(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】複動ピストン圧縮機用の弁装置
(51)【国際特許分類】
F04B 39/08 20060101AFI20241017BHJP
F04B 39/10 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
F04B39/08 A
F04B39/10 C
(21)【出願番号】P 2022504238
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2020070084
(87)【国際公開番号】W WO2021013670
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】102019119944.1
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリウス ブルカウスカス
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ヘンゼル
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第95/011384(WO,A1)
【文献】特開昭54-047112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/08、39/10
F04B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に設けられる圧縮空気供給系用の複動ピストン圧縮機(1)であって、シリンダヘッド(12)を備えており、該シリンダヘッド(12)は、弁支持体板(4)と、流入弁薄板(18a)とを有しており、該流入弁薄板(18a)により、流入室(14a,b)を、前記弁支持体板(4)に設けられた複数の流入通路(21)を介して作業室に接続可能であり、前記シリンダヘッド(12)内に組み込まれた放圧系(7a,b)を備えており、該放圧系(7a,b)を介して、前記弁支持体板(4)に設けられた、前記作業室を前記シリンダヘッド(12)内の
前記流入室
(14a,b)に接続する放圧通路(19a,b)
の開閉状態が
切替装置(8a,b)によって切替え可能であり、前記放圧系(7a,b)は、
前記切替装置(8a,b)と薄板(9a,b)とを有しており、該薄板(9a,b)は、作業室側において前記弁支持体板(4)に取り付けられていると共に、前記放圧通路(19a,b)を開放するために前記弁支持体板(4)から持上げ可能である、複動ピストン圧縮機(1)において、
前記薄板(9a,b)の持上げを、
吸入の際に自動的にか
つ放圧系を介して制御して行うことができることを特徴とする、複動ピストン圧縮機(1)。
【請求項2】
前記流入弁薄板(18a,b)は凹部を有しており、該凹部内に少なくとも1つの放圧通路(19a,b)と前記薄板(9a,b)とが配置されている、請求項1記載の複動ピストン圧縮機(1)。
【請求項3】
前記薄板(9a,b)はリード弁として構成されている、請求項2記載の複動ピストン圧縮機(1)。
【請求項4】
前記放圧系(7a,b)には、前記薄板(9a,b)を支持するために、該薄板(9a,b)の行程を制限する手段が含まれている、請求項2記載の複動ピストン圧縮機(1)。
【請求項5】
前記薄板(9a)の行程を制限する前記手段は、前記作業室内に突入する制限薄板(22)である、請求項4記載の複動ピストン圧縮機(1)。
【請求項6】
前記放圧系(7a,b)は、ばね部材を介して戻ることができる放圧ピストン(10a,b)を有しており、該放圧ピストン(10a,b)は、制御圧により動作可能である、請求項1記載の複動ピストン圧縮機(1)。
【請求項7】
当該複動ピストン圧縮機(1)は2段式の圧縮機として、前段(2)と高圧段(3)とを備えて形成されており、前記シリンダヘッド(12)内には、各段用に放圧系(7a,b)と、前記高圧段(3)の前記放圧通路(19b)を前記前段(2)の前記流入室(14a)に接続する接続通路(13)とが設けられている、請求項1記載の複動ピストン圧縮機(1)。
【請求項8】
前記高圧段(3)の前記放圧系(7b)は、運転中、吸入行程の時には閉鎖位置に留まるように設計された薄板(9b)を有している、請求項7記載の複動ピストン圧縮機(1)。
【請求項9】
商用車用の、圧縮空気を発生させる複動ピストン圧縮機(1)を運転する方法であって、前記複動ピストン圧縮機(1)は、
2つの放圧系(7a,b)が組み込まれたシリンダヘッド(12)を有しており、前記放圧系(7a,b)を介して、前記シリンダヘッド(12)の弁支持体板(4)に設けられた、前記複動ピストン圧縮機(1)の作業室を前記シリンダヘッド(12)内の
流入室
(14a,b)に接続する放圧通路(19a,b)
の開閉状態が
切替装置(8a,b)によって切替え可能である、方法において、
前記作業室内に負圧が生ぜしめられる吸入行程において、前記放圧系(7a)の薄板(9a)が自動的に、
かつ前記放圧系(7a)の作動時に強制的に開放位置に動かされ、これにより、追加的な空気が流入室(14a)と前記放圧通路(19a)とを介して前記作業室(20a)内に吸い込ま
れ、および圧縮行程において、空気が前記放圧通路(19a)を介して前記作業室から吐出され得ることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記複動ピストン圧縮機(1)は2段式の圧縮機として、前段(2)と高圧段(3)とを備えて形成されており、前記シリンダヘッド(12)内には、各段(2,3)用に放圧系(7a,b)が設けられており、前記前段(2)の前記薄板(9a)は、吸入行程において自動的に開放位置に動かされ、前記高圧段(3)の薄板(9b)は、吸入行程の時には閉鎖位置に留まるように設計されている、請求項9記載の方法。
【請求項11】
2段式の前記圧縮機(1)の前記シリンダヘッド(12)内には前記放圧系(7a,b)を接続する接続通路(13)が設けられており、前記高圧段(3)の前記放圧通路(19b)は、前記接続通路(13)を介して前記前段(2)の前記流入室(14a)に接続されており、前記複動ピストン圧縮機(1)を放圧するために、両前記放圧系(7a,b)の放圧ピストン(10a,b)が切り替えられ、これにより、両前記段(2,3)の前記薄板(9a,b)が開放位置に動かされる、請求項
10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック、バスまたは鉄道車両等の自動車に設けられる圧縮空気供給系用の複動ピストン圧縮機に関する。複動ピストン圧縮機は、実質的に2つの領域、つまり、弁が配置されたシリンダヘッド領域と、少なくとも1つのシリンダを備えたクランクシャフトケーシングとを有しており、シリンダは、作業室内で可動であり、これにより、吸入行程運動および圧縮行程運動が生じる。複動ピストン圧縮機は、単段式または多段式、特に2段式に構成されていてよい。
【0002】
空気流を制御する弁装置は、一般にシリンダヘッドに対応して配置されており、自動的に作動する吸入弁と吐出弁とを有しており、吸入弁と吐出弁とは、ピストンの行程運動に基づき作業室内を支配している圧力により開閉される。
【0003】
ピストンの吸入行程は、各シリンダの作業室内に負圧を生ぜしめ、これにより、対応して配置された吸入弁が開くと共に、対応して配置された吐出弁は閉じられる。空気は、弁支持体板に設けられた流入室と流入通路とを介してシリンダの作業室内に流入する、もしくは作業室内に吸い込まれる。
【0004】
ピストンの圧縮行程は、各シリンダの作業室内に過剰圧力を生ぜしめ、これにより、対応して配置された吸入弁が閉じると共に、対応して配置された吐出弁は開放されるため、圧縮された空気は、シリンダの作業室から圧力通路を介して後続の圧縮空気系に圧送される。
【0005】
独国特許出願公開第102016006358号明細書からも公知のように、吸入弁は大抵、弁薄板として形成されており、弁薄板の弁舌片は、片側において複動ピストン圧縮機のシリンダケーシングとシリンダヘッドとの間に緊締されておりかつその少なくとも1つの舌部を備えた自由端部においてシリンダケーシングの凹部内へ案内されている。弁舌片により、吸入室をシリンダの作業室に接続する、弁支持体板の入口開口を閉じることができる。さらに弁薄板は、シリンダの作業室と圧力通路との間に配置された弁支持体板に少なくとも1つの出口開口が切り抜かれるように構成されている。出口開口を閉じることができる吐出弁は、一般にシリンダヘッド領域の内側に位置している。
【0006】
複動ピストン圧縮機の圧送運転は、主圧力導管内の圧力が予め設定された停止圧力に到達するまで行われる。次いで圧縮機がアイドリング運転に切り替えられ、これにより、アイドリング運転中の消費電力が削減される。このような系は、放圧系またはアイドリング系とも呼ばれる。
【0007】
欧州特許出願公開第1650434号明細書からは、例えば系圧に到達し、リリーフ弁が開くと直ちに自動的に開くアイドリング弁が公知である。これにより、アイドリング弁を閉鎖位置に保つ圧縮空気系の逆圧が解消される。開かれたアイドリング弁が作業室を流入室に接続するため、圧縮行程中に圧縮が行われる恐れはない。このようなピストン圧縮機の利点は、圧力容器内で目標充填圧に到達した場合の停止が自動的に行われる、という点にある。
【0008】
1つの別のアイドリング弁が、例えば独国特許出願公開第102013001147号明細書から公知である。ここで提案される放圧系用のアイドリング弁は、ばねにより閉鎖位置に保たれ、選択的に圧力を加えることにより開放位置に切り替えられてよい。このような系は、「外部制御系」とも呼ばれる。
【0009】
欧州特許第0091994号明細書からは、アイドリング弁装置が公知である。このアイドリング弁装置は、圧縮機のピストンを横切る領域には突入しないように配置されている。
【0010】
あらゆるアイドリング系に共通して、アイドリング運転中、作業室は放圧通路を介して別の室に接続されるため、圧縮は全くまたは極僅かにしか行われない。
【0011】
本発明の課題は、複動ピストン圧縮機のエネルギ消費量を大幅に減少させる放圧系を提案することにある。
【0012】
この課題は本発明に基づき、請求項1記載の構成により解決される。本発明による構成の別の有利な特徴は、下位請求項に記載されている。
【0013】
本発明による構成は、放圧系が組み込まれたシリンダヘッドを備え、放圧系を介して、シリンダヘッドの弁支持体板に設けられた、複動ピストン圧縮機の作業室をシリンダヘッド内の室に接続する放圧通路が切替え可能である、自動車に設けられる圧縮空気供給系用の複動ピストン圧縮機である。
【0014】
複動ピストン圧縮機の効率を改良するために、放圧系は、切替装置と薄板とを有しており、薄板は、作業室側において弁支持体板に取り付けられていると共に、放圧通路を開放するために弁支持体板から持上げ可能であるように設計されており、薄板の持上げは、自動的にかつ/または放圧系を介して制御されて行われてよい、ということを提案する。
【0015】
薄板の自動的な持上がりにより、拡大された有効通路横断面が生じ、拡大された有効通路横断面に基づき、シリンダの吸入行程における作業室内への空気の流入抵抗が下げられる、ということが達成される。
【0016】
薄板の制御された持上がりにより、圧縮が一切行われないアイドリング運転に圧縮機が切り替えられる、ということが達成される。
【0017】
1つの好適な実施形態は、シリンダヘッドが流入室を有しており、流入室は、弁支持体板に設けられた複数の流入通路と、自動的に作動する、リード弁として形成された流入弁薄板とを介して作業室に接続可能であり、少なくとも1つの放圧通路が、複数の流入通路の内側に配置されている、ということを想定し得る。換言すると、少なくとも1つの放圧通路は、複数の流入通路により包囲されている。
【0018】
この場合、薄板は、好適にはリード弁として構成されていてよく、この場合、リード弁とは、片側において緊締されており、非作動位置では通路を閉じ、作動位置では通路を通る通流部を開放する薄板を意味する。
【0019】
好適には、流入室は、流入通路と放圧通路とを介して作業室に接続可能である。流入室は空気流入部に接続されており、空気流入部を介して特に周辺空気が流入室内に流入する。流入室内で、空気は複数の流入通路と少なくとも1つの放圧通路とに向かって分かれ、これらを介して作業室内に吸い込まれる。拡大された横断面により、ピストンの吸入行程動作が容易になり、このことはエネルギ消費量を削減する。
【0020】
さらに放圧系には、薄板を支持するために、薄板の行程を制限する手段が含まれていてよい。特に、作業室内への吸入行程に際して生じる負圧により吸引される大きな空気体積の場合、従来技術に相応する弁薄板においても必要であるのと同様に、薄板動作を制限せねばならない、ということが必要とされる場合がある。薄板の行程制限には、例えば作業室内に突入する制限薄板が用いられてよい。それにもかかわらずデッドスペースを比較的小さく保つために、シリンダは制限薄板用に、対応する凹部を有していてよい。択一的に、この凹部は、薄板が少なくとも行程動作の開始時に凹部に当たるように、制限手段として直接用いられてもよい。
【0021】
さらに放圧系は、ばね部材を介して戻ることができる放圧ピストンを有していてよく、放圧ピストンは、制御圧により動作可能である。
【0022】
1つの別の構成では、複動ピストン圧縮機は2段式の圧縮機として、前段と高圧段とを備えて形成されていてよく、この場合、シリンダヘッド内には、各段用に放圧系と、高圧段の放圧通路を流入室に接続する接続通路とが設けられている。多段式の圧縮機の場合、全ての段の圧縮行程の放圧は、各作業室を、放圧通路を介して制御して流入室に接続する接続部を介して行われる。よって、薄板の放圧位置では、高圧段の吸入行程においても周辺空気が直接作業室内に流入し得る。
【0023】
前段の薄板とは異なり、高圧段の放圧系の薄板は、運転中、吸入行程の時には閉鎖位置に留まるように設計されている。つまり、高圧段もしくは後続の高圧段の薄板は、薄板が放圧系のピストンを介してのみ能動的に可動であるように設計されている。
【0024】
さらに、商用車用の、圧縮空気を発生させる複動ピストン圧縮機を運転する方法を提案する。複動ピストン圧縮機は、放圧系が組み込まれたシリンダヘッドを有しており、放圧系を介して、シリンダヘッドの弁支持体板に設けられた、複動ピストン圧縮機の作業室をシリンダヘッド内の室に接続する放圧通路が切替え可能である。
【0025】
当該方法は、作業室内に負圧が生ぜしめられる吸入行程において、放圧系の薄板が自動的に、または放圧系の作動時に強制的に開放位置に動かされ、これにより、追加的な空気が流入室と放圧通路とを介して作業室内に吸い込まれる、または放圧系の作動時に、放圧通路を介して空気を作業室から吐出可能である、ということを特徴とする。この方法は、単段式の複動ピストン圧縮機または多段式の複動ピストン圧縮機の前段もしくは第1段において用いられる。
【0026】
2段式の圧縮機としての複動ピストン圧縮機の1つの構成では、前段と高圧段とが相前後して直列に接続されており、この場合、各段のシリンダヘッド内に放圧系が設けられている。このような構成では、前段の薄板は、吸入行程において自動的に開放位置に動かされ、高圧段の薄板は、吸入行程において閉鎖位置に留まるように設計されていてよい。
【0027】
さらに、2段式の圧縮機のシリンダヘッド内には放圧系を接続する接続通路が設けられていてよく、この場合、高圧段の放圧通路は、接続通路を介して前段の流入室に接続されており、この場合、複動ピストン圧縮機を放圧するためもしくはアイドリング運転へ切り替えるために、両方圧系の放圧ピストンが切り替えられ、これにより、両段の薄板が開放位置に動かされるようになっている。
【0028】
以下に、本発明を実施例に基づきより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】放圧系を備えた2段式の複動ピストン圧縮機の弁板のピストン側を示す図である。
【
図2】放圧系を備えた2段式の複動ピストン圧縮機の弁板のシリンダヘッド側を示す図である。
【
図3】第1の圧縮機段の放圧系を示す断面図である。
【
図4】第2の圧縮機段の放圧系を示す断面図である。
【0030】
図1には、シリンダヘッド12に対応して配置された、放圧系を備えた2段式の複動ピストン圧縮機の弁支持体板4のピストン側が示されている。2つの圧縮機段、つまり前段2と高圧段3とは類似して構成されているが、ただし大きさと機能とにおいて互いにやや異なっている。基本的な構造は同じである。両圧縮機段は流入弁5a,bを有しており、流入弁5a,bは、片側において位置固定されておりかつ互いに反対の側に複数のストッパ面を有している。ストッパ面用に、クランクシャフトケーシング11内には複数の凹部(ここには図示せず)が設けられており、これらの凹部により、流入弁5a,bの開放運動が制限される。流入弁5a,bの外側輪郭の内側には複数の流出通路23が配置されており、部分的に凹部を通って流入弁5a,b内へ延びている。流入弁5a,bのほぼ中央、つまり流入弁5a,bが凹部を有しているシリンダ20a,bの作業室のほぼ中央には、放圧系7a,bに属す薄板9a,bが配置されている。薄板9a,bも、片側において緊締されている。
【0031】
放圧系7a,bの異なる機能に基づき、前段2の弁と高圧段3の弁も、やや異なっている。前段2のシリンダ20aの吸入行程に際して吸入されねばならない、より大きな空気体積に基づき、薄板9aは、前段2のシリンダ20aの吸入行程の度に自動的に開くように設計されている。開放動作を制限するためには、薄板9a用のストッパを成す制限薄板22が設けられている。
【0032】
図2には、放圧系を備えた2段式の複動ピストン圧縮機の弁支持体板4のシリンダヘッド側が示されている。この図では、圧縮機段の通路および室が良好に認識され得る。両段2,3は、それぞれ流入室14a,bと流出室15a,bとを有している。流出室内には自動的に作動する流出弁6a,bが配置されており、流出弁6a,bは閉鎖位置において、弁支持体板に設けられた流出通路23を閉じ、作業室内の規定可能な圧力を超過した場合に開放位置へ動かされる。
【0033】
前段2の流入室14aの領域には、弁支持体板4を通る複数の通路開口が示されている。これらの開口の一部、つまり外側の半円部は、流入弁薄板18aを備えた流入弁5aに対応して配置された流入通路21aである。吸入行程において空気が流入通路21aを通り作業室内に吸い込まれると、流入弁薄板18aは開放位置に動かされる。圧縮行程では、流入弁薄板18aは流入通路21aを閉じる。流入通路21aの半円部の内側には、複数の放圧通路19aが配置されている。放圧通路19aの通流部は、放圧系7aの薄板9aにより切り替えられる。
【0034】
高圧段の設計はやや異なっており、ここでは放圧系7bの放圧通路19bが、接続通路13を介して前段2の流入室14aに接続された別個の室内に配置されている。前段2の流出室15aと高圧段3の流入室14bとの間の別個の通路接続は図示されていない。
【0035】
図3および
図4には、前段2の放圧系7aおよび高圧段3の放圧系7bが断面図で示されている。シリンダヘッド12の一般的な層状の構成は従来技術から周知であるため、ここでは本発明に重要な通路および室のみを引き続き見ていくことにする。前段用の本発明による放圧系7aは
図3に示されており、高圧段3用の放圧系7bは
図4に示されている。
【0036】
単段圧縮機の場合には、上述しかつ
図3に示したような前段の放圧系7aが用いられてよい。多段式、つまり2段式以上の場合には、前段に続く全ての段が高圧段3の放圧系7bを有しており、この場合、1つの好適な構成では、全ての段を前段の流入室に接続可能な接続通路が設けられていてよい。択一的に、各段が、周辺環境に接続された別個の通路を有していてもよい。
【0037】
前段2の放圧弁における特徴は制限薄板22であり、制限薄板22は、塊状の構成部材として形成されておりかつ薄板9aを支持するため、薄板9aが極度に大幅に作業室内へ曲がり、これにより極度に大きな曲げ応力が生じる、ということはない。シリンダ20aは、シリンダが上死点に位置するときに制限薄板22が侵入する端面に凹部を有しているため、デッドスペースが最小限になる。この凹部は、制限薄板22と、開放状態において制限薄板22上に位置する薄板9aとが凹部内にちょうど収まる大きさである。
【0038】
さらに、シリンダヘッド12内で案内されている放圧ピストン10aが認められる。放圧ピストン10aは、図示の位置では休止位置に位置しており、ばねにより、この位置に保たれる。放圧ピストン10aには、図示の制御圧通路16を介して圧力が供給され得、これにより、放圧ピストン10aは放圧位置に動かされ、薄板9aは開放位置に動かされる。
【0039】
図4に示す高圧段3の放圧系7bの特徴は、薄板9bの設計であり、薄板9bは、放圧ピストン10bに支援されてのみ開放位置に動くことができるように、ばね剛性に設計されている。高圧段3のピストン20bの吸入行程は、薄板9bの、開放位置への自動的な動きを生ぜしめない。両放圧ピストン10a,bには、図示の制御圧通路16を介して同時に圧縮空気が供給される。ピストン20bもやはり、薄板9bが開放位置において位置する凹部を有している。
【符号の説明】
【0040】
1 複動ピストン圧縮機
2 前段
3 高圧段
4 弁支持体板
5a,b 流入弁
6a,b 流出弁
7a,b 放圧系
8a,b 切替装置
9a,b 薄板
10a,b 放圧ピストン
11 クランクシャフトケーシング
12 シリンダヘッド
13 接続通路
14a,b 流入室
15a,b 流出室
16 制御圧通路
17 冷却通路
18a,b 流入弁薄板
19a,b 放圧通路
20a,b 作業室内のピストン
21a,b 流入通路
22 制限薄板
23 流出通路
24 流入部 周辺空気