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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】コバルト触媒及びその前駆体
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20241017BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20241017BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20241017BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20241017BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20241017BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20241017BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B01J23/89 M
B01J35/60 G
B01J37/08
B01J37/02 101C
B01J37/18
B01J23/889 M
C10G2/00
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021545381
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 GB2020050568
(87)【国際公開番号】W WO2020183148
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】1903502.1
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(72)【発明者】
【氏名】マルセル、リチャード ジョン
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/146277(WO,A1)
【文献】特表2014-514151(JP,A)
【文献】米国特許第04822824(US,A)
【文献】特表2014-518905(JP,A)
【文献】特表2009-520674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074837(US,A1)
【文献】特開2013-248609(JP,A)
【文献】特表2005-516769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニア担体の細孔内に配置されたコバルト酸化物結晶子を含む、フィッシャー・トロプシュ反応用のコバルト触媒前駆体であって、前記コバルト酸化物結晶子は、XRDで6~18nmの範囲に決定される平均サイズを有し、前記チタニア担体は、100~1000μmの範囲の粒径を有する球状チタニア担体であり、前記触媒前駆体は、0.2~0.6cm/gの細孔容積と、30~60nmの範囲の平均細孔直径とを有し、前記触媒前駆体は、前記平均コバルト酸化物結晶子サイズと前記平均細孔直径との比が0.1:1~0.6:1の範囲である、コバルト触媒前駆体。
【請求項2】
前記コバルト酸化物結晶子が、7~16nmの範囲の平均サイズを有する、請求項1に記載のコバルト触媒前駆体。
【請求項3】
前記触媒前駆体の前記粒径が、300~800μmの範囲である、請求項1又は2に記載のコバルト触媒前駆体。
【請求項4】
前記触媒前駆体の体積メジアン径D[v,0.5]が、300~500μmの範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコバルト触媒前駆体。
【請求項5】
前記触媒前駆体の硫黄含有量が<30ppmwであり、前記触媒前駆体のアルカリ金属含有量が<50ppmwであり、前記触媒前駆体の塩化物含有量が<1500ppmwである、請求項1~4のいずれか一項に記載のコバルト触媒前駆体。
【請求項6】
前記使用されるチタニア担体が、アナターゼ含有担体であり、前記アナターゼが、前記担体の>50重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のコバルト触媒前駆体。
【請求項7】
前記触媒前駆体の前記細孔容積が0.2~0.6cm/gの範囲であり、前記平均細孔直径が30~60nmの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載のコバルト触媒前駆体。
【請求項8】
前記触媒前駆体のコバルト含有量が、Coとして表して、5~25重量%の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコバルト触媒前駆体。
【請求項9】
モリブデン(Mo)、バリウム(Ba)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、スズ(Sn)、ガリウム(Ga)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、トリウム(Th)、タングステン(W)、又はケイ素(Si)の化合物から選択される1つ以上の添加物を更に含み、金属添加物の量は、前記触媒前駆体上で1~25重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコバルト触媒前駆体。
【請求項10】
ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、白金(Pt)、及びパラジウム(Pd)から選択される1つ以上のプロモータを更に含み、前記プロモータ金属の量は、前記触媒前駆体上で0.01~1.00重量%である、請求項1~9のいずれか一項に記載のコバルト触媒前駆体。
【請求項11】
硝酸コバルト溶液で、100~1000μmの範囲の粒径を有する球状チタニア担体を含浸させることと、前記含浸されたチタニア担体を乾燥及び焼成することとにより、コバルト酸化物結晶子を前記チタニア担体の前記細孔内に形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒前駆体の調製方法。
【請求項12】
前記含浸が、50℃を超える温度で加熱された硝酸コバルト溶液で実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記使用される硝酸コバルト溶液の体積が、前記チタニア担体の総細孔容積以下である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記含浸された担体が、50~150℃の範囲の温度で乾燥される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記焼成が、200~350℃の範囲の温度で実施される、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記焼成が、流動床反応器内で実施される、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
単体コバルト結晶子を含む触媒を形成する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒前駆体において、前記コバルト酸化物結晶子を還元ガス流で還元することを含む、方法
【請求項18】
前記触媒、不動態化処理に供するか、又は炭化水素ワックス中に封入する、請求項17に記載の方法
【請求項19】
フィッシャー・トロプシュ反応器の反応管に使用するのに好適な触媒キャリア内に配置された、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒前駆体の組み合わせ。
【請求項20】
前記触媒キャリアが、所定の位置に前記触媒前駆体又は触媒を保持するのに好適な環状容器を含み、前記容器が、内側チャネルを画定する有孔内側容器壁と、有孔外側容器壁と、前記環状容器を閉鎖する上面と、前記環状容器を閉鎖する底面と、前記環状容器の前記内側容器壁によって形成された前記内側チャネルの前記底を閉鎖する表面と、を有する、請求項19に記載の組み合わせ。
【請求項21】
フィッシャー・トロプシュ反応器における水素及び一酸化炭素を含む合成ガスから炭化水素を生成する方法における、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒前駆体の使用。
【請求項22】
前記フィッシャー・トロプシュ反応器が、マイクロチャネル反応器、マルチチューブ型フィッシャー・トロプシュ反応器、スラリー相反応器、スラリーバブルカラム反応器、ループ反応器、又は流動床反応器である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記触媒前駆体又は触媒が、請求項19又は20に記載の組み合わせを含み、前記フィッシャー・トロプシュ反応器が、マルチチューブ型フィッシャー・トロプシュ反応器である、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
フィッシャー・トロプシュ反応器の反応管に使用するのに好適な触媒キャリア内に、請求項17または18に記載の方法で得られる触媒を配置して、組み合わせを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタニア粒子上に担持されたコバルト酸化物を含むコバルト触媒前駆体、そのような前駆体を製造する方法、及び固定床フィッシャー・トロプシュ触媒の調製におけるそのような前駆体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
約1mm未満の公称直径を有するフィッシャー・トロプシュ触媒は、高い反応速度の可能性及びC5+炭化水素に対する改善された選択性を提供し、商業規模の固定床でのそれらの使用は、通常、許容できないほど高い圧力降下によって非実用的になるため、通常、スラリーバブルカラム反応器などの懸濁状態での使用に関連している。
【0003】
国際公開第2012/146903(A1)号は、小粒子触媒の固定床を使用するフィッシャー・トロプシュ法を開示しており、この触媒は、外部冷却反応管内に置かれた複数の触媒容器内に配置されている。触媒粒子は、約100μm~約1mmの直径を有してもよい。
【0004】
そのような方法は、炭化水素生成物の改善された組を生成する機会を提供するが、固定床フィッシャー・トロプシュ法で使用するのに好適な小粒子触媒の性能を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チタニア担持触媒は、フィッシャー・トロプシュ法において向上した性能を提供する。例えば、国際公開第97/00231号は、キャリア上に担持されたコバルト並びにマンガン及び/又はバナジウムを含む炭化水素の調製方法で使用するための触媒を開示しており、コバルト:(マンガン及び/又はバナジウム)原子比は少なくとも12:1である。実施例では、30~80メッシュ粒径の市販のルチルチタニア粒子を、硝酸マンガンを含む又は含まない硝酸コバルト溶液で含浸させ、120℃で乾燥させ、400℃で焼成した。米国特許第4822824号は、チタニアなどの耐火キャリア上にコバルト及びルテニウムを堆積させ、触媒金属を酸化及び還元して、コバルト及びルテニウムが密接に接触する触媒を形成することによって調製される、合成ガスから高級炭化水素を調製するために有用な触媒を開示している。しかしながら、これらの触媒は、実験室規模試験装置で比較的短時間で試験した。したがって、高い活性及び選択性を示し、長期使用中に安定した動作を呈する、商業規模の固定床フィッシャー・トロプシュ法で使用するのに好適な小粒子触媒がなお必要とされている。
【0006】
したがって、本発明は、チタニア担体の細孔内に配置されたコバルト酸化物結晶子を含むコバルト触媒前駆体であって、コバルト酸化物結晶子は、XRDで6~18nmの範囲に決定される平均サイズを有し、チタニア担体は、100~1000μmの範囲の粒径を有する球状チタニア担体であり、触媒前駆体は、0.2~0.6cm/gの細孔容積と、30~60nmの範囲の平均細孔直径とを有し、触媒前駆体は、平均コバルト酸化物結晶子サイズと平均細孔直径との比が0.1:1~0.6:1の範囲である、コバルト触媒前駆体を提供する。
【0007】
本発明は更に、硝酸コバルトで球状チタニア担体を含浸させることと、含浸されたチタニア担体を乾燥及び焼成することとにより、コバルト酸化物結晶子をチタニア担体の細孔内に形成する、触媒前駆体の調製方法を提供する。
【0008】
本発明は更に、触媒前駆体中のコバルト酸化物結晶子を還元ガス流によって還元して、単体コバルト結晶子を形成することによって形成された、触媒を提供する。還元ガスは、フィッシャー・トロプシュ法に触媒前駆体を導入する前に、ex-situで適用されてもよく、この場合、触媒は、フィッシャー・トロプシュ法に導入する前に、ワックスで封入するか、又は不動態化処理に供されてもよい。あるいは、還元ガスは、フィッシャー・トロプシュ反応器内に触媒前駆体を導入した後にin-situで適用されてもよい。
【0009】
本発明は更に、フィッシャー・トロプシュ反応器の反応管に使用するのに好適な触媒キャリア内に配置された、触媒前駆体又は触媒の組み合わせを提供する。
【0010】
本発明は更に、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスから炭化水素を生成するため、フィッシャー・トロプシュ反応器内の触媒前駆体又は触媒を使用する方法を提供する。
【0011】
触媒前駆体は、コバルト酸化物結晶子を含む。コバルト酸化物結晶子は、好ましくは、検出可能なCoO又は他のコバルト酸化物若しくは水酸化物を含まないCoから本質的になる。コバルト酸化物結晶子の平均粒径は、6~18ナノメートル(nm)、好ましくは7~16nm、より好ましくは8~12nmの範囲である。平均粒径は、X線回折(XRD)によって決定される。特に好適な方法は、Lynxeye PSD検出部を備えたCuKα波長1.5406ÅでBruker D8 Advance XRD装置を使用する。この検出システムは、コバルトの存在によって生成される蛍光を抑制するように動作設定を調整することができるため有用である。リートベルト解析及びシェラーの線拡大は、XRD結晶子サイズ決定の一般的な方法である。いずれの方法も使用することができるが、リートベルト解析が好ましい。
【0012】
触媒前駆体は、球状チタニア担体を含む。用語「球状担体」は、少なくとも約0.90、好ましくは少なくとも約0.95の球形度(ψ)を有する担体形状、及びチタニア粉末のおよそ球状の凝集体を含む。球状チタニア粒子は、「微小球」と呼ばれることがある。チタニア担体の粒径は、100~1000マイクロメートル(μm)、好ましくは300~800μmの範囲である。この範囲内のチタニア担体の体積メジアン径D[v,0.5]は、好ましくは300~500μm、より好ましくは350~450μm、最も好ましくは350~425μm、特に375~425μmの範囲である。触媒前駆体は、触媒担体と本質的に同じ粒径特性を有する。したがって、触媒前駆体は、商業規模の固定床で使用されるとき、特に、マルチチューブ型フィッシャー・トロプシュ反応容器内の触媒キャリア内の固定床として使用されるとき、許容可能な圧力低下を伴い高活性触媒を提供する。体積メジアン径D[v,0.5]という用語は、D50又はD0.5とされることもあり、報文Malvern Instruments Ltd(Malvern,UK)(www.malvern.co.uk)から入手可能な論文「Basic Principles of Particle Size Analysis」でAlanRawle博士によって定義されており、例えば、Malvern Mastersizer(登録商標)を使用して、レーザー回折によって好都合に達成され得る粒径分析から計算される。
【0013】
好適な球状チタニア担体は市販されている。球状チタニア担体は、必要に応じて、四塩化チタンなどのチタニア前駆体の火炎加水分解又は火炎熱分解によって作製された市販のチタニア粉末から好都合に予備形成され得る。市販のチタニア粉末は、典型的には、5マイクロメートル未満の粒径を有するため、球状チタニア担体は、典型的には、チタニア粉末の凝集体を含む。1つ以上の結合剤、例えばポリマー結合剤は、その強度を増大させるために担体中に存在してもよいが、これは必須ではない。凝集体は、噴霧乾燥、造粒、噴霧造粒、ドリップキャスト、又は球状化などの球体を生成する任意の好適な成形技術によって形成され得る。
【0014】
チタニア担体は、好ましくは、硫黄及びアルカリ金属などのコバルト触媒フィッシャー・トロプシュ反応の毒であることが見出されている元素が少ないことが好ましい。したがって、触媒前駆体の硫黄含有量は、望ましくは<30ppmwであり、触媒前駆体のアルカリ金属(例えば、Na又はK)含有量は、好ましくは<50ppmwである。更に、触媒製造及び処理装置の腐食を回避するために、触媒前駆体の塩化物含有量は、好ましくは1500ppmw未満、特に650ppmw未満である。チタニアを洗浄して、成形前又は成形後のこれらの夾雑物質の存在を低減して、所望のレベルを達成することができる。
【0015】
チタニアは、ルチル又はアナターゼ結晶形態で存在し得る。触媒前駆体は、好ましくはアナターゼ含有担体、好ましくはアナターゼ形態が担体の>50重量%の量で存在する、アナターゼリッチ担体を含む。より好ましくは、チタニア担体は、担体の≧70重量%のアナターゼ含有量を有し、最も好ましくは、チタニア担体は、担体の≧80重量%のアナターゼ含有量を有する。アナターゼ型のチタニアは、ルチル型よりも多孔性かつより軟質であり、フィッシャー・トロプシュ触媒前駆体担体としての使用に特に好適である。
【0016】
望ましくは、チタニア担体は、25~75m/gの範囲のBET表面積を有する。
【0017】
触媒前駆体の細孔容積は、0.20~0.60cm/g、好ましくは0.30~0.50cm/gの範囲である。触媒前駆体の平均細孔直径は、好ましくは30~60nm、より好ましくは40~50nmの範囲である。触媒前駆体のBET表面積は、好ましくは35~65m/gの範囲である。BET表面積及び細孔容積は、窒素物理吸着を使用して測定できる。細孔容積はまた、水銀ポロシメトリーを使用して決定されてもよい。本発明では、細孔直径が比較的大きいため、水銀圧入ポロシメトリーとしても知られる水銀ポロシメトリーをより好適に使用することができる。細孔直径はまた、これらの技術を使用して決定されてもよい。水銀圧入ポロシメトリーは、粉末サンプルを圧力下で水銀に曝露し、体積の変化を測定することを伴う周知の技術である。「平均細孔直径」とは、細孔容積の4倍を表面積で割ったもの(4V/A)を意味する。この関係は、直径D及び高さhの直円柱の形状から導出され、この場合、表面積(A)はπDhで与えられ、体積(V)はπDh/4で与えられる。
【0018】
触媒前駆体は、触媒担体の細孔内に位置する小さな酸化コバルト酸化物結晶子を有する。触媒前駆体は、平均コバルト酸化物結晶子サイズと触媒前駆体の平均細孔直径との比が、0.1:1~0.6:1、好ましくは0.2:1~0.4:1の範囲である。この比率は驚くべきものであり、この理由は、担体の細孔直径が金属酸化物結晶子サイズを制御し、平均直径が大きい細孔は大きなコバルト酸化物結晶子をもたらすと概して考えられているためである。本出願人は、驚くべきことに、小さなコバルト酸化物結晶子がチタニア担体の比較的大きな細孔内に形成されることを発見した。本出願人は、チタニア担体の物理的特性、コバルト源、及び調製条件の組み合わせが、特許請求された比率を有する触媒前駆体を生成し、それが向上した性能を有するフィッシャー・トロプシュ触媒を提供することを発見した。
【0019】
特許請求された比率を有する触媒前駆体を生成する調製方法は、コバルトアンミン炭酸塩溶液を使用する方法などの従来技術の含浸/堆積方法とは対照的である。そのような方法は、典型的には、還元が困難であり得、還元すると、FT条件下で急速に焼結する傾向があり、平均サイズが典型的には<5nmの非常に小さいコバルト酸化物結晶子を生成し、活性が失われていくためである。
【0020】
理論に束縛されるものではないが、特許請求された比率は、細孔構造内に位置する触媒活性部位への、及び触媒活性部位からの反応物及び生成物の拡散を促進し、それによって触媒選択性を高め、並びに高い活性を提供するため、特許請求されている平均細孔直径と平均コバルト結晶子サイズとの比を有する触媒前駆体に起因して触媒性能が改善される場合がある。更に、比較的大きな細孔を有するチタニア担体を使用し、これらの細孔に比較的小さなコバルト酸化物結晶子を投入することは、以前に可能であったよりもより長い炭化水素鎖生成物を提供する上で有利であり、潜在的には、高いα値を提供する上で有利である。
【0021】
酸化触媒前駆体のコバルト含有量は、Coとして表して、好ましくは5~25重量%、より好ましくは8~16重量%である。コバルト含有量が比較的低いにもかかわらず、得られた触媒は、フィッシャー・トロプシュ反応において1グラム当たり驚くほど高い活性を有する。活性触媒では、触媒前駆体中のコバルト酸化物の少なくとも一部分が単体形態に還元され、コバルト酸化物中の酸素原子が除去されるにつれて、活性触媒中のコバルトの割合が増加する。特に有効な触媒は、80モル%のコバルト酸化物の還元度で8~12重量%のコバルトを含む。
【0022】
触媒前駆体は、フィッシャー・トロプシュ法における触媒性能を向上させるために、1つ以上の添加物及び/又はプロモータを更に含み得る。添加物は、典型的には、プロモータよりも高い濃度で触媒前駆体に組み込まれる。好適な添加物は、バリウム(Ba)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、スズ(Sn)、ガリウム(Ga)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、トリウム(Th)、タングステン(W)、又はケイ素(Si)の化合物から選択される。好適なプロモータとしては、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、白金(Pt)、及びパラジウム(Pd)が挙げられる。チタニア担持コバルトフィッシャー・トロプシュ触媒は、好ましくは、1つ以上の酸化マンガンとして触媒前駆体中に存在するマンガンを更に含むことが見出されている。所望であれば、Ru、Re、及びPtから選択される1つ以上のプロモータが、触媒前駆体に含まれてもよい。添加物及び/又はプロモータは、例えば、過レニウム酸などの酸、金属塩、例えば、金属硝酸塩及びオキシ硝酸塩若しくは金属酢酸塩、又は金属アルコキシド若しくは金属アセチルアセトネートなどの好適な金属有機化合物などの好適な化合物を使用することによって触媒前駆体に組み込むことができる。金属添加物の量は、触媒前駆体において1~25重量%、好ましくは触媒前駆体において1~15重量%で変化し得る。プロモータ金属の量は、触媒前駆体において0.01~1.00重量%、好ましくは触媒前駆体において0.01~0.50重量%で変化し得る。
【0023】
触媒前駆体は、硝酸コバルト溶液で球状チタニア担体を含浸させることと、含浸されたチタニア担体を乾燥及び焼成することとにより、コバルト酸化物結晶子をチタニア担体の細孔内に形成することによって調製される。必要に応じて、含浸、乾燥、及び/又は焼成を繰り返して、所望の触媒前駆体を得ることができる。
【0024】
硝酸コバルトは、好ましくは硝酸コバルト(II)六水和物であり、これは、例えば50℃を超えるまで加熱することによってその水和水に溶解して、溶融硝酸コバルトの濃縮溶液を形成することができる。あるいは、硝酸コバルトを水又は別の溶媒に溶解して、より希薄な溶液を形成することができる。水、望ましくは脱塩水が好ましい溶媒である。含浸は、硝酸コバルト溶液を、プローシェアミキサーなどの好適なミキサー内の球状チタニア担体に添加することによって実施することができる。含浸は、好ましくは50℃を超える温度で加熱された硝酸コバルト溶液で実施される。使用される硝酸コバルト溶液の体積は、好ましくは、チタニア担体の総細孔容積に近似する。「乾式含浸」又は「初期湿潤含浸」と呼ばれ得るそのような含浸は、担体の細孔内のコバルト化合物の堆積を有利に改善し、必要な乾燥の量を最小限に抑える。所望であれば、好適な添加物及び/又はプロモータの化合物は、硝酸コバルト溶液に好適な量で添加されてもよい。あるいは、これらは、乾燥前若しくは乾燥後、及び/又は最終焼成前に触媒前駆体と組み合わされてもよい。
【0025】
含浸された担体は、硝酸コバルト溶液中に存在する溶媒、典型的には水を除去するために乾燥され、望ましくは、担体の細孔内に部分的に水和された硝酸コバルトを残す。乾燥工程は、好ましくは、50~150℃の範囲の温度で実施される。乾燥工程は、空気中若しくは窒素などの不活性ガス中の大気圧で、又は真空下で実施することができる。乾燥時間は、必要に応じて0.5~16時間の範囲であり得るが、より好ましくは80~120℃で1~5時間実施される。
【0026】
乾燥され含浸された担体は、硝酸コバルト、好ましくは部分的に水和された硝酸コバルトを含む自由流動性粉末である。触媒前駆体を生成するために、乾燥された材料は、焼成と呼ばれることがある熱処理に供されて、硝酸コバルトを、所望の結晶子サイズ範囲を有する結晶性コバルト酸化物に変換する。熱処理は、従来どおり、空気中で、若しくは乾燥した材料を窒素若しくは別の非還元ガス混合物の下で加熱することによって、又は真空下で加熱することによって実施することができる。熱処理は、静的若しくは移動床オーブンで、又は、好ましくは流動床反応器で実施することができる。流動床反応器は、驚くべきことに、例えば6~12nm、特に7~8nmの範囲の小さい平均コバルト酸化物結晶子サイズを有する触媒前駆体を生成することが見出された。本発明における焼成温度は、望ましくは、コバルト酸化物結晶子の焼結を最小化し、コバルト表面積を維持するために、温度範囲220~320℃、好ましくは240~300℃である。これらの温度での焼成はまた、チタニア担体中のアナターゼがルチル形に変換される可能性を回避する。焼成時間は、必要に応じて0.5~16時間の範囲であり得るが、好ましくは240~300℃で1~4時間実施される。流動床条件下では、焼成ガスの毎時空間速度(GHSV)は、常温常圧(NTP)で1000~5000hr-1、好ましくは2000~4000hr-1であり得る。
【0027】
焼成工程の後に、焼成された材料が、コバルト酸化物の単体形態への還元を引き起こさない条件下で、希水素流中で加熱されるポリッシング工程が続く場合がある。ポリッシング工程は、焼成された材料の残留硝酸塩含有量を低下させるために有利に使用され得る。水素流は、例えば、窒素などの不活性ガス中で、例えば、0.1~10体積%の水素、好ましくは1~5体積%の水素からなってもよい。圧力は、絶対圧1~10バール、好ましくは絶対圧1~3バールであり得る。ポリッシング工程の最高温度は、100~225℃、好ましくは140~200℃の範囲であってよい。ポリッシング工程は、必要に応じて0.5~16時間、好適に実施することができるが、好ましくは、140~200℃で1~3時間実施される。ポリッシング工程における水素/不活性ガス流のガス毎時空間速度(GHSV)は50~2000hr-1であってもよいが、常温常圧(NTP)で好ましくは50~1000hr-1、より好ましくは100~500hr-1である。これらの条件下では、本質的にコバルト酸化物の還元は起こらない。ポリッシング工程は、触媒前駆体中の残留硝酸塩を0.1重量%未満のレベルまで低減するので、その後の還元は、還元中に形成されるアンモニアを管理するための特別な工程を踏む必要なしに実施され得る。これは、触媒前駆体がin-situで還元される場合、すなわち、フィッシャー・トロプシュ法に使用される反応器内で還元される場合に特に有用である。
【0028】
触媒前駆体は、フィッシャー・トロプシュ反応に使用される反応器に導入され、活性化されて、コバルト酸化物の少なくとも一部をin-situで単体形態に還元することによって触媒を形成することができる。このような活性化は、任意の好適な還元剤を使用して実施することができるが、好ましくは、水素ガス流又は水素及び一酸化炭素を含む合成ガス流から選択される還元ガス流を使用して実施される。還元ガス流は、窒素などの不活性ガス中の1~100体積%の水素からなり得るか、又は合成ガスであり得る。合成ガスは、好適には、水素:一酸化炭素のモル比が1.6~2.2の範囲にある、本質的に水素及び一酸化炭素からなるフィッシャー・トロプシュ合成ガスであり得る。あるいは、還元ガスは、これらのガスの混合物を含み得る。触媒前駆体を通過する還元ガスのガス毎時空間速度(GHSV)は、常温常圧(NTP)で4000~10000hr-1であり得る。還元ガスのガス毎時空間速度は、コバルト酸化物及び還元コバルトの水蒸気への曝露を制御するために、還元中に変更され得る。還元段階に使用される最高温度は、250~400℃の範囲であり得るが、還元されたコバルト結晶子の焼結を最小限にするために、好ましくは、250~300℃の範囲である。還元は、周囲圧力又は上昇圧力で実施することができ、すなわち、還元ガスの圧力は、1~50バールの絶対圧であり得る。
【0029】
あるいは、触媒前駆体は、触媒を提供するために、還元容器内でex-situで予備還元され得る。予備還元は、任意の好適な還元剤を使用して実施することができるが、好ましくは、再循環された還元ガス流から副生成水を除去するループで作動する水素ガス流を使用して実施する。水素流は、窒素などの不活性ガス中の10~100体積%の水素からなり得る。還元ガス中の水素の濃度は、還元中に変化する場合がある。水素/不活性ガス流のガス毎時空間速度(GHSV)は、常温常圧(NTP)で3000~10000hr-1、好ましくは4000~10000hr-1であり得る。還元ガスのガス毎時空間速度は、コバルト酸化物及び還元コバルトの水蒸気への曝露を制御するために、還元中に変更され得る。還元段階に使用される最高温度は、250~400℃の範囲であり得るが、還元されたコバルト結晶子の焼結を最小限にするために、好ましくは、250~300℃の範囲である。還元は、周囲圧力又は上昇圧力で実施することができ、すなわち、還元ガスの圧力は、1~50、好ましくは1~20、より好ましくは1~10バールの絶対圧であり得る。
【0030】
還元状態の触媒は、空気中の酸素と自発的に反応する可能性があり、望ましくない自己発熱及び活性の喪失につながる可能性があるため、取り扱いが困難であり得る。結果として、還元された触媒は、好適なバリアコーティングで還元された触媒を封入することによって保護され得る。フィッシャー・トロプシュ触媒の場合、これは、好適には、フィッシャー・トロプシュ合成によって生成されたワックスなどの炭化水素ワックスであり得る。あるいは、還元された触媒は、窒素などの不活性ガスで希釈され得る空気又は酸素などの酸素含有ガスにさらすことにより、還元後に不動態化されて、コバルト結晶子上にコバルト酸化物の保護外層を形成し得る。封入用のワックス又はコバルト酸化物の不動態化外層は、水素ガス流又は合成ガス流の下で触媒を加熱することにより、フィッシャー・トロプシュ反応器内に導入された後、触媒から除去することができる。
【0031】
いずれかのルートが選択され、コバルト触媒は、還元された金属1グラム当たりの高い金属表面積を提供する。例えば、触媒前駆体は、250℃で水素により還元されたとき、水素化学吸着によって測定される場合、好ましくは≧5m/gの触媒のコバルト表面積を有する。
【0032】
触媒前駆体から得られる触媒は、炭化水素のフィッシャー・トロプシュ合成に特に有効である。コバルト触媒を使用した炭化水素のフィッシャー・トロプシュ合成は十分に確立されている。フィッシャー・トロプシュ合成は、一酸化炭素及び水素の混合物を炭化水素、好ましくは炭素鎖長が≧5の炭化水素に変換する。一酸化炭素及び水素の混合物は、典型的には、水素:一酸化炭素比が1.6~2.2:1の範囲を有する合成ガスである。反応は、固定床反応器、スラリー相反応器、バブルカラム反応器、ループ反応器、又は流動床反応器などの1つ以上の反応器を使用する連続又はバッチプロセスで実施することができる。このプロセスは、0.1~10Mpaの範囲の圧力及び150~350℃の範囲の温度で操作できる。連続操作のガス毎時空間速度(GHSV)は、1000~25000hr-1の範囲である。
【0033】
本発明の触媒は、固定床触媒、すなわち、反応物合成ガスが通過する反応容器内に固定された触媒床として特に好適である。
【0034】
触媒前駆体の物理的特性は、マイクロチャネル反応器、すなわち、合成ガスが通過する2~10mmの範囲の幅又は高さを有する複数の触媒含有チャネルを有するフィッシャー・トロプシュ反応器中、又はダウンフローマルチチューブ型フィッシャー・トロプシュ反応容器などのフィッシャー・トロプシュ反応容器内の反応管に配置された触媒キャリア中での使用に好適であることを意味する。
【0035】
触媒又は触媒前駆体は、管状反応器での使用に好適な触媒キャリアと組み合わせて使用される場合に特に有効なものであることが見出された。「触媒キャリア」とは、ガス及び/又は液体がキャリアに出入りし、キャリア内に配置された触媒又は触媒前駆体の床を通過して流れることを可能にするように構成された、例えばカップ又は缶の形態の触媒容器を意味する。任意の好適な触媒キャリアを使用してもよい。一構成では、触媒キャリアは、国際公開第2011/048361号に記載されているものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。国際公開第2011/048361号に記載されている触媒キャリアは、使用中の触媒を保持するための環状容器であって、当該容器は、管を画定する有孔内壁と、有孔外壁と、環状容器を閉鎖する上面と、環状容器を閉鎖する底面とを有する、環状容器と;環状容器の内壁によって形成された当該管の底を閉鎖する表面と;環状容器の有孔外壁から当該容器の底面又はその近くの位置からシールの位置より下の位置まで上方に延びるスカートと;上面又はその近くに配置され、スカートの外面を超えて延びる距離だけ容器から延びるシールと、を備える。一構成では、触媒キャリアは、国際公開第2016/050520号に開示されているものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、触媒キャリアは、触媒前駆体又は触媒を所定の位置に保持するのに好適な容器であって、当該容器は、容器を閉鎖する底面と、上面とを有する、容器と;当該容器の底面から上面まで延びるキャリア外壁と;容器からキャリア外壁を超えて延びる距離だけ延びるシールと;を備え得、当該キャリア外壁は、シールの下に配置された開口部を有する。好ましい構成では、触媒キャリアは、所定の位置に触媒前駆体又は触媒を保持するのに好適な環状容器を含み得、当該容器が、内側チャネルを画定する有孔内側容器壁と、有孔外側容器壁と、環状容器を閉鎖する上面と、環状容器を閉鎖する底面と、環状容器の内側容器壁によって形成された当該内側チャネルの底を閉鎖する表面と、を有する。触媒キャリアは、概して、それが使用時に配置される反応管の内部寸法よりも小さい寸法であるようなサイズにされる。シールは、本発明の触媒キャリアが反応管内の所定の位置にあるときに、反応管の内壁と相互作用するようなサイズにされる。
【0036】
ダウンフローのある垂直反応器で使用する場合、反応物は反応管を通って下向きに流れ、したがって最初に触媒キャリアの上面に接触する。シールは、キャリアの側面の周りを反応物が通過するのを遮断するので、その上面は、それらを、内側容器壁によって画定される内側チャネルに方向付ける。次いで、反応物は、有孔内側容器壁を通って環状容器に入り、次いで、有孔外側容器壁に向かって触媒床を半径方向に通過する。内側容器壁から外側容器壁への通過中に、反応物が触媒に接触し、フィッシャー・トロプシュ反応が発生する。次いで、未反応の反応物及び生成物は、有孔外側容器壁を通って容器から流出する。次いで、キャリア外壁は、キャリア外壁の内側表面と環状容器の有孔外側容器壁との間で、キャリア外壁内の開口部に達するまで、反応物及び生成物を上向きに方向付ける。次いで、それらは、キャリア外壁に配置された開口部を通って方向付けられ、キャリア外壁の外側表面と熱伝達が行われる反応管の内側表面との間を下向きに流れる。流れが逆になるように反応器が操作された場合、経路は逆になる。
【0037】
触媒前駆体を触媒キャリアに充填し、得られた組み合わせをフィッシャー・トロプシュ反応容器の反応管に充填して、上記のようにin-situで触媒を還元及び活性化することができる。あるいは、組み合わせは、還元容器内でex-situで還元を供されてもよく、組み合わせは、封入されるか、又は不動態化処理に供されてもよい。次いで、得られた組み合わせは、フィッシャー・トロプシュ反応容器の反応管に安全に充填することができる。
【0038】
ここで、以下の実施例を参照して、本発明を更に説明する。
【0039】
実施例では、以下の測定を行った。
【0040】
粒径:粒径は、機器ソフトウェアのMalvern MS3000光学特性データベースからのTiO(アナターゼ)の光学特性を使用する、Malvern Mastersizer3000レーザー回折粒径アナライザーを使用したレーザー光散乱によってASTMD4464に従って決定した。(屈折率2.51、吸収率0.01)。湿式分散測定は、0%及び85%の超音波処理、及びHydro MVサンプル分散ユニットを使用した50%の撹拌速度を使用して、脱イオン水中で実行された。レーザー光線が0.1~20%遮られるまで、十分なサンプルをユニットに添加した。サンプルの各アリコートに対して5回の測定が行われ、測定時間は5秒であった。乾式分散測定は、サイト圧縮空気を使用して0.5バール及び3.0バールの分散空気圧を使用して、マイクロボリュームトレイ及び標準ベンチュリを備えたAero乾式分散ユニットにて20%の供給率で行った。サンプルのアリコート当たり1回の測定を行い、各測定でアリコート全体を測定した。レーザー光線が0.1~10%遮られている場合、測定時間は15秒である。結果を計算するために、Malvernソフトウェアは、ミー理論を使用して、得られた回折パターンを粒径分布に変換する。
【0041】
細孔容積。水銀の圧入/押出データを、ASTM Method D4284-03;水銀圧入ポロシメトリーによる触媒の細孔容積分布を決定するための試験方法に従ってMicromeritics AutoPore 9520水銀ポロシメーターで測定した。圧入曲線を、0.5~60000psiaの圧力範囲にわたって測定し、その後、大気圧まで押し出した。圧入曲線及び押出曲線の両方の各データ点に対して15秒の平衡時間を使用し、水銀の接触角を140°、水銀の表面張力を485ダイン/cmとした。分析前に、サンプルをオーブン内で、115℃で一晩乾燥した。ポロシメトリー測定中に現れる温度及び圧力の影響は、空の硬度計管でのブランク補正の実行を計算に入れ、その後、実験データから減算された。
【0042】
Micromeritics 2420 ASAP物理吸着アナライザーを使用して、ASTM Method D 3663-03;表面積の標準試験に従ったBET法を適用して、表面積を測定した。窒素を吸着質として使用し、液体窒素温度(77K)で測定を行った。窒素分子の断面積は16.2Åとした。分析前に、140℃で最低1時間、乾燥窒素ガスでパージすることにより、サンプルを脱ガスした。0.05~0.20P/Poの相対圧力領域にわたって、5つの相対圧力/体積データペアを取得した。各点の平衡化時間は、10秒であった。表面積は、脱ガス後のサンプルの重量に基づいて報告される。
【0043】
平均細孔直径。平均細孔直径は、細孔容積及び表面積の測定値から計算した。平均細孔直径は、補正された細孔容積の4倍を計算された表面積で割ったもの(4V/A)である。この関係は、直径D及び高さhの直円柱の形状から導出され、この場合、表面積(A)はπDhで与えられ、体積(V)はπDh/4で与えられる。
【0044】
メジアン細孔直径。メジアン細孔直径は、細孔容積の測定値から導出された。「メジアン細孔直径」とは、累積水銀圧入曲線の中点を表す細孔直径を意味し、粒子間のボイド充填を補正したものである。
【0045】
コバルト含有量。焼成触媒前駆体のICPAES(誘導結合プラズマ原子発光分光法)又はICPMS(誘導結合プラズマ質量分析法)によって決定され、損失のない基準でのコバルトの重量パーセントとして表される。
【0046】
コバルト酸化物結晶子サイズ。コバルト酸化物結晶子サイズは、Bruker D8 AdvanceX線回折計を使用したXRDによって決定した。粉末状の触媒前駆体サンプルをサンプルホルダーに押し込み、機器に装填した。平行光線(Gobel鏡)光学機器。ソフトウェア;相識別用のBruker EVA;パターン化用のTopas。回折計の条件は次のとおりであった。
X線 LynxeyePSD検出部によりCu Ka波長1.5406A。
開始2シータ 10,
終了2シータ 130
ステップ 0.022
ステップ時間、秒 4
X線電流、mA 40
X線電圧、kV 40
リートベルト分析(Bruker Topas v4.2)を使用して、コバルト酸化物結晶子サイズを決定した。粉末XRDデータのリートベルト解析は、対称性情報及び近似構造に基づいて計算された回折パターンから始まる。次いで、リートベルト解析では、最小二乗最小化を使用して、全ての観測点を計算されたプロットと比較し、計算された構造を精緻化して差異を最小化する。
【0047】
コバルト表面積。コバルト金属の表面積は、Micromeritics 2480 HTP 6 Station Chemisorption Analyserで測定した。サンプルを、200SCCMの水素流量で、250℃で120分間、100体積%の水素で還元した。還元段階が完了した後、サンプルをヘリウムで15分間パージした後、真空下で35℃の分析温度まで冷却した。<10μmHgの真空に達した後、45分間排気を継続した。次いで、サンプルに、100~760mmHgの圧力範囲にわたって100体積%の水素を添加した。各圧力で、化学吸着された水素を平衡化させ、水素の取り込み体積を測定して、自動的に記録した。圧力/取り込みのペアをプロットして、明確に定義されたプラトー領域を示す等温線を得た。この領域内でデータ点を選択して、最近似直線フィットを達成し、これを外挿してゼロ圧力に戻した。切片値を用いて、H/Coに対して1.0の化学量論を使用してコバルト表面積を計算し、還元された触媒の質量に基づいてコバルト表面積を報告した。
【0048】
実施例1.312μmチタニア球上での触媒前駆体調製
a)20重量/重量%Co、0.2重量/重量%Ru。
(i)346.4gの硝酸コバルト六水和物結晶(19.80重量/重量%Co)及び5.4gの硝酸ルテニウムニトロシル溶液(12.54重量/重量%Ru)をガラスビーカーに入れ、ホットプレート上で80℃に加熱した。熱溶液を、予熱したZブレードミキサーで500.05gの312μm D50チタニア球(XRDによる>85重量/重量%アナターゼ)に添加した。溶液の添加前のチタニアの温度は65℃であり、ミキサー壁は69℃であった。溶液を混合チタニア球に約4分間にわたって注いだ。溶液添加後、混合を2分間継続した。842.0gの含浸された材料を排出し、7つのステンレス鋼トレイに入れた。次いで、この材料を110℃で3時間乾燥し、280℃で2時間焼成した。599.9gの焼成された材料を生成した。
(ii)ステップ(i)からの594.3gの焼成された材料を、予熱したZブレードミキサーに入れた。286.7gの硝酸コバルト六水和物結晶及び4.6gの硝酸ルテニウムニトロシル溶液をガラスビーカーに入れ、ホットプレート上で80℃に加熱した。溶液の添加前の材料の温度は64℃であり、ミキサー壁は68℃であった。溶液を混合材料に約3分間にわたって注いだ。溶液添加後、混合を2分間継続した。876.2gの含浸された材料を排出し、7つのステンレス鋼トレイに入れた。次いで、この材料を110℃で3時間乾燥し、280℃で2時間焼成した。671.8gの焼成された材料を生成した。
【0049】
FT触媒前駆体特性
D50=311μm
BET SA=39m/g
Co SA=8m/g
Hg圧入量=0.23cm/g
Hg平均細孔直径=36nm
Hgメジアン細孔直径=42nm
Co結晶子サイズ(XRD)=13.5nm
Co含有量(ICP)=18.4重量/重量%
Ru含有量(ICP)=0.15重量/重量%
平均コバルト酸化物粒径と触媒前駆体の平均細孔直径との比=13.5:36=0.38:1
【0050】
b)11重量/重量%Co、1重量/重量%Mn。
320.6gの硝酸コバルト六水和物結晶(19.80重量/重量%Co)及び12.0gの脱塩水をガラスビーカーに入れ、ホットプレート上で加熱した。39.14gの硝酸マンガン溶液(15.4重量/重量%Mn)を60℃で添加し、混合物を70℃に達するまで更に加熱した。熱溶液を、予熱したZブレードミキサーで500.05gの312μm D50チタニア球(XRDによる>85重量/重量%アナターゼ)に添加した。溶液の添加前のチタニアの温度は64℃であり、ミキサー壁は68℃であった。溶液を混合チタニア球に約3分間にわたって注いだ。溶液添加後、混合を2分間継続した。852.2gの含浸された材料を排出し、7つのステンレス鋼トレイに入れた。次いで、この材料を100℃で3時間乾燥し、250℃で2時間焼成した。596.7gの焼成された材料を生成した。
【0051】
FT触媒前駆体特性
D50=310μm
BET SA=44m/g
Co SA=6m/g
Hg圧入量=0.28cm/g
Hg平均細孔直径=37nm
Hgメジアン細孔直径=45nm
Co結晶子サイズ(XRD)=13.0nm
Co含有量(ICP)=10.4重量/重量%(酸化物)
Mn含有量(ICP)=0.96重量/重量%(酸化物)
平均コバルト酸化物粒径と触媒前駆体の平均細孔直径との比=13:37=0.35:1。
【0052】
実施例2.413μmチタニア球上での触媒前駆体調製
a)11重量/重量%Co、1重量/重量%Mn。
実施例1(b)の方法は、413μmのD50チタニア球を使用して繰り返された。
【0053】
FT触媒前駆体特性
D50=412μm
BET SA=43m/g
Co SA=5m/g
Hg圧入量=0.29cm/g
Hg平均細孔直径=43nm
Hgメジアン細孔直径=43nm
Co結晶子サイズ(XRD)=14.8nm
Co含有量(ICP)=10.6重量/重量%(酸化物)
Mn含有量(ICP)=1.03重量/重量%(酸化物)
平均コバルト酸化物粒径と触媒前駆体の平均細孔直径との比=14.8:43=0.34:1。
【0054】
実施例3:比較例:309μmのアルミナ球上での触媒調製
a)20重量/重量%Co、0.2重量/重量%Ru。
12.5Kgのアルミナ球(γ-Al2O3)をRT80ミキサーに入れ、水浴を80℃にした。これを一晩放置して加熱した。15.9Kgの硝酸コバルト六水和物結晶(19.80重量/重量%Co)、240gの硝酸ルテニウムニトロシル(13.0重量/重量%Ru)、及び1210.0gの脱塩水を、硝酸コバルトの結晶が溶融するまで、ホットプレート上のステンレス鋼ビーカーで加熱した。次いで、溶液を予熱したスプレーポットに移した。熱溶液を54℃でアルミナ球上に噴霧した。次いで、溶液を20分以上かけて噴霧した。溶液添加後、混合を1分30秒間継続した後、材料をドラムに排出した。28.865Kgの材料を排出した。これをステンレス製のトレイに入れ、オーブンに入れて110℃で3時間乾燥させた。乾燥した材料を4つのバッチに分割した。4つのバッチの各々を110℃で30分間再乾燥し、次いで280℃で2時間焼成した。
【0055】
比較FT触媒前駆体特性
D50=305μm
BET SA=153m/g
Co SA=12m/g(425℃減少)
Hg圧入量=0.45cm/g
Hg平均細孔直径=14nm
Hgメジアン細孔直径=13nm
Co結晶子サイズ(XRD)=15.5nm
Co含有量(ICP)=18.4重量/重量%(酸化物)
Ru含有量(ICP)=0.13重量/重量%(酸化物)
平均コバルト酸化物粒径と触媒前駆体の平均細孔直径との比=15.5:14=1.11:1。
【0056】
実施例4:触媒試験
試験は、内径4mmの実験用反応管に配置された、2.00gのSiCで希釈された0.5gの触媒前駆体を使用して実施された。60mL/分の流量を使用して7時間純粋な水素中、300℃(傾斜1℃/分)で、in situで還元した後、次いで、温度を150℃に下げ、ガスを合成ガス(H:CO=2:1)に切り替え、110mL/分の流量を使用して反応器を20bargに加圧した。6時間後、温度を210℃に上昇させ(1℃/分)、約16時間にわたって一晩放置した。次いで、流量を最初に50mL/分に減少させ、次いで50%の合成ガス変換を達成するために必要な流量まで減少させ、データ収集を試験期間中(約160時間)継続した。マスフローコントローラーを使用して、入口ガスを反応器内に計量した。ガス状、液体、及び固体の炭化水素生成物並びに水相をガスクロマトグラフィーで分析して、CO変換及び選択性を計算するための質量バランスを達成した。アルファは、nの関数としてのlog(Wn/n)のプロットの傾きから計算され、ここで、勾配はlog(α)であり、ここで、Wnは、炭素数nの炭化水素の重量分率であり、αは、鎖成長確率である。この式は、アンダーソンシュルツ-フローリー分布、Wn=nαn-1(1-α)から導出された。典型的には、C20~C40は、アルファの計算に使用される炭素数の範囲であった。結果は以下のとおりであった。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1(a)と実施例3(a)とを比較すると、結果は、本発明によるチタニア球担持触媒前駆体が、対応する球状アルミナ担体上の同じ金属及びプロモータレベルと比較して、高級炭化水素に対する活性及び選択性を向上させた触媒を生成したことを示す。実施例2(a)は、実施例1(a)と比較して、チタニア球担体上でのMn促進コバルト触媒の改善された性能を示す。