(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】低い反りを有するポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20241017BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20241017BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20241017BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L23/06
C08L23/12
C08K3/34
(21)【出願番号】P 2021548213
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 US2020018862
(87)【国際公開番号】W WO2020172306
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-11-10
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391024559
【氏名又は名称】フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アッシ,ヨアキム
(72)【発明者】
【氏名】リ,ファンクイ
(72)【発明者】
【氏名】カルキン,アンディ
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-520093(JP,A)
【文献】特開平08-048834(JP,A)
【文献】特開平08-157660(JP,A)
【文献】特開平08-176366(JP,A)
【文献】特開平05-295225(JP,A)
【文献】特表2008-546891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンポリマーと、2マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有する核剤とを含み、前記核剤を100ppm~
10,000ppm含む、
射出成形用のポリマー組成物
であって、
前記ポリマー組成物が、同じポリマー及び同じ核剤を含むが、その同じ核剤が2μm以上の平均粒径を有する同等のポリマー組成物と比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、又は25%~60%の増大したアイゾット衝撃値を有し、アイゾット衝撃がASTM D-256-10によって測定される、ポリマー組成物。
【請求項2】
核剤がタルクである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
核剤の平均粒径が、0.6μm~1.0μm、又は約0.8μmである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、同じポリオレフィンポリマー及び同じ核剤を含むが、その同じ核剤が2μm以上の平均粒径を有する、同等のポリマー組成物の等方性収縮よりも低い等方性収縮を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物の等方性収縮が80%未満である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の等方性収縮が、0%~15%、0%~5%、又は0%~1%である、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
組成物が、同じポリオレフィンポリマー及び同じ核剤を含むが、その同じ核剤が2μm以上の平均粒径を有する、同等のポリマー組成物の差動収縮よりも低い差動収縮を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
アイゾット衝撃が少なくとも42kj/m
2、あるいは少なくとも50kj/m
2である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項9】
ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はその両方を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、ランダムコポリマー、耐衝撃性コポリマー、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
ホモポリマーが、ポリプロピレンと、約5重量%までの別のC2~C8αオレフィンとを含む、請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
ポリオレフィンポリマーが、約1g/10分~約200g/10分の溶融流量、3.5~4.5重量%のキシレン可溶物含有量、又はそれらの組み合わせを有し、前記溶融流量が、ASTM D 1238に従って230℃の温度でラム重量2.16kgで測定した値である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
添加剤を更に含み、添加剤が、酸化防止剤、中和剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤、離型剤、紫外線(UV)スクリーニング剤、酸化剤、UV光吸収剤、難燃剤、顔料、染料、充填剤、流量調整剤、又はそれらのいずれかの組み合わせである、請求項1~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載のポリマー組成物を含む製品。
【請求項15】
製品が、自動車部品、食品容器、キャップ、コンピュータ製品、繊維、パイプ、フィルム、ボトル、非食品容器、カップ、蓋、プレート、トレイ、ブリスターパック、及び人工芝である、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
請求項1~
13のいずれか1項に記載のポリマー組成物を成形することを含む、製品の製造方法。
【請求項17】
成形することが:
流動性ポリマー組成物を鋳型内に射出することと、
ポリマー組成物を凝固させることと、
凝固した組成物を鋳型から離型することと、を含み、
流動性ポリマー組成物と凝固した組成物との間の体積差が20%未満である、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
ポリマー組成物を射出成形して製品にすることが、約10秒以下、約7秒以下、又は2秒~7秒のサイクル時間を含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
ポリオレフィンポリマー中の反りを低減する方法であって、2マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有する核剤をポリオレフィンポリマーに添加して、
射出成形用のポリオレフィン組成物を形成することを含み、前記ポリオレフィン組成物は前記核剤を100ppm~
10,000ppm含
み、
前記ポリマー組成物が、同じポリマー及び同じ核剤を含むが、その同じ核剤が2μm以上の平均粒径を有する同等のポリマー組成物と比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、又は25%~60%の増大したアイゾット衝撃値を有し、アイゾット衝撃がASTM D-256-10によって測定される、方法。
【請求項20】
核剤がタルクを含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はそれらの組み合わせのホモポリマー、コポリマー、又はブレンドを含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項22】
ポリオレフィン組成物が、同じポリオレフィンポリマー及び同じ核剤を含むが、その同じ核剤が2μm以上の平均粒径を有する、同等のポリマー組成物の差動収縮よりも低い差動収縮を有する、請求項
19に記載の方法。
【請求項23】
組成物が、同じポリオレフィンポリマー及び同じ核剤を含むが、その同じ核剤が2μm以上の平均粒径を有する、同等のポリマー組成物の等方性収縮よりも低い等方性収縮を有する、請求項
19に記載の方法。
【請求項24】
組成物の等方性収縮が、0%~15%、0%~5%、又は0%~1%である、請求項
19~
21及び
23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年2月20日に出願された米国仮出願第62/807,954号の利益を主張するものである。
【0002】
発明の背景
A. 発明の分野
本発明は、一般に、ポリオレフィンポリマーと、2マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有する核剤とを含むポリマー組成物に関する。この組成物を含む物品は、低い反りを示す。
【背景技術】
【0003】
B. 関連技術の説明
チーグラー・ナッタ又はメタロセン化合物等の触媒によって形成されるポリプロピレン材料は、最も汎用性があり、成形プラスチック製品の商業的製造に一般に使用される熱可塑性プラスチックの1つである。この材料は、多くのプラスチック成形プロセスを用いて、自動車部品から食品容器に及ぶ多様な最終用途品に形成することができる。そのようなプロセスの1つは、射出成形である。
【0004】
射出成形において、プラスチック構成要素は、鋳型キャビティ内に射出される溶融ポリマー樹脂から形成することができる。溶融樹脂は、部品構成要素を形成するのに十分な時間、キャビティ内に保持され得る。成形から冷却及びキャビティからの取り外し、又は冷却段階に必要な時間は、製造時間、従って製造効率における重要な要素である。熱膨張及び圧縮性等の樹脂特性は、冷却段階中に溶融樹脂がどの程度寸法変化を起こすかを決定する。冷却段階中に起こるこの寸法変化は、収縮と呼ばれる。プラスチック構成要素の製造中、収縮により、最初に鋳造された鋳型と最終的な成形品との間に体積差が生じる。寸法変化が均一である場合、収縮は、等方性と呼ばれる。寸法変化が不均一又は変化する場合、収縮は、異方性又は差動(differential)と呼ばれる。収縮は、等方性であろうと異方性であろうと、正しい寸法の最終用途品を得るために、プラスチック構成要素の製造において正確に考慮されなければならない。収縮、特に差動収縮は、成形部品の反り又は変形をもたらすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の議論を考慮すると、反りの量が低減されたポリマー樹脂から最終用途品を製造する方法を開発することが望ましい。また、このポリマー樹脂が、衝撃強度及び剛性等の機械的特性の向上を示すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
射出成形材料を製造する際の収縮に関連する問題の少なくともいくつかに対する解決策を提供する発見が見出された。この解決策は、ポリオレフィンポリマーと、2マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有する核剤とを含む組成物を前提とする。本発明の組成物は、2μmを超える平均粒径を有する核形成粒子を使用して作製された組成物と比較して、長手方向及び横方向の両方におけるより均一な等方性収縮特性及びより良好な衝撃特性を示す。詳細には、2μm未満の核剤を使用する場合、等方性収縮率は0~15%であり、IZOD衝撃は少なくとも20ft./lbであった。理論に束縛されることを望む
ものではないが、非常に小さいサイズの核形成粒子は、ポリオレフィンポリマー中により均一に分散し、従って、ポリマーマトリックス中により均質な球晶を生成すると考えられる。その結果、収縮は、ポリマーマトリックス中のこの均一な「ポリオレフィン結晶曇」により、全ての方向で同様である。
【0007】
本発明の特定の局面において、ポリマー組成物が記載される。ポリマー組成物は、ポリオレフィンポリマーと、2μm未満の平均粒径を有する核剤とを含むことができる。粒径は、公知の市販の機器類を使用して決定することができる。例として、粒径は、Micromeritics(米国)からのSediGraph(登録商標)機器を使用して決定することができる。核剤の平均粒径は、0.001μm~1.9μm、0.6μm~1.0μm、又は約0.8μmであり得る。組成物は、100重量ppm~20,000重量ppm、又は約1000ppmの核剤を含むことができる。場合によっては、組成物は、同じポリオレフィンポリマー及び同じ核剤を含むが、その同じ核剤が2μm以上の平均粒径を有する、同等のポリマー組成物の等方性及び/又は差動収縮よりも低い等方性及び/又は差動収縮を有することができる。本発明の組成物の等方性収縮は、比較試料の80%未満であり得る。いくつかの態様では、本発明の組成物の等方性収縮は、0%~15%、又は0%~5%、又は0%~1%である。本発明のポリマー組成物のアイゾット衝撃値(例えば、少なくとも20ft./lb、又は少なくとも24ft./lb.)は、同じポリマー及び同じ核剤を含むが、その同じ核剤が2μm以上の平均粒径を有する同等のポリマー組成物と比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、又は25%~60%であり得る。アイゾット衝撃は、ASTM D-256-10によって測定することができる。ポリオレフィンポリマーは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、又はその両方を含むことができる。場合によっては、ポリオレフィンポリマーは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、耐衝撃性コポリマー、又はそれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。場合によっては、組成物は、PPと、約5重量%までの別のC2~C8アルファオレフィンとを含むことができる。いくつかの態様では、ポリオレフィンは、ポリオレフィンポリマーの溶融流量が約1g/10分~約200g/10分であり得、及び/又はキシレン不溶物(XS)が、3.5~4.5重量%の範囲であり得るか、又はそれらの組み合わせであり得る。一例では、組成物は、0.5~1重量%のC2オレフィンを有するPPであってもよく、ポリオレフィンポリマーの溶融流量は、約1g/10分~約50g/10分であってもよく、XSは、3.5~4.5重量%であってもよい。場合によっては、ポリマー組成物は、添加剤(例えば、酸化防止剤、中和剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤、離型剤、紫外線(UV)スクリーニング剤、酸化剤、UV光吸収剤、難燃剤、顔料、染料、充填剤、流量調整剤、又はそれらのいずれかの組み合わせ)を含むことができる。
【0008】
本発明のポリマー組成物を含む製品も開示される。製品は、自動車部品、食品容器、キャップ、コンピュータ製品、繊維、パイプ、フィルム、ボトル、非食品容器、カップ、蓋、プレート、トレイ、及びブリスターパック、人工芝(ペレット、マット、ブレード等)等であり得る。
【0009】
本発明の別の局面では、本発明のポリマー組成物を含む製品を製造する方法が記載される。本方法は、ポリマー組成物を成形することを含むことができる。成形は、流動性ポリマー組成物を鋳型に射出することと、ポリマー組成物を凝固させることと、凝固した組成物を鋳型から離型することとを含むことができる。流動性ポリマー組成物と凝固した組成物との間の体積差は、0~15%であり得る。いくつかの態様では、製品へのポリマー組成物の射出成形は、約10秒以下、又は7秒未満のサイクル時間を含むことができる。
【0010】
別の態様では、ポリオレフィンポリマー中の反りを低減する方法は、2マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有する核剤をポリオレフィンポリマーに添加して、ポリオレ
フィン組成物を形成することを含む。
【0011】
本発明の他の態様は、本出願全体にわたって議論される。本発明の一局面に関して議論したいずれかの態様は、本発明の他の局面にも適用され、その逆も同様である。本明細書に記載される各態様は、本発明の他の局面に適用可能な本発明の態様であると理解される。本明細書で議論されるいずれかの態様は、本発明のいずれかの方法又は組成物に関して実施することができ、逆もまた同様であることが企図される。更に、本発明の組成物及びキットを使用して、本発明の方法を達成することができる。
【0012】
以下は、本明細書を通して使用される様々な用語及びフレーズの定義を含む。
【0013】
フレーズ「核剤」又は「核形成粒子」は、ポリマーの結晶化の速度を増加させる化合物を指す。
【0014】
用語「反り」は、最終用途品の表面が、意図した設計(例えば、鋳型)の形状に従わない歪みを指す。
【0015】
用語「等方性収縮」は、全方向に均一であり、意図したものよりも小さい最終用途品をもたらす収縮を指す。用語「異方性収縮」又は差動収縮は、各方向に均一ではなく、最終用途品の反りをもたらす収縮を指す。収縮はまず、冷却時のインフロー(in-flow)方向(差動収縮を測定する場合、長手方向と呼ばれる)の収縮の長さと、クロスフロー(cross-flow)方向(差動収縮を測定する場合、横方向と呼ばれる)に生じる収縮の長さとを測定することによって計算することができる。インフロー収縮とクロスフロー収縮との差に100%を乗じると、収縮パーセントが得られる。収縮の測定は、樹脂の流れの方向及び樹脂の流れの方向に直交する方向における変化を測定することに限定される。収縮は、米国特許第7,445,827号に記載されているような光学装置又はコンピュータ化数値制御(CNC)顕微鏡を用いて測定することができる。CNC顕微鏡の例は、QV APEX 302(Mitutoyo、USA)である。ポリマー試験片は、本開示のポリマー組成物からISO 294-3タイプD2鋳型に従って形成された60×60×2mmポリマー試験片であり得る。試験片の長さの光学的測定は、ポリマー試験片を位置決めテーブルの上に置き、位置決めテーブルをマイクロプロセッサと連絡している顕微鏡カメラの下にセットすることによって行われる。ポリマー試験片の両端の位置は、マイクロプロセッサの表示画面上の特定のマークの助けを借りて、ある期間の開始時及び終了時に記録される。その後、試験片の長さ又は幅は、ある期間にわたって観察された位置の変化から推定される。収縮測定のための処理パラメータは、ISO 294-3及びISO 294-1に基づいており、2つの顕著な違いがある:(1)同じ材料について保持圧力を20MPa、40MPa、60MPa又は80MPaから選択できる、及び(2)保持時間を最小限に保つ。
【0016】
フレーズ「溶融流量」又は「メルトインデックス(MFR又はMI2)」は、熱可塑性ポリマー又はブレンドのメルトの流れの容易さの測定値を指す。本明細書で「溶融流量」又はMFRは、ポリプロピレンに使用され、「メルトインデックス」又は「MI2」は、ポリエチレン及びポリエチレンリッチブレンドに使用される。本明細書で言及するMFR値は、ASTM D 1238に従って230℃の温度でラム重量2.16kgで測定した値である。本明細書で報告するMFR測定は、Tinuius-Olsen(USA)MP1200メルトフローインデクサーを使用して行った。本明細書で言及するMI2値は、ASTM D1238に従って190℃の温度でラム重量2.16kgで測定した値である。本明細書で報告するMI2測定は、Tinuius-Olsen MP993メルトフローインデクサーを使用して行った。
【0017】
フレーズ「固有粘度」は、溶液中のポリマーが前記溶液の粘度を増加させる能力を指す。固有粘度は、ASTM D-5225-17に従って測定することができる。
【0018】
用語「粘度」は、本明細書では、内部摩擦による流れに対する抵抗として定義される。
【0019】
用語「約」又は「ほぼ」は、当業者によって理解されるように近いものとして定義される。非限定的な一態様では、これらの用語は、10%以内、5%以内、1%以内、及び/又は0.5%以内であると定義される。
【0020】
用語「重量%」、「体積%」、又は「mol.%」は、各々、成分を含む総重量、材料の総体積、又は総モルに基づく、成分の重量百分率、成分の体積百分率、又は成分のモル百分率を指す。非限定的な例では、材料100グラム中の成分10グラムは、10重量%の成分である。
【0021】
用語「実質的に」及びその変形は、10%以内、5%以内、1%以内、又は0.5%以内の範囲を含むと定義される。
【0022】
用語「阻害する」又は「減少させる」又は「防止する」又は「回避する」又はこれらの用語のいずれかの変形は、特許請求の範囲及び/又は明細書において使用される場合、所望の結果を達成するためのいずれかの測定可能な減少又は完全な阻害を含む。
【0023】
用語「効果的」は、その用語が明細書及び/又は特許請求の範囲で使用されるとき、所望の、又は予想される、又は意図される結果を達成するのに十分であることを意味する。
【0024】
単語「a」又は「an」の使用は、特許請求の範囲又は明細書において用語「備えること」、「含むこと」、「含有すること」、又は「有すること」のいずれかと併せて使用される場合、「1つ」を指す場合があるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つを超える」の意味とも一致する。
【0025】
単語「備えること」(及び「備える」等の、備えることのいずれかの形態)、「有すること」(及び「有する」等の、有することのいずれかの形態)、「含むこと」(及び「含む」等の、含むことのいずれかの形態)又は「含有すること」(及び「含有する」等の、含有することのいずれかの形態)は、包括的又はオープンエンドであり、追加の、非記載の要素又は方法工程を除外しない。
【0026】
本発明のポリマー組成物は、本明細書を通して開示される特定の成分、構成要素、組成物等を「含む」、又は「から本質的になる」、又は「からなる」ことができる。非限定的な一局面において、「から本質的になる」という移行句に関して、本発明のポリマー組成物の基本的かつ新規な特徴は、均一かつ/又は低減された収縮で射出成形されるそれらの能力である。
【0027】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の図面、詳細な説明、及び実施例から明らかとなるであろう。しかしながら、図面、詳細な説明、及び実施例は、本発明の特定の態様を示しているが、単に例示のために与えられたものであり、限定することを意味するものではないことを理解するべきである。更に、本発明の趣旨及び範囲内の変更及び修正は、この詳細な説明から当業者に明らかとなることが企図される。更なる態様では、特定の態様の特徴が他の態様の特徴と組み合わされる場合がある。例えば、一態様の特徴は、他の態様のいずれかの特徴と組み合わされる場合がある。更なる態様では、追加の特徴が本明細書に記載される特定の態様に追加される場合がある。
【0028】
本発明の利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、0.8ミクロンの平均粒径を有する本発明の核剤と、2~4ミクロンの粒径を有する比較核剤との、ポリプロピレンポリマーの反りに対する平均粒径の効果を示す。
【
図2】
図2は、0.8ミクロンの平均粒径を有する本発明の核剤と、2~4ミクロンの粒径を有する比較核剤との、ポリプロピレンポリマーの収縮に対する平均粒径の効果を示す。
【
図3】
図3は、0.8ミクロンの平均粒径を有する本発明の核剤と、2~4ミクロンの粒径を有する比較核剤との、ポリプロピレンポリマーの計装衝撃(アイゾッド衝撃)に対する平均粒径の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、様々な修正及び代替形態が可能であるが、特定の態様が例として図面に示されている。図面は、等尺でない場合がある。
【0031】
発明の詳細な説明
ポリマー組成物の射出成形に関連する問題の少なくともいくつかに対する解決策を提供する発見がなされた。この発見は、2μm未満であるが2μmに等しくない平均粒径を有する核剤を使用することを前提としている。得られるポリマー組成物及びそれから製造される製品は、より低い反り及び強化された靭性を有する。理論に束縛されることを望むものではないが、ポリマーマトリックス中のポリマー結晶(例えば、PP結晶)の均一な分散が、成長する亀裂に対する物理的障壁として作用し得ると考えられる。より良好な分散は、いずれかの「弱いスポット」を防止することができ、より低い反りは、マトリックス中のより少ない「張力」をもたらし、成形された製品のためのより良好な衝撃特性をもたらすことができる。また更に、より小さなサイズの核剤(2μm未満)の使用により、収縮が起こったとしても、全ての方向に均一な収縮をもたらすことができる。また、均一な収縮は、他の機械的及び光学的特性に著しく影響を及ぼすことなく、冷却時に射出成形製品の低い反りをもたらすことができる。
【0032】
本発明のこれら及び他の非限定的な局面は、以下のセクションで更に詳細に議論される。
【0033】
A. 材料
ポリマー組成物は、ポリオレフィンポリマー、2μmの平均粒径を有する核剤、及び任意的な添加剤を含むことができる。
【0034】
1. ポリオレフィンポリマー
ポリオレフィンポリマーは、熱可塑性ポリマーであり得る。ポリマーは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、耐衝撃性コポリマー、又はそれらのいずれかの組み合わせであり得る。ポリオレフィンの非限定的な例は、ポリプロピレン及びポリエチレンを含む。ポリオレフィンは、公知のポリマー重合触媒(例えば、チーグラー・ナッタ触媒、クロム又はフィリップス触媒、シングルサイト触媒、メタロセン触媒等)のいずれかを使用して、重合プロセス(例えば、「高圧」プロセス、スラリープロセス、溶液プロセス及び/又は気相プロセス)のいずれかによって調製することができる。ポリエチレンは、エチレンのホモポリマー、又はエチレンと少なくとも1つのαオレフィン(例えば、ブテン、ヘキセン、オクテン等)とのコポリマーを含むことができる。ポリエチレンの非限定的な例は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリ
エチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンコポリマー、又はそれらのブレンドを含む。ポリプロピレンは、プロピレンのホモポリマー、プロピレン及び他のオレフィンのコポリマー、並びにプロピレン、エチレン、及びジエンのターポリマーを含む。制御されたレオロジーグレードのポリプロピレン(CRPP)は、目標とする高メルトフローインデックス(MFI)、低分子量、及び/又は出発ポリプロピレンよりも狭い分子量分布を有するポリプロピレンポリマーを製造するために(例えば、分解プロセスによって)更に加工されたものである。低次ポリプロピレンとも呼ばれる反応器グレードを使用することができる。ポリオレフィンはまた、例えば米国特許第7,056,991号及び第6,653,254号に記載されているように、チーグラー・ナッタ及びメタロセン触媒の組み合わせ等のいずれかの他の方法を用いて調製することができる。ポリオレフィンポリマーは、1.0g/10分~200g/10分の溶融流量、又は0.1、0.5、1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190及び200g/10分のいずれか1つの、若しくはそれらのいずれか1つに等しい、若しくはそれらのいずれか1つの間の溶融流量を有することができる。ポリオレフィンポリマーは、3.5~4.5重量%のXS、又は3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5重量%のいずれか1つの、若しくはそれらのいずれか1つに等しい、若しくはそれらのいずれか2つの間のXSを有することができる。ポリオレフィンホモポリマー(例えば、PPホモポリマー)は、0重量%~約5%(例えば、0、1、2、3、4、5重量%、及びこれらの間のいずれかの値又は範囲)の別のαオレフィン(エチレン、1-ブテン、及び1-ヘキセン等のC2~C8αオレフィンを含むが、これらに限定されない)を含むことができる。ホモポリマーは、調製することができ、又はTotal Petrochemicals、France及び/又はTOTAL Petrochemicals USA、Inc.等の商業的供給源を介して得ることができる。ホモポリマー及びコポリマーの非限定的な例は、Total Polypropylene 3620WZ及びTotal polypropylene 3727WZを含む。
【0035】
いくつかの態様では、ポリオレフィンポリマーは、ポリプロピレン耐衝撃性コポリマー(Ppic)である。PPicのコポリマー相は、エチレン/プロピレンゴム(EPR)とも呼ばれる、プロピレンとエチレンとのランダムコポリマーであり得る。理論によって限定されることを望むものではないが、PPicのEPR部分は、ホモポリマー成分のマトリックス中に組み込まれた場合に、PPicに増大した衝撃強度を提供するように機能することができるゴム状特性を有する。一態様では、PPicのEPR部分は、約14重量を超えるPPic、あるいは約18重量%を超えるPPic、あるいは約14重量%~約18重量%のPPicを含む。PPicのEPR部分中に存在するエチレンの量は、EPR部分の総重量に基づいて、約38%~約50%、あるいは約40%~約45%であり得る。PPicのEPR部分中に存在するエチレンの量は、フーリエ変換赤外分光(FTIR)法を用いて分光光度的に決定することができる。詳細には、ポリマー試料のFTIRスペクトルは、既知のEPRエチレン含有量を有する一連の試料について記録される。720cm-1/900cm-1における透過率の比率を各エチレン濃度について計算することができ、検量線を構築する。検量線上の線形回帰分析を行って、試料材料のEPRエチレン含有量を決定するために使用される式を導出する。PPicのEPR部分は、プロピレンホモポリマー成分のものとは異なる固有粘度を示すことができる。一態様では、PPicのEPR部分の固有粘度は、約2.0dl/gを超え、あるいは約2.0dl/g~約3.0dl/g、あるいは約2.4dl/g~約3.0dl/g、あるいは約2.4dl/g~約2.7dl/g、あるいは約2.6dl/g~約2.8dl/gであってもよい。一態様では、PPicは、約65g/10分~約130g/10分、あるいは約70g/10分~約120g/10分、あるいは約70g/10分~約100g/10分、あるいは約70g/10分~約90g/10分、あるいは約75g/10分~約85g/10分、あるいは約90g/10分の溶融流量(MFR)を有することができる。高い
MFRによって示される優れた流動特性は、成形ポリマー成分の高スループット製造を可能にする。一態様では、PPicは、改質されていない反応器グレードの樹脂である。いくつかの態様では、PPicは、制御されたレオロジーグレードの樹脂である。PPic及び他の耐衝撃性コポリマーは、商業的供給源を介して得ることができ、又は製造することができる。適切なPPicの代表的な例は、TOTAL Petrochemicals USA Inc.から入手可能な耐衝撃性コポリマー樹脂であるTOTALポリプロピレン4920W及びTOTALポリプロピレン4920WZを含むが、これらに限定されない。
【0036】
チーグラー・ナッタ触媒
伝統的に、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン又はポリエチレン)ホモポリマー及び/又はコポリマーの商業的生産(少なくとも約5日間から少なくとも約2年間までの期間にわたる1トン/時間から5トン/時間まで、望ましくは少なくとも1トン/時間から少なくとも50トン/時間までの範囲のポリマー生産)のためのバルクループ反応器(bulk loop reactor)に使用される触媒系は、従来のチーグラー・ナッタ触媒系(以下、「チーグラー・ナッタ触媒」又は「チーグラー・ナッタ触媒系」とも呼ぶことができる)として一般に知られている。従来のチーグラー・ナッタ触媒の非限定的な例は、米国特許第4,701,432号、米国特許第4,987,200号、米国特許第3,687,920号、第4,086,408号、第4,376,191号、第5,019,633号、第4,482,687号、第4,101,445号、第4,560,671号、第4,719,193号、第4,755,495号、及び第5,070,055号(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。これらのチーグラー・ナッタ触媒系は、チーグラー・ナッタ触媒、担体、1つ以上の内部供与体、及び1つ以上の外部供与体を含むことができる。
【0037】
従来のチーグラー・ナッタ触媒は、遷移金属ハロゲン化物及び金属アルキル又は水素化物から形成される立体特異的錯体であり、アイソタクチックポリプロピレンを生成することができる。チーグラー・ナッタ触媒は、遷移金属、例えばチタン、クロム又はバナジウムのハロゲン化物と、金属水素化物及び/又は金属アルキル、典型的には、助触媒としての有機アルミニウム化合物とから誘導される。触媒は、マグネシウム化合物上に担持されたハロゲン化チタンを含むことができる。チーグラー・ナッタ触媒、例えば、両方ともMayr et al.への米国特許第4,298,718号及び第4,544,717号に開示されているような、二塩化マグネシウム又は二臭化マグネシウム等の活性二ハロゲン化マグネシウム上に担持された四塩化チタン(TiCl4)は、担持触媒である。シリカも担体として使用することができる。担持触媒は、アルキルアルミニウム化合物、例えば、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリメチルアルミニウム(TMA)及びトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)等の助触媒と組み合わせて使用することができる。
【0038】
従来のチーグラー・ナッタ触媒は、1つ以上の内部電子供与体と組み合わせて使用することができる。これらの内部電子供与体は、触媒の調製中に添加され、担体と組み合わせるか、さもなければ遷移金属ハロゲン化物と錯体を形成することができる。ジエーテルベースの内部供与体化合物を含有する適切なチーグラー・ナッタ触媒は、両方とも日本のMitsui Chemicals、Inc.によって製造される、Mitsui RK-100及びMitsui RH-220として入手可能なものである。RK-100触媒は、内部フタレート供与体を更に含む。チーグラー・ナッタ触媒は、担持触媒であり得る。適切な担体材料は、ハロゲン化マグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウム、オキシハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及びマグネシウムのカルボン酸塩等のマグネシウム化合物を含む。典型的なマグネシウムレベルは、触媒の約12重量%~約20重量%で
ある。RK-100触媒は、約2.3重量%のチタンと、約17.3重量%のマグネシウムとを含有する。RH-220触媒は、約3.4重量%のチタンと、約14.5重量%のマグネシウムとを含有する。
【0039】
従来のチーグラー・ナッタ触媒は、1種以上の外部供与体と組み合わせて使用することもできる。一般に、このような外部供与体は、反応中に生成されるアタクチック又は非立体規則性ポリマーの量を制御するための立体選択的制御剤として作用し、従ってキシレン可溶物の量を減少させる。外部供与体の例は、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDS)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(CPDS)及びジイソプロピルジメトキシシラン(DIDS)等の有機ケイ素化合物を含む。しかしながら、外部供与体は、触媒活性を低下させる可能性があり、得られるポリマーのメルトフローを低下させる傾向がある可能性がある。
【0040】
メタロセン触媒系
ポリオレフィン(例えば、PP及びPE)を重合するのに有用な他の触媒系は、メタロセンに基づく。メタロセンは一般に、n結合を介して遷移金属と配位した1個以上のシクロペンタジエニル(Cp)基(置換されていても置換されていなくてもよく、同じであっても異なっていてもよい)を組み込んだ配位化合物として特徴付けることができる。Cp基はまた、例えばインデニル、アズレニル及びフルオレニル基を含む他の連続した環構造を形成するように、直鎖、分枝鎖又は環状ヒドロカルビル基、望ましくは環状ヒドロカルビル基による置換を含むことができる。これらの追加の環構造は、ヒドロカルビル基、望ましくは、C1~C20ヒドロカルビル基によって置換されていても置換されていなくてもよい。メタロセン化合物は、活性剤及び/又は助触媒(以下により詳細に記載される)、又は活性剤及び/又は助触媒の反応生成物、例えばメチルアルミノキサン(MAO)等、及び任意的にアルキル化/スカベンジング剤、例えばトリアルキルアルミニウム化合物(TEAL、TMA及び/又はTIBAL)等と組み合わせることができる。担持することができる様々なタイプのメタロセンが当技術分野で知られている。典型的な担体は、タルク、無機酸化物、粘土、及び粘土鉱物、イオン交換層状化合物、珪藻土、ケイ酸塩、ゼオライト、又はポリオレフィン等の樹脂性担体材料等のいずれかの担体であり得る。特定の無機酸化物は、シリカ及びアルミナを含み、単独で又はマグネシア、チタニア、ジルコニア等の他の無機酸化物と組み合わせて使用される。四塩化チタン等の非メタロセン遷移金属化合物も担持触媒成分に組み込まれる。担体として使用される無機酸化物は、30~600ミクロン、望ましくは、30~100ミクロンの範囲の平均粒径、50~1,000平方メートル/グラム、望ましくは100~400平方メートル/グラムの表面積、0.5~3.5cc/g、望ましくは約0.5~2cc/gの細孔容積を有することを特徴とする。
【0041】
いずれかのメタロセンを本発明の実施に使用することができる。本明細書で使用される「メタロセン」は、別段の指示がない限り、単一のメタロセン組成物又は2つ以上のメタロセン組成物を含む。メタロセンは、典型的には、一般に式:[L]mM[A]n(式中、Lは、嵩高い配位子であり、Aは、脱離基であり、Mは、遷移金属であり、m及びnは、総配位子原子価が遷移金属原子価に対応するようなものである)で表される嵩高い配位子遷移金属化合物である。配位子L及びAは、互いに架橋することができ、2つの配位子L及び/又はAが存在する場合、それらは架橋することができる。メタロセン化合物は、シクロペンタジエニル配位子若しくはシクロペンタジエン誘導配位子であり得る2つ以上の配位子Lを有するフルサンドイッチ化合物、又はシクロペンタジエニル配位子若しくはシクロペンタジエニル誘導配位子である1つの配位子Lを有するハーフサンドイッチ化合物であり得る。遷移金属原子は、周期律表の第4、5若しくは6族遷移金属並びに/又はランタニド及びアクチニド系列からの金属であり得る。金属の非限定的な例は、ジルコニウム、チタン、及びハフニウムを含む。他の配位子、例えば脱離基を遷移金属に結合させ
ることができる。配位子の非限定的な例は、ヒドロカルビル、水素、又はいずれかの他の一価アニオン性配位子を含む。架橋メタロセンは、例えば、一般式:RCpCp’MeQxによって記述することができる。Meは遷移金属元素を表し、Cp及びCp’は、各々、シクロペンタジエニル基を表し、各々は同じであっても異なっていてもよく、置換されていてもいなくてもよく、Qは、アルキル又は他のヒドロカルビル又はハロゲン基であり、xは数であり、1~3の範囲内であってもよく、Rは、シクロペンタジエニル環間に延在する構造架橋である。アイソタクチックポリオレフィンを生成するメタロセン触媒及びメタロセン触媒系は、米国特許第4,794,096号及び第4,975,403号(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。これらの特許は、オレフィンを重合させてアイソタクチックポリマーを形成し、高度にアイソタクチックなポリプロピレンの重合に特に有用なキラルな立体剛性メタロセン触媒を開示している。
【0042】
適切なメタロセン触媒は、例えば、米国特許第4,530,914号、第4,542,199号、第4,769,910号、第4,808,561号、第4,871,705号、第4,933,403号、第4,937,299号、第5,017,714号、第5,026,798号、第5,057,475号、第5,120,867号、第5,132,381号、第5,155,180号、第5,198,401号、第5,278,119号、第5,304,614号、第5,324,800号、第5,350,723号、第5,391,790号、第5,436,305号、第5,510,502号、第5,145,819号、第5,243,001号、第5,239,022号、第5,329,033号、第5,296,434号、第5,276,208号、第5,672,668号、第5,304,614号、第5,374,752号、第5,510,502号、第4,931,417号、第5,532,396号、第5,543,373号、第6,100,214号、第6,228,795号、第6,124,230号、第6,114,479号、第6,117,955号、第6,087,291号、第6,140,432号、第6,245,706号、第6,194,341号、第6,399,723号、第6,380,334号、第6,380,331号、第6,380,330号、第6,380,124号、第6,380,123号、第6,380,122号、第6,380,121号、第6,380,120号、第6,376,627号、第6,376,413号、第6,376,412号、第6,376,411号、第6,376,410号、第6,376,409号、第6,376,408号、第6,376,407号、第5,635,437号、第5,554,704号、第6,218,558号、第6,252,097号、第6,255,515号並びに欧州特許出願公開第549 900号、及び第611 773号、並びに国際公開第97/32906号、第98/014585号、第98/22486号、及び第00/12565号に開示されている。PPicsの調製に適した触媒の例は、米国特許第4,107,413号、第4,294,721号、第4,439,540号、第4,114,319号、第4,220,554号、第4,460,701号、第4,562,173号、及び第5,066,738号に開示されている。
【0043】
メタロセンを何らかの形態の活性剤と組み合わせて使用して、活性触媒系を作り出すことができる。用語「活性剤」は、本明細書では、1つ以上のメタロセンがオレフィンをポリオレフィンに重合させる能力を高めることができるいずれかの化合物若しくは成分、又は化合物若しくは成分の組み合わせと定義される。メチルアルモキサン(MAO)等のアルキルアルモキサンは、一般にメタロセン活性剤として使用される。一般に、アルキルアルモキサンは、約5~40個の繰り返し単位を含有する。アルモキサン溶液、特にメチルアルモキサン溶液は、様々な濃度を有する溶液として商業的ベンダーから得ることができる。アルモキサンを調製するための多様な方法が存在し、その非限定的な例は、米国特許第4,665,208号、第4,952,540号、第5,091,352号、第5,206,199号、第5,204,419号、第4,874,734号、第4,924,018号、第4,908,463号、第4,968,827号、第5,308,815号、
第5,329,032号、第5,248,801号、第5,235,081号、第5,103,031号、及び欧州特許出願公開(EP-A)第0 561 476号、欧州特許第0 279 586号、欧州特許出願公開(EP-A)第0 594 218号、及び国際公開第9410180号(各々、参照により本明細書に完全に組み込まれる)に開示されている。
【0044】
イオン化活性剤も、メタロセンを活性化するために使用され得る。この活性剤は、中性若しくはイオン性であるか、又は中性メタロセン化合物をイオン化するトリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の化合物である。このようなイオン化化合物は、活性プロトン、又はイオン化化合物の残りのイオンと会合しているが配位していないか、又はほんの緩く配位している他の何らかのカチオンを含有することができる。活性剤の組み合わせ、例えばアルモキサン及びイオン化活性剤を組み合わせて使用することもでき、例えば国際公開第94/07928号を参照されたい。
【0045】
非配位性アニオンによって活性化されたメタロセンカチオンを含む配位重合用イオン触媒の記載は、欧州特許出願公開(EP-A)第0 277 003号、欧州特許出願公開(EP-A)第0 277 004号及び米国特許第5,198,401号及び国際公開第92/00333号(各々、参照により本明細書に完全に組み込まれる)における初期の研究に見られる。これらはアルキル/水素化物基が遷移金属から引き抜かれて、カチオン性にされ、かつ非配位性アニオンによって電荷がバランスされるように、メタロセン(ビスCp及びモノCp)がアニオン前駆体によってプロトン化される、望ましい調製方法を教示する。適切なイオン塩は、フッ化アリール成分、例えばフェニル、ビフェニル及びナフチルを有するテトラキス置換ホウ酸塩又はアルミニウム塩を含む。
【0046】
用語「非配位性アニオン」(「NCA」)は、前記カチオンに配位しないか、又は前記カチオンに弱くのみ配位され、それによって中性ルイス塩基によって置換されるのに十分に不安定なままであるアニオンを指す。「適合性」非配位性アニオンは、最初に形成された錯体が分解するときに中性に分解されないアニオンである。更に、アニオンは、アニオンから中性4配位メタロセン化合物及び中性副生成物を形成させるように、アニオン置換基又はフラグメントをカチオンに移動させない。
【0047】
活性プロトンを含まないが、活性メタロセンカチオンと非配位性アニオンの両方を生成することができるイオン化イオン化合物の使用も知られている。例えば、欧州特許出願公開(EP-A)第0 426 637号及び欧州特許出願公開(EP-A)第0 573
403号(各々、参照により本明細書に完全に組み込まれる)を参照されたい。イオン触媒を製造する追加の方法は、最初は中性ルイス酸であるが、メタロセン化合物とのイオン化反応後にカチオン及びアニオンを形成するイオン化アニオン前駆体の使用、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを使用する(欧州特許出願公開(EP-A)第0
520 732号参照、これは、参照により本明細書に完全に組み込まれる)。付加重合のためのイオン触媒はまた、アニオン基と共に金属酸化基を含有するアニオン前駆体による遷移金属化合物の金属中心の酸化によって調製することができる(欧州特許出願公開(EP-A)第0 495 375号参照、これは、参照により本明細書に完全に組み込まれる)。
【0048】
金属配位子が標準条件下でイオン化引き抜き(ionizing abstraction)ができないハロゲン部分(例えば、ビス-シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド)を含む場合、それらは、リチウム若しくはアルミニウムの水素化物又はアルキル、アルキルアルモキサン、グリニャール試薬等の有機金属化合物との公知のアルキル化反応を介して変換することができる。アルキルアルミニウム化合物とジハロ置換メタロセン化合物との、活性化アニオン性化合物の添加の前又は添加による反応を記載するin s
ituプロセスについては、欧州特許出願公開(EP-A)第0 500 944号及び欧州特許出願公開(EP-A)第0 570 982号を参照されたい。
【0049】
メタロセンカチオン及びNCAを含むイオン触媒を担持するための望ましい方法は、米国特許第5,643,847号、第6,228,795号、及び第6,143,686号(各々、参照により本明細書に完全に組み込まれる)に記載されている。担体組成物を使用する場合、これらのNCA担持方法は、ルイス酸が共有結合するようにシリカ表面上に存在するヒドロキシル反応性官能基と反応するのに十分に強いルイス酸である中性アニオン前駆体を使用することを含むことができる。更に、メタロセン担持触媒組成物のための活性剤がNCAである場合、望ましくは、最初にNCAを担体組成物に添加し、続いてメタロセン触媒を添加する。活性剤がMAOである場合、望ましくは、MAO及びメタロセン触媒が溶液中に一緒に溶解される。次いで、担体をMAO/メタロセン触媒溶液と接触させる。他の方法及び添加の順序は、当業者には明らかであろう。
【0050】
ポリオレフィン製造
ポリオレフィンは、1種以上のオレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン)を単独で、又は他のモノマーと一緒に、触媒(例えば、チーグラー・ナッタ、メタロセン等)の存在下で、その重合のための適切な反応条件下で、適切な反応容器内に配置することによって形成することができる。オレフィンを重合してポリマーにするためのいずれかの適切な装置及びプロセスを使用することができる。例えば、そのようなプロセスは、溶液相、気相、スラリー相、バルク相、高圧プロセス又はそれらの組み合わせを含むことができる。このようなプロセスは、米国特許第5,525,678号、第6,420,580号、第6,380,328号、第6,359,072号、第6,346,586号、第6,340,730号、第6,339,134号、第6,300,436号、第6,274,684号、第6,271,323号、第6,248,845号、第6,245,868号、第6,245,705号、第6,242,545号、第6,211,105号、第6,207,606号、第6,180,735号、及び第6,147,173号(各々、参照により本明細書に完全に組み込まれる)に詳細に記載されている。
【0051】
ポリオレフィンは、気相重合プロセスによって形成することができる。気相重合プロセスの一例は、循環ガス流(別名、リサイクル流又は流動化媒体として知られる)が重合熱によって反応器内で加熱される連続サイクルシステムを含む。反応器の外部の冷却システムによって、サイクルの別の部分の循環ガス流から熱が除去される。1種以上のモノマーを含有する循環ガス流は、反応条件下で触媒の存在下で流動床を通して連続的に循環させることができる。循環ガス流は、一般に、流動床から取り出され、反応器内に戻して再循環される。同時に、ポリマー生成物を反応器から取り出すことができ、新しいモノマーを添加して、重合したモノマーを置換することができる。気相プロセスにおける反応器圧力は、100psig~500psig、又は200psig~400psig、又は250psig~350psigで変動し得る。気相プロセスにおける反応器温度は、30℃~120℃、又は60℃~115℃、又は70℃~110℃、又は70℃~95℃であってもよい。ポリマープロセスの非限定的な例は、米国特許第4,543,399号、第4,588,790号、第5,028,670号、第5,317,036号、第5,352,749号、第5,405,922号、第5,436,304号、第5,456,471号、第5,462,999号、第5,616,661号、第5,627,242号、第5,665,818号、第5,677,375号、及び第5,668,228号(これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0052】
PPicは、連続重合プロセスによって形成することができる。重合反応は、触媒、典型的にはチーグラー・ナッタ触媒及びプロピレンを、循環ポンプを備えた第1のループ反応器内に入れる2反応器構成で実施することができる。反応器内では、プロピレンホモポ
リマーは、触媒粒子の表面上に生成される。次いで、プロピレンポリマー被覆触媒粒子は、流動床を有する1つ以上の第2の気相反応器に移され、ここで、触媒、再び典型的には、上述したチーグラー・ナッタ触媒の存在下でのプロピレンとエチレンの共重合によってコポリマーが生成される。プロピレン及びエチレン等の別のαオレフィンを耐衝撃性コポリマーに重合するための標準的な装置及び手順は、当業者に公知である。
【0053】
核剤
本発明のポリマー組成物はまた、2ミクロン未満であるが2ミクロンに等しくない平均粒径を有する核剤、又は核剤の組み合わせを含む。核剤は、樹脂の光学特性を向上させ、サイクルを速めることによって樹脂の加工生産性を向上させ、並びに及び/又は剛性及び耐熱性等の機械的特性を向上させるように機能することができる。例として、ポリプロピレン等のポリマーの結晶化の間、形成される結晶は、典型的には、光の波長よりも大きくなり得る。このサイズの結晶は光を屈折させ、それによりコポリマーの透明度を低下させることができる。理論によって限定されることを望むものではないが、核剤は、結晶化部位として作用し、ポリマー結晶化の速度を増加させる不均一な表面を提供することができる。核剤の存在下では、結晶は、より高い温度で形成することができ、より速い結晶形成速度は、球晶等のより小さい結晶の形成を誘導することができる。より小さい結晶サイズは、光が減少した屈折率で通過することを可能にし、それによりポリマーの透明度を増加させる。一態様では、ポリマー樹脂と化学的に適合性があり、その等方性及び/又は差動収縮を低減することができるいずれかの核剤を、所望の物理的特性を付与するのに有効な量で組成物に含めることができる。実施例において非限定的な様式で例示されるように、2ミクロン未満の平均粒径を有する核剤は、より大きいサイズの核剤を含む材料と比較して、反りの低減、収縮の低減及び/若しくは均一な収縮、並びに/又は衝撃特性を提供することができる。等方性収縮は、少なくとも80%改善することができる。いくつかの態様では、反りは、観察されないか、又は最小である。上述のように、非常に小さいサイズの核形成粒子は、ポリオレフィンポリマー中により均一に分散され、それによりポリマーマトリックス中により均質な球晶を生成すると考えられる。その結果、収縮は、ポリマーマトリックス中のこの均一な「ポリオレフィン結晶雲」のために、全ての方向で同様である。ポリマーマトリックス中のPP結晶の均一な分散は、成長する亀裂に対する物理的バリアとして作用することができると考えられる。いくつかの態様では、核剤の平均粒径は、0.001~1.9ミクロン(μm)、又は0.6~1ミクロン、又は0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.5、及び1.9ミクロンのいずれか1つ、若しくはそれらのいずれか1つに等しい、若しくはそれらのいずれか2つの間である。
【0054】
一態様では、核剤は、超微細タルク、カルボン酸又はその塩、有機リン酸塩、松ロジン、又はソルビトール化合物、又はそれらのいずれかの組み合わせである。カルボン酸又はその塩の非限定的な例は、安息香酸塩、金属安息香酸塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、ノルボルナンカルボン酸又はその塩、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。一態様では、核剤は、超微細タルクである。核剤は、100ppm~約20,000ppm、約500ppm~約10,000ppm、約1000ppm~約5000ppm、又は100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、1700、1800、1900、及び20,000ppmのいずれか1つの、若しくはそれらのいずれか1つに等しい、若しくはそれらのいずれか2つの間の量で存在することができる。核剤は、商業的供給源から得ることができ、又は化学的加工を用いて製造することができる。超微細タルクの商業的供給源は、Mineral Technologies Inc.(米国)によるMic
roTuff(登録商標)AGD 609である。
【0055】
3. 任意的な添加剤
本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種の添加剤を更に含むことができる。添加剤の非限定的な例は、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、発泡剤、結晶化助剤、染料、難燃剤、充填剤、耐衝撃性改良剤、離型剤、油、別のポリマー、顔料、加工剤、強化剤、核剤、透明化剤、スリップ剤、流れ調整剤、安定剤、UV耐性剤、及びそれらの組み合わせを含む。添加剤は、様々な商業的供給業者から入手可能である。商業的な添加剤供給業者の非限定的な例は、BASF(ドイツ)、Dover Chemical Corporation(米国)、AkzoNobel(オランダ)、Sigma-Aldrich(登録商標)(米国)、Atofina Chemicals,Inc.等を含む。
【0056】
一態様では、ポリマー組成物は、離型剤及び帯電防止剤を含むことができる。離型剤及び帯電防止剤は、各々、金属ステアリン酸塩及びグリセロールエステルの組み合わせであり得る。一態様では、離型剤及び帯電防止剤は、組み合わせて、又は個別に使用することができる。いくつかの態様では、離型剤及び帯電防止剤は、同じ化合物である。適切なグリセロールエステルの非限定的な例は、約500ppm~約5000ppm、あるいは約750ppm~約3000ppm、あるいは約1000ppm~約2000ppm、あるいは約1000ppm~約1500ppmの繰り返し範囲、あるいは約1250ppmの量で存在するグリセロールモノステレート(GMS)を含む。理論によって限定されることを望むものではないが、帯電防止剤、例えばGMSは、ポリマー材料の表面に移動し、材料の表面に存在する静電気を消散させる水でフィルムを形成することによって機能することができる。開示された量で存在する帯電防止剤は、開示されたポリマー組成物から調製された最終用途品への着色剤等の追加の成分又は材料の接着に悪影響を及ぼすことなく、静電気を低減するのに有効であり得る。
【0057】
適切な離型剤の非限定的な例は、約500ppm~約5000ppm、あるいは約500ppm~約3000ppm、あるいは約750ppm~約2000ppm、あるいは約750ppm~約1500ppmの繰り返し範囲、あるいは約1000ppmの量で存在するステアリン酸亜鉛等の金属ステアリン酸塩である。あるいは、離型剤は、約250ppm~約2500ppm、あるいは約500ppm~約2000ppm、あるいは約750ppm~約1500ppmの繰り返し範囲、あるいは約1000ppmの量で存在するN,N’ジステアロイルエチレンジアミンである。理論によって限定されることを望むものではないが、離型剤は、最終成形部品の鋳型キャビティへの接着の程度を低減するために使用される。離型剤を使用して、最終成形部品の鋳型キャビティへの接着の程度を低減することができる。
【0058】
一態様では、ポリマー組成物は、酸中和剤を含むことができる。いくつかの態様では、酸中和剤は、約100ppm~約1000ppm、あるいは約150ppm~約400ppmの繰り返し範囲、あるいは約300ppmの量で存在するヒドロタルサイトであり得る。いくつかの態様では、離型剤及び酸中和剤は、単一の化合物を含む。適切な離型剤と酸中和剤との組み合わせの非限定的な例は、約200ppm~約2000ppm、あるいは約200ppm~約1500ppm、あるいは約350ppm~約1000ppm、あるいは約350ppm~約750ppmの繰り返し範囲、あるいは約500ppmの量で存在するステアリン酸カルシウムを含むことができる。酸中和剤は、重合触媒からポリマー樹脂中に残留する残留物を除去し、鋳型キャビティの腐食を防止するように機能することができる。
【0059】
B. ポリマー組成物の調製
ポリマー組成物の調製は、ポリオレフィン及び核剤、又は核剤の組み合わせを溶融させ、任意的な添加剤と混合することができる、通常の混合機で行うことができる。適切な機械は、当業者に公知である。非限定的な例は、ミキサー、混練機、及び押出機を含む。特定の局面では、本プロセスは、プロセス中に添加剤を導入することによって押出機内で実施することができる。押出機の非限定的な例は、単軸押出機、逆回転及び共回転二軸押出機、遊星歯車押出機、リング押出機、又は共混練機を含むことができる。更に、ポリオレフィン及び核形成はまた、乾式ブレンドされ、得られたポリマーブレンドは、典型的なポリマープロセス(例えば、ブローンフィルム押出、発泡押出、シート押出-熱成形等)において使用され得る。いくつかの態様では、核剤を得、ポリプロピレン及び/又は1つ以上の任意的な添加剤と混合して、本発明のポリマーブレンドを生成し得る。ポリオレフィン、核剤、又はそれらのブレンドは、ブレンド中に十分な時間、高温に供され得る。ブレンド温度は、ポリマーの軟化点を超えることができる。このような「溶融混合」又は「溶融配合」は、核剤をポリオレフィンポリマーマトリックス中に均一に分散させるのを助ける。
【0060】
添加剤は、予め混合され、又はポリマー組成物に個別に添加されてもよい。例として、本発明の添加剤は、ポリオレフィン及び核剤ブレンドに添加する前にブレンドが形成されるように、予め混合されてもよい。そのブレンドを含有する添加剤は、添加剤のブレンド及び/又は組み込みの間、十分な時間、高温に供されてもよい。ポリオレフィン樹脂への添加剤の組み込みは、例えば、プロセス技術において慣用の方法を用いて上記成分を混合することによって実施することができる。ブレンド温度は、ポリマーの軟化点を超えることができる。特定の局面では、プロセスは、約160℃~280℃の温度で実施され得る。このような「溶融混合」又は「溶融配合」は、ポリオレフィンポリマーマトリックス中の本発明の添加剤の均一な分散をもたらす。
【0061】
C. ポリマー組成物
ポリマー組成物は、ポリオレフィンポリマーと、2ミクロン未満の平均粒径を有する核剤とを上記の量で含むことができる。核剤は、異なる核剤の組み合わせであってもよく、核剤の組み合わせの全体の平均粒径は、2ミクロン未満である。いくつかの態様では、ポリマーブレンドは、100ppm~約20,000ppm、約500ppm~約10,000ppm、約1000ppm~約5000ppmの核剤を含むことができ、残部がポリオレフィン及び任意的な添加剤である。
【0062】
ポリマー組成物は、アイゾット衝撃強度の増加に反映されるような衝撃強度の増加及び/又は曲げ弾性率の増加に反映されるような剛性の増加及び/又は等方性収縮等の収縮の低減及び/又は反りの低減等の機械的特性の向上を示すことができる。アイゾット衝撃は、試験片の破壊を開始し、試験片が破壊されるまで破壊を続けるのに必要な運動エネルギーとして定義される。アイゾット衝撃強度の試験は、標準的な試験片を1回の打撃で破断する際に振り子型のハンマーから消費されるエネルギーによって示されるように、曲げ衝撃による破断に対するポリマー試料の抵抗を決定する。試験片は、応力を集中させる役割を果たす切欠きを有し、延性破壊ではなく脆性破壊を促進する。詳細には、アイゾット衝撃試験は、試験片の破壊中に振り子によって失われるエネルギーの量を測定する。振り子によって失われるエネルギーは、試料破壊を開始し、試験片を横切って破壊を伝播させるために必要なエネルギーと、測定システムに関連するいずれかの他のエネルギー損失(例えば、振り子ベアリング内の摩擦、振り子アーム振動、及び試料トスエネルギー)との合計である。本発明のポリマー組成物は、同じポリマー及び同じ核剤を含むが、その同じ核剤が2μm以上の平均粒径を有する同等のポリマー組成物と比較して、少なくとも25%、30%、少なくとも40%、少なくとも60%、又は25%~60%、又はそれらの間のいずれかの値又は範囲の増大したアイゾット衝撃値を有することができる。例えば、本発明の組成物は、20ft./lb、又は少なくとも24ft./lbのアイゾット衝撃
強度を有することができる一方、より大きいサイズの核剤を含む組成物は、16ft./lb未満のアイゾット衝撃強度を有する。
【0063】
一態様では、本明細書に記載されるポリマー組成物及びそれから形成される最終用途品は、20%未満、10%未満、5%未満、全く収縮しない、等方性収縮を示す。組成物の等方性収縮は、0%~15%、又は0%~5%、又は0%~1%であってもよい。ポリマー組成物は、2ミクロンを超える平均粒径を有する核剤(例えば、2~6mmの平均粒径を有するタルク)を有するポリマーブレンドよりも小さい等方性収縮を有することができる。例として、本発明の組成物の等方性収縮は、参照試料の80%未満、90%未満、95%未満であり得る。
【0064】
D. 製品
ポリマーブレンド組成物は、通常、ペレットとして収集され、これは、しばらくの間貯蔵され得るか、又は形成プロセスにおいて直ちに使用され得る。形成プロセスは、射出成形、ブローンフィルム、押出コーティング、押出ブロー成形、射出ストレッチブロー成形、熱成形、プロファイル押出、圧縮成形又はシート押出を含むことができる。最終形成品は、例えば成形部品、シート、フィルム、繊維等である。成形部品の例は、自動車部品、食品容器、キャップ、コンピュータ製品、繊維、パイプ、フィルム、ボトル、非食品容器、カップ、蓋、プレート、トレイ、ブリスターパック、及び人工芝等を含む。人工芝は、ペレット、マット、及びブレードのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0065】
一態様では、プラスチック成形プロセスは、射出成形を含むことができる。射出成形では、ポリマー樹脂をホッパーを通して射出成形機に供給する。樹脂は、供給スロートを通って重力によって射出バレルに入ることができ、そこで適切な溶融温度に加熱される。次いで、溶融樹脂は鋳型キャビティ内に射出され、そこで所望の部品に成形され得る。鋳型は、樹脂が凝固し、触れるまで冷却されることを可能にする温度まで絶えず冷却される。キャビティを満たしている間の溶融樹脂は、インフローと呼ばれる射出方向に流れ、また、クロスフローと呼ばれる方向において、射出の流れに直交して広がる。一態様では、ポリマー組成物は、約65グラム未満、あるいは約52グラム~約55グラム、又は65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55グラムのうちのいずれか1つ、若しくはそれらのうちの1つに等しい、若しくはそれらのいずれか2つの間の部品重量を有する最終用途品を形成するために使用することができる。これらの最終用途品は、約10秒以下、あるいは7.0秒以下、あるいは約6.5秒以下、あるいは約6.0秒以下、あるいは約6.0秒~約7.0秒のサイクル時間で動作する適切な射出成形機を使用して形成することができる。例えば、高キャビテーション積層鋳型(high cavitation stacked mold)(例えば、16個以上のキャビティを有する)を使用する高速薄壁射出成形機の場合、サイクル時間は、約7.0秒以下、又は約1秒~7秒、又は約1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、若しくは7秒、又はその中のいずれかの範囲であってもよい。
【実施例】
【0066】
本発明を特定の実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例示の目的のみのために提供され、いかなる様式においても本発明を限定することを意図しない。当業者は、本質的に同じ結果をもたらすように変更又は修正することができる重要でない多様なパラメータを容易に認識するであろう。
【0067】
実施例1
(成形品に対する核剤の影響)
MFRが20g/10分(Fluff:2.8)、XS %が4、XS範囲が3.5~4.5、C2含有量が0.6重量%であるTOTALポリプロピレン3727を使用して
、本発明の核剤(平均粒径が0.8ミクロンのタルク)及び比較核剤(平均粒径が2~4ミクロンのタルク)を評価した。
【0068】
収縮測定は、CNC(コンピューター化数値制御)顕微鏡:分解能0.1ミクロンの高精度(1.5ミクロン精度)プログラム可能顕微鏡であるQV Apex 302を使用して60×60×2mmプラーク鋳型上で行った。この機器は、プラークを横切る収縮特性を自動的かつ正確に決定した。
図1は、3727反りに対するタルク粒径の効果を示す。MDとTDとの間の収縮差(MD収縮-TD収縮)は、射出成形部品の反りを低減する傾向に変えることができる微細なタルク粒径で核形成されたTOTAL POLYPROPYLENE 3727についてほぼ0であった。
図2は、3727収縮に対するタルク粒径の効果を示す。表1は、収縮値を列挙する。表2は、比較核剤に対する本発明の核剤の収縮の減少を列挙する。これらの全てのデータは、微細なタルク粒径で核形成されたTOTAL Polypropylene 3727が、より大きいタルク粒径と比較して、長手方向及び横方向の両方においてより均一な収縮を示すことを実証した。
図3は、3727の計装衝撃(アイゾット衝撃)に対するタルク粒径の効果を示す。計装衝撃特性は、比較核剤と比較して、本発明の核剤を使用して50%増加した。これらの結果に基づいて、より小さいタルク粒径を使用することは、より良好な衝撃特性、及び全ての方向におけるはるかに良好な均一な収縮をもたらし、他の機械的及び光学的特性に有意に影響を及ぼすことなく、最終用途品にはるかに低い反りをもたらすはずであると考えられる。
【0069】
【0070】
【0071】
本出願の態様及びそれらの利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される態様の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変化、置換、及び変更を本明細書で行うことができることを理解するべきである。更に、本出願の範囲は、本明細
書に記載されたプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、及び工程の特定の態様に限定されることを意図していない。当業者が上記の開示から容易に認識するように、本明細書に記載される対応する態様と実質的に同じ機能を実行するか、又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか、又は後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、又は工程を利用することができる。従って、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、それらのプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、又は工程を含むことが意図される。