(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】プロセスカートリッジ
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20241017BHJP
G03G 5/147 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G03G9/097 371
G03G9/097 374
G03G5/147 503
(21)【出願番号】P 2022140110
(22)【出願日】2022-09-02
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021166516
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 達也
(72)【発明者】
【氏名】見目 敬
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 梢
(72)【発明者】
【氏名】井上 洸紀
(72)【発明者】
【氏名】関戸 邦彦
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-235896(JP,A)
【文献】特開2007-241091(JP,A)
【文献】特開2009-229495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
該プロセスカートリッジは、
電子写真感光体と、
トナーと、
該トナーを収容し該電子写真感光体表面に該トナーを供給する現像手段と、
を有し、
該トナーはトナー粒子と外添剤Aとを有し、
該外添剤Aは、以下の規定(i)~(iii)
(i)長径が100nm以上3000nm以下、
(ii)アスペクト比が5.0以上、
(iii)比抵抗が1×10
5Ω・cm以上1×10
8Ω・cm以下、
を満たし
該外添剤Aが表面に存在するトナー粒子の前記トナー中のトナー粒子に占める割合が30個数%以上であり、
該電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された感光層と該電子写真感光体の表面に形成された表面保護層とを有し、
該表面保護層は、導電性粒子を含有し、
該表面保護層における該導電性粒子の含有量が5体積%以上70体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が1.0×10
9Ω・cm以上1.0×10
14Ω・cm以下である、
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項2】
前記外添剤Aは、酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項3】
前記外添剤Aは、ルチル型酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項4】
前記トナー粒子はホウ酸を含有することを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項5】
前記導電性粒子が酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項6】
前記導電性粒子がニオブ原子を含有した酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項7】
前記ニオブ原子含有酸化チタン粒子は、粒子中心部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率に対して、粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率が、2.0倍以上である請求項6に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記ニオブ原子を含有した酸化チタン粒子が、2.6質量%以上10.0質量%以下のニオブ原子を含有する請求項6に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
前記導電性粒子が前記表面保護層に占める割合が40体積%以上70体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が1.0×10
10Ω・cm以上1.0×10
14Ω・cm以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機及びプリンターに使用されるプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真画像形成装置のプロセススピードのより一層の高速化や長寿命化が広く求められている。
より一層高速化した電子写真画像形成装置では、電子写真プロセスにおける帯電や現像など各工程の時間が短くなる。そのため、電子写真画像の品質を維持するために、トナーを瞬時に帯電させ、かつ、長期にわたり、いかなる使用環境においてもトナーの帯電を安定に保つ技術の開発が必要である。
トナーを瞬時に帯電させるために、特許文献1のように、ある一定の抵抗値を持つ外添剤をトナーに外添する手法がある。
また、特許文献2のように、電子写真感光体の保護層にニオブ原子含有酸化チタン粒子を含有することで、安定な電気特性を維持する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-125302号公報
【文献】特開2009-229495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、トナーの帯電立ち上がり性に一定の効果があることは認められたが、より高速化した電子写真画像形成装置では帯電立ち上がり性は不十分であり、装置立ち上げ直後のベタ画像の濃度が良好ではないことが分かった。また、より高速化した電子写真画像形成装置では、長期使用されたプロセスカートリッジにおいて、ハーフトーン画像の濃度均一性が十分ではないことが確認された。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
【0005】
ある一定の抵抗値を持つ外添剤を外添されたトナーは、現像剤担持体から電子写真感光体に現像されるニップ前で、ブレードなどで規制され摩擦帯電する。しかし、より高速化された電子写真画像形成装置では、摩擦帯電の時間が十分でなく、トナーの消費が多いベタ画像において、帯電が十分でないためと考える。また、外添剤が小さく、トナーに埋め込まれやすい形状をしており、埋め込まれた部分が局所的にチャージアップするために、長期の使用期間を通じて効果を維持することは難しいためと考える。
【0006】
また、特許文献2では、電子写真画像形成装置の立ち上げ直後の帯電立ち上がり性や長期使用後のハーフトーン画像の濃度均一性の良化は十分ではなかった。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
【0007】
電子写真感光体の表面保護層にニオブ原子含有酸化チタン粒子を含有することで、表面保護層の電荷は変化しにくくなっているが、トナーに電荷を与えるような仕組みはなく、トナーの帯電性を良化させる効果はないためと考える。
【0008】
したがって、本発明の目的は、より高速化された電子写真画像形成装置において、装置の立ち上げ直後の帯電立ち上がり性、及びプロセスカートリッジの使用開始から十分な使用の後までの長期を通じたハーフトーン画像の濃度均一性に優れたプロセスカートリッジを提供することにある。なお、以後、電子写真画像形成装置の立ち上げ直後を「初期」と言う場合がある。また、プロセスカートリッジの十分な使用の後を、「耐久後」と言う場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
電子写真画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
該プロセスカートリッジは、
電子写真感光体と、
トナーと、
該トナーを収容し該電子写真感光体表面に該トナーを供給する現像手段と、
を有し、
該トナーはトナー粒子と外添剤Aとを有し、
該外添剤Aは、以下の規定(i)~(iii)
(i)長径が100nm以上3000nm以下、
(ii)アスペクト比が5.0以上、
(iii)比抵抗が1×105Ω・cm以上1×108Ω・cm以下、
を満たし
該外添剤Aが表面に存在するトナー粒子の前記トナー中のトナー粒子に占める割合が30個数%以上であり、
該電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された感光層と該電子写真感光体の表面に形成された表面保護層とを有し、
該表面保護層は、導電性粒子を含有し、
該表面保護層における該導電性粒子の含有量が5体積%以上70体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である、
ことを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプロセスカートリッジは、電子写真画像形成装置の立ち上げ直後におけるトナーの帯電立ち上がり性に優れ、かつ、プロセスカートリッジの使い始めから耐久後にわたる、長期期間を通じた帯電の安定性に優れている。すなわち、電子写真画像形成装置の立ち上げ直後における良好なベタ画像と、長期期間を通じた、濃度均一性に優れたハーフトーンの両方を実現したプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真画像形成装置の概略構成の一例を示す。
【
図3】本件実施例に用いたニオブ含有酸化チタン粒子の一例のSTEM画像図である。
【
図4】本件実施例に用いたニオブ含有酸化チタン粒子の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0013】
以下、本発明のプロセスカートリッジの構成について説明する。
本発明のプロセスカートリッジは、電子写真画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
該プロセスカートリッジは、
電子写真感光体と、
トナーと、
該トナーを収容し該電子写真感光体表面に該トナーを供給する現像手段と、
を有し、
該トナーはトナー粒子と外添剤Aとを有し、
該外添剤Aは、以下の規定(i)~(iii)
(i)長径が100nm以上3000nm以下、
(ii)アスペクト比が5.0以上、
(iii)比抵抗が1×105Ω・cm以上1×108Ω・cm以下、
を満たし
該外添剤Aが表面に存在するトナー粒子の前記トナー中のトナー粒子に占める割合が30個数%以上であり、
該電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された感光層と該電子写真感光体の表面に形成された表面保護層とを有し、
該表面保護層は、導電性粒子を含有し、
該表面保護層における該導電性粒子の含有量が5体積%以上70体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である。
【0014】
本発明者らは、上記の課題に対して、トナーを現像剤担持体から電子写真感光体に現像するニップに入ると同時に、電子写真感光体からトナーに注入帯電させる手法について検討した。一般的にトナーは現像剤担持体で規制され、摩擦によって帯電される。一方、本発明者らは、摩擦からの帯電に加え、現像ニップに入ると同時に、電子写真感光体からトナーへ電荷を注入することで、高速化された電子写真画像形成装置でも、装置の立ち上げ直後から安定したトナーの帯電性能を示すと考えた。
【0015】
以上の考察を踏まえて本発明者らが検討を重ねた結果、特定の体積抵抗を有し、表面積の大きな異形形状の外添剤Aをトナー粒子の表層に設けることで、外添剤Aを通じて、電子写真感光体からトナーへ電荷が注入されることを見出した。さらに、この電荷注入性は耐久後も維持されるという予想し得ない効果も得られることが分かった。このような構成により、電子写真画像形成装置の立ち上げ直後の帯電立ち上がり性及び長期使用における濃度均一性に優れたプロセスカートリッジを提供することができた。
【0016】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された感光層と表面保護層とをこの順に有する。
【0017】
表面保護層は、導電性粒子を含有しており、該導電性粒子の含有量は、該表面保護層の5体積%以上70体積%以下である。また、表面保護層の体積抵抗率は1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である。なお、この体積抵抗率は、温度23℃湿度50RH%の雰囲気下の測定による。この範囲であることで、表面保護層に多くの導電性粒子を含有しているにも関わらず、体積抵抗率は比較的高く維持しているため、帯電保持性を確保しつつも、導電性粒子を介してトナーに電荷を注入することが可能である。
【0018】
電荷注入性を好適にして、電子写真画像形成装置の立ち上げ直後の濃度や、使用開始から十分な使用の後までの長期にわたりプロセスカートリッジの濃度均一性を良好にするという観点から、表面保護層における導電性粒子の含有割合は20体積%以上70体積%以下であることがより好ましく、さらには40体積%以上70体積%以下であることが好ましい。また、同様の観点で表面保護層の体積抵抗率は、1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であり、1.0×1010Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であることがより好ましい。表面保護層の体積抵抗率は、例えば、導電性粒子の粒子径によって制御することができる。
【0019】
表面保護層が含有する導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物にニオブやリン、アルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしてもよい。
【0020】
本発明の電子写真感光体における前記導電性粒子は、酸化チタン粒子であることが好ましい。酸化チタン粒子は、公知の手法で製造される。例えば、特開平7-242422号公報を参照することができる。
【0021】
導電性粒子の粒子径は、水分吸着量や粒子の分散性の観点から、個数平均粒径で5nm以上300nm以下であることが好ましく、40nm以上300nm以下であることがより好ましく、100nm以上250nm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
導電性粒子として、特に好ましいのは、ニオブを含有し、且つニオブが粒子表面近傍に偏在した構成である酸化チタン粒子である。ニオブが表面近傍に偏在することで、電荷を効率的に授受できるためである。より具体的には、粒子の中心での“ニオブ原子濃度/チタン原子濃度”で算出される濃度比率に対して、粒子の表面から最大径の5%内部における“ニオブ原子濃度/チタン原子濃度”で算出される濃度比率が、2.0倍以上となる酸化チタン粒子である。表面から最大一次粒子径の5%内部における濃度比率を、中心部の濃度比率に対して2.0倍以上とすることで、電荷が保護層内を移動しやすくなり、電子写真感光体からトナーへの電荷注入性を高めることができる。尚、ニオブ原子濃度、チタン原子濃度は、EDS分析装置(エネルギー分散型X線分析装置)を接続した走査透過型電子顕微鏡(STEM)により得られる。本発明の実施例で用いた酸化チタン粒子の一例(X1)のSTEM像を
図3に示す。また
図3のSTEM像を模式的に
図4に示す。詳細は後述するが、本件実施例で使用しているニオブを含有した酸化チタン粒子は、芯材となる酸化チタン粒子に、ニオブを含有した酸化チタンを被覆した後に焼成して作製されている。そのため、被覆されたニオブを含有した酸化チタンは、芯材の酸化チタンの結晶に沿って、いわゆるエピタキシャル成長によりニオブドープ酸化チタンとして結晶成長をすると考えられる。このようにして作製したニオブを含有した酸化チタンは、
図3に示すように粒子中心部31の密度と比べ、表面近傍32での密度が低く、コアシェル様の形態となっていることが伺える。また、STEMによるEDS分析では、X線は粒子全体を透過するため、
図4に示すように、33で示す粒子中心部31を透過するX線でのEDS分析に対して、34で示す一次粒子径の5%内部を分析するX線でのEDS分析は、表面近傍32の影響が大きくなる。つまり、上述するようなニオブ含有酸化チタン粒子は、粒子の中心でのニオブ/チタン原子濃度比に対して、粒子の表面から最大径の5%内部におけるニオブ/チタン原子濃度比が、2.0倍以上であり、ニオブ原子が表面近傍に偏在している。EDSを接続したSTEMによる分析においては、透過型電子顕微鏡により観察し、EDSにより、ニオブ/チタン比を測定する。また、電子写真感光体をミクロトームやArミリング、FIBなどの手段で薄片化することで、電子写真感光体から直接測定することもできる。
【0023】
ニオブ原子を含有した酸化チタン粒子は、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン粒子であることが好ましく、アナターゼ型の酸化チタン粒子であることがさらに好ましい。アナターゼ型の酸化チタンを用いることで、表面保護層内の電荷移動が円滑になるため、電荷注入が良好になる。より好ましくは、導電性粒子は、アナターゼ型酸化チタン粒子の表面近傍にニオブ原子が偏在した粒子である。芯材にアナターゼ酸化チタン粒子を使用し、表面を、ニオブ原子を含有する酸化チタンで被覆することにより、電荷が表面保護層内を移動しやすくなると同時に、トナーへの電荷注入性を高めることができる。また、表面保護層の体積抵抗率の低下を抑制することができる。
【0024】
導電性粒子は、電子写真感光体の帯電を均一にするという目的から、表面から最大径の5%内部におけるTi原子に対するNb原子の原子濃度比が0.02以上0.20以下であることが好ましい。また、ニオブ原子の量が、酸化チタン粒子の質量に対して、2.6質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0025】
外添剤Aは、トナーへの埋め込みが起こりづらく、表面積が大きく、また、外添剤を起点とした注入帯電を効率よく行うため、その形状の好ましい例は以下のとおりである。すなわち、外添剤Aは、球状以外の形状が好ましく、三次元構造において1の軸方向に長い形状(該軸を長軸と呼ぶ)が好ましい。外添剤Aを長軸方向に垂直に切断した断面の形状は問わず、円、四角、三角形、多角形、それらの組合せであり得る。また、断面の断面積は、長軸方向の全てにおいて、実質同じであってもよいし、変化してもよく、長軸方向に対し両端において断面積が小さい、又は大きい、あるいは、長軸方向における、一端の断面積が他端の断面積よりも小さい形状であってもよい。すなわち、外添剤Aの形状は、柱体(円柱、四角柱、三角柱、多角柱)、中ごろが太い柱体、中ごろが細い柱体、あるいは、錐体(円錐、四角錐、三角錐、多角錐)の形状、これらを切断した一部の形状、針状(柱体あるいは錐体であって長軸が短軸に比べ十分に長いもの)、ロッド状、これらの混合物などを挙げられる。なお、外添剤Aの長径とは、外添剤の長軸の長さであり、短径とは、その断面積が最大となる位置における長軸に垂直な断面の円相当径を指し、それぞれ、代表値として、個数平均値を用いる。
【0026】
外添剤Aは、長径が100nm以上3000nm以下であり、好ましくは500nm以上2000nm以下であり、さらに好ましくは800nm以上1700nm以下である。外添剤Aの長径がこの範囲であると、電子写真感光体からの注入帯電の効率を上げ、かつ外添剤Aのトナー粒子への埋め込みが抑制されるため、長期の使用期間を通じてベタ画像の均一性が向上する。ベタ画像の均一性が向上する理由は、現像剤担持体から電子写真感光体に現像するニップ前において、外添剤Aが一瞬早く電子写真感光体に触れ、接触点を起点にトナーへの注入帯電が起こるためと考えられる。
【0027】
外添剤Aは、そのアスペクト比すなわち、長径/短径が5.0以上であり、好ましくは6.0以上、さらに好ましくは8.0以上である。該外添剤Aのアスペクト比がこの範囲であると、電子写真感光体からトナーへの注入帯電を効率的にし、電子写真画像形成装置の立ち上げ直後のベタ濃度と十分な使用期間を通じた濃度均一性を良好にする。アスペクト比の上限は特に規定されないが、好適な粒子径の粒子を製造しやすいという観点から20.0以下、さらには16.0以下が好ましい。
【0028】
外添剤Aは、比抵抗が1.0×105Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下であり、好ましくは1.0×106Ω・cm以上5.0×107Ω・cm以下である。この範囲であると、トナーへの注入帯電を効率的に行い、電荷のリークが少なく、電子写真画像形成装置の立ち上げ直後の帯電立ち上がり性と耐久後までの帯電均一性を両立することができる。
【0029】
トナー中、該外添剤Aが表面に存在することが確認できるトナー粒子の割合は、30個数%以上であり、より好ましくは40個数%以上あり、さらに好ましくは50個数%以上である。トナーへの注入帯電という目的を満たせばよく、上記割合の上限は特に規定されないが、トナーが負帯電を持ちすぎないという観点から95個数%以下であることが好ましく、90個数%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
なお、該外添剤Aが表面に存在するとは、外添剤Aがトナー粒子の表面上に1個以上確認できることをいう。該外添剤Aが表面に存在することは、走査型顕微鏡を用いてトナーを観察することで確認できる。
【0031】
外添剤Aは、上記の物性範囲であることを満たせば材質は限定されないが、例えば酸化チタン粒子、酸化アルミ粒子、などの無機粒子であることが好ましい。
外添剤Aは、特には、酸化チタン粒子を含むことが好ましい。外添剤Aが酸化チタン粒子を含むことで、抵抗値を所望の範囲に設定しやすく、耐久後のハーフトーンムラが良好に抑制される。
【0032】
外添剤Aは、ルチル型酸化チタン粒子を含むことがさらに好ましい。外添剤Aがルチル型酸化チタン粒子を含むことで、電子写真感光体の表面から注入された電荷を外部にリークさせず、効率的にトナーを帯電させることができる。
【0033】
本発明において、トナー粒子はホウ酸を含有することが好ましい。トナー粒子がホウ酸を含有することで、トナーに注入された電荷の保持性能が向上し、十分な使用期間を通じて画像品位を向上させる。
【0034】
ホウ酸はトナー表面近傍に存在することが好ましい。トナー粒子中のホウ酸がトナー表面近傍に存在するかどうかは、ゲルマニウムを用いたATR-IR分析によって確かめられ、すなわち、ゲルマニウムを用いたATR-IR分析でホウ酸が検出されると、ホウ酸がトナー表面近傍に存在することを意味する。トナー表面近傍にホウ酸を存在させることによって、注入帯電によって帯電されたトナーの帯電が維持され、十分な使用期間を通じて画像品位を向上することができる。
【0035】
ホウ酸を、トナー粒子に含有させる手段は特に制限されない。例えば、ホウ酸を、トナー粒子に内添する、又は凝集法における凝集剤として使用することによって、トナー粒子中に含有させることができる。凝集剤としてホウ酸を添加すると、トナー粒子表面近傍にホウ酸を導入しやすい。ホウ酸の原材料としては、有機ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステルなどの状態のものを含む。トナー粒子を水系媒体中で製造する場合は、反応性や製造安定性の観点からホウ酸塩として添加することが好ましく、具体的には、例えば、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウムなどが挙げられ、特にホウ砂が好ましく用いられる。
【0036】
ホウ砂は、四ホウ酸ナトリウムNa2B4O7の十水和物で表され、酸性水溶液中でホウ酸へと変化する為、水系媒体中において、酸性環境下で使用する場合はホウ砂が好ましく用いられる。ホウ砂は好ましくは、トナー粒子中0.1質量%から10質量%含まれる。
【0037】
以下、本発明におけるトナーの構成について説明する。
<結着樹脂>
トナー粒子は、結着樹脂を含有する。結着樹脂の含有量は、トナー粒子中の樹脂成分全量のうち、50質量%以上であることが好ましい。
結着樹脂としては、エステル結合を有する樹脂を含んでいればよく、特に制限されず、公知の樹脂を用いることができる。スチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂が好ましい。より好ましくはポリエステル樹脂である。
【0038】
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸などの中から好適なものを選択して組み合わせ、例えば、エステル交換法又は重縮合法など、公知の方法を用いて合成することで得られる。好ましくは、ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸及びジオールの縮重合体を含む。
【0039】
多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物であって、好ましく使用される。
【0040】
ジカルボン酸として、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、スペリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレン二酢酸、o-フェニレン二酢酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などを挙げることができる。
【0041】
また、上記ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸、イタコン酸、グルタコン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-オクテニルコハク酸などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
ポリオールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、好ましく使用される。
【0043】
具体的には、ジオールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物を含むことができる。
【0044】
これらのうち好ましいものは、炭素数2以上12以下のアルキレングリコールとビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2以上12以下のアルキレングリコールとの併用である。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては下記式(A)で示される化合物が挙げられる。
【化1】
(式(A)中、Rは、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
【0045】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物はビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物及び/又はエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。より好ましくはプロピレンオキサイド付加物である。また、x+yの平均値は1以上5以下であることが好ましい。
【0046】
三価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン、ソルビトール、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、上記三価以上のアルコール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい
【0047】
スチレンアクリル樹脂としては、下記重合性単量体からなる単独重合体、又はこれらを2種以上組み合わせて得られる共重合体、さらにはそれらの混合物が挙げられる。
スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン及びp-フェニルスチレンのようなスチレン系モノマーを挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート、ジエチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート、ジブチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート及び2-ベンゾイルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸のような(メタ)アクリル系モノマーを挙げられる。
ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン系モノマー及びエチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン類モノマーを挙げられる。
【0048】
スチレンアクリル樹脂は、必要に応じて多官能性の重合性単量体を用いることができる。多官能性の重合性単量体としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’-ビス(4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン及びジビニルエーテルなどが挙げられる。
また、重合度を制御するため、公知の連鎖移動剤及び重合禁止剤をさらに添加することも可能である。
【0049】
スチレンアクリル樹脂を得るための重合開始剤としては、有機過酸化物系開始剤やアゾ系重合開始剤が挙げられる。
有機過酸化物系開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びtert-ブチル-パーオキシピバレートなどが挙げられる。
アゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル及びアゾビスメチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(イソ酪酸メチル)などが挙げられる。
【0050】
また、重合開始剤として、酸化性物質と還元性物質とを組み合わせたレドックス系開始剤を用いることもできる。
酸化性物質としては、過酸化水素、過硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩)の無機過酸化物並びに4価のセリウム塩の酸化性金属塩が挙げられる。
還元性物質としては還元性金属塩(2価の鉄塩、1価の銅塩及び3価のクロム塩)、アンモニア、低級アミン(メチルアミン及びエチルアミンのような炭素数1以上6以下程度のアミン)、ヒドロキシルアミンのようなアミノ化合物、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどの還元性硫黄化合物、低級アルコール(炭素数1以上6以下)、アスコルビン酸又はその塩並びに低級アルデヒド(炭素数1以上6以下)が挙げられる。
【0051】
重合開始剤は、10時間半減期温度を参考に選択され、単独又は混合して利用される。重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には重合性単量体100.0質量部に対し0.5質量部以上20.0質量部以下が添加される。
【0052】
<離型剤>
本発明におけるトナーには、離型剤として、公知のワックスを用いることができる。
具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムに代表される石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスに代表される天然ワックス及びそれらの誘導体が挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。
【0053】
また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸又はその酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独又は併用して用いることができる。
【0054】
これらの中でも、ポリオレフィン、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス、又は石油系ワックスは、これらを使用した場合に、現像性や転写性が向上する傾向があり好ましい。なお、これらのワックスには、トナーが本発明の効果に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。
【0055】
また、結着樹脂に対する相分離性、又は、結晶化温度の観点からは、ベヘン酸ベヘニル、セバシン酸ジベヘニルなどの高級脂肪酸エステルなどが好適に例示できる。
【0056】
また、離型剤を用いる場合、その含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
【0057】
離型剤の融点は、30℃以上120℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以上100℃以下である。
【0058】
上記のような熱特性を呈する離型剤を用いることにより、離型効果が効率良く発現され、より広い定着領域が確保される。
【0059】
<可塑剤>
本発明におけるトナーには、シャープメルト性を向上させるために結晶性の可塑剤を使用することが好ましい。可塑剤としては、特に限定されることなく、下記のようなトナーに用いられる公知のものを用いることができる。
【0060】
具体的には、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルのような1価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、1価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、エチレングリコールジステアレート、セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートのような2価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、2価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、グリセリントリベヘネートのような3価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、3価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートのような4価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、4価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートのような6価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、ポリグリセリンベヘネートのような多価アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、多価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、又はカルナバワックス、ライスワックスのような天然エステルワックスを挙げることができ、これらは単独又は併用して用いることができる。
【0061】
<着色剤>
トナー粒子は着色剤を含有してもよい。着色剤として、公知の顔料、染料を用いることができる。耐候性に優れる点から着色剤としては、顔料が好ましい。
【0062】
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物及び塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62及びC.I.ピグメントブルー66。
【0063】
マゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物及びペリレン化合物などが挙げられる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221及びC.I.ピグメントレッド254、及びC.I.ピグメントバイオレット19。
【0064】
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物及びアリルアミド化合物などが挙げられる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー191及びC.I.ピグメントイエロー194。
【0065】
黒色着色剤としては、カーボンブラック並びに上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤及びシアン系着色剤を用いて黒色に調色されたものが挙げられる。
【0066】
これらの着色剤は、単独で、又は混合物で、さらにはこれらを固溶体の状態で用いることができる。
着色剤を用いる場合は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下用いることが好ましい。
【0067】
<荷電制御剤、及び荷電制御樹脂>
トナー粒子は、荷電制御剤又は荷電制御樹脂を含有してもよい。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に摩擦帯電スピードが速く、かつ、一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を懸濁重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
【0068】
トナーを負荷電性に制御するものとしては、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、オキシカルボン酸及びジカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン及び荷電制御樹脂などが挙げられる。
【0069】
荷電制御樹脂としては、スルホン酸、スルホン酸塩若しくはスルホン酸エステルの構造を有する重合体又は共重合体を挙げることができる。スルホン酸、スルホン酸塩又はスルホン酸エステルの構造を有する重合体としては、特に以下の重合体が好ましい。すなわち、スルホン酸基含有アクリルアミド系モノマー又はスルホン酸基含有メタクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上含有する重合体が好ましく、より好ましくは5質量%以上含有する重合体である。
【0070】
荷電制御樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が35℃以上90℃以下であり、ピーク分子量(Mp)が10000以上30000以下であり、重量平均分子量(Mw)が25000以上50000以下であることが好ましい。これを用いた場合、トナー粒子に求められる熱特性に影響を及ぼすことなく、好ましい摩擦帯電特性を付与することができる。さらに、荷電制御樹脂がスルホン酸構造を含有している為、例えば重合性単量体組成物中における荷電制御樹脂自身の分散性や、着色剤などの分散性が向上し、着色力、透明性及び摩擦帯電特性をより向上させることができる。
これら荷電制御剤又は荷電制御樹脂は、単独であるいは2種類以上組み合わせて添加してもよい。
【0071】
荷電制御剤又は荷電制御樹脂を用いる場合、その添加量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
【0072】
<外添剤>
トナーは、外添剤Aを含み、また、その他の外添剤を含むことができる。
外添剤Aは、長径(最大径)が100nm以上3000nm以下であり、好ましくは500nm以上2000nm以下であり、さらに好ましくは800nm以上1700nm以下であり、アスペクト比が5.0以上であり、好ましくは6.0以上、さらに好ましくは8.0以上であり、比抵抗が1.0×105Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下であり、好ましくは1.0×106Ω・cm以上5.0×107以下である。外添剤Aは、上記の物性範囲であることを満たせば材質は限定されないが、例えば酸化チタン粒子、酸化アルミ粒子、などの無機粒子であることが好ましい。
【0073】
外添剤Aは、特には、酸化チタン粒子を含むことが好ましい。外添剤Aが酸化チタン粒子を含むことで、抵抗値を所望の範囲に設定しやすく、耐久後のハーフトーンムラが良好に抑制される。
外添剤Aは、ルチル型酸化チタン粒子を含むことがさらに好ましい。外添剤Aがルチル型酸化チタン粒子を含むことで、電子写真感光体の表面から注入された電荷を外部にリークさせず、効率的にトナーを帯電させることができる。
【0074】
外添剤Aは、例えば、メタチタン酸にNaOH水溶液を添加し、加熱、冷却、中和などを経て、微粒子ルチル型酸化チタンを製造し、これを適宜、ボールミルなどで混合、焼成、洗浄して得ることができる。
また、外添剤A以外の外添剤としては、例えば、上記アスペクト比を有さない、粒子状のシリカ粒子、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、酸化チタン粒子、酸化アルミ粒子などを有することができる。
【0075】
<トナーの製造方法>
本発明におけるトナーについては、その製造方法は特に制限されず、粉砕法、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、分散重合法などの公知の方法を用いることができ、乳化凝集法により製造されることが好ましい。以下は主に乳化凝集法について説明する。
また、樹脂微粒子の水系分散液中における結着樹脂の微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)は、0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.05μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。体積分布基準の50%粒径(D50)を上記範囲に調整することで、トナー粒子として適切な体積平均粒径である3μm以上10μm以下のトナー粒子を得ることが容易になる。
なお、体積分布基準の50%粒径(D50)は、動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)で測定することができる。
【0076】
<着色剤微粒子分散液>
必要に応じて着色剤微粒子分散液が用いられる。着色剤微粒子分散液は、以下に挙げる公知の方法により調製できるが、これらの手法に限定されるものではない。
着色剤微粒子分散液は着色剤、水系媒体及び分散剤を公知の撹拌機、乳化機、及び分散機のような混合機により混合することで調製できる。ここで用いる分散剤は、界面活性剤及び高分子分散剤といった公知のものを使用できる。
【0077】
界面活性剤及び高分子分散剤のいずれの分散剤も後述する洗浄工程において除去できるが、洗浄効率の観点から、分散剤は界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、及びせっけん系などのアニオン界面活性剤、アミン塩型、及び4級アンモニウム塩型のようなカチオン界面活性剤、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、及び多価アルコール系のようなノニオン界面活性剤が挙げられる。
これらの中でもノニオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤が好ましい。また、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とを併用してもよい。該界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。界面活性剤を用いる場合、その水系媒体中における濃度は、0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0078】
着色剤微粒子分散液における着色剤微粒子の含有量は特に制限はないが、着色剤微粒分散液の全質量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
また、着色剤の水系分散液中における着色剤微粒子の分散粒径は、最終的に得られるトナー中での着色剤の分散性の観点から、体積分布基準の50%粒径(D50)が0.5μm以下であることが好ましい。また、同様の理由で、体積分布基準の90%粒径(D90)が2μm以下であることが好ましい。なお、水系媒体中に分散した着色剤微粒子の分散粒径は、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA-EX150、日機装製)で測定できる。
【0079】
着色剤を水系媒体中に分散させる際に用いる公知の撹拌機、乳化機、及び分散機のような混合機としては、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、圧力式ホモジナイザー、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、及びペイントシェーカーが挙げられる。これらを単独若しくは組み合わせて用いてもよい。
【0080】
<離型剤(脂肪族炭化水素化合物)微粒子分散液>
必要に応じて離型剤微粒子分散液を用いてもよい。離型剤微粒子分散液は、以下に挙げる公知の方法により調製できるが、これらの手法に限定されるものではない。
離型剤微粒子分散液は、界面活性剤を含有した水系媒体に離型剤を加え、離型剤の融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機で粒子状に分散させた後、融点未満まで冷却することで作製することができる。上記のホモジェナイザ―の例として、エム・テクニック社製の「クレアミックスWモーション」を挙げることができる。また、上記の圧力吐出型分散機の例として、ゴーリン社製の「ゴーリンホモジナイザー」を挙げることができる。
【0081】
離型剤の水系分散液中における離型剤微粒子分散液の分散粒径は、体積分布基準の50%粒径(D50)が0.03μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。また、1μm以上の粗大粒子が存在しないことが好ましい。
【0082】
離型剤微粒子分散液の分散粒径が上記範囲内であることで、トナー中に離型剤を微分散して存在させることが可能となり、定着時の染み出し効果を最大限発現させ、良好な分離性を得ることが可能となる。なお、水系媒体中に分散した離型剤微粒子分散液の分散粒径は、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA-EX150、日機装製)で測定できる。
【0083】
<混合工程>
混合工程では、樹脂微粒子分散液と、必要に応じて離型剤微粒子分散液及び着色剤微粒子分散液の少なくとも一方とを混合した混合液を調製する。ホモジナイザー、及びミキサーのような公知の混合装置を用いて行うことができる。
【0084】
<凝集体粒子を形成する工程(凝集工程)>
凝集工程では、例えば混合工程で調製された混合液中に含まれる微粒子を凝集し、目的とする粒径の凝集体を形成させる。このとき、凝集剤を添加混合し、必要に応じて加熱及び機械的動力の少なくとも一方を適宜加えることにより、樹脂微粒子と、必要に応じて離型剤微粒子及び着色剤微粒子の少なくとも一方と、が凝集した凝集体を形成することができる。
【0085】
凝集剤としては、例えば、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミンなどの有機系凝集剤、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどの無機金属塩、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの無機アンモニウム塩、及び2価以上の金属錯体などの無機系凝集剤が挙げられる。
また、pHを下げて軟凝集するために酸を添加することも可能であり、例えば硫酸や硝酸などを添加することが出来る。
【0086】
凝集剤は、乾燥粉末及び水系媒体に溶解させた水溶液のいずれの形態で添加してもよいが、均一な凝集を起こさせるためには、水溶液の形態で添加するのが好ましい。
凝集剤の添加及び混合は、混合液中に含まれる樹脂のガラス転移温度又は融点以下の温度で行うことが好ましい。この温度条件下で混合を行うことで、比較的均一に凝集が進行する。混合液への凝集剤の混合は、ホモジナイザー、及びミキサーのような公知の混合装置を用いて行うことができる。凝集工程では、水系媒体中でトナー粒子サイズの凝集体が形成される。凝集工程において製造される凝集体の体積平均粒径は、3μm以上10μm以下であることが好ましい。体積平均粒径は、コールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII、コールター製)にて測定できる。
【0087】
<トナー粒子を含む分散液を得る工程(融合工程)>
融合工程においては、まず、凝集工程で得られた凝集体を含む分散液に対し、凝集工程と同様の撹拌下で、凝集の停止が行われる。
凝集の停止は、pHを調整することができる塩基やキレート化合物、塩化ナトリウムなどの無機塩化合物などの凝集停止剤を添加することにより行われる。
凝集停止剤の作用により、分散液中での凝集粒子の分散状態が安定した後、結着樹脂のガラス転移温度又は融点以上に加熱し、凝集粒子を融合し、所望の粒径に調整する。なお、トナー粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)は、3μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0088】
<冷却工程>
必要に応じて、冷却工程において、融合工程で得られたトナー粒子を含む分散液の温度を、結着樹脂の結晶化温度及びガラス転移温度の少なくとも一方より低い温度まで冷却することができる。結晶化温度及びガラス転移温度の少なくとも一方より低い温度まで冷却することで、トナー表面の凹みの発生を抑制することができ、形状係数SF1及びSF2を125以下にすることができる。冷却工程を行う場合、具体的な冷却速度としては0.5℃/sec以上、好ましくは2℃/sec以上、さらに好ましくは4℃/sec以上である。
【0089】
<後処理工程>
本実施形態のトナーの製造方法においては、さらに、洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程などの後処理工程を行ってもよく、後処理工程を行うことで、例えば、乾燥した状態のトナー粒子が得られる。
【0090】
<外添工程>
外添工程においては、乾燥工程で得られたトナー粒子に外添処理される。具体的には、上述の外添剤A、及び必要に応じ、その他の外添剤として、シリカなどの無機微粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂微粒子を、乾燥状態で剪断力を印加して添加する。
【0091】
以下、本発明における電子写真感光体の構成について説明する。
本発明における電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された感光層と表面保護層とをこの順に有する。
図1には、電子写真感光体の例として、積層型感光層を有する電子写真感光体を示す。
図1においては、支持体21の上に、下引き層22、電荷発生層23、電荷輸送層24、表面保護層25が積層されている。
【0092】
<表面保護層>
表面保護層は、重合性官能基を有する化合物の重合物及び樹脂を含有することができる。重合性官能基又は構造としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド構造、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物構造、炭素-炭素二重結合、アルコキシシリル基、シラノール基などが挙げられる。重合性官能基を有する化合物として、電荷輸送能を有するモノマーを用いてもよい。重合性官能基を有した化合物は、連鎖重合性官能基と同時に電荷輸送性構造を有していてもよい。
【0093】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。また、表面保護層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
【0094】
表面保護層は、導電性粒子、上記の各材料及び溶剤を含有する表面保護層用塗布液を調製し、この塗膜を感光層上に形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0095】
表面保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0096】
表面保護層の平均膜厚は、0.2μm以上5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0097】
表面保護層に含有される導電性粒子として用いられるニオブ原子を含有した酸化チタン粒子は、球体状、多面体状、楕円体状、薄片状、針状など、種々の形状のものを用いることができる。これらの中でも、黒ポチなどの画像欠陥が少ないという観点から、球体状、多面体状、楕円体状のものが好ましい。本発明において好ましく用いられる、ニオブ原子を含有した酸化チタン粒子は、球体状又は球体状に近い多面体状であることがさらに好ましい。
【0098】
ニオブ原子を含有した酸化チタン粒子は、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン粒子であることが好ましく、アナターゼ化度がほぼ100%の酸化チタン粒子であることがさらに好ましい。アナターゼ型の酸化チタンを用いることで、表面保護層内の電荷移動が円滑になるため、注入帯電性が良好になる。本発明の一実施形態に用いられるアナターゼ化度がほぼ100%のアナターゼ型酸化チタン粒子は、公知の硫酸法で製造することができる。即ち、硫酸チタン、硫酸チタニルを含む溶液を加熱して加水分解させ含水二酸化チタンスラリーを作製し、該二酸化チタンスラリーを脱水焼成して得られる。本発明の一実施形態に用いられるアナターゼ型酸化チタンのアナターゼ化度は90以上100%以下が好ましい。又、この範囲のニオブ原子を含有するアナターゼ型酸化チタンを含有する中間層は、整流性が良好且つ安定して達成され、上述の効果が良好に達成される。
ここで、アナターゼ化度とは、酸化チタンの粉末X線回析において、アナターゼの最強干渉線(面指数101)の強度IAとルチルの最強干渉線(面指数110)の強度IRを測定し、以下の式で求められる値である。
アナターゼ化度(%)=100/(1+1.265×IR/IA)
アナターゼ化度を90%以上100%以下の範囲に作製するには、酸化チタンの作製において、チタン化合物として硫酸チタン、硫酸チタニルを含む溶液を加熱して加水分解する。この方法により、アナターゼ化度がほぼ100%のアナターゼ形酸化チタンが得られる。又、四塩化チタン水溶液をアルカリで中和すればアナターゼ化度が高いアナターゼ型酸化チタンが得られる。
【0099】
本発明における電子写真感光体の表面保護層に含有される導電性粒子は、より好ましくは、アナターゼ型酸化チタン粒子であって、その表面近傍にニオブ原子を偏在させた粒子である。芯材にアナターゼ型酸化チタン粒子を使用し、その表面を、ニオブ原子を含有する酸化チタンで被覆することにより、導電性粒子の表面に接触した帯電部材から電荷が注入されやくなるとともに、表面保護層内を移動しやすくなる。また、画像流れが発生するような抵抗率の低下が抑制される。
【0100】
本発明における電子写真感光体の表面保護層に含有される導電性粒子は、個数平均粒径で40nm以上150nm以下であることが好ましい。導電性粒子の個数平均粒子径が40nm未満となると導電性粒子の比表面積が大きくなり、表面保護層表面における導電性粒子の近傍に対して水分吸着が多くなり、表面保護層表面の抵抗が低下して画像流れが起きやすくなる。150nmを超えると表面保護層内における粒子の分散性が低下するとともに結着樹脂との界面の面積が低下して、界面における抵抗が上昇して電荷の移動によって注入帯電性が低下する。
【0101】
<支持体>
本発明において、支持体は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレス、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合又は被覆するなどの処理によって、導電性を付与することが好ましい。
【0102】
<導電層>
本発明で用いられる電子写真感光体において、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0103】
導電層に含有される導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなどの元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、酸化亜鉛粒子であり、その表面か表面近傍にニオブ原子を偏在させたものが好ましい。 また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その個数平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0104】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などをさらに含有してもよい。
【0105】
導電層は、上記の各材料及び溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0106】
導電層を有する場合、その平均膜厚は、1μm以上40μm以下であることが好ましく、3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0107】
<下引き層>
本発明において、支持体又は導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
【0108】
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基又は構造としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド構造、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物構造、炭素-炭素二重結合などが挙げられる。
【0109】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などをさらに含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
下引き層に含有される電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
【0110】
下引き層に含まれる金属酸化物粒子は、シランカップリング剤などの表面処理剤を用いて表面処理を施されてもよい。金属酸化物粒子を表面処理する方法は、一般的な方法が用いられ、たとえば、乾式法や湿式法が挙げられる。
乾式法は、金属酸化物粒子をヘンシェルミキサーのような高速攪拌可能なミキサーの中で攪拌しながら、表面処理剤を含有するアルコール水溶液、有機溶媒溶液、又は水溶液を添加し、均一に分散させた後に乾燥を行うものである。
また、湿式法は、金属酸化物粒子と表面処理剤とを溶剤中で攪拌、又はガラスビーズなどを用いてサンドミルなどで分散するものであり、分散後、ろ過、又は減圧留去により溶剤除去が行われる。溶剤の除去後は、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。
【0111】
下引き層には、さらに添加剤を含有させてもよく、例えば、アルミニウムなどの金属粉体、カーボンブラックなどの導電性物質、電荷輸送物質、金属キレート化合物、有機金属化合物などを含有させることができる。
【0112】
下引き層に含有される電荷輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電荷輸送物質として、重合性官能基を有する電荷輸送物質を用い、上記の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0113】
下引き層は、上記の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体又は導電層上に形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。
下引き層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物などの有機溶剤が挙げられる。本発明においては、アルコール系、ケトン系溶剤を用いることが好ましい。
下引き層用塗布液を調製するための分散方法としては、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0114】
下引き層を設ける場合、その平均膜厚は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0115】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類され、そのいずれが採用されてもよい。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する感光層である。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層である。
【0116】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【0117】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0118】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0119】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【0120】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をさらに含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0121】
電荷発生層は、上記の各材料及び溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を下引き層などの下位層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0122】
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0123】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0124】
電荷輸送層に含有される電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0125】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
【0126】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0127】
電荷輸送層は、上記の各材料及び溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を電荷発生層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤又は芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0128】
電荷輸送層の平均膜厚は、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0129】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂及び溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を下引き層などの下位層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。単層型感光層に含有される電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂は、上記「(1)積層型感光層」と同様である。
【0130】
[プロセスカートリッジ]
本発明のプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、現像手段とを一体に支持しさらに、帯電手段、転写手段及びクリーニング手段を有することができる。また、本発明のプロセスカートリッジは、電子写真画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とする。なお、電子写真画像形成装置本体とは、電子写真画像形成装置のうち、プロセスカートリッジ以外の部分を指す。
また、本発明は一実施形態として、プロセスカートリッジを含む電子写真画像形成装置を提供し、電子写真画像形成装置は、これまで述べてきた電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする。
【0131】
図2に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真画像形成装置の概略構成の一例を示す。
円筒状(ドラム状)の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。電子写真感光体1の表面は、回転過程において、帯電手段3により、正又は負の所定電位に帯電される。なお、
図2においては、ローラー型帯電部材によるローラー帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。露光光4は、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された光であり、例えば、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段から出力される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内のトナー収容部に収容されたトナーが供給されて現像(正規現像又は反転現像)され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。このとき、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。また、転写材7が紙である場合、転写材7は給紙部(不図示)から取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して給送される。電子写真感光体1からトナー像が転写された転写材7は、電子写真感光体の表面から分離されて、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受けることにより、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真画像形成装置の外へプリントアウトされる。電子写真画像形成装置は、転写後の電子写真感光体の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段9を特に設けず、上記付着物を現像手段5などで除去する、いわゆる、クリーナーレスシステムを用いてもよい。本発明においては、上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、及びクリーニング手段9などから選択される構成要素のうち、複数の構成要素を容器に納め、一体に支持してプロセスカートリッジを形成する。プロセスカートリッジは電子写真画像形成装置本体に対して着脱自在に構成できる。例えばプロセスカートリッジは以下のように構成される。帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9から選択される少なくとも1つを、電子写真感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化する。これを、電子写真画像形成装置本体のレールなどの案内手段12を用いて、電子写真画像形成装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。電子写真画像形成装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、プロセスカートリッジ11を電子写真画像形成装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。本発明における電子写真画像形成装置は、電子写真感光体1、並びに、帯電手段3、露光手段、現像手段5及び転写手段6からなる群より選択される少なくとも1つの手段を有することができる。
本発明のプロセスカートリッジは、レーザービームプリンタ、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、及び、これらの複合機などに用いることができる。
【0132】
次に、外添剤A、感光体の表面保護層及び表面保護層に含有される導電性粒子に関する各物性について、行われた、あるいは好ましい測定方法を記載する。ただし、以下の説明は一例であり、測定方法はこれに限定されない。
【0133】
<外添剤Aの長径と短径及びアスペクト比の測定方法>
外添剤Aの長径(最大径)とアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(例えば走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製))を用いて行う。最大5万倍に拡大した視野において、外添剤Aが添加されたトナーを観察して、ランダムに100個の外添剤Aの一次粒子の長径と短径を測定した。ここで、外添剤Aのアスペクト比は以下の式で算出した。観察倍率は、外添剤Aの大きさによって適宜調整する。
外添剤Aのアスペクト比=外添剤Aの長径÷外添剤Aの短径
長径、短径は、以上100個の平均値を代表値とした。また、アスペクト比は、100個の長径の平均値を短径の平均値で除したものである。
【0134】
<該外添剤Aが表面に存在するトナー粒子の割合の測定方法>
該外添剤Aが表面に存在するトナー粒子の割合は、走査型電子顕微鏡(例えば走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製))を用いて行った。1視野で10~30個のトナーが観察できるように、3000倍程度に拡大した視野において、外添剤Aが添加されたトナーをランダムに50個観察した。50個のトナーのうち、外添剤Aが1つ以上存在するトナーの個数割合を算出し、外添剤Aが表面に存在することが確認できるトナー粒子の割合とした。観察倍率は、トナーの大きさや外添剤Aの大きさによって適宜調整する。
【0135】
<導電性粒子の一次粒子径の算出>
まず、メスシリンダー中のメチルエチルケトン(MEK)に電子写真感光体全体を浸けて超音波を照射し、樹脂層を剥がし、その後、電子写真感光体の支持体を取り出した。次に、MEKに溶解しない不溶分(感光層及び導電性粒子を含有する表面保護層)を濾過し、濾物を回収して真空乾燥機で乾固した。さらに、得られた固体をテトラヒドロフラン(THF)/メチラールの体積比1:1の混合溶媒に懸濁し、不溶分を濾過後、濾物を回収して真空乾燥機で乾固した。この操作により、導電性粒子と表面保護層の樹脂とを得た。さらに濾物を電気炉で500℃に加熱して、固体が導電性粒子のみとなるようにして、導電性粒子を回収した。導電性粒子は測定に必要量確保するため、複数本の電子写真感光体に同様の処理を施した。
回収した導電性粒子の一部をイソプロパノール(IPA)に分散させ、その分散液を支持膜付グリッドメッシュ(日本電子株式会社製、Cu150J)に滴下し、走査透過型電子顕微鏡(JEOL社、JEM2800)のSTEMモードにて導電性粒子の観察を行った。観察は導電性粒子の粒子径を算出しやすいように、50万倍から120万倍の拡大倍率で行い、導電性粒子100個のSTEM画像を撮影した。この時、加速電圧200kV、プローブサイズは1nm、画像サイズは1024×1024pixelに設定した。得られたSTEM画像を用いて、画像処理ソフト「Image-Pro Plus (Media Cybernetics社製)」にて、一次粒子径の測定を行った。測定の方法は以下の通りであった。まず、ツールバーの直線ツール(Straight Line)を用い、STEM画像下部に表示されているスケールバーを選択しておく。その状態でAnalyzeメニューのSet Scaleを選択すると、新規ウインドウが開き、Distance in Pixels欄に選択されている直線のピクセル距離が入力される。ウインドウのKnown Distance欄にスケールバーの値(例えば100)を入力し、Unit of Mesurement欄にスケールバーの単位(例えばnm)を入力し、OKをクリックするとスケール設定が完了する。次に、直線ツールを用いて、導電性粒子の最大径となるように直線を描き、粒子径を算出する。この操作を、導電性粒子100個について行い、得られた値(最大径)の個数平均値を導電性粒子の一次粒子径とした。
【0136】
<ニオブ原子/チタン原子濃度比率の算出>
感光体から5mm四方のサンプル片を1つ切り出し、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで200nm厚に切削し、薄片サンプルを作製した。この薄片サンプルを、EDS分析装置(エネルギー分散型X線分析装置)を接続した走査透過型電子顕微鏡(JEOL社、JEM2800)のSTEMモードにて、50万倍から120万倍の拡大倍率で観察を行った。
観察される導電性粒子の断面のうち、上記で算出した1次粒子径のおおよそ0.9倍以上1.1倍以下の最大径を有する導電性粒子の断面を目視で選択した。続いて、選択した導電性粒子の断面の構成元素を、EDS分析装置を用いてスペクトルを収集し、EDSマッピング像を作製した。スペクトルの収集及び解析は、NSS(Thermo Fischer Scientific社)を用いて行った。収集条件は、加速電圧200kV、デッドタイムが15以上30以下となるように1.0nm又は1.5nmのプローブサイズのいずれかを適宜選択し、マッピングの分解能を256×256、Frame数を300とした。EDSマッピング像は、導電性粒子の断面100個について取得した。
このようにして得られたEDSマッピング像を解析することで、粒子中心部、及び粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子濃度(原子%)とチタン原子濃度(原子%)の比率を算出した。具体的には、次の方法で行われた。まずNSSの「ライン抽出」ボタンを押下し、粒子の最大径となるように直線を描き、一方の表面から粒子部を通り、他方の表面に至るまでの直線上における原子濃度(原子%)の情報を得る。このとき得られた粒子の最大径が、上記で算出した1次粒子径の0.9倍未満又は1.1倍を超える範囲であれば、これ以後の解析の対象外とする。(1次粒子径の0.9倍以上1.1倍未満の範囲に最大径をもつ粒子についてのみ、下記に示す解析を行った。)次に、両側の粒子表面において、粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子濃度(原子%)を読み取る。同様にして、“粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるチタン原子濃度(原子%)”を得る。次いで、これらの値を用いて、下式より、両側の粒子表面における“粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率”をそれぞれ得る。
粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率=
(粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子濃度(原子%))/(粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるチタン原子濃度(原子%))
得られる二つの濃度比率の内、値が小さい方を、本発明における“粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率”として採用する。
また、上記直線上であり、最大径の中点となる位置におけるニオブ原子濃度(原子%)とチタン原子濃度(原子%)を読み取る。これらの値を用いて、下式より、“粒子中心部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率”を得る。
粒子中心部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率=
(粒子中心部におけるニオブ原子濃度(原子%))/(粒子中心部におけるチタン原子濃度(原子%))
尚、“粒子中心部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率に対する、粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率”は、下式で算出される。
(粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率)/(粒子中心部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率)
【0137】
次に、感光体から5mm四方のサンプル片を4つ切り出し、FIB-SEMのSlice&Viewで表面保護層の2μm×2μm×2μmの3次元化を行った。FIB-SEMのSlice&Viewのコントラストの違いから、表面保護層の全体積に占める、導電性粒子の含有量を算出した。以下の実施例においては、Slice&Viewの条件は以下の通りであった。
分析用試料加工:FIB法
加工及び観察装置:SII/Zeiss製、NVision40
スライス間隔:10nm
観察条件
加速電圧:1.0kV
試料傾斜:54°
WD:5mm
検出器:BSE検出器
アパーチャー:60μm、high current
ABC:ON
画像解像度:1.25nm/pixel
【0138】
解析領域は縦2μm×横2μmで行い、断面ごとの情報を積算し、縦2μm×横2μm×厚み2μm(8μm3)当たりの被検体の体積Vを求める。また、測定環境は、温度23℃、圧力1×10-4Paであった。なお、加工及び観察装置としては、FEI製のStrata400S(試料傾斜52°)を用いることもできる。また、断面ごとの情報は、特定した導電性粒子の面積を画像解析して得た。画像解析は、画像処理ソフト(Media Cybernetics製、Image-Pro Plus)を用いて行った。
得られた情報を基に、4つのサンプル片のそれぞれにおいて、2μm×2μm×2μmの体積(単位体積8μm3)中の導電性粒子の体積Vを求めた。そして、(Vμm3/8μm3×100)を算出した。4つのサンプル片における(Vμm3/8μm3×100)の値の平均値を、表面保護層の全体積に対する表面保護層中の導電性粒子の含有量[体積%]とした。
さらに、4つのサンプル片すべてについて、表面保護層と下層の境界まで加工を行うことで、表面保護層の膜厚を測定し、下記の<感光体の保護層の体積抵抗率の測定方法>において体積抵抗率ρvの算出に値を用いた。
【0139】
<表面保護層の体積抵抗率の測定>
表面保護層の体積抵抗率の測定には、pA(ピコアンペアー)メーターを使用した。まず、PETフィルム上に電極間距離(D)180μm、長さ(L)5.9cmのくし型金電極を蒸着により作製し、その上に、厚さ(T1)2μmの表面保護層を設けた。次に、温度23℃/湿度50%RHの環境下にて、くし型電極間に100Vの直流電圧(V)を印加したときの直流電流(I)を測定した。下記式(7)によって体積抵抗率A(温度23℃/湿度50%RH)を得た。本願明細書には、この方法を用いた測定結果は記載していない。
体積抵抗率ρv(Ω・cm)=V(V)×T1(cm)×L(cm)/{I(A)×D(cm)} (7)
【0140】
表面保護層の導電性粒子や結着樹脂などの組成について同定が困難な場合は、電子写真感光体の表面の表面抵抗率を測定して体積抵抗率に換算する。表面保護層単体ではなく、感光体表面に塗工された状態での表面保護層の体積抵抗率を測定する場合は、表面保護層の表面抵抗率を測定し、そこから体積抵抗率に変換するのが望ましい。感光体に塗工された状態での表面保護層上に、くし型電極を金蒸着し、一定の直流電圧を印加したときの、直流電流を測定することで表面抵抗率ρsを下記式(8)から算出できる。以下の実施例で示す結果は、この測定方法を用いた。
ρv=ρs×t (8)
(tは電荷注入層の厚さ)
【0141】
この測定では、微小な電流量を測定するため、抵抗測定装置としては、微小電流の測定が可能な機器を用いて行うことが好ましい。抵抗測定装置の例として、ヒューレットパッカード製のピコアンメーター4140Bなどが挙げられる。使用するくし型電極や印加する電圧は、電荷注入層の材料や抵抗値に応じて、それぞれ適切なSN比が得られるように選定することが望ましい。
本発明では、電子写真感光体の表面に電極間距離(D)120μm、長さ(L)2.0cmのくし型金電極を蒸着により作製する。次に、温度23℃/湿度50%RH環境下にて、くし型電極間に1000Vの直流電圧(V)を印加したときの直流電流(I)を測定し、表面抵抗率ρs(温度23℃/湿度50%RH)を得た。
さらに前述した<電子写真感光体の表面保護層断面の分析>によって、表面保護層の膜厚T1(cm)を測定する。前記表面抵抗率ρsに膜厚T1を乗ずる上記式で、体積抵抗率ρv(温度23℃/湿度50%RH)とした。
【0142】
<導電性粒子中のニオブ原子含有量の分析方法>
本発明に使用される導電性粒子中のニオブ原子含有量の測定は、以下のように行う。
上記の<導電性粒子の一次粒子径の算出>で感光体から回収した導電性粒子を下記プレス成型によりペレット化してサンプルを作製する。作製されたサンプルを用い、蛍光X線分析装置(XRF)で測定を行い、FP法で、導電性粒子全体のニオブ原子含有量の定量を行う。
具体的には、5酸化ニオブとしての定量を行い含有するニオブ原子含有量に換算する。
(i)使用装置の例
蛍光X線分析装置3080(理学電気(株))
(ii)サンプル調製
サンプルの調製は、試料プレス成型機MAEKAWA Testing Machine(MFG Co,LTD製)を使用する。アルミリング(型番:3481E1)に導電性粒子0.5gを入れて5.0トンの荷重に設定し1minプレスし、ペレット化させる。
(iii)測定条件
測定径:10φ
測定電位、電圧 50kV、50~70mA
2θ角度 25.12°
結晶板 LiF
測定時間 60秒
【0143】
<導電性粒子の粉末X線回折測定>
本発明の電子写真感光体に使用される導電性粒子にアナターゼ型酸化チタン若しくは、ルチル型酸化チタンが含有されるかを判断する方法を以下に示す。
CuKαのX線による粉末X線回折から得られるチャートから、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)の無機材料データベース (AtomWork)で同定を行う。本発明の電子写真感光体の保護層に含まれる導電性粒子については、前述した(導電性粒子に含有されるニオブ原子の定量)の処理を一例に準ずる。
粉末X線回折測定は以下の条件とすることができる。
使用測定機:X線回折装置RINT-TTRII(理学電気(株)製)
X線管球:Cu
管電圧:50kV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター
【実施例】
【0144】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、単に「部」と記載する場合断りのない限り質量部を意味する。
【0145】
<トナー粒子1の製造例>
「ポリエステル樹脂1の合成」
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 9mol部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 95mol部
・テレフタル酸 50mol部
・フマル酸 30mol部
・ドデセニルコハク酸 25mol部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに上記のモノマーを仕込み、1時間で195℃まで温度を上げて、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。これらモノマー100部に対してジステアリン酸スズを1.0部投入した。さらに生成する水を留去しながら195℃から5時間かけて250℃まで温度を上げ、250℃でさらに2時間脱水縮合反応を行った。
その結果、ガラス転移温度が60.2℃、酸価が16.8mgKOH/g、水酸基価が28.2mgKOH/g、重量平均分子量が11200、数平均分子量が4100のポリエステル樹脂1を得た。
【0146】
「ポリエステル樹脂2の合成」
・ビスフェノールA-エチレンオキサイド2モル付加物 48mol部
・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物 48mol部
・テレフタル酸 65mol部
・ドデセニルコハク酸 30mol部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに上記のモノマーを投入し、1時間で195℃まで温度を上げて、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。これらモノマー100部に対してジステアリン酸スズを0.7部投入した。さらに生成する水を留去しながら195℃から5時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を行った。次いで、温度を190℃まで下げ、無水トリメリット酸の5mol部を徐々に投入し、190℃で1時間反応を継続した。
その結果、ガラス転移温度が55.2℃、酸価が14.3mgKOH/g、水酸基価が24.1mgKOH/g、重量平均分子量が43600、数平均分子量が6200のポリエステル樹脂2を得た。
【0147】
「樹脂粒子分散液1の調製」
・ポリエステル樹脂1 100部
・メチルエチルケトン 50部
・イソプロピルアルコール 20部
容器にメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを投入した。その後、上記材料を徐々に投入して、撹拌を行い、完全に溶解させてポリエステル樹脂1溶解液を得た。このポリエステル樹脂1溶解液の入った容器を65℃に設定し、撹拌しながら10%アンモニア水溶液を合計で5部となるように徐々に滴下し、さらにイオン交換水230部を10ml/分の速度で徐々に滴下して転相乳化させた。さらにエバポレータで減圧して脱溶剤を行い、ポリエステル樹脂1の樹脂粒子分散液1を得た。この樹脂粒子の体積平均粒径は、135nmであった。また、樹脂粒子固形分量はイオン交換水で調整して20%とした。
【0148】
「樹脂粒子分散液2の調製」
・ポリエステル樹脂2 100部
・メチルエチルケトン 50部
・イソプロピルアルコール 20部
容器にメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを投入した。その後、上記材料を徐々に投入して、撹拌を行い、完全に溶解させてポリエステル樹脂2溶解液を得た。このポリエステル樹脂2溶解液の入った容器を40℃に設定し、撹拌しながら10%アンモニア水溶液を合計で3.5部となるように徐々に滴下し、さらにイオン交換水230部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させた。さらに減圧して脱溶剤を行い、ポリエステル樹脂2の樹脂粒子分散液2を得た。樹脂粒子の体積平均粒径は、155nmであった。また、樹脂粒子固形分量はイオン交換水で調整して20%とした。
【0149】
「着色剤粒子分散液の調製」
・銅フタロシアニン(ピグメントブルー15:3) 45部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製) 5部
・イオン交換水 190部
以上を混合し、ホモジナイザーにより10分間分散した後に、アルティマイザーを用い圧力250MPaで20分間分散処理を行い、着色剤粒子の体積平均粒径が120nmで、固形分量が20%の着色剤粒子分散液を得た。ホモジナイザーはIKA製のウルトラタラックスを用いた。アルティマイザーは、(株)スギノマシン製の対抗衝突型湿式粉砕機を用いた。
【0150】
「離型剤粒子分散液の調製」
・離型剤(炭化水素ワックス、融点79℃) 15部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製) 2部
・イオン交換水 240部
以上を100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで115℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径160nm、固形分量20%の離型剤粒子分散液を得た。
【0151】
「トナー粒子1の製造」
・樹脂粒子分散液1 500部
・樹脂粒子分散液2 400部
・着色剤粒子分散液 50部
・離型剤粒子分散液 80部
まず、コア形成工程として、上記の各材料を丸型ステンレス製フラスコに投入、混合した。続いてホモジナイザー ウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて5000r/minで10分間分散した。1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながらで58℃まで加熱した。形成された凝集粒子の体積平均粒径を、コールターマルチサイザーIIIを用い、適宜確認し、5.0μmである凝集粒子(コア)が形成されたところで、シェル形成工程として、下記各材料を投入してさらに1時間撹拌しシェルを形成した。
・樹脂粒子分散液1 40部
・イオン交換水 300部
・10.0質量%ホウ砂水溶液 19部
(ホウ砂;富士フイルム和光純薬(株)製 四ホウ酸ナトリウム十水和物)
その後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にし、攪拌を継続しながら、89℃まで加熱した。
所望の表面形状が得られたところで加熱をやめ、25℃まで冷却し、ろ過・固液分離した後、イオン交換水で洗浄を行った。洗浄終了後に真空乾燥機を用いて乾燥することで、トナー粒子1を得た。得られたトナー粒子1は、蛍光X線のホウ素由来強度が0.15であり、重量平均粒径が6.5μmであった。
【0152】
「トナー粒子2の製造」
・樹脂粒子分散液1 500部
・樹脂粒子分散液2 400部
・着色剤粒子分散液 50部
・離型剤粒子分散液 80部
まず、コア形成工程として、上記の各材料を丸型ステンレス製フラスコに投入、混合した。続いてホモジナイザー ウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて5000r/minで10分間分散した。1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながらで58℃まで加熱した。形成された凝集粒子の体積平均粒径を、コールターマルチサイザーIIIを用い、適宜確認し、5.0μmである凝集粒子(コア)が形成されたところで、シェル形成工程として、下記各材料を投入してさらに1時間撹拌しシェルを形成した。
・樹脂粒子分散液1 40部
・イオン交換水 300部
その後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にし、攪拌を継続しながら、89℃まで加熱した。
所望の表面形状が得られたところで加熱をやめ、25℃まで冷却し、ろ過・固液分離した後、イオン交換水で洗浄を行った。洗浄終了後に真空乾燥機を用いて乾燥することで、トナー粒子2を得た。得られたトナー粒子2の重量平均粒径は6.6μmであった。
【0153】
<外添剤1の製造例>
外添剤Aである外添剤1は次のように製造した。硫酸法で得られたメタチタン酸に50%-NaOH水溶液を、NaOHとしてTiO2に対し4倍モル量添加し95℃で2時間加熱した。これを充分洗浄した後、31%-HClをHCl/TiO2=0.26になるよう添加し、沸点で1時間加熱した。冷却後、1モル/L-NaOHでpH7に中和した後、洗浄、乾燥して、微粒子ルチル型酸化チタンを製造した。得られた微粒子ルチル型酸化チタンの比表面積は115g/m2であった。この微粒子ルチル型酸化チタン100部に対し、NaCl100部とNa2P2O7・10H2Oを25部添加し、振動ボールミルで1時間混合し、該混合物を電気炉にて850℃で2時間焼成した。得られた焼成物を純水中に投入し、80℃で6時間加熱した後、洗浄して可溶塩を除去した。乾燥して得られた粒子は全て、短径が0.03以上0.07μm以下の範囲内にあり、長径が0.4以上0.8μm以下の範囲の微粒子針状酸化チタンを得た。このように得られた外添剤1の物性を表1に示す。
【0154】
<外添剤2乃至14の製造例>
表1の条件に変えた以外は外添剤1の製造例と同様にし、外添剤Aである外添剤2乃至14を得た。得られた外添剤2乃至14の物性を表1に示す。特定の外添剤については、表1に示す処理剤を用いた。
【0155】
【0156】
<外添剤15の製造例>
外添剤Aには該当しない外添剤である外添剤15はシリカ粒子であり、原体BET比表面積170m2/gのシリカ粒子にヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理を行って得られた。
【0157】
<トナー1の製造例>
トナー粒子1 100.0部
外添剤1 0.60部
外添剤15 0.80部
へンシェルミキサー(日本コークス社製)を用い、上記の各材料を3000rpmで15分間混合してトナー1を得た。走査型電子顕微鏡を用いて該トナーを観察したところ、該外添剤Aが表面に存在することが確認できるトナー粒子の割合は、70個数%以上であった。
【0158】
<トナー2乃至17の製造例>
表2の条件に変えた以外はトナー1の製造例と同様にし、トナー2乃至17を得た。該外添剤が表面に存在することが確認できるトナー粒子の割合は、表2の通りであった。
【0159】
【0160】
<アナターゼ型酸化チタン粒子1及び2、5、6の製造例>
硫酸チタン、硫酸チタニルを含む溶液を加熱して加水分解させ含水二酸化チタンスラリーを作製し、二酸化チタンスラリーを脱水焼成した。これにより、アナターゼ化度がほぼ100%のアナターゼ型酸化チタン1が得られた。上記の方法において、硫酸チタニルの溶液濃度を制御することにより、アナターゼ化度がほぼ100%のアナターゼ型酸化チタン粒子2、5、6を作製した。得られたアナターゼ型酸化チタン粒子の物性を表3に示す。
【0161】
<アナターゼ型酸化チタン粒子3、4、7の製造例>
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得た含水二酸化チタンスラリーに、硫酸ニオブ(水溶性のニオブ化合物)を添加した。添加量は、スラリー中のチタン量(二酸化チタン換算)に対し、ニオブイオンとして10.0質量%の割合で硫酸ニオブを添加した。
硫酸チタニル水溶液に硫酸ニオブをニオブイオンとして10.0質量%の割合で加えたものを加水分解し、含水二酸化チタンスラリーを得た。次に、ニオブイオンなどを含む含水二酸化チタンスラリーを脱水して、焼成温度は1000℃で焼成した。これによりニオブ原子を含有したアナターゼ型酸化チタン粒子3を得た。
上記の方法において、硫酸ニオブの添加量を制御することにより、ニオブ原子を含有したアナターゼ型酸化チタン粒子4、7を得た。得られたアナターゼ型酸化チタン粒子の物性を表3に示す。
【0162】
<導電性粒子1及び2、3、5の製造例>水酸化ニオブ(V)を濃硫酸に溶解して、硫酸チタン水溶液と混合して、ニオブ塩及びチタン塩の酸性混合液を(以下「チタンニオブ混合液」という。)を調製した。
アナターゼ型酸化チタン粒子1を100部計量して芯材粒子として水に分散して懸濁液とし、1000部の水懸濁液として撹拌しながら670℃までに加温した。
pHを2.5に維持しながら、アナターゼ型酸化チタン粒子1の重量に対して、Tiとして337g/kg、Nbとして10.3g/kgを含有するチタンニオブ混合液と水酸化ナトリウム水溶液を同時に添加した。また、五塩化ニオブ(NbCl5)3部を11.4モル/L塩酸100部に溶解させたニオブ溶液と、チタンとして12.0部を含む硫酸チタン溶液200部とを混合したチタンニオブ酸液(液中のニオブ原子とチタン原子の重量比が1.0/20.0となる)を用意した。このチタンニオブ酸液と、10.7モル/L水酸化ナトリウム溶液とを、上記水懸濁液のpHが2~3となるように上記水懸濁液に3時間かけて同時に滴下(並行添加)した。滴下終了後、懸濁液をろ過、洗浄し、110℃で8時間乾燥した。この乾燥物を有機物ともに窒素雰囲気中、725℃にて1時間の焼成を行い、ニオブ原子が表面近傍に偏在したニオブ原子含有酸化チタン粒子1を得た。
【0163】
次に、
・ニオブ原子含有酸化チタン粒子1 100.0部
・表面処理剤1 6.0部
・トルエン 200.0部
表面処理剤1は下記式(S-1)で示される信越化学工業(株)製の商品名KBM-3033である。
【化2】
以上を混合し、攪拌装置で4時間攪拌した後、ろ過、洗浄後、さらに130℃で3時間加熱処理を行って、導電性粒子1が得られた。
上記の方法において、表3に示す酸化チタンに対するニオブ原子の重量比になるように五塩化ニオブの量を制御することで、導電性粒子2、3、5を得た。得られた導電性粒子の表面の物性や粒子径を表3に示す。
【0164】
(導電性粒子4の製造例)
100gの個数平均粒径190nmの球形状のアナターゼ型酸化チタン粒子4を水に分散させて、1Lの水懸濁液として60℃に加温した。チタンとして33.7gを含む硫酸チタン溶液600mLを混合したチタン酸液と10.7モル/L水酸化ナトリウム溶液とを懸濁液のpHが2~3となるように3時間かけて同時に滴下(並行添加)した。滴下終了後、懸濁液をろ過、洗浄し、110℃で8時間乾燥した。この乾燥物を大気雰囲気中、800℃にて1時間の加熱処理を行った。これにより、ニオブ原子が表面近傍に偏在した酸化チタンである導電性粒子4を得た。
【0165】
(導電性粒子6の製造例)
個数平均粒径170nmの略球形状のアナターゼ型酸化チタン粒子6を導電性粒子6として用いた。導電性粒子6の物性を表3に示す。
【0166】
(導電性粒子7の製造例)
以下の材料を用意した。
・酸化スズ粒子(商品名:S-2000、三菱マテリアル(株)製):100.0部
・表面処理剤2:20.0部
・トルエン:200.0部
表面処理剤2は下記式(S-2)で示される信越化学工業(株)製の商品名KBM-3033である。
【化3】
これらを混合し、攪拌装置で4時間攪拌した後、ろ過及び洗浄を行い、その後、さらに130℃で3時間加熱処理を行って、表面処理をすることで導電性粒子7を得た。
【0167】
(導電性粒子8の製造例)
導電性粒子7において、酸化スズ粒子を個数平均粒径が20nmのものに変更した以外は同じようにして、導電性粒子8を得た。
【0168】
(導電性粒子9の製造例)
個数平均粒径6nm、ニオブ原子含有量0.5質量%の、略球形状のアナターゼ型酸化チタン粒子7を導電性粒子9として用いた。
【0169】
【表3】
表中、Aは、「粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率」であり、Bは、「粒子中心部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率」である。
【0170】
<電子写真感光体1の製造例>
直径24mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
【0171】
(導電層の製造例1)
次に、以下の材料を用意した。
・酸素欠損型酸化スズ(SnO2)で被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子(平均一次粒子径230nm) 214部
・フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%) 132部
・1-メトキシ-2-プロパノール 98部
これらを、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数2000rpm、分散処理時間4.5時間、冷却水の設定温度18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き150μm)でガラスビーズを取り除いた。得られた分散液に、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm)を添加した。シリコーン樹脂粒子の添加量は、ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して10質量%となるようにした。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)を分散液に添加した。
次に、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料と表面粗し付与材の合計質量(すなわち、固形分の質量)が分散液の質量に対して67質量%になるように、メタノールと1-メトキシ-2-プロパノールの混合溶剤(質量比1:1)を分散液に添加した。その後、攪拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを1時間140℃で加熱することによって、膜厚30μmの導電層を形成した。
【0172】
(下引き層の製造例1)
次に、以下の材料を用意した。
・電子輸送物質として下記式E-1で示される化合物 3.0部
・ブロックイソシアネート(商品名:デュラネートSBB-70P、旭化成ケミカルズ(株)製) 6.5部
・スチレン-アクリル樹脂(商品名:UC-3920、東亞合成製) 0.4部
・シリカスラリー(製品名:IPA-ST-UP、日産化学工業製、固形分濃度15質量%、粘度9mPa・s) 1.8部
・1-ブタノール 48部
・アセトン 24部
ただし、電子輸送物質(式E-1)は以下で示される。
【化4】
以上を混合溶解して、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを30分間170℃で加熱することによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。
【0173】
次に、CuKα特性X線回折より得られるチャートにおいて、7.5°及び28.4°の位置にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部とポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業社製)5部を用意した。これらをシクロヘキサノン200部に添加し、直径0.9mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で6時間分散した。
これにシクロヘキサノン150部と酢酸エチル350部をさらに加えて希釈して電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。
粉末X線回折測定は以下の条件で行われた。
使用測定機:理学電気(株)製、X線回折装置RINT-TTRII
X線管球:Cu
管電圧:50kV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター
【0174】
(感光層の製造例1)
次に、以下の材料を用意した。
・下記式(C-1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 6.0部
・下記式(C-2)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 3.0部
・下記式(C-3)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 1.0部
・ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製) 10.0部
・下記式(C-4)と下造式(C-5)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂(x/y=0.95/0.05、粘度平均分子量=20000) 0.02部
これらを、オルトキシレン25部/安息香酸メチル25部/ジメトキシメタン25部の混合溶剤に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が12μmの電荷輸送層を形成した。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0175】
(表面保護層の製造例1)
次に、以下の材料を用意した。
・導電性粒子1 76.0部
・結着樹脂として下記式(O-1)で示される化合物 76.0部
・1-プロパノール(1―PA) 100.0部
・シクロヘキサン(CH) 100.0部
を混合し、攪拌装置で6時間攪拌して、表面保護層用塗布液を調製した。
【化10】
この表面保護層用塗布液1を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で支持体(被照射体)を300rpmの速度で回転させながら、1.6秒間電子線を塗膜に照射した。表面保護層位置の線量は15kGyであった。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度を117℃に昇温させた。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は10ppmであった。
次に、大気中において塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却した後、塗膜の温度が120℃になる条件で1時間加熱処理を行い、膜厚2μmの表面保護層を形成した。このようにして、導電性粒子1を含有する表面保護層を有する電子写真感光体1を製造した。感光体の表面保護層表面の物性について表4に示す。
【0176】
(電子写真感光体2~4及び6~15の製造例)
電子写真感光体1の製造例において、表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体2~4、6~15を製造した。感光体の表面保護層表面の物性について表4に示す。
【0177】
(電子写真感光体5の製造例)
電子写真感光体1の製造例において、(表面保護層の製造例)を以下のように変更した以外は同様にして、電子写真感光体5を得た。
表面保護層用塗布液を以下のように調製した。
まず、以下の材料を用意した。
・導電性粒子9:10部
・下記式(H-7)で示される化合物10部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシル(フェニル)メタノン)1部
これらを、n-プロピルアルコール40部に混合してサンドミルで2時間分散して保護層塗布液を作製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、電子写真感光体1と同様に電子写真感光体5を製造した。電子写真感光体5の物性を表4に示す。
【化11】
【0178】
【0179】
<実施例1>
トナー1と電子写真感光体1を用いた、下記実機評価を行った。評価結果を表5に示す。
実機評価には、市販のキヤノン製レーザービームプリンタ「LBP7600C」の改造機を用いた。改造点は、評価機本体のギア及びソフトウェアを変更することにより、現像ローラーの回転数をドラムに対して2倍の周速で回転するように設定し、プロセススピードを倍になるように設定した。また、当該レーザービームプリンタ内の前露光装置を撤去した。以上のような改造を施すことで、画像濃度変化、を評価する上ではより厳しいモードとなる。
次に、電子写真画像形成装置及び未使用の電子写真感光体1を、温度23.0℃/湿度50%RHの環境下に24時間以上放置した後に、トナー1を70gと電子写真感光体1を電子写真画像形成装置のカートリッジに装着した。
用紙は、LETTERサイズのBusiness4200(XEROX社製、75g/m2)を用いて、左右に余白を50mmずつとった。
【0180】
<電子写真画像形成装置の立ち上げ直後の帯電立ち上がり性評価>
改造機を23℃50RH%環境下において、ベタ画像を単色にて10枚出力した。2枚目と10枚目の画像に関して、濃度測定を任意の20箇所で行い、それぞれ20箇所の平均値から、ベタ画像濃度を算出する。なお、濃度はX-Riteカラー反射濃度計(X-rite社製、X-rite 500Series)で測定した。得られた2枚目と10枚目のベタ画像の濃度差の値を初期の帯電立ち上がり性とし、下記の評価基準で評価した。評価結果を表5に示す。
(評価基準)
A:初期の帯電立ち上がり性が0.04未満
B:初期の帯電立ち上がり性が0.04以上0.07未満
C:初期の帯電立ち上がり性が0.07以上0.10未満
D:初期の帯電立ち上がり性が0.10以上
【0181】
<初期濃度均一性及び耐久後濃度均一性の評価>
改造機を23℃50RH%環境下において、上記のとおり、印字比率が1%の文字画像を1枚出力した後、ハーフトーン(40H)画像を出力した。その後、印字比率が1%の文字画像を10000枚出力し、ハーフトーン(40H)画像を出力した。これらのハーフトーン画像に関して、濃度均一性について以下の基準に基づき評価した。なお、40H画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hをベタ白(非画像)とし、FFHをベタ黒(全面画像)とするときのハーフトーン画像である。
濃度均一性の評価としては、濃度測定は20箇所行い、最大値と最小値の濃度差の値を濃度一様性として、判定した。なお、濃度はX-Riteカラー反射濃度計(X-rite社製、X-rite 500Series)で測定し、2枚目において初期濃度均一性と10000枚目において耐久後濃度一様性を下記の評価基準で評価した。評価結果を表5に示す。
(評価基準)
A:濃度一様性が0.04未満
B:濃度一様性が0.04以上0.07未満
C:濃度一様性が0.07以上0.10未満
D:濃度一様性が0.10以上
【0182】
<実施例2乃至23及び比較例1乃至8>
トナー粒子2乃至17を用いて、実施例1と同様の評価を行った。実施例2乃至23及び比較例1乃至8の評価結果を表5に示す。
【0183】
【0184】
本発明の実施形態は以下の構成を含む。
(構成1)
電子写真画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
該プロセスカートリッジは、
電子写真感光体と、
トナーと、
該トナーを収容し該電子写真感光体表面に該トナーを供給する現像手段と、
を有し、
該トナーはトナー粒子と外添剤Aとを有し、
該外添剤Aは、以下の規定(i)~(iii)
(i)長径が100nm以上3000nm以下、
(ii)アスペクト比が5.0以上、
(iii)比抵抗が1×105Ω・cm以上1×108Ω・cm以下、
を満たし
該外添剤Aが表面に存在するトナー粒子の前記トナー中のトナー粒子に占める割合が30個数%以上であり、
該電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された感光層と該電子写真感光体の表面に形成された表面保護層とを有し、
該表面保護層は、導電性粒子を含有し、
該表面保護層における該導電性粒子の含有量が5体積%以上70体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である、
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
(構成2)
前記外添剤Aは、酸化チタン粒子であることを特徴とする構成1に記載のプロセスカートリッジ。
(構成3)
前記外添剤Aは、ルチル型酸化チタン粒子であることを特徴とする構成1又は2に記載のプロセスカートリッジ。
(構成4)
前記トナー粒子はホウ酸を含有することを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(構成5)
前記導電性粒子が酸化チタン粒子であることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(構成6)
前記導電性粒子がニオブ原子を含有した酸化チタン粒子であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(構成7)
前記ニオブ原子含有酸化チタン粒子は、粒子中心部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率に対して、粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率が、2.0倍以上である構成6に記載のプロセスカートリッジ。
(構成8)
前記ニオブ原子を含有した酸化チタン粒子が、2.6質量%以上10.0質量%以下のニオブ原子を含有する構成6又は7に記載のプロセスカートリッジ。
(構成9)
前記導電性粒子が前記表面保護層に占める割合が40体積%以上70体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が1.0×1010Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である構成1乃至8のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
【符号の説明】
【0185】
21 支持体
22 下引き層
23 電荷発生層
24 電荷輸送層
25 表面保護層
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
31 導電材粒子の中心部
32 導電材粒子の表面近傍
33 導電材粒子の中心部を分析するX線
34 導電材粒子の表面から一次粒子径の5%内部を分析するX線