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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】積繊装置及び吸収体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
A61F13/15 321
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022063376
(22)【出願日】2022-04-06
(65)【公開番号】P2023154208
(43)【公開日】2023-10-19
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-051316(JP,A)
【文献】特開昭49-014706(JP,A)
【文献】特開2009-114555(JP,A)
【文献】特開2012-135464(JP,A)
【文献】特表2014-532501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0296063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムと、
前記外周面に原材料を供給するダクトとを備え、
前記回転ドラムを回転軸周りに回転させつつ、該回転ドラムの内部側からの吸引によって前記ダクト内に生じた空気流により前記原材料を搬送させて、前記集積用凹部に前記原材料の積繊物である吸収体を形成させる積繊装置であって、
前記吸収体は、前記回転ドラムの幅方向に対応する横方向を有し、
前記吸収体は、中高部と、該中高部の前記横方向の両外方に位置し、該中高部に比べて前記原材料の坪量が少ない部位とを有し、
前記ダクトは、
前記回転軸の軸方向において相対向する一対の対向壁面のそれぞれに、前記回転ドラムに近接する下流側の端縁から離間した位置に開口する開口部を有しており、且つ、
前記ダクトに、前記開口部を介して前記ダクト内に流入する空気量を制御する制御機構が設けられており、
前記制御機構は、前記開口部を介して前記ダクト内に流入する空気によって、前記原材料を搬送する前記空気流の流れを前記回転ドラムの幅方向の中央に向けて変更する機構である、積繊装置。
【請求項2】
前記制御機構は、前記開口部を塞ぐ閉位置と該開口部を開放する開位置との間を移動可能な開閉部材を備える、請求項1に記載の積繊装置。
【請求項3】
前記開口部と前記回転ドラムの外周部との間の距離が、5mm以上100mm以下である、請求項1又は2に記載の積繊装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記回転ドラムの外周面に沿った湾曲形状を有する、請求項に記載の積繊装置。
【請求項5】
前記開口部が、一対の前記対向壁面のそれぞれに複数形成されており、
前記複数の開口部は、前記回転ドラムの周方向に沿って並設されている、請求項に記載の積繊装置。
【請求項6】
前記開口部が、一対の前記対向壁面のそれぞれに複数形成されており、
前記複数の開口部は、前記ダクトにおける前記原材料の供給方向に沿って並設されている、請求項に記載の積繊装置。
【請求項7】
前記開口部に接続された補助ダクトを備え、該補助ダクトは、前記ダクトにおける前記原材料の供給方向とは反対の方向に対して鋭角に傾斜して延びている、請求項に記載の積繊装置。
【請求項8】
前記開口部を介して前記ダクト内に空気流を強制的に送り込む給気装置を備える、請求項に記載の積繊装置。
【請求項9】
前記開閉部材は、前記開口部毎にそれぞれ設けられている、請求項2に記載の積繊装置。
【請求項10】
前記回転ドラムは、ドラム周方向の所定の積繊領域において前記原材料を前記集積用凹部に積繊させるように構成され、
前記集積用凹部は、前記原材料の坪量が相対的に高い高坪量部を形成する高坪量部対応部と、前記原材料の坪量が相対的に低い低坪量部を形成する低坪量部対応部とを、ドラム周方向に有し、
前記積繊領域は、前記高坪量部対応部に優先的に前記原材料を積繊させる高坪量部優先積繊領域と、該高坪量部対応部及び前記低坪量部対応部の双方に繊維材料を積繊させる全面的積繊領域とを、ドラム周方向に有し、
前記高坪量部優先積繊領域に隣接する前記ダクトには、前記制御機構が設けられている、請求項1に記載の積繊装置。
【請求項11】
積繊装置を用いた吸収体の製造方法であって、
前記吸収体は、中高部と、該中高部の横方向の両外方に位置し、該中高部に比べて原材料の坪量が少ない部位とを有し、
前記積繊装置は、
外周面に集積用凹部が形成され、回転軸周りに回転する回転ドラムと、
前記外周面に原材料を供給するダクトとを備え、
前記吸収体の前記横方向は、前記回転ドラムの幅方向に対応し、
前記ダクトは、
前記回転軸の軸方向において相対向する一対の対向壁面のそれぞれに、前記回転ドラムに近接する下流側の端縁から離間した位置に開口する開口部を有しており、且つ、
前記ダクトに、前記開口部を介して前記ダクト内に流入する空気量を制御する制御機構が設けられており、
前記制御機構は、前記開口部を介して前記ダクト内に流入する空気によって、前記原材料を搬送する空気流の流れを前記回転ドラムの幅方向の中央に向けて変更する機構であり、
前記製造方法は、
前記回転ドラムを回転軸周りに回転させつつ、前記ダクトに前記原材料を供給する原材料供給工程と、
前記回転ドラムの内部側からの吸引により前記ダクトに生じた前記空気流を、前記制御機構を制御することによって調整する空気流調整工程と、
前記空気流に乗って搬送された前記原材料を、前記集積用凹部に積繊させる積繊工程とを含む、吸収体の製造方法。
【請求項12】
前記積繊装置は、前記開口部を介して前記ダクト内に空気流を強制的に送り込む給気装置を備え、
前記空気流調整工程は、前記給気装置を制御することによって前記ダクトに生じた空気流を調整する工程を含む、請求項11に記載の吸収体の製造方法。
【請求項13】
前記空気流調整工程は、前記給気装置を制御することによって前記ダクト内に空気流を間欠的に送り込む工程を含む、請求項12に記載の吸収体の製造方法。
【請求項14】
前記回転ドラムは、ドラム周方向の所定の積繊領域において前記原材料を前記集積用凹部に積繊させるように構成され、
前記集積用凹部は、前記原材料の坪量が相対的に高い高坪量部を形成する高坪量部対応部と、前記原材料の坪量が相対的に低い低坪量部を形成する低坪量部対応部とを、ドラム周方向に有し、
前記積繊領域は、前記高坪量部対応部に優先的に前記原材料を積繊させる高坪量部優先積繊領域をドラム周方向に有し、
前記高坪量部優先積繊領域に隣接する前記ダクトには、前記制御機構が設けられ、
前記積繊工程は、前記空気流に乗って搬送された前記原材料を前記高坪量部対応部に優先的に積繊させる工程を含む、請求項11に記載の吸収体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積繊装置及び吸収体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に用いられる吸収体として、中央の部分の厚みが他の部分よりも厚く形成された吸収体、すなわち、中央の部分(以下、「中高部」という。)の坪量が他の部分の坪量よりも大きくなるように形成された吸収体が知られている。このような中高部を有する吸収体によれば、着用時の装着感や漏れ防止等の向上を図ることが可能である。
【0003】
中高部を有する吸収体は、その多くが、外周面に集積用凹部を有する回転ドラムと、回転ドラムの外周面に、原材料としての繊維材料を供給するダクトとを備えた積繊装置を用いて製造(形成)される。斯かる積繊装置を用いた吸収体の製造は、(1)回転ドラムを回転軸周りに回転させつつ、ダクト内に繊維材料を供給する、(2)吸引孔が多数形成された集積用凹部の底面側から吸引することによって、集積用凹部に繊維材料を積繊させる、といった手順を踏むことにより行われる。
【0004】
このような積繊装置では、集積用凹部の底面の一部に、更に凹んだ中高部形成用の凹部(以下、「中高部形成用凹部」という。)が形成され、この中高部形成用凹部を含む集積用凹部に繊維材料が堆積することにより、中高部を有する吸収体が形成されるように構成されている。
【0005】
しかしながら、従来の積繊装置では、集積用凹部内に繊維材料が堆積していくに従って、集積用凹部の底面に生じる吸引力が自ずと低下する構造となっているため、特に深さが大きい中高部形成用凹部においては、十分な吸引力を得ることができない虞があった。斯かる場合、中高部形成用凹部付近においては、積繊密度(繊維密度)が不均一になったり、中高部が形成される面とは反対の面が窪む、といった問題、すなわち一定の品質を維持することが難しいという問題が生じる。
【0006】
そこで、このような問題を解消すべく、様々な積繊装置が各種提案されている。このような積繊装置として、例えば、特許文献1~3に記載の装置がある。
【0007】
特許文献1に記載の積繊装置は、ダクトにおける下流側の開口が、回転ドラムの外周面の一部に対向配置され、開口を画成するダクトの下流側の端部は、集積用凹部を挟んで回転ドラムの回転方向に延在する、一対のドラム回転方向対応部を含み、一対のドラム回転方向対応部は、それぞれ、回転ドラムの外周面に対して隙間を置いて配置され、隙間は、隙間調整機構に調整されるように構成されたものである。このような積繊装置によれば、隙間調整機構によって隙間を調整することで、ダクト外から該隙間を介してダクト内に流入する空気の流入量を調整することができ、斯かる空気量の調整によって、中高吸収体を効率よく製造することが可能である。
【0008】
特許文献2に記載の積繊装置は、回転ドラムの幅方向に離間する一対の相対面する集積板を有し、かつ集積板の下流側後縁間の間隔が、上流側前縁間の間隔よりも幅狭とされ、集積板間に集められた繊維材料が積繊ドラム周面の中高部形成用凹部形成領域に向かうように構成されたものである。このような積繊装置によれば、積繊ドラム周面の特に中高部形成用凹部形成領域に、他の領域より多くの繊維材料が積繊されるようになるため、低密度部分が形成されることをなくすことができ、中高部形成用凹部の深さを製品時における中高部の高さとほぼ同一にすることが可能になる。
【0009】
特許文献3に記載の積繊装置は、回転ドラムの内側に配設される吸引チャンバを、流れ方向に沿う断面で複数の吸引チャンバに区画すると共に、該複数の吸引チャンバに個別の吸引手段を設けたものである。このような積繊装置によれば、吸収体の厚みを幅方向に均一化することができる上、部分的に目付量を変化させたり、嵩高部(中高部)を形成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-051316号公報
【文献】特開2007-260297号公報
【文献】特開2002-272782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の積繊装置では、ダクトへの空気の流入量を調整する隙間が、回転ドラムの集積用凹部に隣接した位置に設けられているため、ダクト内を流通する繊維材料の流れを殆ど変化させることなく、繊維材料が集積用凹部に堆積する可能性があり、ダクト内への空気の流入量等によっては、集積用凹部に堆積した繊維材料が吹き飛ばされてしまう虞がある。斯かる場合、一定品質の吸収体を製造することが困難になる、といった問題が生じる。
【0012】
一方、特許文献2に記載の積繊装置は、繊維材料が集積板上を通過することによって、その流れ方向が中高部形成用凹部に向かう流れを強制的に変更される構成となっているため、集積板の形状等によっては、繊維材料が、例えば、集積板の上流側の端部上に堆積する虞があるものである。斯かる場合、吸収体を製造する際、集積板に堆積した塊状の繊維材料が集積用凹部に落下等してしまい、その結果、吸収体の品質が低下する、といった問題が生じる。
【0013】
また、特許文献3に記載の積繊装置では、複数の吸引チャンバ毎に設けられた吸引手段を、それぞれ制御することによって、吸収体を製造するように構成されているため、装置構成が複雑な上、吸収体を製造する際の吸引力の調整が難しい、といった問題があった。
【0014】
本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る、積繊装置及び吸収体の製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムと、前記外周面に原材料を供給するダクトとを備え、前記回転ドラムを回転軸周りに回転させつつ、該回転ドラムの内部側からの吸引によって前記ダクト内に生じた空気流により前記原材料を搬送させて、該原材料を前記集積用凹部に積繊させる積繊装置に関する。
前記積繊装置の前記ダクトは、前記回転軸の軸方向において相対向する一対の対向壁面のそれぞれに、前記回転ドラムに近接する下流側の端縁から離間した位置に開口する開口部を有することが好ましい。前記積繊装置は、前記ダクトに、前記開口部を介して前記ダクト内に流入する空気量を制御する制御機構が設けられていることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、積繊装置を用いた吸収体の製造方法に関する。
前記積繊装置は、外周面に集積用凹部が形成され、回転軸周りに回転する回転ドラムと、前記外周面に原材料を供給するダクトとを備え、前記ダクトは、前記回転軸の軸方向において相対向する一対の対向壁面のそれぞれに、前記回転ドラムに近接する下流側の端縁から離間した位置に開口する開口部を有することが好ましい。前記積繊装置は、前記ダクトに、前記開口部を介して前記ダクト内に流入する空気量を制御する制御機構が設けられていることが好ましい。前記製造方法は、前記回転ドラムを回転軸周りに回転させつつ、前記ダクトに原材料を供給する原材料供給工程と、前記回転ドラムの内部側からの吸引により前記ダクトに生じた空気流を、前記制御機構を制御することによって調整する空気流調整工程と、前記空気流に乗って搬送された原材料を前記集積用凹部に積繊させる積繊工程とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積繊装置及び吸収体の製造方法によれば、装置構成が比較的簡便でありながらも、原材料を集積用凹部の特定の箇所に多く積繊させることが可能なため、所望の形状の積繊物及び吸収体を一定の品質で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の積繊装置の一実施形態を一部透視して模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す積繊装置をドラム幅方向から見た場合の模式的な側面図である。
図3図3は、図1に示す製造装置の集積部の模式的な分解斜視図である。
図4図4は、図1に示す製造装置の集積用凹部の一部の模式的な平面図である。
図5図5は、図4のI-I線での断面(低坪量部対応部のドラム幅方向に沿う断面)を模式的に示す断面図であり、図5(a)は高坪量部優先積繊領域での吸引状態、図5(b)は全面的積繊領域での吸引状態を示す。
図6図6は、図4のII-II線での断面(高坪量部対応部のドラム幅方向に沿う断面)を模式的に示す断面図であり、図6(a)は高坪量部優先積繊領域での吸引状態、図6(b)は全面的積繊領域での吸引状態を示す。
図7図7は、集積用凹部の表面でのバキュームエアの流れを示す模式的な平面図である。
図8図8は、本発明によって提供される吸収体の一実施形態の模式的な斜視図である。
図9図9は、シャッター部材を、閉位置に移動させた状態で形成される吸収体の坪量と、開位置に移動させた状態で形成される吸収体の坪量とを比較する試験結果を示すグラフである。
図10図10は、変形例1に係る積繊装置をドラム幅方向から見た場合の模式的な側面図である。
図11図11は、変形例2に係る積繊装置を示す模式図であり、図11(a)は斜視図、図11(b)は側面図を示す。
図12図12は、変形例4に係る積繊装置をドラム幅方向から見た場合の模式的な側面図である。
図13図13は、変形例5に係る積繊装置をドラム幅方向から見た場合の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0020】
図1及び図2には、本発明の一実施形態に係る積繊装置1の概略構成が示されている。
本実施形態に係る積繊装置1は、回転ドラム3を有する集積部4と、集積部4に繊維材料等の原材料を供給する原材料供給機構5と、回転ドラム3の集積用凹部40から排出された吸収体10を搬送する搬送機構6とを備えている。吸収体10は、繊維材料等の原材料の積繊物である。積繊装置1を用いて製造される吸収体10についての説明は後述する。
【0021】
集積部4は、固定ドラム2と、固定ドラム2の外周部2Sの周りを回転可能に設けられ、繊維材料が積繊される集積用凹部40を外周部3S(図1参照)に有する回転ドラム3とを備えている。本実施形態に係る積繊装置1では、回転ドラム3を回転させつつ、固定ドラム2側からの吸引によって生じた空気流(以下、「バキュームエア」ともいう。)に乗って搬送された繊維材料を、ドラム周方向X1の所定の積繊領域Sにて集積用凹部40の底面上に積繊させるように構成されている。
【0022】
原材料供給機構5は、原材料の供給路50を内部に有するダクト51と、ダクト51内に原材料を導入する原材料導入部58とを備えている。ダクト51は、原材料の供給方向(以下、単に「供給方向」という。)の両端が、それぞれ開口し、下流側の端部が、集積部4の外周部(回転ドラム3)の一部を覆い、上流側の端部に、原材料導入部58が備える粉砕機CSが配されている。本実施形態に係るダクト51には、回転ドラム3の軸方向に沿って互いに対向する一対の対向壁面に、左右一対の開口部52,52が形成されており、各開口部52には、開口を塞ぐ「閉位置」と開放する「開位置」との間で移動可能な開閉部材、すなわち、シャッター部材53が設けられている。
【0023】
原材料導入部58は、シート状の木材パルプSPを粉砕機CSにより粉砕して繊維材料であるパルプ繊維とし、そのパルプ繊維をダクト51内に送り込むように構成されている。また、ダクト51には、吸水性ポリマー粒子を供給路50内に導入する吸水性ポリマー導入部59が配されている。
【0024】
搬送機構6は、集積部4の下方に配され、集積部4から排出された吸収体10を搬送面上に吸引しつつ搬送するバキュームコンベア(図示せず)を備えている。集積部4における固定ドラム2の内部には、ブロー発生機構(図示せず)が配されており、該ブロー発生機構による集積部4の内部側から回転ドラム3の外周部3S側へのエアーの吹きつけにより、外周部3Sの集積用凹部40から吸収体10が排出され、前記バキュームコンベアの搬送面上に転写されるようになされている。
本実施形態では、前記バキュームコンベアの搬送面上に、吸収体10の外面を被覆するコアラップシートなどとも呼ばれるシート材14(図2参照)が予め配されており、集積部4から排出された吸収体10はシート材14上に転写され、シート材14ごと搬送される。シート材14は、前記バキュームコンベアによる搬送途中で、吸収体10の全体を被覆するように折り曲げられる。
【0025】
図1図3に示すように、集積部4は、金属製の剛体からなる固定ドラム2と、固定ドラム2の外周部2Sに重ねて配された回転ドラム3とを主体として構成され、円筒状を有している。回転ドラム3は、モータ等の原動機からの動力を受けて、水平な回転軸を回転中心としてドラム周方向X1に沿って方向R1に回転するのに対し、固定ドラム2は回転しない。集積部4は、両ドラム2,3の周方向に対応するドラム周方向X1と、回転ドラム3の回転軸が延びる方向に対応するドラム幅方向Y1とを有している。
【0026】
固定ドラム2は円筒状を有し、その円筒状の固定ドラム2の軸方向両端の開口部は、側壁21及びフェルト等のシール材に(図示せず)よって気密に封鎖されている。固定ドラム2の内部は、隔壁22によって周方向に複数(本実施形態では「3つ」)に区分され、各該区分に対応した複数の空間A~Cが形成されている。
固定ドラム2には、その内部を減圧する減圧機構(図示せず)が接続されている。前記減圧機構は、側壁21に接続された排気管(図示せず)と該排気管に接続された排気ファン(図示せず)とを含んで構成されている。前記減圧機構を作動させることで、固定ドラム2内の複数の空間A~Cのうちの任意のものを負圧に維持される。固定ドラム2は、隔壁22によって仕切られた複数の空間A~Cの負圧(吸引力)をそれぞれ独立に調整可能になされている。
【0027】
回転ドラム3は、その外周部3Sに繊維材料が積繊される集積用凹部40を有している。集積用凹部40は、図4に示すように、製造目的物である吸収体10の高坪量部11(図8(a)参照)を形成する高坪量部対応部41と、吸収体10の低坪量部12(図8(a)参照)を形成する低坪量部対応部42とを、ドラム周方向X1に有している。繊維材料が積繊される集積用凹部40の底面は、バキュームエアが通過可能な多数の吸引孔を有する通気性部材(図5の「第1凹部底面形成プレート34」及び図6の「第2凹部底面形成プレート36」)から形成されており、通気性を有している。
【0028】
本実施形態では、集積用凹部40は、回転ドラム3のドラム周方向X1の全長にわたって連続的に配されており、高坪量部対応部41と低坪量部対応部42とがドラム周方向X1の全長にわたって交互に配されている。1つの高坪量部対応部41とこれを挟んでドラム周方向X1の前後に配された2つの低坪量部対応部42,42とが、1個の吸収体10に対応するので、集積用凹部40から搬送機構6の前記バキュームコンベアに排出される吸収体10は、複数の吸収体10が縦方向Xに連続した吸収体連続体である。
【0029】
図1及び図2に示すように、回転ドラム3は、固定ドラム2の外周部2Sの周りを、回転方向R1の上流側から下流側に向かって、空間Aに対応する領域、空間Bに対応する領域、空間Cに対応する領域の順に移動する。「空間Aに対応する領域」とは、固定ドラム2の空間Aを固定ドラム2の半径方向(ドラム幅方向と直交する方向)の外方に仮想的に延長した場合のその延長部分と重複する領域を指す。「空間Bに対応する領域」及び「空間Cに対応する領域」については、前記の「空間Aに対応する領域」の説明において「空間A」を「空間B」又は「空間C」に置換したものが適用される。
【0030】
本実施形態では、空間A,Bに対応する領域が、繊維材料が集積用凹部40内に積繊される積繊領域Sであり、原材料供給機構5のダクト51の一端側の開口は積繊領域Sを覆っている。積繊領域Sのうち、空間Aに対応する領域は、後述する高坪量部優先積繊領域S1とされ、空間Bに対応する領域は、後述する全面的積繊領域S2とされている。
【0031】
前記減圧機構を作動させ、固定ドラム2の空間A,Bを負圧に維持した状態で、回転ドラム3を回転方向R1に回転させると、回転ドラム3の集積用凹部40が、空間A,Bに対応する領域すなわち積繊領域Sを通過している間に、集積用凹部40の底面を形成する通気性部材(図6の「第1凹部底面形成プレート34」及び図5の「第2凹部底面形成プレート36」)に空間A,B内の負圧が作用し、該通気性部材が有する多数の吸引孔を通じたバキュームエアの吸引が行われる。この吸引孔を通じた吸引により、積繊領域Sを覆うダクト51内の供給路50に、積繊領域Sに向かうバキュームエアが生じ、このバキュームエアに乗った繊維材料等の原材料が積繊領域Sに供給される。
【0032】
図3に示すように、固定ドラム2の外周部2Sには、固定ドラム2の内部側からの吸引が部分的に可能な選択的吸引領域23と、該吸引が全面的に可能な全面的吸引領域24とが、ドラム周方向X1に並べて配されている。本実施形態では、回転ドラム3の回転方向R1にこの順で配されている。選択的吸引領域23は空間A(図2の「高坪量部優先積繊領域S1」参照)に対応し、全面的吸引領域24は空間B(図2の「全面的積繊領域S2」参照)に対応している。
【0033】
選択的吸引領域23は、開口部が部分的に設けられた非通気性部材からなり、バキュームエアは、該開口部を通じてのみ選択的吸引領域23を厚み方向に通過可能になされている。本実施形態では、固定ドラム2の外周部2Sにおける選択的吸引領域23に対応する部分に、上記した「開口部が部分的に設けられた非通気性部材」に相当する吸引制御体25が配されている。吸引制御体25は、該吸引制御体25を厚み方向に貫通する制御体開口部26を1つ以上有している。図示の形態では、制御体開口部26は、平面視でドラム周方向X1に延在する帯状(直線状)を有し、ドラム幅方向Y1に所定間隔を置いて複数配されている。吸引制御体25は非通気性であり、そのため、吸引制御体25における制御体開口部26以外の部分では吸引不可である。吸引制御体25を構成する非通気性部材としては、金属、樹脂等を用いることができる。
一方、全面的吸引領域24は、非通気性部材を含まず、集積用凹部に対応する部分の全域が開口している。そのためバキュームエアは、全面的吸引領域24の全域を厚み方向に通過可能である。
【0034】
なお、本明細書において、集積部4(固定ドラム2、回転ドラム3)の外周部の如き、湾曲部についての「平面視」又は「平面図」とは、その湾曲部(例えば、吸引制御体25、集積用凹部40など)を、該湾曲部の法線方向(ドラム幅方向と直交する方向)の外方から見た場合を意味する。
【0035】
回転ドラム3は、固定ドラム2に最も近接し、固定ドラム2の外周部2Sに対向配置された金属製の円筒状のドラム本体3Aと、ドラム本体3Aの外周部3ASに重ねて配される複数の部材36~38等からなる外層部3Bとを含む。
本実施形態では、ドラム本体3Aは、ドラム周方向X1の全長にわたって連続する環状の部材であるのに対し、外層部3Bを構成する複数の部材36~38等は、それぞれ、ドラム周方向X1に複数に分割されている。これら複数の部材36~38等は、ボルト等の締結具、接着剤等の接合手段により、相互に接離自在に接合されるとともに、ドラム本体3Aの外周部3ASに接離自在に接合される。
【0036】
ドラム本体3Aの外周部3ASは、固定ドラム2の外周部2Sとの対向部分であるところ、この外周部3ASには、集積用凹部40の低坪量部対応部42(図4参照)に対応して非通気性の開口部閉鎖部材30が配されている。一方、ドラム本体3Aの外周部3ASにおける、集積用凹部40の高坪量部対応部41(図4参照)に対応する部分32には、開口部閉鎖部材30は配されていない。開口部閉鎖部材30を形成する非通気性の素材としては、金属、樹脂等を用いることができる。
【0037】
本実施形態では、ドラム本体3Aの外周部3ASに、開口部閉鎖部材30が配された吸引阻害部31と、開口部閉鎖部材30が配されておらず、該外周部3ASを厚み方向に貫通する貫通孔からなる吸引非阻害部32とが、ドラム周方向X1に交互に配されている。
複数の吸引阻害部31それぞれにおいて、開口部閉鎖部材30のドラム幅方向Y1での配置数は、固定ドラム2の外周部2Sの選択的吸引領域23における制御体開口部26のドラム幅方向Y1での配置数と同じに設定されている。図示の形態では、制御体開口部26のドラム幅方向Y1での配置数は3であるので、吸引阻害部31における開口部閉鎖部材30のドラム幅方向Y1での配置数も3である。複数の吸引阻害部31それぞれにおいて、複数(本実施形態では「3個」)の開口部閉鎖部材30は、平面視でドラム周方向X1に延在する帯状(直線状)を有し、ドラム幅方向Y1に間欠配置されている。また開口部閉鎖部材30は、制御体開口部26とドラム幅方向Y1において同位置に配されており、選択的吸引領域23と吸引阻害部31とが重なった状態で、選択的吸引領域23の制御体開口部26が、吸引阻害部31の開口部閉鎖部材30によって閉鎖されるようになされている。
なお、ここでいう「閉鎖」には、(1)バキュームエアが制御体開口部26を通過不可となる、すなわち制御体開口部26での吸引が完全に不可となるように、開口部閉鎖部材30が制御体開口部26に重なる形態と、(2)制御体開口部26での吸引が多少は可能な程度に開口部閉鎖部材30が制御体開口部26に重なる形態とが包含される。上記した(1)及び(2)の何れの形態も、開口部閉鎖部材30によって制御体開口部26での吸引が阻害される点では同じである。
一方、吸引非阻害部32は、開口部閉鎖部材30の如き非通気性部材を含まず、集積用凹部に対応する部分の全域が開口している。そのためバキュームエアは、吸引非阻害部32の全域を厚み方向に通過可能である。
【0038】
本実施形態では、回転ドラム3の外層部3Bは、上記したように複数の部材の積層体である。この外層部3Bを構成する複数の部材は、具体的には図3に示すように、ドラム本体3Aに近い順に、第1凹部底面形成プレート34(図6参照)、第2凹部底面形成プレート36(図5も参照)、凹部区画プレート37及びリングプレート38を含む。これら複数の部材のうち、第2凹部底面形成プレート36及び凹部区画プレート37の各プレートは、ドラム幅方向Y1の長さ(幅)が互いに同じであり、外層部3Bの幅は、これら各プレー36,37のそれぞれの幅と同じである。
【0039】
リングプレート38は、回転ドラム3の最も外側に配される。リングプレート38は、前記各プレート36,37に比べて幅が狭く、図3及び図4に示すように、集積用凹部40を挟んでドラム幅方向Y1の両側に一対配される。
凹部区画プレート37は、吸収体10に溝状凹部13X,13Yを形成するためのもので、凹部区画プレート37の集積用凹部40に対応する部分には、複数の仕切り部材370(図4及び図7参照)が、溝状凹部13X,13Yと同じパターンで配されている。
【0040】
図3図5及び図6に示すように、第1凹部底面形成プレート34及び第2凹部底面形成プレート36は、それぞれ、繊維材料が積繊される集積用凹部40の底面を形成し、バキュームエアが通過可能な多数の吸引孔を有する通気性部材である。
第1凹部底面形成プレート34は、吸収体10の高坪量部11の一部である中高部11Aの形成に使用されるもので(図8(a)参照)、集積用凹部40の高坪量部対応部41に対応している。本実施形態では、第1凹部底面形成プレート34は平面視で略長方形形状を有しており、第2凹部底面形成プレート36に比べて幅が狭い。
第2凹部底面形成プレート36は、吸収体10の中高部11A以外の部分の形成に使用されるもので、集積用凹部40の低坪量部対応部42と、高坪量部対応部41における中高部11Aに対応する部分以外の部分とに対応している(図8(a)参照)。第2凹部底面形成プレート36における第1凹部底面形成プレート34と平面視で重なる部分には、該プレート34に対応して、該プレート34の平面視形状と同形状の開口部360が形成されている。
【0041】
図2に示すように、本実施形態に係る積繊装置1では、回転ドラム3が回転し、回転ドラム3の外周部3Sの集積用凹部40が積繊領域Sを通過中に、ダクト51によって供給された繊維材料等の原材料が集積用凹部40内に積繊されることで、集積用凹部40内に吸収体10が形成される。
これに加え、本実施形態では、高坪量部11と低坪量部12との間に比較的大きな坪量差を有する吸収体10(図8(a)参照)を得るための工夫の1つとして、積繊領域Sにおける集積用凹部40の搬送路を、その搬送方向(ドラム周方向X1)に複数の領域S1,S2に区分し、各領域S1,S2の積繊方法を互いに異ならせている。具体的には、積繊装置1の積繊領域Sは、高坪量部対応部41に優先的に繊維材料を積繊させる高坪量部優先積繊領域S1と、高坪量部対応部41及び低坪量部対応部42の双方に繊維材料を積繊させる全面的積繊領域S2とを、ドラム周方向X1に有する。
【0042】
本実施形態では、図2に示すように、空間Aに対応する領域が高坪量部優先積繊領域S1、空間Bに対応する領域が全面的積繊領域S2とされ、回転ドラム3の回転方向R1、すなわち、流れ方向MD(図1参照)にこの順で配されている。なお、本発明の吸収体の製造装置では、両領域S1,S2の位置は特に制限されず、図示の形態とは逆に、流れ方向MDの上流側から下流側に向かって、全面的積繊領域S2、高坪量部優先積繊領域S1の順で配されていてもよい。
【0043】
本実施形態に係る積繊装置1の主たる特徴の1つとして、ダクト51に形成される左右一対の開口部52,52と、これらの開口部52,52にそれぞれ設けられるシャッター部材53とを備えている点が挙げられる。
以下、一対の開口部52,52と、シャッター部材53とについて、図1及び図2を参照しつつ説明する。なお、一対の開口部52,52は、何れも、同様な構成であるため、必要がある場合を除き、一方の開口部52について説明し、他方の開口部52についての説明を省略する。同様に、これら開口部52,52にそれぞれ設けられるシャッター部材53も、略同一の構成であるため、説明の便宜上、必要がある場合を除き、1つのシャッター部材53について説明し、他のシャッター部材53についての説明を省略する。
【0044】
図1図2及び図4に示すように、左右一対の開口部52,52は、それぞれ、回転ドラム3の回転軸の軸方向において相対向する一対の対向壁面に、左右対称(線対称)となるように形成され、回転ドラム3の外周部3Sに臨むダクト51の端縁から間隔を隔てた位置で開口している。本実施形態における開口部52は、一対の対向壁面のそれぞれに複数(図示例では「2個」)の開口部52a,52bが形成されており、該複数の開口部52a,52bは、何れも、回転ドラム3(集積用凹部40)の外周面形状に沿った湾曲形状を有している。複数の開口部52a,52bは、互いに所定の間隔を空けて、高坪量部優先積繊領域S1(図2参照)内に配置され、回転ドラム3の外周部3Sに沿って並設されている。なお、本実施形態において、開口部52a,52bは、略同一の形状及び大きさに形成しているが(図2等参照)、形状及び大きさの一方又は両方を相互に異ならせてもよい。
【0045】
ここで、上記左右一対の開口部52,52がダクト51を備えた、積繊装置1の稼働時におけるダクト51内を流通するバキュームエアの流れについて説明する。
上記したように、本実施形態では、積繊装置1を稼働すると、回転ドラム3の内部側(「空間A」及び「空間B」)からの吸引により、ダクト51内の供給路50に、集積用凹部40に向かう空気流が生じるように構成されている。ダクト51には、左右一対の開口部52,52が形成されているため、ダクト51内に集積用凹部40に向かう空気流が生じると、開口部52の外方に存在する空気が誘引され(引き込まれ)、開口部52,52を介して、ダクト51内に空気(以下、「誘引空気」という。)が自ずと流入するようになっている。
【0046】
その結果、ダクト51内において、バキュームエアが開口部52,52を通過すると、誘引空気によって、その流れが、回転ドラム3の幅方向(以下、「ドラム幅方向」という。)の中央に向けて変更されることとなる(図6(a)及び図7参照)。すなわち、本実施形態では、積繊装置1が稼働している状態で、バキュームエアに含まれる原材料を、集積用凹部40のドラム幅方向中央に目がけて搬送することができ、集積用凹部40の所望の位置(本実施形態では、吸収体10の中高部11Aを形成する第1凹部底面形成プレート34(高坪量部対応部41、図4及び図6(a)及び図8(a)等参照))に良好に積繊(堆積)させることが可能になる。
【0047】
詳しくは後述するが、本実施形態では、開口部52,52を介してダクト51内に流入する、誘引空気量を調整することで、吸収体10(図8参照)の所望の部位(本実施形態では、中高部11A(図8参照))の坪量を増減させることが可能である。また、このようなダクト51内に流入する誘引空気量の調整は、ダクト51の外面に配されるシャッター部材53を移動させるだけで行うことができるので、その調整作業が極めて簡単である。すなわち、本実施形態では、装置構成が比較的簡便でありながらも、原材料を集積用凹部40の特定の箇所を目がけて堆積させることが可能なため、所望の形状の吸収体10を一定の品質で製造することが可能である。
【0048】
また、本実施形態では、複数の開口部52a,52bが、何れも、回転ドラム3(集積用凹部40)の外周面形状に沿った湾曲形状を有している。すなわち、開口部52a,52bの下流側の開口周縁と、回転ドラム3の外周部3Sとの間の距離D(図2及び図6(a)参照)は、一定であるため、安定的に(常に)、略同一の誘引空気をダクト51内に供給することが可能である。
さらに、本実施形態では、複数の開口部52a,52bが、回転ドラム3の周方向X1(図1参照)に沿って並設されている。すなわち、本実施形態では、回転ドラム3の周方向X1に沿って流れるバキュームエアを、開口部52a,52bを介した誘引空気によって、ドラム幅方向中央に向けて有効に収斂することが可能である。したがって、本実施形態では、吸収体10の中高部11Aを形成する第1凹部底面形成プレート34(高坪量部対応部41、図4及び図6(a)及び図8(a)等参照))に、繊維材料等の原材料をより確実に積繊することができる。
【0049】
開口部52(開口部52a,52b)と回転ドラム3の外周部3Sとの間の距離d(図6(a)参照)は5mm以上100mm以下であることが好ましい。すなわち、開口部52は、その下流側の開口周縁が、回転ドラム3の外周部3Sの表面から5mm以上100mm以下、離れていることが好ましい。
開口部52が、回転ドラム3の外周部3Sの表面に極端に近すぎる位置、例えば、該表面から1~2mmの位置に形成すると、原材料を含むバキュームエアの流れが誘引空気により殆ど変更されないまま、集積用凹部40に到達するため、原材料を集積用凹部40の所望の部位に多く堆積させる等の制御が難しくなる。
これに対して、前記距離dを5mm以上とすることで、バキュームエアの流れを誘引空気により変化させることが容易となり、原材料を集積用凹部40の所望の位置、例えば本実施形態では第1凹部底面形成プレート34(図4及び図6(a)等参照))に積繊させることが容易となる。前記距離dは、好ましくは5mm以上であり、より好ましくは20mm以上である。
他方、距離dを100mm以下とすることで、極端に離した場合に生じやすい不都合、例えば誘引空気によりドラム幅方向中央に向けて、一度収斂(集束)したバキュームエアが、集積用凹部40に到達する前に離散(拡散)してしまい、結局は、バキュームエア中の原材料を、集積用凹部40の所望の位置に目がけて、安定的に積繊させることができなくなる等の不都合を防止することができる。前記距離dは、好ましくは100mm以下であり、より好ましくは60mm以下である。
【0050】
なお、本実施形態では、集積部4とダクト51とは、回転ドラム3の外周部3S(集積用凹部40)とダクト51の下流側の端縁(端部)との間に隙間G(図6参照)が形成された状態で接続されるように構成される。このため、本実施形態では、ダクト51内に集積用凹部40に向かう空気流が生じると、開口部52,52と同様に、隙間Gを介して、ダクト51内に誘引空気が流入するようになっている。しかしながら、隙間Gと集積用凹部40の表面との間の距離は、開口部52,52と集積用凹部40の表面との間の距離よりも更に短いため、隙間Gを介した誘引空気によって、ダクト51内のバキュームエアの流れに影響が及ぶことが殆どない。
【0051】
なお、本実施形態では、一対の対向壁面のそれぞれに設けられた開口部52の数を、2個としたが、各対向壁面に1個であってもよく、各対向壁面に3個以上であってもよい。
また、本実施形態では、開口部52の形状を、回転ドラム3(集積用凹部40)の外周面形状に沿った湾曲形状としたが、他の形状、例えば、円形形状や矩形形状であってもよい。
さらに、本実施形態では、複数の開口部52a,52bのいずれについても、対向壁面の一方の開口部と他方の開口部とを相対向するように対称位置に形成したが、これに限られず、例えば、一方の開口部と他方の開口部とを、原材料の供給方向に互いにずらして形成することも可能である。
【0052】
シャッター部材53は、開口部52a,52b毎にそれぞれ設けられ、各開口部52a,52bの開口面積を増減することが可能な部材である。具体的に、シャッター部材53は、ダクト51の外面に、スライド機構(例えば、レール部材)を介して取り付けられ、開口52a(開口52b)を塞ぐ「閉位置」と開放する「開位置」との間でスライド移動(例えば、上下又は左右移動、回転移動)可能に構成される。シャッター部材53の素材は、特に限定されないが、例えば、金属、合成樹脂又はこれらを組み合わせた材料を用いることができる。なお、シャッター部材53は、手動でスライド移動可能に構成してもよく、また、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等からの開閉指令信号を受けて電気的にスライド移動可能に構成することもできる。シャッター部材53を、電気的にスライド移動可能に構成する場合、連結材を介して駆動源(例えば、モータやソレノイド)に連結すればよい。
【0053】
本実施形態では、シャッター部材53をスライド移動させることにより、左右一対の開口部52,52(ドラム幅方向両側の各開口52a,52b)の開口面積を増減、すなわち、各開口部52,52を介した、ダクト51内への誘引空気量を調整することで可能である。例えば、各開口部52,52の開口面積を増加させた場合、ダクト51内に流入する誘引空気量を増大させることができるので、ドラム幅方向中央に向けて収斂する空気の収斂範囲を狭くすることが可能である(図6(a)及び図7参照)。これにより、例えば、吸収体10の中高部10Aの横方向Yの幅を狭くすることができる(図8(a)参照)。
【0054】
一方、各開口部52,52の開口面積を減じた場合、ダクト51内に流入する誘引空気の空気量を減少させることが可能なため、ドラム幅方向中央に向けて収斂する空気の収斂範囲を広くすることができる(図6(a)及び図7参照)。これにより、例えば、吸収体10の中高部10Aの横方向Yの幅を広くすることも可能である(図8(a)参照)。なお、左右一対の開口部52,52の各開口面積は、シャッター部材53の移動量を適宜調整することにより、同じ大きさにする場合に限られず、異なる大きさに設定することもできる。この場合、ダクト51内を流れる空気の収斂範囲を、ドラム幅方向右側又は左側に寄せることができるので、例えば、吸収体10の横方向Yにおける一方の標準坪量部11Bの坪量を、他方の標準坪量部11Bの坪量よりも大きくすることも可能である(図8(a)参照)。なお、各シャッター部材53の開口面積の増減は、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等からの開閉指令信号を受けて駆動するモータ等の駆動源を用いて行うことも可能である。
【0055】
ここで、積繊装置1を用いて積繊される吸収体10について図8(a)を参照しつつ説明する。
図8に示すように、積繊装置1を用いて製造される吸収体10は、体液をはじめとする水性液を吸収し得るものである。吸収体の用途は特に限定されないが、吸収性物品の吸収体として特に好適である。ここでいう「吸収性物品」には、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品が広く包含され、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ、失禁パッド等が包含される。吸収性物品は、典型的には、吸収体と、該吸収体よりも着用者の肌から近い側に配される液透過性の表面シートと、該吸収体よりも着用者の肌から遠い側に配される液難透過性ないし不透過性の裏面シートとを含んで構成されている。
【0056】
吸収体10は、吸収性物品用のものであり、吸収性物品の着用者の前後方向に対応する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有する。縦方向Xは、後述する吸収体10の製造時における流れ方向又は機械方向すなわちMD(Machine Direction)に一致し、横方向Yは、MDと直交する方向であるCD(Cross machine Direction)に一致する。なおMDは、後述するドラム周方向X1、より具体的には回転ドラム3の回転方向R1に一致し、CDは、後述するドラム幅方向Y1に一致する(図1参照)。
【0057】
吸収体10は、繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部11と、相対的に少ない低坪量部12とを一方向に有する。本実施形態に係る吸収体10は、平面視で縦方向Xに長い形状(略長方形形状)を有し、その長手方向すなわち縦方向Xの中央部に高坪量部11、縦方向Xの両端部に低坪量部12が配されており、低坪量部12、高坪量部11、低坪量部12の順に縦方向Xに配置されている。
【0058】
高坪量部11は、高坪量部11及び低坪量部12が連なる一方向(縦方向X)における、低坪量部12に比べて繊維材料の坪量が多い部位を含む領域であり、該部位以外の他の部位を含む場合は、該部位と、該部位と縦方向Xにおいて同位置にある他の部位との双方を含む。例えば、本実施形態では、高坪量部11の横方向Y(短手方向)の中央部に、吸収体10において繊維材料の坪量が最大の部分である中高部11Aが形成され、中高部11Aを挟んで横方向Yの両外方は、中高部11Aに比べて繊維材料の坪量が少ない標準坪量部11Bとなっており、中高部11Aと標準坪量部11B(中高部11Aと縦方向Xにおいて同位置にある他の部位)とからなる領域全体が、高坪量部11である。
【0059】
中高部11Aは、周辺部に比べて厚みが大きく、吸収体10の一方の面側に突出しており、また、平面視において縦方向Xに長い略長方形形状を有している。吸収体10は、中高部11Aの突出面(図8では上面)を、該吸収体10が用いられる吸収性物品の着用者の肌側に向けて使用されてもよく、あるいは中高部11Aの突出面側とは反対側の面を該着用者の肌側に向けて使用されてもよい。
標準坪量部11Bは、低坪量部12に比べて繊維材料の坪量が少ない場合があり得る。
低坪量部12は、その全域にわたって坪量が均一でもよく、坪量が部分的に異なっていてもよい。
【0060】
本実施形態では、高坪量部11及び低坪量部12は、それぞれ、互いに交差する平面視直線状の複数の溝状凹部13X,13Yによって複数の領域に区分されている。溝状凹部13Xは縦方向Xに延び、溝状凹部13Yは横方向Yに延びている。図示の形態では、溝状凹部13X,13Yは、吸収体10における中高部11Aの突出面(図8では上面)側に形成されているが、該突出面側とは反対側の面に形成されていてもよい。
溝状凹部13X,13Yは、排泄物等の液の流路として機能することで吸収体10の液吸収能を向上させ得るとともに、吸収体10の柔軟性、可撓性を高めて、吸収性物品の着用者の身体に対する追従性を向上させ得る。なお、溝状凹部13X,13Yは無くてもよい。
【0061】
次に、左右一対の開口部52,52の各々に配置されるシャッター部材53を、「閉位置」に移動させたときに形成される吸収体10の坪量と、「開位置」に移動させたときに形成される吸収体10の坪量とについて図8(a)及び図9を参照しつつ説明する。
図9は、全てのシャッター部材53を、「閉位置」に移動させた状態で形成される吸収体10の坪量と、「開位置」に移動させた状態で形成される吸収体10の坪量とを比較する試験結果を示すグラフである。
【0062】
図8(a)及び図9に示すように、左右一対の開口部52,52にそれぞれ配置されるシャッター部材53を全て「閉位置」に移動させた場合の試験では、中高部11Aの坪量が279g/m、標準坪量部11Bの坪量が193g/m、低坪量部12の坪量が112g/mである吸収体10を製造することができた。
これに対し、シャッター部材53を全て「開位置」に移動させた場合の試験では、中高部11Aの坪量が313g/m、標準坪量部11Bの坪量が150g/m、低坪量部12の坪量が119g/mである吸収体10を製造することができている。
【0063】
すなわち、図9のグラフから、全てのシャッター部材53を「閉位置」から「開位置」に移動させると、高坪量部11において、中高部11Aでは坪量が「279g/m」から「313g/m」に上昇する一方、標準坪量部11Bの坪量が「193g/m」から「150g/m」に低下していることが読み取れる。
例えば、このような試験結果から、全てのシャッター部材53が「開位置」にある状態では、左右一対の開口部52,52を介して流入した誘引空気によって、ダクト51内を流れる空気が、ドラム幅方向中央に向けて良好に収斂する結果、当該空気中に含まれる原材料が、(1)集積用凹部40のドラム幅方向中央に位置する第1凹部底面形成プレート34(図4及び図6(a)等参照))に集中的に積繊される一方、(2)その分、第1凹部底面形成プレート34のドラム幅方向両側に位置する第2凹部底面形成プレート36に積繊されていないことが判る。なお、低坪量部12を形成する第2凹部底面形成プレート36においても、全てのシャッター部材53を「閉位置」から「開位置」に移動させることによって、ドラム幅方向中央(横方向Y中央)に向けて収斂した原材料が良好に積繊され、その結果、低坪量部12の坪量が、全体として「112g/m」から「119g/m」に上昇する結果となった。
上記の試験及びその結果は、例示であり、本発明で製造される積繊物及び吸収体の構成は、上述の試験及びその結果に何ら制限されるものでない。
【0064】
このように、本実施形態では、シャッター部材53の移動により、左右一対の開口部52,52の各開口面積を増減させることによって、集積用凹部40のドラム幅方向中央(例えば、第1凹部底面形成プレート34)等の所望の積繊位置を目がけて、原材料を良好に堆積(積繊)させることが可能である。
【0065】
ところで、本実施形態では、高坪量部優先積繊領域S1と全面的積繊領域S2とでバキュームエアの制御方法を互いに異ならせることで、両領域S1,S2の積繊方法を互いに異なるものとしている(図2等参照)。
この両領域S1,S2のバキュームエアの制御方法について説明すると、上記したとおり、図2及び図3に示すように、バキュームエアの発生源(吸引源)である固定ドラム2の外周部2Sには、領域S1に対応し、制御体開口部26を部分的に有する吸引制御体25を含む選択的吸引領域23と、領域S2に対応し、集積用凹部40に対応する部分の全域が開口している全面的吸引領域24とが配されている。また、回転ドラム3における固定ドラム2の外周部2Sとの対向部分であるドラム本体3Aの外周部3ASには、集積用凹部40の一部である低坪量部対応部42に対応し、非通気性の開口部閉鎖部材30を含む吸引阻害部31と、集積用凹部40の他の一部である高坪量部対応部41に対応し、開口部閉鎖部材30が配されておらず、該外周部3ASを厚み方向に貫通する貫通孔からなる吸引非阻害部32とが配されている。そして、回転ドラム3が回転方向R1(図1参照)に回転すると、集積用凹部40は積繊領域Sを領域S1、領域S2の順に移動する。図5には、低坪量部対応部42の領域S1,S2での吸引状態、図6には、高坪量部対応部41の領域S1,S2での吸引状態がそれぞれ示されている。図5及び図6中の矢印は空気(バキュームエア又は誘引空気)の流れを示している。図5(a)及び図6(a)は、領域S1(固定ドラム2の外周部2Sの選択的吸引領域23)での吸引状態、図5(b)及び図6(b)は、領域S2(固定ドラム2の外周部2Sの全面的吸引領域24)での吸引状態を示している。
【0066】
図2図4に示すように、低坪量部対応部42では、集積用凹部40が領域S1を通過中の場合、固定ドラム2の選択的吸引領域23の制御体開口部26に回転ドラム3の開口部閉鎖部材30が重なることで制御体開口部26が閉鎖されるが(図5(a)参照)、高坪量部対応部41では、制御体開口部26は閉鎖されない(図6(a)参照)。
【0067】
したがって、集積用凹部40が領域S1を通過中、低坪量部対応部42では、バキュームエアが制御体開口部26をほとんど通過できないため、繊維材料の積繊が実質的に行われない。これに対し、高坪量部対応部41では、バキュームエアが制御体開口部26を通過可能であるため、繊維材料の積繊が行われる。このように、領域S1では、低坪量部対応部42の吸引を選択的に阻害する一方、高坪量部対応部41の吸引を許容するようになされている。
【0068】
本実施形態では、上記したように、高坪量部優先積繊領域S1におけるダクト51には、左右一対の開口部52,52が形成されている(図6(a)参照)。このため、集積用凹部40が高坪量部優先積繊領域S1を通過している状態では、ダクト51内を流れる原材料を含むバキュームエアは、開口部52,52を介した誘引空気によって、流れ方向が変更され、集積用凹部40の幅方向中央に位置する第1凹部底面形成プレート34を目がけて流れるようになっている(図6(a)及び図7参照)。これにより、本実施形態では、集積用凹部40が高坪量部優先積繊領域S1を通過しているとき、原材料が高坪量部対応部41に効果的に積繊される構成となっている。
【0069】
一方、集積用凹部40が領域S2を通過中の場合、領域S2に対応する固定ドラム2の全面的吸引領域24が、吸引制御体25の如き非通気性部材を含まず、該領域24における集積用凹部40に対応する部分の全域が開口しているため、低坪量部対応部42及び高坪量部対応部41の双方で、バキュームエアによる繊維材料の吸引が可能で積繊が行われる(図5(b)及び図6(b)参照)。
【0070】
このように、本実施形態では、固定ドラム2の制御体開口部26と回転ドラム3の開口部閉鎖部材30との回転ドラム3の回転に伴う周期的な重なりを利用して、積繊領域Sの一部である高坪量部優先積繊領域S1にて、低坪量部対応部42に関わるバキュームエアの流れのみを選択的に阻害することで、高坪量部対応部41への集中的な繊維材料の積繊を可能にしている。これにより、領域S1では、高坪量部対応部41に優先的に繊維材料が積繊される。典型的には、領域S1では実質的に、高坪量部対応部41のみに繊維材料が積繊し、低坪量部対応部42には繊維材料が全く積繊しないか、積繊したとしても高坪量部対応部41に比べて極少量である。
【0071】
次に、積繊装置1に設けられるスカッフィングロール45について図1及び図2を参照しつつ説明する。
図1及び図2に示すように、積繊装置1は、回転ドラム3の外周部3Sに対向配置されたスカッフィングロール45を備え、高坪量部対応部41に積繊した繊維材料を掻き取り、掻き取った繊維材料を低坪量部対応部42に再積繊するようになされている。この点、上記したダクト51に形成された開口部52,52及びシャッター部材53や、固定ドラム2の制御体開口部26及び回転ドラム3の開口部閉鎖部材30等の構成は、高坪量部11と低坪量部12との間に比較的大きな坪量差を有する吸収体10(図8(a)参照)を得ることを目的とするものであったが、スカッフィングロール45を用いた繊維材料の再積繊工程は、主に、吸収体10における低坪量部12(図8(a)参照)の坪量の均一性を向上させることを目的としたものといえる。
本実施形態では、スカッフィングロール45は、積繊領域Sの流れ方向MDの下流側、具体的には、全面的積繊領域S2の流れ方向MDの下流側においてダクト51の内部に配されている。
【0072】
次に、本発明の吸収体の製造方法について、上記した積繊装置1を用いた吸収体10(図8(a)参照)の製造方法を例にとり説明する。斯かる製造方法について特に説明しない点は、上記した積繊装置1についての説明が適宜適用される。
【0073】
積繊装置1を用いた吸収体10の製造方法は、原材料供給工程と、空気流調整工程と、積繊工程とを含んでいる。
図1及び図2に示すように、原材料供給工程は、回転ドラム3を固定ドラム2の外周部2Sの周りに回転させつつ、回転ドラム3の外周部3Sに対して繊維材料を飛散状態にて供給する工程である。
【0074】
空気流調整工程は、回転ドラム3の内部側からの吸引によりダクト51に生じた空気流を、シャッター部材53をスライド移動させることによって調整する工程である。具体的に、この空気量調整工程では、シャッター部材53のスライド移動させることで、左右一対の開口部52,52の開口面積を増減させ、開口部52を介してダクト51内に流入する、誘引空気量を調整する作業を行う。
上記したように、全てのシャッター部材53を「開位置」の方向へスライド移動させて、開口部52の開口面積を増加させた場合、左右一対の開口部52,52を介してダクト51内に流入する誘引空気量も増加するため、ダクト51内を流れる空気(バキュームエア)は、開口部52を通過すると、ダクト幅方向中央に収斂する方向(収斂方向)に向きを変えて流れるようになる(図6(a)及び図7参照)。一方、全てのシャッター部材53を「閉位置」の方向へスライド移動させた場合、左右一対の開口部52,52を介してダクト51内に流入する誘引空気量は減少するため、ダクト51内を流れる空気は、上記収斂方向とは反対の方向(拡散方向)に向きを変えて流れるようになる(図6(b)及び図7参照)。
なお、例えば、左右一対の開口部52,52のうち、一方の開口部52の開口面積よりも他方の開口面積の方が大きい場合では、一方の開口部52を介した誘引空気量よりも他方の開口部52を介した誘引空気量の方が大きくなるため、ダクト51内を流れる空気(バキュームエア)は、ダクト幅方向中央から一方の開口部52側に寄った方向に流れることとなる。
【0075】
積繊工程では、空気流に乗って搬送された原材料を集積用凹部40に積繊させる工程である。例えば、全てのシャッター部材53を、「閉位置」の方向へスライド移動させた場合にあっては、ドラム幅方向における積繊範囲を狭めた状態で、原材料を集積用凹部40に積繊させることができるので、例えば、中高部11Aの横方向Yの幅を狭めた吸収体10を形成することが可能である(図8(b)参照)。一方、これとは逆に、全てのシャッター部材53を「閉位置」の方向へスライド移動させた場合、例えば、中高部11Aの横方向Yの幅を広げた吸収体10を形成することができる(図8(a)参照)。
なお、左右一対の開口部52,52のうち、一方の開口部52の開口面積よりも他方の開口面積の方が大きくなるように、シャッター部材53を移動させた場合、集積用凹部40のうちの、ダクト幅方向中央から一方の開口部52側に寄った位置(範囲)に、原材料を積繊させることが可能になる。
【0076】
以上の工程を有する本発明の製造方法によれば、原材料を集積用凹部の特定の箇所を目がけて積繊(堆積)させることが可能なため、所望の形状の吸収体10を一定の品質で形成(製造)することができる。
【0077】
[変形例1]
なお、上記実施形態では、開口部52を構成する複数の開口(開口52a,52b)を、回転ドラム3の外周部3Sに沿って並設したが、これに代えて、供給方向に沿って並設することも可能である。
以下、このような変形例について図10を参照しつつ説明する。なお、以下において、上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0078】
本変形例では、上記実施形態の開口部52,52と同様に、ダクト51の、回転ドラム3の回転軸の軸方向において相対向する一対の対向壁面に、左右対称となるように一対の開口部52’,52’が形成されている。本変形例における開口部52’は、一対の対向壁面のそれぞれに複数(図示例では「2個」)形成されており、その複数の開口部52c,52dは、ダクト51における原材料の供給方向d1に沿って並設されている。開口部52cは、上記実施形態に係る開口部52a(図2等参照)と略同一の位置に形成され、開口部52dよりも供給方向d1の下流側に配されている。
開口部52c,52dには、それぞれ、上記実施形態と同様に、開口を塞ぐ「閉位置」と「開位置」との間でスライド移動可能なシャッター部材53が設けられている。本変形例では、開口部52’を「2個」設けた例を示すが、「3個」以上の開口部を設けることも可能である。
【0079】
このように構成すれば、バキュームエアは、例えば、全てのシャッター部材53が「開位置」にある状態で、左右一対の開口部52d,52dを通過した際に、ドラム幅方向中央に向けて収斂され、その後、左右一対の開口部52c,52cを通過すると、ドラム幅方向中央に向けて更に収斂されるようになっている。換言すれば、本変形例では、バキュームエアの流れが、2段階に亘り、ドラム幅方向中央に向けて変更された状態で、原材料を集積用凹部40に積繊させることが可能である。
このように、本変形例によれば、バキュームエアの流れを、シャッター部材53をスライド移動させることによって、複数段階に亘って変更することができるため、より集積用凹部40の狙った位置を目がけて、原材料を積繊させることが可能になる。
【0080】
[変形例2]
また、上記実施形態及び変形例では、シャッター部材53を、左右一対の開口部52,52(開口部52’,52’)の各々に直接取り付けたが、例えば、図11に示すように、開口部52,52を覆うように配された補助ダクト54に設けることもできる。
以下、このような変形例について説明する。図11(a)は本変形例の平面図、図11(b)は本変形例の側面図を示したものである。なお、以下において、上記各実施形態と同様な構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。また、以下に示す左右一対の補助ダクト54,54は、何れも、同様な構成であるため、必要がある場合を除き、一方の補助ダクト54について説明し、他方の補助ダクト54についての説明を省略する。
【0081】
図11(a)及び(b)に示すように、本変形例では、ダクト51には、「1個」の開口部52aにより構成された、左右一対の開口部52、52が形成され、開口部52を介して誘引空気を導入する補助ダクト54(風洞)がダクト51の外面に取り付けられている。
補助ダクト54は、原材料の供給方向d1とは反対の方向(反供給方向)に対して鋭角に傾斜して延び、その延設端には、誘引空気を取り入れる誘引空気取入口54aが設けられている。また、補助ダクト54には、その管路中に、誘引空気の流通を閉止する「閉位置」と許容する「開位置」との間で移動可能なシャッター部材53が設けられている。
【0082】
このように構成すれば、誘引空気を、ダクト51内を流れるバキュームエアに対して鋭角に流入させることができるので、ダクト51内に誘引空気が流入する際に生じ得る乱流の発生を防止することが可能になる。その結果、本変形例では、ダクト51内のバキュームエアの流れを乱すことなく、その流れ方向を、誘引空気によって円滑に変更することができる。
【0083】
[変形例3]
さらに、上記実施形態及び各変形例では、開口部52(開口部52’)を介して、ダクト51内に、誘引空気を導入(流入)するように構成したが、ファンや圧縮空気を生成する装置等の給気装置で生成した空気(以下、「給気」という。)を導入するように構成することも可能である。
このように構成すれば、積繊装置1を稼働させた際に、給気装置を用いて生成された給気をダクト51内に送り込むことが可能である(空気量調整工程)。このため、本変形例では、所望の給気量の給気を、ダクト51内に導入することができるため、ダクト51内を流れるバキュームエアの吸引量に左右されることなく、バキュームエアの流れを、集積用凹部40の所望の位置に向けて変更することが可能である。また、本変形例では、給気装置をON・OFFすることで、ダクト51内への給気の導入又は停止を行うことができるため、上記各実施形態において用いたシャッター部材53を省略することができる。
【0084】
上記した給気装置を採用した場合、開口部52を介して、生成した給気を間欠にダクト51内に導入することもできる。斯かる場合、給気の導入タイミングや給気量等を制御することによっては、集積用凹部40の高坪量部対応部41のうちのドラム幅方向中央の位置に集中的に原材料を積繊させること、すなわち、ドラム幅方向両端の位置に原材料を積繊させないようにすることが可能である(図7等参照)。その結果、例えば、図8(b)に示すような、標準坪量部11Bが縊れた吸収体10を形成することができる。
【0085】
[変形例4]
また、上記実施形態及び各変形例では、回転ドラム3の回転軸の軸方向において相対向する対向壁面のそれぞれに開口部52,52を形成したが、これに加えて、回転軸の軸方向と交叉する交叉方向(上下方向)において相対向する対向壁面にも開口部56,56を形成することもできる(図12参照)。なお、交叉方向(上下方向)の開口部56は、軸方向(左右方向)の開口部52と同様に、ダクト51における原材料の供給方向における特定の箇所に一対のみ設けても良いし、ダクト51における原材料の供給方向に離間させて複数設けても良い。この開口部56にも、開口部52と同様に、開口を塞ぐ「閉位置」と開放する「開位置」との間で移動可能なシャッター部材57を設けることができる(図12参照)。
このように構成すれば、ダクト51内を流通するバキュームエアの流れ方向を、ドラム幅方向に変更することに加え、上下方向にも変更することができるため(例えば、図12に示す例では下方)、より集積用凹部40の狙った位置を目がけて、原材料を積繊させることが可能になる。
【0086】
なお、上下一対の開口部56,56をダクト51に形成した場合にあっては、上記変形例1~4と同様に構成することも可能である。具体的には、(1)開口部56を、供給方向に沿って並設される複数の開口により構成してもよく(変形例1に対応、図10参照)、(2)開口部56に、図11に示すような補助ダクト(「補助ダクト54」参照)を取り付けてもよく(変形例2に対応)、(3)開口部56を介して、給気装置により生成された給気をダクト51内に導入してもよい(変形例3に対応)。
【0087】
[変形例5]
さらに、積繊装置1の変形例として、積繊領域Sのダクト51の内部に、例えば、特開2015-126872号公報に記載のような、一対の仕切り板を設けることもできる。
このような一対の仕切り板43,43をダクト51内に設ける場合、回転ドラム3の外面を形成するリングプレート38上に固定するなどして(図3等参照)、集積用凹部40を挟んでドラム幅方向の両側に配すればよい(図13参照)。例えば、一対の仕切り板43,43は、特開2015-126872号公報のように、断面略三角形状に形成すると共に、互いの対向面が、回転ドラム3に向かって、互いの間隔が漸次狭くなるように傾斜していることが好ましい。このように構成すれば、集積用凹部40において、積繊材料等の原材料を、ドラム軸方向中央に集中的に供給することができる一方、ドラム幅方向両端への供給を物理的に阻害することが可能になる。
このような一対の仕切り板43,43をダクト51内に設けた場合、開口部52やシャッター部材53は、例えば、図13に示すように、側面視において、仕切り板43の上流側に形成すればよい。もちろん、開口部52やシャッター部材53を、側面視において、仕切り板43の下流側に設けることも可能である。
このように、ダクト51に、一対の開口部52,52、シャッター部材53及び一対の仕切り板43,43を設ければ、より一層、原材料を、集積用凹部40のドラム幅方向中央に集中的に積繊することが可能になる。
【0088】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の装置及び方法を開示する。
<1>
外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムと、
前記外周面に原材料を供給するダクトとを備え、
前記回転ドラムを回転軸周りに回転させつつ、該回転ドラムの内部側からの吸引によって前記ダクト内に生じた空気流により前記原材料を搬送させて、該原材料を前記集積用凹部に積繊させる積繊装置であって、
前記ダクトは、
前記回転軸の軸方向において相対向する一対の対向壁面のそれぞれに、前記回転ドラムに近接する下流側の端縁から離間した位置に開口する開口部を有しており、且つ、
前記ダクトに、前記開口部を介して前記ダクト内に流入する空気量を制御する制御機構が設けられている、積繊装置。
<2>
前記制御機構は、前記開口部を塞ぐ閉位置と該開口部を開放する開位置との間を移動可能な開閉部材を備える、前記<1>に記載の積繊装置。
<3>
前記開口部と前記回転ドラムの外周部との間の距離が、5mm以上100mm以下である、前記<1>又は<2>に記載の積繊装置。
<4>
前記開口部は、前記回転ドラムの外周面に沿った湾曲形状を有する、前記<1>~<3>の何れか1に記載の積繊装置。
<5>
前記開口部が、一対の前記対向壁面のそれぞれに複数形成されており、
前記複数の開口部は、前記回転ドラムの周方向に沿って並設されている、前記<1>~<4>の何れか1に記載の積繊装置。
<6>
前記開口部が、一対の前記対向壁面のそれぞれに複数形成されており、
前記複数の開口部は、前記ダクトにおける前記原材料の供給方向に沿って並設されている、前記<1>~<5>の何れか1に記載の積繊装置。
<7>
前記開口部に接続された補助ダクトを備え、該補助ダクトは、前記ダクトにおける前記原材料の供給方向とは反対の方向に対して鋭角に傾斜して延びている、前記<1>~<6>の何れか1に記載の積繊装置。
<8>
前記開口部を介して前記ダクト内に空気流を強制的に送り込む給気装置を備える、前記<1>~<7>の何れか1に記載の積繊装置。
【0089】
<9>
前記ダクトは、
前記回転軸の軸方向と交叉する方向において相対向する対向壁面それぞれに開口する第2開口部と、
前記第2開口部からの空気の流入量を制御する第2制御機構とを更に有する、前記<1>~<8>の何れか1に記載の積繊装置。
<10>
前記第2開口部に接続された第2補助ダクトを備え、該第2補助ダクトは、前記ダクトにおける前記原材料の供給方向とは反対の方向に対して鋭角に傾斜して延びている、前記<9>に記載の積繊装置。
<11>
前記第2開口部を介して前記ダクト内に空気流を強制的に送り込む給気装置を更に備える、前記<9>又は<10>に記載の積繊装置。
<12>
前記給気装置は、前記ダクト内に空気流を間欠的に送り込むように構成されている、前記<8>又は<11>に記載の積繊装置。
<13>
前記回転ドラムは、ドラム周方向の所定の積繊領域において原材料を前記集積用凹部に積繊させるように構成され、
前記集積用凹部は、原材料の坪量が相対的に高い高坪量部を形成する高坪量部対応部と、原材料の坪量が相対的に低い低坪量部を形成する低坪量部対応部とを、ドラム周方向に有し、
前記積繊領域は、前記高坪量部対応部に優先的に原材料を積繊させる高坪量部優先積繊領域と、該高坪量部対応部及び前記低坪量部対応部の双方に繊維材料を積繊させる全面的積繊領域とを、ドラム周方向に有し、
前記高坪量部優先積繊領域に隣接するダクトには、前記制御機構が設けられている、前記<1>~<12>の何れか1に記載の積繊装置。
<14>
前記積繊装置は、前記回転ドラムの外周部に対向配置され、過剰に積繊した原材料を掻き取るスカッフィングロールを更に備え、
前記スカッフィングロールは、前記回転ドラムの回転方向の下流側(「全面的積繊領域」)において前記ダクトの内部に配されている、前記<1>~<13>の何れか1に記載の積繊装置。
【0090】
<15>
積繊装置を用いた吸収体の製造方法であって、
前記積繊装置は、
外周面に集積用凹部が形成され、回転軸周りに回転する回転ドラムと、
前記外周面に原材料を供給するダクトとを備え、
前記ダクトは、
前記回転軸の軸方向において相対向する一対の対向壁面のそれぞれに、前記回転ドラムに近接する下流側の端縁から離間した位置に開口する開口部を有しており、且つ、
前記ダクトに、前記開口部を介して前記ダクト内に流入する空気量を制御する制御機構が設けられており、
前記製造方法は、
前記回転ドラムを回転軸周りに回転させつつ、前記ダクトに原材料を供給する原材料供給工程と、
前記回転ドラムの内部側からの吸引により前記ダクトに生じた空気流を、前記制御機構を制御することによって調整する空気流調整工程と、
前記空気流に乗って搬送された原材料を前記集積用凹部に積繊させる積繊工程とを含む、吸収体の製造方法。
<16>
前記積繊装置は、前記開口部を介して前記ダクト内に空気流を強制的に送り込む給気装置を備え、
前記空気流調整工程は、前記給気装置を制御することによって前記ダクトに生じた空気流を調整する工程を含む、前記<15>に記載の吸収体の製造方法。
<17>
前記空気流調整工程は、前記給気装置を制御することによって前記ダクト内に空気流を間欠的に送り込む工程を含む、前記<16>に記載の吸収体の製造方法。
<18>
前記回転ドラムは、ドラム周方向の所定の積繊領域において原材料を前記集積用凹部に積繊させるように構成され、
前記集積用凹部は、原材料の坪量が相対的に高い高坪量部を形成する高坪量部対応部と、原材料の坪量が相対的に低い低坪量部を形成する低坪量部対応部とを、ドラム周方向に有し、
前記積繊領域は、前記高坪量部対応部に優先的に原材料を積繊させる高坪量部優先積繊領域をドラム周方向に有し、
前記高坪量部優先積繊領域に隣接するダクトには、前記制御機構が設けられ、
前記積繊工程は、前記空気流に乗って搬送された原材料を前記高坪量部対応部に優先的に積繊させる工程を含む、前記<15>~<17>の何れか1に記載の吸収体の製造方法。
<19>
前記製造方法は、前記積繊工程を行った後、過剰に積繊した原材料を前記回転ドラムの外周面に対向配置されたスカッフィングロールを用いて掻き取り、掻き取った該成形体材料を再積繊する再積繊工程を更に含む、前記<15>~<18>の何れか1に記載の吸収体の製造方法。
【符号の説明】
【0091】
1 積繊装置
2 固定ドラム
2S 固定ドラムの外周部
10,10’ 吸収体
11 高坪量部
11A 中高部
11B 標準坪量部
12,12A,12B 低坪量部
13X,13Y 溝状凹部
21 側壁
22 隔壁
23 選択的吸引領域
24 全面的吸引領域
25 吸引制御体
26 制御体開口部
3 回転ドラム
3A ドラム本体
30 開口部閉鎖部材
31 吸引阻害部
32 吸引非阻害部
3B 外層部
34 第1凹部底面形成プレート
36 第2凹部底面形成プレート
37 凹部区画プレート
38 リングプレート
4 集積部
40 集積用凹部
41 高坪量部対応部
42 低坪量部対応部
43 仕切り板
45 スカッフィングロール
5 原材料供給機構
51 ダクト
52,52’,56 開口部
52a~52d 開口
53,57 シャッター部材
54 補助ダクト
54a 誘引空気取入口
6 搬送機構
S 積繊領域
S1 高坪量部優先積繊領域
S2 全面的積繊領域
X1 ドラム周方向
R1 回転ドラムの回転方向(MD)
Y1 ドラム幅方向(CD)
X 縦方向
Y 横方向
D 距離
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13