(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット、エチレン-ビニルエステル系共重合体フィルム及び多層構造
(51)【国際特許分類】
C08F 216/06 20060101AFI20241017BHJP
C08F 8/12 20060101ALI20241017BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241017BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08F216/06
C08F8/12
C08J5/18 CEX
B32B27/28 102
(21)【出願番号】P 2021153171
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2024-04-25
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202110513512.8
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁 志傑
(72)【発明者】
【氏名】蘇 世淵
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/146961(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/050222(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/124232(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/124233(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/124234(WO,A1)
【文献】特開2020-010531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 5/18
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットであって、そのエチレン含有量が、24~35モル%であり、60%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が300NTU未満であり;またはそのエチレン含有量が、36~48モル%であり、80%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が200NTU未満であり、前記ペレット中には、含有量1~850ppmの重合禁止剤が含まれる、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット。
【請求項2】
エチレン含有量が、24~35モル%であり、60%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が0.5~120NTUであり;またはエチレン含有量が、36~48モル%であり、80%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が0.5~120NTUである、請求項1に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット。
【請求項3】
前記重合禁止剤の含有量が、5~650ppmである、請求項1に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット。
【請求項4】
前記重合禁止剤が、共役ポリエン類である、請求項1に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット。
【請求項5】
前記重合禁止剤がソルビン酸、ケイ皮酸、1,3-ヘキサジエンまたはミルセンである、請求項1に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット。
【請求項6】
前記重合禁止剤の添加は、ミキサーで混合され、前記ミキサーがダイナミックミキサーまたはスタティックミキサーである、請求項1に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット
の製造方法。
【請求項7】
前記ミキサーの長さと直径の比が、1.3~65L/Dである、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
10~450ppm範囲のホウ素含有量を有する、請求項1に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット。
【請求項9】
アルカリ金属、潤滑剤、アルカリ土類金属からなる群のいずれか1つまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット。
【請求項10】
前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットのケン化度は、99.5モル%を超える、請求項1に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット。
【請求項11】
請求項1~5及び8~10のいずれか一項に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成される、エチレン-ビニルエステル系共重合体フィルム。
【請求項12】
ISO 14663-2に準拠して温度23℃、相対湿度65%の条件で測定した前記フィルムの酸素透過率は、3.4cm
3×20μm/m
2×24Hr×atm未満である、請求項11に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体フィルム。
【請求項13】
前記フィルム中のゲル数が、1180個/m
2未満である、請求項11に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体フィルム。
【請求項14】
前記フィルム中のゲル数が、600個/m
2未満である、請求項11に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体フィルム。
【請求項15】
(a)
請求項1~5及び8~10のいずれか一項に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成された少なくとも1つの層と、
(b)少なくとも1つのポリマー層と、
(c)少なくとも1つの接着剤層と、
を含む多層構造。
【請求項16】
前記ポリマー層は、低密度ポリエチレン層、ポリエチレン-graft-マレイン酸無水物(polyethylene grafted maleic anhydride)層、ポリプロピレン層およびナイロン層からなる群から選択され、前記接着剤層が結合層(tie layer)である、請求項15に記載の多層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物に関し、特に、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体のケン化物のペレットがメタノール水溶液に溶解された時に特定の濁度を有する。本発明は、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成されたフィルムも開示する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(ethylene vinyl alcohol copolymer、EVOH)樹脂などのエチレン-ビニルエステル系共重合体は、腐敗しやすい物を保存するために積層体に広く応用されている。例えばEVOH樹脂および積層体は、食品包装業、医療機器と消耗品業、製薬業、電子業、農業用化学品工業でよく使用されている。EVOH樹脂は、通常、酸素バリア層として機能するため、ユニークな層として積層板に組み込まれる。
【0003】
現在、EVOH樹脂から形成された従来のEVOHペレット/顆粒内には、大量の凝集体を含有することにより、その後EVOHペレットから形成されたフィルムに大量のゲルが生じて、品質不良の問題を発生していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、EVOH製造工程における重合禁止剤の不均一な混合または添加量の不足、EVOHペレット内の大量の凝集体の含有、EVOHフィルムのゲル数および/またはEVOHフィルムの高い酸素透過度(本明細書において「酸素透過率」とも呼ばれる)等の原因により、従来のEVOHフィルムの品質不良の問題を引き起こすことを見出した。
【0005】
これ故、ゲル(gel)の量が少なく、酸素透過率(OTR)が低いエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットを提供できるフィルムに対して継続需要があることに着目した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットに関し、そのエチレン含有量が24~35モル%であり、60%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が300NTU未満であり;またはそのエチレン含有量が36~48モル%であり、80%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が200NTU未満である。場合によっては、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットのエチレン含有量は、24~35モル%であり、60%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が0.5~120NTUであり;またはそのエチレン含有量は、36~48モル%であり、80%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が0.5~120NTUである。前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、フィルムまたは多層構造の調製に使用されることができる。
【0007】
追加または代替として、前記ペレット中には、含有量1~850ppmの重合禁止剤が含まれる。好ましい実施形態において、前記ペレット中には、含有量5~650ppmの重合禁止剤が含まれる。前記重合禁止剤は、共役ポリエン類である。前記重合禁止剤は、ソルビン酸、ケイ皮酸、1,3-ヘキサジエンまたはミルセンであり得る。少なくとも1つの実施形態によれば、前記重合禁止剤の添加は、ミキサーで混合され、前記ミキサーがダイナミックミキサーまたはスタティックミキサーである。いくつかの実施形態において、前記ミキサーの長さと半径の比は、1.3~65L/Dである。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、エチレン含有量およびケン化度を有し、前記エチレン含有量が約24~約48モル%であり、前記ケン化度が99.5モル%以上である。
【0009】
なお、少なくとも1つの実施形態によれば、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、10~450ppmのホウ素含有量を有し得る。場合によっては、ホウ素含有量が10~450ppm以外に、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットが、アルカリ金属、潤滑剤、アルカリ土類金属、その塩および/またはそれらの混合物も含み得る。
【0010】
本発明の別の態様において、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成されたフィルムを提供する。いくつかの好ましい実施形態において、ISO 14663-2に準拠して温度23℃、相対湿度65%の条件で測定した前記フィルムの酸素透過率(OTR)は、3.4cm3×20μm/m2×24Hr×atm未満である。
【0011】
追加または代替として、本発明は、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成されたフィルムを提供し、前記フィルム中のゲル数が1180個/m2未満である。場合によっては、前記フィルム中のゲル数は、600個/m2未満である。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、多層構造は、(a)前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成された少なくとも1つの層と、(b)少なくとも1つのポリマー層と、(c)少なくとも1つの接着剤層と、を含む。前記ポリマー層は、例えば低密度ポリエチレン層、ポリエチレン-graft-マレイン酸無水物(polyethylene grafted maleic anhydride)層、ポリプロピレン層およびナイロン層からなる群から選択される。前記接着剤層は、結合層(tie layer)である。
【0013】
エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物の製造過程で、重合時大量の開始剤を添加して反応を起こし、重合して排出する時に大量の開始剤を含有することが予期せず発見し、重合禁止剤を加えて反応を停止させる。この時、重合禁止剤を十分に添加し、重合して排出する時に重合禁止剤と均一に混合すれば、反応を停止でき、かつ凝集体が生じさせず、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物の成膜後ゲルが発生しない。重合禁止剤の添加が不足または重合して排出する時重合禁止剤と均一に混合しなかった場合、反応を停止できず、反応し続けることで凝集体が生じ、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物の成膜後にゲルが生じる。これについて、本発明者は、重合条件および重合禁止剤の添加条件がどのように変えても、メタノール水に溶解されたエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットの濁度を一定の範囲内に抑えれば、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット内の凝集体の含有量が低いことを示し、成膜後に生じるゲル数の減少および比較的低い酸素透過率を実現できると考えている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、具体的にエチレン-ビニルアルコール共重合体(ethylene vinyl alcohol copolymer、EVOH)などのエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物を提供し、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物は顆粒/ペレット、フィルム、繊維等の形態となることができる。本明細書に記載のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物は、ペレット化されて1つまたは複数のペレット形態および/または形状を形成する。本発明の明細書全文においてペレット化されて1つまたは複数のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット形態を形成するエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物を描写したが、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物は、ビーズ、キューブ、チップ、削りくず等の形態に加工することができる。
【0015】
場合によっては、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物は、特定の濁度を有するペレット形態であり、特にエチレン含有量が24~35モル%であり、60%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が300NTU未満であり、またはエチレン含有量が36~48モル%であり、前記ペレット溶於80%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度が200NTU未満である。前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、フィルムの調製に使用することができる。
【0016】
前記ペレットのエチレン含有量は、24~35モル%であり、60%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度は例えば300NTU未満、275NTU未満、250NTU未満、225NTU未満、200NTU未満、175NTU未満、150NTU未満、125NTU未満、100NTU未満、75NTU未満、50NTU未満、25NTU未満、20NTU未満、15NTU未満、10NTU未満、または1NTU未満である。前記ペレットのエチレン含有量は、36~48モル%であり、80%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度は200NTUであり、例えば200NTU未満、175NTU未満、150NTU未満、125NTU未満、100NTU未満、75NTU未満、50NTU未満、25NTU未満、20NTU未満、15NTU未満、10NTU未満、または1NTU未満である。好ましい実施形態において、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットのエチレン含有量は、24~35モル%であり、60%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度は0.5~120NTUであり、例えば0.5~120NTU、0.5~100NTU、0.5~80NTU、0.5~60NTU、0.5~40NTU、0.5~20NTU、1~120NTU、1~100NTU、1~80NTU、1~60NTU、1~40NTU、1~20NTU、5~120NTU、5~100NTU、5~80NTU、5~60NTU、5~40NTU、5~20NTU、10~120NTU、10~100NTU、10~80NTU、10~60NTU、10~40NTU、10~20NTU、25~120NTU、25~100NTU、25~80NTU、25~60NTU、25~40NTU、50~120NTU、50~100NTUまたは50~80NTUであり;またはエチレン含有量は、36~48モル%であり、80%(w/w)メタノール水溶液に溶解された前記ペレットの濁度は0.5~120NTUであり、例えば0.5~120NTU、0.5~100NTU、0.5~80NTU、0.5~60NTU、0.5~40NTU、0.5~20NTU、1~120NTU、1~100NTU、1~80NTU、1~60NTU、1~40NTU、1~20NTU、5~120NTU、5~100NTU、5~80NTU、5~60NTU、5~40NTU、5~20NTU、10~120NTU、10~100NTU、10~80NTU、10~60NTU、10~40NTU、10~20NTU、25~120NTU、25~100NTU、25~80NTU、25~60NTU、25~40NTU、50~120NTU、50~100NTUまたは50~80NTUである。
【0017】
EVOHペレットに含まれる凝集体の原因は、低エチレン含有量のEVOH、高重合度のEVOH、高エチレン含有量のEVOHまたは脱水架橋のEVOHなどの複雑な要因によって影響を受ける可能性がある。特定の理論に拘束されないが、本発明者は、メタノール水に溶解されたエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットの濁度値が所望の範囲内である限り、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット中の凝集体の含有量を低く抑えることで、成膜後に生じたゲル数の減少および低い酸素透過率を実現できると考えている。
【0018】
前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、エチレン含有量を有する。例えば前記EVOHの前記エチレン含有量は、約24~約48モル%、約20~約50モル%、約25~約45モル%、約28~約42モル%または約30~約40モル%であり得る。前記エチレン含有量は、例えば24モル%、25モル%、26モル%、27モル%、28モル%、29モル%、30モル%、31モル%、32モル%、33モル%、34モル%、35モル%または前述の値のうちのいずれか2つの間であり;または例えば35モル%、36モル%、37モル%、38モル%、39モル%、40モル%、41モル%、42モル%、43モル%、44モル%、45モル%、46モル%、47モル%、48モル%または前述の値のうちのいずれか2つの間である。
【0019】
追加または代替として、前記EVOH樹脂組成物100のケン化度は、90モル%以上、好ましくは95モル%以上、好ましくは97モル%以上、好ましくは99.5モル%以上であり得る。
【0020】
前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット中には、重合禁止剤が含まれ、その含有量は1~850ppmであり、例えば1~850ppm、1~800ppm、1~750ppm、1~700ppm、1~650ppm、1~600ppm、1~550ppm、1~500ppm、1~450ppm、1~400ppm、1~350ppm、1~300ppm、1~250ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~50ppm、5~850ppm、5~800ppm、5~750ppm、5~700ppm、5~650ppm、5~600ppm、5~550ppm、5~500ppm、5~450ppm、5~400ppm、5~350ppm、5~300ppm、5~250ppm、5~200ppm、5~150ppm、5~100ppm、5~50ppm、50~850ppm、50~800ppm、50~750ppm、50~700ppm、50~650ppm、50~600ppm、50~550ppm、50~500ppm、50~450ppm、50~400ppm、50~350ppm、50~300ppm、50~250ppm、50~200ppm、50~150ppm、50~100ppm、10~850ppm、10~800ppm、10~750ppm、10~700ppm、10~650ppm、10~600ppm、10~550ppm、10~500ppm、10~450ppm、10~400ppm、10~350ppm、10~300ppm、10~250ppm、10~200ppm、10~150ppm、10~100ppm、10~50ppm、100~850ppm、100~800ppm、100~750ppm、100~700ppm、100~650ppm、100~600ppm、100~550ppm、100~500ppm、100~450ppm、100~400ppm、100~350ppm、100~300ppm、100~250ppm、100~200ppm、300~850ppm、300~800ppm、300~750ppm、300~700ppm、300~650ppmまたは300~600ppmである。好ましい実施形態において、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、含有量5~650ppmの重合禁止剤を含む。前記重合禁止剤は、共役ポリエン類であり、例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-tert-ブチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-エチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、1-メトキシ-1,3-ブタジエン、2-メトキシ-1,3-ブタジエン、1-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-ニトロ-1,3-ブタジエン、クロロプレン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、1-ブロモ-1,3-ブタジエン、イソプレン、トロポン(tropone)、オシメン(ocimene)、フルベン(fulvene)、ferrandrene、ミルセン(myrcene)、ファルネセン(farnesene)、フェランドレン(phellandrene)、センブレン(cembrene)、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩等のソルビン酸類、アビエチン酸(abietic acid)等の2つの炭素-炭素二重結合の共役構造からなる共役ジエンであり;1,3,5-ヘキサトリエン、2,4,6-オクタトリエン-1-カルボン酸、エレオステアリン酸(eleostearic acid)、桐油、コレカルシフェロール等の3つの炭素-炭素二重結合の共役構造からなる共役トリエンであり;前記共役ポリエンは、2種類以上の組み合わせで使用することもできる。好ましい共役ポリエンは、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩等のソルビン酸類、ケイ皮酸、1,3-ヘキサジエンまたはミルセンである。
【0021】
前記重合禁止剤の添加は、ミキサーで混合され、前記ミキサーがダイナミックミキサー、一般的なスタティックミキサーまたはNoritakeスタティックミキサーである。より良い混合効果を奏するため、前記ミキサーは、特定の長さと直径の比を有し、例えば1~70L/D、1~65L/D、1~60L/D、1~50L/D、1~40L/D、1~30L/D、1~20L/D、1~10L/D、1.3~70L/D、1.3~65L/D、1.3~60L/D、1.3~50L/D、1.3~40L/D、1.3~30L/D、1.3~20L/D、1.3~10L/D、5~70L/D、5~65L/D、5~60L/D、5~50L/D、5~40L/D、5~30L/D、5~20L/D、5~10L/D、20~70L/D、20~65L/D、20~60L/D、20~50L/D、20~40L/D、40~70L/D、40~65L/D、40~60L/D、40~50L/Dまたは60~70L/Dである。
【0022】
前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、場合によっては、ホウ素化合物および/またはホウ酸および/またはケイ皮酸および/またはアルカリ金属および/または共役ポリエンおよび/または潤滑剤および/またはアルカリ土類金属を含み得る。上記物質は、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットにより良い特性を与えることができる。上記物質は、通常エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット中に存在する一般的な物質であるため、より優れた特性を持っている。上記共役ポリエン構造を有する化合物の含有量がエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットの単位重量当たり1~30000ppmである場合、加熱後の着色をさらに抑制でき、熱安定性がより優れている。エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットの単位重量当たりの上記アルカリ金属を有する化合物またはアルカリ土類金属を有する化合物含有量が金属換算で1~1000ppmの場合、長時間運転の成形性に優れている可能性がある。また、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットの単位重量当たりの上記潤滑剤含有量が1~300ppmであれば、加工性加工性に優れている可能性がある。
【0023】
追加または代替として、本発明の他の態様によれば、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、10~450ppmのホウ素含有量を有し得る。特定の理論に拘束されるものではなく、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットにホウ素化合物添加してホウ素含有量を10~450ppmにし、スクリュー押出機による押出過程中の付着を低減または排除し、さらに膜厚の均一性および可撓性を改善すると考えられている。場合によっては、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットの総重量に対する、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットのホウ素含有量は、10~450ppm、10~約400ppm、10~約350ppm、10~約300ppm、10~約275ppm、10~約250ppm、10~約225ppm、10~約200ppm、10~約175ppm、約20~450ppm、約20~約400ppm、約20~約350ppm、約20~約300ppm、約20~約275ppm、約20~約250ppm、約20~約225ppm、約20~約200ppm、約20~約175ppm、約60~450ppm、約60~約400ppm、約60~約350ppm、約60~約300ppm、約60~約275ppm、約60~約250ppm、約60~約225ppm、約60~約200ppm、約60~約175ppm、約100~450ppm、約100~約400ppm、約100~約350ppm、約100~約300ppm、約100~約275ppm、約100~約250ppm、約100~約225ppm、約100~約200ppm、約100~約175ppm、約140~450ppm、約140~約400ppm、約140~約350ppm、約140~約300ppm、約140~約275ppm、約140~約250ppm、約140~約225ppm、約140~約200ppm、約180~約450ppm、約180~約400ppm、約180~約350ppm、約180~約300ppm、約180~約275ppm、約180~約250ppm、約180~約225ppm、約220~450ppm、約220~約400ppm、約220~約350ppm、約220~約300ppm、約220~約275ppmであり得る。
【0024】
場合によっては、前記ホウ素化合物は、ホウ酸またはその金属塩を含み得る。金属塩としては、ホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(例えば四ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛)、ホウ酸アルミニウムカリウム、ホウ酸アンモニウム(例えばメタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム)、ホウ酸カドミウム(例えばオルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム)、ホウ酸カリウム(例えばメタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム)、ホウ酸銀(例えばメタホウ酸銀、四ホウ酸銀)、ホウ酸銅(例えばホウ酸銅(II)メタホウ酸銅、四ホウ酸銅)、ホウ酸ナトリウム(例えばメタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム)、ホウ酸鉛(例えばメタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛)、ホウ酸ニッケル(例えば正ホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル)、ホウ酸バリウム(例えば正ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(例えばオルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム)、ホウ酸マンガン(例えばホウ酸マンガン(I)、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン)、ホウ酸リチウム(例えばメタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム)、その塩またはそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。ホウ砂、カリナイト、インヨー石、小藤石、アスカライト/遂安石(suanite)およびザイベリー石(szaibelyite)などのホウ酸塩鉱物を含み得る。ここで、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸ナトリウム(例えばメタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、および八ホウ酸ナトリウム)が好ましく使用される。
【0025】
別の態様において、本発明は、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成されたフィルムを提供する。エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成されたフィルムを調整する適切な方法および設備は、当業者が容易に理解する方法および設備を含み得る。前記フィルムは、高く均一なガスバリア特性を有することが好ましい。前記フィルムのガスバリア特性は、前記フィルムの酸素透過率(oxygen transmission rate、OTR)を測定することによって評価できる。前記フィルムのガスバリア特性は、OX-TRAN Model 2/21酸素透過率試験機(mocon社製)で、ISO 14663-2に定められた方法で測定することができる。いくつかの実施形態において、ISO 14663-2に準拠して温度23℃、相対湿度65%の条件で測定した前記フィルムの酸素透過率は、3.4未満であり、例えば3.4未満、3未満、2.8未満、2.6未満、2.4未満、2.2未満、2未満、1.8未満、1.6未満、1.4未満、1.2未満、1未満、0.8未満、0.6未満、または0.4未満である。好ましい実施形態において、ISO 14663-2に準拠して温度23℃、相対湿度65%の条件で測定した前記フィルムの酸素透過率は、0.05~3であり、例えば0.05~3、0.05~2.7、0.05~2.5、0.05~2.3、0.05~2.1、0.05~1.9、0.05~1.7、0.05~1.5、0.05~1.3、0.05~1.1、0.05~0.9、0.05~0.7、0.05~0.5、0.1~3、0.1~2.7、0.1~2.5、0.1~2.3、0.1~2.1、0.1~1.9、0.1~1.7、0.1~1.5、0.1~1.3、0.1~1.1、0.1~0.9、0.1~0.7、0.1~0.5、0.3~3、0.3~2.7、0.3~2.5、0.3~2.3、0.3~2.1、0.3~1.9、0.3~1.7、0.3~1.5、0.3~1.3、0.3~1.1、0.3~0.9、0.3~0.7、0.3~0.5、0.5~3、0.5~2.7、0.5~2.5、0.5~2.3、0.5~2.1、0.5~1.9、0.5~1.7、0.5~1.5、0.5~1.3、0.5~1.1、0.5~0.9、1~3、1~2.7、1~2.5、1~2.3、1~2.1、1~1.9、1~1.7、1~1.5、1.2~3、1.2~2.7、1.2~2.5、1.2~2.3、1.2~2.1、1.2~1.9、1.2~1.7または2~3である。
【0026】
別の態様において、本発明は、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成されたフィルムを提供する。いくつかの実施形態において、前記フィルム中のゲル数は、1180個/m2未満であり、例えば1180個/m2未満、1000個/m2未満、900個/m2未満、800個/m2未満。700個/m2未満、600個/m2未満、700個/m2未満、500個/m2未満、400個/m2未満、300個/m2未満、200個/m2未満、または100個/m2未満である。好ましくは、前記フィルム中のゲル数は、600個/m2未満、550個/m2未満、500個/m2未満、450個/m2未満、400個/m2未満、350個/m2未満、300個/m2未満、250個/m2未満、200個/m2未満、150個/m2未満、または100個/m2未満である。
【0027】
別の態様において、本発明は、本発明のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットから形成された少なくとも1つの層と、少なくとも1つのポリマー層と、少なくとも1つの接着剤層(adhesive layer)と、を備えた多層構造を提供する。前記ポリマー層は、低密度ポリエチレン層、ポリエチレン-graft-マレイン酸無水物層、ポリプロピレン層およびナイロン層およびそれらの組み合わせから選択されることができる。前記接着剤層は、例えばARKEMA社製のARKEMA OREVAC 18729の結合層(tie layer)である。
【実施例】
【0028】
以下の本発明の各態様における非限定的な実施例を参照しつつ本発明の各態様および奏する効果を説明する。
【0029】
実施例1
以下、EVOH樹脂組成物から形成されたEVOH顆粒の非限定的な製造方法を提供する。以下に開示される方法に似っている方法に従って、7つの非限定例のEVOH樹脂組成物(実施例EVOH1~7)および8つの比較例のEVOH樹脂組成物(比較例EVOH1~8)を調製した。しかしながら、実施例EVOH1~7および比較例EVOH1~8を調製する具体的方法は、通常1つまたは複数の態様で以下に開示される方法と異なる。
【0030】
エチレン、酢酸ビニル(Vinyl acetate、VAM)、メタノールおよび開始剤を反応器に加えた後、特定の条件下で重合を行い、重合時大量の開始剤を添加して反応を起こし、重合して排出する時大量の開始剤が含有するため、重合禁止剤を添加して反応を停止させる。重合後エチレン-酢酸ビニル共重合体(ethylene-vinyl acetate copolymer、以下「EVAC」という。)溶液と重合禁止剤を特別なミキサーで混合し、混合後溶液について残留モノマーストリッピング、アルカリ化、造粒・乾燥などの工程を行なってEVOH顆粒/ペレットを製造した。
【0031】
具体的には、EVOHポリマーを調製するため、特定のエチレン含有量を有するエチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化し、ケン化度は99.5%であった。続いて、メタノールと水(70:30の比率)を含有する溶液にEVOHを溶解した。前記溶液のEVOH固形分は41重量%であり、前記溶液を60℃に置いた。
【0032】
アンダーウォーターカット(underwater pelletization)を介して前記メタノール、水およびEVOHの溶液をペレット化させた。具体的には、流速120L/minで前記メタノール、水およびEVOHの溶液を供給管にポンプで圧送してから直径2.8mmの入口管に送り込み、1500rpmの回転刃で切断した。5℃の水を加えてEVOHペレットを冷却した。その後、前記EVOHペレットを遠心分離することでEVOH粒子を分離した。分離されたEVOH粒子を水洗した後、3段階の異なる乾燥機(表1)で乾燥させてEVOHペレットを得た。
【0033】
実施例2
下記方法で実施例1~7のEVOHペレットをそれぞれ使用してフィルムを形成した。実施例1~7のEVOHペレットおよび比較例1~8のEVOHペレットを単層Tダイキャストフィルム押出機(光学制御システムMEV4)に送ってフィルムを製造した。実施例1~7のEVOHペレットおよび比較例1~8のEVOHペレットから形成されたフィルムの厚さは、各々20μmであった。押出機の温度を220℃に設定し、型(すなわち、Tダイ)の温度を230℃に設定した。スクリューの回転数は7rpm(rotations/minutes)であった。
【0034】
実施例3
実施例1~7のEVOHペレットおよび比較例1~8のEVOHペレットを評価してこれらのEVOHペレットおよびEVOHペレットから形成されたフィルムの特性を判断した。上記のように、上記実施例1に記載の方法に似っている方法で実施例1~7のEVOHペレットおよび比較例1~8のEVOHペレットを製造した。ただし、比較例1~8のEVOHペレットを製造する方法は、以下の点において製造されたEVOHペレットと異なる。
●重合反応の実験変更項目:重合温度、重合圧力、VAM/メタノール比。
●重合禁止剤添加の実験変更項目:重合禁止剤と開始剤の添加率、重合禁止剤の種類。
●重合して排出すると重合禁止剤の混合の実験変更項目:ミキサータイプ、ミキサーの長さ。
●残留モノマーストリッピング、アルカリ化、水を加えた後ろ過の実験的変更項目:ろ過するかどうか。
【0035】
実験の製造方法変数を次の表1に整理した。
【0036】
【0037】
メタノール水溶液中のEVOHペレットの濁度値をさらに評価した。実施例2に記載の方法に似ている方法で、各々実施例1~7のEVOHペレットおよび比較例1~8のEVOHペレットからフィルムを形成し、フィルムについてゲル数の評価および酸素透過率の分析を行った。
【0038】
表2は、実施例1~4EVOHペレットおよび比較例1~4EVOHペレットを示し、表3は実施例5~7EVOHペレットおよび比較例5~8EVOHペレットの重合条件、重合禁止剤の添加条件およびいくつかの属性の概要(すなわち、EVOHの重合禁止剤含有量、メタノール水における濁度)、および実施例1~7のEVOHペレットおよび比較例1~8のEVOHペレットから形成されたフィルムのゲル発生状況、酸素透過率を示す。
【0039】
【0040】
【0041】
実施例1~7のEVOHペレットおよび比較例1~8のEVOHペレットの濁度を評価するため、約2.5gのEVOHペレット試料を250mL三角フラスコに入れ、84gのメタノール水溶液(50.3gのメタノールに33.6gの水を加える)を調製し、調製したメタノール水溶液を250mL三角フラスコに加え、三角フラスコ内の溶媒と試料を溶解(ホットプレートの温度450℃)するまで2時間加熱還流させ、溶解後ホットプレートの温度を60℃に下げた後溶液をISO 7027に定めている方法で測定し、測定機器がTurbidimeter HI98703であった。前述の方法で、EVOHペレットをメタノール/水に加えた後、EVOH顆粒内の少量な凝集体は、メタノール/水に溶けないため、溶液に白濁現象の現象が起き、濁度計で凝集体含有量の多寡を分析できる。
【0042】
実施例1~7のEVOHペレットおよび比較例1~8のEVOHペレットから形成されたフィルムのゲル発生状況を評価し、EVOHペレットを加工して単層フィルムとして製造した後、FSA-100で単層フィルムのGel数を分析し、主にサイズが100μm以下のゲルを分析した。
【0043】
実施例1~7のEVOHペレットおよび比較例1~8のEVOHペレットから形成されたフィルムの酸素透過率(OTR)を評価し、EVOHペレットを加工して単層フィルムとして製造した後、OTRでガスバリア特性を測定し、測定方法はISO 14663-2に準拠して温度23℃/65%RHの測定条件で測定し、測定機器がMocon社製、単位cm3×20μm/m2×24Hr×atmのOXTRAN2/21であった。
【0044】
結果は、実施例1~4のEVOHペレットが24%~35%のエチレン含有量を有し、実施例1~4のEVOHペレットから形成されたフィルム中のゲル数(75~432個/m2)がいずれも比較例1~4のEVOHペレットから形成されたフィルム中のゲル数(1342~2464個/m2)よりもはるかに少ないことを示している。重合条件および重合禁止剤の添加条件をどのように変えても、エチレン含有量24%~35%のEVOHペレットは60%のメタノール水比率において、メタノール水の濁度を300NTU未満に抑えれば、所望の効果を奏することができることを示した。
【0045】
実施例5~7のEVOHペレットが36%~48%のエチレン含有量を有し、実施例5~7のEVOHペレットから形成されたフィルム中のゲル数(110~240個/m2)がいずれも比較例5~8のEVOHペレットから形成されたフィルム中のゲル数(1180~1962個/m2)よりもはるかに少なかった。重合条件および重合禁止剤の添加条件をどのように変えても、エチレン含有量36%~48%のEVOHペレットは80%のメタノール水比率において、メタノール水の濁度を200NTU未満に抑えれば、効果を奏することができることを示した。
【0046】
実施例の結果から分かるように、凝集体発生の原因は非常に複雑であり、ミキサータイプ、ミキサーの長さ、重合禁止剤の添加量、重合禁止剤の種類、反応温度、反応圧力、メタノール/VAM比などの製造方法の変数の影響を受ける可能性があり、生じた凝集体のサイズが大きく異なり、フィルタを使用しても凝集体を効果的に除去することができなかった。比較例3、7、8のEVOHペレットから分かるように、EVOHペレットの製造過程でメッシュ20または100μmのフィルタでろ過しても、比較例3、7、8のEVOHペレットから形成されたフィルム中のゲル数はやはり非常に高く、本発明の所望範囲を超えている。特定の理論に拘束されないが、本発明は、製造されたEVOHペレットのメタノール水に溶解した濁度を特定範囲内に抑えると、重合禁止剤とプリマ―の混合が良好なEVOHペレットを示し、このEVOHペレット内の凝集体の含有量が低く、その後製膜後のゲル数が少ないことを見出した。
【0047】
なお、実施例1~7のEVOHペレットから形成されたフィルムの酸素透過率は、約0.1~2.4cm3×20μm/m2×24Hr×atmであり、比較例1~8のEVOHペレットから形成されたフィルムの酸素透過率が約3.4~10.1cm3×20μm/m2×24Hr×atmであった。本発明の試験結果、製造されたEVOHペレットのメタノール水に溶解した濁度を特定範囲内に抑えると、前記EVOHペレットから形成されたフィルムの酸素透過率を低下させることができる。表2および表3に示すように、メタノール水に溶解された比較例1~8のEVOHペレットの濁度は、本明細書に記載の所望範囲を超え、試験結果によると、比較例1~8のEVOHペレットから形成された薄フィルムがいずれも高い酸素透過率(約3.4~10.1cm3×20μm/m2×24Hr×atm)を有した。酸素透過率の低いEVOHフィルムは、酸素バリア性の高い各種フィルム、シートおよび包装容器の製造に応用することができる。
【0048】
上記をまとめると、本発明のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、メタノール水中に特定の濁度値を有し、特にエチレン含有量は24~35モル%であり、60%(w/w)メタノール水溶液に溶解されたペレットの濁度が300NTU未満であり;またはエチレン含有量は、36~48モル%であり、80%(w/w)メタノール水溶液に溶解されたペレットの濁度が200NTU未満である。エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物の製造過程で重合禁止剤の添加が不足した場合、成膜後大量の凝集体が生じる。これについて、本発明者は、重合条件および重合禁止剤の添加条件がどのように変えても、メタノール水に溶解されたエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットの濁度を所望範囲内にあれば、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット内の凝集体の含有量が低いことを確保でき、成膜後に生じるゲル数の減少および比較的低い酸素透過率を実現できることを見出した。
【0049】
本明細書において提供されるすべての範囲は、所定の範囲内の各特定の範囲、および所定の範囲間のサブ範囲の組み合わせを含むことが意図されている。また、本明細書に明確に記載されるあらゆる範囲は、特に明示されていない限り、その終点を含む。したがって、1~5の範囲には、特に1、2、3、4、および5と、2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などのサブ範囲が含まれる。
【0050】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれ、ありとあらゆる目的のために、各個々の刊行物または特許出願は、参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されている。本明細書と、参照により本明細書に組み込まれている刊行物または特許出願との間に矛盾がある場合、本明細書が優先される。
【0051】
本明細書で使用される「備える」、「有する」および「含む」という用語は、オープンエンドで非限定的な意味を有する。「1つの」および「この」という用語は、文脈上明らかに単数形であることが示されない限り、複数形も同様に含むことを意図する場合がある。「1つ以上」という用語は、「少なくとも1つ」を意味し、したがって、単一の特徴または混合物/組み合わせを含むことができる。
【0052】
明細書記載の実施例以外で、または特に明記されていない限り、成分の量および/または反応条件を表すすべての数値は、すべての場合に「約」という用語で修飾できる。これは、示された数値の±5%以内を意味する。本明細書で使用する場合、「基本的に含まない」または「実質的に含まない」という用語は、特定の特徴が約2%未満であることを意味する。本明細書に明確に記載されているすべての要素または特徴は、特許請求の範囲から否定的に除外することができる。