(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】難燃性ポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20241017BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241017BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C08K3/22
(21)【出願番号】P 2022527771
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2019120546
(87)【国際公開番号】W WO2021102621
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】バーグワーガー、ドラブ
(72)【発明者】
【氏名】カオ、チョンウェイ
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/140020(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/093052(WO,A1)
【文献】特開平05-125282(JP,A)
【文献】特開2015-093970(JP,A)
【文献】特開2016-076723(JP,A)
【文献】特開2000-204259(JP,A)
【文献】国際公開第2021/085230(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/088115(WO,A1)
【文献】特表2019-522711(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108690355(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107964277(CN,A)
【文献】特開平10-110179(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/04
C08K 3/013
C08K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)ポリシロキサンと、
(b)前記ポリシロキサン中に分散された、組成物重量に対して0.15重量パーセント以上かつ4.5重量パーセント以下の、レーザー回折粒径分析装置を使用して粒径分布の体積加重中央値として決定される1マイクロメートル未満かつ1ナノメートル超の平均粒径を有する酸化亜鉛粒子と、
(c)組成物重量に対して50~95重量パーセントの熱伝導性充填剤
を含み、
前記酸化亜鉛粒子が、表面処理を有さない、組成物。
【請求項2】
前記ポリシロキサンが、シラノール基、アルコキシ基、エポキシ基、シリルハイドライド基、及び炭素-炭素不飽和結合を含有する基からなる群から選択される1つ又は2つ以上の官能基のうちの任意の組合せを含む反応性ポリシロキサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、ヒドロシリル化反応系、ヒドロシリル化反応生成物、ポリシロキサン縮合反応系、及びポリシロキサン縮合反応生成物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、白金又はスズ触媒を更に含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記
熱伝導性充填剤が、SiO
2、及びAl
2O
3
からなる群から選択され
る少なくとも1つである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、組成物重量に対して0重量パーセント以上10重量パーセント未満の難燃剤を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、組成物重量に対して0重量パーセント以上10重量パーセント未満のハロゲン化化合物、組成物体積に対して0体積パーセント以上30体積パーセント未満のメタルハイドレート、組成物重量に対して0重量パーセント以上1.0重量パーセント未満の、白金、ロジウム、及びイリジウムの有機錯体を含有し、赤リンを含まず、また、前記組成物が燃焼する温度に加熱されると発泡するバインダー、発泡剤、及び酸源を含む膨張性シリコーンゴム配合物を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリシロキサンが、反応系の一部であるか、又は反応系の反応生成物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の分野
本発明は、UL94試験でV0の評価を達成するナノサイズの酸化亜鉛粒子を含むポリシロキサン組成物に関する。
【0002】
序論
ポリシロキサン組成物の難燃特性を改善することが望ましい。特に、UL94試験でV0の評価を達成するポリシロキサン組成物を実現することが望ましい。ポリシロキサン組成物の難燃特性を改善するための取組みとしては、10重量パーセント以上の充填量でのハロゲン化難燃剤、30体積パーセント超の濃度でのメタルハイドレート、少なくとも1重量パーセントの充填量での遷移金属錯体、又は、バインダー、発泡剤及び酸源のブレンドを含む膨張性成分のポリシロキサンポリマー組成物への組込みが挙げられる(例えば、Timpe,David C.のRubber and Plastics News、2007年6月11日~12日にオハイオ州クリーブランドで開催された2007 Hose Manufacturers Conferenceでの発表を参照)。
【0003】
しかしながら、膨張性成分又は前述の濃度の添加剤を添加する必要なしに、UL94試験におけるV0の評価の達成のために十分にポリシロキサンポリマー組成物の難燃特性を改善することができる添加剤を特定することは、当該技術分野において進歩となる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、膨張性成分、10重量パーセント(wt%)以上のハロゲン化難燃剤、30体積パーセント(vol%)以上のメタルハイドレート、又は1wt%以上の遷移金属錯体を添加する必要なしに、ポリシロキサン組成物のUL94試験におけるV0の評価を達成するための解決策を提供する。
【0005】
驚くべきことに、ポリシロキサンポリマー組成物中に0.15重量パーセント以上の、1マイクロメートル未満の平均粒径を有する酸化亜鉛(ZnO)粉末を含めることによって、組成物に十分な難燃特性を提供して、膨張性組成物、10wt%以上のハロゲン化難燃剤、30vol%以上のメタルハイドレート又は1wt%以上の遷移金属錯体を必要とせずに、UL94試験におけるV0の評価の達成が可能になることを予想外に発見した。特に、他の金属酸化物の粉末ではZnO粉末と同じ効果を得ることができないことが示されている。
【0006】
第1の態様では、本発明は、(a)ポリシロキサンと、(b)ポリシロキサン中に分散された組成物重量に対して0.15重量パーセント以上かつ85重量パーセント未満の、レーザー回折粒径分析装置を使用して粒径分布の体積加重中央値として決定される1マイクロメートル未満かつ1ナノメートル超の平均粒径を有する酸化亜鉛粒子と、を含む組成物である。
【0007】
本発明は、例えば、ポリシロキサンのシーラント及びコーティング配合物、並びに電子機器における封入剤又はギャップフィラーに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
試験方法は、日付が試験方法番号と共に示されていない場合、本文書の優先日現在での直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への言及の両方を含む。以下の試験方法の略語及び識別名が本明細書に適用される:ASTMは米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials)を指し、ENは欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0009】
商品名で特定される製品は、2019年10月1日おいて、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0010】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、端点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(wt%)は組成物重量に対するものであり、全ての体積パーセント(vol%)は組成物体積に対するものである。特に明記しない限り、分子量は、1ミリリットル/分の流速のテトラヒドロフラン溶出剤、35℃の示差屈折率検出器、及び分子量580Da~2,300Daの範囲にわたる16種のポリスチレンのナロースタンダードを用いて、Polymer LabsのPLgel 5マイクロメートルのガードカラム(50ミリメートル×7.5ミリメートル)、後続の2つのPolymer LabsのPLgel 5マイクロメートルのMixed-Cカラム(300ミリメートル×7.5ミリメートル)に、15ミリグラム/ミリリットルの濃度の試料を100マイクロリットル注入して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されたダルトンでの数平均分子量である。粘度は、ブルックフィールドDV-IIIコーンプレート型粘度計で#CP-52スピンドルを用いて、25℃、0.1~50RPMで測定する。
【0011】
本発明は、ポリシロキサンと、ポリシロキサン中に分散された酸化亜鉛(ZnO)粒子と、を含む組成物である。
【0012】
ZnO粒子は、1マイクロメートル未満、好ましくは0.90マイクロメートル以下、より好ましくは0.80マイクロメートル以下、0.70マイクロメートル以下、0.60マイクロメートル以下、0.50マイクロメートル以下の平均粒径を有することで特徴付けられ、また、0.40マイクロメートル以下、0.30マイクロメートル以下、0.25マイクロメートル以下、0.20マイクロメートル以下、0.15マイクロメートル以下であってもよく、また同時に、1ナノメートル超、好ましくは0.01マイクロメートル以上、0.02マイクロメートル以上、0.03マイクロメートル以上、0.04マイクロメートル以上、0.05マイクロメートル以上、更には0.10マイクロメートル以上の平均粒径を有することで特徴付けられる。本明細書では、Malvern Instruments製のMastersizer(商標)3000レーザー回折粒径分析装置を用いて、粒径分布の体積加重中央値(D50)として粒子の平均粒径を測定する。
【0013】
驚くべきことに、ZnO粒子が1マイクロメートル以上の平均粒径を有する場合、それらは、本発明で特定される範囲内のより小さい平均粒径を有するZnO粒子よりも、ポリシロキサン組成物に難燃特性を与える効果が劇的に少ないことを発見した。配合中の取り扱い及び分散における実用的な目的のために、平均粒径は1ナノメートルより大きいことが望ましい。
【0014】
ZnO粒子は、表面処理されていてもよく、又は表面処理がなくてもよい。(反応性の系では)ポリシロキサン又はポリシロキサン前駆体中での分散を促進する表面処理を有するZnO粒子の使用が望ましい場合がある。しかしながら、ZnO粒子によって与えられる難燃特性には、ZnO粒子の表面処理は必要とされない。例えば、ZnOは、テトラアルコキシシラン、及び/又はその部分加水分解-縮合生成物を含まなくてもよい。更に、組成物全体は、テトラアルコキシシラン、及び/又はその部分加水分解-縮合生成物のコーティングを有するZnO粒子を含まなくてもよい。実際、組成物は、テトラアルコキシシラン、及び/又はその部分加水分解-縮合生成物を含まなくてもよい。
【0015】
ZnO粒子は、亜鉛と酸素以外の原子を含まなくてもよい。例えば、ZnO粒子は、ZnO2/SiO2の複合粒子中に存在するような二酸化ケイ素(SiO)を含まなくてもよい。
【0016】
ZnO粒子は、0.15wt%以上の濃度で組成物中に存在し、0.20wt%以上、0.25wt%以上、0.30wt%以上、0.40wt%以上、0.50wt%以上、0.60wt%以上、0.75wt%以上、1.0wt%以上、1.25wt%以上、1.50wt%以上、1.75wt%以上、2.0wt%以上、2.5wt%以上、3.0wt%以上、3.5wt%以上、4.0wt%以上、更には4.5wt%以上の濃度で存在してもよい。ZnO粒子が0.15wt%未満の濃度で存在する場合、それらは、シリコン組成物に(他の難燃剤が存在しない場合)組成物がUL94試験でV0の評価を達成することを可能にするような十分な難燃特性を与えない。典型的には存在するZnOが多くなるほど難燃性能がより良好になることから、UL94試験におけるV0の評価を達成するために必要なZnO粒子の量に上限は知られていない。実際には、ZnO粒子は、本明細書に記載の下限濃度のうちの1つで存在すると同時に、ZnO粒子は95wt%以下、90wt%以下、80wt%以下、70wt%以下、60wt%以下、50wt%以下、40wt%以下、30wt%以下、25wt%以下、20wt%以下、15wt%以下、10wt%以下、5wt%以下、4.5wt%以下、4.0wt%以下、3.5wt%以下、3.0wt%以下、2.5wt%以下、2.0wt%以下、1.5wt%以下、又は更には1.0wt%以下の濃度で存在する。Wt%は組成物重量に対するものである。
【0017】
ZnO粒子はポリシロキサン中に分散される。「ポリシロキサン」とは、その骨格に沿って複数のシロキサン単位を含むポリマーである。シロキサン単位は典型的には、(R3SiO1/2)の一般構造を有する「M型」、(R2SiO2/2)の一般構造を有する「D型」、(R1SiO3/2)の一般構造を有する「T型」、及び(SiO4/2)の一般構造を有する「Q型」として識別される。酸素の下付き文字は、何本の酸素の結合がケイ素原子に結合しているかを示し、結合の残りはそのシロキサン単位以外の部分に結合している。各「R」基は独立して、水素、及び/又は炭素含有部分、例えば水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル基(メチル及びフェニルなど)、置換ヒドロカルビル基、アルコキシ基、及び置換アルコキシ基から選択される。いくつかの典型的なR基としては、水素、メチル、及びフェニルが挙げられる。
【0018】
本発明の最も広い予想される技術的範囲では、ポリシロキサンは限定されず、シロキサン単位とそれらのシロキサン単位上の構成要素Rとの任意の組合せを含む。ポリシロキサンは、望ましくは反応性ポリシロキサンであり、これはポリシロキサンがシラノール及び/又は炭素-炭素不飽和基(例えば、アルケン又はアルキン基)などの反応性基を含むことを意味する。例えば、ポリシロキサンは、シラノール基、アルコキシ基、エポキシ基、炭素-炭素不飽和結合を含む基、及びシリルハイドライド基からなる群から選択される2つ以上の官能基のうちの任意の1つ又は任意の組合せを含む反応性ポリシロキサンであってもよい。
【0019】
ポリシロキサンが反応性の系の一部であってもよい。望ましくは、ポリシロキサンは、ポリシロキサンと反応することができる成分を含む、反応性の系の中の反応性ポリシロキサンである。反応性の系とは、化学反応を起こして反応生成物を形成することができる反応物のセットである。例えば、反応性の系は、1つ以上の他の成分と反応して反応生成物を形成する反応性ポリシロキサンを含んでもよい。任意の1つ以上の他の成分もまた、ポリシロキサンであってもよい。ZnOを反応性の系の1つ又は2つ以上のポリシロキサン中に分散させて、本発明の組成物を形成することができる。ポリシロキサンはまた、反応系の反応生成物であってもよい。ZnO粒子が反応系のポリシロキサン中に分散される場合、一般にZnO粒子は、それもポリシロキサンである反応系の反応生成物に分散される。本発明は、自体が典型的には1つ又は2つ以上のポリシロキサンを含む反応性の系である、反応性の系のポリシロキサン反応生成物であるコーキング、シーラント、コーティング、封入剤、及び接着剤に難燃特性を与えるための反応性の系及び反応系の反応生成物の形態において特に価値がある。
【0020】
ポリシロキサンを含有することができる、及び/又はポリシロキサン反応生成物を生成することができる反応性の系の一例の反応性の系の例は、ヒドロシリル化反応生成物を生成するヒドロシリル化反応系である。ヒドロシリル化反応系は、シリルハイドライド官能基を有する反応物(典型的には反応性ポリシロキサン)と、炭素-炭素不飽和結合(典型的にはビニル又はアリル基)を有する反応物(シリルハイドライド官能基を有するものと同じ又は異なる反応性ポリシロキサン)と、を含む。シリルハイドライド官能基は、典型的にはヒドロシリル化触媒の存在下で炭素-炭素不飽和結合と反応して、不飽和結合をまたいで結合する。シリルハイドライドを含有する反応物はポリシロキサンであってもよく、及び/又は炭素-炭素不飽和基を含有する反応物がポリシロキサンであってもよい。本明細書に記載のZnO粒子を、反応物のいずれか又は両方のポリシロキサン中に分散させて、本発明の範囲内の組成物を形成することができる。すなわち、シリルハイドライド官能性反応物は、本発明の組成物を形成するための本明細書に記載の濃度で本明細書に記載されるようにその中に分散されたZnO粒子を有するポリシロキサンであってもよい。あるいは、又は更に、炭素-炭素不飽和結合を含有する反応物が、本発明の組成物を形成するための本明細書に記載の濃度で本明細書に記載されるようにその中に分散されたZnO粒子を有するポリシロキサンであってもよい。ヒドロシリル化反応系が反応してポリシロキサンであるヒドロシリル化反応生成物を形成するときに、反応生成物がポリシロキサン反応生成物中に分散された本明細書に記載のZnO粒子を有する場合、それは本発明の組成物であり得る。
【0021】
ヒドロシリル化反応系中の反応性ポリシロキサンとして使用するのに好適なシリルハイドライド官能性ポリシロキサンの例としては、ジメチル、メチルハイドロジェンシロキサン、トリメチルシロキシ末端(CAS番号68037-59-2)、ハイドロジェン末端ジメチルシロキサン(CAS番号70900-21-9)、ハイドロジェン末端ジメチルメチルハイドロジェンシロキサン(CAS番号690113-23-6)、トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロシロキサン(CAS番号63148-57-2)、トリエチルシロキシ末端ポリエチルハイドロシロキサン(CAS番号24979-95-1)、及びハイドライド末端メチルハイドロシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマー(CAS番号115487-49-5)が挙げられる。
【0022】
ヒドロシリル化反応系中の反応性ポリシロキサンとして使用するのに好適な炭素-炭素不飽和結合含有ポリシロキサンの例としては、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(CAS番号68083-19-2)、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン(CAS番号2554-06-5)、dimethylcyclics with tetrakis(vinyldimethylsiloxy)silane(CAS番号316374-82-0)、ビニル末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー(CAS番号68951-96-2)、ビニル末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー(CAS番号68951-98-4)、ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端(CAS番号67762-94-1)、ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端(CAS番号68083-18-1)、ビニルメトキシシロキサンホモポリマー(CAS番号131298-48-1)が挙げられる。
【0023】
ヒドロシリル化反応触媒は当該技術分野において公知であり、本発明の組成物中の成分としてなど、それらのいずれも、本発明の組成物を含むヒドロシリル化反応系に使用することができる。好適なヒドロシリル化反応触媒としては、遷移金属(白金、ロジウム、パラジウムなど)をベースとした触媒が挙げられる。ヒドロシリル化触媒の例としては、白金をベースとしたSpeier触媒、白金をベースとしたKarstedt触媒、及びロジウムをベースとしたウィルキンソン触媒が挙げられる。1つの特に望ましい触媒は、DOWSIL(商標)4000触媒(DOWSILはDow Chemical Companyの商標である)として市販されている1,3-ジエチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体である。
【0024】
反応性ポリシロキサンを含有してもよい、及び/又はポリシロキサン反応生成物を生成することができる反応性の系の別の例は、反応して縮合反応生成物を生成する縮合反応系である。縮合反応系は、ヒドロキシル及び/又はアルコキシ官能基を有する反応物を含み、多くの場合縮合反応触媒を含む。反応物は、反応性ポリシロキサンを含んでもよい。ヒドロキシル及び/又はアルコキシ官能基を有する反応性ポリシロキサンを、本明細書に記載されるようにZnO粒子と組合せて、本発明の組成物である縮合反応の反応物を形成することができる。縮合反応系の反応物がZnO粒子を含み、縮合反応を起こすとき、縮合反応生成物はその中に分散されたZnO粒子を有するポリシロキサンであり得、したがって本発明の組成物であり得る。
【0025】
縮合反応系における反応物となり得る好適なヒドロキシル官能性ポリシロキサンの例としては、ジメチルシロキサン、ヒドロキシ末端(CAS番号70131-67-8)、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン(CAS番号63148-59-4)、シラノール-トリメチルシリル修飾Q樹脂(CAS番号56275-01-5)が挙げられる。
【0026】
縮合反応系における反応物となり得る好適なアルコキシ官能性ポリシロキサンの例としては、ジメチルシロキサン、トリメトキシシロキシ末端(CAS番号142982-20-5)、ジメチルシロキサン、モノトリメトキシシロキシ-及びトリメチルシロキシ末端(CAS番号472976-92 -4)、ジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端(CAS番号63148-62-9)が挙げられる。
【0027】
縮合反応系に好適な縮合反応触媒の例としては、最も広い範囲において、縮合反応における使用に一般的に知られている任意の縮合反応触媒が挙げられる。典型的には、縮合反応触媒はスズをベースとした触媒、酸、又は塩基である。好適なスズをベースとした触媒の例としては、ジブチルスズジアセテート、カルボメトキシフェニルスズトリスウベレート、イソブチルスズトリセロエート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジビニルスズジアセテート、ジブチルスズジベンゾエート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラクテート、トリエチルスズタータレート、トリブチルスズアセテート、トリフェニルスズアセテート、トリシクロヘキシルスズアクリレート、トリトリルスズテレフタレート、トリ-n-プロピルアセテートが挙げられる。
【0028】
驚くべきことに、かつ予想外に、本発明の組成物は、典型的には知られている難燃剤を必要とせずに、UL94試験においてV0の評価を達成することができる。当該技術分野で教示されているポリシロキサン難燃性組成物とは対照的に、本発明の組成物は、以下のうちの任意の1つ、又は2つ以上のうちの任意の組合せで特徴付けられる場合、すなわち、
(a)ハロゲン化化合物を10wt%未満、更には5wt%以下、2wt%以下、1wt%以下で含むか、又は更には含まない場合、及び/又は
(b)メタルハイドレートを30vol%未満、更には20vol%以下、10vol%以下、5vol%以下、2vol%以下、1vol%以下で含むか、又は更には含まない場合、及び/又は
(c)白金、ロジウム、及びイリジウムの有機錯体を1.0wt%未満、更には0.75wt%以下、0.5wt%以下、0.25wt%以下、0.10wt%以下で含むか、又は更には含まない場合、及び/又は
(d)膨張性シリコーンゴムを含まないか、又は更にはいずれの膨張性パッケージも含まない場合、ここで膨張性シリコーンゴム及び膨張性パッケージは概して、それらが中にある組成物が燃焼する温度に加熱されると発泡する、バインダー、発泡剤、及び酸源を含み、及び/又は
(e)赤色リンを含まない場合、及び/又は
(f)ケイ酸塩を含まない場合、及び又は
(g)難燃性添加剤を10wt%以下、更に9wt%以下、8wt%以下、7wt%以下、5wt%以下、4.5wt%以下、4wt%以下、3.5wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、更には1wt%以下で含む場合であってもUL94試験におけるV0の評価を達成することができる。
【0029】
本発明の組成物は、本明細書に記載のZnO粒子以外の粒子状添加剤を含まなくてもよく、又は本明細書に記載のZnO粒子に加えて粒子状添加剤(「追加の粒子状添加剤」)を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、本明細書に記載のZnO粒子以外の金属酸化物を含まなくてもよく、又は本明細書に記載のものよりも大きいサイズを有するZnO粒子を更に含有してもよく、又は更にはZnO以外の金属酸化物を含有してもよい。
【0030】
本発明の組成物は熱伝導性組成物であることが望ましく、このことは、それが22℃で測定されるISO22007-2:2015パート2の試験方法によって決定されるメートル-ケルビン当たり0.5ワット(W/m*K)を超える熱伝導率を有することを意味する。熱伝導率を高めるために、本発明の組成物は、二酸化ケイ素(SiO2)、アルミニウム、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ホウ素(BN)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、マグネシウムトリヒドロキシド(Mg(OH)3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、グラファイト、及び粘土からなる群から選択される2つ以上の熱伝導性充填剤のうちの任意の1つ又は任意の組合せなどの熱伝導性粒子である追加の粒子状添加剤を含んでもよい。
【0031】
熱伝導性充填剤などの追加の粒子状添加剤が存在する場合、それらは典型的には、組成物の重量に対して95wt%以下、90wt%以下、85wt%以下、80wt%以下、75wt%以下、70wt%以下、65wt%以下、60wt%以下、55wt%以下、又は更には50wt%以下の濃度で存在すると同時に、典型的には、10wt%以上、20wt%以上、30wt%以上、40wt%以上、50wt%以上、更に60wt%以上の濃度で存在する。
【実施例】
【0032】
ヒドロシリル化の実施例
表1に、実施例1~3及び比較例A~Hのヒドロシリル化の実施例で使用する成分を特定する。
【0033】
10リットルのTurelloミキサーを使用して、表2及び3に記載されたように部A及び部Bの組成物を調製する。
【0034】
部Aの組成物では、指定量のVFP1をミキサーに入れて、0.4立方メートル/時間の窒素流下、毎分20回転(RPM)で5分間混合する。指定量の石英粉末、ZnO、Al2O3及び/又はTiO2を加えて、更に15分間撹拌する。真空下で摂氏80度(℃)に1時間加熱する。22℃に冷却して、ヒドロシリル化触媒を加える。
【0035】
部Bの組成物では、指定量のVFP1を別個のミキサーポットに入れて、0.4立方メートル/時間の窒素流下、20RPMで5分間混合する。指定の石英粉末及びZnO成分を加えて、更に15分間撹拌する。真空下で95℃に1時間加熱する。22℃に冷却し、指定量のVFP2及びSHFP1を加えて混合する。
【0036】
部Aと部Bの等重量部をブレンドして反応性混合物を形成し、70℃で30分間硬化させて、ヒドロシリル化反応生成物を得る。厚さ125±5ミリメートル及び厚さ13.0±0.5ミリメートルで各組成物のヒドロシリル化反応生成物を調製する。各厚さの10個の試料を調製する。5つの試料を、調製後試料として直ちに、UL94の垂直燃焼試験において評価する。5つの試料を70℃で168時間エージングし、「エージングした試料」として供し、次いで、UL94の垂直燃焼試験にかける。燃焼試験結果を表4に示す。
【0037】
組成物及び試験結果を下に示す。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
比較例Aは、ZnOが存在しない場合に組成物がV0の評価を達成できないことを示している。比較例B及びCは、1wt%のマイクロ-ZnOの充填であっても、組成物が依然としてV0の評価を達成できないことを示している。比較例Dは、0.1wt%のナノ-ZnOの充填量ではV0の評価を達成するためには不十分であることを示している。実施例1~3は、ナノ-ZnOが0.15wt%という少量(実施例1)から最大で1wt%までV0の評価を達成することを示している。ナノ-ZnOの充填を増加させるとV0の評価を更に達成し続けることは値から明らかである。
【0043】
比較例E及びFは、ナノ-Al2O3の0.30wt%の充填であってもナノ-ZnOのようにはV0の評価を達成できないことを示している。同様に、比較例G及びHは、ナノ-TiO2の0.30wt%の充填でさえもナノ-ZnOのようにはV0の評価を達成できないことを示している。
【0044】
酸化アルミニウム充填ヒドロシリル化系
表5に比較例I及び実施例4の調製に使用する成分を開示する。
【0045】
比較例I及び実施例4
10リットルのTurelloミキサーを使用して、表6及び7に記載されたように部A及び部Bの組成物を調製する。対応する部Aと部Bの組成物を1:1の重量比でブレンドし、120℃で60分間硬化させてヒドロシリル化反応生成物を得ることによって、比較例I及び実施例4を調製する。厚さ125±5ミリメートル及び厚さ13.0±0.5ミリメートルで各組成物のヒドロシリル化反応生成物を調製する。各厚さの10個の試料を調製する。5つの試料を、調製後試料として直ちに、UL94の垂直燃焼試験において評価する。5つの試料を70℃で168時間エージングし、「エージングした試料」として供し、次いで、UL94の垂直燃焼試験にかける。燃焼試験結果を下の表8に示す。
【0046】
【0047】
比較例I
部Aの組成物では、指定量のビニルポリシロキサンと処理剤をミキサーに入れて、0.4立方メートル/時間の窒素流下、毎分20回転(RPM)で5分間混合する。混合しながら2マイクロメートルのサイズの酸化アルミニウム充填剤の半分を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合を続ける。残りの2マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。混合を停止し、混合容器の壁及びカバーから材料を掻き落とす。60℃に加熱する。60マイクロメートルのサイズの酸化アルミニウム粒子の半分を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。残りの60マイクロメートルのサイズの酸化アルミニウム粒子を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。混合を停止し、混合容器の壁から材料を掻き落とす。真空下、45RPMで60分間混合を続ける。130℃に加熱して、真空下、45RPMで30分間混合する。40℃に冷却して、混合を停止し、真空を開放する。容器の壁及びミキサーブレードから材料を掻き落とす。白金触媒成分を加えて、窒素パージ下で15分間、次いで真空下で30分間、45RPMで混合する。混合を停止し、真空を開放して、比較例Iの部Aの組成物を得る。
【0048】
部Bでは、ビニルポリマー、青色顔料、カーボンブラック、及び充填剤処理剤をミキサー容器に入れる。0.4立方メートル/時間の窒素パージ下、20RPMで混合する。2マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤の半分を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。残りの2マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。混合を停止し、容器の側面から材料を掻き落とす。60℃に加熱し、60マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤の半分を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。残りの60マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。混合を停止し、容器の壁から材料を掻き落とす。真空下、45RPMで60分間混合する。130℃に加熱して、真空下、45RPMで30分間混合する。40℃に冷却し、真空を解放し、容器の側面から材料を掻き落とす。硬化抑制剤、鎖延長剤及び架橋剤を加えて、窒素パージ下、45RPMで15分間混合する。真空下、45RPMで30分間混合する。混合を停止し、真空を開放して、比較例Iの部Bの組成物を得る。
【0049】
実施例4
部Aの組成物では、指定量のビニルポリマーと処理剤をミキサーに入れて、0.4立方メートル/時間の窒素流下、毎分20回転(RPM)で5分間混合する。ナノ-ZnOと2マイクロメートルのサイズの酸化アルミニウム充填剤の半分を混合しながら加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合を続ける。残りの2マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。混合を停止し、混合容器の壁及びカバーから材料を掻き落とす。60マイクロメートルのサイズの酸化アルミニウム粒子の半分を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。残りの60マイクロメートルのサイズの酸化アルミニウム粒子を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。混合を停止し、混合容器の壁から材料を掻き落とす。真空下、45RPMで60分間混合を続ける。130℃に加熱して、真空下、45RPMで30分間混合する。40℃に冷却して、混合を停止し、真空を開放する。容器の壁及びミキサーブレードから材料を掻き落とす。白金触媒成分を加えて、窒素パージ下で15分間、次いで真空下で30分間、45RPMで混合する。混合を停止し、真空を開放して、実施例4の部Aの組成物を得る。
【0050】
部Bでは、ビニルポリマーと充填剤処理剤をミキサー容器に入れる。0.4立方メートル/時間の窒素パージ下、20RPMで混合する。ナノ-ZnO及び2マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤の半分を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。残りの2マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。混合を停止し、容器の側面から材料を掻き落とす。60マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤の半分を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。残りの60マイクロメートルの酸化アルミニウム充填剤を加えて、窒素パージ下、45RPMで10分間混合する。混合を停止し、容器の壁から材料を掻き落とす。真空下、45RPMで60分間混合する。130℃に加熱して、真空下、45RPMで30分間混合する。40℃に冷却し、真空を解放し、容器の側面から材料を掻き落とす。硬化抑制剤、鎖延長剤、及び架橋剤を加えて、窒素パージ下、45RPMで15分間混合する。真空下、45RPMで30分間混合する。混合を停止し、真空を開放して、実施例4の部Bの組成物を得る。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
比較例I及び実施例4の結果は、Al2O3充填剤単独ではV0の評価を達成しないが、いくらかのAl2O3をナノサイズの酸化亜鉛で置き換えた実施例4ではV0の評価を達成することを示している。
【0055】
縮合の実施例
表9に縮合の実施例に使用する成分を特定する。
【0056】
表10及び11に記載されたように部A及び部Bの組成物を調製する。スタティックミキサーを備えた2パーツカートリッジで比較例及び実施例ごとに部A及び部Bの組成物の等しい体積部をブレンドして、ポリテトラフルオロエチレンフィルム上に3ミリメートルの厚さの反応性混合物を形成し、23℃で硬化させる(どれだけの時間?いずれかの特定のレベルの湿度が必要か?)。UL94垂直燃焼試験のために、各組成物から10個の試料を切断する。5つの試料を「調製直後」の試料としてすぐに評価する。「エージング」試料として、5つの試料を168時間、70℃でエージングした後、UL94試験をする。燃焼試験結果を表12に示す。
【0057】
比較例Jは、ナノ-ZnOが存在しない場合、組成物がV0の評価を達成できないことを示している。実施例5~7は、ナノ-ZnOを組成物に含めることにより、組成物のV0の評価の達成が可能になることを示している。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】