13に示すように、肌対向面側に突出している複数の長凸部41b及び凹部31dを有し、該長凸部41bは、非肌対向面側が開放されて空間が形成されている。斯かる肌当接シート10eは、凹部31dの裏側、即ち凹部31dの非肌対向面が該非肌対向面側に突出しており、該肌当接シート10eを非肌対向面側から見たとき、該凹部31dの裏側において突出する部分が、非肌対向面側に突出する凸部となっている。この凹部31dは、肌対向面側が開放されて空間が形成されている。これら長凸部41b及び凹部31dは、肌当接シート10eの全面に亘って、平面視して互いに交差する異なる2方向のそれぞれに沿って交互に連続して配されている。
第6実施形態において凹部31dは、低坪量部32dとして前述した低積繊部を有している。
【0060】
上述した実施形態におけるおむつの各部の形成材料について詳述する。裏面シート13及び吸収体14としてはそれぞれ、吸収性物品に従来用いられているものを特に制限なく用いることができる。裏面シート13としては、液難透過性の樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。吸収体14は、吸収性コア14aとして、木材パルプ、親水化処理された合成繊維等の親水性繊維の集合体や、該集合体に吸水性ポリマーを保持させたものを用いることができる。また、コアラップシート14bとしては、表面シート12と同様のものを用いることができる。また、立体ギャザー形成用シート15としては、撥水性の不織布を用いることができる。
【0061】
肌当接シート10である表面シート12としては、例えば、吸収性物品に従来用いられている液透過性の不織布等を用いることができる。不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。これらの不織布を2種以上組み合わせた積層体を用いることもできる。
【0062】
不織布を構成する繊維としては、各種の熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上のブレンド物として用いることができる。また、芯鞘型やサイド・バイ・サイド型などの複合繊維の形態で用いることができる。
【0063】
上述した各弾性部材15a,16,19としては、例えば、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができる。弾性部材の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、楕円形又は多角形状等の糸状(糸ゴム等)、若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を好ましく用いることができる。
【0064】
また、上述した各弾性部材15a,16,19として、伸縮シート130を用いてもよい。伸縮シート130は、
図14に示すように、互いに交差せずに一方向に延びるように配列した複数の弾性フィラメント131が、実質的に非伸長状態で、それらの全長に亘り、伸長可能な不織布132,133に接合されているものである。
【0065】
各弾性フィラメント131は、第1及び第2の不織布132,133と接合している。第1の不織布132と第2の不織布133は、同種のものでもよく、あるいは異種のものでもよい。ここでいう同種の不織布とは、不織布の製造プロセス、不織布の構成繊維の種類、構成繊維の繊維径や長さ、不織布の厚みや坪量等がすべて同じである不織布どうしを意味する。これらのうちの少なくとも一つが異なる場合には異種の不織布であるという。また「弾性」とは、伸ばすことができ、且つ元の長さに対して100%伸ばした状態(元の長さの200%の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの125%以下の長さまで戻る性質をいう。
【0066】
各不織布132,133は何れも伸長可能なものである。各不織布132,133は、弾性フィラメント131の延びる方向と同方向に伸長可能になっている。伸長可能とは、(イ)不織布132,133の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、不織布全体として伸長する場合とを包含する。
【0067】
各不織布132,133は、弾性フィラメント131と接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。あるいは、弾性フィラメント131と接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性フィラメント131と接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものであってもよい。不織布を伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによるかみ込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。
【0068】
各弾性フィラメント131は、伸縮シート130の全長に亘って実質的に連続している。弾性フィラメント131は弾性樹脂を含んでいる。各弾性フィラメント131は、互いに交差せずに一方向に延びるように配列している。ただし、伸縮シート130の製造条件の不可避的な変動に起因して、意図せず弾性フィラメント131が交差することは許容される。各弾性フィラメント131は、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、あるいは蛇行しながら延びていてもよい。
【0069】
また上述した伸縮シート130は、伸長可能な2枚の不織布132,133の間に弾性フィラメント131が配された構造のものであったが、これに代えて伸長可能な1枚の不織布の一面に弾性フィラメント131が配された構造の伸縮シートを用いてもよい。この場合、弾性フィラメント131は露出した状態になっている。
【0070】
本発明の肌当接シートは公知の製造方法を用いて製造することができる。
例えば、第1実施形態の肌当接シート10は、シートに、凹凸形状を付与して凹部及び凸部を形成する工程と、凹部に低坪量部を形成する工程とを具備する製造方法によって製造することができる。斯かる製造方法では、対向して配されたエンボス凸ロールとフラットロールとの間にシートを導入して凹凸形状を付与した後、該凹凸形状の凹部に超音波処理等を用いて低坪量部を形成する。
また、第2実施形態である複合シート(肌当接シート10a)は、特開2018-099883号公報に記載の製造方法により製造することができる。斯かる製造方法は、第1シート21に凹凸形状を付与する工程、第1シート21に第2シート22を重ね合わせる重ね合わせ工程、及びこれら両シート21,22に超音波振動を印加する超音波処理工程を具備する。前記凹凸形状を付与する工程は、周面部に互いに噛み合う凹凸を有する第1ロール及び第2ロールを回転させながら、これら両ロールの噛み合い部に第1シート21を導入して凹凸形状に変形させる。前記重ね合わせ工程は、凹凸形状に変形させた第1シート21を、第1ロール上に保持しつつ搬送し、搬送中の第1シート21に第2シート22を重ね合わせる。前記超音波処理工程は、重ね合わせた両シート21,22を、第1ロールの凸部と超音波融着機の超音波ホーンとの間に挟んで超音波振動を印加して、肌当接シート10aを貫通する開孔からなる低坪量部32を形成させる。
【0071】
開孔からなる低坪量部32の形成には、超音波処理以外に、凹凸形状に変形させたシートを部分的に切断できる公知の切断手段を用いることができる。この切断手段として、例えば、カッターロールとアンビルロールとを備えた切断装置であって、カッターロールの外周面に、開孔の輪郭に対応する形状の切断刃を有するもの等が挙げられる。
【0072】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前述した各実施形態に制限されず、適宜変更可能である。
例えば、第1実施形態における肌当接シート10は、中央凹凸領域Pと、これの両側に位置するサイド凹凸領域PSとを有していたが、該肌当接シート10の全面に亘って、中央凹凸領域Pと同じパターンの長凸部41及び凹部31,33が形成されていてもよい。
また、凹凸領域Pは、弾性部材19と重なる領域と、該弾性部材19と重ならない領域とを有していてもよい。この場合、弾性部材19と重なる領域における凸部と、該弾性部材19と重ならない領域における凸部とは、第1方向Yにおける幅が同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、弾性部材19と重なる領域における凸部の第1方向の幅が、弾性部材19と重ならない領域における凸部の第1方向の幅よりも小さい形態が挙げられる。
【0073】
また低坪量部32の形状は、第1方向Yに長い任意の形状とすることができる。例えば、低坪量部32の形状としては、長方形、楕円形、長円形、三角形、五角形、六角形、星形、ハート形等が挙げられる。
また、本発明の吸収性物品は、展開型の使い捨ておむつに代えて、パンツ型(プルオンタイプ)の使い捨ておむつであっても良く、また、パンツ型又は通常の非パンツ型の生理用ナプキンであっても良く、失禁パッド、パンティライナー等であってもよい。
【0074】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の吸収性物品を開示する。
<1>
凹凸領域を有し、着用状態において該凹凸領域が着用者の肌に当接する肌当接シートを具備し、着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向と直交する横方向を有する吸収性物品であって、
前記凹凸領域は、第1方向及び該第1方向と直交する第2方向を有し、第2方向の長さよりも第1方向の長さが長い凸部と、第1方向又は第2方向における該凸部間に位置する凹部とをそれぞれ複数有しており、
前記肌当接シートよりも非肌対向面側に、弾性部材が第1方向に沿って配されている、吸収性物品。
【0075】
<2>
前記凸部は、前記弾性部材の収縮によって、第2方向において前記凹部間に挟まれた部分が、該凸部の内部に向かって折れるように変形する、前記<1>に記載の吸収性物品。<3>
前記弾性部材が第1方向に沿って伸縮性を発現するように配されている、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記弾性部材の伸長応力が、8cN/10mm以上50cN/10mm以下、好ましくは10cN/10mm以上40cN/10mm以下である、前記<1>~<3>の何れか1に記載の吸収性物品。
<5>
前記凹部は、前記凸部に比して繊維材料の坪量が少ない低坪量部を有している、前記<1>~<4>の何れか1に記載の吸収性物品。
<6>
前記凸部は、前記弾性部材の収縮によって、第2方向において前記凹部間に挟まれた部分が、該凸部の内部に向かって折れるように変形する内折れ部を有しており、
前記内折れ部は、前記低坪量部よりも肌対向面側に位置している、前記<5>に記載の吸収性物品。
<7>
前記弾性部材は、前記低坪量部よりも非肌対向面側に位置している、前記<5>又は<6>に記載の吸収性物品。
<8>
前記低坪量部における繊維材料の坪量が、第2方向の長さよりも第1方向の長さが長い凸部における繊維材料の坪量に対して、10%以下、好ましくは20%以下である、前記<5>~<7>の何れか1に記載の吸収性物品。
<9>
前記低坪量部における繊維材料の坪量が、30g/m2以下、好ましくは20g/m2以下である、前記<5>~<8>の何れか1に記載の吸収性物品。
<10>
前記低坪量部が、前記肌当接シートを貫通する開孔からなる、前記<5>~<7>の何れか1に記載の吸収性物品。
【0076】
<11>
前記凹凸領域には、第2方向に沿って複数の前記低坪量部が並んだ低坪量部列が、第1方向に間欠的に複数列形成されている、前記<5>~<10>の何れか1に記載の吸収性物品。
<12>
複数列の前記低坪量部列が、第1方向において等間隔で形成されている、前記<11>に記載の吸収性物品。
<13>
第2方向における前記凸部の長さをL2とし、第2方向における前記低坪量部の長さをL5としたとき、L2に対するL5の比率であるL5/L2が0.3以上、好ましくは0.3以上0.8以下、より好ましくは0.4以上0.7以下である、前記<5>~<12>の何れか1に記載の吸収性物品。
<14>
第2方向における前記凸部の長さをL2とし、第1方向における前記低坪量部の長さをL6としたとき、L2に対するL6の比率であるL6/L2が0.3以上、好ましくは0.3以上1.5以下、より好ましくは0.4以上1.0以下である、前記<5>~<13>の何れか1に記載の吸収性物品。
<15>
前記凸部は、第2方向において前記低坪量部間に挟まれた部分を第1方向に沿って単数又は複数有しており、
第1方向における前記凸部の長さをL1とし、第1方向における前記挟まれた部分の長さの総和をL10としたとき、L1に対するL10の比率であるL10/L1が0.2以上、好ましくは0.2以上0.8以下、より好ましくは0.3以上0.7以下である、前記<1>~<14>の何れか1に記載の吸収性物品。
<16>
前記凸部は、前記肌当接シートの構成繊維が第2方向に沿って配向した部分を有している前記<1>~<15>の何れか1に記載の吸収性物品。
<17>
前記凸部は、前記肌当接シートの構成繊維が第1方向に沿って配向した部分を有している、前記<1>~<16>の何れか1に記載の吸収性物品。
<18>
前記凸部は、前記弾性部材を最大に伸長させたとき、下記式(1)を満たす、前記<1>~<17>の何れか1に記載の吸収性物品。
La>H1 ・・・(1)
La:第1方向における前記凸部の長さL1の半分
H1:前記凸部の高さ
<19>
H1に対するLaの比率であるLa/H1が、1.5以上15.0以下、好ましくは2.0以上10.0以下である、前記<18>に記載の吸収性物品。
<20>
前記肌当接シートは、積層された第1シート及び第2シートが複数の接合部において互いに接合されている複合シートであり、
第1シートは、前記凹部以外の部位において第2シートから離れる方向に突出した前記凸部を形成しており、
第1方向に沿う伸長状態において前記複合シートは、第2シートにより形成された面が平坦である、前記<1>~<19>の何れか1に記載の吸収性物品。
【0077】
<21>
第2方向における前記凸部の長さをL2とし、第1方向における前記凸部の長さをL1としたとき、L2に対するL1の比率であるL1/L2が、1.5以上5.0以下、好ましくは1.8以上3.0以下である、前記<1>~<20>の何れか1に記載の吸収性物品。
<22>
前記弾性部材は前記横方向に沿って伸縮可能であり、
前記弾性部材と前記凹凸領域とが、前記縦方向における前記吸収性物品の端部で重なっている、前記<1>~<21>の何れか1に記載の吸収性物品。
<23>
前記弾性部材は前記縦方向に沿って伸縮可能であり、
前記弾性部材と前記凹凸領域とが、前記縦方向における前記吸収性物品の中央部で重なっている、前記<1>~<22>の何れか1に記載の吸収性物品。
<24>
吸収性材料を含む吸収性コアを具備しており、
前記吸収性コアは、前記吸収性材料の坪量が低く、且つ前記縦方向に延びるコア低坪量部を有しており、
前記弾性部材と、前記凹凸領域と、前記コア低坪量部とが重なっている、前記<23>に記載の吸収性物品。
<25>
前記コア低坪量部の坪量が、該コア低坪量部以外の部分における吸収性材料の坪量に対して、0%超80%以下、より好ましくは20%以上60%以下である、前記<24>に記載の吸収性物品。
<26>
前記コア低坪量部の坪量が、0g/m2超500g/m2以下、より好ましくは40g/m2以上400g/m2以下である、前記<24>又は<25>に記載の吸収性物品。<27>
前記弾性部材が、複数の弾性フィラメントが、伸長可能な不織布に接合された伸縮シートからなる、前記<1>~<26>の何れか1に記載の吸収性物品。
<28>
前記凹凸領域は、前記弾性部材と重なる領域と、該弾性部材と重ならない領域とを有しており、
前記弾性部材と重なる領域における前記凸部の第1方向の幅が、前記弾性部材と重ならない領域における前記凸部の第1方向の幅よりも小さい、前記<1>~<27>の何れか1に記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0078】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
12 表面シート
13 裏面シート
14 吸収体
19 ウエスト弾性部材
10 肌当接シート
21 第1シート
22 第2シート
31 大凹部
32 低坪量部
41 長凸部
a 内折れ部
P 中央凹凸領域
M 中央領域
S サイド領域
X 第2方向
Y 第1方向
X1 縦方向
Y1 横方向