(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】高表面積固体及び液体ベースの抽出又は酵素反応を可能にする方法におけるこれらの固体の応用
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20241017BHJP
C12N 11/14 20060101ALI20241017BHJP
C12N 11/02 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B01D53/14 210
C12N11/14
C12N11/02
(21)【出願番号】P 2021524963
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(86)【国際出願番号】 US2019057378
(87)【国際公開番号】W WO2020096766
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-18
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】モーセン・エス・イェガネー
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル・コルトゥノフ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・スコット・ノースロップ
(72)【発明者】
【氏名】シャオジョウ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・ピローニ
(72)【発明者】
【氏名】ニン・マー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェイ・コルビー
(72)【発明者】
【氏名】チウジー・リィ
(72)【発明者】
【氏名】ザラス・エム・サマーズ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エス・アイド
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-172310(JP,A)
【文献】特表2014-531989(JP,A)
【文献】特開昭47-016371(JP,A)
【文献】Chem. Eur. J.,2007年,Vol.13,P.3020-3025
【文献】NATURE,2015年,Vol.527, No.12,P.216-220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14 - 53/18
B01D 53/34 - 53/85
B01J 20/00 - 20/34
C12N 11/00 - 13/00
C07B 31/00 - 61/00
C07C 1/00 - 409/44
C09K 3/00 - 3/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001m
2/gより大きい表面積を有する高表面積固体と、
前記高表面積固体の表面積の少なくとも30%をコーティングする液体膜と
を含み、
前記高表面積固体が、ウール、ガラス、ガラスウール、ポリエチレン、不溶性繊維、ポリエチレンウール、クォーツ、クォーツウール、繊維、ポリマー繊維、3D印刷された構造又はその組合せを含み、
前記液体膜が、アミン、アルカリ金属水酸化物、グリコールの少なくとも1つ又はその組合せを含み、
180m
-1より大きいS/Vを含み、ここで、Sは前記高表面積固体の前記表面積であり、及びVは前記高表面積固体の体積である、多孔性液体。
【請求項2】
前記高表面積固体は、
前記高表面積固体の表面から突出又は延在する構造を含む表面、
0.001m
2/gより大きい前記固体の見かけの表面積の合計、又は
その組合せ
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の多孔性液体。
【請求項3】
前記高表面積固体は、前記高表面積固体の表面から突出又は延在する構造であって、前記構造
が0.1μm
~1000μmの平均寸法及び/又は0.1μm~500μmのそれらの間の平均距離を有するように、それらの間に液体を含むように十分に近接して離間された前記構造のマトリックスを含む、請求項1に記載の多孔性液体。
【請求項4】
前記高表面積固体は、前記液体膜と反応性ではない材料で製造される、請求項1に記載の多孔性液体。
【請求項5】
前記アミンが、モノエタノールアミン、およびテトラエチレンペンタミンから成る群から選択され、
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化リチウムから成る群から選択され、
前記グリコールがトリエチレングリコールであり、
前記液体膜は、前記構造の底部から前記液体膜の上部表面までの1400μm以下の厚さを含む、請求項1に記載の多孔性液体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多孔性液体及び多孔性液体酵素並びにそれを使用する方法を提供する。特に、本開示の多孔性液体は、作動流体から物質を吸収又は抽出するために利用され得、及び本開示の多孔性液体酵素は、作動流体中での基質との反応に触媒作用を及ぼすために利用され得る。
【背景技術】
【0002】
流体(作動流体とも呼ばれる)が液体又は気体であり得る液体/流体界面を越える相互作用又は物質移動は、液体ベースの抽出等の石油化学関連のプロセス及び生物学的変換を含む多くのプロセスで重要な役割を果たす。
【0003】
液体ベースの抽出では、分離及び除去される必要のある種を含有する作動流体を適切な液体、すなわち除去される種を抽出又は吸収する液体と接触させる。単純さのために、除去されなければならない種は、汚染物質と記載され得る。液体及び液体/流体接触器の適切な選択により、作動流体から分離及び除去のための液体までの汚染物質の物質移動が可能となる。液体ベースの吸収/抽出は、多くの重要な工業的応用において実施されてきた。例えば、燃焼ガスからの二酸化炭素の除去は、液体アミン又は苛性溶液(液体)を燃焼ガス(作動流体)と接触させることによって行われる。酸性CO2分子は、それと選択的に反応するために且つ気体流(作動流体)から除去されるように、燃焼ガス/液体界面を越えて塩基性アミン(又はKOH等の苛性溶液)中に移動する(すなわち物質移動)。このプロセスは、CO2の除去に関して高度に有益であり得るが、現在、このプロセスは、粘度を制御するために必要な水による大幅なアミン希釈及び低い気体-液体接触器効率による損害を受ける。その結果として、このプロセスは、大規模な接触器及び再生器を必要とする。
【0004】
同様に、湿性の天然ガスからの水分子の除去は、長年にわたり、液体ベースの相互作用によって実行されてきた。湿性ガス(作動流体)がトリエチレングリコール(TEG)液等のグリコールベースの液体(液体)と接触される。水分子は、TEG/天然ガス界面を越えて液体中に移動し(物質移動)、そこで、水分子は、好ましくは、TEG分子との水素結合によって吸収され、それにより気体流からの水分子の除去(すなわち天然ガスの脱水)がもたらされる。
【0005】
液体ベースの抽出の別の重要な例は、糖の水溶液からのフルフラール等の反応抑制剤の除去である。植物廃棄物から製造される糖は、糖からバイオ燃料への変換にとって有害であるフルフラールを含有する。したがって、糖をバイオ燃料に変換する前に抑制剤フルフラールを糖から除去しなければならない。
【0006】
有効な液体ベースの抽出は、液体/流体界面を越える汚染物質の有効な物質輸送を必要とする。液体ベースの抽出/吸収プロセスの効率は、液体及び流体間の界面表面積に強く影響を受ける、液体/流体界面を越える物質移動速度に依存する。したがって、液体及び流体間の高い表面積は、有益/効率的な操作のために好ましい。上記の通り、多くの商業的プロセスでは、固定体積で流体及び液体間の表面積を増加させるように設計された1つ以上の接触器を有する塔において作動流体を液体と正確に混合することにより、より高い表面積が達成される。しかしながら、このアプローチは、材料の高い体積を必要とし、且つエネルギーの有意な量を消費する。それでも、液体及び流体の実質的な量は、不十分な表面-体積比のため、相互作用しない。その結果として、液体及び流体の実質的な量は、未使用で効果がないままとなる。
【0007】
高エネルギー混合及び大きい体積容器並びに未使用の流体-液体の大きい体積が必要とされることは、現行の実務の資本的支出及び操作上の支出を多くの場合に高くさせる。したがって、液体ベースの抽出法における作動流体及び液体間の表面積(すなわち界面表面積)を増加させる必要がある。これにより、抽出法における材料の必要体積を減少させることが可能となり、且つ必要な液体-流体接触器サイズを減少させることにより、資本的及び操作上の支出を減少させることが可能となるであろう。
【0008】
分子分離に加えて、液体/流体界面を越える物質移動は、反応及び製品アップグレードのために重要である。例えば、生物学的変換において、炭化水素種と反応させて高価値の製品を製造するために、酵素(生物学的触媒)が使用される。したがって、ヘテロ原子を除去するか又は油成分を変換して、油及びその精製製品の収量及び品質を改善するために酵素を利用することができる。酵素の使用は、低圧及び低温の加工利点の可能性を提供する。酵素の利用は、水素を必要とせず、精練所操作と比較した場合、最小の装置投資で低い化学的コストを有する。しかしながら、天然酵素の大多数は、低い触媒効率を示すか、又は本来の水溶液と比較して有機溶媒中で変性する。
【0009】
多くの酵素反応は、基質上に固定された酵素を用いて実行される。これは、有機溶媒中で酵素安定性を改善する最も一般的な方法の1つである。固定化酵素を利用することの追加的な利点としては、(1)生体触媒の複数回の再利用;(2)製品からの酵素の容易な分離;(3)反応器設計の自在性;(4)担体を再生する能力;(5)水性有機溶媒の両方で操作することの可能性;及び(6)カラム反応器を使用する連続モードで操作することの可能性が含まれる。したがって、現行の研究の大部分は、疎水的/イオン的相互作用を経た吸着、共有結合、架橋結合、エントラップメント等を含む酵素固定化のために使用される一般的な戦略に焦点を合わせたものである(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】“Strategies for Stabilization of Enzymes in Organic Solvents,”ACS Catalysis 2013,3:2823-2836
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、そのような固定化方法は、工業的応用における規模拡大及び実現可能性に関して多くの制限に直面する。特に、上記の固定化方法は、典型的には、時間がかかるものであり、労働集約型であり、費用が高く、且つ有毒な化学物質及び複雑な処置を必要とするものである。したがって、有毒な化学物質を必要としない、効率的であり、より単純であり、より費用の低い酵素固定化方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、多孔性液体及び多孔性液体酵素並びにそれを使用する方法を記載する。特に、本発明者らは、驚くべきことに、本開示の多孔性液体の使用が、物質を作動流体から吸収又は抽出するための費用効果的且つ極めて効率的な方法であることを発見した。同様に、本開示の多孔性液体酵素の使用は、作動流体中で基質との反応に触媒作用を及ぼすための費用効果的且つ著しく効率的な方法である。特に、態様又は本開示は、高表面積固体と、高表面積固体を実質的に被覆するように(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%又は少なくとも90%が浸出又は封入液体膜によって被覆される)固体を封入するか又は固体表面粗さ若しくはテクスチャー中に浸出する液体とを含む多孔性液体又は多孔性液体酵素(すなわち物品)を提供する。作動流体は、浸出又は封入液体と混和せず、且つ液体-流体界面を形成する。本開示の液体は、液体/流体界面において作動流体と相互作用する。高表面積固体の固体表面は、浸出液体を保持し、且つ/又は液体によって封入されるように化学的及び/又は物理的に機能化される必要があり得る。物理的機能化としては、固体表面のテクスチャリング又は粗面化が含まれる。化学的機能化としては、固体上での液体の湿潤性に影響を及ぼす任意の表面化学変性が含まれる。
【0013】
特定の態様において、高表面積固体は、粗い表面、テクスチャード表面(textured surface)(例えば、固体特徴のマトリックスを有する表面)の少なくとも1つ又は両方を含む。例えば、粗い表面であり得る表面は、表面上にミクロ構造及び/又はナノ構造を含み得る。別の実施形態において、高表面積固体は、粗い及び/又はテクスチャード表面を有する繊維である。
【0014】
特定の実施形態において、多孔性液体は、高表面積固体のテクスチャーの少なくとも一部の内部に浸出する液体を含む。これは、本明細書では、液体浸出表面、浸出液体等と記載される。液体がテクスチャーの全ての上部表面を被覆する場合、本明細書では、これは、液体封入固体、封入等と記載される。液体浸出表面及び液体封入固体の両方は、本明細書では、液体含浸固体と記載され得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、液体膜は、酵素を含み得、且つ/又は液体膜と混和しない流体によって形成される液体-流体界面を越える少なくとも1つの物質又は基質の物質移動を促進する膜である。
【0016】
いくつかの実施形態において、高表面積固体の表面積は、0.001m2/gより大きい(例えば、約0.001m2/g~約45m2/g)。高表面積固体の体積あたりの高表面積固体の表面積(S)(S/V)は、180m-1より大きいか、500m-1より大きいか、又は1000m-1より大きい。この計算に関して、表面積(S)は、構造の内面及び外面表面積の両方によって提供される表面積を含む。しかしながら、ミクロ規模の表面粗さを説明することが困難である場合、Sの計算は、内面及び外面表面が滑らかであることを仮定する。例えば、Sの計算は、マトリックス内のセル構造によって提供される追加的な表面積を含むが、単純さのために、セルを構成する壁の表面が滑らかであることが仮定される。系の体積(V)は、外面の寸法のみに基づく構造の幾何学的体積として定義され、それらの表面が滑らかであることが仮定される。換言すると、Vは、それらの外面及び内部マトリックス上にミクロテクスチャーを含まない状態で、その外面によって定義される固体構造を仮定する簡略化された方法で計算される。これらの計算は、nTopology Element又はAutodesk NetFabbソフトウェアプログラムによって実行することができる。
【0017】
特定の実施形態において、浸出液体又は封入液体膜による適切な被覆を高めるため及び/又は促進するために、高表面積固体は、活性化される(例えば、プラズマ活性化又は高温空気オーブン中等での高温活性化)。いくつかの実施形態において、表面活性化のための温度(例えば、空気オーブンの温度)は、300℃より高いか又は400℃より高いが、常に固体基質の融解温度より低い。
【0018】
さらなる実施形態において、高表面積固体又は粗い表面を有する高表面積固体は、その間及び/又はその中に安定して液体膜を含むように十分に近接して離間された固体特徴のマトリックスを含む。例えば、固体特徴(すなわち長さ、幅、高さの少なくとも1つ又はその組合せ)は、約0.1μm~約1000μm(例えば、約1μm~約200μm)の範囲の平均寸法を有し得る。さらに、固体特徴間の間隔又は平均間隔は、約0.1μm~約500μm(例えば、約1μm~500μm)の範囲であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、高表面積固体は、ウール、ガラス、ガラスウール、ポリエチレン、不溶性繊維、ポリエチレンウール、クォーツ、クォーツウール、繊維、ポリマー繊維、付加製造された構造(例えば、3D印刷された構造又はレーザー金属堆積で製造された構造)又はその組合せを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、高表面積固体は、液体膜と反応性ではない材料で製造される。
【0021】
いくつかの実施形態において、液体膜は、アミン(例えば、モノエタノールアミン、テトラエチレンペンタミン)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又はその組合せ)、グリコール(例えば、トリエチレングリコール)、酵素(例えば、チトクロムc)の少なくとも1つ又はその組合せを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、液体膜は、粗さ又はテクスチャーの底部から液体膜の上部表面までの1400μm以下の厚さ(例えば、1000μm以下、約10μm~約1000μm又は約10μm~約100μmの厚さ)を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、系の性能指数(PI)は、150.0m-1より大きいか又は500.0m-1より大きい。PIは、PI=(V1/V)(A1/V)として定義される。V1及びA1は、それぞれ含浸液体の体積及び表面積である。V1は、含浸液体を適用する前及び後に高表面積固体を重量測定し、次いで液体の密度を使用して質量差(例えば、装置によって保持される液体の質量)を体積に変換することによって決定され得る。液体が高表面積固体の表面の全てを完全に又はほぼ完全に湿潤する場合、A1は、S(高表面積固体の表面積)と本質的に等しい。そのような場合、Sは、単純さのために、PIの計算においてA1と置き換えられる。本明細書でのPI計算に関して、完全又はほぼ完全な湿潤が推定され、したがってPIの計算においてA1に関してSが使用される。本明細書に開示される装置が取り込んだ液体の量は、この仮定が合理的であることを暗示する。150m-1より大きいPIを有する系は、より効率的であり、したがって従来の系より小さく、且つより安価であり得る。
【0024】
本開示のさらなる態様は、液体ベースの抽出を実行する方法であって、高表面積固体と、高表面積固体を実質的に被覆し(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%又は少なくとも90%が被覆され、且つそれが少なくとも150m-1のPI値を有する)、液体膜と混和しない流体から少なくとも1つの物質を抽出又は吸収するために配合された液体膜とを含む多孔性液体を提供すること;及び流体と液体膜とを接触させ、液体-流体界面を生成することを含み、多孔性液体の上で流体を接触させることは、液体-流体界面を越える物質の物質移動がもたらす、方法を提供する。液体は、液体特性を有し、作動流体との効果的な相互作用を可能にする。
【0025】
本開示の別の態様は、液体ベースの抽出を実行する方法であって、(1)高表面積固体と、高表面積固体を実質的にコーティング又は被覆する(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%が被覆され、且つそれが少なくとも150m-1のPI値を有する)液体膜とを含む多孔性液体、及び(2)液体-流体界面が生成されるように、液体膜と混和せず、且つ液体膜によって抽出又は吸収される少なくとも1つの物質を含む流体を接触させることを含み、多孔性液体及び流体を接触させることは、液体-流体界面を越える物質の物質移動をもたらす、方法を提供する。液体は、液体特性を有し、作動流体との効果的な相互作用を可能にする。
【0026】
いくつかの実施形態において、液体膜は、約15度未満(例えば、約10度未満又は約0度若しくは0度)である、流体の存在下における高表面積固体上での接触角度を有する。
【0027】
特定の実施形態において、流体は、気体である。
【0028】
いくつかの実施形態において、(1)流体は、二酸化炭素(例えば、燃焼ガス又は化学若しくは精練所ガス)を含むか;(2)液体膜は、アミン(例えば、モノエタノールアミン、テトラエチレンペンタミン)、水酸化カリウム若しくは両方を含むか;又は(3)その組合せの少なくとも1つある。液体は、液体特性を有し、作動流体との効果的な相互作用を可能にする。
【0029】
特定の実施形態において、(1)流体は、水(例えば、湿性天然ガス)を含むか;(2)液体膜は、グリコール(例えば、トリエチレングリコール)を含むか;又は(3)その組合せの少なくとも1つある。
【0030】
いくつかの実施形態において、流体は、液体である。
【0031】
いくつかの実施形態において、流体の少なくとも1つは、フルフラールを含むか、液体膜は、トルエンを含むか、高表面積固体は、ポリエチレンで製造されるか、又はその組合せである。
【0032】
本開示のさらなる態様は、酵素反応を実行する方法であって、高表面積固体と、高表面積固体を実質的に被覆し(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%が被覆され;少なくとも150m-1のPI値である)、且つ酵素を含む浸出又は封入液体膜とを含む多孔性液体酵素を提供すること;及び液体-流体界面が生成されるように、液体膜と混和せず、且つ液体膜中の酵素のための少なくとも1つの基質を含む流体を接触させることを含み、流体及び多孔性液体酵素を接触させることは、基質の触媒作用、液体-流体界面を越える基質の物質移動の少なくとも1つ又は両方をもたらす、方法を提供する。
【0033】
本開示の追加的な態様は、酵素反応を実行する方法であって、(1)高表面積固体と、高表面積固体を実質的に被覆し(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%又は少なくとも90%が被覆され;少なくとも150m-1のPI値である)、且つ酵素を含む液体膜とを含む多孔性液体酵素、及び(2)液体-流体界面が生成されるように、液体膜と混和せず、且つ液体膜中の酵素のための少なくとも1つの基質を含む流体を接触させることを含み、流体及び多孔性液体酵素を接触させることは、基質の触媒作用、液体-流体界面を越える基質の物質移動の少なくとも1つ又は両方をもたらす、方法を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態において、液体膜は、約15度未満(例えば、約10度未満又は約0度)である、作動流体の存在下における高表面積固体上での接触角度を有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、液体膜は、水溶液であり、及び作動流体は、有機溶液である。
【0036】
特定の実施形態において、酵素は、チトクロムcであり、基質は、ニッケルオクタエチルポルフィリンであり、及び高表面積固体は、ウール(例えば、ガラスウール及び/又はクォーツウール)である。
【0037】
有用性についての上記の一般領域は、一例としてのみ与えられており、本開示及び添付の特許請求の範囲に対して限定的であるように意図されない。本開示の組成物、方法及びプロセスと関連する追加的な対象及び利点は、本明細書の特許請求の範囲、説明及び実施例を考慮して当業者によって認識されるであろう。例えば、本開示の種々の態様及び実施形態は、多数の組合せで利用され得、その全ては、本明細書によって明白に考慮される。これらの追加的な態様及び実施形態は、本開示の範囲内に明白に含まれる。本開示の背景を明らかにするために、特に実施に関する追加的な詳細を提供するために本明細書で使用される刊行物及び他の材料は、参照により組み込まれる。
【0038】
本明細書の一部に組み込まれ、且つ本明細書の一部を形成する添付の図面は、本開示のいくつかの実施形態を例示するものであり、且つ説明と一緒に本開示の原理を説明するために有用である。図面は、本開示の実施形態を例示することのみを目的としており、本開示を限定するものとして解釈されない。本開示のさらなる対象、特徴及び利点は、本開示の実例となる実施形態を示す添付の図面と一緒に詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本開示の多孔性液体又は多孔性液体酵素を例示する。液体は、液体特性を有し、作動流体との効果的な相互作用を可能にする。
【
図2A-2B】本開示の多孔性液体又は多孔性液体酵素の調製において高表面積固体として利用され得るクォーツウール繊維の例示的な走査電子顕微鏡写真である。
【
図3A】本開示の多孔性液体又は多孔性液体酵素の調製において高表面積固体として利用可能な3D印刷された固体構造の例示的な像を示す。この構造は、それぞれ約800umの直径及び25mmの長さを有し、S/V=1487m
-1が得られる69の連続金属フィラメントを含有する。それぞれのフィラメントは、液体含浸表面を生成するように液体を保持することができる表面多孔性を有する。
【
図3B】その粗さ内部で液体を保持するフィラメントの1つの表面の光学顕微鏡写真を示す。
【
図3C】3D印刷された固体構造の別の像を示す。直径800umのフィラメントは、内径1.1cm及び長さ約8cmの管内に500ミクロンの表面対表面距離で取り付けられ、S/V=1487m
-1が得られる。構造及び構造を包囲する管は、全て酸化アルミニウムのレーザー金属堆積による付加製造を使用して印刷された。
【
図4】
図3Aの3D印刷された構造のそれぞれのフィラメントの粗さ内部で流動する液体のタイムラプス像を示す。浸出液体の流体特性を例示するために、粒子を液体中に配置し、且つ液体中でのその流れが経時的に追従された。この像は、液体の流体特性を明らかに示す。
【
図5】本開示の例示的な多孔性液体及び多孔性液体酵素の概略図を示す。
図5に示すように、多孔性液体又は多孔性液体酵素は、高表面積固体(20)を実質的に被覆する液体膜(10)を含む。作動流体(30)は、液体(10)と接触している。テクスチャード特徴間に位置する間隔は、液体膜(10)、気体又はその組合せを含み得る。テクスチャード特徴の形状は、異なり得る。この概略図中の液体膜は、固体表面を封入している。液体膜10の水準がテクスチャーの高さ以下にある場合、図は、液体浸出表面を示す。
【
図6A】アミンを含有する例示的な多孔性液体の概略図である。
【
図6B-6C】燃焼ガス等の気体混合物から二酸化炭素を除去するための本開示の例示的な多孔性液体の使用を実証する(窒素及び炭素二酸化物混合物が例示的な二酸化炭素気体混合物として使用された)。
【
図6E-6F】クォーツウールは、
図6A~6Cのアミン含有液体膜を用いない場合、二酸化炭素吸収において効果がない。
【
図7A】テトラエチレンペンタミン(TEPA)を含有し、且つ高いPIを有する多孔性液体の概略図である。これは、燃焼ガス等の気体混合物から二酸化炭素を除去するための本開示の例示的な多孔性液体の使用を実証する。
【
図7B】130℃における、TEPAを使用する多孔性液体及び任意のアミンで含浸されない同一固体基質(対照)の重量正規化破過時間を比較する。固体は、
図3Aに示すものと同一である。3D印刷された構造の表面化学は、アミン液体による液体含浸に関して適切にするために、プラズマを使用して変性された。
図7Bに示すように、3D印刷された固体構造は、浸出液体アミンを用いない場合、二酸化炭素吸収において効果がない。
図7Bに示すように、多孔性液体TEPAは、二酸化炭素吸収において効果的である。
【
図7C】TEPAを含有し、且つ高いPIを有する多孔性液体の概略図である。これは、燃焼ガス等の気体混合物から二酸化炭素を除去するための本開示の例示的な多孔性液体の使用を実証する。
【
図7D】130℃における、TEPAを使用する多孔性液体の重量正規化破過時間を示す。質量分光計N
2信号強度の変動も経時的に示される。時間ゼロは、N
2の信号強度がその最大値の5%に到達する時点である。3D印刷された構造の表面化学は、構造を400℃の空気オーブン中に3時間置くことによって変性された。これにより、アミン液体による液体含浸に関して適切となる。
図7Dに示すように、多孔性液体TEPAは、二酸化炭素吸収において効果的である。
【
図7E】TEPAを含有し、且つ低いPIを有する例示的な多孔性液体の概略図である。これは、燃焼ガス等の気体混合物から二酸化炭素を除去するための本開示の例示的な多孔性液体の使用を実証する。
【
図7F】130℃における、TEPAを使用する多孔性液体の重量正規化破過時間を示す。このセラミックモノリスに関して、表面変性は、使用されなかった。
【
図8】グリコール含有多孔性液体トリエチレングリコール(TEG)、液体膜を含まないクォーツウール(対照)を含むか、又は空である実験のための管を出た気体の水/炭化水素相対濃度比を示す。
図8は、TEG含有多孔性液体が湿性炭化水素ガスから水を効率的に吸収することを実証する。
【
図9A】水性フルフラール溶液中での含浸前(左)及び後(右)の例示的な多孔性液体トルエンを示す。フルフラール溶液中での含浸後(右)の多孔性液体の黄茶色によって実証されるように、多孔性液体トルエンは、溶液からフルフラールを効率的に吸収した。
【
図9B】それが多孔性液体トルエンと接触される前及び接触された後のフルフラール溶液のUV-Vi分析を示す。多孔性液体トルエンの溶液の処理により、フルフラールの有意な量が除去された。
【
図10】チトクロムcがクォーツウール上に固定化された本開示の多孔性液体酵素によるニッケルオクタエチルポルフィリンの分解及び未処理の対照を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下は、当業者が本開示を実行することを補助するために提供される詳細な説明である。本開示の趣旨又は範囲を逸脱することなく、当業者は、本明細書に記載される実施形態に対する修正形態及び変更形態をなし得る。本明細書に記載される全ての刊行物、特許出願、特許、図面及び他の参照は、完全に参照により明白に組み込まれる。
【0041】
本開示は、固体の表面上に液体を含浸させることによって高表面積固体を液体によって被覆し、そこで液体が流体(又は作動流体)と接触することにより、液体ベースの吸収又は液体ベースの抽出の液体/流体界面の界面表面積(すなわち液体及び流体又は作動流体間の界面表面積)を有意に増加させる驚くべき且つ予想外の能力に基づく。多孔性液体酵素も同様に調製可能であることがさらに発見された。それにより、酵素は、容易で費用効果的な様式で固定化され、(より詳細に上記に記載される)公知の固定化法の有意な数の不都合又は問題を回避しながら、酵素固定化の全ての利点が可能となる。
【0042】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門的及び科学的な用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本記載において使用される用語は、特定の実施形態のみを記載するためのものであり、本開示を限定することを意図しない。
【0043】
(範囲に含まれるそれぞれの炭素原子数が提供される場合、炭素原子数を含有する基の場合等の)値の範囲が示される場合、他に明白に示されない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限及び下限間のそれぞれの介在値及び規定された範囲内の任意の他の規定された又は介在する値は、本開示の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲内に含まれ得、本開示の範囲内に包含され、規定された範囲の任意の特に除外された限度に従属する。規定された範囲が1つ又は両方の限度を含む場合、限度に含まれるそれらの両方を除く範囲も本開示に含まれる。
【0044】
本開示を説明するために、以下の用語が使用される。用語が本明細書中で特に定義されない場合、その用語は、本開示を記載する際のその使用に関して、その用語を利用する当業者により、当技術分野において認識される意味が与えられる。
【0045】
他に明白に示されない限り、冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、物品の文法上の目的語の1つ又は2つ以上(すなわち少なくとも1つ)を意味するために使用される。一例として、「要素」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0046】
「及び/又は」という句は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、そのように結合された要素の「いずれか又は両方」、すなわちいくつかの場合に共同で存在し、且つ他の場合に分離的に存在する要素を意味するものとして理解されるべきである。「及び/又は」によって列挙される複数の要素は、同一の様式において、すなわちそのように結合された要素の「1つ以上」として解釈されるべきである。「及び/又は」の条項によって特に識別された要素以外の他の要素は、特に識別されたそれらの要素と関連があるかどうかにかかわらず、任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」の意味は、「含む」等の限定のない言語と組み合わせて使用される場合、一実施形態ではAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態ではBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではA及びB(任意選択的に他の要素を含む)等を意味することができる。
【0047】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「又は」は、上記で定義された「及び/又は」と同じ意味を有するものとして理解されるべきである。例えば、列挙中で項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包含的、すなわち少なくとも1つを含むものとして解釈されるが、要素の複数又は列挙の2つ以上及び任意選択的に追加的な列挙されていない項目も含むものとして解釈される。「1つのみ」若しくは「正確に1つ」等の明らかに逆を示す要素又は特許請求の範囲において使用される場合の「からなる」は、要素の複数又は列挙の正確に1つを含むことを意味するであろう。一般に、用語「又は」は、本明細書で使用される場合、排他的な用語、例えば「いずれか」、「1つ」、「1つのみ」又は「正確に1つ」が先行する場合、排他的選択肢(すなわち「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すものとして解釈される。
【0048】
特許請求の範囲及び上記の本明細書において、「含む」、「包含する」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「からなる」等の全ての移行句は、限定がなく、すなわち限定されないものも含むことを意味するものとして理解される。「からなる」及び「から本質的になる」の移行句のみは、それぞれUnited States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures,Section 2111.03に明らかにされるように、限定的又は半限定的移行句である。
【0049】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「少なくとも1つ」という句は、1つ以上の要素の列挙に関して、要素の列挙中の要素のいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものとして理解されるべきであるが、必ずしも要素の列挙中に具体的に列挙されたそれぞれ及び全ての要素の少なくとも1つを含むわけではなく、且つ要素の列挙中の要素の任意の組合せを除外しない。この定義は、「少なくとも1つ」の句が意味する要素の列挙中に特に識別された要素以外の要素が、特に識別されたそれらの要素と関連があるかどうかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることも可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は均等に「A又はBの少なくとも1つ」若しくは均等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのAであり、Bが存在しないこと(任意選択的にB以外の要素を含む);別の実施形態では、任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのBであり、Aが存在しないこと(任意選択的にA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのA及び任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのB(任意選択的に他の要素を含む)等を意味することが可能である。
【0050】
2つ以上のステップ又は動作を含む本明細書に記載の特定の方法において、方法のステップ又は動作の順番は、他に明白に示されない限り、方法のステップ又は動作が記載される順番に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0051】
「多孔性液体酵素」という用語は、本明細書で使用される場合、他に明白に示されない限り、本明細書に記載の通り高表面積及び被覆液体膜を有し、且つ液体膜中に1つ以上の酵素をさらに含む多孔性基質を記載することができる。例えば、本開示の多孔性液体酵素は、高表面積固体と、高表面積固体を実質的に被覆する(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%又は少なくとも90%が浸出液体膜によって被覆され、且つそれが少なくとも150m-1のPI値を有する)液体膜とを含み得、液体膜は、少なくとも1つの酵素又は種類の酵素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える酵素)を含む。
【0052】
「コーティング」又は「被覆」という用語は、本明細書で使用される場合、他に明白に示されない限り、浸出又は封入液体によって固体を被覆することを記載する。固体表面は、化学的機能化及びいくつかの場合、テクスチャード/物理的機能化を含む適切な固体表面機能化により、液体(浸出又は封入液体)で含浸される。いくつかの場合、表面の粗さは、固有表面テクスチャーの作用をする。含浸液体は、固体表面を被覆し、その液体の性質を維持する。分離、抽出及び酵素固定するための媒体を提供することができるのは、この液体の性質である。その化学的性質により、液体は、完全に固体上に実質的に拡散することが可能であるため、液体は、固体の表面中に浸出することが可能であるか又は全ての固体表面を封入することができる。拡散は、固体上で液体の接触角度を使用して測定される。作動流体も液体である場合、接触角度は、作動液体の存在下で測定される。
【0053】
本開示は、多孔性液体及び多孔性液体酵素並びにそれを使用する方法を記載する。特に、本発明者らは、驚くべきことに、本開示の多孔性液体が、種又は物質を作動流体から吸収又は抽出するための費用効果的且つ極めて効率的な方法であることと、同様に、本開示の多孔性液体酵素が、作動流体中で基質との反応に触媒作用を及ぼすための費用効果的且つ著しく効率的な方法であることとを発見した。本明細書に記載される多孔性液体は、液体の移動に関して剪断応力に依存せず、したがって液体-液体並びに液体-気体系に対して使用可能である。加えて、多孔性液体は、伸長された繊維幾何学構造を形成する必要がなく、したがってより高い表面接触領域を有する他の幾何学構造を提供することができる。加えて、多孔性液体は、生物学的反応のために酵素を固定化するために利用することができる。
【0054】
本開示の一態様は、その中に含まれる物質次第で多孔性液体又は多孔性液体酵素として記載され得る液体含浸表面を含む物品を提供する。多孔性液体及び/又は多孔性液体酵素は、高表面積固体の表面から容易に除去されない安定な液体層/膜を形成するために液体膜及び高表面積固体間で適合する表面エネルギーに基づき得る。したがって、本明細書に記載される任意の態様又は実施形態において、液体膜は、通常の輸送及び/又は取扱い条件等での多孔性液体又は多孔性液体酵素の配置に関係なく、高表面積固体を安定して被覆し、且つ/又は粗い及び/若しくはテクスチャード表面(例えば、以下に記載の固体特徴のマトリックス)中に含まれる。本開示の一態様によると、多孔性液体又は多孔性液体酵素(すなわち物品)は、高表面積固体と、実質的に高表面積固体をコーティング又は被覆する液体膜とを含む(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%が含浸液体膜によって被覆される)。例えば、高表面積固体の表面又は表面積は、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が液体膜によってコーティングされる。特定の態様において、高表面積固体は、液体膜に対して反応性ではない材料から製造される。
【0055】
O’Rillyらは、Chemistry A European Journal 2007において、微小多孔性(及び多孔性の)液体と呼ばれるものを教示している。O’Rillyらは、液体溶媒中でシアノ架橋メタロセン等の剛質ケージ様分子を導入することにより、それらの多孔性液体を生成している。ケージ様分子は、溶媒分子がケージに入ることができず、したがってケージ内の空隙を保存するようにケージの開口部が十分に小さいように選択される。このアプローチは、本明細書に記載されるものと基本的に異なる。本明細書では、高い表面積液体又は多孔性液体は、高表面積固体の機能化表面上で液体を浸出するか、又は高表面積固体の全固体表面を封入することによって生成される。このアプローチにより、多孔性液体中の液体と、分離及び/又は反応のための作動流体との直接的接触が可能である。
【0056】
米国特許第6,402,818B1号明細書(Senguptaら)は、液体中に溶解された気体の膜を越える低圧環境中への物質移動を可能にするための中空繊維膜接触器の使用を教示している。この膜は、高い毛細管力のため、膜を通した液体の物質移動を妨げる。膜の平面幾何学は、表面積を増加させるために、放射構成を強制する。膜接触器とは対照的に、本開示の多孔性液体は、任意の障壁を有さずに直接的な流体及び液体の接触をもたらす。さらにまた、本開示の多孔性液体は、膜と類似の平面幾何学のみに形成されることが不可能であるが、(ウールを含む)繊維、3D印刷された固体構造の予め設計された形状等の他の形状及び幾何学を含むことが可能である。その結果、本開示の多孔性液体により、界面を越える効果的な物質移動のために重要である表面積の量の有意な増加を達成することができる。
【0057】
国際特許出願公開国際公開第WO2017055615A1号パンフレット(Dengら)は、混合気体供給材料からCO2を捕獲するための複合膜の使用を教示している。この複合膜は、有機溶媒を捕獲する二酸化炭素を使用して、CO2を吸収することのできる膜を越えてCO2が物質移動することを可能にする。このアプローチは、CO2を吸収する液体が気体供給材料と直接的に接触する本開示の多孔性液体のアプローチと本質的に異なる。本開示の多孔性液体中の液体の高い表面積は、液体膜を多孔質幾何学に成形することによってもたらされる。これは、適所に液体膜を有するテクスチャード及び/又は粗い機能化固体表面(又は高表面積固体)を用いることによって可能となる。
【0058】
混合塔において、液体-液体接触器のトレイ及びシートも使用されてきた。例えば、米国特許第5,393,429号明細書(Nakayamaら)は、液体-液体接触器における無撹拌逆流フローの使用を教示している。それらは、2つの液体(重質及び軽質)を混合するためのスプリッタープレート及びスリット並びに正孔を利用する。2つの液体の逆フローが、それらに、界面を越える物質移動のために必要とされる界面領域を生成することを強制するように、トレイ接触器が製造される。しかしながら、十分に高い接触域を生成するために、トレイ及びシート接触器に関して、より大きい体積の塔が必要とされる。対照的に、本開示の多孔性液体は、非常により小さい体積で高い表面接触域を生じるように高い表面積幾何学(すなわち液体膜)に形成される液体の固定層を利用する。
【0059】
米国特許第3,758,404号明細書(Clontsら)は、繊維の束が抽出装置の上流から下流に引き伸ばされている繊維膜接触器を使用している。このアプローチでは、1つの液体が好ましくは繊維を湿潤させ、且つ通常汚染物質を含有する第2の液体が第1の液体上を流動する。流動中、界面を越える汚染物質の物質移動が生じる。2つの液体の界面における剪断応力のため、第2の液体は、第1の液体を上流から下流に分離及び再生のための回収容器中に引き抜く。このアプローチに関して、剪断応力の存在は、重要であり、したがって、繊維膜接触器は、液体-気体系に適用不可能である。加えて、このアプローチにおいて、回収容器中への液体の流動を可能にするため、繊維は、上流から下流に引き伸ばされなければならない。対照的に、本明細書で記載される多孔性液体は、液体の移動のために剪断応力に依存せず、したがって液体-液体系及び液体-気体系の両方に使用可能である。
【0060】
Bilekら(Plasma modified surfaces for covalent immobilization of functional biomolecules in the absence of chemical linkers:towards better biosensors and a new generation of medical implants.Biophysical Reviews 2010,2:55-65)及びKawakamiら(Immobilization of glucose oxidase on polymer membranes treated by low-temperature plasma.Biotechnology and Bioengineering 1988,32:369-373)は、化学スペーサーの有無にかかわらず、共有結合によって酵素を固定化するためのプラズマによる材料表面の変性を教示している。しかしながら、プラズマ処理表面等の表面上で酵素溶液の薄層を固定化する研究はされなかった。本開示の別の態様は、基質が作動流体中に見られる反応に効率的に触媒作用を及ぼすために利用可能である多孔性液体を使用して、酵素溶液を固定化することを含む。
【0061】
米国特許第8,574,704B2号明細書(スミットら)は、汚染、氷形成、鱗屑形成及び/又は水和物形成からの表面の保護のために、表面上に液体層を生成するために含浸表面を使用している。上記の特許は、他の流体及び液体との接触及び相互作用を減少させるか又は排除する非湿潤表面を生成することを教示している。上記の特許は、これらの非湿潤表面が厳しい環境から固体を保護することを教示している。これは、液体含浸表面が、分離及び反応を強化するために液体及び作動流体間の接触を減少させるためではなく、増加させるために使用される本開示の多孔性液体との有意な相違である。固体基質は、適切に調製され、且つ高い見かけの表面積を有する場合、液体を保持するため及び高表面積液体を提供するために使用される。これは、次に、液体及び作動流体間の界面領域を減少させることなく強化する。加えて、多孔性液体は、固体表面を保護しないが、正確な混合を必要とせずに分離及び反応を強化することができる有用な高表面積液体を生じるために固体表面を利用する。
【0062】
論文「Liquid-Liquid Equilibria for Extraction of Furfural From Aqueous Solution Using Different Solvents」(Kun Xinら、Fluid Phase Equilibria、第425巻、第393頁、2016)は、水溶液からのフルフラールの分離のために液体トルエン抽出が効果的であることを教示している。著者は、フルフラールの水性液がトルエンと正確に混合された液体-液体抽出を利用した。正確な混合は、当然のことながら、フルフラールからトルエンへのより良好な物質移動のために、2つの液体間で十分な界面領域を生じるために必要である。加えて、物質移動後、水相からの有機相の最終分離のために、トルエン及び水が相分離することができるように、混合物が実質的な時間量にわたって未接触のまま保持された。これは、多孔性液体トルエンを生成するために、トルエンがポリプロピレンウール上に含浸し、そこで保持される本開示と対照的である。多孔性液体トルエンは、高表面積液体を本質的に有し、したがって、それは、トルエン及びフルフラールの水溶液間で高い界面領域を生じることができる。これは、次に、任意の正確な混合を行わずに、水溶液からトルエンへのフルフラールの必要とされる物質移動を提供する。本開示は、トルエン及び水溶液の任意の沈殿及び相分離も必要としない。
【0063】
論文「Preparation and Characterization of Novel CO2‘Molecular Basket’Adsorbents Based on Polymer-Modified Mesoporous Molecular Sieve MCM-41」(Xiaochun Xuら、Microporous and Mesoporous Materials、第62巻、1-2号、第29-45頁、2003)及び論文「Capture of Carbon Dioxide From Flue Gas on TEPA-Grafted Metal-Organic Framework Mg2(dobdc)」(Yan Caoら、Journal of Environmental Sciences、第25巻、10号、第2081頁、2013)は、ゼオライトMCM-41及び金属有機フレームワークなどのメソポーラス粉末材料の細孔中でアミンポリマー又はTEPA(テトラエチレンペ(tetraethylenepe))を形成する方法を教示している。論文「Designing Adsorbents for CO2 Capture From Flue Gas-Hyperbranced Aminosilicas Capable of Capturing CO2 Reversibly」(Jason Hicksら、Journal of American Chemical Society、第130巻、第2902頁、2008)は、CO2分離のためのアミンのナノスケールのコーティングを生成するために、固体表面上にアミン分子を共有結合する方法を教示している。これらは、高い見かけの表面積を有する固体表面が変性されて、次いで液体で含浸される本開示と対照的である。本開示の実施例において実証されるように、液体は、その生来の液体特性を有し、且つ効果的な分離及び反応のために作動流体と直接的に接触することが可能である。
【0064】
論文「Adsorption of Carbon Dioxide on Monoethanolamine(MEA)-Impregnated Kenaf Core Fiber by Pressure Swing Adsorption System」(Nabilah Zainiら、Jurnal Teknologi、第68巻、ナンバー5、第11頁、2014)は、メタノール中MEAの溶液でチップを湿潤させ、次いでメタノールを蒸発させることによるケナフ繊維の300ミクロンチップの含浸を教示している。MEAは、繊維チップの内面をコーティングして、0.009gのCO2/1gのMEAの容量に達するようにCO2吸着を補助する。結果は、Langmuir及びFreundich等温線で十分に適合し、表面吸着を示す。これも、液体アミンがクォーツウール等の高い見かけの(粗さを除外する)表面積を有する固体構造の表面を含浸する本開示と有意に対照的である。多孔性液体は、効果的な分離のために液体特性を維持する。多孔性液体の液体特性は、表面効果である吸着ではなく、吸収を提供する。吸収は、効果的分離のための液体中の全ての分子(吸着などの単なる表面上の分子ではなく)の有用性を提供する。本開示の実施例に記載される通り、多孔性液体MEAは、吸収領域を通して、MEA1グラムあたり0.361gのCO2を除去することが可能であり、これは、記載された従来技術よりも40倍多い。
【0065】
高表面積固体
いくつかの実施形態において、多孔性液体又は多孔性液体酵素の設計は、高表面積固体の表面(例えば、高表面積固体の粗い、多孔質、粗面化及び/又はテクスチャード表面)を封入又はその中に浸出、湿潤及び安定に被覆することができる液体膜の液体並びに多孔性液体又は多孔性液体酵素が接触する流体中で混和しない液体膜に基づく。固体が十分な表面粗さ、大きい表面積並びに液体膜に対する物理的及び/又は化学的親和性を有する場合(例えば、高表面積固体は、液体膜の適用前に活性化され得る)、液体膜は、高表面積固体を封入又はその中に浸出、湿潤及び安定に被覆することができる。高表面積固体を安定して被覆するために必要な粗さ及び/又はテクスチャーの程度は、液体膜の配合及び高表面積固体の表面を構成する化学物質次第であろう。例えば、
図2A及び2B並びに以下の実施例に示すように、ウール/繊維(例えば、クォーツウール/繊維、ポリエチレンウール/繊維等)は、本開示の特定の実施形態において高表面積固体として使用するために十分な粗さ及び物理的構造を有する。また例えば、
図3Aに示されるものと類似の3D印刷構造は、液体を保持するために十分な粗さを有する。これも、本開示の特定の実施形態において高表面積固体として使用することができる。
【0066】
しかしながら、本開示を読んだ当業者は、当業者の一般的な通常の知識と組み合わせて、通常の実験により、特定の液体膜のために必要とされる粗さ/テクスチャーの基準を決定することができるであろう。例えば、それぞれ全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0196940A1号明細書、米国特許出願公開第2017/0144828A1号明細書及び米国特許第9,585,757B2号明細書を参照されたい。例えば、(それが粗く、多孔性であり、本来テクスチャーであり、且つ/又はその後、粗面化及び/若しくはテクスチャー化されるかどうかにかかわらず)高表面積固体の粗さ表面Rは、表面の実領域及び出隅/突出及び/又は凹/凸領域間の比として定義され、1より大きい任意の値であり得る(1は、平坦な表面を示す)。例えば、表面の粗さは、少なくとも1.01、少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.3、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、少なくとも2、少なくとも2.25、少なくとも2.5、少なくとも2.75、少なくとも3、少なくとも3.5、少なくとも4、少なくとも4.5、少なくとも5であるか又はそれより大きい。
【0067】
特定の態様において、高表面積固体は、粗い表面、テクスチャード表面の少なくとも1つ又はその両方を含む。したがって、高表面積固体は、固体特徴のマトリックスを有する表面又は粗い表面によって調製され得る。固体特徴のマトリックスは、高表面積固体の表面から突出又は延在するミクロ構造及び/又はナノ構造を含み得る。テクスチャー(例えば、ミクロ構造及び/又はナノ構造)は、高表面積固体の表面に適用され得る。
図5に示すように、多孔性液体又は多孔性液体酵素は、固体(20)の表面積を実質的に被覆する液体膜(10)を含む。液体は、固体表面(20)の特徴間で見られ得るか又は全ての表面を封入し得る。
図5は、本開示の概念の単なる実例である。当業者は、本開示の多孔性液体又は多孔性液体酵素の変更が本開示の範囲内で考えられることを認識する。
【0068】
固体特徴(例えば、ミクロ構造及び/又はナノ構造)は、約0.1μm~約1000μm(例えば、約1μm~約200μm又は約10μm~約50μm)の平均特徴寸法(すなわちほぼロッド形の物体の長さ、厚さ、深さ、高さ又はその組合せ)を有し得る。例えば、固体特徴の平均特徴寸法は、約0.1μm~約1000μm、約0.1μm~約900μm、約0.1μm~約800μm、約0.1μm~約700μm、約0.1μm~約600μm、約0.1μm~約500μm、約0.1μm~約400μm、約0.1μm~約300μm、約0.1μm~約200μm、約0.1μm~約100μm、約0.1μm~約50μm、約25μm~約1000μm、約25μm~約900μm、約25μm~約800μm、約25μm~約700μm、約25μm~約600μm、約25μm~約500μm、約25μm~約400μm、約25μm~約300μm、約25μm~約200μm、約25μm~約100μm、約75μm~約1000μm、約75μm~約900μm、約75μm~約800μm、約75μm~約700μm、約75μm~約600μm、約75μm~約500μm、約75μm~約400μm、約75μm~約300μm、約75μm~約200μm、約150μm~約1000μm、約150μm~約900μm、約150μm~約800μm、約150μm~約700μm、約150μm~約600μm、約150μm~約500μm、約150μm~約400μm、約150μm~約300μm、約300μm~約1000μm、約300μm~約900μm、約300μm~約800μm、約300μm~約700μm、約300μm~約600μm、約300μm~約500μm、約300μm~約400μm、約400μm~約1000μm、約400μm~約900μm、約400μm~約800μm、約400μm~約700μm、約400μm~約600μm、約400μm~約500μm、約500μm~約1000μm、約500μm~約900μm、約500μm~約800μm、約500μm~約700μm、約500μm~約600μm、約600μm~約1000μm、約600μm~約900μm、約600μm~約800μm、約600μm~約700μm、約700μm~約1000μm、約700μm~約900μm、約700μm~約800μm、約800μm~約1000μm、約800μm~約900μm又は約900μm~約1000μmであり得る。本明細書に記載される任意の態様又は実施形態において、固体特徴(例えば、ミクロ構造及び/又はナノ構造)は、隣接する固体特徴間で約0.1μm~約500μm(例えば、約5μm~約200μm又は約10μm~約30μm)の平均的間隔で配置される。例えば、固体特徴間の平均的間隔は、約0.1μm~約500μm、約0.1μm~約500μm、約0.1μm~約450μm、約0.1μm~約400μm、約0.1μm~約350μm、約0.1μm~約300μm、約0.1μm~約250μm、約0.1μm~約200μm、約0.1μm~約150μm、約0.1μm~約100μm、約0.1μm~約50μm、約0.1μm~約30μm、約1μm~約500μm、約1μm~約450μm、約1μm~約400μm、約1μm~約350μm、約1μm~約300μm、約1μm~約250μm、約1μm~約200μm、約1μm~約150μm、約1μm~約100μm、約1μm~約50μm、約1μm~約30μm、約5μm~約500μm、約5μm~約450μm、約5μm~約400μm、約5μm~約350μm、約5μm~約300μm、約5μm~約250μm、約5μm~約200μm、約5μm~約150μm、約5μm~約100μm、約5μm~約50μm、約5μm~約30μm、約10μm~約500μm、約10μm~約450μm、約10μm~約400μm、約10μm~約350μm、約10μm~約300μm、約10μm~約250μm、約10μm~約200μm、約10μm~約150μm、約10μm~約100μm、約10μm~約50μm、約25μm~約500μm、約25μm~約450μm、約25μm~約400μm、約25μm~約350μm、約25μm~約300μm、約25μm~約250μm、約25μm~約200μm、約25μm~約150μm、約25μm~約100μm、約50μm~約500μm、約50μm~約450μm、約50μm~約400μm、約50μm~約350μm、約50μm~約300μm、約50μm~約250μm、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、約50μm~約100μm、約100μm~約500μm、約100μm~約450μm、約100μm~約400μm、約100μm~約350μm、約100μm~約300μm、約100μm~約250μm、約100μm~約200μm、約100μm~約150μm、約150μm~約500μm、約150μm~約450μm、約150μm~約400μm、約150μm~約350μm、約150μm~約300μm、約150μm~約250μm、約150μm~約200μm、約200μm~約500μm、約200μm~約450μm、約200μm~約400μm、約200μm~約350μm、約200μm~約300μm、約200μm~約250μm、約250μm~約500μm、約250μm~約450μm、約250μm~約400μm、約250μm~約350μm、約250μm~約300μm、約300μm~約500μm、約300μm~約450μm、約300μm~約400μm、約300μm~約350μm、約350μm~約500μm、約350μm~約450μm、約350μm~約400μm、約400μm~約500μm又は約450v~約500μmであり得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、固体特徴は、粗い。例えば、高表面積固体の固体特徴は、1.1~約10の平均表面粗さRを有することができる。
【0070】
テクスチャー又は粗さは、押出成形、電界紡糸、材料の混合物(例えば、ガラス、ポリエチレン、連続ポリマーブレンド又はポリマー及び粒子の混合物)のブロー成形又は3D印刷レーザー金属堆積などの付加製造によって与えられ得る。材料の1つは、その後、溶解、エッチング、溶融又は蒸発されて、テクスチャード及び/又は粗い表面をもたらし得る。テクスチャー又は粗さは、機械的粗面化(例えば、研磨材によるタンブリング)、スプレーコーティング又はポリマースピニング、溶液からの粒子の堆積(例えば、レイヤーバイレイヤー堆積、液体及び粒子の懸濁液からの液体の蒸発)及び/又は3D印刷レーザー金属堆積などの付加製造によって与えられ得る。テクスチャー又は粗さを与えるための他の可能な方法としては、溶液からのポリマーの堆積(例えば、ポリマーは、粗い、多孔質又はテクスチャード表面を形成する);冷却時に膨張し、しわが形成された表面をもたらす材料(例えば、ガラスウール、ポリエチレンウール、クォーツウールを含むウール及び他の繊維)の押出成形又はブロー成形;並びに張力及び圧縮下で表面上に材料の層を適用し、その後、表面下の張力又は圧縮を緩和し、テクスチャード表面を得ることが含まれる。
【0071】
本明細書の任意の実施形態において、高表面積固体の表面は、粗面化され得る。
【0072】
本明細書の実施形態において、高表面積固体の面積は、表面上にテクスチャー又は粗さがない場合、全幾何学的面積として定義される見かけの表面積である。例えば、
図3中の例示的な3D構造のそれぞれのフィラメントの見かけの表面積は、平滑なフィラメントの表面積である。したがって、
図3中の例示的な3D構造の見かけの表面積は、それぞれのフィラメントの見かけの表面積と構造の平滑なベース面積との合計である。本明細書に記載される任意の態様又は実施形態において、高表面積固体の表面積は、約0.001m
2/gより大きいか、約0.01m
2/gより大きいか、約0.1m
2/gより大きいか、約0.2m
2/gより大きい。例えば、高表面積固体は、約0.001m
2/g~45m
2/g、約0.001m
2/g~40m
2/g、約0.001m
2/g~35m
2/g、約0.001m
2/g~30m
2/g、約0.001m
2/g~25m
2/g、約0.001m
2/g~20m
2/g、約0.001m
2/g~15m
2/g、約0.001m
2/g~10m
2/g、約0.001m
2/g~5m
2/g、約0.001m
2/g~1.0m
2/g、約0.01m
2/g~45m
2/g、約0.01m
2/g~40m
2/g、約0.01m
2/g~35m
2/g、約0.01m
2/g~30m
2/g、約0.01m
2/g~25m
2/g、約0.01m
2/g~20m
2/g、約0.01m
2/g~15m
2/g、約0.01m
2/g~10m
2/g、約0.01m
2/g~5m
2/g、約0.01m
2/g~1.0m
2/g、約0.1m
2/g~約45m
2/g、約0.1m
2/g~約40m
2/g、約0.1m
2/g~約35m
2/g、約0.1m
2/g~約30m
2/g、約0.1m
2/g~約25m
2/g、約0.1m
2/g~約20m
2/g、約0.1m
2/g~約15m
2/g、約0.1m
2/g~約10m
2/g、約0.2m
2/g~約45m
2/g、約0.2m
2/g~約40m
2/g、約0.2m
2/g~約35m
2/g、約0.2m
2/g~約30m
2/g、約0.2m
2/g~約25m
2/g、約0.2m
2/g~約20m
2/g、約0.2m
2/g~約15m
2/g、約0.2m
2/g~約10m
2/g、約0.5m
2/g~約45m
2/g、約0.5m
2/g~約40m
2/g、約0.5m
2/g~約35m
2/g、約0.5m
2/g~約30m
2/g、約0.5m
2/g~約25m
2/g、約0.5m
2/g~約20m
2/g、約0.5m
2/g~約15m
2/g、約0.5m
2/g~約10m
2/g、約5m
2/g~約45m
2/g、約5m
2/g~約40m
2/g、約5m
2/g~約35m
2/g、約5m
2/g~約30m
2/g、約5m
2/g~約25m
2/g、約5m
2/g~約20m
2/g、約5m
2/g~約15m
2/g、約10m
2/g~約45m
2/g、約10m
2/g~約40m
2/g、約10m
2/g~約35m
2/g、約10m
2/g~約30m
2/g、約10m
2/g~約25m
2/g、約10m
2/g~約20m
2/g、約15m
2/g~約45m
2/g、約15m
2/g~約40m
2/g、約15m
2/g~約35m
2/g、約15m
2/g~約30m
2/g、約15m
2/g~約25m
2/g、約20m
2/g~約45m
2/g、約20m
2/g~約40m
2/g、約20m
2/g~約35m
2/g、約20m
2/g~約30m
2/g、約25m
2/g~約45m
2/g、約25m
2/g~約40m
2/g、約25m
2/g~約35m
2/g、約30m
2/g~約45m
2/g、約30m
2/g~約40m
2/g又は約35m
2/g~約40m
2/gの表面積を有する
【0073】
液体膜
特定の実施形態において、本明細書に記載される液体膜は、少なくとも1つの種又は物質を流体又は作動流体から抽出するために調製される。したがって、本明細書に記載される任意の態様又は実施形態において、作動流体及び液体膜は、混和しない。したがって、作動流体からの汚染物質が液体膜から(例えば、物質移動によって)抽出され且つ/又はそれによって吸収され、作動流体及び液体膜が混和しないように、液体膜及び作動流体が選択される。
【0074】
例えば、液体膜は、アミン、モノエタノールアミン、テトラエチレンペンタミン、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム又はその組合せ)、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム又はその組合せの少なくとも1つを含むことができ;前記化合物の1つを有する多孔性液体は、気体混合物(例えば、燃焼ガス又は化学若しくは精練所ガス)から炭素二酸化物を抽出するために使用され得る。さらなる例として、液体膜は、グリコール、トリエチレングリコール又はその組合せを含むことができ;前記化合物を有する多孔性液体は、湿性天然ガスから水を抽出するために使用され得る。
【0075】
本明細書に記載される任意の態様又は実施形態において、液体膜は、粗さ又はテクスチャーの底部から液体膜の上部表面までの1400μm以下の厚さ(例えば、1000μm以下、約10μm~約1000μm又は約10μm~約100μmの厚さ)さを有する。例えば、本明細書に記載される任意の態様又は実施形態において、実質的に被覆する高表面積固体上の液体膜の厚さは、1400μm、1300μm、1200μm、1100μm、1000μm、900μm、800μm、700μm、600μm、500μm、400μm、300μm、200μm、100μm、約10μm~約1400μm、約10μm~約1200μm、約10μm~約1000μm、約10μm~約800μm、約10μm~約900μm、約10μm~約700μm、約10μm~約600μm、約10μm~約500μm、約10μm~約400μm、約10μm~約300μm、約10μm~約200μm、約10μm~約100μm、約100μm~約1400μm、約100μm~約1200μm、約100μm~約1000μm、約100μm~約800μm、約100μm~約900μm、約100μm~約700μm、約100μm~約600μm、約100μm~約500μm、約100μm~約400μm、約100μm~約300μm、約100μm~約200μm、約250μm~約1400μm、約250μm~約1200μm、約250μm~約1000μm、約250μm~約800μm、約250μm~約900μm、約250μm~約700μm、約250μm~約600μm、約250μm~約500μm、約500μm~約1400μm、約500μm~約1200μm、約500μm~約1000μm、約500μm~約800μm、約500μm~約900μm、約500μm~約700μm、約750μm~約1400μm、約750μm~約1200μm、約750μm~約1000μm、約100μm~約1400μm、約1000μm~約1200μm又は約1200μm~約1400μmである。
【0076】
他の実施形態において、液体膜は、多孔性液体酵素を調製するために調製される。多孔性液体酵素の液体膜は、少なくとも1つの酵素又は酵素の種(例えば、1、2、3、4、5つ又はそれを超える酵素)を含む。多孔性液体酵素が、液体膜の酵素に対する基質を含有する作動流体と接触して配置される場合、酵素は、作動流体の基質を変換する生物学的反応に触媒作用を及ぼす。例えば、ニッケルオクタエチルプロフィリンの酸化は、その中にニッケルオクタエチルプロフィリンを有する作動流体を、作動流体と混和しない液体膜中のチトクロムcを有する多孔性液体酵素と接触させることによって達成することができる。下記の例によって実証されるように、本開示の多孔性液体酵素は、複雑な固定化ステップ又は有毒物を必要としない費用効果的な酵素固定化技術を提供し、且つ液体膜及び作動流体が混合されないにもかかわらず、酵素反応のための極めて効率的な系が提供される。
【0077】
液体ベースの抽出を実行する方法
本開示のさらなる態様は、液体ベースの抽出を実行する方法を提供する。特定の実施形態において、本方法は、高表面積固体と、高表面積固体を実質的に被覆し(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%が浸出又は封入液体膜によって被覆され、且つ少なくとも150m-1のPIを有する)、液体膜と混和しない流体から少なくとも1つの種又は物質を抽出又は吸収するために配合された液体膜とを含む多孔性液体を提供すること;及び流体と液体膜とを接触させて、液体-流体界面を生成することを含み、多孔性液体上で流体を接触させることは、液体-流体界面を越える種又は物質の物質移動をもたらす。
【0078】
いくつかの実施形態において、本方法は、(1)高表面積固体と、高表面積固体を実質的にコーティング又は被覆する(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%が浸出又は封入液体膜によって被覆され、且つ/又は少なくとも150m-1のPIを有する)液体膜とを含む多孔性液体、及び(2)液体-流体界面が生成されるように、液体膜と混和せず、且つ液体膜によって抽出又は吸収される少なくとも1つの種又は物質を含む流体を接触させることを含み、多孔性液体及び流体を接触させることは、液体-流体界面を越える種又は物質の物質移動をもたらす。
【0079】
本明細書に記載される任意の態様又は実施形態において、本開示の方法によって利用される多孔性液体は、本明細書に記載される任意の多孔性液体であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、液体膜は、ゼロである流体の存在下における高表面積固体上での接触角度を有する。特定の実施形態において、流体は、気体である。
【0081】
さらに他の実施形態において、(1)流体は、二酸化炭素(例えば、燃焼ガス又は化学若しくは精練所ガス)を含むか;(2)液体膜は、アミン(例えば、モノエタノールアミン、テトラエチレンペンタミン)、水酸化カリウム又は両方を含むか;又は(3)その組合せの少なくとも1つある。特定の実施形態において、(1)流体は、水(例えば、湿性天然ガス)を含むか;(2)液体膜は、グリコール(例えば、トリエチレングリコール)を含むか;又は(3)その組合せの少なくとも1つある。他の実施形態において、流体は、液体である。
【0082】
別の実施形態において、流体の少なくとも1つは、フルフラールを含むか、液体膜は、トルエンを含むか、高表面積固体は、ポリエチレンから製造されるか、又はその組合せである。
【0083】
酵素反応を実行する方法
本開示のさらなる態様は、酵素反応を実行する方法を提供する。特定の実施形態において、本方法は、高表面積固体と、高表面積固体を実質的に被覆し(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30、40、50、60、70、80又は90%が浸出又は封入液体膜によって被覆され、且つ少なくとも150m-1のPIを有する)、且つ酵素を含む液体膜とを含む多孔性液体酵素を提供すること;及び液体-流体界面が生成されるように、液体膜と混和せず、且つ液体膜中の酵素のための少なくとも1つの基質を含む流体を接触させることを含み、流体及び多孔性液体酵素を接触させることは、基質の触媒作用、液体-流体界面を越える基質の物質移動の少なくとも1つ又は両方をもたらす。
【0084】
他の実施形態において、本方法は、(1)高表面積固体と、高表面積固体を実質的に被覆し(例えば、高表面積固体の表面又は表面積の少なくとも30%がコーティングされる)、且つ酵素を含む液体膜とを含む多孔性液体酵素、及び(2)液体-流体界面が生成されるように、液体膜と混和せず、且つ液体膜中の酵素のための少なくとも1つの基質を含む流体を接触させることを含み、流体及び多孔性液体酵素を接触させることは、基質の触媒作用、液体-流体界面を越える基質の物質移動の少なくとも1つ又は両方をもたらす。
【0085】
本明細書に記載される任意の態様又は実施形態において、本開示の方法によって利用される多孔性液体は、本明細書に記載される任意の多孔性液体であり得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、液体膜は、約15度未満である、作動流体の存在下における高表面積固体上での接触角度を有する。例えば、特定の実施形態において、作動流体の存在下における高表面積固体上での接触角度は、約14度未満、約13度未満、約12度未満、約11度未満、約10度未満、約9度未満、約8度未満、約7度未満、約6度未満、約5度未満、約4度未満、約3度、約2度未満、約1度未満又は約0度若しくは0度である。
【0087】
他の実施形態において、液体膜は、水溶液であり、及び作動流体は、有機溶液である。
【0088】
特定の実施形態において、酵素は、チトクロムcであり、基質は、ニッケルオクタエチルポルフィリンであり、及び高表面積固体は、ウール(例えば、ガラスウール及び/又はクォーツウール)である。
【実施例】
【0089】
実施例1.クォーツウール
走査電子顕微鏡(SEM)を使用して、クォーツウール表面構造を試験した。
図2A及び2Bは、クォーツウール繊維の典型的な顕微鏡写真を示す。
図2A及び2Bに示すように、クォーツウール繊維の本来の粗さは、表面の化学的性質と一緒になって、クォーツウールの表面上に所望の液体を保持する。
【0090】
実施例2.3D印刷構造を使用する多孔性液体オイル
図3Aは、高表面積固体表面の例示的な3D印刷構造を示す。それは、S/V=1487m
-1で、12mmの直径を有する穿孔ディスク上に取り付けられた500ミクロンの表面対表面距離を有する69のフィラメントからなる。本実施例において、それぞれのフィラメントの直径及び長さは、それぞれ約800ミクロン及び25mmである。構造は、酸化アルミニウムの付加製造レーザー金属堆積を使用して印刷された。3D印刷された構造は、窒素ガスを使用して乾燥する前にアセトン、次いでエタノール、且つヘプタンでクリーニングされた。次いで、溶媒クリーニングされた3D構造を5分間、プラズマクリーナーに置いた。プラズマ放射線によって表面を酸化させ、3D構造の表面エネルギーを実質的に増加させる。この表面化学変性により、液体が表面のより大きい面積を被覆することができる。プラズマクリーニング後、3D構造を200mgのポリ-アルファ-オレフィン2cSt(PAO2)オイルに導入した。
図3Bは、構造の粗さ内の液体オイル(PAO2)の光学顕微鏡写真である。
図3Bは、多孔性液体がその表面の粗さ内に液体を実際に保持することを実証する。
【0091】
図3Cは、高表面積固体表面の例示的な3D印刷構造を示す。それは、S/V=1487m
-1で、1.1cmの内径及び約8cmの長さの管に500ミクロンの表面対表面距離で取り付けられた直径800ミクロンのフィラメントを有する。構造及び構造を包囲する管は、酸化アルミニウムのレーザー金属堆積による付加製造を使用して印刷された。
【0092】
実施例3.3D印刷構造を使用する多孔性液体オイル中の液体の流動特性
実施例3は、多孔性液体油の液体の特性を実証する。実施例2に記載の3D印刷構造は、以前に記載された通り、プラズマクリーニングされた。次いで、構造を、5~10ミクロン疎水性固体粒子を含有する200mgのPAO2油に導入した。固体粒子は、3D印刷構造内に浸出した液体の流体特性を視覚化するために使用された。固体粒子の流れは、顕微鏡に取り付けられたビデオカメラを使用して追従された。
図4は、多孔性液体オイルの粗さ内に浸出した液体PAO2オイル中の固体粒子の移動のタイムラスプ像を示す。本実施例は、多孔性液体中の表面を被覆する液体が実際に液体の性質であり、且つ分離及び反応のために作動流体と相互作用するように容易に利用可能であることを実証する。
【0093】
実施例4.多孔性液体アミン(クォーツウール)を使用するCO
2の除去
小量のクォーツウールを5分間、プラズマクリーナー中に配置した。プラズマ処理により、クォーツウール繊維の表面エネルギーが増加した。繊維の高い表面エネルギー及び本来の粗さにより、液体アミンによって繊維を完全に湿潤させて、その表面上に液体を保持することが可能となる。S/V=548m
-1及びPI=170.0m
-1を有する多孔性液体MEA(又は多孔性液体アミン;
図1に概略的に示される)を製造するために、液体の水を含まないモノエタノールアミン(MEA)をクォーツウールの表面上に分布した。次いで、前記多孔性液体MEAを実験のための管に取り付け、ここで、気体混合物を管の入口ポート中に送ることにより、50:50のCO
2及びN
2の混合物が多孔性液体MEAを通過した(
図6Aを参照されたい)。管の出口ポートを気体分析のための質量分光計(MS)に接続した。実験のための管を30℃の温度でオーブン中に保持した。
【0094】
図6Bは、出口気体組成及び出口気体流を示し、及び
図6Cは、MSから得られた、MEA機能化クォーツウール1グラムあたりのミリモル単位でのCO
2であるCO
2吸収の変化を示す。CO
2及びN
2の気体混合物が多孔性液体アミンを通過したとき、実験の最初の300秒間に全ての気体CO
2が捕獲され、それによって純粋なN
2気体が生じた。アミン基準でのCO
2吸収の計算によると、CO
2吸収が平衡に達すると、MEAは、2分子ごとに1分子のCO
2を捕獲したことが示される。これは、アミン膜に水が存在することなく達成することができる最大理論値である。多孔性液体MEAによるCO
2の効果的な吸着は、クォーツウールの繊維上の薄層中に存在する液体アミンの高い表面積によるものであり、それにより、炭素二酸化物は、入手可能なアミンの全てと反応することが可能である。
【0095】
図6Dは、CO
2/N
2気体混合物が、機能化されていないクォーツウールを有する実験のための管を通過する場合の比較例を示す。出口気体組成(
図6E)によって示されるように、CO
2及びN
2は、直ちに実験のための管を通過し、50:50の入口濃度に達する。それにより、クォーツウール自体が両方の気体に不活性であり、且つCO
2を吸着しないことが確認される。小量のN
2及びCO
2(約0.1mmol/g)は、管のウール内多孔性に保持された(
図6F)。
【0096】
実施例5.150.0m
-1より大きいPIを有する多孔性液体アミン及び3D印刷構造を使用するCO
2の除去
実施例2に記載の2つの3D印刷構造を、実施例3に記載の通り、溶媒、次いでプラズマを用いてクリーニングした。合計619mg(0.623cc)のTEPAを2つの3D印刷構造に導入し、PI=157.1m
-1が得られた。プラズマ処理により、3D構造の表面エネルギーが増加した。
図3B及び4に示されるものと同様に、高い表面エネルギー及び粗さにより、液体アミンによって3D構造を完全に湿潤させて、その表面上に液体を保持することが可能となった。次いで、2つの多孔性液体TEPAを実験のための管に取り付け、ここで、
図7Aに示すように、気体混合物を管の入口ポート中に送ることにより、50:50のCO
2及びN
2の混合物が多孔性液体TEPAを通過した。実験のための管の温度は、気体流動中、ブロックヒーターを使用して130℃に保持された。管の出口ポートを気体分析のための質量分光計(MS)に接続した。
【0097】
図7Bは、アミンの重量に対しても正規化された、CO
2の正規化された(その最大強度によって分割された)質量分光学信号の変動を時間とともに示す。時間ゼロは、N
2気体がその最大強度の5%で検出される時間に設定される。重量正規化された破過時間(tbw)は、CO
2がその最大強度の5%で検出される時間として定義される。
図7Bは、有意な量の時間(tbw=210秒/g)に関して、CO
2が多孔性液体TEPAから出ることができなかったことを示す。210秒/gのtbwは、体積正規化された破過時間(tbv=22秒/cc)に等しい。
図7B中の時間軸は、TEPAが使用された場合、アミン1グラムあたりの時間を示す。130℃においてCO
2を捕獲するアミンの能力は、非常に驚くべきものである。アミンからCO
2を脱着させるために、通常100℃より高い温度が使用された。しかしながら、130℃における多孔性液体TEPAの能力は、多孔性液体TEPA中の浸出アミンの液体特性によるものであり得る。高温では、CO
2とアミンとの間の化学反応は、弱いが、アミンの粘度も低い。粘度が低いことにより、浸出アミン液体中のCO
2のより大きい拡散長さが提供され、したがって除去のためにCO
2と反応させるために利用可能なより多くのアミンが生じる。この挙動は、単に多孔性液体TEPA中の表面の孔内に液体を維持する能力によるものである。
図7Bは、前記3D印刷構造が前記の通りに調製されたが、ここではアミンが構造に導入されなかった場合の実験の結果を示す(対照)。この結果は、アミンが3D印刷構造の粗さ内に浸出されない場合、構造によって除去されるCO
2の量が検知されないことを示す。
【0098】
実施例2に示され、且つ
図3Cに示される3D印刷構造を、溶媒を用いてクリーニングし、次いで400℃で3時間、空気オーブン中に置いた。合計780mgのTEPAを構造に導入し、PI=168.5m
-1であった。400℃の空気オーブン処理により、3D構造の表面エネルギーが増加した。高い表面エネルギー及び粗さにより、液体アミンによって3D構造を完全に湿潤させて、その表面上に液体を保持することが可能となった。次いで、多孔性液体TEPAを実験セットアップに取り付け、気体混合物を管の一端中に送ることにより、50:50のCO
2及びN
2の混合物が多孔性液体TEPAを通過した。実験のための管の温度は、気体流動中、ブロックヒーターを使用して130℃に保持された。
図7Cに示すように、管の出口ポート(管の多端)を気体分析のための質量分光計(MS)に接続した。
【0099】
図7Dは、CO
2の正規化された(その最大強度によって分割された)質量分光学信号の変動を時間とともに示す。時間ゼロは、N
2気体がその最大強度の5%で検出される時間に設定される。アミンの重量に対して正規化された破過時間(tbw)は、CO
2がその最大強度の5%で検出される時間として定義される。
図7Dは、有意な量の時間(tbw=210秒/g)に関して、CO
2が多孔性液体TEPAから出ることができなかったことを示す。
図7D中の時間軸は、TEPAが使用された場合、アミン1グラムあたりの時間を示す。348秒/gのtbwは、体積正規化された破過時間(39秒/ccのtbv)に等しい。130℃においてCO
2を捕獲するアミンの能力は、非常に驚くべきものである。アミンからCO
2を脱着させるために、通常100℃より高い温度が使用された。しかしながら、130℃における多孔性液体TEPAの能力は、多孔性液体TEPA中の浸出アミンの液体特性によるものであり得る。
【0100】
実施例6.150.0m-1未満のPIを有する多孔性液体アミン及びセラミックモノリスを使用するCO2の除去
効果的多孔性液体は、液体によって湿潤可能な適切な表面化学的性質及び150m-1より大きいPIを有するために適切な表面テクスチャー又は粗さを有する。本実施例において、任意の表面変性を行わずに、2300m-1の高いS/Vを有する2つのセラミックモノリスが使用された。
【0101】
TEPAを2つのセラミックモノリスに導入することにより、PI=135.1m
-1で、合計311mg(0.313cc)のアミンがモノリスの表面上で浸出した。次いで、
図7Eに示すように、モノリスを実験のための管に取り付け、入口ポートを通して50:50のCO
2及びN
2の混合物が多孔性液体TEPAを通過した。実験のための管の温度は、気体流動中、ブロックヒーターを使用して130℃に保持された。管の出口ポートを気体分析のための質量分光計(MS)に接続した。
【0102】
図7Fは、CO
2の正規化された(その最大強度によって分割された)質量分光学信号の変動を時間とともに示す。時間ゼロは、N
2気体がその最大強度の5%で検出される時間に設定される。重量破過はアミンの重量に対して正規化された時間(tbw)であり、且つCO
2がその最大強度の5%で検出される時間として定義される。
図7Fは、有意な量の時間(tbw=321秒/g)に関して、CO
2がこの多孔性液体TEPAから出ることができなかったことを示す。321秒/gのtbwは、体積正規化された破過時間(tbv=19秒/cc)に等しい。tbwは、実施例5に記載される多孔性液体TEPA含浸構造に匹敵するが、tbvは、3D印刷の実施例のものより有意に低い。135.1-1の低PIは、わずか0.059のV1/Vの低い値を示す。これは、すなわち、CO
2捕獲のために反応器のより高い体積が使用されることを強制する。0.1のV1/V多孔性液体TEPAによる実施例5などの150.0m
-1より大きいPIは、反応器体積を2倍減少する。
【0103】
実施例7.多孔性液体トリエチレングリコールを使用する水の除去
小量のクォーツウールを5分間、プラズマクリーナー中に配置した。多孔性液体TEG(
図1に概略的に示される)を製造するために、液体トリエチレングリコール(TEG)をクォーツウールの表面上に分布した。次いで、前記多孔性液体TEGを実験のための管に取り付け、ここで、管の入口ポートを通して、湿性炭化水素を送ることにより、湿性炭化水素ガスが多孔性液体TEGを通過した(
図8を参照されたい)。管の出口ポートを気体分析のためのFTIR(フーリエ変換赤外線分光学)に接続した。湿性炭化水素気体は、ヘプタンの存在下、水中にN
2気体を通気することによって生成された。
【0104】
図8は、FTIR分析によって決定された、実験のための管を出た気体の水/炭化水素濃度比の変動を示す。
図8は、多孔性液体TEG又はクォーツウールが実験のための管に存在しない場合(正方形;以下では「参照」)、有意な量の水が試料管を通過することを実証する。実験のための管中でプラズマ処理されたクォーツウールが使用された場合(円形;「親水性クォーツウール」と記載される)、水の量は、参照と比較して減少する。しかしながら、この効果は、短時間である。実験のための管中で多孔性液体TEGが使用された場合(正方形;「LIS:その表面上で浸出したTEG液体を有するクォーツウール」と記載される)、水の濃度は、FTIRの検出限度下まで減少する(グラフ中ではゼロによって示される)。この効果は、TEGを有さないプラズマ処理されたクォーツウールが利用されたときよりも長く続く。したがって、多孔性液体TEGによる水の効果的な除去は、多孔性液体TEG上の薄層に存在する液体TEGの高い表面積による。
【0105】
実施例8.水溶液からのフルフラールの除去
(
図1に概略的に示される通り)多孔性液体トルエンを製造するために、ポリエチレン(PE)ウールの表面上に分布した。本実施例において、ポリエチレンウールは、水の存在下でのPE繊維上でのトルエンの湿潤性を確実にするために使用された。次いで、多孔性液体トルエンをフルフラールの5g/L水溶液に浸漬させた。フルフラール水溶液中の多孔性液体トルエンを取り出した後、残りのフルフラール水溶液をUV-Vi分析のために採取した。
【0106】
図9Aは、フルフラール溶液中での浸漬前及び後の多孔性液体トルエンを示す。フルフラール溶液と接触させた後に観察される多孔性液体トルエンの黄茶色は、多孔性液体トルエンによるフルフラールの吸収による。
図9Bは、前後のフルフラール溶液のUV-Vi分析を示す。多孔性液体トルエンと接触させる前及び後のフルフラール溶液を示すバイアル瓶を見ることによって分かるように、有意な量のフルフラールが溶液から除去された。実際に、US-Viz分析によって実証されるように、多孔性液体トルエンは、フルフラール溶液から約60%のフルフラールを除去することができた。
【0107】
実施例9.多孔性液体水を使用する酵素の固定化
小量のクォーツウールを5分間、プラズマで処理し、次いで2μMのチトクロムcを含む緩衝水に直ちに浸漬させた。クォーツウール上での液体の完全な分布後、過剰量の酵素溶液をクォーツウールからスクイーズ除去し、多孔性水性酵素(PAE)を製造した。ニッケルオクタエチルポルフィリン(NiOEP)の酸化のためにPAEを使用した。酵素反応は、溶解された約16.7μMのNiOEP、100mMのtert-ブチルヒドロペルオキシドを含む、10%(v/v)のリン酸緩衝食塩水(1倍)、90%(v/v)のトルエンを含有する混合物と接触するようにPEAを配置することによって達成された。反応物をロッカー上で24時間、室温でインキュベーションし、25rpm/分で回転させた。
【0108】
図10は、24時間のインキュベーション後の反応溶液のUV-vis分析を示す。PAEで処理されたNiOEPに関する約393nmの特徴的ソーレー帯の高さは、酵素のない対照溶液と比較して減少した。分析により、PAEによるインキュベーションによって約41.3%のNiOEPが酸化したことが示される。有機溶媒から水性相への疎水性NiOEPの物質移動の制限のために、遊離チトクロムcは、NiOEPへの接近が制限され、酸化に関する活性を示さない。本実施例は、酵素がPAE上で固定化される場合、酸化性活性の有意な増加が生じることを実証する。
【0109】
したがって、本開示の論文は、時間がかかるか、複雑であるか、費用のかかる酵素固定化法を使用することなく、担体の表面上での酵素溶液の薄層の固定化を可能にするものである。酵素反応が適切な有機相中で実行される場合、水相の保持された薄層は、酵素溶液と、強化された酵素活性のための基質を含有する有機相との間の界面の表面積を増加させるだけでなく、酵素に関する水溶性共同因子の再生に関する最適条件も提供する。同様に、酵素反応が適切な水相で実行されるものの、有機相中で酵素の薄層を保持することができた。
【0110】
全ての参考文献、特許、係属特許出願及び公開特許の内容は、本出願を通して引用され、参照により本明細書に明白に組み込まれる。
【0111】
当業者は、本明細書に記載される開示の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は通常の実験を使用して確認することができる。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に組み込まれるように意図される。本明細書に記載される詳細な実施例及び実施形態は、例示の目的のためにのみ一例として与えられ、いかなる場合も本開示に対して限定的であるように考慮されないものとして理解される。それを踏まえて、種々の修正形態及び変更形態が当業者に提示され、またそのような修正形態及び変更形態は、本出願の趣旨及び範囲内に含まれるものであり、且つ添付の特許請求の範囲内であると考えられる。例えば、所望の効果を最適化するために成分の相対量が変更され得、追加的な成分が添加され得、且つ/又は記載される成分の1つ以上が類似の成分で置き換えられ得る。本開示の系、方法及びプロセスに関連する追加的な有利な特徴及び機能性は、添付の特許請求の範囲から明白であろう。さらに、当業者は、本明細書に記載される本開示の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は通常の実験を使用して確認することができる。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に組み込まれるように意図される。