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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】不具合分析装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20241017BHJP
   G06F 11/34 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G06F11/07 190
G06F11/34 176
G06F11/07 140V
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021188883
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075775
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 浩資
(72)【発明者】
【氏名】若林 昇
(72)【発明者】
【氏名】秋下 耀介
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/110720(JP,A1)
【文献】特開2020-154935(JP,A)
【文献】特開2015-99533(JP,A)
【文献】特開2012-234273(JP,A)
【文献】特開2002-207612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
G06F 11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システムの少なくとも複数の制御装置群を分析対象範囲とする不具合分析装置において、
前記制御装置群の出力ログを比較し不具合疑いログを検出する不具合疑いログ検出部と、
前記不具合疑いログ検出部で不具合疑いログが検出されなかった場合に不具合疑いログの指定を受け付ける画面を表示する不具合疑いログ指定画面表示部と、
前記不具合疑いログ検出部が検出した不具合疑いログまたは前記不具合疑いログ指定画面表示部が指定を受け付けた不具合疑いログをもとに前記制御装置群の不具合原因の候補を抽出する不具合原因候補検出部と、
を有する不具合分析装置。
【請求項2】
前記不具合原因候補検出部は、前記制御装置群の通信データの流れに基づき送信先から送信元にたどりながら不具合原因候補を検出することを特徴とする、請求項1に記載の不具合分析装置。
【請求項3】
前記不具合原因候補検出部は、最も送信元の制御装置群側で検出された不具合疑いログの送信元装置を、不具合原因の主候補とすることを特徴とする、請求項2に記載の不具合分析装置。
【請求項4】
前記制御装置群の出力ログを取得するログ取得部と、
ログのデータ項目に関する仕様を保存するログ仕様記憶部と、
システム構造を記憶するシステム構造記憶部と、
前記不具合原因の候補を表示する不具合原因候補表示部と、
をさらに備える請求項2または3のいずれか一つに記載の不具合分析装置。
【請求項5】
前記システム構造記憶部は、前記制御システム内の装置のプログラムに関する情報を記憶し、
前期不具合原因候補検出部は、プログラムの構成単位を不具合原因候補として検出することを特徴とする、請求項4に記載の不具合分析装置。
【請求項6】
前記不具合原因候補検出部は、不具合原因候補となるプログラムの構成単位を不具合原因の順位付けと共に検出することを特徴とする、請求項5に記載の不具合分析装置。
【請求項7】
制御システムの少なくとも複数の制御装置群を分析対象範囲とする不具合分析方法において、
ログ分析対象範囲を選択するステップと、
前記制御装置群の出力ログを比較し不具合疑いログを検出するステップと、
前記不具合疑いログ検出部で不具合疑いログが検出されなかった場合に不具合疑いログの指定を受け付けるステップと、
前記不具合疑いログ検出部が検出した不具合疑いログまたは前記不具合疑いログ指定画面表示部が指定を受け付けた不具合疑いログをもとに前記制御装置群の不具合原因の候補を抽出するステップと、
を備える不具合分析方法。
【請求項8】
前記制御装置群の不具合原因候補を示す不具合原因候補指示標識を画面で表示するステップをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の不具合分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御システムの不具合分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年多数の装置を通信制御する制御システムが色々な分野で普及し、列車の統合管理システム(Train Control Managemet System:TCMS)などにも取り入れられている。
【0003】
そうした制御システムの開発では、開発および運用コストを削減し、不具合があった際の動作不能時間を短縮すべく、制御システムの不具合原因の特定を効率化するニーズがある。特許文献1では、類似度の高い複数の装置が出力するログを比較し、その差異に基づいて不具合の重要度を演算するログ解析装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-203431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、制御対象装置の制御装置に対する出力のみを解析対象としているため、機能の異なるものを含む複数の制御装置の間をデータが縦横に流れながら連携する制御システムにおいて、どの制御装置が不具合の原因であるかを特定するための情報を得ることが想定されていない。
そこで本発明は、機能の異なるものを含む複数の制御装置で構成される制御システムを対象に、制御システムのどの箇所が不具合原因であるかを特定するために有用な情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、代表的な本発明の不具合分析装置の一つは、制御システムの少なくとも複数の制御装置群を分析対象範囲とし、制御装置群の出力ログを比較し不具合疑いログを検出する不具合疑いログ検出部と、不具合疑いログ検出部で不具合疑いログが検出されなかった場合に不具合疑いログの指定を受け付ける画面を表示する不具合疑いログ指定画面表示部と、不具合疑いログ検出部が検出した不具合疑いログまたは不具合疑いログ指定画面表示部が指定を受け付けた不具合疑いログをもとに制御装置群の不具合原因の候補を抽出する不具合原因候補抽出部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機能の異なるものを含む複数の制御装置で構成される制御システムを対象に、制御システムのどの箇所が不具合原因であるかを特定するために有用な情報を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、不具合分析装置のハードウェア構成を示す図である。
図2図2は、不具合分析装置の機能ブロック図である。
図3図3は、不具合分析装置が分析の対象とする制御システムの構成例を示す図である。
図4図4は、ログ仕様の一例を示す図である。
図5図5は、システム構造の一例を示す図である。
図6図6は、不具合分析装置の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、不具合分析装置の不具合疑いログ検出の動作例を示す図である。
図8図8は、不具合分析装置の不具合疑いログ指定画面の一例を示す図である。
図9図9は、不具合分析装置の不具合原因候補検出部の動作の一例を示す図である。
図10図10は、不具合分析装置の不具合原因候補表示画面の一例を示す図である。
図11図11は、プログラム構造の一例を示す図である。
図12図12は、プログラム構造をグラフ構造として表した一例を示す図である。
図13図13は、実施例2に係る不具合分析装置の不具合原因候補表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0010】
[実施例1]
<不具合分析装置>
図1は、不具合分析装置のハードウェア構成を示す図である。同図に示すように、不具合分析装置10は、プロセッサ101、主記憶装置102、補助記憶装置103、入力装置104、出力装置105、及び通信装置106を備える。
【0011】
プロセッサ101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を用いて構成される。主記憶装置102は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、NVRAM(Non Volatile RAM)等である。プロセッサ101及び主記憶装置102は情報処理装置を構成する。プロセッサ101が、主記憶装置102に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、不具合分析装置10の様々な機能が実現される。補助記憶装置103は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置、記録媒体の読取/書込装置等である。補助記憶装置103に格納されているプログラムやデータは主記憶装置102に随時ロードされる。
【0012】
入力装置104は、ユーザから情報を取得する装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等である。出力装置105は、ユーザに情報を提供する装置であり、例えば、液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード、スピーカ等である。通信装置106は、LAN等の通信手段を介した他の装置との間の通信を実現する有線方式又は無線方式の通信インタフェースであり、例示すれば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USB(Universal Serial Interface)モジュール、シリアル通信モジュール等である。
【0013】
図2は、不具合分析装置の機能ブロック図である。ログ取得部201は、制御システム21に含まれる複数の制御装置に記録されたログを、通信装置106を介して取得するもので、プロセッサ101、主記憶装置102、入力装置104、および通信装置106により実行される。
制御システム21は機器を制御するシステムであり、不具合分析装置10の分析対象である。
ログ取得部201が取得するログとは、制御システム21を構成する制御装置間の通信データである。
【0014】
ログ仕様記憶部202は、制御システム21に含まれる制御装置に記録されるログの仕様を記憶するもので、補助記憶装置103で行われる。
【0015】
不具合疑いログ検出部203は、ログ取得部201が取得したログを、ログ仕様記憶部202が記憶するログの仕様に基づいて分析し、制御システム21の不具合によって出力されたと推測されるログ(不具合疑いログ)を検出する。プロセッサ101および主記憶装置102で実行される。
【0016】
不具合疑いログ指定画面表示部204は、不具合疑いログ検出部203が不具合疑いログを検出できなかった場合に、不具合分析装置10のユーザから、不具合疑いログの指定を受け付ける。プロセッサ101、主記憶装置102、および出力装置105により実行される。
【0017】
システム構造記憶部205は、制御システム21の構造に関する情報を記憶するもので、補助記憶装置103で行われる。
【0018】
不具合原因候補検出部206は、不具合疑いログ検出部203または不具合疑いログ指定画面表示部204にて得られた不具合疑いログを、システム構造記憶部205が記憶するシステム構造に基づいて分析し、制御システム21の不具合について、その原因の候補を検出する。プロセッサ101および主記憶装置102で実行される。
【0019】
不具合原因候補表示部207は、不具合原因候補検出部206が検出した不具合原因候補を、不具合分析装置10のユーザに表示する。プロセッサ101、主記憶装置102、および出力装置105により実行される。
【0020】
<制御システム>
図3は、不具合分析装置10が分析の対象とする制御システム21の構成例を示す図である。制御システム21は、情報表示装置301、システム制御装置302、通信装置群303、機器制御装置群304を備える。これらはそれぞれ異なる機能を有する。また、通信装置群303、機器制御装置群304は、同一機能を有する複数の装置を備える。すなわち、通信装置群303は通信装置A3031、通信装置B3032、通信装置C3033を備え、機器制御装置群304は同一機能を有する機器制御装置A3041、機器制御装置B3042、機器制御装置C3043を備える。
ただし制御システム21に含まれる装置としては、機能的にこれに限られるものでなく、装置の数や通信する装置の組み合わせも例示であることは言うまでもない。
【0021】
情報表示装置301は、システム制御装置302との間で制御状況をモニターしたり指示を入力するインターフェースである。システム制御装置302は、通信装置を介して個々の機器制御装置の動作制御を行う。通信装置A3031~C3033は、システム制御装置と他の通信装置、機器制御装置との間で情報の流通管理と受け渡しを行う。機器制御装置A3041~C3043は、装置内の機械の動きや電気の流れを制御する装置を意味し、例えば空調やブレーキといった装置が含まれる。
【0022】
本実施例において、単に「制御装置」というときは、制御システム21に含まれ、不具合を分析する対象となる個々の装置、すなわち情報表示装置、システム制御装置、通信装置、機器制御装置が含まれる。
【0023】
また本実施例において、機能が同じで同様の動作をする制御装置を群として分類することとし(以下このようなまとまりを、「装置群」または「制御装置群」ということもある。)、同様の機能(例えば空調)を有する機器制御装置A~Cをまとめて機器制御装置群と言う。したがって例えば列車においては、各車両の空調(車両1の機器制御装置(空調)A、車両2の機器制御装置(空調)B、車両3の機器制御装置(空調)C)からなる機器制御装置(空調)群または各車両のブレーキ(車両1の機器制御装置(ブレーキ)A、車両2の機器制御装置(ブレーキ)B、車両3の機器制御装置(ブレーキ)C)からなる機器制御装置(ブレーキ)群を有することとなる。ただし必ずしも制御装置群に制御装置が複数存在しなくてもよく、制御装置群に一つの制御装置のみ存在する場合もあり得る。
【0024】
<ログ仕様>
ログ仕様記憶部202が記憶するログ仕様について説明する。図4は、ログ仕様の一例を示す図である。ログ仕様40の各行は一つのデータに関する仕様を表し、送信経路401、データ位置402、データ内容403、データ変化分類404、装置固有データ405をデータ項目として備える。
そして通信データのログの内容は、時刻、送信元、送信先、データ位置、データ内容の値(データ値)を含む。ログはおおよそ数100ミリ秒から数秒の周期で収集されるがこれに限られるわけではない。ログを送信元の側から出力ログと言う場合がある。
【0025】
送信経路401は、当該データの送信元と送信先を表す。データ位置402は、ログ内の当該データの位置を表す。データ内容403は、当該データの内容を説明するもので、例えば、機器番号(空調は1、ブレーキは2のように機器を特定する番号)、制御異常(制御異常検知の有無)、制御モードA有効(制御モードA(例えば冷房)が有効か否か)がある。データ変化分類404は、当該データの値の変化の形態を分類したもので、例えば、離散(0、1、・・・のように一定の間隔をおいた変化)、連続(電流、電圧、圧力のような、物理的作用による連続的な変化)、ブール(異常の有無など二値の変化)がある。装置固有データ405は、同種の装置であっても装置ごとに異なる値となることを期待するか否かを表す。
【0026】
<システム構造>
システム構造記憶部205が記憶するシステム構造について説明する。図5は、システム構造の一例を示す図である。システム構造50の各行は一つの装置を表し、装置501、群502、接続装置(被制御)503、接続装置(制御)504を項目として備える。
【0027】
装置501は装置を識別する名称である。群502は当該装置の属する群であり、同種の機能を有する装置は同名の群に属する。接続装置(被制御)503、接続装置(制御)504は当該装置が通信手段を介して接続する装置の名称である。ここで、制御システム21内では、制御の命令を与えるデータが接続装置(被制御)から接続装置(制御)の方向に流れ、制御の結果を示すデータが接続装置(制御)から接続装置(被制御)の方向に流れるものとする。したがって、例えばシステム制御装置に関しては、制御命令のデータは、情報表示装置からシステム制御装置、さらにシステム制御装置から通信装置Aに流れ、一方制御結果のデータは、通信装置Aからシステム制御装置、さらにシステム制御装置から情報表示装置に流れる。
【0028】
<不具合分析のステップ>
図6は、不具合分析装置の動作を表すフローチャートである。図6のフローチャートに基づく動作は以下の通りである。
ステップ601:以降のステップで分析の対象となるログの、抽出対象範囲を選択する。選択は、ログの開始時刻、終了時刻、対象装置等の条件の指定によって行う。対象装置等を指定する場合は、少なくとも2以上の制御装置群を指定可能とする。
ステップ602:ステップ601で指定した範囲のログの中から不具合疑いログを検出する。
ステップ603:ステップ602で不具合疑いログを検出したか判定する。
ステップ604:ステップ603で不具合疑いログを検出していなかった場合に、ユーザからの不具合疑いログの指定を受け付ける。
ステップ605:ステップ603またはステップ604の不具合疑いログをもとに、不具合原因を分析する。
ステップ606:ステップ605の分析結果を、不具合原因の候補として表示する。
【0029】
<不具合疑いログ検出手法>
ステップ602をさらに説明する。図7は、不具合分析装置の不具合疑いログ検出の動作例を示す図である。ログ70は機器制御装置A3041から通信装置A3031への通信データに関するログ、ログ71は機器制御装置B3042から通信装置B3032への通信データに関するログ、ログ72は機器制御装置C3043から通信装置C3033への通信データに関するログを、それぞれ同じ時刻、同じデータに関して示している。ここで、機器制御装置A3041、機器制御装置B3042、機器制御装置C3043は同様の動作をすることが期待され、機器に依存するもの以外は同一のデータが通信装置A3031、通信装置B3032、通信装置C3033から与えられるものとする。
【0030】
日時701、711、721は各々のログが取得された時刻、データ位置702、712、722は各々のログにおけるデータの位置、データ値703、713、723は各々のログにおけるデータ内容の値に係るテータ項目を示している。例えば、データ位置が1のデータ内容が機器番号を意味し、データ位置が2のデータ内容が制御異常を意味し、データ位置が3のデータ内容が制御モードA有効を意味する場合、ログ70は機器番号が1(例えば空調)について、制御異常(空調側で異常を検知する(True)か否か(False))がFalse(異常検知なし)であり、制御モードA有効(モードA(冷房)が有効か否か)がTrue(有効)であることを示している。
【0031】
ログ70、ログ71、ログ72を比較すると、データ位置3のデータについて、ログ71のみデータ値713がFalseとなっている。このように、同様の動作をすることが期待される装置群のログを比較し、同様の動作をしていないことを表すデータが存在すれば、それを不具合疑いログとして検出する。
【0032】
同様の動作をしていないことの検出方法として、同じデータ値を取るログの数が少ないことを検出する、データ値が全データの平均値や中央値から一定以上外れていることを検出する、などの方法を取ることもできる。この方法は、ログ仕様40にあるデータ変化分類404に従って、データ値の変化形態に適した方法で定めればよい。また、装置固有データ405で該当となっているデータは、装置ごとに異なる値を取ることが正常であるとして、検出の対象としない。
【0033】
<不具合疑いログ指定手法>
ステップ604をさらに説明する。図8は、不具合分析装置の不具合疑いログ指定画面の一例を示す図である。不具合疑いログ指定画面80は、決定ボタン801、条件指定部802、ログ指定部803を備える。
【0034】
条件指定部802は、ログ指定部803に表示するログに関する条件として、日時の範囲および送信経路の指定を受け付ける。例えば現場で不具合動作が疑われる装置があった場合にそれが含まれる範囲を指定する。ログ指定部803は、条件指定部802で指定されたログを表示し、不具合疑いログの指定を受け付ける。指定の仕方は特段限定されないが、例えば画面上指定する箇所(例えば機器制御装置Bの制御モードA有効がFalseになっている箇所)をクリックすることでもよい。
ユーザがログ指定部803で不具合疑いログを指定した後、決定ボタン801を押すと、ステップ604は終了する。
【0035】
<不具合原因分析手法>
ステップ605をさらに説明する。図9は、不具合分析装置の不具合原因候補検出部206の動作の一例を示す図である。図9の矢印は、システム構造50における接続装置(制御)から接続装置(被制御)へのデータの流れを表す。凡例91の通り不具合疑いログが検出されている例が示されている。このとき不具合原因を分析する手法としては、指定された分析対象範囲の中でデータの流れを送信先の制御装置群から送信元の制御装置群へ逆にたどり、制御装置群における制御装置の出力ログ(以下、便宜上「制御装置群の出力ログ」という場合がある。)の比較から不具合疑いログを検出しつつ、最も送信元の制御装置群側で検出された不具合疑いログの送信元装置を、不具合原因の主候補とする。また、その他の不具合疑いログの送信元装置も、不具合原因の候補とする。
【0036】
例えば図9においては、システム制御装置302から情報表示装置301のログの不具合を分析し、次に通信装置群303からシステム制御装置302のログの不具合を分析し、次に通信制御装置間のログの不具合を分析し、次に機器制御装置群304から通信装置群303のログの不具合を分析するという流れで不具合原因の候補を検出する。
【0037】
<不具合原因表示>
ステップ606をさらに説明する。図10は、不具合原因候補表示画面の一例を示す図である。不具合原因候補表示画面100は不具合原因候補表示部207の構成要素で、装置表示標識1001、不具合原因主候補指示標識1002、不具合原因候補指示標識1003を備える。
【0038】
装置表示標識1001は、制御システム21に含まれる各装置を表す図形を表示する。不具合原因主候補指示標識1002、不具合原因候補指示標識1003は、それぞれ、ステップ605で特定された不具合原因主候補、不具合原因候補を示す図形を表示する。
【0039】
<作用・効果>
本実施例により、機能の異なるものを含む複数の制御装置(複数の制御装置群)で構成される制御システムを対象に、制御システムのどの箇所が不具合原因であるかを特定するために有用な情報を提供することができる。
【0040】
[実施例2]
本実施例は、システム構造記憶部205が記憶する情報に、装置を動かすプログラムに関する情報を追加し、不具合原因候補検出部206が検出する不具合原因候補の対象にプログラムも含ませてより詳細に分析する点で実施例1と異なる。以下の説明において、上述の実施例1と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0041】
まずシステム構造記憶部205が記憶するプログラム構造について説明する。図11は、プログラム構造の一例を示す図である。プログラム構造110の各行は、制御システム21のいずれかの装置(例えば空調)で実行されるプログラムの構成単位を表し、関数1101、呼出先関数1102、装置外通信データ1103を項目として備える。関数1101はプログラムの構成単位を識別する名称である。通常、関数は装置が動作し機能する上で実行される各種演算に関連する。なお、プログラム構造110において扱うプログラムの構成単位はコンポーネント、モジュール、クラスなど、関数以外の構成単位であってもよいが、本実施例においては関数をプログラムの構成単位として扱う。呼出先関数1102は当該関数が実行時に呼び出す関数の名称である。装置外通信データ1103は、当該関数の中でアクセスが発生する、装置外と通信するデータである。例えば機器制御装置(空調など)のfunction_dによりデータ位置2のデータが出力される。
【0042】
次に図12を用いて、ステップ605で不具合原因候補検出部206が不具合原因を分析する方法を説明する。図12は、プログラム構造110をグラフ構造として表した一例を示す図である。関数としてfunction_a1201、function_b1202、function_c1203、function_d1204を有し、function_b1202は通信データ(1)1205へ、function_dは通信データ(2)1206へアクセスする。ここで、通信データ(2)が不具合疑いログとして検出されているとき、それにアクセスするfunction_dを不具合原因(例えばバグ)の第一候補とする。また、function_dの動作に影響を与えるfunction_aを不具合原因の第二候補、さらにfunction_aの動作に影響を与えるfunction_b、function_cを不具合原因の第三候補とする。ここで、不具合原因の順位付けには図12に示す関数の呼び出し関係のほか、関数の複雑度などの指標を考慮してもよい。例えば関数の複雑度が高いと不具合の発生する可能性が高まることが考えられる。
【0043】
ステップ606で表示される、不具合原因候補表示画面について説明する。図13は、実施例2に係る不具合分析装置の不具合原因候補表示画面の一例を示す図である。不具合原因候補表示画面100は、順位1301、装置1302、関数1303を、上述したステップ605の結果に基づき表示する。
【0044】
<作用・効果>
本実施例により、不具合原因候補を装置を動作させるプログラムにまで広げてより詳細に特定することができる。
【0045】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…不具合分析装置、101…プロセッサ、102…主記憶装置、103…補助記憶装置、104…入力装置、105…出力装置、106…通信装置、21…制御システム、201…ログ取得部、202…ログ仕様記憶部、203…不具合疑いログ検出部、204…不具合疑いログ指定画面表示部、205…システム構造記憶部、206…不具合原因候補検出部、207…不具合原因候補表示部、301…情報表示装置、302…システム制御装置、303…通信装置群、304…機器制御装置群、3031…通信装置A、3032…通信装置B、3033…通信装置C、3041…機器制御装置A、3042…機器制御装置B、3043…機器制御装置C、40…ログ仕様、401…送信経路、402…データ位置、403…データ内容、404…データ変化分類、405…装置固有データ、50…システム構造、501…装置、502…群、503…接続装置(被制御)、504…接続装置(制御)、601~606…ステップ、70、71、72…ログ、701、711、721…日時、702、712、722…データ位置、703、713、723…データ値、80…不具合疑いログ指定画面、801…決定ボタン、802…条件指定部、803…ログ指定部、91…凡例、100…不具合原因候補表示画面、1001…装置表示標識、1002…不具合原因主候補指示標識、1003…不具合原因候補指示標識、110…プログラム構造、1101…関数、1102…呼出先関数、1103…装置外通信データ、1201~1204…function_a~function_d、1205、1206…通信データ(1)、通信データ(2)、1301…順位、1302…装置、1303…関数
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