(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241017BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2021192899
(22)【出願日】2021-11-29
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】森岡 育久
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-191561(JP,A)
【文献】特開2020-004928(JP,A)
【文献】特開2020-161597(JP,A)
【文献】特開平07-018438(JP,A)
【文献】特開2017-208542(JP,A)
【文献】特開2002-110774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
冷媒流路を有する冷却基材と、
前記セラミック基材と前記冷却基材とを接合する接合層と、
前記ウエハ載置面の基準面に、頂面でウエハの下面を支持する複数の小突起と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記小突起の頂面は同一平面上にあり、
前記ウエハ載置面のうち平面視で前記冷媒流路と重複する流路重複範囲では、前記冷媒流路を平面視したときに前記ウエハ載置面と重複する範囲での最上流部に対向する部分において前記小突起の面積率が最低になっている、ウエハ載置台。
【請求項2】
前記流路重複範囲における前記小突起の面積率は、前記最上流部に対向する部分から前記冷媒流路の下流に行くにつれて徐々に高くなっている、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記流路重複範囲では、前記冷媒流路を平面視したときに前記ウエハ載置面と重複する範囲での最下流部に対向する部分における前記小突起の面積率は、前記最上流部に対向する部分における前記小突起の面積率の150%以上となっている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記流路重複範囲の所定の領域に比べて、前記所定の領域に隣接し前記流路重複範囲外の隣接領域の方が、前記小突起の面積率が高くなっている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のウエハ載置台であって、
前記冷却基材を上下方向に貫通する穴
を備え、
前記冷媒流路は、前記穴の周辺領域では前記穴の周辺領域から外れた領域に比べて前記冷媒流路の断面積が小さくなっており、
前記ウエハ載置面のうち前記穴の直上領域から外れた周辺領域に比べて、前記直上領域の方が、前記小突起の面積率が高くなっている、ウエハ載置台。
【請求項6】
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
冷媒流路を有する冷却基材と、
前記セラミック基材と前記冷却基材とを接合する接合層と、
前記ウエハ載置面の基準面に、頂面でウエハの下面を支持する複数の小突起と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記小突起の頂面は同一平面上にあり、
前記ウエハ載置面のうち平面視で前記冷媒流路と重複する流路重複範囲では、前記冷媒流路を平面視したときに前記ウエハ載置面と重複する範囲での最上流部に対向する部分において前記小突起の頂面から前記基準面までの距離が最長になっている
(ただし、前記小突起の頂面から前記基準面までの距離が全て同じものを除く)、ウエハ載置台。
【請求項7】
前記流路重複範囲における前記小突起の頂面から前記基準面までの距離は、前記最上流部に対向する部分から前記冷媒流路の下流に行くにつれて徐々に短くなっている、
請求項6に記載のウエハ載置台。
【請求項8】
前記流路重複範囲では、前記冷媒流路を平面視したときに前記ウエハ載置面と重複する範囲での最下流部に対向する部分における前記小突起の頂面から前記基準面までの距離は、前記最上流部に対向する部分における前記小突起の頂面から前記基準面までの距離の80%以下となっている、
請求項6又は7に記載のウエハ載置台。
【請求項9】
前記流路重複範囲の所定の領域に比べて、前記所定の領域に隣接し前記流路重複範囲外の隣接領域の方が、前記小突起
の頂面から前記基準面までの距離が短い、
請求項6~8のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載のウエハ載置台であって、
前記冷却基材を上下方向に貫通する穴
を備え、
前記冷媒流路は、前記穴の周辺領域では前記穴の周辺領域から外れた領域に比べて前記冷媒流路の断面積が小さくなっており、
前記ウエハ載置面のうち前記穴の直上領域から外れた周辺領域に比べて、
前記直上領域の方が、前記小突起の頂面から前記基準面までの距離が短くなっている、
ウエハ載置台。
【請求項11】
前記冷却基材は、金属マトリックス複合材料で作製され、
前記接合層は、金属接合層である、
請求項1~10のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハ載置面を有し電極を内蔵するセラミック基材と、冷媒流路を有する冷却基材と、セラミック基材と冷却基材とを接合する接合層とを備えたウエハ載置台が知られている。例えば、特許文献1,2には、こうしたウエハ載置台において、冷却基材として、線熱膨張係数がセラミック基材と同程度の金属マトリックス複合材料で作製されたものを用いる点が記載されている。また、ウエハ載置台に、電極に給電するための給電端子を挿通する端子穴やウエハの裏面にHeガスを供給するためのガス穴やウエハをウエハ載置面から持ち上げるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴を設ける点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5666748号公報
【文献】特許第5666749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウエハ載置台の使用時には、冷媒は冷媒流路の上流側から下流側に向かってウエハから熱を奪いながら流れるため、冷媒の温度は上流側に比べて下流側の方が高くなりやすく、結果としてウエハの均熱性が十分得られないことがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハの均熱性を高めることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1のウエハ載置台は、
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
冷媒流路を有する冷却基材と、
前記セラミック基材と前記冷却基材とを接合する接合層と、
前記ウエハ載置面の基準面に、頂面でウエハの下面を支持する複数の小突起と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記小突起の頂面は同一平面上にあり、
前記ウエハ載置面のうち平面視で前記冷媒流路と重複する流路重複範囲では、前記冷媒流路を平面視したときに前記ウエハ載置面と重複する範囲での最上流部に対向する部分において前記小突起の面積率が最低になっている、
ものである。
【0007】
この第1のウエハ載置台では、流路重複範囲における小突起の面積率は最上流部に対向する部分で最低になっている。ここで、「小突起の面積率」とは、単位面積に占める、小突起の総面積の割合である。ウエハ載置台の使用時、冷媒は冷媒流路の上流側から下流側に向かって高温のウエハから熱を奪いながら流れるため、冷媒流路を流れる冷媒の温度は上流側に比べて下流側の方が高くなる。一方、このウエハ載置台では、流路重複範囲における小突起の面積率は最上流部に対向する部分で最低になっているため、冷媒流路からウエハ載置面までの熱抵抗は最上流部に対向する部分に比べてその部分以外の方が低くなる。これは、以下の理由による。小突起はセラミックであり、セラミックは空隙に比べて熱伝導率が良好である。そのため、小突起の面積率が高い部分では、小突起の面積率が高くない部分に比べて、平面方向でセラミックが占める割合が高く、ウエハと冷媒との熱交換が促進され、抜熱が促進される。そのため、総合的には、ウエハ載置面の流路重複範囲で温度差を小さくすることができる。したがって、ウエハの均熱性が高くなる。
【0008】
本発明の第1のウエハ載置台において、前記流路重複範囲における前記小突起の面積率は、前記最上流部に対向する部分から前記冷媒流路の下流に行くにつれて徐々に高くなっているものとしてもよい。こうすれば、ウエハの均熱性がより高くなる。
【0009】
本発明の第1のウエハ載置台において、前記流路重複範囲では、前記冷媒流路を平面視したときに前記ウエハ載置面と重複する範囲での最下流部に対向する部分における前記小突起の面積率は、前記最上流部に対向する部分における前記小突起の面積率の150%以上となっているものとしてもよい。こうすれば、ウエハの均熱性が更に高くなる。
【0010】
本発明の第1のウエハ載置台において、前記流路重複範囲の所定の領域に比べて、前記所定の領域に隣接し前記流路重複範囲外の隣接領域の方が、前記小突起の面積率が高くなっているものとしてもよい。一般に、流路重複範囲の所定の領域に比べて、隣接領域の方が抜熱されにくい。真下に冷媒流路がないからである。一方、本発明のウエハ載置台では、流路重複範囲の所定の領域に比べて、隣接領域の方が、小突起の面積率が高くなっている。そのため、特定範囲の抜熱が促進される。したがって、ウエハの均熱性がより高くなる。
【0011】
本発明の第1のウエハ載置台は、前記冷却基材を上下方向に貫通する穴を備えていてもよく、前記冷媒流路は、前記穴の周辺領域では前記穴の周辺領域から外れた領域に比べて前記冷媒流路の断面積が小さくなっていてもよく、前記ウエハ載置面のうち前記穴の直上領域から外れた周辺領域に比べて、前記直上領域の方が、前記小突起の面積率が高くなっているものとしてもよい。一般にウエハのうちこうした穴の直上領域はホットスポットになりやすい。一方、周辺領域に比べて、こうした直上領域の方が、小突起の面積率が高くなっている。そのため、直上領域の抜熱が促進される。したがって、ウエハの均熱性がより高くなる。
【0012】
本発明の第2のウエハ載置台は、
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
冷媒流路を有する冷却基材と、
前記セラミック基材と前記冷却基材とを接合する接合層と、
前記ウエハ載置面の基準面に、頂面でウエハの下面を支持する複数の小突起と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記小突起の頂面は同一平面上にあり、
前記ウエハ載置面のうち平面視で前記冷媒流路と重複する流路重複範囲では、前記冷媒流路を平面視したときに前記ウエハ載置面と重複する範囲での最上流部に対向する部分において前記小突起の頂面から前記基準面までの距離が最長になっている、
ものである。
【0013】
この第2のウエハ載置台では、流路重複範囲における小突起の頂面から基準面までの距離は最上流部に対向する部分で最長になっている。ウエハ載置台の使用時、冷媒は冷媒流路の上流側から下流側に向かって高温のウエハから熱を奪いながら流れるため、冷媒流路を流れる冷媒の温度は上流側に比べて下流側の方が高くなる。一方、このウエハ載置台では、流路重複範囲における小突起の頂面から基準面までの距離は最上流部に対向する部分で最も長くなっているため、冷媒流路からウエハ載置面までの熱抵抗は最上流部に対向する部分に比べてその部分以外の方が低くなる。これは、以下の理由による。小突起はセラミックであり、セラミックは空隙に比べて熱伝導率が良好である。そのため、小突起の頂面から基準面までの距離が短くなっている部分では、小突起の頂面から基準面までの距離が短くなっていない部分に比べて、厚み方向で空隙が占める割合が低いためウエハと冷媒との熱交換が促進され、抜熱が促進される。そのため、総合的には、ウエハ載置面の流路重複範囲で温度差を小さくすることができる。したがって、ウエハの均熱性が高くなる。
【0014】
本発明の第2のウエハ載置台において、前記流路重複範囲における前記小突起の頂面から前記基準面までの距離は、前記最上流部に対向する部分から前記冷媒流路の下流に行くにつれて徐々に短くなっているものとしてもよい。こうすれば、ウエハの均熱性がより高くなる。
【0015】
本発明の第2のウエハ載置台において、前記流路重複範囲では、前記最下流部に対向する部分における前記小突起の頂面から前記基準面までの距離は、前記最上流部に対向する部分における前記小突起の頂面から前記基準面までの距離の80%以下となっていてもよい。こうすれば、ウエハの均熱性が更に高くなる。
【0016】
本発明の第2のウエハ載置台において、前記流路重複範囲の所定の領域に比べて、前記所定の領域に隣接し前記流路重複範囲外の隣接領域の方が、前記小突起の頂面から前記基準面までの距離が短くなっているものとしてもよい。一般に、流路重複範囲の所定の領域に比べて、隣接領域の方が抜熱されにくい。真下に冷媒流路がないからである。一方、本発明のウエハ載置台では、流路重複範囲の所定の領域に比べて、隣接領域の方が、小突起の頂面から基準面までの距離が短い。そのため、特定範囲の抜熱が促進される。したがって、ウエハの均熱性がより高くなる。
【0017】
本発明の第2のウエハ載置台は、前記冷却基材を上下方向に貫通する穴を備えていてもよく、前記冷媒流路は、前記穴の周辺領域では前記穴の周辺領域から外れた領域に比べて前記冷媒流路の断面積が小さくなっていてもよく、前記ウエハ載置面のうち前記穴の直上領域から外れた周辺領域に比べて、前記直上領域の方が、前記小突起の頂面から前記基準面までの距離が短くなっているものとしてもよい。一般にウエハのうちこうした穴の直上領域はホットスポットになりやすい。一方、周辺領域に比べて、こうした直上領域の方が、小突起から基準面までの距離が短くなっている。そのため、直上領域の抜熱が促進される。したがって、ウエハの均熱性がより高くなる。
【0018】
本発明の第1及び第2のウエハ載置台において、前記冷却基材は、金属マトリックス複合材料で作製されていてもよく、前記接合層は、金属接合層であってもよい。冷却基材が金属マトリックス複合材料、かつ接合層が金属接合層の構造では、冷媒流路からウエハ載置面までの熱抵抗が小さいため、ウエハ温度は冷媒の温度勾配の影響を受けやすい。そのため、本発明を適用する意義が高い。また、金属接合層は熱伝導率が高いため抜熱に適している。更に、セラミック基材と金属マトリックス複合材料製の冷却基材とは熱膨張差を小さくすることができるため、金属接合層の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】チャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図。
【
図3】冷媒流路32を通る水平面で冷却基材30を切断した断面を上からみたときの断面図。
【
図5】直上領域R30及び周辺領域R40の拡大図。
【
図7】小領域A1,Akにおける小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離を示す説明図。
【
図9】冷媒流路82を通る水平面で冷却基材30を切断した断面を上からみたときの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はチャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、
図2はウエハ載置台10の平面図、
図3は冷媒流路32を通る水平面で冷却基材30を切断した断面を上からみたときの断面図、
図4は小領域Ai及び隣接領域Qiの拡大図、
図5は直上領域R30及び周辺領域R40の拡大図である。なお、説明の便宜上、
図2及び
図4では流路重複範囲R10にハッチングを施し、
図3では端子穴51、給電端子54及び絶縁管55などを省略した。
【0021】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台10は、セラミック基材20と、冷却基材30と、金属接合層40とを備えている。
【0022】
セラミック基材20は、円形のウエハ載置面22aを有する中央部22の外周に、環状のフォーカスリング載置面24aを有する外周部24を備えている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。ウエハ載置面22aには、ウエハWが載置され、FR載置面24aには、フォーカスリング78が載置される。セラミック基材20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。FR載置面24aは、ウエハ載置面22aに対して一段低くなっている。
【0023】
セラミック基材20の中央部22は、ウエハ載置面22aに近い側に、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。ウエハ吸着用電極26は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極26は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電吸着用電極である。セラミック基材20のうちウエハ吸着用電極26よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極26には、ウエハ吸着用直流電源52が給電端子54を介して接続されている。給電端子54は、ウエハ載置台10のうちウエハ吸着用電極26の下面と冷却基材30の下面との間に設けられた端子穴51に挿通されている。給電端子54は、端子穴51のうち冷却基材30及び金属接合層40を上下方向に貫通する貫通穴に配置された絶縁管55を通過して、セラミック基材20の下面からウエハ吸着用電極26に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源52とウエハ吸着用電極26との間には、ローパスフィルタ(LPF)53が設けられている。
【0024】
ウエハ載置面22aには、
図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド22bが形成され、全面に複数の小突起22cが形成されている。シールバンド22b及び複数の小突起22cは、ウエハ載置面22aの基準面22dに形成されている。小突起22cは、本実施形態では扁平な円柱突起である。シールバンド22bの頂面及び複数の小突起22cの頂面は、同一平面上に位置している。シールバンド22b及び小突起22cの高さ(つまり基準面22dからこれらの頂面までの距離)は数μm~数10μmである。ウエハWは、シールバンド22bの頂面及び複数の小突起22cの頂面に接触した状態でウエハ載置面22aに載置される。
【0025】
冷却基材30は、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC)ともいう)製の円板部材である。冷却基材30は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路32を備えている。この冷媒流路32は、冷媒供給路36及び冷媒排出路38に接続されており、冷媒排出路38から排出された冷媒は温度調整されたあと再び冷媒供給路36に戻される。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。セラミック基材20がアルミナ基材の場合、冷却基材30に用いるMMCとしては熱膨張係数がアルミナに近いAlSiCやSiSiCTiなどが好ましい。冷却基材30は、RF電源62に給電端子64を介して接続されている。冷却基材30とRF電源62との間には、ハイパスフィルタ(HPF)63が配置されている。冷却基材30は、下面側にウエハ載置台10を設置板96にクランプするのに用いられるフランジ部34を有する。
【0026】
冷媒流路32は、
図3に示すように、冷媒流路32を水平面で切断した断面を上からみたときに、冷却基材30のうちフランジ部34を除く領域の全体にわたって入口32aから出口32bまで一筆書きの要領で形成されている。本実施形態では、冷媒流路32はジグザグ状に形成されている。具体的には、冷媒流路32は、冷媒供給路36に繋がる入口32aから冷媒排出路38に繋がる出口32bに至るように、直線部32cと折り返し部32dとが交互に設けられている。ここで、冷媒流路32のうち平面視でウエハ載置面22aと重複する領域で最上流部32Uと最下流部32Lとを定めたとき、最上流部32Uと最下流部32Lは、
図3に示す位置になる。冷媒流路32の断面積は、端子穴51の周辺領域を除いて、冷媒流路32の最上流部32Uから最下流部32Lに向かって徐々に大きくなっている。冷媒流路32の天井面からウエハ載置面22aに設けられた小突起22cの頂面までの距離dは、
図1に示すように、最上流部32Uから最下流部32Lまでの間で一定である。
【0027】
金属接合層40は、セラミック基材20の下面と冷却基材30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0028】
ウエハ載置面22aのうち平面視で冷媒流路32と重複する範囲を、流路重複範囲R10と称する。流路重複範囲R10は
図2のハッチングされた領域である。流路重複範囲R10における小突起22cの面積率は、単位面積に占める小突起22cの頂面の総面積の割合であり、以下のようにして求める。すなわち、まず、
図2に示すように、流路重複範囲R10をn個(nは2以上の整数)の領域に分割する。ここで、そのn個の領域のうち冷媒流路32の上流側からi番目(iは1以上n以下の整数)の領域を小領域Aiとする。小領域A1~Anの面積は、全て同じである。次に、小領域Aiの面積を求めると共に小領域Aiに設けられた小突起22cの頂面の総面積を求める。そして、小領域Aiにある小突起22cの総面積を小領域Aiの面積で割り、小領域Aiにおける小突起22cの面積率を求める。流路重複範囲R10における小突起22cの面積率は、最上流部32Uに対向する部分すなわち小領域A1で最低となっている。
【0029】
流路重複範囲R10における小突起22cの面積率は、小領域A1から冷媒流路32の下流に行くにつれて(小領域A1から小領域Anに向かうにつれて)徐々に高くなっている。小領域Anは最下流部32Lに対向する部分である。流路重複範囲R10のうち最下流部32Lに対向する小領域Anにおける小突起22cの面積率は、最上流部32Uに対向する小領域A1における小突起22cの面積率の150%以上であることが好ましい。
【0030】
小突起22cの面積率は、流路重複範囲R10の小領域Aiに比べて、その小領域Aiに隣接し流路重複範囲R10外の隣接領域Qiの方が高い。例えば、
図4に示すように、小領域Ai(例えば小領域A6)の両側の隣接領域Qiにおける小突起22cの面積率は、小領域Aiにおける小突起22cの面積率よりも高い。
【0031】
ここで、ウエハ載置面22aのうち端子穴51の直上の領域を直上領域R30とし、直上領域R30から外れた直上領域周辺の領域を周辺領域R40とする。直上領域R30は所定半径(例えば半径25mm)の円形領域であり、周辺領域R40は直上領域R30を取り囲む環状領域である。小突起22cの面積率は、周辺領域R40に比べて、直上領域R30の方が高い。例えば、
図5に示すように、周辺領域R40に比べて、直上領域R30の方が、小突起22cの配置密度が高くなるように、小突起22cが設けられている。直上領域R30における小突起22cの面積率は、周辺領域R40における小突起22cの面積率の2倍以上であることが好ましい。
【0032】
セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の外周及び冷却基材30の側面は、絶縁膜42で被覆されている。絶縁膜42としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。
【0033】
こうしたウエハ載置台10は、チャンバ94の内部に設けられた設置板96にクランプ部材70を用いて取り付けられる。クランプ部材70は、断面が略逆L字状の環状部材であり、内周段差面70aを有する。ウエハ載置台10と設置板96とは、クランプ部材70によって一体化されている。ウエハ載置台10の冷却基材30のフランジ部34に、クランプ部材70の内周段差面70aを載置した状態で、クランプ部材70の上面からボルト72が差し込まれて設置板96の上面に設けられたネジ穴に螺合されている。ボルト72は、クランプ部材70の円周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所(例えば8箇所とか12箇所)に取り付けられる。クランプ部材70やボルト72は、絶縁材料で作製されていてもよいし、導電材料(金属など)で作製されていてもよい。
【0034】
次に、ウエハ載置台10の製造例を
図6を用いて説明する。
図6はウエハ載置台10の製造工程図である。まず、セラミック基材20の元となる円板状のセラミック焼結体120を、セラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製する(
図6A)。セラミック焼結体120は、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。次に、セラミック焼結体120の下面からウエハ吸着用電極26までの間に端子穴上部151aを形成する(
図6B)。そして、端子穴上部151aに給電端子54を挿入して給電端子54とウエハ吸着用電極26とを接合する(
図6C)。
【0035】
これと並行して、2つのMMC円板部材131,136を作製する(
図6D)。そして、両方のMMC円板部材131,136に上下方向に貫通する穴をあけると共に、上側のMMC円板部材131の下面に最終的に冷媒流路32となる溝132を形成する(
図6E)。具体的には、上側のMMC円板部材131に、端子穴中間部151bをあける。溝132は、冷媒流路32と同様の形状となるように、上側のMMC円板部材131をマシニング加工することにより形成する。また、下側のMMC円板部材136に、端子穴下部151c、冷媒供給路用の貫通穴133及び冷媒排出路用の貫通穴134をあける。セラミック焼結体120がアルミナ製の場合、MMC円板部材131,136はSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。アルミナの熱膨張係数とSiSiCTiやAlSiCの熱膨張係数とは、概ね同じだからである。
【0036】
SiSiCTi製の円板部材は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0037】
次に、上側のMMC円板部材131の下面と下側のMMC円板部材136の上面との間に金属接合材を配置すると共に、上側のMMC円板部材131の上面に金属接合材を配置する。各金属接合材には、各穴に対向する位置に貫通穴を設けておく。そして、セラミック焼結体120の給電端子54を端子穴中間部151b及び端子穴下部151cに挿入し、セラミック焼結体120を上側のMMC円板部材131の上面に配置された金属接合材の上に載せる。これにより、下側のMMC円板部材136と金属接合材と上側のMMC円板部材131と金属接合材とセラミック焼結体120とを下からこの順に積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、接合体110を得る(
図6F)。接合体110は、冷却基材30の元となるMMCブロック130の上面に、金属接合層40を介してセラミック焼結体120が接合されたものである。MMCブロック130は、上側のMMC円板部材131と下側のMMC円板部材136とが金属接合層135を介して接合されたものである。MMCブロック130は、冷媒流路32、冷媒供給路36、冷媒排出路38及び端子穴51を有する。端子穴51は、端子穴上部151aと端子穴中間部151bと端子穴下部151cとが連なった穴である。
【0038】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層40になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0039】
次に、セラミック焼結体120の外周を切削して段差を形成する。次に、セラミック焼結体120の上面に、シールバンド22b及び小突起22cを形成するためのマスクを貼り付け、ブラストメディアを噴射してブラスト加工を行い、その後マスクを外す。ブラスト加工により小突起22cが形成される。これにより、セラミック焼結体120は、中央部22、外周部24及びウエハ載置面22aを備えたセラミック基材20となる。また、MMCブロック130の外周を切削して段差を形成することに
より、フランジ部34を備えた冷却基材30とする。また、端子穴51のうちセラミック基材20の下面から冷却基材30の下面まで、給電端子54を挿通する絶縁管55を配置する。更に、セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の周囲及び冷却基材30の側面を、セラミック粉末を用いて溶射することにより絶縁膜42を形成する(
図6G)。これにより、ウエハ載置台10を得る。
【0040】
なお、
図1の冷却基材30は、一体品として記載したが、
図6Gに示すように2つの部材が金属接合層で接合された構造であってもよいし、3つ以上の部材が金属接合層で接合された構造であってもよい。
【0041】
次に、ウエハ載置台10の使用例について
図1を用いて説明する。チャンバ94の設置板96には、上述したようにウエハ載置台10がクランプ部材70によって固定されている。チャンバ94の天井面には、プロセスガスを多数のガス噴射孔からチャンバ94の内部へ放出するシャワーヘッド98が配置されている。
【0042】
ウエハ載置台10のFR載置面24aには、フォーカスリング78が載置され、ウエハ載置面22aには、円板状のウエハWが載置される。フォーカスリング78は、ウエハWと干渉しないように上端部の内周に沿って段差を備えている。この状態で、ウエハ吸着用電極26にウエハ吸着用直流電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面22aに吸着させる。そして、チャンバ94の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド98からプロセスガスを供給しながら、冷却基材30にRF電源62からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッド98との間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。なお、ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリング78も消耗するが、フォーカスリング78はウエハWに比べて厚いため、フォーカスリング78の交換は複数枚のウエハWを処理したあとに行われる。
【0043】
ハイパワープラズマでウエハWを処理する場合には、ウエハWを効率的に冷却する必要がある。ウエハ載置台10では、セラミック基材20と冷却基材30との接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属接合層40を用いている。そのため、ウエハWから熱を引く能力(抜熱能力)が高い。また、セラミック基材20と冷却基材30との熱膨張差は小さいため、金属接合層40の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。ウエハ載置台10の使用時、冷媒は冷媒流路32の最上流部32Uから最下流部32Lに向かって高温のウエハWから熱を奪いながら流れるため、冷媒流路32を流れる冷媒の温度は最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が高くなる。一方、流路重複範囲R10のうち最上流部32Uに対向する部分である小領域A1に比べて、小領域A1以外の部分の方が、小突起22cの面積率が高くなっているため、冷媒流路32からウエハ載置面22aまでの熱抵抗は小領域A1に比べて小領域A2~Anの方が低くなる。そのため、総合的には、ウエハ載置面22aのうち流路重複範囲R10内で温度差を小さくすることができる。冷媒流路32を流れる冷媒の流速は、20~40L/minとするのが好ましく、15~35L/minとするのがより好ましい。
【0044】
以上説明した本実施形態のウエハ載置台10では、流路重複範囲R10における小突起22cの面積率は最上流部32Uに対向する部分である小領域A1で最低になっている。ウエハ載置台10の使用時、冷媒は冷媒流路32の上流側から下流側に向かって高温のウエハWから熱を奪いながら流れるため、冷媒流路32を流れる冷媒の温度は上流側に比べて下流側の方が高くなる。一方、ウエハ載置台10では、流路重複範囲R10における小突起22cの面積率は、最上流部32Uに対向する小領域A1で最低になっているため、冷媒流路32からウエハ載置面22aまでの熱抵抗は小領域A1に比べて小領域A1以外(小領域A2~An)の方が低くなる。これは、以下の理由による。小突起22cはセラミックであり、セラミックは空隙に比べて熱伝導率が良好である。そのため、小突起22cの面積率が高い部分では、小突起22cの面積率が高くない部分に比べて、平面方向でセラミックが占める割合が高く、ウエハWと冷媒との熱交換が促進され、抜熱が促進される。そのため、総合的には、ウエハ載置面22aの流路重複範囲R10内で温度差を小さくすることができる。したがって、ウエハWの均熱性が高くなる。
【0045】
また、ウエハ載置台10では、流路重複範囲R10における小突起22cの面積率は小領域A1から冷媒流路32の下流に行くにつれて徐々に高くなっている。そのため、ウエハWの均熱性がより高くなる。
【0046】
更に、ウエハ載置台10は、流路重複範囲R10を平面視したときに冷媒流路32がウエハ載置面22aと重複する範囲での最下流部32Lに対向する部分における小突起22cの面積率は、最上流部32Uに対向する部分における小突起22cの面積率の150%以上となっている。そのため、ウエハWの均熱性が更に高くなる。
【0047】
更にまた、ウエハ載置台10では、流路重複範囲R10の小領域Aiに比べて、小領域Aiに隣接し流路重複範囲R10外の隣接領域Qiの方が、小突起22cの面積率が高い。一般に、流路重複範囲R10の小領域Aiに比べて、隣接領域Qiの方が抜熱されにくい。真下に冷媒流路32がないからである。一方、流路重複範囲R10の小領域Aiに比べて、隣接領域Qiの方が、小突起22cの面積率が高い。そのため、隣接領域Qiの抜熱が促進される。したがって、ウエハWの均熱性がより高くなる。
【0048】
そして、ウエハ載置台10は、冷却基材30を上下方向に貫通する端子穴51を備えており、冷媒流路32は、端子穴51の周辺領域では端子穴51の周辺領域から外れた領域に比べて冷媒流路32の断面積が小さくなっており、ウエハ載置面22aのうち端子穴51の直上領域R30から外れた周辺領域R40に比べて、直上領域R30の方が、小突起22cの面積率が高い。一般にウエハWのうちこうした端子穴51の直上領域R30はホットスポットになりやすい。しかし、周辺領域R40に比べて、こうした直上領域R30の方が、小突起22cの面積率が高い。そのため、直上領域R30の抜熱が促進される。したがって、ウエハWの均熱性がより高くなる。
【0049】
そしてまた、ウエハ載置台10では、冷却基材30は、金属マトリックス複合材料で作製されていており、セラミック基材20と冷却基材30とが金属接合層40で接合されている。冷却基材30が金属マトリックス複合材料、かつ接合層が金属接合層40の構造では、冷媒流路32からウエハ載置面22aまでの熱抵抗が小さいため、ウエハ温度は冷媒の温度勾配の影響を受けやすい。そのため、本発明を適用する意義が高い。また、金属接合層40は熱伝導率が高いため抜熱に適している。更に、セラミック基材20と金属マトリックス複合材料製の冷却基材30とは熱膨張差を小さくすることができるため、金属接合層40の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【0050】
そして更に、冷媒流路32は、冷却基材30を平面視したときにジグザグ状に形成されている。そのため、冷媒流路32を冷却基材30の全体にわたって引き回しやすくなる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0052】
例えば、上述した実施形態では、流路重複範囲R10では、最上流部32Uに対向する部分である小領域A1における小突起22cの面積率が最低になるようにしたが、これに限定されない。例えば、
図7に示すように、小領域A1における小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離h1が他の小領域Ak(kは2以上n以下の整数)における小突起22c
の頂面から基準面22dまでの距離hkよりも長くなるようにしてもよい。この場合、小領域A1から冷媒流路32の下流に行くにつれて小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離は徐々に短くなっていてもよい。具体的には、流路重複範囲R10の位置と小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離との関係をグラフで表したとき、小突起22c
の頂面から基準面22dまでの距離は、小領域A1から小領域Anに向かって連続的に短くなってもよいし、階段状に短くなってもよい。しかし、連続的に短くなることが好ましい。小領域A1から小領域Anに向かって連続的に短くなる場合としては、例えば、小突起22c
の頂面から基準面22dまでの距離が一定の勾配で連続的に短くなってもよいし、下に凸の曲線を描きながら短くなってもよいし、上に凸の曲線を描きながら短くなってもよい。最下流部32Lに対向する小領域Anにおける小突起22c
の頂面から基準面22dまでの距離は、最上流部32Uに対向する小領域A1における小突起22c
の頂面から基準面22dまでの距離の80%以下であることが好ましい。
【0053】
上述した実施形態では、小突起22cの配置密度を変化させることで、小突起22cの面積率を変化させたが、これに限定されない。例えば、
図8に示すように、小突起22cの頂面の面積を変化させることで、小突起22cの面積率を変化させてもよい。また、小突起22cの頂面の面積及び小突起22cの配置密度の両方を変化させることで、小突起22cの面積率を変化させてもよい。なお、
図8では、
図2と同様の構成要素については同じ符号を付して、説明を省略した。
【0054】
上述した実施形態では、小領域Aiに比べて、隣接領域Qiの方が、小突起22cの面積率が高いものとしたが、これに限定されない。例えば、流路重複範囲R10の小領域Aiに比べて、隣接領域Qiの方が、小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離を短くしてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、周辺領域R40に比べて、直上領域R30の方が、小突起22cの面積率が高いものとしたが、これに限定されない。例えば、周辺領域R40に比べて、直上領域R30の方が、小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離を短くしてもよい。この場合、直上領域R30における小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離は、周辺領域R40における小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離よりも、距離Lだけ短い距離であることが好ましい。距離Lは、周辺領域R40における小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離の25%程度の距離である。
【0056】
上述した実施形態において、流路重複範囲R10では、最上流部32Uに対向する小領域A1が小突起22cの面積率が最低になっており、小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離が最長になるようにしてもよい。また、小領域A1から冷媒流路32の下流に行くにつれて(小領域A1から小領域Anに向かうにつれて)、小突起22cの面積率が高く、小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離が徐々に短くなるものとしてもよい。その場合、最下流部32Lに対向する小領域Anにおける小突起22cの面積率は、最上流部32Uに対向する小領域A1における小突起22cの面積率の150%以上となっていてもよく、小領域Anにおける小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離は、小領域A1における小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離の80%以下であってもよい。更に、上述した実施形態において、小領域Aiに比べて、隣接領域Qiの方が、小突起22cの面積率が高く、小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離が短いものとしてもよい。そして、上述した実施形態において、周辺領域R40に比べて、直上領域R30の方が小突起22cの面積率が高く、小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離が短いものとしてもよい。
【0057】
上述した実施形態において、平面視でジグザグ状の冷媒流路32の代わりに、
図9に示すように、平面視で渦巻状の冷媒流路82を採用してもよい。冷媒流路82は、入口82aから出口82bまで一筆書きの要領で、冷却基材30のフランジ部34を除く部分の全体に渦巻き状に形成されている。この場合、冷媒流路82のうち平面視でウエハ載置面22aと重複する領域で最上流部82Uと最下流部82Lとを定めたとき、最上流部82Uと最下流部82Lとは、
図9に示す位置になる。なお、冷媒流路82の外周部を入口とし、中心部を出口としてもよい。
【0058】
上述した実施形態では、冷却基材30をMMCで作製したが、特にこれに限定されない。冷却基材30を金属(例えばアルミニウムやチタン、モリブデン、タングステン及びそれらの合金)で作製してもよい。
【0059】
上述した実施形態では、セラミック基材20と冷却基材30とを金属接合層40を介して接合したが、特にこれに限定されない。例えば、金属接合層40の代わりに、樹脂接合層を用いてもよい。
【0060】
上述した実施形態では、セラミック基材20の中央部22にウエハ吸着用電極26を内蔵したが、これに代えて又は加えて、プラズマ発生用のRF電極を内蔵してもよいし、ヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。また、セラミック基材20の外周部24にフォーカスリング(FR)吸着用電極を内蔵してもよいし、RF電極やヒータ電極を内蔵してもよい。
【0061】
上述した実施形態において、ウエハ載置台10は、ウエハ載置台10を上下方向に貫通する穴を複数有していてもよい。こうした穴としては、ウエハ載置面22aに開口する複数のガス穴やウエハ載置面22aに対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通させるためのリフトピン穴がある。ガス穴は、ウエハ載置面22aを平面視したときに適当な位置に複数個設けられている。ガス穴には、Heガスのような熱伝導ガスが供給される。通常、ガス穴は、シールバンド22bや小突起22cが設けられたウエハ載置面22aのうちシールバンド22bや小突起22cが設けられていない箇所に開口するように設けられる。ガス穴に熱伝導ガスが供給されると、ウエハ載置面22aに載置されたウエハWの裏面側の空間に熱伝導ガスが充填される。リフトピン穴は、ウエハ載置面22aを平面視したときにウエハ載置面22aの同心円に沿って等間隔に複数個設けられる。ウエハ載置台10がガス穴やリフトピン穴を有する場合、
図5に示すように、穴の直上領域
R30から外れた周辺領域R40に比べて、直上領域R30の方が、小突起22cの面積率が高くてもよい。あるいは、穴の直上領域R30から外れた周辺領域R40に比べて、直上領域R30の方が、小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離が短くなるようにしてもよい。また、穴の直上領域R30から外れた周辺領域R40に比べて、直上領域R30の方が、小突起22cの面積率が高くなっており、小突起22cの頂面から基準面22dまでの距離が短くなるようにしてもよい。こうすれば、ウエハWの均熱性がより高まる。
【0062】
上述した実施形態では、
図6Aのセラミック焼結体120はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。
【0063】
上述した実施形態において、流路重複範囲R10を面積が同じn個の小領域A1からAnに分割したがnは、5以上であることが好ましい。
【0064】
上述した実施形態において、流路重複範囲R10は、途中で複数に分断されていたがこれに限定されない。例えば、流路重複範囲R10は、途中で分断されていなくてもよい。
【0065】
上述した実施形態において、小領域Akは、
図10に示すように、1つの連続した領域で構成されていてもよいし、2以上の分断された領域で構成されていてもよい(例えば、小領域A2や小領域A4等)。なお、
図10では、小突起22cの記載を省略し、
図2と同様の構成要素については同じ符号を付して、説明を省略した。
【符号の説明】
【0066】
10 ウエハ載置台、20 セラミック基材、22 中央部、22a ウエハ載置面、22b シールバンド、22c 小突起、22d 基準面、24 外周部、24a フォーカスリング載置面、26 ウエハ吸着用電極、30 冷却基材、32 冷媒流路、32L 最下流部、32U 最上流部、32a 入口、32b 出口、32c 直線部、32d 折り返し部、34 フランジ部、36 冷媒供給路、38 冷媒排出路、40 金属接合層、42 絶縁膜、51 端子穴、52 ウエハ吸着用直流電源、53 ローパスフィルタ、54 給電端子、55 絶縁管、62 RF電源、63 ハイパスフィルタ、64 給電端子、70 クランプ部材、70a 内周段差面、72 ボルト、78 フォーカスリング、82 冷媒流路、82L 最下流部、82U 最上流部、82a 入口、82b 出口、94 チャンバ、96 設置板、98 シャワーヘッド、110 接合体、120 セラミック焼結体、130 MMCブロック、131 MMC円板部材、132 溝、133 貫通穴、134 貫通穴、135 金属接合層、136 MMC円板部材、151a 端子穴上部、151b 端子穴中間部、151c 端子穴下部、W ウエハ。