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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】インバータ電源装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 5/12 20060101AFI20241017BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241017BHJP
【FI】
H02M5/12 B
H02M7/48 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021091770
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022184112
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】中村 将之
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-172351(JP,A)
【文献】特開2017-022827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 5/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1の入力端子および第2の入力端子を介して入力された単相交流電圧を変圧して、一対の第1の出力端子および第2の出力端子を介して出力するインバータ電源装置であって、
第1のスイッチング素子と、一端が前記第1のスイッチング素子の一端に接続された第2のスイッチング素子と、第3のスイッチング素子と、一端が前記第3のスイッチング素子の一端に接続された第4のスイッチング素子と、第5のスイッチング素子と、一端が前記第5のスイッチング素子の一端に接続された第6のスイッチング素子と、一端が前記第1、第3および第5のスイッチング素子それぞれの他端に接続され、他端が前記第2、第4および第6のスイッチング素子それぞれの他端に接続された平滑コンデンサと、を備えるインバータ装置と、
第1の変圧器と、
第2の変圧器と、
出力コンデンサと、
前記第1の変圧器の二次側電圧である第1の電圧値を検出する第1の電圧検出器と、
前記出力コンデンサの電圧である第2の電圧値を検出する第2の電圧検出器と、
前記平滑コンデンサの電圧である第3の電圧値を検出する第3の電圧検出器と、
前記インバータ装置の第1の端子に流れる電流である第1の電流値を検出する電流検出器と、
前記第1から第3の電圧値および前記第1の電流値に基づき、前記第1から第6のスイッチング素子それぞれの導通および遮断を制御するパルス幅信号を生成する制御部と、を備え、
前記第1の変圧器の一次側巻線の一端は前記第1の入力端子に接続され、前記第1の変圧器の一次側巻線の他端は前記第2の入力端子に接続され、
前記第1の変圧器の二次側巻線の一端と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の前記第1の端子と、前記第2の変圧器の二次側巻線の一端とが互いに接続され、
前記第2の変圧器の二次側巻線の他端と、前記出力コンデンサの一端と、前記第1の出力端子とが接続され、
前記第1の変圧器の二次側巻線の他端と、前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第2の端子と、前記第2の変圧器の一次側巻線の一端と、前記出力コンデンサの他端と、前記第2の出力端子とが互いに接続され、
前記第5のスイッチング素子と前記第6のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第3の端子と、前記第2の変圧器の一次側巻線の他端とが接続され、
前記制御部は、
前記第1の電圧値に基づき、入力電圧波形の位相を計算するPLL演算部と、
前記第3の電圧値と前記平滑コンデンサの目標電圧との差の比例値および前記比例値の積分値に基づき、前記平滑コンデンサの電流目標値を計算するコンデンサ電流演算部と、
前記平滑コンデンサの電流目標値と、前記入力電圧波形の位相とに基づき、前記第1の端子の電流目標値を計算し、前記第1の端子の電流目標値と前記第1の電流値とに基づき、前記第1の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算するコンバータ制御演算部と、
前記入力電圧波形の位相と、目標とする出力電圧の振幅とを有する正弦波状の出力電圧目標値を計算する電圧目標演算部と、
前記出力電圧目標値と、前記第1の電圧値とに基づき、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算するインバータ制御演算部と、
前記第1の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値と、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値と、前記第3の電圧値とに基づき、前記パルス幅信号を生成するPWM演算部と、を備える、インバータ電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインバータ電源装置において、
前記制御部は、
前記第2の電圧値と、前記出力電圧目標値との差に基づき、前記インバータ制御演算部により演算される、前記出力電圧目標値と前記第1の電圧値との差を補正する電圧補正値を計算するフィードバック演算部をさらに備え、
前記インバータ制御演算部は、前記出力電圧目標値と前記第1の電圧値との差に前記電圧補正値を加算した加算値に前記第2の変圧器の変圧比を乗算して、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算する、インバータ電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインバータ電源装置において、
前記制御部は、プロセッサ上で動作するソフトウェアによって、またはハードウェアの組み合わせによって実現される、インバータ電源装置。
【請求項4】
一対の第1の入力端子および第2の入力端子を介して入力された単相交流電圧を変圧して、一対の第1の出力端子および第2の出力端子を介して出力するインバータ電源装置の制御方法であって、
前記インバータ電源装置は、
第1のスイッチング素子と、一端が前記第1のスイッチング素子の一端に接続された第2のスイッチング素子と、第3のスイッチング素子と、一端が前記第3のスイッチング素子の一端に接続された第4のスイッチング素子と、第5のスイッチング素子と、一端が前記第5のスイッチング素子の一端に接続された第6のスイッチング素子と、一端が前記第1、第3および第5のスイッチング素子それぞれの他端に接続され、他端が前記第2、第4および第6のスイッチング素子それぞれの他端に接続された平滑コンデンサと、を備えるインバータ装置と、
第1の変圧器と、
第2の変圧器と、
出力コンデンサと、を備え、
前記第1の変圧器の一次側巻線の一端は前記第1の入力端子に接続され、前記第1の変圧器の一次側巻線の他端は前記第2の入力端子に接続され、
前記第1の変圧器の二次側巻線の一端と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第1の端子と、前記第2の変圧器の二次側巻線の一端とが互いに接続され、
前記第2の変圧器の二次側巻線の他端と、前記出力コンデンサの一端と、前記第1の出力端子とが接続され、
前記第1の変圧器の二次側巻線の他端と、前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第2の端子と、前記第2の変圧器の一次側巻線の一端と、前記出力コンデンサの他端と、前記第2の出力端子とが互いに接続され、
前記第5のスイッチング素子と前記第6のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第3の端子と、前記第2の変圧器の一次側巻線の他端とが接続され、
前記第1の変圧器の二次側電圧である第1の電圧値に基づき、入力電圧波形の位相を計算するステップと、
前記平滑コンデンサの電圧である第3の電圧値と前記平滑コンデンサの目標電圧との差の比例値および前記比例値の積分値に基づき、前記平滑コンデンサの電流目標値を計算するステップと、
前記平滑コンデンサの電流目標値と、前記入力電圧波形の位相とに基づき、前記第1の端子の電流目標値を計算し、前記第1の端子の電流目標値と、前記インバータ装置の前記第1の端子に流れる電流である第1の電流値とに基づき、前記第1の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算するステップと、
前記入力電圧波形の位相と、目標とする出力電圧の振幅とを有する正弦波状の出力電圧目標値を計算するステップと、
前記出力電圧目標値と、前記第1の電圧値とに基づき、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算するステップと、
前記第1の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値と、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値と、前記第3の電圧値とに基づき、前記第1から第6のスイッチング素子それぞれの導通および遮断を制御するパルス幅信号を生成するステップと、
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ電源装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源で駆動される電気鉄道車両には、照明および灯火類、ブレーキおよびドアを駆動する空気圧縮機、空調装置および暖房機器などの補助装置が搭載される。このような補助装置を動作させる電源として、駆動用の交流電源回路を分岐させ、変圧器により一般的な低圧配電路と同等の電圧に降圧することが広く行われている。
【0003】
補助装置の電源を駆動用の交流電源から分岐して得ていることで、車両の加速・減速時の電流の影響により、補助装置の電源電圧が変動する。この電圧変動は特に、駆動用の交流電源が低電圧である新交通システムなどで顕著となる。設計上、電圧変動の範囲で補助装置が正常に動作しない場合、補助装置に安定した電圧を供給するための電源装置が使用される。
【0004】
このような電源装置として、インバータ装置を備えたインバータ電源装置が広く用いられている。インバータ電源装置は、電圧変動の大きな電源を入力とし、入力電圧を整流器で直流電圧に変換し、直流電圧をインバータ装置のスイッチング素子のスイッチングによりパルス幅変調することで、安定した交流電圧を得ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-168867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インバータ装置は、入力電圧最大時の電圧と、入力電圧最低時の電流との積によって決まる電力容量が必要となる。入力電圧の変動範囲が大きくなるとインバータ装置に必要な電力容量も大きくなり、インバータ電源装置の大型化・重量化を招いてしまう。また、インバータ装置のスイッチング素子は、印加される電圧および電流の増加に応じて、スイッチング損失および導通損失が増加して発熱するため、損失に応じた冷却能力を有する冷却器が必要となる。
【0007】
特に、電気鉄道車両に搭載されるインバータ電源装置の場合、故障率低減のために、インバータ装置の冷却器として、送風機およびポンプなどの動力部品を使用しないことが求められる場合がある。また、走行風による冷却が期待できる主電動機の駆動用のインバータ装置とは異なり、補助装置に電力を供給するインバータ電源装置は停車中も自然空冷のみで連続稼働が求められるため、冷却器の寸法および重量が増加する傾向がある。
【0008】
上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、小型化および軽量化を図ることができるインバータ電源装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るインバータ電源装置は、一対の第1の入力端子および第2の入力端子を介して入力された単相交流電圧を変圧して、一対の第1の出力端子および第2の出力端子を介して出力するインバータ電源装置であって、第1のスイッチング素子と、一端が前記第1のスイッチング素子の一端に接続された第2のスイッチング素子と、第3のスイッチング素子と、一端が前記第3のスイッチング素子の一端に接続された第4のスイッチング素子と、第5のスイッチング素子と、一端が前記第5のスイッチング素子の一端に接続された第6のスイッチング素子と、一端が前記第1、第3および第5のスイッチング素子それぞれの他端に接続され、他端が前記第2、第4および第6のスイッチング素子それぞれの他端に接続された平滑コンデンサと、を備えるインバータ装置と、第1の変圧器と、第2の変圧器と、出力コンデンサと、前記第1の変圧器の二次側電圧である第1の電圧値を検出する第1の電圧検出器と、前記出力コンデンサの電圧である第2の電圧値を検出する第2の電圧検出器と、前記平滑コンデンサの電圧である第3の電圧値を検出する第3の電圧検出器と、前記インバータ装置の第1の端子に流れる電流である第1の電流値を検出する電流検出器と、前記第1から第3の電圧値および前記第1の電流値に基づき、前記第1から第6のスイッチング素子それぞれの導通および遮断を制御するパルス幅信号を生成する制御部と、を備え、前記第1の変圧器の一次側巻線の一端は前記第1の入力端子に接続され、前記第1の変圧器の一次側巻線の他端は前記第2の入力端子に接続され、前記第1の変圧器の二次側巻線の一端と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の前記第1の端子と、前記第2の変圧器の二次側巻線の一端とが互いに接続され、前記第2の変圧器の二次側巻線の他端と、前記出力コンデンサの一端と、前記第1の出力端子とが接続され、前記第1の変圧器の二次側巻線の他端と、前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第2の端子と、前記第2の変圧器の一次側巻線の一端と、前記出力コンデンサの他端と、前記第2の出力端子とが互いに接続され、前記第5のスイッチング素子と前記第6のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第3の端子と、前記第2の変圧器の一次側巻線の他端とが接続され、前記制御部は、前記第1の電圧値に基づき、入力電圧波形の位相を計算するPLL演算部と、前記第3の電圧値と前記平滑コンデンサの目標電圧との差の比例値および前記比例値の積分値に基づき、前記平滑コンデンサの電流目標値を計算するコンデンサ電流演算部と、前記平滑コンデンサの電流目標値と、前記入力電圧波形の位相とに基づき、前記第1の端子の電流目標値を計算し、前記第1の端子の電流目標値と前記第1の電流値とに基づき、前記第1の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算するコンバータ制御演算部と、前記入力電圧波形の位相と、目標とする出力電圧の振幅とを有する正弦波状の出力電圧目標値を計算する電圧目標演算部と、前記出力電圧目標値と、前記第1の電圧値とに基づき、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算するインバータ制御演算部と、前記第1の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値と、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値と、前記第3の電圧値とに基づき、前記パルス幅信号を生成するPWM演算部と、を備える。
【0010】
また、本発明に係るインバータ電源装置において、前記制御部は、前記第2の電圧値と、前記出力電圧目標値との差に基づき、前記インバータ制御演算部により演算される、前記出力電圧目標値と前記第1の電圧値との差を補正する電圧補正値を計算するフィードバック演算部をさらに備え、前記インバータ制御演算部は、前記出力電圧目標値と前記第1の電圧値との差に前記電圧補正値を加算した加算値に前記第2の変圧器の変圧比を乗算して、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るインバータ電源装置において、前記制御部は、プロセッサ上で動作するソフトウェアによって、またはハードウェアの組み合わせによって実現されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るインバータ電源装置の制御方法は、一対の第1の入力端子および第2の入力端子を介して入力された単相交流電圧を変圧して、一対の第1の出力端子および第2の出力端子を介して出力するインバータ電源装置の制御方法であって、前記インバータ電源装置は、第1のスイッチング素子と、一端が前記第1のスイッチング素子の一端に接続された第2のスイッチング素子と、第3のスイッチング素子と、一端が前記第3のスイッチング素子の一端に接続された第4のスイッチング素子と、第5のスイッチング素子と、一端が前記第5のスイッチング素子の一端に接続された第6のスイッチング素子と、一端が前記第1、第3および第5のスイッチング素子それぞれの他端に接続され、他端が前記第2、第4および第6のスイッチング素子それぞれの他端に接続された平滑コンデンサと、を備えるインバータ装置と、第1の変圧器と、第2の変圧器と、出力コンデンサと、を備え、前記第1の変圧器の一次側巻線の一端は前記第1の入力端子に接続され、前記第1の変圧器の一次側巻線の他端は前記第2の入力端子に接続され、前記第1の変圧器の二次側巻線の一端と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第1の端子と、前記第2の変圧器の二次側巻線の一端とが互いに接続され、前記第2の変圧器の二次側巻線の他端と、前記出力コンデンサの一端と、前記第1の出力端子とが接続され、前記第1の変圧器の二次側巻線の他端と、前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第2の端子と、前記第2の変圧器の一次側巻線の一端と、前記出力コンデンサの他端と、前記第2の出力端子とが互いに接続され、前記第5のスイッチング素子と前記第6のスイッチング素子との接続部に繋がる、前記インバータ装置の第3の端子と、前記第2の変圧器の一次側巻線の他端とが接続され、前記第1の変圧器の二次側電圧である第1の電圧値に基づき、入力電圧波形の位相を計算するステップと、前記平滑コンデンサの電圧である第3の電圧値と前記平滑コンデンサの目標電圧との差の比例値および前記比例値の積分値に基づき、前記平滑コンデンサの電流目標値を計算するステップと、前記平滑コンデンサの電流目標値と、前記入力電圧波形の位相とに基づき、前記第1の端子の電流目標値を計算し、前記第1の端子の電流目標値と、前記インバータ装置の前記第1の端子に流れる電流である第1の電流値とに基づき、前記第1の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算するステップと、前記入力電圧波形の位相と、目標とする出力電圧の振幅とを有する正弦波状の出力電圧目標値を計算するステップと、前記出力電圧目標値と、前記第1の電圧値とに基づき、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値を計算するステップと、前記第1の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値と、前記第3の端子と前記第2の端子との線間電圧の目標値と、前記第3の電圧値とに基づき、前記第1から第6のスイッチング素子それぞれの導通および遮断を制御するパルス幅信号を生成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインバータ電源装置およびその制御方法によれば、小型化および軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るインバータ電源装置の構成例を示す図である。
図2図1に示す制御回路の構成例を示す図である。
図3図2に示すプロセッサの機能構成例を示すブロック図である。
図4図3に示すPLL演算部の構成例を示す図である。
図5図3に示すコンデンサ電流演算部の構成例を示す図である。
図6図3に示すコンバータ制御演算部の構成例を示す図である。
図7図3に示す電圧目標演算部の構成例を示す図である。
図8図3に示すフィードバック演算部の構成例を示す図である。
図9図3に示すインバータ制御演算部の構成例を示す図である。
図10図3に示すPWM演算部の構成例を示す図である。
図11】従来のインバータ電源装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るインバータ電源装置1の構成例を示す図である。本実施形態に係るインバータ電源装置1は、一対の第1の入力端子In1および第2の入力端子In2を介して入力された、変動の大きい単相交流電圧を変圧し、変動が安定した単相交流電圧に変換して、一対の第1の出力端子Out1および第2の出力端子Out2を介して出力する。
【0017】
図1に示すように、インバータ電源装置1は、第1の変圧器2と、インバータ装置3と、第2の変圧器7と、出力コンデンサ8とを備える。なお、以下では、入力電圧の最大定格値をVinMax[Vrms]とし、入力電圧の最小定格値をVinMin[Vrms]とする。また、出力電圧の最大定格値をVoutMax[Vrms]とし、出力電圧の最小定格値をVoutMin[Vrms]とする。また、出力電圧の標準電圧値をVoutRef[Vrms]とし、出力電流の最大定格値をIoutMax[Arms]する。また、負荷容量がVoutMin×IoutMax[VA]以下である場合、第1の変圧器2の一次側定格電圧をVinMax[Vrms]とし、第1の変圧器2の二次側定格電圧をVoutMax[Vrms]とし、第1の変圧器2の容量をVoutMax×IoutMaxとする。また、第2の変圧器7の一次側定格電圧を{VoMin-VinMin×(VoMax/VinMax)}[Vrms]とし、第2の変圧器7の二次側定格電圧をVoMax[Vrms]とし、第2の変圧器7の容量を{VoMin-VinMin×(VoMax/VinMax)}×IoutMax[VA]とする。また、インバータ装置3の交流側の最大線間電圧をVoutMax×√2[Vp-p]とし、最大電流をIoutMax×{VoMin-VinMin×(VoMax/VinMax)}÷VoMax[Arms]とする。
【0018】
インバータ装置3は、インバータ回路4と、平滑コンデンサ5と、平滑リアクトル6とを備える。
【0019】
インバータ回路4は、第1のスイッチング素子SW1と、一端が第1のスイッチング素子SW1の一端に接続された第2のスイッチング素子SW2と、第3のスイッチング素子SW3と、一端が第3のスイッチング素子SW3の一端に接続された第4のスイッチング素子SW4と、第5のスイッチング素子SW5と、一端が第5のスイッチング素子SW5の一端に接続された第6のスイッチング素子SW6とを備える。第1のスイッチング素子SW1の他端と、第3のスイッチング素子SW3の他端と、第5のスイッチング素子SW5の他端とは互いに接続される。第2のスイッチング素子SW2の他端と、第4のスイッチング素子SW4の他端と、第6のスイッチング素子SW6の他端とは互いに接続される。以下では、第1のスイッチング素子SW1から第6のスイッチング素子SW6を区別しない場合には、スイッチング素子SWと称する。
【0020】
平滑コンデンサ5の一端は、第1のスイッチング素子SW1、第3のスイッチング素子SW3および第5のスイッチング素子SW5の他端に接続される。平滑コンデンサ5の他端は、第2のスイッチング素子SW2、第4のスイッチング素子SW4および第6のスイッチング素子SW6の他端に接続される。
【0021】
平滑リアクトル6は、第1のリアクトルL1と、第2のリアクトルL2と、第3のリアクトルL3とを備える。
【0022】
第1のリアクトルL1の一端は、第1のスイッチング素子SW1と第2のスイッチング素子SW2との接続部に接続される。第1のリアクトルL1の他端は、インバータ装置3の交流側の第1の相(U相)の端子である第1の端子T1を構成する。第2のリアクトルL2の一端は、第3のスイッチング素子SW3と第4のスイッチング素子SW4との接続部に接続される。第2のリアクトルL2の他端は、インバータ装置3の交流側の第2の相(V相)の端子である第2の端子T2を構成する。第3のリアクトルL3の一端は、第5のスイッチング素子SW5と第6のスイッチング素子SW6との接続部に接続される。第3のリアクトルL3の他端は、インバータ装置3の交流側の第3の相(W相)の端子である第3の端子T3を構成する。
【0023】
第1の変圧器2の一次側巻線の一端は、第1の入力端子In1に接続される。第1の変圧器2の一次側巻線の他端は、第2の入力端子In2に接続される。第1の変圧器2の二次側巻線の一端は、第1のスイッチング素子SW1と第2のスイッチング素子SW2との接続部に繋がる、第1の端子T1(第1のリアクトルL1の他端)に接続される。第1の変圧器2の二次側巻線の他端は、第3のスイッチング素子SW3と第4のスイッチング素子SW4との接続部に繋がる、第2の端子T2(第2のリアクトルL2の他端)に接続される。
【0024】
第1の変圧器2の二次側巻線の一端と第1の端子T1とを繋ぐ配線が分岐され、第2の変圧器7の二次側巻線の一端に接続される。第2の変圧器7の二次側巻線の他端は、出力コンデンサ8の一端と、第1の出力端子Out1とに接続される。第1の変圧器2の二次側巻線の他端と第2の端子T2とを繋ぐ配線が分岐され、第2の変圧器7の一次側巻線の一端と、出力コンデンサ8の他端と、第2の出力端子Out2とに接続される。第2の変圧器7の一次側巻線の他端は、第5のスイッチング素子SW5と第6のスイッチング素子SW6との接続部に繋がる、第3の端子T3(第3のリアクトルL3の他端)に接続される。なお、第2の変圧器7の二次側巻線の巻初め側と出力コンデンサ8とが接続される場合、第3の端子T3に接続される第2の変圧器7の一次側巻線の他端は巻初め側である必要がある。
【0025】
このように本実施形態に係るインバータ電源装置1においては、第1の変圧器2の一次側巻線の一端は第1の入力端子In1に接続され、第1の変圧器2の一次側巻線の他端は第2の入力端子In2に接続される。また、第1の変圧器2の二次側巻線の一端と、第1のスイッチング素子SW1と第2のスイッチング素子SW2との接続部に繋がる、インバータ装置3の第1の端子T1と、第2の変圧器7の二次側巻線の一端とが互いに接続される。また、第2の変圧器7の二次側巻線の他端と、出力コンデンサ8の一端と、第1の出力端子Out1とが接続される。また、第1の変圧器2の二次側巻線の他端と、第3のスイッチング素子SW3と第4のスイッチング素子SW4との接続部に繋がる、インバータ装置3の第2の端子T2と、第2の変圧器7の一次側巻線の一端と、出力コンデンサ8の他端と、第2の出力端子Out2とが互いに接続される。また、第5のスイッチング素子SW5と第6のスイッチング素子SW6との接続部に繋がる、インバータ装置3の第3の端子T3と、第2の変圧器7の一次側巻線の他端とが接続される。
【0026】
このような構成によれば、第1の変圧器2からの電流の一部は第2の変圧器7に流れるので、インバータ装置3に流れる電流が減少する。そのため、インバータ装置3の電力容量の低減を図ることができる。また、インバータ装置3に流れる電流が減少することで、インバータ装置3のスイッチング素子SWの損失の増加が抑制されるので、冷却器の寸法および重量の増加も抑止することができる。その結果、本実施形態に係るインバータ電源装置1によれば、小型化および軽量化を図ることができる。
【0027】
本実施形態に係るインバータ電源装置1の構成をさらに、第1の電圧検出器VD1と、第2の電圧検出器VD2と、第3の電圧検出器VD3と、電流検出器CT1と、制御回路10とをさらに備える。
【0028】
第1の電圧検出器VD1は、第1の変圧器2の二次側巻線の一端と他端とに接続され、第1の変圧器2の二次側電圧である第1の電圧値を検出する。
【0029】
第2の電圧検出器VD2は、出力コンデンサ8の一端と他端とに接続され、出力コンデンサ8の電圧である第2の電圧値を検出する。
【0030】
第3の電圧検出器VD3は、平滑コンデンサ5の一端と他端とに接続され、平滑コンデンサ5の電圧である第3の電圧値を検出する。
【0031】
電流検出器CT1は、第1の変圧器2の二次側巻線の一端とインバータ装置3の第1の端子T1との間に設けられ、第1の端子T1に流れる電流である第1の電流値を検出する。
【0032】
制御回路10は、第1から第3の電圧値および第1の電流値に基づき、スイッチング素子SWの導通および遮断を制御する。
【0033】
図2は、制御回路10の構成例を示す図である。
【0034】
図2に示すように、制御回路10は、アナログ入力部11と、制御部としてのプロセッサ100と、スイッチング素子駆動回路12とを備える。
【0035】
アナログ入力部11は、第1の電圧検出器VD1、第2の電圧検出器VD2、第3の電圧検出器VD3および電流検出器CT1それぞれの検出結果(第1から第3の電圧値および第1の電流値)を取得し、プロセッサ100に出力する。
【0036】
プロセッサ100は、アナログ入力部11から入力された、第1から第3の電圧値および第1の電流値に基づき、スイッチング素子SWの導通および遮断を制御するパルス幅信号を生成し、スイッチング素子駆動回路12に出力する。
【0037】
スイッチング素子駆動回路12は、プロセッサ100から出力されたパルス幅信号に基づき、第1から第6のスイッチング素子SW1~SW6それぞれを駆動する。スイッチング素子駆動回路12は、フォトカプラなどを用いた絶縁回路により、制御回路10の電位と主回路の電位とを絶縁する。スイッチング素子駆動回路12は、スイッチング素子SWがMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)あるいはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である場合には、ゲート駆動電圧を出力する。なお、ゲート駆動電圧を出力するゲート駆動回路の電源は、フライバックコンバータなどの絶縁型電源回路により、制御回路10と絶縁される。また、スイッチング素子駆動回路12は、スイッチング素子SWがパワートランジスタである場合には、ベース電流を出力する。また、スイッチング素子駆動回路12は、スイッチング素子SWがフォトトランジスタあるいは光ゲートサイリスタである場合には、光信号を出力する。
【0038】
図3は、プロセッサ100の機能構成例を示すブロック図である。以下で説明するプロセッサ100の制御部としての機能および本実施形態に係る制御方法は、例えば、プロセッサ100上で動作するソフトウェアによって実現され、あるいは、演算増幅回路および発振回路などのハードウェアの組み合わせによって実現される。
【0039】
図3に示すように、プロセッサ100は、PLL演算部110と、コンデンサ電流演算部120と、コンバータ制御演算部130と、電圧目標演算部140と、フィードバック演算部150と、インバータ制御演算部160と、PWM演算部170とを備える。
【0040】
PLL演算部110は、第1の電圧検出器VD1により検出された第1の電圧値に基づき、入力電圧波形の位相を計算する。図4は、PLL演算部110の構成例を示す図である。
【0041】
図4に示すように、PLL演算部110は、PLL(Phase Locked Loop)回路111を備え、PLL回路111により、第1の電圧値、すなわち、入力電圧波形の位相θを求め、位相θに対応するsinθを計算する。
【0042】
図3を再び参照すると、PLL演算部110は、計算したsinθをコンバータ制御演算部130および電圧目標演算部140に出力する。
【0043】
コンデンサ電流演算部120は、第3の電圧検出器VD3により検出された第3の電圧値と平滑コンデンサ5の目標電圧との差の比例値および比例値の積分値に基づき、平滑コンデンサ5の電流目標値を計算する。図5は、コンデンサ電流演算部120の構成例を示す図である。
【0044】
図5に示すように、コンデンサ電流演算部120は、減算器121と、積分器122と、加算器123とを備える。
【0045】
減算器121は、VoutMax×√2から第3の電圧値を減算する。VoutMaxは出力電圧の最大定格値であり、VoutMax×√2は平滑コンデンサ5の目標電圧である。したがって、減算器121は、第3の電圧値と平滑コンデンサ5の目標電圧との差を出力する。減算器121による減算値に比例係数K1が乗じられた比例値が加算器123に入力される。また、その比例値に積分係数K2が乗じられて、積分器122に入力される。
【0046】
積分器122は、比例係数K1および積分係数K2が乗じられた、減算器121による減算値を積分した積分値を加算器123に出力する。
【0047】
加算器123は、入力された比例値と積分値とを加算し、平滑コンデンサ5の電流目標値を計算する。
【0048】
図3を再び参照すると、コンデンサ電流演算部120は、計算した平滑コンデンサ5の電流目標値をコンバータ制御演算部130に出力する。
【0049】
コンバータ制御演算部130は、コンデンサ電流演算部120から入力された平滑コンデンサ5の電流目標値と、入力電圧波形の位相θ(PLL演算部110から出力されたsinθ)とに基づき、インバータ装置3の第1の端子T1の電流目標値を計算する。コンバータ制御演算部130は、計算した第1の端子T1の電流目標値と、電流検出器CT1により検出された第1の電流値とに基づき、第1の端子T1と第2の端子T2との線間電圧の目標値である線間電圧指令VuvComを計算する。図6は、コンバータ制御演算部130の構成例を示す図である。
【0050】
図6に示すように、コンバータ制御演算部130は、乗算器131と、減算器132と、加算器133とを備える。
【0051】
乗算器131は、平滑コンデンサ5の電流目標値にsinθを乗算し、第1の端子T1の電流目標値として、減算器132に出力する。
【0052】
減算器132は、乗算器131による乗算値(第1の端子T1の電流目標値)から第1の電流値を減算する。減算器132による減算値に比例係数K3が乗じられ、加算器133に入力される。
【0053】
加算器133は、比例係数K3が乗じられた減算器132による減算値に第1の電圧値を加算して、線間電圧指令VuvComを計算する。
【0054】
図3を再び参照すると、コンバータ制御演算部130は、計算した線間電圧指令VuvComをPWM演算部170に出力する。
【0055】
電圧目標演算部140は、PLL演算部110から入力された入力電圧波形の位相θと、目標とする出力電圧の振幅と、を有する正弦波状の出力電圧目標値VoR0を計算する。図7は、電圧目標演算部140の構成例を示す図である。
【0056】
図7に示すように、電圧目標演算部140は、乗算器141を備える。
【0057】
乗算器141は、sinθにVoutRef×√2を乗算して、出力電圧目標値VoR0を計算する。ここで、VoutRefは、出力電圧の標準電圧値であり、VoutRef×√2は目標とする出力電圧の振幅を示す。したがって、乗算器141は、入力電圧波形の位相θと、目標とする出力電圧の振幅とを有する正弦波状の出力電圧目標値VoR0を計算する。
【0058】
図3を再び参照すると、電圧目標演算部140は、計算した出力電圧目標値VoR0をフィードバック演算部150およびインバータ制御演算部160に出力する。
【0059】
フィードバック演算部150は、第2の電圧検出器VD2により検出された第2の電圧値と、電圧目標演算部140から入力された出力電圧目標値VoR0との差に基づき、後述するインバータ制御演算部160により演算される、出力電圧目標値VoR0と第1の電圧値との差を補正する電圧補正値を計算する。図8は、フィードバック演算部150の構成例を示す図である。
【0060】
図8に示すように、フィードバック演算部150は、減算器151を備える。
【0061】
減算器151は、出力電圧目標値VoR0から第2の電圧値を減算する。フィードバック演算部150は、減算器151による減算値に比例係数K4を乗じて、電圧補正値を計算する。比例係数K4が0であっても出力電圧の安定性が設計要件を満たす場合には、フィードバック演算部150の演算結果を0としてもよい。したがって、フィードバック演算部150は必須の構成ではなく、省略可能である。
【0062】
図3を再び参照すると、フィードバック演算部150は、計算した電圧補正値をインバータ制御演算部160に出力する。
【0063】
インバータ制御演算部160は、電圧目標演算部140から入力された出力電圧目標値VoR0と、第1の電圧検出器VD1により検出された第1の電圧値とに基づき、インバータ装置3の第3の端子T3と第2の端子T2との線間電圧の目標値である線間電圧指令VwvComを計算する。図9は、インバータ制御演算部160の構成例を示す図である。
【0064】
図9に示すように、インバータ制御演算部160は、減算器161と、加算器162と、を備える。
【0065】
減算器161は、出力電圧目標値VoR0から第1の電圧値を減算し、加算器162に出力する。
【0066】
加算器162は、減算器161による減算値と、フィードバック演算部150から入力された電圧補正値とを加算する。なお、上述したように、フィードバック演算部150は必須の構成ではなく、省略されてもよい。フィードバック演算部150が設けられない場合には、加算器162も設けられなくてよい。インバータ制御演算部160は、加算器162による加算値(加算器162が設けられない場合には、減算器161による減算値)に、第2の変圧器7の変圧比{VoMin-VinMin×(VoMax/VinMax)}/VoMaxを乗算して、線間電圧指令VwvComを計算する。
【0067】
図3を再び参照すると、インバータ制御演算部160は、計算した線間電圧指令VwvComをPWM演算部170に出力する。
【0068】
PWM演算部170は、コンバータ制御演算部130から入力された線間電圧指令VuvComと、インバータ制御演算部160から入力された線間電圧指令VwvComと、第3の電圧検出器VD3により検出された第3の電圧値とに基づき、パルス幅信号を生成する。図10は、PWM演算部170の構成例を示す図である。
【0069】
図10に示すように、PWM演算部170は、最大値取得部171と、最小値取得部172と、加算器173と、減算器174,175,176と、PWM変調部177とを備える。
【0070】
最大値取得部171は、線間電圧指令VuvCom、線間電圧指令VwvComおよび0の中から最大値を取得する。最小値取得部172は、線間電圧指令VuvCom、線間電圧指令VwvComおよび0の中から最小値を取得する。
【0071】
加算器173は、線間電圧指令VuvCom、線間電圧指令VwvComおよび0の中から、最大値取得部171により取得された最大値と、最小値取得部172により取得された最小値とを加算する。加算器173による加算値に1/2が乗じられたVpAveが、減算器174,175,176に入力される。
【0072】
減算器174は、線間電圧指令VuvComから、加算器173から出力されたVpAveを減算する。減算器174による減算値を第3の電圧値で除算することで、第1の相の通流率αuが得られ、PWM変調部177に入力される。
【0073】
減算器175は、0から、加算器173から出力されたVpAveを減算する。減算器175による減算値を第3の電圧値で除算することで、第2の相の通流率αvが得られ、PWM変調部177に入力される。
【0074】
減算器176は、線間電圧指令VwvComから、加算器173から出力されたVpAveを減算する。減算器176による減算値を第3の電圧値で除算することで、第3の相の通流率αwが得られ、PWM変調部177に入力される。
【0075】
PWM変調部177は、減算器174,175,176から入力された通流率αu,αv,αwおよび制御データ(キャリア周波数およびデッドタイム値)に基づき、パルス幅信号を生成する。
【0076】
上述したインバータ電源装置1の構成および制御回路10による制御により、一対の第1の入力端子In1および第2の入力端子In2を介してVinMin以上、VinMax以下の単相交流電流が入力されると、一対の第1の出力端子Vout1および第2の出力端子Vout2を介して、VoutMin以上、VoutMax以下の単相交流電圧が出力される。
【0077】
なお、比例係数K1は、平滑コンデンサ5の静電容量Cf(F)、PWMキャリア周波数Fcal(Hz)に対して、K1≦Cf×Fcal÷2√2程度の値である。また、積分係数K2は、K2≦0.25~0.1程度の値である。比例係数K3は、平滑リアクトル6のインダクタンスLf(H)、PWMキャリア周波数Fcal(Hz)に対して、K3≦Lf×Fcal÷2程度の値である。また、比例係数K4は、K4≦1/2~1/4程度の値である。
【0078】
以下では、本実施形態に係るインバータ電源装置1によるインバータ装置3の電力容量の低減について、図11に示す従来のインバータ電源装置20と比較して説明する。インバータ電源装置20は、特許文献1に開示されているような、入力電圧を整流器で直流に変換し、直流電圧をインバータ装置によりパルス幅変調することで、交流電圧を出力するものである。
【0079】
図11に示すように、インバータ電源装置20は、変圧器21と、インバータ装置22と、平滑リアクトル26と、出力コンデンサ27とを備える。
【0080】
変圧器21は、一次側巻線の一端が第1の入力端子In1と接続され、一次側巻線の他端が第2の入力端子In2と接続される。変圧器21の二次側巻線はインバータ装置22と接続される。変圧器21は、入力電圧を変圧してインバータ装置22に出力する。
【0081】
インバータ装置22は、整流器23と、平滑コンデンサ24と、インバータ回路25とを備える。
【0082】
整流器23は、直列に接続された第1のダイオードD1および第2のダイオードD2と、直列に接続された第3のダイオードD3および第4のダイオードD4を備え、変圧器21の二次側電圧(交流電圧)を直流電圧に変換して、インバータ回路25に入力する。
【0083】
平滑コンデンサ24は、整流器23からインバータ回路25に入力される直流電圧を平滑化する。
【0084】
インバータ回路25は、直列に接続された第1のスイッチング素子SW1および第2のスイッチング素子SW2と、直列に接続された第3のスイッチング素子SW3および第4のスイッチング素子SW4とを備える。インバータ回路25は、第1から第4のスイッチング素子SW1~SW4のスイッチングにより、整流器23から入力された直流電圧を交流電圧に変換して出力する。
【0085】
平滑リアクトル26は、第1のリアクトルL1および第2のリアクトルL2を備え、インバータ装置22から出力された交流電圧を平滑化する。平滑リアクトル26による平滑化後の交流電圧が、出力コンデンサ27を介して第1の出力端子Out1および第2の出力端子Out2から出力される。
【0086】
以下では、入力電圧の範囲が300[V]~600[V]であり、出力電圧の範囲が200[V]±5%であり、出力容量が10[kVA]であるとする。この場合、VinMax=600[Vrms]、VinMin=300[Vrms]、VoutMax=210[Vrms]、VoutMin=190[Vrms]、VoutRef=200[Vrms]、IoutMax=52.6[Arms]である。
【0087】
第1の変圧器2の一次側定格電圧は600[V]である。第1の変圧器2の二次側定格電圧は210Vである。最大電流は、最低電圧時の電流であるため、一次側換算で10[kVA]÷300[V]=33.3[A]となる。変圧器の容量は最大電圧と最大電流との積であるため、第1の変圧器2の容量は、20[kVA]である。第2の変圧器7の一次側定格電圧は{VoMin-VinMin×(VoMax/VinMax)}=85[V]となる。第2の変圧器7の二次側定格電圧は210[V]である。負荷電流が全て一次側巻線を通過するため、第2の変圧器7の容量は、85[V]×52.6[A]=4.47[kVA]となる。入力電圧最低時に第2の変圧器7の容量に等しい電力をとるだけの電流がインバータ装置3の第1の端子T1に流れるため、第1の端子T1を流れる最大電流は、4.47[kVA]÷105[V]=42.6[A]である。インバータ装置3の第3の端子T3に流れる最大電流は、入力電流によらず、52.6[A]×(85/210)=21.3[A]である。インバータ装置3の第2の端子T2に流れる電流は、第1の端子T1と第3の端子T3とに流れる電流の差であるため、42.6[A]-21.3[A]=21.3[A]である。平滑コンデンサ5の電圧は、入力電圧によらず、210[V]×√2=296[V]である。インバータ装置3のスイッチング素子SWのスイッチング容量は、第1のスイッチング素子SW1および第2のスイッチング素子SW2を含む第1の回路で、42.6[Arms]×√2×296[V]=17.8[kVA]、第3のスイッチング素子SW3および第4のスイッチング素子SW4を含む第2の回路および第5のスイッチング素子SW5および第6のスイッチング素子SW6を含む第3の回路で、21.3[Arms]×√2×296[V]=8.9[kVA]となる。したがって、インバータ装置3の6つのスイッチング素子SW全てのスイッチング容量を合計すると、17.8×2+8.9×4=71.2[kVA]となる。
【0088】
図11に示すインバータ電源装置20においては、入力電圧最低時にインバータ装置22は、最低出力電圧を出力することができる必要があるため、変圧器21の巻線比は300:190となる。そのため、一次側電圧600[V]に対して、変圧器21の二次側電圧は380[V]となる。また、変圧器21の容量は、第1の変圧器2と同じ20[kVA]となる。インバータ装置22の出力電流は負荷電流に等しいため、最大で52.6[A]である。したがって、インバータ装置22のスイッチング素子SWのスイッチング容量は、(380×√2)×(52.6×√2)=40.0[kVA]となる。インバータ装置22は単相インバータであるので、インバータ装置22が備える4つのスイッチング素子SW全てのスイッチング容量を合計すると、40.0×4=160[kVA]となる。
【0089】
また、特許文献1に記載されているような従来のインバータ電源装置に、入出力を直流的に絶縁する変圧器を付加した場合、入力電圧最低時にインバータ装置は、最低出力電圧を出力することができる必要があるため、入力変圧器の巻線比は300:190となる。そのため、一次側電圧600[V]に対して、入力変圧器の二次側電圧は380[V]となる。また、入力変圧器の容量は、第1の変圧器2と同じ20[kVA]となる。インバータ装置22の出力電流は負荷電流に等しいため、最大で52.6[A]である。また、倍電圧整流回路により、スイッチング素子の電圧は2倍であるため、インバータ装置のスイッチング素子のスイッチング容量は、(380×2×√2)[V]×(52.6×√2)A=80.0[kVA]となる。インバータ装置はハーフブリッジ構成の単相インバータであるので、インバータ装置が備えるスイッチング素子は2個である。したがって、全てのスイッチング素子のスイッチング容量を合計すると、80.0×2=160[kVA]となる。
【0090】
以上より、本実施形態に係るインバータ電源装置1においては、容量が4.47[kVA]の第2の変圧器7を追加する代わりに、インバータ装置3のスイッチング素子容量が88.8[kVA]減少し、インバータ装置3の電力容量を低減することができる。比率としては、第1の変圧器2と合わせて考えると、変圧器の容量が23.5%増加し、インバータ容量が55.5%減少する。一般に、単位容量当たりの損失は、変圧器よりインバータ装置の方が大きいか、変圧器とインバータ装置とで同等程度である。そのため、装置の損失によってその大きさが決まる冷却器の重量を大幅に削減することができる。
【0091】
なお、インバータ装置3の平滑リアクトル6の体積および重量は概ね、LI(Lはインダクタンス、Iはピーク電流)に比例する。平滑リアクトル6のインダクタンスLは、巻線電圧÷ピーク電流Iで設計され、ピーク電流Iは、定格電流に対する比率で設計される。そのため、結果的に、平滑リアクトル6の体積および重量は、インバータ装置3の容量に概ね比例する。したがって、変圧器の重量増加分を平滑リアクトル6の重量減少分で打ち消すように設計することができる。
【0092】
図1に示すインバータ電源装置1において、VoutMax=210[Vrms]から、ピーク電圧は約297V(=√2×VoutMax)であるので、スイッチング素子の素子電圧を300Vとする。また、IoutMax=52.6[Arms]からピーク電流は約74.3A(=√2×IoutMax)であるので、スイッチング素子の素子電流を75Aとする。この場合、スイッチング素子の素子容量は、300V×75A=22.5kVAとなる。インバータ容量は、単相構成の場合、210Vrms×52.6Arms=11.1kVAであり、三相構成の場合、19.1kVAである。また、スイッチング素子容量の合計は、単相構成の場合、90kVA、三相構成の場合135kVAとなる。
【0093】
したがって、単相構成の場合、スイッチング素子の容量の合計は、インバータ容量の約8倍となり、三相構成の場合、スイッチング素子の容量の合計は、インバータ容量の約7倍(≧4√3倍)となる。上述したように、第1のスイッチング素子SW1および第2のスイッチング素子SW2を含む第1の回路のスイッチング容量は17.8[kVA]である。したがって、スイッチング容量が17.8[kVA]である第1のスイッチング素子SW1および第2のスイッチング素子SW2を含む第1の回路を、スイッチング容量が8.9kVAであるスイッチング素子が2個並列に接続された回路とみなし、スイッチング容量が8.9kVAであるスイッチング素子8個を単相インバータに組み替えたと考えると、インバータ容量は8.9kVA相当となる。同等の冷却性能を必要となる三相インバータ装置を考えると、スイッチング素子の容量の合計71.2kVAから逆算すると、インバータ装置3のインバータ容量は10.3kVA相当となる。したがって、本実施形態に係るインバータ電源装置1においては、インバータ装置3の電力容量は、第1の変圧器2の電力容量(20kVA)よりも小さい。
【0094】
また、上述したように、第1の変圧器2の電力容量は20kVAであり、第2の変圧器7の電力容量は4.74kVAである。したがって、本実施形態に係るインバータ電源装置1においては、第2の変圧器7の電力容量は第1の変圧器の電力容量よりも小さい。
【0095】
このように本実施形態に係るインバータ電源装置1は、インバータ装置3と、第1の変圧器2と、第2の変圧器7と、出力コンデンサ8とを備える。第1の変圧器2の一次側巻線の一端は第1の入力端子In1に接続され、第1の変圧器2の一次側巻線の他端は第2の入力端子In2に接続される。また、第1の変圧器2の二次側巻線の一端と、第1のスイッチング素子SW1と第2のスイッチング素子SW2との接続部に繋がる、インバータ装置3の第1の端子T1と、第2の変圧器7の二次側巻線の一端とが互いに接続される。また、第2の変圧器7の二次側巻線の他端と、出力コンデンサ8の一端と、第1の出力端子Out1とが接続される。また、第1の変圧器2の二次側巻線の他端と、第3のスイッチング素子SW3と第4のスイッチング素子SW4との接続部に繋がる、インバータ装置3の第2の端子T2と、第2の変圧器7の一次側巻線の一端と、出力コンデンサ8の他端と、第2の出力端子Out2とが互いに接続される。また、第5のスイッチング素子SW5と第6のスイッチング素子SW6との接続部に繋がる、インバータ装置3の第3の端子T3と、第2の変圧器7の一次側巻線の他端とが接続される。
【0096】
また、インバータ電源装置1は、第1の変圧器2の二次側電圧である第1の電圧値を検出する第1の電圧検出器VD1と、出力コンデンサ8の電圧である第2の電圧値を検出する第2の電圧検出器VD2と、平滑コンデンサ5の電圧である第3の電圧値を検出する第3の電圧検出器VD3と、インバータ装置3の第1の端子T1に流れる電流である第1の電流値を検出する電流検出器CT1と、第1から第3の電圧値および第1の電流値に基づき、第1から第6のスイッチング素子SW1~SW6それぞれの導通および遮断を制御するパルス幅信号を生成する制御回路10と、を備える。
【0097】
制御回路10は、第1の電圧値に基づき、入力電圧波形の位相θを計算するPLL演算部110と、第3の電圧値と平滑コンデンサ5の目標電圧との差の比例値および比例値の積分値に基づき、平滑コンデンサ5の電流目標値を計算するコンデンサ電流演算部120と、平滑コンデンサ5の電流目標値と、入力電圧波形の位相とに基づき、第1の端子T1の電流目標値を計算し、第1の端子T1の電流目標値と第1の電流値とに基づき、第1の端子T1と第2の端子T2との線間電圧の目標値を計算するコンバータ制御演算部130と、入力電圧波形の位相と、目標とする出力電圧の振幅とを有する正弦波状の出力電圧目標値を計算する電圧目標演算部140と、出力電圧目標値と、第1の電圧値とに基づき、第3の端子T3と第2の端子T2との線間電圧の目標値を計算するインバータ制御演算部160と、第1の端子T1と第2の端子T2との線間電圧の目標値と、第3の端子T3と第2の端子T2との線間電圧の目標値と、第3の電圧値とに基づき、パルス幅信号を生成するPWM演算部170と、を備える。
【0098】
このような構成により、第1の変圧器2からの電流の一部は第2の変圧器7に流れるので、インバータ装置3に流れる電流が減少するので、スイッチング素子SWの損失を小さくすることができる。そのため、インバータ電源装置1の小型化・軽量化を図ることができる。
【0099】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 インバータ電源装置
2 第1の変圧器
3 インバータ装置
4 インバータ回路
5 平滑コンデンサ
6 平滑リアクトル
7 第2の変圧器
8 出力コンデンサ
10 制御回路
11 アナログ入力部
12 スイッチング素子駆動回路
100 プロセッサ(制御部)
110 PLL演算部
111 PLL回路
120 コンデンサ電流演算部
121,123 減算器
122 積分器
130 コンバータ制御演算部
131 乗算器
132 減算器
133 加算器
140 電圧目標演算部
141 乗算器
150 フィードバック演算部
151 減算器
160 インバータ制御演算部
161 減算器
162 加算器
170 PWM演算部
171 最大値取得部
172 最小値取得部
173 加算器
174,175,176 減算器
177 PWM
In1 第1の入力端子
In2 第2の入力端子
Out1 第1の出力端子
Out2 第2の出力端子
SW1 第1のスイッチング素子
SW2 第2のスイッチング素子
SW3 第3のスイッチング素子
SW4 第4のスイッチング素子
SW5 第5のスイッチング素子
SW6 第6のスイッチング素子
L1 第1のリアクトル
L2 第2のリアクトル
L3 第3のリアクトル
VD1 第1の電圧検出器
VD2 第2の電圧検出器
VD3 第3の電圧検出器
CT1 電流検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11