(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
B23D 59/00 20060101AFI20241017BHJP
B23D 57/00 20060101ALI20241017BHJP
B23D 61/18 20060101ALI20241017BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20241017BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20241017BHJP
B26D 1/46 20060101ALI20241017BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B23D59/00
B23D57/00
B23D61/18
E04G23/08 D
B28D7/02
B26D1/46 501D
G21F9/30 535F
(21)【出願番号】P 2021168647
(22)【出願日】2021-10-14
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000103035
【氏名又は名称】MHIさがみハイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】神尾 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 修
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】古野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】安河内 淳一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】川田 純也
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 友昭
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 信之
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 有浩
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-042982(JP,A)
【文献】特開2018-144112(JP,A)
【文献】特開2013-010297(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1531173(KR,B1)
【文献】特開平09-109138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0061029(US,A1)
【文献】特開昭56-027724(JP,A)
【文献】欧州特許第01024314(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 57/00
B23D 59/00
B23D 61/12
B23D 61/18
B24B 27/06
B26D 1/46、547
B28D 1/08
G21F 9/30
G21C 19/02
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプーリを保持するフレームと、
前記プーリ同士の間を走行するワイヤーソー工具と、
前記プーリ同士の間を切断対象物が横切るように前記フレームを前記切断対象物に対して相対的に移動させるフレーム駆動部と、
前記切断対象物に対する前記フレームの移動に伴って前記切断対象物の表面上に被さるように移動し前記ワイヤーソー工具で前記切断対象物に形成される切断溝を覆う養生シート部と、を備える、切断装置。
【請求項2】
前記養生シート部は、
前記フレームの所定の部位同士を繋ぎ両持ちで垂れ下がるように設けられた可撓性の部材からなり、前記切断対象物に対するフレームの移動方向に平行且つ前記ワイヤーソー工具の軌道に沿った仮想平面に沿って存在する第1シート部を備え、
前記第1シート部は、前記切断対象物に対する前記フレームの移動に伴って前記切断対象物の前記表面に接触し当該表面に沿って変形する、請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記養生シート部は、
一端が前記フレームの所定の部位に固定され他端が前記切断対象物に対し位置固定された所定の懸垂ガイド部に引っ掛けられる可撓性の部材からなり、前記切断対象物に対するフレームの移動方向に平行且つ前記ワイヤーソー工具の軌道に沿った仮想平面に沿って存在する第2シート部を備え、
前記第2シート部は、前記切断対象物に対する前記フレームの移動に伴って前記切断対象物の鉛直な表面に被さるように前記懸垂ガイド部から自重で垂れ下がる、請求項1又は2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記切断対象物の近傍に設けられ前記切断対象物の表面に沿って
位置するレール上を移動可能であり、前記ワイヤーソー工具の近傍に移動する集塵ダクトを更に備える、請求項1~3の何れか1項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の切断装置が知られている。この切断装置は、切断対象物の周囲に巻き付けるようにワイヤーソー工具を配置し、ワイヤーソー工具を走行させながらラックピニオン機構によってワイヤーソー工具を付勢し引っ張ることによって切断対象物を切断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の切断装置においては、切削屑の飛散を防止するために切断部に注水しながら行う湿式切断が一般的である。しかし、環境によっては水が使用できず乾式切断を行わざるを得ない場合がある。そこで、本発明は、ワイヤーソー工具で乾式切断を行う場合に切削屑の飛散を抑制する切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の切断装置は、一対のプーリを保持するフレームと、プーリ同士の間を走行するワイヤーソー工具と、プーリ同士の間を切断対象物が横切るようにフレームを切断対象物に対して相対的に移動させるフレーム駆動部と、切断対象物に対するフレームの移動に伴って切断対象物の表面上に被さるように移動しワイヤーソー工具で切断対象物に形成される切断溝を覆う養生シート部と、を備える。
【0006】
また、養生シート部は、フレームの所定の部位同士を繋ぎ両持ちで垂れ下がるように設けられた可撓性の部材からなり、切断対象物に対するフレームの移動方向に平行且つワイヤーソー工具の軌道に沿った仮想平面に沿って存在する第1シート部を備え、第1シート部は、切断対象物に対するフレームの移動に伴って切断対象物の表面に接触し当該表面に沿って変形する、こととしてもよい。
【0007】
また、養生シート部は、一端がフレームの所定の部位に固定され他端が切断対象物に対し位置固定された所定の懸垂ガイド部に引っ掛けられる可撓性の部材からなり、切断対象物に対するフレームの移動方向に平行且つワイヤーソー工具の軌道に沿った仮想平面に沿って存在する第2シート部を備え、第2シート部は、切断対象物に対するフレームの移動に伴って切断対象物の鉛直な表面に被さるように懸垂ガイド部から自重で垂れ下がる、こととしてもよい。
【0008】
本発明の切断装置は、切断対象物の表面に沿って設けられたレール上を移動可能であり、ワイヤーソー工具の近傍に移動する集塵ダクトを更に備える、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワイヤーソー工具で乾式切断を行う場合に切削屑の飛散を抑制する切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の切断装置が適用される原子炉建屋の要部を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態の切断装置を示す斜視図である。
【
図3】(a),(b)は、切断対象物である切片の斜視図である。
【
図4】(a),(b)は、切断装置により切片を切断する処理を簡略的に示す図である。
【
図5】(a)は、切片の切断処理中における切断装置を示す斜視図であり、(b)は、切片の切断処理の完了時点における切断装置を示す正面図である。
【
図6】第2実施形態の切断装置を示す斜視図である。
【
図7】切片の切断処理の完了時点における切断装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しながら本発明に係る切断装置の第1実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の切断装置が適用されるBWR型(沸騰水型)原子力発電所の原子炉建屋101の要部を示す断面図である。
図2は本実施形態に係る切断装置1を示す斜視図である。
図1に示されるように、原子炉建屋101は、平面視円形の原子炉圧力容器(RPV)103と、圧力容器103の周囲を囲む円筒状の熱遮蔽壁(RSW)105と、熱遮蔽壁105の周囲を更に囲む生体遮蔽体(BSW)107と、熱遮蔽壁105を支持するペデスタル(RPV)109と、を備えている。更に原子炉建屋101の天井には天井クレーン111が設けられている。
【0012】
切断装置1は、この原子炉建屋101の廃止解体時において、熱遮蔽壁105の解体処理に用いられる。熱遮蔽壁105は、例えば、直径約7~8m、高さ約14m、壁厚約0.7mといったサイズで鉛直な円筒状をなす構造物である。熱遮蔽壁105は、I型鋼と鋼板による鋼構造に遮蔽コンクリート又はモルタルを充填した構造をなすので、熱遮蔽壁105の切断にはコンクリートと鋼材とを同時に切断できる乾式ワイヤーソー工法が用いられる。
【0013】
熱遮蔽壁105の解体では、熱遮蔽壁105の上端部が、所定の方法で水平に切断されてリング状の切片125(
図3)として分断され、分断された切片125は、生体遮蔽体107の上面に設けられたオペレーションフロア115まで天井クレーン111を用いて吊り上げられ移動され、オペレーションフロア115において更に処理される。このような作業が繰り返されることで、熱遮蔽壁105は上部から下部まで例えば10分割程度の切片125に分断され、各切片125がオペレーションフロア115で順次処理され、熱遮蔽壁105の解体が完了する。
【0014】
オペレーションフロア115においては、各切片125は切断装置1を用いて例えば次のように処理される。
図3(a),(b)は、上記切片125の斜視図である。
図3(a)に示されるように、リング状の切片125は、切断装置1を用いて周方向に直交する矩形断面125aで切断される。このような切断が切断装置1により繰り返されることで、
図3(b)に示されるように、切片125が周方向に例えば10分割程度の細断片127に分断され、細断片127の容器収納等の処理が行なわれる。
【0015】
図4(a),(b)は、切断装置1により切片125を切断する処理を簡略的に示す図である。
図4に示されるように、切断装置1は、台座部3と当該台座部3に対して可動の可動切断部5と、を備えている。可動切断部5は、台座部3のヒンジ軸3aに取り付けられ当該ヒンジ軸3aを中心として鉛直面内で回動可能である。可動切断部5はヒンジ軸3aの回転軸線に直交する平面に沿って存在する矩形状をなしており、当該矩形の1つの頂点が上記ヒンジ軸3aに取り付けられている。また、可動切断部5は、上記矩形の3辺に沿って延びるコ字形のフレーム7と、上記矩形の残りの1辺に沿ってフレーム7に架け渡されたワイヤーソー工具9と、ワイヤーソー工具9を走行させるワイヤーソー駆動部11(
図2)と、を備えている。
【0016】
切片125の外周面125b側に可動切断部5が位置する状態でワイヤーソー工具9の回転範囲内に切片125が設置され、ワイヤーソー駆動部11によりワイヤーソー工具9が走行する状態で可動切断部5が回転されることで、
図4(b)に示されるようにワイヤーソー工具9により外周面125b側から切片125が切削されて切断溝125jが拡がっていき、最終的に切片125が矩形断面125a(
図3(a))で切断される。なお、可動切断部5を台座部3に対して回動させる動力源は特に限定されないが、本実施形態の切断装置1では上記動力源として油圧シリンダ41(
図3)が採用されている。油圧シリンダ41の両端がそれぞれ可動切断部5と台座部3とに接合され、この油圧シリンダ41が伸縮することで可動切断部5が台座部3に対して回動する。油圧シリンダ41は、後述する切削用プーリ13T,13T同士の間を切片125が横切るようにフレーム7を切片125に対して相対的に移動させるフレーム駆動部として機能する。
【0017】
図2を参照しながら切断装置1の更に詳細な構成について説明する。以下では、図に示されるように、鉛直方向をZ方向、ヒンジ軸3aの回転軸線方向をX方向、Z方向及びX方向の双方に直交する方向をY方向として、XYZを各部位の位置関係の説明に用いる場合がある。
【0018】
可動切断部5の本体は例えば複数のH鋼や角パイプ等を組み合わせて構成されている。可動切断部5は本体に取り付けられた複数のプーリ13を備えている。プーリ13は、概ね可動切断部5の矩形外周に沿ってYZ平面に平行な同一平面内に配置されており、それぞれX方向の回転軸線回りに回転する。ワイヤーソー工具9は各プーリ13に順次架け渡され、各プーリ13を順次繋ぐ所定の周回軌道で無端状に延在している。前述のワイヤーソー駆動部11は、複数のプーリ13のうちの1つである駆動プーリ13Aと、駆動プーリ13Aに取り付けられたモータ15と、を有している。モータ15を駆動源として駆動プーリ13Aが回転されることで、ワイヤーソー工具9は各プーリ13にガイドされながら所定の周回軌道で走行する。ワイヤーソー工具9の周回軌道は、矩形状の可動切断部5の概ね4辺に沿って存在している。
【0019】
また、複数のプーリ13には一対の切削用プーリ13T,13Tが含まれている。切削用プーリ13T,13Tは、コ字形のフレーム7の両端にそれぞれ設けられている。ワイヤーソー工具9の一部分は、上記の切削用プーリ13T,13T同士の間に架け渡され、前述したように切片125を切削する。このように切削用プーリ13T,13T同士の間に架け渡され切片125を切削するワイヤーソー工具9の部分を、以下では「切削部9a」と呼ぶ。
【0020】
台座部3は例えば鋼板やH鋼等を組み合わせて構成されている。切断装置1の移動を容易にするために、台座部3には車輪が設けられてもよい。台座部3は切片125の設置位置の近傍で鉛直に立ち上がるガイドレール19を有している。ガイドレール19には集塵ダクト21が取付けられ、集塵ダクト21はガイドレール19上を鉛直方向にスライド可能である。集塵ダクト21は切削部9aに沿う鉛直面内で切削部9aの下方に位置するとともに、集塵ダクト21の集塵口21aが切片125の鉛直な表面に対面する。切削部9aによる切片125の切削中においては、集塵口21aが常に切削部9aと交差する位置に位置するように、集塵ダクト21がガイドレール19上を移動する。そして、切削中において切削部9aで発生する切削屑が集塵口21aから吸引され、集塵ダクト21から更に送塵ダクト21bを通じて後段の回収装置(図示せず)で回収される。
【0021】
上記のような集塵ダクト21の上下移動を可能にするために、フレーム7に駆動モータ23が設けられ、駆動モータ23は、ワイヤ23a及びプーリ23b等を介して集塵ダクト21に接続されている。駆動モータ23がワイヤ23aを巻き取ることで集塵ダクト21がガイドレール19に沿って上昇し、駆動モータ23がワイヤ23aを送り出すことで集塵ダクト21が自重でガイドレール19に沿って下降する。切削部9aによる切片125の切削中においては、ヒンジ軸3aを中心とする可動切断部5の回動に合わせて駆動モータ23が別途制御されることで、前述したように集塵口21aが常に切削部9aと交差する位置に位置するように、集塵ダクト21がガイドレール19上を移動する。
【0022】
更に切断装置1は、切削部9aの上方に配置された可撓性の第1養生シート27及び第2養生シート29を備えている。第1養生シート27及び第2養生シート29は例えばゴムシートである。切削部9a、第1養生シート27及び第2養生シート29は同一の鉛直面に沿って存在している。第1養生シート27は、フレーム7の所定の部位同士を繋ぎ両持ちで垂れ下がるように設けられている。第1養生シート27の両端がそれぞれフレーム7の別の部位に取り付けられ、中央部がガイドレール19の上端に引っ掛けられ垂れ下がるように設置されている、第1養生シート27はX方向に所定の幅をもつ長尺帯状をなしており、第1養生シート27の長さは、切片125の矩形断面125a(
図3(a))の高さと幅との和よりも長くされている。
【0023】
第2養生シート29は、第1養生シート27の下方に位置し、ガイドレール19の上端に引っ掛けられるように設置されている。第2養生シート29の一端はワイヤ31aを介してプーリ31に接続されており、第2養生シート29の他端はガイドレール19(懸垂ガイド部)の上端から当該ガイドレール19と切片125との間に垂れ下がっている。なお、プーリ31が省略されて第2養生シート29の一端がワイヤ31aを介してフレーム7の一部位に直接接続されてもよい。第2養生シート29はX方向に第1養生シート27と同程度の幅をもつ長尺帯状をなしており、第2養生シート29の長さは、切片125の矩形断面125a(
図3(a))の高さに概ね等しい。なお、第1養生シート27及び第2養生シート29のX方向の幅は、切削部9aによって切片125に形成される切断溝の幅よりも広く設定されている。
【0024】
以上のような切断装置1の切断処理における動作について説明する。
図5(a)に示されるように、切断装置1による切片125の切断処理では、台座部3上に切片125が載置され、切片125の外周面125bがガイドレール19に近接して配置される。そして、ワイヤーソー駆動部11によりワイヤーソー工具9が走行しながら、油圧シリンダ41(フレーム駆動部)の駆動により可動切断部5が切片125側に回動していく。そうすると、
図5(a)に示されるように、ワイヤーソー工具9の切削部9aが切片125を切削しながら徐々に切片125内に喰い込んでいく。このとき、フレーム7の回動に伴って第1養生シート27が自重により切片125の表面に接触し、徐々に当該表面に沿う形状に変形しながら被さっていく。特に、第1養生シート27は切片125の上面125cと内周面125dとに被さっていく。
【0025】
また、第2養生シート29は自重でガイドレール19の上端からずり落ちるように切片125の鉛直な外周面125bに沿って下方に移動し、当該外周面125b上に被さっていく。なお、第2養生シート29のこのような移動のために、プーリ31の回転がヒンジ軸3aを中心とする可動切断部5の回動に合わせてモータ等で別途制御されてもよい。更に前述したように、駆動モータ23の制御によって、集塵ダクト21が切削部9aの位置に応じて下方に移動していく。そして最終的に、
図5(b)に示されるように、切削部9aが切片125を完全に横切ったところで、切片125の切断が完了する。
【0026】
ここで、切削部9a、第1養生シート27及び第2養生シート29は同一の鉛直面上に存在しており、すなわち、可動切断部5の回動軸線に直交する同一の仮想平面上に存在している。このような位置関係によれば、上記のように切片125の表面に被さる第1養生シート27は、切削部9aにより形成された切断溝125j上に被さることになる。第2養生シート29もまた、切削部9aにより形成された切断溝125j上に被さることになる。この構成によれば、切断処理中に、切片125の表面において切断溝125jが第1養生シート27及び第2養生シート29により塞がれるので、切削部9aで発生する切削屑が切断溝125jを通過して切片125の外部に飛散することが抑制される。そうすると、切断溝125j内に閉じ込められた切削屑が集塵ダクト21から効率よく吸引され回収される。
【0027】
上記のような作用効果を効率的に得るために、第1養生シート27が確実に切片125の表面に沿って切断溝125j上に被さる形状に変形し、切片125の表面で切断溝125jを隙間なく塞ぐことが好ましい。このため、第1養生シート27の上面の長手方向全体に亘って、例えばケーブルベア(登録商標)やチェーンといったような一平面内で変形自在の資材が接合されていてもよい。また、第1養生シート27がフレーム7の回動に伴って確実に切片125上に被さるためには、第1養生シート27の両端の配置を調整する必要がある。このため、フレーム7には第1養生シート27の両端部をそれぞれ取り付けるためのブラケット7a,7b(
図2等)が設けられている。ブラケット7a,7bの位置が予め適切に調整され、このブラケット7a,7bから両持ちで第1養生シート27が垂れ下がるように設置されることで、第1養生シート27がフレーム7の回動に伴って確実に切片125上に被さる。
【0028】
通常の切断対象物の切断であれば、切削屑の飛散を防止するために切断部に注水しながら湿式切断を行うことも考えられる。しかしながら、原子炉建屋101の熱遮蔽壁105は放射化されているので、熱遮蔽壁105の湿式切断を行えば放射性汚染水が発生し当該汚染水の処理負担が大きい。従って、熱遮蔽壁105の切断では乾式切断を行うことが好ましい。乾式切断では切削屑が飛散しやすいという問題があり、特に、熱遮蔽壁105の切断にあっては放射性の切削屑が発生するので、切削屑の飛散防止の必要性が高い。これに対し、切断装置1によれば、前述のとおり第1養生シート27及び第2養生シート29の存在により切削屑が切片125の外部に飛散することが抑制されるので、切断装置1を覆う飛散防止の養生シートの設置を省略することも可能になる。また、広範囲に飛散した切断屑を回収するといった処理を省略することも可能になる。
【0029】
〔第2実施形態〕
続いて、
図6及び
図7を参照しながら本発明に係る切断装置の第2実施形態について詳細に説明する。本実施形態の切断装置51は、第1養生シート27及び第2養生シート29に代えて養生シート53を備える点で切断装置1とは異なっている。切断装置51のその他の構成については第1実施形態の切断装置1と同様であるので、同一又は同等の構成要素には図面で同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0030】
養生シート53は、切削部9aの上方に配置された可撓性のシートであり、例えばゴムシートである。切削部9aと養生シート53とは同一の鉛直面に沿って存在している。養生シート53は、フレーム7の所定の部位同士を繋ぎ両持ちで垂れ下がるように設けられている。養生シート53の一端部を取り付けるためのブラケット7bは、切断装置1(
図2)と比較してフレーム7の低い位置に配置されている。フレーム7のワイヤーソー駆動部11に近い側の位置にはフック部7cが設けられており、養生シート53が切削部9aと干渉しないように、養生シート53の一部が折り畳まれるようにしてフック部7cに引っ掛けられている。養生シート53はX方向に所定の幅をもつ長尺帯状をなしており、養生シート53の長さは、切片125の矩形断面125a(
図3(a))の高さの2倍と幅との和よりも長くされている。養生シート53の上面の長手方向全体に亘って、例えばケーブルベア(登録商標)やチェーンといったような一平面内で変形自在の資材が接合されていてもよい。また、集塵ダクト21の上部には、養生シート53の上方を横切るようにX方向に突出したピン21cが設けられている。
【0031】
切断装置51の切断処理における動作について説明する。切断処理では、第1実施形態の切断装置1と同様にして、台座部3上に切片125が載置され、ワイヤーソー工具9が走行しながら、可動切断部5が切片125側に回動していく。そして、ワイヤーソー工具9の切削部9aが切片125を切削しながら徐々に切片125内に喰い込んでいく。このとき、フレーム7の回動に伴って養生シート53はブラケット7aから引き摺られるようにして切片125の上面125c及び内周面125dに被さっていく。また、駆動モータ23の制御による集塵ダクト21の下降に伴ってピン21cが養生シート53を下方に押さえつけ、養生シート53は切片125の外周面125bにも被さっていく。ここでは、養生シート53のうちフック部7cに引っ掛けられていた部分がフック部7cから送り出されることで、十分な長さの養生シート53が切片125の内周面125d、上面125c及び外周面125bに被さることになる。そして最終的に、
図7に示されるように、切削部9aが切片125を完全に横切ったところで、切片125の切断が完了する。
【0032】
以上のような切断装置51によれば、切片125の内周面125d、上面125c及び外周面125bにおいて養生シート53が切断溝125jを塞ぐことにより、第1実施形態の切断装置1と同様の作用効果が得られる。
【0033】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、実施形態の切断装置1,51では、可動切断部5が台座部3及び切片125に対して回動することにより切削部9aが切片125を横切るようにしているが、可動切断部5が台座部3及び切片125に対して並進移動することにより切削部9aが切片125を横切るようにしてもよい。例えば切削部9aを切片125の上面125cに平行にして、可動切断部5が切片125の上面125cに直交する方向に並進移動するようにしてもよい。また例えば、切断装置1,51は、原子炉建屋101の熱遮蔽壁105の切断には限られず、種々の切断対象物の切断に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1,51…切断装置、7…フレーム、9…ワイヤーソー工具、13T…切削用プーリ、19…ガイドレール(レール)、21…集塵ダクト、27…第1養生シート(養生シート部、第1シート部)、29…第2養生シート(養生シート部、第2シート部)、41…油圧シリンダ(フレーム駆動部)、53…養生シート(養生シート部)、125…切片(切断対象物)、125j…切断溝。