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特許7572977所定の構成の複数の発現カセットの標的化組込みによって多価の多重特異性抗体発現細胞を作製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】所定の構成の複数の発現カセットの標的化組込みによって多価の多重特異性抗体発現細胞を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20241017BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241017BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20241017BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241017BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241017BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241017BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/85 Z
C12P21/08
C12N15/11 Z
C12N5/10
C12N15/13
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021575262
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2020066677
(87)【国際公開番号】W WO2020254351
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】19181094.4
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19181095.1
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19181097.7
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19181098.5
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19181099.3
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】アウアー ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】アウスレンダー シモン
(72)【発明者】
【氏名】ポップ モニカ
(72)【発明者】
【氏名】ゲプフェルト ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハーベック-ヤンセン ハイディ
(72)【発明者】
【氏名】フーク クリスティーナ-リサ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-514358(JP,A)
【文献】国際公開第2018/002358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三価の二重特異性抗体を製造するための方法であって、
a)前記三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)前記細胞または培養培地から前記三価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
前記三価の二重特異性抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、前記哺乳動物細胞のゲノム中に安定的に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含み、
前記デオキシリボ核酸が、前記第7の発現カセットの後に、前記第2の軽鎖をコードする第8の発現カセットを含み、
前記第1の重鎖が、さらなるドメイン交換FabフラグメントVH-VLまたはCH1-CLを含む伸長重鎖であり、かつ前記第1の軽鎖が、対応するドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLであり、かつ
前記第1の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、
前記方法。
【請求項2】
三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸であって、5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含み、
前記デオキシリボ核酸が、前記第7の発現カセットの後に、前記第2の軽鎖をコードする第8の発現カセットを含み、
前記第1の重鎖が、さらなるドメイン交換FabフラグメントVH-VLまたはCH1-CLを含む伸長重鎖であり、かつ前記第1の軽鎖が、対応するドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLであり、かつ
前記第1の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、
前記デオキシリボ核酸。
【請求項3】
5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における三価の二重特異性抗体の発現のための使用であって、
前記デオキシリボ核酸が、前記第7の発現カセットの後に、前記第2の軽鎖をコードする第8の発現カセットを含み、
前記第1の重鎖が、さらなるドメイン交換FabフラグメントVH-VLまたはCH1-CLを含む伸長重鎖であり、かつ前記第1の軽鎖が、対応するドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLであり、かつ
前記第1の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、
前記使用。
【請求項4】
組換え哺乳動物細胞であって、前記細胞のゲノムに組み込まれた三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、前記三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含み、
前記デオキシリボ核酸が、前記第7の発現カセットの後に、前記第2の軽鎖をコードする第8の発現カセットを含み、
前記第1の重鎖が、さらなるドメイン交換FabフラグメントVH-VLまたはCH1-CLを含む伸長重鎖であり、かつ前記第1の軽鎖が、対応するドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLであり、かつ
前記第1の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、
前記組換え哺乳動物細胞。
【請求項5】
3つの異なる組換え認識配列および4つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含み、
前記デオキシリボ核酸が、前記第7の発現カセットの後に、前記第2の軽鎖をコードする第8の発現カセットを含み、
前記第1の重鎖が、さらなるドメイン交換FabフラグメントVH-VLまたはCH1-CLを含む伸長重鎖であり、かつ前記第1の軽鎖が、対応するドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLであり、かつ
前記第1の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、
前記組成物。
【請求項6】
三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記三価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下の工程:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む前記哺乳動物細胞を提供する工程であって、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに前記第1の組換え認識配列と前記第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ前記組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された前記細胞に、3つの異なる組換え認識配列および少なくとも7つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸の組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-前記第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含み、
前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列は、組み込まれた前記外因性ヌクレオチド配列の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になる場合、前記1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記組換え認識配列を認識する(かつ任意で、前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程
ならびに
d)前記第2の選択マーカーを発現しかつ前記三価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程
を含み、それにより、前記三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記三価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造し、
前記デオキシリボ核酸が、前記第7の発現カセットの後に、前記第2の軽鎖をコードする第8の発現カセットを含み、
前記第1の重鎖が、さらなるドメイン交換FabフラグメントVH-VLまたはCH1-CLを含む伸長重鎖であり、かつ前記第1の軽鎖が、対応するドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLであり、かつ
前記第1の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、
前記方法。
【請求項7】
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、請求項1に記載の三価の二重特異性抗体を製造するための方法。
【請求項8】
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメイン、およびCLドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、前記第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
請求項1および7のいずれか一項に記載の三価の二重特異性抗体を製造するための方法。
【請求項9】
前記デオキシリボ核酸の厳密に1コピーが単一の部位または遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項1、7および8のいずれか一項に記載の三価の二重特異性抗体を製造するための方法。
【請求項10】
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項1および7~のいずれか一項に記載の三価の二重特異性抗体を製造するための方法。
【請求項11】
全てのカセットが一方向に配列されている、請求項1および7~10のいずれか一項に記載の三価の二重特異性抗体を製造するための方法。
【請求項12】
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、請求項2に記載のデオキシリボ核酸。
【請求項13】
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメイン、およびCLドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、前記第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
請求項2および12のいずれか一項に記載のデオキシリボ核酸。
【請求項14】
全てのカセットが一方向に配列されている、請求項2、12および13のいずれか一項に記載のデオキシリボ核酸。
【請求項15】
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、請求項3に記載の使用。
【請求項16】
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメイン、およびCLドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、前記第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
請求項3および15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記デオキシリボ核酸の厳密に1コピーが単一の部位または遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項3、15および16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項3および1517のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
全てのカセットが一方向に配列されている、請求項3および1518のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、請求項4に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項21】
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメイン、およびCLドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、前記第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
請求項4および20のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項22】
前記デオキシリボ核酸の厳密に1コピーが単一の部位または遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項4、20および21のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項23】
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項4および2022のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項24】
全てのカセットが一方向に配列されている、請求項4および2023のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項25】
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項26】
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメイン、およびCLドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、前記第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
請求項5および25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記三価の二重特異性抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、
前記選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されており、
前記選択マーカーをコードする前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、それにより、前記プロモータ配列が、上流で前記第4の発現カセットに隣接し、前記開始コドンが、下流で前記第3の組換え認識配列に隣接し、かつ前記選択マーカーをコードする前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で前記第3の組換え認識配列に隣接し、下流で前記第5の発現カセットに隣接し、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されている、
請求項5、25および26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
抗体鎖についての各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、かつ
前記選択マーカーをコードする各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、前記選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、
前記プロモータが、SV40プロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列が、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、前記選択マーカーの前記発現カセットを除いて、
前記プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、前記ターミネータは、hGTターミネータである、
請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
全てのカセットが一方向に配列されている、請求項5および2528のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、請求項6に記載の組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
【請求項31】
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメイン、およびCLドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、前記第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
請求項6および30のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
【請求項32】
前記デオキシリボ核酸の厳密に1コピーが単一の部位または遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項6、30および31のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
【請求項33】
抗体鎖についての各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、かつ
前記選択マーカーをコードする各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、前記選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、
前記プロモータが、SV40プロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列が、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、前記選択マーカーの前記発現カセットを除いて、
前記プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、前記ターミネータは、hGTターミネータである、
請求項6および3032のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
【請求項34】
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項6および3033のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
【請求項35】
全てのカセットが一方向に配列されている、請求項6および3034のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞株作製およびポリペプチド産生の分野に関する。より正確には、哺乳動物細胞のゲノムへの特定の発現カセット配列の組込みをもたらす二重リコンビナーゼ媒介カセット交換反応によって得られた組換え哺乳動物細胞が、本明細書において報告される。前記細胞は、多価の多重特異性抗体を製造する方法において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
例えば抗体等の、分泌されグリコシル化されるポリペプチドは、通常、安定発現または一過性発現のいずれかとして真核細胞において組換え発現されることにより産生される。
【0003】
目的の外因性ポリペプチドを発現する組換え細胞を作製するための1つの戦略は、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のランダムな組込みとそれに続く選択工程および単離工程を含む。しかしながら、この手法にはいくつかの欠点がある。第1に、細胞それ自体のゲノム中へのヌクレオチド配列の機能的組込みは、珍しい事象であるだけでなく、ヌクレオチド配列が組み込まれる場所についてのランダム性を考慮に入れると、これらの珍しい事象の結果、遺伝子発現および細胞増殖に様々な表現型が生じる。「位置効果変異」として公知のこのような変異は、真核細胞ゲノムに存在する複雑な遺伝子制御ネットワークならびに組込みおよび遺伝子発現のための特定のゲノム遺伝子座に対する接近容易性に、少なくともある程度は起因する。第2に、一般的に、ランダムな組込み戦略は、細胞のゲノム中に組み込まれるヌクレオチド配列コピーの数を制御するものではない。実際に、高産生細胞を得るために遺伝子増幅法がしばしば使用される。しかし、このような遺伝子増幅は、例えば不安定な細胞増殖および/または生産物発現等の望ましくない細胞表現型を招く可能性もある。第3に、ランダムな組込みプロセスにつきものの組込み遺伝子座不均一性が原因となって、目的のポリペプチドについて望ましい発現レベルを示している組換え細胞を単離するためにトランスフェクション後に何千個もの細胞をスクリーニングすることには、時間がかかり、大きな労働力を要する。そのような細胞を単離した後でさえ、目的のポリペプチドの安定な発現は保証されておらず、安定な市販の産生細胞を得るには、さらなるスクリーニングが必要とされる場合がある。第4に、ランダムな組込みによって得られた細胞から産生されるポリペプチドは、高度の配列差異を示し、これは、高レベルのポリペプチド発現を選択するために使用される選択剤の変異原性にいくらか起因する可能性がある。最後に、産生しようとするポリペプチドの複雑性が高いほど、すなわち、目的のポリペプチドを細胞内で形成するのに必要とされる種々のポリペプチドまたはポリペプチド鎖の数が多いほど、互いに異なるポリペプチドまたはポリペプチド鎖の発現比率を制御することが、より重要になる。発現比率の制御は、目的のポリペプチドの効率的な発現、正確な組立て、および高い発現収率での分泌の成功を可能にするために必要とされる。
【0004】
リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)による標的化組込みは、真核生物宿主ゲノムのあらかじめ定められた部位に特異的かつ効率的に外来DNAを導くための方法である(Turan et al.,J.Mol.Biol.407(2011)193-221(非特許文献1))。
【0005】
国際公開第2006/007850号(特許文献1)では、抗RhD組換えポリクローナル抗体および個々の宿主細胞のゲノム中への部位特異的組込みを用いる製造方法が開示されている。
【0006】
Crawford,Y.,et al.(Biotechnol.Prog.29(2013)1307-1315(非特許文献2))は、phiC31インテグラーゼ技術とCRE-Lox技術を組み合わせて用いて、標的化細胞株開発のために信頼のおける宿主を限定的なゲノムスクリーニングによって迅速に同定したことを報告した。
【0007】
国際公開第2013/006142号(特許文献2)では、そのゲノム中にドナーカセットを安定に組み入れた、遺伝的に変更された真核細胞のほぼ均質な集団を開示しており、ドナーカセットは、ターゲティング核酸部位および選択可能マーカータンパク質コード配列を含む単離された核酸フラグメントに作動可能に連結された強力なポリアデニル化部位を含み、単離された核酸フラグメントは、第1の組換え部位および第2の異なる組換え部位に挟まれている。
【0008】
国際公開第2018/162517号(特許文献3)では、i)発現カセット配列およびii)様々な発現ベクター間での発現カセットの分布に応じて、発現収率および生産物の質に大きな差異が認められたことが開示されている。
【0009】
Tadauchi,T.,et al.は、何が抗体の発現を困難にするかを体系的に検討するために、制御された標的化組込み細胞株の開発アプローチを利用することを開示している(Biotechnol.Prog.35(2019)No.2,1-11(非特許文献3))。
【0010】
国際公開第2016/079076号(特許文献4)は、FolR1およびCD3に対するT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を開示している。実施例29では、二重特異性FolR1/CD3-カッパ-ラムダ抗体の作製を、一過性トランスフェクションを使用して記載しており、3つの発現ベクターのプラスミド比は1:1:1であった。実施例36において、DP47 GS TCBの調製を、HEK293-EBNA細胞を対応する発現ベクターと1:2:1:1の比(「ベクター重鎖Fc(ホール)」:「ベクター軽鎖」:「ベクター軽鎖CrossFab」:「ベクター重鎖Fc(ノブ)-FabCrossFab」)で同時トランスフェクトすることによって記載している。
【0011】
国際公開第2014/033074号(特許文献5)は、血液脳関門シャトルを開示している。実施例2において、三価のMAb31-scFab(8D3)の一過性産生を、トランスフェクション時に等モルのプラスミド比で3つの発現プラスミドを使用して開示している。
【0012】
国際公開第2017/184831号(特許文献6)は、真核細胞における組換えタンパク質の部位特異的な組込みおよび発現、特に、発現増強遺伝子座を使用することによる、真核細胞、特にチャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)細胞株における二重特異性抗体を含む抗体の発現を改善するための方法を開示しているとされている。この文書のデータは、匿名化された方法で提示され、したがって、実際に何が行われたかについての結論を許容しない。Creリコンビナーゼを使用した場合、それを追加のプラスミド上で同時トランスフェクトしたが、このプラスミドはその組成または起源に関して記載されていない。
【0013】
Rajendra,Y.,et al.は、単一のクワッドベクターが安定なCHO細胞株の生成のための単純であるが効果的な代替アプローチであり、臨床ヘテロmAb治療のための細胞株生成を加速し得ることを開示している(Biotechnol.Prog.33(2017)469-477(非特許文献4))。
【0014】
Gurumurthy,C.B.およびKent Lloyd,K.C.は、生物医学研究のためのマウスモデルを開示した(Dis.Mod.Mech.12(2019)(非特許文献5))。本発明者らは、胚性幹細胞における相同組換えによる従来の遺伝子標的化が、どのようにして、接合子における対立遺伝子特異的操作を可能にするより洗練された方法にとってかわられたかを論じている。
【0015】
Bahr,S.,et al.は、チャイニーズハムスター卵巣細胞における標的化組込みを使用するプラットフォーム発現系の開発を開示した(Cell Culture Engineering XVI,2018の議事録(非特許文献6))。
【0016】
国際公開第2017/060144号(特許文献7)は、共刺激TNF受容体について四価を有する二重特異性抗体を開示している。国際公開第2019/086497号(特許文献8)は、標的化されたOx40アゴニストとの併用療法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2006/007850号
【文献】国際公開第2013/006142号
【文献】国際公開第2018/162517号
【文献】国際公開第2016/079076号
【文献】国際公開第2014/033074号
【文献】国際公開第2017/184831号
【文献】国際公開第2017/060144号
【文献】国際公開第2019/086497号
【非特許文献】
【0018】
【文献】Turan et al.,J.Mol.Biol.407(2011)193-221
【文献】Crawford,Y.,et al.(Biotechnol.Prog.29(2013)1307-1315)
【文献】Tadauchi,T.,et al.(Biotechnol.Prog.35(2019)No.2,1-11)
【文献】Rajendra,Y.,et al.(Biotechnol.Prog.33(2017)469-477)
【文献】Gurumurthy,C.B.およびKent Lloyd,K.C.(Dis.Mod.Mech.12(2019))
【文献】Bahr,S.,et al.(Cell Culture Engineering XVI,2018の議事録)
【発明の概要】
【0019】
三価の二重特異性抗体:
本明細書では、三価の二重特異性抗体、特にその重鎖の1つのC末端に追加のscFvまたはFabフラグメントを含む二価の単一特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を報告している。三価の二重特異性抗体は、前記哺乳動物細胞によって天然には発現されないヘテロ多量体ポリペプチドである。より具体的には、三価の二重特異性抗体は、4つのポリペプチド、完全長軽鎖である1つの軽鎖、ドメイン交換軽鎖であるさらなる軽鎖、完全長重鎖である1つの重鎖、およびC末端に追加のドメイン交換重鎖または軽鎖Fabフラグメントを含む伸長重鎖である、さらなる重鎖からなるヘテロ多量体タンパク質である。三価の二重特異性抗体の発現を達成するために、特定かつ所定の配列中に複数の異なる発現カセットを含む組換え核酸が、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれている。
【0020】
特に、本発明による方法は、脳シャトル抗体の作製に使用することができる。これらは、例えば国際公開第2014/033074号に記載されているようなフォーマットを有していてもよい。それらの分子は、血液脳関門の細胞上のヒトトランスフェリン受容体(第1の特異性)および標的治療抗原(第2の特異性)に同時に結合し、それによって輸送および治療効果を誘導することができる。
【0021】
三価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を作製するための方法および前記組換え哺乳動物細胞を用いて三価の二重特異性抗体を製造するための方法も、本明細書において報告されている。
【0022】
好ましい一実施形態において、三価の二重特異性抗体は、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む第1の軽鎖、ならびに
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む第2の軽鎖
を含み、
第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成し、
第1の結合部位はヒトトランスフェリン受容体に特異的に結合する。
【0023】
好ましい一実施形態において、三価の二重特異性抗体は、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第1の重鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む第1の軽鎖、ならびに
-N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む第2の軽鎖
を含み、
第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成し、
第1の結合部位はヒトトランスフェリン受容体に特異的に結合する。
【0024】
好ましい一実施形態において、三価の二重特異性抗体の第1の軽鎖および第2の軽鎖のいずれも共通軽鎖またはユニバーサル軽鎖ではない。
【0025】
本発明は、ヘテロ多量体三価の二重特異性抗体の発現に必要とされる異なる発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれた際に、三価の二重特異性抗体(例えば、脳シャトル抗体)の発現収率に影響を与えるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0026】
本発明は、特定の発現カセット構成を有する、ヘテロ多量体の三価の二重特異性抗体をコードする核酸を、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込むことによって、三価の二重特異性抗体(例えば、脳シャトル抗体)の効率的な組換え発現および生産を達成できるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0027】
二重リコンビナーゼ媒介カセット交換反応によって、所定の発現カセット配列を哺乳動物細胞のゲノム中に有利に組み込めることが、見出されている。
【0028】
本発明による1つの態様は、三価の二重特異性抗体を製造するための方法であって、以下:
a)任意で三価の二重特異性抗体の発現に適した条件下で、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)細胞または培養培地から三価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、哺乳動物細胞のゲノム中に安定に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット
のいずれかを含む。
【0029】
1つの実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0030】
本発明の1つの態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット
のいずれかを含む、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸である。
【0031】
本発明の1つの態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット
のいずれかを含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における三価の二重特異性抗体の発現のための使用である。
【0032】
使用の一実施形態において、デオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれる。
【0033】
使用の一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0034】
本発明の一態様は、組換え哺乳動物細胞であって、細胞のゲノムに組み込まれた三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、
三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット
のいずれかを含む。
【0035】
一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0036】
全ての前述の態様の一実施形態において、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、
-第1の(最も5’の)発現カセットに対して5’に位置する第1の組換え認識配列、
-第7または第8の(最も3’)に対して3’に位置する第2の組換え認識配列、および
-第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間、かつ
-発現カセットのうちの2つの間
に位置する第3の組換え認識配列
をさらに含み、
かつ
組換え認識配列は全て異なっている。
【0037】
一実施形態において、第3の組換え認識配列は、第4の発現カセットと第5の発現カセットとの間に位置する。
【0038】
一実施形態において、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の5’に一部が、3’に一部が位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0039】
本発明の1つの態様は、3つの異なる組換え認識配列および7つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であり、
-第1のデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(3)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含む。
【0040】
全ての前述の態様の一実施形態において、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードする他の発現カセットをさらに含む。
【0041】
一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の、
i)5’、または
ii)3’、または
iii)部分的に5’および部分的に3’
のいずれかに位置している。
【0042】
一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置し、前記発現カセットの5’に位置する部分が、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0043】
一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流で第4の発現カセットに隣接し(すなわち、第4の発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列に対して上流の位置にあり);かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で第5の発現カセットに隣接している。
【0044】
一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0045】
本発明の一態様は、組換え哺乳動物細胞であって、細胞のゲノムに組み込まれた三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、
三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、次のエレメント、
第1、第2および第3の組換え認識配列、
第1の選択マーカーおよび第2の選択マーカー、ならびに
第1~第8の発現カセット、
を含み、前記エレメントの配列は、5’から3’の方向に、
RRS1-第1のEC-第2のEC-第3のEC-第4のEC-RRS3-SM1-第5のEC-第6のEC-第7のEC-第8のEC-RRS2
または
RRS1-第1のEC-第2のEC-第3のEC-第4のEC-RRS3-SM1-第5のEC-第6のEC-第7のEC-RRS2
であり、
RRS=組換え認識配列、
EC=発現カセット、
SM=選択マーカーである。
【0046】
本発明の1つの態様は、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み三価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および7つまたは8つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸の組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(3)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列は、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
1つまたは複数のリコンビナーゼが、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識する(かつ、場合によっては、1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、三価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程を含み、
それにより、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、三価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0047】
全ての態様および実施形態の好ましい一実施形態において、第1の結合部位はヒトトランスフェリン受容体に特異的に結合する。
【0048】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体は、抗TfR/CD20二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2017/055542号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体は、抗TfR/Aβ二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2017/055540号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
二重特異性三価の抗体:
本明細書では、三価の抗体、特にT細胞二重特異性抗体(TCB)等の二重特異性三価の抗体を発現する組換え哺乳動物細胞が報告されている。三価の抗体は、前記哺乳動物細胞によって天然には発現されないヘテロ多量体ポリペプチドである。より具体的には、三価の抗体は、4つのポリペプチドまたはポリペプチド鎖、完全長軽鎖である1つの軽鎖、ドメイン交換軽鎖であるさらなる軽鎖、完全長重鎖である1つの重鎖、および追加のドメイン交換重鎖または軽鎖Fabフラグメントを含む伸長重鎖である、さらなる重鎖からなるヘテロ多量体タンパク質である。三価の抗体の発現を達成するために、特定かつ所定の配列中に複数の異なる発現カセットを含む組換え核酸が、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれている。
【0051】
特に、本発明による方法は、T細胞二重特異性抗体(TCB)の作製に使用することができる。これらは、例えば国際公開第2013/026831号に記載されているようなフォーマットを有していてもよい。それらの分子は、T細胞上のCD3(第1の特異性)および標的(例えば、腫瘍)細胞上の抗原(第2の特異性)に同時に結合し、それによって標的細胞の死滅を誘導することができる。
【0052】
本明細書ではまた、三価の抗体、特に三価の二重特異性抗体、より具体的にはTCBを発現する組換え哺乳動物細胞を作製する方法、および前記組換え哺乳動物細胞を使用して三価の抗体、特に三価の二重特異性抗体、より具体的にはTCBを作製する方法が報告されている。
【0053】
好ましい一実施形態において、三価の二重特異性抗体は、
a)第1の抗原にそれぞれ特異的に結合する第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメント、
b)第2の抗原に特異的に結合し、CH1ドメインとCLドメインが互いに置換されている、1つのドメイン交換Fabフラグメント、
c)第1の重鎖Fc領域のポリペプチドと第2の重鎖Fc領域ポリペプチドを含む、1つのFc領域
を含み、
第1のFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、重鎖Fc領域ポリペプチドの1つのN末端に接続しており、ドメイン交換FabフラグメントのCLドメインのC末端は、他の重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端に接続しており、かつ、
第2のFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、第1のFabフラグメントのVHドメインのN末端またはドメイン交換FabフラグメントのVHドメインのN末端に接続されており、
第1の抗原または第2の抗原は、ヒトCD3である。
【0054】
好ましい一実施形態において、三価の二重特異性抗体は、
a)第1の抗原にそれぞれ特異的に結合する第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメント、
b)第2の抗原に特異的に結合し、VHドメインとVLドメインが互いに置換されている、1つのドメイン交換Fabフラグメント、
c)第1の重鎖Fc領域のポリペプチドと第2の重鎖Fc領域ポリペプチドを含む、1つのFc領域
を含み、
第1のFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、重鎖Fc領域ポリペプチドの1つのN末端に接続しており、ドメイン交換FabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、他の重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端に接続しており、かつ、
第2のFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、第1のFabフラグメントのVHドメインのN末端またはドメイン交換FabフラグメントのVLドメインのN末端に接続されており、
第1の抗原または第2の抗原は、ヒトCD3である。
【0055】
好ましい一実施形態において、三価の二重特異性抗体の第1の軽鎖および第2の軽鎖のいずれも共通軽鎖またはユニバーサル軽鎖ではない。
【0056】
本発明は、ヘテロ多量体三価の抗体の発現に必要とされる異なる発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれた際に、三価の抗体(例えば、TCB)の発現収率に影響を与えるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0057】
本発明は、特定の発現カセット構成を有する、ヘテロ多量体三価の抗体(例えば、TCB)をコードする核酸を、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込むことによって、三価の抗体(例えば、TCB)の効率的な組換え発現および生産を達成できるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0058】
二重リコンビナーゼ媒介カセット交換反応によって、所定の発現カセット配列を哺乳動物細胞のゲノム中に有利に組み込めることが、判明している。
【0059】
本発明による1つの態様は、三価の抗体(例えば、TCB)を製造するための方法であって、以下:
a)任意で三価の抗体(例えば、TCB)の発現に適した条件下で、三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)細胞または培養培地から三価の抗体(例えば、TCB)を回収する工程
を含み、
三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノム中に安定に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
次のいずれか、
1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-任意に、第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセットを含み、
第1~第3の発現カセットは一方向に配列されており、第4~第6の発現カセットは、第1~第3の発現カセットとは一方向および逆方向に配列されているか、
または
3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
を含む。
【0060】
好ましい一実施形態において、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である。一実施形態において、第1の軽鎖はドメイン交換軽鎖である。
【0061】
一実施形態において、デオキシリボ核酸は、第2の重鎖をコードする第1の発現カセットと第2の発現カセットとの間にさらなる発現カセットを含む。
【0062】
一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0063】
一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0064】
一実施形態において、デオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0065】
本発明の1つの態様は、5’から3’の方向に、
次のいずれか、
1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-任意に、第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセットを含み、
第1~第3の発現カセットは一方向に配列されており、第4~第6の発現カセットは、第1~第3の発現カセットとは一方向および逆方向に配列されているか、
または
3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
を含む、三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸である。
【0066】
好ましい一実施形態において、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である。一実施形態において、第1の軽鎖はドメイン交換軽鎖である。
【0067】
一実施形態において、デオキシリボ核酸は、第2の重鎖をコードする第1の発現カセットと第2の発現カセットとの間にさらなる発現カセットを含む。
【0068】
一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0069】
一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0070】
本発明の1つの態様は、5’から3’の方向に、
次のいずれか、
1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-任意に、第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセットを含み、
第1~第3の発現カセットは一方向に配列されており、第4~第6の発現カセットは、第1~第3の発現カセットとは一方向および逆方向に配列されているか、
または
3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
を含む、デオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における三価の抗体(例えば、TCB)の発現のための使用である。
【0071】
好ましい一実施形態において、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である。一実施形態において、第1の軽鎖はドメイン交換軽鎖である。
【0072】
一実施形態において、デオキシリボ核酸は、第2の重鎖をコードする第1の発現カセットと第2の発現カセットとの間にさらなる発現カセットを含む。
【0073】
一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0074】
一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0075】
使用の一実施形態において、デオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれる。
【0076】
使用の一実施形態において、デオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0077】
本発明の一態様は、細胞のゲノム中に組み込まれた、三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸を含む、組換え哺乳動物細胞であり、
三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
次のいずれか、
1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-任意に、第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセットを含む、
第1~第3の発現カセットは一方向に配列されており、第4~第6の発現カセットは、第1~第3の発現カセットとは一方向および逆方向に配列されているか、
または
3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
を含む。
【0078】
好ましい一実施形態において、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である。一実施形態において、第1の軽鎖はドメイン交換軽鎖である。
【0079】
一実施形態において、デオキシリボ核酸は、第2の重鎖をコードする第1の発現カセットと第2の発現カセットとの間にさらなる発現カセットを含む。
【0080】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0081】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0082】
1つの実施形態において、デオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0083】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸は、
-第1の(最も5’の)発現カセットに対して5’に位置する第1の組換え認識配列、
-第6の(最も3’)発現カセットに対して3’に位置する第2の組換え認識配列、および
-第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間、かつ
-発現カセットのうちの2つの間
に位置する第3の組換え認識配列をさらに含み、
ならびに
組換え認識配列は全て異なっている。
【0084】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、第3の組換え認識配列は、第3の発現カセットと第4の発現カセットの間に位置する。
【0085】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0086】
本発明の1つの態様は、3つの異なる組換え認識配列および6つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であり、
-第1のデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含む。
【0087】
好ましい一実施形態において、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である。一実施形態において、第1の軽鎖はドメイン交換軽鎖である。
【0088】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0089】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0090】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードする他の発現カセットをさらに含む。
【0091】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の、
i)5’、または
ii)3’、または
iii)部分的に5’および部分的に3’
のいずれかに位置している。
【0092】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0093】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流で第3の発現カセットに隣接し(すなわち、第3の発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列に対して上流の位置にあり)、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で第4の発現カセットに隣接している。
【0094】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0095】
本発明の一態様は、細胞のゲノム中に組み込まれた、三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸を含む、組換え哺乳動物細胞であり、
三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸は、次のエレメント、
第1、第2および第3の組換え認識配列、
第1の選択マーカーおよび第2の選択マーカー、ならびに
第1~第6の発現カセット、
を含み、5’から3’の方向に、前記エレメントの配列は、
RRS1-第1のEC-第2のEC-第3のEC-RRS3-SM1-第4のEC-第5のEC-第6のEC-RRS2
であり、
RRS=組換え認識配列、
EC=発現カセット、
SM=選択マーカーである。
【0096】
本発明の1つの態様は、三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸を含み三価の抗体(例えば、TCB)を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および6つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸を含む組成物を導入する工程であって、
第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
ならびに
第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの3’末端部分、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含み、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列が、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
1つまたは複数のリコンビナーゼが、第1および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識し、(かつ、場合によっては、1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、三価の抗体(例えば、TCB)を分泌する細胞を選択する工程を含み、
それにより、三価の抗体(例えば、TCB)をコードするデオキシリボ核酸を含み、三価の抗体(例えば、TCB)を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0097】
全ての前述の態様および実施形態の好ましい一実施形態において、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である。
【0098】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、第1の軽鎖はドメイン交換軽鎖である。
【0099】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0100】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0101】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の5’に一部が、3’に一部が位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのない1つの第2の選択マーカーのコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0102】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、プロモータ配列は、上流で発現カセットに隣接し(すなわち、発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列に対して上流の位置にあり);かつ、1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの3’末端部分は、開始コドンを欠く1つの第2の選択マーカーのコード配列を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で発現カセットに隣接している。
【0103】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0104】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、
i)第1の発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、第1の重鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
ii)第2の発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、第1の軽鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
iii)第3の発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、第1の軽鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
iv)第4の発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、第2の重鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
v)第5の発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、第2の軽鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
vi)第6の発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、第2の軽鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、かつ、
(vii)選択マーカーをコードする発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含む。
【0105】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体(TCB)は、
-第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントであって、第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントの各結合部位が第2の抗原に特異的に結合する、第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメント、
-第3のFabフラグメントであって、第3のFabフラグメントの結合部位が第1の抗原に特異的に結合し、可変軽鎖ドメイン(VL)と可変重鎖ドメイン(VH)とが互いに入れ替えられるようにドメインクロスオーバーを含む、第3のFabフラグメント、および
-Fc領域であって、第1のFc領域のポリペプチドと第2のFc領域のポリペプチドとを含む、Fc領域
を含み、
第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントがそれぞれ、重鎖フラグメントおよび完全長軽鎖を含み、
第1のFabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端は、第1のFc領域ポリペプチドのN末端に融合されており、
第2のFabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端が、第3のFabフラグメントの可変軽鎖ドメインのN末端に融合されており、第3のFabフラグメントの重鎖定常ドメイン1のC末端が、第2のFc領域ポリペプチドのN末端に融合されている。
【0106】
本明細書における全ての態様および実施形態の一実施形態において、少なくとも1つの選択マーカー発現カセットは、抗体の重鎖発現カセットおよび軽鎖発現カセットとは反対の方向に方向付けられている。
【0107】
本明細書における全ての態様および実施形態の一実施形態において、抗体重鎖発現カセットおよび抗体軽鎖発現カセットは、互いに一方向性(すなわち、3’から5’の方向に同じ方向を有する)に配置され、選択マーカー発現カセットの少なくとも1つは、抗体重鎖発現カセットおよび抗体軽鎖発現カセットに対して双方向に配置されている。
【0108】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の抗体は、抗CD3/CD20二重特異性抗体である。一実施形態において、抗CD3/CD20二重特異性抗体はTCBであり、CD20は第2の抗原である。一実施形態において、二重特異性抗CD3/CD20抗体は、RG6026である。そのような抗体は、国際公開第2016/020309号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の抗体は、抗CD3/CEA二重特異性抗体である。一実施形態において、抗CD3/CEA二重特異性抗体はTCBであり、CEAは第2の抗原である。一実施形態において、二重特異性抗CD3/CEA抗体は、RO6958688またはRG7802またはシビサタマブである。そのような抗体は、国際公開第2017/055389号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
全ての態様および実施形態の好ましい一実施形態において、第1の結合部位はヒトCD3に特異的に結合する。
【0111】
全ての態様および実施形態の好ましい一実施形態において、第2の結合部位はヒトCD3に特異的に結合する。
【0112】
ドメイン交換を伴う二価の二重特異性抗体:
本明細書において、二価の二重特異性抗体、特にドメイン交換を伴う二価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞が報告されている。二価の二重特異性抗体は、前記哺乳動物細胞によって天然には発現されないヘテロ多量体ポリペプチドである。より具体的には、二価の二重特異性抗体は、4つのポリペプチドまたはポリペプチド鎖、完全長軽鎖である1つの軽鎖、ドメイン交換軽鎖であるさらなる軽鎖、完全長重鎖である1つの重鎖、およびドメイン交換重鎖である、さらなる重鎖からなるヘテロ多量体タンパク質である。二価の二重特異性抗体の発現を達成するために、特定かつ所定の配列中に複数の異なる発現カセットを含む組換え核酸が、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれている。
【0113】
二価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を作製するための方法および前記組換え哺乳動物細胞を用いて二価の二重特異性抗体を製造するための方法も、本明細書において報告されている。
【0114】
好ましい一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む第2の軽鎖
を含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0115】
好ましい一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む第1の軽鎖、ならびに
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む第2の軽鎖
を含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0116】
本発明は、ヘテロ多量体二価の二重特異性抗体の発現に必要とされる異なる発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれた際に、二価の二重特異性抗体の発現収率に影響を与えるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0117】
本発明は、特定の発現カセット構成を有する、ヘテロ多量体二価の二重特異性抗体をコードする核酸を、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込むことによって、二価の二重特異性抗体の効率的な組換え発現および生産を達成できるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0118】
二重リコンビナーゼ媒介カセット交換反応によって、所定の発現カセット配列を哺乳動物細胞のゲノム中に有利に組み込めることが、判明している。
【0119】
本発明による1つの態様は、二価の二重特異性抗体を製造するための方法であって、以下:
a)任意で二価の二重特異性抗体の発現に適した条件下で、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)細胞または培養培地から二価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノム中に安定に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
(1)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
または
(2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット
を含む。
【0120】
一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0121】
本発明の1つの態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
または
(2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット
のいずれかを含む、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸である。
【0122】
本発明の1つの態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
または
(2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット
のいずれかを含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における二価の二重特異性抗体の発現のための使用である。
【0123】
使用の一実施形態において、デオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれる。
【0124】
一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0125】
本発明の一態様は、細胞のゲノム中に組み込まれた、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む、組換え哺乳動物細胞であり、
二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
または
(2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット
のいずれかを含む、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸である。
【0126】
一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0127】
全ての前述の態様の一実施形態において、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、
-第1の(最も5’の)発現カセットに対して5’に位置する第1の組換え認識配列、
-第4の(最も3’)発現カセットに対して3’に位置する第2の組換え認識配列、および
-第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間、かつ
-発現カセットのうちの2つの間
に位置する第3の組換え認識配列
をさらに含み、
ならびに
組換え認識配列は全て異なっている。
【0128】
一実施形態において、第3の組換え認識配列は、第2の発現カセットと第3の発現カセットの間に位置する。
【0129】
一実施形態において、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の5’に一部が、3’に一部が位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0130】
本発明の1つの態様は、3つの異なる組換え認識配列および8つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であり、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含む。
【0131】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含む。
【0132】
全ての前述の態様の一実施形態において、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードする他の発現カセットをさらに含む。
【0133】
一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の、
i)5’、または
ii)3’、または
iii)部分的に5’および部分的に3’
のいずれかに位置している。
【0134】
一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置し、前記発現カセットの5’に位置する部分が、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0135】
一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流で第2の発現カセットに隣接し(すなわち、第2の発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列に対して上流の位置にあり)、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で第3の発現カセットに隣接している。
【0136】
一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0137】
本発明の一態様は、細胞のゲノム中に組み込まれた、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む、組換え哺乳動物細胞であり、
二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、次のエレメント、
第1、第2および第3の組換え認識配列、
第1の選択マーカーおよび第2の選択マーカー、ならびに
第1~第4の発現カセット
を含み、5’から3’の方向に、前記エレメントの配列は、
RRS1-第1のEC-第2のEC-RRS3-SM1-第3のEC-第4のEC-RRS2
であり、
RRS=組換え認識配列、
EC=発現カセット、
SM=選択マーカーである。
【0138】
本発明の1つの態様は、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み二価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および4つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸を含む組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列が、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
1つまたは複数のリコンビナーゼが、第1および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識し、(かつ、場合によっては、1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、二価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程を含み、
それにより、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、二価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0139】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含む。
【0140】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、抗ANG2/VEGF二重特異性抗体である。一実施形態において、二重特異性抗ANG2/VEGF抗体は、RG7221またはバヌシズマブである。
【0141】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、抗ANG2/VEGF二重特異性抗体である。一実施形態において、二重特異性抗ANG2/VEGF抗体は、RG7716またはファリシマブである。
【0142】
そのようなANG2/VEGF二重特異性抗体は、国際公開第2010/040508号、国際公開第2011/117329号、国際公開第2014/009465号に報告されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0143】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、抗PD1/TIM3二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2017/055404号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、抗PD1/Lag3二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2018/185043号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
多価の二重特異性抗体:
多価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞が、本明細書において報告されている。多価の二重特異性抗体は、前記哺乳動物細胞によって天然には発現されないヘテロ多量体ポリペプチドである。より具体的には、多価の二重特異性抗体は、3つのポリペプチドまたはポリペプチド鎖、完全長軽鎖である1つの軽鎖、N末端に付加的な重鎖FabフラグメントおよびC末端に付加的な軽鎖可変ドメインを含む伸長重鎖である1つの重鎖、N末端に付加的な重鎖FabフラグメントおよびC末端に付加的な重鎖可変ドメインを含む伸長重鎖であるさらなる重鎖からなるヘテロ多量体タンパク質である。多価の二重特異性抗体の発現を達成するために、特定かつ所定の配列中に複数の異なる発現カセットを含む組換え核酸が、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれている。多価の二重特異性抗体は、好ましい一実施形態において、少なくとも四価である。多価の二重特異性抗体は、好ましい一実施形態において、最大で10価、より好ましくは最大で8価である。
【0146】
多価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を作製するための方法および前記組換え哺乳動物細胞を用いて多価の二重特異性抗体を製造するための方法も、本明細書において報告されている。
【0147】
好ましい一実施形態において、多価の二重特異性抗体は、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメインの第2のコピー、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第1の軽鎖可変ドメインを含む第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメインの第2のコピー、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第2の重鎖可変ドメインを含む第2の重鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む第1の軽鎖
を含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0148】
好ましい一実施形態において、多価の二重特異性抗体の第1の軽鎖および第2の軽鎖のいずれも共通軽鎖またはユニバーサル軽鎖ではない。
【0149】
本発明は、ヘテロ多量体多価の二重特異性抗体の発現に必要とされる異なる発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれた際に、多価の二重特異性抗体の発現収率に影響を与えるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0150】
本発明は、特定の発現カセット構成を有する、ヘテロ多量体多価の二重特異性抗体をコードする核酸を、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込むことによって、多価の二重特異性抗体の効率的な組換え発現および生産を達成できるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0151】
二重リコンビナーゼ媒介カセット交換反応によって、所定の発現カセット配列を哺乳動物細胞のゲノム中に有利に組み込めることが見出されている。
【0152】
本発明による1つの態様は、多価の二重特異性抗体を製造するための方法であって、以下:
a)任意で多価の二重特異性抗体の発現に適した条件下で、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)細胞または培養培地から多価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノム中に安定に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含む。
【0153】
一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0154】
本発明の1つの態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含む、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸である。
【0155】
本発明の1つの態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における多価の二重特異性抗体の発現のための使用である。
【0156】
使用の一実施形態において、デオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれる。
【0157】
使用の一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0158】
本発明の一態様は、細胞のゲノム中に組み込まれた、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む、組換え哺乳動物細胞であり、
多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含む、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸である。
【0159】
一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0160】
全ての前述の態様の一実施形態において、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、
-第1の(最も5’の)発現カセットに対して5’に位置する第1の組換え認識配列、
-第6または第8の(最も3’)発現カセットに対して3’に位置する第2の組換え認識配列、および
-第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間、かつ
-発現カセットのうちの2つの間
に位置する第3の組換え認識配列
をさらに含み、
かつ
全ての組換え認識配列は異なる。
【0161】
一実施形態において、第3の組換え認識配列は、第3の発現カセットと第4の発現カセットの間、または第4の発現カセットと第5の発現カセットとの間に位置する。
【0162】
一実施形態において、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の5’に一部が、3’に一部が位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0163】
本発明の1つの態様は、3つの異なる組換え認識配列および8つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であり、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含む。
【0164】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含む。
【0165】
全ての前述の態様の一実施形態において、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードする他の発現カセットをさらに含む。
【0166】
一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の、
i)5’、または
ii)3’、または
iii)部分的に5’および部分的に3’
【0167】
のいずれかに位置している。
【0168】
一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置し、前記発現カセットの5’に位置する部分が、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0169】
一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流でそれぞれ第3または第4の発現カセットに隣接し(すなわち、第3または第4の発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列に対して上流の位置にあり)、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流でそれぞれ第4または第5の発現カセットに隣接している。
【0170】
一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0171】
本発明の一態様は、細胞のゲノム中に組み込まれた、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む、組換え哺乳動物細胞であり、
多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、次のエレメント、
第1、第2および第3の組換え認識配列、
第1の選択マーカーおよび第2の選択マーカー、ならびに
第1~第6または第1~第8の発現カセット
を含み、5’から3’の方向に、前記エレメントの配列は、
RRS1-第1のEC-第2のEC-第3のEC-RRS3-SM1-第4のEC-第5のEC-第6のEC-RRS2
または
RRS1-第1のEC-第2のEC-第3のEC-第4のEC-RRS3-SM1-第5のEC-第6のEC-第7のEC-第8のEC-RRS2
であり、
RRS=組換え認識配列、
EC=発現カセット、
SM=選択マーカーである。
【0172】
本発明の1つの態様は、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み多価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および6つまたは8つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸を含む組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列が、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
1つまたは複数のリコンビナーゼが、第1および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識し、(かつ、場合によっては、1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、多価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程を含み、
それにより、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、多価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0173】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含む。
【0174】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第1の軽鎖可変ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第2の重鎖可変ドメインを含み、かつ
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0175】
全ての前述の態様および実施形態のうちの一実施形態において、各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、コード配列、およびポリアデニル化シグナル配列、任意でそれに続くターミネータ配列を含む。
【0176】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、全ての発現カセットが一方向に配列されている。
【0177】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、多価の二重特異性抗体は、抗FAP/Ox40二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2017/060144号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0178】
Cre mRNAを用いた標的化組込み:
異種性ポリペプチドを発現する組換え哺乳動物細胞を作製するための方法および前記組換え哺乳動物細胞を用いて異種性ポリペプチドを製造するための方法も、本明細書において報告されている。
【0179】
本発明は、少なくとも部分的には、例えばCreリコンビナーゼDNA(Cre DNA)の代わりにCreリコンビナーゼmRNA(Cre mRNA)を使用すると、標的化インテグレーションによって得られるクローンの数を改善できるという知見に基づいている。より詳細には、選択期間後、Cre mRNA生成組換え細胞プールにおけるクローンの絶対数は、CREプラスミド生成組換え細胞プールよりも多いことが見出された。したがって、例えばCreリコンビナーゼをコードするプラスミド(Creプラスミド)の代わりにCre mRNAを使用することによって、クローン数および不均一性が増加した組換え細胞プールを得ることができる。この理論に束縛されるものではないが、それにより、高力価および良好な生成物品質を有する組換え細胞クローンを見出す確率が増加すると想定される。さらに、Cre mRNA生成プールからの組換え細胞クローンの数の増加は、Creプラスミド生成細胞プールと比較して安定であることが見出された。
【0180】
リコンビナーゼ反応のために導入されたCre mRNAは、単離されたCre mRNAであり、ならびに本発明による方法におけるCreリコンビナーゼの唯一の供給源であることを指摘しなければならない。
【0181】
本発明の1つの独立した態様は、ポリペプチドを製造するための方法であって、以下:
a)任意でポリペプチドの発現に適した条件下で、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)細胞または培養培地からポリペプチドを回収する工程
を含み、
ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸が、Cre mRNAを使用するCreリコンビナーゼ媒介カセット交換によって哺乳動物細胞のゲノムに安定に組み込まれている、方法である。
【0182】
本発明の別の独立した態様は、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸を含み、ポリペプチドを分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および1~8つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸を含む組成物を導入する工程であって、
第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列
-1つまたは複数の発現カセット、
-1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの3’末端部分、
-1つまたは複数の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列が、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、CreリコンビナーゼmRNAを導入する工程であって、
Creリコンビナーゼが、第1および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識し、(かつ、任意で、リコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、ポリペプチドを分泌する細胞を選択する工程を含み、
それにより、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸を含み、ポリペプチドを分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0183】
本発明の別の態様は、組換え哺乳動物細胞のゲノムの単一部位に、標的化組込みによって安定に組み込まれた、目的の(異種性)ポリペプチドをコードする(異種性および/またはトランスジェニック)デオキシリボ核酸(の厳密に1つのコピー)を含む前記組換え哺乳動物細胞の数を増加させるためのCre-リコンビナーゼmRNAの使用であり、一実施形態において、組換え細胞はまた、その中での培養時に目的のポリペプチドを培養培地に分泌する。
【0184】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、哺乳動物細胞および/または導入されたCreリコンビナーゼmRNAは、Creリコンビナーゼをコードするデオキシリボ核酸を含まない。
【0185】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、CreリコンビナーゼmRNAは、単離されたCreリコンビナーゼmRNAである。
【0186】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号20のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0187】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号20のアミノ酸配列を含み、そのN末端もしくはC末端または両方に核局在化配列をさらに含むポリペプチドをコードする。一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号20のアミノ酸配列を有し、そのN末端もしくはC末端に、または両方に、互いに独立して、1~5つの核局在化配列をさらに含むポリペプチドをコードする。
【0188】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号21のアミノ酸配列またはそのコドン使用頻度最適化バリアントを含む。全ての態様の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号21のヌクレオチド配列、またはそのコドン使用頻度最適化バリアントを含み、その5’末端もしくは3’末端または両方に、核局在化配列をコードするさらなる核酸をさらに含む。全ての態様の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号21のヌクレオチド配列、またはそのコドン使用頻度最適化バリアントを含み、その5’末端もしくは3’末端または両方に互いに独立して、1~5個の、核局在化配列をコードする核酸をさらに含む。
【0189】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0190】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸は、1~8つの発現カセットを含む。
【0191】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸は、少なくとも4つの発現カセットを含み、
-第1の組換え認識配列は、最も5’の(すなわち、第1の)発現カセットに対して5’に位置し、
-第2の組換え認識配列は、最も3’の発現カセット(すなわち最後の発現カセット)に対して3’に位置し、かつ、
-第3の組換え認識配列は、
-第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間、かつ
-発現カセットのうちの2つの間
に位置し、
かつ
全ての組換え認識配列は異なる。
【0192】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、第3の組換え認識配列は、第2の発現カセットと第3の発現カセット、または第3の発現カセットと第4の発現カセット、または第4の発現カセットと第5の発現カセットとの間に位置する。
【0193】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードする発現カセットをさらに含む。
【0194】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0195】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の、
i)5’、または
ii)3’、または
iii)部分的に5’および部分的に3’
のいずれかに位置している。
【0196】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、二価単一特異性抗体、二価の二重特異性抗体、少なくとも1つのドメイン交換を含む二価の二重特異性抗体、および少なくとも1つのドメイン交換を含む三価の二重特異性抗体からなるポリペプチドの群から選択される。
【0197】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0198】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0199】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0200】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0201】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ多量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第1の軽鎖可変ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第2の重鎖可変ドメインを含む、第2の重鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第1の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0202】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0203】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、治療用抗体である。好ましい一実施形態において、治療用抗体は、二重特異性(治療用)抗体である。一実施形態において、二重特異性(治療用)抗体はTCBである。
【0204】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、二重特異性(治療用)抗体(TCB)であって、
-第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントであって、第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントの各結合部位が第2の抗原に特異的に結合する、第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメント、
-第3のFabフラグメントであって、第3のFabフラグメントの結合部位が第1の抗原に特異的に結合し、可変軽鎖ドメイン(VL)と可変重鎖ドメイン(VH)とが互いに置換されるようにドメインクロスオーバーを含む、第3のFabフラグメント、
-Fc領域であって、第1のFc領域のポリペプチドと第2のFc領域のポリペプチドとを含む、Fc領域
を含み、
第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントがそれぞれ、重鎖フラグメントおよび完全長軽鎖を含み、
第1のFabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端は、第1のFc領域ポリペプチドのN末端に融合されており、
第2のFabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端が、第3のFabフラグメントの可変軽鎖ドメインのN末端に融合されており、第3のFabフラグメントの重鎖定常ドメイン1のC末端が、第2のFc領域ポリペプチドのN末端に融合されている、二重特異性(治療用)抗体(TCB)である。
【0205】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、抗CD3/CD20二重特異性抗体である。一実施形態において、抗CD3/CD20二重特異性抗体はTCBであり、CD20は第2の抗原である。一実施形態において、二重特異性抗CD3/CD20抗体は、RG6026である。
【0206】
全ての前述の態様および実施形態の実施形態:
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の5’に一部が、3’に一部が位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのない1つの第2の選択マーカーのコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0207】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、プロモータ配列は、上流で発現カセットに隣接し(すなわち、発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列に対して上流の位置にあり);かつ、1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの3’末端部分は、開始コドンを欠く1つの第2の選択マーカーのコード配列を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で発現カセットに隣接している。
【0208】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0209】
これまでの全ての態様および実施形態のうちの1つの実施形態において、第1のデオキシリボ核酸は第1のベクターに組み込まれ、第2のデオキシリボ核酸は第2のベクターに組み込まれる。
【0210】
全ての前述の態様および実施形態のうちの一実施形態において、各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、コード配列、およびポリアデニル化シグナル配列、任意でそれに続くターミネータ配列を含む。
【0211】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、
抗体鎖についての発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
かつ
選択マーカーをコードする各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含む。
【0212】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、プロモータは、イントロンAを含むか、または含まないヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリA部位であり、ターミネータは、hGTターミネータである。
【0213】
ターミネータ配列は、RNAポリメラーゼIIによる非常に長いRNA転写物の生成、すなわち、本発明によるデオキシリボ核酸中の次の発現カセットへのリードスルーを防止し、本発明による方法で使用される。すなわち、目的の1つの構造遺伝子の発現は、それ自体のプロモータによって制御される。
【0214】
したがって、ポリアデニル化シグナルとターミネータ配列との組合せによって、効率的な転写終結が達成される。すなわち、RNAポリメラーゼIIのリードスルーは、二重終結シグナルの存在によって妨げられる。ターミネータ配列は、複合体分解を開始し、DNA鋳型からのRNAポリメラーゼの解離を促進する。
【0215】
全ての前述の態様および実施形態のうちの一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、選択マーカーの発現カセットを除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータは、hGTターミネータである。
【0216】
全ての前述の態様および実施形態のうちの一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。一実施形態において、CHO細胞はCHO-K1細胞である。
【0217】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、抗体は、治療用抗体である。
【0218】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体の第1の軽鎖および第2の軽鎖のいずれも共通軽鎖またはユニバーサル軽鎖ではない。
【0219】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0220】
全ての態様および実施形態の好ましい一実施形態において、厳密に2つのデオキシリボ核酸が含まれるか、または導入される。
【0221】
本発明によるデオキシリボ核酸中の個々の発現カセットは、連続して配置される。1つの発現カセットの末端とその後に続く発現カセットの開始部との間の距離は、クローニング手順に必要とされた、すなわちクローニング手順から生じるわずか数ヌクレオチドである。
【0222】
全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、2つの直後の発現カセットは、最大で100bp離れている(すなわち、ポリAシグナル配列またはターミネータ配列のそれぞれの末端から、以下のプロモータエレメントの開始部までは最大100塩基対(bp)である)。一実施形態において、2つの直後の発現カセットは、最大で50bp離間している。好ましい一実施形態において、2つの直後の発現カセットは、最大で30bp離間している。
[本発明1001]
三価の二重特異性抗体を製造するための方法であって、
a)前記三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)前記細胞または培養培地から前記三価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
前記三価の二重特異性抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、前記哺乳動物細胞のゲノム中に安定的に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含む、方法。
[本発明1002]
三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸であって、5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含む、デオキシリボ核酸。
[本発明1003]
5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における三価の二重特異性抗体の発現のための使用。
[本発明1004]
組換え哺乳動物細胞であって、前記細胞のゲノムに組み込まれた三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、前記三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含む、組換え哺乳動物細胞。
[本発明1005]
3つの異なる組換え認識配列および4つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含む、組成物。
[本発明1006]
三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記三価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下の工程:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む前記哺乳動物細胞を提供する工程であって、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに前記第1の組換え認識配列と前記第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ前記組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された前記細胞に、3つの異なる組換え認識配列および少なくとも7つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸の組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-前記第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖または前記第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含み、
前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列は、組み込まれた前記外因性ヌクレオチド配列の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になる場合、前記1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記組換え認識配列を認識する(かつ任意で、前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程
ならびに
d)前記第2の選択マーカーを発現しかつ前記三価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程
を含み、それにより、前記三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記三価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法。
[本発明1007]
前記デオキシリボ核酸が、前記第7の発現カセットの後に、前記第2の軽鎖をコードする第8の発現カセットを含む、本発明1001~1006のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1008]
前記第1の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、本発明1001~1007のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1009]
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、本発明1008の三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1010]
前記第1の重鎖が、さらなるドメイン交換FabフラグメントVH-VLまたはCH1-CLを含む伸長重鎖である、本発明1001~1009のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1011]
前記第1の軽鎖が、ドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLである、本発明1001~1010のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1012]
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメイン、およびCLドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、前記第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
本発明1001~1011のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1013]
前記デオキシリボ核酸の厳密に1コピーが単一の部位または遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、本発明1001、1003、1004および1006~1012のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1014]
前記三価の二重特異性抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、
前記選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されており、
前記選択マーカーをコードする前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、それにより、前記プロモータ配列が、上流で前記第4の発現カセットに隣接し、前記開始コドンが、下流で前記第3の組換え認識配列に隣接し、かつ前記選択マーカーをコードする前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で前記第3の組換え認識配列に隣接し、下流で前記第5の発現カセットに隣接し、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されている、
本発明1001~1005および1007~1013のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1015]
抗体鎖についての各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、かつ
前記選択マーカーをコードする各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、前記選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、
前記プロモータが、SV40プロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列が、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、前記選択マーカーの前記発現カセットを除いて、
前記プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、前記ターミネータは、hGTターミネータである、
本発明1001~1014のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1016]
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、本発明1001、1003、1004および1006~1015のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1017]
全てのカセットが一方向に配列されている、本発明1001~1016のいずれかの、三価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1018]
三価の抗体を製造するための方法であって、
a)前記三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)前記細胞または培養培地から前記三価の抗体を回収する工程
を含み、
前記三価の抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、前記哺乳動物細胞のゲノム中に安定的に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
または
(4)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(5)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
または
(6)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
のいずれかを含む、方法。
[本発明1019]
三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸であって、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
または
(4)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(5)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
または
(6)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
のいずれかを含む、デオキシリボ核酸。
[本発明1020]
5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
または
(4)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(5)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
または
(6)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
のいずれかを含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における三価の抗体の発現のための使用。
[本発明1021]
組換え哺乳動物細胞であって、前記細胞のゲノムに組み込まれた三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、前記三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
または
(4)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(5)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
または
(6)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
のいずれかを含む、組換え哺乳動物細胞。
[本発明1022]
3つの異なる組換え認識配列および5~7つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(2)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(3)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(4)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(5)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(6)
-第1の組換え認識配列、
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(3)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(4)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(5)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(6)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含む、組成物。
[本発明1023]
三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記三価の抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下の工程:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む前記哺乳動物細胞を提供する工程であって、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに前記第1の組換え認識配列と前記第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ前記組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された前記細胞に、3つの異なる組換え認識配列および5~7つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸の組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(2)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(3)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(4)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(5)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(6)
-第1の組換え認識配列、
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(3)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(4)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(5)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(6)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列が、組み込まれた前記外因性ヌクレオチド配列の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になる場合、前記1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記組換え認識配列を認識する(かつ任意で、前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程
ならびに
d)前記第2の選択マーカーを発現しかつ前記三価の抗体を分泌する細胞を選択する工程
を含み、それにより、前記三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記三価の抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法。
[本発明1024]
前記第1の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含むか、またはその逆である、本発明1018~1023のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1025]
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、本発明1024の、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1026]
前記第1の重鎖が、さらなるドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である、本発明1018~1025のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1027]
前記第1の軽鎖が、ドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLである、本発明1018~1026のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1028]
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、前記第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
本発明1018~1027のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1029]
前記デオキシリボ核酸が、単一の部位または遺伝子座で、前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、本発明1018、1020、1021および1023~1028のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1030]
前記三価の抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、前記選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されている、本発明1018~1022および1024~1029のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1031]
前記プロモータが、SV40プロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列が、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、前記選択マーカーの前記発現カセットを除いて、
前記プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、前記ターミネータは、hGTターミネータである、
本発明1018~1022および1024~1030のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1032]
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、本発明1018、1020、1021および1023~1031のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1033]
5’から3’方向の構成が第1の発現カセットとして前記第1の重鎖をコードする発現カセットを有する場合、全てのカセットが一方向に配列されている、本発明1018~1032のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1034]
5’から3’方向の構成が、前記第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、前記第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、前記第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、前記第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、前記第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、前記第2の軽鎖をコードする第6の発現カセットである場合、前記第1の発現カセット~前記第3の発現カセットが一方向に配置され、前記第4の発現カセット~前記第6の発現カセットが一方向に配置され、それにより、前記第1の発現カセット~前記第3の発現カセットが前記第4の発現カセット~前記第6の発現カセットの反対方向に配置される、本発明1017から1032のいずれかの、三価の抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1035]
二価の二重特異性抗体を製造するための方法であって、
a)前記二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)前記細胞または培養培地から前記二価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
前記二価の二重特異性抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、前記哺乳動物細胞のゲノム中に安定的に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット
を含み、
前記第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、方法。
[本発明1036]
二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸であって、5’から3’の方向に、
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット
を含み、
前記第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、デオキシリボ核酸。
[本発明1037]
5’から3’の方向に、
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における二価の二重特異性抗体の発現のための使用であって、
前記第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、使用。
[本発明1038]
組換え哺乳動物細胞であって、前記細胞のゲノムに組み込まれた二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、前記二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット
を含み、
前記第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、組換え哺乳動物細胞。
[本発明1039]
3つの異なる組換え認識配列および4つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列、
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含み、
前記第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、組成物
[本発明1040]
二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記二価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下の工程:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む前記哺乳動物細胞を提供する工程であって、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに前記第1の組換え認識配列と前記第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ前記組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された前記細胞に、3つの異なる組換え認識配列および4つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸の組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列、
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含み、
前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列は、組み込まれた前記外因性ヌクレオチド配列の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になる場合、前記1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成し、
前記第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む、導入する工程、
c)
i)b)の前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記組換え認識配列を認識する(かつ任意で、前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程
ならびに
d)前記第2の選択マーカーを発現しかつ前記二価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程
を含み、それにより、前記二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記二価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法。
[本発明1041]
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、本発明1035~1040のいずれかの、二価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1042]
前記第2の軽鎖が、VH-VL交換後のドメイン交換軽鎖VH-CH1、またはCH1-CL交換後のドメイン交換軽鎖VL-CH1である、本発明1035~1041のいずれかの、二価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1043]
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、前記第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
本発明1035~1042のいずれかの、二価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1044]
前記デオキシリボ核酸の厳密に1コピーが単一の部位または遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、本発明1035、1037、1038および1040~1043のいずれかの、二価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1045]
前記二価の二重特異性抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、前記選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されており、前記選択マーカーをコードする前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、それにより、前記プロモータ配列が、上流で前記第2の発現カセットに隣接し、前記開始コドンが、下流で前記第3の組換え認識配列に隣接し、かつ前記選択マーカーをコードする前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で前記第3の組換え認識配列に隣接し、下流で前記第3の発現カセットに隣接し、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されている、本発明1035~1039および1040~1044のいずれかの、二価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1046]
抗体鎖についての各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、ポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、かつ
前記選択マーカーをコードする各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、前記選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、
前記プロモータが、SV40プロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列が、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、前記選択マーカーの前記発現カセットを除いて、
前記プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、前記ターミネータは、hGTターミネータである、
本発明1035~1045のいずれかの、二価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1047]
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、本発明1035、1037、1038および1040~1046のいずれかの、二価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1048]
全てのカセットが一方向に配列されている、本発明1035~1047のいずれかの、二価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1049]
多価の二重特異性抗体を製造するための方法であって、
a)前記多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)前記細胞または培養培地から多価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
前記多価の二重特異性抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、前記哺乳動物細胞のゲノム中に安定的に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-前記第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含む、方法。
[本発明1050]
多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸であって、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-前記第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含む、デオキシリボ核酸。
[本発明1051]
5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-前記第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における多価の二重特異性抗体の発現のための使用。
[本発明1052]
組換え哺乳動物細胞であって、前記細胞のゲノムに組み込まれた多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、前記多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-前記第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含む、組換え哺乳動物細胞。
[本発明1053]
3つの異なる組換え認識配列および6または8つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(2)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含む、組成物。
[本発明1054]
多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記多価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下の工程:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む前記哺乳動物細胞を提供する工程であって、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに前記第1の組換え認識配列と前記第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ前記組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された前記細胞に、3つの異なる組換え認識配列および6または8つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸の組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー、
または
(2)
-第1の組換え認識配列、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ、
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列、
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、
-前記第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列が、組み込まれた前記外因性ヌクレオチド配列の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になる場合、前記1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記組換え認識配列を認識する(かつ任意で、前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程
ならびに
d)前記第2の選択マーカーを発現しかつ前記多価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程
を含み、それにより、前記多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記多価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法。
[本発明1055]
前記第1の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、前記第2の重鎖が、CH3ドメイン中に変異T366S、L368A、およびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含むか、またはその逆である、本発明1049~1054のいずれかの、多価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1056]
前記重鎖の一方が変異S354Cをさらに含み、それぞれの他方の重鎖が変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む、本発明1055の、多価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1057]
前記第1の軽鎖がドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLである、本発明1049~1056のいずれかの、多価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1058]
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第1の軽鎖可変ドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第2の重鎖可変ドメインを含み、かつ
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
本発明1049~1057のいずれかの多価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1059]
前記デオキシリボ核酸の厳密に1コピーが単一の部位または遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、本発明1049、1051、1052および1054~1058のいずれかの、多価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1060]
前記多価の二重特異性抗体をコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、前記選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されており、前記選択マーカーをコードする前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、それにより、前記プロモータ配列が、上流で前記第3の発現カセットまたは前記第4の発現カセットにそれぞれ隣接し、前記開始コドンが、下流で前記第3の組換え認識配列に隣接し、かつ前記選択マーカーをコードする前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で前記第3の組換え認識配列に隣接し、下流で前記第4の発現カセットまたは前記第5の発現カセットにそれぞれ隣接し、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されている、本発明1049~1053および1055~1059のいずれかの、多価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1061]
抗体鎖についての各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、かつ
前記選択マーカーをコードする各発現カセットが、5’から3’の方向に、プロモータ、前記選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、および任意でターミネータ配列を含み、
前記プロモータが、SV40プロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列が、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、前記選択マーカーの前記発現カセットを除いて、
前記プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、前記ターミネータは、hGTターミネータである、
本発明1049~1060のいずれかの、多価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1062]
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、本発明1049、1051、1052および1054~1061のいずれかの、多価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1063]
全ての発現カセットが一方向に配列されている、本発明1049~1062のいずれかの、多価の二重特異性抗体を製造するための方法、またはデオキシリボ核酸、または使用、または組換え哺乳動物細胞、または組成物、または組換え哺乳動物細胞を製造するための方法。
[本発明1064]
ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記ポリペプチドを分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下の工程:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む前記哺乳動物細胞を提供する工程であって、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに前記第1の組換え認識配列と前記第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ前記組換え認識配列が全て異なっており、前記哺乳動物細胞が、CreリコンビナーゼをコードするDNAを含まない、提供する工程、
b)a)で提供された前記細胞に、3つの異なる組換え認識配列および1~8つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸の組成物を導入する工程であって、
第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列、
-1つまたは複数の発現カセット、
-1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ、
第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-前記1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの3’末端部分、
-1つまたは複数の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含み
前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列は、組み込まれた前記外因性ヌクレオチド配列の前記第1の組換え認識配列~前記第3の組換え認識配列と一致しており、
前記1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になる場合、前記1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成し、
前記デオキシリボ核酸が、CreリコンビナーゼをコードするDNAを含まない、導入する工程、
c)
i)b)の前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、CreリコンビナーゼmRNAを、Creリコンビナーゼの唯一の供給源として導入する工程であって、
前記Creリコンビナーゼが、前記第1のデオキシリボ核酸および前記第2のデオキシリボ核酸の前記組換え認識配列を認識する(かつ任意で、前記1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)前記第2の選択マーカーを発現しかつ前記ポリペプチドを分泌する細胞を選択する工程
を含み、それにより、前記ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸を含みかつ前記ポリペプチドを分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法。
[本発明1065]
前記Cre mRNAが、配列番号20のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、本発明1064の方法。
[本発明1066]
前記Cre mRNAが、配列番号21のヌクレオチド配列またはそのコドン使用頻度最適化バリアントを含む、本発明1064の方法。
[本発明1067]
前記デオキシリボ核酸の厳密に1コピーが単一の部位または遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、本発明1064~1066のいずれかの方法。
[本発明1068]
前記ポリペプチドをコードする前記デオキシリボ核酸が少なくとも4つの発現カセットを含み、
-第1の組換え認識配列が、最も5’の(すなわち、第1の)発現カセットに対して5’に位置し、
-第2の組換え認識配列が、最も3’の発現カセットに対して3’に位置し、
-第3の組換え認識配列が、
-前記第1の組換え認識配列と前記第2の組換え認識配列との間、かつ
-前記発現カセットのうちの2つの間
に位置し、
かつ
組換え認識配列が全て異なっている、
本発明1064~1067のいずれかの方法。
[本発明1069]
前記ポリペプチドをコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含む、本発明1064~1068のいずれかの方法。
[本発明1070]
前記ポリペプチドをコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、前記選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンを含まないコード配列およびポリAシグナルを含み、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されている、本発明1064~1069のいずれかの方法。
[本発明1071]
Cre mRNAと第1のベクターおよび第2のベクターの混合物との重量比が、1:3~2:1の範囲内である、本発明1064~1070のいずれかの方法。
[本発明1072]
Cre mRNAと第1のベクターおよび第2のベクターの混合物との重量比が約1:5である、本発明1064~1071のいずれかの方法。
[本発明1073]
前記発現カセットのそれぞれが、5’から3’の方向に、プロモータ、コード配列、およびポリアデニル化シグナル配列、任意でそれに続くターミネータ配列を含み、
前記プロモータが、SV40プロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列が、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、前記選択マーカーの前記発現カセットを除いて、
前記プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、前記ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、前記ターミネータは、hGTターミネータである、
本発明1064~1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、本発明1064~1073のいずれかの方法。
[本発明1075]
前記ポリペプチドが、第1の抗体重鎖、第2の抗体重鎖、第1の抗体軽鎖、および第2の抗体軽鎖を含むヘテロ四量体であり、前記デオキシリボ核酸が4つの発現カセットを含み、
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、かつ
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
本発明1064~1074のいずれかの方法。
[本発明1076]
前記ポリペプチドが、第1の抗体重鎖、第2の抗体重鎖、第1の抗体軽鎖、および第2の抗体軽鎖を含むヘテロ四量体であり、前記デオキシリボ核酸が4つの発現カセットを含み、かつ
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、かつ
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
本発明1064~1074のいずれかの方法。
[本発明1077]
前記ポリペプチドが、第1の抗体重鎖、第2の抗体重鎖、第1の抗体軽鎖、および第2の抗体軽鎖を含むヘテロ四量体であり、前記デオキシリボ核酸が4つの発現カセットを含み、
-前記第1の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメイン、およびCLドメインを含み、
-前記第2の重鎖が、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
-前記第1の軽鎖が、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-前記第2の軽鎖が、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
前記第2の重鎖可変ドメインおよび前記第1の軽鎖可変ドメインが第1の結合部位を形成し、前記第1の重鎖可変ドメインおよび前記第2の軽鎖可変ドメインが第2の結合部位を形成する、
本発明1064~1074のいずれかの方法。
[本発明1078]
前記第1のリコンビナーゼ認識配列がL3であり、前記第2のリコンビナーゼ認識配列が2Lであり、前記第3のリコンビナーゼ認識配列がLoxFasである、本発明1064~1077のいずれかの方法。
[本発明1079]
標的化組込みによって組換え哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位に安定的に組み込まれる目的のポリペプチドまたはタンパク質をコードするデオキシリボ核酸を含む、前記組換え哺乳動物細胞の数を増加させるための、Cre-リコンビナーゼmRNAの使用。
[本発明1080]
前記組換え細胞が、培養培地中での培養時に前記目的のポリペプチドを前記培養培地中にさらに分泌する、本発明1079の使用。
【発明を実施するための形態】
【0223】
発明の態様の詳細な説明
本発明は、異なるポリペプチドを含む複合分子、すなわちヘテロ多量体である、三価の二重特異性抗体の発現のために、所定かつ特定の発現カセット構成を使用すると、CHO細胞等の哺乳動物細胞において三価の二重特異性抗体の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0224】
本発明は、組換えCHO細胞などの組換え哺乳動物細胞を製造するために二重リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を使用することができ、その際、所定かつ特定の発現カセット配列がゲノム中に組み込まれ、その結果として、三価の二重特異性抗体の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。この組込みは、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノムの特定の部位に引き起こされる。それによって、ヘテロ多量体三価の二重特異性抗体の異なるポリペプチドの、互いに対する発現比率を制御することが可能である。その結果として、正確に折り畳まれ組み立てられた三価の二重特異性抗体の効率的な発現、正確な組立て、および高い発現収率での成功裡な分泌が実現される。
【0225】
本発明は、異なるポリペプチドを含む複合分子、すなわちヘテロ多量体である、三価の抗体(例えば、TCB)の発現のために、所定かつ特定の発現カセット構成を使用すると、CHO細胞等の哺乳動物細胞において三価の抗体(例えば、TCB)の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0226】
本発明は、組換えCHO細胞などの組換え哺乳動物細胞を製造するために二重リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を使用することができ、その際、所定かつ特定の発現カセット配列がゲノム中に組み込まれ、その結果として、三価の抗体(例えば、TCB)の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。この組込みは、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノムの特定の部位に引き起こされる。それによって、ヘテロ多量体三価の抗体(例えば、TCB)の異なるポリペプチドの、互いに対する発現比率を制御することが可能である。その結果として、正確に折り畳まれ組み立てられた三価の抗体(例えば、TCB)の効率的な発現、正確な組立て、および高い発現収率での成功裡な分泌が実現される。
【0227】
本発明は、異なるポリペプチドを含む複合分子、すなわちヘテロ多量体である、二価の二重特異性抗体の発現のために、所定かつ特定の発現カセット構成を使用すると、CHO細胞等の哺乳動物細胞において二価の二重特異性抗体の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0228】
本発明は、組換えCHO細胞などの組換え哺乳動物細胞を製造するために二重リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を使用することができ、その際、所定かつ特定の発現カセット配列がゲノム中に組み込まれ、その結果として、二価の二重特異性抗体の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。この組込みは、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノムの特定の部位に引き起こされる。それによって、ヘテロ多量体二価の二重特異性抗体の異なるポリペプチドの、互いに対する発現比率を制御することが可能である。その結果として、正確に折り畳まれ組み立てられた二価の二重特異性抗体の効率的な発現、正確な組立て、および高い発現収率での成功裡な分泌が実現される。
【0229】
本発明は、少なくとも部分的には、例えばCre DNA(Creプラスミド)と比較して、Creリコンビナーゼの単一の供給源として、Cre mRNAを使用すると、標的化組込みによって得られるクローンの数を改善できるという知見に基づいている。より詳細には、選択期間後、CRE mRNA生成組換え細胞プールにおけるクローンの絶対数は、CREプラスミド生成組換え細胞プールよりも多いことが見出された(実施例10ならびに図2図3および図4を参照)。したがって、CREプラスミドの代わりにCRE mRNAを使用することによって、より大きなサイズおよび不均一性を有する組換え細胞プールが製造される。この理論に束縛されるものではないが、それにより、高力価および良好な生成物品質を有する組換え細胞クローンを特定する確率が増加すると想定される。さらに、CRE mRNA生成プールからの組換え細胞クローンの数の増加は、CREプラスミド生成細胞プールと比較して安定である。
【0230】
I.定義
本発明を実施するための有用な方法および技術は、例えば、Ausubel,F.M.(ed.),Current Protocols in Molecular Biology,Volumes I to III(1997);Glover,N.D.,and Hames,B.D.,ed.,DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(1985),Oxford University Press;Freshney,R.I.(ed.),Animal Cell Culture-a practical approach,IRL Press Limited(1986);Watson,J.D.,et al.,Recombinant DNA,Second Edition,CHSL Press(1992);Winnacker,E.L.,From Genes to Clones;N.Y.,VCH Publishers(1987);Celis,J.,ed.,Cell Biology,Second Edition,Academic Press(1998);Freshney,R.I.,Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,second edition,Alan R.Liss,Inc.,N.Y.(1987)に記載されている。
【0231】
組換えDNA技術の使用は、核酸の誘導体生成を可能にする。このような誘導体は、例えば、置換、変更、交換、欠失または挿入によって、個々のまたはいくつかのヌクレオチド位置で修飾することができる。修飾または誘導体化は、例えば、部位特異的突然変異誘発によって行うことができる。そのような改変は、当業者によって容易に実施され得る(例えば、Sambrook,J.,et al.,Molecular Cloning:A laboratory manual(1999)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,USA;Hames,B.D.,and Higgins,S.G.,Nucleic acid hybridization-a practical approach(1985)IRL Press,Oxford,England参照)。
【0232】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のこのような細胞および当業者に公知のその均等物などを含む。同様に、「a」(または「an」)、「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では相互交換可能に使用することができる。また、「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する」という用語は、相互交換可能に使用することができることにも留意されたい。
【0233】
「約」という用語は、その後に続く数値の±20%の範囲を表す。一実施形態において、約という用語は、その後に続く数値の±10%の範囲を表す。一実施形態において、約という用語は、その後に続く数値の±5%の範囲を表す。
【0234】
用語「Cre-リコンビナーゼ」は、LoxP部位間でトポイソメラーゼI様機構を使用して部位特異的リコンビナーゼを触媒するチロシンリコンビナーゼを意味する。酵素の分子量は約38kDaであり、343アミノ酸残基からなる。これはインテグラーゼファミリーのメンバーである。Creリコンビナーゼは、以下のアミノ酸配列:
を有し、Cre mRNAは、以下の配列:
またはそのコドン最適化バリアントを含む。
【0235】
「含む(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」という用語も包含する。
【0236】
本明細書で使用される「CD20-TCB」という用語は、CD20標的化TCB(CD20-TCB;RG6026;TCBフォーマットの抗CD3/CD20抗体)を意味し、これは、以前に特徴付けられた2:1TCB分子フォーマットにおいて、CD20への高結合活性二価結合ならびにBおよびT細胞結合ドメインの頭尾配向によって可能にされる長い半減期および高い効力を有する(例えば、Bacac,M.,et al.,Clin.Cancer Res.22(2016)3286-3297;Bacac,M.,et al.,Oncoimmunology 5(2016)e1203498参照)。
【0237】
用語「外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞」は、そのような細胞の子孫を含めて、1つまたは複数の外因性核酸が導入され、かつその後の遺伝子修飾のための開始点になることが目的とされる細胞を、包含する。したがって、用語「外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞」は、哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む細胞を包含し、この外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する、少なくとも1つの第1の組換え認識配列および少なくとも1つの第2の組換え認識配列(これらのリコンビナーゼ認識配列は異なる)を含む。一実施形態において、外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞は、宿主細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む細胞であり、この外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列は全て異なっている。
【0238】
本明細書で使用される用語「核局在化配列」は、正に荷電したアミノ酸残基のアルギニンまたは/およびリジンの複数のコピーを含むアミノ酸配列を表す。前記配列を含むポリペプチドは、細胞核に導入するために細胞によって同定される。例示的な核局在化配列は、PKKKRKV(配列番号33;SV40ラージT抗原)、KR[PAATKKAGQA]KKKK(配列番号34、SV40ヌクレオプラスミン)、MSRRRKANPTKLSENAKKLAKEVEN(配列番号35;線虫(Caenorhabditis elegans)EGL-13)、PAAKRVKLD(配列番号36、ヒトc-myc)、KLKIKRPVK(配列番号37、大腸菌末端利用物質タンパク質)である。他の核局在化配列は、当業者によって容易に同定され得る。
【0239】
本明細書において使用される場合、用語「組換え細胞」は、最終的な遺伝子修飾後の細胞、例えば、目的のポリペプチドを発現し、前記目的のポリペプチドの任意の規模での生産のために使用できる細胞を意味する。例えば、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)に供され、それによって目的のポリペプチドのコード配列が宿主細胞のゲノム中に導入された「外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞」は、「組換え細胞」である。この細胞は、さらにRMCE反応を行うことが依然としてできるが、そうすることは目的ではない。
【0240】
用語「LoxP部位」は、末端にある2つのパリンドロームの13bp配列(それぞれ、ATAACTTCGTATA(配列番号22)およびTATACGAAGTTAT(配列番号23))および中央の8bpコア(対称ではない)スペーサー配列からなる長さ34bpのヌクレオチド配列を表す。コアスペーサー配列は、LoxP部位の配向を決定する。互いに対するLoxP部位の相対的な配向および位置に応じて、介在するDNAは、切り取られる(同じ方向に配向されたLoxP部位)か、または反転される(反対方向に配向されたLoxP部位)。用語「loxPが導入された(floxed)」は、2つのLoxP部位の間に位置するDNA配列を意味する。2つのloxPが導入された配列、すなわちゲノム中に標的のloxPが導入された配列およびドナー核酸中にloxPが導入された配列が存在する場合、両方の配列を互いに交換することができる。これは「リコンビナーゼ媒介カセット交換」と呼ばれる。
【0241】
例示的なLoxP部位を以下の表に示す:
【0242】
「外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞」および「組換え細胞」はどちらも、「形質転換細胞」である。この用語は、継代の回数に関わらず、初代形質転換細胞も、それに由来する子孫も含む。子孫は、例えば、親細胞と完全に同一の核酸含量でない場合があるが、変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有している変異子孫が包含される。
【0243】
「単離された」組成物は、自然環境の構成成分から分離されたものである。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動、CE-SDS)またはクロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、またはイオン交換もしくは逆相HPLC)によって、95%または99%超の純度と決定されるまで精製される。抗体の純度を評価するための方法の概説については、例えば、Flatman,S.et al.,J.Chrom.B 848(2007)79-87を参照されたい。
【0244】
「単離された」核酸は、その天然環境の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離された核酸には、通常核酸分子を含む細胞内に含まれる核酸分子が含まれるが、核酸分子は、染色体外、または天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0245】
「単離された」ポリペプチドまたは抗体は、自然環境の構成成分から分離された、ポリペプチド分子または抗体分子を指す。
【0246】
用語「組込み部位」は、外因性ヌクレオチド配列が挿入される、細胞ゲノム内の核酸配列を意味する。特定の実施形態において、組込み部位は、細胞ゲノム中の隣り合う2つのヌクレオチドの間にある。特定の実施形態において、組込み部位は、ヌクレオチド配列の伸長部を含む。特定の実施形態において、組込み部位は、哺乳動物細胞のゲノムの特定の遺伝子座内に位置している。特定の実施形態において、組込み部位は、哺乳動物細胞の内在性遺伝子内にある。
【0247】
相互交換可能に使用することができる「ベクター」または「プラスミド」という用語は、本明細書で使用される場合、連結された別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクターならびに、ベクターが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターも含む。特定のベクターは、作動可能に連結された核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターを、本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。
【0248】
用語「結合する」は、その標的への結合部位の結合を表す。例えば、それぞれの抗原への、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインを含む抗体結合部位の結合である。この結合は、例えば、BIAcore(登録商標)アッセイ(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)を使用して測定することができる。すなわち、用語「(抗原への)結合」は、インビトロアッセイにおける、抗原(複数可)への抗体の結合を表す。一実施形態において、結合は、抗体が表面に結合しており、かつ抗体への抗原の結合が表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される結合アッセイにおいて決定される。結合とは、例えば、10-8M以下、いくつかの実施形態において10-13~10-8M、いくつかの実施形態において10-13~10-9Mの結合親和性(K)を意味する。用語「結合する」は、用語「特異的に結合する」も含む。
【0249】
例えば、BIAcore(登録商標)アッセイの1つの可能な実施形態では、抗原を表面に結合させ、抗体の結合、すなわちその結合部位(複数可)が、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される。結合の親和性は、用語k(会合定数:複合体を形成するための会合の速度定数)、k(解離定数、複合体の解離のための速度定数)、およびK(k/k)によって定義される。あるいは、SPRセンサーグラムの結合シグナルを、共鳴シグナルの高さおよび解離挙動に関して、参照の応答シグナルと直接比較することができる。
【0250】
用語「結合部位」という用語は、標的への結合特異性を示す任意のタンパク質性実体を表す。これは、例えば、受容体、受容体リガンド、アンチカリン、アフィボディ、抗体等であり得る。したがって、本明細書で使用される用語「結合部位」は、第2のポリペプチドに特異的に結合することができるか、またはそれによって特異的に結合されることができるポリペプチドを表す。
【0251】
本明細書で使用される場合、用語「選択マーカー」は、対応する選択剤の存在下で、ある遺伝子を保持する細胞が特異的に選択されるか、または特異的に排除されることを可能にする遺伝子を表す。例えば、限定するものではないが、選択マーカーは、選択マーカー遺伝子で形質転換された宿主細胞が、それぞれの選択剤の存在下で積極的に選択されることを可能にすることができ(選択的培養条件)、形質転換されていない宿主細胞は、選択的培養条件下で増殖または生存することができない。選択マーカーは、陽性、陰性、または二機能性であり得る。陽性選択マーカーは、マーカーを保持する細胞の選択を可能にすることができるのに対し、陰性選択マーカーは、マーカーを保持する細胞を選択的に排除することを可能にし得る。選択マーカーは、薬剤耐性を付与し、または宿主細胞の代謝的もしくは異化的欠陥を補い得る。原核細胞では、とりわけ、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、またはクロラムフェニコールに対する耐性を付与する遺伝子が使用され得る。真核細胞の選択マーカーとして有用な耐性遺伝子としては、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシンおよびG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンテターゼ(GS)、アスパラギンシンテターゼ、トリプトファンシンテターゼ(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)の遺伝子、ならびにピューロマイシン、ブラストサイジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、ゼオシン、およびマイコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。さらなるマーカー遺伝子は、国際公開第92/08796号および国際公開第94/28143号に記載されている。
【0252】
対応する選択剤の存在下での選択を容易にすることを超えて、選択マーカーは、別法として、普通は細胞に存在しない分子、例えば、緑色蛍光性タンパク質(GFP)、高感度GFP(eGFP)、合成GFP、黄色蛍光性タンパク質(YFP)、高感度YFP(eYFP)、シアン蛍光性タンパク質(CFP)、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed単量体、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、mCFPm、Cerulean、およびT-Sapphireであってよい。例えば、コードされるポリペプチドが発する蛍光の検出または不在にそれぞれ基づいて、そのような分子を発現する細胞を、この遺伝子を内部に持たない細胞と区別することができる。
【0253】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、2つ以上の構成要素の並置を指し、構成要素は、意図される様式で機能することを可能する関係にある。例えば、プロモータおよび/またはエンハンサーがコード配列の転写を調節するように作用する場合、プロモータおよび/またはエンハンサーは、コード配列に作動可能に連結されている。特定の実施形態において、「作動可能に連結された」DNA配列は、単一の染色体上で近接し、隣接している。特定の実施形態において、例えば、分泌リーダーおよびポリペプチドなどの2つのタンパク質をコードする領域を結合する必要がある場合、配列は、連続して隣接し、同じリーディングフレーム内に存在する。特定の実施形態において、作動可能に連結されたプロモータは、コード配列の上流に位置し、それに隣接し得る。特定の実施形態において、例えば、コード配列の発現を調節するエンハンサー配列に関して、2つの構成要素は隣接していなくても、作動可能に連結され得る。エンハンサーは、コード配列の転写を増加させる場合、エンハンサーは、コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されエンハンサーは、コード配列の上流、その中、または下流に位置し得、またコード配列のプロモータから相当な距離を置いて位置し得る。作動可能な連結は、当技術分野で公知の組換え法によって、例えば、PCR法を使用して、および/または都合の良い制限部位でのライゲーションによって達成され得る。都合の良い制限部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、従来の方法に従って使用し得る。内部リボソーム侵入部位(IRES)が、5’末端に非依存的な方法により内部位置でORFの翻訳を開始できる場合、IRESは、オープン・リーディング・フレーム(ORF)に作動可能に連結されている。
【0254】
本明細書において使用される場合、用語「隣接する」は、第1のヌクレオチド配列が第2のヌクレオチド配列の5’末端もしくは3’末端のいずれか、または両末端に位置していることを意味する。隣接するヌクレオチド配列は、第2のヌクレオチド配列に隣接するか、または第2のヌクレオチド配列から規定の距離にあり得る。隣接するヌクレオチド配列の長さに、具体的な制限はない。例えば、隣接配列は、数塩基対または数千塩基対であり得る。
【0255】
本明細書において使用される場合、用語「外因性」は、あるヌクレオチド配列が特定の細胞に由来せず、DNA送達法、例えば、トランスフェクション法、エレクトロポレーション法、または形質転換法によって前記細胞に導入されることを示す。したがって、外因性ヌクレオチド配列は人工配列であり、この人工物は、例えば、起源が異なる部分配列の組合せ(例えば、SV40プロモータを有するリコンビナーゼ認識配列と緑色蛍光性タンパク質のコード配列との組合せは、人工核酸である)から、または配列(例えば、膜結合型受容体の細胞外ドメインのみをコードする配列もしくはcDNA)の部分的な欠失もしくは核酸塩基の突然変異から、生じ得る。用語「内在性」は、細胞に由来するヌクレオチド配列を意味する。「外因性」ヌクレオチド配列は、塩基組成が同一である「内在性」対応物を有し得るが、「外因性」配列は、例えば組換えDNA技術によって細胞に導入されている。
【0256】
抗体
ヒト免疫グロブリンの軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関連する一般的な情報は、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に示されている。
【0257】
用語「重鎖」は、本明細書においてその元の意味で使用される、すなわち、抗体を形成する4つのポリペプチド鎖の2つのより大きなポリペプチド鎖を表す(例えば、Edelman,G.M.and Gally J.A.,J.Exp.Med.116(1962)207-227参照)。この文脈における、用語「より大きい」は、分子量、長さおよびアミノ酸数のいずれかを指していてもよい。用語「重鎖」は、その中に存在する個々の抗体ドメインの配列および数から独立している。それは、それぞれのポリペプチドの分子量に基づいてのみ割り当てられる。
【0258】
用語「軽鎖」は、本明細書においてその元の意味で使用される、すなわち、抗体を形成する4つのポリペプチド鎖の2つのより小さいポリペプチド鎖を表す(例えば、Edelman,G.M.and Gally J.A.,J.Exp.Med.116(1962)207-227参照)。この文脈における、用語「より小さい」は、分子量、長さおよびアミノ酸数のいずれかを指していてもよい。用語「軽鎖」は、その中に存在する個々の抗体ドメインの配列および数から独立している。それは、それぞれのポリペプチドの分子量に基づいてのみ割り当てられる。
【0259】
本明細書において使用される場合、重鎖および軽鎖の全ての定常領域およびドメインのアミノ酸位置は、Kabat,ら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)において説明されるKabatナンバリングシステムによりナンバリングされ、本明細書では「Kabatによるナンバリング」と称される。具体的には、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のKabatナンバリングシステム(647~660ページを参照されたい)は、カッパアイソタイプおよびラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用し、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のKabat EUインデックスナンバリングシステム(661~723ページを参照されたい)は、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2およびCH3であって、本明細書では、この場合には、「Kabat EUインデックスによるナンバリング」を参照することによってさらに明確にしている)に使用される。
【0260】
本明細書において、用語「抗体」は、最も広義に使用され、全長抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体-抗体フラグメント-融合体を含む様々な抗体構造を包含するが、これらに限定されない。
【0261】
用語「ネイティブ抗体」は、種々の構造を有する天然に生じる免疫グロブリン分子を指す。例えば、ネイティブIgG抗体は、2本の同一の軽鎖と2本の同一の重鎖がジスルフィド結合したものを含む、約150,000ダルトンのヘテロテトラメリック糖タンパク質である。各重鎖は、N末端からC末端に向かって、重鎖可変領域(VH)と、それに続く3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)を有し、これによって、第1の重鎖定常ドメインと第2の重鎖定常ドメインとの間にヒンジ領域が位置する。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と、それに続く軽鎖定常ドメイン(CL)とを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ(カッパ)、λ(ラムダ)と呼ばれる2種類のいずれかに割り当てられてもよい。
【0262】
「全長抗体」という用語は、ネイティブ抗体に実質的に類似した構造を有する抗体を表す。完全長抗体は、N末端からC末端の方向に、可変領域および定常ドメインをそれぞれ含む2つ以上の完全長抗体軽鎖、ならびにN末端からC末端方向に、可変領域、第1の定常ドメイン、ヒンジ領域、第2の定常ドメイン、および第3の定常ドメインをそれぞれ含む2つの完全長抗体重鎖を含む。ネイティブ抗体とは対照的に、完全長抗体は、さらなる免疫グロブリンドメイン、例えば1つまたは複数のさらなるscFv、または重鎖もしくは軽鎖Fabフラグメント、または完全長抗体の異なる鎖の末端の1つまたは複数にコンジュゲートされたscFabを含み得るが、各末端には単一のフラグメントのみを含み得る。これらのコンジュゲートもまた、全長抗体という用語により包含される。
【0263】
用語「抗体結合部位」は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの対を表す。抗原への適切な結合を確実にするために、これらの可変ドメインは同族可変ドメインであり、すなわち共に属する。抗体、結合部位は、少なくとも3つのHVR(例えば、VHHの場合)または3~6つのHVR(例えば、天然に存在する、すなわち、VH/VL対を有する従来の抗体の場合)を含む。一般的に、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基が、結合部位を形成している。これらの残基は通常、抗体重鎖可変ドメインに対応する抗体軽鎖可変ドメインの対に含まれる。抗体の抗原結合部位は、「超可変領域」または「HVR」からのアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」または「FR」領域は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。したがって、抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインは、N末端からC末端に向けて、領域FR1、HVR1、FR2、HVR2、FR3、HVR3、およびFR4を含む。特に、重鎖可変ドメインのHVR3領域は、抗原結合に最も寄与し、抗体の結合特異性を定義する領域である。「機能的結合部位」は、その標的に特異的に結合することができる。用語「特異的に結合する」は、インビトロアッセイにおいて、標的への結合部位の結合を表し、一実施形態では、結合アッセイにおいてである。そのような結合アッセイは、結合イベントが検出され得る限り、任意のアッセイであり得る。例えば、抗体を表面に結合させ、抗体への抗原(複数可)の結合が表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、結合アッセイである。あるいは、ブリッジングELISAを使用することができる。
【0264】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、超可変的な配列(「相補性決定領域」または「CDR」)であり、および/または構造的に定義されるループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有するアミノ酸残基ストレッチを含む、抗体可変ドメインのそれぞれの領域を指す。一般的に、抗体は、6つのHVRを含み、重鎖可変ドメインVHに3つ(H1、H2、H3)、軽鎖可変ドメインVLに3つ(L1、L2、L3)である。
【0265】
HVRには、次のものが含まれる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)に生じる超可変ループ(Chothia,C.and Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.196(1987)901-917)、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3)に生じるCDR(Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242)、
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、および93~101(H3)に生じる抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))、ならびに
(d)アミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、および94~102(H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
【0266】
別段の指示がない限り、HVR残基および可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、Kabat et al.に従ってナンバリングされている。
【0267】
抗体の「クラス」は、定常ドメインまたは定常領域、好ましくは重鎖が持つFc領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラスがあり、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分ける場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0268】
用語「重鎖定常領域」は、定常ドメインを含む免疫グロブリン重鎖の領域、すなわちネイティブ免疫グロブリンの場合はCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメイン、または完全長免疫グロブリンの場合は第1の定常ドメイン、ヒンジ領域、第2の定常ドメインおよび第3の定常ドメインを示す。一実施形態において、ヒトIgG重鎖定常領域は、Ala118から重鎖のカルボキシル末端Ala118(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)に及ぶ。しかしながら、定常領域のC末端リジン(Lys447)は、存在していても、または存在していなくてもよい(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。用語「定常領域」は、鎖間ジスルフィド結合を形成するヒンジ領域システイン残基を介して互いに共有結合することができる2つの重鎖定常領域を含む二量体を示す。
【0269】
用語「重鎖Fc領域」は、ヒンジ領域(中間および下部ヒンジ領域)、第2の定常ドメイン、例えばCH2ドメイン、および第3の定常ドメイン、例えばCH3ドメインの少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を示す。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Asp221またはCys226またはPro230から重鎖のカルボキシル末端に及ぶ(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。このため、Fc領域は、定常領域よりも小さいが、同一のC末端部にある。しかしながら、重鎖領域のC末端リジン(Lys447)は、存在していても、または存在していなくてもよい(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。用語「Fc領域」は、鎖間ジスルフィド結合を形成するヒンジ領域システイン残基を介して互いに共有結合することができる2つの重鎖Fc領域を含む二量体を示す。
【0270】
抗体の定常領域、より正確にはFc領域(および同様の定常領域)は、補体活性化、C1q結合、C3活性化およびFc受容体結合に直接関与する。補体系に対する抗体の影響は、特定の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fc領域における規定の結合部位によって引き起こされる。このような結合部位は、先行技術で公知であり、例えば、Lukas,T.J.,et al.,J.Immunol.127(1981)2555-2560;Brunhouse,R.,and Cebra,J.J.,Mol.Immunol.16(1979)907-917;Burton,D.R.,et al.,Nature 288(1980)338-344;Thommesen,J.E.,et al.,Mol.Immunol.37(2000)995-1004;Idusogie,E.E.,et al.,J.Immunol.164(2000)4178-4184;Hezareh,M.,et al.,J.Virol.75(2001)12161-12168;Morgan,A.,et al.,Immunology 86(1995)319-324、および欧州特許第0 307 434号に記載されている。このような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331およびP329(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)である。サブクラスIgG1、IgG2、およびIgG3の抗体は通常、補体活性化、C1q結合、およびC3活性化を示すのに対し、IgG4は、補体系を活性化せず、C1qと結合せず、C3を活性化しない。「抗体のFc領域」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて規定される。
【0271】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、および/または同じエピトープに結合するが、例えば、自然発生突然変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、起こり得る変異型抗体は例外であり、かかる変異型は一般的に少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない種々の技術によって作製されてもよい。
【0272】
用語「価数」は、本出願で使用される場合、抗体内の特定数の結合部位の存在を示す。したがって、用語「二価」、「四価」および「六価」は、抗体中に、それぞれ2つの結合部位、4つの結合部位、および6つの結合部位の存在を表す。
【0273】
「単一特異性抗体」は、すなわち、1つの抗原に対して得意的に結合する、単一の結合特異性を有する抗体を示す。単一特異性抗体を、完全長抗体もしくは抗体フラグメント(例えば、F(ab’))またはそれらの組合せ(例えば、完全長抗体と追加のscFvまたはFabフラグメント)として調製することができる。単一特異性抗体は、一価である必要はない。すなわち、単一特異性抗体は、1つの抗原に特異的に結合する2つ以上の結合部位を含んでもよい。例えば、天然型の抗体は、単一特異性であるが二価である。
【0274】
「多重特異性抗体」は、同じ抗原または2つの異なる抗原上の少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体を表す。多重特異性抗体を、完全長抗体もしくは抗体フラグメント(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)またはそれらの組合せ(例えば、完全長抗体と追加のscFvまたはFabフラグメント)として調製することができる。多重特異性抗体は、少なくとも二価である。すなわち、2つの抗原結合部位を含む。また、多重特異性抗体は、少なくとも二重特異性である。したがって、三価の二重特異性抗体は、多重特異性抗体の最も単純な形態である。2つ、3つまたはより多く(例えば、4つ)の機能的な抗原結合部位を有する操作された抗体が報告されている(例えば、米国特許出願公開第2002/0004587号を参照)。
【0275】
特定の実施形態において、抗体は、多重特異性抗体、例えば、少なくとも二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原またはエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、結合特異性の一方は、第1の抗原に対するものであり、他方は、異なる第2の抗原に対するものである。特定の実施形態において、多重特異性抗体は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。多重特異性抗体を使用して、抗原を発現する細胞に細胞毒性剤を局在化させることもできる。
【0276】
多重特異性抗体を作製するための技術には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein,C.and Cuello,A.C.,Nature 305(1983)537-540、国際公開第93/08829号およびTraunecker,A.,et al.,EMBO J.10(1991)3655-3659参照)および「ノブインホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号明細書を参照)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電的ステアリング効果の操作(国際公開第2009/089004号)、2つ以上の抗体またはフラグメントを架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennan,M.,et al.,Science、229(1985)81-83を参照)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を製造すること(例えば、Kostelny,S.A.,et al.,J.Immunol.148(1992)1547-1553を参照;二重特異性抗体フラグメントを作製するための特定の技術を使用すること(例えば、Holliger,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)6444-6448を参照)、および一本鎖Fv(scFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber,M.,et al.,J.Immunol.152(1994)5368-5374を参照、および、例えば、Tutt,A.,et al.,J.Immunol.147(1991)60-69)に記載されるような三重特異性抗体を調製することによっても作製され得る。
【0277】
抗体またはフラグメントはまた、国際公開第2009/080251号、国際公開第2009/080252号、国際公開第2009/080253号、国際公開第2009/080254号、国際公開第2010/112193号、国際公開第2010/115589号、国際公開第2010/136172号、国際公開第2010/145792号または国際公開第2010/145793号に記載されている多重特異性抗体であり得る。
【0278】
抗体またはそのフラグメントは、国際公開第2012/163520号に開示されている多重特異性抗体でもあり得る。
【0279】
二重特異性抗体は、一般に、同じ抗原上の2つの異なる重複しないエピトープまたは異なる抗原上の2つのエピトープに特異的に結合する抗体分子である。
【0280】
この文脈における、用語「非重複」は、二重特異性Fabの第1のパラトープ内に含まれるアミノ酸残基が第2のパラトープ内に含まれず、二重特異性Fabの第2のパラトープ内に含まれるアミノ酸が第1のパラトープ内に含まれないことを示す。
【0281】
「ノブ・イントゥー・ホール」二量体化モジュールおよび抗体操作におけるその使用は、Carter P.;Ridgway J.B.B.;Presta L.G.:Immunotechnology,Volume 2,Number 1,February 1996,pp.73-73(1)に記載されている。
【0282】
抗体の重鎖のCH3ドメインを、「ノブ・イントゥー・ホール」技術によって改変することができる。例えば、国際公開第96/027011号、Ridgway,J.B.,et al.,Protein Eng.9(1996)617-621、およびMerchant,A.M.,et al.,Nat.Biotechnol.16(1998)677-681に、いくつかの例を伴って詳細に記載されている。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用表面を改変して、これら2つのCH3ドメインのヘテロ二量体化を増加させ、それによってそれらを含むポリペプチドのヘテロ二量体化を増加させる。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインのそれぞれは「ノブ」であることができ、他方は「ホール」である。ジスルフィドブリッジの導入はさらに、ヘテロ二量体を安定化させ(Merchant,A.M.,et al.,Nature Biotech.16(1998)677-681;Atwell,S.,et al.,J.Mol.Biol.270(1997)26-35)、収率を増加させる。
【0283】
(抗体重鎖の)CH3ドメインの変異T366Wは、「ノブ変異」または「変異ノブ」として表され、(抗体重鎖の)CH3ドメインの変異T366S、L368A、Y407Vは、「ホール変異」または「変異ホール」として表される(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)。CH3ドメイン間の追加の鎖間ジスルフィド架橋(Merchant,A.M.ら、Nature Biotech.16(1998)677-681)も、例えば、「ノブ変異」を有する重鎖のCH3ドメインにS354C変異を導入(「ノブ-cys-変異」または「変異ノブ-cys」と表記)すること、および「ホール変異」を有する重鎖のCH3ドメインにY349C変異を導入(「ホール-cys-変異」または「変異ホール-cys」と表記)することにより、使用できる(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)。
【0284】
「ドメインクロスオーバー」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体重鎖VH-CH1フラグメントとその対応する同族の抗体軽鎖との対において、すなわち抗体Fab(フラグメント-抗原結合)において、少なくとも1つの重鎖ドメインが、対応する軽鎖ドメインによって置換されている、もしくはその逆、という点について、ドメイン配列がネイティブ抗体の配列から逸脱していることを表す。ドメインクロスオーバーは、一般的に3種類あり、(i)CH1ドメインおよびCLドメインのクロスオーバーであって、軽鎖中のドメインクロスオーバーによってVL-CH1ドメイン配列がもたらされ、重鎖フラグメント中のドメインクロスオーバーによってVH-CLドメイン配列(またはVH-CL-ヒンジ-CH2-CH3ドメイン配列を有する完全長抗体重鎖)がもたらされるもの、(ii)VHドメインおよびVLドメインのドメインクロスオーバーであって、軽鎖中のドメインクロスオーバーによってVH-CLドメイン配列がもたらされ、重鎖フラグメント中のドメインクロスオーバーによってVL-CH1ドメイン配列がもたらされるもの、ならびに(iii)完全な軽鎖(VL-CL)および完全なVH-CH1重鎖フラグメントのドメインクロスオーバー(「Fabクロスオーバー」)であって、ドメインクロスオーバーによってVH-CH1ドメイン配列を有する軽鎖がもたらされ、ドメインクロスオーバーによってVL-CLドメイン配列を有する重鎖フラグメントがもたらされるもの(上述の全てのドメイン配列は、N末端からC末端への方向で示されている)がある。
【0285】
本明細書で使用される場合、対応する重鎖ドメインおよび軽鎖ドメインに関して「互いに置き換えられた」という用語は、上述のドメインクロスオーバーを指す。そのため、CH1ドメインおよびCLドメインが「互いに置き換えられた」場合、用語は、項目(i)の下で言及されたドメインクロスオーバー、ならびに結果として生じる重鎖および軽鎖ドメイン配列を指す。したがって、VHおよびVLが「互いに置換された」場合、用語は、項目(ii)の下で言及されたドメインクロスオーバーを指し、またCH1ドメインおよびCLドメインが「互いに置換され」、かつVHドメインおよびVLドメインが「互いに置換された」場合、用語は、項目(iii)の下で言及されたドメインクロスオーバーを指す。ドメインクロスオーバーを含む二重特異性抗体は、例えば、国際公開第2009/080251号、国際公開第2009/080252号、国際公開第2009/080253号、国際公開第2009/080254号、およびSchaefer,W.,et al,Proc.Natl.Acad.Sci USA 108(2011)11187-11192において報告されている。このような抗体は、一般的にCrossMabと呼ばれる。
【0286】
多重特異性抗体はまた、一実施形態において、上記の項目(i)で述べたCH1ドメインおよびCLドメインのドメインクロスオーバー、または上記の項目(ii)で述べたVHおよびVLドメインのドメインクロスオーバー、または上記の項目(iii)で述べたVH-CH1およびVL-VLドメインのドメインクロスオーバーのいずれかを含む、少なくとも1つのFabフラグメントを含む。ドメインクロスオーバーを伴う多重特異性抗体の場合、同じ抗原(複数可)に特異的に結合するFabは、同じドメイン配列であるように構築される。そのため、ドメインクロスオーバーを伴う2つ以上のFabが、多重特異性抗体に含まれる場合、前記Fab(複数可)は、同じ抗原に特異的に結合する。
【0287】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基、およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む抗体を指す。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むものであり、それにおいて、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに相当し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は、必要に応じて、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0288】
用語「組換え抗体」は、本明細書において使用される場合、組換え手段、例えば組換え細胞により調製、発現、作製または単離された全ての抗体(キメラ、ヒト化およびヒト)を表す。これには、例えば、NS0、HEK、BHKまたはCHO細胞等の組換え細胞から単離された抗体が含まれる。
【0289】
本明細書で使用される場合、用語「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指し、すなわちそれは、機能的なフラグメントである。抗体フラグメントの例としては、以下に限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、二重特異性Fab、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFvまたはscFab)が挙げられる。
【0290】
本明細書で使用される場合、用語「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指し、すなわちそれは、機能的なフラグメントである。抗体フラグメントの例としては、以下に限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、二重特異性Fab、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFvまたはscFab)が挙げられる。
【0291】
II.組成物および方法
通常、例えば治療用ポリペプチドのような目的のポリペプチドの組換え大量生産のためには、前記ポリペプチドを安定に発現し分泌する細胞が必要とされる。この細胞は、「組換え細胞」または「組換え生産細胞」と呼ばれ、このような細胞を作製するために使用される方法は「細胞株開発」と呼ばれる。細胞株開発方法の第1の工程において、例えばCHO細胞などの適切な宿主細胞に、前記目的のポリペプチドの発現に適した核酸配列をトランスフェクトする。第2の工程において、目的のポリペプチドを安定に発現する細胞を、目的のポリペプチドをコードする核酸と共にコトランスフェクトしておいた選択マーカーの共発現に基づいて選択する。
【0292】
ポリペプチドをコードする核酸、すなわちコード配列は、構造遺伝子と呼ばれる。このような構造遺伝子は単純な情報であり、その発現には追加の制御エレメントが必要とされる。したがって、普通は、構造遺伝子は発現カセットに組み込まれる。発現カセットが哺乳動物細胞において機能的となるために必要とされる最小限の制御エレメントは、構造遺伝子の上流、すなわち5’に位置する、前記哺乳動物細胞において機能的なプロモータ、および構造遺伝子の下流、すなわち3’に位置する、前記哺乳動物細胞において機能的なポリアデニル化シグナル配列である。プロモータ配列、構造遺伝子配列、およびポリアデニル化シグナル配列は、作動可能に連結された形態で並べられる。
【0293】
目的のポリペプチドが、互いに異なる(単量体)ポリペプチドから構成されるヘテロ多量体ポリペプチドであるならば、1つの発現カセットだけでなく、含まれる構造遺伝子が異なる多数の発現カセット、すなわち、ヘテロ多量体ポリペプチドの異なる(単量体)ポリペプチドのそれぞれについて少なくとも1つの発現カセットが必要とされる。例えば、完全長抗体は、軽鎖の2個のコピーおよび重鎖の2個のコピーを含むヘテロ多量体ポリペプチドである。したがって、完全長抗体は、2つの異なるポリペプチドから構成される。したがって、完全長抗体の発現のためには2つの発現カセット、すなわち軽鎖のための1個および重鎖のための1個が必要とされる。例えば、完全長抗体が二重特異性抗体である、すなわち抗体が、2つの異なる抗原に特異的に結合する2つの異なる結合部位を含む場合、軽鎖同士も互いに異なり、重鎖同士も互いに異なる。したがって、このような二重特異性完全長抗体は、4つの異なるポリペプチドから構成され、4つの発現カセットが必要とされる。
【0294】
目的のポリペプチドのための発現カセット(複数可)は、いわゆる「発現ベクター」に順に組み込まれる。「発現ベクター」は、細菌細胞中で前記ベクターを増幅し、かつ含まれる構造遺伝子(複数可)を哺乳動物細胞中で発現させるのに必要とされる全てのエレメントを提供する核酸である。典型的には、発現ベクターは、例えば大腸菌の場合、複製開始点および原核生物選択マーカー、さらには真核生物選択マーカー、ならびに目的の構造遺伝子(複数可)の発現に必要とされる発現カセットを含む、原核生物プラスミド増殖単位を含む。「発現ベクター」は、哺乳動物細胞に発現カセットを導入するための輸送運搬体である。
【0295】
前述の段落で概説したように、発現しようとするポリペプチドが複雑であるほど、必要とされる異なる発現カセットの数もまた多くなる。本質的に、発現カセットの数と共に、宿主細胞のゲノム中に組み込まれる核酸のサイズも大きくなる。同時に、発現ベクターのサイズも大きくなる。しかし、ベクターのサイズの実用的な上限は約15kbpの範囲にあり、それを上回ると、操作および処理の効率が著しく落ちる。この問題は、2つ以上の発現ベクターを用いることによって対処することができる。それによって、発現カセットを、発現カセットの一部のみをそれぞれ含む異なる発現ベクター間で分け合うことができる。
【0296】
従来の細胞株開発(CLD)は、目的のポリペプチド(SOI)のための発現カセットを有するベクターのランダムな組込み(RI)に依拠している。一般的に、ランダムな手法によってベクターがトランスフェクトされる場合、いくつかのベクターまたはそのフラグメントが細胞ゲノム中に組み込まれる。したがって、RIに基づくトランスフェクションプロセスは、予測不可能である。
【0297】
このようにして、異なる発現ベクター間で発現カセットを分け合うことでサイズの問題に対処することにより、新たな問題(組み込まれる発現カセットのランダムな数およびその空間的分布)が生じる。
【0298】
通常、構造遺伝子の発現用の発現カセットが細胞ゲノム中により多く組み込まれるほど、発現される各ポリペプチドの量は多くなる。組み込まれる発現カセットの数の他に、組込みの部位および遺伝子座も発現収率に影響を与える。例えば、発現カセットが、細胞ゲノム中の転写活性が低い部位に組み込まれる場合、コードされたポリペプチドはごく少量しか発現されない。しかし、同じ発現カセットが、細胞ゲノム中の転写活性が高い部位に組み込まれる場合、コードされたポリペプチドは多量に発現される。
【0299】
ヘテロ多量体ポリペプチドの互いに異なるポリペプチドのための発現カセットが、同じ頻度で、かつ同程度の転写活性を有する遺伝子座に全て組み込まれる限り、この発現の違いが問題を引き起こしてはいない。このような状況下では、多量体ポリペプチドに含まれる全てのポリペプチドが同量で発現され、多量体ポリペプチドが正確に組み立てられる。
【0300】
しかし、このシナリオが起こる可能性は非常に低く、2つより多いポリペプチドで構成される分子に対してこのシナリオを保証することはできない。例えば、国際公開第2018/162517号では、i)発現カセット配列およびii)異なる発現ベクター間での発現カセットの分布に応じて、発現収率および生産物の質の大きな差異がRIによって観察されたことが開示されている。この理論に縛られるわけではないが、この観察結果は、異なる発現ベクターに由来する異なる発現カセットが、細胞中で異なる頻度で異なる遺伝子座に組み込まれ、その結果、ヘテロ多量体ポリペプチドに含まれる様々なポリペプチドが差次的に、すなわち適切ではない様々な比率で発現されるという事実に起因する。その結果、単量体ポリペプチドの一部が、相対的に多い量で存在し、それ以外が相対的に少ない量で存在する。ヘテロ多量体ポリペプチドに含まれる単量体がこのように不均衡であることが原因で、不完全な組立て、間違った組立て、および分泌速度の低下が起こる。前述のどれも、正確に折り畳まれたヘテロ多量体ポリペプチドの発現収率の低下、および生産物に関係する副産物の割合の上昇を招く。
【0301】
従来のRI CLDとは違って、標的化組込み(TI)CLDは、細胞ゲノム中のあらかじめ定められた「ホットスポット」に、様々な発現カセットを含む導入遺伝子を導入する。また、この導入は、所定の比率の発現カセットを用いる。その結果、この理論に縛られるわけではないが、ヘテロ多量体ポリペプチドに含まれる様々なポリペプチドの全てが、同じ(または少なくとも同程度であり、少ししか違わない)速度かつ適切な比率で発現される。その結果、正確に組み立てられたヘテロ多量体ポリペプチドの量は増加するはずであり、生産物に関係する副産物の割合は低下するはずである。
【0302】
また、所定のコピー数および所定の組込み部位が与えられたとすると、TIによって得られる組換え細胞は、RIによって得られる細胞と比べて、優れた安定性を有しているはずである。さらに、選択マーカーは、適切なTIを有する細胞を選択するためだけに使用され、高レベルの導入遺伝子発現を示す細胞を選択するためには使用されないことから、メトトレキサート(MTX)またはメチオニンスルホキシミン(MSX)のような選択剤の突然変異誘発性が原因の一部である配列変異体(SV)が生じる可能性を最小限にするために、突然変異誘発性の低いマーカーを適用してよい。
【0303】
II.a 本発明による導入遺伝子および方法
三価の二重特異性抗体:
しかし、TIで使用される導入遺伝子中の発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、三価の二重特異性抗体発現に強い影響を持っていることが、現在では判明している。
【0304】
本発明は、個々の発現カセットを所定の数および配列で有する特定の発現カセット構成を使用する。これにより、哺乳動物細胞において発現される三価の二重特異性抗体の発現収率が高くなり、生成物の質が良好になる。
【0305】
本発明による発現カセット配列を有する導入遺伝子の所定の組込みのために、TI方法が使用される。本発明は、2プラスミドリコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)反応を用いて、三価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を作製する新規の方法を提供する。改善点は、特に、所定の配列中の同じ遺伝子座における所定の組込み、ならびにそれによる三価の二重特異性抗体の高発現および生産物に関係する副産物の形成の減少にある。
【0306】
本発明で開示される主題は、三価の二重特異性抗体の安定な大規模生産のために組換え哺乳動物細胞を製造するための方法だけでなく、有利な副産物プロファイルを有する三価の二重特異性抗体の生産力が高い組換え哺乳動物細胞もまた、提供する。
【0307】
本明細書において使用される2プラスミドRMCE戦略は、同じTI遺伝子座に複数の発現カセットを挿入することを可能にする。
【0308】
三価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞が、本明細書において報告されている。三価の二重特異性抗体は、前記哺乳動物細胞によって天然には発現されないヘテロ多量体ポリペプチドである。より具体的には、三価の二重特異性抗体は、4つのポリペプチド:2つの異なる重鎖および2つの異なる軽鎖からなるヘテロ二量体タンパク質である。三価の二重特異性抗体の発現を達成するために、特定かつ所定の配列中に複数の異なる発現カセットを含む組換え核酸が、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれている。
【0309】
三価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を作製するための方法および前記組換え哺乳動物細胞を用いて三価の二重特異性抗体を製造するための方法も、本明細書において報告されている。
【0310】
本発明は、ヘテロ多量体三価の二重特異性抗体の発現に必要とされる異なる発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれた際に、三価の二重特異性抗体の発現収率に影響を与えるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0311】
本発明は、組換えCHO細胞などの組換え哺乳動物細胞を製造するために二重リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を使用することができ、その際、所定かつ特定の発現カセット配列がゲノム中に組み込まれ、その結果として、三価の二重特異性抗体の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。この組込みは、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノムの特定の部位に引き起こされる。それによって、ヘテロ多量体抗体の異なるポリペプチドの、互いに対する発現比率を制御することが可能である。その結果として、正確に折り畳まれ組み立てられた三価の二重特異性抗体の効率的な発現、正確な組立て、および高い発現収率での成功裡な分泌が実現される。
【0312】
三価の二重特異性抗体はヘテロ四量体であるため、その発現のために少なくとも4つの異なる発現カセット、第1の重鎖の発現のための第1の発現カセット、第2の重鎖の発現のための第2の発現カセット、第1の軽鎖の発現のための第3の発現カセット、および第2の軽鎖の発現のための第4の発現カセットが必要とされる。さらに、陽性選択マーカーのためのさらなる発現カセットも含まれてよい。
【0313】
TI宿主における生産性に対する発現カセット構成の影響を調べるために、RMCEプールを、ドメインクロスオーバー/交換を伴うさらなるFabフラグメントを有する三価の二重特異性抗体の個々の鎖に対する異なる数および編成の発現カセットを含有する2つのプラスミド(フロントおよびバックベクター)をトランスフェクトすることによって作製した。フローサイトメトリーによるRMCEの選択、回収および検証の後、プールの生産性を14日間の流加産生アッセイで評価した。
【0314】
ドメイン交換を伴うさらなるFabフラグメントを有する異なる三価の二重特異性抗体の発現に対する抗体鎖発現カセット構成の効果を評価した。全てが異なる標的特異性を有していた。
【0315】
一般的に、当技術分野では、一過性タンパク質発現プロファイルが安定な発現プロファイルを予測すると想定されている(例えば、Diepenbruck,C.,et al.Mol.Biotechnol.54(2013)497-503;Rajendra,Y.,et al.Biotechnol.Prog.33(2017)469-477参照)。
【0316】
1つのBS抗体(BS-1)について、一過性トランスフェクションから以下の結果が得られた(ベクターは、示された発現カセットのみを含んでおり、ベクター比:l=軽鎖発現カセットを1つ含むベクター;l+h=1つの軽鎖発現カセットおよびホール変異を有する重鎖のための1つの発現カセットを含むベクター;xl+k=ドメイン交換を伴う軽鎖のための1つの発現カセットおよびノブ変異を伴う重鎖のための1つの発現カセットを含むベクター;xl=ドメイン交換を伴う軽鎖のための1つの発現カセットを含むベクター):
l=軽鎖;h=ホール変異を有する重鎖;xl=ドメイン交換を有する軽鎖;k=ノブ変異を有する重鎖
【0317】
第1のBS抗体および3つのさらなるBS抗体について、安定な標的化された組込みについて以下の結果が得られた:
MP=主生成物、eff.力価=有効力価=主生成物の%を乗算した力価
【0318】
分かるように、一過性トランスフェクションで得られた結果は、一過性のランダムな組込みから安定な標的化された組込みへの変化について、現在の場合には予測できない。これは、k:h:l:xl=2:1:2:3の組合せで見ることができ、これは安定なトランスフェクションに最適であり、一過性トランスフェクションでは3番目に優れているに過ぎない。
【0319】
抗体BS-1は、抗ヒトAβ/ヒトトランスフェリン受容体三価の二重特異性抗体(配列番号12~15)である。抗体BS-3は、抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体三価の二重特異性抗体(配列番号16~19)である。
【0320】
本発明のこの部分を以下に要約する。
【0321】
本発明の1つの独立した態様は、三価の二重特異性抗体を製造するための方法であって、以下:
a)三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺を培養する工程、および
b)細胞または培養培地から三価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、哺乳動物細胞のゲノム中に安定に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖または第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含む、方法である。
【0322】
三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸の哺乳動物細胞のゲノムへの安定な組込みは、発現カセットの特定の配列が維持される限り、当技術分野の当業者に公知の任意の方法によって行うことができる。
【0323】
本発明の1つの独立した態様は、5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖または第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸である。
【0324】
本発明の1つの独立した態様は、5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖または第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における三価の二重特異性抗体の使用である。
【0325】
本発明の1つの独立した態様は、細胞のゲノムに組み込まれた三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む組換え哺乳動物細胞であり、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖または第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
を含む。
【0326】
本発明の1つの独立した態様は、3つの異なる組換え認識配列および4つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であり、
-第1のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖または第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含む。
【0327】
本発明の1つの独立した態様は、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、三価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および少なくとも7つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸を含む組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
を含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖または第2の重鎖または第2の軽鎖のいずれかをコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
を含み、
第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列が、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
1つまたは複数のリコンビナーゼが、第1および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識し、(かつ、場合によっては、1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、三価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程を含み、
それにより、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、三価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0328】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノム中の単一遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0329】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、単一または二重のリコンビナーゼ媒介カセット交換反応によって哺乳動物細胞のゲノム中の単一遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0330】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、デオキシリボ核酸は、7つの発現カセットの後に、第2の軽鎖をコードする第8の発現カセットを含む。
【0331】
本発明の全ての独立した態様ならびに従属する実施形態の一実施形態において、第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0332】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0333】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換FabフラグメントVH-VLまたはCH1-CLを含む伸長重鎖である。
【0334】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の軽鎖は、ドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLである。
【0335】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0336】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の重鎖は配列番号12のアミノ酸配列を含み、第2の重鎖は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、第1の軽鎖は配列番号14のアミノ酸配列を含み、第2の軽鎖は配列番号15のアミノ酸配列を含み、第1の結合部位はヒトトランスフェリン受容体に特異的に結合し、第2の結合部位はヒトAβポリペプチドに特異的に結合する。
【0337】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の重鎖は配列番号16のアミノ酸配列を含み、第2の重鎖は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、第1の軽鎖は配列番号18のアミノ酸配列を含み、第2の軽鎖は配列番号19のアミノ酸配列を含み、第1の結合部位はヒトトランスフェリン受容体に特異的に結合し、第2の結合部位はヒトCD20ポリペプチドに特異的に結合する。
【0338】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0339】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含む。
【0340】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0341】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流で第4の発現カセットに隣接し、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で第5の発現カセットに隣接しており、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0342】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、
抗体鎖についての各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
かつ
選択マーカーをコードする各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含む。
【0343】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、選択マーカーの発現カセットを除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータは、hGTターミネータである。
【0344】
ターミネータ配列は、RNAポリメラーゼIIによる非常に長いRNA転写物の生成、すなわち、本発明によるデオキシリボ核酸中の次の発現カセットへのリードスルーを防止し、本発明による方法で使用される。すなわち、目的の1つの構造遺伝子の発現は、それ自体のプロモータによって制御される。
【0345】
したがって、ポリアデニル化シグナルとターミネータ配列との組合せによって、効率的な転写終結が達成される。すなわち、RNAポリメラーゼIIのリードスルーは、二重終結シグナルの存在によって妨げられる。ターミネータ配列は、複合体分解を開始し、DNA鋳型からのRNAポリメラーゼの解離を促進する。
【0346】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。
【0347】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、全てのカセットが一方向に配置される。
【0348】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0349】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流で第4の発現カセットに隣接し(すなわち、第4の発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列の上流の位置にあり)、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、ポリアデニル化配列に作動可能に連結した開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で第5の発現カセットに隣接している。
【0350】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0351】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸は第1のベクターに組み込まれ、第2のデオキシリボ核酸は第2のベクターに組み込まれる。
【0352】
全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、コード配列、およびポリアデニル化シグナル配列、任意でそれに続くターミネータ配列を含み、これらは全て互いに作動可能に連結されている。
【0353】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。一実施形態において、CHO細胞はCHO-K1細胞である。
【0354】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、リコンビナーゼ認識配列は、L3、2LおよびLoxFasである、一実施形態において、L3は配列番号01の配列を有し、2Lは配列番号02の配列を有し、LoxFasは配列番号03の配列を有する。一実施形態において、第1のリコンビナーゼ認識配列はL3であり、第2のリコンビナーゼ認識配列は2Lであり、第3のリコンビナーゼ認識配列はLoxFasである。
【0355】
全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリA部位であり、ターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0356】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリA部位であり、ターミネータ配列が存在しない、選択マーカー(複数可)の発現カセット(複数可)を除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化配列は、bGHポリA部位であり、かつターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0357】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号04の配列を有する。一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号06の配列を有する。
【0358】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、bGHポリアデニル化シグナル配列は配列番号08である。
【0359】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、hGTターミネータは、配列番号09の配列を有する。
【0360】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、SV40プロモータは配列番号10の配列を有する。
【0361】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、SV40ポリアデニル化シグナル配列は配列番号07である。
【0362】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体は、抗TfR/CD20二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2017/055542号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0363】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体は、抗TfR/Aβ二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2017/055540号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0364】
二重特異性三価の抗体:
しかし、TIで使用される導入遺伝子中の発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、三価の抗体(例えば、TCB)発現に強い影響を持っていることが、現在では見出されている。
【0365】
本発明は、個々の発現カセットを所定の数および配列で有する特定の発現カセット構成を使用する。これにより、哺乳動物細胞において発現される三価の抗体(例えば、TCB)の発現収率が高くなり、生成物の質が良好になる。
【0366】
本発明による発現カセット配列を有する導入遺伝子の所定の組込みのために、TI方法が使用される。本発明は、2プラスミドリコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)反応を用いて、三価の抗体(例えば、TCB)を発現する組換え哺乳動物細胞を作製する新規の方法を提供する。改善点は、特に、所定の配列中の同じ遺伝子座における所定の組込み、ならびにそれによる三価の抗体(例えば、TCB)の高発現および生産物に関係する副産物の形成の減少にある。
【0367】
本発明で開示される主題は、三価の抗体(例えば、TCB)の安定な大規模生産のために組換え哺乳動物細胞を製造するための方法だけでなく、有利な副産物プロファイルを有する三価の抗体(例えば、TCB)の生産力が高い組換え哺乳動物細胞もまた、提供する。
【0368】
本明細書において使用される2プラスミドRMCE戦略は、同じTI遺伝子座に複数の発現カセットを挿入することを可能にする。
【0369】
三価の抗体(例えば、TCB)を発現する組換え哺乳動物細胞が、本明細書において報告されている。三価の抗体(例えば、TCB)は、前記哺乳動物細胞によって天然には発現されないヘテロ多量体ポリペプチドである。より具体的には、三価の抗体(例えば、TCB)は、4つのポリペプチド、第1の軽鎖および第2の軽鎖ならびに第1の重鎖および第2の重鎖からなるヘテロ二量体タンパク質である。三価の抗体(例えば、TCB)の発現を達成するために、特定かつ所定の配列中に複数の異なる発現カセットを含む組換え核酸が、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれている。
【0370】
三価の抗体(例えば、TCB)を発現する組換え哺乳動物細胞を作製するための方法および前記組換え哺乳動物細胞を用いて三価の抗体(例えば、TCB)を製造するための方法も、本明細書において報告されている。
【0371】
本発明は、ヘテロ多量体三価の抗体(例えば、TCB)の発現に必要とされる異なる発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれた際に、三価の抗体(例えば、TCB)の発現収率に影響を与えるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0372】
本発明は、組換えCHO細胞などの組換え哺乳動物細胞を製造するために二重リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を使用することができ、その際、所定かつ特定の発現カセット配列がゲノム中に組み込まれ、その結果として、三価の抗体(例えば、TCB)の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくともある程度は基づいている。この組込みは、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノムの特定の部位に引き起こされる。それによって、ヘテロ多量体ポリペプチドの異なるポリペプチドの、互いに対する発現比率を制御することが可能である。その結果として、正確に折り畳まれ組み立てられた三価の抗体(例えば、TCB)の効率的な発現、正確な組立て、および高い発現収率での成功裡な分泌が実現される。
【0373】
三価の抗体(例えば、TCB)はヘテロ四量体であるため、その発現のために少なくとも4つの異なる発現カセット、第1の軽鎖の発現のための第1の発現カセット、第2の軽鎖の発現のための第2の発現カセット、第1の重鎖の発現のための第3の発現カセット、および第2の重鎖の発現のための第4の発現カセットが必要とされる。さらに、陽性選択マーカー(複数可)のための1つまたは複数のさらなる発現カセットも含まれてよい。
【0374】
例えば、TI宿主における生産性に対する発現カセット構成の影響を調べるために、RMCEプールを、TCBフォーマットの三価の抗体の異なる数および構成の個々の鎖を含む、2つのプラスミド(前方および後方ベクター)をトランスフェクトすることによって、作製した。フローサイトメトリーによるRMCEの選択、回収および検証の後、プールの生産性を14日間の流加産生アッセイで評価した。特定のベクター構成について、参照プールと比較して力価の増加が観察された。
【0375】
5つの異なるTCBの発現に対する抗体鎖発現カセット構成の影響を評価した。TCB1~5は全て異なる標的特異性を有していた。TCB3を4つの異なる抗CD3結合部位で試験した。
【0376】
TCB-1については、以下の結果が得られ、参照構成は灰色で陰影が付けられており、k=ノブ変異を有する重鎖であり、h=ホール変異を有する重鎖であり、l=軽鎖、xl=ドメイン交換を有する軽鎖である。
MP=主生成物、eff.力価=有効力価=主生成物の%を乗算した力価
【0377】
本発明のこの部分を以下に要約する。
【0378】
本発明による1つの独立した態様は、三価の抗体を製造するための方法であって、以下:
a)三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)細胞または培養培地から三価の抗体を回収する工程
を含み、
三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノム中に安定に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット
または
(4)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(5)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
または
(6)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
を含む。
【0379】
三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸の哺乳動物細胞のゲノムへの安定な組込みは、発現カセットの特定の配列が維持される限り、当技術分野の当業者に公知の任意の方法によって行うことができる。
【0380】
本発明による1つの独立した態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット
または
(4)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第5の発現カセット
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(5)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
または
(6)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸である。
【0381】
本発明による1つの独立した態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット
または
(4)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(5)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
または
(6)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における三価の抗体の発現のための使用である。
【0382】
本発明による1つの独立した態様は、細胞のゲノム中に組み込まれた、三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む、組換え哺乳動物細胞であり、
三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(3)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット
または
(4)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(5)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット
または
(6)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸である。
【0383】
本発明による1つの独立した態様は、3つの異なる組換え認識配列および5~7つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であり、
-第1のデオキシリボ核酸が5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(3)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(4)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(5)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(6)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(3)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(4)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(5)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(6)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含む。
【0384】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成を含むか、または、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含むか、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(3)による構成を含むか、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(4)による構成を含むか、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(5)による構成を含むか、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(6)による構成を含む。
【0385】
本発明による1つの独立した態様は、三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、三価の抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および5~7つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸を含む組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(3)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(4)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(5)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(6)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(3)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(4)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第1の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(5)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット
-第2の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(6)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列が、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
1つまたは複数のリコンビナーゼが、第1および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識し、(かつ、場合によっては、1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、三価の抗体を分泌する細胞を選択する工程を含み、
それにより、三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、三価の抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0386】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成を含むか、または、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含むか、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(3)による構成を含むか、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(4)による構成を含むか、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(5)による構成を含むか、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(6)による構成を含む。
【0387】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノム中の単一遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0388】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、単一または二重のリコンビナーゼ媒介カセット交換反応によって哺乳動物細胞のゲノム中の単一遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0389】
本発明による各々独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆もまた同様である(ナンバリングはKabatに従う)。
【0390】
本発明による各々独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属した一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0391】
本発明の各々独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である。
【0392】
本発明による各々独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の軽鎖は、ドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLである。
【0393】
本発明の各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0394】
本発明の各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0395】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、デオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0396】
本発明の各々の独立した態様および全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、三価の抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含む。
【0397】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0398】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流で第3の発現カセットに隣接し、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で第4の発現カセットに隣接しており、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0399】
本発明の各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、
抗体鎖についての各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
かつ
選択マーカーをコードする各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含む。
【0400】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、選択マーカーの発現カセットを除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータは、hGTターミネータである。
【0401】
本発明の各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。
【0402】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、5’から3’の方向の構成が、第1の発現カセットとして第1の重鎖をコードする発現カセットを有する場合、全てのカセットは一方向に配置される。
【0403】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、5’から3’の方向の構成が、第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、第1の重鎖をコードする第3の発現カセット、第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、第2の軽鎖をコードする第5の発現カセット、第2の軽鎖をコードする第6の発現カセットである場合、第1~第3の発現カセットは一方向に配置され、第4~第6の発現カセットは一方向に配置され、それによって第1~第3の発現カセットは第4~第6の発現カセットの反対方向に配置される。
【0404】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての実施形態の従属する一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0405】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流で第2の発現カセットに隣接し(すなわち、第2の発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列の上流の位置にあり)、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、ポリアデニル化配列に作動可能に連結した開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で第3の発現カセットに隣接している。
【0406】
本発明の各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0407】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸は第1のベクターに組み込まれ、第2のデオキシリボ核酸は第2のベクターに組み込まれる。
【0408】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、コード配列、およびポリアデニル化シグナル配列、任意でそれに続くターミネータ配列を含み、これらは全て互いに作動可能に連結されている。
【0409】
本発明の各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。一実施形態において、CHO細胞はCHO-K1細胞である。
【0410】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、リコンビナーゼ認識配列は、L3、2LおよびLoxFasである、一実施形態において、L3は配列番号01の配列を有し、2Lは配列番号02の配列を有し、LoxFasは配列番号03の配列を有する。一実施形態において、第1のリコンビナーゼ認識配列はL3であり、第2のリコンビナーゼ認識配列は2Lであり、第3のリコンビナーゼ認識配列はLoxFasである。
【0411】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリA部位であり、ターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0412】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する「一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータでありポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリA部位であり、ターミネータ配列が存在しない、選択マーカー(複数可)の発現カセット(複数可)を除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリA部位であり、かつターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0413】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号04の配列を有する。一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号06の配列を有する。
【0414】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、bGHポリアデニル化シグナル配列は配列番号08である。
【0415】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、hGTターミネータは、配列番号09の配列を有する。
【0416】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、SV40プロモータは、配列番号10の配列を有する。
【0417】
本発明による各々の独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の従属する一実施形態において、SV40ポリアデニル化シグナル配列は配列番号07である。
【0418】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の抗体は、治療用抗体である。
【0419】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の二重特異性(治療用)抗体(TCB)は、
-第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントであって、第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントの各結合部位が第2の抗原に特異的に結合する、第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメント、
-第3のFabフラグメントであって、第3のFabフラグメントの結合部位が第1の抗原に特異的に結合し、可変軽鎖ドメイン(VL)と可変重鎖ドメイン(VH)とが互いに置換されるようにドメインクロスオーバーを含む、第3のFabフラグメント、
-Fc領域であって、第1のFc領域のポリペプチドと第2のFc領域のポリペプチドとを含む、Fc領域
を含み、
第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントは、それぞれ、重鎖フラグメントおよび完全長軽鎖を含み、
第1のFabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端は、第1のFc領域ポリペプチドのN末端に融合されており、
第2のFabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端は、第3のFabフラグメントの可変軽鎖ドメインのN末端に融合されており、第3のFabフラグメントの重鎖定常ドメイン1のC末端は、第2のFc領域ポリペプチドのN末端に融合されている。
【0420】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の抗体は、抗CD3/CD20二重特異性抗体である。一実施形態において、抗CD3/CD20二重特異性抗体はTCBであり、CD20は第2の抗原である。一実施形態において、二重特異性抗CD3/CD20抗体は、RG6026である。そのような抗体は、国際公開第2016/020309号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0421】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、三価の抗体は、抗CD3/CEA二重特異性抗体である。一実施形態において、抗CD3/CEA二重特異性抗体はTCBであり、CEAは第2の抗原である。一実施形態において、二重特異性抗CD3/CEA抗体は、RO6958688またはRG7802またはシビサタマブである。そのような抗体は、国際公開第2017/055389号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0422】
ドメイン交換を伴う二価の二重特異性抗体:
しかし、TIで使用される導入遺伝子中の発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、二価の二重特異性抗体発現に強い影響を持っていることが、現在では判明している。
【0423】
本発明は、個々の発現カセットを所定の数および配列で有する特定の発現カセット構成を使用する。これにより、哺乳動物細胞において発現される二価の二重特異性抗体の発現収率が高くなり、生成物の質が良好になる。
【0424】
本発明による発現カセット配列を有する導入遺伝子の所定の組込みのために、TI方法が使用される。本発明は、2プラスミドリコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)反応を用いて、二価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を作製する新規の方法を提供する。改善点は、特に、所定の配列中の同じ遺伝子座における所定の組込み、ならびにそれによる二価の二重特異性抗体の高発現および生産物に関係する副産物の形成の減少にある。
【0425】
本発明で開示される主題は、二価の二重特異性抗体の安定な大規模生産のために組換え哺乳動物細胞を製造するための方法だけでなく、有利な副産物プロファイルを有する二価の二重特異性抗体の生産力が高い組換え哺乳動物細胞もまた、提供する。
【0426】
本明細書において使用される2プラスミドRMCE戦略は、同じTI遺伝子座に複数の発現カセットを挿入することを可能にする。
【0427】
二価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞が、本明細書において報告されている。二価の二重特異性抗体は、前記哺乳動物細胞によって天然には発現されないヘテロ多量体ポリペプチドである。より具体的には、二価の二重特異性抗体は、4つのポリペプチド、第1の抗体重鎖、第2の抗体重鎖、第1の抗体軽鎖および第2の抗体軽鎖からなるヘテロ多量体タンパク質である。二価の二重特異性抗体の発現を達成するために、特定かつ所定の配列中に異なる発現カセットを含む組換え核酸が、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれている。
【0428】
二価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を作製するための方法および前記組換え哺乳動物細胞を用いて二価の二重特異性抗体を製造するための方法も、本明細書において報告されている。
【0429】
本発明は、ヘテロ多量体二価の二重特異性抗体の発現に必要とされる異なる発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれた際に、二価の二重特異性抗体の発現収率に影響を与えるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0430】
本発明は、組換えCHO細胞などの組換え哺乳動物細胞を製造するために二重リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を使用することができ、その際、所定かつ特定の発現カセット配列がゲノム中に組み込まれ、その結果として、二価の二重特異性抗体の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。この組込みは、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノムの特定の部位に引き起こされる。それによって、ヘテロ多量体抗体の異なるポリペプチドの、互いに対する発現比率を制御することが可能である。その結果として、正確に折り畳まれ組み立てられた二価の二重特異性抗体の効率的な発現、正確な組立て、および高い発現収率での成功裡な分泌が実現される。
【0431】
二価の二重特異性抗体はヘテロ四量体であるため、その発現のために少なくとも4つの異なる発現カセット、第1の抗体重鎖の発現のための第1の発現カセット、第2の抗体重鎖の発現のための第2の発現カセット、第1の抗体軽鎖の発現のための第3の発現カセット、および第2の抗体軽鎖の発現のための第4の発現カセットが必要とされる。さらに、陽性選択マーカー(複数可)のための1つまたは複数のさらなる発現カセットも含まれてよい。
【0432】
ドメインクロスオーバー/交換を伴う1つの二価の二重特異性抗体について、一過性トランスフェクションから以下の結果が得られた(ベクターは、示された発現カセットのみを含んでおり、l+h=1つの軽鎖発現カセットおよびホール変異を有する重鎖のための1つの発現カセットを含むベクター;xl+k=ドメイン交換を伴う軽鎖のための1つの発現カセットおよびノブ変異を伴う重鎖のための1つの発現カセットを含むベクター;xl+h=ドメイン交換を伴う軽鎖のための1つの軽鎖発現カセットおよびホール変異を伴う重鎖のための1つの発現カセットを含むベクター、l+k=軽鎖のための発現カセット、およびノブ変異を伴う重鎖のための1つの発現カセット):
l=軽鎖;h=ホール変異を有する重鎖;xl=ドメイン交換を有する軽鎖;k=ノブ変異を有する重鎖
【0433】
見られるように、一過性トランスフェクションで得られた結果、配列および4つの発現カセットの組合せは、異なる発現収率および生成物品質をもたらす。
【0434】
一般的に、当技術分野では、一過性タンパク質発現プロファイルが安定な発現プロファイルを予測することが知られている(例えば、Diepenbruck,C.,et al.Mol.Biotechnol.54(2013)497-503;Rajendra,Y.,et al.Biotechnol.Prog.33(2017)469-477参照)。
【0435】
TI宿主における生産性に対する発現カセット構成の影響を調べるために、RMCEの安定したプールを、ドメインクロスオーバー/交換を伴う二価の二重特異性抗体の個々の鎖に対する異なる数および編成の発現カセットを含有する2つのプラスミド(前方および後方ベクター)をトランスフェクトすることによって作製した。フローサイトメトリーによるRMCEの選択、回収および検証の後、プールの生産性を14日間の流加産生アッセイで評価した。
【0436】
ドメイン交換を伴う6つの異なる二価の二重特異性抗体について、安定なトランスへクション細胞における発現収率および生成物品質に対する抗体鎖発現カセット構成の効果を評価した。全てが異なる標的特異性を有していた。いくつかについては、異なるVH/VL対の効果も分析した。これらの10の異なる抗体について、以下の結果が得られた。
k=ノブ変異を有する重鎖、h=ホール変異を有する重鎖;l=軽鎖、xl=ドメイン交換を有する軽鎖、var=異なる結合部位配列
【0437】
本発明のこの部分を以下に要約する。
【0438】
本発明の独立した態様は、二価の二重特異性抗体を製造するための方法であって、以下:
a)二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)細胞または培養培地から二価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸が、哺乳動物細胞のゲノム中に安定に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
(1)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
または
(2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット
を含み、
任意で、第1の軽鎖または第2の軽鎖が、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第1の重鎖または第2の重鎖が、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
任意で、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)、方法である。
【0439】
二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸の安定な組込みは、哺乳動物細胞のゲノムへ安定に組み込まれ、発現カセットの特定の配列が維持される限り、当技術分野の当業者に公知の任意の方法によって行うことができる。
【0440】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖である。
【0441】
好ましい一実施形態において、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0442】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
かつ
第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0443】
本発明の独立した態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット
または
(2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸であり、
任意で、第1の軽鎖または第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第1の重鎖または第2の重鎖が、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
任意で、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。
【0444】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖である。
【0445】
好ましい一実施形態において、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0446】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
かつ
第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0447】
本発明の独立した態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット
または
(2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット
を含み、
任意で、第1の軽鎖または第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第1の重鎖または第2の重鎖が、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
任意で、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)、
哺乳動物細胞における二価の二重特異性抗体の発現のための使用である。
【0448】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖である。
【0449】
好ましい一実施形態において、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0450】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
かつ
第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0451】
本発明の独立した態様は、細胞のゲノム中に組み込まれた、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む、組換え哺乳動物細胞であり、
二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット
または
(2)
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、および
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット
のいずれかを含み、
任意で、第1の軽鎖または第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第1の重鎖または第2の重鎖が、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
任意で、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。
【0452】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖である。
【0453】
好ましい一実施形態において、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0454】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
かつ
第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0455】
本発明の独立した態様は、3つの異なる組換え認識配列および4つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であり、
-第1のデオキシリボ核酸が5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
任意で、第1の軽鎖または第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第1の重鎖または第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
任意で、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。
【0456】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含む。
【0457】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖である。
【0458】
好ましい一実施形態において、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0459】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
かつ
第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0460】
本発明の独立した態様は、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み二価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および4つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸を含む組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の軽鎖をコードする第1の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第2の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の重鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
任意で、第1の軽鎖または第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第1の重鎖または第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
任意で、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖が、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖が、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様であり(ナンバリングはKabatに従う)、
第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列が、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
1つまたは複数のリコンビナーゼが、第1および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識し、(かつ、場合によっては、1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、二価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程を含み、
それにより、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、二価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0461】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含む。
【0462】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖である。
【0463】
好ましい一実施形態において、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0464】
好ましい一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VLドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含む対応するドメイン交換重鎖であり、
かつ
第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0465】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノム中の単一遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0466】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、単一または二重のリコンビナーゼ媒介カセット交換反応によって哺乳動物細胞のゲノム中の単一遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0467】
本発明の全ての独立した態様ならびに従属する実施形態の一実施形態において、第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。
【0468】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0469】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である。
【0470】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第1の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換重鎖である。
【0471】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換重鎖である。
【0472】
本発明の全ての独立した態様ならびに従属する実施形態の一実施形態において、(1)の場合、または(1)および(2)の場合、第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。
【0473】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第1の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換重鎖であり、(1)の場合または(1)および(2)の場合、第2の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(Kabatによるナンバリング)を含み、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(Kabatによるナンバリング)を含む。
【0474】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第2の軽鎖は、VH-CL(VH-VL-ドメイン交換)またはVL-CH1(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換軽鎖であり、それぞれの第2の重鎖は、VL-CH1-CH2-CH3(VH-VL-ドメイン交換)またはVH-CL-CH2-CH3(CH1-CLドメイン交換)を含むドメイン交換重鎖であり、(1)の場合または(1)および(2)の場合、第1の重鎖はCH3ドメインに変異T366W(Kabatによるナンバリング)を含み、第2の重鎖はCH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407V(Kabatによるナンバリング)を含む。
【0475】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0476】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、かつ、
-第2の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0477】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0478】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含む。
【0479】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0480】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流で第2の発現カセットに隣接し、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で第3の発現カセットに隣接しており、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0481】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、
抗体鎖についての各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
かつ
選択マーカーをコードする各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含む。
【0482】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、選択マーカーの発現カセットを除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータは、hGTターミネータである。
【0483】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。
【0484】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、全てのカセットが一方向に配置される。
【0485】
1つの実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の5’に一部が、3’に一部が位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0486】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流で第2の発現カセットに隣接し(すなわち、第2の発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列の上流の位置にあり)、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、ポリアデニル化配列に作動可能に連結した開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流で第3の発現カセットに隣接している。
【0487】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0488】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸は第1のベクターに組み込まれ、第2のデオキシリボ核酸は第2のベクターに組み込まれる。
【0489】
全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、コード配列、およびポリアデニル化シグナル配列、任意でそれに続くターミネータ配列を含み、これらは全て互いに作動可能に連結されている。
【0490】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。一実施形態において、CHO細胞はCHO-K1細胞である。
【0491】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、リコンビナーゼ認識配列は、L3、2LおよびLoxFasである、一実施形態において、L3は配列番号01の配列を有し、2Lは配列番号02の配列を有し、LoxFasは配列番号03の配列を有する。一実施形態において、第1のリコンビナーゼ認識配列はL3であり、第2のリコンビナーゼ認識配列は2Lであり、第3のリコンビナーゼ認識配列はLoxFasである。
【0492】
全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリA部位であり、ターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0493】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリA部位であり、ターミネータ配列が存在しない、選択マーカー(複数可)の発現カセット(複数可)を除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化配列は、bGHポリA部位であり、かつターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0494】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号04の配列を有する。一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号06の配列を有する。
【0495】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、bGHポリアデニル化シグナル配列は配列番号08である。
【0496】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、hGTターミネータは、配列番号09の配列を有する。
【0497】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、SV40プロモータは配列番号10の配列を有する。
【0498】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、SV40ポリアデニル化シグナル配列は配列番号07である。
【0499】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、抗ANG2/VEGF二重特異性抗体である。一実施形態において、二重特異性抗ANG2/VEGF抗体は、RG7221またはバヌシズマブである。
【0500】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、抗ANG2/VEGF二重特異性抗体である。一実施形態において、二重特異性抗ANG2/VEGF抗体は、RG7716またはファリシマブである。
【0501】
そのようなANG2/VEGF二重特異性抗体は、国際公開第2010/040508号、国際公開第2011/117329号、国際公開第2014/009465号に報告されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0502】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、抗PD1/TIM3二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2017/055404号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0503】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、二価の二重特異性抗体は、抗PD1/Lag3二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2018/185043号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0504】
多価の二重特異性抗体:
しかし、TIで使用される導入遺伝子中の発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、多価の二重特異性抗体発現に強い影響を持っていることが、現在では判明している。
【0505】
本発明は、個々の発現カセットを所定の数および配列で有する特定の発現カセット構成を使用する。これにより、哺乳動物細胞において発現される多価の二重特異性抗体の発現収率が高くなり、生成物の質が良好になる。
【0506】
本発明による発現カセット配列を有する導入遺伝子の所定の組込みのために、TI方法が使用される。本発明は、2プラスミドリコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)反応を用いて、多価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を作製する新規の方法を提供する。改善点は、特に、所定の配列中の同じ遺伝子座における所定の組込み、ならびにそれによる多価の二重特異性抗体の高発現および生産物に関係する副産物の形成の減少にある。
【0507】
本発明で開示される主題は、多価の二重特異性抗体の安定な大規模生産のために組換え哺乳動物細胞を製造するための方法だけでなく、有利な副産物プロファイルを有する多価の二重特異性抗体の生産力が高い組換え哺乳動物細胞もまた、提供する。
【0508】
本明細書において使用される2プラスミドRMCE戦略は、同じTI遺伝子座に複数の発現カセットを挿入することを可能にする。
【0509】
多価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞が、本明細書において報告されている。多価の二重特異性抗体は、前記哺乳動物細胞によって天然には発現されないヘテロ多量体ポリペプチドである。より具体的には、多価の二重特異性抗体は、3つのポリペプチド、抗体軽鎖ならびに第1の抗体重鎖および第2の抗体重鎖からなるヘテロ二量体タンパク質である。多価の二重特異性抗体の発現を達成するために、特定かつ所定の配列中に複数の異なる発現カセットを含む組換え核酸が、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれている。
【0510】
多価の二重特異性抗体を発現する組換え哺乳動物細胞を作製するための方法および前記組換え哺乳動物細胞を用いて多価の二重特異性抗体を製造するための方法も、本明細書において報告されている。
【0511】
本発明は、ヘテロ多量体多価の二重特異性抗体の発現に必要とされる異なる発現カセットの配列、すなわち発現カセット構成が、哺乳動物細胞のゲノム中に組み込まれた際に、多価の二重特異性抗体の発現収率に影響を与えるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0512】
本発明は、組換えCHO細胞などの組換え哺乳動物細胞を製造するために二重リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を使用することができ、その際、所定かつ特定の発現カセット配列がゲノム中に組み込まれ、その結果として、多価の二重特異性抗体の効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくとも部分的に基づいている。この組込みは、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノムの特定の部位に引き起こされる。それによって、ヘテロ多量体抗体の異なるポリペプチドの、互いに対する発現比率を制御することが可能である。その結果として、正確に折り畳まれ組み立てられた多価の二重特異性抗体の効率的な発現、正確な組立て、および高い発現収率での成功裡な分泌が実現される。
【0513】
多価の二重特異性抗体はヘテロ三量体であるため、その発現のために少なくとも3つの異なる発現カセット、抗体軽鎖の発現のための第1の発現カセット、第1の抗体重鎖の発現のための第2の発現カセット、および第2の抗体重鎖の発現のための第3の発現カセットが必要とされる。さらに、陽性選択マーカーのためのさらなる発現カセットも含まれてよい。
【0514】
TI宿主における生産性に対する発現カセット構成の影響を調べるために、RMCEプールを、多価の二重特異性抗体の異なる数および構成の個々の鎖を含む、2つのプラスミド(前方および後方ベクター)をトランスフェクトすることによって、作製した。フローサイトメトリーによるRMCEの選択、回収および検証の後、プールの生産性を14日間の流加産生アッセイで評価した。
【0515】
多価の二重特異性抗体の発現に対する抗体鎖発現カセット構成の影響を評価した。
【0516】
多価の二重特異性抗体について、以下の結果が得られた:
【0517】
本発明のこの部分を以下に要約する。
【0518】
本発明による1つの独立した態様は、多価の二重特異性抗体を製造するための方法であり、
a)多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)細胞または培養培地から多価の二重特異性抗体を回収する工程
を含み、
多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、哺乳動物細胞のゲノム中に安定に組み込まれ、かつ5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含む、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸である。
【0519】
多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸の安定な組込みは、哺乳動物細胞のゲノムへ安定に組み込まれ、発現カセットの特定の配列が維持される限り、当技術分野の当業者に公知の任意の方法によって行うことができる。
【0520】
本発明によるデオキシリボ核酸中の個々の発現カセットは、連続して配置される。1つの発現カセットの末端とその後に続く発現カセットの開始部との間の距離は、クローニング手順に必要とされた、すなわちクローニング手順から生じるわずか数ヌクレオチドである。
【0521】
本発明による1つの独立した態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含む、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸である。
【0522】
本発明による1つの独立した態様は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
を含むデオキシリボ核酸の、哺乳動物細胞における多価の二重特異性抗体の発現のための使用である。
【0523】
本発明による1つの独立した態様は、細胞のゲノムに組み込まれた多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含む組換え哺乳動物細胞であり、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、5’から3’の方向に、
(1)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット
または
(2)
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット
のいずれかを含む、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸である。
【0524】
本発明による1つの独立した態様は、3つの異なる組換え認識配列および6つまたは8つの発現カセットを順に含む、2つのデオキシリボ核酸を含む組成物であり、
-第1のデオキシリボ核酸が5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含む。
【0525】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含む。
【0526】
本発明による1つの独立した態様は、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、多価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および6つまたは8つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸を含む組成物を導入する工程であって、
-第1のデオキシリボ核酸が5’から3’の方向に、
(1)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
または
(2)
-第1の組換え認識配列
-第1の重鎖をコードする第1の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第2の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第3の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第4の発現カセット、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
-第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
(1)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第4の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第5の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
または
(2)
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-第2の重鎖をコードする第5の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第6の発現カセット、
-第1の軽鎖をコードする第7の発現カセット、および
-第1の軽鎖をコードする第8の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列が、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に、または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、1つまたは複数のリコンビナーゼを導入する工程であって、
1つまたは複数のリコンビナーゼが、第1および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識し、(かつ、場合によっては、1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、多価の二重特異性抗体を分泌する細胞を選択する工程を含み、
多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸を含み、多価の二重特異性抗体を分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0527】
一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(1)による構成、または第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸は共に、(2)による構成を含む。
【0528】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノム中の単一遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0529】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、単一または二重のリコンビナーゼ媒介カセット交換反応によって哺乳動物細胞のゲノム中の単一遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0530】
本発明の全ての独立した態様ならびに従属する実施形態の一実施形態において、第1の重鎖は、CH3ドメインに変異T366W(ナンバリングはKabatに従う)を含み、第2の重鎖は、CH3ドメインに変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、またはその逆も同様である(ナンバリングはKabatに従う)。
【0531】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、重鎖の1つは、変異S354Cをさらに含み、それぞれの他の重鎖は変異Y349C(ナンバリングはKabatに従う)を含む。
【0532】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の重鎖は、追加のドメイン交換Fabフラグメントを含む伸長重鎖である。
【0533】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1の軽鎖は、ドメイン交換軽鎖VH-VLまたはCH1-CLである。
【0534】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、
-第1の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第1の軽鎖可変ドメインを含み、
-第2の重鎖は、N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第2の重鎖可変ドメインを含み、かつ
-第1の軽鎖は、N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含み、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0535】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0536】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、多価の二重特異性抗体をコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含む。
【0537】
本発明の全ての独立した態様および全ての従属する実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0538】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流でそれぞれ第3または第4の発現カセットに隣接し、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流でそれぞれ第4または第5の発現カセットに隣接しており、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0539】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、
抗体鎖についての各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、抗体鎖をコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含み、
かつ
選択マーカーをコードする各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、選択マーカーをコードする核酸、およびポリアデニル化シグナル配列、ならびに任意に、ターミネータ配列を含む。
【0540】
ターミネータ配列は、RNAポリメラーゼIIによる非常に長いRNA転写物の生成、すなわち、本発明によるデオキシリボ核酸中の次の発現カセットへのリードスルーを防止し、本発明による方法で使用される。すなわち、目的の1つの構造遺伝子の発現は、それ自体のプロモータによって制御される。
【0541】
したがって、ポリアデニル化シグナルとターミネータ配列との組合せによって、効率的な転写終結が達成される。すなわち、RNAポリメラーゼIIのリードスルーは、二重終結シグナルの存在によって妨げられる。ターミネータ配列は、複合体分解を開始し、DNA鋳型からのRNAポリメラーゼの解離を促進する。
【0542】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、選択マーカーの発現カセットを除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータは、hGTターミネータである。
【0543】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。
【0544】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、全ての発現カセットが一方向に配置される。
【0545】
1つの実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の5’に一部が、3’に一部が位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0546】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流でそれぞれ第3または第4の発現カセットに隣接し(すなわち、第3または第4の発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列の上流の位置にあり)、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、ポリアデニル化配列に作動可能に連結した開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流でそれぞれ第4または第5の発現カセットに隣接している。
【0547】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、開始コドンは翻訳開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0548】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸は第1のベクターに組み込まれ、第2のデオキシリボ核酸は第2のベクターに組み込まれる。
【0549】
全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、コード配列、およびポリアデニル化シグナル配列、任意でそれに続くターミネータ配列を含み、これらは全て互いに作動可能に連結されている。
【0550】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。一実施形態において、CHO細胞はCHO-K1細胞である。
【0551】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、リコンビナーゼ認識配列は、L3、2LおよびLoxFasである、一実施形態において、L3は配列番号01の配列を有し、2Lは配列番号02の配列を有し、LoxFasは配列番号03の配列を有する。一実施形態において、第1のリコンビナーゼ認識配列はL3であり、第2のリコンビナーゼ認識配列は2Lであり、第3のリコンビナーゼ認識配列はLoxFasである。
【0552】
全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリA部位であり、ターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0553】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリA部位であり、ターミネータ配列が存在しない、選択マーカー(複数可)の発現カセット(複数可)を除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化配列は、bGHポリA部位であり、かつターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0554】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号04の配列を有する。一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号06の配列を有する。
【0555】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、bGHポリアデニル化シグナル配列は配列番号08である。
【0556】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、hGTターミネータは、配列番号09の配列を有する。
【0557】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、SV40プロモータは配列番号10の配列を有する。
【0558】
本発明の全ての独立した態様ならびに全ての従属する実施形態の一実施形態において、SV40ポリアデニル化シグナル配列は配列番号07である。
【0559】
全ての態様および実施形態の一実施形態において、多価の二重特異性抗体は、抗FAP/Ox40二重特異性抗体である。そのような抗体は、国際公開第2017/060144号に報告されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0560】
Cre mRNAを用いた標的化組込み:
しかし、例えばCre DNAの代わりにCre mRNAを使用すると、標的化組込みによって得られるクローンの数を改善できることが見出された。より詳細には、選択期間後、Cre mRNA生成組換え細胞プールにおけるクローンの絶対数は、Creプラスミド生成組換え細胞プールよりも多いことが見出された。したがって、Cre DNA(プラスミド)の代わりにCre mRNAを使用することによって、より大きなサイズおよび不均一性を有する組換え細胞プールが製造される。この理論に束縛されるものではないが、それにより、高力価および良好な生成物品質を有する組換え細胞クローンを見出す確率が増加すると想定される。さらに、Cre mRNA生成プールからの組換え細胞クローンの数の増加は、Cre DNA(プラスミド)生成細胞プールと比較して安定である。
【0561】
導入遺伝子の所定の組込みのために、TI法が使用される。本発明は、2プラスミドリコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)反応を用いて、ポリペプチドを発現する組換え哺乳動物細胞を作製する新規の方法を提供する。改善点は、特に、所定の配列中の同じ遺伝子座における所定の組込み、ならびにそれによるポリペプチドの高発現および生産物に関係する副産物の形成の減少にある。
【0562】
本発明で開示される主題は、ポリペプチドの安定な大量生産のために組換え哺乳動物細胞を製造するための方法だけでなく、ポリペプチドの生産力が高い組換え哺乳動物細胞もまた、提供する。
【0563】
本明細書において使用される2プラスミドRMCE戦略は、同じTI遺伝子座に複数の発現カセットを挿入することを可能にする。
【0564】
本発明の1つの態様は、異種性ポリペプチドを発現する組換え哺乳動物細胞を作製するための方法および前記組換え哺乳動物細胞を用いて異種性ポリペプチドを製造するための方法である。
【0565】
本発明は、少なくとも部分的には、標的化組込みによって得られた組換え哺乳動物細胞クローンの数、すなわち、目的のタンパク質をコードする異種性核酸でトランスフェクトされ、前記異種性核酸をそれらのゲノムに安定に組み込んだした哺乳動物細胞の数が、例えばCre DNAの代わりにCre mRNAが使用される場合、改善され得る、すなわち増加され得るという知見に基づく。より詳細には、選択期間後、リコンビナーゼの供給源としてCre mRNAのみを使用して作製された組換え細胞プール中のクローンの絶対数は、リコンビナーゼの供給源としてCreプラスミドを使用した組換え細胞プール中よりも多いことが見出された。したがって、Cre DNA(Creプラスミド)の代わりにCre mRNAを使用することによって、より大きなサイズおよび不均一性を有する組換え細胞プールが製造される。これは、実施例10ならびに図2図3および図4に示されている。この理論に束縛されるものではないが、それにより、高力価および良好な生成物品質を有する組換え細胞クローンを見出す確率が増加すると想定される。さらに、本発明は、少なくとも部分的に、Cre mRNA生成プールからの組換え細胞クローンの数の増加は、Creプラスミド生成細胞プールと比較して安定であることに基づいている。
【0566】
本発明の1つの態様は、異種性ポリペプチドを発現する組換え哺乳動物細胞である。異種性ポリペプチドの発現を実現するために、特定かつ所定の配列中に異なる発現カセットを含む組換え核酸が、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれた。
【0567】
本発明の1つの態様は、組換え哺乳動物細胞のゲノムの単一部位に、標的化組込みによって安定に組み込まれた、目的の(異種性)ポリペプチドをコードする(異種性および/またはトランスジェニック)デオキシリボ核酸(の厳密に1つのコピー)を含む前記組換え哺乳動物細胞の数を増加させるためのCre-リコンビナーゼmRNAの使用であり、一実施形態において、組換え細胞はまた、その中での培養時に目的のポリペプチドを培養培地に分泌する。
【0568】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、哺乳動物細胞および/または導入されたCreリコンビナーゼmRNAは、Creリコンビナーゼをコードするデオキシリボ核酸を含まない。
【0569】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、CreリコンビナーゼmRNAは、単離されたCreリコンビナーゼmRNAである。
【0570】
本発明は、組換えCHO細胞などの組換え哺乳動物細胞を製造するために二重リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を使用することができ、その際、所定かつ特定の発現カセット配列がゲノム中に組み込まれ、その結果として、異種性ポリペプチドの効率的な発現および生産がもたらされるという知見に、少なくともある程度は基づいている。この組込みは、標的化組込みによって哺乳動物細胞のゲノムの特定の部位に引き起こされる。
【0571】
標的化組込みにおいて、部位特異的組換えは、TI宿主細胞のゲノム中の特定の遺伝子座へのドナー核酸の導入に使用される。これは、ゲノム中の組込み部位の配列がドナー核酸と交換される酵素プロセスである。そのような核酸交換を行うために使用される1つの系はCre-lox系である。交換を触媒する酵素はCreリコンビナーゼである。交換される配列は、ゲノム中ならびにドナー核酸中の2つのlox部位の位置によって決定される。これらのlox部位はCreリコンビナーゼによって認識される。それ以上は必要ない、すなわちATP等は不要である。元々、Cre-lox系はバクテリオファージP1において見出されている。
【0572】
Cre-lox系は、哺乳動物、植物、細菌および酵母等の異なる細胞型で作動する。
【0573】
RMCEの効率は、他の要因の中でも、loxPが導入されたDNAの長さによって決定される。loxPが導入された配列の長さを増加させると、RMCE効率が低下する。
【0574】
さらに、RMCEの効率は、Creリコンビナーゼの起源の選択に依存する。Creリコンビナーゼの不十分な発現は、非並行組換えをもたらし、RMCEを抗体産生核酸の導入に使用する場合に有害であることが報告されている。
【0575】
交換反応は酵素反応であるため、交換後にlox部位がそれらの機能性を保持するので、酵素が依然として存在する/活性である限り、第1の交換反応が行われた後にさらなる交換反応が可能である。したがって、ゲノム中に活性CreリコンビナーゼおよびloxP部位を含む細胞は、意図された組換え事象が発生する傾向があるが、非意図的な組換え事象も発生する傾向がある。
【0576】
したがって、Cre-lox系の活性を適時に制御して、最初に意図した交換反応が起こった後の二次的な意図しないさらなる交換反応を防止する必要がある。
【0577】
これは、Cre mRNAをリコンビナーゼの唯一の供給源として使用する本発明による方法によって達成された。
【0578】
Creリコンビナーゼの唯一の供給源としてCre DNAをCre mRNAで置き換えることによって、Creリコンビナーゼのランダムな組込みおよびそれによる持続的な活性の可能性が排除された。これはまた、Cre DNAも組み込んだクローンのスクリーニングを実施する必要がないため、作業負荷の低減をもたらす。
【0579】
Cre DNAをCre mRNAで置き換えることにより、プールの増加ならびに力価についての単一クローンの品質の上昇を得ることができる。
【0580】
Cre DNAをCre mRNAで置き換えることにより、プールの増加ならびに導入遺伝子発現についての単一クローンの安定性の上昇を得ることができる。
【0581】
例えば、TI後の生存率回復に関しては、常に欠点はないが、Cre mRNAを使用した場合に改善が見られることがあることがわかっている(図2参照)。交換効率/プール品質に関しては、常に欠点はないが、Cre mRNAを使用した場合に改善が見られることがある(図3および図4参照)。
【0582】
複雑な抗体フォーマットを作製するためのCHOプールを、リコンビナーゼの唯一の供給源としてCREプラスミドまたはCRE mRNAのいずれかを用いて作製した。選択期間の前後、すなわち選択剤の存在下での培養の前後に、CHOプール中のクローンをFACSによって分析した。
【0583】
選択期間後、CRE mRNA作製CHOプールにおけるクローンの交換効率/プール品質は、CREプラスミド作製CHOプールよりも高いことが分かる(図3および図4参照)。したがって、CRE DNAの代わりにCRE mRNAを使用することによって、より大きなサイズおよび不均一性を有するCHOプールが製造される。それにより、高い力価および良好な生成物品質を有するCHOクローンを見出す確率が増加する。
【0584】
さらに、Cre mRNAを使用して得られたクローンにおける生存率回復が改善される(図2参照)。
【0585】
さらに、CRE mRNA生成CHOプール由来のクローンは、CREプラスミド生成CHOプール由来のクローンと比較してより安定であると予想される。
【0586】
本発明のこの部分を以下に要約する。
【0587】
本発明の1つの独立した態様は、ポリペプチドを製造するための方法であり、
a)任意でポリペプチドの発現に適した条件下で、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸を含む哺乳動物細胞を培養する工程、および
b)細胞または培養培地からポリペプチドを回収する工程
を含み、
ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸は、Cre mRNAを使用するCreリコンビナーゼ媒介カセット交換によって哺乳動物細胞のゲノムに安定に組み込まれている。
【0588】
本発明の別の独立した態様は、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸を含み、ポリペプチドを分泌する組換え哺乳動物細胞を製造するための方法であって、以下:
a)哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を提供する工程であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、提供する工程、
b)a)で提供された細胞に、3つの異なる組換え認識配列および1~8つの発現カセットを含む2つのデオキシリボ核酸を含む組成物を導入する工程であって、
第1のデオキシリボ核酸が5’から3’の方向に、
-第1の組換え認識配列
-1つまたは複数の発現カセット、
-1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分、および
-第3の組換え認識配列の第1のコピー
のいずれかを含み、
かつ
第2のデオキシリボ核酸が、5’から3’の方向に、
-第3の組換え認識配列の第2のコピー、
-1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの3’末端部分、
-1つまたは複数の発現カセット、および
-第2の組換え認識配列
のいずれかを含み、
第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列が、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列の第1の組換え認識配列~第3の組換え認識配列と一致しており、
1つの第2の選択マーカーをコードする発現カセットの5’末端部分および3’末端部分が、一緒になるとき、1つの第2の選択マーカーの機能的発現カセットを形成する、導入する工程、
c)
i)b)の第1のデオキシリボ核酸および第2のデオキシリボ核酸と同時に;または
ii)その後に逐次的に
のいずれかで、CreリコンビナーゼmRNAを導入する工程であって、
Creリコンビナーゼが、第1および第2のデオキシリボ核酸の組換え認識配列を認識し、(かつ、場合によっては、1つまたは複数のリコンビナーゼが、2リコンビナーゼ媒介カセット交換を行う)、導入する工程、
ならびに
d)第2の選択マーカーを発現し、ポリペプチドを分泌する細胞を選択する工程を含み、
それにより、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸を含み、ポリペプチドを分泌する組換え哺乳動物細胞を製造する、方法である。
【0589】
ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸の安定な組込みは、哺乳動物細胞のゲノムへ安定に組み込まれ、発現カセットの特定の配列が維持される限り、当技術分野の当業者に公知の任意の方法によって行うことができる。
【0590】
本発明の1つの態様は、組換え哺乳動物細胞のゲノムの単一部位に、標的化組込みによって安定に組み込まれた、目的の(異種性)ポリペプチドをコードする(異種性および/またはトランスジェニック)デオキシリボ核酸(の厳密に1つのコピー)を含む前記組換え哺乳動物細胞の数を増加させるためのCre-リコンビナーゼmRNAの使用であり、一実施形態において、組換え細胞はまた、その中での培養時に目的のポリペプチドを培養培地に分泌する。
【0591】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、哺乳動物細胞および/または導入されたCreリコンビナーゼmRNAは、Creリコンビナーゼをコードするデオキシリボ核酸を含まない。
【0592】
本発明による全ての態様および実施形態の一実施形態において、CreリコンビナーゼmRNAは、単離されたCreリコンビナーゼmRNAである。
【0593】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号20のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0594】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号20のアミノ酸配列を含み、そのN末端もしくはC末端または両方に核局在化配列をさらに含むポリペプチドをコードする。一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号20のアミノ酸配列を有し、そのN末端もしくはC末端に、または両方に、互いに独立して、1~5つの核局在化配列をさらに含むポリペプチドをコードする。
【0595】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号21のアミノ酸配列またはそのコドン使用頻度最適化バリアントを含む。全ての態様の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号21のヌクレオチド配列、またはそのコドン使用頻度最適化バリアントを含み、その5’末端もしくは3’末端または両方に、核局在化配列をコードするさらなる核酸をさらに含む。全ての態様の一実施形態において、Cre mRNAは、配列番号21のヌクレオチド配列、またはそのコドン使用頻度最適化バリアントを含み、その5’末端もしくは3’末端または両方に互いに独立して、1~5個の、核局在化配列をコードする核酸をさらに含む。
【0596】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、デオキシリボ核酸の厳密に1つのコピーが、哺乳動物細胞のゲノムの単一の部位または遺伝子座に安定に組み込まれる。
【0597】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸は、1~8つの発現カセットを含む。
【0598】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸は、少なくとも4つの発現カセットを含み、
-第1の組換え認識配列は、最も5’の(すなわち、第1の)発現カセットに対して5’に位置し、
-第2の組換え認識配列は、最も3’の発現カセットに対して3’に位置し、
-第3の組換え認識配列は、
-第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間、かつ
-発現カセットのうちの2つの間
に位置し、
かつ
全ての組換え認識配列は異なる。
【0599】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、第3の組換え認識配列は、第4の発現カセットと第5の発現カセットの間に位置する。
【0600】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードする発現カセットをさらに含む。
【0601】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸は、選択マーカーをコードするさらなる発現カセットを含み、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含み、開始コドンはコード配列に作動可能に連結されている。
【0602】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列の、
i)5’、または
ii)3’、または
iii)部分的に5’および部分的に3’
のいずれかに位置している。
【0603】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットは、第3の組換え認識配列に対して部分的に5’および部分的に3’に位置しており、前記発現カセットの、5’に位置する部分は、プロモータおよび開始コドンを含み、前記発現カセットの、3’に位置する部分は、開始コドンのないコード配列およびポリAシグナルを含む。
【0604】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、選択マーカーをコードする発現カセットの、5’に位置する部分は、開始コドンに作動可能に連結されたプロモータ配列を含み、これにより、プロモータ配列は、上流でそれぞれ第2、第3または第4の発現カセットに隣接し(すなわち、第2、第3または第4の発現カセットに対して下流の位置にあり)、開始コドンは、下流で第3の組換え認識配列に隣接し(すなわち、第3の組換え認識配列に対して上流の位置にあり)、かつ、選択マーカーをコードする発現カセットの3’に位置する部分は、開始コドンを欠く選択マーカーをコードする核酸を含み、上流で第3の組換え認識配列に隣接し、下流でそれぞれ第3、第4または第5の発現カセットに隣接している。
【0605】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、開始コドンは転写開始コドンである。一実施形態において、開始コドンはATGである。
【0606】
本発明の全ての態様および実施形態のうちの一実施形態において、第1のデオキシリボ核酸は第1のベクターに組み込まれ、第2のデオキシリボ核酸は第2のベクターに組み込まれる。
【0607】
本発明の全ての態様および実施形態の好ましい一実施形態において、Cre mRNAと、第1のベクターおよび第2のベクターの混合物との重量比は、1:3~2:1の範囲である。好ましい一実施形態において、Cre mRNAと第1のベクターおよび第2のベクターの混合物との重量比は約1:5である。
【0608】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、各発現カセットは、5’から3’の方向に、プロモータ、コード配列、およびポリアデニル化シグナル配列、任意でそれに続くターミネータ配列を含む。
【0609】
ターミネータ配列は、RNAポリメラーゼIIによる非常に長いRNA転写物の生成、すなわち、本発明によるデオキシリボ核酸中の次の発現カセットへのリードスルーを防止し、本発明による方法で使用される。すなわち、目的の1つの構造遺伝子の発現は、それ自体のプロモータによって制御される。
【0610】
したがって、ポリアデニル化シグナルとターミネータ配列との組合せによって、効率的な転写終結が達成される。すなわち、RNAポリメラーゼIIのリードスルーは、二重終結シグナルの存在によって妨げられる。ターミネータ配列は、複合体分解を開始し、DNA鋳型からのRNAポリメラーゼの解離を促進する。
【0611】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、プロモータは、イントロンAを含むか、または含まないヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリA部位であり、ターミネータは、hGTターミネータである。
【0612】
本発明の全ての態様および実施形態のうちの一実施形態において、プロモータは、SV40プロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータが存在しない、選択マーカーの発現カセットを除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリアデニル化シグナル配列であり、ターミネータは、hGTターミネータである。
【0613】
本発明の全ての態様および実施形態のうちの一実施形態において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。一実施形態において、CHO細胞はCHO-K1細胞である。
【0614】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、二価単一特異性抗体、少なくとも1つのドメイン交換を含む二価の二重特異性抗体、および少なくとも1つのドメイン交換を含む三価の二重特異性抗体からなるポリペプチドの群から選択される。
【0615】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0616】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0617】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0618】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CLドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0619】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ多量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第1の軽鎖可変ドメインを含む、第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および第2の重鎖可変ドメインを含む、第2の重鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第1の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0620】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、ヘテロ四量体ポリペプチドであって、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ペプチドリンカー、第2の重鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む第1の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の重鎖可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、第2の重鎖、
-N末端からC末端に、第1の軽鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む、第1の軽鎖、および
-N末端からC末端に、第2の軽鎖可変ドメインおよびCLドメインを含む、第2の軽鎖
を含むポリペプチドであり、
第2の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインは第1の結合部位を形成し、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインは第2の結合部位を形成する。
【0621】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、治療用抗体である。好ましい一実施形態において、治療用抗体は、二重特異性(治療用)抗体である。一実施形態において、二重特異性(治療用)抗体はTCBである。
【0622】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、二重特異性(治療用)抗体(TCB)であって、
-第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントであって、第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントの各結合部位が第2の抗原に特異的に結合する、第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメント、
-第3のFabフラグメントであって、第3のFabフラグメントの結合部位が第1の抗原に特異的に結合し、可変軽鎖ドメイン(VL)と可変重鎖ドメイン(VH)とが互いに置換されるようにドメインクロスオーバーを含む、第3のFabフラグメント、
-Fc領域であって、第1のFc領域のポリペプチドと第2のFc領域のポリペプチドとを含む、Fc領域
を含み、
第1のFabフラグメントおよび第2のFabフラグメントは、それぞれ、重鎖フラグメントおよび完全長軽鎖を含み、
第1のFabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端は、第1のFc領域ポリペプチドのN末端に融合されており、
第2のFabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端は、第3のFabフラグメントの可変軽鎖ドメインのN末端に融合されており、第3のFabフラグメントの重鎖定常ドメイン1のC末端は、第2のFc領域ポリペプチドのN末端に融合されている。
【0623】
本発明の全ての態様および実施形態の一実施形態において、ポリペプチドは、抗CD3/CD20二重特異性抗体である。一実施形態において、抗CD3/CD20二重特異性抗体はTCBであり、CD20は第2の抗原である。一実施形態において、二重特異性抗CD3/CD20抗体は、RG6026である。
【0624】
本発明の全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、リコンビナーゼ認識配列は、L3、2L、およびLoxFasである。一実施形態において、L3は配列番号01の配列を有し、2Lは配列番号02の配列を有し、LoxFasは配列番号03の配列を有する。一実施形態において、第1のリコンビナーゼ認識配列はL3であり、第2のリコンビナーゼ認識配列は2Lであり、第3のリコンビナーゼ認識配列はLoxFasである。
【0625】
本発明の全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリA部位であり、ターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0626】
本発明の全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、プロモータがSV40プロモータでありポリアデニル化シグナル配列がSV40ポリA部位でありターミネータ配列が存在しない、選択マーカー(複数可)の発現カセット(複数可)を除いて、プロモータは、イントロンAを含むヒトCMVプロモータであり、ポリアデニル化シグナル配列は、bGHポリA部位であり、ターミネータ配列は、hGTターミネータである。
【0627】
本発明の全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号04の配列を有する。一実施形態において、ヒトCMVプロモータは、配列番号06の配列を有する。
【0628】
本発明の全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、bGHポリアデニル化シグナル配列は、配列番号08である。
【0629】
本発明の全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、hGTターミネータは、配列番号09の配列を有する。
【0630】
本発明の全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、SV40プロモータは配列番号10の配列を有する。
【0631】
本発明の全ての前述の態様および実施形態の一実施形態において、SV40ポリアデニル化シグナル配列は配列番号07である。
【0632】
II.b リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)
標的化組込みにより、哺乳動物細胞ゲノムのあらかじめ定められた部位に外因性ヌクレオチド配列が組み込まれることが可能になる。特定の実施形態では、標的化組込みは、1つまたは複数の組換え認識配列(RRS)を認識するリコンビナーゼによって媒介される。特定の実施形態では、標的化組込みは、相同組換えによって媒介される。
【0633】
「組換え認識配列」(RRS)は、リコンビナーゼによって認識されるヌクレオチド配列であり、リコンビナーゼ媒介性組換え事象に必要かつ十分である。RRSは、組換え事象がヌクレオチド配列内で発生する位置を定義するために使用され得る。
【0634】
特定の実施形態では、RRSは、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、およびφC31 attB配列からなる群から選択される。複数のRRSが存在しなければならない場合、同一でないRRSが選択される限りにおいて、各配列の選択は他方に依存する。
【0635】
特定の実施形態では、RRSは、Creリコンビナーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、RRSは、FLPリコンビナーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、RRSは、Bxb1インテグラーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、RRSは、φC31インテグラーゼによって認識され得る。
【0636】
RRSがLoxP部位である特定の実施形態において、細胞は、組換えを行うためにCreリコンビナーゼを必要とする。RRSがFRT部位である特定の実施形態において、細胞は、組換えを行うためにFLPリコンビナーゼを必要とする。RRSがBxb1 attP部位またはBxb1 attB部位である特定の実施形態において、細胞は、組換えを行うためにBxb1インテグラーゼを必要とする。RRSがφC31 attP部位またはφC31attB部位である特定の実施形態において、細胞は、組換えを行うためにφC31インテグラーゼを必要とする。これらのリコンビナーゼは、これらの酵素のコード配列を含む発現ベクターを用いて細胞中に導入することができる。
【0637】
Cre-LoxP部位特異的組換え系は、多くの生物学的実験系で広く使用されている。Creは、34bpのLoxP配列を認識する38kDaの部位特異的DNAリコンビナーゼである。CreはバクテリオファージP1に由来し、チロシンファミリーの部位特異的リコンビナーゼに属する。Creリコンビナーゼは、LoxP配列間の分子内および分子間組換えの両方を媒介できる。LoxP配列は、2つの13bpの逆方向反復に挟まれた8bpの非パリンドロームコア領域で構成されている。Creリコンビナーゼは13bpの反復に結合し、それによって8bpのコア領域内の組換えを媒介する。Cre-LoxP媒介性組換えは高効率で起こり、他の宿主因子を必要としない。2つのLoxP配列が同じヌクレオチド配列上で同じ方向に配置されている場合、Cre媒介性組換えにより、2つのLoxP配列の間に位置するDNA配列が共有結合で閉じた円として切り出される。2つのLoxP配列が同じヌクレオチド配列上で逆方向の位置に配置されている場合、Cre媒介性組換えにより、2つの配列の間に位置するDNA配列の方向が反転する。2つのLoxP配列が2つの異なるDNA分子上にあり、1つのDNA分子が環状である場合、Cre媒介性組換えにより、環状DNA配列の組込みをもたらす。
【0638】
特定の実施形態では、LoxP配列は、野生型LoxP配列である。特定の実施形態では、LoxP配列は、変異体LoxP配列である。変異体LoxP配列は、Cre媒介性組込みまたは置換の効率を高めるために開発された。特定の実施形態では、変異体LoxP配列は、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、およびLox66配列からなる群から選択される。例えば、Lox71配列では、左側の13bpの反復で5bpが変異している。Lox66配列では、右側の13bpの反復で5bpが変異している。野生型と変異体の両方のLoxP配列は、Cre依存性組換えを媒介し得る。
【0639】
「一致するRRS」という用語は、2つのRRS間で組換えが起こることを示す。特定の実施形態では、2つの一致RRSは同一である。特定の実施形態では、両方のRRSは野生型LoxP配列である。特定の実施形態では、両方のRRSは変異体LoxP配列である。特定の実施形態では、両方のRRSは野生型FRT配列である。特定の実施形態では、両方のRRSは変異体FRT配列である。特定の実施形態では、2つの一致するRRSは異なる配列であるが、同じリコンビナーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、第1の一致するRRSは、Bxb1 attP配列であり、第2の一致するRRSは、Bxb1 attB配列である。特定の実施形態では、第1の一致するRRSは、φC31 attB配列であり、第2の一致するRRSは、φC31 attB配列である。
【0640】
II.c TIに適した例示的哺乳動物細胞
前述したような、外因性核酸(「ランディング部位」)を含む、TIに適した任意の公知または今後得られる哺乳動物細胞を、本発明において使用することができる。
【0641】
これまでのセクションに基づく、外因性核酸(ランディング部位)を含むCHO細胞を用いて、本発明を例示する。これは、本発明を例示するためにのみ提示されており、いかなる方法であっても限定として解釈されるべきではない。本発明の真の範囲は、特許請求の範囲で設定される。
【0642】
好ましい一実施形態において、哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞は、CHO細胞である。
【0643】
本発明において使用するために適している、そのゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む例示的哺乳動物細胞は、Creリコンビナーゼの媒介によるDNA組換えのための3つの異種特異的loxP部位を含むランディング部位(=哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列)を内部に持つ、CHO細胞である。これらの異種特異的loxP部位は、L3、LoxFas、および2Lであり(例えば、Lanza et al.,Biotechnol.J.7(2012)898-908;Wong et al.,Nucleic Acids Res.33(2005)e147を参照されたい)、その際、L3および2Lはランディング部位の5’末端および3’末端にそれぞれ隣接しており、LoxFasはL3部位と2L部位の間に位置している。ランディング部位は、IRESを介した選択マーカーの発現を蛍光性GFPタンパク質の発現に結び付けて、ポジティブ選択によってランディング部位を安定化することならびにトランスフェクションおよびCre組換え後に部位が存在しないものを選択すること(ネガティブ選択)を可能にする、バイシストロン性単位をさらに含む。緑色蛍光性タンパク質(GFP)は、RMCE反応をモニターするのに役立つ。例示的なGFPは、配列番号11の配列を有する。
【0644】
先のパラグラフで概説したようにランディング部位がこのように編成されていることによって、2つのベクター、いわゆる、L3部位およびLoxFas部位を有するフロントベクターならびにLoxFas部位および2L部位を内部に持つバックベクターを同時に組み込むことが可能になる。ランディング部位に存在するものとは異なる、選択マーカー遺伝子の機能的エレメントは、両方のベクター間に分配されている:プロモータおよび開始コドンはフロントベクター上に位置しているのに対し、コード化領域およびポリAシグナルはバックベクター上に位置している。両方のベクターに由来する前記核酸がCreを媒介として正確に組み込まれた場合にのみ、各選択剤に対する耐性が誘導される。
【0645】
通常、TIに適した哺乳動物細胞は、哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞であって、外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列および第2の組換え認識配列、ならびに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列との間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞である。前記外因性ヌクレオチド配列は、「ランディング部位」と呼ばれる。
【0646】
本発明で開示される主題では、外因性ヌクレオチド配列のTIに適した哺乳動物細胞を使用する。特定の実施形態において、TIに適した哺乳動物細胞は、哺乳動物細胞のゲノム中の組込み部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む。TIに適したこのような哺乳動物細胞は、TI宿主細胞と表記することもできる。
【0647】
特定の実施形態において、TIに適した哺乳動物細胞は、ランディング部位を含む、ハムスター細胞、ヒト細胞、ラット細胞、またはマウス細胞である。特定の実施形態において、TIに適した哺乳動物細胞は、ランディング部位を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO K1細胞、CHO K1SV細胞、CHO DG44細胞、CHO DUKXB-11細胞、CHO K1S細胞、またはCHO K1M細胞である。
【0648】
特定の実施形態において、TIに適した哺乳動物細胞は、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含み、外因性ヌクレオチド配列は、1つまたは複数の組換え認識配列(RRS)を含む。特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも2つのRRSを含む。RRSは、リコンビナーゼ、例えば、Creリコンビナーゼ、FLPリコンビナーゼ、Bxb1インテグラーゼ、またはφC31インテグラーゼによって認識され得る。RRSは、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、およびφC31 attB配列からなる群から選択され得る。
【0649】
特定の実施形態において、外因性ヌクレオチド配列は、第1のRRS、第2のRRS、および第3のRRS、ならびに第1のRRSと第2のRRSの間に位置する少なくとも1つの選択マーカーを含み、かつ第3のRRSは、第1のRRSおよび/または第2のRRSとは異なる。特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、第2の選択マーカーをさらに含み、第1および第2の選択マーカーは異なる。特定の実施形態において、外因性ヌクレオチド配列は、第3の選択マーカーおよび配列内リボソーム進入部位(IRES)もさらに含み、IRESは第3の選択マーカーに作動可能に連結されている。第3の選択マーカーは、第1または第2の選択マーカーとは異なり得る。
【0650】
選択マーカー(複数可)は、アミノグリコシド系ホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン、およびG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミン合成酵素(GS)、アスパラギン合成酵素、トリプトファン合成酵素(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、ならびにピューロマイシン、ブラスチシジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、ゼオシン、およびミコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子からなる群から選択され得る。また、選択マーカー(複数可)は、緑色蛍光性タンパク質(GFP)、高感度GFP(eGFP)、合成GFP、黄色蛍光性タンパク質(YFP)、高感度YFP(eYFP)、シアン蛍光性タンパク質(CFP)、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed単量体、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald6、CyPet、mCFPm、Cerulean、およびT-Sapphireからなる群から選択される蛍光性タンパク質であってもよい。
【0651】
特定の実施形態において、外因性ヌクレオチド配列は、第1のRRS、第2のRRS、および第3のRRS、ならびに第1のRRSと第3のRRSの間に位置する少なくとも1つの選択マーカーを含む。
【0652】
外因性ヌクレオチド配列は、特定の細胞に由来しないが、DNA送達法、例えば、トランスフェクション法、エレクトロポレーション法、または形質転換法などによって前記細胞に導入することができるヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、TIに適した哺乳動物細胞は、哺乳動物細胞のゲノム中の1つまたは複数の組込み部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、外因性ヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞のゲノムの特定の遺伝子座内の1つまたは複数の組込み部位に組み込まれる。
【0653】
特定の実施形態では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は、1つまたは複数の組換え認識配列(RRS)を含み、RRSは、リコンビナーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも2つのRRSを含む。特定の実施形態では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は、3つのRRSを含み、第3のRRSは、第1のRRSと第2のRRSとの間に位置する。特定の実施形態では、第1のRRSと第2のRRSとは同一であり、第3のRRSは、第1のRRSまたは第2のRRSとは異なる。特定の好ましい実施形態において、3つのRSSは全て、互いに異なる。特定の実施形態において、RRSは、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、およびφC31 attB配列からなる群から、相互に独立して、選択される。
【0654】
特定の実施形態では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの選択マーカーを含む。特定の実施形態では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は、第1、第2および第3のRRS、ならびに少なくとも1つの選択マーカーを含む。特定の実施形態では、選択マーカーは、第1のRRSと第2のRRSとの間に位置する。特定の実施形態において、2つのRRSは、少なくとも1つの選択マーカーに隣接する。すなわち、第1のRRSが選択マーカーの5’(上流)に位置し、第2のRRSが選択マーカーの3’(下流)に位置している。特定の実施形態において、第1のRRSは、選択マーカーの5’末端の隣に存在し、かつ第2のRRSは、選択マーカーの3’末端の隣に存在する。
【0655】
特定の実施形態では、選択マーカーは、第1のRRSと第2のRRSとの間に位置し、2つの隣接するRRSは異なる。特定の好ましい実施形態において、第1の隣接RRSはLoxP L3配列であり、第2の隣接RRSはLoxP 2L配列である。特定の実施形態では、LoxP L3配列は、選択マーカーの5’に位置し、LoxP 2L配列は、選択マーカーの3’に位置する。特定の実施形態では、第1の隣接するRRSは、野生型FRT配列であり、第2の隣接するRRSは、変異体FRT配列である。特定の実施形態では、第1の隣接するRRSは、Bxb1 attP配列であり、第2の隣接するRRSは、Bxb1 attB配列である。特定の実施形態では、第1の隣接するRRSは、φC31 attP配列であり、第2の隣接するRRSは、φC31 attB配列である。特定の実施形態では、2つのRRSは同じ方向に配置される。特定の実施形態では、2つのRRSはいずれもフォワードまたはリバース方向に存在する。特定の実施形態では、2つのRRSは反対方向に配置される。
【0656】
特定の実施形態において、組み込まれる外因性ヌクレオチド配列は、2つのRSSが隣接する、第1の選択マーカーおよび第2の選択マーカーを含み、第1の選択マーカーは第2の選択マーカーとは異なる。特定の実施形態において、2つの選択マーカーのどちらも、相互に独立して、グルタミン合成酵素選択マーカー、チミジンキナーゼ選択マーカー、HYG選択マーカー、およびピューロマイシン耐性選択マーカーからなる群から選択される。特定の実施形態では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は、チミジンキナーゼ選択マーカーおよびHYG選択マーカーを含む。特定の実施形態において、第1の選択マーカーは、アミノグリコシド系ホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン、およびG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミン合成酵素(GS)、アスパラギン合成酵素、トリプトファン合成酵素(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、ならびにピューロマイシン、ブラスチシジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、ゼオシン、およびミコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子からなる群から選択され、第2の選択マーカーは、GFP、eGFP、合成GFP、YFP、eYFP、CFP、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed単量体、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、mCFPm、Cerulean、およびT-Sapphire蛍光性タンパク質からなる群から選択される。特定の実施形態において、第1の選択マーカーはグルタミン合成酵素選択マーカーであり、第2の選択マーカーはGFP蛍光性タンパク質である。特定の実施形態では、両方の選択マーカーに隣接する2つのRRSは異なる。
【0657】
特定の実施形態では、選択マーカーは、プロモータ配列に作動可能に連結されている。特定の実施形態では、選択マーカーは、SV40プロモータに作動可能に連結されている。特定の実施形態において、選択マーカーは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモータに作動可能に連結されている。
【0658】
特定の実施形態では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は、3つのRRSを含む。特定の実施形態では、第3のRRSは、第1のRRSと第2のRRSとの間に位置する。特定の実施形態では、第1のRRSと第2のRRSとは同一であり、第3のRRSは、第1のRRSまたは第2のRRSとは異なる。特定の好ましい実施形態において、3つのRSSは全て、互いに異なる。
【0659】
II.d 本発明を実施するために適した例示的ベクター
上記に概説した「単一ベクターRMCE」のほかに、2つの核酸を同時に標的化組込みするために、新規な「2ベクターRMCE」を実施することができる。
【0660】
「2ベクターRMCE」戦略は、本発明によるベクター組合せを用いる本発明による方法において実施される。例えば、限定ではないが、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は3つのRRSを含み、例えば、第3のRRS(「RRS3」)が第1のRRS(「RRS1」)と第2のRRS(「RRS2」)の間に存在し、一方で、第1のベクターは、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列上の第1のRRSおよび第3のRRSに一致する2つのRRSを含み、第2のベクターは、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列上の第3のRRSおよび第2のRRSに一致する2つのRRSを含む場合の配置であり得る。2ベクターRMCE戦略の例を図1に示す。このような2ベクターRMCE戦略により、TIに適した哺乳動物細胞のゲノムにおけるTI後に本発明による発現カセット構成が得られるように、各配列の各RRS対の間に適切な数のSOIを組み入れることによって複数のSOIを導入することが可能になる。
【0661】
2プラスミドRMCE戦略では、3つのRRS部位を使用して、2つの独立したRMCEを同時に実行することを含む(図1)。したがって、2プラスミドRMCE戦略を用いるTIに適した哺乳動物細胞のランディング部位は、第1のRRS部位(RRS1)に対しても第2のRRS部位(RRS2)に対しても交差活性を有していない第3のRRS部位(RRS3)を含む。標的化する2つの発現プラスミドは、効率的標的化のために同じ隣接RRS部位を必要とし、一方の発現プラスミド(前方)はRRS1およびRRS3に隣接し、他方(後方)はRRS3およびRRS2に隣接する。また、2プラスミドRMCEでは、2つの選択マーカーも必要とされる。1つの選択マーカー発現カセットは、2つの部分に分割された。前方プラスミドは、プロモータと、それに続く開始コドンおよびRRS3配列を含む。後方プラスミドは、開始コドン(ATG)を欠き、選択マーカーコード化領域のN末端に融合されたRRS3配列を有する。融合タンパク質のインフレーム翻訳、すなわち作動可能な連結を確実にするために、RRS3部位と選択マーカー配列との間に付加的なヌクレオチドを挿入する必要がある場合がある。両方のプラスミドが正確に挿入された場合にのみ、選択マーカーの完全な発現カセットが組み立てられ、したがって、各選択剤に対する耐性が細胞に与えられる。図1は、2プラスミドRMCE戦略を示す模式図である。
【0662】
単一ベクターRMCEと2ベクターRMCEのどちらも、ドナーDNA上に存在するDNA配列と組込み部位が存在する哺乳動物細胞ゲノム中のDNA配列とを正確に交換することにより、哺乳動物細胞ゲノムのあらかじめ定められた部位に1つまたは複数のドナーDNA分子を一方向性に組み込むことを可能にする。これらのDNA配列は、i)少なくとも1つの選択マーカー、もしくはある種の2ベクターRMCEの場合のような「分割された選択マーカー」、および/またはii)少なくとも1つの外因性SOI、に隣接する2つの異種特異的RRSを特徴とする。
【0663】
RMCEは、リコンビナーゼによって触媒される、標的ゲノム遺伝子座内の2つの異種特異的RRSとドナーDNA分子の間の二重組換えクロスオーバーイベントを伴う。RMCEは、フロントベクターおよびバックベクターに由来する組み合わせられたDNA配列のコピーを、哺乳動物細胞ゲノムのあらかじめ定められた遺伝子座に導入するように設計されている。ただ1回の乗換え事象を伴う組換えとは違って、RMCEは、原核生物ベクターの配列が哺乳動物細胞ゲノム中に導入されず、したがって、宿主の免疫または防御機構の望まれない誘発を減らし、かつ/または防ぐように、実行することができる。RMCE手順は、複数のDNA配列を用いて繰り返すことができる。
【0664】
特定の実施形態において、標的化組込みは、2回のRMCEによって実現され、その際、2つの異なるDNA配列が両方とも、TIに適した哺乳動物細胞のゲノムのあらかじめ定められた部位に組み込まれ、各DNA配列は、ヘテロ多量体ポリペプチドの一部分および/または2つの異種特異的RRSが隣接する少なくとも1つの選択マーカーもしくはその一部分をコードする、少なくとも1つの発現カセットを含む。特定の実施形態において、標的化組込みは、複数回のRMCEによって実現され、その際、複数のベクターに由来するDNA配列が全て、TIに適した哺乳動物細胞のゲノムのあらかじめ定められた部位に組み込まれ、各DNA配列は、ヘテロ多量体ポリペプチドの一部分および/または2つの異種特異的RRSが隣接する少なくとも1つの選択マーカーもしくはその一部分をコードする、少なくとも1つの発現カセットを含む。特定の実施形態において、選択マーカーは、一部が第1のベクターにおいてコードされ、一部が第2のベクターにおいてコードされてよく、その結果、二重RMCEによって両方が正確に組み込まれた場合にのみ、その選択マーカーの発現が可能になる。このようなシステムの例を図1に示す。
【0665】
特定の実施形態において、リコンビナーゼに媒介された組換えによる標的化組込みにより、原核生物ベクターに由来する配列を含まずに、宿主細胞ゲノムの1つまたは複数のあらかじめ定められた組込み部位に、選択マーカーおよび/または多量体ポリペプチドの様々な発現カセットが組み込まれる。
【0666】
記載され、かつ特許請求される様々な実施形態に加えて、本開示の主題は、本明細書に開示され、特許請求される特徴の他の組合せを有する他の実施形態も対象とする。したがって、本明細書に提示される特定の特徴は、本開示の主題が本明細書に開示される特徴の任意の好適な組合せを含むように、本開示の主題の範囲内において他の様式で互いに組み合わせられ得る。本開示の主題の特定の実施形態の前述の上記説明は、例示および説明目的のために提示されている。網羅的であるように、または本開示の主題を開示される実施形態に限定することを意図するものではない。
【0667】
本開示の主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、本開示の主題の組成物および方法に様々な修正および変形を加えることができることは、当業者には明らかである。したがって、本開示の主題が添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内の修正および変形を含むことを意図する。
【0668】
様々な刊行物、特許、および特許出願が本明細書に引用されており、それらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0669】
以下の実施例、図面および配列は、本発明の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0670】
図1】2つの独立したRMCEを同時に実行するために、3つのRRS部位の使用を伴う2プラスミドRMCE戦略のスキーム。
図2】Cre DNAおよびCre mRNAを用いたTI後の生存率回復。
図3】Cre DNA/プラスミドを用いたTI後の交換効率/プール品質、サイズ外側領域:687 AU、サイズ中央領域:132AU、サイズ内領域:27AU。
図4】Cre mRNAを用いたTI後の交換効率およびプール品質、サイズ外側領域:812 AU;サイズ中央領域:114AU;サイズ内領域:32AU。
【0671】
配列の説明
配列番号01 L3リコンビナーゼ認識配列の例示的配列
配列番号02 2Lリコンビナーゼ認識配列の例示的配列
配列番号03:LoxFasリコンビナーゼ認識配列の例示的配列
配列番号04~06:ヒトCMVプロモータの例示的バリアント
配列番号07:例示的なSV40ポリアデニル化シグナル配列
配列番号08:例示的なbGHポリアデニル化シグナル配列
配列番号09:例示的なhGTターミネータ配列
配列番号10:例示的なSV40プロモータ配列
配列番号11:例示的なGFP核酸配列
配列番号12:抗ヒトAβ/ヒトトランスフェリン受容体三価の二重特異性抗体第1の重鎖
配列番号13:抗ヒトAβ/ヒトトランスフェリン受容体三価の二重特異性抗体第2の重鎖
配列番号14:抗ヒトAβ/ヒトトランスフェリン受容体三価の二重特異性抗体第1の軽鎖
配列番号15:抗ヒトAβ/ヒトトランスフェリン三価の二重特異性抗体第2の軽鎖
配列番号16:抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体三価の二重特異性抗体第1の重鎖
配列番号17:抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体三価の二重特異性抗体第2の重鎖
配列番号18:抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体三価の二重特異性抗体第1の軽鎖
配列番号19:抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体三価の二重特異性抗体第2の軽鎖
配列番号20:Creリコンビナーゼアミノ酸配列
配列番号21:最小CreリコンビナーゼmRNA
配列番号22:lox部位パリンドローム配列1
配列番号23:lox部位パリンドローム配列2
配列番号24:コア配列lox部位野生型
配列番号25:コア配列lox部位変異体L3
配列番号26:コア配列lox部位変異体2L
配列番号27:コア配列lox部位変異体LoxFas
配列番号28:コア配列lox部位変異体Lox511
配列番号29:コア配列lox部位変異体Lox5171
配列番号30:コア配列lox部位変異体Lox2272
配列番号31:コア配列lox部位変異体M2
配列番号32:コア配列lox部位変異体M3
配列番号33:例示的な核局在化配列
配列番号34:例示的な核局在化配列
配列番号35:例示的な核局在化配列
配列番号36:例示的な核局在化配列
配列番号37:例示的な核局在化配列
【実施例
【0672】
実施例1
一般的技術
【0673】
1)組換えDNA技術
Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y,(1989)に記載されているように、標準的な方法を用いてDNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造元の説明書に従って使用した。
【0674】
2)DNA配列決定
DNA配列決定は、SequiServe GmbH(Vaterstetten、Germany)で実施した。
【0675】
3)DNAおよびタンパク質の配列分析および配列データ管理
EMBOSS(欧州分子生物学オープンソフトウェアスイート)ソフトウェアパッケージおよびInvitrogenのVector NTIバージョン11.5またはGeneious primeを、配列の作成、マッピング、解析、アノテーション、および図示のために使用した。
【0676】
4)遺伝子およびオリゴヌクレオチド合成
所望の遺伝子セグメントを、Geneart GmbH(レーゲンスブルク、ドイツ)での化学合成によって調製した。合成した遺伝子フラグメントを増殖/増幅のために大腸菌プラスミドにクローニングした。サブクローン化された遺伝子フラグメントのDNA配列は、DNAシークエンシングによって確認された。あるいは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって、またはPCRによって短い合成DNAフラグメントを組立てた。それぞれのオリゴヌクレオチドを、Metabion GmbH(Planegg-Martinsried、ドイツ)によって調製した。
【0677】
5)試薬
特に明記しない限り、全ての市販の化学物質、抗体およびキットを製造業者のプロトコルに従って提供されるように使用した。
【0678】
6)TI宿主細胞株の培養
TI CHO宿主細胞を、湿度85%および5%COの加湿インキュベータ内で37℃で培養した。それらを、300μg/mlハイグロマイシンBおよび4μg/mlの第2の選択マーカーを含有する専売のDMEM/F12ベースの培地で培養した。細胞を、総体積30mlで0.3×10E6細胞/mlの濃度で3または4日ごとに分割した。培養のために、125mlの非バッフル三角三角振盪フラスコを使用した。細胞を5cmの振盪振幅で150rpmで振盪した。Cedex HiRes Cell Counter(Roche)を用いて細胞数を決定した。細胞を60日齢に達するまで培養した。
【0679】
7)クローニング
一般
R部位を用いたクローニングは、以下のフラグメントにある配列に等しい目的の遺伝子(GOI)の隣のDNA配列に依存する。同様に、フラグメントの構築は、等しい配列の重複およびその後のDNAリガーゼによる構築されたDNA中のニックの密封によって可能である。したがって、単一遺伝子、特に正しいR部位を含む予備ベクターのクローニングが必要である。これらの予備ベクターのクローニングに成功した後、R部位に隣接する目的の遺伝子を、R部位のすぐ隣で切断する酵素による制限消化によって切り出す。最後のステップは、1つのステップにおける全てのDNAフラグメントの組立てである。より詳細には、5’-エキソヌクレアーゼは、重複領域(R部位)の5’末端を除去する。その後、R部位のアニーリングを行うことができ、DNAポリメラーゼが3’末端を伸長させて配列中のギャップを埋める。最後に、DNAリガーゼはヌクレオチド間にニックを密封する。エキソヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼおよびリガーゼのような異なる酵素を含有するアセンブリマスターミックスの添加、およびその後の反応混合物の50°Cでのインキュベーションは、単一フラグメントの単一プラスミドへのアセンブリをもたらす。その後、コンピテント大腸菌細胞をプラスミドで形質転換する。
【0680】
いくつかのベクターについては、制限酵素によるクローニング戦略を使用した。適切な制限酵素を選択することによって、所望の目的の遺伝子を切り出し、その後、ライゲーションによって異なるベクターに挿入することができる。したがって、マルチクローニングサイト(MCS)で切断する酵素を使用し、スマートな方法で選択することが好ましく、正しいアレイでフラグメントのライゲーションを行うことができる。ベクターおよびフラグメントが同じ制限酵素で予め切断されている場合、フラグメントおよびベクターの粘着末端は完全に一緒に嵌合し、続いてDNAリガーゼによって連結することができる。ライゲーション後、コンピテント大腸菌細胞をプラスミドで形質転換する。
【0681】
制限消化によるクローニング
制限酵素によるプラスミドの消化のために、以下の成分を氷上で一緒にピペッティングした:
(表)制限消化反応混合物
【0682】
より多くの酵素を1回の消化に使用する場合、1μlの各酵素を使用し、より多いまたはより少ないPCRグレードの水の添加によって体積を調整した。全ての酵素は、それらがnew England Biolabs製のCutSmart緩衝液(100%活性)での使用に適格であり、同じインキュベーション温度(全て37°C)を有するという前提条件で選択された。
【0683】
インキュベーションは、サーモミキサーまたはサーマルサイクラーを使用して行い、試料を一定温度(37℃)でインキュベートした。インキュベーション中、試料を撹拌しなかった。インキュベーション時間を60分に設定した。その後、試料をローディング色素と直接混合し、アガロース電気泳動ゲルにローディングするか、またはさらなる使用のために氷上で4℃で保存した。
【0684】
ゲル電気泳動のために1%アガロースゲルを調製した。そのために、1.5gの多目的アガロースを125エルレンマイヤー振盪フラスコに秤量し、150mlのTAE緩衝液で満たした。アガロースが完全に溶解するまで、混合物を電子レンジで加熱した。0.5μg/mlの臭化エチジウムをアガロース溶液に添加した。その後、ゲルを鋳型にキャストした。アガロースをセットした後、鋳型を電気泳動チャンバに入れ、チャンバをTAE緩衝液で満たした。その後、サンプルをロードした。第1のポケット(左から)に適切なDNA分子量マーカーをロードし、続いてサンプルをロードした。ゲルを<130Vで約60分間泳動した。電気泳動後、ゲルをチャンバから取り出し、UVイメージャで分析した。
【0685】
標的バンドを切断し、1.5mlエッペンドルフチューブに移した。ゲルの精製のために、Qiagen製のQIAquick Gel Extraction Kitを製造者の説明書に従って使用した。さらなる使用のためにDNAフラグメントを-20℃で保存した。
【0686】
ライゲーションのためのフラグメントを、挿入物およびベクターフラグメントの長さおよびそれらの互いの相関に応じて、1:2、1:3または1:5のモル比で一緒にピペットで分注して挿入した。ベクターに挿入されるべきフラグメントが短い場合、1:5の比を使用した。インサートがより長い場合、より少量のインサートをベクターと相関させて使用した。50ngの量のベクターを各ライゲーションに使用し、特定の量のインサートをNEBioCalculatorで計算した。ライゲーションには、NEB製のT4 DNAライゲーションキットを使用した。ライゲーション混合物の一例を以下の表に示す。
【0687】
(表)ライゲーション反応混合物
【0688】
全ての成分を氷上で共にピペッティングし、DNAと水の混合で開始し、緩衝液を添加し、最後に酵素を添加した。反応物を上下にピペッティングすることによって穏やかに混合し、短時間微小遠心し、次いで室温で10分間インキュベートした。インキュベーション後、T4リガーゼを65℃で10分間熱不活性化した。試料を氷上で冷却した。最終ステップにおいて、10個のベータコンピテント大腸菌細胞を、2μlの連結プラスミドで形質転換した(下記参照)。
【0689】
Rサイトアセンブリを介したクローニング
アセンブリのために、各末端にR部位を有する全てのDNAフラグメントを氷上で一緒にピペットで移した。4つを超えるフラグメントがアセンブリされているとき、製造業者によって推奨されるように、全てのフラグメントの等モル比(0.05ng)を使用した。反応混合物の半分は、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mixによって具現化された。全反応体積は40μlであり、PCR清浄水での充填によって到達した。以下の表に、例示的なピペッティング方式を示す。
【0690】
(表)アセンブリ反応混合物
【0691】
反応混合物をセットアップした後、チューブをサーモサイクラー内で常に50℃で60分間インキュベートした。アセンブリが成功した後、10個のベータコンピテント大腸菌を2μlの構築されたプラスミドDNAで形質転換した(以下を参照)。
【0692】
形質転換10ベータコンピテント大腸菌細胞
形質転換のために、10個のベータコンピテント大腸菌細胞を氷上で解凍した。その後、2μlのプラスミドDNAを細胞懸濁液中に直接ピペッティングした。チューブを弾き、氷上に30分間置いた。その後、細胞を42℃の温かいサーマルブロックに入れ、正確に30秒間ヒートショックを与えた。その後すぐに、細胞を氷上で2分間冷却した。950μlのNEB10ベータ増殖培地を細胞懸濁液に添加した。細胞を振盪下、37℃で1時間インキュベートした。次いで、50~100μlを予熱した(37℃)LB-Amp寒天プレート上にピペットで取り、使い捨てスパチュラで広げた。混合物を、37℃で一晩撹拌した。アンピシリンに対する耐性遺伝子を有するプラスミドの組込みに成功した細菌のみが、このプレート上で増殖することができる。翌日、単一コロニーを採取し、その後のプラスミド調製のためにLB-Amp培地で培養した。
【0693】
細菌培養
大腸菌の培養は、1ml/Lの100mg/mlアンピシリンを添加したルリア・ベルターニ(Luria Bertani)を略したLB培地で行い、0.1mg/mlのアンピシリン濃度を得た。異なるプラスミド調製量について、以下の量を単一細菌コロニーで接種した。
【0694】
(表)大腸菌培養体積
【0695】
ミニプレップの場合、96ウェルの2ml深ウェルプレートに、ウェルあたり1.5mlのLB-Amp培地を充填した。コロニーを採取し、爪楊枝を培地に入れた。全てのコロニーを採取すると、プレートは粘着性の空気多孔質膜で閉じた。プレートを37℃のインキュベータ内で200rpmの振盪速度で23時間インキュベートした。
【0696】
ミニプレップの場合、15mlチューブ(換気蓋付き)を3.6ml LB-Amp培地で満たし、細菌コロニーを等しく接種した。インキュベーション中に、爪楊枝を除去せずにチューブ内に残した。96ウェルプレートと同様に、チューブを37℃、200rpmで23時間インキュベートした。
【0697】
マキシプレップの場合、200mlのLB-Amp培地をオートクレーブしたガラス製の1Lの三角フラスコに充填し、約5時間経過した1mlの細菌の日培養物を接種した。三角フラスコを紙栓で閉じ、37℃、200rpmで16時間インキュベートした。
【0698】
プラスミドの調製
ミニプレップの場合、50μlの細菌懸濁液を1ml深ウェルプレートに移した。その後、細菌細胞をプレート内で3000rpm、4℃で5分間遠心分離した。上清を除去し、細菌ペレットを含むプレートをEpMotionに入れた。約90分間実行し、溶出したプラスミドDNAをさらなる使用のためにEpMotionから除去することができた。
【0699】
ミニプレップの場合、15mlチューブをインキュベータから取り出し、3.6ml細菌培養物を2つの2mlエッペンドルフチューブに分割した。チューブを、卓上微量遠心機において室温で3分間、6,800xgで遠心分離した。その後、製造業者の指示に従ってQiagen QIAprep Spin Miniprepキットを用いてミニプレップを行った。プラスミドDNA濃度をNanodropで測定した。
【0700】
マキシプレップは、Macherey-Nagel NucleoBond(登録商標)Xtra Maxi EFキットを製造者の説明書に従って使用して実施した。プラスミドDNA濃度をNanodropで測定した。
【0701】
エタノール沈殿
DNA溶液の体積を2.5倍体積のエタノール100%と混合した。混合物を、-20℃で10分間撹拌した。次いで、DNAを14,000rpm、4℃で30分間遠心分離した。上清を慎重に除去し、ペレットを70%エタノールで洗浄した。次いで、チューブを14,000rpm、4℃で5分間遠心分離した。上清をピペッティングすることによって慎重に除去し、ペレットを乾燥させた。エタノールを蒸発させた際に、適切な量のエンドトキシンを含まない水を添加した。DNAを4℃で一晩水に再溶解する時間を与えた。少量のアリコートを取り、Nanodrop装置を用いてDNA濃度を測定した。
【0702】
実施例2
プラスミド作製
発現カセット比率
上記の前駆体ポリペプチドの発現には、以下の機能的要素を含む転写ユニットを使用した:
-イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の前初期エンハンサーおよびプロモータ、
-ヒト重鎖免疫グロブリン5’非翻訳領域(5’UTR)、
-マウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
-それぞれの前駆体ポリペプチドをコードする核酸、
-ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGH pA)、および
-任意で、ヒトガストリン終結因子(hGT)。
【0703】
発現される所望の遺伝子を含む発現ユニット/カセットの他に、基本的な/標準の哺乳動物発現プラスミドは、
-大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18からの複製起点、および
-大腸菌にアンピシリン耐性を付与するベータラクタマーゼ遺伝子を含む。
【0704】
前方ベクタークローニングおよび後方ベクタークローニング
2プラスミド抗体構築物を構築するために、抗体HCおよびLCフラグメントを、L3およびLoxFAS配列を含む前方ベクター骨格、ならびにLoxFASおよび2L配列ならびにpac選択可能マーカーを含む後方ベクターにクローニングした。CreリコンビナーゼプラスミドpOG231(Wong,E.T.,et al.,Nuc.Acids Res.33(2005)e147;O’Gorman,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(1997)14602-14607)を全てのRMCEプロセスに使用した。
【0705】
それぞれの抗体鎖をコードするcDNAを遺伝子合成(Geneart,Life Technologies Inc.)によって生成した。37℃で1時間、遺伝子合成物およびバックボーンベクターをHindIII-HFおよびEcoRI-HF(NEB)で消化し、アガロースゲル電気泳動によって分離した。挿入フラグメントおよびバックボーンのDNAフラグメントをアガロースゲルから切り取り、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いて抽出した。製造業者のプロトコルに従って迅速ライゲーションキット(Roche)を用いて、3:1の挿入フラグメント/バックボーン比で、精製した挿入フラグメントおよびバックボーンフラグメントをライゲーションした。次いで、42℃で30秒間のヒートショックによってライゲーションアプローチをコンピテント大腸菌DH5αに形質転換し、37℃で1時間インキュベートした後、選択用のアンピシリンを含む寒天プレートに播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
【0706】
翌日、クローンを採取し、ミニプレップまたはマキシプレップのために振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。これは、EpMotion(登録商標)5075(Eppendorf)を用いて、またはそれぞれQIAprepスピンミニプレップキット(Qiagen)/NucleoBond XtraマキシEFキット(Macherey&Nagel)を用いて、実施した。全てのコンストラクトを配列決定して、いかなる不適切な突然変異も存在しないように徹底した(SequiServe GmbH)。
【0707】
第2のクローニング工程において、第1のクローニングの場合と同じ条件を用いて、あらかじめクローニングしたベクターをKpnI-HF/SalI-HFおよびSalI-HF/MfeI-HFで消化した。TIバックボーンベクターをKpnI-HFおよびMfeI-HFで消化した。分離および抽出を、前述したようにして実施した。製造業者のプロトコルに従ってT4 DNAリガーゼ(NEB)を用いて、1:1:1の挿入フラグメント/挿入フラグメント/バックボーン比で、精製した挿入フラグメントおよびバックボーンのライゲーションを4℃で一晩実施し、65℃で10分間、不活性化した。前述したようにして、下記のクローニング工程を実施した。以下のクローニング工程を上記のように行った。
【0708】
クローニングされたプラスミドを、TIトランスフェクションおよびプール作製のために使用した。
【0709】
実施例3
培養、トランスフェクション、選択、プール生成および単一細胞クローニング
TI宿主細胞を、独自のDMEM/F12系培地中、150rpmの一定の撹拌速度で、標準的な加湿条件下(95%rH、37°C、5%CO)で使い捨ての125ml通気振盪フラスコ中で増殖させた。3~4日ごとに、細胞を、3×10E5細胞/mlの濃度の有効濃度の選択マーカー1および選択マーカー2を含有する化学的に定義された培地に播種した。培養物の密度と生存率を、Cedex HiRes細胞カウンタ(F.Hoffmann-La Roche Ltd、Basel、Switzerland)で測定した。
【0710】
安定なトランスフェクションのために、等モル量のフロントおよびバックベクターを混合した。1μgのCre発現プラスミドまたはCre mRNAを5μgの混合物に添加した、すなわち5μgのCre発現プラスミドまたはCre mRNAを25μgのフロントベクター混合物およびバックベクター混合物に添加した。
【0711】
トランスフェクションの2日前に、TI宿主細胞を、4x10E5細胞/mlの密度で、新鮮な培地に播種した。トランスフェクションは、NucleofectorキットV(Lonza、Switzerland)を使用して、製造元のプロトコルに従ってNucleofectorデバイスで実施した。3x10E7個の細胞を、30μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を、選択剤を含まない30mlの培地に播種した。
【0712】
播種後5日目に、細胞を遠心分離し、ピューロマイシン(選択剤1)および1-(2’-デオキシ-2’-フルオロ-1-β-D-アラビノフラノシル-5-ヨード)ウラシル(FIAU;選択剤2)を含む80mlの化学的に定義された培地に、組換え細胞の選択のために6×10E5細胞/mlの有効濃度で移した。細胞を37℃、150rpmでインキュベートした。5%のCO2および85%の湿度であり、この日以降分割しなかった。培養物の細胞密度および生存率を定期的にモニターした。培養物の生存率が再び増加し始めたとき、選択剤1および2の濃度を、以前に使用した量の約半分に減少させた。細胞の回収を促進するために、生存率が40%より高く、かつ生細胞濃度(VCD)が0.5×10E6細胞/mLより高い場合は選択圧を下げた。したがって、4×10E5細胞/mlを遠心分離し、選択培地II(化学限定培地、1/2選択マーカー1および2)40mlに再懸濁した。これらの細胞を以前と同じ条件で、かつこの場合も分割せずに、インキュベートした。
【0713】
選択を開始してから10日後、細胞内GFPおよび細胞表面に結合した細胞外三価の二重特異性抗体の発現を測定するフローサイトメトリーによって、Cre媒介性カセット交換の成功を確認した。ヒト抗体の軽鎖および重鎖に対するAPC抗体(アロフィコシアニン標識F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG)を、FACS染色用に使用した。フローサイトメトリーは、BD FACS Canto IIフローサイトメータ(BD、Heidelberg、Germany)を使用して実施した。試料あたり10,000イベントを測定した。生細胞を、側方散乱(SSC)に対する前方散乱(FSC)のプロットでゲートした。生細胞ゲートは、トランスフェクトされていないTI宿主細胞で定義され、FlowJo7.6.5ENソフトウェア(TreeStar、Olten、Switzerland)を用いて、全ての試料に適用された。GFPの蛍光をFITCチャネルで定量し(488nmで励起、530nmで検出)、APCチャネル(645nmで励起、660nmで検出)において、三価の二重特異性抗体を測定した。CHO親細胞、すなわちTI宿主細胞の作製に使用された細胞を、GFPおよび三価の二重特異性抗体発現に対する陰性対照として使用した。選択開始から14日後、生存率は90%を超え、選択は完了したと見なされた。
【0714】
CreプラスミドおよびCre mRNAを比較に使用した場合、選択後、安定にトランスフェクトされた細胞のプールを限界希釈による単一細胞クローニングに供した。この目的のために、細胞をCell Tracker Green(商標)(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)で染色し、384ウェルプレートに0.6細胞/ウェルで播種した。単一細胞クローニングおよびその後の全ての培養工程では、選択剤2を培地から除外した。1つの細胞のみを含むウェルを、明視野および蛍光ベースのプレートイメージングによって同定した。1つの細胞を含むウェルのみを、さらに検討した。プレーティング後約3週間で、コンフルエントなウェルからコロニーを採取し、96ウェルプレートでさらに培養した。96ウェルプレートで4日後、培養培地中の抗体力価を、抗ヒトIgGサンドイッチELISAで測定した。簡単に説明すると、抗体を、MaxiSorpマイクロタイタープレート(Nunc(商標)、Sigma-Aldrich)に結合した抗ヒトFc抗体で細胞培養液から捕捉し、捕捉抗体とは異なるエピトープに結合する抗ヒトFc PODコンジュゲートで検出した。二次抗体を、BM化学発光ELISA基質(POD)(Sigma-Aldrich)を用いた化学発光によって定量した。
【0715】
実施例4
FACSスクリーニング
FACS解析を実施して、トランスフェクション効率およびトランスフェクションのRMCE効率を調べた。トランスフェクトされたアプローチの4×10E5細胞を遠心分離し(1200rpm、4分)、1mL PBSで2回洗浄した。PBSを用いる洗浄工程の後、沈殿物を400μLのPBSに再懸濁し、FACSチューブ(セルストレーナーキャップ付きのFalcon(登録商標)丸底チューブ、Corning)に移した。FACS Canto IIを用いて測定を実施し、ソフトウェアFlowJoを用いてデータを解析した。
【0716】
実施例5
フィードバッチ培養
フィードバッチ産生培養は、独自の化学限定培地を含む振盪フラスコまたはAmbr15容器(Sartorius Stedim)で実施した。細胞を0日目に1×10E6細胞/mLで播種し、3日目に温度を変化させた。3、7、および10日目に、培養物に独自のフィード培地を加えた。Vi-Cell(商標)XR装置(Beckman Coulter)を使用して、0、3、7、10、および14日目に、培養物中の細胞の生存細胞数(VCC)および生存率割合を測定した。Bioprofile 400 Analyzer(Nova Biomedical)を使用して、7、10および14日目にグルコース濃度および乳酸濃度を測定した。フィードバッチ開始後14日目に、遠心分離(10分、1000rpmおよび10分、4000rpm)によって上清を採取し、濾過(0.22μm)によって清澄化した。UV検出を伴うタンパク質A親和性クロマトグラフィーを使用して、14日目の力価を測定した。
【0717】
製品の品質は、CaliperのLabChip(Caliper Life Sciences)によって決定した。
【0718】
実施例6
三価の二重特異性抗体の発現に対するベクター設計の効果
TI宿主における生産性に対する発現カセット構成の影響を調べるために、RMCEプールを、ドメインクロスオーバー/交換を伴うさらなるFabフラグメントを有する三価の二重特異性抗体の個々の鎖に対する異なる数および編成の発現カセットを含有する2つのプラスミド(フロントおよびバックベクター)をトランスフェクトすることによって作製した。フローサイトメトリーによるRMCEの選択、回収および検証の後、プールの生産性を14日間のフィードバッチ産生アッセイで評価した。
【0719】
ドメイン交換を伴うさらなるFabフラグメントを有する異なる三価の二重特異性抗体の発現に対する抗体鎖発現カセット構成の効果を評価した。全てが異なる標的特異性を有していた。
【0720】
4つのBS抗体について、以下の結果が得られた:
MP=主生成物、eff.力価=有効力価=主生成物の%を乗算した力価
【0721】
実施例7
二重特異性三価の抗体の発現に対するベクター設計の効果
TI宿主における生産性に対する発現カセット構成の影響を調べるために、RMCEプールを、TCBフォーマットの三価の抗体の異なる数および構成の個々の鎖を含む、2つのプラスミド(前方および後方ベクター)をトランスフェクトすることによって、作製した。フローサイトメトリーによるRMCEの選択、回収および検証の後、プールの生産性を14日間のフィードバッチ産生アッセイで評価した。特定のベクター構成について、参照プールと比較して力価の増加が観察された。
【0722】
5つの異なるTCBの発現に対する抗体鎖発現カセット構成の影響を評価した。TCB1~5は全て異なる標的特異性を有していた。TCB3を4つの異なる抗CD3結合部位で試験した。
【0723】
TCB-1については、以下の結果が得られた。参照構成は灰色で陰影が付けられている。
【0724】
TCB-3については、以下の結果が得られた:
【0725】
TCB-2、-4および-5については、以下の結果が得られた:
MP=主生成物、eff.力価=有効力価=主生成物の%を乗算した力価
【0726】
実施例8
ドメイン交換を伴う二価の二重特異性抗体の発現に対するベクター設計の効果
TI宿主における生産性に対する発現カセット構成の影響を調べるために、RMCEのプールを、ドメインクロスオーバー/交換を伴う二価の二重特異性抗体の個々の鎖に対する異なる数および編成の発現カセットを含有する2つのプラスミド(前方および後方ベクター)をトランスフェクトすることによって作製した。フローサイトメトリーによるRMCEの選択、回収および検証の後、プールの生産性を14日間のフィードバッチ産生アッセイで評価した。
【0727】
ドメイン交換を伴う6つの異なる二価の二重特異性抗体について、安定なトランスフェクション細胞における発現収率および生成物品質に対する抗体鎖発現カセット構成の効果を評価した。全てが異なる標的特異性を有していた。いくつかについては、異なるVH/VL対の効果も分析した。これらの10の異なる抗体について、以下の結果が得られた。
k=ノブ変異を有する重鎖、h=ホール変異を有する重鎖;l=軽鎖、xl=ドメイン交換を有する軽鎖、var=異なる結合部位配列
【0728】
実施例9
多価の二重特異性抗体の発現に対するベクター設計の効果
TI宿主における生産性に対する発現カセット構成の影響を調べるために、RMCEプールを、多価の二重特異性抗体の異なる数および構成の個々の鎖を含む、2つのプラスミド(前方および後方ベクター)をトランスフェクトすることによって、作製した。フローサイトメトリーによるRMCEの選択、回収および検証の後、プールの生産性を14日間のフィードバッチ産生アッセイで評価した。
【0729】
多価の二重特異性抗体の発現に対する抗体鎖発現カセット構成の影響を評価した。
多価の二重特異性抗体について、以下の結果が得られた:
【0730】
実施例10
CRE mRNA標的化組込みは、CHOプールにおいて陽性クローンの数の増加をもたらす
複雑な抗体フォーマットを生成するためのCHOプールは、CREプラスミドまたはCRE mRNAのいずれかを用いて作製される。選択期間の前後に、CHOプール中のクローンの絶対数を、クローン特異的タグを用いて測定する。このクローン特異的タグは、標的化組込み技術の一部であり、プールサイズおよび不均一性の識別を可能にするディープシーケンシングを使用して読み出される。選択期間後、CRE mRNA作製CHOプール中のクローンの絶対数は、CREプラスミド作製CHOプール中よりも有意に高い。したがって、CREプラスミドの代わりにCRE mRNAを使用することによって、より大きなサイズおよび不均一性を有するCHOプールが製造され、それによって高力価および生成物品質を有するCHOクローンを見出す確率が高まる。さらに、CRE mRNA作製CHOプール由来のクローンの増加は、CREプラスミド作製CHOプール由来のクローンと比較してより安定である。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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