IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特許7572933案件管理装置、案件管理方法およびプログラム
<>
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図1
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図2
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図3
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図4
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図5
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図6
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図7
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図8
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図9
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図10
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図11
  • 特許-案件管理装置、案件管理方法およびプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】案件管理装置、案件管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/383 20190101AFI20241017BHJP
【FI】
G06F16/383
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021186216
(22)【出願日】2021-11-16
(65)【公開番号】P2023073641
(43)【公開日】2023-05-26
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩一
(72)【発明者】
【氏名】太田 哲也
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-073464(JP,A)
【文献】特開2006-099477(JP,A)
【文献】特開2006-023789(JP,A)
【文献】特開2000-330979(JP,A)
【文献】特表2020-500371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06F 40/00-40/58
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の成果物を作成する案件を管理する案件管理装置において、
過去案件の懸念キーワードを含む反省資料を記憶する記憶部と、
評価対象案件の案件資料を処理して、テキストデータで構成される中間ファイルを作成する中間ファイル作成部と、
前記中間ファイルに含まれる各用語に対して、文における当該用語の出現位置を定義するキーワード位置判定辞書を用いて出現位置を判定し、判定された前記出現位置を用いて、前記中間ファイルを単語単位に分割する自然言語処理部と、
分割された単語に基づいて案件キーワードを作成し、前記案件キーワードを用いて、前記反省資料から類似資料を検索する類似資料検索部を有し、
前記評価対象案件の評価を実現する案件管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の案件管理装置において、
前記キーワード位置判定辞書は、前記用語の出現位置を、前記文の文頭、文中および文末のいずれかで定義し、
前記自然言語処理部は、前記キーワード位置判定辞書を用いて、前記中間ファイルを文単位に分割し、分割された前記中間ファイルを前記単語単位に分割する案件管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の案件管理装置において、さらに、
前記案件キーワードと検索された前記類似資料に含まれる懸念キーワードを突合する突合部と、
前記突合の結果に応じて、前記評価対象案件の難易度を判定する案件難易度判定部を有する案件管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の案件管理装置において、
前記案件難易度判定部は、前記案件キーワードと前記懸念キーワードの一致した数および重みの少なくとも一方を用いて、前記評価対象案件の難易度を判定する案件管理装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の案件管理装置において、
前記記憶部は、さらに前記懸念キーワードに応じた対策・施策を記憶し、
さらに、前記評価対象案件の難易度および対策・施策を対応づけた結果レポートを出力するインターフェース部を有する案件管理装置。
【請求項6】
所定の成果物を作成する案件を管理する案件管理装置を用いた案件管理方法において、
記憶部に、過去案件の懸念キーワードを含む反省資料が記憶され、
中間ファイル作成部により、評価対象案件の案件資料を処理して、テキストデータで構成される中間ファイルを作成し、
自然言語処理部により、前記中間ファイルに含まれる各用語に対して、文における当該用語の出現位置を定義するキーワード位置判定辞書を用いて出現位置を判定し、判定された前記出現位置を用いて、前記中間ファイルを単語単位に分割し、
類似資料検索部により、分割された単語に基づいて案件キーワードを作成し、前記案件キーワードを用いて、前記反省資料から類似資料を検索することで、前記評価対象案件の評価を実現する案件管理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の案件管理方法おいて、
前記キーワード位置判定辞書は、前記用語の出現位置を、前記文の文頭、文中および文末のいずれかで定義し、
前記自然言語処理部により、前記キーワード位置判定辞書を用いて、前記中間ファイルを文単位に分割し、分割された前記中間ファイルを前記単語単位に分割する案件管理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の案件管理方法において、
突合部により、前記案件キーワードと検索された前記類似資料に含まれる懸念キーワードを突合し、
案件難易度判定部により、前記突合の結果に応じて、前記評価対象案件の難易度を判定する案件管理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の案件管理方法において、
前記案件難易度判定部により、前記案件キーワードと前記懸念キーワードの一致した数および重みの少なくとも一方を用いて、前記評価対象案件の難易度を判定する案件管理方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の案件管理方法において、
前記記憶部には、さらに前記懸念キーワードに応じた対策・施策が記憶され、
インターフェース部により、前記評価対象案件の難易度および対策・施策を対応づけた結果レポート出力する案件管理方法。
【請求項11】
過去案件の懸念キーワードを含む反省資料を記憶する記憶部を有し、所定の成果物を作成する案件を管理する案件管理装置を、
評価対象案件の案件資料を処理して、テキストデータで構成される中間ファイルを作成する中間ファイル作成部と、
前記中間ファイルに含まれる各用語に対して、文における当該用語の出現位置を定義するキーワード位置判定辞書を用いて出現位置を判定し、判定された前記出現位置を用いて、前記中間ファイルを単語単位に分割する自然言語処理部と、
分割された単語に基づいて案件キーワードを作成し、前記案件キーワードを用いて、前記反省資料から類似資料を検索する類似資料検索部として機能させ、
前記評価対象案件の評価を実現するプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムにおいて、
前記キーワード位置判定辞書は、前記用語の出現位置を、前記文の文頭、文中および文末のいずれかで定義し、
前記自然言語処理部は、前記キーワード位置判定辞書を用いて、前記中間ファイルを文単位に分割し、分割された前記中間ファイルを前記単語単位に分割するプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムにおいて、さらに前記案件管理装置を、
前記案件キーワードと検索された前記類似資料に含まれる懸念キーワードを突合する突合部として機能させ、
前記突合の結果に応じて、前記評価対象案件の難易度を判定する案件難易度判定部として機能させるプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムにおいて、
前記案件難易度判定部は、前記案件キーワードと前記懸念キーワードの一致した数および重みの少なくとも一方を用いて、前記評価対象案件の難易度を判定するプログラム。
【請求項15】
請求項13または14に記載のプログラムにおいて、
前記記憶部は、さらに前記懸念キーワードに応じた対策・施策を記憶し、
さらに前記案件管理装置を、前記評価対象案件の難易度および対策・施策を対応づけた結果レポートを出力するインターフェース部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務における各種案件を管理するための技術に関する。案件には、システム構築などのプロジェクトが含まれる。
【背景技術】
【0002】
現在、業務において、システム構築など各種案件が遂行されている。このような案件の遂行においては、何からの課題が生じることがある。例えば、成果物であるシステムの性能に関し、品質悪化が生じることがある。このような課題に対応するために、過去の案件(過去事例)参考にして、対応を行うことがある。このためには、現在対応中の案件に類似の過去事例を特定することが必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1では、自然言語で表現された事例間の属性の類似性を的確に測ることができと共に、類似事例を的確に検索できる装置を実現することを課題としている。この課題を解決するために、特許文献1では、過去の事例、事例番号、カテゴリ番号、およびキーワード毎の重みを登録したデータベースと、与えられた新規事例の問題部分からキーワードを抽出し、データベースを検索して同一のキーワードが存在する過去の事例のカテゴリ番号、およびキーワード毎の重みからなる属性情報を取り出して類似度を生成する類似度生成手段と、生成した類似度の高い順にソートして過去の事例のカテゴリ、類似度などを出力する手段とを備えるように構成する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-73464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、品質悪化などの案件遂行における課題においては、案件の難易度を評価する必要がある。これは、難易度が高い(より難しい)ほど課題が生じる可能性が高いためである。しかしながら、特許文献1では難易度については考慮されていなかった。また、類似の事例を特定するためには、現在の案件と事例それぞれの資料を用いることになる。このように資料を用いる際には、精度よく検索を実行することが求められる。
【0006】
以上を鑑み、本発明では、より精度よく関連する資料を検索することで、案件の難易度の評価を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では、過去の品質悪化案件の反省資料を利用して、対象案件の難易度を判定する。より具体的には、所定の成果物を作成する案件を管理する案件管理装置において、過去案件の懸念キーワードを含む反省資料を記憶する記憶部と、評価対象案件の案件資料を処理して、テキストデータで構成される中間ファイルを作成する中間ファイル作成部と、前記中間ファイルに含まれる各用語に対して、文における当該用語の出現位置を定義するキーワード位置判定辞書を用いて出現位置を判定し、判定された前記出現位置を用いて、前記中間ファイルを単語単位に分割する自然言語処理部と、分割された単語に基づいて案件キーワードを作成し、前記案件キーワードを用いて、前記反省資料から類似資料を検索する類似資料検索部を有し、前記評価対象案件の評価を可能とする案件管理装置が含まれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より精度よく案件に関連する資料を検索することで、案件の難易度を評価できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における案件管理システムのシステム構成図である。
図2】本発明の一本実施形態における案件管理サーバのハードウエア構成図である。
図3】本発明の一実施形態で用いられる案件難易度判定ルールを示す図である。
図4】本発明の一実施形態で用いられるキーワード位置判定辞書を示す図である。
図5】本発明の一実施形態で用いられる反省資料を示す図である。
図6】本発明の一実施形態で用いられる対象案件資料を示す図である。
図7】本発明の一実施形態で用いられる対策・施策リストを示す図である。
図8】本発明の一実施形態における全体処理フローを示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態における自然言語処理の詳細を示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態におけるステップS42およびS43の一例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態における難易度判定の2つの手法を示すフローチャートである。
図12】本発明の一実施形態における結果レポートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。本実施形態では、案件として、システム構築プロジェクトを例に説明する。システム構築プロジェクトでは、開発・納入期限の遅延、いわゆる手戻りの発生、要求仕様の未達成といった品質悪化が生じることがある。このような品質悪化については、その内容を分析した反省資料が作成されることが多い。
【0011】
また、システム構築プロジェクトといった案件では、段階的に作業が行われることが多い。例えば、事前検討、提案、受注、計画、構築、完了などといったように、いわゆる上流から下流に向けて段階的に案件が進められることがある。そして、これらの各段階(作業)では、事前検討会説明資料、提案書、仕様書といった対象案件資料が作成される。
【0012】
ここで、このような案件において、案件の難易度をより上流で評価できるほど、品質悪化を防止、抑止し易くなる。また、仮に品質悪化が発生しても、リカバリーがより容易である。このため、より上流の段階で、案件の難易度を評価すると、品質悪化の抑止等が可能となる。そこで、本実施形態では、システム構築プロジェクトを例に、過去事例の反省資料を用いて、着手中の案件で対象案件の難易度を評価する。この際、事前検討会説明資料のようなより上流での対象案件資料と反省資料を突合することで、この評価を実行することが望ましい。以下、本実施形態の詳細について、<構成><情報><処理フロー>の順に説明する。なお、本実施形態の資料には、文書、書類などが含まれる。
【0013】
<構成>
まず、図1は、本実施形態における案件管理システムのシステム構成図である。図1において、案件管理システムは、案件管理サーバ1、データベースシステム20、端末装置100-1、100-2が、ネットワーク30を介して接続されている。以下、これら各装置について説明する。
【0014】
まず、案件管理サーバ1は、本実施形態の主たる処理を実行する装置であり、案件管理装置とも称することができる。また、案件管理サーバ1は、機能ブロックとして、中間ファイル作成部11、自然言語処理部12、類似資料検索部13、突合部14、案件難易度判定部15、記憶部16およびインターフェース部17を有する。ここで、中間ファイル作成部11は、各種資料からテキストデータで構成される中間ファイルを作成する。また、自然言語処理部12は、中間ファイルなどのテキストデータを、単語などの所定単位に分割する。
【0015】
また、類似資料検索部13は、キーワードを用いて、対象の資料に類似する類似資料を検索する。ここで、類似資料検索部13は、自然言語処理部12の所定単位に基づいて作成されるキーワードを用いることが望ましい。また、突合部14は、上述のキーワードと、検索された類似資料に含まれる懸念キーワードとの突合を行う。さらに、案件難易度判定部15は、突合結果に応じて、対象案件の難易度を評価する。
【0016】
また、記憶部16は、各種情報やプログラム等を記憶する。本実施形態では、記憶部16には、案件難易度判定ルール161およびキーワード位置判定辞書162が記憶される。なお、これら案件難易度判定ルール161およびキーワード位置判定辞書162については、追って説明する。さらに、インターフェース部17は、ネットワーク30などの接続手段を介して、他の装置と通信、接続する。本実施形態では、インターフェース部17は、データベースシステム20や端末装置100-1、100-2と接続される。
【0017】
次に、データベースシステム20は、各種情報を記憶するもので、いわゆるファイルサーバでも実現できる。そして、データベースシステム20は、反省資料21、対象案件資料22および対策・施策リスト23を記憶する。なお、これらについては、記憶部16に記憶される情報と共に、追って説明する。また、データベースシステム20の情報は記憶部16に記憶してもよいし、記憶部16の案件難易度判定ルール161やキーワード位置判定辞書162をデータベースシステム20に記憶してもよい。
【0018】
次に、端末装置100-1、100-2は、利用者によって操作されるコンピュータで実現できる。そして、端末装置100-1、100-2は、案件管理サーバ1にアクセスし、各種指示を送信したり、その処理結果を受信して表示したりする。またさらに、端末装置100-1、100-2は、データベースシステム20にもアクセスでき、記憶されている各種情報の読み出し、修正、新規登録などを実行する。これら端末装置100-1、100-2は、PC、タブレット、スマートフォンなどで実現できる。また、図1には、端末装置を2台記載したが、台数はこれらに限定されない。さらに、端末装置100-1、100-2は、案件を処理する企業等の組織に設置され、その利用者は案件の管理者、作業実行者などが想定される。さらに、ネットワーク30は、各装置間の通信を行うもので、インターネットやイントラネットで実現できる。
【0019】
次に、本実施形態の主たる処理を実行する案件管理サーバ1の実装例について説明する。図1では、案件管理サーバ1の機能ブロックを示したが、これはいわゆるコンピュータで実現できる。この実現例について、以下説明する。図2は、本実施形態における案件管理サーバ1のハードウエア構成図である。
【0020】
案件管理サーバ1では、処理装置101、記憶装置160、入出力装置170がバスなどの通信路を介して互いに接続される。ここで、処理装置101は、いわゆるプロセッサであり、各プログラムに従った処理を行う。このために、いわゆるCPU(Central Processing Unit)などで実現できる。
【0021】
また、記憶装置160は、中間ファイル作成プログラム110、自然言語処理プログラム120、類似資料検索プログラム130、突合プログラム140、案件難易度判定プログラム150といった各種プログラムを記憶する。またさらに、記憶装置160は、案件難易度判定ルール161およびキーワード位置判定辞書162も記憶する。このように、図1の記憶部16に相当する。また、記憶装置160は、メモリとストレージで構成することが望ましい。この場合、各種プログラムは、ストレージに格納されており、処理を実行する場合にメモリに展開されることが望ましい。このように、各種プログラムは、ストレージのような記憶媒体に格納される。
【0022】
また、各種プログラムと図1に示す各部は、以下の対応関係を有する。つまり、同様の処理を実行するプログラムと部を以下に併記する。
中間ファイル作成プログラム110:中間ファイル作成部11
自然言語処理プログラム120:自然言語処理部12
類似資料検索プログラム130:類似資料検索部13
突合プログラム140:突合部14
案件難易度判定プログラム150:案件難易度判定部15
このようなグラムにより、コンピュータである案件管理サーバ1を、上述の各部として機能させることになる。
【0023】
次に、入出力装置170は、インターフェース部17に相当する機能を有する。つまり、ネットワーク30を介して、他の装置と接続する。以上のように、案件管理サーバ1は、プログラムに従って、機能するコンピュータで実現できるが、各部を専用ハードウエアなどで構成することも可能である。以上で、本実施形態の構成についての説明を終わる。
【0024】
<情報>
次に、上述の本実施形態で用いられる各種情報について、図3図7を用いて説明する。まず、図3は、本実施形態で用いられる案件難易度判定ルール161を示す図である。本実施形態では、案件難易度判定ルール161の実例として、懸念キーワードリスト161-1および類似度判定リスト161-2を例示する。なお、これらについては、いずれか一方が用いられてもよいし、両方が用いられてもよい。
【0025】
まず、図3(a)に、懸念キーワードリスト161-1を示す。懸念キーワードリスト161-1は、案件難易度判定部15での案件の難易度を判定するために用いられる。このために、懸念キーワードリスト161-1は、品質悪化に関連すると考えられる懸念キーワードが記録されている。より詳細には、懸念キーワードリスト161-1は、懸念キーワードごとに、その重み(ポイント)、過去事例が記録されている。ここで、重み(ポイント)とは、該当の懸念キーワードの品質悪化への寄与の度合いを示す。また、過去事例は、該当の懸念キーワードが記録された資料(反省資料)に対応する過去事例を特定する情報である。
【0026】
また、図3(b)に、類似度判定リスト161-2を示す。類似度判定リスト161-2は、案件と過去事例の類似度合いを特定し、案件の難易度を判定するために用いられる。このために、類似度判定リスト161-2は、過去事例ごとに、該当の反省資料の特徴と過去事例の難易度が記録されている。このために、類似度判定リスト161-2は、過去事例ごとに、該当の過去事例の反省資料、その反省資料に含まれる懸念キーワード、懸念キーワードが反省資料に出現する出現頻度および過去事例の難易度が記録される。このうち、懸念キーワードや出現頻度が、過去案件の特徴を示す。
【0027】
そして、過去事例の特徴を用いて、対象となるシステム構築プロジェクトに類似する過去事例を特定され、特定された過去事例の難易度に基づきシステム構築プロジェクトの難易度を判定できる。なお、ここで説明した、難易度の判定については、「処理フロー」にて後述する。
【0028】
次に、図4は、本実施形態で用いられるキーワード位置判定辞書162を示す図である。キーワード位置判定辞書162は、キーワード、つまり、「単語/記号/フレーズ」ごとに、文における出現位置を示す情報である。キーワード位置判定辞書162は、自然言語処理部12を用いることで、対象の資料におけるキーワードの出現位置を判定できる。このために、キーワード位置判定辞書162は、出現位置として、文頭、文中、文末を記録している。なお、文頭とは文の始め位置を意味し、文中文末とは文の終わりの位置を示す。そして、文中とは、文頭や文末以外の位置を示す。
【0029】
なお、本実施形態では、キーワード位置判定辞書162を「単語/記号/フレーズ」ごとに定義したが、これらを抽象化した品詞分類で定義してもよい。品詞分類には、名詞、動詞といった一般的な品詞の他、これを細分化したものを用いてもよい。たとえな、固有名詞、数、代名詞、接尾語などを用いることができる。さらに、単一の品詞だけでなく、名詞-接尾語-人名といったこれらの組合せで定義してもよい。
【0030】
次に、図5は、本実施形態で用いられる反省資料21を示す図である。反省資料21とは、過去事例、特に、過去の品質悪化案件における反省内容を示す情報である。過去事例において、システムの構築が完了した際や納品した際に、品質悪化に対する振り返り、反省のための資料が作成されることがある。反省資料21は、この内容を示すが、このために、反省会議、完了報告会等が行われ、この議事録を用いることもできるし、完了報告資料も流用できる。
【0031】
図5において、反省資料21は、過去事例における概要を示す「1.プロジェクト概要」、品質悪化の要因を含む「2.問題」、今後の方針等を含む「3.分析・再発防止策」から構成される。なお、図5に示す反省資料21はあくまでも一例であり、これに限定されない。反省資料21は、過去事例の内容を示す情報であればよい。このため、反省資料21として、システムの構築が完了した際や納品した際の資料に限らず、過去事例における仕様書などといった関連資料を用いてもよい。また、反省資料21は、利用者によって端末装置100-1や100-2で作成可能である。
【0032】
次に、図6は、本実施形態で用いられる対象案件資料22を示す図である。対象案件資料22は、対象案件、つまり、本実施形態におけるシステム構築プロジェクトで用いられる資料である。図6に示す例では、A銀行仕様書であり、そのシステム概要や案件概要が記録されている。そして、この対象案件資料22は、中間ファイル作成部11により処理され、中間ファイルが作成される。なお、対象案件資料22は、システム構築プロジェクトといった案件ごとに、データベースシステム20に記憶されていることが望ましい。また、案件ごとに1以上の対象案件資料22が存在するものとする。また、対象案件資料22は、利用者によって端末装置100-1や100-2で作成可能である。
【0033】
次に、図7は、本実施形態で用いられる対策・施策リスト23を示す図である。対策・施策リスト23は、懸念キーワードに応じた、品質悪化に対する対策・施策が記録されている。これを用いて、対象案件について品質悪化を抑止するための対策や施策の案を、利用者に提案することが可能となる。以上で、本実施形態で用いられる情報の説明を終わる。
【0034】
<処理フロー>
次に、本実施形態の処理フローについて、図8図12を中心に用いて説明する。以下では、図1に示す各部を処理主体として説明する。まず、図8は、本実施形態における全体処理フローを示すフローチャートである。
【0035】
まず、ステップS1において、インターフェース部17が、データベースシステム20から、対象となる現在着手中のシステム構築プロジェクトにおける対象案件資料22を入力する。これは、端末装置100-1や1000-2への利用者から指示に応じて行うことが望ましい。また、端末装置100-1や1000-2は、スキャナといった光学読取装置を用いて、紙媒体の対象案件資料を読取り、インターフェース部17が受け付けてもよい。また、データベースシステム20には、光学読取装置で読み取られた対象案件資料22が記憶しておいてもよい。
【0036】
次に、ステップS2において、中間ファイル作成部11が、入力された対象案件資料22がテキストデータであるかを判定する。この結果、テキストデータであれば(YES)、ステップS4に遷移する。テキストデータでなければ(NO)、ステップS3に遷移する。この際、中間ファイル作成部11は、入力された対象案件資料22がテキストデータのみで構成される場合に、YESと判断することが望ましいが、テキストデータが含まれる場合にYESと判定してもよい。
【0037】
次に、ステップS3において、中間ファイル作成部11が、入力された対象案件資料22に対してテキスト変換を行い、中間ファイルを作成する。なお、ステップS2において、NOと判定された場合、入力された対象案件資料22を中間ファイルと称する。また、光学読取装置の読取りの際に、文字認識処理を行い、ステップS2およびS3を省略してもよい。
【0038】
また、ステップS4において、自然言語処理部12が、テキストデータである中間ファイルに対して、自然言語処理を施す。この自然言語処理として、自然言語処理部12は、中間ファイルに含まれる各用語に対して出現位置を判定し、判定された出現位置を用いて中間ファイルを単語単位に分割する。この出現位置の判定には、キーワード位置判定辞書162が用いられる。
【0039】
ここで、図9を用いてステップS4の自然言語処理の詳細を説明する。図9は、本実施形態における自然言語処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS41において、自然言語処理部12が、中間ファイルの入力を受け付ける。
【0040】
次に、ステップS42において、自然言語処理部12が、受け付けられた中間ファイルを一文化する。そして、ステップS43において、自然言語処理部12が、一文化された中間ファイルを、各文に分割する。ここで、ステップS42およびS43を実行する理由およびその詳細について、説明する。
【0041】
図10は、ステップS42およびS43の一例を示す図である。図10(a)が、受け付けられた中間ファイルを示す。この中間ファイルは、図10(a)に示すように、文の途中で改行が入り、文が分断されている。例えば、図10(a)の3行において、「切り出し、」で文が分断されている。このままでは、対象案件資料22ないし中間ファイルから類似資料を検索するための案件キーワードが正確に切り出せない恐れがある。そこで、ステップS42およびS43で、中間ファイルの整形、クレンジングしている。以下、この具体例を、図10を参照して説明する。
【0042】
ステップS42では、自然言語処理部12は、図10(a)の中間ファイルに対して、
改行を削除する。また、この際、句点、読点、記号などはそのまま残すようにする。この結果、図10(b)に示す一文化された中間ファイルが作成される。
【0043】
そして、ステップS43では、自然言語処理部12は、図10(b)に示す一文化された中間ファイルの各単語の出現位置を判定し、これを各文に分割する。この分割とは、各文を区別することで、文の間(文末-文頭間)に改行を挿入したり、文頭ないし文末(句点)を特定したりすることで実現できる。この結果、図10(c)示す文単位に分割された中間ファイルが作成されることになる。
【0044】
このために、自然言語処理部12は、キーワード位置判定辞書162を用いて、各単語の出現位置を判定する。図10(b)の例では、図4のキーワード位置判定辞書162を用いることで、「。」が文末、「・」「(1)」「(2)」が文頭と判断される。この結果、図10(b)の1行における「・」や5行における(2)の前で、文が区切られる。つまり、ここで改行が入り、図10(c)の文単位に分割された中間ファイルが作成される。以上で、ステップS42およびS43の説明を終わる。
【0045】
最後に、ステップS44において、自然言語処理部12は、文単位に分割された中間ファイルを、単語単位に分割する。これは、文単位に分割された中間ファイルから各単語を抽出できればよい。以上で、ステップS4の詳細の説明を終わり、図8に戻り説明を続ける。
【0046】
次に、ステップS5において、類似資料検索部13が、ステップS44で抽出された単語に基づいて、反省資料21に対する類似資料検索を行う。このために、類似資料検索部13が、ステップS44で抽出された単語から案件キーワードを特定する。この特定としては、抽出された単語をそのまま流用してもよいし、その一部の単語を案件キーワードとしてもよい。一部の単語を案件キーワードとする場合、自律語といった特定の種類の単語を用いてもよいし、予め記録された単語を用いてもよい。そして、類似資料検索部13は、特定された案件キーワードを用いて、反省資料21を検索する。この検索は、案件キーワードが所定数以上含まれる反省資料21を検索結果とするなど、所定条件を満たす反省資料21を検索する。この検索結果を、類似資料と称する。
【0047】
次に、ステップS6において、突合部14が、突合処理を実行する。このために、突合部14は、案件キーワードと検索された類似資料に含まれる懸念キーワードを突合する。つまり、突合部14は、類似資料に含まれる単語のうち、懸念キーワードリスト161-1や類似度判定リスト161-2に記録された懸念キーワードのうち、案件キーワードと一致するものを特定する。
【0048】
次に、ステップS7において、案件難易度判定部15が、ステップS6の結果を用いて対象案件であるシステム構築プロジェクトについて、難易度を判定する。この判定の詳細を、図11を用いて説明する。
【0049】
図11は、本実施形態における難易度判定の2つの手法を示すフローチャートである。まず、図11(a)に示す第1の手法について説明する。ステップS71において、案件難易度判定部15は、ステップS6で特定された懸念キーワードの数を計数する。
【0050】
また、ステップS72において、案件難易度判定部15は、懸念キーワードリスト161-1を用いて、ステップS6で特定された懸念キーワードの重み(ポイント)を特定する。例えば、「新規顧客」との懸念キーワードについては、重み(ポイント)として「2」が特定される。
【0051】
そして、ステップS73において、案件難易度判定部15は、ステップS71で計数された数とステップS72で特定された重み(ポイント)を掛け合わせた結果を、対象案件の難易度として算出する。なお、数×重み(ポイント)は一例であり、対象案件の難易度はこれに限定されない。例えば、他のパラメータを含めてもよいし、演算も積算に限定されない。またさらに、数や重み(ポイント)自身を対象案件の難易度として用いてもよい。
【0052】
次に、図11(b)に示す第2の手法について説明する。ステップS74において、案件難易度判定部15は、ステップS6で特定された懸念キーワードの出現頻度を、類似度判定リスト161-2を用いて特定する。つまり、類似度判定リスト161-2のうち、類似資料である反省資料に該当する懸念キーワードに対応する出現頻度が特定される。
【0053】
次に、ステップS75において、案件難易度判定部15は、ステップS74で特定された出現頻度のうち、ステップS1で入力された対象案件資料22における懸念キーワードの出現頻度に類似する出現頻度を特定する。類似する出現頻度とは、一致を含めその差分が一定値以下のものを含む。
【0054】
次に、ステップS76において、案件難易度判定部15は、ステップS75で特定された出現頻度に対応する難易度を、類似度判定リスト161-2から特定する。そして、ステップS77において、案件難易度判定部15は、ステップS76で特定された難易度に基づいて、対象案件の難易度を判定する。例えば、案件難易度判定部15は、ステップS76で特定された難易度の代表値を算出する。代表値としては、総和や平均などが含まれ、これらを難易度として判定する。以上で、第2の手法についての説明を終わる。なお、本手法については、案件難易度判定部15が類似度判定リスト161-2を用いて、出現頻度に基づき最も類似する反省資料21を特定し、これに該当する過去事例の難易度を、対象案件の難易度として判定してもよい。
【0055】
以上で、ステップS7の詳細の説明を終わり、図8に戻り説明を続ける。ステップS8において、案件難易度判定部15は、対策・施策リスト23を用いて、対策・施策を特定する。つまり、案件難易度判定部15は、ステップS6で特定された懸念キーワードに該当する対策・施策を特定する。
【0056】
そして、案件難易度判定部15は、ステップS7やS8の結果を用いて、結果レポート200を作成することができる。図12は、本実施形態における結果レポート200を示す図である。図12において、結果レポート200は、対象案件であるシステム構築プロジェクトごとに、その難易度、ステップS6で特定された懸念キーワード、ステップS8で特定された対策・施策が記録される。また、案件難易度判定部15は、結果レポート200を、記憶部16やデータベースシステム20に記憶することが望ましい。
【0057】
さらに、案件難易度判定部15は、結果レポート200を、インターフェース部17を介して端末装置100-1や100-2に表示させることも可能である。この場合、図12に示す態様で表示できる。この結果、対象案件に関わっている利用者が、その難易度や対策・施策を理解できる。なお、ステップS8のうち、対策・施策の特定を省略してもよい。この場合、結果レポート200の対策・施策を省略できる。さらに、結果レポート200の対策・施策を残し、難易度や懸念キーワードを省略してもよい。
【0058】
以上のように、本実施形態では、ステップS5で検索された類似資料に基づいて、対象案件であるシステム構築プロジェクトについて、1つの評価として難易度を判定している。このため、ステップS6やS7を省略することも可能である。この場合、類似資料の数や類似資料ごとに定められる難易度などの評価を実現できる。
【0059】
以上で、本実施形態の説明を終わるが、本発明は本実施形態に限定されない。特に、案件については、システム構築プロジェクトに限定されず、様々な業務に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1…案件管理サーバ、11…中間ファイル作成部、12…自然言語処理部、13…類似資料検索部、14…突合部、15…案件難易度判定部、16…記憶部、161…案件難易度判定ルール、162…キーワード位置判定辞書、17…インターフェース部、20…データベースシステム、21…反省資料、22…対象案件資料、23…対策・施策リスト、30…ネットワーク、100…端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12