(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】コンデンサラン型電動機用電源装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/16 20060101AFI20241017BHJP
H02P 25/04 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H02P25/16
H02P25/04
(21)【出願番号】P 2022007146
(22)【出願日】2022-01-20
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北川 竜平
(72)【発明者】
【氏名】阿隅 結夢
(72)【発明者】
【氏名】清水 伸
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-054585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/16
H02P 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに90度位相が相違する2つの単相出力を与える3相―2相変換変圧器の前記単相出力をそれぞれ母線に接続し、母線の一方をコンデンサラン型電動機の主巻線接続用母線、母線の他方を前記コンデンサラン型電動機の副巻線接続用母線とする
とともに、
前記コンデンサラン型電動機の主巻線と副巻線は、遮断器を介して3相―2相変換変圧器の前記母線にそれぞれ接続されるとともに、同一の前記コンデンサラン型電動機の前記遮断器は同期して開閉操作されることを特徴とするコンデンサラン型電動機用電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサラン型電動機用電源装置であって、
前記主巻線接続用母線に主巻線を接続し、前記副巻線接続用母線に副巻線を接続する前記コンデンサラン型電動機を複数配置可能とするコンデンサラン型電動機用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサラン型電動機用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業プラントにおいて、単相交流により動作するコンデンサラン型電動機を複数台同時に給電するシステムの需要が高くなり、システムを運用する上では高い信頼性が求められる。
【0003】
図2は、係る場合に一般的に利用されているコンデンサラン型電動機用電源装置の構成例を示したものである。従来のコンデンサラン型電動機用電源装置は、
図2に示すように、単相変圧器12が三相電源11を受電し、単相電源を取り出して母線13に給電することで、各電動機14a、14bの主巻線15a、15bへ母線電圧に応じた位相の電流を、補助巻線16a、16bへ適切な容量のコンデンサ17a、17bを直列接続することで主巻線15a、15bとは90度位相の進んだ電流を供給する。
【0004】
他方、コンデンサラン型電動機用電源装置に関して特許文献1では、単一のコンデンサラン型電動機に対し、「電源はまた、3相電力を2相電力に変えるように構成された「スコット結線された」変圧器として提供することもできる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した
図2の構成のコンデンサラン型電動機において、コンデンサ17a、17bは消耗品であり、また他の電気製品よりも寿命が短いことから、電動機の運転台数が増加すると、短いスパンで定期的な容量の確認や部品交換が必要となるため、メンテナンス頻度の低減および信頼性の向上が困難である。
【0007】
このことから、個々の電動機に対するコンデンサが無くても電動機を運用可能とする方式を検討する必要がある。
【0008】
これに対し、特許文献1では、スコット結線変圧器の利用を提案してはいるものの、1つの電源装置から複数のコンデンサラン型電動機に対して供給する場合は想定されていない。特許文献1をそのまま複数の電動機に適用した場合、単一の電動機又は回路の故障により全ての電動機を同時に停止する必要がある。
【0009】
そこで、本発明では、コンデンサラン型電動機を複数台運用時に、単一の電動機又は回路の故障が発生した場合も、残りの健全な電動機は運転を継続可能とするコンデンサラン型電動機用電源装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する為に、本発明においては「互いに90度位相が相違する2つの単相出力を与える3相―2相変換変圧器の前記単相出力をそれぞれ母線に接続し、母線の一方をコンデンサラン型電動機の主巻線接続用母線、母線の他方を前記コンデンサラン型電動機の副巻線接続用母線とすることを特徴とするコンデンサラン型電動機用電源装置。」とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、コンデンサラン型電動機のメンテナンス性の向上と、電動機を複数台同時に運用する場合における電動機の保護を両立することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係るコンデンサラン型電動機用電源装置の概略構成例を示す図。
【
図2】従来のコンデンサラン型電動機用電源装置の概略構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【0014】
以下、本発明の実施例によるコンデンサラン型電動機用電源装置の仕組みを、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一の要素には同一の符号を付け、これらの要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の実施例に係るコンデンサラン型電動機用電源装置の概略構成例を示す図である。
図1に示す電源装置1は、スコット結線変圧器2と、主巻線用母線3と、補助巻線用母線4から構成される。
【0016】
このうちスコット結線変圧器2は、いわゆる3相―2相変換変圧器であり、その出力として、互いに位相が90度相違する2つの単相交流出力を得る。従って、スコット結線変圧器は、例えば、ウッドブリッジ結線変圧器やループデルタ結線変圧器で実現しても良い。
【0017】
図1の例のスコット結線変圧器2では、3相電源5を受電して主巻線用母線3に基準となる電圧を、補助巻線用母線4に90度位相の進んだ電圧を給電する。本発明のコンデンサラン型電動機用電源装置では、3相―2相変換変圧器の単相出力を夫々母線に接続した点に特徴を有する。また母線の一方をコンデンサラン型電動機の主巻線母線3とし、母線の他方をコンデンサラン型電動機の副巻線母線4として使用する。
【0018】
他方、電源側から給電される負荷であるコンデンサラン型電動機8a、8bについてみると、電動機8a、8bは、主巻線9と補助巻線10を有しており、互いに位相が90度異なる単相交流を主巻線用母線3と補助巻線用母線4から給電することで駆動する。
【0019】
複数のコンデンサラン型電動機8a、8bは、
図1に示すように、主巻線の接続端9a、9b、9c、9dが主巻線用母線3の遮断器6a、6b、6c、6dに接続され、補助巻線の接続端10a、10b、10c、10dが補助巻線用母線3の遮断器7a、7b、7c、7dに接続される。
【0020】
なおこの時、同一のコンデンサラン型電動機に給電する遮断器6a、6b及び7a、7bは開閉状態を常に同期させ、あるいは遮断器6c、6d及び7c、7dは開閉状態を常に同期させる必要がある。
【0021】
また、
図1に示すように、主巻線用母線3の遮断器6a、6b、6c、6dまたは補助巻線用母線4の遮断器7a、7b、7c、7dは、電動機8a、8bまたは回路に対して電気的不具合が生じた場合に、対応する遮断器を開放することで事故電流を除去するため、上位の変圧器や他の電動機を停止させない。そのため、複数の電動機8a、8bを電源装置1に繋いでも、個々の電動機の健全性が確保される。、
上記
図1の構成とすることにより、従前のコンデンサラン型電動機用電源装置と比べて、スコット結線変圧器2の活用によってコンデンサを排除した電源構成を可能とする。
【0022】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
1:電源装置
2:スコット結線変圧器
3:主巻線用母線
4:補助巻線用母線
5:3相電源
6a、6b、6c、6d:遮断器
7a、7b、7c、7d:遮断器
8a、b:コンデンサラン型電動機
9a、9b、9c、9d:主巻線の接続端
10a、10b、10c、10d:補助巻線の接続端
11:3相電源
12:単相変圧器
13:母線
14a、14b:コンデンサラン型電動機
15a、15b:主巻線
16a、16b:補助巻線
17a、17b:コンデンサ