(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】蒸気ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
F22D 1/20 20060101AFI20241017BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20241017BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20241017BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241017BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20241017BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20241017BHJP
F23C 9/08 20060101ALI20241017BHJP
C10L 3/08 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
F22D1/20
C25B1/23
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B15/08 304
F23J15/00 H
F23C9/08 500
C10L3/08
(21)【出願番号】P 2021106686
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】根本 亮
(72)【発明者】
【氏名】折田 久幸
(72)【発明者】
【氏名】杉政 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】軍司 章
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0275278(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101687634(CN,A)
【文献】特表2016-511296(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203087(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0080076(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 1/20
C25B 1/23
C25B 1/042
C25B 9/00
C25B 15/08
F23J 15/00
F23C 9/08
C10L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気ボイラと、
二酸化炭素燃料化装置と、
前記蒸気ボイラから前記二酸化炭素燃料化装置に燃焼生成ガスを送る燃焼生成ガス流路と、
前記二酸化炭素燃料化装置から前記蒸気ボイラに変換ガスを送る変換ガス流路と、
前記二酸化炭素燃料化装置から前記蒸気ボイラに酸素ガスを送る酸素ガス流路と、を備え、
前記蒸気ボイラは、前記変換ガスを前記酸素ガスにより燃焼して前記燃焼生成ガスを生成し、
前記二酸化炭素燃料化装置は、前記燃焼生成ガスを還元し、前記変換ガスと前記酸素ガスとに分離し、
前記燃焼生成ガス、前記変換ガス及び前記酸素ガスは、前記蒸気ボイラ、前記二酸化炭素燃料化装置、前記燃焼生成ガス流路、前記変換ガス流路及び前記酸素ガス流路で構成される閉ループを循環する構成を有し、
前記蒸気ボイラの給水流路には、前記給水流路の給水に前記変換ガス及び前記酸素ガスの熱エネルギーのうち少なくともいずれか一つを与える熱交換器が設置さ
れ、
前記蒸気ボイラと前記二酸化炭素燃料化装置との間の前記燃焼生成ガス流路には、燃焼触媒ユニットが設置され、
前記蒸気ボイラと前記燃焼触媒ユニットとを接続する流路には、前記変換ガスの一部を合流させる変換ガスバイパス流路が接続されている、蒸気ボイラシステム。
【請求項2】
前記変換ガス流路には、前記蒸気ボイラの前記燃焼生成ガスの一部を合流させる燃焼生成ガスバイパス流路が接続されている、請求項1記載の蒸気ボイラシステム。
【請求項3】
前記燃焼触媒ユニットと前記二酸化炭素燃料化装置との間の前記燃焼生成ガス流路に水を供給する構成を有する、請求項
1記載の蒸気ボイラシステム。
【請求項4】
前記変換ガス流路には、前記蒸気ボイラの前記燃焼生成ガスの一部を合流させる燃焼生成ガスバイパス流路が接続され、
前記燃焼触媒ユニットと前記二酸化炭素燃料化装置との間の前記燃焼生成ガス流路に水を供給する構成を有し、
前記変換ガス流路及び前記燃焼生成ガスバイパス流路のそれぞれには、冷却器が設置され、
前記冷却器で生ずる凝縮水を前記水として用いる構成を有する、請求項
1記載の蒸気ボイラシステム。
【請求項5】
前記凝縮水の流路には、前記変換ガス及び前記酸素ガス並びに前記燃焼生成ガスバイパス流路を流れる前記燃焼生成ガスの熱エネルギーのうち少なくともいずれか一つを与える熱交換器が設置されている、請求項
4記載の蒸気ボイラシステム。
【請求項6】
前記蒸気ボイラの前記給水流路には、前記給水に前記燃焼生成ガスバイパス流路を流れる前記燃焼生成ガスの熱エネルギーを与える熱交換器が設置されている、請求項
2記載の蒸気ボイラシステム。
【請求項7】
前記変換ガス流路には、圧縮機が設置され、
前記燃焼生成ガスバイパス流路は、前記圧縮機の上流側に接続されている、請求項
2記載の蒸気ボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止のため、二酸化炭素(以下「CO2」と表記する。)の排出を削減する技術の開発が進められている。その技術としては、CO2を回収する技術、CO2を貯留する技術、CO2を変換して有効活用する技術等がある。
【0003】
CO2を回収する技術としては、化学吸収法がある。アミン水溶液を用いて、排ガス中のCO2を吸収し、吸収したCO2をこの水溶液から放出させ、タンクなどにCO2を回収する。アミン水溶液は、CO2を吸収する際に発熱し、CO2を放出する際には加熱が必要となる。このため、アミン水溶液の冷却及び加熱をするためのエネルギーが必要であり、それらのエネルギーを削減することが課題である。
【0004】
また、回収したCO2を貯蔵する技術がある。回収したCO2を貯蔵箇所まで輸送し、地下深くに貯蔵用の穴を設け、CO2を圧縮して貯蔵する。コスト低減、貯蔵した後の貯蔵状態の保持及び安全性等が課題である。
【0005】
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は、CO2を回収する技術と回収したCO2を貯蔵する技術とを合わせたものである。CCSにおいては、上記課題があるため、回収したCO2を変換して有効活用する技術であるCCU(Carbon Capture and Utilization)の開発が進められている。
【0006】
例えば、CO2をメタン(以下「CH4」と表記する。)に変換する方法がある。この場合の化学反応は、次の反応式(1)で表される。
【0007】
CO2+4H2 → CH4+2H2O …反応式(1)
上記反応式(1)で必要になる水素(以下「H2」と表記する。)は、次の反応式(2)で表される水の電気分解反応により得ることができる。
【0008】
2H2O → 2H2+O2 …反応式(2)
CH4は、液化天然ガス(以下「LNG」と表記する。)の主成分であり、LNGの代替として有効利用することができる。上記反応式(1)及び(2)で表される反応によって得られるCH4については、低コスト化が課題であり、LNGと同等程度にすることが求められている。
【0009】
電力分野では、化石燃料を燃焼する火力発電の比率を減らし、太陽光発電や風力発電の再生可能エネルギーの比率を増やすことでCO2を削減する取組みも進められている。
【0010】
近年、太陽光発電や風力発電の再生可能エネルギーの導入が増加し、発電量が日によっても時間帯によっても異なり、電力の供給過多が予測される場合、事前に再生可能エネルギーの受入れを抑制する事態が発生している。
【0011】
再生可能エネルギーの受入れ停止の間に発電をすると、余剰電力になるため、その活用方法の一つとして、上記反応式(2)で表される水の電気分解反応によるH2の製造が考えられている。H2を製造することができれば、上記反応式(1)で表されるようにCO2をCH4に変換し、燃料として再利用することができる。
【0012】
特許文献1には、炭化水素化合物を生成するための電解槽、逆水性ガスシフト反応器、およびフィッシャー・トロプシュ反応器で構成される、システムおよび方法が開示されている。
【0013】
ここで、逆水性ガスシフト反応器における反応は、CO2をCO(一酸化炭素)に変換する反応であり、下記反応式(3)で表される。
【0014】
CO2+H2 → CO+H2O …反応式(3)
また、フィッシャー・トロプシュ反応器における反応は、CH4のような炭化水素を生成する反応であり、下記反応式(4)で表される。なお、この反応は、フィッシャー・トロプシュ法(Fischer-Tropsch process)として知られている。
【0015】
nCO+(2n+1)H2 → CnH2n+2+nH2O …反応式(4)
CO2の回収方法には、化石燃料の燃焼ガスから高圧でCO2を吸収しその後低圧にしてCO2を放出させて回収する圧力スウィング法、CO2だけを膜に透過させて回収する膜分離法、アミン水溶液を用いてCO2を吸収しその後放出して回収するプロセス等がある。H2は、再生可能エネルギーあるいは核燃料で得られる電気エネルギーを使用して水を電気分解することで製造する。
【0016】
特許文献2には、固体酸化物電解セル(SOEC)ユニットにCO2流を供給し、COを生成し、このCOを第一の合成ガス流にフィードバックし、それによって、第一の合成ガス流中のCO濃度が高められる方法が開示されている。
【0017】
非特許文献1には、固体酸化物形電気分解セル(SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell)を用いて、500℃以上の高温下で二酸化炭素と水蒸気を同時に電気分解(共電解)し、水素と一酸化炭素に変換すること、この変換により得られたガス及び熱を利用してメタンを製造すること等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特表2008-533287号公報
【文献】特表2019-507718号公報
【非特許文献】
【0019】
【文献】燃料電池,Vol.14,No.4,pp.81-86(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
特許文献1及び2には、窒素を含まない閉空間における燃料の酸化及び燃焼生成ガスの還元については記載されていない。
【0021】
本発明の目的は、蒸気ボイラと二酸化炭素燃料化装置とを備え、燃料、酸素等が閉ループを循環する構成を有する蒸気ボイラシステムにおいて、エネルギー効率を向上し、かつ、二酸化炭素燃料化装置を小型化して二酸化炭素燃料化装置の導入コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の蒸気ボイラシステムは、蒸気ボイラと、二酸化炭素燃料化装置と、蒸気ボイラから二酸化炭素燃料化装置に燃焼生成ガスを送る燃焼生成ガス流路と、二酸化炭素燃料化装置から蒸気ボイラに変換ガスを送る変換ガス流路と、二酸化炭素燃料化装置から蒸気ボイラに酸素ガスを送る酸素ガス流路と、を備え、蒸気ボイラは、変換ガスを酸素ガスにより燃焼して燃焼生成ガスを生成し、二酸化炭素燃料化装置は、燃焼生成ガスを還元し、変換ガスと酸素ガスとに分離し、燃焼生成ガス、変換ガス及び酸素ガスは、蒸気ボイラ、二酸化炭素燃料化装置、燃焼生成ガス流路、変換ガス流路及び酸素ガス流路で構成される閉ループを循環する構成を有し、蒸気ボイラの給水流路には、給水流路の給水に変換ガス及び酸素ガスの熱エネルギーのうち少なくともいずれか一つを与える熱交換器が設置されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蒸気ボイラと二酸化炭素燃料化装置とを備え、燃料、酸素等が閉ループを循環する構成を有する蒸気ボイラシステムにおいて、エネルギー効率を向上し、かつ、二酸化炭素燃料化装置を小型化して二酸化炭素燃料化装置の導入コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例1の蒸気ボイラシステムを示す全体構成図である。
【
図2】実施例2の蒸気ボイラシステムを示す全体構成図である
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、蒸気ボイラシステムに関し、蒸気ボイラの燃焼器で発生する燃焼生成ガス(排ガス)を回収し、燃焼生成ガスに含まれる二酸化炭素を再燃料化する技術に関する。
【0026】
以下、実施例について、図面を用いて説明する。
【0027】
実施例においては、例えば医薬器具や食品容器の蒸気殺菌などに使用される蒸気ボイラから発生する二酸化炭素を再利用するシステムを対象に説明するが、これに限定されるものではなく、燃料の燃焼により二酸化炭素が発生する構成を有するものであれば適用することができる。
【実施例1】
【0028】
図1は、実施例1の蒸気ボイラシステムを示す全体構成図である。
【0029】
本図に示す蒸気ボイラシステムは、蒸気ボイラ1と、二酸化炭素燃料化装置2と、燃焼触媒ユニット3と、変換ガスタンク6と、酸素ガスタンク7と、制御装置13と、を備えている。
【0030】
蒸気ボイラ1には、給水配管15(給水流路)、蒸気配管16(蒸気流路)、燃料ガス配管17(燃料ガス流路)及び排ガス配管18(燃焼生成ガス流路)が接続されている。給水配管15は、外部から蒸気ボイラ1に水を供給する配管である。給水配管15には、熱交換器11-1及び熱交換器11-2が設置されている。燃料ガス配管17には、ガス流量調整弁10-4が設置されている。排ガス配管18には、ガス流量調整弁10-5が設置されている。
【0031】
蒸気ボイラ1と二酸化炭素燃料化装置2とは、配管で接続されている。この配管の途中には、燃焼触媒ユニット3が設置されている。この配管は、蒸気ボイラ1において発生する排ガス配管18から分岐された流路である。燃焼触媒ユニット3と二酸化炭素燃料化装置2との間の配管には、圧力計9-3、ガス流量計8-4及びガス分析計12-2が設置されている。
【0032】
二酸化炭素燃料化装置2と変換ガスタンク6とは、配管(変換ガス流路)で接続されている。この配管の途中には、冷却器4-1、圧力計9-4及び圧縮機5-1がこの順に設置されている。
【0033】
二酸化炭素燃料化装置2と酸素ガスタンク7とは、配管(酸素ガス流路)で接続されている。この配管の途中には、冷却器4-2、圧力計9-5及び圧縮機5-2がこの順に設置されている。
【0034】
変換ガスタンク6と蒸気ボイラ1とは、配管(変換ガス流路)で接続されている。この配管の途中には、ガス流量調整弁10-2及びガス流量計8-2がこの順に設置されている。
【0035】
酸素ガスタンク7と蒸気ボイラ1とは、配管で接続されている。この配管の途中には、ガス流量調整弁10-1及びガス流量計8-1がこの順に設置されている。
【0036】
蒸気ボイラ1と燃焼触媒ユニット3とを接続する配管には、変換ガスタンク6からのバイパス配管(変換ガスバイパス流路)が接続されている。言い換えると、蒸気ボイラ1と燃焼触媒ユニット3とを接続する流路には、変換ガスの一部を合流させる変換ガスバイパス流路が接続されている。このバイパス配管の途中には、ガス流量調整弁10-3及びガス流量計8-3がこの順に設置されている。なお、変換ガスバイパス流路は、変換ガスタンク6の上流側の変換ガス流路から分岐させてもよい。
【0037】
二酸化炭素燃料化装置2の構成要素であるSOECの電極材料は、O2によって劣化する。このため、蒸気ボイラ1から二酸化炭素燃料化装置2に送られてくる排ガス中にO2が残存する場合に備え、蒸気ボイラ1から二酸化炭素燃料化装置2に向かう配管に燃焼触媒ユニット3が設けられているが、残存するO2と反応する燃料成分が不足する場合がある。この場合に、燃焼触媒ユニット3の上流側に、変換ガスタンク6からのバイパス配管を介して、CO及びH2等を含む変換ガスを供給し、残存するO2と反応させることにより、O2を除去することができる。
【0038】
変換ガスタンク6には、圧力計9-2及びガス分析計12-1が設置されている。
【0039】
酸素ガスタンク7には、圧力計9-1が設置されている。また、酸素ガスタンク7には、外部から酸素を供給するための酸素供給配管19が接続されている。酸素供給配管19には、ガス流量調整弁10-6が設置されている。
【0040】
二酸化炭素燃料化装置2、圧縮機5-1及び圧縮機5-2には、外部から系統電力14が供給される。
【0041】
蒸気ボイラシステムにおいては、蒸気ボイラ1の排ガスを二酸化炭素燃料化装置2で燃料化する。そして、燃料化したガスは、変換ガスタンク6に封入可能な温度に冷却した後、圧縮して変換ガスタンク6に封入する。
【0042】
変換ガスタンク6に封入したガスは、蒸気ボイラ1の燃料として再利用される。すなわち、蒸気ボイラシステムは、燃焼と還元とを繰り返す循環システムである。
【0043】
蒸気ボイラ1は、燃料を酸素で燃焼し、その燃焼熱で水を加熱し、水蒸気を得る装置である。燃焼後のガス(排ガス)は二酸化炭素と水であり、その温度は200℃~500℃の高温である。また、燃料と酸素との比は一定の割合とし、安定した火炎を発生させるようにする。
【0044】
この燃焼ガスを二酸化炭素燃料化装置2に導入する。
【0045】
二酸化炭素燃料化装置2は、CO2をCOに変換する装置である固体酸化物形電解セル(SOEC)を含む。SOECは、電力を供給することによりCO2及びH2Oを原料物質としてCO及びH2を生成する装置である。言い換えると、二酸化炭素燃料化装置2は、蒸気ボイラ1で発生する排ガスを還元する装置である。
【0046】
また、二酸化炭素燃料化装置2は、SOECで生成したCO及びH2から触媒反応によりCH4等を生成する装置を含むものであってもよい。
【0047】
さらに、二酸化炭素燃料化装置2は、CO2を含むガスを原料として触媒反応等により直接CH4等を生成する装置であってもよい。この場合は、二酸化炭素燃料化装置2は、SOECを含まなくてもよい。
【0048】
よって、二酸化炭素燃料化装置2は、CO又はCH4等を含むガスを生成する装置である。
【0049】
二酸化炭素燃料化装置2で生じるCO及びH2、又はCH4等(以下「変換ガス」という。)は、変換ガスタンク6に送られ貯留される。一方、二酸化炭素燃料化装置2で生じるO2は、酸素ガスタンク7に送られ貯留される。よって、二酸化炭素燃料化装置2で生じるCO、H2、CH4等は、蒸気ボイラ1の燃料として再利用される。同様に、二酸化炭素燃料化装置2で生じるO2は、蒸気ボイラ1の酸化剤として再利用される。
【0050】
SOECは、高温で水を電気分解する装置である。SOECは、酸素極、電解質及び水素極の三層構造を有し、系統電力14を用いてH2Oから水素極にH2を生成し、酸素極にてO2を生成する。さらに、上記反応式(3)に示すように、CO2とH2の逆水性ガスシフト反応で、H2O及びCOが生成される。
【0051】
SOECにおいては、CO2の全量を反応させるわけではなく、一部が残存するため、水素極のガスは、H2O、COと未反応のH2、CO2とが混合した状態となる。
【0052】
したがって、二酸化炭素燃料化装置2が実質的にSOECのみで構成されている場合は、上記のH2O、CO、H2、CO2が変換ガスを構成する。二酸化炭素燃料化装置2で生成したO2は、変換ガスと物理的に隔てられて排出されるため、変換ガスにはO2は含まれない。
【0053】
二酸化炭素燃料化装置2の水の電気分解反応に必要とする電力と、逆水性ガスシフト反応による変換ガスの組成とは、ガスの温度に依存して変化する。二酸化炭素燃料化装置2における電気分解反応及び逆水性ガスシフト反応はともに、吸熱反応である。このため、二酸化炭素燃料化装置2では、内部のガス温度が低下しないように加熱することも必要になる。
【0054】
さらに、二酸化炭素燃料化装置2に供給する排ガスに酸素が含まれると、二酸化炭素燃料化装置2の水素極が酸化して劣化する。そこで、二酸化炭素燃料化装置2の上流に燃焼触媒ユニット3を設置し、排ガス中のO2を除去することが望ましい。
【0055】
二酸化炭素燃料化装置2において生成される変換ガスは、二酸化炭素燃料化装置2の下流に設置された冷却器4-1により冷却され、圧縮機5-1で圧縮され、変換ガスタンク6に送られ、貯蔵される。一方、二酸化炭素燃料化装置2において生成されるO2は、二酸化炭素燃料化装置2の下流に設置された冷却器4-2により冷却され、圧縮機5-2で圧縮され、酸素ガスタンク7に送られ、貯蔵される。
【0056】
冷却器4-1で冷却された変換ガスの流路圧力は、圧力計9-4により計測される。冷却器4-2で冷却されたO2の流路圧力は、圧力計9-5により計測される。圧力計9-4、9-5の計測値は、制御装置13に送信される。制御装置13は、受信した圧力計9-4、9-5の計測値に基いて、圧縮機5-1及び圧縮機5-2の出力を制御する。これにより、変換ガス及びO2の流路圧力を安定させることができる。
【0057】
変換ガスタンク6に貯蔵されている変換ガスと、酸素ガスタンク7に貯蔵されているO2とを蒸気ボイラ1に再供給する。また、変換ガスタンク6の変換ガスは、燃焼触媒ユニット3にも供給し、蒸気ボイラ1からの排ガスに含まれるO2の除去に利用する。
【0058】
蒸気ボイラ1に供給する変換ガスの流量は、ガス流量計8-2で計測する。燃焼触媒ユニット3に供給する変換ガスの流量は、ガス流量計8-3で計測する。蒸気ボイラ1に供給するO2ガスの流量は、ガス流量計8-1で計測する。これらのガスの流量はそれぞれ、ガス流量調整弁10-2、10-3、10-1の開度を調整することにより制御される。この制御は、制御装置13により行う。
【0059】
なお、制御装置13に対して各種の計測値のデータを送信する手段、及び制御装置13から各種の制御信号を送信する手段は、無線でも有線でもよい。本図においては、破線で示している。
【0060】
蒸気ボイラ1に供給される変換ガス及びO2ガスは、蒸気ボイラ1で安定した燃焼になる流量比とする。一方、燃焼触媒ユニット3に供給される変換ガスは、触媒燃焼後のガス中にO2が残存しないようにする流量とする。
【0061】
このように、蒸気ボイラ1で生成されたH2O及びCO2は、二酸化炭素燃料化装置2でH2及びCOに燃料化され、再び蒸気ボイラ1に供給される。
【0062】
このように、定常運転時においては、システム内部のガスは、閉ループを循環する構成である。
【0063】
このような構成とすることにより、システムからの二酸化炭素の排出を実質的に零(0)にすることができる。
【0064】
本実施例においては、熱交換器11-1の符号aは、二酸化炭素燃料化装置2に接続された変換ガス流路の符号aと接続している。熱交換器11-1の符号bは、二酸化炭素燃料化装置2に接続された変換ガス流路の符号bと接続している。
【0065】
また、熱交換器11-2の符号cは、二酸化炭素燃料化装置2に接続されたO2ガス流路の符号cと接続している。熱交換器11-2の符号dは、二酸化炭素燃料化装置2に接続されたO2ガス流路の符号dと接続している。
【0066】
言い換えると、二酸化炭素燃料化装置2で生成された変換ガスは、熱交換器11-1を経由して、蒸気ボイラ1の給水を加熱する。また、二酸化炭素燃料化装置2で生成されたO2ガスは、熱交換器11-2を経由して、蒸気ボイラ1の給水を加熱する。
【0067】
二酸化炭素燃料化装置2で生成した変換ガス及びO2ガスの温度は、600℃~1000℃の高温である。
【0068】
これらの熱エネルギーを蒸気ボイラ1の給水配管15に与えることにより、変換ガスの冷却器4-1およびO2ガスの冷却器4-2における熱交換量を低減することができる。なお、熱交換器11-1と熱交換器11-2はどちらか一方だけでもよく、熱交換器11-1ならば変換ガスの熱エネルギーを、熱交換器11-2ならばO2ガスの熱エネルギーを、蒸気ボイラ1の給水配管15に与えることになる。
【0069】
このように、二酸化炭素燃料化装置2の変換ガスとO2ガスの熱エネルギーを、蒸気ボイラ1の給水配管15に与えることにより、蒸気ボイラ1で得られる蒸気流量を増加させることができる。また、蒸気ボイラ1で同量の蒸気流量を得る場合、蒸気ボイラ1に供給する変換ガスとO2ガスの流量を減らすことができる。これにより、蒸気ボイラ1で生成したH2OとCO2を、二酸化炭素燃料化装置2でH2とCOに燃料化して再び蒸気ボイラに供給するガスの閉循環システムにおいて、二酸化炭素燃料化装置2が供給するガス流量を減らすことができ、二酸化炭素燃料化装置2の小型化と、上記反応式(2)の水の電気分解に必要とする電力の低減とを実現することができる。これにより、システム全体のエネルギー消費量を抑制することが可能となる。すなわち、ランニングコストを低減することができる。
【0070】
さらに、燃焼生成ガスの削減により、二酸化炭素燃料化装置を小型化できるため、既存の蒸気ボイラに、SOEC等を含む二酸化炭素燃料化装置を付加する際の導入コストを低減することができる。
【実施例2】
【0071】
図2は、実施例2の蒸気ボイラシステムを示す全体構成図である。
【0072】
本図の説明においては、実施例1と同じ構成については省略する。
【0073】
本図においては、蒸気ボイラ1と燃焼触媒ユニット3とを接続する配管の途中に、分岐配管としてバイパス配管20(燃焼生成ガスバイパス流路)が設置されている。バイパス配管20は、冷却器4-1と圧縮機5-1との間の配管に接続されている。言い換えると、バイパス配管20は、圧縮機5-1の上流側に接続されている。更に言い換えると、変換ガス流路には、蒸気ボイラ1の燃焼生成ガスの一部を合流させる燃焼生成ガスバイパス流路が接続されている。これにより、蒸気ボイラ1の排ガスが二酸化炭素燃料化装置2で生成した変換ガスに混合されるようにしている。なお、燃焼生成ガスバイパス流路は、燃焼触媒ユニット3と二酸化炭素燃料化装置2とを接続する配管の途中から分岐し、冷却器4-1と圧縮機5-1との間の配管に接続してもよい。
【0074】
バイパス配管20には、ガス流量計8-5、圧力計9-6、冷却器4-3及びガス流量調整弁10-7がこの順に設置されている。
【0075】
バイパス配管20を設けることにより、二酸化炭素燃料化装置2に供給するガス流量を低減することができ、二酸化炭素燃料化装置2を小型化することができる。
【0076】
また、閉空間において燃料を酸素で燃焼する場合、窒素がないため、燃焼生成ガスの温度が高くなる。このため、燃料及び酸素のみで完全燃焼した場合には、蒸気ボイラ1の燃焼器を構成する材料の耐熱温度を超えるおそれがある。
【0077】
バイパス配管20を設けることにより、二酸化炭素等を含む燃焼生成ガスが変換ガスに混合されるため、蒸気ボイラ1における燃焼温度を低くすることができ、蒸気ボイラ1の燃焼器を構成する材料の耐熱温度以下で稼働することができる。
【0078】
バイパス配管20のガス流量は、制御装置13がガス流量計8-4、8-5の計測値に基いてガス流量調整弁10-7の開度を調整することにより制御する。また、制御装置13は、圧力計9-3、9-6の計測値に基いてガス流量調整弁10-7の開度を調整してもよい。
【0079】
蒸気ボイラ1の排ガス成分は、H2OおよびCO2であり、二酸化炭素燃料化装置2に供給するH2O及びCO2の流量もバイパスによって減少する。二酸化炭素燃料化装置2は、上記反応式(2)およびCO2の電気分解反応でH2およびCOを生成する必要があり、その原料となるH2O及びCO2が不足する。
【0080】
そこで、燃焼触媒ユニット3と二酸化炭素燃料化装置2との間の燃焼生成ガス流路に水を供給する構成を有することが望ましい。
【0081】
本実施例においては、燃焼生成ガス流路に供給する水として、二酸化炭素燃料化装置2の下流の変換ガスを冷却する冷却器4-1で回収される凝縮水(ドレン)を有効利用するようにしている。回収経路は、図中、太い破線で示している。
【0082】
冷却器4-1で回収した凝縮水は、ドレンタンク21に貯蔵し、給水ポンプ22でガス流量計8-4の下流に供給するようにしている。水流は、水流量計25で計測し、その計測値に基いて制御装置13が水量調整弁24の開度を調整する。
【0083】
また、バイパス配管20の冷却器4-3で回収される凝縮水(ドレン)も有効利用することができる。同様に、冷却器4-3で回収した凝縮水は、ドレンタンク21に貯蔵するようにしている。この場合の回収経路も、図中、太い破線で示している。
【0084】
なお、給水ポンプ22の前後の配管に循環経路23を設けることにより、給水ポンプ22がインバータ方式でなくても流量を調整することができる。
【0085】
ドレンタンク21から二酸化炭素燃料化装置2に供給する水は、蒸気にして供給することが望ましい。外部電力を使って蒸気にすると、エネルギー消費量の低減にならないため、二酸化炭素燃料化装置2からの高温の変換ガス若しくはO2ガス、又はバイパス配管20の高温ガスの熱エネルギーを利用して加熱するようにしている。
【0086】
本実施例においては、熱交換器11-4の符号pは、二酸化炭素燃料化装置2に接続された変換ガス流路の符号pと接続している。熱交換器11-1の符号qは、二酸化炭素燃料化装置2に接続された変換ガス流路の符号qと接続している。
【0087】
また、熱交換器11-5の符号rは、二酸化炭素燃料化装置2に接続されたO2ガス流路の符号rと接続している。熱交換器11-5の符号sは、二酸化炭素燃料化装置2に接続されたO2ガス流路の符号sと接続している。
【0088】
また、熱交換器11-6の符号tは、バイパス配管20の符号tと接続している。熱交換器11-6の符号uは、バイパス配管20の符号uと接続している。
【0089】
言い換えると、ドレンタンク21から二酸化炭素燃料化装置2に供給する水は、熱交換器11-4、11-5、11-6により加熱され、水蒸気となる。
【0090】
このような構成とすることにより、二酸化炭素燃料化装置2の下流の高温の変換ガス及びO2ガスの熱エネルギーを回収し、冷却器4-1、4-3で回収される凝縮水(ドレン)を加熱して水蒸気とするエネルギーとして利用することができる。
【0091】
熱交換器11-4、11-5、11-6は、すべてを設置することが性能面からは望ましいが、これらのうちのいずれか一つ又は二つ設置するものであってもよい。
【0092】
さらに、給水配管15には、熱交換器11-3が設置されている。熱交換器11-3の符号eは、バイパス配管20の符号eと接続している。熱交換器11-3の符号fは、バイパス配管20の符号fと接続している。これにより、熱交換器11-3は、蒸気ボイラ1の排ガスの熱で蒸気ボイラ1の給水を加熱することができる。
【0093】
二酸化炭素燃料化装置2に供給するガスは、水あるいは蒸気の供給によりガス流量が増加するが、実施例1のようにバイパス配管20を設置しない場合よりもガス流量が少なく、二酸化炭素燃料化装置2を更に小型化することができる。
【0094】
実施例1と同様に、蒸気ボイラ1の給水配管15に熱交換器11-1、11-2を設置している。
【0095】
熱交換器11-1の符号aは、二酸化炭素燃料化装置2に接続された変換ガス流路の符号qの下流の符号aと接続している。熱交換器11-1の符号bは、二酸化炭素燃料化装置2に接続された変換ガス流路の符号bと接続している。
【0096】
熱交換器11-2の符号cは、二酸化炭素燃料化装置2に接続されたO2ガス流路の符号sの下流の符号cと接続している。熱交換器11-2の符号dは、二酸化炭素燃料化装置2に接続されたO2ガス流路の符号dと接続している。
【0097】
熱交換器11-1、11-2、11-3は、すべてを設置することが性能面からは望ましいが、これらのうちのいずれか一つ又は二つ設置するものであってもよい。言い換えると、蒸気ボイラ1の給水流路には、給水流路の給水に、変換ガス流路を流れる変換ガス、酸素ガス流路を流れる酸素ガス及び燃焼生成ガスバイパス流路を流れる燃焼生成ガスの熱エネルギーのうち少なくともいずれか一つを与える熱交換器が設置されている。
【0098】
本実施例においては、二酸化炭素燃料化装置2の供給するガス流量を、実施例1のシステムより更に少なくすることができ、実施例1のシステムより二酸化炭素燃料化装置2を更に小型化できる。これにより、二酸化炭素燃料化装置2で消費する電気エネルギーを更に低減することができる。
【符号の説明】
【0099】
1:蒸気ボイラ、2:二酸化炭素燃料化装置、3:燃焼触媒ユニット、4-1、4-2、4-3:冷却器、5-1、5-2:圧縮機、6:変換ガスタンク、7:酸素ガスタンク、8-1、8-2、8-3、8-4、8-5:ガス流量計、9-1、9-2、9-3、9-4、9-5、9-6:圧力計、10-1、10-2、10-3、10-4、10-5、10-6、10-7:ガス流量調整弁、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6:熱交換器、12-1、12-2:ガス分析計、13:制御装置、14:系統電力、15:給水配管、16:蒸気配管、17:燃料ガス配管、18:排ガス配管、19:酸素供給配管、20:バイパス配管、21:ドレンタンク、22:給水ポンプ、23:循環経路、24:水量調整弁、25:水流量計。