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特許7572986情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241017BHJP
   G06F 16/906 20190101ALI20241017BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06F16/906
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022053172
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2023146143
(43)【公開日】2023-10-12
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】平手 勇宇
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン エムディ モスタフィズ
(72)【発明者】
【氏名】蛭子 ▲たく▼磨
(72)【発明者】
【氏名】コンダパカ マノゥチ
(72)【発明者】
【氏名】菊田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】アブロール サティアン
(72)【発明者】
【氏名】ルメルシエ マクサンス
【審査官】日比野 可奈子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529885(JP,A)
【文献】特開2022-025009(JP,A)
【文献】特表2016-525727(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112950321(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0088909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 16/906
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザそれぞれのユーザについての事実特徴をユーザ特徴として取得する取得手段と、
前記複数のユーザのうち、1以上のユーザを対象ユーザ群として設定する対象ユーザ設定手段と、
前記複数のユーザのうち、前記対象ユーザ群に含まれるユーザと類似したユーザ特徴を有する1以上のユーザを類似ユーザ群として予測する予測手段と、
前記複数のユーザ間の社会的関係性を示す関係性グラフと前記類似ユーザ群のユーザ特徴とに基づいて、前記複数のユーザのうち、前記類似ユーザ群のユーザと社会的関係を有する1以上のユーザを、前記対象ユーザ群および類似ユーザ群に加え、拡張ユーザ群として決定する決定手段と、
を有し、
前記予測手段は、入力された任意のユーザのユーザ特徴から、前記対象ユーザ群のユーザ特徴と類似したユーザ特徴を有するユーザを類似ユーザとして予測するように学習された機械学習モデルに対して、前記複数のユーザのうち前記対象ユーザ群以外の他のユーザ群の特徴を入力することにより、前記類似ユーザ群を予測することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記関係性グラフにおいて、各ユーザは各ユーザノードで表され、前記各ユーザノードは、前記事実特徴に基づいて、社会的関係を有することを示すリンクで接続されることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記関係性グラフにおいて、同じ事実特徴を有するユーザノードのペアが明示的なリンクで接続され、当該明示的なリンクで接続された複数のユーザノードのペアに基づいて、前記明示的なリンクで接続されていないノードのペアが暗示的なリンクで接続されることを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記関係性グラフは、前記接続されたユーザノードのペアで共有される1つ以上の事実情報に基づいて当該ペアに割り当てられた親密度を有する請求項またはに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記拡張ユーザ群に対して広告を配信する配信手段を更に有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置により実行される情報処理方法であって、
複数のユーザそれぞれのユーザについての事実特徴をユーザ特徴として取得する取得工程と、
前記複数のユーザのうち、1以上のユーザを対象ユーザ群として設定する対象ユーザ設定工程と、
前記複数のユーザのうち、前記対象ユーザ群に含まれるユーザと類似したユーザ特徴を有する1以上のユーザを類似ユーザ群として予測する予測工程と、
前記複数のユーザ間の社会的関係性を示す関係性グラフと前記類似ユーザ群のユーザ特徴とに基づいて、前記複数のユーザのうち、前記類似ユーザ群のユーザと社会的関係を有する1以上のユーザを、前記対象ユーザ群および類似ユーザ群に加え、拡張ユーザ群として決定する決定工程と、
を有し、
前記予測工程では、入力された任意のユーザのユーザ特徴から、前記対象ユーザ群のユーザ特徴と類似したユーザ特徴を有するユーザを類似ユーザとして予測するように学習された機械学習モデルに対して、前記複数のユーザのうち前記対象ユーザ群以外の他のユーザ群の特徴を入力することにより、前記類似ユーザ群を予測することを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
情報処理をコンピュータに実行させるための情報処理プログラムであって、該プログラムは、前記コンピュータに、
複数のユーザそれぞれのユーザについての事実特徴をユーザ特徴として取得する取得処理と、
前記複数のユーザのうち、1以上のユーザを対象ユーザ群として設定する対象ユーザ設定処理と、
前記複数のユーザのうち、前記対象ユーザ群に含まれるユーザと類似したユーザ特徴を有する1以上のユーザを類似ユーザ群として予測する予測処理と、
前記複数のユーザ間の社会的関係性を示す関係性グラフと前記類似ユーザ群のユーザ特徴とに基づいて、前記複数のユーザのうち、前記類似ユーザ群のユーザと社会的関係を有する1以上のユーザを、前記対象ユーザ群および類似ユーザ群に加え、拡張ユーザ群として決定する決定処理と、を含む処理を実行させるためのものであ
前記予測処理は、入力された任意のユーザのユーザ特徴から、前記対象ユーザ群のユーザ特徴と類似したユーザ特徴を有するユーザを類似ユーザとして予測するように学習された機械学習モデルに対して、前記複数のユーザのうち前記対象ユーザ群以外の他のユーザ群の特徴を入力することにより、前記類似ユーザ群を予測することを含む、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関し、特に、広告の配信対象のユーザ群を決定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを介した広告配信において、広告の配信対象のユーザ群の選定(ターゲティング)が行われている。ターゲティングの技術として、例えば、特許文献1に開示される技術が知られている。当該文献では、広告に対応する商品の購買履歴がない場合であっても、他の商品の購買履歴に基づき、当該広告に対応する商品を購入していると推定される消費者群を、広告配信対象として決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-097717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1による技術では、予め設定された複数の消費者グループに属する各消費者の消費行動に関する特徴を表すデータベースに基づいて、広告配信対象を決定している。しかしながら、当該技術では、消費者(ユーザ)の消費行動に影響を与えうる、消費者間の社会的な繋がりは考慮されておらず、効果的なターゲティングが実現されていないという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、社会的な繋がりを考慮したターゲティングを実現するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明による情報処理装置の一態様は、複数のユーザそれぞれのユーザについての事実特徴をユーザ特徴として取得する取得手段と、記複数のユーザのうち、1以上のユーザを対象ユーザ群として設定する対象ユーザ設定手段と、前記複数のユーザ間の社会的関係性を示す関係性グラフと前記対象ユーザ群のユーザ特徴とに基づいて、前記複数のユーザのうち、前記対象ユーザ群に含まれるユーザと社会的関係を有する1以上のユーザを、前記対象ユーザ群に加え、拡張ユーザ群として決定する決定手段と、を有する。
【0007】
前記複数のユーザのうち、前記ユーザ特徴に基づいて、前記対象のユーザと類似した前記ユーザ特徴を有する1以上のユーザを類似ユーザ群として予測する予測手段を更に有し、前記決定手段は、前記関係性グラフと前記類似ユーザ群のユーザ特徴に基づいて、前記複数のユーザのうち、前記類似ユーザ群に含まれるユーザと社会的関係を有する1以上のユーザを、前記対象ユーザ群および前記類似ユーザ群に加え、前記拡張ユーザ群として決定しうる。
【0008】
前記予測手段は、機械学習モデルを用いて、前記類似ユーザ群を予測しうる。
【0009】
前記関係性グラフにおいて、各ユーザは各ユーザノードで表され、前記各ユーザノードは、前記事実情報に基づいて会的関係を有することを示すリンクで接続されうる。
【0010】
前記関係性グラフにおいて、同じ事実特徴を有するユーザノードのペアを明示的なリンクで接続され、当該明示的なリンクで接続された複数のユーザノードのペアに基づいて、前記明示的なリンクで接続されていないユーザノードのペア暗示的なリンクで接続されうる。
【0011】
前記関係性グラフは、前記接続されたユーザノードのペア共有される1つ以上の事実情報に基づいて当該ペアに割り当てられた親密度を有しうる。
【0012】
前記拡張ユーザ群に対して広告を配信する配信手段を更に有しうる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明による情報処理方法の一態様は、複数のユーザそれぞれのユーザについての事実特徴をユーザ特徴として取得する取得工程と、記複数のユーザのうち、1以上のユーザを対象ユーザ群として設定する対象ユーザ設定工程と、前記複数のユーザ間の社会的関係性を示す関係性グラフと前記対象ユーザ群のユーザ特徴とに基づいて、前記複数のユーザのうち、前記対象ユーザ群に含まれるユーザと社会的関係を有する1以上のユーザを、前記対象ユーザ群に加え、拡張ユーザ群として決定する決定工程と、を有する。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明によるプログラムの一態様は、情報処理をコンピュータに実行させるための情報処理プログラムであって、該プログラムは、前記コンピュータに、複数のユーザそれぞれのユーザについての事実特徴をユーザ特徴として取得する取得処理と、記複数のユーザのうち、1以上のユーザを対象ユーザ群として設定する対象ユーザ設定処理と、前記複数のユーザ間の社会的関係性を示す関係性グラフと前記対象ユーザ群のユーザ特徴とに基づいて、前記複数のユーザのうち、前記対象ユーザ群に含まれるユーザと社会的関係を有する1以上のユーザを、前記対象ユーザ群に加え、拡張ユーザ群として決定する決定処理と、を含む処理を実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、社会的な繋がりを考慮したターゲティングが可能となる。
上記した本発明の目的、態様及び効果並びに上記されなかった本発明の目的、態様及び効果は、当業者であれば添付図面及び請求の範囲の記載を参照することにより下記の発明を実施するための形態から理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、情報処理システムの構成例を示す。
図2図2は、実施形態による情報処理装置10の機能構成例を示す。
図3図3は、関係性グラフの作成処理のフローチャートを示す。
図4A図4Aは、明示的リンクを説明するための図である。
図4B図4Bは、明示的リンクを説明するための図である。
図4C図4Cは、明示的リンクを説明するための図である。
図4D図4Dは、暗示的リンクを説明するための図である。
図5A図5Aは、リンク間の関係性の推論処理を説明するための図である。
図5B図5Bは、ペアをクラスタへグループ化する処理の一例のフローチャートを示す。
図6A図6Aは、ユーザペアに対する関係性の親密度に基づくスコア(親密度スコア)の概念図を示す。
図6B図6Bは、スコア予測モデル112の概略アーキテクチャを示す。
図7図7は、関係性グラフの概念図を示す。
図8A図8Aは、見込みユーザ予測モデル111の学習段階を説明するための図である。
図8B図8Bは、見込みユーザ予測モデル111の予測段階を説明するための図である。
図9図9は、情報処理装置10とユーザ装置11のハードウェア構成例を示す。
図10図10は、情報処理装置10により実行される第1のターゲット拡張処理のフローチャートを示す。
図11図11は、情報処理装置10により実行される第2のターゲット拡張処理のフローチャートを示す。
図12A図12Aは、第1のターゲット拡張処理の概念図を示す。
図12B図12Bは、第2のターゲット拡張処理の概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。以下に開示される構成要素のうち、同一機能を有するものには同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、以下に開示される実施形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正または変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0018】
[情報処理装置の機能構成]
図1に、本実施形態による情報処理システムの構成例を示す。本情報処理システムは、その一例として、図1に示すように、情報処理装置10と、任意の複数のユーザ1~Nにより使用される複数のユーザ装置11-1~11-N(N>1)を含んで構成される。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、ユーザ装置11-1~11-Nをユーザ装置11と総称しうる。また、以下の説明において、ユーザ装置とユーザという語は同義に使用されうる。
【0019】
ユーザ装置11は、例えば、スマートフォンやタブレットといったデバイスであり、LTE(Long Term Evolution)等の公衆網や、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信網を介して、情報処理装置10と通信可能に構成されている。ユーザ装置11は、液晶ディスプレイ等の表示部(表示面)を有し、各ユーザは、当該液晶ディスプレイに装備されたGUI(Graphic User Interface)により各種操作を行うことができる。当該操作は、指やスタイラス等によりタップ操作、スライド操作、スクロール操作等、画面に表示された画像等のコンテンツに対する各種の操作を含む。
なお、ユーザ装置11は、図1に示すような形態のデバイスに限らず、デスクトップ型のPC(Personal Computer)や、ノート型のPCといったデバイスであってもよい。その場合、各ユーザによる操作は、マウスやキーボードといった入力装置を用いて行われうる。また、ユーザ装置11は、表示面を別に備えてもよい。
【0020】
ユーザ装置11は、情報処理装置10から、または、不図示の他の装置から情報処理装置10を介して提供されるウェブサービス(インターネット関連サービス)にログインして、サービスを利用することができる。当該ウェブサービスは、インターネットを介して提供される、オンラインモールやネットスーパー、あるいは、通信、金融、不動産、スポーツ、旅行に関するサービスを含むことができる。ユーザ装置11は、このようなウェブサービスを利用することにより、ユーザ装置11のユーザに関する情報を情報処理装置10に伝達することができる。
【0021】
例えば、ユーザ装置11は、ユーザ装置11のIP(Internet Protocol)アドレスや、ユーザの住所やユーザの氏名といった、ユーザ装置やユーザに関する特徴の情報を、情報処理装置10へ伝達することができる。
また、ユーザ装置11は、GPS(Global Positioning System)衛星(不図示)から受信される信号等に基づいて測位計算を行い、当該計算により得られた情報を、ユーザ装置11の位置情報として生成し、情報処理装置10へ伝達することができる。
情報処理装置10は、ユーザ装置11から各種情報を取得し、当該情報に基づいて、ユーザ間の社会的関係性を示す関係性グラフネットワーク(以下、関係性グラフ)を作成する。そして情報処理装置10は、当該作成した関係性グラフを用いて、任意に選択した1以上のユーザ(例えばランダムに選択した1以上のユーザ(シードユーザ))と社会的繋がりを有する(社会的関係を有する)拡張ユーザ群を、広告配信の対象として決定する。すなわち、情報処理装置10は、当該作成した関係性グラフを用いて、当該シードユーザをベースとしたターゲット拡張(拡張ターゲティング)を行う。
【0022】
[情報処理装置10の機能構成]
本実施形態による情報処理装置10は、まず、ユーザ装置11-1~11-Nから各種情報を取得し、ユーザ1~N間の社会的関係性を示す関係性グラフを作成する。そして、情報処理装置10は、当該関係性グラフを用いて、ターゲット拡張を行う。
【0023】
図2は、本実施形態による情報処理装置10の機能構成の一例を示す。
図2に示す情報処理装置10は、ユーザ特徴取得部101、グラフ作成部102、ユーザ特徴設定部103、ターゲット拡張部104、見込みユーザ予測部105、学習部106、出力部107、学習モデル記憶部110、およびユーザ特徴記憶部120を備える。学習モデル記憶部110は、機械学習モデルである見込みユーザ予測モデル111およびスコア予測モデル112を記憶している。当該各種学習モデルについては後述する。また、ユーザ特徴記憶部120はユーザ特徴121を記憶している。
【0024】
ユーザ特徴取得部101は、ユーザ装置11-1~11-Nのそれぞれから、当該ユーザ装置やユーザについての事実特徴(事実情報)(以下、ユーザ特徴)を取得する。ユーザ特徴は、当該ユーザ装置やユーザから実際に、または、客観的に得られる、事実に基づく特徴(情報)である。ユーザ特徴取得部101は例えば、ユーザ装置11から直接ユーザ特徴を取得することができる。また、ユーザ特徴取得部101は、ユーザ装置11のユーザにより所定のウェブサービスに登録された情報として、ユーザ特徴を取得することができる。
【0025】
ユーザ特徴は、ユーザ装置のIPアドレス、ユーザの住所やユーザの氏名、ユーザが保持するクレジットカードの番号、ユーザのデモグラフィック情報(性別、年齢、居住地域、職業、家族構成等の人口統計学的なユーザ属性)等を含む。また、ユーザ特徴は、所定のウェブサービス利用時における登録番号や登録名を含んでもよい。また、ユーザ特徴は、通話履歴、所定のウェブサービス利用時における商品のユーザの住所以外の配送先住所、所定のウェブサービス利用時の利用状況、利用履歴、検索履歴、サービスの利用により貯めることが可能なポイントに関する情報を含んでもよい。このように、ユーザ特徴は、ユーザ装置またはユーザ自身に関連する情報や、通信を介した所定のサービス利用に関する情報を含む、あらゆる情報を含むことができる。
ユーザ特徴取得部101は、取得したユーザ特徴を、ユーザ特徴121としてユーザ特徴120に記憶させる。
【0026】
グラフ作成部102は、ユーザ特徴取得部101により取得された各種ユーザ特徴を用いて、関係性グラフを作成する。関係性グラフについては後述する。
【0027】
ユーザ特徴設定部103は、ユーザ装置11-1~11-Nから選択した任意の対象ユーザ群を、シードユーザとして設定する。なお、シードユーザは一人であってもよい。当該シードユーザは、操作者が入力部(図9の入力部95)による入力操作により設定されてもよいし、予めシステムにおいて設定されていてもよいし、記憶部(図9のROM92やRAM93)に格納されている任意のプログラムによって設定されてもよい。さらに、ユーザ特徴設定部103は、当該設定したシードユーザのユーザ特徴をユーザ特徴121から取得してターゲット拡張部104や見込みユーザ予測部105に設定する。さらに、ユーザ特徴設定部103は、ユーザ装置11-1~11-Nのうち、シードユーザ以外の他のユーザ群のユーザ特徴を、ユーザ特徴121から取得して、見込みユーザ予測部105に設定する。
【0028】
ターゲット拡張部104は、社会的繋がりを利用したターゲット拡張(拡張ユーザ群の決定)を行う。一実施形態において、ターゲット拡張部104は、グラフ作成部102により作成された関係性グラフを用いて、ユーザ特徴設定部103により設定されたシードユーザをベースとしたターゲット拡張を行う。また、別の実施形態において、ターゲット拡張部104は、当該設定されたシードユーザから予測された見込みユーザ群(後述)をベースとしたターゲット拡張を行う。当該見込みユーザ群は、見込みユーザ予測部105により予測される。当該ターゲット拡張処理については後述する。
【0029】
見込みユーザ予測部105は、ユーザ特徴設定部103により設定されたシードユーザと同様の(類似した)ユーザ特徴を有すると予測されるユーザ群を、見込みユーザ群(類似ユーザ群)として予測する。本実施形態では、学習部106により学習済みの見込みユーザ予測モデル111を用いて、当該見込みユーザを予測する。当該見込みユーザの予測処理については後述する。なお、見込みユーザ群の予測処理は、見込みユーザ予測モデル111を用いることに限定されない。
【0030】
学習部106は、見込みユーザ予測モデル111とスコア予測モデル112を学習(トレーニング)させ、学習済みの見込みユーザ予測モデル111とスコア予測モデル112を、学習モデル記憶部110に格納する。各学習モデルの学習処理については後述する。
【0031】
出力部107は、ターゲット拡張部104により行われたターゲット拡張の結果(すなわち、拡張ユーザ群の情報)を出力する。当該出力は、あらゆる出力処理であり得、通信I/F(図9の通信I/F97)を介した外部装置への出力であってもよいし、表示部(図9の表示部96)への表示であってもよい。
【0032】
[関係性グラフの作成手順]
次に、本実施形態による関係性グラフの作成手順について説明する。なお、以下の説明においてユーザA~Eは、説明のために参照するユーザであり、ユーザ装置11のユーザでありうる。また、関係性グラフは、図4A図4Dにおいて丸で囲まれた各ユーザノードの接続で構成され、以下の説明では、当該ユーザノードを単にユーザと称する。図3に、本実施形態によるグラフ作成部102により実行される関係性グラフの作成処理のフローチャートを示す。以下、図3の処理の各工程について説明する。
【0033】
<S31:リンクの作成>
S31では、グラフ作成部102は、複数のユーザ間のリンク(社会的関係を有することを示すリンク)を予測して作成する。
リンクの作成処理について、図4A図4Dを参照して説明する。図4A図4Cは、明示的リンクを説明するための図であり、図4Dは、暗示的リンクを説明するための図である。明示的リンクとは、2ユーザ間(ユーザペア)の明示的な共通の特徴により作成されるリンクである。暗示的リンクとは、ユーザペアの明示的な共通の特徴の存在は不明確であるものの、すでに作成されている明示的リンクを利用して、間接的な関係として作成されるリンクである。このように、ユーザ間のリンクは、明示的リンクと暗示的リンクで識別される。
【0034】
図4Aに、ユーザのユーザ装置のIPアドレスを共通な特徴として用いて明示的リンクを作成する例を示す。図4Aは、ユーザA~Cが利用可能なウェブサービスとして、オンラインモール41、ゴルフ場予約サービス42、旅行関連予約サービス43、およびカード管理システム44が存在する例を示す。図4A図4Cでは、これら4つのウェブサービスが示されているが、ウェブサービスの数は特定の数に限定されない。
【0035】
オンラインモール41は、オンラインで(インターネットを使用して)利用可能なショッピングモールである。オンラインモール41は、例えば、ファッション、書籍、食品、コンサートチケット、不動産といった多種多様な商品やサービスを提供することができる。
ゴルフ場予約サービス42は、オンラインでゴルフ場に関するサービスを提供するウェブサイトで運営され、例えばゴルフ場の検索および予約やレッスン情報を提供することができる。
旅行関連予約サービス43は、オンラインで利用可能な各種旅行サービスを提供するウェブサイトで運営される。旅行関連予約サービス43は、例えば、ホテルやトラベルツアーの予約、航空券やレンタカーの予約、観光情報、ホテル、ホテル周辺の情報を提供することができる。
カード管理システム44は、所定のカード管理会社により発行および管理されるクレジットカードに関するサービスを提供するウェブサイトで運営される。カード管理システム44は、オンラインモール41、ゴルフ場予約サービス42、および旅行関連予約サービス43の少なくともいずれかと関連して、サービスを提供してもよい。
【0036】
図4Aの例では、ユーザA~Cはそれぞれ、同じIPアドレス(=198.45.66.xx)を用いて、オンラインモール41、ゴルフ場予約サービス42、旅行関連予約サービス43を利用している。IPアドレスの情報は、ユーザ特徴取得部101により取得されうる。
このような場合、グラフ作成部102は、ユーザA~Cは、リンク状態45に示すように、同じIPアドレスの特徴で、明示的リンク(例えば、ユーザAとユーザCのリンクL1)を相互に作成する。
【0037】
図4Bに、ユーザの住所の特徴を共通な特徴として用いて明示的リンクを作成する例を示す。図4Bは、図4Aと同様に、ユーザA~Cが利用可能なウェブサービスとして、オンラインモール41、ゴルフ場予約サービス42、旅行関連予約サービス43、およびカード管理システム44が存在する例を示す。ここで、ユーザA~ユーザCはそれぞれ、同じの住所(配送先住所)を登録して、オンラインモール41、ゴルフ場予約サービス42、旅行関連予約サービス43を利用している。住所の情報は、ユーザ特徴取得部101により取得されうる。
このような場合、グラフ作成部102は、ユーザA~Cは、リンク状態46に示すように、同じ住所の特徴で、明示的リンク(例えば、ユーザAとユーザCのリンクL1)を相互に作成する。
【0038】
図4Cに、ユーザが使用するクレジットカード番号の特徴を共通な特徴として用いて明示的リンクを作成する例を示す。図4Bは、図4Aと同様に、ユーザA~Cが利用可能なウェブサービスとして、オンラインモール41、ゴルフ場予約サービス42、旅行関連予約サービス43、およびカード管理システム44が存在する例を示す。ここで、ユーザA~ユーザCはそれぞれ、同じのクレジットカードを登録して、オンラインモール41、ゴルフ場予約サービス42、旅行関連予約サービス43を利用している。クレジットカードの番号を含む情報は、ユーザ特徴取得部101により取得されうる。
このような場合、グラフ作成部102は、ユーザA~Cは、リンク状態47に示すように、同じカードの特徴で、明示的リンク(例えば、ユーザAとユーザCのリンクL1)を相互に作成する。
【0039】
図4Dに、ユーザ間に暗示的リンクを作成する例を示す。図4Dの例では、ユーザAに対して、ユーザC、ユーザD、ユーザEが明示的リンクで接続され、ユーザBに対して、ユーザC、ユーザD、ユーザEが明示的リンクで接続されている。このようなリンク特徴(リンク間の関係を示す特徴)を、共通の特徴空間へ埋め込み、各ユーザ(各ノード)間で暗黙的に関係性が構築されるとして推論されたリンクが、暗示的リンクとして作成(確立)される。図4Dの例では、ユーザAとユーザBは、明示的リンクで接続されていないが、共通の特徴空間で関係性を有すると推論された結果、暗示的リンクL2が作成されている。なお、グラフ作成部102は、明示的リンクで接続されたノード(ユーザ)で構成されるユーザ間関係グラフの学習(表現学習、関係学習、埋込学習、知識グラフ埋め込み)を行うことで、ユーザ間の暗示的リンクを予測し作成する。このとき、グラフ作成部102は、既知の埋め込みモデルまたはその拡張に適宜、基づき、当該学習を行ってよい。
【0040】
<S32:リンク間の関係性の推論>
S32では、グラフ作成部102は、S31で予測および作成されたリンク間の関係性を推論する。リンク間の関係性の推論処理について、図5A図5Bを参照して説明する。図5Aは、リンク間の関係性の推論処理を説明するための図であり、明示的リンクで接続されたユーザAとユーザB間のリンクの関係性を推論する例を示す。
【0041】
グラフ作成部102は、S31で作成されたリンクで接続されたユーザのペアをデータポイントとして扱い、ユーザ特徴取得部101により取得された各種情報を用いて、当該ペア(データポイント)を、共通のタイプを表すクラスタにグループ化する。当該各種情報は、IPアドレス、住所、クレジットカード、年齢、性別、友人といった情報でありうる。また、各クラスタは、配偶者、親子、近所の人、同じ世帯、同僚、友達、同性別きょうだい、異性別きょうだい等の関係を持つクラスタでありうる。図5Aの例では、ユーザのペアをバツ印で示し、当該ペアがグループ化されうるクラスタとして、親子クラスタ51、配偶者クラスタ52、同性別きょうだいクラスタ53、友人クラスタ54、同僚クラスタを示す。なお、図5Aでは5つのクラスタを示すが、クラスタの数は特定の数に限定されない。
【0042】
例えば、グラフ作成部102は、ユーザAとユーザBが、同じ名字、年齢差が10歳未満、逆の性別、同じ住所、という特徴50を有する(共有する)場合、グラフ作成部102は、ユーザAとユーザBのペアを、夫と妻(配偶者)の関係を表すクラスタ(配偶者クラスタ52)にグループ化することができる。
【0043】
図5Bに、グラフ作成部102により実行される、ペアをクラスタへグループ化する処理の一例のフローチャートを示す。
S51の開始時点で、グループ化の対象のペアについて、同じ住所と同じ名字の特徴を有するものとする。S52では、グラフ作成部102は、当該対象のペアについて、同じ性別の特徴を有するか否かを判定する。当該対象のペアが同じ性別の特徴を有する場合(S52でYes)、S53においてグラフ作成部102は、当該対象のペアについて、年齢の差が所定の閾値(=X値)以下か否かを判定する。当該対象のペアの年齢の差がX値より大きい場合(S53でNo)、グラフ作成部102は、当該対象のペアを親子クラスタ51へグループ化する。年齢の差がX値以下の場合(S53でYes)、グラフ作成部102は、当該対象のペアを同性別きょうだいクラスタ53へグループ化する。また、当該対象のペアが同じ性別の特徴を有さない場合(S52でNo)、S54においてグラフ作成部102は、当該対象のペアの年齢の差が所定の閾値(=Y値)以下か否かを判定する。年齢の差がY値より大きい場合(S54でNo)、グラフ作成部102は、当該対象のペアを親子クラスタ51へグループ化する。年齢の差がY値以下の場合(S54でYes)、グラフ作成部102は、当該対象のペアを配偶者クラスタ52へグループ化する。
【0044】
<S33:関係性の親密度に基づくスコア割り当て>
S33では、グラフ作成部102は、S32で推論されたペアに対する関係性の親密度に基づくスコアを予測し、当該スコアを当該ペアに割り当てる。本実施形態において、スコアは、0~1の間の数値であるが、スコアが取りうる数値に特定の限定はない。図6Aに、ユーザペアに対する関係性の親密度に基づくスコア(以下、親密度スコア)の概念図を示す。
【0045】
図6Aの例では、明示的リンクで接続されたユーザAとユーザBが有する(共有する)特徴によって、当該ユーザペア間の関係性の親密度が変化する。図6Aの上部では、ユーザAとユーザBが、同性別きょうだい、同じ住所、1200回の通話履歴、50回のギフトのやり取り、という特徴60を有する場合、当該ユーザペア間の関係性の親密度(すなわち、親密度スコア)は高くなる。一方、図6Aの下部では、ユーザAとユーザBが、同性別きょうだい、異なる住所、30回の通話履歴、2回のギフトのやり取り、というという特徴61を有する場合、当該ユーザペア間の関係性の親密度(すなわち、親密度スコア)は低くなる。このように、図6Aの例のように、同性別きょうだいであるユーザAとユーザBであっても、当該ユーザのペアで共有される他の特徴により、当該ペアの関係性の親密度は異なるものとなる。関係性の親密度の高いペアは、互いの社会的距離が近く、高い影響を有することが観察される。一方、関係性の親密度の低いペアは、互いの社会的距離が遠く、近しい関係にないことが観察される。
【0046】
本実施形態では、ユーザペアに対する親密度スコアを、スコア予測モデル112を用いて予測する。図6Bに、スコア予測モデル112の概略アーキテクチャを示す。スコア予測モデル112は、ユーザペアの特徴63を入力として、当該特徴63に対する親密度スコア64を予測する学習モデルである。
【0047】
スコア予測モデル112は例えば、弱教師付き学習(Weak Supervised Learning)を行う学習モデルであり、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による学習モデルである。本実施形態では、スコア予測モデル112は、図6Aに示したような、ユーザペアに対する複数の特徴に対して付された親密度スコア(0~1)を教師データとして学習された学習モデルとする。例えば、学習段階では、教師データとしては、図6Aの特徴60に設定された1に近い親密度スコアと、特徴61に設定された0に近い親密度スコアといった組み合わせデータが使用される。当該学習処理は学習部108により実施される。なお、スコア予測モデル112は、ユーザペアの関係性の種別毎に異なってよく、一の関係性の種別に応じてトレーニングされた学習モデルであってよい。
【0048】
なお、本実施形態では、ユーザペアに対する親密度スコアを、スコア予測モデル112を用いて予測したが、グラフ作成部102は、他の手法により、当該スコアを予測するように構成されてもよい。
【0049】
以上の処理により、複数のユーザ間で明示的リンクまたは暗示的リンクが形成され、各リンク間では親密度スコアが割り当てられ、関係性グラフが作成される。関係性グラフの概念図を図7に示す。各ユーザ71~73それぞれは複数の特徴を有し、ユーザのペアに対しては上記のように予測された親密度スコアが割り当てられる。
【0050】
[見込みユーザの予測処理]
次に、本実施形態による見込みユーザの予測処理について説明する。本実施形態では、見込みユーザ予測モデル111を用いて、見込みユーザの予測処理を行う。見込みユーザ予測モデル111の学習段階と、予測段階に分けて説明する。
【0051】
図8Aに、見込みユーザ予測モデル111の学習段階を説明するための図を示す。まず、ユーザ特徴設定部103は、複数のユーザからなるアクティブユーザ81を設定する。例えば、ユーザ特徴設定部103は、図1に示すユーザ装置11-1~11-Nのユーザから、過去の一定期間(例えば、6か月)の間に所定のウェブサービスを利用した複数のユーザを、アクティブユーザ81として設定する。あるいは、ユーザ特徴設定部103は、ユーザ装置11-1~11-Nのユーザのうち、予め設定された複数のユーザを、アクティブユーザ81として設定してもよい。
【0052】
アクティブユーザ81の設定後、ユーザ特徴設定部103は、アクティブユーザ81の中から、複数のポジティブユーザ82と複数のネガティブユーザ83を抽出する。ポジティブユーザ82は、当該ウェブサービスを通じて所与の商品やサービスを購入および/または利用、および/または、当該ウェブサービスを通じて当該商品やサービスをポジティブに評価したユーザである。一方、ネガティブユーザ83は、アクティブユーザ81からランダムに抽出された、ポジティブユーザ82以外のユーザである。
【0053】
次に、ユーザ特徴設定部103は、ポジティブユーザ82とネガティブユーザ82それぞれのユーザ特徴84を、ユーザ特徴記憶部120に格納されているユーザ特徴121から取得する。例えば、ユーザ特徴84は、ポジティブユーザ82とネガティブユーザ82について、デモグラフィック情報、当該ウェブサービスでの購買履歴(商品のジャンルやタイプの情報等)を含む。当該デモグラフィック情報と当該購買履歴はそれぞれ、複数の細分化された特徴を含む。なお、ユーザ特徴84は、デモグラフィック情報や購買履歴に限らず、ポイント状況(利用可能なポイント等)、ポイント特徴(オンラインまたはオフラインショップから獲得した/使用したポイントといったポイント取引に関する情報等)等、他の特徴を含んでもよい。学習部106は、ユーザ特徴84と当該ユーザ特徴に対応するポジティブユーザまたはネガティブユーザのカテゴリ(ラベル(正解データ))を用いて、見込みユーザ予測モデル111を学習させる。
【0054】
見込みユーザ予測モデル111は、例えば、XGBoostをベースにした学習モデルである。学習段階では、学習部106は、グリッドサーチおよびクロスバリデーションにより、ハイパーパラメータ(見込みユーザ予測モデル111の挙動を制御するパラメータ)の検証およびチューニング(調整)を行う。見込みユーザ予測モデル111は、XGBoostはツリー(決定木)ベースのモデルであるため、入力データ(ユーザ特徴)がモデルの出力にどのように影響するかを示す結果(特徴評価85)を生成することができる。これにより、例えば、ポジティブユーザは、どのユーザ特徴(細分化された特徴の組み合わせ)に、より影響しているのかを検証することが可能となる。
【0055】
学習された見込みユーザ予測モデル111は、入力された任意のユーザ群のそれぞれのユーザに対して、ポジティブユーザと同様のユーザ特徴を有する可能性を表すように構成される。当該可能性は、例えば、最大可能性を1として、0~1の数値で表される。ここで、例えば閾値を0.5と設定すると、見込みユーザ予測部105は、0.5より大きい可能性を有するユーザを、見込みユーザと予測(決定)することができる。
【0056】
予測(推定)段階では、シードユーザ(学習段階でのポジティブユーザに対応)と同様のユーザ特徴を有すると予測されるユーザ群を、見込みユーザ群として予測する。図8Bに、見込みユーザ群の予測段階を説明するための図を示す。
【0057】
見込みユーザ予測部105は、ユーザ装置11-1~11-Nのうち、ユーザ特徴設定部103により設定されたシードユーザ以外の他のユーザ群86のユーザ特徴87を、学習済みの見込みユーザ予測モデル111に入力して、見込みユーザ群88を予測する。ユーザ特徴87は、図8Aを参照して説明したように、デモグラフィック情報、当該ウェブサービスでの購買履歴を含むが、これらに限定されない。前述したように、見込みユーザ予測モデル111は、ユーザ群86のそれぞれのユーザに対して、シードユーザと同様のユーザ特徴を有する可能性(例えば、0~1の数値)を出力する。閾値を0.5に設定した場合、見込みユーザ予測部105は、ユーザ群86のうち、0.5より高い可能性を有する1以上のユーザを、見込みユーザ群88として予測することができる。
【0058】
次に、本実施形態による、社会的な繋がりを示す前述の関係性グラフを用いたターゲット拡張処理について説明する。まず、第1のターゲット拡張処理として、当該関係性グラフのみを用いる形態について説明する。次に、第2のターゲット拡張処理として、見込みユーザ予測モデル111と当該関係性グラフを用いる形態について説明する。
【0059】
[第1のターゲット拡張処理]
図12Aに、第1のターゲット拡張処理の概念図を示す。ターゲット拡張部104は、ユーザ特徴設定部103により設定されたシードユーザ1201(対象ユーザ群)のユーザ特徴を、グラフ作成部102により作成された関係性グラフ1202に適用し、シードユーザ1201と社会的繋がりを有するユーザ群を、シードユーザ1201に加え、拡張ユーザ群1203として決定する。当該シードユーザ1201のユーザ特徴は、関係性グラフにおいてシードユーザ1201を特定できる情報であればよく、例えば、シードユーザ1201の住所や氏名、デモグラフィック情報等でありうる。ターゲット拡張部104は、関係性グラフにおいて、シードユーザ1201と親密度スコアが所定の閾値より高いユーザを、シードユーザ1201に加え、拡張ユーザ群1203として決定してもよい。
【0060】
[第2のターゲット拡張処理]
次に、本実施形態による、社会的な繋がりを示す前述の関係性グラフを用いたターゲット拡張処理について説明する。図12Bに、第2のターゲット拡張処理の概念図を示す。見込みユーザ予測部105は、ユーザ特徴設定部103により設定されたシードユーザ1201(対象ユーザ群)から、前述の見込みユーザ予測モデル111を用いて、見込みユーザ群1204を予測する。具体的には、見込みユーザ予測部105は、シードユーザ以外の他のユーザ群(不図示)のうち、シードユーザ1201と同様のユーザ特徴を有すると予測されるユーザ群を、見込みユーザ群1204として予測する。
【0061】
続いて、ターゲット拡張部104は、見込みユーザ群1204のユーザ特徴を、グラフ作成部102により作成された関係性グラフ1202に適用し、見込みユーザ群1204と社会的繋がりを有するユーザ群を、シードユーザ1201および見込みユーザ群1204に加え、拡張ユーザ群1205として決定する。当該見込みユーザ群1204のユーザ特徴は、関係性グラフにおいて見込みユーザ群1204を特定できる情報であればよく、例えば、見込みユーザ群1204の住所や氏名、デモグラフィック情報等でありうる。ターゲット拡張部104は、関係性グラフにおいて、見込みユーザ群1204と親密度スコアが所定の閾値より高いユーザを、シードユーザ1201および見込みユーザ群1204に加え、拡張ユーザ群1205として決定してもよい。
【0062】
[情報処理装置10のハードウェア構成]
図9は、本実施形態による情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
本実施形態による情報処理装置10は、単一または複数の、あらゆるコンピュータ、モバイルデバイス、または他のいかなる処理プラットフォーム上にも実装することができる。
図9を参照して、情報処理装置10は、単一のコンピュータに実装される例が示されているが、本実施形態による情報処理装置10は、複数のコンピュータを含むコンピュータシステムに実装されてよい。複数のコンピュータは、有線または無線のネットワークにより相互通信可能に接続されてよい。
【0063】
図9に示すように、情報処理装置10は、CPU91と、ROM92と、RAM93と、HDD94と、入力部95と、表示部96と、通信I/F97と、システムバス98とを備えてよい。情報処理装置10はまた、外部メモリを備えてよい。
CPU(Central Processing Unit)91は、情報処理装置10における動作を統括的に制御するものであり、データ伝送路であるシステムバス98を介して、各構成部(92~97)を制御する。
【0064】
ROM(Read Only Memory)92は、CPU91が処理を実行するために必要な制御プログラム等を記憶する不揮発性メモリである。なお、当該プログラムは、HDD(Hard Disk Drive)94、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリや着脱可能な記憶媒体(不図示)等の外部メモリに記憶されていてもよい。
RAM(Random Access Memory)93は、揮発性メモリであり、CPU91の主メモリ、ワークエリア等として機能する。すなわち、CPU91は、処理の実行に際してROM92から必要なプログラム等をRAM93にロードし、当該プログラム等を実行することで各種の機能動作を実現する。図2に示す学習モデル記憶部110とユーザ特徴記憶部120は、RAM93で構成されうる。
【0065】
HDD94は、例えば、CPU91がプログラムを用いた処理を行う際に必要な各種データや各種情報等を記憶している。また、HDD94には、例えば、CPU91がプログラム等を用いた処理を行うことにより得られた各種データや各種情報等が記憶される。
入力部95は、キーボードやマウス等のポインティングデバイスにより構成される。
表示部96は、液晶ディスプレイ(LCD)等のモニターにより構成される。表示部86は、入力部95と組み合わせて構成されることにより、GUI(Graphical User Interface)として機能してもよい。
【0066】
通信I/F97は、情報処理装置10と外部装置との通信を制御するインタフェースである。
通信I/F97は、ネットワークとのインタフェースを提供し、ネットワークを介して、外部装置との通信を実行する。通信I/F97を介して、外部装置との間で各種データや各種パラメータ等が送受信される。本実施形態では、通信I/F87は、イーサネット(登録商標)等の通信規格に準拠する有線LAN(Local Area Network)や専用線を介した通信を実行してよい。ただし、本実施形態で利用可能なネットワークはこれに限定されず、無線ネットワークで構成されてもよい。この無線ネットワークは、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)等の無線PAN(Personal Area Network)を含む。また、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)や、WiMAX(登録商標)等の無線MAN(Metropolitan Area Network)を含む。さらに、LTE/3G、4G、5G等の無線WAN(Wide Area Network)を含む。なお、ネットワークは、各機器を相互に通信可能に接続し、通信が可能であればよく、通信の規格、規模、構成は上記に限定されない。
【0067】
図2に示す情報処理装置10の各要素のうち少なくとも一部の機能は、CPU91がプログラムを実行することで実現することができる。ただし、図2に示す情報処理装置10の各要素のうち少なくとも一部の機能が専用のハードウェアとして動作するようにしてもよい。この場合、専用のハードウェアは、CPU91の制御に基づいて動作する。
【0068】
[ユーザ装置11のハードウェア構成]
図1に示すユーザ装置11のハードウェア構成は、図9と同様でありうる。すなわち、ユーザ装置10は、CPU91と、ROM92と、RAM93と、HDD94と、入力部95と、表示部96と、通信I/F97と、システムバス98とを備えうる。ユーザ装置11は、情報処理装置10により提供された各種情報を、表示部96に表示し、GUI(入力部95と表示部96による構成)を介してユーザから受け付ける入力操作に対応する処理を行うことができる。
【0069】
[処理の流れ]
図10に、本実施形態による情報処理装置10により実行される、前述の第1のターゲット拡張処理のフローチャートを示す。図10に示す処理は、情報処理装置10のCPU91がROM92等に格納されたプログラムをRAM93にロードして実行することによって実現されうる。図10の説明のために、図1に示した情報処理システムを参照する。学習部106により学習済みの、スコア予測モデル112は、学習モデル記憶部110に格納されているものとする。
【0070】
S101において、ユーザ特徴取得部101は、ユーザ装置11-1~11-Nから、各ユーザのユーザ特徴を取得し、ユーザ特徴121としてユーザ特徴記憶部120に格納する。S101の処理は、過去の一定の期間におけるユーザ特徴の取得(収集)処理であってもよい。
【0071】
S102において、グラフ作成部102は、ユーザ特徴取得部101により取得された各種ユーザ特徴を用いて、ユーザ1~Nについての関係性グラフを作成する。関係性グラフの作成手順は、上述の通りである。
【0072】
S103において、ユーザ特徴設定部103は、ユーザ1~Nの中から、任意の対象ユーザ群を、シードユーザとして設定する。前述のように、当該シードユーザは、操作者が入力部95による入力操作により設定されてもよいし、予めシステムにおいて設定されていてもよいし、ROM92やRAM93に格納されている任意のプログラムによって設定されてもよい。さらに、S103において、ユーザ特徴設定部103は、当該シードユーザのユーザ特徴を、ユーザ特徴121から取得してターゲット拡張部104に設定する。
【0073】
S104において、ターゲット拡張部104は、S103で設定された、当該シードユーザのユーザ特徴を、S102で作成された関係性グラフに適用して、当該シードユーザと社会的繋がりを有するユーザ群を、当該シードユーザに加え、当該シードユーザに対する拡張ユーザ群として決定する。S104の処理は、図12Aを参照して説明した処理に対応する。
【0074】
S105において、出力部107は、S104で決定された拡張ユーザ群の情報を出力する。出力部107は、当該拡張ユーザ群に関する種々の情報を生成して、外部装置(不図示)へ出力してもよい。例えば、出力部107は、当該シードユーザ向けに作成された広告を、当該拡張ユーザ群に配信することができる。
【0075】
続いて、図11に、本実施形態による情報処理装置10により実行される、前述の第2のターゲット拡張処理のフローチャートを示す。図11に示す処理は、情報処理装置10のCPU91がROM92等に格納されたプログラムをRAM93にロードして実行することによって実現されうる。図10と同様に、図11の説明のために、図1に示した情報処理システムを参照する。学習部106により学習済みの、スコア予測モデル112は、学習モデル記憶部110に格納されているものとする。
【0076】
S111とS112の処理は、図10のS101とS102の処理と同様のため、説明を省略する。
S113において、ユーザ特徴設定部103は、ユーザ1~Nの中から、任意の対象ユーザ群を、シードユーザとして設定する。前述のように、当該シードユーザは、操作者が入力部95による入力操作により設定されてもよいし、予めシステムにおいて設定されていてもよいし、ROM92やRAM93に格納されている任意のプログラムによって設定されてもよい。さらに、S113において、学習部106は、当該シードユーザをポジティブユーザとして設定し、見込みユーザ予測モデル111を学習させる。当該学習処理は、図8Aを参照して説明した処理に対応する。
【0077】
S114において、見込みユーザ予測部105は、当該シードユーザから、見込みユーザ群を予測する。具体的には、見込みユーザ予測部105は、当該シードユーザ以外の他のユーザ群86のユーザ特徴を、S113で学習させた見込みユーザ予測モデル111に入力して、見込みユーザ群を予測する。見込みユーザ予測部105は、予測した見込みユーザ群にシードユーザに加えたユーザ群を、最終的な見込みユーザ群として決定してもよい。
S115において、ユーザ情報設定部103は、見込みユーザ群のユーザ特徴を、ユーザ特徴121から取得してターゲット拡張部104に設定する。
【0078】
S116において、ターゲット拡張部104は、当該見込みユーザのユーザ特徴を、S112で作成された関係性グラフに適用して、当該見込みユーザ群と社会的繋がりを有するユーザ群を、シードユーザおよび当該見込みユーザ群に加え、当該見込みユーザ群に対する拡張ユーザ群として決定する。S116の処理は、図12Bを参照して説明した処理に対応する。
【0079】
S117において、出力部107は、S116で決定された拡張ユーザ群の情報を出力する。出力部107は、当該拡張ユーザ群に関する種々の情報を生成して、外部装置(不図示)へ出力してもよい。例えば、出力部107は、当該シードユーザ向けに作成された広告を、当該拡張ユーザ群に配信することができる。
【0080】
このように、情報処理装置10は、任意に設定したシードユーザ(対象の1以上のユーザ)と社会的繋がりを有するユーザ群を、拡張ユーザ群として決定するように構成される。当該拡張ユーザ群は、当該シードユーザと、例えば親子といった社会的繋がりを有するため、当該シードユーザに配信した広告の情報は、当該拡張ユーザ群で共有される可能性が高い。よって、当該シードユーザに配信した広告効果と同様の広告効果が、当該拡張ユーザ群に対しても期待できる。
【0081】
情報処理装置10はまた、当該シードユーザから見込みユーザ群を推定し、当該見込みユーザ群と社会的繋がりを有するユーザ群を、拡張ユーザ群として決定するように構成される。すなわち、当該シードユーザに対して、ウェブサービスにおいて当該シードユーザと同様の行動(商品の購入等)を行うと期待されるユーザが見込みユーザ群として予測され、当該見込みユーザ群と社会的繋がりを有する拡張ユーザ群が決定される。これにより、より幅広く広告配信先としての拡張ユーザ群の特定が可能となり、さらに広告効果の向上が期待できる。
【0082】
上記に説明した実施形態によれば、少ない人数のシードユーザから社会的繋がりをベースとした、拡張ターゲティングを行うことが可能となり、結果として、効率的かつ効果的なターゲティングが実現される。
【0083】
なお、上記において特定の実施形態が説明されているが、当該実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲を限定する意図はない。本明細書に記載された装置及び方法は上記した以外の形態において具現化することができる。また、本発明の範囲から離れることなく、上記した実施形態に対して適宜、省略、置換及び変更をなすこともできる。かかる省略、置換及び変更をなした形態は、請求の範囲に記載されたもの及びこれらの均等物の範疇に含まれ、本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0084】
1~N:ユーザ、10:情報処理装置、11-1~11-N:ユーザ装置、101:ユーザ特徴取得部、102:グラフ作成部、103:ユーザ特徴設定部、104:ターゲット拡張部、105:見込みユーザ予測部、106:学習部、107:出力部、110:学習モデル記憶部、111:見込みユーザ予測モデル、112:スコア予測モデル、120:ユーザ特徴記憶部、121:ユーザ特徴
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B