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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】シリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/28 20060101AFI20241017BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241017BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20241017BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20241017BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241017BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01B3/28
C08L83/04
C08L83/07
C08L83/08
C08K3/013
C08K5/14
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021513870
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019051813
(87)【国際公開番号】W WO2020068528
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】62/735,412
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/832,445
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダレク、ロバート エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ、ハンス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シェンク、サオ プン
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー、パトリック
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-248183(JP,A)
【文献】特開2014-221880(JP,A)
【文献】特表2018-502963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 3/18- 3/56
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧直流絶縁体に使用するための硬化性シリコーンエラストマー組成物であって、
(A)(i)は、成分Aの50~99.5重量%の量の非フッ素化ポリジオルガノシロキサンであり、
(A)(ii)成分Aの0.5~50重量%の量のフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーである、(A)(A)(i)及び(A)(ii)の組み合わせと;
(B)少なくとも1つの補強性フィラーと;
(C)は、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)(i)、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(C)(ii)、及び任意選択で少なくとも1つの硬化抑制剤(C)(iii)であり、又は
(D)少なくとも1つの過酸化物触媒である、(C)又は(D)のうちの少なくとも1つと;を含み、
前記組成物は、前記組成物の≦0.1重量%の導電性フィラー又は半導電性フィラー又はこれらの混合物を含有する、硬化性シリコーンエラストマー組成物。
【請求項2】
硬化性シリコーンエラストマー組成物のエラストマー製品を含む、又はシリコーンエラストマー組成物を硬化させることによって得られるエラストマー製品を含む高電圧直流絶縁体であって、前記シリコーンエラストマー組成物が、
(A)(i)は、成分Aの50~99.5重量%の量の、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有する非フッ素化ポリジオルガノシロキサンであり、
(A)(ii)成分Aの0.5~50重量%の量の、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有するフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーである、(A)(i)と(A)(ii)とのブレンドと;
(B)少なくとも1つの補強性フィラーと;
(C)は、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)(i)、少なくとも1つヒドロシリル化触媒(C)(ii)、及び任意選択で少なくとも1つの硬化抑制剤(C)(iii)であり、又は
(D)少なくとも1つの過酸化物触媒である、(C)又は(D)のうちの少なくとも1つと;を含み、
前記組成物は、前記組成物の≦0.1重量%の導電性フィラー又は半導電性フィラー又はこれらの混合物を含有する、高電圧直流絶縁体。
【請求項3】
硬化性シリコーンエラストマー組成物のエラストマー製品を含む、又はシリコーンエラストマー組成物を硬化させることによって得られるエラストマー製品を含む高電圧直流絶縁体であって、前記シリコーンエラストマー組成物が、
(A)(i)は、成分Aの50~99.5重量%の量の、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有する非フッ素化ポリジオルガノシロキサンであり、
(A)(ii)成分Aの0.5~50重量%の量の、アルケニル基を有しないフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーである、(A)(i)と(A)(ii)とのブレンドと;
(B)少なくとも1つの補強性フィラーと;
(C)は、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)(i)、少なくとも1つヒドロシリル化触媒(C)(ii)、及び任意選択で少なくとも1つの硬化抑制剤(C)(iii)であり、又は
(D)少なくとも1つの過酸化物触媒である、(C)又は(D)のうちの少なくとも1つと;を含み、
前記組成物は、前記組成物の≦0.1重量%の導電性フィラー又は半導電性フィラー又はこれらの混合物を含有する、高電圧直流絶縁体。
【請求項4】
前記組成物が、0(ゼロ)重量%の導電性フィラーを含有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の高電圧直流絶縁体。
【請求項5】
成分(C)存在する場合、(A)(i)は1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有していなければならず、(A)(ii)は1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を含有しているか又は含有していないことを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の高電圧直流絶縁体。
【請求項6】
成分(C)のヒドロシリル化触媒を含まずに、成分(D)が単独の触媒である場合、(A)(i)及び(A)(ii)中の1分子中に少なくとも2つのアルケニル基の存在が任意であることを特徴とする、請求項に記載の硬化性シリコーンエラストマー組成物
【請求項7】
請求項6に記載の硬化性シリコーンエラストマー組成物のエラストマー製品を含む、又は請求項6に記載の硬化性シリコーンエラストマー組成物を硬化させることによって得られるエラストマー製品を含む高電圧直流絶縁体。
【請求項8】
単独で、又は物品若しくはアセンブリの一部として使用される、高電圧直流(HVDC)用途における電気的ストレスを低減するように適合された絶縁体として使用される、請求項2~5及び7のいずれか一項に記載の高電圧直流絶縁体。
【請求項9】
前記物品又はアセンブリが、高電圧直流用途における、ケーブルアクセサリ、ケーブルジョイント又はケーブル終端材料、ブーツ、スリーブ、及び/又は他の取り付け具である、請求項に記載の高電圧直流絶縁体。
【請求項10】
請求項2~5及び7のいずれか一項に記載の高電圧直流絶縁体を備えるケーブルアクセサリ。
【請求項11】
それぞれ高電圧直流用途用のケーブルジョイント、ケーブル終端、及びケーブルコネクタからなる群から選択される、請求項10に記載のケーブルアクセサリ。
【請求項12】
請求項1又は6に記載の組成物を準備する工程と、前記組成物を一緒に混合し硬化させる工程と、を含み、前記混合する工程が、(a)全ての個々の成分を一緒に混合する工程、(b)前記組成物が2つの部分にある場合、前記2つの部分を一緒に混合する工程、及び(c)前記組成物が4つの部分にある場合、前記4つの部分を一緒に混合する工程であり得、いずれの場合も硬化の直前である、高電圧直流絶縁体を製造するための方法。
【請求項13】
硬化性シリコーンエラストマー組成物が、代替的に、射出成形、封入成形、プレス成形、ディスペンサー成形、押出成形、トランスファー成形、プレス加硫、遠心鋳造、カレンダー成形、ビード塗布又はブロー成形によって更に加工されてもよい、請求項12に記載の高電圧直流絶縁体を製造するための方法。
【請求項14】
前記組成物が、硬化前に型に導入されて、成形シリコーン物品を形成する、又は、前記組成物が、射出成形されて物品を形成するか、若しくは物品の周囲に射出成形することによってオーバーモールドされるかのいずれかであり、単独で、又は物品若しくはアセンブリの一部として使用される、請求項12又は13に記載の高電圧直流絶縁体を製造するための方法。
【請求項15】
硬化性シリコーンエラストマー組成物の使用であって、前記硬化性シリコーンエラストマー組成物が、
(A)(i)は、成分Aの50~99.5重量%の量の非フッ素化ポリジオルガノシロキサンであり、
(A)(ii)成分Aの0.5~50重量%の量のフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーである、(A)(A)(i)及び(A)(ii)の組み合わせと;
(B)少なくとも1つの補強性フィラーと;
(C)は、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)(i)、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(C)(ii)、及び任意選択で少なくとも1つの硬化抑制剤(C)(iii)であり、又は
(D)少なくとも1つの過酸化物触媒である、(C)又は(D)のうちの少なくとも1つと;を含み、
前記組成物は、高電圧直流絶縁体中に又は高電圧直流絶縁体として、前記組成物の≦0.1重量%の導電性フィラー又は半導電性フィラー又はこれらの混合物を含有する、使用。
【請求項16】
高電圧直流(HVDC)用途における電気的ストレスの低減のための、又は高電圧直流(HVDC)用途のための絶縁体としての、請求項1又は6に記載の硬化性シリコーンエラストマー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高電圧直流(HVDC)用途及びアクセサリ、例えばケーブルジョイント、ケーブル端子用途、及びコネクタのための絶縁体の製造における非フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーとフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーとのブレンドを含むシリコーン系組成物の使用に関する。
【0002】
ほとんどの場合、エンドユーザーへの電力供給には交流(AC)が好まれるが、距離、例えば>1000kmの長距離送電は、電気損失が少なく、したがって安価で可能なため、高電圧直流(HVDC)システムを使用して実施できる。長距離HVDC送電は、概して、3つの方法、架空(例えば鉄塔を介して);地下システムを通じて、必要に応じて海中輸送などの「海底」システムを介して行われる。地下システムは、鉄塔よりも一般の人々にとって非常に見た目がよく、一方後者は、実用的であるが見た目が悪いと思われる可能性があると言ってもいいだろう。しかしながら、地下HVDC送電は、概して、架空及び海底システムと比較して1~2km毎にケーブルジョイントを使用するため、供給業者にとって最も困難である。したがって、あらゆる種類のHVDC送電には多くのケーブルジョイントが必要とされているが、地下システムの場合、この要件は特に深刻である。
【0003】
しかしながら、AC電流送電システムに関して利用される絶縁材料は、典型的には、直流送電システムに転送することができない。理由としては、電気的ストレスが、AC条件とDC条件で大幅に異なるため、特に、絶縁材料が、DC条件下でより高い連続的な電気的ストレスにさらされ、材料の絶縁破壊をもたらす可能性があるためである。このような問題に対処することは、新たなケーブル及びケーブルアクセサリに関する業界のHVDC電圧要件が増加し続けており、現在では>500kV、更には>800kVになる可能性があることを考えると、今日特に重要になっている。EPDMとは別に、HVDCケーブルジョイント及び他のアクセサリの製造に概して好ましい絶縁材料である液状シリコーンゴム(LSR)組成物は、最終製品に硬化すると優れた電気絶縁体であり、典型的には≧1015オームcmの抵抗率を有する。
【0004】
しかしながら、電界を絶縁体内に分散できないという点で、絶縁体としては「良すぎる」可能性がある。
【0005】
したがって、HVDCは、AC絶縁と比較して、局所的な負荷が増加するため、シリコーン系絶縁材料に非常に大きな電気的ストレスをかける。概して、業界では、導電性フィラー(例えば、カーボンブラック又はカーボンナノチューブ)、熱伝導性フィラー又は半導電性フィラーを組成物に導入して、それらを十分に導電性にし、1010~1015オームcmの範囲のバルク抵抗率を提供する導電性LSR組成物から作製された、わずかに導電性のシリコーンエラストマー製品を介して局所的なDC負荷の分散を可能にすることによって、この問題を解決している。
【0006】
しかしながら、この解決策は、分散の問題を解決することができるが、そのようなフィラーの導入により、更なる問題、特に、導電性フィラーの使用に対してとりわけシリコーンエラストマー内の均一な電気的特性を制御及び/又は取得することができないこと及び、物理的特性の悪化、並びに絶縁耐力の低下が、当該導電性フィラー、熱伝導性又は半導電性フィラーに依存する場合に生じ得る。
【0007】
高電圧直流用途の絶縁体を製造するための組成物中に非フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーとフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーとのブレンドを使用することによって、上記導電性フィラー及び/又は半導電性フィラーを導入する必要性を回避できることが今や確認されている。
【0008】
硬化性シリコーンエラストマー組成物の使用が提供され、該硬化性シリコーンエラストマー組成物は、
(A)(i)は、成分Aの50~99.5重量%の量の非フッ素化ポリジオルガノシロキサンであり、
(A)(ii)成分Aの0.5~50重量%の量のフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーである、(A)(A)(i)及び(A)(ii)の組み合わせと;
(B)少なくとも1つの補強性フィラーと;
(C)は、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)(i)、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(C)(ii)、及び任意選択で少なくとも1つの硬化抑制剤(C)(iii)であり、又は
(D)少なくとも1つの過酸化物触媒である、(C)又は(D)のうちの少なくとも1つと;を含み、
該組成物は、高電圧直流絶縁体中に又は高電圧直流絶縁体として、組成物の≦0.1%重量%の導電性フィラー又は半導電性フィラー又はこれらの混合物を含有する。
【0009】
一実施形態では、上記の組成物は、0(ゼロ)重量%の導電性フィラーを含有する。(C)ヒドロシリル化硬化パッケージが組成物中に存在する場合、少なくとも非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)及び任意選択でフッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(ii)は、1分子中に少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する必要がある。
【0010】
また、硬化性シリコーンエラストマー組成物も提供され、
(A)(i)は、成分Aの50~99.5重量%の量の非フッ素化ポリジオルガノシロキサンであり、
(A)(ii)成分Aの0.5~50重量%の量のフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーである、(A)(i)及び(A)(ii)のブレンドと;
(B)少なくとも1つの補強性フィラーと;
(C)は、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)(i)、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(C)(ii)、及び任意選択で少なくとも1つの硬化抑制剤(C)(iii)であり、又は
(D)少なくとも1つの過酸化物触媒である、(C)又は(D)のうちの少なくとも1つと;を含み、
組成物は、組成物の≦0.1%重量%の導電性フィラー又は半導電性フィラー又はこれらの混合物を含有する。
【0011】
一実施形態では、上記の組成物は、0(ゼロ)重量%の導電性フィラーを含有する。(C)ヒドロシリル化硬化パッケージが組成物中に存在する場合、少なくとも非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)及び任意選択でフッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(ii)は、1分子中に少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する必要がある。
【0012】
硬化性シリコーンエラストマー組成物のエラストマー製品を含む高電圧直流絶縁体も提供され、該硬化性シリコーンエラストマー組成物は、
(A)(i)は、成分Aの50~99.5重量%の量の非フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーであり、
(A)(ii)成分Aの0.5~50重量%の量のフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーである、(A)(A)(i)及び(A)(ii)の組み合わせと;
(B)少なくとも1つの補強性フィラーと;
(C)は、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)(i)、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(C)(ii)、及び任意選択で少なくとも1つの硬化抑制剤(C)(iii)であり、又は
(D)少なくとも1つの過酸化物触媒である、(C)又は(D)のうちの少なくとも1つと;を含み、
組成物は、組成物の≦0.1%重量%の導電性フィラー又は半導電性フィラー又はこれらの混合物を含有する。
【0013】
一実施形態では、本明細書の組成物は、0(ゼロ)重量%の導電性フィラーを含有する。(C)ヒドロシリル化硬化パッケージが組成物中に存在する場合、少なくとも非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)及び任意選択でフッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(ii)は、1分子中に少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する必要がある。
【0014】
なお更なる実施形態では、シリコーンエラストマー組成物を硬化させることによって得られるエラストマー製品を含む高電圧直流絶縁体が提供され、該シリコーンエラストマー組成物は、
(A)(i)は、成分Aの50~99.5重量%の量の非フッ素化ポリジオルガノシロキサンであり、
(A)(ii)成分Aの0.5~50重量%の量のフッ素化ポリジオルガノシロキサンシロキサンポリマーである、(A)(i)と(A)(ii)とのブレンドと;
(B)少なくとも1つの補強性フィラーと;
(C)は、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)(i)、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(C)(ii)、及び任意選択で少なくとも1つの硬化抑制剤(C)(iii)であり、又は
(D)少なくとも1つの過酸化物触媒である、(C)又は(D)のうちの少なくとも1つと;を含み、
組成物は、組成物の≦0.1%重量%の導電性フィラー又は半導電性フィラー又はこれらの混合物を含有する。
【0015】
一実施形態では、本明細書の組成物は、0(ゼロ)重量%の導電性フィラーを含有する。(C)ヒドロシリル化硬化パッケージが組成物中に存在する場合、少なくとも非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)及び任意選択でフッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(ii)は、1分子中に少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する必要がある。
【0016】
本出願の目的で、「置換」とは炭化水素基中の1つ以上の水素原子が別の置換基で置換されていることを意味する。このような置換基の例としては、塩素、臭素及びヨウ素などのハロゲン原子;クロロメチルなどのハロゲン原子含有基(フルオロ以外);酸素原子;(メタ)アクリル基及びカルボキシル基などの酸素原子含有基;窒素原子;アミノ官能基、アミド官能基、及びシアノ官能基などの窒素原子含有基;硫黄原子;並びにメルカプト基などの硫黄原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
上記組成物で使用されるシロキサンポリマー(A)は、(A)(i)及び(A)(ii)の組み合わせであり、示された相対量で一緒にすると、組成物の他の成分で硬化したときに、高電圧直流用途での使用に好適な絶縁体として機能することが見出されている。成分(A)は、
(A)(i)成分(A)の50~99.5重量%の量の非フッ素化ポリジオルガノシロキサンと、
(A)(ii)成分(A)の0.5~50重量%の量のフッ素化ポリジオルガノシロキサンと、の組み合わせである。
【0018】
(C)ヒドロシリル化硬化パッケージが組成物中に存在する場合、少なくとも非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)及び任意選択でフッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(ii)は、1分子中に少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する必要がある。しかしながら、成分(D)が硬化プロセスの触媒作用の唯一の手段である場合、(A)(i)及び(A)(ii)において、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基、あるいは1分子中に少なくとも2つのアルケニル基又はアルキニル基が存在することが好ましいが、必須ではない。
【0019】
したがって、好ましくは、成分(A)(i)は、1分子中に少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する必要があり、成分(A)(ii)は、必要に応じて、1分子中に少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのアルケニル基又はアルキニル基を含有してもよいが、代わりに1分子中に不飽和基、例えばアルケニル基及び/又はアルキニル基を含有しなくてもよい。あるいは、一実施形態では、成分(A)(i)及び(A)(ii)の両方は、1分子中に少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する必要がある。
【0020】
非フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(i)は、成分(A)の50~99.5%の量で存在し、式(I):
SiO(4-a)/2(I)
[式中、各Rは独立して、脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族ヒドロカルビル基、又はオルガニル基(すなわち、官能基の種類にかかわらず、炭素原子において1つの自由原子価を有する、任意の有機置換基)から選択される]の複数の単位を有する。飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基、並びにシクロヘキシルなどのシクロアルキル基が例示されるが、それらに限定されない。不飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、シクロヘキセニル、及びヘキセニルなどのアルケニル基、並びにアルキニル基が例示されるが、それらに限定されない。芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、及び2-フェニルエチルが例示されるが、それらに限定されない。オルガニル基としては、クロロメチル及び3-クロロプロピルなどのハロゲン化アルキル基(フルオロ含有基を除く)、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基などの窒素含有基、ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基が例示されるが、それらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、ホウ素含有基が挙げられる。下付き文字「a」は0、1、2、又は3である。
【0021】
シロキシ単位は、Rがメチル基であるとき、短縮形(略記)、すなわち、「M」、「D」、「T」、及び「Q」で記述されてよい(シリコーン命名法についての更なる教示は、Walter Noll,Chemistry and Technology of Silicones,dated 1962,Chapter I,pages 1-9に見ることができる)。M単位は、式中、a=3であるシロキシ単位、すなわち、RSiO1/2に相当し、D単位は、式中、a=2であるシロキシ単位、すなわち、RSiO2/2に相当し、T単位は、式中、a=1であるシロキシ単位、すなわち、RSiO3/2に相当し、Q単位は、式中、a=0であるシロキシ単位、すなわち、SiO4/2に相当する。
【0022】
非フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(i)上の典型的な基の例としては、主にアルケニル基、アルキル基、及び/又はアリール基が挙げられる。基は、ペンダント位置(D又はTシロキシ単位上)であってもよく、又は末端(Mシロキシ単位上)であってもよい。前述のように、アルケニル基及び/又はアルキニル基は、成分(C)が硬化プロセスに関与する場合に必須であるが、硬化プロセスの単独の触媒が成分(D)である場合には任意である。したがって、存在する場合、成分(A)(i)における好適なアルケニル基は、典型的には2~10の炭素原子を含有し、好ましい例は、ビニル、イソプロペニル、アリル、及び5-ヘキセニルである。
【0023】
典型的には、アルケニル基以外の成分(A)(i)に結合したケイ素結合有機基は、典型的には1~10の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基、及び典型的に6~12の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から選択される。そして、これらの炭化水素基は、非置換であるか、又は、本発明の組成物の硬化を妨げることのない基(ハロゲン原子など)によって置換されている。ケイ素結合有機基の好ましい種は、例えば、メチル、エチル、及びプロピルなどのアルキル基、並びにフェニルなどのアリール基である。
【0024】
非フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーは、例えばアルケニル基及び/又はアルキニル基を含有する、ポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はこれらのコポリマーから選択されてもよく(アルキルとは2つ以上の炭素を有するアルキル基を意味する)、任意の好適な末端基を有してもよく、例えば、トリアルキル末端、アルケニルジアルキル末端であってもよく、又は、各ポリマーが1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を含有するという条件で、任意の他の好適な末端基の組み合わせで終端されてもよい。したがって、非フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーは、一例として、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン、又はジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーであってもよい。
【0025】
成分(A)(i)の分子構造は、典型的には直鎖状であるが、分子内のT単位(前述のとおり)の存在に由来するある程度の分岐が存在していてもよい。上述のように組成物を硬化させることによって調製されるエラストマーにおいて有用なレベルの物理的特性を達成するには、成分(A)(i)の分子量は、ASTM D 1084 Method Bのカップ/スピンドル法で、粘度範囲にブルックフィールド(登録商標)RV又はLV範囲の最も適切なスピンドルを使用して、25℃で少なくとも1000mPa.sの粘度を達成するのに十分である必要がある。成分(A)(i)の分子量の上限は特に制限されないが、典型的には、本発明のLSR組成物の加工性によってのみ制限される。
【0026】
しかしながら、(A)(i)はガムであってもよい。ポリジオルガノシロキサンガムは、典型的には、25℃において少なくとも1,000,000mPa・sの粘度を有する。しかしながら、これらの値を超える粘度を測定するのが困難であるため、ガムは、粘度ではなく、ASTM D-926-08に準拠したWilliams可塑度値で記述される傾向がある。したがって、ポリジオルガノシロキサンガムA(i)は、ASTM D-926-08に従って測定された少なくとも30mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定された少なくとも50mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定された少なくとも100mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定された100mm/100~300mm/100のWilliamsの可塑度をもたらす粘度を有する。
【0027】
成分(A)(i)の例は、2つの末端にアルケニル基を含有するポリジオルガノシロキサンであり、一般式(II)で表すことができる。
R’R’’R’’’SiO-(R’’R’’’SiO)-SiR’’’R’’R’ (II)
【0028】
式(II)において、それぞれのR’は、ビニル、アリル、及び5-ヘキセニルなどの、典型的には2~10の炭素原子を含有する、アルケニル基である。
【0029】
R’’はエチレン性不飽和を含有せず、各R’’は同一でも、異なってもよく、典型的には1~10の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基及び典型的に6~12の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から個別に選択される。R’’は、非置換でもよく、又はハロゲン(フッ素を除く)原子などの本発明の組成物の硬化を妨げることのない1つ以上の基で置換されていてもよい。R’’’は、R’又はR’’である。誤解を避けるために、成分(A)(i)ポリマー中のR’’’、R’又はR’’基は、フルオロ基又は任意のフッ素含有基を含有することはできない。上述のように、ポリマーがLSR組成物の一部として使用されるように設計されている場合、文字mは、ASTM D 1084 Method Bのカップ/スピンドル法で、粘度範囲にブルックフィールド(登録商標)RV又はLV範囲の最も適切なスピンドルを使用して、25℃で1,000mPa.s~100,000mPa.sの粘度を有する成分(A)(i)に好適な重合度を表す。しかしながら、(A)(i)がガムの形態である場合、その粘度が25℃で>1,000,000mPa.s、多くの場合25℃で>1,000,000mPa.sであるため、mの値は著しく大きくなり、Williamsの可塑度測定値が、粘度の代わりに測定される。
【0030】
フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(ii)は、次式
(RZ)(RSiO(4-d-e)/2
[式中、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を有する分岐状又は直鎖状フルオロアルキル基を示し、
各Zは、同一であっても異なっていてもよく、少なくとも2つの炭素原子を含有する二価のアルキレン基、炭化水素エーテル又は炭化水素チオエーテルを示す]を有する単位を含む。各R基は、Z基を介してケイ素原子に連結されており、
各Rは、同一又は異なるものであり、任意選択で置換された飽和若しくは不飽和のケイ素結合一価炭化水素基を表し、又はRが末端基上にある場合、1つ以上のRは-OHであり得る。
d+eの値は最大4であるが、M型基では3であり、D型基では2であり、典型的にはd=0~2、e=0~2であり、dが0である場合、1単位当たり少なくとも1つのR基には、1つ以上の炭素-フッ素結合が含まれることが理解されるであろう。
【0031】
好適な飽和R基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル及びデシルなどのアルキル基が挙げられる。好ましくは、eが>0である場合、少なくとも90パーセント、より好ましくは、アルケニル基を除いて、フルオロシリコーンポリマー中の全てのR基はメチル基である。好ましくは、dが0である場合、1単位当たり平均して少なくとも1つのRが少なくとも1つの炭素-フッ素結合を含有する、あるいは、eが0である場合、1単位当たり少なくとも1つのRはCF-である。
【0032】
好ましくは、Rは、5~100モル%のフッ素化シロキサン単位の全範囲にわたって、少なくとも1つの炭素原子を有するか、あるいは1~8個の炭素原子を有するフルオロアルキル基を示す。存在する各フルオロアルキル基は、少なくとも1つの-C-F結合を有する。R基は、同一であっても異なっていてもよく、標準的な構造又は分岐鎖構造を有してもよい。好ましくは、少なくともいくつか、最も好ましくは、少なくとも50%のフルオロアルキル基はペルフルオロアルキル基である。その例としては、CF-、C-、C-、例えばCFCFCF-又は(CFCF-、C-、例えばCFCFCFCF-、(CFCFCF-、(CFC-及びCFCF(CF)CF-;C11、例えばCFCFCFCFCF-、C13-、例えばCF(CFCF-;C14-、例えばCF(CFCF-;並びにC17-が挙げられる。
【0033】
各ペルフルオロアルキル基は、炭素、水素、及び任意選択で、エーテル及びチオエーテル結合としてそれぞれ存在する酸素及び/又は硫黄原子を含有する二価のスペーサー基(spacing group)であるZによってケイ素原子に結合される。硫黄及び酸素原子が存在する場合、炭素原子のみに結合されなければならない。
【0034】
各Zラジカルは、列挙された元素を含有する任意の構造を有することができるが、好ましくは、アルキレンラジカル(すなわち、非環式、分岐状、又は非分岐状の飽和二価炭化水素基)である。好適なアルキレンラジカルの例としては、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、(CHCH-及び-CH(CH)CHCH-が挙げられる。一実施形態では、各フッ素化ラジカルRZは、好ましくは、式RCHCH-を有し、すなわちZはエチレン基である。
【0035】
前述のように、アルケニル基及び/又はアルキニル基は任意であるが、成分(C)が硬化プロセスに関与している場合は、成分(A)(ii)において好ましく、しかしながら、成分(D)における硬化プロセスのための単独の触媒である場合は任意である。したがって、存在する場合、成分(A)(i)における好適なアルケニル基は、通常2~10の炭素原子を含有し、好ましい例は、ビニル、イソプロペニル、アリル、及び5-ヘキセニルである。これらは、ポリマー鎖上の末端基又はペンダントとして存在してもよい。
【0036】
フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(ii)は、式を有する非フッ素化シロキサン単位の1分子中における総単位数の最大で約90%、あるいは最大で約80%の割合を更に含み得る。
(RSiO(4-c)/2
式中、Rは、任意選択で置換された飽和又は不飽和のケイ素結合一価炭化水素基を示し、c=0~3であるが、好ましくは、cの平均値は約2である。各Rは、フッ素を含有しない(したがって、Rは、以前に特定されたフルオロ含有置換基のうちのいずれかを含有することができない。
【0037】
前述のように、Rは、任意選択で置換された飽和又は不飽和のケイ素結合一価炭化水素基を示している。好ましくは、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、C~C10アルキル基;ビニル基又はアリル基などのアルケニル基;並びに/又はフェニル、トリル、ベンジル、β-フェニルエチル、及びスチリルなどのアリール基から選択される。好ましくは、1分子中における少なくとも2つのR置換基は、アルケニル基又はアルキニル基である。存在する場合、各アルケニル基は2~8個の炭素原子を有し、あるいは各アルケニル基はビニル基である。
【0038】
成分(A)(ii)の例としては、ジメチルシロキシ単位及び(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルシロキシ単位のコポリマー;ジメチルシロキシ単位、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルシロキシ単位、及びビニルメチルシロキシ単位のコポリマー;(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルシロキシ単位及びビニルメチルシロキシ単位のコポリマー;並びにポリ(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルシロキサンが挙げられる。成分(A)(ii)は、トリアルキル、あるいはトリメチル末端、ビニルジメチル末端、ジメチルヒドロキシ末端、及び/又は(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルヒドロキシ末端である。
【0039】
成分(A)(ii)の分子構造は、典型的には直鎖状であるが、分子内のT単位(上記で定義)の存在に由来するある程度の分岐が存在していてもよい。上述のように組成物を硬化させることによって調製されたエラストマーにおける有用なレベルの物理的特性を達成するために、成分(A)(ii)の分子量は、ASTM D 1084 Method Bのカップ/スピンドル法で、粘度範囲にブルックフィールド(登録商標)RV又はLV範囲の最も適切なスピンドルを使用して、25℃で少なくとも1000mPa.sの粘度を達成するのに十分である必要がある。成分(A)(ii)の分子量の上限も特に制限されていない。組成物が液状フルオロシリコーンゴム(F-LSR)組成物を作製するように設計されている場合、最終組成物は、典型的には、本発明のF-LSR組成物の加工性のみによって制限される。
【0040】
しかしながら、(A)(ii)はガムであってもよい。前述のように、ガムは典型的には、25℃で少なくとも1,000,000mPa.sの粘度を有する。これらの値を超える粘度を測定することは困難であるため、粘度ではなく、ASTM D-926-08に準拠したそれらのWilliams可塑度値によって説明される傾向がある。成分(A)(ii)がガムである場合、成分(A)(ii)は、好ましくは、ASTM D-926-08に従って測定された少なくとも30mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定された少なくとも50mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定された少なくとも100mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定される100mm/100~400mm/100のWilliamsの可塑度をもたらす粘度を有する。
【0041】
(B)補強性フィラー
本明細書の組成物を使用して調製され得る、いくつかの種類の硬化エラストマーを特徴付ける、高レベルの物理的特性を得るために、微粉シリカなどの補強性フィラー(B)を含むことが望ましい場合がある。多くの場合、シリカ及び他の補強性フィラーは、硬化性組成物の加工中における、「クレーピング」又は「クレープ硬化(crepe hardening)」と呼ばれる現象を防ぐために、1つ以上の既知のフィラー処理剤で表面処理される。
【0042】
シリカの微粉形態は、好ましい補強性フィラー(B)、例えばヒュームドシリカ、沈降性シリカ及び/又はコロイダルシリカである。それらは、典型的には少なくとも50m/gの比較的大きな表面積を有することから特に好ましい。BET法に従って測定された100~600m/g、あるいは100~500m/g(ISO9277:2010によるBET法を使用)、あるいは200~400m/g(ISO9277:2010によるBET法を使用)の表面積を有するフィラーが、典型的には使用される。
【0043】
本明細書に記載の組成物に使用される微粉シリカ又は他の補強性フィラーの量は、典型的には、組成物の約1~40重量%、あるいは組成物の5~35重量%、あるいは組成物の10~35重量%、あるいは組成物の15~35重量%である。
【0044】
フィラーがもともと親水性であるとき(例えば、未処理シリカフィラー)、それは典型的には処理剤で表面処理される。この処理は、組成物への導入前に、又はその場で(すなわち、本発明の組成物の他の成分の少なくとも一部の存在下で、フィラーの表面処理が完了し、かつ、均質な材料へと均一に分散されるまで、これらの成分を共にブレンドすることによって)行われる。典型的には、(A)(i)及び(A)(ii)のうちの少なくとも1つの存在下で、未処理のフィラー(B)を処理剤により、その場で処理する。
【0045】
典型的には、フィラー(B)は、例えば、オルガノシラン、ポリジオルガノシロキサン、又はオルガノシラザン、ヘキサアルキルジシラザン、短鎖シロキサンジオール、ステアリン酸などの脂肪酸又は脂肪酸エステルを用いて表面処理され、フィラーを疎水性にすることで取り扱いが容易になり、他の成分との均質な混合物を得ることができる。具体的な例としては、任意選択でフルオロ基及び/又はフルオロ含有基を含有し得る、各分子中にジオルガノシロキサンの繰り返し単位を平均2~20個含有する液状ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン、必要に応じて、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンなどが挙げられるが、これらに限定されない。加工助剤として、少量の水を、シリカ処理剤と共に添加してもよい。フィラーの表面処理により、成分(A)のポリマーで容易に湿潤される。これらの表面改質されたフィラーは、凝集せず、成分(A)に均質に組み込むことができるため、未硬化組成物の室温での機械的特性の改善をもたらす。
【0046】
典型的には、フィラー処理剤は、加工中のオルガノシロキサン組成物のクレーピングを防ぐために適用可能な、当該技術分野で開示されている任意の低分子量有機ケイ素化合物であってもよい。
【0047】
組成物は、成分(C)(i)、(C)(ii)、及び任意選択で(C)(iii)の硬化パッケージを使用して、又は成分(D)を使用して、又は必要であると見なされる場合、2つの混合物を使用して硬化される。
【0048】
(C)(i)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分(C)(i)は、成分(C)(ii)の触媒活性の下で、成分(C)(i)のケイ素結合水素原子と成分(A)のアルケニル基との付加反応によって、成分(A)を硬化するための架橋剤として作用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。通常、成分(C)(i)は、成分(C)(i)の水素原子が成分(A)のアルケニル基と十分に反応してネットワーク構造を形成し、それによって組成物を硬化させることができるように、3以上のケイ素結合水素原子を含有している。成分(A)が1分子中に>2個のアルケニル基又はアルキニル基、あるいは1分子中にアルケニル基を有する場合、成分(C)(i)の一部又は全ては、代わりに1分子中に2個のケイ素結合水素原子を有してもよい。
【0049】
成分(C)(i)の分子構造は特に限定されず、直鎖状でも、分岐を含む直鎖状でも、又は環状でもよい。この成分の分子量は特に制限されないが、粘度は典型的には、成分(A)との良好な混和性を得るために、ASTM D 1084 Method Bのカップ/スピンドル法で、粘度範囲にブルックフィールド(登録商標)RV又はLV範囲の最も適切なスピンドルを使用して、25℃で0.001~50Pa.sである。
【0050】
成分(C)(i)は、典型的には、成分(C)(i)中のケイ素結合水素原子の総数の、成分(A)中の全アルケニル基及びアルキニル基、あるいはアルケニルの総数に対するモル比が0.5:1~20:1となるような量で、添加されてもよい。この比が0.5:1未満であるときは、十分に硬化した組成物が得られない。この比が20:1より大きい場合、加熱されたときに、硬化した組成物の硬度が増加する傾向がある。
【0051】
成分(C)(i)の例としては、
(i)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(ii)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン、
(iii)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、
(iv)ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン環状コポリマー、
(v)(CHHSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなるコポリマー、
(vi)(CHSiO1/2単位、(CHHSiO1/2単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマー、並びに
(vii)上記の(CHHSiO1/2単位及び(RZ)(RSiO(4-d-e)/2を含有するコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
(C)(ii)ヒドロシリル化触媒
存在する場合、ヒドロシリル化触媒(C)(ii)は、白金金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウム)のうちの1つ、又はそのような金属の1つ以上の化合物である。白金及び白金化合物が、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の活性水準の高さから、好ましい。
【0053】
好ましいヒドロシリル化触媒(C)(ii)の例としては、白金黒、様々な固体担体上の白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、並びにエチレン性不飽和ケイ素結合炭化水素基を含有するオレフィン及びオルガノシロキサンなどの、エチレン性不飽和化合物との塩化白金酸の錯体が挙げられるが、これらに限定されない。触媒(C)(ii)は、白金金属、担体、例えばシリカゲル若しくは粉末木炭に堆積させた白金金属、又は白金族金属の化合物若しくは錯体である。
【0054】
好適な白金系触媒の例としては、
(i)米国特許第3,419,593号に記載されている、エチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの塩化白金酸の錯体;
(ii)六水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸;
(iii)塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法によって得られる白金含有触媒;
(iv)(COD)Pt(SiMeCl(式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである)などの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体;及び/又は
(v)典型的には溶媒、例えばトルエン中に約1重量%の白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である、Karstedtの触媒が挙げられる。これらは、米国特許第3,715,334号及び同第3,814,730号に記載されている。
【0055】
存在する場合、ヒドロシリル化触媒(C)(ii)は、触媒量、すなわち、所望の条件でその反応又は硬化を促進するのに十分な量(amount)又は分量(quantity)で組成物全体に存在する。様々なレベルのヒドロシリル化触媒(C)(ii)を使用して、反応速度及び硬化反応速度を調整することができる。ヒドロシリル化触媒(C)(ii)の触媒量は、概して、組成成分(a)及び(b)の総重量に基づいて、百万部(ppm)あたり白金族金属の0.01ppm~10,000の重量部;あるいは0.01~5000ppm;あるいは0.01~3,000ppm、あるいは0.01~1,000ppmである。具体的な実施形態において、触媒の触媒量は、組成物の重量に基づいて、0.01~1,000ppm、あるいは0.01~750ppm、あるいは0.01~500ppm、あるいは0.01~100ppmの範囲の金属であり得る。範囲は、指定されたように、触媒内の金属含有量のみ、又は触媒全体(その配位子を含む)に関連し得るが、典型的には、これらの範囲は、触媒内の金属含有量のみに関連する。触媒は、単一種として、又は2種以上の異なる種の混合物として添加してよい。典型的には、触媒パッケージが提供される形態/濃度に依存して、存在する触媒の量は、組成物の0.001~3.0重量%の範囲内である。
【0056】
抑制剤(C)(iii)
上記成分(A)、(C)(i)、及び(C)(ii)の混合物は、周囲温度で硬化を開始し得る。(C)(i)及び(C)(ii)が存在する場合、ヒドロシリル化硬化組成物のより長い作用時間又は作業可使時間を得るために、触媒の活性を遅延又は抑制するために、好適な抑制剤(C)(iii)が使用され得る。ヒドロシリル化触媒の抑制剤、概して白金金属ベースの触媒は、当該技術分野において公知である。ヒドロシリル化又は付加反応抑制剤としては、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、マレアート、フマレート、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エンイン、ヒドロペルオキシド、ニトリル、及びジアジリジンが挙げられる。
【0057】
白金触媒に対する既知の抑制剤の一群としては、米国特許第3,445,420号に開示されているアセチレン化合物が挙げられる。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレンアルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する抑制剤の好ましい分類を構成する。典型的には、これらの抑制剤を含有する組成物は、実用的な速度で硬化させるために、70℃以上の温度に加熱される必要がある。
【0058】
アセチレンアルコール及びそれらの誘導体の例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
存在する場合、場合によっては、触媒(C)(ii)の金属1モル当たり1モルの抑制剤と同程度に低濃度の抑制剤により、十分な保存安定性及び硬化速度がもたらされる。他の場合では、触媒(C)(ii)の金属1モル当たり最大500モルの抑制剤という抑制剤濃度が必要である。所与の組成物における、所与の抑制剤に対する最適な濃度は、通常の実験で容易に決定できる。選択された抑制剤が商業的に提供/利用可能である濃度及び形態に応じて、組成物中に存在する場合、抑制剤は、典型的には、組成物の0.0125~10重量%の量で存在する。
【0060】
(D)過酸化物触媒
本明細書に記載の組成物は、代替的に又は追加的に、過酸化物触媒(D)又は異なる種類の過酸化物触媒の混合物で硬化されてもよい。
【0061】
過酸化物触媒は、フルオロシリコーンエラストマー組成物を硬化させるために使用されるよく知られた市販の過酸化物のいずれかであってもよい。使用される有機過酸化物の量は、硬化プロセスの性質、使用される有機過酸化物、及び使用される組成物によって決定される。典型的には、本明細書に記載の組成物中で用いられる過酸化物触媒の量は、いずれの場合も組成物の重量に基づいて、0.2~3重量%、あるいは0.2~2重量%である。
【0062】
好適な有機過酸化物は、置換又は非置換ジアルキル-、アルキルアロイル-、ジアロイル-ペルオキシド、例えば、ベンゾイルペルオキシド及び2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジターシャリーブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン2,4-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルペルオキシド及び2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンである。上記の混合物もまた使用され得る。
【0063】
成分Cが組成物を硬化することに依存する場合、典型的には、組成物は、硬化前に成分(C)(i)及び(C)(ii)を分離する目的で、A部及びB部と呼ばれることが多い2つの部分に保存される。典型的には、存在する場合、成分(C)(iii)は、ヒドロシリル化触媒(C)(ii)と同じ部分に存在する。このような2部の組成物は、使用直前の容易に混合できるように構成されており、典型的には、A部:B部の重量比が15:1~1:1である。
【0064】
追加の任意成分
追加の任意成分は、その意図された用途に応じて、シリコーンゴム組成物中に存在し得る。このような任意成分の例としては、相溶化剤、熱伝導性フィラー、非導電性フィラー、可使時間延長剤、難燃剤、潤滑剤、非補強性フィラー、圧縮永久歪添加剤、顔料着色剤、接着促進剤、鎖延長剤、シリコーンポリエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0065】
添加剤の更なる例としては、離型剤、希釈剤、溶媒、UV光安定剤、殺菌剤、湿潤剤、熱安定剤、圧縮永久歪添加剤、可塑剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
相溶化剤は、ポリマー(A)(i)と(A)(ii)との間の相分離の回避を助けるのに適切であると判断された場合、組成物に導入されてもよい。任意の好適な作用剤、例えば、米国特許第5824736号に記載されているものなどの(A)(ii)とは異なる、ジメチルシリコーン及びメチルトリフルオロプロピルシリコーン繰り返し単位を含有する、ブロック、グラフト又はランダムコポリマーを利用してもよい。
【0067】
トリアゾールなどの可使時間延長剤を使用してもよいが、本発明の範囲内では必須とはみなされない。したがって、液状硬化性シリコーンゴム組成物は、可使時間延長剤を含まなくてもよい。
【0068】
難燃剤の例としては、アルミニウム三水和物、塩素化パラフィン、ヘキサブロモシクロドデカラン、トリフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(臭素化トリス)、及びこれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0069】
潤滑剤の例としては、テトラフルオロエチレン、樹脂粉末、黒鉛、フッ素化黒鉛、タルク、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、及びそれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0070】
更なる添加剤には、トリメチル末端又はジメチルヒドロキシ末端シロキサンなどのシリコーン流体が含まれる。これらは典型的には、ASTM D1084メソッドBのカップ/スピンドル法で、粘度範囲にブルックフィールド(登録商標)RV又はLV範囲の最も適切なスピンドルを使用して、25℃で150mPa.s未満の粘度を有する。かかるシリコーン流体は、存在する場合、液状硬化性シリコーンゴム組成物中に、組成物の全重量に基づいて0.1~5重量%(wt%)の範囲の量で存在することができる。
【0071】
顔料の例としては、二酸化チタン、酸化クロム、酸化ビスマスバナジウム、酸化鉄、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
接着促進剤の例としては、メタクリルオキシメチル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-ジメチルメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-メチルジエトキシシラン、3-メタクリルオキシイソブチル-トリメトキシシラン、又は類似のメタクリルオキシ置換アルコキシシランなどの、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-ジメチル-メトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-トリエトキシシラン、又は類似のアクリロキシ置換アルキル含有アルコキシシラン、ジルコニウムキレート化合物、例えばジルコニウム(IV)テトラアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)トリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンエチネート)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ジブトキシビス(エチルアセトネート)、ジイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンエチネート)ジルコニウム、又はβ-ジケトン(そのアルキル置換及びフッ素置換形態を含む)を有する類似のジルコニウム錯体、及びエポキシ含有アルコキシシラン、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、又は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0073】
鎖延長剤の例としては、末端位置に2つのケイ素結合水素原子を含有するジシロキサン又は低分子量ポリオルガノシロキサンが挙げられる。鎖延長剤は、典型的には、成分(A)のアルケニル基と反応することによって、成分(A)の2つ以上の分子を連結し、有効分子量及び可能性のある架橋部位間の距離を増加させる。
【0074】
ジシロキサンは、典型的には、一般式(HR Si)Oで表される。鎖延長剤がポリオルガノシロキサンである場合、それは、一般式HR SiO1/2の末端単位及び式R SiOの非末端単位を有する。これらの式において、R及びRは、独立して、エチレン性不飽和及びフッ素含有量を有さない、非置換又は置換の一価炭化水素基を表し、1~10の炭素原子を含有するアルキル基、1~10の炭素原子を含有する置換アルキル基(クロロメチルなど)、3~10の炭素原子を含有するシクロアルキル基、6~10の炭素原子を含有するアリール基、7~10の炭素原子を含有するアルカリル基(トリル基及びキシリル基など)、及び7~10の炭素原子を含有するアラルキル基(ベンジル基など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
鎖延長剤の更なる例としては、テトラメチルジハイドロジェンジシロキサン又はジメチルハイドロジェン末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0076】
鎖延長剤は、成分(A)の重量に対して、1~10重量部、典型的には、成分(A)100部当たり1~10部の量が添加されてもよい。
【0077】
熱安定剤の例としては、金属化合物、例えば赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、水酸化第二鉄、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ランタン、銅フタロシアニン(phthocyanine)が挙げられる。水酸化アルミニウム、ヒュームド二酸化チタン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸セリウム、セリウムジメチルポリシラノレート、及び銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、セリウム、ジルコニウム、チタンなどから選択される金属のアセチルアセトン塩が挙げられる。組成物中に存在する熱安定剤の量は、組成物全体0.01重量%~1.0重量%の範囲であってもよい。
【0078】
したがって、本発明は、
組成物の40~95重量%の量の成分(A)と、
組成物の1~40重量%の量の成分(B)と、を含むシリコーンゴム組成物を提供する。
【0079】
組成物がヒドロシリル化により硬化される場合、組成物は、
0.5~10重量%の成分(C)(i)と、0.01~1重量%の成分(C)(ii)と、0~1重量%の成分(C)(iii)と、を含み得る。このような場合、組成物は、使用前に2つの部分、A部及びB部に保存される。典型的には、A部は、成分(A)の一部、成分(B)及び成分(C)(ii)の一部を含有し、B部は、存在する場合、成分(A)及び(B)の残部を、成分(C)(i)及び(C)(iii)と共に含有する。2部の組成物は、任意の好適な比率で一緒に混合されるように設計され得るが、典型的には、A部:B部の比率が1対1の割合で混合される。
【0080】
高電圧直流絶縁体を製造するための方法も提供され、本明細書に記載される組成物を準備する工程と、組成物を一緒に混合し、硬化させる工程と、を含む。混合工程は、(a)全ての個々の成分を一緒に混合する工程、(b)組成物が2つの部分にある場合、2つの部分を一緒に混合する工程、及び(c)組成物が4つの部分にある場合、4つの部分を一緒に混合する工程であり得、いずれの場合も硬化の直前である。組成物が2つ以上の部分にある場合、部分は、硬化前に複数部分の混合系で一緒に混合される。
【0081】
あるいは、成分(C)が存在する場合、組成物は、好ましくは、使用前に、4つの部分、成分(A)(i)、(B)及び(C)(ii)を含有する第1のA部、成分(A)(ii)、(B)、及び任意選択で(C)(ii)を含有する第2のA部、成分(A)(i)、(B)及び(C)(i)及び(C)(iii)を含有する第1のB部、成分(A)(ii)、(B)、並びに任意選択で(C)(i)及び(C)(iii)を含有する第2のB部に保存され得る。
【0082】
あるいは、成分(C)が成分(A)(ii)に存在する場合、フッ素化ポリジオルガノシロキサンは、硬化パッケージ(C)の成分から分離しておくことができる。すなわち、(C)(ii)触媒は、A部中の非フッ素化ポリマー(A)(i)に保存され、成分(C)(i)オルガノハイドロジェンポリシロキサン及びC(iii)抑制剤(存在する場合)は、B部中のポリマーA(i)の組成物に保存される。これにより、成分A(ii)フッ素化ポリジオルガノシロキサンを、ポリマー単独として又はフィラー(B)を有する塩基の形態で、A部組成物及びB部組成物に導入することができる。したがって、フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(ii)は、B部の非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)とブレンドする前に、架橋剤(C)(i)と混合されていない、かつ/又はフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(ii)は、A部において非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)とブレンドする前に、触媒(C)(ii)と混合されていない。すなわち、架橋剤(C)(i)は、非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)とフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(ii)とをブレンドする前に、非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)との混合物中にのみ保持されてもよく、かつ/又は触媒(C)(ii)は、非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)とフッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(ii)とをブレンドする前に、非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A)(i)との混合物中にのみ保持されてもよい。更に、フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(ii)は、ポリマーとして又はフィラーBを有する塩基の形態のいずれかで、A部及び/又はB部に導入されてもよい。
【0083】
本発明の組成物は、必要に応じて、周囲温度又は高温で成分の全てを混合することによって調製され得る。この目的のために、先行技術に開示されている、任意の混合技術及び装置を用いることができる。使用する具体的な装置は、成分及び最終硬化性コーティング組成物の粘度によって決定される。好適なミキサーとしては、パドルタイプのミキサー又はニーダータイプのミキサーが挙げられるが、これらに限定されない。混合中の成分の冷却によって、組成物の早期硬化を避けることが望ましい場合がある。
【0084】
成分を混合するための順序は、本発明において重要ではない。成分(A)(i)及び成分(A)(ii)は、存在する場合、他の成分(例えば、成分D過酸化物触媒)を導入する前に一緒に混合されてもよい。あるいは、(A)(i)を含有するA部組成物、(A)(ii)を含有するA部組成物、(A)(i)を含有するB部組成物、及び必要に応じて(A)(ii)を含有するB部組成物を全て調製してもよい。あるいは、上述のように、フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー(A)(ii)を含有するA部、及び/又は(A)(ii)を含有するB部は、任意であってもよく、又はポリマー(A)(ii)単独、若しくはポリマー(A)(ii)と補強性フィラー(B)との混合物からなってもよい。成分B補強性フィラーは、必要に応じて、これらの部分のいずれか又は全てに存在してもよい。次いで、4つの部分の全てを、ブレンドに必要な比率で任意の順序で一緒に混合することができる、又は2つのA部を一緒に混合し、2つのB部を一緒に混合し、その後、A部混合物とB部混合物を一緒に混合することができる。代替プロセスでは、4成分混合系を使用して射出成形前に、様々な部分を所望の比率で一緒に混合することができる。
【0085】
本明細書の組成物がLSR組成物であるように設計される場合、組成物の粘度は、25℃でいずれの場合にも、コーンアンドプレートレオメーターを使用して10-1秒で測定された、又は(A)(i)及び/若しくは(ii)がガムである最も粘稠な材料のWilliams可塑度測定により測定された、10~1,000Pa.s、あるいは10~500Pa.s、あるいは100~500Pa.sの範囲である。
【0086】
あるいは、本シリコーンゴム組成物は、射出成形、封入成形、プレス成形、ディスペンサー成形、押出成形、トランスファー成形、プレス加硫、遠心鋳造、カレンダー成形、ビード塗布、又はブロー成形によって更に加工されてもよい。
【0087】
硬化性シリコーンゴム組成物の硬化は、使用されるシリコーンゴムの種類によって必要に応じて行われてもよい。典型的な硬化温度は、80~200℃、あるいは100~170℃の範囲であってよい。硬化の時間は、選択される硬化温度及び方法によって異なるが、典型的には約5分~1時間である。更に、必要に応じて、得られた硬化エラストマーを後硬化させることができる。所望であれば、任意の好適な後硬化を行うことができる。例えば、硬化エラストマーは、150~250℃、あるいは170℃~230℃の温度、所定の期間、例えば、必要に応じて2~10時間、オーブン内で後硬化されてもよい。
【0088】
硬化を、例えば、型内で行い、成形シリコーン物品を形成することができる。この組成物を、例えば射出成形して物品を形成することができ、又はかかる組成物を物品の周り又は基材の上に射出成形することによってオーバーモールドすることができる。
【0089】
本明細書に記載の硬化性シリコーンエラストマー組成物のエラストマー製品を含む高電圧直流絶縁体、及び/又は本明細書に記載のシリコーンエラストマー組成物を硬化させることによって得られるエラストマー製品を含む高電圧直流絶縁体もまた本明細書で提供される。典型的には、組成物は、0(ゼロ)重量%の導電性フィラーを含有する。
【0090】
上記組成物の硬化物は、高電圧直流(HVDC)用途、すなわち電力ケーブルシステムなどにおける電気的ストレスを低減するように適合された絶縁体として使用され得る。前述のように、本明細書に記載のシリコーンエラストマー組成物のエラストマー製品を含む高電圧直流絶縁体が提供される。高電圧直流絶縁体は、単独で使用されてもよく、物品又はアセンブリ、例えば、ケーブルアクセサリなどのアセンブリの複合部品の一部を、ケーブルジョイント又はケーブル終端材料、ブーツ、スリーブ及び/又は他の取り付け具として、高電圧直流用途において、適切な絶縁層としてのフィールドグレーディングアセンブリにおいて、そして他の好適なケーブルアクセサリ及びコネクタにおいて、形成することもできる。
【0091】
更なる実施形態では、高電圧直流(HVDC)用途のための、絶縁体又は当該絶縁体を含むフィールドグレーディングアセンブリを製造するための方法が提供され、この方法は、i)好適な手段によって上述のように好適な量のシリコーン組成物を、例えば、押出成形によって、又は型を使用して、成形する工程と、ii)成形された組成物を硬化させて、成形された絶縁体又は当該絶縁体を含むフィールドグレーディングアセンブリを形成する工程と、を含む。
【0092】
上記の高電圧直流絶縁体は、ケーブルジョイント、ケーブル終端又はケーブルコネクタなどの高電圧直流用途のためのケーブルアクセサリの一部であってもよく、例えば、熱可塑性又はゴム製のケーブル絶縁材を有するケーブルの端部を封止することができる。
【0093】
本発明は更に、前述のようにケーブルジョイントを使用することによって、接続されたケーブル又は閉鎖ケーブル端部を封止及び/又は絶縁するための方法を提供し、この方法は、(i)直流絶縁及び裸のワイヤ又はコネクタに適切な熱可塑性又はエラストマー多層シースを有する絶縁ワイヤを準備する工程と、(ii)裸のワイヤ又はコネクタを封入する工程であって、前述のように(i)前もって成形及び硬化された管状のケーブルジョイントの穴における絶縁シースの表面に置くことによって、ジョイントの機械的延長下で、成形されたシリコーンケーブルジョイントとシースとの間のワイヤ絶縁への重なりが約0.5cmを超えるようにし、それにより、シリコーンケーブルジョイントが、弛緩したジョイントの機械的圧力によって絶縁ワイヤのシース絶縁を封止し、裸のワイヤ及びコネクタにも封入絶縁を形成する工程と、を含む。
【0094】
本明細書に記載の組成物は、熱可塑性ポリオレフィン又はゴムケーブル絶縁材を有する1本以上のケーブルのケーブル端部を封止することを目的としたケーブルジョイントの製造に使用することができ、ケーブルジョイントは、熱可塑性ポリオレフィン又はゴム製のケーブル絶縁材を有する1本以上のケーブルのケーブル端部を封止する。
【0095】
上述のような組成物は、ケーブルアクセサリの製造において、高電圧直流電力ケーブル用途などの高電圧直流用途におけるケーブルジョイント又はケーブル終端材料として使用することができる。本発明による硬化シリコーン組成物は、高電圧直流(HVDC)用途のための幾何学的、容量性、屈折性、抵抗性、又は非線形のフィールドグレーディングアセンブリのような、あらゆる種類のフィールドグレーディングアセンブリの構築に使用することができる。硬化シリコーン組成物はまた、高電圧直流(HVDC)用途のフィールドグレーディングアセンブリにおいても使用することができ、この場合、フィールドグレーディング材料に加えて、電気的ストレスの低減に更に寄与する絶縁体として、本質的に又は排他的に絶縁層で機能する。特定の場合では、それは、フィールドグレーディング材料として、特に、抵抗性のフィールドグレーディングアセンブリケーブルジョイント、ケーブル端子用途、ケーブルアクセサリ、及びコネクタにおいて、作用し得る。
【実施例
【0096】
非フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーを使用した別々の組成物を調製し、LSR1、LSR2、LSR3、及びHCR1として識別する。LSR1、2及び3組成物は、ヒドロシリル化硬化されるため、2つの部分で調製する。LSRの組成を表1aに示し、HCR1の組成を以下の表1bに示す。全ての粘度は、別途記載のない限り25℃で示されている。ポリマーのビニル含有量及びSi-H含有量は、ASTM E168に従って定量的IRによって測定した。
【表1】
【表2】
【0097】
HCR1を、シリコーン中の2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンの45%ペーストである過酸化物1と以下称される過酸化物触媒を使用して硬化させた。これは、DHBP-45-PSI(United Initiators)などの様々な商品名で市販されている。過酸化物1を、100部のHCR1当たり1部の量で組成物に添加した。
【0098】
フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマーを使用した別々の組成物を調製し、F-LSR1、F-LSR2、及びFSR1として識別する。F-LSR1は、ヒドロシリル化硬化されているため、2つの部分で調製された。F-LSR1、F-LSR2の組成を表2aに、F-LSR3及びF-LSR4の組成を表2bに、FSR-1の組成を表2cに示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【0099】
硬化シート
硬化したシートを、圧縮型を用いて0.5mm又は1mmの厚さで調製し、水圧プレスを300psi(2.068MPa)及び温度170℃に設定した。シートを10分間硬化させた。必要に応じて、硬化したシートを通気オーブンに吊るし、200℃で最長4時間後硬化させた。
【0100】
実施例1-F-LSR1とLSR1とのブレンドを、示されている重量部を使用して調製し、硬化シートを上記のように調製し、各硬化シートの体積抵抗率を測定した。この場合、シートを後硬化しなかった。
【0101】
全ての必要なA部材料を最初に一緒に混合し、全ての必要なB部材料を同様に一緒に混合した後、得られた中間混合物を組み合わせて最終的な全配合物を得た。使用したブレンドを表3aに示し、得られた体積抵抗率の結果を以下の表3bに示す。
【表6】
【0102】
ASTM D257-14:絶縁材料のDC抵抗又はコンダクタンスの標準試験方法(Standard Test Methods for DC Resistance or Conductance of Insulating Materials)に準拠して、厚さが0.5~2mmの範囲である硬化シート上において、Keithley(登録商標)8009テストセルとKeithley(登録商標)5 1/2桁モデル6517B電位計/高抵抗計を組み合わせて使用し、モデル6524高抵抗測定ソフトウェアで制御して、体積抵抗率(VR)試験の体積抵抗率を測定した。D257
【0103】
モデル6524高抵抗測定ソフトウェア内では、バックグラウンド電流の影響を最小限に抑えるために、交流極性(alternating polarity)試験を「Hi-R」試験として実施した。これについては、Adam DaireによるKeithley White Paper「Improving the Repeatability of Ultra-High Resistance and Resistivity Measurements」で詳しく説明されている。
【0104】
バックグラウンド電流の影響を最小限に抑えるために、Hi-R交流極性試験を使用した。この方法は、バックグラウンド電流による大きな誤差が発生しやすい高抵抗/抵抗率測定を改善するように設計されている。
【0105】
交流極性刺激電圧は、刺激電流をバックグラウンド電流から分離する目的で使用した。交流極性法を使用する場合、電位計の電圧源出力は、2つの電圧:オフセット電圧+交流V、及びオフセット電圧-交流Vを一定の間隔(測定時間)で交互に切り替える。
【0106】
電流測定(Imeas)は、それぞれの切り替えの終了時に行われる。4つのImeas値が収集された後、電流の読み取り値が計算される(Icalc)。Icalcは、最後の4つの電流測定値(Imeas1からImeas4)の二項加重平均である。
Icalc=(1Imeas1-3Imeas2+3Imeas3-1Imeas4)/8
4つの用語に使用される記号は、それぞれの電流を生成する電圧の交流部分の極性である。刺激電流のこの計算は、バックグラウンド電流レベル、勾配、又は曲率によって影響を受けず、バックグラウンド電流から刺激電流を効果的に遮断する。結果は、それから計算される刺激電流及び抵抗又は抵抗率の再現可能な値である。刺激電流の時間依存性は、材料特性である。すなわち、材料の特性により、異なる測定時間を使用する場合、異なる結果が得られる。
【0107】
60秒の測定時間を、典型的には+1000V、次いで-1000Vの3回の電圧サイクルで使用した。得られた6つの測定電流から、ソフトウェアは3つのIcalc値を取得し、これらの1つ目は拒否され、それから、次の2つの値を使用して、
VR=(Vmax-Vmin)×面積/(2×Icalc×試料の厚さ)からVRを計算する。
得られた2つのVR値を平均して、最終的な値を得た。
実施例に示されるポリマーブレンドの場合、加重平均VRを、
計算されたブレンドVR=(%質量成分A×VR成分A)+(%質量成分B×VR成分B)に基づいて計算した。
【表7】
【0108】
全ての実施例で、VRで達成された変化は、計算されたブレンドVRから予測されるものよりもはるかに大きいことが明らかである。
【0109】
実施例1-2及び1-3について、重複の数を測定し、結果をStudentのt検定を用いて統計的に分析した。これは、平均間の測定された差が99%の信頼水準でゼロではなく、したがって体積抵抗率が所望の範囲内で十分に制御できることを明確に示した。これらの結果を以下の表3cに示す。
【表8】
【0110】
実施例2-以下の表4aに示すような重量部を用いて、F-LSR1及びLSR2のブレンドを調製した。
【表9】
【0111】
上記のようにブレンドの硬化したシートを調製し、前述した方法及び装置を使用して、各シートについてVRを測定した。
【表10】
【0112】
実施例2-1の物理的特性も求め、以下の表4cに見ることができる比較例のものと比較した。
【表11】
【0113】
弾性率100は、100%伸びでの弾性率値を意味する。実施例2-1は、目的のVR修正を実現するために、F-LSRを配合物の両方の部分に等しく追加する必要がないことを示す。実施例2-1はまた、目的のVR修正を実現しながら、良好な機械的特性を維持できることも示す。実施例2-2は、配合物に応じて、VRの更なる修正が達成され得ることを示す。
【0114】
実施例3-以下の表5aに示すような重量部を用いて、F-LSR2及びLSR2のブレンドを調製した。
【表12】
【0115】
上記のようにブレンドの硬化したシートを調製し、前述した方法及び装置を使用して、各シートについてVRを測定した。
【表13】
【0116】
全ての実施例で、VRで達成された変化は、計算されたブレンドVRから予測されるものよりもはるかに大きいことが明らかである。実施例3-1~実施例3-3の場合、測定されたVRは、実施例3-4の場合よりも著しく低く、F-LSR2のレベルが最も低い実施例3-1で予想外に最低のVRが観察された。
以下の表5cに示されるように、実施例3-3及び比較例3について、機械的特性も測定した。
【表14】
【0117】
EBは破断時の伸びを意味する。実施例3-3は、比較例3よりも実際に引き裂き強度及び絶縁耐力が改善された良好な物理的特性を示す。
【0118】
実施例4-以下の表6aに示すような重量部を用いて、HCR1及びFSR1のブレンドを調製した。過酸化物1を硬化触媒として使用し、0.5mm厚の硬化シートを調製し、200℃で1時間後硬化させた。次いで、得られたシートの体積抵抗率を測定し、結果を以下の表6aにも示す。
【表15】
【0119】
実施例4の製品の物理的特性もまた、以下の表6bに示すように求められた。
【表16】
【0120】
全ての実施例で、VRで達成された変化は、計算されたブレンドVRから予測されるものよりもはるかに大きいことが明らかである。また、実施例は、体積抵抗率の所望の低減を達成しながら、良好な機械的特性を維持できることを示す。
【0121】
実施例5
以下の表7aに示す重量部を使用して、F-LSR3又はF-LSR4及びLSR3のブレンドを調製した。全ての必要なA部ブレンド成分を最初に一緒に混合し、全ての必要なB部ブレンド成分も一緒に混合した。次に、A部及びB部のブレンドを1:1の比率で混合することにより、実施例の配合物を調製した。
【表17】
【0122】
ブレンドの硬化したシートを上記のように調製し、上記のように、更にシートを上記のように200℃で4時間後硬化させた。前述の方法及び機器を使用して、各シートのVRを測定した。
【表18】
【0123】
全ての材料では、後硬化後に体積抵抗率は多少増加するが、F-LSRを硬化パッケージなしで使用する場合、増加の程度は大幅に減少することは明らかである。実施例5-2の場合、後硬化後の体積抵抗率の変化は、特に小さい。以下の表7cに示すように、200℃で4時間後硬化した後の実施例に対して、機械的特性も測定した。
【表19】
【0124】
実施例5-1は、F-LSRに硬化パッケージが含まれている場合の良好な機械的特性を示す。実施例5-2~実施例5-4の結果は、F-LSRが硬化パッケージなしで使用されるとき、機械的特性が大幅に低下しないことを示す。