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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ピラーガーニッシュ
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B60R13/02 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021136008
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023030726
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直之
(72)【発明者】
【氏名】松本 政子
(72)【発明者】
【氏名】上西 喬
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-119978(JP,A)
【文献】特開2021-109502(JP,A)
【文献】特開2016-52857(JP,A)
【文献】特開2013-67225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドガラスの車幅方向両端に設けられ当該ウインドシールドガラスを支持する柱部材であるフロントピラーに、車室側から取り付けられる、ピラーガーニッシュであって、
露出面の少なくとも一部が前記ウインドシールドガラスに面し、前記フロントピラーの中心部に向かって凹む断面凹形状の凹面部と、
前端部が前記凹面部の後端部に接続されるとともに、前記フロントピラーを囲んで当該フロントピラーの前記中心部に対して外側に張り出す断面凸形状の凸面部と、
を備え、
前記凹面部及び前記凸面部の前記露出面の一方に高明度色が施されるとともに他方に低明度色が施され、
前記凹面部と前記凸面部との境界領域に、前記高明度色と前記低明度色の境界線である彩色境界線が設けられる、
ピラーガーニッシュ。
【請求項2】
請求項1に記載のピラーガーニッシュであって、
前記境界領域は断面円弧状であって、
前記境界領域には、前記彩色境界線として溝が形成される、
ピラーガーニッシュ。
【請求項3】
請求項2に記載のピラーガーニッシュであって、
前記凹面部の前記露出面には前記低明度色が施され、
前記凸面部の前記露出面には前記高明度色が施され、
前記境界領域のうち、車幅方向内側に最も張り出す最側端よりも車両後方に、前記溝が形成される、
ピラーガーニッシュ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のピラーガーニッシュであって、
前記露出面を備える表皮材と前記表皮材が積層される基材とを備え、
前記溝は、前記低明度色が施された前記表皮材と、前記高明度色が施された前記表皮材とが離隔されることにより形成される、
ピラーガーニッシュ。
【請求項5】
請求項1または2に記載のピラーガーニッシュであって、
前記凹面部と前記凸面部とが別部品から構成され、
前記凹面部は、前記低明度色の塗料を含有する樹脂から形成され、
前記凸面部は、前記高明度色の塗料を含有する樹脂から形成される、
ピラーガーニッシュ。
【請求項6】
請求項5に記載のピラーガーニッシュであって、
前記凸面部には、前記凹面部を支持するフランジが形成され、
前記凹面部の、前記フランジと対向する裏面には複数の突起であるボスが複数設けられ、
前記フランジの、前記裏面と対向する表面には、前記ボスが挿入されるボス孔が複数形成され、
前記ボス及び前記ボス孔は、前記凹面部及び前記凸面部の長手方向に沿って、その幅方向位置が前後で異なる千鳥配置となる、
ピラーガーニッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ピラーに取り付けられる内装部材である、ピラーガーニッシュが開示される。
【背景技術】
【0002】
車両には窓柱であるピラーが設けられる。例えばフロントピラーはウインドシールドガラスの車幅方向両端に設けられる。このようなピラーには、内装部材としてピラーガーニッシュが取り付けられる。ピラーガーニッシュはピラーカバーとも呼ばれ、車室側からピラーに取り付けられる。ピラーガーニッシュによって、ピラーの車室内への露出が避けられる。
【0003】
例えば従来のピラーガーニッシュは、ピラーを囲む断面略C字形状に構成され、その一部はウインドシールドガラスに面するような配置となる。そこで例えば特許文献1では、ピラーガーニッシュの車室への露出面のうち、少なくともウインドシールドガラスに臨む面を、光が反射しにくい難反射面としている。例えばこの難反射面には黒系統の色が施される。ウインドシールドガラスに臨む面を難反射面とすることで、当該難反射面の、ウインドシールドガラスへの映り込みが抑制される。
【0004】
一方、ピラーガーニッシュの車室への露出面のうち、難反射面以外の、車室に臨む面については、アイボリー等の白系統の色が施される。車室に臨む面を明色とすることで、車室内を明るい雰囲気に保つことが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-119978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ピラーガーニッシュの形状を、断面略C字形状から複数の面を備える多面体構造として、車室前方の視界を拡げることが考えられる。例えばピラーガーニッシュの一部、特にウインドシールドガラス近傍部分を、ピラー中心部に向かって凹む凹面部とし、車幅方向内側への張り出しを抑制させることで、車室前方の視界が拡張可能となる。
【0007】
本明細書では、多面体構造のピラーガーニッシュの立体感を向上させることで、視覚的に細く見せることの可能な、ピラーガーニッシュが開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示されるピラーガーニッシュは、フロントピラーに車室側から取り付けられる。ここでフロントピラーは、ウインドシールドガラスの車幅方向両端に設けられ、当該ウインドシールドガラスを支持する柱部材である。ピラーガーニッシュは、凹面部及び凸面部を備える。凹面部は、その露出面の少なくとも一部がウインドシールドガラスに面し、フロントピラーの中心部に向かって凹む断面凹形状を備える。凸面部は、前端部が凹面部の後端部に接続されるとともに、フロントピラーを囲んで当該フロントピラーの中心部に対して外側に張り出す断面凸形状を備える。また、凹面部及び凸面部の露出面の一方に高明度色が施されるとともに他方に低明度色が施される。さらに、凹面部と凸面部との境界領域に、高明度色と低明度色の境界線である彩色境界線が設けられる。
【0009】
上記構成によれば、凹面部及び凸面部の露出面が、低明度色と高明度色とに色分けされる。このような配色により凹面部と凸面部の見た目上の明暗差が高められ、特に低明度色が施された面に対して、陰影が濃くなるような視覚的な効果が得られる。これにより、凹面部と凸面部との成す角が実際よりも小さく(きつく)見えるような、立体感を向上させる視覚的効果が得ることができる。
【0010】
また上記構成において、境界領域は断面円弧状であってよい。この場合、境界領域には、彩色境界線として溝が形成される。
【0011】
上記構成によれば、凹面部と凸面部との境界領域をいわゆるR曲面とし、境界領域に所定の幅を持たせたときに、その幅のどこに彩色境界線を定めればよいかが、溝によって示される。カラーマーキング等の塗料指示により彩色境界線が示される場合、凹面部及び凸面部への塗装工程で彩色境界線に塗料が上塗りされ同境界線が消えるおそれがあるが、立体形状である溝によって彩色境界線が示されることで、塗装工程であっても同境界線を認識可能となる。
【0012】
また上記構成において、凹面部の露出面には低明度色が施され、一方で凸面部の露出面には高明度色が施されてよい。この場合、境界領域のうち、車幅方向内側に最も張り出す最側端よりも車両後方に、溝が形成される。
【0013】
上記構成によれば、境界領域の最側端よりも車両後方に高明度色が施されることになり、ウインドシールドガラスへの、高明度色の映り込みを抑制可能となる。
【0014】
また上記構成において、ピラーガーニッシュは、露出面を備える表皮材と当該表皮材が積層される基材とを備えてよい。この場合、溝は、低明度色が施された表皮材と、高明度色が施された表皮材とが離隔されることにより形成される。
【0015】
上記構成によれば、切削等により表皮に配色境界線を形成する工程が省略可能となる。
【0016】
また上記構成において、凹面部と凸面部とが別部品から構成されてよい。この場合、凹面部は、低明度色の塗料を含有する樹脂から形成され、凸面部は、高明度色の塗料を含有する樹脂から形成される。
【0017】
上記構成によれば、高明度面及び低面度面を塗装する工程が省略可能となる。高明度面及び低明度面に、シボ加工等の表面加工が施されている場合には、塗装により表面の凹凸が埋められるおそれがあるが、塗装が避けられることで、高明度面及び低明度面の表面加工を良好に維持可能となる。
【0018】
また上記構成において、凸面部には、凹面部を支持するフランジが形成されてよい。この場合、凹面部の、フランジと対向する裏面には複数の突起であるボスが複数設けられる。また、凸面部のフランジの、上記裏面と対向する表面には、ボスが挿入されるボス孔が複数形成される。さらにボス及びボス孔は、凹面部及び凸面部の長手方向に沿って、その幅方向位置が前後で異なる千鳥配置となる。ボスはボス孔に挿入された後、超音波溶着されることにより固着される。
【0019】
ピラーガーニッシュがカーテンシールドエアバッグを収納している場合に、当該エアバッグの展開時にピラーガーニッシュが変形させられる。このとき、ボス孔を千鳥配置とすることで直線配置の場合と比較して、千鳥配置されたボス孔とボスとの溶着部の破断が連鎖し難くなるとともに、千鳥配置されたボス孔間にできる亀裂の進行が抑制可能となる。その結果、凸面部からの凹面部の離脱が抑制可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本明細書で開示されるピラーガーニッシュによれば、多面体構造の立体感を向上させることで、視覚的に自身を細く見せることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係るピラーガーニッシュが搭載された車室前方の様子を例示する図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】ピラーガーニッシュの溝形状の別例について説明する図である。
図4】ピラーガーニッシュの溝形状の更なる別例について説明する図である。
図5】本実施形態の第1別例に係るピラーガーニッシュが搭載された車室前方の様子を例示する図である。
図6】本実施形態の第3別例に係るピラーガーニッシュが搭載された車室前方の様子を例示する図である。
図7】本実施形態の第3別例に係るピラーガーニッシュを例示する単体斜視図(組立時)である。
図8】本実施形態の第3別例に係るピラーガーニッシュを例示する単体斜視図(分解時)である。
図9図6のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、車室の前方かつ車幅方向外側の構成を例示する斜視図が示される。また、図2には図1のA-A断面図が例示される。なお、図2では、図示を簡略化するために、ドア56のドアガラスやその枠体等の図示が省略される。また、図2では、車両前方向がFR軸で示され、車幅右方向がRH軸で示される。
【0023】
なお、図1及び図2では、車室の右側部分に配置されたフロントピラー10及びその周辺の構造のみが示されているが、車両構造の対称性のため、左側部分も図1及び図2と同様の構造、より正確には線対称の構造を備える。
【0024】
車室前端にはウインドシールドガラス54が車幅方向全幅に亘って設けられる。ウインドシールドガラス54の車幅方向両端には、ウインドシールドガラス54を支持する窓柱部材であるフロントピラー10(図2参照)が設けられる。
【0025】
図1ではピラーガーニッシュ30に覆われているが、フロントピラー10は、車両前方から後方に向かって上方に傾斜するようにして延設される。フロントピラー10は車室の骨格部材としての機能を備え、その下端は図示しないカウルサイドパネルに接続される。またフロントピラー10の上端は、車室の天井部の骨格部材であるルーフレール(図示せず)に接続される。図1では、ルーフレールが車室天井の内装部材であるルーフヘッドライニング52に覆われている。
【0026】
なお、図1の例に代えて、例えば車室の屋根の無いオープンカーでは、フロントピラー10の上端は他の骨格部材には接続されず、独立してウインドシールドガラス54を支持する。
【0027】
図2を参照して、フロントピラー10はインナパネル20及びアウタパネル22が接合された閉断面構造を備えた、中空柱となっている。さらにインナパネル20とアウタパネル22との間に、補強部材であるリーンフォースメント24が設けられる。インナパネル20、アウタパネル22、及びリーンフォースメント24は、例えば高張力鋼等の高剛性材料から構成される。
【0028】
アウタパネル22の車幅方向内側に設けられたフランジ22Aには、接着剤28を介してウインドシールドガラス54の車幅方向外側端部が固定される。また、フロントピラー10の後端部のフランジ10Aには、ウェザーストリップ26が固定される。ウェザーストリップ26は、フロントピラー10とドア56(図1参照)の前端部とに挟まれ両者の間隙をシールする。
【0029】
ピラーガーニッシュ30は、車室側からフロントピラー10に取り付けられ、フロントピラー10を覆う内装部材である。図2の一点鎖線円を参照して、例えばピラーガーニッシュ30は、基材46に表皮材48が積層された多層構造となっている。表皮材48の表面、つまり基材46との当接面の対向面が、車室に露出される露出面となる。
【0030】
基材46はピラーガーニッシュ30の形状を保つための基礎部分であって、例えば樹脂材料を射出成型することで形成される。表皮材48は意匠面である露出面を備える部材であって、例えば樹脂材料からなるシート状の合成皮革から構成される。例えば接着剤を用いて、基材46に表皮材48が固着される。
【0031】
図2に例示されるように、ピラーガーニッシュ30はその断面が略J字形状となっており、フロントピラー10のその前端はウインドシールドガラス54に僅かな間隙を設けて近接する。またピラーガーニッシュ30の車幅方向外側端部はウェザーストリップ26を介してフロントピラー10のフランジ10Aに接続される。ピラーガーニッシュ30は、例えば図示しないクリップ等の締結部材を介して、フロントピラー10に締結される。
【0032】
図2に例示されるように、ピラーガーニッシュ30と、フロントピラー10の車室側の部材であるインナパネル20とは、間隙が設けられる。この間隙には、カーテンシールドエアバッグ60や図示しない配線が配置される。例えば配線は、エンジンコンパートメントに設けられたバッテリから、車室天井に設けられたマップランプやセンターランプ等の電気機器まで延設される。
【0033】
本実施形態に係るピラーガーニッシュ30は、凹面部32及び凸面部34を含む多面体構造となっている。凹面部32は、その露出面の少なくとも一部がウインドシールドガラス54に面し、フロントピラー10の中心部C1に向かって凹む断面凹形状となっている。
【0034】
なお、フロントピラー10の中心部C1は、概念的には中空形状のフロントピラー10の中心部分を指す。より具体的には、図2の断面において、インナパネル20及びアウタパネル22により囲まれる面の中心(図心または幾何中心)が中心部C1となる。
【0035】
例えば凹面部32は、その後端から前端に向かって、車幅方向外側に断面円弧状に延設される。つまり車室からピラーガーニッシュ30を見たときに、手前から奥に掛けて、ウインドシールドガラス54による視界が広がるように、凹面部32が配置される。
【0036】
凹面部32の後端には、凸面部34の前端が接続される。凸面部34は、フロントピラー10を囲んで、フロントピラー10の中心部C1に対して外側に張り出す断面凸形状となっている。例えば凸面部34は、その前端から車両後方かつ車幅方向外側にカーブするようにして延設される。また凸面部34の車幅方向外側端部はウェザーストリップ26に当接される。
【0037】
図2には、凹面部32と凸面部34の、車両前後方向長さL2,L3が示される。この長さL2,L3について、その比L2:L3は、4:6から6:4までの間に定められてよい。つまり車両前後方向の長さL2,L3について、凹面部32と凸面部34とはほぼ同等であってよい。
【0038】
ここで、凹面部32と凸面部34の露出面の一方には高明度色が施され、他方には低明度色が施される。例えば図1の例では、凹面部32の露出面が低明度面42となり、凸面部34の露出面が高明度面44となる。低明度色として例えば黒色が彩色され、低明度色として例えばアイボリーやオフホワイトが彩色される。
【0039】
凹面部32と凸面部34とが低明度面42と高明度面44とに色分けされることで、凹面部32と凸面部34との見かけ上の明暗差が高められる。これにより、特に、低明度面42の陰影が濃くなるような視覚的な効果が得られ、これにより、凹面部32と凸面部34との成す角が実際よりも狭く見えるような、立体感を向上させる視覚的効果が得ることができる。
【0040】
また、ウインドシールドガラス54と面する凹面部32の露出面を低明度面42とすることで、凹面部32からウインドシールドガラス54への映り込みが抑制される。また凸面部34の露出面を、軽量感を感じさせる高明度面44とすることで、乗員に対する視覚上の圧迫感が軽減される。
【0041】
凹面部32と凸面部34との境界領域35の拡大図が、図2左側の一点鎖線円内に例示される。凹面部32の後端32Aに対して凸面部34の前端34Aが角度を付けた状態で接続される。例えば凹面部32の後端32Aと凸面部34の前端34Aとの成す角は鈍角となる。凹面部32の後端32Aと凸面部34の前端34Aとの間の屈曲部分が境界領域35となる。
【0042】
すなわち、凹面部32と凸面部34とは、角状に接続されるのではなく、いわゆるRを付けた状態で接続される。この断面円弧状のR部分が境界領域35となる。例えば製図上でこのR部分が指定されるが、当該指定領域が境界領域35となる。
【0043】
この境界領域35に、低明度面42と高明度面44との境界線である彩色境界線が設けられる。この彩色境界線として、本実施形態に係るピラーガーニッシュ30では、表皮材48に溝36が形成される。
【0044】
例えば塗料等により彩色境界線を描画する場合、低明度面42及び高明度面44への塗装の際に彩色境界線が高明度及び低明度の塗料に上塗りされて消えるおそれがある。本実施形態のように彩色境界線を立体形状である溝36とすることで、塗装工程における彩色境界線の消失が抑制可能となる。
【0045】
溝36の幅は境界領域35の断面円弧長より短くなるように定められる。例えば境界領域35の断面円弧長の20%以下の溝幅となるように、溝36が形成される。例えば溝36の幅は5mm以下に定められる。溝36が形成されることで、断面円弧長分の広がりを持つ境界領域35内のどこを彩色境界線とするかが明確となる。
【0046】
例えば図2の例では、表皮材48の表面(露出面)に工具等により溝36が切削される。また図3の例では、表皮材48を成型するための金型に凸状の突起を設けておき、これを転写した表皮材48に溝36が形成される。
【0047】
さらに図4では、低明度表皮材48Aと高明度表皮材48Bという2種類の表皮材48が予め制作され、その末端同士が離隔されることで溝36が形成される。例えば基材46に低明度表皮材48Aと高明度表皮材48Bを貼着させる際に、溝36と等幅の肉厚を備えるスペーサが配置され、当該スペーサに、低明度表皮材48Aと高明度表皮材48Bの末端が付き当てられる。その後、スペーサを取り除くことで、低明度表皮材48Aと高明度表皮材48Bの間に溝36が形成される。
【0048】
またこの場合、低明度表皮材48Aの(車室への)露出面は、高明度表皮材48Bの露出面と比較して粗面であってよい。低明度表皮材48Aの露出面を粗面とすることでいわゆるグロス値(光沢度)が低減され、ウインドシールドガラス54への映り込みをより一層抑制可能となる。
【0049】
図2に戻り、本実施形態に係るピラーガーニッシュ30では、彩色境界線である溝36が、ピラーガーニッシュ30の最側端31よりも車両後方に形成される。ここで、ピラーガーニッシュ30の最側端31とは、ピラーガーニッシュ30の中で、最も車幅方向内側に張り出す部分を指している。図2で例示されるように、最側端31の接線L1は、車両前後方向軸FRと平行となる。
【0050】
最側端31よりも後方部分に、彩色境界線である溝36が設けられることで、高明度面44は最側端31よりも後方部分に形成される。最側端31の接線L1が車両前後方向軸FRと平行であるところ、それより後方の高明度面44はウインドシールドガラス54から外れた方向、例えば車幅方向内側かつ後方を向くことになる。その結果、ウインドシールドガラス54への、高明度面44への映り込みが抑制される。
【0051】
図2に例示されるように、溝36は境界領域35の後方末端の近傍に形成される。一般的には、境界領域35の中間点に彩色境界線を設けることが考えられる。これに対して本実施形態に係るピラーガーニッシュ30では、ウインドシールドガラス54への高明度面44への映り込みを抑制するために、境界領域35の中間点からオフセットされた位置に、彩色境界線である溝36が形成される。
【0052】
<ピラーガーニッシュの別例1>
図5には、本実施形態の別例に係るピラーガーニッシュ30が例示される。図1の例と比較して、図5のピラーガーニッシュ30では、凹面部32の露出面が高明度面44となり、凸面部34の露出面が低明度面42となる。その他の構造は図1図4と同様の構造であってよい。
【0053】
このような構造であっても、凹面部32と凸面部34とが低明度面42と高明度面44とに色分けされることで、凹面部32と凸面部34との見かけ上の明暗差が高められる。これにより、凹面部32と凸面部34との成す角が実際よりも狭く見えるような、立体感を向上させる視覚的効果が得ることができる。
【0054】
ここで、凹面部32の露出面が高明度面44となることで、当該高明度面44がウインドシールドガラス54に映り込む。しかしながら図2のように、凹面部32が車幅方向外側に引くような配置となっており、しかもその露出面が凹面であることから、ウインドシールドガラス54への映り込みは、当該ガラスの車幅方向外側部分に留まり、運転視野の低減が抑制される。
【0055】
<ピラーガーニッシュの別例2>
図2図4の実施形態では、ピラーガーニッシュ30の構造として、基材46と表皮材48を備える2層構造が示されていたが、本実施形態に係るピラーガーニッシュ30は、基材46の単層構造であってもよい。例えば成形時に基材46の(車室への)露出面のうち、低明度面42が高明度面44に対して粗面にされる。さらに低明度面42と高明度面44との彩色境界線として溝36が形成される。この溝36を目印にして、低明度面42に黒色等の低明度塗料が施され、高明度面44にはアイボリーやホワイト等の高明度塗料が施される。
【0056】
<ピラーガーニッシュの別例3>
図6図9には、本実施形態に係るピラーガーニッシュの更なる別例が示される。この例では、ピラーガーニッシュ30の凹面部32と凸面部34が別部品から構成され、互いに組付けられる。
【0057】
図7には、ピラーガーニッシュ30単体の組立図が例示され、図8には、ピラーガーニッシュ30単体の分解図が例示される。この例では、凸面部34に凹面部32を支持するフランジ34Gが形成されており、凸面部34が本体プレート、凹面部32が別体プレートとして機能する。
【0058】
凹面部32及び凸面部34は、例えばそれぞれ一層の基材からなる単層構造であってよい。そしてその基材は、色の施され方の態様として、凹面部32であれば低明度の塗料を含有する樹脂から構成され、凸面部34であれば高明度の塗料を含有する樹脂から構成される。
【0059】
例えば凹面部32の形成に当たり、黒色等の低明度の塗料が樹脂に練り込まれた状態で、当該樹脂が成形される。これにより凹面部32は、低明度面42を含む全体に低明度色が施される。同様にして、凸面部34の形成に当たり、ホワイトやアイボリー等の高明度色の塗料が樹脂に練り込まれた状態で、当該樹脂が成形される。これにより凸面部34は、高明度面44を含む全体に高明度色が施される。
【0060】
このように、基材となる樹脂に低明度又は高明度の塗料が練り込まれることで、低明度面42及び高明度面44を塗装する工程を省くことが出来る。また、凹面部32及び凸面部34の成形時に、低明度面42及び高明度面44にシボ加工等の表面加工を施した場合に、塗料の吹付によって表面の凹凸が潰れて平滑面となる場合がある。これに対して図6図9の例では、低明度面42及び高明度面44の塗装が避けられるため、シボ加工等の表面加工を維持可能となる。
【0061】
凸面部34のフランジ34Gは、別体プレートである凹面部32を支持する平板部である。フランジ34Gは、高明度面44に対して、当該面から奥側に陥没するようにして形成される。フランジ34Gと高明度面44の境界であって、両者の段差を繋ぐ側壁34Dは、凹面部32の側壁32Cに沿った形状に形成される。
【0062】
また側壁34Dには、その長手方向に沿って、複数のツメ孔34Fが穿孔される。後述されるように、ツメ孔34Fには、凹面部32の側壁32Cに設けられたツメ32Dが挿入される。
【0063】
さらにフランジ34Gの、凹面部32(の裏面)と対向する表面には、複数の台座34Bが設けられる。各台座34Bの頂面にはボス孔34Cが厚さ方向に穿孔される。後述されるように、ボス孔34Cには、凹面部32の、フランジ34Gと対向する裏面に設けられたボス32Fが挿入される。
【0064】
台座34B(及びボス孔34C)は、フランジ34Gの長手方向に沿って複数形成される。ここで、台座34Bは、フランジ34Gの長手方向に沿って、その幅方向位置が前後で異なるような千鳥配置を採る。後述されるように、このような千鳥配置を採ることで、カーテンシールドエアバッグ60(図9参照)の展開時における、凸面部34からの凹面部32の破断分離が抑制される。
【0065】
凹面部32は、平板状の部品であって、フランジ34Gの対向面である裏面には、当該裏面から突出する突起であるボス32Fが複数設けられる。このボス32Fは、凸面部34のボス孔34Cに対応する配置となっており、凹面部32の長手方向に沿って、その幅方向位置が前後で異なる千鳥配置となっている。
【0066】
また、図8で視認可能な側壁32Bとは対向する(図8では隠れ面の)側壁32Cには、その長手方向に沿って複数のツメ32Dが設けられる。このツメ32Dは、凸面部34のツメ孔34Fに対応した位置に設けられる。
【0067】
ピラーガーニッシュ30の組立に当たり、まず凹面部32のツメ32Dが凸面部34のツメ孔34Fに挿入されながら、ボス32Fがボス孔34Cに挿入される。さらに超音波溶着等により台座34Bとボス32Fが溶着される。これにより凹面部32が凸面部34に固定される。
【0068】
図8図9を参照して、凹面部32と凸面部34のとの境界領域35には、凹面部32の側壁32Cの稜線と凸面部34の側壁34Dの稜線との隙間により、彩色境界線である溝36が形成される。
【0069】
図9に例示されるように、ピラーガーニッシュ30はその内部にカーテンシールドエアバッグ60を収納する。カーテンシールドエアバッグ60は展開時に、ピラーガーニッシュ30をフロントピラー10から離脱させながら車室内に展開する。具体的には、ウェザーストリップ26によってシールされている凸面部34の、車幅方向外側端部が、ウェザーストリップのシール部を乗り越えて、車室側へ拡開することによって隙間が形成される。この隙間からカーテンシールドエアバッグ60は車室内に展開される。なおこの際、図示していないテザークリップにより、予め設定されていたストロークだけ、ピラーガーニッシュ30がフロントピラー10から離隔して保持されるので、ピラーガーニッシュ30の車室内への飛散が避けられる。
【0070】
このカーテンシールドエアバッグ60の展開時に、ピラーガーニッシュ30が凹面部32と凸面部34とに分離することを抑制するための構造として、凹面部32にはツメ32D及びボス32Fが設けられ、凸面部34にはボス孔34Cが設けられる。
【0071】
カーテンシールドエアバッグ60の展開時に、ピラーガーニッシュ30はその厚さ方向に付勢される。この付勢方向とは略直交する幅方向に、ツメ32Dが延設され、ピラーガーニッシュ30が厚さ方向に付勢されたときに、当該ツメ32Dがツメ孔34Fに引っ掛かる。これにより、凸面部34からの凹面部32の離脱が抑制される。
【0072】
また、カーテンシールドエアバッグ60の展開に際して、ピラーガーニッシュ30が変形させられる。凸面部34と凹面部32の変形量が異なる場合、凸面部34には、凹面部32との固定点である台座34Bに荷重が加わる。この荷重が過大になると台座34Bが破断する。ボス孔34C及びボス32Fが千鳥配置されることで、直線配置の場合と比較して、千鳥配置されたボス孔34Cとボス32Fとの溶着部の破断が連鎖し難くなるとともに、千鳥配置されたボス孔34C,34C間にできる亀裂の進行が抑制可能となる。その結果、凸面部からの凹面部の離脱が抑制可能となる。
【0073】
例えばボス孔34Cが一直線状にフランジ34G上に配置された場合、一つの台座34Bの破断を起点に直線状に亀裂が入って連鎖的に他の台座34Bが破断するおそれがある。一方、台座34Bを千鳥配置とすることで、隣同士の台座34B、34B間に生じた亀裂の延伸方向と更に隣の台座34Bまでの延伸方向が異なるため、亀裂が連結し難くなる。その結果、フランジ34Gの破断が抑制され、さらに凸面部34からの凹面部32の離脱が抑制される。
【符号の説明】
【0074】
10 フロントピラー、30 ピラーガーニッシュ、31 最側端、32 凹面部、32A ボス、32D ツメ、34 凸面部、34A フランジ、34B 台座、34C ボス孔、34F ツメ孔、35 境界領域、36 溝(彩色境界線)、42 低明度面、44 高明度面、46 基材、48 表皮材、48A 低明度表皮材、48B 高明度表皮材、54 ウインドシールドガラス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9