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特許7572976積層造形された金属または金属合金物体に修正を加える方法および組成物
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  • 特許-積層造形された金属または金属合金物体に修正を加える方法および組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】積層造形された金属または金属合金物体に修正を加える方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/66 20210101AFI20241017BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241017BHJP
   B22F 10/20 20210101ALI20241017BHJP
   B22F 10/32 20210101ALI20241017BHJP
   B22F 10/68 20210101ALI20241017BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241017BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20241017BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241017BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20241017BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20241017BHJP
   C23F 3/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B22F10/66
B22F1/00 M
B22F1/00 N
B22F1/00 R
B22F1/00 S
B22F10/20
B22F10/32
B22F10/68
B33Y30/00
B33Y40/20
B33Y70/00
C22C14/00 Z
C22C21/02
C23F3/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021574284
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 US2020038482
(87)【国際公開番号】W WO2020257488
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】62/863,180
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519127340
【氏名又は名称】ポストプロセス テクノロジーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】ノーブル,マシュー,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハッチンソン,ダニエル,ジョシュア
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528383(JP,A)
【文献】国際公開第2018/026448(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/113104(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/28,2/30
B22F 1/00,3/105,3/16,10/20,10/32,
10/60,10/66,10/68
B29C 64/153
B33Y 30/00,40/20,70/00
C22C 14/00,21/02
C23F 3/00
C23G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形法によって形成された金属系物体を仕上げるためのスプレー可能な製剤であって、
0.01~50重量%の少なくとも一種類の有機酸と、
0.01~50重量%の固形媒体と、
水を含み、
前記固形媒体が、0.1~1000μm(マイクロメートル)の範囲のサイズである製剤。
【請求項2】
前記少なくとも一種類の有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸、安息香酸、炭酸、グリシン、サルコシン、グリコール酸、フェノール酸、尿酸、タウリン、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アミノメチルホスホン酸、マレイン酸、コハク酸、パルミチン酸、イタコン酸、フマル酸、酒石酸、ホウ酸、およびその組み合わせから選ばれる請求項1記載のスプレー可能な製剤。
【請求項3】
前記固形媒体は、ガラス玉、スチール、ステンレス鋼、セラミック材料、酸化アルミニウム/アルミナ、シリカ、ジルコニウム、炭化ケイ素、プラスチック、ガーネット、銅、コーンコブ、クルミ殻、雲母、長石、軽石、およびその組み合わせから選ばれる請求項1または2記載のスプレー可能な製剤。
【請求項4】
前記固形媒体は、球状、細長状、不揃い状、ギザギザ状、有角状、立方体状、長方形状、円柱状、およびその組み合わせである形状、外見、および/または表面を有する請求項1、2、3のいずれかに記載のスプレー可能な製剤。
【請求項5】
仕上げ用の溶液は、コロイドスラリーで構成されている請求項1、2、3、4のいずれかに記載のスプレー可能な製剤。
【請求項6】
前記金属系物体は、金属または金属合金物体を含む請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載のスプレー可能な製剤。
【請求項7】
前記金属系物体は、チタン、Ti6Al4V、アルミニウム、AlSi10Mg、Al6061、H13を含む工具鋼またはサーメット、インコネル625、インコネル718超合金、ステライト、BC4、304L、316、320を含むステンレス鋼またはMoReまたはTa-Wを含む耐火材料、CoCr、またはその組み合わせの少なくとも1つを含む請求項6記載のスプレー可能な製剤。
【請求項8】
前記積層造形法は、電子ビーム溶解法、直接金属レーザ焼結法、選択的レーザ溶融法を含むパウダーベッド方式、レーザクラッディングまたはレーザ金属積層溶着法を含むパウダーフィード方式、または指向性エネルギー推積法を含む請求項6記載のスプレー可能な製剤。
【請求項9】
積層造形金属系物体を仕上げるための方法であって、前記積層造形金属系物体へとスプレー可能な製剤を与えることを含み、前記スプレー可能な製剤は、0.01~50重量%の少なくとも一種類の有機酸と、0.01~50重量%の固形媒体と、水を含み、前記固形媒体が、0.1~1000μm(マイクロメートル)の範囲のサイズでる方法。
【請求項10】
チャンバを加熱することをさらに含み、前記製剤が摂氏21~60度の温度で与えられる請求項9記載の方法。
【請求項11】
チャンバを加圧することをさらに含み、前記製剤が0~80psigの圧力で与えられる請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記製剤が与えられている時に、前記積層造形金属系物体が載置されたプラットフォームを回転させることをさらに含む請求項9記載の方法。
【請求項13】
仕上げの工程が、前記積層造形金属系物体からの不要な金属粉の除去、前記積層造形金属系物体からの不要なプリント材料の除去、前記積層造形金属系物体からの不要な支持材料の除去、前記積層造形金属系物体の表面粗さの低減、前記積層造形金属系物体からの酸化表面材料の除去、前記積層造形金属系物体の艶出し、前記積層造形金属系物体の表面の不動態化、前記積層造形金属系物体の応力緩和、の少なくとも1つを含む請求項9記載の方法。
【請求項14】
積層造形金属系物体を仕上げるためのシステムであって、
閉鎖型のチャンバと、
前記積層造形金属系物体が載置可能な、前記閉鎖型のチャンバ内にあるプラットフォームと、
スプレー可能な製剤を前記プラットフォームに載置された前記積層造形金属系物体へと向かわせるべく配置されたスプレーノズルを含み、前記スプレー可能な製剤は、0.01~50重量%の少なくとも一種類の有機酸と、0.01~50重量%の固形媒体と、水を含み、前記固形媒体が、0.1~1000μm(マイクロメートル)の範囲のサイズであるシステム。
【請求項15】
積層造形金属系物体を仕上げるためのスプレー可能な製剤を提供する方法であって、
0.01~50重量%の少なくとも一種類の有機酸を用意し、
前記少なくとも一種類の有機酸へ0.01~50重量%の固形媒体を加え、
必要に応じて水を加え、
前記少なくとも一種類の有機酸が濃縮状態、混ぜ物のない状態、または原液の状態で用意され、前記濃縮状態、混ぜ物のない状態、または原液の状態のものにさらに水を加え、前記0.01~50重量%の前記少なくとも一種類の有機酸を提供することを含む方法
【請求項16】
積層造形金属系物体を仕上げるためのスプレー可能な製剤を提供する方法であって、
0.01~50重量%の少なくとも一種類の有機酸を用意し、
前記少なくとも一種類の有機酸へ0.01~50重量%の固形媒体を加え、
必要に応じて水を加え、
前記少なくとも一種類の有機酸が粉末状で用意され、前記粉末状のものにさらに水を加え、前記0.01~50重量%の前記少なくとも一種類の有機酸を提供することを含む方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(参照出願)
本特許出願は、2019年6月18日に出願された米国仮特許出願番号第62/863180号の優先権を主張するものであって、その開示が参照することにより組み込まれるものである。
【0002】
本願は概して、積層造形法によって形成された金属物体または金属合金物体から材料を除去するための、または仕上げるための製剤(formulations)を用いた工程、ならびにそのような製剤を用いるためのシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属および金属合金部品の積層造形(AM)は従来の製造方法に比べて利点がある。金属物体または金属合金物体のデザインは、形状的な制約によって制限を受けたり大規模な金型や設備、労働コストが必要とされたりする場合があるが、広範囲の金属粉を用いることで、設計自由度を持たせながら高い水準でデザインすることができる。AM技術を用いた金属物試作の有用性は既に明らかであるが、航空宇宙産業、医療産業、歯科産業、製造工業での要求水準の高い用途に関しても、部品の製造にAMを利用することができる。
【0004】
金属部品に関する現在のAM技術は、DMLS(直接金属レーザ焼結法)、EBM(電子ビーム溶解法)、SLM(選択的レーザ溶融法)などのパウダーベッド方式、またはLC(レーザクラッディング)、LMD(レーザ金属積層溶着法)、DMD(直接金属積層溶着法)などのパウダーフィード方式を含む。これらの各技術において、今日積層造形されている最も人気のある合金のいくつかは、さまざまなチタン、アルミニウム、ステンレス鋼(304、316)、炭素鋼、ニッケル超合金(例えばインコネル(登録商標)718、ヘインズ(登録商標)282、ハステロイ(登録商標))(航空宇宙産業)、AlSi10Mg(航空宇宙産業)、Ti6Al4V(医療産業)、およびCoCr(歯科産業)を含む。
【0005】
AMは多くの用途において多くの利点を有するが、取り組むべき課題の1つが、プリンタによる形成後の部品の処理である。さまざまなAMプリント技術および材料が、さまざまなプリント後の課題を提示している。これらの課題には以下のものが含まれるが、これに限定されるものではない。
不要な金属粉の除去
不要なプリント材料の除去
不要な支持材料の除去
表面粗さの低減
酸化表面材料の除去
部品の艶出し
表面の不動態化
応力緩和
【0006】
金属部品及び金属合金部品を処理するための現在の方法は、機械加工(machining)、手作業でのサンディング(hand sanding)、ブラスチング(blasting)、タンブリング(tumbling)、アブレイディング(abrading)、電解研磨(electro polishing)などの機械的方法から、さび落とし(descaling)や酸洗い(pickling)のような化学的表面処理まで、多岐に及ぶ。これらの方法は時間がかかり、比較的高価で、手作業を比較的多めに必要とし、あるいは危険な化学薬品の使用を必要とする。
【0007】
これら従来の処理方法はいくつかの用途においては満足いくものだが、改善の余地がある。とりわけAM法によって形成された金属物体または金属合金物体を処理し、AM法によって形成された金属または合金物体から支持材料を除去ならびに表面処理するための効果的方法が求められている。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に開示される発明の概念は、一種類以上の有機酸と固形研磨媒体から構成される製剤と、この製剤を用いる方法を含む。この製剤と方法は、金属および金属合金物体を含むAM金属系物体から材料を除去、または表面に修正を加えるために用いられる。例えば製剤は、AM物体を製剤で湿式ブラスチングして不要な金属または金属合金材料を除去することが可能なチャンバで用いられる。製剤は、特定の温度、圧力、スプレーノズル動作で利用でき、AM物体の表面に対して所望の修正を加えるために、さまざまなタイプのスプレーノズルを、スプレーノズルと物体の間の距離をさまざまに変えつつ利用できる。
【0009】
<AMの種類>
本明細書に開示される発明の概念を用いれば、EBM(電子ビーム溶解法)、DMLS(直接金属レーザ焼結法)、およびSLM(選択的レーザ溶融法)などのパウダーベッド方式、LC(レーザクラッディング)、LMD(レーザ金属積層溶着法)、およびDED(指向性エネルギ推積法)などのパウダーフィード方式といったさまざまな積層造形法によって形成された物体の表面に修正を加えることができる。
【0010】
<支持材料の除去>
AM法によって製造された金属物体または金属合金物体の中には支持材料を有するものもある。本明細書に開示される発明の概念を用いれば、AM金属物体または金属合金物体の構造体を支持すべくプリントされた不要な支持材料を除去できる。
【0011】
<表面粗さ>
本発明の他の側面は、AM法によって製造された金属物体または金属合金物体の表面粗さを小さくする方向に向けられている。AM金属および金属合金物体は表面仕上げが粗い場合がある(マイクロインチまたはマイクロメートルでRaとして測定される)。本明細書に開示される発明の概念を用いれば、製造時に400+マイクロインチのRaが10マイクロインチ程度のRaまたは望ましい粗さとなるまでAM金属または金属合金物体の表面粗さを小さくすることができる。
【0012】
<表面仕上げ>
本明細書に開示される発明の概念を用いれば、AM法によって製造された物体の表面仕上げに修正を加えられる。場合によってはAM金属および金属合金物体の表面はダークグレイや黒に酸化する。本明細書に開示される発明の概念を用いれば、金属または金属合金から酸化層を除去し、部分的に物体を不動態化し、物体を光沢のあるメタリックな外見の表面仕上げとすることができる。
【0013】
<構造的完全性>
本明細書に開示される発明の概念を用いてさらに、AM法によって製造された物体の構造的完全性および強度を向上させることができる。AM金属および金属合金物体は表面での応力集中によって機械的特性がいまひとつとなり得る。本発明の概念の実施の形態を用いれば、金属または金属合金表面での応力集中を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、積層造形物体に本発明に基づく製剤を用いるために利用可能なシステムの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明は、本発明の例と発明の概念を説明するものである。他の実施の形態も可能であること、および本発明の精神と範囲から逸脱することなく本発明に対してさまざまな変更がなし得ることに留意されたし。したがって本発明の特定の実施の形態に関する以下のより詳細な説明は、本発明の範囲を限定するものではなく説明を目的に提示されたものであって、本発明の一部または発明の概念である特徴および特性を説明するものである。
【0016】
本明細書において特に明記しない限り“仕上げ(finishing)”との用語はAM物体から不要な材料を除去することを指し、これは仕上げ済み物体を作り出すために物体のプリント段階の後に行われる。仕上げは1つ以上の工程を含むものとでき、不要な金属粉の除去、不要なプリント材料の除去、不要な支持材料の除去、表面粗さの低減、酸化表面材料の除去、部品の艶出し、表面の不動態化、および/またはAM物体の応力緩和を含むが、これに限定されるものではない。AM物体の“仕上げ”は“クリーニング”、“表面改質”、“ポリッシング”、“グラインディング”、“ミリング”、“スムージング”または“テクスチャライジング(texturizing)”と呼ばれることもある。
【0017】
本開示では、本明細書において特に明記しない限り“製剤(formulation)”との用語は流体組成物を指し、これは流体、スラリー、混合物、コロイド、懸濁液、化学薬品、液体、洗浄剤、または溶液を含むものとできる。本明細書に開示された発明の概念に言及する際には、これらの用語のどれが用いられてもよい。
【0018】
以下には数値範囲が開示されている。当該範囲は下限値(LLV)と上限値(ULV)を提示する。特に明記されていない限り、LLV、ULV、およびLLVとULVの間のすべての値が当該範囲の一部となる。
【0019】
本明細書に開示された発明の概念は、製剤ならびにこの製剤を用いるための方法およびシステムを含むものであり、これはAM金属物体または金属合金物体から支持材料を除去するため、またはその表面に修正を加えるためのものである。本発明の概念を実施することで、AM法によって形成された物体の表面材料、支持構造体材料、または酸化表面層などの金属または金属合金材料を除去またはこれに修正を加えることができる。
【0020】
本発明の概念を適用可能な金属および金属合金は、以下の1つ以上を含むがこれに限定されるものではない:チタン、Ti6Al4V、アルミニウム、AlSi10Mg、Al6061、H13などの工具鋼およびサーメット、インコネル625、718などの超合金、ステライト(登録商標)、BC4、304L、316、320などのステンレス鋼、MoRe、Ta-Wなどの耐火材料、CoCr、など。
【0021】
さらに方法を含む本発明の概念は、AM物体の表面に修正を加えて特定の所望の特徴を得るために、特定の温度および/または圧力で、さまざまなタイプのスプレーノズルを所望のスプレーノズル動作で用いることで、および/またはスプレーノズルから物体までの距離を変えることで実施可能である。
【0022】
本発明の概念に基づく製剤は、酸性の有機化合物を含むものであり、これは例えばカルボン酸基を有する化合物、ヒドロキシル基が弱酸として機能する有機ベースのアルコール、エノール基、フェノール基(すなわちフェノール酸)などである。以下は利用可能な酸性の化合物の例である:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸、安息香酸、炭酸、グリシン、サルコシン、グリコール酸、フェノール酸、尿酸、タウリン、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アミノメチルホスホン酸、マレイン酸、コハク酸、パルミチン酸、イタコン酸、フマル酸、酒石酸、およびホウ酸。一種類以上の有機酸はコロイド混合物中に、混合物の総重量の0.01%から最大50.00%だけ存在するものとできる。
【0023】
【化1】
【0024】
本発明の概念に基づく製剤は固形媒体を含む。固形媒体は機械的研磨をもたらし仕上げ工程を容易とする。固形媒体はさまざまな材料、さまざまな形状、および/またはさまざまなサイズを取り得る。固形媒体は以下の種類から選ばれるものとできる:ガラス玉、スチール、ステンレス鋼、セラミック材料、酸化アルミニウム/アルミナ、シリカ、ジルコニウム、炭化ケイ素、プラスチック、ガーネット、銅、コーンコブ、クルミ殻、雲母、長石、軽石など、およびその組み合わせ。固形媒体は以下のような形状を取り得る:球状、細長状、不揃い状、ギザギザ状、有角状、立方体状、長方形状、および/または円柱状。固形媒体は以下の寸法を取り得る:最長直線径が0.1~1000μm(マイクロメートル)であって、これは0.1μmの値および間の範囲のすべてを含む。
【0025】
<第1の実施の形態>
この第1の実施の形態においては、本発明の概念に基づく製剤は、インコネル718からなる部品を仕上げるために用いられる。インコネル718(55Ni-21Cr-5Nb-3Mo)はニッケル基超合金である。この超合金は高強度と良好な延性を維持するために析出硬化されている。インコネル718は非磁性であり、良好な耐腐食性および耐酸化性を維持するものであって、華氏1300度(摂氏704度)まで変形と応力割れに対する高い耐性を、華氏1800度(摂氏982度)まで耐酸化性を必要とする部品に対して使用される。AM法によって製造されたインコネル718を仕上げるための従来の方法は、フッ化水素酸(HF)や王水(HCl/HNO)などの化学薬品を用いる。
【0026】
ある実施の形態では、製剤はDECI Duoシステムを使って用いられた。DECI Duoシステムはポストプロセス・テクノロジーズ社から入手可能である。図1はこのシステム10を具体化したものの略図である。DECI Duoシステムの装置ハードウエア部分はスプレーチャンバ25を含んでおり、ここには2つの1軸噴出孔(single-axis jet)28A、28Bが配置され、これは圧縮空気と製剤(洗浄剤と懸濁固形物)7をソフトウエア制御の可変圧および速度で噴き出す。チャンバ25には、フレキシブルな材料固定のためにデザインされた360度回転可能なT型穴あきターンテーブル22が設置されている。テーブル22の回転は第3軸の動きを提供するものであり、処理中の部品19に最大限の表面露出を可能とする。
【0027】
この実施の形態では、DECI Duoシステムはポストプロセス・テクノロジーズ社が開発したサーマル・アトマイズド・フューサレイド(TAF)技術を使って製剤を用いる。DECI Duoシステムおよびサーマル・アトマイズド・フューサレイド(TAF)技術は、「表面仕上げおよび支持材料除去のための方法および装置」との名称で2018年12月4日に出願された同時係属の特許出願番号第16/209778号に記載されており、そこに開示されているものはすべて参照によってここに組み込まれるものである。支持材料の除去および/またはビルド材の表面の平滑化を必要とする部品19がターンテーブル22に載置される。媒体ポンプ37は、ターンテーブル22の下に配置され開放上面34を有するタンク31から流体7を吸い出し、さらに導管43Aを介してノズル28まで流体7を届け、圧縮空気と共に部品19へと流体7を吹きかける。流体7は部品19に吹きかけられた後にタンク31へと戻ってくる。ポストプロセス社製のDECI Duoシステムで用いられる場合、工程はポストプロセス社製のAUTOMAT3D(登録商標)プラットフォームによってソフトウエア制御される。AUTOMAT3Dプログラミングプラットフォームは、同時係属の2019年4月9日出願特許出願番号第16/340647号および2019年5月8日出願特許出願番号第16/348276号に記載されており、そこに開示されているものはすべて参照によってここに組み込まれるものである。
【0028】
製剤の具体的な構成要素成分は、仕上げ処理を受ける金属および所望の仕上げ状態に関わるものとできる。よってこの実施の形態の製剤は、インコネル718の物理的および化学的特性、ならびに所望のエッチング、不動態化、ポリッシングの必要性に基づくものであった。製剤は2重量%のシュウ酸を含む弱酸性の洗浄溶液であった。この製剤は部品表面のエッチングによって表面仕上げ処理を引き立てつつ、従来の化学反応に伴う危険な問題とは無縁だった。製剤は仕上げの第一段階として部品の表面をエッチングした。TAF技術で用いられる懸濁固形物は部品の表面を効果的に削り落とし(abrade)可能である。ユーザの目標が比較的平滑な表面であれば処理はここで終了するものとできる。だがユーザがさらに部品を平滑化したいなら第2の仕上げ工程を行うものとできる。
【0029】
この実施の形態の製剤に含まれる媒体は、サイズが425μmのセラミックジルコニアベースの集合体(ceramic zirconia based aggregate)であった。この媒体は、インコネル718のDMLSプリントに伴う層厚さと硬さを考慮に入れて選ばれた。ジルコニアは高靱性を有しており、インコネルなどの高硬度の合金に対して好適である。媒体粒子のサイズ425μmは、DMLSに伴う層厚さの範囲によって生じる表面粗さに相関関係を有する。さらにこの媒体は化学的に不活性であって、部品または製剤を汚染しないという利点を有する。TAF技術を利用してこの製剤を用いることでより少ない熱エネルギで部品を仕上げることができ、部品の粒状構造に影響を与えるリスクを軽減することができる。
【0030】
製剤を用いるためにDECI Duoシステムを使う利点の一つが、DECI DuoのAUTOMAT3Dプログラミングプラットフォームである。AUTOMAT3Dプログラミングは特別に金属特性向けにデザインされたアジテーションアルゴリズムを実行し、これはAM金属部品を仕上げる際にDECI Duoシステムが予測アプローチを取ることを可能とする。ソフトウエアはサイクル持続中ずっと、ノズルの動作速度、処理が行われる温度、および空気および液体圧力を制御し、効率的に化学的および機械的エネルギ源を提供する。センサは処理をモニタし、リアルタイムの自動調整によってエネルギレベルを所定範囲に留まらせる。AUTOMAT3Dプラットフォームプログラミングはまた、デジタル処理でパラメータを変え、仕上げ要求の範囲に対して柔軟性を生み出すことをユーザに許容する。装置の準備時間の短縮および再現性のために設定を記憶させてもよい。AUTOMAT3Dプログラミングはさらに、ランタイムを記録してソフトウエアの計画的な予防保守を可能とし、これにより停止時間を減らす。
【0031】
この実施の形態では、データセットを作るために、さまざまな形状、初期粗さ、および最終粗さを有する部品のテストを幾度か行った。さまざまなアジテーションアルゴリズムが用いられた。望ましい結果は表面粗さの減少とポリッシングを含むもので、これは部品の光沢が増したことを意味していた。層厚さによって生じた表面粗さを減少させるには、液体および圧力と共に温度を高めることが必要だった。これらの範囲を高めることでシステムの機械的エネルギが増大し、迅速な除去につながった。この実施の形態では製剤の酸性が部品の表面層と反応し、ある程度の不動態化をもたらした。この処理の結果、表面粗さは小さくなり、印刷層の線は薄くなるか消え去るかし、より耐腐食性の高い表面仕上げとなり、より光沢のある部品となった。
【0032】
この実施の形態での結果は表面形状測定装置を用いて測定された。粗さの値は測定される部品の向きおよび表面に応じて変わった。測定は印刷層に垂直な方向に行われた。以下の表は、初期および最終の表面粗さ測定値の例、ならびに、得られた結果に対して対応するオペレータおよび装置の要求時間を含んでいる。
【0033】
【表1】
【実施例
【0034】
以下の例はさまざまな変形例を説明するために提示される。ただしこれらの例にはいかなる点においても本発明の概念の範囲を制限する意図はない。以下の例では物体がポストプロセス社製のDECI Duo装置で仕上げられた。結果を得るための時間は材料および仕上げ後の所望の平滑さに応じて変わった。
【0035】
<実施例1>
シュウ酸2重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたAlSi10Mg合金の表面に修正を加える。AlSi10Mg合金の表面仕上げは、スプレーチャンバの温度を華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このようなコロイド混合物を用いることでAlSi10Mg合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを70マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0036】
<実施例2>
シュウ酸2重量%、サイズが100~300マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたAlSi10Mg合金の表面に修正を加える。AlSi10Mg合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このようなコロイド混合物を用いることでAlSi10Mg合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを100~150マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0037】
<実施例3>
シュウ酸1重量%、クエン酸1重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたAlSi10Mg合金の表面に修正を加える。AlSi10Mg合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでAlSi10Mg合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを100~150マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0038】
<実施例4>
アスコルビン酸1重量%、クエン酸1重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたAlSi10Mg合金の表面に修正を加える。AlSi10Mg合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでAlSi10Mg合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを100~150マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0039】
<実施例5>
シュウ酸1重量%、安息香酸0.2重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたAlSi10Mg合金の表面に修正を加える。AlSi10Mg合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでAlSi10Mg合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを80~120マイクロインチのRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0040】
<実施例6>
シュウ酸1重量%、酒石酸1.0重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたAlSi10Mg合金の表面に修正を加える。AlSi10Mg合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでAlSi10Mg合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを80~120マイクロインチのRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0041】
<実施例7>
シュウ酸2重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたTi6Al4V合金の表面に修正を加える。Ti6Al4V合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~78psigにして実行される。このような混合物を用いることでTi6Al4V合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを100~150マイクロインチのRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0042】
<実施例8>
シュウ酸1重量%、アスコルビン酸1重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたTi6Al4V合金の表面に修正を加える。Ti6Al4V合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでTi6Al4V合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを120マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0043】
<実施例9>
シュウ酸1重量%、クエン酸1重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたTi6Al4V合金の表面に修正を加える。Ti6Al4V合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでTi6Al4V合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを120マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0044】
<実施例10>
シュウ酸1重量%、安息香酸1重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたTi6Al4V合金の表面に修正を加える。Ti6Al4V合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでTi6Al4V合金の表面粗さを変え、200~300マイクロインチのRaを120マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0045】
<実施例11>
シュウ酸2重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)35ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたインコネル718合金の表面に修正を加える。インコネル718合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏80度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を50~100psigにして実行される。このような混合物を用いることでインコネル718合金の表面粗さを変え、150~250マイクロインチのRaを75マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0046】
<実施例12>
シュウ酸4重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)35ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたインコネル718合金の表面に修正を加える。インコネル718合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏80度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を50~100psigにして実行される。このような混合物を用いることでインコネル718合金の表面粗さを変え、150~250マイクロインチのRaを75マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0047】
<実施例13>
シュウ酸1重量%、酒石酸1.0重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたインコネル718合金の表面に修正を加える。インコネル718合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでインコネル718合金の表面粗さを変え、150~250マイクロインチのRaを75マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0048】
<実施例14>
シュウ酸1重量%、安息香酸1.0重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたインコネル718合金の表面に修正を加える。インコネル718合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでインコネル718合金の表面粗さを変え、150~200マイクロインチのRaを75マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0049】
<実施例15>
アスコルビン酸1重量%、クエン酸1.0重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)30~40ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたインコネル718合金の表面に修正を加える。インコネル718合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏70度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を0~80psigにして実行される。このような混合物を用いることでインコネル718合金の表面粗さを変え、150~200マイクロインチのRaを75マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0050】
<実施例16>
シュウ酸2重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)35ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出されたアルミニウムF357合金の表面に修正を加える。アルミニウムF357合金の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏80度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を50~100psigにして実行される。このような混合物を用いることでアルミニウムF357合金の表面粗さを変え、150~250マイクロインチのRaを75マイクロインチ未満のRaとすることができる。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0051】
<実施例17>
シュウ酸2重量%、サイズが400~600マイクロメートルで球状の酸化ジルコニウム(ZrO)35ポンド、水40ガロンからなり、湿式ブラスチングチャンバに入ったコロイド混合物を用いて、積層造形法によって作り出された316ステンレス鋼の表面に修正を加える。316ステンレス鋼の表面仕上げは、スプレーチャンバを周囲温度の華氏80度(摂氏21度)~華氏140度(摂氏60度)の温度範囲に保ち、圧力を50~100psigにして実行される。このような混合物を用いることで316ステンレス鋼の表面粗さを変え、300~350マイクロインチのRaを50~100マイクロインチのRaとした。仕上げ後の物体は光沢のあるメタリックな外観で、表面には目視可能な酸化の痕が残っていないものとなる。
【0052】
先に開示した実施の形態の中では、AM金属および金属合金仕上げ組成物からなる製剤がDECI Duoシステムで用いられるものとして説明されていた。しかしながらAM製剤はDECI Duoシステムでの使用のみに限定されるものではない。代わりにポストプロセス社製のDECI Duo以外の装置を、開示された製剤のいずれかと共に用いてもよい。こうした代替装置あるいはシステムは、金属または金属合金部品が手動で(例えば係員または人間のオペレータによって)スプレー処理を受けるシンプルな閉鎖型のチャンバを有するものとできる。あるいは部品が内部に設置され所定時間無人でスプレー処理を受ける閉鎖型のチャンバでAM仕上げ製剤が用いられてもよい。所望の結果を得るための時間は、使用される装置のタイプによって変化し、それにはスプレーノズルの数やチャンバの寸法も含まれる。スプレー処理は所望のAM部品特徴を得るために数分、数時間、あるいは数日にわたって行われるものとできる。
【0053】
さらなる可能性として、本明細書に開示された製剤は、積層造形法以外の方法で製造された金属物体または金属合金物体を処理するために用いられてもよい。例えば本明細書に開示された処理用製剤は、鋳造や成型などの従来の製造方法によって製造された金属物体または金属合金物体を仕上げるために用いられてもよい。積層造形法以外の手段で製造された金属または金属合金物体の処理に用いられる場合、製剤は上述のシステム、ハードウエア、または装置のいずれを使って用いられてもよく、これはDECI Duoシステムまたは従来の洗浄チャンバを含む。
【0054】
ある実施の形態においては、製剤は有機酸(混ぜ物のない状態、原液の状態、または濃縮状態)と固形媒体が分離した成分として提供され、これらは使用に先だって(もし必要であれば)水と共に混ぜ合わされる。あるいは、製剤の有機酸成分は濃縮液として提供され、これは使用に先だって適切な割合の水と混ぜ合わされる。さらなる可能性として、製剤の有機酸成分は粉末として提供され、これは使用に先だって適切な割合で水に加えられる。さらに別の実施の形態では、有機酸と固形媒体と水を含む製剤が完全に、あるいはある程度予め混ぜ合わされた状態で提供される。さらなる可能性として、製剤の有機酸成分が濃縮液、粉末、あるいは予め混ぜ合わされた溶液として提供され、適切な固形媒体が選択されて使用される。
【0055】
ここまで本発明の特徴と本発明のいくつかの実施の形態を説明してきたが、本発明のさまざまな実施の形態のステートメント(非制限的)は以下のとおりである。
【0056】
<ステートメントA>
積層造形法によって形成された金属系物体を仕上げるためのスプレー可能な製剤であって、
0.01~50重量%の少なくとも一種類の有機酸と、
0.01~50重量%の固形媒体と、
水(例えば残りが水)を含む製剤。
【0057】
<ステートメントB>
前記少なくとも一種類の有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸、安息香酸、炭酸、グリシン、サルコシン、グリコール酸、フェノール酸、尿酸、タウリン、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アミノメチルホスホン酸、マレイン酸、コハク酸、パルミチン酸、イタコン酸、フマル酸、酒石酸、ホウ酸など、およびその組み合わせから選ばれるステートメントA記載のスプレー可能な製剤。
【0058】
<ステートメントC>
前記固形媒体は、ガラス玉、スチール、ステンレス鋼、セラミック材料、酸化アルミニウム/アルミナ、シリカ、ジルコニウム、炭化ケイ素、プラスチック、ガーネット、銅、コーンコブ、クルミ殻、雲母、長石、軽石など、およびその組み合わせから選ばれるステートメントAまたはB記載のスプレー可能な製剤。
【0059】
<ステートメントD>
前記固形媒体は、球状、細長状、不揃い状、ギザギザ状、有角状、立方体状、長方形状、円柱状、およびその組み合わせである形状、外見、および/または表面を有するステートメントA、B、Cのいずれかに記載のスプレー可能な製剤。
【0060】
<ステートメントE>
前記固形媒体は、0.1~1000μm(マイクロメートル)の範囲のサイズであって、これは0.1μmの値および間の範囲のすべてを含むステートメントA、B、C、Dのいずれかに記載のスプレー可能な製剤。
【0061】
<ステートメントF>
仕上げ用の溶液は、コロイドスラリーで構成されている上述のステートメントのいずれかに記載のスプレー可能な製剤。
【0062】
<ステートメントG>
前記金属系物体は、金属または金属合金物体を含む上述のステートメントのいずれかに記載のスプレー可能な製剤。
【0063】
<ステートメントH>
前記金属系物体は、チタン、Ti6Al4V、アルミニウム、AlSi10Mg、Al6061、H13を含む工具鋼またはサーメット、インコネル625、718などの超合金、ステライト、BC4、304L、316、320を含むステンレス鋼またはMoReおよびTa-Wを含む耐火材料、CoCr、またはその組み合わせの少なくとも1つを含む上述のステートメントのいずれかに記載のスプレー可能な製剤。
【0064】
<ステートメントI>
前記積層造形法は、電子ビーム溶解法、直接金属レーザ焼結法、選択的レーザ溶融法を含むパウダーベッド方式、レーザクラッディングおよび/またはレーザ金属積層溶着法を含むパウダーフィード方式、および/または指向性エネルギ推積法を含む上述のステートメントのいずれかに記載のスプレー可能な製剤。
【0065】
<ステートメントJ>
積層造形金属系物体を仕上げるための方法であって、前記積層造形金属系物体へとスプレー可能な製剤を与えることを含み、前記スプレー可能な製剤は、0.01~50重量%の少なくとも一種類の有機酸と、0.01~50重量%の固形媒体と、水を含むものである方法。
【0066】
<ステートメントK>
チャンバを加熱することをさらに含み、前記製剤が摂氏21~60度の温度で与えられるステートメントJ記載の方法。
【0067】
<ステートメントL>
チャンバを加圧することをさらに含み、前記製剤が0~80psigの圧力で与えられるステートメントJまたはK記載の方法。
【0068】
<ステートメントM>
前記製剤が与えられている時に、前記積層造形金属系物体が載置されたプラットフォームを回転させることをさらに含むステートメントJ、K、Lのいずれかに記載の方法。
【0069】
<ステートメントN>
仕上げの工程が、前記積層造形金属系物体からの不要な金属粉の除去、前記積層造形金属系物体からの不要なプリント材料の除去、前記積層造形金属系物体からの不要な支持材料の除去、前記積層造形金属系物体の表面粗さの低減、前記積層造形金属系物体からの酸化表面材料の除去、前記積層造形金属系物体の艶出し、前記積層造形金属系物体の表面の不動態化、前記積層造形金属系物体の応力緩和、の少なくとも1つを含むステートメントJ、K、L、Mのいずれかに記載の方法。
【0070】
<ステートメントO>
積層造形金属系物体を仕上げるためのシステムであって、
閉鎖型のチャンバと、
前記積層造形金属系物体が載置可能な、前記閉鎖型のチャンバ内にあるプラットフォームと、
スプレー可能な製剤を前記プラットフォームに載置された前記積層造形金属系物体へと向かわせるべく配置されたスプレーノズルを含み、前記スプレー可能な製剤は、0.01~50重量%の少なくとも一種類の有機酸と、0.01~50重量%の固形媒体と、水を含むものであるシステム。
【0071】
<ステートメントP>
積層造形金属系物体を仕上げるためのスプレー可能な製剤を提供する方法であって、
0.01~50重量%の少なくとも一種類の有機酸を用意し、
前記少なくとも一種類の有機酸へ0.01~50重量%の固形媒体を加え、
必要に応じて水を加えることを含む方法。
【0072】
<ステートメントQ>
前記少なくとも一種類の有機酸が濃縮状態で用意され、前記濃縮状態のものにさらに水を加え、前記0.01~50重量%の前記少なくとも一種類の有機酸を提供することを含むステートメントP記載の方法。
【0073】
<ステートメントR>
前記少なくとも一種類の有機酸が粉末状で用意され、前記粉末状のものにさらに水を加え、前記0.01~50重量%の前記少なくとも一種類の有機酸を提供することを含むステートメントP記載の方法。
【0074】
当然ながら、上述の発明のさまざまな側面、および他の特徴および機能、またはその代案を適宜組み合わせて、他の多くの異なるシステムまたは用途とすることが可能である。現時点では予期または予見できないさまざまな代案、変形、変異、または改良が今後当業者によってなされる可能性もあるが、それらもまた本発明によって包含されるものである。これまで本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。本発明は、添付のクレームおよびその合理的解釈によってのみ限定されるものと見なされる。
【符号の説明】
【0075】
図1に示される主要物のリストは以下のとおりである。
7 スプレー可能な流体
10 装置
19 積層造形部品
22 ターンテーブル
25 スプレーチャンバ
28 ノズル
31 タンク
34 上側
37 媒体ポンプ
40 ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)
43 流体導管
46 ハウジング
61 ファン
67 格子
70 定置洗浄(CIP)ノズル
73 排出口
76 傾斜側面
79 ポート
82 投与機構
85 液面センサ
88 バルブ
91 加熱器
94 バルブ
97 ベント
100 バルブ
104 空気ポンプ
106 pHセンサ
109 温度センサ
112 圧力センサ
115 カメラ
118 CIPポンプ
121 CIPシステム
124 CIP吸入口
図1