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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241017BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/304 651L
H01L21/304 648K
H01L21/68 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022134815
(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公開番号】P2024031325
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】根本 脩平
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-111665(JP,A)
【文献】特開2007-273510(JP,A)
【文献】特開2002-177855(JP,A)
【文献】特開2003-163147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、前記底壁の周囲から立設される側壁と、前記側壁の上端部を覆う天井壁とで内部空間を覆うように構成されたチャンバと、
前記内部空間内で、水平姿勢の基板を鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転させながら前記基板に薬液を処理液として供給することで、前記基板に対して所定の基板処理を施す基板処理部と、
前記底壁から鉛直上方に立設された複数のベース支持部材と、
前記底壁よりも高い剛性を有し、前記基板処理部を載置可能に仕上げられた載置面を鉛直上方に向けた姿勢で、かつ前記底壁から上方に離間した離間位置で、前記複数のベース支持部材の上端部により支持されるベース部材と
を備え、
前記基板処理部は、
前記基板から飛散する前記処理液の液滴を捕集する飛散防止機構と、
前記ベース部材の上面に取り付けられ、前記飛散防止機構の一部を鉛直方向に昇降可能に構成する昇降機構と、
を有する、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記飛散防止機構は、
上カップと下カップを有し、回転可能に構成された回転カップと、
前記回転カップを囲むように設けられる固定カップと、を有し、
前記昇降機構は、前記飛散防止機構のうち前記上カップを鉛直方向に昇降可能に構成する、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記ベース部材は金属プレートである、基板処理装置。
【請求項4】
請求項に記載の基板処理装置であって、
前記基板処理部は、
下方端部が前記底壁から上方に離間した姿勢で前記ベース部材に取り付けられるとともに、上方端部で前記基板を略水平に保持しながら鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転可能に設けられる基板保持部と、
前記底壁から上方に離間した姿勢で前記ベース部材に取り付けられたモータと、前記モータで発生した回転駆動力を前記基板保持部の下方端部に伝達する動力伝達部と、を有し、前記回転駆動力によって前記基板保持部を前記回転軸まわりに回転させる回転機構と、
前記基板保持部の上方端部で保持された状態で前記回転軸まわりに回転される前記基板に前記処理液を供給する処理機構と、
を有する、基板処理装置。
【請求項5】
底壁と、前記底壁の周囲から立設される側壁と、前記側壁の上端部を覆う天井壁とで内部空間を覆うように構成されたチャンバと、
前記内部空間内で、水平姿勢の基板を鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転させながら前記基板に薬液を処理液として供給することで、前記基板に対して所定の基板処理を施す基板処理部と、
前記底壁から鉛直上方に立設された複数のベース支持部材と、
前記底壁よりも高い剛性を有し、前記基板処理部を載置可能に仕上げられた載置面を鉛直上方に向けた姿勢で、かつ前記底壁から上方に離間した離間位置で、前記複数のベース支持部材の上端部により支持されるベース部材と、
を備え、
前記基板処理部は、
下方端部が前記底壁から上方に離間した姿勢で前記ベース部材に取り付けられるとともに、上方端部で前記基板を略水平に保持しながら鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転可能に設けられる基板保持部と、
前記底壁から上方に離間した姿勢で前記ベース部材に取り付けられたモータと、前記モータで発生した回転駆動力を前記基板保持部の下方端部に伝達する動力伝達部と、を有し、前記回転駆動力によって前記基板保持部を前記回転軸まわりに回転させる回転機構と、
前記基板保持部の上方端部で保持された状態で前記回転軸まわりに回転される前記基板に前記処理液を供給する処理機構と、
を有し、
前記ベース部材は、前記モータの回転シャフトを前記底壁に向けて前記ベース部材の下面から垂下させた姿勢で前記モータを保持する第1保持部位と、前記基板保持部の下方端部を前記底壁に向けて前記ベース部材の下面から垂下させた姿勢で前記基板保持部を保持する第2保持部位と、を有し、
前記動力伝達部は、前記回転シャフトの下端部に取り付けられる第1プーリと、前記基板保持部の下方端部に取り付けられる第2プーリと、前記ベース部材の下方で前記第1プーリおよび前記第2プーリの間に架け渡された無端ベルトと、を有する、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記底壁は、前記処理液に対して耐薬品性を有する樹脂材料で構成されている、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
鉛直方向において前記底壁と前記ベース部材との間に配置され、前記底壁に向かって流下してくる前記処理液を回収する回収部材を、さらに備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チャンバの内部空間で基板に処理液を供給して上記基板を処理する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板処理装置として、例えば特許文献1に記載された装置が知られている。この装置では、チャンバの下壁(本発明の「底壁」に相当)上に基板処理部が設置される。また、下壁の周囲から側壁が基板処理部を取り囲むように立設されるとともに、基板処理部の上方に上壁が配置されている。この基板処理部では、スピンチャックが下壁、側壁および上壁により囲まれた内部空間に配置される。このスピンチャックは、半導体ウエハなどの略円板状の基板を水平に保持しながら、チャンバの下壁に固定されたモータからの回転駆動力を受けることで鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転する。これにより、基板がスピンチャックと一体的に回転軸まわりに回転する。こうして回転する基板の周縁部に処理液が供給される。これによって、基板の上面の周縁部を処理液で処理するベベル処理が基板処理の一例として実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-52835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の基板処理装置では、SC1、DHFなどの薬液が処理液として使用される。このため、漏液により処理液がチャンバの下壁に貯まり、基板処理部の一部、例えば上記モータに悪影響を与える可能性がある。そこで、特許文献1に記載されていないが、基板処理部の構成、特に電気部品にカバーを装着する必要があった。
【0005】
また、薬液に対する耐薬品性を確保するため、チャンバの構成材料として樹脂材料が多用されている。特に、下壁として樹脂材料が用いられており、当該樹脂製の下壁上に基板処理部の各部が配置されている。この樹脂製の下壁は強度的に劣っており、しかも撓みが発生することもある。したがって、下壁を基準ベースとして基板処理部の各部を組み立てることは難しく、各部に対して個別で鉛直方向における高さ調整を行う必要があった。
【0006】
これらに起因して、従来装置は、処理液の漏液による影響を回避するために、装置コストの増大およびメンテナンス作業性の悪化を招いていた。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、薬液を処理液として用いて基板を処理する基板処理部をチャンバの内部空間に配置する基板処理装置において、処理液の漏液による悪影響を回避しつつ、低コストおよび良好なメンテナンス性で基板に対する基板処理を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板処理装置であって、底壁と、底壁の周囲から立設される側壁と、側壁の上端部を覆う天井壁とで内部空間を覆うように構成されたチャンバと、内部空間内で、水平姿勢の基板を鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転させながら基板に薬液を処理液として供給することで、基板に対して所定の基板処理を施す基板処理部と、前記底壁から鉛直上方に立設された複数のベース支持部材と、底壁よりも高い剛性を有し、基板処理部を載置可能に仕上げられた載置面を鉛直上方に向けた姿勢で、かつ底壁から上方に離間した離間位置で、複数のベース支持部材の上端部により支持されるベース部材と、を備え、基板処理部は、基板から飛散する処理液の液滴を捕集する飛散防止機構と、ベース部材の上面に取り付けられ、飛散防止機構の一部を鉛直方向に昇降可能に構成する昇降機構と、を有することを特徴としている。
る。
【0009】
このように構成された発明では、ベース部材がチャンバの底壁から上方に離間した離間位置で配置されており、チャンバの内部空間内において、いわゆる高床構造が形成されている。そして、当該ベース部材の上面上に基板処理部が設置される。このような高床構造のレイアウトを採用することで、仮に処理液の漏液が発生してチャンバの底壁に貯まったとしても、その処理液が基板処理部に接液するのを確実に防止することができる。したがって、ベース部材を樹脂材料で構成する必然性はなく、底壁よりも高い剛性を有する材料で構成することで、ベース部材の載置面を基準ベースとし、当該載置面上に基板処理部を設けることができる。したがって、従来装置よりも優れたメンテナンス性で基板処理部を設けることができる。また、鉛直方向において底壁よりも高い位置に基板処理部が設けられることで、処理液による悪影響を未然に防止するためのカバーなどの追加構成を基板処理部に取り付けることは不要となる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、薬液を処理液として用いて基板を処理する基板処理部がチャンバの内部空間に配置されているにも関わらず、処理液の漏液による悪影響を回避しつつ、低コストおよび良好なメンテナンス性で基板に対する基板処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
図2】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。
図3】チャンバの構成およびチャンバに装着される構成を模式的に示す図である。
図4】ベース部材上に設置された基板処理部の構成を模式的に示す平面図である。
図5】保持回転機構の構成を示す斜視図である。
図6】スピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。
図7】回転カップ部および固定カップ部の一部を示す図である。
図8】上面保護加熱機構の構成を示す外観斜視図である。
図9図8に示す上面保護加熱機構の断面図である。
図10】ノズル移動部の構成を模式的に示す図である。
図11】センタリング機構の構成および動作を模式的に示す図である。
図12】基板観察機構の観察ヘッドを示す斜視図である。
図13図12に示す観察ヘッドの分解組立斜視図である。
図14図2に示す基板処理装置により基板処理動作の一例として実行されるベベル処理を示すフローチャートである。
図15】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。これは基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成された基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。そして、基板処理システム100に装備される処理ユニット1において、処理液による基板処理が実行される。本明細書では、基板の両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターン形成されている面を意味する。
【0013】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0014】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Wに対して処理を施す基板処理エリア110を有している。この基板処理エリア110に対し、インデクサ部120が隣接して設けられている。インデクサ部120は、基板Wを収容するための容器C(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Wを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Wを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Wがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0015】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Wを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0016】
基板処理エリア110では、載置台112がインデクサロボット122からの基板Wを載置可能に設けられている。また、平面視において、基板処理エリア110のほぼ中央に基板搬送ロボット111が配置される。さらに、この基板搬送ロボット111を取り囲むように、複数の処理ユニット1が配置される。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置される。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111は載置台112にランダムにアクセスし、載置台112との間で基板Wを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Wに対して所定の処理を実行するものであり、本発明に係る基板処理装置に相当するものである。本実施形態では、これらの処理ユニット(基板処理装置)1は同一の機能を有している。このため、複数基板Wの並列処理が可能となっている。なお、基板搬送ロボット111はインデクサロボット122から基板Wを直接受け渡すことが可能であれば、必ずしも載置台112は必要ない。
【0017】
図2は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。また、図3はチャンバの構成およびチャンバに装着される構成を模式的に示す図である。図2図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示される場合がある。基板処理装置(処理ユニット)1で用いられるチャンバ11は、図3に示すように、鉛直上方からの平面視で矩形形状の底壁11aと、底壁11aの周囲から立設される4枚の側壁11b~11eと、側壁11b~11eの上端部を覆う天井壁11fと、を有している。これら底壁11a、側壁11b~11eおよび天井壁11fを組み合わせることで、略直方体形状の内部空間12が形成される。
【0018】
底壁11aの上面に、ベース支持部材16、16が互いに離間しながらボルトなどの締結部品により固定される。つまり、底壁11aからベース支持部材16が立設される。これらベース支持部材16、16の上端部に、ベース部材17がボルトなどの締結部品により固定される。このベース部材17は、底壁11aよりも小さな平面サイズを有するとともに、底壁11aよりも厚肉で高い剛性を有する金属プレートで構成される。図2に示すように、ベース部材17は、ベース支持部材16、16により底壁11aから鉛直上方に持ち上げられている。つまり、チャンバ11の内部空間12の底部において、いわゆる高床構造が形成されている。このベース部材17の上面は、後で詳述するように、基板Wに対して基板処理を施す基板処理部SPを設置可能に仕上げられ、当該上面に基板処理部SPが設置される。この基板処理部SPを構成する各部は装置全体を制御する制御ユニット10と電気的に接続され、制御ユニット10からの指示に応じて動作する。なお、ベース部材17の形状、基板処理部SPの構成や動作については、後で詳述する。
【0019】
図2および図3に示すように、チャンバ11の天井壁11fには、ファンフィルタユニット(FFU)13が取り付けられている。このファンフィルタユニット13は、基板処理装置1が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバ11内の内部空間12に供給する。ファンフィルタユニット13は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバ11内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ)を備えており、天井壁11fに設けられた開口11f1を介して清浄空気を送り込む。これにより、チャンバ11内の内部空間12に清浄空気のダウンフローが形成される。また、ファンフィルタユニット13から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレート14が天井壁11fの直下に設けられている。
【0020】
図3に示すように、基板処理装置1では、4枚の側壁11b~11eのうち基板搬送ロボット111と対向する側壁11bには、搬送用開口11b1が設けられており、内部空間12とチャンバ11の外部とが連通される。このため、基板搬送ロボット111のハンド(図示省略)が搬送用開口11b1を介して基板処理部SPにアクセス可能となっている。つまり、搬送用開口11b1を設けたことで、内部空間12に対する基板Wの搬入出が可能となっている。また、この搬送用開口11b1を開閉するためのシャッター15が側壁11bに取り付けられている。
【0021】
シャッター15にはシャッター開閉機構(図示省略)が接続されており、制御ユニット10からの開閉指令に応じてシャッター15を開閉させる。より具体的には、基板処理装置1では、未処理の基板Wをチャンバ11に搬入する際にシャッター開閉機構はシャッター15を開き、基板搬送ロボット111のハンドによって未処理の基板Wがフェースアップ姿勢で基板処理部SPに搬入される。つまり、基板Wは上面Wfを上方に向けた状態で基板処理部SPのスピンチャック(図5中の符号21)上に載置される。そして、当該基板搬入後に基板搬送ロボット111のハンドがチャンバ11から退避すると、シャッター開閉機構はシャッター15を閉じる。そして、チャンバ11の処理空間(後で詳述する密閉空間12aに相当)内で基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が基板処理部SPにより本発明の「基板処理」の一例として実行される。また、ベベル処理の終了後においては、シャッター開閉機構がシャッター15を再び開き、基板搬送ロボット111のハンドが処理済の基板Wを基板処理部SPから搬出する。このように、本実施形態では、チャンバ11の内部空間12が常温環境に保たれる。なお、本明細書において「常温」とは、5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。
【0022】
図3に示すように、側壁11dは、ベース部材17に設置された基板処理部SP(図2)を挟んで側壁11bの反対側に位置している。この側壁11dには、メンテナンス用開口11d1が設けられている。メンテナンス時には、同図に示すように、メンテナンス用開口11d1は開放される。このため、オペレータは装置の外部からメンテナンス用開口11d1を介して基板処理部SPにアクセス可能となっている。一方、基板処理時には、蓋部材19がメンテナンス用開口11d1を塞ぐように取り付けられる。このように、本実施形態では、蓋部材19は側壁11dに対して着脱自在となっている。
【0023】
また、側壁11eの外側面には、基板処理部SPに対して加熱した不活性ガス(本実施形態では、窒素ガス)を供給するための加熱ガス供給部47が取り付けられている。この加熱ガス供給部47は、ヒータ471を内蔵している。
【0024】
このように、チャンバ11の外壁側には、シャッター15、蓋部材19および加熱ガス供給部47が配置される。これに対し、チャンバ11の内側、つまり内部空間12には、高床構造のベース部材17の上面に基板処理部SPが設置される。以下、図2図4ないし図12を参照しつつ、基板処理部SPの構成について説明する。
【0025】
図4はベース部材上に設置された基板処理部の構成を模式的に示す平面図である。以下、装置各部の配置関係や動作などを明確にするために、Z方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。図4における座標系において、基板Wの搬送経路TPと平行な水平方向を「X方向」とし、それと直交する水平方向を「Y方向」としている。さらに詳しくは、チャンバ11の内部空間12から搬送用開口11b1およびメンテナンス用開口11d1に向かう方向をそれぞれ「+X方向」および「-X方向」と称し、チャンバ11の内部空間12から側壁11c、11eに向かう方向をそれぞれ「-Y方向」および「+Y方向」と称し、鉛直上方および鉛直下方に向かう方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。
【0026】
基板処理部SPは、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9を備えている。これらの機構は、ベース部材17上に設けられている。つまり、チャンバ11よりも高い剛性を有するベース部材17を基準とし、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9が相互に予め決められた位置関係で配置される。
【0027】
図5は保持回転機構の構成を示す斜視図である。保持回転機構2は、基板Wの表面を上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持する基板保持部2Aと、基板Wを保持した基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の一部を同期して回転させる回転機構2Bと、を備えている。このため、制御ユニット10からの回転指令に応じて回転機構2Bが作動すると、基板Wおよび飛散防止機構3の回転カップ部31は、鉛直方向Zと平行に延びる回転軸AXまわりに回転される。
【0028】
基板保持部2Aは、基板Wより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。特に、本実施形態では、図4に示すように、基板保持部2Aの中心(スピンチャック21の中心軸に相当)がチャンバ11の中心11gよりも(+X)方向にオフセットされる。つまり、チャンバ11の上方からの平面視で、スピンチャック21の中心軸(回転軸AX)が内部空間12の中心11gから搬送用開口11b1側に距離Lofだけずれた処理位置に位置するように、基板保持部2Aは配置される。なお、後述する装置各部の配置関係を明確にするため、本明細書では、オフセットされた基板保持部2Aの中心(回転軸AX)を通過するとともに、搬送経路TPと直交する仮想線および搬送経路TPと平行な仮想線をそれぞれ「第1仮想水平線VL1」および「第2仮想水平線VL2」と称する。
【0029】
スピンチャック21の下面には、図5に示すように、円筒状の回転軸部22が連結される。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向Zに延設される。また、回転軸部22には、回転機構2Bが接続される。
【0030】
回転機構2Bは、基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の回転カップ部31を回転させるための回転駆動力を発生するモータ23と、当該回転駆動力を伝達するための動力伝達部24とを有している。モータ23は、回転駆動力の発生に伴い回転する回転シャフト231を有している。回転シャフト231を鉛直下方に延設させた姿勢でベース部材17のモータ取付部位171に設けられている。より詳しくは、モータ取付部位171は、図3に示すように、メンテナンス用開口11d1と対向しながら(+X)方向に切り欠かれた部位である。このモータ取付部位171の切欠幅(Y方向サイズ)はモータ23のY方向幅とほぼ同一である。このため、モータ23は、その側面をモータ取付部位171と係合させながらX方向に移動自在となっている。
【0031】
モータ取付部位171で、モータ23をX方向に位置決めしながらベース部材17に固定するために、モータ固定金具232がボルトやネジなどの締結部材233によりベース部材17に連結される。モータ固定金具232は、図5に示すように、水平部位2321と鉛直部位2322とを有し、(+Y)方向からの側面視で略L字形状を有している。図5への図示を省略しているが、モータ固定金具232の水平部位2321の中央部には、回転シャフト231を挿通するための貫通孔が設けられている。この貫通孔に回転シャフト231を鉛直下方に挿通した状態で、水平部位2321がモータ23を支持する。また、鉛直部位2322は水平部位2321により下方から支持されたモータ23と係合するように構成される。この鉛直部位2322には、2本のボルトやネジなど締結部材234がY方向において互いに離間して取り付けられている。各締結部材234の先端部は鉛直部位2322を貫通して(+X)方向に延設され、各先端部がモータ取付部位171に螺合している。したがって、オペレータが締結部材234を正回転または逆回転させることで、モータ23を支持したままモータ固定金具232がX方向に移動する。これによって、モータ23をX方向において位置決めすることが可能となっている。また、位置決め後に、オペレータが締結部材233を正回転させることでモータ23がモータ取付部位171と一体的にベース部材17にしっかりと固定される。
【0032】
ベース部材17から下方に突出した回転シャフト231の先端部には、第1プーリ241が取り付けられている。また、基板保持部2Aの下方端部には、第2プーリ242が取り付けられている。より詳しくは、基板保持部2Aの下方端部は、ベース部材17のスピンチャック取付部位172に設けられた貫通孔に挿通され、ベース部材17の下方に突出している。この突出部分に第2プーリ242が設けられている。そして、第1プーリ241および第2プーリ242の間に無端ベルト243が架け渡される。このように、本実施形態では、第1プーリ241、第2プーリ242および無端ベルト243により、動力伝達部24が構成される。
【0033】
このような構成を有する動力伝達部24を用いた場合、長尺のタイミングベルトを無端ベルト243として選定することができ、無端ベルト243の長寿命化を図ることができる。といっても、X方向におけるモータ23の移動により第1プーリ241および第2プーリ242の間隔調整や無端ベルト243の交換などのメンテナンス作業は必要である。そこで、本実施形態では、図4に示すように、チャンバ11の上方からの平面視で、搬送用開口11b1、基板保持部2A、動力伝達部24、モータ23およびメンテナンス用開口11d1がこの順序で、第2仮想水平線VL2に沿って、かつ直線状に配置される。つまり、動力伝達部24およびモータ23は、メンテナンス用開口11d1を臨むように、配置される。したがって、蓋部材19をチャンバ11から取り外してメンテナンス用開口11d1を開放すると、メンテナンス用開口11d1を介して動力伝達部24およびモータ23が外部に露出する。その結果、オペレータによるメンテナンス作業が容易となり、メンテナンス作業の効率を向上させることができる。
【0034】
しかも、以下に説明する他の機構はベース部材17の上方に配置されるのに対し、動力伝達部24はベース部材17の下方に配置される。このような配置を採用することで、他の機構との干渉を考慮することなく、オペレータによるメンテナンス作業をさらに効率的に行うことができる。
【0035】
スピンチャック21の中央部には、図5に示すように、貫通孔211が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管25を介してポンプ26が接続される。当該ポンプ26およびバルブは、制御ユニット10に電気的に接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ26が負圧をスピンチャック21に付与すると、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。一方、ポンプ26が正圧をスピンチャック21に付与すると、基板Wはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ26の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となる。
【0036】
スピンチャック21には、回転軸部22の中央部に設けられた配管28を介して窒素ガス供給部29が接続される。窒素ガス供給部29は、基板処理システム100が設置される工場のユティリティーなどから供給される常温の窒素ガスを制御ユニット10からのガス供給指令に応じた流量およびタイミングでスピンチャック21に送給し、基板Wの下面Wb側で窒素ガスを中央部から径方向外側に流通させる。なお、本実施形態では、窒素ガスを用いているが、その他の不活性ガスを用いてもよい。この点については、後で説明する中央ノズルから吐出される加熱ガスについても同様である。また、「流量」とは、窒素ガスなどの流体が単位時間当たりに移動する量を意味している。
【0037】
回転機構2Bは、基板Wと一体的にスピンチャック21を回転させるのみならず、当該回転に同期して回転カップ部31を回転させるために、動力伝達部27(図2)を有している。動力伝達部27は、非磁性材料または樹脂で構成される円環部材27a(図5)と、円環部材に内蔵されるスピンチャック側磁石(図示省略)と、回転カップ部31の一構成である下カップ32に内蔵されるカップ側磁石(図示省略)とを有している。円環部材27aは、図5に示すように回転軸部22に取り付けられ、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能となっている。より詳しくは、回転軸部22は、図2および図5に示すように、スピンチャック21の直下位置において、径方向外側に張出したフランジ部位を有している。そして、フランジ部位に対して円環部材27aが同心状に配置されるとともに、図示省略するボルトなどによって連結固定される。
【0038】
円環部材27aの外周縁部では、複数のスピンチャック側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。本実施形態では、互いに隣り合う2つのスピンチャック側磁石の一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置される。
【0039】
これらのスピンチャック側磁石と同様に、複数のカップ側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。これらのカップ側カップ側磁石は下カップ32に内蔵される。下カップ32は次に説明する飛散防止機構3の構成部品であり、円環形状を有している。つまり、下カップ32は、円環部材27aの外周面と対向可能な内周面を有している。この内周面の内径は円環部材27aの外径よりも大きい。そして、当該内周面を円環部材27aの外周面から所定間隔(=(上記内径-上記外径)/2)だけ離間対向させながら下カップ32が回転軸部22および円環部材27aと同心状に配置される。この下カップ32の外周縁上面には、係合ピンおよび連結用マグネットが設けられており、これらにより上カップ33が下カップ32と連結され、この連結体が回転カップ部31として機能する。
【0040】
下カップ32は、ベース部材17の上面上において、図面への図示を省略したベアリングによって、上記配置状態のまま、回転軸AXまわりに回転可能に支持される。この下カップ32の内周縁部において、上記したようにカップ側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。また、互いに隣り合う2つのカップ側磁石の配置についてもスピンチャック側磁石と同様である。つまり、一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置される。
【0041】
このように構成された動力伝達部27では、モータ23により回転軸部22とともに円環部材27aが回転すると、スピンチャック側磁石とカップ側磁石との間での磁力作用によって、下カップ32がエアギャップ(円環部材27aと下カップ32との隙間)を維持しつつ円環部材27aと同じ方向に回転する。これにより、回転カップ部31が回転軸AXまわりに回転する。つまり、回転カップ部31は基板Wと同一方向でしかも同期して回転する。
【0042】
飛散防止機構3は、スピンチャック21に保持された基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能な回転カップ部31と、回転カップ部31を囲むように固定的に設けられる固定カップ部34と、を有している。回転カップ部31は、下カップ32に上カップ33が連結されることで、回転する基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能に設けられている。
【0043】
図6はスピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。図7は回転カップ部および固定カップ部の一部を示す図である。下カップ32は円環形状を有している。その外径は基板Wの外径よりも大きく、鉛直上方からの平面視においてスピンチャック21で保持された基板Wから径方向にはみ出た状態で下カップ32は回転軸AXまわりに回転自在に配置される。当該はみ出た領域、つまり下カップ32の上面周縁部では、周方向に沿って鉛直上方に立設する係合ピン(図示省略)と平板状の下マグネット(図示省略)とが交互に取り付けられている。
【0044】
一方、上カップ33は、図2図3および図6に示すように、下円環部位331と、上円環部位332と、これらを連結する傾斜部位333とを有している。下円環部位331の外径D331は下カップ32の外径D32と同一であり、下円環部位331は下カップ32の周縁部321の鉛直上方に位置している。下円環部位331の下面では、係合ピンの鉛直上方に相当する領域において、下方に開口した凹部が係合ピンの先端部と嵌合可能に設けられている。また、下マグネットの鉛直上方に相当する領域において、上マグネットが取り付けられている。このため、凹部および上マグネットがそれぞれ係合ピンおよび下マグネットと対向した状態で、上カップ33は下カップ32に対して係脱可能となっている。
【0045】
上カップ33は、昇降機構7により鉛直方向において昇降可能となっている。上カップ33が昇降機構7により上方に移動されると、鉛直方向において上カップ33と下カップ32との間に基板Wの搬入出用の搬送空間が形成される。一方、昇降機構7により上カップ33が下方に移動されると、凹部が係合ピンの先端部を被るように嵌合し、下カップ32に対して上カップ33が水平方向に位置決めされる。また、上マグネットが下マグネットに近接し、両者間で生じる引力によって、上記位置決めさた上カップ33および下カップ32が互いに結合される。これによって、図4の部分拡大図および図7に示すように、水平方向に延びる隙間GPcを形成した状態で、上カップ33および下カップ32が鉛直方向に一体化される。そして、回転カップ部31は隙間GPcを形成したまま回転軸AXまわりに回転自在となっている。
【0046】
回転カップ部31では、図6に示すように、上円環部位332の外径D332は下円環部位331の外径D331よりも若干小さい。また、下円環部位331および上円環部位332の内周面の径d331、d332を比較すると、下円環部位331の方が上円環部位332よりも大きく、鉛直上方からの平面視で、上円環部位332の内周面が下円環部位331の内周面の内側に位置する。そして、上円環部位332の内周面と下円環部位331の内周面とが上カップ33の全周にわたって傾斜部位333により連結される。このため、傾斜部位333の内周面、つまり基板Wを取り囲む面は、傾斜面334となっている。すなわち、図7に示すように、傾斜部位333は回転する基板Wの外周を囲んで基板Wから飛散する液滴を捕集可能となっており、上カップ33および下カップ32で囲まれた空間が捕集空間SPcとして機能する。
【0047】
しかも、捕集空間SPcを臨む傾斜部位333は、下円環部位331から基板Wの周縁部の上方に向かって傾斜している。このため、図7に示すように、傾斜部位333に捕集された液滴は傾斜面334に沿って上カップ33の下端部、つまり下円環部位331に流動し、さらに隙間GPcを介して回転カップ部31の外側に排出可能となっている。
【0048】
固定カップ部34は回転カップ部31を取り囲むように設けられ、排出空間SPeを形成する。固定カップ部34は、液受け部位341と、液受け部位341の内側に設けられた排気部位342とを有している。液受け部位341は、隙間GPcの反基板側開口(図7の左手側開口)を臨むように開口したカップ構造を有している。つまり、液受け部位341の内部空間が排出空間SPeとして機能しており、隙間GPcを介して捕集空間SPcと連通される。したがって、回転カップ部31により捕集された液滴は気体成分とともに隙間GPcを介して排出空間SPeに案内される。そして、液滴は液受け部位341の底部に集められ、固定カップ部34から排液される。
【0049】
一方、気体成分は排気部位342に集められる。この排気部位342は区画壁343を介して液受け部位341と区画される。また、区画壁343の上方に気体案内部344が配置される。気体案内部344は、区画壁343の直上位置から排出空間SPeと排気部位342の内部にそれぞれ延設されることで、区画壁343を上方から覆ってラビリンス構造を有する気体成分の流通経路を形成している。したがって、液受け部位341に流入した流体のうち気体成分が上記流通経路を経由して排気部位342に集められる。この排気部位342は排気部38と接続される。このため、制御ユニット10からの指令に応じて排気部38が作動することで固定カップ部34の圧力が調整され、排気部位342内の気体成分が効率的に排気される。また、排気部38の精密制御により、排出空間SPeの圧力や流量が調整される。例えば排出空間SPeの圧力が捕集空間SPcの圧力よりも下がる。その結果、捕集空間SPc内の液滴を効率的に排出空間SPeに引き込み、捕集空間SPcからの液滴の移動を促進することができる。
【0050】
図8は上面保護加熱機構の構成を示す外観斜視図である。図9図8に示す上面保護加熱機構の断面図である。上面保護加熱機構4は、スピンチャック21に保持される基板Wの上面Wfの上方に配置された遮断板41を有している。この遮断板41は水平な姿勢で保持された円板部42を有している。円板部42はヒータ駆動部422により駆動制御されるヒータ421を内蔵している。この円板部42は基板Wよりも若干短い直径を有している。そして、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆うように、円板部42は支持部材43により支持される。なお、図8中の符号44は円板部42の周縁部に設けられた切欠部であり、これは処理機構5に含まれる処理液吐出ノズルとの干渉を防止するために設けられている。切欠部44は、径方向外側に向かって開口している。
【0051】
支持部材43の下端部は円板部42の中央部に取り付けられている。支持部材43と円板部42とを上下に貫通するように、円筒状の貫通孔が形成される。また、当該貫通孔に対し、中央ノズル45が上下に挿通している。この中央ノズル45には、図2に示すように、配管46を介して加熱ガス供給部47と接続される。加熱ガス供給部47は、基板処理システム100が設置される工場の用力などから供給される常温の窒素ガスをヒータ471により加熱して制御ユニット10からの加熱ガス供給指令に応じた流量およびタイミングで基板処理部SPに供給する。
【0052】
ここで、ヒータ471をチャンバ11の内部空間12に配置すると、ヒータ471から放射される熱が基板処理部SP、特に後述するように処理機構5や基板観察機構9に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、本実施形態では、ヒータ471を有する加熱ガス供給部47が、図4に示すように、チャンバ11の外側に配置される。また、本実施形態では、配管46の一部にリボンヒータ48が取り付けられている。リボンヒータ48は制御ユニット10からの加熱指令に応じて発熱して配管46内を流れる窒素ガスを加熱する。
【0053】
こうして加熱された窒素ガス(以下「加熱ガス」という)が中央ノズル45に向けて圧送され、中央ノズル45から吐出される。例えば図9に示すように、円板部42がスピンチャック21に保持された基板Wに近接した処理位置に位置決めされた状態で加熱ガスが供給されることによって、加熱ガスは基板Wの上面Wfとヒータ内蔵の円板部42とに挟まれた空間SPaの中央部から周縁部に向って流れる。これによって、基板Wの周囲の雰囲気が基板Wの上面Wfに入り込むのを抑制することができる。その結果、上記雰囲気に含まれる液滴が基板Wと円板部42とで挟まれた空間SPaに巻き込まれるのを効果的に防止することができる。また、ヒータ421による加熱と加熱ガスによって上面Wfが全体的に加熱され、基板Wの面内温度を均一化することができる。これによって、基板Wが反るのを抑制し、処理液の着液位置を安定化させることができる。
【0054】
図2に示すように、支持部材43の上端部は、第1仮想水平線VL1に沿って延びる梁部材49に固定される。この梁部材49は、ベース部材17の上面に取り付けられた昇降機構7と接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて昇降機構7により昇降される。例えば図2では梁部材49が下方に位置決めされることで、支持部材43を介して梁部材49に連結された円板部42が処理位置に位置している。一方、制御ユニット10からの上昇指令を受けて昇降機構7が梁部材49を上昇させると、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的に上昇するとともに、上カップ33も連動して下カップ32から分離して上昇する。これによって、スピンチャック21と、上カップ33および円板部42との間が広がり、スピンチャック21に対する基板Wの搬出入を行うことが可能となる。
【0055】
処理機構5は、基板Wの上面側に配置される処理液吐出ノズル51F(図4)と、基板Wの下面側に配置される処理液吐出ノズル51B(図2)と、処理液吐出ノズル51F、51Bに処理液を供給する処理液供給部52とを有している。以下においては、上面側の処理液吐出ノズル51Fと下面側の処理液吐出ノズル51Bとを区別するために、それぞれ「上面ノズル51F」および「下面ノズル51B」と称する。また、図2において、処理液供給部52が2つ図示されるが、これらは同一である。
【0056】
本実施形態では、3本の上面ノズル51Fが設けられるとともに、それらに対して処理液供給部52が接続される。また、処理液供給部52はSC1、DHFなどの薬液や機能水(CO2水など)を処理液として供給可能に構成されており、3本の上面ノズル51FからSC1、DHFおよび機能水がそれぞれ独立して吐出可能となっている。
【0057】
各上面ノズル51Fでは、先端下面に処理液を吐出する吐出口(図示省略)が設けられている。そして、図4中の拡大図に示すように、各吐出口を基板Wの上面Wfの周縁部を向けた姿勢で複数(本実施形態では3個)の上面ノズル51Fの下方部が円板部42の切欠部44(図6参照)に配置されるとともに、上面ノズル51Fの上方部がノズルホルダ53に対して径方向D1(第1仮想水平線VL1に対してノズル吐出仰角度が45゜、旋回角度が65°程度傾いた方向)に移動自在に取り付けられている。このノズルホルダ53はノズル移動部54に接続される。
【0058】
図10はノズル移動部の構成を模式的に示す図である。ノズル移動部54は、図10に示すように、ノズルヘッド56(=上面ノズル51F+ノズルホルダ53)を保持したまま、後で説明する昇降部713のリフター713aの上端部に取り付けられている。このため、制御ユニット10からの昇降指令に応じてリフター713aが鉛直方向に伸縮すると、それに応じてノズル移動部54およびノズルヘッド56が鉛直方向Zに移動する。
【0059】
また、ノズル移動部54では、ベース部材541がリフター713aの上端部に固着されている。このベース部材541には、直動アクチュエータ542が取り付けられている。直動アクチュエータ542は、径方向Xにおけるノズル移動の駆動源として機能するモータ(以下「ノズル駆動モータ」という)543と、ノズル駆動モータ543の回転軸に連結されたボールねじなどの回転体の回転運動を直線運動に変換してスライダー544を径方向D1に往復移動させる運動変換機構545とを有している。また、運動変換機構545では、スライダー544の径方向D1への移動を安定化させるために、例えばLMガイド(登録商標)などのガイドが用いられている。
【0060】
こうして径方向Xに往復駆動されるスライダー544には、連結部材546を介してヘッド支持部材547が連結されている。このヘッド支持部材547は、径方向Xに延びる棒形状を有している。ヘッド支持部材547の(+D1)方向端部はスライダー544に固着される。一方、ヘッド支持部材547の(-D1)方向端部はスピンチャック21に向かって水平に延設され、その先端部にノズルヘッド56が取り付けられている。このため、制御ユニット10からのノズル移動指令に応じてノズル駆動モータ543が回転すると、その回転方向に対応して(+D1)方向または(-D1)方向に、しかも回転量に対応した距離だけ、スライダー544、ヘッド支持部材547およびノズルヘッド56が一体的に移動する。その結果、ノズルヘッド56に装着されている上面ノズル51Fが径方向D1に位置決めされる。例えば、図10に示すように、上面ノズル51Fが予め設定されたホーム位置に位置決めされたとき、運動変換機構545に設けられたバネ部材548がスライダー544により圧縮され、スライダー544に対して(-X)方向に付勢力を与える。これにより、運動変換機構545に含まれるバックラッシを制御することができる。つまり、運動変換機構545はガイドなどの機械部品を有しているため、径方向D1に沿ったバックラッシをゼロとすることは事実上困難であり、これについて十分な考慮を払わないと、径方向D1における上面ノズル51Fの位置決め精度が低下してしまう。そこで、本実施形態では、バネ部材548を設けたことで、上面ノズル51Fをホーム位置に静止させた際には、常時、バックラッシを(-D1)方向に片寄らせている。これにより、次のような作用効果が得られる。制御ユニット10からのノズル移動指令に応じてノズル移動部54は3本の上面ノズル51Fを一括して方向D1に駆動させる。このノズル移動指令には、ノズル移動距離に関する情報が含まれている。この情報に基づき上面ノズル51Fが径方向D1に指定されたノズル移動距離だけ移動されると、上面ノズル51Fがベベル処理位置に正確に位置決めされる。
【0061】
ベベル処理位置に位置決めた上面ノズル51Fの吐出口511は基板Wの上面Wfの周縁部に向いている。そして、制御ユニット10からの供給指令に応じて処理液供給部52が3種類の処理液のうち供給指令に対応する処理液を当該処理液用の上面ノズル51Fに供給すると、上面ノズル51Fから処理液が基板Wの端面から予め設定された位置に供給される。
【0062】
また、ノズル移動部54の構成部品の一部に対し、雰囲気分離機構6の下密閉カップ部材61が着脱自在に固定される。つまり、ベベル処理を実行する際には、上面ノズル51Fおよびノズルホルダ53は、ノズル移動部54を介して下密閉カップ部材61と一体化されており、昇降機構7によって下密閉カップ部材61とともに鉛直方向Zに昇降される。一方、キャリブレーション処理を実行する際には、下密閉カップ部材61は取り外され、上面ノズル51Fおよびノズルホルダ53はノズル移動部54により径方向D1に往復移動されるとともに昇降機構7により鉛直方向Zに昇降される。
【0063】
本実施形態では、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて処理液を吐出するために、下面ノズル51Bおよびノズル支持部57がスピンチャック21に保持された基板Wの下方に設けられている。ノズル支持部57は、鉛直方向に延設された薄肉の円筒部位571と、円筒部位571の上端部において径方向外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部位572とを有している。円筒部位571は、円環部材27aと下カップ32との間に形成されたエアギャップに遊挿自在な形状を有している。そして、図2に示すように、円筒部位571がエアギャップに遊挿されるとともにフランジ部位572がスピンチャック21に保持された基板Wと下カップ32との間に位置するように、ノズル支持部57は固定配置される。フランジ部位572の上面周縁部に対し、3つの下面ノズル51Bが取り付けられている。各下面ノズル51Bは、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて開口した吐出口(図示省略)を有しており、配管58を介して処理液供給部52から供給される処理液を吐出可能となっている。
【0064】
これら上面ノズル51Fおよび下面ノズル51Bから吐出される処理液により、基板Wの周縁部に対するベベル処理が実行される。また、基板Wの下面側では、周縁部Wsの近傍までフランジ部位572が延設される。このため、配管28を介して下面側に供給された窒素ガスが、フランジ部位572に沿って捕集空間SPcに流れる。その結果、捕集空間SPcから液滴が基板Wに逆流するのを効果的に抑制する。
【0065】
雰囲気分離機構6は、下密閉カップ部材61と、上密閉カップ部材62とを有している。下密閉カップ部材61および上密閉カップ部材62はともに上下に開口した筒形状を有している。そして、それらの内径は回転カップ部31の外径よりも大きく、雰囲気分離機構6は、スピンチャック21、スピンチャック21に保持された基板W、回転カップ部31および上面保護加熱機構4を上方からすっぽりと囲むように配置される、より詳しくは、図2に示すように、上密閉カップ部材62は、その上方開口が天井壁11fの開口11f1を下方から覆うように、パンチングプレート14の直下位置に固定配置される。このため、チャンバ11内に導入された清浄空気のダウンフローは、上密閉カップ部材62の内部を通過するものと、上密閉カップ部材62の外側を通過するものとに分けられる。
【0066】
また、上密閉カップ部材62の下端部は、内側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部621を有している。このフランジ部621の上面にオーリング63が取り付けられている。上密閉カップ部材62の内側において、下密閉カップ部材61が鉛直方向に移動自在に配置される。
【0067】
下密閉カップ部材61の上端部は、外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部611を有している。このフランジ部611は、鉛直上方からの平面視で、フランジ部621と重なり合っている。このため、下密閉カップ部材61が下降すると、図4中の部分拡大図に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部611がオーリング63を介して上密閉カップ部材62のフランジ部621で係止される。これにより、下密閉カップ部材61は下限位置に位置決めされる。この下限位置では、鉛直方向において上密閉カップ部材62と下密閉カップ部材61とが繋がり、上密閉カップ部材62の内部に導入されたダウンフローがスピンチャック21に保持された基板Wに向けて案内される。
【0068】
下密閉カップ部材61の下端部は、外側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部612を有している。このフランジ部612は、鉛直上方からの平面視で、固定カップ部34の上端部(液受け部位341の上端部)と重なり合っている。したがって、上記下限位置では、図3中の部分拡大図に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部612がオーリング64を介して固定カップ部34で係止される。これにより、鉛直方向において下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間12aが形成される。この密閉空間12a内において、基板Wに対するベベル処理が実行可能となっている。つまり、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされることで、密閉空間12aが密閉空間12aの外側空間12bから分離される(雰囲気分離)。したがって、外側雰囲気の影響を受けることなく、ベベル処理を安定して行うことができる。また、ベベル処理を行うために処理液を用いるが、処理液が密閉空間12aから外側空間12bに漏れるのを確実に防止することができる。よって、外側空間12bに配置する部品の選定・設計の自由度が高くなる。
【0069】
下密閉カップ部材61は鉛直上方にも移動可能に構成される。また、鉛直方向における下密閉カップ部材61の中間部には、上記したように、ノズル移動部54のヘッド支持部材547を介してノズルヘッド56(=上面ノズル51F+ノズルホルダ53)が固定される。また、これ以外にも、図2および図4に示すように、梁部材49を介して上面保護加熱機構4が下密閉カップ部材61の中間部に固定される。つまり、図4に示すように、下密閉カップ部材61は、周方向において互いに異なる3箇所で梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部およびヘッド支持部材547とそれぞれ接続される。そして、昇降機構7が梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部およびヘッド支持部材547を昇降させることで、それに伴って下密閉カップ部材61も昇降する。
【0070】
この下密閉カップ部材61の内周面では、図2および図4に示すように、内側に向けて突起部613が上カップ33と係合可能な係合部位として複数本(4本)突設される。各突起部613は上カップ33の上円環部位332の下方空間まで延設される。また、各突起部613は、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされた状態で上カップ33の上円環部位332から下方に離れるように取り付けられている。そして、下密閉カップ部材61の上昇によって各突起部613が下方から上円環部位332に係合可能となっている。この係合後においても、下密閉カップ部材61がさらに上昇することで上カップ33を下カップ32から離脱させることが可能となっている。
【0071】
本実施形態では、昇降機構7により下密閉カップ部材61が上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56とともに上昇し始めた後で、上カップ33も一緒に上昇する。これによって、上カップ33、上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56がスピンチャック21から上方に離れる。下密閉カップ部材61の退避位置への移動によって、基板搬送ロボット111のハンドがスピンチャック21にアクセスするための搬送空間が形成される。そして、当該搬送空間を介してスピンチャック21への基板Wのローディングおよびスピンチャック21からの基板Wのアンローディングが実行可能となっている。このように、本実施形態では、昇降機構7による下密閉カップ部材61の最小限の上昇によってスピンチャック21に対する基板Wのアクセスを行うことが可能となっている。
【0072】
昇降機構7は2つの昇降駆動部71、72を有している。昇降駆動部71では、第1昇降モータ(図示省略)がベース部材17の第1昇降取付部位173(図3)に取り付けられている。第1昇降モータは、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生する。この第1昇降モータに対し、2つの昇降部712、713が連結される。昇降部712、713は、第1昇降モータから上記回転力を同時に受ける。そして、昇降部712は、第1昇降モータの回転量に応じて梁部材49の一方端部を支持する支持部材491を鉛直方向Zに昇降させる。また、昇降部713は、第1昇降モータの回転量に応じてノズルヘッド56を支持するヘッド支持部材547を鉛直方向Zに昇降させる。
【0073】
昇降駆動部72では、第2昇降モータ(図示省略)がベース部材17の第2昇降取付部位174(図3)に取り付けられている。第2昇降モータに対し、昇降部722が連結される。第2昇降モータは、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生し、昇降部722に与える。昇降部722は、第2昇降モータの回転量に応じて梁部材49の他方端部を支持する支持部材492を鉛直方向に昇降させる。
【0074】
昇降駆動部71、72は、下密閉カップ部材61の側面に対し、その周方向において互いに異なる3箇所にそれぞれ固定される支持部材491、492、54を同期して鉛直方向に移動させる。したがって、上面保護加熱機構4、ノズルヘッド56および下密閉カップ部材61の昇降を安定して行うことができる。また、下密閉カップ部材61の昇降に伴って上カップ33も安定して昇降させることができる。
【0075】
図11はセンタリング機構の構成および動作を模式的に示す図である。センタリング機構8は、ポンプ26による吸引を停止している間(つまりスピンベース21の上面上で基板Wが水平移動可能となっている間)に、センタリング処理を実行する。このセンタリング処理により上記偏心が解消され、基板Wの中心が回転軸AXと一致する。センタリング機構8は、図4および図11に示すように、第1仮想水平線VL1に対して40゜程度傾いた当接移動方向D2において、回転軸AXに対し、搬送用開口11b1側(図11の右手側)に配置されたシングル当接部81と、メンテナンス用開口11d1側(図11の左手側)に配置されたマルチ当接部82と、シングル当接部81およびマルチ当接部82を当接移動方向D2に移動させるセンタリング駆動部83と、を有している。
【0076】
シングル当接部81は、当接移動方向D2と平行に延設された形状を有し、スピンチャック21側の先端部でスピンチャック21上の基板Wの端面と当接可能に仕上げられている。一方、マルチ当接部82は、鉛直上方からの平面視で略Y字形状を有し、スピンチャック21側の二股部位の各先端部でスピンチャック21上の基板Wの端面と当接可能に仕上げられている。これらシングル当接部81およびマルチ当接部82は、当接移動方向D2に移動自在となっている。
【0077】
センタリング駆動部83は、シングル当接部81を当接移動方向D2に移動させるためのシングル移動部831と、マルチ当接部82を当接移動方向D2に移動させるためのマルチ移動部832と、を有している。シングル移動部831はベース部材17のシングル移動取付部位175(図3)に取り付けられ、マルチ移動部832はベース部材17のマルチ移動取付部位176(図3)に取り付けられている。基板Wのセンタリング処理を実行しない間、センタリング駆動部83は、図4および図11の(a)欄に示すように、シングル当接部81およびマルチ当接部82をスピンチャック21から離間して位置決めする。このため、シングル当接部81およびマルチ当接部82は搬送経路TPから離れ、チャンバ11に対して搬入出される基板Wに対してシングル当接部81およびマルチ当接部82が干渉するのを効果的に防止することができる。
【0078】
一方、基板Wのセンタリング処理を実行する際には、制御ユニット10からのセンタリング指令に応じて、シングル移動部831がシングル当接部81を回転軸AXに向けて移動させるとともに、マルチ移動部832がマルチ当接部82を回転軸AXに向けて移動させる。これにより、図11の(b)欄に示すように、基板Wの中心が回転軸AXと一致する。
【0079】
図12は基板観察機構の観察ヘッドを示す斜視図である。図13図12に示す観察ヘッドの分解組立斜視図である。基板観察機構9は、光源部91と、撮像部92と、観察ヘッド93と、観察ヘッド駆動部94と、有している。光源部91および撮像部92は、ベース部材17の光学部品取付位置177(図3)において並設される。光源部91は、制御ユニット10からの照明指令に応じて照明光を観察位置に向けて照射する。この観察位置は、基板Wの周縁部Wsに対応する位置であり、図12において観察ヘッド93が位置決めされる位置に相当する。
【0080】
観察位置と、観察位置から基板Wの径方向外側に離れた離間位置との間を、観察ヘッド93は往復移動可能となっている。当該観察ヘッド93に対し、観察ヘッド駆動部94が接続される。観察ヘッド駆動部94はベース部材17のヘッド駆動位置178(図3)でベース部材17に取り付けられている。そして、制御ユニット10からのヘッド移動指令に応じて観察ヘッド駆動部94は、第1仮想水平線VL1に対して10゜程度傾いたヘッド移動方向D3に観察ヘッド93を往復移動させる。より具体的には、基板Wの観察処理を実行しない間、観察ヘッド駆動部94は観察ヘッド93を退避位置に移動して位置決めしている。このため、観察ヘッド93は搬送経路TPから離れ、チャンバ11に対して搬入出される基板Wに対して観察ヘッド93が干渉するのを効果的に防止することができる。一方、基板Wの観察処理を実行する際には、制御ユニット10からの基板観察指令に応じて、観察ヘッド駆動部94が観察ヘッド93を観察位置に移動させる。
【0081】
この観察ヘッド93は、図12および図13に示すように、5つの拡散面931a~931dを有する拡散照明部931と、3枚のミラー部材932a~932cで構成されるガイド部932と、保持部933と、を有している。
【0082】
保持部933は、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン:polyetheretherketone)で構成されており、図12および図13に示すように、基板W側の端部に切欠部9331が設けられている。切欠部9331の鉛直方向サイズは基板Wの厚みよりも幅広であり、図12に示すように、観察ヘッド93が観察位置に位置決めされると、切欠部9331が基板Wの周縁部Wsおよび周縁部Wsからさらに径方向内側に入った領域まで入り込む。また、保持部933は拡散照明部931と相互に嵌合可能な形状に仕上げられている。しかも、保持部933は、ミラー部材932a~932cを裏面側からそれぞれ支持するミラー支持部933a~933cを有している。このため、拡散照明部931と保持部933とは、相互に嵌合されることで、ミラー部材932a~932cを保持しながら一体化される。
【0083】
拡散照明部931は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:polytetrafluoroethylene)で構成される。拡散照明部931は、図12および図13に示すように、水平方向に延設されたプレート形状を有しており、保持部933と同様に、基板W側の端部に切欠部9311が形成される。この切欠部9311は、図12に示すように、基板Wの周方向から見て逆C字形状を有している。また、拡散照明部931では、切欠部9311に沿って傾斜面が設けられている。傾斜面は切欠部9311に近づくにしたがって照明光が進む方向(方向D3と直交する水平方向)に傾斜するように仕上げられたテーパー面である。特に、このテーパー面のうち切欠部9311の鉛直上方領域、側方領域および鉛直下方領域がそれぞれ拡散面931a~931cとして機能する。また、切欠部9311において、ミラー部材932a、932cの回転軸AX側に位置する領域がそれぞれ拡散面931d、931eとして機能する。
【0084】
このように構成された観察ヘッド93が観察位置に位置決めされると、拡散面931a~931eが光源部91による照明領域(図12の太破線領域)に位置する。この位置決め状態で制御ユニット10からの照明指令に光源部91が点灯すると、照明光が照明領域に照射される。このとき、拡散面931a~931eが照明光を拡散反射させ、基板Wの周縁部Wsおよびその隣接領域を種々の方向から照明する。ここで、照明光のうち周縁部Wsを含む基板Wの上面に向う上面拡散光の一部は周縁部Wsの上面および周縁部Wsの隣接領域(周縁部Wsに対して径方向内側に隣接する上面領域)で反射される。この反射光はミラー部材932aの反射面で反射された後で、撮像部92に導光される。また、照明光のうち周縁部Wsを含む基板Wの下面に向う下面拡散光の一部は周縁部Wsの下面および周縁部Wsの隣接領域(周縁部Wsに対して径方向内側に隣接する下面領域)で反射される。この反射光はミラー部材932cの反射面で反射された後で、撮像部92に導光される。照明光のうち基板Wの側面(端面)Wseに向う側面拡散光の一部は基板Wの側面Wseで反射される。この反射光はミラー部材62bの反射面で反射された後で、撮像部92に導光される。
【0085】
撮像部92は、物体側テレセントリックレンズで構成される観察レンズ系と、CMOSカメラとを有している。したがって、観察ヘッド93から導光される反射光のうち観察レンズ系の光軸に平行な光線のみがCMOSカメラのセンサ面に入射され、基板Wの周縁部Wsおよび隣接領域の像がセンサ面上に結像される。こうして撮像部92は基板Wの周縁部Wsおよび隣接領域を撮像し、基板Wの上面画像、側面画像および下面画像を取得する。そして、その画像を示す画像データを撮像部92は制御ユニット10に送信する。
【0086】
制御ユニット10は、演算処理部10A、記憶部10B、読取部10C、画像処理部10D、駆動制御部10E、通信部10Fおよび排気制御部10Gを有している。記憶部10Bは、ハードディスクドライブなどで構成されており、上記基板処理装置1によりベベル処理を実行するためのプログラムを記憶している。当該プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能な記録媒体RM(例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等)に記憶されており、読取部10Cにより記録媒体RMから読み出され、記憶部10Bに保存される。また、当該プログラムの提供は、記録媒体RMに限定されるものではなく、例えば当該プログラムが電気通信回線を介して提供されるように構成してもよい。画像処理部10Dは、基板観察機構9により撮像された画像に種々の処理を施す。駆動制御部10Eは、基板処理装置1の各駆動部を制御する。通信部10Fは、基板処理システム100の各部を統合して制御する制御部などと通信を行う。排気制御部10Gは排気部38を制御する。
【0087】
また、制御ユニット10には、各種情報を表示する表示部10H(例えばディスプレイなど)や操作者からの入力を受け付ける入力部10J(例えば、キーボードおよびマウスなど)が接続される。
【0088】
演算処理部10Aは、CPU(= Central Processing Unit)やRAM(=Random
Access Memory)等を有するコンピュータにより構成されており、記憶部10Bに記憶されるプログラムにしたがって基板処理装置1の各部を以下のように制御し、ベベル処理を実行する。以下、図14を参照しつつ基板処理装置1によるベベル処理について説明する。
【0089】
図14図2に示す基板処理装置により基板処理動作の一例として実行されるベベル処理を示すフローチャートである。基板処理装置1により基板Wにベベル処理を施す際には、演算処理部10Aは、昇降駆動部71、72により下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42を一体的に上昇させる。この下密閉カップ部材61の上昇途中で、突起部613が上カップ33の上円環部位332と係合し、それ以降、下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42と一緒に上カップ33が上昇して退避位置に位置決めされる。これにより、スピンチャック21の上方に基板搬送ロボット111のハンド(図示省略)が進入するのに十分な搬送空間が形成される。また、演算処理部10Aは、センタリング駆動部83によりシングル移動部831およびマルチ当接部82をスピンチャック21から離れた退避位置に移動させるとともに、観察ヘッド駆動部94により観察ヘッド93をスピンチャック21から離れた待機位置に移動させる。これにより、図4に示すように、スピンチャック21の周囲に配置される構成要素のうちノズルヘッド56、光源部91、撮像部92、モータ23およびマルチ当接部82は、第1仮想水平線VL1よりもメンテナンス用開口11d1側(同図の下側)に位置する。また、シングル移動部831および観察ヘッド93は、第1仮想水平線VL1よりも搬送用開口11b1側に位置しているが、搬送経路TPに沿った基板Wの移動領域から外れている。本実施形態では、このようなレイアウト構造を採用しているため、チャンバ11に対する基板Wの搬入出時に、スピンチャック21の周囲に配置される構成要素が基板Wと干渉するのを効果的に防止することができる。
【0090】
このように搬送空間の形成完了と基板Wとの干渉防止とを確認すると、演算処理部10Aは、通信部10Fを介して基板搬送ロボット111に基板Wのローディングリスエストを行い、図4に示す搬送経路TPに沿って未処理の基板Wが基板処理装置1に搬入されてスピンチャック21の上面に載置されるのを待つ。そして、スピンチャック21上に基板Wが載置される(ステップS1)。なお、この時点では、ポンプ26は停止しており、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となっている。
【0091】
基板Wのローディングが完了すると、基板搬送ロボット111が搬送経路TPに沿って基板処理装置1から退避する。それに続いて、演算処理部10Aは、シングル移動部831およびマルチ当接部82をスピンチャック21上の基板Wに近接するように、センタリング駆動部83を制御する。これによりスピンチャック21に対する基板Wの偏心が解消され、基板Wの中心がスピンチャック21の中心と一致する(ステップS2)。こうしてセンタリング処理が完了すると、演算処理部10Aは、シングル移動部831およびマルチ当接部82が基板Wから離間するようにセンタリング駆動部83を制御するとともに、ポンプ26を作動させて負圧をスピンチャック21に付与する。これにより、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。
【0092】
次に、演算処理部10Aは、昇降駆動部71、72に下降指令を与える。これに応じて、昇降駆動部71、72が下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42を一体的に下降させる。この下降途中で、下密閉カップ部材61の突起部613により下方から支持される上カップ33が下カップ32に連結される。これによって、回転カップ部31(=上カップ33と下カップ32の連結体)が形成される。
【0093】
回転カップ部31の形成後に、下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的にさらに下降し、下密閉カップ部材61のフランジ部611、612がそれぞれ上密閉カップ部材62のフランジ部621および固定カップ部34で係止される。これにより、下密閉カップ部材61が下限位置(図2の位置)に位置決めされる(ステップS3)。上記係止後においては、図4の部分拡大図に示すように、上密閉カップ部材62のフランジ部621とおよび下密閉カップ部材61のフランジ部611がオーリング63を介して密着されるとともに、下密閉カップ部材61のフランジ部612および固定カップ部34がオーリング63を介して密着される。その結果、図2に示すように、鉛直方向において下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間12aが形成され、密閉空間12aが外側雰囲気(外側空間12b)から分離される(雰囲気分離)。
【0094】
この雰囲気分離状態で、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆っている。また、上面ノズル51Fが、円板部42の切欠部44内で吐出口511を基板Wの上面Wfの周縁部に向けた姿勢で位置決めされる。こうして基板Wへの処理液の供給準備が完了すると、演算処理部10Aは、モータ23に回転指令を与え、基板Wを保持するスピンチャック21および回転カップ部31の回転を開始する(ステップS4)。基板Wおよび回転カップ部31の回転速度は、例えば1800回転/分に設定される。また、演算処理部10Aはヒータ駆動部422を駆動制御してヒータ421を所望温度、例えば185℃まで昇温させる。
【0095】
次に、演算処理部10Aは、加熱ガス供給部47に加熱ガス供給指令を与える。これにより、ヒータ471により加熱された窒素ガス、つまり加熱ガスが加熱ガス供給部47から中央ノズル45に向けて圧送される(ステップS5)。この加熱ガスは、配管46を通過する間、リボンヒータ48により加熱される。これにより、加熱ガスは、配管46を介したガス供給中における温度低下を防止しながら、中央ノズル45から基板Wと円板部42とで挟まれた空間SPa(図9)に向けて吐出される。これにより、基板Wの上面Wfが全面的に加熱される。また、基板Wの加熱はヒータ421によっても行われる。このため、時間の経過によって基板Wの周縁部Wsの温度が上昇し、ベベル処理に適した温度、例えば90℃に達する。また、周縁部Ws以外の温度も、ほぼ等しい温度にまで上昇する。すなわち、本実施形態では、基板Wの上面Wfの面内温度は、ほぼ均一である。したがって、基板Wが反るのを効果的に抑制することができる。
【0096】
これに続いて、演算処理部10Aは、処理液供給部52を制御して上面ノズル51Fおよび下面ノズル51Bに処理液を供給する。つまり、上面ノズル51Fから基板Wの上面周縁部に当たるように処理液の液流が吐出されるとともに、下面ノズル51Bから基板Wの下面周縁部に当たるように処理液の液流が吐出される。これによって、基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が実行される(ステップS6)。そして、演算処理部10Aは、基板Wのベベル処理に要する処理時間の経過などを検出すると、処理液供給部52に供給停止指令を与え、処理液の吐出を停止する。
【0097】
それに続いて、演算処理部10Aは、加熱ガス供給部47に供給停止指令を与え、加熱ガス供給部47から中央ノズル45に向けて窒素ガスの供給を停止する(ステップS7)。また、演算処理部10Aは、モータ23に回転停止指令を与え、スピンチャック21および回転カップ部31の回転を停止させる(ステップS8)。
【0098】
次のステップS9で、演算処理部10Aは基板Wの周縁部Wsを観察してベベル処理の結果を検査する。より具体的には、演算処理部10Aは、基板Wのローディング時と同様にして、上カップ33を退避位置に位置決めし、搬送空間を形成する。そして、演算処理部10Aは、観察ヘッド駆動部94を制御して観察ヘッド93を基板Wに近接させる。そして、演算処理部10Aは、光源部91を点灯させることで観察ヘッド93を介して基板Wの周縁部Wsを照明する。また、周縁部Wsおよび隣接領域で反射された反射光を撮像部92が受光して周縁部Wsおよび隣接領域を撮像する。つまり、基板Wが回転軸AXまわりに回転している間に撮像部92が取得した複数の周縁部Wsの像から基板Wの回転方向に沿った周縁部Wsの周縁部画像を取得する。すると、演算処理部10Aは、観察ヘッド駆動部94を制御して観察ヘッド93を基板Wから退避させる。これと並行して、演算処理部10Aは、撮像された周縁部Wsおよび隣接領域の画像、つまり周縁部画像に基づき、演算処理部10Aは、ベベル処理が良好に行われたか否かを検査する。なお、本実施形態では、その検査の一例として、周縁部画像から基板Wの端面から基板Wの中央部に向かって処理液により処理された処理幅を検査している(処理後検査)。
【0099】
検査後、演算処理部10Aは、通信部10Fを介して基板搬送ロボット111に基板Wのアンローディングリスエストを行い、処理済の基板Wが基板処理装置1から搬出される(ステップS10)。なお、これら一連の工程は繰り返して実行される。
【0100】
上記した実施形態では、モータ取付部位171およびスピンチャック取付部位172がそれぞれ本発明の「第1保持部位」および「第2保持部位」の一例に相当している。
【0101】
以上のように、本実施形態では、装置各部が上記のように配置されていることから次のような作用効果が得られる。
【0102】
(A)従来の基板処理装置では、基板保持部として機能するスピンチャック21に保持された基板Wにアクセスして基板処理を実行するため、スピンチャック21がチャンバ11の中心11gまたはその近傍に配置することが一般的であった。これに対し、本実施形態においては、図4に示すように、チャンバ11の内部空間12において、基板保持部2Aが内部空間12の中心11gよりも搬送用開口側にオフセットした処理位置に配置される。このオフセット(距離Lof)分だけ、搬送経路TPに沿った基板Wの搬送距離および搬送時間が短縮され、省電力化される。
【0103】
(B)チャンバ11の内部空間12を広げずとも、上記オフセット分だけスピンチャック21の反搬送用開口側の領域、つまり第1仮想水平線VL1を挟んで搬送用開口11b1の反対側の領域が広がり、処理機構5の配置について設計自由度が高くなる。ただし、図10に示すように、ノズル移動部54により処理液吐出ノズル51Bを基板Wの径方向D1に移動させるように構成した基板処理装置においては、処理液吐出ノズル51Bの移動方向にノズル移動部54はある程度のストロークを要する。したがって、例えば処理液吐出ノズル51Bの移動方向を搬送経路TPと同じ方向に設定すると、反搬送用開口側の領域が広がっているにもかかわらず、処理機構、特にノズル移動部54が内部空間12に収まらない場合が生じ得る。しかしながら、本実施形態では、上記のように、ノズル移動部54が基板Wの径方向のうち第1仮想水平線VL1に対して傾斜した径方向D1に処理液吐出ノズル51Fを移動させるように構成している。これによって、チャンバ11内でのスピンチャック21、ノズルヘッドおよびノズル移動部54の配置関係が最適化され、徒に内部空間12が大きなチャンバ11を用いることなく、ベベル処理を良好に実行することができる。その結果、排気部38による内部空間12の排気量を抑制することができ、環境負荷および消費電力の低減を図ることができる。
【0104】
(C)上記実施形態では、図3および図4に示すように、基板Wを加熱するための加熱ガスを得るためのヒータ471がチャンバ11の外壁(側壁11e)に取り付けられている。つまり、ヒータ471がチャンバ11の外部に設けられている。したがって、ヒータ471で発生した熱がチャンバ11の内部空間12に配置される各種機構に及ぶのを防止することができる。特に、光源部91および撮像部92は、熱の影響を受け易いため、本実施形態では、ヒータ471の取付部位から離れた離間位置に光源部91および撮像部92が配置されている。したがって、上記レイアウト構造を採用することで、光源部91および撮像部92はヒータ471で発生した熱の影響を受け難くなる。その結果、温度変化の影響による観察精度の低下を防止し、基板の周縁部を高精度で観察することができる。また、ヒータ471からの熱影響に関しては、処理液吐出ノズル51F、51Bも同様であることからヒータ471の取付部位から離れた離間位置に処理液吐出ノズル51F、51Bが配置されている。より詳しくは、光源部91、撮像部92、処理液吐出ノズル51F、51Bは、図4に示すように、チャンバ11の上方からの平面視で、第2仮想水平線VL2を挟んでヒータ471の反対側に配置されている。このような配置構造を採用することで、ヒータ471から光源部91、撮像部92、処理液吐出ノズル51F、51Bまでの距離が長くなり、ヒータ471からの熱影響を確実に抑えることができる。
【0105】
(D)また、ヒータ471よりも少ないものの、加熱ガス(ヒータ471により加熱された不活性ガス)を中央ノズル45に送り込むための配管46および配管46の周囲に配置されるリボンヒータ48からも熱が放出される。そこで、本実施形態では、配管46およびリボンヒータ48は、チャンバ11の上方からの平面視で、第2仮想水平線VL2を挟んでヒータ471からの熱影響を受け易い構成(光源部91、撮像部92、処理液吐出ノズル51F、51Bの反対側で、かつ第1仮想水平線VL1を挟んで搬送用開口11b1の反対側に配設されている。このため、配管46などから放出される熱の影響が上記構成に及ぶのを抑制している。
【0106】
(E)上記実施形態では、2つのプーリ241、242と無端ベルト243とで動力伝達部24が構成されており、当該動力伝達部24により基板保持部2Aとモータ23とが連結されている。このため、動力伝達部24がモータで発生する駆動力を基板保持部2Aに伝達する。したがって、基板処理装置1の稼働に伴いモータ23や動力伝達部24に不具合、例えば無端ベルト243の伸びや破損などが発生すると、適宜、動力伝達部24の調整や動力伝達部24を構成する部品の交換などのメンテナンス作業が必要となる。このような場合、オペレータは、蓋部材19をチャンバ11から取り外してメンテナンス用開口11d1を開放することで、メンテナンス用開口11d1を介して動力伝達部24およびモータ23を外部に露出させることができる。その上で、オペレータはメンテナンス用開口11d1を介してメンテナンス作業を行うことができる。その結果、メンテナンス作業の効率を向上させることができる。
【0107】
(F)上記したように基板保持部2Aが内部空間12の中心11gよりも搬送用開口側にオフセットした処理位置に配置されることで、第1仮想水平線VL1を挟んで搬送用開口11b1の反対側の領域、つまりメンテナンス用開口11d1に面する領域が広がっている。このため、メンテナンス用開口11d1を介したメンテナンス作業がオフセットを伴わない場合に比べて容易となる。この点については、次の光源部91および撮像部92に対するメンテナンス作業について同様である。
【0108】
(G)図4に示すように、基板観察機構9の光源部91および撮像部92も、メンテナンス用開口11d1を臨むように配置されている、このため、オペレータはメンテナンス用開口11d1を介して光源部91および撮像部92にもアクセス可能となっている。したがって、光源部91および撮像部92に対するメンテナンス作業についても、容易に実行可能となっている。
【0109】
(H)モータ23は、図5に示すように、その回転シャフト231をチャンバ11の底壁11aから上方に離間させつつ底壁11a(図3)に向けてベース部材17のモータ取付部位171(図3)の下面から垂下させた姿勢でベース部材17に保持される。また、基板保持部2Aの下方端部は、底壁11a(図3)から上方に離間させつつ底壁11aに向けてベース部材17のスピンチャック取付部位172(図3)の下面から垂下させた姿勢でベース部材17に保持される。しかも、動力伝達部24(=第1プーリ241+第2プーリ242+無端ベルト243)はベース部材17の下方に配置される。このような配置を採用することで、他の機構との干渉を考慮することなく、メンテナンス作業を効率的に行うことが可能となっている。また、基板保持部2Aの下方端部およびモータ23の回転シャフト231と、底壁11aとの間に形成される隙間を利用して無端ベルト243の交換が可能となる。つまり、第1プーリ241および第2プーリ242を取り外すことなく、無端ベルト243を交換することができる。
【0110】
(I)また、基板保持部2Aの中央部に配管25、28などを接続するためのポート(図示省略)を設けるなどの理由から基板保持部2Aの下方端部が鉛直下方に延設されることがある。この場合、基板保持部2Aの下方端部と、底壁11aとの間に形成される隙間SPxが狭くなってしまう。そこで、例えば図15に示すように、チャンバ11の底壁11aのうち基板保持部2Aの下方端部に対向する領域に座グリ部11a1を設け、上記隙間SPxを広げるように構成してもよい。
【0111】
(J)ベース部材17がチャンバ11の底壁11aから上方に離間した離間位置で配置されており、チャンバ11の内部空間12内において、いわゆる高床構造が形成されている。そして、当該ベース部材17の上面が基板処理部SPを設置するための載置面として仕上げられている。このような高床構造のレイアウトを採用することで、仮に処理液の漏液が発生してチャンバ11の底壁11aに貯まったとしても、その処理液が基板処理部SPに接液するのを確実に防止することができる。したがって、ベース部材17を樹脂材料で構成する必然性はなく、底壁11aよりも高い剛性を有する材料で構成することで、ベース部材17の載置面を基準ベースとし、当該載置面上に基板処理部SPを設けることができる。したがって、処理部の耐薬品性を考慮して底壁を樹脂材料で構成した従来装置よりも優れたメンテナンス性で基板処理部SPを設けることができる。また、鉛直方向Zにおいて底壁11aよりも高い位置に基板処理部SPが設けられることで、処理液による悪影響を未然に防止するためのカバーなどの追加構成を基板処理部SPに取り付けることは不要となる。その結果、薬液を処理液として用いて基板Wを処理する基板処理部SPがチャンバ11の内部空間12に配置されているにも関わらず、処理液の漏液による悪影響を回避しつつ、低コストおよび良好なメンテナンス性で基板に対する基板処理を行うことができる。
【0112】
ここで、例えば皿状の容器が、底壁11aに向かって流動してくる処理液、つまり漏液を回収する回収部材として、底壁11aの上面に配置されてもよい。これによって、処理液を確実に回収し、チャンバ11から排除することができる。また、回収した処理液を必要に応じて再利用してもよく、これにより処理液の消費量を抑えることができ、環境負荷の低減を図ることができる。
【0113】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、回転カップ部31を有する基板処理装置1に対して本発明を適用している。また、上記実施形態では、上面保護加熱機構4、雰囲気分離機構6、センタリング機構8および基板観察機構9を有する基板処理装置1に対して本発明を適用している。しかしながら、例えば特許文献1に記載されているように、これらの構成を有さない基板処理装置、つまりチャンバ11の内部空間12で基板Wの周縁部に処理液を供給して上記周縁部を処理する基板処理装置に対して本発明を適用することができる。
【0114】
また、「基板処理」の一例としてベベル処理を実行する基板処理装置に対して本発明を適用しているが、回転する基板に処理液を供給することで基板に対して基板処理を施す基板処理装置全般に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
この発明は、チャンバの内部空間で基板に処理液を供給して上記基板を処理する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1…基板処理装置
2A…基板保持部
2B…回転機構
5…処理機構
11…チャンバ
11a…底壁
11b~11e…側壁
11f…天井壁
12…内部空間
21…スピンチャック
23…モータ
24…動力伝達部
171…モータ取付部位(第1保持部位)
172…スピンチャック取付部位(第2保持部位)
231…回転シャフト
241…第1プーリ
242…第2プーリ
243…無端ベルト
AX…回転軸
SP…基板処理部
Z…鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図15