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特許7573033新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤、その製造及び応用
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  • 特許-新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤、その製造及び応用 図1
  • 特許-新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤、その製造及び応用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤、その製造及び応用
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20241017BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241017BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20241017BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20241017BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B01J20/30
B01J20/28 Z
B01J20/04 C
B01D53/04
C01G53/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022537445
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2022076059
(87)【国際公開番号】W WO2023151031
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】522240933
【氏名又は名称】福建徳尓科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN DEER TECHNOLOGY CORP.
【住所又は居所原語表記】No. 6, Gongye Road, Jiaoyang Centralized Industrial Zone, Jiaoyang Town, Shanghang County, Longyan, Fujian 364000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 向如
(72)【発明者】
【氏名】李 嘉磊
(72)【発明者】
【氏名】陳 施華
(72)【発明者】
【氏名】楊 建中
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113578285(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113578287(CN,A)
【文献】米国特許第03989808(US,A)
【文献】国際公開第2017/138366(WO,A1)
【文献】特開昭63-270310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/00-20/34
B01D53/02-53/12
C01G53/00-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NiCl・6HO及び多孔質NaFを提供し、且つ質量比が1:3.0~3.5である割合で球状粒子を作製する工程S1と、
前記球状粒子を真空雰囲気中で、真空度を500pa以下にして、順次に120~130℃、280~300℃の温度でそれぞれ10~40時間焼結し、NiCl-NaF骨格を有する吸着剤中間体を形成する工程S2と、
ッ素窒素混合ガスで前記吸着剤中間体を処理する工程S3と、
を備えることを特徴とする新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の製造方法。
【請求項2】
工程S1において、前記多孔質NaFの製造方法は、
乾燥温度が200~210℃であり、乾燥時間が20~30hであり、真空度が500pa以下という条件下で、NaHFに対して真空乾燥処理して、孔質の、フッ化ナトリウム性質を有する物質を形成する工程S11をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の製造方法。
【請求項3】
工程S1において、前記球状粒子の粒径は、5~8mmであることを特徴とする請求項1に記載の新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の製造方法。
【請求項4】
工程S3において、前記ッ素窒素混合ガスは、体積含有量が5~15%のF及び体積含有量が85~95%のNを含むことを特徴とする請求項1に記載の新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の製造方法。
【請求項5】
工程S3において、前記吸着剤中間体をッ素窒素混合ガスで処理する工程は、ッ素窒素混合ガスで前記吸着剤中間体を24~72時間フッ素化することを含むことを特徴とする請求項1に記載の新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の製造方法。
【請求項6】
NiF-NaF骨格を有し、且つBET比表面積が2m・g-1以上であり、細孔容積が0.00015cm・g-1以上であることを特徴とする新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤。
【請求項7】
フッ化塩素とフッ化水素との分離における請求項に記載の新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の使用方法
【請求項8】
前記三フッ化塩素と前記フッ化水素とを分離する条件については、温度が80~100℃であり、流量が0.2~1L/minであり、圧力が0.6~1MPaであることを特徴とする請求項に記載の新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤、その製造及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、三フッ化塩素とフッ化水素は結合作用を起こしてポリマーを形成し易く、両者の分離が難しい。研究によると、一般的なフッ化ナトリウムは三フッ化塩素及びフッ化水素に対して同時に強い安定性を有し、フッ化水素を吸着することができるが、フッ化水素に対する吸着効率は90%未満であり、且つ三フッ化塩素に対して10%程度の吸着作用があり、フッ化水素に対する吸着効率が低く、三フッ化塩素の損失が大きいなどの欠陥がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、上述の問題を効果的に解決することができる新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤、その製造方法及び応用を提供するものである。
【0004】
本発明は、次のような態様で実現される。
【0005】
本発明による新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の製造方法は、
NiCl・6HO及び多孔質NaFを提供し、且つ質量比が1:3.0~3.5である割合で球状粒子を作製する工程S1と、
前記球状粒子を真空雰囲気中で、真空度を500pa以下にして、順次に120~130℃、280~300℃の温度でそれぞれ10~40時間焼結して、NiCl-NaF骨格を有する吸着剤中間体を形成する工程S2と、
高純度フッ素窒素混合ガスで前記吸着剤中間体を処理する工程S3と、を備える。
【0006】
また、本発明による新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤は、NiF-NaF骨格を有し、且つBET比表面積が2m・g-1以上であり、細孔容積が0.00015cm・g-1以上である。
【0007】
また、本発明は、上記の製造方法によって得られた新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤を提供している。
【0008】
さらに、本発明は、上記の新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の応用を提供している。具体的には、前記新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤は、三フッ化塩素とフッ化水素との分離に用いられる。
【0009】
本発明は、次のような有益な効果を奏している。
【0010】
本発明は、三フッ化塩素とフッ化水素との結合作用に対して、NiF-NaF構造の新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤を開発し、三フッ化塩素とフッ化水素とを離散させ、フッ化水素の不純物を除去し、三フッ化塩素の純度を高め、三フッ化塩素の応用需要を満足している。本発明による新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤は、三フッ化塩素とフッ化水素分子とを効果的に離散させ、フッ化水素に対する最適な吸着効率を98%以上に向上させ、三フッ化塩素に対する最適な吸着効率を3%程度に低下させることができる。また、この新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤は、各種の状況において、いずれも高活性及び高吸着性を維持することができる。さらに、この新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の製造プロセスが簡単であり、生産コストが低く、良好な経済効果を有し、工業化生産を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の実施形態の技術的態様をより明確に説明するために、以下では、実施の形態において必要とされる図面を簡単に説明するが、以下の図面は、本発明のいくつかの実施形態のみを示しているので、特許請求の範囲の限定と見なすべきではない。当業者にとって、創造的な労働を行わずに、これらの図面に基づいて他の関連図面を得ることもできる。
【0012】
図1】従来のフッ化ナトリウムの走査電子顕微鏡写真である。
図2】本発明の実施例により提供される新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の目的、技術的態様及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施形態における図面に合わせて、本発明の実施形態における技術的態様を明確かつ完全に説明する。説明された実施形態は、すべての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態に過ぎないことが明らかである。本発明における実施形態によれば、当業者が創造的な労働を行わずに得た他のすべての実施形態は、何れも本発明の保護範囲に属する。従って、以下の図面において提供される本発明の実施形態に対する詳細な説明は、保護を求める範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の選択された実施形態のみを示すものである。本発明における実施形態によれば、当業者が創造的な労働を行わずに得た他のすべての実施形態は、何れも本発明の保護範囲に属する。
【0014】
本発明の説明において、「第1」、「第2」という用語は、目的を説明するためにのみ使用され、相対的な重要性を示す又は暗示し、または要素の数を暗黙的に指定すると理解してはならない。これにより、「第1」、「第2」と限定された要素は、1つ以上の要素を明示的または暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、「複数」は、特に限定されない限り、2つ以上を意味する。
【0015】
本発明の実施例に係る新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の製造方法は、以下の工程を備える。
【0016】
工程S1では、NiCl・6HO及び多孔質NaFを提供し、質量比が1:3.0~3.5である割合で球状粒子を作製する。
【0017】
工程S2では、前記球状粒子を、順次に120~130℃、280~300℃の温度で、真空雰囲気の中でそれぞれ10~40時間焼結して、NiF-NaF骨格を有する吸着剤中間体を形成する。ただし、真空度は500Pa以下である。
【0018】
工程S3では、前記吸着剤中間体を高純度フッ素窒素混合ガスで処理する。
【0019】
更なる改良として、工程S1では、試験により、NiCl・6HO及び多孔質NaFの割合制御は、NiClがフッ素化された後に形成されたNiFとNaFとの十分な交合作用に有利であり、三フッ化塩素への吸着効率を最大限に低下させることが証明された。従って、NiCl・6HO及び多孔質NaFを質量比が1:3.1~3.3である割合で球状粒子として作製することが好ましい。一実施例では、NiCl・6HO及び多孔質NaFを質量比が1:3.2である割合で球状粒子として作製した。
【0020】
上記多孔質NaFの調製は、以下の工程により行うことができる。
【0021】
工程S11では、NaHFを真空処理することにより、少なくとも一部の水素原子をNaHF分子から放出させ、緩やかな多孔質の、フッ化ナトリウム特性を有する物質を形成する。このうち、乾燥温度は200~210℃であり、乾燥時間は20~30hであり、真空度は500pa以下である。一実施例において、乾燥温度は約205℃であり、乾燥時間は約24hであり、真空度は約100paである。
【0022】
さらなる改良として、工程S1において、前記球状粒子の粒径は5~8mmである。この粒径を有する粒子は、吸着塔の充填に有利であり、より大きな空隙率を形成することができる。更なる改良として、前記NiClをさらに処理することで、多フッ素物質を形成し、フッ素含有量の高いニッケルフッ化物を形成してもよい。
【0023】
さらなる改良として、工程S2では、段差形式で焼結し、温度の急激な上昇による球状粒子の開裂を防止することによって、焼結歩留まりが向上し、焼結後の吸着剤粒子の比表面積及び細孔容積がいずれも数倍に増大する。さらに、段差的に焼結することにより、NiCl・6ΗOの水分子及びH原子がまだ残る一部のNaHFにおけるH原子がさらに遊離し、緩やかな多孔質の粒子構造を形成することもできる。一実施例において、前記球状粒子を真空雰囲気中で、順次に125℃、290℃の温度でそれぞれ24時間焼結し、且つ真空度を約100Paにすることにより、最終的なBET比表面積が4.0756m・g-1となり、細孔容積が0.000301cm・g-1となる。別の実施例において、前記球状粒子を真空雰囲気中で、順次に130℃、280℃の温度下でそれぞれ24時間焼結し、且つ真空度を約100Paにすることにより、最終的なBET比表面積が4.8995m・g-1となり、細孔容積が0.000356cm・g-1となる。もう1つの実施例では、前記球状粒子を真空雰囲気中で、順次に120℃、300℃の温度下でそれぞれ24時間焼結し、且つ真空度を約100Paにすることにより、最終的なBET比表面積が3.9781m・g-1となり、細孔容積が0.000293cm・g-1となる。
【0024】
更なる改良として、工程S3において、高純度フッ素窒素混合ガスを使用する作用は、塩化ニッケルをフッ素ガスでフッ素化してフッ化ニッケルを形成することにある。フッ化ナトリウムには、フッ素含有量の高いニッケルフッ化物(各分子において、1つのニッケル原子が2つのフッ素原子を結合する)が導入され、フッ化ナトリウム分子と二フッ化ニッケル分子との交合作用により、空間構造的に三フッ化塩素に類似し、且つ多フッ素基の「分子」が形成され、三フッ化塩素分子との結合長や結合角がある程度ねじられて、フッ化ナトリウム分子と三フッ化塩素分子とを離散する目的を達成している。このような多フッ素基の「分子」は、フッ化水素分子と作用すると、分子間の弱い作用力を形成し易くなり、混合物系の温度を制御することで、フッ化水素分子の高ポリマーの形成を減少させるとともに、三フッ化塩素分子の二分子結合を低下させ、これらの活動能力の高い分子と「改質」フッ化ナトリウム分子との反発力も同期して増加する。これにより、「改質」されたフッ化ナトリウムは、三フッ化塩素への吸着を低減し、フッ化水素への吸着を向上させる目的を達成する。窒素はフッ素ガスを希釈する役割を果たし、フッ素ガスの活性が強いことによる危険を防止する。試験により、フッ素濃度が低すぎると活性が不足し、濃度が高いと危険が発生し易いことが証明された。従って、前記高純度フッ素窒素混合ガスは、体積含有量が5~15%のF及び体積含有量が85~95%のNを含むことが好ましい。一実施例において、高純度フッ素窒素混合ガスは、体積含有量が約10%であるFと、体積含有量が90%であるNとを含む。
【0025】
さらなる改良として、工程S3において、前記吸着剤中間体を高純度フッ素窒素混合ガスで処理することは、前記吸着剤中間体を高純度フッ素窒素混合ガスで24~72時間フッ素化することを含む。1つの実施例において、前記吸着剤中間体を高純度フッ素窒素混合ガスで48時間フッ素化し、フッ素化が完了した後、窒素でパージして、前記高純度フッ素窒素混合ガスを除去した。
【0026】
本発明は、さらに、NiF-NaF骨格を有し、且つBET比表面積が2m・g-1以上、細孔容積が0.00015cm・g-1以上である新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤を提供する。一実施例において、前記新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤は、BET比表面積が4.8995m・g-1に達し、細孔容積が0.000356cm・g-1に達することができる。
【0027】
図1~2に示すように、現在、一般的なフッ化ナトリウムが緻密な結晶配列があり、比表面積が小さく、フッ化水素の効率的な吸着に不利である(そのBET比表面積が0.6591m・g-1に達し、細孔容積が0.000054cm・g-1にしか達しない)。改質後の新型のフッ化ナトリウム専用吸着剤は、シート状構造を有し、より大きな比表面積を有し、孔の数も従来のフッ化ナトリウムよりも増加し、フッ化水素への吸着効率を効果的に向上することができる。
【0028】
本発明の実施例では、さらに、上記新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤の応用も提供している。当該新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤は、三フッ化塩素とフッ化水素の分離に用いられる。
【0029】
本発明では、三フッ化塩素とフッ化水素の分離に対して、以下のプロセス条件で直交試験を行った。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
上記の表2から明らかなように、本発明による新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤は、三フッ化塩素とフッ化水素分子とを効率的に離散でき、フッ化水素に対する最適な吸着効率を98%以上に向上し、三フッ化塩素に対する最適な吸着効率を3%程度まで低減できた。また、この新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤は、異なる状況において、高活性及び高吸着性を保つことができる。さらに、この新型の改質フッ化ナトリウム専用吸着剤は、製造プロセスが簡単であり、生産コストが安く、経済的にも優れ、工業化生産が可能である。最後に、この吸着剤は、使用サイクルが長く、100回繰り返して使用した後に、フッ化水素への最適な吸着効率は98%程度、三フッ化塩素に対する最適な吸着効率は3%程度に保つこともできることが試験的に証明された。
【0033】
以上は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者にとって、様々な改善及び変更が可能である。本発明の精神及び原則において行われたいかなる修正、均等置換及び改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2