(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】配線基体および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20241017BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20241017BHJP
H01P 5/08 20060101ALI20241017BHJP
H01P 3/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01L23/12 301Z
H01L23/02 H
H01P5/08 N
H01P3/00 100
(21)【出願番号】P 2022553768
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2021033510
(87)【国際公開番号】W WO2022070856
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2020165212
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】前田 彬裕
(72)【発明者】
【氏名】中本 真二
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-102820(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188785(WO,A1)
【文献】特開2014-127502(JP,A)
【文献】特開2015-226015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/54
H01L23/00-23/04
H01L23/06-23/26
H01P 3/00- 5/22
H05K 1/00- 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、該第1面に電子部品の実装領域である開口と、を有する基体と、
前記第1面に位置し、前記開口から前記基体の外辺に向かう第1方向に延びる信号導体と、
前記第1方向に延びて前記信号導体を挟む部分を有し、前記第1面に位置する接地導体と、
を備え
、
前記信号導体は、前記第1方向の順に、第1部と、第2部と、第3部とを有し、
前記第1部および前記第3部は、前記第1面に向かう平面視での前記第1方向に直交する第2方向の幅が、前記第2部よりも大きく、
前記接地導体は、前記第1部に向かう突出部を
さらに有
し、
前記第3部と前記接地導体との前記第2方向における距離は、前記第1部と前記接地導体との前記第2方向における距離よりも大きい、配線基体。
【請求項2】
前記信号導体は、前記第2部と前記第3部との間にテーパ部を有する、請求項1記載の配線基体。
【請求項3】
前記突出部の前記第1方向の長さは、前記第1部の前記第1方向の長さと同じである、請求項1または請求項2記載の配線基体。
【請求項4】
第1面と、該第1面に電子部品の実装領域である開口と、を有する基体と、
前記第1面に位置し、前記開口から前記基体の外辺に向かう第1方向に延びる信号導体と、
前記第1方向に延びて前記信号導体を挟む部分を有し、前記第1面に位置する接地導体と、
前記基体内に位置し、前記接地導体と同電位である内部接地導体と、
を備え、
前記信号導体は、前記第1方向の順に、第1部と、第2部と、該第2部と接続するテーパ部と、該テーパ部に接続する第3部と、を有し
前記第1部および前記第3部は、前記第1面に向かう平面視での前記第1方向に直交する第2方向の幅が、前記第2部よりも大きく、
前記接地導体は、前記第1部に向かう突出部をさらに有し、
前記内部接地導体は
、前記第1面に向かう平面透視で前記第2方向に延びる部分を有しており、
該部分は、前記第1方向の順に第1辺と、該第1辺に対向して位置する第2辺とを有し、
前記第2辺は、前記平面透視で、前記テーパ部と重なっている
、配線基体。
【請求項5】
前記第2辺は、前記平面透視で、前記第1方向における前記テーパ部の中央部と重なっている、請求項4記載の配線基体。
【請求項6】
前記接地導体および前記信号導体は、前記平面視で、前記開口から離れて位置している、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項7】
前記接地導体および前記信号導体は、前記平面視で、前記開口から距離D1離れており、
前記第1辺は、前記平面透視で、前記開口から距離D2離れており、
前記距離D2は、前記距離D1よりも大きい、請求項4または請求項5記載の配線基体。
【請求項8】
前記基体は、樹脂材料を含んでいる、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項9】
前記第3部と前記接地導体との前記第2方向における距離は、前記第2部と前記接地導体との前記第2方向における距離よりも小さい、請求項1~8のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項10】
前記接地導体の前記第1方向における長さは、前記信号導体の前記第1方向における長さよりも長い、請求項1~9のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項11】
前記信号導体は、前記平面視で、前記開口から離れて位置しており、
前記平面視において、前記開口から前記信号導体までの距離は、前記突出部の前記第1方向の長さよりも小さい、請求項1~5のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項12】
前記基体は、前記開口を有する枠体と、該枠体に嵌め込まれた支持基板と、を有し、
前記支持基板は、金属材料で構成される、請求項1~11のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項13】
請求項1~請求項
12のいずれか1つに記載の配線基体と、
前記実装領域に接続されている電子部品と、を備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基体および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品が搭載され、該電子部品と外部の配線とを電気的に接続する配線基体(例えば、パッケージ)がある。配線基体としては、基体の表面に、信号導体と、該信号導体を挟む接地導体とを有するコプレーナ線路が形成されたものがある(例えば、特開2001-94012号公報、及び特開2004-186606号公報)。このような配線基体では、信号導体および接地導体の形状を調整してインピーダンス整合を図ることにより、コプレーナ線路における高周波信号の伝送効率を高めている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様は、
第1面と、該第1面に電子部品の実装領域である開口と、を有する基体と、
前記第1面に位置し、前記開口から前記基体の外辺に向かう第1方向に延びる信号導体と、
前記第1方向に延びて前記信号導体を挟む部分を有し、前記第1面に位置する接地導体と、
を備え、
前記信号導体は、前記第1方向の順に、第1部と、第2部と、第3部とを有し、
前記第1部および前記第3部は、前記第1面に向かう平面視での前記第1方向に直交する第2方向の幅が、前記第2部よりも大きく、
前記接地導体は、前記第1部に向かう突出部をさらに有し、
前記第3部と前記接地導体との前記第2方向における距離は、前記第1部と前記接地導体との前記第2方向における距離よりも大きい、配線基体である。
【0004】
また、本開示の他の一の態様は、
上記の配線基体と、
前記実装領域に接続されている電子部品と、を備える電子装置である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図2】
図1に示す電子装置のA-A線における断面図である。
【
図6】信号導体と、内部接地導体との位置関係を示す図である。
【
図7】信号導体のテーパ部と内部接地導体の第2辺との位置関係を示す図である。
【
図11】変形例2に係る配線基体の表面導体層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本開示の配線基体100および電子装置1は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0007】
図1および
図2を参照して、一実施形態に係る電子装置1の構成を説明する。電子装置1は、配線基体100と、配線基体100に搭載された電子部品200とを備える。また、電子装置1は、配線基体100および電子部品200を電気的に接続するボンディングワイヤ300を備えていてもよい。電子部品200は、例えば半導体素子とすることができる。
【0008】
以下では、配線基体100の厚さ方向をZ方向とするXYZ直交座標系により電子装置1の各部の向きを説明する。また、XY平面に平行な任意の部材の面のうち+Z方向に向く面を「上面」と記し、-Z方向に向く面を「下面」と記す。また、相対的に-Z方向側にある層を「下層」と記す。また、Z方向から見ることを「平面視」と記し、Z方向から他の部材を透過させて見ることを「平面透視」と記す。
【0009】
配線基体100は、平面視で矩形の枠状の基体10と、基体10の上面に露出している信号導体21、接地導体31および端子導体41とを備える。また、配線基体100は、基体10の下面の一部に接合された平板状の支持基板60を備えていてもよい。信号導体21、接地導体31および端子導体41は、それぞれボンディングワイヤ300を介して電子部品200の表面の電極パッド201と電気的に接続されている。以下では、信号導体21、接地導体31および端子導体41をまとめて表面導体層C1と記す。
【0010】
基体10は、第1面S1(上面)を有するとともに、この第1面S1に、電子部品200の実装領域Rである開口10aを有する。開口10aは、平面視で矩形状である。矩形状とは、矩形の4つの角部を丸めた形状であってもよい。開口10aの形状は、矩形状に限らず、電子部品200の実装領域Rを確保可能な任意の形状とすることができる。基体10の各外辺、および開口10aの各辺は、X方向またはY方向に平行であってもよい。
【0011】
図2に示すように、基体10は、+Z方向から-Z方向の順に積層された第1層11、第2層12および第3層13を有していてもよい。基体10の層の数は適宜設定することができる。以下には、基体10が3層の場合について説明する。第1層11は、+Z方向に露出しており、上記の第1面S1を有する。第2層12は、第1層11および第3層13の間に位置するコア層である。第1層11および第3層13は、プリプレグを用いたビルドアップ工法により第2層12の上面および下面にそれぞれ形成されたビルドアップ層である。
【0012】
第1層11および第2層12に、上述の開口10aが形成されている。また、第3層13には、平面視で開口10aより一回り大きい裏面開口10bが形成されている。裏面開口10bは、開口10aと同様、平面視で矩形状であってもよい。矩形状とは、矩形の4つの角部を丸めた形状であってもよい。開口10aおよび裏面開口10bはZ方向に繋がっており、基体10を貫通している。
【0013】
支持基板60は、平面視で裏面開口10bと略同一形状、かつ厚さが第3層13と略同一であり、裏面開口10bを塞いで位置している。支持基板60は、基体10の下面側から裏面開口10bに嵌め込まれた状態で基体10に接合されていてもよい。他にも、支持基板60は、前記裏面開口10bよりも面積が大きいとともに、第3層13の下面に接合されていてもよい。支持基板60は、第2層12の下面のうち-Z方向からの平面透視で裏面開口10bから露出する部分に当接している。支持基板60の上面のうち、実装領域Rに相当する部分、すなわち+Z方向からの平面視で開口10aの範囲内に、電子部品200が載置され、接続(固定)されている。支持基板60は、電子部品200の動作熱を外部に放出する放熱板としても機能する。このため支持基板60としては、熱伝導率の高い材質、例えば銅、または銅タングステン合金(CuW)等を用いてもよい。
なお、支持基板60は、裏面開口10bに嵌め込まれて第2層12の下面に接合される層と、該層よりも面積が小さく開口10aの一部を埋める層とを有していてもよい。
【0014】
基体10は、表面導体層C1の他に、第2層12の上面に形成された第1中間導体層C2、第2層12の下面に形成された第2中間導体層C3、および第3層13の下面に形成された裏面導体層C4を有する。表面導体層C1は、ビア導体Vを介して第1中間導体層C2と電気的に接続されている。第1中間導体層C2は、ビア導体Vを介して第2中間導体層C3と電気的に接続されている。第2中間導体層C3は、ビア導体Vを介して裏面導体層C4と電気的に接続されている。裏面導体層C4は、はんだボールなどを介して外部配線に接続される。このような構成により、電子部品200の電極パッド201と外部配線とが、ボンディングワイヤ300、表面導体層C1、第1中間導体層C2、第2中間導体層C3および裏面導体層C4を介して電気的に接続される。
【0015】
基体10は、樹脂材料を含んでいてもよい。この樹脂材料としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂などを挙げることができる。また、これらの樹脂に、ガラスクロス又はアラミドクロス等の補強材が含有されていてもよい。
なお、基体10および支持基板60の材質は樹脂材料を含むものに限られず、例えば酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、ムライト質焼結体又はガラスセラミックス等のセラミック焼結体を用いてもよい。ただし、基体10および支持基板60として樹脂材料を含む材質のものを用いた配線基体100は、セラミック焼結体を用いた配線基体に対し、製造コストが低く、また高周波特性に優れる。
【0016】
表面導体層C1、第1中間導体層C2、第2中間導体層C3および裏面導体層C4の材質は、特には限られないが、例えば銅パターンに金またはニッケルなどのめっきを施したものを用いることができる。外部に露出しない第1中間導体層C2および第2中間導体層C3については、めっきを施さない銅パターンとしてもよい。
【0017】
次に、
図3~
図9を参照して、表面導体層C1、第1中間導体層C2、第2中間導体層C3および裏面導体層C4について説明する。
図3は、表面導体層C1が露出している第1層11の第1面S1を+Z方向から見た図である。表面導体層C1は、2つの信号導体21を有する。信号導体21は、X方向について開口10aの両側に1つずつ、Y方向について基体10(第1層11)の略中央部に形成されている。各信号導体21は、開口10aから基体10の外辺10cに向かう第1方向に延びている。ここで、第1方向は、開口10aの+X方向側に位置する信号導体21については+X方向、開口10aの-X方向側に位置する信号導体21については-X方向である。信号導体21には、ビア導体V2が接続されている。ビア導体V2は、例えば、第1層11、第2層12および第3層13の各々を貫通する円柱形状の導体、または円錐の一部に相当する形状の導体がZ方向に接続された構成とすることができる。ビア導体V2は、信号導体21の外辺10c側に位置していてもよい。後述するビア導体V3、V4についても同様である。
【0018】
また、表面導体層C1は、4つの接地導体31を有する。接地導体31は、X方向について開口10aの両側に2つずつ、+Y方向側および-Y方向側から信号導体21を挟む位置に形成されている。換言すれば、各接地導体31は、第1方向に延びて信号導体21を挟む部分を有している。別の観点では、各信号導体21の+Y方向側および-Y方向側に1つずつ接地導体31が位置している。接地導体31は、X方向に長い矩形状である。接地導体31は接地電位とされている。各接地導体31には、ビア導体V3が接続されている。
【0019】
信号導体21と、該信号導体21を挟む2つの接地導体31とから、高周波信号を伝送可能なコプレーナ線路が構成されている。本実施形態の配線基体100は、コプレーナ線路により、例えば60GHz程度の高周波信号を伝送する。ただし、伝送する信号の周波数はこれに限られない。
【0020】
また、
図3に示すように表面導体層C1は、14個の端子導体41を有していてもよい。開口10aの+Y方向側および-Y方向側に位置する複数の端子導体41は、それぞれ等間隔に位置していてもよい。また、開口10aの+X方向側には、2つの接地導体31を+Y方向側および-Y方向側から挟むように2つの端子導体41が位置していてもよい。また、開口10aの-X方向側にも、2つの接地導体31を+Y方向側および-Y方向側から挟んで2つの端子導体41が位置していてもよい。このとき、各端子導体41の外辺10c側の端部には、ビア導体V4が接続されていてもよい。
【0021】
ここで、
図4を参照して、信号導体21および接地導体31の形状について詳しく説明する。
信号導体21および接地導体31は、平面視で、開口10aから離れて位置している。詳しくは、信号導体21および接地導体31の開口10a側の端辺は、平面視で、開口10aから距離D1離れている。換言すれば、信号導体21および接地導体31は、開口10aから距離D1のプルバック(クリアランス)を有する位置に形成されている。距離D1は、例えば0.05~0.3mmであってもよい。このプルバックを設けることで、開口10aの形成時に開口10aが信号導体21および接地導体31に掛からないようにすることができる。開口10aが、銅パターンにめっきを施した構成の信号導体21および接地導体31に掛かると、めっき内部の銅パターンが側面(開口10aの内壁面)から露出して酸化しまう。それに対し、プルバックを設けた配線基体100は、銅パターンの露出が少ない。
【0022】
信号導体21は、第1方向(
図4では、-X方向から+X方向)の順に、第1部211と、第2部212と、第3部213と、第4部214とを有する。また、第1部211および第3部213は、第1面S1に向かう平面視での第1方向に直交する第2方向(Y方向)の幅が、第2部212よりも大きい。換言すれば、信号導体21は、第1部211および第3部213の間に、これらの各部よりY方向の幅の小さい第2部212を有している。第1部211は、信号導体21のうち開口10a側の端部に位置しており、該第1部211にボンディングワイヤ300が接続される。第1部211、第2部212および第3部213は、X方向に平行な辺を有する矩形状であってもよい。また、第4部214は、信号導体21のうち開口10a側とは反対側の端部に位置しており、平面視でビア導体V2を囲む円形状であってもよい。
【0023】
さらに、信号導体21は、第2部212と第3部213との間にテーパ部215を有する。テーパ部215は、X方向およびY方向に対して傾斜した直線状のテーパ辺21Tを有している。テーパ辺21Tは、Y方向の幅が異なる第2部212および第3部213の辺同士を斜めに繋いでいる。換言すれば、テーパ部215は、Y方向について、第2部212側の端部では第2部212と同一の幅を有し、第3部213側の端部では第3部213と同一の幅を有し、これらの端部間で、第2部212から離れるに従って幅が漸増する形状を有している。
【0024】
接地導体31は、開口10a側の端部において、第1部211に向かう突出部311を有する。突出部311のX方向の長さは、第1部211のX方向の長さと同じであってもよい。すなわち、信号導体21の第1部211と、接地導体31の突出部311とは、X方向について同一範囲内に位置していてもよい。接地導体31のうち開口10a側の端部、より詳しくは、X方向について突出部311が形成されている範囲内に、ボンディングワイヤ300が接続される。
【0025】
信号導体21および接地導体31が上述の形状となっている配線基体100は、コプレーナ線路のインピーダンスが所望の値に整合されている。以下、これについて説明する。
【0026】
信号導体21および接地導体31と、開口10aとの間に距離D1のプルバックを設けた本実施形態の構成では、開口10aの縁まで各導体を設けた構成と比較して、ボンディングワイヤ300が距離D1だけ長くなる。これにより、インダクタンス成分が増大してハイインピーダンスとなるため、信号導体21および接地導体31の全体が一様の幅を有している構成などでは、インピーダンスコントロールが困難である。
【0027】
これに対し、本実施形態では、接地導体31が突出部311を有していることで、信号導体21の第1部211と接地導体31との距離が小さくなっている。これにより、コプレーナ線路のうちX方向について第1部211および突出部311に相当する部分における容量が増大されて、該部分が高キャパシタンス部となる。この高キャパシタンス部の容量性リアクタンスによって、ボンディングワイヤ300が長くなったことに起因するインダクタンス成分増大の影響が低減されている。また、第1部211および突出部311がX方向について同一範囲内に位置していることで、より正確なインピーダンスコントロールが可能となっている。
【0028】
さらに、第1部211の+X方向側が、幅の小さい第2部212となっていることで、コプレーナ線路のうちX方向について第2部212に相当する部分におけるインダクタンスが増大されて、該部分が高インダクタンス部となる。この高インダクタンス部の誘導性リアクタンスにより、上記の高キャパシタンス部における容量性リアクタンスの影響が再調整されている。この結果、高インダクタンス部に隣接する第3部213において所望のインピーダンスが実現される。ここで、接地導体31は、第3部213に対しては突出していない。また、第3部213と接地導体31との距離は、第1部211と接地導体31(突出部311)との距離より大きくなっている。これにより、第3部213において容量が過多となって低インピーダンス側に振れないように、すなわち信号の反射が大きくならないように調整されている。
【0029】
次に、
図5を参照して第1中間導体層C2について説明する。
図5は、第2層12の上面を+Z方向から平面透視した図である。
第1中間導体層C2は、信号導体21に接続される2つのビア導体V2のランド、および端子導体41に接続される14個のビア導体V4のランドを有する。また、第1中間導体層C2は、2つのビア導体V2のランドの周囲に位置する2つの第1内部接地導体32(内部接地導体)を有する。
【0030】
第1内部接地導体32は、平面透視で接地導体31と重なる2つの矩形部321を有する。また、第1内部接地導体32は、2つの矩形部321を接続する接続部322を有していてもよい。接続部322は、Y方向(第2方向)に延びて、矩形部321の開口10a側の端部同士を接続している。矩形部321および接続部322は、ビア導体V2のランドから所定距離のクリアランスを有する範囲に形成されている。なお、第1内部接地導体32は、矩形部321の開口10a側とは反対側の端部同士を接続する接続部を有していてもよい。第1内部接地導体32は、ビア導体V2のランドを囲むように形成されていてもよい。
【0031】
第1内部接地導体32は、ビア導体V3を介して接地導体31、ならびに後述する第2内部接地導体33および裏面接地導体34と電気的に接続されて接地電位となっている。つまり、第1内部接地導体32は、接地導体31あるいは第2内部接地導体33と同電位である。この構成により、接地電位を安定させることができる。さらに、第1内部接地導体32において接続部322により2つの矩形部321を接続することで、接地電位をより安定させることができる。
【0032】
ここで、
図6を参照して、表面導体層C1の信号導体21と、第1中間導体層C2の第1内部接地導体32との位置関係について説明する。
図6では、信号導体21および接地導体31が実線で、また+Z方向から平面透視した第1内部接地導体32が破線で描かれている。
【0033】
第1内部接地導体32の接続部322は、第1方向の順に、第1辺322aと、該第1辺322aと対向して位置する第2辺322bとを有する。すなわち、Y方向に延びる接続部322の2つの辺(輪郭線)のうち、開口10a側の一方が第1辺322aであり、開口10a側とは反対側の他方が第2辺322bである。
【0034】
第1内部接地導体32は、平面視で、開口10aから離れて位置している。詳しくは、第1内部接地導体32の開口10a側の端辺(第1辺322aを含む)は、平面視で、開口10aから距離D2離れている。換言すれば、第1内部接地導体32は、開口10aから距離D2のプルバックを有する位置に形成されている。第1内部接地導体32についてプルバックを設けている理由は、信号導体21および接地導体31にプルバックを設けている理由と同様である。
【0035】
ここで、距離D2は、距離D1より大きくなっていてもよく、例えば、0.1~0.5mmであってもよい。その理由は、次のとおりである。
第1内部接地導体32は、基体10の内部に位置しているため、基体10に開口10aを形成するときにその位置を視認することができない。このため、第1内部接地導体32のプルバックを、信号導体21等と同一の距離D1とすると、第1内部接地導体32の形成位置がずれていた場合に、開口10aが第1内部接地導体32に掛かるおそれがある。開口10aが第1内部接地導体32に掛かると、めっき内部の銅パターンが側面から露出して酸化してしまう。
そこで、第1内部接地導体32のプルバックを、距離D1より大きい距離D2とする構成を有する配線基体100は、製造上の積層誤差等により第1内部接地導体32の形成位置が本来の位置より開口10a側にずれても、開口10aが第1内部接地導体32に掛かりにくい。
【0036】
また、
図6に示すように、接続部322は、平面透視で第2部212と重なる位置で信号導体21と交差している。より詳しくは、
図7に示すように、接続部322の第2辺322bは、平面透視で信号導体21のテーパ部215と重なっている。第2辺322bとテーパ部215が平面透視で重なる時、第2辺322bは、平面透視で、X方向におけるテーパ部215の中央部と重なっていてもよい。
コプレーナ線路のインピーダンスは、接続部322と信号導体21とが重なる面積が変動すると、これに応じて変動する。また、接続部322と信号導体21との位置関係は、各導体層の形成工程における位置ずれなどに起因して変動し得る。第2部212と第3部213とがテーパ部215を介さずに接続され、接続部における幅が不連続に変化すれば、接続部322の第2辺322bが第2部212側および第3部213側に位置するかによって、接続部322と信号導体21とが重なる面積は変化する。
対して、第2辺322bがテーパ部215の中央部と重なる構成を有する配線基体100は、接続部322と信号導体21との位置関係がX方向について正負いずれの向きにずれても、インピーダンスが大きく変化しない。
【0037】
次に、
図8を参照して第2中間導体層C3について説明する。
図8は、第2層12の下面を-Z方向から平面透視した図である。
第2中間導体層C3は、2つのビア導体V2のランド、および14個のビア導体V4のランドを有する。また、第2中間導体層C3は、開口10aを囲むように一繋がりとなっている第2内部接地導体33を有する。
【0038】
第2内部接地導体33は、4つの矩形部331と、枠状部332とを有する。4つの矩形部331の各々は、平面透視で第1中間導体層C2における第1内部接地導体32の矩形部321と重なっている。枠状部332は、これらの4つの矩形部331を繋ぐとともに開口10aを囲んでいる。また、枠状部332は、-Z方向からの平面視で裏面開口10bから露出する位置に形成されている。換言すれば、枠状部332は、-Z方向からの平面視で裏面開口10bの内壁面と開口10aの内壁面とに囲まれた枠状領域内に形成されている(
図9参照)。枠状部332は、裏面開口10bに嵌め込まれた支持基板60に当接し、該支持基板60と電気的に接続される。よって、支持基板60は接地電位となる。
【0039】
また、枠状部332は、平面視で開口10aから離れて位置している。詳しくは、枠状部332は、開口10aから距離D3のプルバックを有する位置に形成されている。距離D3は、例えば、0.1~0.5mmとしていてもよい。
【0040】
次に、
図9を参照して裏面導体層C4について説明する。
図9は、基体10の下面を-Z方向から平面透視した図である。
図9では、第3層13の下面に形成されている裏面導体層C4と、第3層13の裏面開口10bから露出している第2中間導体層C3の枠状部332とが描かれている。裏面導体層C4は、2つの裏面信号導体24と、4つの裏面接地導体34と、14個の裏面端子導体44とを有する。
【0041】
裏面信号導体24は、ビア導体V2を介して信号導体21と電気的に接続されており、ビア導体V2との接続部から外辺10c側に向けて延在している。
【0042】
裏面接地導体34は、ビア導体V3を介して接地導体31、第1内部接地導体32および第2内部接地導体33と電気的に接続されている。裏面接地導体34は、平面透視で接地導体31の一部、第1内部接地導体32のうち矩形部321の一部、および第2内部接地導体33のうち矩形部331の一部と重なる矩形状の導体である。裏面接地導体34は、平面視で裏面開口10bから離れて位置している。裏面接地導体34は、裏面開口10bから距離D4のプルバックを有する位置に形成されている。距離D4は、例えば、0.05~0.3mmとしてもよい。
【0043】
裏面端子導体44は、ビア導体V4を介して端子導体41と電気的に接続されており、ビア導体V4との接続部から外辺10c側に向けて延在している。
【0044】
以上に説明した構成の配線基体100は、例えば以下の方法により製造することができる。
まず、第2層12となる樹脂基板の表裏にそれぞれ第1中間導体層C2および第2中間導体層C3を形成し、また該樹脂基板を貫通する導体層(ビア導体Vの一部)を形成して、コア層を作成する。
次に、コア層の上面に、第1層11となるプリプレグと、表面導体層C1の一部となる銅箔とをレイアップ(積層)し、コア層の下面に、第3層13となるプリプレグと、裏面導体層C4の一部となる銅箔とをレイアップして積層体を作成する。ここで、プリプレグは、たとえば補強材としてのガラスクロスに樹脂を含浸させて半硬化させた部材である。
次に、上記の積層体を加熱するとともに厚さ方向に加圧してプリプレグを固化させる。
次に、固化したプリプレグおよび銅箔にレーザまたはドリルによりビア導体Vの位置に下穴を形成し、電解パネルめっきにより、ビア導体Vの一部、表面導体層C1および裏面導体層C4となるめっき層を形成する。
次に、サブトラクティブ法によりめっき層の一部を除去して表面導体層C1および裏面導体層C4のパターンを形成する。
次に、第3層13の裏面開口10bの形状が第1層11、第2層12の開口10aの形状と異なる場合は、レーザ加工で第3層13の一部を除去して裏面開口10bを形成する。その後、ルーターにより第1層11および第2層12の一部を削り出して開口10aを形成する。この際、各導体層においてプルバックが設けられていることにより、開口10aおよび裏面開口10bが表面導体層C1、第1中間導体層C2、第2中間導体層C3および裏面導体層C4に掛からないように加工することができる。
最後に、裏面開口10bに支持基板60を嵌め込んで固定し、配線基体100が完成する。
【0045】
なお、仮にめっき層の形成前にルーターによる穿孔加工を行うことが可能であるとしても、開口10aおよび裏面開口10bの内壁面にめっき層が形成されるため、この内壁面のめっき層を除去する工程が新たに必要となる。これに対し、本実施形態の方法は、このような追加の工程を必要としないため、より簡素な工程で配線基体100を製造することができる。
【0046】
(変形例1)
次に、
図10を参照して、上記実施形態の変形例1について説明する。
変形例1では、第3層13に裏面開口10bが設けられておらず、第3層13の上面に直接電子部品200が接続されている。すなわち、第3層13が、上記実施形態の支持基板60の機能を兼ねている。
このような構成を有する配線基体100は、第3層13に裏面開口10bを形成する工程が不要となるため、配線基体100の製造工程を簡素化できる。また、支持基板60を別途用意する必要がないため、配線基体100の部材が少ない。
【0047】
(変形例2)
次に、
図11を参照して、上記実施形態の変形例2について説明する。変形例2は、上記の変形例1と組み合わせてもよい。
変形例2では、表面導体層C1の接地導体31は、信号導体21の+Y方向側および-Y方向側に隣接する2つの矩形部313と、これらの2つの矩形部313を接続する接続部312とを有する。接続部312は、Y方向(第2方向)に延びて、矩形部313の外辺10c側の端部同士を接続している。このように、接続部312により2つの矩形部313を接続することで、接地電位をより安定させることができる。
【0048】
なお、上記実施の形態は例示であり、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、基体10が第1層11~第3層13の3層構造である例を用いて説明したが、これに限られず、2層または4層以上であってもよい。特に、積層数を増大させて層間の導体層の数を多くすることで、より適切にインピーダンスを調整できる場合がある。積層数を増大させる場合における各層間の導体層の構成は、例えば第1中間導体層C2と同一とすることができる。また、基体10は、層構造でなくともよい。
【0049】
また、信号導体21は、第1部211と第2部212との間にさらにテーパ部を有していてもよい。
【0050】
また、信号導体21および/または接地導体31が開口10aの縁まで延びている構成において、信号導体21および接地導体31を上記実施形態の形状としてもよい。
【0051】
その他、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状などの具体的な細部は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状を適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示は、配線基体および電子装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 電子装置
10 基体
10a 開口
10b 裏面開口
10c 外辺
21 信号導体
211 第1部
212 第2部
213 第3部
214 第4部
215 テーパ部
21T テーパ辺
24 裏面信号導体
31 接地導体
311 突出部
312 接続部
313 矩形部
32 第1内部接地導体(内部接地導体)
321 矩形部
322 接続部
322a 第1辺
322b 第2辺
33 第2内部接地導体
331 矩形部
332 枠状部
34 裏面接地導体
41 端子導体
44 裏面端子導体
60 支持基板
100 配線基体
200 電子部品
201 電極パッド
300 ボンディングワイヤ
C1 表面導体層
C2 第1中間導体層
C3 第2中間導体層
C4 裏面導体層
R 実装領域
V、V2~V4 ビア導体