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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241017BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241017BHJP
   H01M 6/12 20060101ALI20241017BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241017BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20241017BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20241017BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20241017BHJP
   H01M 12/08 20060101ALN20241017BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/04 Z
H01M6/12 Z
H01M10/052
H01M10/054
H01G11/06
H01G11/26
H01M12/08 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022123864
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2020159498の分割
【原出願日】2016-04-27
(65)【公開番号】P2022166068
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2015094030
(32)【優先日】2015-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 実
(72)【発明者】
【氏名】古松 大典
(72)【発明者】
【氏名】須澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】御園 博史
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072015(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016465(WO,A1)
【文献】特開2004-241250(JP,A)
【文献】特開2002-063938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/00-10/04;10/06-10/34
H01G 11/00-11/86
H01M 6/00-6/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の積層体と、電解質と、外装体と、電極リードと、を有し、
前記複数の積層体は、それぞれ、正極と、負極と、セパレータと、を有し、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体と接する正極活物質層と、を有し、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体と接する負極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層と、前記負極活物質層とは、互いに重なり、
前記外装体に囲まれる位置に、前記複数の積層体と、前記電解質と、を有し、
前記複数の積層体は、それぞれ、湾曲する機能を有し、
前記複数の積層体は、それぞれ、前記正極活物質層の長さをP、幅をPとし、前記負極活物質層の長さをN、幅をNとするとき、P>P、N>N、及びN>P+N-Pを満たし、
前記複数の積層体は、それぞれ、前記正極活物質層の第1の端部と前記負極活物質層の第1の端部との間の距離をGy1とし、前記正極活物質層の第2の端部と前記負極活物質層の第2の端部との間の距離をGy2とし、前記正極活物質層の前記第1の端部は前記正極活物質層の前記第2の端部よりも前記電極リードとの距離が近い位置にあり、前記負極活物質層の前記第1の端部は前記負極活物質層の前記第2の端部よりも前記電極リードとの距離が近い位置にあるとき、N=P+Gy1+Gy2を満たし、且つGy2はGy1よりも大きく、
前記複数の積層体がそれぞれ有する前記負極活物質層の長さN、等しい、蓄電装置。
【請求項2】
複数の積層体と、電解質と、外装体と、電極リードと、を有し、
前記複数の積層体は、それぞれ、正極と、負極と、セパレータと、を有し、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体と接する正極活物質層と、を有し、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体と接する負極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層と、前記負極活物質層とは、互いに重なり、
前記外装体に囲まれる位置に、前記複数の積層体と、前記電解質と、を有し、
前記複数の積層体は、それぞれ、湾曲する機能を有し、
前記複数の積層体は、それぞれ、前記湾曲したとき、湾曲した前記積層体が有する凹曲面の曲率半径をr、前記積層体の高さをz、前記正極活物質層の長さをP、前記負極活物質層の長さをNとするとき、N≧P(z/r+1)を満たし、
前記複数の積層体は、それぞれ、前記正極活物質層の第1の端部と前記負極活物質層の第1の端部との間の距離をGy1とし、前記正極活物質層の第2の端部と前記負極活物質層の第2の端部との間の距離をGy2とし、前記正極活物質層の前記第1の端部は前記正極活物質層の前記第2の端部よりも前記電極リードとの距離が近い位置にあり、前記負極活物質層の前記第1の端部は前記負極活物質層の前記第2の端部よりも前記電極リードとの距離が近い位置にあるとき、N=P+Gy1+Gy2を満たし、且つGy2はGy1よりも大きく、
前記複数の積層体がそれぞれ有する前記負極活物質層の長さN、等しい、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、蓄電装置及び電子機器に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の
一態様は、物、方法、又は製造方法に関する。本発明の一態様は、プロセス、マシン、マ
ニュファクチャ、又は組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。そのため、よ
り具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装
置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、又は、それらの製造方法を一例
として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書において電子機器とは、電気によって駆動する装置全般を指し、電気光学
装置、および情報端末装置などは全て電子機器である。電子機器は蓄電装置を内蔵する場
合がある。なお、ここで内蔵という定義は、取り外して交換できないように内蔵すること
は言うまでもなく、バッテリーパックなどとして自由に取り外しできるものも内蔵と呼ぶ
【背景技術】
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装
置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二
次電池は、携帯電話やスマートフォン、ノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音
楽プレーヤ、デジタルカメラ等の電子機器、あるいは医療機器、ハイブリッド車(HEV
)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車、またはプラグインハイブリッド車(PHEV
)等の次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要
が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっ
ている。
【0005】
一方、使用者が体に身につけて使用するウェアラブルデバイスの開発が盛んに行われてい
る。使用者がより快適に使用するために、ウェアラブルデバイスは、湾曲した形状を有す
る、または、可撓性を有するものが多い。また、このようなウェアラブルデバイスに搭載
するために、湾曲している、または、可撓性を有する蓄電装置の開発が行われている。
【0006】
例えば、特許文献1には、少なくとも一軸方向に湾曲することのできるシート状の蓄電装
置と、該蓄電装置を搭載した電子デバイスが開示されている。また、特許文献2には、可
撓性を有する二次電池と、該二次電池を有する腕装着型電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-211262号公報
【文献】特開2015-38868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウェアラブルデバイスの機能及び形状の多様化に対応するため、湾曲した状態で使用して
もサイクル特性の悪化及び容量の低下等が起こりにくい蓄電装置の開発が求められている
【0009】
従って、本発明の一態様は、湾曲した状態で使用してもサイクル特性が悪化しにくい蓄電
装置を提供することを目的とする。また、本発明の一態様は、湾曲した状態で使用しても
容量の低下等が起こりにくい蓄電装置を提供することを目的とする。また、本発明の一態
様は、蓄電装置を湾曲した状態で使用するとき、電極におけるキャリアイオン等に由来す
る金属の析出を抑制することを目的とする。また、本発明の一態様は、湾曲しても正極と
負極とが重なり合う領域の面積が変化しにくい蓄電装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、可撓性を有する電子機器を提供することを課題とする。また、
本発明の一態様は、湾曲部を有する電子機器を提供することを課題とする。
【0011】
または、本発明の一態様は、新規な電極、新規な蓄電装置、または新規な電子機器などを
提供することを課題とする。なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるもの
ではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はな
い。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかと
なるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出するこ
とが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、正極と、負極と、電解質と、外装体と、を有し、正極は、正極集電体
と、正極集電体と接する正極活物質層と、を有し、負極は、負極集電体と、負極集電体と
接する負極活物質層と、を有し、正極活物質層と、負極活物質層とは、互いに重なり、外
装体に囲まれる位置に、正極と、負極と、電解質と、を有し、正極活物質層の長さをP
、幅をPとし、負極活物質層の長さをN、幅をNとするとき、P>P、N
、及びN>P+N-Pを満たす蓄電装置である。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記構成の蓄電装置において、正極または負極は、湾曲する機
能を有していてもよい。また、本発明の一態様は、上記構成の蓄電装置において、正極ま
たは負極は、湾曲した部分を有していてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様は、積層体と、電解質と、外装体と、を有し、積層体は、正極と、
負極と、セパレータと、を有し、正極は、正極集電体と、正極集電体と接する正極活物質
層と、を有し、負極は、負極集電体と、負極集電体と接する負極活物質層と、を有し、正
極活物質層と、負極活物質層とは、互いに重なり、外装体に囲まれる位置に、積層体と、
電解質とを有し、積層体は、湾曲する機能を有し、積層体は、湾曲したとき、凸曲面と、
凹曲面とを有し、凹曲面の曲率半径をr、積層体の高さをz、正極活物質層の長さをP
、負極活物質層の長さをNとするとき、N≧P(z/r+1)である蓄電装置であ
る。
【0015】
また、本発明の一態様は、積層体と、電解質と、外装体と、を有し、積層体は、正極と、
負極と、セパレータと、を有し、正極は、正極集電体と、正極集電体と接する正極活物質
層と、を有し、負極は、負極集電体と、負極集電体と接する負極活物質層と、を有し、外
装体に囲まれる位置に、積層体と、電解質とを有し、積層体は、湾曲した部分を有し、湾
曲した部分は、凸曲面と、凹曲面とを有し、凹曲面の曲率半径をr、積層体の高さをz、
正極活物質層の長さをP、負極活物質層の長さをNとするとき、N≧P(z/r
+1)である蓄電装置である。
【0016】
また、本発明の一態様は、上記各構成の蓄電装置において、外装体は、フィルムを有して
いてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記各構成の蓄電装置において、第1の電極と、第2の電極と
を有し、第1の電極及び第2の電極は、両方正極または両方負極として機能し、第1の電
極は、第1の集電体と、第1の活物質層とを有し、第2の電極は、第2の集電体と、第2
の活物質層とを有し、第1の活物質層の長さをA、第2の活物質層の長さをBとする
と、A>Bであってもよい。
【0018】
また、本発明の一態様は、上記各構成の蓄電装置と、可撓性を有する筐体を有する電子機
器である。また、本発明の一態様は、上記各構成の蓄電装置と、湾曲部を有する筐体を有
する電子機器である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様により、湾曲しても正極と負極とが重なり合う領域の面積が変化しにくい
蓄電装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、蓄電装置を湾曲した状
態で使用するとき、電極におけるキャリアイオン等に由来する金属の析出を抑制すること
ができる。また、本発明の一態様により、湾曲した状態で使用しても容量の低下等が起こ
りにくい蓄電装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、湾曲した状態
で使用してもサイクル特性が悪化しにくい蓄電装置を提供することができる。
【0020】
また、本発明の一態様により、可撓性を有する電子機器を提供することができる。また、
本発明の一態様により、湾曲部を有する電子機器を提供することができる。
【0021】
また、新規な電極、新規な二次電池、新規な蓄電装置、または新規な電子機器を提供する
ことができる。なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。な
お、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これ
ら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり
、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一態様を説明する正面図、側面図及び断面図。
図2】本発明の一態様を説明する正面図及び側面図。
図3】本発明の一態様を説明する側面図及び断面図。
図4】面の曲率半径を説明する図。
図5】本発明の一態様を説明する正面図。
図6】本発明の一態様を説明する正面図及び断面図。
図7】本発明の一態様を説明する断面図。
図8】本発明の一態様を説明する断面図。
図9】本発明の一態様を説明する正面図及び断面図。
図10】本発明の一態様を説明する断面図。
図11】本発明の一態様を説明する断面図。
図12】本発明の一態様を説明する断面図。
図13】本発明の一態様を説明する断面図。
図14】本発明の一態様を説明する断面図。
図15】蓄電装置の作製方法を説明する図。
図16】蓄電装置の作製方法を説明する図。
図17】蓄電装置の作製方法を説明する図。
図18】蓄電装置の作製方法を説明する図。
図19】蓄電装置の作製方法を説明する図。
図20】蓄電装置の作製方法を説明する図。
図21】蓄電装置の作製方法を説明する図。
図22】蓄電装置の作製方法を説明する図。
図23】蓄電装置の作製方法を説明する図。
図24】蓄電装置に用いることのできる活物質を説明する図。
図25】導電助剤等を説明する図。
図26】導電助剤等を説明する図。
図27】電子機器の例を説明する図。
図28】電子機器の例を説明する図。
図29】電子機器の例を説明する図。
図30】電子機器の例を説明する図。
図31】電子機器の例を説明する図。
図32】電子機器の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれ
ば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈さ
れるものではない。
【0024】
本明細書等における「接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続さ
れている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間
での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限はない。
【0025】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応
じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜
」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用
語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0026】
図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解を容易にするため、実際
の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ず
しも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0027】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混
同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0028】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置さ
れている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平
行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電装置について、図1乃至図6を用いて説明
する。
【0030】
まず、図1(A)に蓄電装置100の正面図を、図1(B)に蓄電装置100の側面図を
示す。また、図1(A)で示した一点鎖線ABにおける蓄電装置100の断面図の一例を
図1(C)に、一点鎖線CDにおける断面図の一例を図1(D)に示す。また、図2(A
)に蓄電装置100が有する正極111の正面図を、図2(B)に正極111の側面図を
図2(C)に蓄電装置100が有する負極115の正面図を、図2(D)に負極115
の側面図を示す。
【0031】
図1(A)及び(B)に示すように、蓄電装置100は、外装体110と、正極リード1
41と、負極リード145と、を有する。外装体110は、長方形のフィルムを2つに折
り、周縁を熱して熱圧着領域120を形成することにより、袋状に形成されている。正極
リード141及び負極リード145の一部は、外装体110に囲まれる領域にあり、正極
リード141及び負極リード145の他の部分は、外装体110の外側に延在する。正極
リード141及び負極リード145の、熱圧着領域120と重なる領域には、ポリプロピ
レン等の熱可塑性樹脂からなる封止層121が設けられる。
【0032】
蓄電装置100は可撓性を有し、湾曲する機能を有する。これによって、蓄電装置100
は、湾曲部を有する筐体を有する電子機器の筐体に沿わせて、搭載することができる。ま
た、蓄電装置100は、可撓性を有する筐体を有する電子機器に搭載することにより、筐
体の変形に追随して変形することができる。
【0033】
蓄電装置100が湾曲し、凹曲面125及び凸曲面126を生じる様子を図3(A)に示
す。凹曲面125及び凸曲面126は、それぞれ、外装体110に含まれる。
【0034】
ここで、本明細書等における面の曲率半径、X軸およびYZ平面について説明する。
【0035】
まず、面の曲率半径について、図4(A)乃至(C)に示す模式図を用いて説明する。図
4(A)に示す曲面1700を平面1702で切断するとき、曲面1700と平面170
2の交線である曲線1702の一部を円弧に近似して、その円弧の半径を曲率半径170
3とし、円の中心を曲率中心1704とする。図4(B)に曲面1700の上面図を示す
図4(C)に、平面1701で曲面1700を切断した断面図を示す。曲面を平面で切
断するとき、曲面に対する平面の角度や切断する位置に応じて、断面に現れる曲線の曲率
半径は異なるものとなるが、本明細書等では、最も小さい曲率半径を面の曲率半径とする
【0036】
また、同様に、蓄電装置100が有する凹曲面125または凸曲面126を平面で切断す
るとき、該曲面と該平面の交線である曲線を円弧に近似する。このとき、その円弧の曲率
半径が最も小さくなるように凹曲面125または凸曲面126を切断する平面をYZ平面
とし、YZ平面に垂直な軸をX軸とする。また、図1(A)及び図1(B)に示すように
、蓄電装置100は、湾曲していない状態のとき、XY平面に略水平であるとする。
【0037】
本発明の一態様の蓄電装置100は、上記のように外装体110としてフィルムを用いる
ことにより、可撓性が向上し、湾曲しやすくなる。
【0038】
外装体110を構成するフィルムには、金属箔にプラスティックフィルムを積層した、金
属箔ラミネートフィルムを用いることができる。金属箔ラミネートフィルムは、熱圧着す
ることで封止が可能であり、形状の自由度が高く、軽量である、可撓性を有するといった
利点があり好ましい。金属箔ラミネートフィルムが有する金属箔の材料としては、アルミ
ニウム、ステンレス、錫、ニッケル鋼などを用いることができる。該金属箔に積層するプ
ラスティックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン
、ポリプロピレン等を用いることができる。
【0039】
なお本明細書等において、ラミネートとは、金属箔やプラスティックフィルム等の薄い材
料を貼りあわせて積層する加工法をいう。
【0040】
また外装体110に用いるフィルムとしては、金属箔に、有機材料(有機樹脂や繊維など
)と無機材料(セラミックなど)とを含むハイブリッド材料フィルム、炭素含有無機フィ
ルム(カーボンフィルム、グラファイトフィルムなど)から選ばれる単層フィルムまたは
これら複数からなる積層フィルムを積層したものを用いてもよい。
【0041】
蓄電装置100は、外装体110に囲まれる領域に、積層体130と、電解液108を有
し、積層体130は、正極111、負極115及びセパレータ107を有する。
【0042】
図2(A)及び(B)に示すように、正極111は、板状の正極集電体101と、正極集
電体101に設けられた正極活物質層102を有する。正極集電体101は、正極活物質
層102が設けられない領域(以下、正極タブとも呼ぶ。)を有する。本明細書中等にお
いて、正極活物質層102の長さをPとする。また、正極活物質層102の幅をP
する。
【0043】
図2(C)及び(D)に示すように、負極115は、板状の負極集電体105と、負極集
電体105に設けられた負極活物質層106を有する。負極集電体105は、負極活物質
層106が設けられない領域(以下、負極タブとも呼ぶ。)を有する。本明細書中等にお
いて、負極活物質層106の長さをNとする。また、負極活物質層106の幅をN
する。
【0044】
なお、本明細書等において活物質層(正極活物質層102又は負極活物質層106を指す
。)の長さとは、活物質層の端部から異なる端部までのY軸方向の最大の距離を示す。ま
た、本明細書等において、活物質層の幅とは、活物質層の端部から異なる端部までのX軸
方向の最大の距離を示す。
【0045】
図1(C)及び図1(D)に示すように、蓄電装置100が有する、積層体130におい
て、正極111の正極活物質層102と、負極115の負極活物質層106は、セパレー
タ107を介して互いに重なる。正極111と、負極115を積層するとき、位置がずれ
ることによって、正極111と、負極115が接触して短絡が発生するのを防ぐため、セ
パレータ107は、負極115より大きいと好ましい。
【0046】
正極活物質層102において、負極活物質層106と重ならない領域が存在すると、負極
活物質層106において、電解液108に含まれる金属等が析出することがある。この現
象を防ぐため、正極活物質層102の表面の全領域が、負極活物質層106の表面と重な
るようにすると好ましい。正極活物質層102と、負極活物質層106とが、同じ大きさ
である場合、蓄電装置100の作製工程において、正極111と負極115の位置がずれ
て配置されること等によって、正極活物質層102の表面の一部が、負極活物質層106
と重なることができない恐れがある。従って、負極活物質層106が、正極活物質層10
2よりも大きい構成とすればよい。より具体的には、負極活物質層106の長さNは、
正極活物質層102の長さPよりも大きいと好ましい。即ち、N>Pを満たすと好
ましい。また、図1(D)に示すように、負極活物質層106の幅Nは、正極活物質層
102の幅Pよりも大きいと好ましい。即ち、N>Pを満たすと好ましい。
【0047】
なお、正極活物質層102の表面とは、正極活物質層102が有する面のうち、正極集電
体101側とは反対側の面を示す。また、負極活物質層106の表面とは、負極活物質層
106が有する面のうち、負極集電体105側とは反対側の面を示す。
【0048】
図3(B)に、図1(A)で示す蓄電装置100が湾曲したときの、一点鎖線ABにおけ
る断面図を示す。図3(B)で示すように、正極111が凹曲面125に近いとき、蓄電
装置100を湾曲させると、湾曲の内径と外径の差を緩和するために、正極111に対す
る負極115の位置がY軸方向にずれる。
【0049】
本発明の一態様の蓄電装置100において、負極活物質層106は、正極活物質層102
に対し、十分に長い。負極活物質層106が、正極活物質層102に対して十分に長い構
成とすることによって、蓄電装置100が、正極111が凹曲面に近くなるように湾曲し
た状態であっても、正極活物質層102の表面の全領域が、負極活物質層106の表面と
確実に重なる構成とすることができる。これによって、蓄電装置100が湾曲しても、正
極活物質層102と、負極活物質層106とが重なり合う領域の面積が変化しにくい。従
って、湾曲した状態で使用しても容量の低下等が起こりにくい蓄電装置とすることができ
る。
【0050】
また、蓄電装置100が湾曲した状態であっても、正極活物質層102の表面の全領域が
、負極活物質層106の表面と確実に重なる構成であれば、負極におけるキャリアイオン
等に由来する金属の析出を抑制することができる。これによって、湾曲した状態で使用し
てもサイクル特性が悪化しにくい蓄電装置とすることができる。例えば、リチウムイオン
二次電池においては、負極活物質層においてリチウムが析出するのを防ぐことができる。
これによって、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の悪化を抑制することができる。
【0051】
上記の構成とすることで、蓄電装置100の外装体110が有する凹曲面の曲率半径が、
40mm以上150mm以下となるように湾曲した状態で使用しても、容量の低下等が起
こりにくい蓄電装置とすることができる。
【0052】
なお、正極活物質層102の幅Pが、長さPよりも大きいとき、負極活物質層106
の長さNが正極活物質層102の長さPよりも十分に大きい構成とすると、負極活物
質層106において電極反応に関与しない部分が大きくなるため、蓄電装置の体積当たり
の容量が小さくなる。
【0053】
従って、正極活物質層102の長さPは、幅Pよりも大きく、負極活物質層106の
長さNは、幅Nよりも大きいと好ましい。すなわちP>P、N>Nであると
好ましい。これによって、Nを十分に大きい値としても、負極活物質層106の表面に
おいて電極反応に関与しない部分を少なくすることができる。従って、蓄電装置100の
体積当たりの容量が小さくなるのを抑制することができる。特に、蓄電装置100が湾曲
していないとき、または、蓄電装置100の湾曲が小さいときに、体積当たりの容量が小
さくなるのを抑制することができる。
【0054】
次に、蓄電装置100に使用する負極活物質層106の長さ及び正極活物質層102の長
さを決定する方法についてより詳細に説明する。
【0055】
蓄電装置100が湾曲するとき、正極111に対する負極115の位置はY軸方向にずれ
るため、特にY軸方向に、正極活物質層102を大きくすることが好ましい。したがって
、負極活物質層106の長さと、正極活物質層102の長さとの差N-Pが、負極活
物質層106の幅と、正極活物質層102の幅との差N-Pよりも大きいと好ましい
。即ち、図1(C)に示すように、N>P+N-Pであると好ましい。これによ
って、蓄電装置100が湾曲するとき、正極111に対する負極115の位置がY軸方向
にずれても、正極活物質層102の表面の全領域が負極活物質層106の表面と重なりや
すくすることができる。
【0056】
なお、図1(A)及び図1(C)で示すように、蓄電装置100において、正極111の
正極タブは、正極リード141に電気的に接続され、固定される。また、負極115の負
極タブは、負極リード145に電気的に接続され、固定される。また、正極リード141
及び負極リード145は、熱圧着領域120及び封止層121等により、外装体110に
固定されている。従って、正極111の正極タブ付近と、負極115の負極タブ付近は、
蓄電装置100が湾曲しても、互いに位置がずれにくい。
【0057】
図1(C)に示すように、負極活物質層106の表面と、正極活物質層102の表面とが
重ならない領域について、正極リード141または負極リード145側の長さをGy1
し、もう一方の側の長さをGy2とする。このとき、上記したように正極リード141及
び負極リード145側では、負極115の正極111に対する位置は、ずれにくいため、
y2≧Gy1であってもよい。
【0058】
なお、図1及び図2に示す正極111及び負極115は、長方形の正極活物質層102及
び負極活物質層106を有するが、本発明の一態様はこれに限られない。図5には、様々
な形状の正極111、様々な形状の負極115、及び様々なセパレータ107を有する積
層体の例を示す。
【0059】
図5(A)に示す積層体130Aは、長方形と半円形とを組み合わせた形状の正極111
、負極115、及びセパレータ107を有する。
【0060】
また、図5(B)に示す積層体130Bは、楕円形の正極111、負極115、及びセパ
レータ107を有する。
【0061】
また、図5(C)に示す積層体130Cは、五角形の正極111、負極115、及びセパ
レータ107を有する。
【0062】
また、図5(D)に示す積層体130Dは、台形の正極111、負極115、及びセパレ
ータ107を有する。
【0063】
また、積層体において、正極111及び負極115の形は、それぞれ異なっていてもよい
図5(E)に示す積層体130Eは、長方形と半円形とを組み合わせた形状の正極11
1、長方形の負極115、及び長方形のセパレータ107を有する。
【0064】
また、図5(F)に示す積層体130Fは、五角形の正極111、長方形の負極115、
及び長方形のセパレータ107を有する。
【0065】
なお、図1乃至図3に示す蓄電装置100において、正極リード141及び負極リード1
45は、外装体110の同じ辺から外部に延在しているが、本発明の一態様はこれに限ら
れない。また、図5に示す積層体において、正極タブと負極タブとが近くになるように正
極111、負極115、及びセパレータ107を積層させているが、本発明の一態様はこ
れに限られない。正極タブと負極タブとが遠くなるように、正極111、負極115、及
びセパレータ107を積層させてもよい。また、正極リード141及び負極リード145
は、それぞれ外装体110の異なる辺から延在してもよい。また、正極リード141及び
負極リード145は、平行でなくてもよい。
【0066】
図6(A)に、正極リード141及び負極リード145がそれぞれ外装体110の異なる
辺から延在する蓄電装置100の正面図を、図6(B)に正極111の正面図を、図6
C)に負極115の正面図を示す。また、図6(A)に示す一点鎖線ABにおける蓄電装
置100の断面図を図6(D)に示す。
【0067】
図6に示す蓄電装置100においては、正極111の正極タブと、負極115の負極タブ
がそれぞれ遠くなるように正極111、セパレータ107及び負極115が積層され、そ
れに伴って、正極リード141と負極リード145とが、外装体110の異なる辺から延
在するように配置される。このような場合であっても、負極活物質層106が正極活物質
層102に対して十分に大きければ、蓄電装置100が湾曲した状態でも正極活物質層1
02の表面の全領域が負極活物質層106の表面と重なりやすくすることができる。正極
111における正極活物質層102の長さをP、正極活物質層102の幅をP、負極
115における負極活物質層106の長さをN、負極活物質層106の幅をNとする
とき、N>P+N-Pであれば好ましい。
【0068】
次に、図7乃至図11を用いて、蓄電装置100の湾曲の度合いに応じて負極活物質層1
06の長さ及び正極活物質層102の長さを決定する方法について説明する。
【0069】
図7および図8には、図1(A)で示す一点鎖線EFにおける積層体130の断面図の例
を示す。図7(A)に、湾曲していない積層体130の断面図を示し、図7(B)、図8
図10(B)、及び図11(B)に、湾曲した積層体130の断面図を示す。
【0070】
図7(B)に示すように、積層体130が湾曲すると、凹曲面150と、凸曲面151と
が生じる。凹曲面150は、正極集電体101に含まれる。また、凸曲面151は、負極
集電体105に含まれる。
【0071】
積層体130において、正極活物質層102の長さをP、負極活物質層106の長さを
、積層体130の厚さをzとする。また、湾曲した積層体130が有する凹曲面15
0の曲率半径をrとする。このとき、半径rの扇形の弧の長さと、半径(r+z)の扇形
の弧の長さとの関係から、N≧P(z/r+1)であれば、積層体130が湾曲した
状態でも、正極活物質層102の表面の全領域が、負極活物質層106の全領域と重なる
ことができ、好ましい。
【0072】
なお、蓄電装置100が湾曲するときの積層体130の断面形状は、単純な円弧状に限定
されない。蓄電装置100の一部が湾曲し、積層体130の断面形状が、一部に円弧を有
する形状であってもよい。
【0073】
例えば、図8(A)に示すように、積層体130の一部が湾曲し、正極集電体101の一
部に含まれる凹曲面152と、負極集電体105の一部に含まれる凸曲面153とが生じ
る場合でも、上述の方法と同様に、正極活物質層102及び負極活物質層106の長さを
決定することができる。すなわち、凹曲面152の曲率半径rを用いて、N≧P(z
/r+1)であれば、正極活物質層102に対して負極活物質層106が十分に長くなる
。これによって、積層体130が湾曲した状態でも、正極活物質層102の表面の全領域
が、負極活物質層106の全領域と重なることができる。
【0074】
また、積層体130は、複数の湾曲した部分(湾曲部ともいう。)を有していてもよい。
図8(B)に示す積層体130は、第1の湾曲部と第2の湾曲部を有し、第1の湾曲部は
、凹曲面152と、凸曲面153とを有し、第2の湾曲部は凹曲面154と、凸曲面15
5とを有する。正極集電体101は、第1の湾曲部の凹曲面152、及び第2の湾曲部の
凹曲面154を含み、負極集電体105は、第1の湾曲部の凸曲面153、及び第2の湾
曲部の凸曲面155を含む。第1の湾曲部の凹曲面152の曲率半径をr、第2の湾曲部
の凹曲面154の曲率半径をr′とする。また、第1の湾曲部及び第2の湾曲部の厚さを
zとする。このとき、第1の湾曲部の凹曲面152の曲率半径r及び、第2の湾曲部の凹
曲面154の曲率半径r′のいずれか値の小さい方を用いて、負極活物質層106の長さ
を決定することができる。すなわち、r′≧rであれば、rを用いて、N≧P
z/r+1)とすることで、正極活物質層102に対して、負極活物質層106を十分に
長くすることができる。これによって、積層体130が湾曲した状態でも、正極活物質層
102の表面の全領域が、負極活物質層106の全領域と重なるようにすることができる
【0075】
また、図8(C)に示す積層体130は、第1の湾曲部と第2の湾曲部を有し、第1の湾
曲部は凹曲面152と、凸曲面153とを有し、第2の湾曲部は、凹曲面156と、凸曲
面157とを有する。正極集電体101は、第1の湾曲部の凹曲面152、及び第2の湾
曲部の凸曲面157を含み、負極集電体105は、第1の湾曲部の凸曲面153、及び第
2の湾曲部の凹曲面156を含む。また、第1の湾曲部の凹曲面152の曲率半径をr、
第2の湾曲部の凹曲面156の曲率半径をr″とし、第1の湾曲部及び第2の湾曲部の厚
さをzとする。このとき、正極集電体101に含まれる第1の湾曲部の凹曲面152の曲
率半径rを用いて、負極活物質層106の長さNを決定することができる。すなわち、
≧P(z/r+1)とすることで、正極活物質層102に対して、負極活物質層1
06を十分に長くすることができる。これによって、積層体130が湾曲した状態でも、
正極活物質層102の表面の全領域が、負極活物質層106の全領域と重なるようにする
ことができる。
【0076】
なお、図8(B)では、積層体130が、凹曲面側に正極集電体101がくる2つの湾曲
部を有する例を示したが、積層体130は3以上の湾曲部を有していてもよい。それぞれ
の湾曲部の凹曲面の曲率半径のうち、最も小さい値を用いて、負極活物質層106の長さ
を決定することができる。
【0077】
また、図8(C)では、積層体130が、凹曲面側に正極集電体101がくる湾曲部と、
凹曲面側に負極集電体105がくる湾曲部を一つずつ有する例を示したが、本発明の一態
様はこれに限られない。積層体130は、凹曲面側に正極集電体101がくる湾曲部と、
凹曲面側に負極集電体105がくる湾曲部を、それぞれ2以上有していてもよい。凹曲面
側に正極集電体101がくる複数の湾曲部の曲率半径のうち、最も小さい値を用いて、負
極活物質層106の長さNを決定することができる。
【0078】
図1図3図6図7、及び図8では、積層体130は、正極111、負極115、及
びセパレータ107を一つずつ有する例を示したが、本発明の一態様はこれに限定されな
い。積層体130は、複数の正極111、複数の負極115、及び複数のセパレータ10
7を有していてもよい。使用する正極111及び負極115の数を増加させることにより
、蓄電装置100の容量を増加させることができ、好ましい。
【0079】
図9に、3つの正極と、3つの負極と、3つのセパレータを有する積層体130を有する
蓄電装置100を示す。図9(A)に、蓄電装置100の正面図を示す。図9(B)は、
図9(A)で示す一点鎖線A1-B1における積層体130の断面図である。また、図9
(C)は、図9(A)で示す一点鎖線A2-B2における積層体130の断面図である。
また、図10(A)は、図9(A)で示す一点鎖線E-Fにおける積層体130の断面図
であり、図10(B)は、図9で示す蓄電装置100が湾曲したときの、一点鎖線E-F
における積層体130の断面図である。
【0080】
図9及び図10において、積層体130は、負極115A、セパレータ107A、正極1
11A、正極111B、セパレータ107B、負極115B、負極115C、セパレータ
107C、及び正極111Cを有する。負極115Aの負極活物質層106と、正極11
1Aの正極活物質層102とは、セパレータ107Aを介して互いに重なる。また、正極
111Bの正極活物質層102と、負極115Bの負極活物質層106とは、セパレータ
107Bを介して互いに重なる。また、負極115Cの負極活物質層106と、正極11
1Cの正極活物質層102は、セパレータ107Cを介して互いに重なる。
【0081】
また、図10(A)において、正極111Aの正極集電体101と、正極111Bの正極
集電体101とが接している。また、負極115Bの負極集電体105と、負極115C
の負極集電体105とが接している。このように、集電体と、集電体とが接するように電
極が積層する構成とすると、積層体130を湾曲させるとき、集電体と集電体との境界で
、電極同士が互いに滑ることができる。これによって、積層体130においては、湾曲に
よる外径と内径の差に起因する応力を逃がしやすくすることができる。従って、蓄電装置
100が湾曲するときに、湾曲による外径と内径の差に起因する応力によって、正極11
1または負極115が破損することを防止することができる。これによって、蓄電装置1
00を湾曲することで容量が低下すること等を防止することができる。
【0082】
図9(B)に示すように、負極115A、負極115Bおよび負極115Cの負極タブは
、溶接されている。また、負極115A、負極115Bおよび負極115Cの溶接された
部分は、負極リード145と溶接され、電気的に接続される。
【0083】
図9(C)に示すように、正極111A、正極111Bおよび正極111Cの正極タブは
、溶接されている。また、正極111A、正極111Bおよび正極111Cの溶接された
部分は、正極リード141と溶接され、電気的に接続される。
【0084】
図10(B)に示すように、湾曲した積層体130は、凹曲面150と、凸曲面151と
を有する。凹曲面150は、正極111Cの正極集電体101の表面に位置する。また、
凸曲面151は、負極115Aの負極集電体105の表面に位置する。
【0085】
この場合であっても、上記の方法を用いて正極活物質層102の長さを決定することがで
きる。すなわち、積層体130において、正極活物質層102の長さをP、負極活物質
層106の長さをN、積層体130の厚さをz、積層体130が湾曲するときの、凹曲
面150の曲率半径をrとするとき、N≧P(z/r+1)であれば、正極活物質層
102に対して、負極活物質層106を十分に長くすることができる。これによって、図
10(B)に示すように、積層体130が湾曲した状態でも、正極活物質層102の表面
の全領域が、負極活物質層106の全領域と重なるようにすることができる。
【0086】
なお、図10では、正極111A、正極111B、及び正極111Cの正極活物質層10
2の長さが等しく、また、負極115A、負極115B、及び負極115Cの負極活物質
層106の長さが等しい例を示したが、本発明の一態様はこれに限られない。積層体13
0に含まれる複数の正極の大きさがそれぞれ異なっていてもよい。また、積層体130に
含まれる複数の負極の大きさがそれぞれ異なっていてもよい。
【0087】
図11に、複数の負極の大きさがそれぞれ異なる積層体130の別の例を示す。積層体1
30は、負極115A、セパレータ107A、正極111A、正極111B、セパレータ
107B、負極115B、負極115Cを有する。負極115Aの負極活物質層106と
、正極111Aの正極活物質層102とは、セパレータ107Aを介して互いに重なる。
また、正極111Bの正極活物質層102と、負極115Bの負極活物質層106とは、
セパレータ107Bを介して互いに重なる。
【0088】
図11(B)に示すように、積層体130は、湾曲したとき、凹曲面150と、凸曲面1
51とを有する。凹曲面150は、負極115Bの負極集電体105の表面に位置する。
また、凸曲面151は、負極115Aの負極集電体105の表面に位置する。
【0089】
図11に示す積層体130において、正極111Aの正極活物質層102と、正極111
Bの正極活物質層102との長さは等しいが、凸曲面151を含む負極115Aの負極活
物質層106は、凹曲面150を含む負極115Bの負極活物質層106より長い。即ち
、負極115Aの負極活物質層106の長さをA、負極115Bの負極活物質層106
の長さをBとすると、A>Bであってもよい。本構成とすると、負極に使用する部
材を節約することができ、好ましい。
【0090】
また、積層体130の厚さをz、凹曲面150の曲率半径をrとするとき、半径rの扇型
の弧の長さと、半径(r+z)の扇型の弧の長さとの関係から、A≧B(z/r+1
)であってもよい。これによって、積層体130の湾曲の度合いに応じて、負極に使用す
る部材を節約することができ、より好ましい。
【0091】
図12に、複数の正極および負極の大きさがそれぞれ異なる積層体130の例を示す。積
層体130は、負極115A、セパレータ107A、正極111A、正極111B、セパ
レータ107B、負極115B、負極115C、セパレータ107C、正極111C、正
極111D、セパレータ107D、負極115D、を有する。負極115Aの負極活物質
層106と、正極111Aの正極活物質層102とは、セパレータ107Aを介して互い
に重なる。また、正極111Bの正極活物質層102と、負極115Bの負極活物質層1
06とは、セパレータ107Bを介して互いに重なる。また、正極111Cの正極活物質
層102と、負極115Cの負極活物質層106とは、セパレータ107Cを介して互い
に重なる。また、正極111Dの正極活物質層102と、負極115Dの負極活物質層1
06とは、セパレータ107Dを介して互いに重なる。
【0092】
図12に示すように、積層体130が湾曲したときに凹曲面に近くなる電極が有する活物
質層を、積層体130が湾曲したときに凸曲面に近くなる電極が有する活物質層よりも短
くする構成としてもよい。図12(B)に示すように、湾曲した積層体130において、
凹曲面150は、負極115Dの負極集電体105の表面に位置する。また、凸曲面15
1は、負極115Aの負極集電体105の表面に位置する。従って、正極111A、正極
111B、正極111C、及び正極111Dそれぞれの正極活物質層102は、この順に
短くてもよい。また、負極115A、負極115B、負極115C、及び負極115Dそ
れぞれの負極活物質層106は、この順に短くてもよい。
【0093】
次に、図13を用いて積層体130の他の変形例について説明する。
【0094】
図13(A)及び図13(B)に、正極111と負極115の積層の例を示す。正極集電
体101の両面に正極活物質層102が設けられた正極111を2枚、負極集電体105
の一方の面に負極活物質層106が設けられた負極115を4枚積層している。このよう
な構成としても、負極115の負極活物質層側とは反対側の面同士という、金属同士の接
触面をつくることができる。なお、図13(A)は、図9(A)に示す一点鎖線A1-B
1における積層体130の断面図に対応し、図13(B)は、図9(A)に示す一点鎖線
A2-B2における積層体130の断面図に対応する。
【0095】
一方、図13(C)及び図13(D)に示す積層体130の正極111は、正極集電体1
01の両面に正極活物質層102が設けられ、負極115は、負極集電体105の両面に
負極活物質層106が設けられている。この構成とすると、蓄電装置100の容量を増加
させることができ、好ましい。なお、図13(C)は、図9(A)に示す一点鎖線A1-
B1における積層体130の断面図に対応し、図13(D)は、図9(A)に示す一点鎖
線A2-B2における積層体130の断面図に対応する。
【0096】
また、図13(A)乃至図13(D)に示すように、セパレータ107を袋状とし、正極
111を包む構成としてもよい。これによって、正極111と負極115が接触し、短絡
が発生することを確実に防止することができる。
【0097】
また、例えば、図14(A)および図14(B)に示すように、電解液108としてゲル
状の電解液108aを用い、一組の正極111、負極115、セパレータ107を電解液
108で貼りあわせてもよい。このような構成とすることで、蓄電装置100を曲げると
き、電池反応が行われる正極111と負極115の間が滑ることを抑制できる。なお、図
14(A)は、図9(A)に示す一点鎖線A1-B1における積層体130の断面図に対
応し、図14(B)は、図9(A)に示す一点鎖線A2-B2における積層体130の断
面図に対応する。
【0098】
また、正極111の正極活物質層側とは反対側の面同士、および負極115の負極活物質
層側とは反対側の面同士という、金属同士の接触面を多くつくることができる。そのため
、これらの接触面がすべることで、蓄電装置100を曲げるときに電極にかかる応力をよ
り確実に逃がすことができ、好ましい。
【0099】
そのため、蓄電装置100が劣化するのを抑制することができる。また、より信頼性の高
い蓄電装置100とすることができる。
【0100】
なお、蓄電装置100が複数の正極111及び負極115を有する場合も、蓄電装置の断
面形状は、単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状にすることができる。積
層体130の一部が湾曲し、凹曲面と、凸曲面とを有する場合、凹曲面の曲率半径rから
、負極活物質層等の長さを決定することができる。
【0101】
また、蓄電装置100が複数の正極111及び負極115を有する場合も、積層体130
は3以上の湾曲部を有してよい。それぞれの湾曲部の凹曲面の曲率半径のうち、最も小さ
い曲率半径の値を用いて、負極活物質等の長さを決定することができる。
【0102】
以上に説明したように、本発明の一態様は、正極活物質層102に対して、負極活物質層
106を十分長くすることで、蓄電装置100が湾曲した状態であっても、正極活物質層
102の全領域が、負極活物質層106の表面と確実に重なる構成とすることができる。
これによって、蓄電装置100が湾曲しても、正極活物質層102と、負極活物質層10
6とが重なり合う領域の面積が変化しにくい。従って、湾曲した状態で使用しても容量の
低下等が起こりくい蓄電装置とすることができる。
【0103】
また、蓄電装置100が湾曲した状態であっても、正極活物質層102の表面の全領域が
、負極活物質層106の表面と確実に重なる構成であれば、負極におけるキャリアイオン
等に由来する金属の析出を抑制することができる。これによって、湾曲した状態で使用し
てもサイクル特性が悪化しにくい蓄電装置とすることができる。例えば、リチウムイオン
二次電池においては、負極活物質層においてリチウムが析出するのを防ぐことができる。
これによって、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の悪化を抑制することができる。
【0104】
また、図1乃至図3及び図5乃至図14に示す構成とすることで、蓄電装置100の積層
体130が有する凹曲面の曲率半径が、40mm以上150mm以下となるように湾曲し
た状態で使用しても、容量の低下等が起こりにくい蓄電装置とすることができる。
【0105】
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形態
において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定さ
れない。つまり、本実施の形態および他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載され
ているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本発明の一態様と
して、リチウムイオン二次電池に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これ
に限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、様々な二
次電池、鉛蓄電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル
・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池
、固体電池、空気電池、亜鉛空気電池、リチウム空気電池、一次電池、キャパシタ、また
は、電気二重層キャパシタ、ウルトラ・キャパシタ、スーパー・キャパシタ、リチウムイ
オンキャパシタ、などに適用してもよい。または例えば、場合によっては、または、状況
に応じて、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池に適用しなくてもよい。例えば、
本発明の一態様として、湾曲した蓄電装置、可撓性を有する蓄電装置、または、変形でき
る蓄電装置に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場
合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、様々な形状の蓄電装置、また
は、様々な硬さを有する蓄電装置に適用してもよい。または例えば、場合によっては、ま
たは、状況に応じて、本発明の一態様は、湾曲していない平板形状の蓄電装置、または、
円筒形状の蓄電装置に適用してもよい。または例えば、場合によっては、または、状況に
応じて、本発明の一態様は、可撓性を有さず、変形できない蓄電装置に適用してもよい。
【0106】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0107】
(実施の形態2)
本実施の形態では、図15乃至図18を用いて、本発明の一態様に係る蓄電装置100の
作製方法の例について説明する。特に、実施の形態1で図13(A)および図13(B)
を用いて説明した積層体130を有する蓄電装置の作製方法について説明する。
【0108】
[1.正極を用意し、セパレータで覆う]
まず、正極集電体101の両面に正極活物質層102を形成し、正極111の形状に加工
する。次いで、折り曲げたセパレータ107で正極111を挟む(図15(A))。
【0109】
そして正極111の外側の、セパレータ107の外周部分を接着して、袋状のセパレータ
107を形成する(図15(B))。セパレータ107の外周部分の接着は、接着材など
を用いて行ってもよいし、超音波溶接や、加熱による融着により行ってもよい。
【0110】
本実施の形態では、セパレータ107としてポリプロピレンを用いて、セパレータ107
の外周部分を加熱により接着する。図15(B)に接着部分を、領域107aとして示す
。このようにして、正極111をセパレータ107で覆うことができる。セパレータ10
7は、正極活物質層102を覆うように形成すればよく、正極111の全体を覆う必要は
無い。
【0111】
なお、図15(A)では、セパレータ107を折り曲げているが、本発明の一態様は、こ
れに限定されない。例えば、2枚のセパレータで正極111を挟んで形成してもよい。そ
の場合、領域107aが4辺のほとんどを囲う形で形成されていてもよい。
【0112】
また、セパレータ107の外周部分の接着は、断続的に行ってもよいし、図15(B)の
ように一定間隔毎の点状として接着してもよい。
【0113】
または、外周部分の1辺にのみ、接着を行ってもよい。または、外周部分の2辺にのみ、
接着を行ってもよい。または、外周部分の4辺に、接着を行ってもよい。これにより、4
辺を均等な状態にすることが出来る。
【0114】
なお、セパレータ107の形状は、袋状であることに限定されない。セパレータ107は
、蓄電装置100における正極111と負極115との接触を防ぐことができればよく、
例えば平板状であってもよい。また、正極集電体101の一方の面にのみ正極活物質層1
02が設けられた正極111の場合には、正極111をセパレータ107で挟まなくても
よい。
【0115】
[2.負極を用意する]
次に、負極集電体105の一方の面に負極活物質層106を形成し、負極115の形状に
加工する(図15(C))。このとき、実施の形態1で説明したように、負極活物質層1
06の長さを正極活物質層102に対して十分長くすることで、湾曲した状態で使用して
も容量が低下しにくく、サイクル特性が悪化しにくい蓄電装置を作製することができる。
【0116】
[3.正極と負極を積み重ねる]
次に、セパレータに覆われた正極111および負極115を積み重ねる(図16(A))
。本実施の形態では、正極集電体の両面に正極活物質層を形成した正極111を2枚、負
極集電体の片面に負極活物質層106を形成した負極115を4枚積層することとする。
これらを、正極活物質層102と負極活物質層106が、セパレータ107を介して対向
するように配置する。また、負極115の負極活物質層106側とは反対側の面同士が接
するように配置する。
【0117】
[4.正極リードと負極リードを接続する]
次に、複数の正極集電体101の正極タブと、封止層121を有する正極リード141を
、圧力を加えながら超音波を照射して電気的に接続する(超音波溶接)。
【0118】
リード電極は、蓄電装置の作製後に外から力が加えられて生じる応力により、ヒビや切断
が生じやすい。そこで、正極リード141を超音波溶接する際、突起を有するボンディン
グダイで挟み、正極タブにおける接続領域とは別の領域に湾曲部を形成してもよい。湾曲
部を設けることによって、蓄電装置100の作製後に外から力が加えられて生じる応力を
緩和することができる。
【0119】
また、正極タブに湾曲部を形成することに限定されず、正極集電体の材料をステンレス、
チタンなどの強度のあるものとし、正極集電体の膜厚を10μm以下とすることで二次電
池の作製後に外から外力が加えられ生じる応力を緩和しやすくする構成としてもよい。
【0120】
勿論、これらを複数組み合わせて正極タブの応力集中を緩和してもよいことは言うまでも
ない。
【0121】
そして正極集電体101と同様に、複数の負極集電体105の負極タブと、封止層121
を有する負極リード145を超音波溶接により電気的に接続する(図16(B))。この
とき、正極タブと同様に、負極タブに湾曲部を設ける、集電体の材料を強度のあるものに
する等、応力を緩和しやすくする構成としてもよい。
【0122】
[5.外装体用フィルムを用意する]
次に、外装体に用いるフィルム110aを折り曲げる(図16(C))。
【0123】
[6.外装体の一辺を接着する]
次に、折り曲げたフィルム110aで、正極111、正極リード141、負極115、負
極リード145を挟む。そして、フィルム110aの一辺(図17(A)における領域1
10d)において、フィルム110a同士を接着する(図17(A))。接着は、熱溶着
により行うことができる。
【0124】
なお、フィルム110aおよび外装体110は凹凸を有していてもよいが、図17および
図18では、図を簡略にするため、フィルム110aおよび外装体110の凹凸を省略し
て示している。
【0125】
[7.外装体の他の一辺を接着し、電解液を注入する]
次に、フィルム110aの他の一辺(図17(B)における領域110d)において、フ
ィルム110a同士を接着する。そして、フィルム110aが接着されていない部分から
、フィルム110aで挟まれた領域に、電解液108を注入する(図17(B))。
【0126】
[8.封止する]
そして真空引きを行いながら、加熱および加圧によりフィルム110aの残りの辺(図1
7(C)における領域110d)を接着し、フィルム110aを封止された外装体110
とする(図17(C))。これらの操作は、グローブボックスを用いるなどして酸素や水
を排除した環境にて行う。真空引きは、脱気シーラー、注液シーラー等を用いて行うとよ
い。またシーラーが有する加熱可能な2本のバーで挟むことにより、加熱および加圧を行
うことができる。それぞれの条件は、例えば真空度は60kPa、加熱は190℃、加圧
は0.1MPaにおいて3秒とすることができる。このとき、フィルム110aの上から
正極および負極を加圧してもよい。加圧により、電解液注入の際に混入した気泡を正極と
負極の間から排除することができる。
【0127】
[9.エージング]
次に、エージングの充放電を行うことが好ましい。本明細書等において、エージングとは
、二次電池の初期不良を検出するため、また初期の充放電で負極活物質上に安定な被膜を
形成させるために行う工程をいう。具体的には、電池使用温度範囲の上限に近い温度で、
長時間充電状態で保持し、その後1サイクル以上の充放電を伴う、等の工程である。また
、これらの工程によってガスが発生するため、さらに、外装体110で覆われた領域に発
生したガスを抜く工程を含めてもよい。
【0128】
初期の充放電で負極活物質上に安定な被膜を形成することで、その後の充放電における、
さらなる被膜の形成に起因するキャリアイオンの消費を抑止することができる。そのため
エージングを行うことで、蓄電装置の性能をより安定させ、不良セルを選別することがで
きる。
【0129】
本実施の形態では、1サイクル以上の充放電を行った後、図18(A)に示すように外装
体110の一部を切り取ってガスを抜くこととする。
【0130】
[10.再封止]
次に、エージングの際に切り取られた外装体110の一辺(図18(B)における領域1
10d)を再び封止する(図18(B))。上記の工程で、蓄電装置100を作製するこ
とができる。
【0131】
次に、蓄電装置100が有する積層体の製造方法の他の例について、図19乃至図23
用いて説明する。
【0132】
図19に、蓄電装置100bを示す。図19(A)は蓄電装置100bの斜視図、図19
(B)は蓄電装置100bの上面図である。図19(C)は、図19(B)に示す一点鎖
線D1-D2における積層体130、正極リード141及び負極リード145の断面図で
ある。また、図19(D)は、図19(B)に示す一点鎖線E1-E2における積層体1
30の断面図である。
【0133】
図19に示す蓄電装置100bのように、外装体110は、3辺が接着されていてもよい
【0134】
図20を用いて、図19に示す蓄電装置100bが有する積層体130の作製方法につい
て説明する。
【0135】
まずセパレータ107上に、負極115を配置する(図20(A))。このとき、負極1
15が有する負極活物質層が、セパレータ107と重畳するように配置する。
【0136】
次に、セパレータ107を折り曲げ、負極115の上にセパレータ107を重ねる。次に
、セパレータ107の上に、正極111を重ねる(図20(B))。このとき、正極11
1が有する正極活物質層102が、セパレータ107および負極活物質層106と重畳す
るように配置する。なお、集電体の一方の面に活物質層が設けられた電極を用いる場合は
、正極111の正極活物質層102と、負極115の負極活物質層106がセパレータ1
07を介して対向するように配置する。
【0137】
セパレータ107にポリプロピレン等の熱溶着が可能な材料を用いている場合は、セパレ
ータ107同士が重畳している領域を熱溶着してから次の電極を重ねることで、作製工程
中に電極がずれることを抑制できる。具体的には、負極115または正極111と重畳し
ておらず、セパレータ107同士が重畳している領域、たとえば図20(B)の領域10
7aで示す領域を熱溶着することが好ましい。
【0138】
この工程を繰り返すことで、図20(C)に示すように、セパレータ107を挟んで正極
111および負極115を積層することができる。
【0139】
なお、あらかじめ繰り返し折り曲げたセパレータ107に、複数の負極115および複数
の正極111を交互に挟むように配置してもよい。
【0140】
次に、図20(C)に示すように、セパレータ107で複数の正極111および複数の負
極115を覆う。
【0141】
さらに、図20(D)に示すように、セパレータ107同士が重畳している領域、例えば
図20(D)に示す領域107bを熱溶着することで、複数の正極111と複数の負極1
15を、セパレータ107によって覆い、結束する。
【0142】
なお、複数の正極111、複数の負極115およびセパレータ107を、結束材を用いて
結束してもよい。
【0143】
このような工程で正極111および負極115を積層するため、セパレータ107は、1
枚のセパレータ107の中で、正極111と負極115に挟まれている領域と、複数の正
極111と複数の負極115を覆うように配置されている領域とを有する。
【0144】
換言すれば、図19の蓄電装置100bが有するセパレータ107は、一部が折りたたま
れた1枚のセパレータである。セパレータ107の折りたたまれた領域に、複数の正極1
11と、複数の負極115が挟まれている。
【0145】
図21及び図22に、図19と異なる蓄電装置100cを示す。図21(A)は蓄電装置
100cの斜視図、図21(B)は蓄電装置100cの上面図である。図21(C1)は
第1の積層体130a、図21(C2)は第2の積層体130bの断面図である。図21
(D)は、図21(B)に示す一点鎖線E1-E2における積層体130の断面図である
図22は、図21(B)の一点鎖線D1-D2における断面図である。
【0146】
図21に示す蓄電装置100cは、正極111と負極115の配置、およびセパレータ1
07の配置が図19の蓄電装置100bと異なる。
【0147】
図21(D)及び図22に示すように、蓄電装置100cにおいて、積層体130は、複
数の第1の積層体130aおよび複数の第2の積層体130bを組み合わせることにより
構成される。
【0148】
図21(C1)に示すように、第1の積層体130aでは、正極集電体101の両面に正
極活物質層102を有する正極111b、セパレータ107、負極集電体105の両面に
負極活物質層106を有する負極115b、セパレータ107、正極集電体101の両面
に正極活物質層102を有する正極111bがこの順に積層されている。また図21(C
2)に示すように、第2の積層体130bでは、負極集電体105の両面に負極活物質層
106を有する負極115b、セパレータ107、正極集電体101の両面に正極活物質
層102を有する正極111b、セパレータ107、負極集電体105の両面に負極活物
質層106を有する負極115bがこの順に積層されている。
【0149】
さらに図21(D)に示すように、複数の第1の積層体130aおよび複数の第2の積層
体130bは、巻回したセパレータ107によって覆われている。
【0150】
図23を用いて、図21に示す蓄電装置100cの作製方法の一部について説明する。
【0151】
まずセパレータ107上に、第1の積層体130aを配置する(図23(A))。
【0152】
次に、セパレータ107を折り曲げ、第1の積層体130aの上にセパレータ107を重
ねる。次に、第1の積層体130aの上下に、セパレータ107を介して、2組の第2の
積層体130bを重ねる(図23(B))。
【0153】
次に、セパレータ107を、2組の第2の積層体130bを覆うように巻回させる。さら
に、2組の第2の積層体130bの上下に、セパレータ107を介して、2組の第1の積
層体130aを重ねる(図23(C))。
【0154】
次に、セパレータ107を、2組の第1の積層体130aを覆うように巻回させる(図2
3(D))。
【0155】
このような工程で複数の第1の積層体130aおよび複数の第2の積層体130bを積み
重ねるため、これらの積層体は、渦巻き状に巻回されたセパレータ107の間に配置され
る。
【0156】
なお、最も外側に配置される第1の積層体130aの正極111bは、外側には正極活物
質層102を設けないことが好ましい。
【0157】
また図21(C1)および(C2)では、積層体が3枚の電極と2枚のセパレータを有す
る構成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。電極を4枚以上、セパレータを3
枚以上有する構成としてもよい。電極を増やすことで、蓄電装置100cの容量をより向
上させることができる。また電極を2枚、セパレータを1枚有する構成としてもよい。電
極が少ない場合、より湾曲に強い蓄電装置100cとすることができる。また図21(D
)では、蓄電装置100cが第1の積層体130aを3組、第2の積層体を2組有する構
成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。さらに多くの積層体を有する構成とし
てもよい。積層体を増やすことで、蓄電装置100cの容量をより向上させることができ
る。またより少なり積層体を有する構成としてもよい。積層体が少ない場合、より湾曲し
やすい蓄電装置とすることができる。
【0158】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0159】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図24図25および図26を用いて本発明の一態様に係る蓄電装置
に用いることのできる材料の詳細について説明する。
【0160】
[1.正極]
正極111は、正極集電体101と、正極集電体101に設けられた正極活物質層102
などにより構成される。
【0161】
正極集電体101には、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこ
れらの合金など、導電性が高く、正極の電位で溶出しない材料を用いることができる。ま
た、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる
元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシ
リサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成す
る金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタ
ル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。正極集電体10
1は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の
形状を適宜用いることができる。正極集電体101は、厚みが5μm以上30μm以下の
ものを用いるとよい。また、正極集電体101の表面に、グラファイトなどを用いてアン
ダーコート層を設けてもよい。
【0162】
正極活物質層102は、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高めるための結着剤(バ
インダ)、正極活物質層102の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。
【0163】
正極活物質層102に用いる正極活物質としては、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の
結晶構造、またはスピネル型の結晶構造を有する複合酸化物等がある。正極活物質として
、例えば、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMn、V、C
、MnO等の化合物を用いる。
【0164】
特に、LiCoOは、容量が大きいこと、LiNiOに比べて大気中で安定であるこ
と、LiNiOに比べて熱的に安定であること等の利点があるため、好ましい。
【0165】
また、LiMn等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材
料に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiOやLiNi1-x(0<x<1
)(M=Co、Al等))を混合すると、これを用いた蓄電装置の特性を向上させること
ができ好ましい。
【0166】
また、正極活物質として、組成式LiMnで表すことができるリチウムマン
ガン複合酸化物を用いることができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から
選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであること
がさらに好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体を測定する場合、放電
時に0<a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満
たすことが好ましい。なお、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の金属、シリコン、
リン等の組成は、例えばICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定する
ことができる。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の酸素の組成は、例えばED
X(エネルギー分散型X線分析法)を用いて測定することが可能である。また、ICP-
MS分析と併用して、融解ガス分析、XAFS(X線吸収微細構造)分析の価数評価を用
いることで求めることができる。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリ
チウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、
鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シ
リコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよ
い。
【0167】
なお、高容量を発現させるために、表層部と中心部で、結晶構造、結晶方位または酸素含
有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物とすることが好ましい。このよう
なリチウムマンガン複合酸化物とするために、組成式がLiMnNi(1.6
≦a≦1.848、0.19≦c/b≦0.935、2.5≦d≦3)の範囲とすること
が好ましい。さらに、Li1.68Mn0.8062Ni0.318の組成式であら
わされるリチウムマンガン複合酸化物を用いることが特に好ましい。本明細書等において
、Li1.68Mn0.8062Ni0.318の組成式であらわされるリチウムマ
ンガン複合酸化物とは、材料の量の割合(モル比)を、LiCO:MnCO:Ni
O=0.84:0.8062:0.318とすることにより形成したリチウムマンガン複
合酸化物をいう。そのため該リチウムマンガン複合酸化物は、組成式Li1.68Mn
.8062Ni0.318で表されるが、この組成からずれることもある。
【0168】
結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物
の粒子の断面図の例を図24に示す。
【0169】
図24(A)に示すように、結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有する
リチウムマンガン複合酸化物は、第1の領域331と、第2の領域332と、第3の領域
333を有することが好ましい。第2の領域332は、第1の領域331の外側の少なく
とも一部に接続する。ここで、外側とは、粒子の表面により近いことを示す。また、第3
の領域333は、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の、表面と一致する領域を有
することが好ましい。
【0170】
また、図24(B)に示すように、第1の領域331は、第2の領域332に覆われない
領域を有してもよい。また、第2の領域332は、第3の領域333に覆われない領域を
有してもよい。また、例えば第1の領域331に第3の領域333が接続する領域を有し
てもよい。また、第1の領域331は、第2の領域332および第3の領域333のいず
れにも覆われない領域を有してもよい。
【0171】
第2の領域332は、第1の領域331と異なる組成を有することが好ましい。
【0172】
例えば、第1の領域331と第2の領域332の組成を分けて測定し、第1の領域331
がリチウム、マンガン、元素Mおよび酸素を有し、第2の領域332がリチウム、マンガ
ン、元素Mおよび酸素を有し、第1の領域331のリチウム、マンガン、元素M、および
酸素の原子数比はa1:b1:c1:d1で表され、第2の領域332のリチウム、マン
ガン、元素M、および酸素の原子数比はa2:b2:c2:d2で表される場合について
説明する。なお、第1の領域331と第2の領域332のそれぞれの組成は、例えばTE
M(透過型電子顕微鏡)を用いたEDX(エネルギー分散型X線分析法)で測定すること
ができる。EDXを用いた測定では、リチウムの組成の測定が困難な場合がある。そのた
め、以下では、第1の領域331と第2の領域332の組成の違いは、リチウム以外の元
素について述べる。ここで、d1/(b1+c1)は2.2以上が好ましく、2.3以上
であることがより好ましく、2.35以上3以下であることがさらに好ましい。また、d
2/(b2+c2)は2.2未満であることが好ましく、2.1未満であることがより好
ましく、1.1以上1.9以下であることがさらに好ましい。またこの場合でも、第1の
領域331と第2の領域332を含むリチウムマンガン複合酸化物粒子全体の組成は、前
述の0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。
【0173】
また、第2の領域332が有するマンガンは、第1の領域331が有するマンガンと異な
る価数を有してもよい。また、第2の領域332が有する元素Mは、第1の領域331が
有する元素Mと異なる価数を有してもよい。
【0174】
より具体的には、第1の領域331は、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムマンガン
複合酸化物であることが好ましい。また第2の領域332は、スピネル型の結晶構造を有
するリチウムマンガン複合酸化物であることが好ましい。
【0175】
ここで、各領域の組成や、元素の価数に空間的な分布がある場合には、例えば複数の箇所
についてその組成や価数を評価し、その平均値を算出し、該領域の組成や価数としてもよ
い。
【0176】
また、第2の領域332と第1の領域331との間に、遷移層を有してもよい。ここで遷
移層とは、例えば組成が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層
とは、結晶構造が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層とは、
結晶の格子定数が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、第2の領域3
32と第1の領域331との間に、混合層を有してもよい。ここで混合層とは、例えば異
なる結晶方位を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、例え
ば異なる結晶構造を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、
例えば異なる組成を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。
【0177】
第3の領域333には、炭素または金属化合物を用いることができる。ここで、金属とし
ては例えばコバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マンガン、チタン、亜鉛、リチウム
等が挙げられる。金属化合物の一例として、これらの金属の酸化物や、フッ化物などが挙
げられる。
【0178】
第3の領域333は、上記の中でも、炭素を有することが特に好ましい。炭素は導電性が
高いため、炭素で被覆された粒子を蓄電池の電極に用いることにより、例えば電極の抵抗
を低くすることができる。また、第3の領域333が炭素を有することで、第3の領域3
33と接続する第2の領域332を酸化することができる。また、第3の領域333はグ
ラフェンを有してもよく、酸化グラフェンを有してもよく、還元した酸化グラフェンを有
してもよい。グラフェンおよび還元された酸化グラフェンは、高い導電性を有するという
優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度が高いという優れた物理特性を有する。
またリチウムマンガン複合酸化物の粒子を効率よく被覆することができる。
【0179】
第3の領域333が、グラフェンをはじめとする炭素を有することで、リチウムマンガン
複合酸化物を正極材料に用いた蓄電装置の、サイクル特性を向上させることができる。
【0180】
炭素を含む層の膜厚は、0.4nm以上40nm以下とすることが好ましい。
【0181】
また、リチウムマンガン複合酸化物は、例えば、一次粒子の平均粒子径が、5nm以上5
0μm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ま
しい。また比表面積が5m/g以上15m/g以下であることが好ましい。また、二
次粒子の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。なお平均粒子径
は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEMによる観察、またはレーザ回折・散乱法を
用いた粒度分布計等によって測定することができる。また比表面積は、ガス吸着法により
測定することができる。
【0182】
または、正極活物質として、複合材料(一般式LiMPO(Mは、Fe(II)、Mn
(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式Li
MPOの代表例としては、LiFePO、LiNiPO、LiCoPO、LiM
nPO、LiFeNiPO、LiFeCoPO、LiFeMnPO
、LiNiCoPO、LiNiMnPO(a+bは1以下、0<a<1、0
<b<1)、LiFeNiCoPO、LiFeNiMnPO、LiNi
CoMnPO(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、
LiFeNiCoMnPO(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<
1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
【0183】
特にLiFePOは、安全性、安定性、高容量密度、初期酸化(充電)時に引き抜ける
リチウムイオンの存在等、正極活物質に求められる事項をバランスよく満たしているため
、好ましい。
【0184】
または、一般式Li(2-j)MSiO(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(
II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等の複合材料を用いることができる。一般
式Li(2-j)MSiOの代表例としては、Li(2-j)FeSiO、Li(2
-j)NiSiO、Li(2-j)CoSiO、Li(2-j)MnSiO、Li
(2-j)FeNiSiO、Li(2-j)FeCoSiO、Li(2-j
FeMnSiO、Li(2-j)NiCoSiO、Li(2-j)Ni
MnSiO(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2-j)Fe
CoSiO、Li(2-j)FeNiMnSiO、Li(2-j)Ni
CoMnSiO(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)
、Li(2-j)FeNiCoMnSiO(r+s+t+uは1以下、0<r
<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウム化合物を材料として用いるこ
とができる。
【0185】
また、正極活物質として、A(XO(A=Li、Na、Mg、M=Fe、M
n、Ti、V、Nb、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナシコン
型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe(MnO、F
(SO、LiFe(PO等がある。また、正極活物質として、Li
MPOF、LiMP、LiMO(M=Fe、Mn)の一般式で表される
化合物、NaFeF、FeF等のペロブスカイト型フッ化物、TiS、MoS
の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO等の逆スピネ
ル型の結晶構造を有する酸化物、バナジウム酸化物系(V、V13、LiV
等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることができる。
【0186】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金
属イオンの場合、正極活物質として、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナト
リウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリ
ウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。例えば、NaFeOや、Na
/3[Fe1/2Mn1/2]Oなどのナトリウム含有層状酸化物を正極活物質として
用いることができる。
【0187】
なお、図示しないが、正極活物質層102の表面に炭素層などの導電性材料を設けてもよ
い。炭素層などの導電性材料を設けることで、電極の導電性を向上させることができる。
例えば、正極活物質層102への炭素層の被覆は、正極活物質の焼成時にグルコース等の
炭水化物を混合することで形成することができる。
【0188】
粒状の正極活物質の一次粒子の平均粒径は、50nm以上100μm以下のものを用いる
とよい。
【0189】
導電助剤としては、例えば炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いる
ことができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対
する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt
%以下がより好ましい。
【0190】
導電助剤により、電極中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤に
より、活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に導電助剤を
添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができる。
【0191】
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊
維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維
、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カ
ーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノ
チューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例
えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子
、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニ
ッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を
用いることができる。
【0192】
薄片状のグラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、及び柔軟性並びに機
械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、グラフェンを、導電助剤として用い
ることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
【0193】
なお、本明細書において、グラフェンは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下
の多層グラフェンを含む。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシ
ートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のこ
とをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェン
に含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに
酸素が含まれる場合、酸素の割合は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Phot
oelectron Spectroscopy:)で測定した場合にグラフェン全体の
2atomic%以上11atomic%以下、好ましくは3atomic%以上10a
tomic%以下である。
【0194】
グラフェンは、接触抵抗の低い面接触を可能とするものであり、また、薄くても導電性が
非常に高く、少ない量でも効率よく活物質層内で導電パスを形成することができる。
【0195】
平均粒径の小さい活物質、例えば1μm以下の活物質を用いる場合には、活物質の比表面
積が大きく、活物質同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。このような場合には、導
電性が非常に高く少ない量でも効率よく導電パスを形成することができるグラフェンを用
いることが、特に好ましい。
【0196】
以下では、正極活物質層に、導電助剤としてグラフェンを用いる場合の断面構成例を説明
する。なお、負極活物質層に導電助剤としてグラフェンを用いてもよい。
【0197】
図25(A)に、正極活物質層102および正極集電体101の縦断面図を示す。正極活
物質層102は、粒状の正極活物質322と、導電助剤としてのグラフェン321と、結
着剤(バインダともいう。図示せず)と、を含む。
【0198】
正極活物質層102の縦断面においては、図25(A)に示すように、正極活物質層10
2の内部において概略均一にシート状のグラフェン321が、面接触する程度に正極活物
質を覆っている。図25(A)においてはグラフェン321を模式的に太線で表している
が、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン32
1は、複数の粒状の正極活物質322を包むように、覆うように、あるいは複数の粒状の
正極活物質322の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している
。また、グラフェン321どうしも互いに面接触することで、複数のグラフェン321に
より三次元的な電気伝導のネットワークを形成している。
【0199】
これはグラフェン321の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを
用いるためである。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去
し、酸化グラフェンを還元してグラフェンとするため、正極活物質層102に残留するグ
ラフェン321は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に正極活物質を覆うことで
電気伝導の経路を形成している。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行
ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
【0200】
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェ
ン321は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させ
ることなく、粒状の正極活物質322とグラフェン321との電気伝導性を向上させるこ
とができる。よって、正極活物質322の正極活物質層102における比率を増加させる
ことができる。これにより、蓄電装置の放電容量を増加させることができる。
【0201】
また、グラフェン同士が結合することにより、網目状のグラフェン(以下グラフェンネッ
トと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラ
フェンネットは粒子間を結合するバインダとしても機能することができる。よって、バイ
ンダの量を少なくすることができる、又は使用しないことができるため、電極体積や電極
重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、蓄電装置の容量を増加
させることができる。
【0202】
上記のような、正極活物質層または負極活物質層に、導電助剤としてグラフェンを用いる
構成は、可撓性を有する蓄電装置において特に有効である。
【0203】
図26(A)に、従来例として、導電助剤にアセチレンブラックをはじめとする粒子状の
導電助剤323を用いた場合の正極活物質層102および正極集電体101の縦断面図を
示す。正極活物質322同士は、粒子状の導電助剤323との接触によって電気伝導のネ
ットワークが形成されている。
【0204】
図26(B)に、図26(A)の正極活物質層102および正極集電体101を曲げる場
合を示す。図26(B)のように、導電助剤に粒子状の導電助剤323を用いると、正極
活物質層102が曲がるのに伴って正極活物質322同士の距離が変化し、正極活物質3
22同士の電気伝導のネットワークの一部が切れてしまう恐れがある。
【0205】
一方、導電助剤としてグラフェンを用いた図25(A)の正極活物質層102および正極
集電体101を曲げる場合を図25(B)に示す。グラフェンは柔軟性を有するシートで
あるため、図25(B)のように正極活物質層102が曲がるのに伴って正極活物質32
2同士の距離が変化しても、電気伝導のネットワークを維持することができる。
【0206】
本発明の一態様の蓄電装置に用いる電極は様々な方法で作製することができる。例えば、
塗布法を用いて集電体上に活物質層を形成する場合は、活物質とバインダと導電助剤と分
散媒(溶媒ともいう)を混合してペーストを作製し、集電体上にペーストを塗布して、分
散媒を気化させればよい。その後、必要があれば、ロールプレス法や平板プレス法等の圧
縮方法によりプレスして圧密化してもよい。
【0207】
分散媒としては、例えば、水や、N-メチルピロリドン(NMP)やジメチルホルムアミ
ド等の極性を有する有機溶媒等を用いることができる。安全性とコストの観点から、水を
用いることが好ましい。
【0208】
バインダとしては、例えば水溶性の高分子を含むことが好ましい。水溶性の高分子として
は、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロ
ース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース
、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いる
ことができる。
【0209】
また、バインダとしては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレン
・スチレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、エ
チレン・プロピレン・ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。これらの
ゴム材料は、前述の水溶性の高分子と併用して用いると、さらに好ましい。
【0210】
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メ
チル(ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニ
ルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、
ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピ
レン、イソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(
PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルクロライド、エチレンプロピ
レンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好まし
い。
【0211】
バインダは上記のうち二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0212】
正極活物質層102の総量に対するバインダの含有量は、1wt%以上10wt%以下が
好ましく、2wt%以上8wt%以下がより好ましく、3wt%以上5wt%以下がさら
に好ましい。また、正極活物質層102の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以
上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
【0213】
塗布法を用いて正極活物質層102を形成する場合は、正極活物質とバインダと導電助剤
を混合して正極ペースト(スラリー)を作製し、正極集電体101上に塗布して乾燥させ
ればよい。
【0214】
[2.負極]
負極115は、負極集電体105と、負極集電体105上に形成された負極活物質層10
6などにより構成される。
【0215】
負極集電体105には、ステンレス、金、白金、鉄、銅、チタン等の金属、及びこれらの
合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いること
ができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性
を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。負極集電体10
5は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の
形状を適宜用いることができる。負極集電体105は、厚みが5μm以上30μm以下の
ものを用いるとよい。また、負極集電体105の表面に、グラファイトなどを用いてアン
ダーコート層を設けてもよい。
【0216】
なお、負極集電体の材料をステンレス、チタンなどの強度のあるものとすると、負極活物
質層の膨張に伴う負極集電体の変形に耐えることができ、好ましい。これは、負極活物質
として、ケイ素を含む材料をはじめとする充放電に伴う体積の変化が大きい材料を用いる
場合に特に好適である。
【0217】
負極活物質層106は、負極活物質の他、負極活物質の密着性を高めるための結着剤(バ
インダ)、負極活物質層106の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。負極
活物質層に用いるバインダおよび導電助剤の材料は、正極活物質層に用いるバインダおよ
び導電助剤の材料を参酌することができる。
【0218】
負極活物質としては、リチウムの溶解・析出、又はリチウムイオンとの可逆的な反応が可
能な材料を用いることができ、リチウム金属、炭素系材料、合金系材料等を用いることが
できる。
【0219】
リチウム金属は、酸化還元電位が低く(標準水素電極に対して-3.045V)、重量及
び体積当たりの比容量が大きい(それぞれ3860mAh/g、2062mAh/cm
)ため、好ましい。
【0220】
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハー
ドカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。
【0221】
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ
系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。
【0222】
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)に
リチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1-0.3V vs.Li/Li)。こ
れにより、リチウムイオン蓄電装置は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は
、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に
比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0223】
また、負極活物質には上述の炭素材の他、キャリアイオンとの合金化、脱合金化反応によ
り充放電反応を行うことが可能な材料を用いることができる。キャリアイオンがリチウム
イオンである場合、例えば、Mg、Ca、Al、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、
Bi、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、及びIn等の元素のうちの少なくとも一つを含む
材料を用いることができる。このような元素は炭素に対して容量が大きく、特にシリコン
は理論容量が4200mAh/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質にシリコンを用
いることが好ましい。このような元素を用いた材料としては、例えば、MgSi、Mg
Ge、MgSn、SnS、VSn、FeSn、CoSn、NiSn
CuSn、AgSn、AgSb、NiMnSb、CeSb、LaSn、L
CoSn、CoSb、InSb、SbSn等がある。
【0224】
また、負極活物質として、SiO、SnO、SnO、二酸化チタン(TiO)、リチ
ウムチタン酸化物(LiTi12)、リチウム-黒鉛層間化合物(Li)、
五酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO
)等の酸化物を用いることができる。
【0225】
なお、SiOとは、ケイ素酸化物の粉末を指しており、SiO(2>y>0)とも表記
できる。SiOは、ケイ素リッチの部分を含んでいてもよい。例えばSiOは、Si
、Si、またはSiOから選ばれた単数または複数を含む材料や、Siの粉末
と二酸化ケイ素SiOの混合物も含む。また、SiOは他の元素(炭素、窒素、鉄、ア
ルミニウム、銅、チタン、カルシウム、マンガンなど)を含む場合もある。即ち、単結晶
Si、アモルファスSi、多結晶Si、Si、Si、SiO、SiO
ら選ばれる複数を含む材料を指しており、SiOは有色材料である。SiOではないSi
(Xは2以上)であれば無色透明、或いは白色であり、区別することができる。ただ
し、蓄電装置の材料としてSiOを用いて蓄電装置を作製した後、充放電を繰り返すなど
によって、SiOが酸化した場合には、SiOに変質する場合もある。
【0226】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、LiN型構造をもつ
Li3-xN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6
Co0.4は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm)を示
し好ましい。
【0227】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、
正極活物質としてリチウムイオンを含まないV、Cr等の材料と組み合わせ
ることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも
、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させておくことで負極活物質と
してリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0228】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば
、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウム
と合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反
応が生じる材料としては、さらに、Fe、CuO、CuO、RuO、Cr
等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn、CuN、G
等の窒化物、NiP、FeP、CoP等のリン化物、FeF、BiF
等のフッ化物でも起こる。なお、上記フッ化物の電位は高いため、正極活物質として用い
てもよい。
【0229】
塗布法を用いて負極活物質層106を形成する場合は、負極活物質と結着剤を混合して負
極ペースト(スラリー)を作製し、負極集電体105上に塗布して乾燥させればよい。
【0230】
また、負極活物質層106の表面に、グラフェンを形成してもよい。例えば、負極活物質
をシリコンとした場合、充放電サイクルにおけるキャリアイオンの吸蔵・放出に伴う体積
の変化が大きいため、負極集電体105と負極活物質層106との密着性が低下し、充放
電により電池特性が劣化してしまう。そこで、シリコンを含む負極活物質層106の表面
にグラフェンを形成すると、充放電サイクルにおいて、シリコンの体積が変化したとして
も、負極集電体105と負極活物質層106との密着性の低下を抑制することができ、電
池特性の劣化が低減されるため好ましい。
【0231】
また、負極活物質層106の表面に、酸化物等の被膜を形成してもよい。充電時において
電解液の分解等により形成される被膜は、その形成時に消費された電荷量を放出すること
ができず、不可逆容量を形成する。これに対し、酸化物等の被膜をあらかじめ負極活物質
層106の表面に設けておくことで、不可逆容量の発生を抑制又は防止することができる
【0232】
このような負極活物質層106を被覆する被膜には、ニオブ、チタン、バナジウム、タン
タル、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、クロム、アルミニウム若
しくはシリコンのいずれか一の酸化膜、又はこれら元素のいずれか一とリチウムとを含む
酸化膜を用いることができる。このような被膜は、従来の電解液の分解生成物により負極
表面に形成される被膜に比べ、十分緻密な膜である。
【0233】
例えば、酸化ニオブ(Nb)は、電気伝導度が10-9S/cmと低く、高い絶縁
性を示す。このため、酸化ニオブ膜は負極活物質と電解液との電気化学的な分解反応を阻
害する。一方で、酸化ニオブのリチウム拡散係数は10-9cm/secであり、高い
リチウムイオン伝導性を有する。このため、リチウムイオンを透過させることが可能であ
る。また、酸化シリコンや酸化アルミニウムを用いてもよい。
【0234】
負極活物質層106を被覆する被膜の形成には、例えばゾル-ゲル法を用いることができ
る。ゾル-ゲル法とは、金属アルコキシドや金属塩等からなる溶液を、加水分解反応・重
縮合反応により流動性を失ったゲルとし、このゲルを焼成して薄膜を形成する方法である
。ゾル-ゲル法は液相から薄膜を形成する方法であるから、原料を分子レベルで均質に混
合することができる。このため、溶媒の段階の金属酸化膜の原料に、黒鉛等の負極活物質
を加えることで、容易にゲル中に活物質を分散させることができる。このようにして、負
極活物質層106の表面に被膜を形成することができる。当該被膜を用いることで、蓄電
体の容量の低下を防止することができる。
【0235】
[3.セパレータ]
セパレータ107を形成するための材料として、セルロースや、ポリプロピレン(PP)
、ポリエチレン(PE)、ポリブテン、ナイロン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリア
クリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサル
ファイド等の多孔性絶縁体を用いることができる。また、ガラス繊維等の不織布や、ガラ
ス繊維と高分子繊維を複合した隔膜を用いてもよい。また、耐熱性を高めるために、ポリ
エステル不織布に、セラミック塗布やアラミドのコーティングを行ったセパレータを用い
てもよい。
【0236】
[4.電解液]
蓄電装置100に用いる電解液108の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく
、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレン
カーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクト
ン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(D
EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、
1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスル
ホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テ
トラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意
の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0237】
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ
又は複数用いることで、蓄電体の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、
蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。
【0238】
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合
、例えばLiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiAlCl、Li
SCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10l10、Li12l1
、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiC(C
SO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(C
SO)(CFSO)、LiN(CSO等のリチウム塩を一種、又はこ
れらのうちの二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0239】
電解液にポリマーを添加し、ゲル状にしてもよい。電解液をゲル状にすることにより、漏
液性等に対する安全性が高まる。また、蓄電装置の薄型化及び軽量化が可能である。電解
液をゲル状にすることのできるポリマーとしては、例えば、ポリアルキレンオキシド系、
ポリアクリロニトリル系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリアクリレート系、ポリメタクリ
レート系ポリマーを用いることができる。なお本明細書等において、例えばポリフッ化ビ
ニリデン系ポリマーとは、ポリフッ化ビニリデンを含むポリマーを意味し、ポリ(フッ化
ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)共重合体等を含む。形成されるポリマーは、多
孔質形状を有してもよい。
【0240】
FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)等を用いることで、上記のポリマーを定性分
析することができる。例えばポリフッ化ビニリデン系ポリマーは、FT-IRで得たスペ
クトルに、C-F結合を示す吸収を有する。またポリアクリロニトリル系ポリマーは、F
T-IRで得たスペクトルに、C≡N結合を示す吸収を有する。
【0241】
また、蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単
に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好まし
い。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、
より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。また、電解液にビニレンカーボネ
ートなどの添加剤を加えてもよい。
【0242】
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質を用い
ることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要とな
る。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上
する。
【0243】
[5.外装体]
外装体の材料としては、実施の形態1で説明したフィルムを用いることができる。
【0244】
また、外装体110はエンボス加工等により、凹部、凸部、または凹部および凸部が形成
されていることが好ましい。
【0245】
金属箔を有するフィルムは、エンボス加工を行いやすく、エンボス加工を行って凹部また
は凸部を形成すると外気に触れる外装体110の表面積が増大するため、放熱効果に優れ
ている。
【0246】
また、外部から力を加えて蓄電装置100の形状を変化させた場合、蓄電装置100の外
装体110のうち、曲げ中心から近い内側の外装体110には圧縮応力がかかり、曲げ中
心から遠い外側の外装体110には引っ張り応力がかかる。これらの応力によって外装体
がひずみ、外装体110の一部が変形または一部破壊が生じる恐れがある。
【0247】
外装体110にエンボス加工等で凹部または凸部を形成することにより、外装体110の
沿面距離を増大させ、単位長さ当たりの圧縮応力および引っ張り応力を緩和することがで
きる。よって、蓄電装置100の信頼性を高めることができる。
【0248】
なお、ひずみとは物体の基準(初期状態)長さに対する物体内の物質点の変位を示す変形
の尺度である。外装体110に凹部または凸部を形成することにより、二次電池の外部か
ら力を加えて生じるひずみによる影響を抑えることができる、とも言うことができる。
【0249】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0250】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した蓄電装置を電子機器に実装する例について説
明する。
【0251】
可撓性を有する蓄電装置を、腕章型の電子機器に実装する例を図27に示す。図27に示
す腕章型デバイス7300は、腕7301に装着することが可能であり、曲面を有する表
示部と、曲げることのできる蓄電装置とを有する。
【0252】
なお、表示部において、表示素子、表示素子を有する装置である表示装置、発光素子、及
び発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態を用いること、又は様々な素子を
有することが出来る。表示素子、表示装置、発光素子又は発光装置は、例えば、EL(エ
レクトロルミネッセンス)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機
EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、トラン
ジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、
電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイ(PDP
)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、デジ
タルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、
MIRASOL(登録商標)、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション)素
子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、エレクトロウ
ェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、または、カーボンナノチューブを用い
た表示素子、などの少なくとも一つを有している。これらの他にも、表示素子、表示装置
、発光素子又は発光装置は、電気的または磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射
率、透過率などが変化する表示媒体を有する場合がある。EL素子を用いた表示装置の一
例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例として
は、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ
(SED:Surface-conduction Electron-emitter
Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディス
プレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ
、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク、電子粉
流体(登録商標)、又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーな
どがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合に
は、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい
。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにす
ればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも
可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。なお、LEDを用
いる場合、LEDの電極や窒化物半導体の下に、グラフェンやグラファイトを配置しても
よい。グラフェンやグラファイトは、複数の層を重ねて、多層膜としてもよい。このよう
に、グラフェンやグラファイトを設けることにより、その上に、窒化物半導体、例えば、
結晶を有するn型GaN半導体層などを容易に成膜することができる。さらに、その上に
、結晶を有するp型GaN半導体層などを設けて、LEDを構成することができる。なお
、グラフェンやグラファイトと、結晶を有するn型GaN半導体層との間に、AlN層を
設けてもよい。なお、LEDが有するGaN半導体層は、MOCVDで成膜してもよい。
ただし、グラフェンを設けることにより、LEDが有するGaN半導体層は、スパッタ法
で成膜することも可能である。
【0253】
さらに、腕章型デバイス7300は機能素子を1つまたは複数有することが好ましく、例
えばセンサとして、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁
気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度
、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むものを用いることができる。また
、タッチパネル、アンテナ、発電素子、スピーカなどの機能素子を有してもよい。
【0254】
例えば、夜間において腕章型デバイス7300を使用者の腕に装着して表示部を発光させ
れば、交通の安全効果が得られる。また、スポーツ分野においても腕章型デバイス730
0を有用に使用できる。また、工事現場等においてもヘルメットを装着した作業者が、腕
章型デバイス7300を腕に装着し、操作することで安全に作業を行えるよう通信や他の
人の位置情報を容易に取得することができる。
【0255】
可撓性を有する蓄電装置をその他の電子機器に実装する例を図28に示す。可撓性を有す
る蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビ
ジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデ
オカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、
携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙
げられる。
【0256】
また、可撓性を有する蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または
外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0257】
図28(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401
に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、ス
ピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電
装置7407を有している。
【0258】
図28(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機740
0を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置
7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図28(C
)に示す。蓄電装置7407は薄型の蓄電装置である。蓄電装置7407は曲げられた状
態で固定されている。なお、蓄電装置7407は集電体7409と電気的に接続されたリ
ード電極7408を有している。例えば、集電体7409は銅箔であり、一部ガリウムと
合金化させることにより、集電体7409と活物質層との密着性を向上させている。それ
によって、蓄電装置7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
【0259】
図28(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、
筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。
また、図28(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。蓄電装置7104は曲
げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して蓄電装置7104の一部または
全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の
値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径
が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または蓄電装置7104の主表面の一部ま
たは全部が変化する。蓄電装置7104の主表面における曲率半径が40mm以上150
mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。
【0260】
また、湾曲可能な蓄電装置は、様々な電子機器において空間効率よく搭載することができ
る。例えば図28(F)に示すストーブ7500は、本体7512にモジュール7511
が取り付けられ、モジュール7511は、蓄電装置7501、モーター、ファン、送風口
7511a、熱電発電装置を有する。ストーブ7500では、開口部7512aから燃料
を投入、着火した後、蓄電装置7501の電力を用いてモジュール7511のモーターと
ファンを回転させ、送風口7511aから外気をストーブ7500の内部に送ることがで
きる。このように外気を効率よく取り込めるため火力の強いストーブとすることが可能で
ある。さらに、燃料の燃焼に得た熱エネルギーを用いて、上部のグリル7513において
調理することが可能である。また該熱エネルギーをモジュール7511の熱電発電装置に
より電力に変換し、蓄電装置7501に充電することができる。さらに、蓄電装置750
1に充電された電力を外部端子7511bより出力することができる。
【0261】
図29(A)および図29(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図
29(A)および図29(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐
体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部96
31aと表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッチ962
6、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、
操作スイッチ9628、を有する。図29(A)は、タブレット型端末9600を開いた
状態を示し、図29(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
【0262】
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電
装置9635を有する。蓄電装置9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと
筐体9630bに渡って設けられている。
【0263】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示され
た操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部963
1aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域
がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部963
1aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部96
31aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示
画面として用いることができる。
【0264】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部
をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード
表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで
表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0265】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタ
ッチ入力することもできる。
【0266】
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切
り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイ
ッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時
の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は
光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出
装置を内蔵させてもよい。
【0267】
また、図29(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示し
ているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示
の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネル
としてもよい。
【0268】
図29(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池96
33、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634を有する。また、蓄電
装置9635として、本発明の一態様の蓄電装置を用いる。
【0269】
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aおよ
び筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、
表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、タブレット型端末9600の耐
久性を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電装置を用いた蓄電装置9635
は可撓性を有し、曲げ伸ばしを繰り返しても充放電容量が低下しにくい。よって、信頼性
の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0270】
また、この他にも図29(A)および図29(B)に示したタブレット型端末は、様々な
情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻な
どを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ
入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有する
ことができる。
【0271】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、
表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐
体9630の一面又は二面に設けることができ、蓄電装置9635の充電を効率的に行う
構成とすることができる。なお蓄電装置9635としては、本発明の一態様の蓄電装置を
用いると、充放電の繰り返しに伴う放電容量の低下を抑制することができるため、長期に
わたって使用することのできるタブレット端末とすることができる。
【0272】
また、図29(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図29
C)にブロック図を示し説明する。図29(C)には、太陽電池9633、蓄電装置96
35、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、
表示部9631について示しており、蓄電装置9635、DCDCコンバータ9636、
コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図29(B)に示す充放電制御回路
9634に対応する箇所となる。
【0273】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。
太陽電池で発電した電力は、蓄電装置9635を充電するための電圧となるようDCDC
コンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電
池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ963
7で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部963
1での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電装置9635
の充電を行う構成とすればよい。
【0274】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧
電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電
装置9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信
して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成と
してもよい。
【0275】
また、図30に示すようなウェアラブルデバイスに実施の形態1で説明した蓄電装置を搭
載することができる。
【0276】
例えば、図30(A)に示すような眼鏡型デバイス400に搭載することができる。眼鏡
型デバイス400は、フレーム400aと、表示部400bを有する。湾曲を有するフレ
ーム400aのテンプル部に蓄電装置を搭載することで、重量バランスがよく継続使用時
間の長い眼鏡型デバイス400とすることができる。
【0277】
また、ヘッドセット型デバイス401に搭載することができる。ヘッドセット型デバイス
401は、少なくともマイク部401aと、フレキシブルパイプ401bと、イヤフォン
部401cを有する。フレキシブルパイプ401b内やイヤフォン部401c内に蓄電装
置を設けることができる。
【0278】
また、身体に直接取り付け可能なデバイス402に搭載することができる。デバイス40
2の薄型の筐体402aの中に、蓄電装置402bを設けることができる。
【0279】
また、衣服に取り付け可能なデバイス403に搭載することができる。デバイス403の
薄型の筐体403aの中に、蓄電装置403bを設けることができる。
【0280】
また、腕時計型デバイス405に搭載することができる。腕時計型デバイス405は表示
部405aおよびベルト部405bを有し、表示部405aまたはベルト部405bに、
蓄電装置を設けることができる。
【0281】
また、ベルト型デバイス406に搭載することができる。ベルト型デバイス406は、ベ
ルト部406aおよびワイヤレス給電受電部406bを有し、ベルト部406aの内部に
、蓄電装置を搭載することができる。
【0282】
また、図30(B1)に示すような腕輪型デバイス407に実施の形態1で説明した蓄電
装置を搭載することができる。腕輪型デバイス407は、ケース407aの中に、2つの
湾曲した蓄電装置407bを有する。またケース407aの表面には湾曲した表示部40
7cが設けられている。表示部407cに用いることのできる表示部については、図27
の表示部についての記載を参酌することができる。腕輪型デバイス407は、接続部40
7dとヒンジ部407eを有し、ヒンジ部407eを中心に接続部407dまでを動かす
ことができる。また接続部407dに設けられた外部端子を介して充電等を行うことがで
きる。
【0283】
また、図30(B2)に示すようなウェアラブルデバイス410に実施の形態1で説明し
た蓄電装置を搭載することができる。ウェアラブルデバイス410は、本体411の中に
、湾曲した蓄電装置412とセンサ部413を有する。またウェアラブルデバイス410
は、表示部415とバンド部414を有し、例えば手首に着用することができる。表示部
415に用いることのできる表示部については、図27の表示部についての記載を参酌す
ることができる。表示部415には、図30(B2)に示すように時刻をはじめとして、
メールや電話の着信情報等、様々な情報を表示することができる。
【0284】
また、腕時計型デバイス405およびウェアラブルデバイス410は、腕に直接巻きつけ
るタイプのウェアラブルデバイスであるため、使用者の脈拍、血圧等を測定するセンサを
搭載してもよい。使用者の運動量および健康に関するデータを蓄積し、健康維持に役立て
ることができる。
【0285】
さらに、上述の腕章型デバイス7300、携帯電話機7400、携帯表示装置7100、
タブレット型端末9600、ベルト型デバイス406、腕時計型デバイス405、腕輪型
デバイス407およびウェアラブルデバイス410をはじめとする、持ち歩くことのでき
るデバイスには、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)等の測位システムを
搭載してもよい。使用者が自分の現在位置を知ることができるだけでなく、児童誘拐や徘
徊行動等への対応に役立てることもできる。
【0286】
図31に、他の電子機器の例を示す。図31において、表示装置8000は、本発明の一
態様に係る蓄電装置8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置800
0は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部
8003、蓄電装置8004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置8004は、筐
体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受
けることもできるし、蓄電装置8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって
、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る
蓄電装置8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能とな
る。
【0287】
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光
装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Devi
ce)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field
Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0288】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など
、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0289】
図31において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る蓄電装置81
03を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光
源8102、蓄電装置8103等を有する。図31では、蓄電装置8103が、筐体81
01及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示
しているが、蓄電装置8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装
置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8103に蓄
積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が
受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を無停電電源として用いる
ことで、照明装置8100の利用が可能となる。
【0290】
なお、図31では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示してい
るが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8
106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上
型の照明装置などに用いることもできる。
【0291】
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができ
る。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光
素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0292】
図31において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、
本発明の一態様に係る蓄電装置8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内
機8200は、筐体8201、送風口8202、蓄電装置8203等を有する。図31
は、蓄電装置8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、蓄電
装置8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外
機8204の両方に、蓄電装置8203が設けられていても良い。エアコンディショナー
は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8203に蓄積された電
力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に蓄電装置82
03が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時で
も、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を無停電電源として用いることで、エアコン
ディショナーの利用が可能となる。
【0293】
なお、図31では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを
例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコン
ディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
【0294】
図31において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を
用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷
蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、蓄電装置8304等を有する。図31では、蓄
電装置8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、
商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8304に蓄積された電力を
用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時
でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を無停電電源として用いることで、電気冷
凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
【0295】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0296】
(実施の形態5)
本実施の形態では、車両に実施の形態1で説明した蓄電装置を搭載する例を示す。
【0297】
また、蓄電装置を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、
又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現
できる。
【0298】
図32において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図32(A)に示す自動車8
400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、
走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハ
イブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現す
ることができる。また、自動車8400は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーターを
駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置
に電力を供給することができる。
【0299】
また、蓄電装置は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示
装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8400が有するナビゲ
ーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
【0300】
図32(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する蓄電装置にプラグイン方
式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができ
る。図32(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された蓄
電装置に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充
電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適
宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、
また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給
により自動車8500に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDC
コンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0301】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給
して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組
み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電
の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に
太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触で
の電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0302】
また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この
場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
【0303】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0304】
100 蓄電装置
100b 蓄電装置
100c 蓄電装置
101 正極集電体
102 正極活物質層
105 負極集電体
106 負極活物質層
107 セパレータ
107A セパレータ
107B セパレータ
107C セパレータ
107D セパレータ
107a 領域
107b 領域
108 電解液
108a 電解液
110 外装体
110a フィルム
110d 領域
111 正極
111A 正極
111B 正極
111C 正極
111D 正極
111b 正極
115 負極
115A 負極
115B 負極
115C 負極
115D 負極
115b 負極
120 熱圧着領域
121 封止層
125 凹曲面
126 凸曲面
130 積層体
130A 積層体
130B 積層体
130C 積層体
130D 積層体
130E 積層体
130F 積層体
130a 第1の積層体
130b 第2の積層体
141 正極リード
145 負極リード
150 凹曲面
151 凸曲面
152 凹曲面
153 凸曲面
154 凹曲面
155 凸曲面
156 凹曲面
157 凸曲面
321 グラフェン
322 正極活物質
323 導電助剤
331 領域
332 領域
333 領域
400 眼鏡型デバイス
400a フレーム
400b 表示部
401 ヘッドセット型デバイス
401a マイク部
401b フレキシブルパイプ
401c イヤフォン部
402 デバイス
402a 筐体
402b 蓄電装置
403 デバイス
403a 筐体
403b 蓄電装置
405 腕時計型デバイス
405a 表示部
405b ベルト部
406 ベルト型デバイス
406a ベルト部
406b ワイヤレス給電受電部
407 腕輪型デバイス
407a ケース
407b 蓄電装置
407c 表示部
407d 接続部
407e ヒンジ部
410 ウェアラブルデバイス
411 本体
412 蓄電装置
413 センサ部
414 バンド部
415 表示部
7100 携帯表示装置
7101 筐体
7102 表示部
7103 操作ボタン
7104 蓄電装置
7300 腕章型デバイス
7301 腕
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7407 蓄電装置
7408 リード電極
7409 集電体
7500 ストーブ
7501 蓄電装置
7511 モジュール
7511a 送風口
7511b 外部端子
7512 本体
7512a 開口部
7513 グリル
8000 表示装置
8001 筐体
8002 表示部
8003 スピーカ部
8004 蓄電装置
8021 充電装置
8022 ケーブル
8100 照明装置
8101 筐体
8102 光源
8103 蓄電装置
8104 天井
8105 側壁
8106 床
8107 窓
8200 室内機
8201 筐体
8202 送風口
8203 蓄電装置
8204 室外機
8300 電気冷凍冷蔵庫
8301 筐体
8302 冷蔵室用扉
8303 冷凍室用扉
8304 蓄電装置
8400 自動車
8401 ヘッドライト
8500 自動車
9600 タブレット型端末
9625 スイッチ
9626 スイッチ
9627 電源スイッチ
9628 操作スイッチ
9629 留め具
9630 筐体
9630a 筐体
9630b 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a 領域
9632b 領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 蓄電装置
9636 DCDCコンバータ
9637 コンバータ
9638 操作キー
9639 ボタン
9640 可動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32