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特許7572990RDH12が関与する疾患及び疾病を治療する方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】RDH12が関与する疾患及び疾病を治療する方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/53 20060101AFI20241017BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241017BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241017BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241017BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20241017BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241017BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241017BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241017BHJP
【FI】
C12N15/53 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N7/01
C12Q1/686 Z
A61K48/00
A61K35/76
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076693
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2019500531の分割
【原出願日】2017-07-07
(65)【公開番号】P2022106918
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】62/359,777
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】サン,ジャンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】バシレディ,ビドュラサ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】Thompson, D. et al.,AAV-mediated Expression Of Human Rdh12 in Mouse Retina,IOVS,2012年03月,53, 14, ARVO Annual Meeting Abstract,p1916,https://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2351889参照
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
A61P 27/00-16
A61P 43/00
A61K 35/00-768
A61K 48/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AAVカプシドと、
以下:
a)5’逆方向末端反復(ITR)配列と、
b)ロドプシンキナーゼプロモーターと、
c)ヌクレオチド配列がロドプシンキナーゼプロモーターに作動可能に連結されている、機能性ヒトRDH12タンパク質をコードし配列番号5と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列と、
d)3’ITR配列を含む、
発現カセットとを含む、
組換えAAVベクター。
【請求項2】
請求項1に記載の組換えAAVベクターを含む、宿主細胞。
【請求項3】
眼疾病を予防する、治療する、遅延させる、若しくはその進行を停止させる、又は眼疾病を改善する組成物であって、請求項1に記載の組換えAAVベクターと、対象の眼に送達するのに適した薬学上許容される担体と、を含む、前記組成物。
【請求項4】
前記眼疾病が、RDH12をコードする遺伝子の欠損症又は変異に起因するRDH12媒介性疾病であり、及び前記対象は、哺乳類対象である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記眼疾病が、LCA13(レーバー先天性黒内障13)又はRP53(網膜色素変性症53)である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、網膜下に又は硝子体内に投与される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、疾病の発症前に、又は光受容体の喪失が発生した後に投与される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、同じ眼及び/又は反対側の眼に少なくとも1回繰り返し投与される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記対象は、RDH12遺伝子に変異を有すると診断を受けている、請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的方式で提出された資料の参照による援用
本出願人は、電子的方式で提出された配列表資料を参照により本明細書に援用する。本ファイルは、「UPN-16-7699PCT_ST25.txt」と表示され、サイズは9kBであり、2017年7月5日の日付が記されている。
【背景技術】
【0002】
光受容体細胞内にあるレチノイドデヒドロゲナーゼ/レダクターゼ及びRPEは、視覚サイクルにおける重要な酸化還元反応を触媒する。RDH12レチノールデヒドロゲナーゼ12(全トランス/9-シス/11-シス)(14q23.3-q24.1)(MIM番号608830)は、トランス及びシスレチノイド基質の両方に作用する、網膜で発現する二重特異性酵素をコードする。例えば、Thompson,DA et al,Nov.2005,Human Mol.Genet.,14(24):3865-3875を参照のこと。ヒトRDH12における多数の変異は、ある特定の形態における重度の小児期発症常染色体劣性網膜ジストロフィー(arRD)に関与している。例えば、この遺伝子における欠損はレーバー先天性黒内障タイプ13及び網膜色素変性症53の原因となる。
【0003】
網膜の重度ジストロフィーであるレーバー先天性黒内障(LCA)は、世界で約80,000人に1人が罹患している。本疾患は常染色体劣性であり、保因者は出生時または生後数ヶ月以内に光受容体の異常な発達を呈する。異常は重度の視覚障害及び失明を引き起こす。RDH12関連LCAは、LCAのより希少な形態の1つである。LCAの症例の約2.7%のみがRDH12の変異によって引き起こされる。
【0004】
網膜色素変性症(RP)53は、色素性網膜症のグループに属する別の網膜ジストロフィーである。網膜色素変性症は、眼底検査で見られる網膜色素沈着及び桿体光受容体細胞の一次喪失とそれに続く錐体光受容体細胞の二次喪失を特徴とする。患者は通常、暗視及び中間周辺視野を喪失する症状を有する。患者の症状が進行するにつれ、患者は自身の遠部周辺視野を喪失し、最終的には中心視力も喪失する。RDH12は同様に、この失明病にも関与する。
【0005】
これらの失明病における現在の治療は主に支援的なものであり、視覚障害がある子供を対象とするプログラムを患者に紹介すること、可能であれば屈折異常の矯正及び低視力補助具の使用及び作業療法/教育療法へのアクセスを含む。定期的に罹患している患者は、眼科的評価を受け、残存視覚を有する患者においては、弱視、緑内障または白内障の有無について、適切な治療と併行して検査される。遺伝子増強療法は、特定の形態におけるレーバー先天性黒内障(LCA)の治療に関して評価されている。例えば、米国特許出願第8,147,823号を参照のこと。
【0006】
LCA13、RP53及び他の眼疾病において良好な治療結果を得る新規かつ効果的なツール及び方法に対し、当技術分野において継続的なニーズが存在する。
【発明の概要】
【0007】
眼疾患の治療に有用な治療用組成物及び方法は、機能性RDH12タンパク質をコードするために最適化された新規cDNA配列及び眼疾患を有する対象への最適化配列の送達を含む。一実施形態では、このような新規の配列は、ウイルスベクター内にパッケージング可能なプラスミド配列を包含する。他の実施形態では、最適化配列を保有する新規のA
AVプロウイルスプラスミド及び/または組換えAAVが提供される。本明細書に記載されているように、これらのベクターはin vitro及びin vivoの両方で生物学的活性を示した。
【0008】
一態様では、機能的哺乳動物、好ましくはヒトのRDH12をコードするコドン最適化cDNA配列が提供される。
【0009】
別の態様では、発現カセットは、RDH12の1つ以上の機能的コピーをコードするコドン最適化核酸配列を含む。一実施形態では、発現カセットは、作動可能に連結され、また、5’及び3’AAV ITR配列の間に位置し宿主細胞中でその発現を誘導する調節配列の制御下にある、RDH12の1つ以上の機能的コピーをコードするコドン最適化核酸配列をさらに含む。
【0010】
他の態様では、本明細書に記載の1つ以上の発現カセットを含有するベクターが提供され、ベクターまたは発現カセットを含有する宿主細胞が提供される。
【0011】
別の態様では、プロウイルスプラスミドは、AAVカプシドをコードする配列、AAV逆方向末端反復配列及び天然または変異またはコドン最適化RDH12をコードするコドン最適化核酸配列及び宿主細胞中でコード化タンパク質の発現を誘導する発現制御配列を含む発現カセットを含む。ある特定の実施形態では、プラスミド構成要素はモジュールである。
【0012】
別の実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、AAVカプシドタンパク質及び対象の光受容体細胞においてRDH12を発現する調節配列の制御下にある、機能性RDH12タンパク質をコードする核酸配列またはその断片を含む。一実施形態では、rAAVは、AAV8カプシドもしくはその変異体、またはAAV7カプシドもしくはそのバリアント、またはAAV2カプシドもしくはそのバリアント、またはAAV5カプシドもしくはそのバリアントを含む。
【0013】
別の実施形態では、rAAVは、AAV逆方向末端反復配列、ならびに機能性RDH12をコードするコドン最適化核酸配列及び宿主細胞中でコード化タンパク質の発現を誘導する発現制御配列を含む発現カセットを含む。
【0014】
さらなる態様では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤及び/またはアジュバントならびに機能性RDH12をコードする最適化核酸配列、ならびに本明細書に具体的に記載されるrAAVなどのプラスミド、ベクターまたはウイルスベクターを含む。一実施形態では、最適化核酸配列は、対象の光受容体細胞において機能性RDH12を発現する調節配列の制御下にある。一実施形態では、組成物は、機能性RDH12をコードする配列の複数のコピーを含有する。別の実施形態では、組成物は薬学的に許容される担体を包含する。
【0015】
さらなる態様では、コドン最適化RDH12のcDNAによってコードされる機能性RDH12タンパク質を発現する細胞が提供される。一実施形態では、このような細胞は、細胞の既存のRDH12配列における変異を標的として修復するか、またはその細胞での新規の発現を目的としてRDH12コドン最適化配列を挿入するために、Crispr/Cas9系及び関連系及び構成要素などの遺伝子編集系によって処理された人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【0016】
別の態様では、哺乳動物の対象におけるRDH12媒介性疾患を治療する方法は、それを必要とする対象に本明細書に記載のコドン最適化RDH12のcDNA、または本明細
書に記載のベクター、ウイルスもしくは医薬組成物を投与することを含む。
【0017】
別の態様では、哺乳動物の対象における失明の進行を治療するか、遅延もしくは停止させること、または少なくとも部分的な視力を回復させる方法は、機能性RDH12タンパク質またはその断片をコードする最適化核酸配列またはその断片を対象に投与または送達することを含む。一実施形態では、この方法は本明細書に記載の任意の組成物を利用する。
【0018】
別の実施形態では、哺乳動物の対象における失明の進行を治療するか、遅延もしくは停止させること、または少なくとも部分的な視力を回復させる方法は、AAVカプシドタンパク質及び対象の光受容体細胞においてRDH12を発現する調節配列の制御下にある機能性RDH12タンパク質をコードする核酸配列またはその断片を含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)、ならびに薬学的に許容される担体の投与を含む。一実施形態では、この方法は本明細書に記載の任意の組成物を利用する。
【0019】
さらに別の態様では、非機能性もしくは不適切な機能性RDH12の発現、またはRDH12の不十分な量もしくは欠損症に起因する眼疾患を治療する方法は、適切なプロモーターの制御下で天然またはコドン最適化RDH12遺伝子を含むベクターを欠損症の対象に投与することを含む。
【0020】
さらに別の態様では、RDH12欠損症またはRDH12変異関連疾患を治療する方法は、Crispr/Cas9系などの遺伝子編集系及び関連系及び構成要素を用いて、RDH12における変異を標的として修復することを含む。一実施形態では、修復はin vivoでRDH12をコードする配列を最適化することを含む。
【0021】
別の実施形態では、それを必要とする対象におけるRDH12の欠損、欠損症または変異によって引き起こされるLCAまたはRPを治療または予防する方法が提供される。この方法は、(a)RDH12関連LCAまたはRPに罹患しているか、または発症の危険性がある対象を特定すること、(b)遺伝子型解析を実施し、RDH12遺伝子中の変異を特定すること、(c)非侵襲性網膜イメージング及び機能的研究を実施し、治療をする標的となり得る保持された光受容体の領域を特定すること、(d)有効濃度の、上記光受容体細胞中の上記配列の産物を発現するプロモーター配列の制御下で機能性RDH12をコードする核酸配列を保有するベクター(例えば組換えウイルス)を含む組成物及び薬学的に許容される担体を対象に投与することを包含し、上記疾患は予防されるか、抑制されるかまたは改善される。
【0022】
これらの組成物及び方法のさらに他の態様及び利点は、その好ましい実施形態における以下の詳細な説明でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1A及び図1Bは、コドン最適化RDH12(配列番号、上部配列)と天然RDH12(配列番号、下部配列)とのアラインメントであり、約78%の配列類似性を示す。このアラインメントでは、スコアは787ビット(872)、同一性は744/949(78%)、ギャップは0/949(0%)及び二本鎖はプラス鎖である。
図2図2A図2Fは、RDH12プラスミドの発現を示す6つのパネルである。左(図2A)及び右(図2B)の上部パネルは、トランスフェクトされていない対照を示す。左(図2C)及び右(図2D)の中央パネルはRDH12Mycトランスフェクト細胞を示す。左下パネルはRDH12Mycトランスフェクト細胞を示す(図2E)。右下パネル(図2F)は、右中央パネル(図2D)における2つの細胞の拡大図である。 図2Gは、RDH12MycをトランスフェクトしたCOS-7細胞、対照COS_7細胞、RDH12MycをトランスフェクトしたCHO細胞及び対照Cho細胞ならびに2つの分子量マーカーを示すゲルである。
図3】RDH12 iPs細胞におけるAAV2-RDH12Mycの発現を示すゲルである。細胞は標識され、MWマーカーが示される。
図4】AAV8-RDH12-myc及びAAV7m8RDH12-mycを有するRDH12 KOマウスのRDH12.myc注射網膜対非注射網膜におけるA波ブリーチ前及びブリーチ後の比を示すグラフである。網膜電図(ERG)を、本発明者らの試験ベクターを片方の眼に注射したRDH12-/-マウスにおいて実施した。反対側の注射されていない眼を、光誘発性網膜損傷に対する外来性RDh12の保護効果を比較するための対照として使用した。影響を比較するために、光損傷の前後にERGを実施した。光損傷後、注射されていない眼はA波の振幅の低下を示したが、注射された眼は光損傷後も比較的安定していた。
図5図5Aは、RDH12KOマウスのRDH12.myc(AAV8-RDH12-Myc)注射網膜対非注射網膜におけるA波のブリーチ前及びブリーチ後の比のグラフを示す。図5Bは、RDH12KOマウスのRDH12.myc(AAV7m8-RDH12-Myc)注射網膜対非注射網膜におけるにおけるA波のブリーチ前及びブリーチ後の比のグラフを示す。
図6図6A図6Dは、左眼(図6A及び図6C)が注射されていなかった単一の動物136についての実験結果を示す。右眼(図6B及び図6D)にAAV7m8-RDH12-Mycを注射した。ERGベースラインを実施し、続いて光損傷、続いて2回目のERGを実施した。動物を10日間飼育し、3回目のERGを実施した。マウスを屠殺し、眼を収集して固定し、切片化し、DAPI(図6A及び図6B)またはロドプシン及びDAPI(図6C及び図6D)で染色した。
図7図7A図7Cは、光損傷後の非注射網膜と比較して、AAV7m8-RDH12-Myc注射網膜において網膜構造が維持されることを示す。図7Aは非注射の左眼を示す。図7Bは薄いONLを示す、左眼の高倍率画像を示す。図7Cは、AAV7m8-RDH12-Mycを注射した右眼である。
図8図8Aは、薄い網膜を示す、非注射の左眼を有する動物の網膜構造を示す。図8Bは、AAV8-RDH12-Mycを注射した動物の右眼を示す。
図9図9A及び図9Bは、高倍率画像を用いた単一の動物147の網膜構造を示す。図9Aは、非注射の左眼を示す。図9Bは、AAV8-RDH12-Mycを注射した右眼を示す。
図10A】選択された細胞においてRDH12の発現を誘導するCMV.CβAプロモーター(CBAe)を包含する調節配列の制御下にある機能性RDH12をコードする天然核酸配列である、AAV5’ITRと3’ITRとの間に含有される発現カセット、pAAV.CBAe.h-天然-RDH12の模式図である。
図10B】選択された細胞においてRDH12の発現を誘導するCMV.CβAプロモーターを包含する調節配列の制御下で、mycタグに連結される機能性RDH12をコードする天然核酸配列である、AAV5’ITRと3’ITRとの間に含有される発現カセット、pAAV.CBAe.h-天然-RDH12.mycの模式図である。
図10C】選択された細胞においてRDH12の発現を誘導するCMV.CβAプロモーターを包含する調節配列の制御下で、mycタグに連結される機能性RDH12(配列番号3)をコードするコドン最適化核酸配列である、AAV5’ITRと3’ITRの間に含有される発現カセット、pAAV.CBAe.h-コドン最適化-RDH12の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に記載の方法及び組成物は、眼疾患の治療に有用である。このような眼疾患は、RDH12媒介性疾患または疾病、例えば、ヒトレチナールデヒドロゲナーゼ12(RDH12)をコードする遺伝子の変異、欠損または欠損症によって引き起こされるかまた
はそれらを含む疾患である。一実施形態では、これらの組成物及び方法は、眼疾患の治療を目的として、機能性ヒトレチナールデヒドロゲナーゼ遺伝子(hRDH12)をコードするコドン最適化cDNAを哺乳動物の対象に送達するのに有用である。ある特定の実施形態では、RDH12媒介性疾患は、LCAもしくはLCA13、またはRPもしくはRP53などの失明病である。他の実施形態では、方法及び組成物は、in vivoで対象の欠損遺伝子を編集すること、またはCRISPR/Casシステムなどの遺伝子編集システムを使用して機能性RDH12をコードするコドン最適化cDNA配列を発現する適切な細胞株を作製することにおいて有用である。本明細書に記載の組成物及び方法は、発現カセット、ベクター、組換えウイルス及び機能性RDH12をコードする配列の1つ以上の異なるバージョンを送達することを目的とする他の組成物を含む。このような組成物は、同じ発現カセット、ベクターまたはウイルス中でのコドン最適化及び複数の及びまたは異なるバージョンのRDH12のアセンブリの両方を含む。これらの特徴は、発現されている機能性RDH12タンパク質の有効性を高めるだけでなく、機能性タンパク質を送達して安全性を高める、より低用量の治療用試薬も可能にし得る。カセットまたはウイルス中で送達されるRDH12をコードする核酸配列の最適化は、RDH12をコードする天然のまたは内在性の配列を用いて生成され得るレベルと比較して、in vivoで機能性RDH12タンパク質の産生レベルを最大にすることが予想されている。
【0025】
本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって、及び本願において使用される用語の多くに対する一般的な手引きを当業者に提供する出版物を参照することによって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に含有される定義は、本明細書の構成要素及び組成物の説明を明確にするために提供されており、特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図しない。
【0026】
用語「a」または「an」は、1つ以上を指す。例えば、「発現カセット(an expression cassette)」は1つ以上のそのようなカセットを表す。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」は、本明細書では互換的に使用される。
【0027】
本明細書で使用される用語「約」は、特に明記しない限り、提供された参考文献からプラスまたはマイナス10%までの可変性を意味する。
【0028】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という単語は、排他的ではなく包括的に、すなわち他の不特定の構成要素またはプロセスステップを包含するように解釈される。「からなる(consist)」、「からなる(consisting)」及びその変形語は、包括的ではなく排他的に、すなわち特に列挙されていない構成要素またはステップを排除するように解釈される。
【0029】
「RDH12」はレチノールデヒドロゲナーゼ12(全トランス/9-シス/11-シス)タンパク質、好ましくはそのヒトオーソログである。このタンパク質は同様に、RP53、LCA13及びSDR7C2としても知られている。本明細書に使用される用語「RDH12」は、以下でさらに定義されるように、完全長タンパク質自体もしくは機能性断片、またはそのバリアントを指す。一実施形態では、RDH12タンパク質配列は、組成物が治療を目的とする同一の哺乳動物に由来する。一実施形態では、RDH12はヒトに由来する。別の実施形態では、RDH12はイヌに由来する。
【0030】
タンパク質に適用される場合の用語「断片」または「機能性断片」は、完全長タンパク質の機能を保持する任意の断片を指すが、必ずしも同じレベルの発現または活性ではない。
【0031】
「機能性タンパク質」とは、眼疾患または眼疾病のない対象において正常に機能するタンパク質、例えばRDH12の生物学的活性を示す任意のアミノ酸配列を意味する。このような機能性タンパク質は、それをコードするDNA配列またはそのアミノ酸配列内に、変異が眼疾患または眼疾病を引き起こさない変異または修飾を保有する可能性がある。他の実施形態では、このような機能性タンパク質は、変異を包含し得るか、またはタンパク質にその機能を「天然の」または内因性配列よりも良好に機能させ得る。一実施形態では、このような機能性RDH12タンパク質は、正常タンパク質または正常に機能するタンパク質と見なされ得る。
【0032】
一実施形態では、天然のヒトRDH12は、配列番号2(下記のセクションBにおいて報告された核酸配列である配列番号1のコード化タンパク質である)と表示された以下の配列、
MLVTLGLLTSFFSFLYMVAPSIRKFFAGGVCRTNVQLPGKVVVITGANTGIGKETARELASRGARVYIACRDVLKGESAASEIRVDTKNSQVLVRKLDLSDTKSIRAFAEGFLAEEKQLHILINNAGVMMCPYSKTADGFETHLGVNHLGHFLLTYLLLERLKVSAPARVVNVSSVAHHIGKIPFHDLQSEKRYSRGFAYCHSKLANVLFTRELAKRLQGTGVTTYAVHPGVVRSELVRHSSLLCLLWRLFSPFVKTAREGAQTSLHCALAEGLEPLSGKYFSDCKRTWVSPRARNNKTAERLWNVSCELLGIRWE
を有する。
【0033】
別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、配列番号1などの天然RDH12タンパク質と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも78%または少なくとも80%の同一性を有するバリアントである。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも85%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも90%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも91%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも92%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも93%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも94%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも95%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも96%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも97%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも98%の同一性を有する。別の実施形態では、RDH12タンパク質配列は、天然RDH12タンパク質と少なくとも99%の同一性を有する。
【0034】
アミノ酸配列のコンテキストにおいて、用語「同一性パーセント(percent identity)(%)」、「配列同一性」、「配列同一性パーセント」、または「同一性パーセント(percent identical)」は、対応するように整列させた場合に同一である2つの配列中の残基を指す。同一性パーセントは、完全長タンパク質、ポリペプチド、約70アミノ酸~約300アミノ酸またはそのペプチドド断片もしくは対応する核酸配列のコード配列に対するアミノ酸配列に関して容易に決定され得る。適切なアミノ酸断片は、少なくとも約8アミノ酸長であり得、また最大約150アミノ酸であり得る。一般に、2つの異なる配列間の「同一性」、「相同性」または「類似性」に言及す
る場合、「同一性」、「相同性」または「類似性」は「整列した」配列に関して決定される。「整列した」配列または「アラインメント」は、多くは参照配列と比較して、欠失しているかまたは追加の塩基もしくはアミノ酸に対する修正を含有する、複数の核酸配列またはタンパク質(アミノ酸)配列を指す。アラインメントは、任意の様々な公的または市販の多重配列アラインメントプログラムを用いて実施される。アミノ酸配列に関して、例えば「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」及び「Match-Box」プログラムなどの配列アラインメントプログラムが利用可能である。一般に、これらのプログラムのいずれもデフォルト設定で使用されるが、当業者は必要に応じてこれらの設定を変更し得る。あるいは、当業者は、参照した方法により提供されるものと同様の、少なくとも同一性またはアラインメントのレベルを提供する別の方法を利用し得る。例えば、J.D.Thomson et al,Nucl.Acids.Res.,“A comprehensive comparison of multiple sequence alignments”,27(13):2682-2690(1999)を参照のこと。
【0035】
「最適化された」または「コドン最適化された」RDH12は、サイレント、保存的もしくは非保存的アミノ酸の変更またはタンパク質中のアミノ酸挿入もしくは欠失を生じるコドンの変更によって、配列番号1のそれなどのような天然または天然に存在にする配列とは異なるDNA配列によってコードされたRDH12タンパク質配列を意味する。これらの変更は、タンパク質の産生を増加させ、及び/またはタンパク質の構造及び安定性を増強し得る。本明細書に記載の最適化RDH12タンパク質は、コドン最適化DNA配列によってコードされる機能性RDH12タンパク質である。
【0036】
最適化されたRDH12タンパク質の一実施形態は、配列番号4と表示された、翻訳された機能性RDH12タンパク質配列(以下のセクションBに報告された核酸配列である配列番号3のコード化タンパク質)
AAATMLVTLGLLTSFFSFLYMVAPSIRKFFAGGVCRTNVQLPGKVVVITGANTGIGKETARELASRGARVYIACRDVLKGESAASEIRVDTKNSQVLVRKLDLSDTKSIRAFAEGFLAEEKQLHILINNAGVMMCPYSKTADGFETHLGVNHLGHFLLTYLLLERLKVSAPARVVNVSSVAHHIGKIPFHDLQSEKRYSRGFAYCHSKLANVLFTRELAKRLQGTGVTTYAVHPGVVRSELVRHSSLLCLLWRLFSPFVKTAREGAQTSLHCALAEGLEPLSGKYFSDCKRTWVSPRARNNKTAERLWNVSCELLGIRWEである。
【0037】
上記のように、同義語コドンの変更または保存的アミノ酸の変更をもたらすコドンの変更、または挿入もしくは欠失は、タンパク質の産生を増加させ得、及び/またはタンパク質の構造及び安定性を増強し得る。このような最適化は、内在性または天然の配列を使用して生成され得るレベルと比較して、試験タンパク質の産生レベルを最大にする治療用試薬の開発に有用である。
【0038】
正常または正常に機能するRDH12タンパク質をコードする核酸配列は、RDH12タンパク質またはそのホモログを天然に発現する任意の哺乳動物に由来し得る。一実施形態では、ヒトRDH12をコードする天然核酸配列は、NCBIデータベースのアクセッション番号NC_000014.9に報告されている。
【0039】
一実施形態では、天然のヒトRDH12におけるDNA配列は配列番号1、
ATGCTGGTCACCTTGGGACTGCTCACCTCCTTCTTCTCGTTCCTGTATATGGTAGCTCCATCCATCAGGAAGTTCTTTGC
TGGTGGAGTGTGTAGAACAAATGTGCAGCTTCCTGGCAAGGTAGTGGTGATCACTGGCGCCAACACGGGCATTGGCAAGGAGACGGCCAGAGAGCTCGCTAGCCGAGGAGCCCGAGTCTATATTGCCTGCAGAGATGTACTGAAGGGGGAGTCTGCTGCCAGTGAAATCCGAGTGGATACAAAGAACTCCCAGGTGCTGGTGCGGAAATTGGACCTATCCGACACCAAATCTATCCGAGCCTTTGCTGAGGGCTTTCTGGCAGAGGAAAAGCAGCTCCATATTCTGATCAACAATGCGGGAGTAATGATGTGTCCATATTCCAAGACAGCTGATGGCTTTGAAACCCACCTGGGAGTCAACCACCTGGGCCACTTCCTCCTCACCTACCTGCTCCTGGAGCGGCTAAAGGTGTCTGCCCCTGCACGGGTGGTTAATGTGTCCTCGGTGGCTCACCACATTGGCAAGATTCCCTTCCACGACCTCCAGAGCGAGAAGCGCTACAGCAGGGGTTTTGCCTATTGCCACAGCAAGCTGGCCAATGTGCTTTTTACTCGTGAGCTGGCCAAGAGGCTCCAAGGCACCGGGGTCACCACCTACGCAGTGCACCCAGGCGTCGTCCGCTCTGAGCTGGTCCGGCACTCCTCCCTGCTCTGCCTGCTCTGGCGGCTCTTCTCCCCCTTTGTCAAGACGGCACGGGAGGGGGCGCAGACCAGCCTGCACTGCGCCCTGGCTGAGGGCCTGGAGCCCCTGAGTGGCAAGTACTTCAGTGACTGCAAGAGGACCTGGGTGTCTCCAAGGGCCCGAAATAACAAAACAGCTGAGCGCCTATGGAATGTCAGCTGTGAGCTTCTAGGAATCCGGTGGGAGT
として表示される。
【0040】
他の実施形態では、標的細胞での発現を増強するために、RDH12コード配列に特定の修飾を加える。このような修飾には、コドン最適化(例えば、参照により本明細書に援用される、米国特許第7,561,972号、第7,561,973号及び第7,888,112号を参照のこと)及び翻訳開始部位周辺の配列におけるコザックのコンセンサス配列、gccRccATGRへの変換が含まれる。参照により本明細書に援用される、Kozak et al,Nucleic Acids Res.15(20):8125-8148を参照のこと。コドン最適化核酸配列は、タンパク質産生、発現及び/またはタンパク質構造及び安定性の増強を高める同義語コドンの変更によって、配列番号1のそれなどのような天然または天然に存在する配列とは異なる。
【0041】
コドン最適化コード領域は様々な異なる方法によって設計され得る。この最適化はオンラインで利用可能な方法、公開された方法またはコドン最適化サービスを提供する企業を利用して実施され得る。あるコドン最適化の方法が、例えば、国際特許出願公開WO2015/012924に記載され、参照により本明細書に援用される。簡潔には、産物をコードする核酸配列は、同義語コドン配列を用いて修飾されている。好適には、産物に対するオープンリーディングフレーム(ORF)の全長が修飾される。しかしながら、一部の実施形態では、ORFの断片のみが変更され得る。これらの方法のうちの1つを使用することによって、任意の与えられたポリペプチド配列にその使用頻度を適用し、そのポリペプチドをコードするコドン最適化コード領域の核酸断片を産生し得る。このような最適化は、内在性または天然の配列を使用して生成され得るレベルと比較して、試験タンパク質の産生レベルを最大にする遺伝子治療用試薬の開発に有用である。このようなコドン最適化配列は、一実施形態では、得られる治療用試薬組成物の有効性を高め得るが、使用する試薬の低用量化も可能にし得、したがって治療上の安全性を高める。
【0042】
コドンに対する実際の変更を実施するため、または本明細書中に記載されるように設計されたコドン最適化コード領域を合成するための多数の選択肢が利用可能である。このよ
うな修飾または合成は、当業者に周知の標準的及び常例的な分子生物学的操作を用いて実施され得る。一手法では、各々の長さが80~90ヌクレオチドで、その長さに及ぶ所望の配列である一連の相補的オリゴヌクレオチド対を標準的な方法で合成する。これらのオリゴヌクレオチド対は、アニーリング時に、それらが付着末端を含む80~90塩基対の二本鎖断片を形成するように合成され、例えば、その対の各オリゴヌクレオチドは、その対の他のオリゴヌクレオチドに相補的な領域を超えて3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の塩基を伸長するように合成される。各対のオリゴヌクレオチドの一本鎖末端は、別の対のオリゴヌクレオチドの一本鎖末端とアニールするように設計されている。オリゴヌクレオチド対をアニーリングさせ、その後これらの二本鎖断片の約5~6個を一本鎖の付着末端を介して共にアニーリングさせ、その後それらを共に連結して標準的なバクテリアのクローニングベクター、例えばInvitrogen Corporation,Carlsbad,Calif.により利用可能なTOPO(登録商標)ベクターにクローニングする。その後、構築物を標準的な方法により配列決定する。共に連結された80~90塩基対断片の5~6断片、すなわち約500塩基対の断片からなるこれらの構築物のいくつかは、所望の配列全体が一連のプラスミド構築物で表されるように調製される。その後、これらのプラスミドのインサートを適当な制限酵素で切断し、共に連結して最終構築物を形成する。その後、最終構築物は標準的なバクテリアのクローニングベクターにクローニングされ、配列決定される。さらなる方法が、直ちに当業者に明らかとなるであろう。さらに、遺伝子合成は商業的に容易に利用可能である。
【0043】
コドン最適化RDH12のDNA配列における一実施形態は、配列番号3として表示されたRDH12のDNA配列、
GCGGCCGCCACCATGTTGGTCACCCTCGGACTCCTTACCTCATTTTTCTCCTTCCTGTACATGGTCGCCCCGAGCATTAGAAAGTTCTTCGCCGGCGGAGTGTGTAGGACTAACGTGCAGTTGCCCGGGAAGGTCGTGGTGATTACTGGCGCCAACACTGGTATCGGAAAGGAAACTGCGCGGGAACTGGCGTCCAGAGGTGCCCGCGTGTACATTGCATGCCGCGACGTGCTGAAGGGAGAATCCGCCGCGTCCGAGATCCGGGTGGACACCAAAAATAGCCAGGTGCTCGTGCGGAAGCTGGATCTGTCCGACACCAAGTCAATCAGGGCCTTTGCCGAGGGGTTCCTGGCTGAAGAGAAGCAGCTCCACATTCTGATCAACAACGCCGGGGTCATGATGTGCCCCTACTCAAAGACCGCAGACGGCTTCGAAACCCACCTGGGCGTGAACCATCTGGGACACTTCCTGCTGACCTATCTGCTGCTGGAGCGACTGAAAGTGTCGGCTCCTGCTCGGGTCGTGAACGTGTCCAGCGTGGCCCATCACATCGGAAAGATCCCATTCCACGATCTCCAATCCGAGAAGCGGTACAGCAGGGGCTTCGCGTACTGTCACTCGAAGTTGGCCAACGTGCTCTTTACCCGCGAACTGGCCAAGCGGCTGCAGGGCACTGGCGTGACCACTTACGCCGTGCACCCTGGTGTCGTGCGGTCCGAGCTGGTCCGCCATTCCTCTCTTCTGTGCCTCCTGTGGAGACTCTTCTCCCCGTTCGTCAAGACCGCAAGGGAAGGAGCCCAAACGAGCCTTCACTGTGCCCTGGCGGAAGGACTGGAGCCGCTTAGCGGAAAGTACTTCTCGGACTGCAAGCGCACCTGGGTGTCGCCTAGAGCTCGGAACAACAAGACTGCCGAACGCCTCTGGAATGTGTCCTGCGAGCTGCTGGGAATCAGATGGGAGTGATGATCATGAGATCT
である。
【0044】
ヒトRDH12をコードする天然核酸配列と整列させると、コドン最適化RDH12を
コードする配列は、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%の、これらの範囲のいずれかの間にある任意の整数を包含する同一性パーセントを有し得る。一実施形態では、コドン最適化RDH12は、天然配列と少なくとも51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性パーセントを有する。
【0045】
核酸配列のコンテキストにおいて、用語「同一性パーセント(percent identity)(%)」、「配列同一性」、「配列同一性パーセント」、または「同一性パーセント(percent identical)」は、対応するように整列させた場合に同一である2つの配列中の塩基を指す。同一性パーセントは、比較される配列に対して最適条件下で整列された2つの配列を比較することによって決定される。配列同一性を比較する長さは、RDH12コード配列の完全長、または少なくとも約100~150ヌクレオチドの断片、または所望分を超えたものであり得る。しかしながら、例えば、少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約20~24ヌクレオチド、少なくとも約28~32ヌクレオチド、少なくとも約36またはそれ以上のヌクレオチドのような、より小さい断片間の同一性においても同様に望ましい可能性がある。多重配列アラインメントプログラムも同様に核酸配列に対して利用可能である。このようなプログラムの例としては、インターネット上のウェブサーバを介してアクセス可能な「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」及び「MEME」が挙げられる。このようなプログラムに関する他の情報源は当業者に知られている。あるいは、Vector NTIのユーティリティも同様に使用される。同様に、上記のプログラムに含有されるものを包含する、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用され得る当技術分野で知られている多数の方法も存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCG Version 6.1のプログラムであるFasta(商標)を用いて比較され得る。一般的に入手可能な配列解析ソフトウェア、より具体的にはBLASTまたは公的データベースによって提供される解析ツールも同様に使用され得る。
【0046】
配列番号3の実施形態では、天然のヒトRDH12のcDNAを、本発明者らが完全なコザックコンセンサスをNotI部位に組み込んで5’末端に付加し、3’末端にBclI及びBamHI部位(クローニングの制限部位)を付加することによって修飾した。TGA終止コドンをBclI部位に組み込んで最適なエピトープタグ標識を容易にした。この実施形態は同様に、BglII、Bsu36I、NheI、NotI、SalI及びXhoIなどの特定の内部制限酵素の使用を回避する。コザック-CACC配列を有するNotI制限部位を配列番号3のヌクレオチド1~12に挿入する。BglII制限部位を配列番号3の最後の6ヌクレオチドに挿入する。
【0047】
図1A及び図1Bは、配列番号(コドン最適化RDH12のDNA配列)と配列番号1(天然RDH12のコード配列)との配列アラインメントを示す。得られたコード化タンパク質は同じであるが、コドン最適化RDH12のオープンリーディングフレームは、ヌクレオチドの22%が天然配列と異なる(すなわち相同性が78%である)。
【0048】
本明細書で使用される用語「対象」は、ヒトを包含する哺乳動物、動物または家畜(farm animal)、家畜(domestic animal)またはペット、ならびに臨床研究に通常使用される動物を意味する。一実施形態では、これらの方法及び組成物の対象はヒトである。さらに他の適切な対象としては、これらに限定されないが、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ及びその他が挙げられる。本明細書に使用される用語「対象」は、「患者」と互換的に使用される。対象は、特にヒトを包含する、これらの
治療法または予防法を必要とする任意の哺乳動物を包含する。対象は雄性または雌性であり得る。一実施形態では、対象は、レーバー先天性黒内障(LCA)または網膜色素変性症に罹患しているか、または発症する危険性を有する。別の実施形態では、対象は、機能性RDH12の変異、欠損または不適切な発現に関連するLCAもしくはRPまたは他の眼疾患に罹患しているか、または発症する危険性を有する。別の実施形態では、対象は、LCAまたはRPの臨床徴候を示している。LCAまたはRPの臨床徴候としては、これらに限定されないが、眼振、周辺視力の低下、中心(リーディング)視力の低下、夜間視力の低下、色覚の喪失、視力の低下、光受容体機能の低下、色素変化及び失明が挙げられる。別の実施形態では、対象は、LCAまたはRPの診断を受けている。さらに別の実施形態では、対象は、LCAまたはRPの臨床徴候をまだ示していない。
【0049】
さらに別の実施形態では、対象は約または少なくとも5~10%の光受容体を損傷及び/または喪失している。別の実施形態では、対象は少なくとも20%の光受容体を損傷及び/または喪失している。別の実施形態では、対象は少なくとも30%の光受容体を損傷及び/または喪失している。別の実施形態では、対象は少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%の光受容体を損傷/喪失している。別の実施形態では、対象は少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の光受容体を損傷及び/または喪失している。別の一実施形態では、対象は約または少なくとも5~10%またはそれ以上の桿体及び/または錐体の機能を損傷/喪失している。別の一実施形態では、対象は少なくとも20%の桿体及び/または錐体の機能を損傷/喪失している。別の一実施形態では、対象は少なくとも30%の桿体及び/または錐体の機能を損傷/喪失している。別の一実施形態では、対象は少なくとも40%の桿体及び/または錐体の機能を損傷/喪失している。別の一実施形態では、対象は少なくとも50%の桿体及び/または錐体の機能を損傷/喪失している。別の一実施形態では、対象は少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%の桿体及び/または錐体の機能を損傷/喪失している。別の一実施形態では、対象は90%の桿体及び/または錐体の機能を損傷/喪失している。
【0050】
本明細書で使用される用語「疾患」または「遺伝性疾患」または「RDH12媒介性疾患」は、対象の眼細胞においてRDH12タンパク質を部分的または全体的のいずれかで非機能的にする、天然(例えば、野生型)RDH12タンパク質のアミノ酸配列中の挿入、変更または欠失に関連するあらゆる疾病、疾患または症状を指すために、本明細書全体にわたって使用される。疾患または遺伝性疾病は同様に、対象の眼細胞においてRDH12タンパク質を部分的もしくは全体的のいずれかで非機能的にするか、または部分的もしくは全体的に発現させる何らかの他の欠損を含み得る。特に明記しない限り、このような疾患には、遺伝性及び/または非遺伝性の遺伝性疾患、ならびに乳児期または小児期に身体症状を示さない可能性がある疾患及び症状が包含される。
【0051】
本明細書で使用される用語「眼細胞」は、眼の中の、または眼の機能に関連する任意の細胞を指す。この用語は、桿体、錐体及び光感受性神経節細胞、網膜色素上皮(RPE)細胞、ミュラー細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞を包含する、任意の1つ以上の光受容体細胞を指し得る。一実施形態では、眼細胞は光受容体細胞である。別の実施形態では、眼細胞は桿体及び錐体細胞である。さらに別の実施形態では、眼細胞は錐体細胞である。
【0052】
本発明のある特定の実施形態では、対象は「眼疾患」に罹患しており、これに対して本発明の構成要素、組成物及び方法が治療用に設計される。本明細書中で使用する場合、「眼疾患」は、これらに限定されないが、シュタルガルト病(常染色体優性または常染色体劣性)、網膜色素変性症、加齢黄斑変性、桿体錐体ジストロフィー、レーバー先天性黒内障、アッシャー症候群、バルデー-ビードル症候群、ベスト病、バッセン‐コーンツバイク症候群、網膜分離症、非処置の網膜剥離、模様ジストロフィー、色覚異常、先天性脈絡
膜欠如、眼白皮症、S錐体増強症候群、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、鎌状赤血球網膜症、レフサム症候群、先天性停止性夜盲、緑内障、脳回転状萎縮または網膜静脈閉塞を包含する。別の実施形態では、対象は、緑内障、レーバー遺伝性視神経症、リソソーム蓄積症、またはペルオキシソーム病に罹患しているか、または発症する危険性がある。このような眼疾病の臨床徴候としては、これらに限定されないが、周辺視力の低下、中心(リーディング)視力の低下、夜間視力の低下、色覚の喪失、視力の低下、光受容体機能の低下、色素変化及び最終的に至る失明が挙げられる。
【0053】
本発明の特定の実施形態では、RDH12核酸配列は、その多くが当技術分野で知られており利用可能であるベクターまたはウイルスベクターの手段による治療を必要とする眼細胞に送達される。眼細胞への送達に関して、治療用ベクターは、毒性がなく、免疫原性がなく、製造が容易であり、標的細胞へのDNAの保護及び送達が効率的であることが望ましい。本明細書で使用される「ベクター」は、外因性または異種または操作された核酸配列または導入遺伝子が挿入され得る核酸分子であり、その後適切な宿主細胞に導入され得る。ベクターは、1つ以上の複製起点、及び組換えDNAが挿入され得る1つ以上の部位を有することが好ましい。ベクターは多くの場合、ベクターを有する細胞を、例えば薬剤耐性遺伝子をコードするベクターを有さない細胞から選択され得る利便性の高い手段を有する。一般的なベクターとしては、プラスミド、ウイルスゲノム及び(主に酵母及びバクテリア中の)「人工染色体」が挙げられる。
【0054】
核酸配列またはタンパク質を説明するために使用される用語「外来性」は、核酸またはタンパク質が染色体、組換えプラスミド、ベクターまたは宿主細胞内に存在する位置に天然に存在しないことを意味する。外来性核酸配列は同様に、同じ宿主細胞または対象に由来し、またそれらに挿入される配列を指すが、例えば、異なるコピー数、または異なる調節エレメントの制御下にあるといった非天然の状態で存在する。
【0055】
核酸配列またはタンパク質を説明するために使用される用語「異種(の)」は、核酸またはタンパク質が、それが発現される宿主細胞または対象とは異なる生物または同じ生物の異なる種に由来したことを意味する。用語「異種」は、プラスミド、発現カセットまたはベクター中のタンパク質または核酸に対して使用される場合、タンパク質または核酸が、それと、問題とするタンパク質または核酸が天然において互いに同じ関係で見いだされない別の配列または部分配列と共に存在することを示す。
【0056】
用語「単離された」は、物質が元の環境(例えば、それが天然に存在する場合は天然の環境)から採取されることを意味する。例えば、生きている動物に存在する、天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、天然系における共存物質の一部または全てから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その後天然系に再導入されたとしても単離される。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、及び/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であり得、その天然環境の一部ではないこのようなベクターまたは組成物においてさらに単離される。
【0057】
「操作された」とは、本明細書中に記載されるRDH12及びRDH12タンパク質をコードする核酸配列が組み立てられ、例えば、非ウイルス送達系(例えば、RNAベース系、裸のDNAなど)を生成するために、またはパッケージング宿主細胞中でウイルスベクターを生成するために、及び/または対象の宿主細胞へ送達するために、宿主細胞上に保有されるRDH12配列を導入する任意の適切な遺伝要素、例えば裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどの中に配置されることを意味する。一実施形態では、遺伝要素はプラスミドである。このような操作された構築物の作製に使用される方法は、核酸操作の当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学及び合成技術を包
含する。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照のこと。
【0058】
「ウイルスベクター」は、機能性RDH12をコードする外来性または異種核酸配列を含有する複製欠損、合成または組換えウイルス粒子として定義される。一実施形態では、本明細書に記載の発現カセットは、薬物送達またはウイルスベクターの生成に使用されるプラスミドに乗せて操作され得る。適切なウイルスベクターは、好ましくは複製欠損であり、眼細胞を標的とするものの中から選択される。一実施形態では、導入遺伝子を含有する発現カセットは、ウイルスカプシドまたはエンベロープ内にパッケージングされる。そのウイルスカプシドまたはエンベロープ内に同様にパッケージングされた任意のウイルスゲノム配列は複製欠損性である。すなわち、それらは子孫ウイルス粒子を生成することはできないが、標的細胞に感染する能力を保持している。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要な酵素をコードする遺伝子を包含しない(ゲノムは「ガットレス」になるように操作され得、人工ゲノムの増幅及びパッケージングに必要なシグナルに隣接する目的の導入遺伝子のみを含有する)が、これらの遺伝子は生成中に供給され得る。したがって、複製及び子孫ウイルス粒子による感染は複製に必要なウイルス酵素の存在下以外では起こり得ないため、遺伝子治療における使用に関して安全であると見なされる。
【0059】
ウイルスベクターは遺伝子治療に適した任意のウイルスを含み得、これらに限定されないが、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、パルボウイルスなどが挙げられる。しかしながら、理解を容易にするために、アデノ随伴ウイルスは、例示的なウイルスベクターとして本明細書中に記載される。したがって、一実施形態では、治療用組成物または試薬は、発現制御配列に作動可能に連結されたRDH12導入遺伝子を含むアデノ随伴ウイルスベクターを含む。本明細書で使用される用語「導入遺伝子」は、本明細書に記載の発現カセット(隣接するrAAV ITRを含むかまたは含まない)、組換えプラスミドもしくはプロウイルスプラスミド、ベクターまたは宿主細胞中のプロモーターまたは発現制御配列の制御下にある外来性または操作されたタンパク質コード核酸配列を意味する。ある特定の実施形態では、導入遺伝子は、配列番号3の配列をコードするコドン最適化されたRDH12である。ある特定の実施形態では、導入遺伝子は、配列番号1の配列をコードする天然に存在するまたは天然のRDH12である。他の実施形態では、コドン最適化及び天然のRDH12をコードする配列の両方が、様々な組合せで導入遺伝子として作用し得る。
【0060】
本明細書で使用される用語「作動可能に連結される」または「作動可能に会合される」は、RDH12をコードする核酸配列と隣接する発現制御配列及び/または転写及びその発現を制御するためのトランスに、または離れた場所で作用する発現制御配列の両方を指す。
【0061】
本明細書で使用される用語「宿主細胞」は、組換えAAVがプロウイルスプラスミドから生成されるパッケージング細胞株を指し得る。あるいは、用語「宿主細胞」は、導入遺伝子の発現が望まれる任意の標的細胞を指し得る。したがって、「宿主細胞」は、例えば、エレクトロポレーション、カルシウムリン酸沈降、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染及びプロトプラスト融合のような任意の手段によって細胞に導入された外来性または異種のDNAを含有する原核または真核細胞を指す。本明細書のある特定の実施形態では、用語「宿主細胞」は、本明細書に記載の組成物のin vitro評価に関する様々な哺乳動物種の眼細胞の培養物を指す。本明細書における他
の実施形態では、用語「宿主細胞」は、ウイルスベクターまたは組換えウイルスの生成及びパッケージングに用いられる細胞を指す。さらに他の実施形態では、用語「宿主細胞」は、眼疾病に関してin vivoで処置されている対象の眼細胞を指すことを意味する。さらに別の実施形態では、宿主細胞は、胚性幹細胞の特性の決定を維持するために重要な遺伝子及び因子を強制的に発現させることにより、胚性幹細胞様の状態に遺伝的に再プログラムされた成人細胞である人工多能性幹細胞(iPSC)を指し得る。このような細胞は、本明細書に記載されるベクターの機能を評価するためにモデルまたはツールとして操作され、使用される。
【0062】
「プラスミド」またはプラスミドベクターは一般に、当業者に周知の標準的な命名法に従って、小文字のpが先行し、及び/または大文字及び/または数字がその後に続くことによって本明細書に表記される。本明細書に開示される出発プラスミドは、市販されているか、制限のない方式で公的に入手可能であるか、または周知の公開された手順を常例的に利用することによって入手可能なプラスミドから構築され得る。本発明に従って使用され得る多くのプラスミドならびに他のクローニング及び発現ベクターは周知であり、当業者には容易に入手可能である。さらに、当業者は、本発明における使用に適した任意の数の他のプラスミドを容易に構築し得る。本発明におけるこのようなプラスミドならびに他のベクターの特性、構築及び使用法は、本開示から当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0063】
本明細書で使用される用語「転写調節配列」または「発現調節配列」は、それらが作動可能に連結される核酸配列をコードするタンパク質の転写を誘発、抑制またはそれ以外では制御する開始配列、エンハンサー配列及びプロモーター配列などの核酸配列を指す。
【0064】
なお、さらなる実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、本明細書に記載のRDH12構築物及び最適化配列の送達を提供する。本明細書で使用される用語「AAV」は、天然に存在し、利用可能である多数のアデノ随伴ウイルスならびに人工AAVを指す。アデノ随伴ウイルス(AAV)のウイルスベクターは、標的細胞に送達するための核酸配列がその中にパッケージングされているAAVタンパク質カプシドを有するAAVのDNase耐性粒子である。AAVカプシドは、選択されたAAVに応じて、約1:1:10~1:1:20の比で正二十面体対称に配置された60個のカプシド(キャップ)タンパク質サブユニット、VP1、VP2及びVP3から構成される。AAVは、上記に示したように、AAVウイルスベクターのカプシドの供給源として選択され得る。例えば、米国公開特許出願第2007-0036760-A1号、米国公開特許出願第2009-0197338-A1号、欧州特許第1310571号を参照のこと。同様に、WO2003/042397(AAV7及び他のサルAAV)、米国特許第7790449号及び米国特許第7282199号(AAV8)、WO2005/033321及び米国特許第7,906,111号(AAV9)、ならびにWO2006/110689及びWO2003/042397(rh.10)を参照のこと。同様にこれらの文献には、AAVを生成するために選択され得、また参照により援用される他のAAVが記載される。
【0065】
ヒトまたは非ヒト霊長類(NHP)から単離されるかまたは操作され、十分に特徴付けられたAAVの中で、ヒトAAV2は遺伝子導入ベクターとして開発された最初のAAVであり、様々な標的組織及び動物モデルにおいて効率的に遺伝子導入実験を行うために広く使用されている。特に明記しない限り、本明細書に記載されるAAVカプシド、ITR及び他の選択されたAAV構成要素は、これらに限定されないが、一般にAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV8bp、AAV7M8及びAAVAnc80として示されるAAV、既知のもしくは前述の任意のAAVバリアントまたはまだ発見されていないAAVまたはそのバリアントも
しくは混合物を包含する任意のAAV中から容易に選択され得る。例えば、参照により本明細書に援用されるWO2005/033321を参照のこと。
【0066】
別の実施形態では、AAVカプシドは双極細胞を選択的に標的とするAAV8bpカプシドである。参照により本明細書に援用されるWO2014/024282を参照のこと。別の実施形態では、AAVカプシドは外網膜への選択的送達を示すAAV7m8カプシドである。参照により本明細書に援用される、Dalkara et al,In Vivo-Directed Evolution of a New Adeno-Associated Virus for Therapeutic Outer Retinal Gene Delivery from the Vitreous,Sci Transl Med5,189ra76(2013)を参照のこと。一実施形態では、AAVカプシドはAAV8カプシドである。別の実施形態では、AAVカプシドはAAV9カプシドである。別の実施形態では、AAVカプシドはAAV5カプシドである。
【0067】
一部の実施形態では、ウイルスベクター内で使用するAAVカプシドは、前述のAAVカプシドの1つまたはそのコード核酸の変異誘発(すなわち、挿入、欠失または置換による)によって生成され得る。一部の実施形態では、AAVカプシドは2つまたは3つまたは4つ以上の前述のAAVカプシドタンパク質由来のドメインを含むキメラである。一部の実施形態では、AAVカプシドは2つもしくは3つの異なるAAVまたは組換えAAV由来のVp1、Vp2及びVp3モノマーのモザイクである。一部の実施形態では、rAAV組成物は前述のCapを1つ以上含む。一実施形態では、所望の標的細胞、例えば光受容体、RPEまたは他の眼細胞に対して指向性を示すAAVカプシドを利用することが望ましい。一実施形態では、AAVカプシドは、特定の表面に露出したチロシン残基がフェニルアラニン(F)で置換されているチロシンカプシド変異体である。
【0068】
このようなAAVバリアントは、例えば、Mowat et al,Jan2014,Tyrosine capsid-mutant AAV vectors for gene delivery to the canine retina from a
subretinal or intravitreal approach,Gene Therapy21,96-105に記載され、その参照により本明細書に援用される。一実施形態では、カプシドはY733F変異を有するAAV8カプシドである。別の実施形態では、カプシドは、Kay et al,Apr2013,Targeting
Photoreceptors via Intravitreal Delivery Using Novel,Capsid-Mutated AAV Vectors,PLoS One.2013;8(4):e62097に記載されているように、Y447F、Y733F及びT494V変異を有するAAV8カプシド(「AAV8(C&G+T494V)」及び「rep2-cap8(Y447F+733F+T494V)」とも呼ばれる)であり、その参照により本明細書に援用される。
【0069】
AAVに関して本明細書で使用される用語「バリアント」は、アミノ酸または核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%またはそれ以上の配列同一性を有するものを包含する、既知のAAV配列に由来する任意のAAV配列を意味する。別の実施形態では、AAVカプシドは、任意の記載されたまたは公知のAAVカプシド配列からの最大約10%の変動を包含し得るバリアントを包含する。すなわち、AAVカプシドは、本明細書に提供される及び/または当技術分野で既知のAAVカプシドに対して、約90%の同一性~約99.9%の同一性、約95%~約99%の同一性、または約97%~約98%の同一性を有する。一実施形態では、AAVカプシドは、AAVカプシドと少なくとも95%の同一性を有する。AAVカプシドの同一性パーセントを決定する場合、任意の可変タンパク質(例えば、vp1、vp2またはvp3)に対
して比較が行われ得る。一実施形態では、AAVカプシドは、AAV8 vp3と少なくとも95%の同一性を有する。別の実施形態では、自己相補的AAVが使用される。
【0070】
ITRまたは他のAAV構成要素は、当業者に利用可能な技術を使用してAAVから容易に単離または操作され得る。このようなAAVは、学術的、商業的または公的な供給源(例えば、American Type Culture Collection,Manassas,VA)から単離、操作、または入手され得る。あるいは、AAV配列は、例えばGenBank、PubMedなどの文献またはデータベースで利用可能であるような公開された配列を参照することによって合成または他の適切な手段を介して操作され得る。AAVウイルスは、従来の分子生物学的技術によって操作され得、核酸配列の細胞特異的送達、免疫原性の最小化、安定性及び粒子寿命の調整、効率的分解、核への正確な送達などに関してこれらの粒子の最適化を可能にする。
【0071】
本明細書に使用される「人工AAV」は、これに限定されないが、天然に存在しないカプシドタンパク質を有するAAVを意味する。このような人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、選択された異なるAAVから得られ得る異種配列、同じAAVの非連続部分、非AAVウイルス供給源由来または非ウイルス供給源由来と組み合わせて使用する、任意の適切な技術によって生成され得る。人工AAVは、これらに限定されないが、シュードタイプ化AAV、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシドであり得る。1つのAAVのカプシドが異種カプシドタンパク質で置き換えられているシュードタイプ化ベクターは、本発明において有用である。一実施形態では、AAV2/5及びAAV2/8は例示的なシュードタイプ化ベクターである。
【0072】
発現カセットまたはrAAVゲノムまたは生成プラスミドまたはプロウイルスプラスミドをウイルス粒子にパッケージングするために、ITRは導入遺伝子と同じ構築物中にシスで必要とされる唯一のAAV構成要素である。一実施形態では、AAVベクターを生成するために、複製(rep)及び/またはカプシド(cap)のコード配列がAAVゲノムから除去され、トランスにまたはパッケージング細胞株によって供給される。例えば、上記のように、シュードタイプ化AAVは、AAVカプシドの供給源とは異なる供給源からのITRを含有し得る。一実施形態では、AAV2/5及びAAV2/8は例示的なシュードタイプ化ベクターである。追加的または代替的に、キメラAAVカプシドが利用され得る。さらに他のAAV構成要素が選択され得る。このようなAAV配列の供給源は本明細書に記載され、同様に学術的、商業的または公的な供給源(例えば、American Type Culture Collection,Manassas,VA)から単離、操作または入手され得る。あるいは、AAV配列は、例えばGenBank(登録商標)、PubMed(登録商標)などの文献またはデータベースで利用可能であるような公開された配列を参照することによって合成または他の適切な手段を介して入手され得る。
【0073】
「自己相補的AAV」とは、組換えAAV核酸配列によって保有されるコード領域が分子内二本鎖DNAの鋳型を形成するように設計されている発現カセットを有するプラスミドまたはベクターを指す。感染の際は、細胞が媒介する第二鎖の合成を待つのではなく、2つの相補的なscAAVの半分が会合して、即時複製及び転写の準備ができている1つの二本鎖DNA(dsDNA)単位を形成する。例えば、D M McCarty et
al,“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote
efficient transduction independently of
DNA synthesis”,Gene Therapy,(August 2001),Vol 8,Number16,Pages1248-1254を参照のこと。自
己相補的AAVは、例えば、米国特許第6,596,535号、米国特許第7,125,717号及び米国特許第7,456,683号に記載され、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0074】
一実施形態では、AAVは自己相補的AAV2/8である。例えば、参照により本明細書に援用される、Buie et al,Jan.2010,Self-complementary AAV Virus (scAAV)Safe and Long-term Gene Transfer in the Trabecular Meshwork of Living Rats and Monkeys,Invest Ophthalmol Vis Sci.,51(1):236-248、及びRyals et al,Apr.2011,Quantifying transduction efficiencies of unmodified and tyrosine capsid mutant AAV vectors in vitro using
two ocular cell lines,Mol Vis.;17:1090-102を参照のこと。一実施形態では、AAVは、少なくともY733Fの変異を有する自己相補的AAV2/8である。参照により本明細書に援用される、Ku et al,Dec.2011,Gene therapy using self-complementary Y733F capsid mutant AAV2/8 restores vision in a model of early onset Leber congenital amaurosis,Hum Mol Genet.,20(23):4569-4581を参照のこと。別の実施形態では、AAVは少なくともY447F+733F+T494Vの変異を有する自己相補的AAV2/8である。本明細書で引用するKay et al,2013を参照のこと。
【0075】
一実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法に有用なベクターは、少なくとも、選択されたAAVカプシド、例えばAAV8カプシドまたはその断片をコードする配列を含有する。別の実施形態では、有用なベクターは、少なくとも、選択されたAAVrepタンパク質、例えばAAV5repタンパク質またはその断片をコードする配列を含有する。選択的に、このようなベクターは、AAVcapタンパク質及びrepタンパク質の両方を含有し得る。AAVrep及びcapの両方が提供されるベクターにおいて、AAVrep及びAAVcap配列は、例えば、全てAAV5由来または全てAAV7由来などのように、両方が1つに由来するものであり得る。
【0076】
あるいは、rep配列がcap配列を提供しているものとは異なるAAVに由来するベクターを使用してもよい。一実施形態では、rep及びcap配列は、別個の供給源(例えば、別個のベクター、または宿主細胞及びベクター)から発現される。別の実施形態では、これらのrep配列は、参照により本明細書に援用される米国特許第7,282,199号に記載のAAV2/8などのキメラAAVベクターを形成するために、異なるAAVのcap配列にインフレームで融合される。
【0077】
本明細書に記載の特定の組成物は、機能性RDH12をコードする新規のコドン最適化配列を提供する、単離された、または合成的にもしくは組換え操作された核酸配列である。一実施形態では、本明細書に記載のhRDH12構築物をコードする最適化核酸配列は、例えば、パッケージング宿主細胞中でDNAまたはRNAを保有するナノ粒子、ウイルスベクターを生成するために、及び/または対象の宿主細胞に送達するために、宿主細胞上に保有されるRDH12配列を導入する任意の適切な遺伝要素、例えば裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、RNA分子(例えばmRNA)、エピソームなどの中に操作される。一実施形態では、遺伝要素はプラスミドである。
【0078】
選択された遺伝要素は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム
送達、膜融合技術、高速DNA被覆ペレット、ウイルス感染及び原形質融合を包含する任意の適切な方法によって送達され得る。このような構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作の当業者に既知であり、これには遺伝子工学、組換え工学及び合成技術が包含される。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照のこと。
【0079】
hRDH12タンパク質の複数のまたは異なるバージョンの発現を目的として、配列番号3を使用する様々な発現カセットが提供される。本明細書中で使用される「発現カセット」とは、最適化されたRDH12タンパク質のコード配列、プロモーターを含む核酸分子を指し、そのカセットは遺伝要素またはプラスミドの中に操作され、及び/またはウイルスベクター(例えば、ウイルス粒子)のカプシド内にパッケージングされ得る。一実施形態では、発現カセットは、RDH12をコードするコドン最適化核酸配列を含む。一実施形態では、カセットは、宿主細胞のRDH12をコードするコドン最適化核酸配列の発現を誘導する発現調節配列と作動可能に会合したコドン最適化RDH12を提供する。
【0080】
別の実施形態では、発現カセットは、RDH12をコードするコドン最適化核酸配列を含む。一実施形態では、カセットは、宿主細胞のRDH12をコードするコドン最適化核酸配列の発現を誘導する発現調節配列と作動可能に会合したコドン最適化RDH12を提供する。
【0081】
さらに別の実施形態では、発現カセットは、最適化された機能性RDH12をコードするコドン最適化核酸配列を含む。このような発現カセットにおける一実施形態では、RDH12をコードする配列は、宿主細胞においてRDH12をコードする天然に存在する核酸配列の発現を誘導する第一の発現調節配列(複数可)と作動可能に会合している。RDH12を含有する発現カセットについて上述したように、機能性RDH12の複数のコピーまたは複数の異なるバージョンを発現する実施形態において、コドン最適化配列は、配列の別のバージョンに対して5’または3’に位置し得る。当業者は、本明細書の教示及び先行技術を考慮して、RDH12の複数のコピーを発現するための構築物を容易に設計し得る。
【0082】
本明細書に記載されるように、発現カセットは、その5’末端が5’AAV逆方向末端反復配列(ITR)に、また、その3’末端が3’AAV ITRに隣接され得る。したがって、このrAAV ITR隣接発現カセットは、発現カセットをAAVウイルス粒子、すなわちAAV5’及び3’ITRにパッケージングするのに必要とされる最小配列を含有する。AAV ITRは、本明細書に記載されているような任意のAAVのITR配列から得られ得る。これらのITRは、得られる組換えAAVに用いられるカプシドと同じAAV由来のもの、または異なるAAV由来のもの(AAVシュードタイプを生成するため)であり得る。一実施形態では、AAV2由来のITR配列、またはその欠失バージョン(ΔITR)は、便宜上及び規制当局の承認を促すために使用される。しかしながら、他のAAVの供給源由来のITRが選択されてもよい。その後、各rAAVゲノムは、WO2012/158757の教示に従ってプロウイルスプラスミドに導入され得る。プロウイルスプラスミドは、AAVcap及び/またはrepタンパク質を発現する宿主細胞中で培養される。宿主細胞において、各rAAVゲノムはレスキューされ、カプシドタンパク質またはエンベロープタンパク質中にパッケージングされて感染性ウイルス粒子を形成する。
【0083】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載される任意の発現カセットを含むベクターが提供される。上記のように、このようなベクターは様々な由来のプラスミドであり得、ま
た本明細書中にさらに記載されるように、組換え複製欠損ウイルスの生成を目的とするある特定の実施形態において有用である。
【0084】
別の一実施形態では、ベクターは、AAVカプシド及び組換えAAV-ITR隣接発現カセットを含むプロウイルスプラスミドであり、ここで上記カセットは、RDH12またはRDH12の複数(すなわち、少なくとも2つ)のコピーをコードするコドン最適化核酸配列、及び宿主細胞におけるコード化タンパク質の発現を誘導する発現制御配列を含む。
【0085】
プロウイルスプラスミドの1種類は、プラスミドの制限部位を破壊することなくカセットの構成要素の一部を除去し、他の構成要素と繰り返し置換することを可能にするモジュラー組換え発現カセットを含む。このようなプロウイルスプラスミドは、ITRに制限部位1が上流に、制限部位2が下流に隣接する5’AAV ITR配列と、制限部位2が上流に、制限部位3が下流に隣接する選択されたプロモーターを含有する。モジュラーrAAVの別の構成要素は、RDH12をコードするコドン最適化核酸配列、またはRDH12をコードする配列の2つ以上のコピーを含有する制限部位3、制限部位4及び制限部位5を少なくとも含み、少なくとも1つのこのような配列がRDH12をコードするコドン最適化核酸配列であるポリリンカー配列である。RDH12をコードする配列は、制限部位3、4及び5のうちの任意の2つの間に位置し、プロモーターに作動可能に連結され、プロモーターの調節制御下にある。あるいは、第二のコードする配列は、上記のように発現カセットの第二の発現制御配列と共にポリリンカー配列に挿入される。
【0086】
モジュラーrAAVカセットの別の構成要素は、制限部位4または5が上流に、制限部位6が下流に隣接するポリアデニル化配列、及び制限部位6が上流に、制限部位7が下流に隣接する3’AAV ITR配列を包含する。プロウイルスプラスミドは、バクテリア細胞の複製に必要なエレメント、及び耐性遺伝子も同様に含有する。上記の制限部位1~7の各々はプロウイルスプラスミド中に一度だけ存在し、プラスミド中の別の制限部位を切断することができない異なる酵素により切断され、それにより全rAAVモジュラーカセット、またはプラスミドからのそれらの制限部位に隣接するエレメントのみの独立かつ反復的な除去、置換えまたは置換を可能にする。このようなプラスミドは、参照により本明細書に援用される、国際特許出願公開WO2012/158757に詳細に記載されている。
【0087】
適切な組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、本明細書で定義されるように、アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型カプシドタンパク質またはその断片をコードする核酸配列、機能性rep遺伝子、少なくともAAV逆方向末端反復配列(ITR)及びNPHP5核酸配列から構成されるミニ遺伝子、及びミニ遺伝子のAAVカプシドタンパク質へのパッケージングを可能にする十分なヘルパー機能を含有する宿主細胞を培養することによって生成される。AAVカプシド中にAAVミニ遺伝子をパッケージングするために宿主細胞中で培養するのに必要とされる構成要素は、トランスで宿主細胞に提供され得る。あるいは、必要な構成要素(例えば、ミニ遺伝子、rep配列、cap配列、及び/またはヘルパー機能)のうちの任意の1つ以上は、当業者に既知の方法を使用して必要な構成要素の1つ以上を含有するように操作された安定な宿主細胞によって提供され得る。
【0088】
最も適切には、このような安定な宿主細胞は誘導プロモーターの制御下で必要な構成要素(複数可)を含有するであろう。しかし、必要とされる構成要素(複数可)は構成的プロモーターの制御下にあり得る。適切な誘導プロモーター及び構成的プロモーターの例は、導入遺伝子、すなわちRDH12と共に使用するのに適した調節エレメントの下記の考察において本明細書中に提供される。さらに別の選択肢では、選択された安定な宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下にある選択された構成要素(複数可)及び1つ以上の誘
導プロモーターの制御下にある他の選択された構成要素(複数可)を含有し得る。例えば、293細胞(構成的プロモーターの制御下にあるE1ヘルパー機能を含有する)に由来するが、誘導プロモーターの制御下にあるrep及び/またはcapタンパク質を含有する安定な宿主細胞が生成され得る。さらに他の安定な宿主細胞が当業者によって生成され得る。
【0089】
本発明のrAAVを生成するために必要とされるミニ遺伝子、rep配列、cap配列及びヘルパー機能は、その上に保有される配列を導入する任意の遺伝要素の形態でパッケージング宿主細胞に送達され得る。選択された遺伝要素は、本明細書に記載されているものを包含する任意の適切な方法によって送達され得る。本発明の任意の実施形態を構築するために使用される方法は、核酸操作の当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学及び合成技術を包含する。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと。同様に、rAAVのウイルス粒子を生成する方法は周知であり、適切な方法の選択は本発明を限定するものではない。例えば特に、K.Fisher et al,1993 J.Virol.,70:520-532及び米国特許第5,478,745号を参照のこと。これらの刊行物は参照により本明細書に援用される。
【0090】
ミニ遺伝子は、少なくとも、上記のようなRDH12核酸配列(導入遺伝子)及びその調節配列、ならびに5’及び3’AAV逆方向末端反復(ITR)によって構成される。望ましい一実施形態では、AAV血清型2のITRが使用される。しかし、他の適切な血清型に由来するITRが選択されてもよい。カプシドタンパク質にパッケージングされ、選択された宿主細胞に送達されるのはこのミニ遺伝子である。
【0091】
調節配列は、ベクターでトランスフェクトされたかまたは本発明により生成されたウイルスに感染した細胞において、その転写、翻訳及び/または発現を可能にする方法でRDH12遺伝子に作動可能に連結される従来の制御エレメントを包含する。本明細書中で使用される「作動可能に連結された」配列は、目的の遺伝子と連続している発現制御配列及び目的の遺伝子を制御するためにトランスに、または離れた場所で作用する発現制御配列の両方を含む。
【0092】
発現制御配列としては適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列が挙げられ、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化させる配列、翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列)、タンパク質の安定性を高める配列、及び所望する場合にコードされた産物の分泌を促進する配列がある。プロモーターを包含する非常に多くの発現制御配列が当技術分野で既知であり利用され得る。
【0093】
本発明の構築物において有用な調節配列は同様に、イントロンを含有し得、望ましくはプロモーター/エンハンサー配列と遺伝子との間に位置する。1つの望ましいイントロン配列はSV-40に由来し、SD-SAと呼ばれる100bpミニイントロンスプライスドナー/スプライスアクセプターである。別の適切な配列はウッドチャック肝炎ウイルス転写後エレメントを包含する。(例えば、L.Wang and I.Verma,1999 Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,96:3906-3910)を参照のこと。ポリAシグナルは、SV-40、ヒト及びウシを包含するがこれらに限定されない多くの適切な種に由来し得る。
【0094】
本発明の方法に有用なrAAVの別の調節構成要素は、配列内リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列、または他の適切な系を用いて、単一の遺伝子転写物から
1つ以上のポリペプチドが産生され得る。IRES(または他の適切な配列)は、1つ以上のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を産生するため、または同じ細胞からまたは同じ細胞内で2つの異なるタンパク質を発現するために使用される。例示的なIRESは、光受容体、RPE及び神経節細胞における導入遺伝子発現を支持するポリオウイルス配列内リボソーム進入配列である。好ましくは、IRESは、rAAVベクター中の導入遺伝子に対して3’末端に位置する。
【0095】
rAAVに使用されるプロモーターの選択は、所望の眼細胞において選択された導入遺伝子を発現し得る多数の構成的プロモーターまたは誘導プロモーターの中からなされ得る。別の実施形態では、プロモーターは細胞特異的である。用語「細胞特異的」は、組換えベクターに対して選択された特定のプロモーターが、特定の眼細胞の種類において選択された導入遺伝子の発現を誘導し得ることを意味する。一実施形態では、プロモーターは、光受容体細胞における導入遺伝子の発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、桿体及び錐体における発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、桿体における発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、錐体における発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、RPE細胞における導入遺伝子の発現に特異的である。別の実施形態では、導入遺伝子は、上記の任意の眼細胞において発現する。
【0096】
プロモーターは任意の種に由来し得る。例示的なプロモーターは、ヒトGタンパク質共役受容体タンパク質キナーゼ1(GRK1)プロモーター(Genbank登録番号AY327580)であり得る。別の実施形態では、プロモーターは、GRK1プロモーターの292塩基の断片(位置1793-2087)である(参照により本明細書に援用されるBeltran et al,Gene Therapy 2010 17:1162-74を参照のこと)。別の好適な実施形態では、プロモーターはヒト光受容体間レチノイド結合タンパク質近位(IRBP)プロモーターである。一実施形態では、プロモーターはhIRBPプロモーターの235塩基の断片である。
【0097】
別の実施形態では、プロモーターは発現させるべき遺伝子の天然のプロモーターである。一実施形態では、プロモーターはRDH12の近位プロモーターである。本発明において有用な他のプロモーターとしては、これらに限定されないが、RPGR近位プロモーター(Shu et al,IOVS,May2102)、桿体オプシンプロモーター、赤-緑オプシンプロモーター、青オプシンプロモーター、cGMP-β-ホスホジエステラーゼプロモーター、マウスオプシンプロモーター(Beltran et al 2010、上記引用)、ロドプシンプロモーター(Mussolino et al,Gene
Ther,July2011,18(7):637-45)、錐体トランスデューシンのαサブユニット(Morrissey et al,BMC Dev,Biol,Jan2011,11:3)、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーター(Nicord et al,J.Gene Med,Dec2007,9(12):1015-23)、NXNL2/NXNL1プロモーター(Lambard et al,PLoS One,Oct.2010,5(10):e13025)、RPE65プロモーター、網膜変性遅延/ペリフェリン2(Rds/perph2)プロモーター(Cai et al,Exp Eye Res.2010 Aug;91(2):186-94)及びVMD2プロモーター(Kachi et al,Human Gene Therapy,2009(20:31-9))が挙げられる。これらの各文献は、参照により本明細書に援用される。別の実施形態では、プロモーターは、ヒトEF1αプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼ、光受容体間結合タンパク質(IRBP)、錐体オプシンプロモーター(赤-緑、青)、赤-緑錐体遺伝子座制御領域を含有する錐体オプシン上流配列、錐体形質導入及び転写因子プロモーター(神経網膜ロイシンジッパー(Nrl)及び光受容体特異的核内受容体Nr2e3、
bZIP)から選択される。
【0098】
一実施形態では、AAVベクターのサイズ制限により、プロモーターは1000bp未満の小さいサイズである。別の実施形態では、プロモーターは400bp未満である。他のプロモーターは、当業者によって選択され得る。
【0099】
別の実施形態では、プロモーターは遍在性プロモーターまたは構成的プロモーターである。適切なプロモーターの例は、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントを有するハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。別の実施形態では、プロモーターはCB7プロモーターである。他の適切なプロモーターとしては、ヒトβ-アクチンプロモーター、ヒト伸長因子-1αプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス40プロモーター及び単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。例えば、Damdindorj et
al,(August 2014)A Comparative Analysis of Constitutive Promoters Located in Adeno-Associated Viral Vectors.PLoS ONE9(8):e106472を参照のこと。さらに他の適切なプロモーターとしては、ウイルスプロモーター、構成的プロモーター、調節可能なプロモーターが挙げられる[例えば、WO2011/126808及びWO2013/04943を参照のこと]。あるいは、生理学的合図に応答するプロモーターは、本明細書に記載の発現カセット、rAAVゲノム、ベクター、プラスミド及びウイルスに利用され得る。一実施形態では、AAVベクターのサイズ制限により、プロモーターは1000bp未満の小さいサイズである。別の実施形態では、プロモーターは400bp未満である。他のプロモーターは、当業者によって選択され得る。
【0100】
本発明において有用な構成的プロモーターの例としては、これらに限定されないが、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意にCMVエンハンサーを有する)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、EF1プロモーター(Invitrogen)及びCBAプロモーターと結合したCMV即時型初期エンハンサー(Beltran et al,Gene Therapy 2010、上記で引用)が挙げられる。
【0101】
誘導プロモーターは遺伝子発現の調節を可能にし、外因的に供給される化合物、温度などの環境因子または特定の生理学的状態の存在、例えば急性期、細胞の特定の分化状態もしくは複製細胞においてのみにより調節され得る。誘導プロモーター及び誘導系としては、Invitrogen、Clontech及びAriadが挙げられるがこれらに限定されない、様々な商業的供給源から入手可能である。他の多くの系が記載されており、当業者によって容易に選択され得る。外因的に供給される化合物によって調節される誘導プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系、エクジソン昆虫プロモーター、テトラサイクリン抑制系、テトラサイクリン誘導系、RU486誘導系及びラパマイシン誘導系が挙げられる。これに関連して有用であり得る他の種類の誘導プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態もしくは複製細胞においてのみにより調節される。厳密に調節されそして特定の標的眼細胞の種類に特異的な任意の種類の誘導プロモーターが使用され得る。
【0102】
他の実施形態では、本明細書に記載のカセット、ベクター、プラスミド及びウイルス構
築物は、他の適切な転写開始、終結、エンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、TATA配列、細胞質のmRNAを安定化させる配列、翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列)、イントロン、タンパク質の安定性を高める配列、及び所望する場合にコードされた産物の分泌を促進する配列を含有する。発現カセットまたはベクターは、本明細書に記載の任意のエレメントを含まないか、1つ以上を含有し得る。適切なポリA配列の例としては、例えば、SV40、ウシ成長ホルモン(bGH)及びTKポリAが挙げられる。適切なエンハンサーの例としては、例えば特に、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、アルファフェトプロテインエンハンサー、TTR最小プロモーター/エンハンサー、LSP(TH-結合グロブリンプロモーター/アルファ1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー)が挙げられる。
【0103】
本発明に有用な他のエンハンサー配列としては、IRBPエンハンサー(Nicord2007、上記引用)、サイトメガロウイルス即時型早期エンハンサー、免疫グロブリン遺伝子またはSV40エンハンサー由来のもの、マウス近位プロモーターで同定されたシス作用エレメントなどが挙げられる。
【0104】
これらの及び他の一般的なベクター及び調節エレメントの選択は慣用的であり、このような多くの配列が利用可能である。例えば、Sambrook et al、ならびにその中で引用されている参考文献、例えば、3.18-3.26及び16.17-16.27ページ、ならびにAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,1989を参照のこと。当然に、すべてのベクター及び発現制御配列が、本発明のすべての導入遺伝子を発現するために等しく十分に機能するとは限らない。しかし、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、これら及び他の発現制御配列の中から選択をなし得る。
【0105】
対象への送達に適したAAVウイルスベクターを生成及び単離するための方法は当技術分野で既知である。例えば、米国特許第7790449号、米国特許第7282199号、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689及び米国特許7588772B2号を参照のこと。1つの系では、プロデューサー細胞株を、ITRに隣接する導入遺伝子をコードする構築物ならびにrep及びcapをコードする構築物(複数可)で一過性にトランスフェクトする。第二の系では、rep及びcapを安定的に供給するパッケージング細胞株を、ITRに隣接する導入遺伝子をコードする構築物で一過性にトランスフェクトする。これらの系の各々において、AAV粒子ウイルスは、ヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスによる感染に応答して生成され、混入ウイルスからのrAAVの分離を必要とする。近年では、AAVを回復するためにヘルパーウイルスによる感染を必要としない系が開発された。つまり必要なヘルパー機能(すなわち、アデノウイルスE1、E2a、VA及びE4、またはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52及びUL29、ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼ)も同様に系によってトランスに供給される。これらのより新しい系では、ヘルパー機能は、必要なヘルパー機能をコードする構築物による細胞の一過性トランスフェクションによって供給され得るか、または細胞が、その発現が転写レベルまたは転写後レベルで制御され得る、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定に含有するように操作され得る。
【0106】
さらに別の系では、ITR及びrep/cap遺伝子が隣接する導入遺伝子を、バキュロウイルスをベースとするベクターの感染によって昆虫細胞に導入する。これらの産生系に関する概説については、一般に、例えば、Zhang et al., 2009,”Adenovirus-adeno-associated virus hybrid
for large-scale recombinant adeno-assoc
iated virus production,”Human Gene Therapy20:922-929を参照のこと。これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される。これら及び他のAAV生成系を作成及び使用する方法は、同様に以下の米国特許第5,139,941号、第5,741,683号、第6,057,152号、第6,204,059号、第6,268,213号、第6,491,907号、第6,660,514号、第6,951,753号、第7,094,604号、第7,172,893号、第7,201,898号、第7,229,823号及び第7,439,065号に記載されており、その各々の内容はその全体が参照により本明細書に援用される。一般に、例えば、Grieger&Samulski,2005,”Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production and clinical applications,”Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145;Buning et al.,2008,”Recent
developments in adeno-associated virus vector technology,”J.Gene Med.10:717-733及び以下の引用文献を参照のこと。これらの各々はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0107】
本発明の任意の実施形態を構築するために使用される方法は、核酸操作の当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学及び合成技術を包含する。例えば、Green and
Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照のこと。同様に、rAAVのウイルス粒子を生成する方法は周知であり、適切な方法の選択は本発明を限定するものではない。例えば、K.Fisher et al,(1993)J.Virol.,70:520-532及び米国特許第5,478,745号を参照のこと。
【0108】
他の実施形態では、本明細書に記載のカセット、ベクター、プラスミド及びウイルス構築物は、他の適切な転写開始、終結、エンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、TATA配列、細胞質のmRNAを安定化させる配列、翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列)、イントロン、タンパク質の安定性を高める配列、及び所望する場合にコードされた産物の分泌を促進する配列を含有する。発現カセットまたはベクターは、本明細書に記載の任意のエレメントを含まないか、1つまたはそれ以上を含有し得る。適切なポリA配列の例としては、例えば、SV40、ウシ成長ホルモン(bGH)及びTKポリAが挙げられる。適切なエンハンサーの例としては、例えば特に、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、アルファフェトプロテインエンハンサー、TTR最小プロモーター/エンハンサー、LSP(TH-結合グロブリンプロモーター/アルファ1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー)が挙げられる。
【0109】
したがって、一実施形態では、正常または機能性RDH12タンパク質をコードするレチナールデヒドロゲナーゼ12(RDH12)の天然または最適化cDNAを保有する新規のAAVプロウイルスプラスミドのようなプラスミドをAAVベクターにパッケージングすることが可能である。これらのベクターはin vitro及びin vivoの両方で生物学的活性を示している。
【0110】
一実施形態では、組換えrAAVを生成する方法は、上記のようにrAAVゲノムを含有するプラスミドを取得すること、及びAAVウイルスゲノムを感染性AAVエンベロープまたはカプシドにパッケージングするために十分なウイルス配列の存在下でプラスミドを保有するパッケージング細胞を培養することを含む。rAAVベクター生成における特
定の方法は前述されており、上記及び下記の実施例における発現カセット及びゲノムの1つ以上のコドン最適化RDH12またはRDH12を送達し得るrAAVベクターを生成する際に使用され得る。
【0111】
さらに別の態様では、遺伝子編集の方法は、眼の変異または望ましくないRDH12遺伝子配列を修復するために使用される。遺伝子編集の1つの望ましい方法では「CRISPR/Cas9」系を使用する。CRISPR/Casは、遺伝子変異または特定の表現型に関連する疾病において修正の可能性を有すると説明されている技術である。クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)及びCRISPR関連タンパク質(Cas9)系は、2つの異なる構成要素として、(1)ガイドRNA及び(2)エンドヌクレアーゼ、この場合はCRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼ、Cas9を有する。ガイドRNAは、内因性バクテリアのcrRNA(CRISPR RNA)及びtracrRNA(トランス活性型crRNA)を組み合わせて単一のキメラガイドRNA(gRNA)転写産物にしたものである。gRNAは、crRNAの標的特異性とtracrRNAの足場特性を単一の転写産物へと組み合わせる。gRNA及びCas9が細胞内で発現された時、ゲノム標的配列は修飾されるかまたは永久に破壊され得る。この系は哺乳動物系のゲノム工学に用いられてきた。例えば、Cong,L.,et al.2013.Science339:819-823;Mali,P.,et al.2013 Science339:823-826;Ran,F.A.,et al.2013.Nat.Protoc.8:2281-2308;及びShalem,O.,et al.2014 Science343:84-87を参照のこと。CRISPR TypeII系は現在、ゲノム工学向けに最も一般的に使用されているRNAガイドエンドヌクレアーゼ技術である。アデノ随伴ウイルスは、CRISPR-Cas系を包含する遺伝子治療に有用なベクターとして記載されている。例えば、Yin et al,2014Biotechnology,32:551-3及び2015 Nature Biotechnology,33:102-6を参照のこと。
【0112】
さらに別の実施形態では、これらの遺伝子編集技術は、RDH12をコードする配列(天然型またはコドン最適化型)を挿入するために選択された細胞に使用され得る。このような細胞としては、HEPG2細胞または人工多能性幹細胞(iPSC)が挙げられ得、その場合これらは本明細書のベクター、組換えウイルスならびに他の組成物及び試薬の機能を試験するためのモデルとして使用され得る。
【0113】
さらに他の態様では、これらの核酸配列、ベクター、プロウイルスプラスミド、発現カセット、rAAV-ITR隣接発現カセット、rAAVウイルスベクターを包含するウイルスベクターは、薬学的に許容される担体も含む医薬組成物において有用である。このような医薬組成物は、このような組換え操作されたAAVまたは人工AAVによる送達を介して、最適化されたRDH12またはRDH12の複数のコピーを眼細胞で発現させるために使用される。
【0114】
核酸配列、ベクター、rAAVゲノム及びrAAVウイルスベクターを含有するこれらの眼科用医薬組成物を調製するために、好ましくは配列またはベクターまたはウイルスベクターを慣用の方法により混入に関して評価し、その後眼への投与に適した医薬組成物に製剤化する。一般に、眼科用医薬製剤は、外来粒子を本質的に含まない滅菌製剤であり、眼内への点滴注入のために適切に配合及び包装されている。一実施形態では、製剤は網膜下注射に適している。このような製剤は、薬学的及び/または生理学的に許容される媒体または担体、特に眼への投与に適したものの使用を包含する。適切な医薬担体としては、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンもしくはマイクロエマルジョンなどのエマルジョン、懸濁液、様々な種類の湿潤剤、リポソーム中、ニオソーム中、ディスコームまたはさらに軟膏もしくはゲル中の滅菌溶液、例えばHEPESなどのpHを適切な
生理学的レベルに維持するための緩衝食塩水または他の緩衝液などが挙げられる。
【0115】
選択的に、医薬品、安定化剤、緩衝剤、アジュバント、希釈剤または界面活性剤などの他の医薬品が挙げられる。注射に使用するため、担体は通常液体となる。例示的な生理学的に許容される担体としては、滅菌済みパイロジェンフリー水及び滅菌済みパイロジェンフリーリン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。このような様々な既知の担体は、参照により本明細書に援用される、米国特許第7,629,322号に提供されている。一実施形態では、担体は等張生理食塩液である。別の実施形態では、担体は平衡塩類溶液である。一実施形態では、担体はTweenを包含する。ウイルスを長期保存する場合は、グリセロールまたはTween20の存在下で凍結する場合がある。
【0116】
一実施形態では、製剤の内容物はpHが4.75~7.40の範囲を維持するように設計されている。局所製剤はまた、等張性を自然涙液のそれと近付ける調整を必要とする。一般に、食塩水の等張性が0.5%~2%の範囲において良好な忍容性が示される。適切な界面活性剤としては、例えば、コルフォセリルパルミタート(エキソサーフ)などの合成界面活性剤、展着剤として添加されたヘキサデカノール及びチロキサポールを有するDPPCの混合物、プマクタント、DPPC及びPGの混合物、DPPCから構成されるKL-4、パルミトイル-オレオイルホスファチジルグリセロール、ならびにSP-Bの構造的特徴を模倣する21アミノ酸の合成ペプチドと併用されるパルミチン酸、DPPC、PG、パルミチン酸及び組換えSP-Cの組合せであるベンチキュート、またはベラクタント(アルベオファクトまたスルバンタ)、カルファクタント(インファサーフ)もしくはポラクタントα(クロサーフ)などの動物由来の界面活性剤が挙げられる。別の有用な界面活性剤はサーファキシン(FDA承認合成ペプチド)である。さらに別の有用な界面活性剤は、プルロニックF68である。
【0117】
一例示的な特定の実施形態では、適切な製剤は0.0001%~0.01%のプルロニックF68(PF68)界面活性剤と共に180mMのNaCl、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(NaPi)、pH7.3を含有する。緩衝液の生理食塩液成分の厳密な組成は、160mM~180mMのNaClの範囲である。選択的に、具体的に記載された緩衝剤の代わりに異なるpH緩衝剤(潜在的にはHEPE、重炭酸ナトリウムまたはTRIS)が使用される。またあるいは、0.9%NaClを含有する緩衝液が有用である。
【0118】
選択的に、本発明の組成物は、rAAV及び/またはバリアント及び担体(複数可)に加えて、他の従来の医薬成分、例えば保存剤または化学安定剤を含有し得る。適切な保存剤の例としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール及びパラクロロフェノールが挙げられる。適切な化学安定剤には、ゼラチン及びアルブミンが包含される。
【0119】
複製欠損rAAVウイルスを含有する医薬組成物は、遺伝子導入及び遺伝子治療用途に使用するための生理学的に許容される担体と共に製剤化され得る。AAVウイルスベクターの場合、ゲノムコピー(「GC」)、ベクターゲノムまたはウイルス粒子の定量化は、製剤または懸濁液に含有される用量の尺度として使用され得る。当技術分野で既知の任意の方法を使用して、本発明の複製欠損ウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数が決定され得る。AAV GC数の力価測定を実施する1つの方法は以下の通りである。精製したAAVベクター試料を最初にDNaseで処置し、カプシド形成されていないAAVゲノムDNAまたは生成工程での混入プラスミドDNAを除去する。DNase耐性粒子は、その後カプシドからゲノムを放出するために熱処理を受ける。その後、放出されたゲノムは、ウイルスゲノムの特定の領域(通常、ポリAシグナル)を標的とするプライマー/プローブセットを用いたリアルタイムPCRによって定量される。別の方法では、望ましくは最適化RDH12導入遺伝子をコードする核酸配列を保有する組換えアデノ随伴ウイル
スの有効量は、S.K.McLaughlin et al,1988 J.Virol.,62:1963に記載されるように測定される。別の方法では、力価はドロップレットデジタルPCR(ddPCR)を用いて決定される。例えば、M.Lock et al,Hu Gene Therapy Methods,2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014Feb14に記載され、参照により本明細書に援用される、Lockの文献を参照のこと。
【0120】
本方法で使用される「投与」とは、眼疾病を特徴とする標的選択細胞に組成物を送達することを意味する。一実施形態では、本方法は、網膜下注射によって光受容体細胞または他の眼細胞に組成物を送達することを含む。別の実施形態では、眼細胞への硝子体内注射が用いられる。さらに別の方法では、眼細胞への眼瞼静脈を介した注射が用いられ得る。本開示を考慮すれば、当業者によってさらに他の投与方法が選択され得る。「投与」または「投与経路」とは、本明細書に記載の組成物を、医薬担体または賦形剤と共に、または使用せずに対象に送達することである。必要であれば、投与経路は組み合わせてもよい。一部の実施形態では、投与は定期的に繰り返される。本明細書に記載の医薬組成物は、それを必要とする対象への任意の適切な経路または異なる経路の組合せによる送達を目的として設計されている。送達には、眼への直接送達(選択的に、眼内送達、網膜内注射、硝子体内、局所投与)、または全身経路、例えば動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内及び他の非経口投与経路を介した送達がある。本明細書に記載の核酸分子及び/またはベクターは、単一の組成物または複数の組成物によって送達され得る。選択的に、2つ以上の異なるAAV、または複数のウイルスが送達され得る[例えば、WO2011/126808及びWO2013/049493を参照のこと]。別の実施形態では、複数のウイルスが、単独でまたはタンパク質と組み合わせて異なる複製欠損ウイルス(例えば、AAV及びアデノウイルス)を含有し得る。
【0121】
本明細書で使用される用語「治療」(treatment)または「治療」(treating)は、眼疾病の1つ以上の症状を改善する目的で、1つ以上の本明細書に記載の化合物または組成物における対象への投与を包含することと定義される。したがって、「治療」(treatment)は、眼疾病の発症もしくは進行の抑制、疾病の予防、疾病の症状における重症度の低減、または失明の進行、疾病症状の除去、疾病の発症における遅延または特定の対象における疾病の進行もしくは治療の有効性を監視することを包含するそれらの進行の遅延のうちの1つ以上を包含し得る。
【0122】
本明細書で使用される用語「投与量」は、治療の過程で対象に送達される総投与量、または単一の単位(もしくは複数単位もしくは分割投与)による投与によって送達される量を指し得る。医薬ウイルス組成物は、本明細書中に記載されるようにRDH12をコードする核酸配列を保有する複製欠損ウイルスの量を含有する投与単位で製剤化され得る。投与量は核酸配列のゲノムコピー(GC)で表され得る。投与量は同様に、ウイルス粒子に関しても表され得る。一実施形態では、適切な投与量は、約1.0×106GC、または
ウイルス粒子約1.0×1015GCの範囲内であり、その範囲内のすべての整数または端数を包含する。一実施形態では、組成物は、その範囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×106、2×106、3×106、4×106、5×106
、6×106、7×106、8×106または9×106のGC量を含有するように製剤化されるか、またはその投与量が投与される。一実施形態では、組成物は、その範囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×107、2×107、3×107、4×107、5×107、6×107、7×107、8×107、または9×107のGC
量を含有するように製剤化されるか、またはその投与量が投与される。一実施形態では、組成物は、その範囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×108、2×108、3×108、4×108、5×108、6×108、7×108、8×1
8または9×108のGCを含有するように製剤化される。一実施形態では、組成物は、その範囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×109、2
×109、3×109、4×109、5×109、6×109、7×109、8×109または
9×109のGCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、その範
囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010または9×1010のGCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、その範囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011または9××1011のGCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、その範囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012または9×1012のGCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、その範囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013または9×1013のGCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、その範囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014または9×1014のGCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、その範囲内のすべての整数または端数を包含する、用量当たり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015または9×1015のGCを含有するように製剤化される。一実施形態では、ヒトに適用するための用量は、用量当たり1×106~約1×1013GCの範囲であり得、その範囲内のす
べての整数または端数を包含する。一実施形態では、ヒトに適用するための用量は、用量当たり1×1010~約1×1012GCの範囲であり得、その範囲内のすべての整数または端数を包含する。さらに他の用量及び投与量は、主治医によって決定され得る。
【0123】
上記の用量は、処置される領域の大きさ、使用したウイルス力価、投与経路及びその方法の望ましい効果に応じて、その範囲内のすべての数を含めて、約25~約1000マイクロリットルの範囲に及ぶ様々な量の担体、賦形剤または緩衝剤製剤によって投与され得る。一実施形態では、担体、賦形剤または緩衝剤の量は少なくとも約25μlである。一実施形態では、その量は約50μlである。別の実施形態では、その量は約75μlである。別の実施形態では、その量は約100μlである。別の実施形態では、その量は約125μlである。別の実施形態では、その量は約150μlである。別の実施形態では、その量は約175μlである。さらに別の実施形態では、その量は約200μlである。別の実施形態では、その量は約225μlである。さらに別の実施形態では、その量は約250μlである。さらに別の実施形態では、その量は約275μlである。さらに別の実施形態では、その量は約300μlである。さらに別の実施形態では、その量は約325μlである。別の実施形態では、その量は約350μlである。別の実施形態では、その量は約375μlである。別の実施形態では、その量は約400μlである。別の実施形態では、その量は約450μlである。別の実施形態では、その量は約500μlである。別の実施形態では、その量は約550μlである。別の実施形態では、その量は約600μlである。別の実施形態では、その量は約650μlである。別の実施形態では、その量は約700μlである。別の実施形態では、その量は約700~1000μlの間である。
【0124】
一実施形態では、ウイルス構築物は、マウスなどの小動物対象に対して、少なくとも1×106~少なくとも約1×1011のGC濃度で約1μl~約3μlの量において送達さ
れ得る。ヒトの眼とほぼ同サイズの眼を有するより大きな動物対象に対しては、上記のより大きなヒトへの投与量及び量、例えば、用量当たり1×106~約1×1015GCが有
用である。例えば、様々な動物に薬物を投与するための実施基準に関する考察は、Diehl et al,J.Applied Toxicology,21:15-23(2001)を参照のこと。この文献は、参照により本明細書に援用される。
【0125】
毒性、網膜形成異常及び剥離などの望ましくない影響の危険性を減らすために、最小有効濃度のウイルスまたは他の送達媒体を利用することが望ましい。一実施形態では、コドン最適化配列がヒトにおける天然に存在する配列よりも効果的である場合、上記のより少ない投与量が有用であることが予想される。さらにこれらの範囲内の他の投与量は、処置される対象、好ましくはヒトの身体的状態、対象の年齢、特定の眼疾患(例えば、RDH12媒介性疾患)及び進行性であれば発症した疾患の程度を考慮した上で、担当医によって選択され得る。
【0126】
本明細書に記載のさらに別の態様は、コドン最適化RDH12のDNA、ベクター、ウイルスまたはそれらを含有する他の医薬組成物を投与することによるRDH12媒介性疾患または眼疾患を治療する方法である。別の実施形態では、上記の眼疾病及びそれに関連する網膜の変化による失明の予防、治療、進行の阻止または改善の方法が提供される。さらに他の方法は、眼疾患を有する対象において部分的もしくは全体的な視力(vision)または視力(visual acuity)を回復させるために設計されている。LCAまたはRPに関連する視力喪失は、周辺視、中心視(読書)視力、暗視、昼間視、色知覚の喪失、コントラスト感度の喪失または視力低下のいずれかの減少を指す。記載された方法を用いて処置され得る他の視力の問題には、羞明及び眼振が包含される。
【0127】
一般に、この方法は、それを必要とする哺乳動物対象に、対象の眼細胞において遺伝子産物を発現する調節配列の制御下にある正常もしくは機能性RDH12タンパク質またはその断片をコードする核酸配列を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を含む有効量の組成物及び薬学的に許容される担体を投与することを包含する。
【0128】
一実施形態では、このような方法は、LCAまたはRPなどの上記の1つ以上の眼疾病を有する哺乳動物対象における失明の進行を治療するか、遅延または停止させるために設計されている。好ましくは生理学的に適合する担体、希釈剤、賦形剤及び/またはアジュバントに懸濁された、RDH12最適化コード配列または別の機能性RDH12配列を保有するrAAVは、これらに限定されないが、ネコ、イヌまたは他の非ヒト哺乳動物対象を包含する所望の対象に投与され得る。この方法は、それを必要とする対象に核酸配列、発現カセット、rAAVゲノム、プラスミド、ベクターもしくはrAAVベクターまたはそれらを含有する組成物のいずれかを投与することを含む。一実施形態では、組成物は網膜下に送達される。別の実施形態では、組成物は硝子体内に送達される。さらに別の実施形態では、組成物は、眼疾病の治療に適した投与経路の組合せを用いて送達され、眼瞼静脈を介した投与または他の静脈内もしくは従来の投与経路も含み得る。
【0129】
これらの方法の使用に関して、各投与量の量及びウイルス力価は、本明細書中にさらに記載されるように個々に決定され、同じまたは反対側の眼において行われる他の治療と同じかまたは異なり得る。別の実施形態では、眼全体を治療するために、単一かつ、より大量の治療が行われる。投与量、投与及び投与計画は、本明細書の教示を考慮して主治医により決定され得る。
【0130】
一実施形態では、組成物は、単一の罹患した眼において上記に列挙されたものから選択される単一の投与量で投与される。別の実施形態では、組成物は、両方の罹患した眼において上記に列挙されたものから選択される単一の投与量で、同時または連続的のいずれかにより投与される。連続的な投与とは、数分、数時間、数日、数週間または数ヶ月の間隔による、ある眼から別の眼への投与の時間差を意味し得る。別の実施形態では、この方法
は、組成物を眼に2回以上の投与量(例えば、分割投与)で投与することを含む。
【0131】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、単一の組成物または複数の組成物で送達され得る。選択的に、2つ以上の異なるAAV、または複数のウイルスが送達され得る[例えば、WO2011/126808及びWO2013/049493を参照のこと]。別の実施形態では、複数のウイルスが異なる複製欠損ウイルス(例えば、AAV及びアデノウイルス)を含有し得る。
【0132】
本発明のある特定の実施形態では、治療の対象となる桿体及び錐体の光受容体の領域を同定するために、非侵襲性の網膜イメージング及び機能的研究を実施することが望ましい。これらの実施形態では、臨床診断試験を用いて、1回以上の網膜下注射(複数可)を行うための正確な位置(複数可)を決定する。これらの試験としては、処置されている対象の種、それらの身体的状態及び健康状態ならびに投与量に応じて、網膜電図検査(ERG)、視野測定、網膜層のトポグラフィックマッピング、ならびに共焦点レーザー走査検眼鏡検査(cSLO)及び光コヒーレンストモグラフィー(OCT)の手法によるその層の厚さの測定、補償光学(AO)を介した錐体密度のトポグラフィーマッピング、機能的眼検査などが挙げられ得る。画像化及び機能的研究を考慮して、本発明の一部の実施形態では、罹患した眼の異なる領域を標的とするために、同じ眼に1回以上の注射が行われる。各注射の量及びウイルス力価は、以下にさらに記載されるように、個々に決定され、同じまたは反対側の眼において行われる他の注射と同じであるかまたは異なり得る。別の実施形態では、眼全体を治療するために、単一かつ、より大量の注射が行われる。一実施形態では、rAAV組成物の量及び濃度は、損傷した桿体及び錐体受容体の領域のみが影響を受けるように選択される。別の実施形態では、損傷を受けていない光受容体を包含する眼においてより広範な部分へと到達させるため、rAAV組成物の量及び/または濃度は、より多い量である。
【0133】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、本明細書に記載されるものなどの組成物における1回の眼内送達、例えば最適化されたRDH12カセットのAAV送達は、遺伝子型または環境曝露に関係なく、このような眼疾患または複数の全身性疾患に罹患している数百万人の個人における視力喪失及び失明の予防に有用である。
【0134】
したがって、一実施形態では、組成物は疾病の発症前に投与される。別の実施形態では、組成物は視力障害が発生する前かまたは視力を喪失する前に投与される。別の実施形態では、組成物は視力障害が発生した後かまたは視力を喪失した後に投与される。さらに別の実施形態では、罹患していない眼と比較して、桿体及び/または錐体または光受容体の90%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。
【0135】
別の実施形態では、この方法は、治療の有効性を判断するための追加の研究、例えば機能的研究及び画像研究を実施することを包含する。動物の検査に関して、このような検査には、桿体及び錐体の光受容体機能を調べる網膜電図(ERG)による網膜及び視覚機能の評価、視運動性眼振、瞳孔測定、水迷路検査、明暗選好組織学(網膜の厚さ、外側の核の層、導入遺伝子発現を記録するための免疫蛍光、錐体光受容体計数、錐体光受容体鞘を識別するピーナッツ凝集素による網膜切片の染色が挙げられる。有効性に関する他の適切な試験は、RDH12トランスジェニックタンパク質の存在を記録する前眼房液のサンプリングである。
【0136】
ヒト対象に関して具体的には、本明細書に記載の組成物の投与量を投与した後、対象は、桿体及び錐体光受容体細胞の機能を調べるための網膜電図(ERG)、瞳孔測定視力、コントラスト感度色覚試験、視野検査(ハンフリー視野/ゴールドマン視野)、視野測定運動性試験(障害物コース)、及び読取り速度試験を用いて治療の有効性について試験さ
れる。本明細書に記載の医薬組成物による治療後に対象が受ける他の有用な治療後有効性試験は、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、全視野光感受性試験、光コヒーレンストモグラフィを包含する網膜構造調査、眼底撮影、眼底自家蛍光、補償光学及び/または走査型レーザー検眼鏡である。これら及び他の有効性試験は、米国特許第8,147,823号、同時係属中の国際特許出願公開WO2014/011210またはWO2014/124282に記載されており、参照により本明細書に援用される。
【0137】
さらに別の実施形態では、上述の任意の方法は、別のまたは第2の治療と組み合わせて行われる。さらに他の実施形態では、これらの眼疾病の治療方法は、抗生物質治療、疼痛の緩和治療などの別の治療法と組み合わせて、本明細書に詳細に記載された組成物を用いて対象を治療することを含む。追加の療法は、これらの変異または欠損またはそれらに関連する何らかの影響の予防、阻止または改善を支援する、現在知られている何らかの療法、またはまだ知られていない療法であり得る。第2の療法は、上記の組成物の投与前に、それと同時に、または投与後に投与され得る。一実施形態では、第2の療法は、神経栄養因子、抗酸化剤、抗アポトーシス剤の投与など、網膜細胞の健康を維持するための非特異的アプローチを含む。非特異的アプローチは、タンパク質、組換えDNA、組換えウイルスベクター、幹細胞、胎児組織または遺伝子組み換え細胞の注射を介して達成される。後者は、カプセル化された遺伝子組み換え細胞を包含し得る。
【0138】
別の実施形態では、本発明は、対象における光受容体機能の喪失を予防もしくは阻止するか、または光受容体機能を増強する方法を提供する。光受容体機能は、上記及び下記の実施例に記載される機能的研究、例えば当技術分野において慣用されるERGまたは視野測定を使用して評価され得る。本明細書中で使用される「光受容体機能喪失」とは、より早い時点で、正常な、罹患していない眼または同じ眼と比較したときの光受容体機能の低下を意味する。本明細書中で使用される「光受容体機能の増強」とは、罹患した眼(同じ眼疾病を有する)、より早い時点での同じ眼、同じ眼の非処置部分または同じ患者の反対側の眼と比較したときに、光受容体の機能を改善することまたは機能性光受容体の数もしくは割合を増大させることを意味する。
【0139】
別の態様では、本発明は、対象の光受容体の構造を改善する方法を提供する。本明細書で使用される「光受容体の構造を改善する」とは、網膜全体、中央網膜もしくは周辺部にわたる外顆粒層(ONL)の厚さの増加もしくは減少、またはONLの肥厚もしくは薄化の進行阻止と、網膜全体、中央網膜もしくは周辺部にわたる外網状層(OPL)の厚さの増加もしくは減少、またはOPLの肥厚もしくは薄化の進行阻止と、桿体及び錐体の内節(IS)短縮の減少と、外節(OS)の短縮及び損失の減少と、双極細胞樹状突起の収縮の減少、または双極細胞樹状突起の長さもしくは量の増加、及びオプシンの誤局在化の逆転のうち1つ以上を指す(処置を受ける網膜の領域で)。
【0140】
別の態様では、本発明は、上記疾病を発症する危険性がある対象のRDH12関連LCAを予防する方法を提供する。この眼疾患を発症する危険性がある対象には、LCAの家族歴を有する対象及びRDH12遺伝子に1以上の変異が確認された対象が包含される。
【0141】
記載された方法の各々に関して、治療は、網膜損傷の発生の予防、または疾患が軽度であるか、もしくは進行した眼の救済に使用され得る。本明細書中で使用される用語「救済」とは、疾病が完全な失明に進行するのを予防すること、損傷していない光受容体細胞への損傷の広がりを予防すること、または損傷を受けた光受容体細胞の損傷を改善することを意味する。したがって、一実施形態では、組成物は疾病の発症前に投与される。別の実施形態では、組成物はオプシンの誤局在化が発生した後に投与される。別の実施形態では、組成物は光受容体の喪失が発生する前に投与される。別の実施形態では、組成物は光受容体の喪失が発生した後に投与される。さらに別の実施形態では、罹患していない眼と比
較して、光受容体の90%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。さらに別の実施形態では、光受容体の80%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。別の実施形態では、光受容体の70%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。別の実施形態では、光受容体の60%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。別の実施形態では、光受容体の50%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。別の実施形態では、光受容体の40%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。別の実施形態では、光受容体の30%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。別の実施形態では、光受容体の20%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。別の実施形態では、光受容体の10%未満が機能しているかまたは残存している場合に組成物が投与される。一実施形態では、組成物は眼の1つ以上の領域、例えば光受容体を保持しているものにのみ投与される。別の実施形態では、組成物は眼全体に投与される。
【0142】
別の実施形態では、それを必要とする対象のRDH12関連LCAまたはRPを治療または予防する方法が提供される。本方法は、RDH12関連LCAまたはRPに罹患するかまたは発症する危険性がある対象を特定すること、遺伝子型解析を行いRHD12遺伝子の少なくとも1つの変異を特定すること、非侵襲的網膜イメージング及び機能的研究を実施し、治療の標的となる保持された光受容体の領域を特定すること、有効濃度の組成物を対象に投与することにより、RDH12関連LCAまたはRPを予防、阻止または改善することを包含する。組成物は、光受容体細胞中の遺伝子産物を発現するプロモーター配列の制御下で、正常な光受容体細胞特異的遺伝子をコードする核酸配列を保有する組換えウイルス及び薬学的に許容される担体を包含する。遺伝子型解析は当技術分野において常例的なものであり、RDH12遺伝子の核酸配列中の1つ以上の変異を同定するためのPCRの使用を包含し得る。例えば、Meindl et al,Nat Gen,May1996,13:35,Vervoort,R.et al,2000.Nat Genet25(4):462-466(cited above)及びVervoort,R.and Wright,A.F.2002.Human Mutation19:486-500を参照のこと。その各々は参照により本明細書に援用される。
【0143】
以下の実施例は、本明細書で特定される眼疾病を治療するために使用する核酸配列、発現カセット、rAAVゲノム及びウイルスベクターにおける特定の実施形態を開示する。これらの特定の実施形態は、本発明の様々な態様を例示する。これらの実施例は、本明細書に提供された教示の結果として明らかになるすべての変形を包含すると解釈されるべきである。
【0144】
下記の例は、RDH12ノックアウト(RDH12-/-)マウス及びHEK293細胞における遺伝子増強療法の概念実証を確立した。HEK293細胞のコドン最適化cDNAの発現量は、野生型遺伝子よりも20%高いことが示された。実質的にWO2012/158,757にあるように、修飾を有するプロウイルスプラスミド骨格が記載されているが、異なるスタッファー配列(λファージ由来)を有している。RDH12コード配列はコドン最適化されており、より効率的な発現を可能にする。さらに、本発明者らは、天然及びコドン最適化hRDH12配列の両方をプラスミドの設計に包含し、in vitro及びin vivoの両方において有効性の結果を示した。
【0145】
プロウイルスプラスミドにより、RDH12患者に対する概念実証データ、安全性及び前臨床毒性データならびに最終的にはヒト臨床試験がもたらされる。本明細書に記載の発明は、機能性RDH12タンパク質をコードするレチナールデヒドロゲナーゼ12(RDH12)の新規の最適化cDNAを含む。一実施形態では、コドン最適化cDNAは、LCA13の治療を目的として設計されている。導入遺伝子カセットは遺伝子工学によって
最適化され、コドン中のヌクレオチドの異なる配列が同じアミノ酸をコードし得るため、ヌクレオチド配列を修飾し得るが、依然として同じタンパク質産物を産生し得る。言い換えれば、同じタンパク質産物を産生するため複数の「同義語」コドンが利用され得る。
【0146】
RDH12患者由来の人工多能性幹細胞(iPC)においても追加実験が行われている。これらのデータは、RDH12誘発性の眼状態を治療する方法として、AAVベクターにパッケージングされたプロウイルスプラスミドの臨床的関連性及び有用性を強く示唆している。さらに、HEK293及びiPS細胞などのin vitroモデルは、ベクターの効力の試験に有用である。
【0147】
実施例1:コドン最適化RDH12配列
機能性RDH12配列番号3をコードするコドン最適化核酸配列を、完全なコザックコンセンサスをNotI部位に組み込んで5’末端に付加し、3’末端にBclI及びBamHI部位(クローニングの制限部位)を付加することにより、天然ヒトRDH12配列を修飾することで生成した。TGA終止コドンをBclI部位に組み込んで最適なエピトープタグ標識を容易にした。また、この実施形態は、上記に示された特定の制限酵素の使用を回避する。
【0148】
コドン最適化配列番号3のオープンリーディングフレーム(ORF)は、天然配列と22%異なっており、すなわち、図1A-1Bに示されるように、天然hRDH12と78%のみの同一性を有する。
【0149】
実施例2-RHH12を発現するAAVの構築
本発明者らは、p618骨格に基づくmycタグを含み、また含まないヒト天然RDH12のcDNAを含有するアデノ随伴ウイルスプロウイルスのシス-プラスミドを作製した(p618で使用された配列に関しては、参照により本明細書に援用される米国特許第9,249,425号を参照のこと)。これらのプロウイルスプラスミドでは、hRDH12のcDNAは構成的CMV.CβAプロモーター(CBAe)、すなわちpAAV.CMVe.天然-hRDH12及びAAV.CBAe.h-天然RDH12.mycにより活性化される。
【0150】
米国特許第9,249,425号に記載されているように、プロウイルスプラスミドはまた、制限部位1が上流に、制限部位2が下流にITRに隣接している5’AAV ITR配列、(b)制限部位2が上流に隣接し、制限部位3が下流に隣接するプロモーター、(c)制限部位3、制限部位4及び制限部位5を含むポリリンカー配列を含有する。本明細書に記載の実施形態では、RDH12をコードするコドン最適化核酸配列を含む導入遺伝子は、それらが修飾されない状態で制限部位3、4及び5のうち任意の2つの間に位置し、ここで導入遺伝子は、プロモーター、(d)制限部位4または5が上流に、制限部位6が下流に隣接するポリアデニル化配列及び(e)制限部位6が上流に、制限部位7が下流に隣接する3’AAV ITR配列に作動的に連結され、その調節制御下にある。各制限部位1~7はプラスミド中に1ヵ所のみ存在し、プラスミド中の別の制限部位における切断が不可能な異なる酵素により切断される。制限部位1~7は、エレメント(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の1つ以上またはプラスミド由来の全てのAAVゲノム(a)~(e)の、独立かつ反復的な除去、置換えまたは置換を可能にするように配置される。このようなプロウイルスプラスミドは、細菌細胞中での複製に必要なエレメントを含むプラスミド骨格、及び耐性遺伝子をさらに含む。別の実施形態では、プラスミド骨格は、(a)骨格内の転写をモジュラー組換えAAVゲノム内の転写から単離する、5’及び3’転写ターミネーター/インスレーター配列、または(b)骨格の長さを増加させ、非機能性AAVゲノムの逆パッケージングを防止する非コードスタッファー配列のうちの1つ以上を含む。これらの導入遺伝子カセットは、AAVベクターへ挿入可能なサイズに
適合する。構築物を制限マッピング及びDNA塩基配列解析によって確認した。
【0151】
例えば、図10A~10CにおいてAAV.CBAe.h-天然-RDH12、AAV.CBAe.h-天然RDH12-Myc及びAAV.CBAe.h-コドン最適化-RDH12の略図をそれぞれ参照のこと。
【0152】
プロウイルス構築物中にコードされる野生型(天然)ヒトRDH12タンパク質の発現を確認するため、COS-7細胞をpAAV-CMVe-天然-hRDH12.mycでトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、mycタグに特異的な抗体を用いて免疫蛍光分析及びウエスタンブロット分析にかけた。
【0153】
その後、細胞を染色し、電子顕微鏡で調べることにより、トランスフェクションの成功及び遺伝子導入の有効性を示した。pAAV.CMVe.天然-hRDH12.mycをトランスフェクトした細胞の免疫蛍光分析は、トランスフェクトした細胞のみにRDH12タンパク質の発現を示した。図2A~2Fは、細胞中のRDH12の発現を示す6つのパネルを示す。図2A~2Bは、非トランスフェクト対照を示す。図2C~2Dは、RDH12Mycトランスフェクト細胞を示す。図2Eは、RDH12Mycトランスフェクト細胞を示す。図2Fは、図2Dにおける2つの細胞の拡大図である。
【0154】
ウエスタンブロット分析により、トランスフェクト細胞で予測されたサイズのヒトRDH12タンパク質の発現がさらに確認され、対照の非トランスフェクト細胞にはバンドが観察されなかった。図2Gは、RDH12MycをトランスフェクトしたCOS-7細胞、対照COS-7細胞、RDH12MycをトランスフェクトしたCHO細胞及び対照CHO細胞ならびに2つの分子量マーカーを示すゲルである。(図2G)。
【0155】
その後、pAAV.CMVe.天然-hRDH12及びpAAV.CMVe.天然-hRDH12.mycプロウイルスプラスミドを使用して、目的遺伝子をコードするAAVシス-プラスミド、AAVrep及びcap遺伝子を含有するAAVトランス-プラスミドならびにアデノウイルスヘルパープラスミドの3つのプラスミドによるサブコンフルエントのHEK293細胞のトランスフェクションを含むトリプルトランスフェクション法を用いることよってAAV8-RDH12、AAV2-RDH12及びAAV7m8-RDH12を生成し、組換えAAV血清型ベクター(AAV2、AAV8及びAAV7m8)を生成した。
【0156】
簡単に説明すると、AAVゲノムの感染性AAVエンベロープまたはカプシドへのパッケージングを可能にするために、十分なウイルス配列の存在下でプラスミドを保有するパッケージング細胞を培養することによって、AAV8-RDH12-mycまたはAAV7m8-RDH12-myc発現カセットを、選択したAAVカプシドに個々にパッケージングする。一実施形態では、rAAVを生成する方法は、アデノウイルスE1、E2a及びE4ORF6のDNAを用いて安定したrep及びcap発現哺乳動物宿主パッケージング細胞株(例えば、国際特許出願公開WO99/15685に記載のB-50など)にパッケージングすることを含む。イオジキサノールグラジエント精製またはグラジエント遠心分離を用いて、DNAを含有するウイルス粒子を空の粒子から分離する。その後、ヘパリン-セファロースアガロースカラムクロマトグラフィーを行う。ベクター力価は感染中心アッセイを用いて決定される。ベクターゲノムは、確率した参照ロットに対する銀染色によって決定される。ベクターの純度は、ウエスタンゲルの透明度により再度調査される。ウイルス調製物は、所望の総量で調製され、組み合わされる。
【0157】
このようなrAAV粒子を生成するさらに他の方法は、下記に引用するSmith et al、参考文献11に記載されているような昆虫細胞パッケージング細胞株の使用を
含む。
【0158】
rAAVウイルス粒子を、0.0001%~0.01%のプルロニックF68(PF68)を含有する180mM NaCl、10mM NaPi、pH7.3などの適切な賦形剤中に懸濁させる。生理食塩成分の組成は、160mM~180mM NaClの範囲である。HEPE、炭酸水素ナトリウム、TRISまたは0.9%NaCl溶液を包含する他の緩衝剤が、このような組成物において有用である。
【0159】
rAAVのいくつかの調製物は、所望の総量になるよう組み合わされる。一実施形態では、総量は、300マイクロリットル量の緩衝液中に1×1011GCの用量である。一実施形態では、総量は、300マイクロリットル量の緩衝液中に1×108GCの用量であ
る。さらに別の実施形態では、総量は、300マイクロリットル量の緩衝液中に1×106~1×1013GCの用量である。段階希釈細胞変性効果または感染中心アッセイによっ
てアッセイされた混入ヘルパーアデノウイルス及び天然AAVは、それぞれベクターAAVよりも1桁または複数桁少ないことが予想される。
【0160】
実施例3-モデル系としてのiPSC
患者特異的な人工多能性幹細胞(iPSC)における近年の進歩により、疾病の原因を研究するための適切なin vitroモデル系が提供される。RDH12の機能を研究するためのin vitroモデルを開発するため、iPS細胞をヒトRDH12患者から作製し、特性評価を行った。AAV2.CMV.CβA-天然-hRDH12による感染が外因性RDH12の産生をもたらしたことを確認するため、本発明者らは、iPS細胞のアリコートに対して、1×103、1×104、1×105または2×105、3×105ベクターゲノム(vg)/細胞のAAV2CMV.CβA-天然-hRDH12を用い
て形質導入した。48時間後、細胞溶解物を収集し、mycタグに特異的な抗体を用いてウエスタンブロッティングにより分析した。形質導入された細胞溶解物において、用量依存性が明らかなヒトRDH12の産生が認められた。図4の結果を参照のこと。
【0161】
別のin vitro実験では、その後、組換えウイルスAAV2-RDH12-Mycを次に示すトランスフェクションの多重度1×103GC/細胞、1×104GC/細胞、1×105GC/細胞、2×105GC/細胞及び3×105/細胞でiPS細胞にトラ
ンスフェクトした。同様に陽性対照を示す。図3に示されるように発現が確認される。
【0162】
実施例4-RDH12KO動物の光損傷
BALB/c由来のRdh12-/-マウスを、Dr.Anne Kasus-Jaco
bi,University of Oklahomaから入手した。これらの動物は、通常の周期的な光照射の下で飼育した場合、ヒト網膜変性の表現型を示さないが、明るい光に曝露された後に変性を起こす。
【0163】
RDH12-/-マウスにおける遺伝子増強療法の有効性を評価するため、実験用rAA
V(AAV8.CMV.CβA-天然-hRDH12またはAAV7m8.CMV.CβA-天然-hRDH12)でマウスの片側を前処置し、RDH12の送達がこれらの罹患網膜を光誘発性変性から保護するかどうかを決定した。1~2ヶ月齢の動物に、AAV8.CMV.CβA-天然-hRDH12を網膜下に、またはAAV7m8.CMV.CβA-天然-hRDH12を硝子体内へ片側に注射した。各rAAVを、RDH12 KOマウスの右眼に1011~1013のウイルス粒子または1011~1013のウイルス粒子/ml緩衝液を注射することによって注入し、左眼は非感染の状態にした。注射から3~4週間後に、動物を明るい光(10,000ルクス)に4時間曝露した。
【0164】
これらの動物の網膜における光の影響を、光損傷の前及び24時間後の網膜における機
能研究(網膜電図、(ERG))によって評価した。光に曝露された網膜は、光損傷の証拠を示すはずである。その時点で動物には10日間の光損傷による回復期間が与えられた。本発明者らはその後、ERGによる網膜機能及び網膜組織切片における光受容体細胞死の程度を測定した。マウスを屠殺し、眼を凍結切片作製のために収集した。凍結切片化にした組織はAnti-myc抗体で染色される。Mycは非特異的であった。核をDAPIで染色した。
【0165】
図5A及び5Bは、AAV8またはAAV7m8.CMV.CβA-天然-hRDH12(AAV-RDH12)のいずれかを注射したRDH12-/-マウスの網膜及び非処置
の眼におけるa波の振幅差を示す。網膜電図検査(ERG)により、露光後にAAV-RDH12を処置した網膜では、桿体の光受容体機能を表すa波において部分的な機能的救済が明らかになった。図5Aは、RDH12KOマウスのRDH12.myc(AAV8-RDH12-Myc)注射網膜対非注射網膜におけるA波の比(ブリーチ前及びブリーチ後)のグラフを示す。図5Bは、RDH12 KOマウスのRDH12.myc(AAV7m8-RDH12-Myc)注射網膜対非注射網膜におけるA波のブリーチ前及びブリーチ後の比のグラフを示す。
【0166】
ベクター処置したRDH12-/-の眼を、光損傷後の光受容体機能の保存を伴う組織学
的救済の程度について評価した(図6~9を参照のこと)。
【0167】
図6A~6Dは、左眼(図6A及び図6C)が注射されていない単一の動物136に関する実験結果を示す。右眼(図6B及び図6D)にAAV7m8-RDH12-Mycを注射した。ERGベースラインを実施し、続いて光損傷、続いて2回目のERGを実施した。動物を10日間飼育し、3回目のERGを実施した。マウスを屠殺し、眼を収集して固定し、切片化し、DAPI(図6A及び6B)またはロドプシン及びDAPI(図6C及び6D)で染色した。
【0168】
図7A~7Cは、光損傷後の非注射網膜と比較して、AAV7m8-RDH12-Myc注射網膜において網膜構造が維持されることを示す。図7Aは、注射されていない左眼を示す。図7Bは、薄いONLを示す、左眼の高倍率画像を示す。図7Cは、AAV7m8-RDH12-Mycを注射した右眼である。
【0169】
図8Aは、薄い網膜を示す、注射されていない左眼を有する動物の網膜構造を示す。図8Bは、AAV8-RDH12-Mycを注射した動物の右眼を示す。
【0170】
図9A及び図9Bは、高倍率画像を用いた単一の動物147の網膜構造を示す。図9Aは注射されていない左眼を示す。図9Bは、AAV8-RDH12-Mycを注射した右眼を示す。
【0171】
低倍率では、処置を受けたRDH12-/-網膜のほとんどが比較的正常なONLを維持
していたが、同じマウスの非処置の眼では、ONLは網膜中心領域に光受容体細胞体をほとんど含有しなかったことが明らかである。高倍率の画像では、通常の処置された網膜が十分な外顆粒の厚さ及び外節を保持していることを示した。対照的に、同じマウスの非処置の眼では、中央網膜に外節が残存した状態で、ONL核が1~3層のみ残った。
【0172】
RDH12遺伝子内のコドン使用頻度の最適化が、導入遺伝子発現レベルの増加及び網膜変性の救済改善をもたらすことを確認するため、同試験を行った。コドン最適化は、RDH12の効果的な再構成に必要なウイルス用量を減らすことが期待されている。
【0173】
実施例5-ヒト対象に対する有効性
rAAV粒子はまた、適切な緩衝化担体中の懸濁液中の1010~1012GCまたはウイルス粒子の網膜下注射による投与後に、ヒト対象の網膜の細胞を形質導入するためにも用いられる。形質導入細胞または網膜におけるコドン最適化hRDH12の発現は、網膜及び視覚機能によって評価される。
【0174】
これらの機能は、桿体及び錐体光受容体機能を調べる網膜電図(ERG)、瞳孔測定視力、コントラスト感度色覚試験、視野検査(ハンフリー視野/ゴールドマン視野)、視野測定運動性試験(障害物コース)、読取り速度試験のうちの1つ以上の手法を用いてヒトにおいて調べられる。他の有用な試験には、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、全視野光感受性試験、光コヒーレンストモグラフィを包含する網膜構造調査、眼底撮影、眼底自家蛍光、補償光学及び走査型レーザー検眼鏡が挙げられる。
【0175】
表1(配列表フリーテキスト)
以下の情報として、識別番号<223>におけるフリーテキストを含有する配列について提供する。
【表1】
【0176】
2016年7月8日に出願された親出願の米国特許出願第62/359,777号を包含する、すべての特許、特許出願、及び明細書を通して引用されたウェブサイトを包含する刊行物は、参照により本明細書に援用される。同様に、本明細書で参照され、添付の配列表に表示される配列番号は、参照によって援用される。本発明を特定の実施形態を参照して詳述したが、本発明の精神から逸脱することなく変更を行うことができることが理解されるであろう。このような変更は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1A
図1B
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10A
図10B
図10C
【配列表】
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