(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】異常予兆診断システム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20241017BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
(21)【出願番号】P 2022028685
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 優治
(72)【発明者】
【氏名】大津 賢治
(72)【発明者】
【氏名】久保田 亮
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 賢司
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0019297(US,A1)
【文献】特開2015-175732(JP,A)
【文献】特開2006-208277(JP,A)
【文献】特開2005-241089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0182381(US,A1)
【文献】特開2022-038500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁に取り付けられ、弁の摺動音を検出する少なくとも1つの音響センサと、
前記音響センサの検出信号を処理する信号処理部と、
前記信号処理部で処理され、少なくとも1つの前記音響センサの検出信号から弁の摺動音の周波数分布および信号強度を算出し、前記周波数分布の特徴から摺動面の状態の種類を求め、前記信号強度から漏洩リスクと摩擦係数とを取得する分析部と、
前記分析部で取得した前記漏洩リスクまたは前記摩擦係数により、弁の流体を閉止する機能、動的機能または流量調節機能に関する正常か否かを含む劣化の程度を判定して、弁の分解を含むメンテナンス時期を予測する判定部と、
前記摺動面の状態によって摺動音の周波数分布が変化する原理を対応付けて、漏洩リスクまたは摩擦係数の程度を判定した根拠を提示する表示部と、
を備えることを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記分析部は、前記摺動面の状態の種類として、腐食または焼付き等の凹凸形状の劣化であるか、噛み込み傷等のエロ-ジョンによる溝状の傷であるか、または正常かを判定する
ことを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項3】
請求項2に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記分析部は、有意な信号の周波数帯域が広帯域化した場合に、摺動面において前記凹凸形状の劣化の程度が悪化していると判定し、
前記判定部は、周波数分布の広帯域化の程度により摺動面状態の凹凸の程度または数が増加していることを対応付け、摺動面の漏洩リスクと摩擦係数を求める
ことを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項4】
請求項3に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記分析部は、前記周波数分布の広帯域化について、300kHzを閾値として前記凹凸形状の劣化であるか否かを判定する
ことを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項5】
請求項2に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記分析部は、低周波数の強度が大きくなった場合に、摺動面において前記溝状の傷の劣化の程度が悪化していると判定し、
前記判定部は、低周波数強度の増加程度により摺動面状態の傷の程度または数が変化していることを対応付け、摺動面の漏洩リスクと摩擦係数を求める
ことを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項6】
請求項1に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記信号処理部は、弁の弁体と弁座との摺動部、グランドパッキンと弁棒との摺動部、弁棒のネジ部の摺動部、電動弁のウォームギアの摺動部、または空気作動弁のピストン部の摺動部で発生する摺動音を検出した音響センサの信号を処理する
ことを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項7】
請求項6に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記分析部が、前記弁の弁体と弁座との摺動部においては、弁体の着座時に複数回発生する摺動音のうち最後の摺動音に基づいてメンテナンス時期を予測することを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項8】
請求項1に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記信号処理部は、アコースティックエミッションセンサ、圧電センサ、または超音波センサ音響センサのいずれかの信号を処理する
ことを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項9】
請求項6に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記信号処理部は、前記弁体と弁座の摺動部、前記弁棒とグランドパッキンの摺動面、前記弁棒のネジ部の摺動部、前記電動弁のウォームギアの摺動部、または前記空気作動弁のピストン部の摺動部の摺動音の直接波の伝播経路となる弁外表面の位置に直接または導波棒を介して設置される音響センサの信号を処理する
ことを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項10】
請求項6に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記音響センサは、組込みまたは取り外し可能な固定治具または接着剤またははんだ付けまたは手持ちにより設置され、
前記取り外し可能な固定治具は磁石、吸盤、万力、ボルトのうちひとつまたは複数により、弁外表面に直接設置されるか、または地面に設置された三脚または柱や他の機器から伸びたアームにより設置される
ことを特徴とする異常予兆診断システム。
【請求項11】
請求項6に記載の異常予兆診断システムにおいて、
前記弁が断熱材や壁で覆われている場合、前記断熱材や壁に開閉可能な筒状のアクセス通路を確保し、そこに導波棒と一体となった筒状の取付治具が差し込まれ、前記導波棒が前記音響センサおよび前記弁以外に接触しないよう設置される
ことを特徴とする異常予兆診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁等に用いられている摺動部の異常予兆診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れを閉止する機能を持つ弁は、駆動部により弁体と弁座の間の流路を閉じることで、流体の流れを止めると共に、弁から流体が漏れ出ることを防いでいる。
【0003】
例えば、電動弁では、モータの回転駆動力の方向を90°変化させるウォームギア、回転駆動力を直進駆動力に変換する弁棒のネジ部、直進運動する軸表面からの流体の漏洩を防止するグランドパッキン部、弁体と弁座の接触面であるシート部等から構成される要素が連動することで流体の流れを止めるが、それぞれの要素において摺動が発生している。これらの摺動部では、摩擦による摺動部の劣化が生じ、シート部からの漏洩のリスクおよび駆動力の損失が大きくなる。
また、空気作動弁では、ウォームギアの代わりに、ピストンシール部の摺動劣化が生じる。
【0004】
上記の摺動部は作動回数に応じて摺動劣化が生じるため、分解点検により、摺動劣化が進む弁を抽出し、部品交換および整備を実施することで、弁の不具合発生を防止している。しかし、分解点検には多くの労力と費用が必要となる。
【0005】
原子力発電設備においても、事故を未然に防止するために定期検査において、弁の分解点検が実施されているが、大口径弁の分解点検はクレーンを必要とし、膨大な労力、コストが必要となる。また、放射線量が高い系統に設置される弁の分解点検においては被ばく量が高くなる場合がある。
【0006】
音を分析して弁の異常を検知する技術として、例えば、特許文献1の技術がある。特許文献1には、レシプロ型コンプレッサから発する音をマイクロホンで音響信号に変換し、その音響信号をフィルタに取り込んで所望の周波数成分を抽出し、フィルタ処理された音響信号をフーリエ変換器により周波数分析し、その周波数分析結果に基づいてデータ分割器により音響信号を周波数帯域ごとに分割して平均化処理し、そのデータ分割器の出力に基づいて主成分分析器により主成分分析し、その主成分分析の結果に基づいて主成分座標系にマッピングしてコンプレッサの異常を判断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の先行技術では、音の主成分分析により異常を判断することができるが、異常な信号を検知しなかった場合に正常と判断し、正常である技術的根拠を提示することが困難であるために、取るべき対策が提示できない。
【0009】
本発明の目的は、弁を分解することなく、高い精度で弁の動的機能、流量調節機能および流体を閉止する機能の劣化予兆診断を行うと共に、診断結果の技術的根拠・劣化原因の提示を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の異常予兆診断システムは、弁に取り付けられ、弁の摺動音を検出する少なくとも1つの音響センサと、前記音響センサの検出信号を処理する信号処理部と、前記信号処理部で処理され、少なくとも1つの前記音響センサの検出信号から弁の摺動音の周波数分布および信号強度を算出し、前記周波数分布の特徴から摺動面の状態の種類を求め、前記信号強度から漏洩リスクと摩擦係数とを取得する分析部と、
前記分析部で取得した前記漏洩リスクまたは前記摩擦係数により、弁の流体を閉止する機能、動的機能または流量調節機能に関する正常か否かを含む劣化の程度を判定して、弁の分解を含むメンテナンス時期を予測する判定部と、前記摺動面の状態によって摺動音の周波数分布が変化する原理を対応付けて、漏洩リスクまたは摩擦係数の程度を判定した根拠を提示する表示部と、を備えるようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弁を分解することなく、弁および弁が組み込まれたプラントや機器の運用・保全の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】電動仕切弁の断面と音響センサの設置位置を示す図である。
【
図2】手動玉型弁の断面と音響センサの設置位置を示す図である。
【
図3】実施形態の異常予兆診断装置の構成を示す図である。
【
図5】音響センサの検出信号の一例を示す図である。
【
図6】弁の芯ずれを検出する音響センサの設置位置を示す図である。
【
図7】手動玉型弁の閉操作において、弁体が開の状態から着座までのハンドルを回転させたときの、検出信号の波形である。
【
図8】手動玉型弁の閉操作において、弁体が弁座に着座した後、手動ハンドルを完全に停止するまで回転させたときの、検出信号の波形である。
【
図9】スペクトル分析部が連続型の摺動音の周波数分布を算出するフロー図である。
【
図10】摺動面の劣化モードと摺動音の周波数分布の関係を示す図である。
【
図11】摺動音のある周波数領域の信号強度と摺動部の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を示す図である。
【
図12A】面粗さと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を示す図である。
【
図12B】摩擦係数と摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を示す図である。
【
図12C】漏洩リスクと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施形態の異常予兆診断装置は、電動仕切弁のウォームギア、弁棒ネジ部、弁棒とグランドパッキンの接触面、弁体と弁座の接触面等の摺動部のそれぞれについて、弁の開閉作動により発生するアコースティックエミッション(弾性波)を摺動音として音響センサにより測定し、測定した摺動音に基づいて、摺動音の周波数分布および信号強度を算出し、周波数分布の特徴から摺動面の状態の種類を求め、信号強度から漏洩リスクと摩擦係数とを取得し、摺動部の劣化状態を診断し、メンテナンス時期を予測する。
【0014】
実施形態の異常予兆診断装置の説明にあたり、まず、
図1により診断対象の電動仕切弁への音響センサの設置について説明する。
図1は、電動仕切弁1(以下、弁1と記す)の断面と音響センサ2の設置位置を示す図である。
【0015】
弁1のウォームギア24、弁棒ネジ部25、弁棒4とグランドパッキン28の接触面、および弁体29と弁座30の接触面では、弁1の開閉動作時に、摺動が発生する。このため、これらの摺動部近傍の、摺動音の直接波の伝播経路となる弁1の外表面の位置に、直接または聴針棒31(導波棒、ウェーブガイドとも呼ぶ)を介して、音響センサ2をそれぞれ設置する。
【0016】
ちなみに、ウォームギア24が回転することにより弁棒ネジ部25が上下し、弁棒ネジ部25と一体になった弁棒4と弁棒4に接続された弁体29も上下する。即ち、ウォームギア24の回転運動が弁棒ネジ部25によって弁棒4の上下運動に変換される際に、ウォームギア24と弁棒ネジ部25の間で摺動が生じる。そして、弁棒4とグランドパッキン28の間でも摺動が生じ、弁体29と弁座30の間でも摺動が生じる。
【0017】
なお、
図1では、弁1の外表面として、弁棒4とグランドパッキン28の摺動に対応する位置に音響センサ2が聴針棒31を介して設置されていると共に、弁体29と弁座30の摺動に対応する位置(弁1の底部)に音響センサ2が直接設置されている。
【0018】
また、弁1の開閉動作の際には、弁1の駆動部5であるモータ22または手動ハンドル23に音響センサ2を設置して、駆動部5の駆動状態の判定を行う。また、他の音響センサ2の検出時の雑音低減に利用する。
【0019】
音響センサ2を摺動部近傍に直接設置する際には、音響センサ2と検出面の間に、音響伝達媒質としてカプラント21を介在させる。
音響センサ2を、聴針棒31を介して設置する場合には、音響センサ2と聴針棒31の間にカプラント21を介在させる。
カプラント21の材質は、グリス、ワックス、接着剤、潤滑油、水、ジェル等である。
【0020】
音響センサ2、または、音響センサ2および聴針棒31の固定は、手持ちで押し当てる、または固定治具を用いて行う。この固定治具は、検出表面に対して磁石、吸盤、万力、ボルト、接着剤、溶接、はんだによって取り付けられていても、地面に設置したアーム、三脚により固定されていてもよい。空気層を介することにより音の伝播が小さくなるため、同一部品に音響センサ2を取り付けることが好ましい。
【0021】
音響センサ2には、アコースティックエミッションセンサまたは圧電センサ、超音波センサ、加速度センサを適用することができる。
【0022】
図1では、弁1の摺動音を検出する音響センサ2の設置位置について説明したが、手動玉形弁でも、同様に、音響センサ2を設置して、摺動音を検出することができる。
【0023】
図2は、手動玉型弁の断面と音響センサ2の設置位置を示す図である。
手動玉型弁では、開状態から閉操作する場合に、手動ハンドル23を閉方向に回転すると、弁棒4が降下し、弁体29と弁座30の摺動部で摺動が発生する。
実施形態の異常予兆診断装置は、ハンドル部および弁箱側面に音響センサ2を設置し、
手動ハンドル23の操作音(ハンドル操作音)、および弁体29と弁座30の摺動部の摺動音(弁座摺動音)を検出する。
【0024】
なお、弁座摺動音以外の構成部品の摺動音は、ハンドルの操作音、あるいは、グランドパッキンと弁棒との摺動部で発生する摺動音、弁棒のネジ部の摺動部で発生する摺動音、電動弁のウォームギアの摺動部で発生する摺動音、または空気作動弁のピストン部の摺動部で発生する摺動音のいずれかあるいは複数の摺動音の組み合わせである。ここで(手動玉型弁の場合)、手動ハンドル23の操作音も弁座摺動音以外の構成部品の摺動音の1つである。
【0025】
詳細には、手動ハンドル23の音響センサは、ハンドル操作音だけでなく、弁座で発生した摺動音が伝播する音響波も検出している。また、弁箱側面の音響センサ2は、弁座摺動音だけでなく、手動ハンドル23で発生したハンドル操作音が伝播する音響波も検出している。
図1で説明した弁1も同様である。
【0026】
実施形態の異常予兆診断装置は、このような複数の音源が混在した検出信号の中から、所定の音源(例えば弁座摺動音)成分を抽出する。以下に、その方法を説明するが、電動仕切弁および手動玉形弁以外の方式の弁、他の操作方法においても同様に適用できる。
【0027】
実施形態の異常予兆診断装置20の構成を
図3により説明する。なお、本明細書では、音響センサ2と異常予兆診断装置20とから構成されるシステムを、異常予兆診断装置システムと呼ぶ。
【0028】
異常予兆診断装置20は、弁1の駆動部5に設けた音響センサ2aによりウォームギア24の摺動音を検出し、音響センサ2bにより弁棒4とグランドパッキン28の接触面の摺動音を検出し、音響センサ2cにより弁体29と弁座30の接触面の摺動音を検出して、異常予兆診断を行う。なお、異常予兆診断装置20は、音響センサ2a、2b、2cに限定されず、
図1または
図2に示す音響センサ2により検出した摺動音により異常予兆診断を行えることは言うまでもない。
【0029】
異常予兆診断装置20は、少なくともひとつの音響センサ2で検出した摺動音の信号を処理する信号処理部9と、信号処理部9で取得した摺動部の摺動音に基づいて、摺動部の漏洩量値・面粗さ値・摩擦係数値等を求める分析部11と、分析部11に求めた分析結果に基づいて、弁1の漏洩発生・流量許容値超過までの作動回数や運転時間の推定、仕切能力の推定、および、異常判定を行う判定部16と、分析部11の分析に用いた技術根拠および判定部16の判定根拠を出力する表示部50と、から構成される。
【0030】
信号処理部9は、異常予兆診断装置20に接続する音響センサ2のそれぞれの検出信号を処理する処理部であり、検出信号を所定のレベルに増幅する増幅部6と、特定の周波数領域の弾性波、振動成分、騒音などをカットするハイパスフィルタ7と、音響センサ2の検出信号をデジタル変換するA/D変換器8と、から構成される。ハイパスフィルタ7は、バンドパスフィルタであってもよい。
また、信号処理部9は、さらにローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、または包絡線検波回路を備えて弾性波の信号弁別を高めるようにしてもよい。
【0031】
詳しくは、増幅部6は音響センサ2の数分の増幅器を有し、ハイパスフィルタ7には、増幅器の増幅した検出信号をフィルタリングする音響センサ2の数分のフィルタを有している。A/D変換器8は、増幅・フィルタリングした複数の音響センサ2の検出信号を同期して、デジタル変換する。
【0032】
分析部11は、信号処理部9で処理した少なくともひとつの音響センサ2で検出した摺動音から所定の摺動部の摺動音の波形を抽出あるいは分離する摺動音の波形抽出・分割部10と、摺動音の波形を周波数領域で解析するスペクトル分析部15と、スペクトル分析部15で求めた摺動音の信号強度から、漏洩量値、面粗さを含む摺動面状態、摩擦係数値のそれぞれを求める漏洩リスク取得部12と摺動面状態取得部13と摩擦係数値取得部14とを有する。
摺動音の波形抽出・分割部10と漏洩リスク取得部12と摺動面状態取得部13と摩擦係数値取得部14の詳細については後述する。
【0033】
判定部16は、漏洩リスク取得部12と摺動面状態取得部13と摩擦係数値取得部14で取得した漏洩量、面粗さを含む摺動面状態、摩擦係数およびこれらの変化率に基づいて、摩擦損失の増大を含む異常の判定を行う異常判定部19と、漏洩発生・流量許容値超過までの作動回数・運転時間を推定する漏洩発生・流量許容値超過までの作動回数・運転時間推定部17と、駆動部の操作力情報とを組み合わせることで仕切能力を推定する仕切能力の推定部18と、を有する。
【0034】
表示部50は、分析部11の分析に用いた技術根拠および判定部16の判定根拠を出力する技術根拠出力部52と、判定根拠出力部51と、を有する。技術根拠出力部52と判定根拠出力部51の詳細は後述する。
【0035】
より具体的には、異常予兆診断装置20は、アンプやA/D変換器等のアナログ信号回路、内蔵するプログラムにより音響分析・判定を行うマイクロコンピュータ回路、分析結果や判定結果を表示する表示デバイス等から構成する。
【0036】
異常予兆診断装置20は、弁1の点検時に、作動流体の流れを止めた状態で、弁1の駆動部5を駆動させ、弁棒4を上下または回転させることにより、弁1のウォームギア24、弁棒4とグランドパッキン28の接触面、および弁体29と弁座30の接触面を摺動する。異常予兆診断装置20は、音響センサ2a、2b、2cにより摺動音を検出して、異常の判定、仕切能力の推定、漏洩発生・流量許容値超過までの作動回数・運転時間の推定を行う。
【0037】
ここで、
図4により、音響センサ2の構成を説明する。
図4は、音響センサ2が設置面401に対して設置された状態における断面構造を示す。公知の音響センサ2には各種のタイプがあり、いずれも適用可能であるが、実施の形態では、以下のタイプの音響センサ2を適用する。
【0038】
このタイプは、広帯域型かつシングルエンド型である。広帯域型は、周波数特性としてフラットな帯域を含み、例えば100kHz~1MHzの広帯域を持つ。この音響センサ2は、圧電素子403、受信板404、ダンパー405、シールドケース406、蓋407、コネクタ408、信号ケーブル409等を備える。
【0039】
また、このタイプは、圧電素子403の上側にダンパー405を設けることで、共振を抑えている。この音響センサ2の感度は例えば40~55dBである。感度の基準は、0dB=1V/m/sである。
【0040】
音響センサ2の耐熱温度は、通常のタイプは例えば80℃であり、高温用のタイプは例えば200℃である。受信板404、特にそのうちの受波面は、設置面401に対し、グリス402等の音響カプラを介して固定される。固定には、音響センサを直接接着剤で固定する方法と、センサホルダ用いてセンサホルダを接着、磁石、ねじ止め等で固定する方法とがある。後者の場合、音響センサと接地面との間にグリス等の音響カプラを塗布して空気が入らないように密着させる。
【0041】
圧電素子403からの信号ケーブル409は、コネクタ408に接続されており、コネクタ408を通じて外部の信号ケーブルと接続される。
【0042】
次に、摺動音の波形抽出・分割部10(
図3参照)の処理の詳細を
図5により説明する。
図5は、音響センサ2a、2b、2c(
図3参照)のそれぞれの検出信号の時間変化の一例を示す図である。
【0043】
音響センサ2aはウォームギア24(駆動部5、
図1参照)の摺動音を検出し、音響センサ2bは弁棒4とグランドパッキン28(
図1参照)の摺動部の摺動音を検出し、音響センサ2cは弁体29と弁座30の摺動部(
図1参照)の摺動音をそれぞれ同期して検出する。
【0044】
ウォームギア24の摺動音、弁棒4とグランドパッキン28の接触面の摺動音、弁体29と弁座30の接触面の摺動音のそれぞれの信号波形は、固有の特徴を持つ。例えば、音響センサ2aが検出するウォームギア24では、摺動音がハンマリングにより発生し、鋭く立ち上がりその後減衰する突発型の信号波形となる。音響センサ2cが検出する弁体29と弁座30の接触面の閉弁時の摺動音もハンマリングによる突発型の信号波形となる。また、音響センサ2bが検出する弁棒4とグランドパッキン28の摺動音は、駆動時に常時発生する連続型の信号波形となる。
【0045】
また、駆動するモータ音またはエアの音の信号、一定の周期で発生するギアおよびネジ部に発生する摺動音の信号、閉止直前の弁体のぐらつきによる衝撃パルス、閉止時の弁体と弁座のシート部に発生する摺動音の信号、その他噛みこみなどによる異常なパルスは、それぞれ特有の発生音のパターンである。したがって、摺動音のパターンを分類することによって摺動部を判別することができる。
【0046】
ところで、摺動音は、設置された音響センサ2だけでなく、他の音響センサ2にも伝播する。このため、音響センサ2は目的の摺動音だけでなく、他の摺動音も検出する。例えば、音響センサ2cは、弁体29と弁座30の接触面の摺動音だけでなく、弁棒4とグランドパッキン28の接触面の摺動音と、ウォームギア24の摺動音を検出する。つまり、音響センサ2cの検出信号には、弁棒4とグランドパッキン28の接触面の摺動音と、ウォームギア24の摺動音とが重畳している。
【0047】
音響センサ2cが検出する弁体29と弁座30の接触面の摺動音は突発型の信号波形であり、信号の振幅期間が短い。これに対して、音響センサ2cが検出する弁棒4とグランドパッキン28の接触面の摺動音と、ウォームギア24の摺動音は、それぞれ、所定の遅延時間後の信号であり、また、伝播により、信号が減衰している。なお、
図5は音響センサ2cの伝播信号を説明する図であり、全ての伝播信号を説明するものではない。
【0048】
そこで、音響センサ2cが検出した信号においては、比較的振幅の大きい信号波形の所定期間を、弁棒4とグランドパッキン28の接触面の摺動音に特定し、他の期間の信号は、雑音として除去する。
【0049】
より詳しくは、上記の弁体29と弁座30の閉止時の接触面の摺動音は、弁の設置状態によって変わる。
弁棒が直立している正立の状態では、弁体の自重による調心が行われるため、弁体の着座時に発生する摺動は調心による挙動のため複数回発生した後にシート面全体で摺動しながら着座し、流路を閉止する。このため、最後の着座による摺動音に着目することが好ましい。
【0050】
また、正立の状態でない弁では、弁体と弁座の調心が行われず偏った着座面による摺動音が発生し、取得される摺動音の前半は偏った着座面の摺動であり、後半はシート部全体の摺動である。したがって、後半の摺動音に着目し、漏洩のポテンシャルを診断することが好ましい。
【0051】
また、正立の状態の弁であっても、流量調節弁など中間開度とする弁においては、流体力により弁体と弁座の中心がずれてしまう芯ずれが生じることがある。芯ずれは、全閉時に正確に着座されず漏洩の原因となるため、許容されない量の芯ずれが生じている弁は、不適合となる場合がある。そのため、正立の状態でない弁の偏った着座とは異なり、芯ずれを検知する必要がある。この方法を
図6により説明する。
【0052】
図6は、弁の芯ずれを検出する音響センサ2の接地位置を示す図である。
図6に示すように、弁箱に、弁中心から等距離に弁を挟むように複数の音響センサ2を設置する。これにより、芯ずれが生じている弁体が着座した際、着座音の伝播遅延のため、片当たりした点に最も近い音響センサ2から順に着座音の信号を検知する。これに加え、片当たりしている点に最も近い音響センサ2が検出した着座音の信号強度が高くなる。この伝播遅延と信号強度の2つの要素により弁の芯ずれの有無を検知可能である。
【0053】
次に、摺動音の波形抽出・分割部10における他の摺動音の分析方法について説明する。
図7は、
図2の手動玉型弁の閉操作において、弁体29が開の状態から着座までのハンドルを回転させたときの、弁箱部に設置した音響センサ2で検出した弁座摺動音を含む検出信号の波形である。
【0054】
ハンドル操作中は検出信号の振幅は大きく、着座時に振幅がさらに増大し、その後、検出信号の振幅はバックグラウンドレベル(暗騒音)に戻る。このような特徴から、着座のタイミングを判定し、弁体と弁座が摺動しているときの検出信号を特定することができる。
【0055】
図7では、ハンドル操作中に突発型の摺動音の信号が2つ発生しているが、これが着座かそれ以外かの判定は、振幅が増大した後、バックグラウンドレベル(暗騒音)に戻るか、または、増大する直前のレベルに戻るかで、着座か否かを識別することができる。
図7の時間軸の0.8秒辺りで発生した突発型の摺動音の信号のように、振幅が増大した後にバックグラウンドレベルに戻る場合が、着座の場合である。
【0056】
図8は、
図2の手動玉型弁の閉操作において、弁体29が弁座30に着座した後、手動ハンドル23を完全に停止するまで回転させたときに、弁箱部に設置した音響センサ2で検出され、弁体と弁座との間で生じる弁座摺動音の信号の波形である。弁体29が着座した後に完全停止に至るまで弁棒4を押し込む動作を、以後、押込みと呼ぶ。
【0057】
押込み時には、弁体29と弁座30の摺動が発生し、この摺動音が弁箱部に設置した音響センサ2で主に検出される。この弁座摺動音の信号波形の形状は、
図8に示すような連続型になる。
【0058】
摺動音の波形抽出・分割部10は、突発型の摺動音の信号を検出すると、検出信号の振幅がバックグラウンドレベル(暗騒音)に戻ることにより、検出信号が弁体の着座による摺動音であることを判定し、突発型の摺動音の信号の検出から検出信号の振幅がバックグラウンドレベル(暗騒音)に戻るまでを押込み期間とし、この期間の連続型の摺動音の信号を弁座摺動音を含む検出信号とする。
【0059】
ちなみに、
図8では、時間軸0.3秒辺りで発生した突発型の摺動音の信号が弁体の着座によるもので、その後、バックグラウンドの振幅に戻るまでが押込み期間の摺動音の信号である。
【0060】
次に、スペクトル分析部15について説明する。
詳細は後述するが、摺動面の劣化モードによって、摺動音の周波数分布は異なる。このため、スペクトル分析部15は、摺動音の波形抽出・分割部10で抽出した摺動音の周波数分布を算出する。
【0061】
図9は、スペクトル分析部15が、連続型の摺動音の実効値のピーク値の周波数分布を算出するフロー図である。
【0062】
ステップS91で、スペクトル分析部15は、各センサの検出信号から、例えば、測定開始の0.1秒間を暗騒音値として取り込む。
【0063】
ステップS92で、スペクトル分析部15は、各センサの暗騒音値を含む検出信号全体の信号強度(RMS値)を算出する。
【0064】
ステップS93で、スペクトル分析部15は、
図8で説明した連続型の摺動音の信号を検出信号から抽出する。詳しくは、スペクトル分析部15は、ステップS92で算出した検出信号の信号強度が、ステップS91で取り込んだ暗騒音値の信号強度と所定の係数(例えば、1.1)との積より大きいか否かを判定する。そして、大きくない場合には、検出信号は摺動音でないとして、ステップS92に戻る。大きい場合には、ステップS94に進む。
【0065】
ステップS94で、スペクトル分析部15は、連続型の弁座摺動音を信号を抽出するため、
図8で説明したように、暗騒音でない検出信号が一定の持続時間より長く持続しているかを判定し、短い場合には、突発型の摺動音と判定し、ステップS92に戻る。長い場合には、連続型と判定し、ステップS95に進む。
【0066】
また、スペクトル分析部15は、連続型と突発型が混在する摺動音の信号の場合に、これを分離するため、急峻な振幅の変化がある信号の範囲を突発型の摺動音と判定する。急峻な振幅の変化は、例えば信号の微分値などを用いて判定する。突発型と判定された範囲の信号を削除または補完し、連続型のみの信号を抽出することで、ステップS95に進む。
【0067】
ステップS95で、スペクトル分析部15は、連続型の摺動音の信号と判定された信号範囲において、信号強度(RMS値)の極大値となる時刻の周波数分布を算出する。
【0068】
以上により、摺動音の波形抽出・分割部10は、弁体29と弁座30の摺動音等の所定の摺動部の摺動音を抽出し、スペクトル分析部15において周波数分布を算出する。
【0069】
ここで、摺動面の状態と摺動音の周波数分布の関係を、
図10により説明する。
図10は、摺動面が、正常状態、噛み込み傷またはエロ―ジョン(機械的摩耗)の状態、腐食(コロージョン)または焼付きの状態のそれぞれの劣化モードにおける、摺動音の周波数分布と摺動音の発生メカニズムを示している。
【0070】
まず、摺動面の状態と摺動音の周波数分布の関係について説明する。
摺動面が正常状態の場合は、可聴音域を含む低周波域にて有意な周波数スペクトルが確認でき、高周波数帯域はノイズレベルの周波数スペクトルしか確認できない。
【0071】
これに対して、摺動面に噛み込み傷やエロージョンが生じている場合は、低周波数帯域の有意な周波数信号強度が正常状態よりも増大し、周波数帯域も300kHz程度まで増大する。
また、摺動面に腐食や焼付きが生じている場合は、明らかな周波数帯域の広帯域化が確認される。したがって、300kHzを閾値に、周波数帯域がこれを超えていれば、摺動面に腐食や焼付きが生じていると判定できる。
【0072】
上記の摺動面状態により、低周波数帯域の有意な周波数信号強度が正常状態よりも増大すること、または、周波数帯域の広帯域化等の周波数分布の特徴が変化することを用い、劣化予兆の判定に用いても良い。しかし、この場合、劣化予兆の診断結果に対して技術的根拠を提示することができず、重要な機器に対しては特に、取るべき対策を講じるエビデンスになりえないことがある。
【0073】
そこで、実施形態の異常予兆診断装置20は、摺動面の状態により周波数分布の特徴が変化することの技術根拠を出力する技術根拠出力部52を含む。技術根拠出力部52が、表示する技術根拠の例を以下に説明する。
【0074】
摺動面の劣化モード毎に、摺動面の表面状態が異なる。詳しくは、摺動面に噛み込み傷やエロージョンが生じている場合は、表面はほぼ平坦で、凹部が多数存在する状態であり、平坦面の摺動方向に沿った溝状のキズが多数生成されている。また、摺動面に腐食や焼付きが生じている場合は、表面の摺動方向に沿って、表面が隆起した大きさが異なる凹凸が生成されている状態である。
【0075】
摺動面の傷や凹凸の状態に応じて、異なる摺動音が発生するメカニズムは以下のとおりである。
線傷の幅が略一定の線状の傷では、傷の溝内に形成される定在波の共振周波数がほぼ一定となり、周波数分布の帯域は小さい。
【0076】
これに対して、表面が隆起した大きさが異なる凹凸では、その凹部内に形成される定在波の共振周波数は主に凹部のサイズによって決まり、その大きさは数十μm以上の大きな凹部から数μm以下の小さな凹部まで広く分布しているため、周波数分布は低周波域から高周波域まで広く分布することになる。また、凸部が摺動により削られることにより、摺動音の強度が増大する。傷や凹凸の数が多くなれば、音の強度も重ね合わさり大きくなる。
【0077】
以上のメカニズムより、摺動面に噛み込み傷やエロージョンが生じている場合は、溝状の傷の劣化の悪化に応じて、摺動音の低周波数帯域の信号強度が増大し、摺動面に腐食や焼付きが生じている場合は、摺動面状態の凹凸の程度または数の増加に応じて、摺動音の周波数帯域の広帯域化する。
【0078】
上記の摺動面の劣化モードの説明は、
図3に示す異常予兆診断装置20に基づいて行ったが、音響センサ2の数に制限はなく、ひとつ摺動部の摺動音をひとつの音響センサ2で検出した場合にも適用できることは言うまでもない。
【0079】
以後、上述した技術根拠を基に、実施形態の異常予兆診断装置20の分析部11における漏洩リスク取得部12と摺動面状態取得部13と摩擦係数値取得部14の処理内容を説明する。
【0080】
図11は、ウォームギア24の摺動音、弁棒4とグランドパッキン28の接触面の摺動音、弁体29と弁座30の接触面の摺動音のそれぞれにおける、摺動音のある周波数領域の信号強度と摺動部の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を示す図である。
図10にて説明したように、傷や凹凸の数が増大すると信号強度が増大する。また、劣化モードによって劣化の進行によって増大する周波数帯域が異なる。
【0081】
異常予兆診断装置20の分析部11は、摺動部のそれぞれについて、実測した摺動音のある周波数領域の信号強度と摺動部の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を予め記憶しておく。
そして、分析部11は、摺動音を周波数分析するスペクトル分析部15により算出した、所定の音響センサ2で検出した摺動音の信号強度に基づいて、
図12に示した摺動音のある周波数領域の信号強度と摺動部の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係から、摺動音を検出した際の摺動部の使用開始時からの作動による劣化と流体力や経年等による劣化が加味された摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)を求める。ここで、検出された摺動音の信号強度から求められた摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)は、実際の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)とは一致せず、求められた摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)に相当する劣化を検出していることに留意する。
【0082】
図12Aは、摺動部のそれぞれにおける、面粗さと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を示す図である。
分析部11は、実測した面粗さと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を予め記憶しておく。
【0083】
摺動面状態取得部13は、音響センサ2で検出した摺動音に基づいて、摺動音を発する摺動部の面粗さ値を取得する。
詳しくは、摺動面状態取得部13は、まず、先に説明したように、音響センサ2で検出した摺動音の信号強度に基づいて、摺動部の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)を求める(
図11)。そして、
図12Aに示した面粗さと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係から、摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)に相当する摺動部の面粗さ値を取得する。
【0084】
図12Bは、摺動部のそれぞれにおける、摩擦係数と摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を示す図である。
分析部11は、実測した摩擦係数と摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を予め記憶しておく。
【0085】
摩擦係数値取得部14は、音響センサ2で検出した摺動音に基づいて、摺動音を発する摺動部の摩擦係数値を取得する。
詳しくは、摩擦係数値取得部14は、まず、先に説明したように、音響センサ2で検出した摺動音の信号強度に基づいて、摺動部の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)を求める(
図11)。そして、
図12Bに示した摩擦係数と摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係から、摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)に相当する摺動部の摩擦係数値を取得する。
【0086】
図12Cは、流体を封止する摺動部における、漏洩リスクと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を示す図である。
分析部11は、実測した漏洩量と面粗さの相関関係を予め記憶しておく。
【0087】
漏洩リスク取得部12は、音響センサ2で検出した摺動音に基づいて、摺動音を発する摺動部の漏洩量を取得する。
詳しくは、漏洩リスク取得部12は、まず、先に説明したように、音響センサ2で検出した摺動音の信号強度に基づいて、摺動部の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)を求める(
図11)。そして、
図12Cに示した漏洩リスクと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係から、摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)に相当する漏洩リスクを取得する。なお、漏洩リスクは摺動面状態より漏洩パスのできる確率から漏洩リスクを評価する。
【0088】
次に、判定部16における作動回数・運転時間推定部17と仕切能力の推定部18と異常判定部19とについて詳細に説明する。実施形態の異常予兆診断装置20は、この構成により、弁1の分解を含むメンテナンス時期を予測するか、または、弁1の流体を閉止する機能、動的機能および流量調節機能に関する正常か否かを含む劣化の予兆の判定を行う。
【0089】
作動回数・運転時間推定部17は、ON-OFF弁の場合、漏洩リスク取得部12で取得した漏洩リスクと摺動面状態の相関関係と、摺動面状態の初期状態または前回測定時からの変化率とから、漏洩リスクのレベル変化の閾値を超えるまでの作動回数・運転時間を推定する。
【0090】
詳しくは、作動回数・運転時間推定部17は、漏洩リスク取得部12で取得した漏洩リスクに対し、2段階の閾値を設け、1段階目の閾値より低い場合、つまり、漏洩の発生確率が極めて低い場合に、漏洩リスクと摺動面状態の相関関係(
図12C)から漏洩リスクが1段階目の閾値より大きくなる摺動部の摺動面状態を求める。そして、摺動面状態の初期状態または前回測定時からの変化率から漏洩リスクが1段階目の閾値より大きくなる摺動面状態に相当する作動回数・運転時間を求める。作動回数・運転時間推定部17は、上記で求めた作動回数・運転時間から摺動音を検出した際の作動回数・運転時間を減じて、漏洩リスクが1段階目の閾値より大きくなるまでの作動回数・運転時間とする。
【0091】
また、作動回数・運転時間推定部17は、漏洩リスクが1段階目の閾値より大きく2段階目の閾値より低い場合、つまり漏洩の発生確率が上昇しており、異常予兆が検知される場合にも上述した方法と同様の方法を用いて、漏洩リスクが2段階目の閾値より大きくなるまでの作動回数・運転時間を推定する。
【0092】
作動回数・運転時間推定部17は、算出した漏洩リスクが2段階目より大きくなるまでの作動回数・運転時間が所定の作動回数・運転時間になるタイミングを弁1の分解を含むメンテナンス時期と予測する。
【0093】
必要に応じて、作動回数・運転時間推定部17は、算出した漏洩リスクが1段階目より大きくなるまでの作動回数・運転時間が所定の作動回数・運転時間になるタイミングを弁1の分解を含むメンテナンス時期と予測することも設定可能である。
【0094】
また、作動回数・運転時間推定部17の判定結果より、異常判定部19は、漏洩リスク取得部12で取得した漏洩リスクが1段階目より小さい場合には、弁の流体を閉止する機能が「正常」と判定し、洩リスクが1段階目の閾値より大きく2段階目の閾値より低い場合には、弁の流体を閉止する機能が「異常予兆有」と判定し、漏洩リスクが2段階目より大きい場合には弁の流体を閉止する機能が「正常でない(異常)」と判定する。
【0095】
次に、弁1が流量調節弁の場合について説明する。
この場合には、分析部11は、実測した面粗さと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係、および実測した流量と摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係を摺動部毎に異常予兆診断装置20のデータベース部(不図示)に予め記憶しておく。
【0096】
そして、分析部11の不図示の流量値取得部が、面粗さと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係から、摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)に相当する摺動部の面粗さ値を取得する。その後、流量と面粗さの相関関係から、取得した摺動部の面粗さ値に対応する流量値を取得する。
つまり、漏洩リスク取得部12は、音響センサ2で検出した摺動音に基づいて流量を求める流量値取得部として機能する。
【0097】
作動回数・運転時間推定部17は、分析部11の不図示の流量値取得部で取得した流量と、流量と面粗さの相関関係と、面粗さと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係と、摺動面状態の初期状態または前回測定時からの変化率とから、許容流量超過発生までの運転時間を推定する。
【0098】
詳しくは、作動回数・運転時間推定部17は、分析部11の不図示の流量値取得部で取得した流量が変化しない場合に、流量と面粗さの相関関係から流量が大きくなる摺動部の面粗さを求める。そして、面粗さと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係から摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)求める。
【0099】
そして、摺動面状態の初期状態または前回測定時からの変化率から流量が大きくなる摺動部の面粗さに相当する運転時間を求める。作動回数・運転時間推定部17は、求めた運転時間から摺動音を検出した際の運転時間を減じて、流量許容値超過までの運転時間とする。
【0100】
作動回数・運転時間推定部17は、算出した流量許容値超過までの運転時間が所定の運転時間になるタイミングを弁1の分解を含むメンテナンス時期と予測する。
【0101】
また、作動回数・運転時間推定部17の判定結果より異常判定部19は、分析部11の不図示の流量値取得部で取得した流量が変化ない場合には、流量調節機能が「正常」と判定し、流量が変化した場合には、弁の流量調節機能が「正常でない(異常)」と判定する。
【0102】
また、作動回数・運転時間推定部17は、求めた流量許容値超過までの運転時間が所定の運転時間より小さい場合に、流量調節機能に関する弁体および弁座劣化の予兆があると判定する。
【0103】
仕切能力の推定部18は、駆動部5の操作力情報を組み合わせることで、仕切弁の弁体の閉止および開放を行う仕切能力を推定する。
【0104】
詳しくは、仕切能力の推定部18は、摺動音の検出と同期して弁1の駆動部5の駆動電流を計測し、駆動力の変化率を求める。そして、摩擦係数値取得部14で取得した各摺動部の摩擦係数値の変化率を求める。仕切能力の推定部18は、駆動力の変化率と各摺動部の摩擦係数値の変化率を対比して、駆動力の変化率が大きくなった際に、摩擦係数値の変化率が大きくなった摺動部を、駆動力増加の原因箇所と予測する。
【0105】
また、仕切能力の推定部18は、駆動力と作動回数の相関関係から駆動部5の最大駆動力に到達する作動回数を求め、弁仕切能力の限界の作動回数を予測する。この際の作動回数は、実測した摺動音の信号強度と摺動部の作動回数の相関関係から求めた作動回数を適用する。
【0106】
仕切能力の推定部18は各摺動部における摩擦係数と摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係から摩擦係数が許容される最大値に達する摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)を求め、摺動面状態の初期状態または前回測定時からの変化率から摩擦係数の最大値に達する時期を求め、弁1の分解を含むメンテナンスのタイミングと予測する。そして、各摺動部で最も早いタイミングをメンテナンス時期とする。
【0107】
異常判定部19は、仕切能力の推定部18の判定結果より、摩擦係数値取得部14で取得した摩擦係数およびこれらの変化率に基づいて、摩擦損失の増大を含む異常の判定を行うか、または、摺動面状態取得部13で取得した摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)およびこれらの変化率に基づいて、機械損失の増大を含む異常の判定を行う。
【0108】
そして、異常判定部19は、各摺動部の摩擦係数および摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の変化量のうち最大の値となる摺動部を異常が予測される摺動部とする。
【0109】
さらに、異常判定部19は、摩擦係数値取得部14で取得した摩擦係数が正常時の摩擦係数より大きい場合に、摩擦係数の変化量に応じて、弁の流体を閉止する機能、動的機能および流量調節機能に関して正常か否かを判定すると共に、異常判定部19は、摩擦係数の変化量が所定値より大きい場合に、摺動部の劣化の予兆があると判定する。
【0110】
また、異常判定部19は、摺動面状態取得部13で取得した摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)が正常時の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)より大きい場合に、摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の変化量に応じて、弁の流体を閉止する機能、動的機能および流量調節機能に関して正常か否かを判定すると共に、異常判定部19は、面粗さの変化量が所定値より大きい場合に、摺動部の劣化の予兆があると判定する。
【0111】
異常判定部19は、弁の流体を閉止する機能、動的機能および流量調節機能に関して正常か否かを判定する際、または、摺動部の劣化の予兆を判定する際に、少なくとも摩擦係数値取得部14で取得した摩擦係数と摺動面状態取得部13で取得した摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の一方により、判定する。
【0112】
上記で説明した分析部11と判定部16において参照する摺動音の信号強度と摺動部の摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係、摺動部の面粗さと摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係、摩擦係数と摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係、および漏洩量と摺動面状態(傷や凹凸の大きさ・数)の相関関係は、摺動部に応じて異なる。このため、弁の型式および摺動部(摺動部名称)に対応付けて、データベースに記録する。そして、分析部11と判定部16において、音響センサ2の検出信号に基づいて抽出する摺動音の摺動部に応じて、データベースを参照する。
【0113】
データベースに摺動音の抽出した摺動部のデータが記録されていない場合には、弁の型式に基づいて、摺動音を検出している弁に近い型式の弁のデータを使用する。この際、データを流用する弁の型式は、予め対応付けておいてもよいし、仕様が類似する弁を自動で選択するようにしてもよいし、作業者がリストから選択できるようにしてもよい。
【0114】
判定根拠出力部51は、上記で説明した判定の根拠を、システム利用者が理解できる形として出力する。また、技術根拠出力部52は、分析部11で分析した根拠も上述したように、システム利用者が理解できる形として出力する。異常予兆診断装置20は判定根拠出力部51と技術根拠出力部52を含む表示部50を備えることで、分析や判定を含む診断結果の根拠を提示し、取るべき対策を提示する。
【0115】
上記の実施形態の異常予兆診断装置20では、複数の摺動部のそれぞれ摺動音を複数の音響センサ2で検出し、音響センサ2が検出した目的の摺動音以外の摺動音を摺動音の波形抽出・分割部10で除去して劣化予兆診断を行うことを説明した。
【0116】
しかし、これに替えて、摺動音の波形抽出・分割部10で音響センサ2が検出した摺動音のパターンを分析して摺動部毎に分類するようにしてもよい。この際に、摺動音は伝播減衰するため、劣化予兆診断する摺動部の近くに音響センサを配置する。
【0117】
具体的には、
図1において弁棒4とグランドパッキン28の摺動音を検出する音響センサ2を設け、摺動音の波形抽出・分割部10により摺動音を抽出すると共に、伝播信号として、弁1の駆動部5であるモータ22、弁1のウォームギア24、弁棒ネジ部25、および弁体29と弁座30の摺動面の摺動音を音響センサ2で検出して摺動音の波形抽出・分割部10により波形パターンに応じてそれぞれの摺動音を分割する。
【0118】
ところで、モータ22を駆動している場合には、モータ22により連続音が発生し、他の摺動音が埋もれてしまう可能性がある。このため、手動ハンドル23により弁1を操作して摺動音を検出するとよい。
【0119】
また、弁1の操作開始時には、ハンマリングによるパルスが発生するため、弁体29と弁座30との摺動音と混同しないように、開操作よりも閉操作の方が好ましい。
この場合には、初期のハンマリングによる摺動音、駆動時に常時発生するグランドパッキン28の摺動音、一定の周期で発生する手動ハンドル23のギア(不図示)の摺動音、ウォームギア24および弁棒ネジ部25に発生する摺動音、閉止直前の弁体29のぐらつきによる衝撃音、閉止時の弁体29と弁座30のシート部に発生する摺動音、その他噛みこみなどによる異常なパルス音が異なるパターンの摺動音として取得できる。
【0120】
摺動音の波形抽出・分割部10が、摺動音の信号パターンに応じて摺動音を分類することにより、異常予兆診断装置20は、単一の音響センサ2においても、複数の摺動部の状態を診断することができる。
なお、音響センサ2は、最も診断を優先するべき摺動箇所の近傍、または摺動音の振幅が小さいグランドパッキン28の近傍に設置することが好ましい。
【0121】
上記の実施形態では、仕切弁を有する弁1について説明したが、弁の型式はこれに限定されず、玉型弁、バタフライ弁、ボール弁においても同様の診断が可能である。
玉型弁では、仕切弁と同様に弁体と弁座の接触面であるシート部において、開閉作動時に摺動が生じる。仕切弁と比較して、作動時間および摺動距離が短いが、衝突音が発生した後に短い摺動音の信号を得ることができる。この摺動音の信号により、シート部の状態の診断が可能となる。
また、バタフライ弁、ボール弁では、弁棒および弁体が回転することで、流路を閉止しているが、上記の仕切弁と同様の摺動が発生するため、摺動音の信号による診断が可能となる。
【0122】
さらに、上記の実施形態では、弁1の駆動方式が電動弁の場合を説明したが、空気作動弁においても同様の診断を行うことができる。空気作動弁においては、電動弁の駆動部5の摺動に代わり、ピストンの上下運動により、摺動が発生する。この摺動音を音響センサ2によって取得することにより、電動弁の場合と同様の診断を行う。
【0123】
上記の実施形態では、診断の結果について、正常である場合も、異常である場合も、その異常である程度についても、技術的根拠を提示することが可能であるため、弁の分解点検の周期延伸または不要との判断、点検項目の具体化など取るべき対策が提示できる。
【0124】
次に、実施形態の異常予兆診断装置20を原子力発電設備に適用する場合について説明する。
原子力発電設備に設置される弁は、高温な弁、流体が常時弁内部を通過している弁、雰囲気の放射線量が高い場所に設置される弁、運転中の騒音が大きい場所に設置される弁など様々存在する。そのため、原子力発電設備へ適用する場合には定期検査時のような常温であり、系統が停止しており、放射線量が高くなく、静かな状態にて実施することが好ましい。
【0125】
原子力発電設備の運転時に高温になる弁は保温材33に覆われているものが多く、
図1に示した弁体29と弁座30の接触面近傍への音響センサ2の設置が困難である。保温材33は通常取り外せる仕様になっているが、検査期間を短くする目的もあるため、保温材33を装着したまま診断することが望ましい。
【0126】
図13は、音響センサ2の取付例として、高温部あるいは接地面積の小さな場所に取り付けるための治具である聴針棒31(ウェーブガイドまたは導波棒とも呼ぶ)の構造を示す。聴針棒31の平面部の一端に音響センサ2を取り付けられ、他端が測定対象に接する。聴針棒31は、測定対象の温度がセンサの耐熱温度を超える場合や、センサを設置可能な場所が小さくセンサを直接設置することが困難な場合に用いられる。測定対象の温度が高温の場合は、聴針棒31を用いることで、音響センサ2を熱源から離れた場所に設置できる。聴針棒31の長さは、温度が高い場合は、センサ部の温度がセンサの耐熱温度以下になるような長さを選ぶ。なお、
図1のように、カプラント21(グリス、ワックス、接着剤等)を用いてもよい。
【0127】
図14は、保温材33を装着したまま診断する音響センサ2の取付方法を示す図である。
弁箱3の保温材33には、保温効果に影響が出ない程度の筒状のアクセス通路が備えており、診断の際には、そのアクセス通路に筒状の取付治具34が備わった聴針棒31を差し込む。ここで、保温材33の綿等の内部物質と聴針棒31が接触しないようになっていることが重要であり、これが達成される構造であれば、他の構造であってもよい。
【0128】
聴針棒31は、音響センサ2と弁箱3以外接触しない構造であるため、弁体29と弁座30の摺動部から発生する信号が聴針棒31中で分散することなく、また、聴針棒31中でノイズが発生することもないため、より精度の高い診断が可能となる。
これにより、原子力発電設備おいて、弁の分解点検の物量、労力、コスト、被ばく量の低減および検査期間の縮小による稼働率の向上を実現できる。
【0129】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 弁(電動仕切弁)
2、2a、2b、2c 音響センサ
6 増幅部(信号処理部)
7 ハイパスフィルタ(信号処理部)
8 A/D変換器(信号処理部)
9 信号処理部
10 摺動音の波形抽出・分割部(分析部)
11 分析部
12 漏洩リスク取得部(分析部)
13 摺動面状態取得部(分析部)
14 摩擦係数値取得部(分析部)
15 スペクトル分析部(分析部)
16 判定部
17 作動回数・運転時間推定部(判定部)
18 仕切能力の推定部(判定部)
19 異常判定部(判定部)
20 異常予兆診断装置
50 表示部
51 判定根拠出力部
52 技術根拠出力部