IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7573058生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
A61B5/026 120
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023016087
(22)【出願日】2023-02-06
(62)【分割の表示】P 2020503869の分割
【原出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2023052921
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】10201706109Y
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボンディス, エスタニスラオ グレン
(72)【発明者】
【氏名】チュワツァワット, スパジト
(72)【発明者】
【氏名】クリンスコン, ウィプトポン
(72)【発明者】
【氏名】バオトン, ソムチャイ
(72)【発明者】
【氏名】タウィープランスリポン, ヴィジット
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0275852(US,A1)
【文献】特表2016-538097(JP,A)
【文献】米国特許第04444498(US,A)
【文献】特開2009-066042(JP,A)
【文献】特開2015-157020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0253141(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0206221(US,A1)
【文献】米国特許第07738935(US,B1)
【文献】特表2015-502197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0296665(US,A1)
【文献】特開昭63-071236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)装置であって、
ユーザーの皮膚の皮膚特性に依存して可変な強度レベルを有するように駆動電流により制御された光信号をユーザーの皮膚に向けて放出するように動作可能な少なくとも一つの光源と、
ベース電流を有する信号トランジスタを含み、80Hz以上の周波数において、前記駆動電流を制御して前記光信号をオン状態とオフ状態との間で交互に切り替え、異なる皮膚特性に対応して前記光信号の可変な強度レベルを制御する、駆動回路と、
ユーザーの皮膚からの光信号の反射を検出して合流した電流信号を供給するように動作可能な並列に接続された少なくとも二つの光検出器を有する光検出器のユニットと、
生理学的変化を測定するために前記合流した電流信号をPPG信号に変換するように動作可能な信号処理回路と
を備える、装置。
【請求項2】
前記光信号の強度レベルが1900MCDから3000MCDの範囲である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光源が、前記光信号を供給するために、13mAから20mAの範囲の駆動電流により駆動される請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記皮膚特性が肌の色である、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記信号処理回路が、前記PPG信号を供給するために、前記合流した電流信号に関係する電圧信号をフィルタリングするための0.6Hzから8Hzの通過帯域を供給するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記信号処理回路が、前記合流した電流信号を前記電圧信号に変換するように動作可能なトランスインピーダンス増幅器を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記信号処理回路が、前記通過帯域を供給するように協働するハイパスフィルタ(HPF)および第2のローパスフィルタ(LPF)を含む、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記信号処理回路が、100Hzから2000Hzの範囲のカットオフ周波数を有する第1のLPFをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記信号処理回路が、前記HPFと前記第1のLPFとの間に配置された電圧フォロワをさらに含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記信号処理回路が、前記HPFと前記第2のLPFとの間に配置された増幅器をさらに含む、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記信号処理回路が、
前記駆動回路と通信するためにメイン通信ユニット(MCU)ポートからデジタルアナログコンバータにコマンドを供給するように構成された第1の信号プロセッサと、
前記合流した電流信号を電圧信号に変換するように構成された第2の信号プロセッサと、
前記電圧信号をフィルタリングするためのカットオフ周波数を提供するように構成された第3の信号プロセッサと
を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第2の信号プロセッサと通信して電圧出力レベルを維持するように構成された少なくとも1つの電圧フォロワをさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電圧フォロワが、少なくとも1つのゲイン増幅器と通信し、前記少なくとも1つのゲイン増幅器が、望ましいゲインまで増幅するために第3の信号プロセッサとさらに通信する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記望ましいゲインが75または150である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記カットオフ周波数が0.6Hzから8.0Hzの間である、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記第3の信号プロセッサが帯域通過フィルタである、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記信号トランジスタがNPNである、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの光源が緑色である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)方法であって、
光信号を光源からユーザーの皮膚に向けて放出する工程であって、前記光信号は、ユーザーの皮膚の皮膚特性に依存して可変な強度レベルを有するように駆動電流により制御される工程と、
ベース電流を有する信号トランジスタを含む駆動回路を使用して制御する工程であって、前記駆動電流が、80Hz以上の周波数において、前記光信号をオン状態とオフ状態を交互に切り替え、異なる皮膚特性に対応して前記光信号の可変な強度レベルを制御する、工程と、
並列に接続された少なくとも2つの光検出器を用いて、ユーザーの皮膚からの光信号の反射を検出して合流した電流信号を供給する工程と、
生理学的変化を測定するために信号処理回路を用いて、前記合流した電流信号をPPG信号に変換する工程と
を含む、方法。
【請求項20】
前記合流した電流信号を電圧信号に変換する工程であって、前記電圧信号のアナログ信号が、前記アナログ信号を増幅およびフィルタリングするように、処理される工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの電圧フォロワで前記電圧信号の電圧出力レベルを維持する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの電圧フォロワが、少なくとも1つのゲイン増幅器と通信し、前記少なくとも1つのゲイン増幅器で望ましいゲインを増幅する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
トランスインピーダンス増幅器に基づいて前記電流信号を電圧信号に変換する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトプレチスモグラフィ(PPG)は、光を使用して、臓器の容積測定であるプレチスモグラムを取得することをいう。PPGは、組織の微小血管床の血液量変化を検出する単純で低コストの技術である。PPGは、実装が容易で低コストであるため、医療分野で広く使用される一方で、既知のPPG技術ではユーザーの肌の色調/色、ユーザーの動き、周囲の光、周囲の温度などの要因を効果的に処理できないため、このPPG技術を用いて得られた測定結果は、通常精度が低い。これらの要因を軽減するために、既存のハードウェアは、複雑な回路を含む複雑な設計を採用していることが知られている。
【0003】
先行技術の少なくとも1つの欠点に対処する、生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)装置および方法を提供すること、および/または公衆に有用な選択肢を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
一態様によれば、生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)装置であって、皮膚特性に依存して可変な強度を有する光信号を放出するように動作可能な光源と、光信号の反射を検出して合流した電流信号を供給するように動作可能な第1および第2の光検出器と、生理学的変化を測定するために電流信号をPPG信号に変換するように動作可能な信号処理回路とを備える装置が提供される。
【0005】
記載の実施形態は、特に利点が大きい。光信号の強度の皮膚特性への依存性により、光信号を調整して、電力を節約したり、生成されるPPG信号の信号対雑音比を改善したりすることができる。さらに、単一の光源を使用することにより、小さなフォームファクタを実現できる。単一の光源を使用すると、複数の光源を必要とする既存のシステムと比較して、発光に起因する発熱と消費電力が少ない。さらに、望ましい光エミッタンスを損なうことなく、装置に小さな設置面積を実現できる。
【0006】
光信号の強度は、1900MCDから3000MCDの範囲であり得る。好ましくは、光源は、1mAから20mAの範囲の駆動電流により駆動され、光信号を供給する。皮膚特性は、肌の色(例えば、色素沈着またはタトゥーインクに依存する)であり得る。暗い肌の色の場合には、駆動電流を上げることで高い光強度を実現して、生成されるPPG信号の信号対雑音比を改善する。例えば、暗い肌の色の場合には、光源を提供するために駆動電流が13mAから20mAの範囲内で変化するように装置を構成されうる。明るい肌の色の場合には、電力を減らし、光に対して敏感な皮膚による、皮膚の損傷のリスクを減らすために、駆動電流を少なくすることにより小さな光強度が使用される。皮膚特性はまた、例えば、皮膚の深さおよび皮膚の質感であってもよい。皮膚の深さは、皮膚に対する毛の分布に関係している可能性がある。皮膚の質感は、年齢や性別に起因するエラスチンの変化に関係している可能性がある。PPG技術の使用により、特定の光を特定の皮膚の深さに浸透させることができる。本技術には2つの変形がある。一方の変形(透過)では、関心のある身体部分(指など)を通り抜ける光が検出される。他方の変形(反射)では、関心のある身体部分(手首など)で反射した光が検出される。
【0007】
装置は、光源に付随する低信号トランジスタをさらに備えてもよい。例えば、低信号トランジスタは、駆動電流を供給する駆動回路の一部を形成するか、または駆動回路に付随する。低信号トランジスタは、電流の高分解能を目的とする。
【0008】
好ましくは、光源は、オン状態とオフ状態を交互に繰り返して光信号を放出するように動作可能である。オフ状態の光源は、ほとんどまたはまったく電力を消費しない。さらに、皮膚特性に応じた光強度の調整のために、上記のように、光源を駆動するための可変駆動電流が使用されてもよい。
【0009】
信号処理回路は、PPG信号を供給するために、電流信号に関係する電圧信号をフィルタリングするための0.6Hzから8Hzの通過帯域を供給するように構成されてもよい。この特定の通過帯域は、特にPPG状態に関係する情報を表す電流信号の一部に対応する。
【0010】
好ましくは、信号処理回路は、不要な周波数成分をフィルタリングするための通過帯域を提供するように協働するハイパスフィルタ(HPF)およびローパスフィルタ(LPF)を含む。信号処理回路は、カットオフ周波数が100Hzから2000Hzの範囲の別のLPFをさらに含んでもよい。信号処理回路は、HPFと、LPFのうちの1つとの間に配置された電圧フォロワをさらに含んでもよい。信号処理回路は、HPFと、LPFのうちの1つとの間に配置された増幅器をさらに含んでもよい。
【0011】
別の態様によれば、PPG信号を供給するために、光検出器により供給される電流信号に関係する電圧信号をフィルタリングするための0.6Hzから8Hzの通過帯域を供給するように構成された信号処理回路が提供される。
【0012】
別の態様によれば、生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)方法であって、光源を用いて、皮膚特性に依存して可変な強度を有する光信号を放出する工程と、第1および第2の光検出器を用いて、光信号の反射を検出して合流した電流信号を供給する工程と、信号処理回路を用いて、生理学的変化を測定するために電流信号をPPG信号に変換する工程とを含む方法が提供される。
【0013】
別の態様によれば、フォトプレチスモグラフィ(PPG)監視装置であって、MCUポートからデジタルアナログコンバータ回路にコマンドを供給して光ドライバと通信するように構成された第1の信号プロセッサと、光信号を生成および放出するように構成された少なくとも1つの光源と、上記少なくとも1つの上記光源が電流信号を示しており、この少なくとも1つの光源から光を取り出すように構成された少なくとも2つの光検出器を有する光検出器ユニットと、電流信号を電圧信号に変換するように構成された第2の信号プロセッサと、光ドライバから少なくとも1つの光源に電流制御を提供するための低信号トランジスタとして構成された光ドライバを有する、少なくとも1つの光源と、カットオフ周波数を提供するように構成された第3の信号プロセッサとを備える監視装置が提供される。
【0014】
本装置は、第2の信号プロセッサと通信して電圧出力レベルを維持するように構成された少なくとも1つの電圧フォロワを備えてもよい。
【0015】
好ましくは、少なくとも1つの電圧フォロワは、少なくとも1つのゲイン増幅器と通信し、少なくとも1つのゲイン増幅器は、望ましいゲインまで増幅するために第3の信号プロセッサとさらに通信する。
【0016】
望ましいゲインは75または150であってもよい。
【0017】
好ましくは、カットオフ周波数は0.6Hzから8.0Hzの間である。第3の信号プロセッサは帯域通過フィルタであってもよい。低信号トランジスタはNPNであってもよい。少なくとも1つの光源は緑色であってもよい。
【0018】
別の態様によれば、フォトプレチスモグラフィ(PPG)監視方法であって、光源ユニットにより光信号を生成する工程と、少なくとも2つの光検出器により光信号を観察する工程であり光信号が電流信号の吸収を示す工程と、電流信号を電圧信号に変換する工程であり前記電圧信号のアナログ信号が前記アナログ信号を増幅およびフィルタリングするように処理される工程とを含む方法が提供される。
【0019】
本方法は、少なくとも1つの電圧フォロワで電圧信号の電圧出力レベルを維持する工程をさらに含んでもよい。好ましくは、少なくとも1つの電圧フォロワは、少なくとも1つのゲイン増幅器と通信し、少なくとも1つのゲイン増幅器で望ましいゲインを増幅する。
【0020】
さらに、トランスインピーダンス増幅器に基づいて電流信号を電圧信号に変換する工程を含む。
【0021】
一態様に関係する特徴は、他の態様にも適用可能であり得ることが想定される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下、添付の図面を参照して実施例を説明するが、同様の部分は同様の参照番号で示される。
図1】本発明の一実施形態による、生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)装置のシステムブロック図である。
図2図1の装置のいくつかのコンポーネント間の信号通信のフローチャートである。
図3】本発明の別の実施形態による、生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)装置のシステムブロック図である。
図4図3の装置のコンポーネント間の信号通信のフローチャートである。
図5図1の装置の光源に付随する駆動回路の回路図である。
図6図1の装置の一対の光検出器の回路図である。
図7図1の装置の光検出器に付随するトランスインピーダンス増幅器の回路図である。
図8】ローパスフィルタおよび付随する電圧フォロワを含む図1の装置の一部を示す回路図である。
図9】ローパスフィルタおよび電圧フォロワのない図1の装置の変形例の回路図である。
図10】サンプルホールドスイッチを含む図3の装置の一部の回路図である。
図11(a)】直流信号の振幅対時間の折れ線グラフを示す図である。
図11(b)】直流信号の振幅対時間の折れ線グラフを示す図である。
図11(c)】直流信号の振幅対時間の折れ線グラフを示す図である。
図12(a)】交流信号の振幅対時間の折れ線グラフを示す図である。
図12(b)】交流信号の振幅対時間の折れ線グラフを示す図である。
図12(c)】交流信号の振幅対時間の折れ線グラフを示す図である。
図13】異なる被験者に対して図1の装置と従来の装置を用いて得られたSNR測定値を示す図である。
図14図1の装置の信号処理回路について得られた過渡応答の測定値を示す図である。
図15(a)】図1の装置のLPFなしのPPG信号の時間領域測定値を示す図である。
図15(b)】図1の装置のLPFありのPPG信号の時間領域測定値を示す図である。
図16(a)】LPFなしの図15のPPG信号の周波数領域(FFT)測定値を示す図である。
図16(b)】LPFありの図15のPPG信号の周波数領域(FFT)測定値を示す図である。
図17図1の装置のいくつかのコンポーネント間の信号通信の別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による、生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ(PPG)装置100のシステムブロック図を示す。装置100は、発光ダイオード(LED)110、アナログスイッチ120、複数の光検出器130、トランスインピーダンス増幅器(TIA)140、第1のローパスフィルタ(LPF)150、電圧フォロワ160、ハイパスフィルタ(HPF)170、増幅器180、および第2のLPF190を含む。図2は、コンポーネント110から190のいくつかの間の信号通信の例示的なフローを示す。図17は、コンポーネント110-190のうちのいくつかの間の信号通信のフローの、別の例を示す。この実施形態では、装置100は、ユーザーの手首部分に装着可能である。コンポーネント140-190は、部分的または全体的に信号処理回路を形成する。
【0024】
装置100は、装着可能なデバイス(例えば、手首に装着される)または装着できないデバイスなどの任意の適切な形態をとることができる。あるいは、装置100はまた、スマートフォンデバイスなどの任意の適切なデバイス内に実装されるか、その一部を形成してもよい。装置100は、本発明の一実施形態による生理学的変化を測定する方法を実行するように構成される。
【0025】
図5を参照すると、光源として機能するLED110は、駆動回路111(図5の回路図を参照)により供給される駆動電流により駆動され、デジタル-アナログコンバータ(DAC)113(図17も参照)を介してメイン通信ユニット(MCU、図示せず)により供給される制御信号(「MCU制御信号」)に従って光信号を放出する。放出された光信号は、505nmから535nm、より具体的には515nmから525nmの波長を有する。
【0026】
LED110により放出された光信号は、手首部分の皮膚特性に依存して可変な強度を有する。この実施形態では、皮膚特性は、例えば肌の色素沈着またはタトゥーインクに依存する肌の色である。駆動電流の範囲は1mAから20mAの範囲であり、光信号は、それに応じて1900MCDから3000MCDの範囲の強度を有する。装置100は、可変な強度及びそれゆえ駆動電流が皮膚特性に依存するように、構成される。この実施形態では、肌の色が暗いほど、駆動電流が高くなる。暗い肌の色の場合には、駆動電流は13mAから20mAの範囲内で変化する。この構成は、肌の色が暗いほど、放出された光信号の大部分が皮膚により吸収される(放出された光信号の小部分が検出のために反射されることを意味する)ため有用である。駆動電流を上げることにより、光信号の強度を上げて、結果として満足できる信号対雑音比(SNR)を有するPPG信号を実現できる。あるいは、肌の色が明るいほど、放出された光信号の小部分が吸収される(放出された光信号の大部分が反射されることを意味する)。これにより、小さな駆動電流を使用して、結果として満足できるSNRを有するPPG信号を実現でき、消費電力を削減できる。
【0027】
LED110は、MCUにより供給される制御信号に従ってオン状態とオフ状態を交互
に繰り返す。オン状態では、LED110は、上記のように可変な強度の光信号を放出する。オフ状態では、LED110は発光しない。LED110に付随する低信号トランジスタ112は、図5では円でマークされて示される。この実施形態では、低信号トランジスタ112は、駆動回路111が、放出された光信号の強度の制御に加え、LEDのオン状態とオフ状態との切り替えをさらに制御するように、駆動回路111の一部を形成する。一つの構成例では、オン状態とオフ状態は、それぞれ1ミリ秒と11ミリ秒の持続時間を有する。低信号トランジスタは、光信号の広い分解能範囲を実現するために使用される。上記のように、分解能範囲は、低信号トランジスタでは、通常1900MCDから3000MCDの範囲内に収まる。このような構成では、光信号は、それに応じて2つの状態の方形波で表現できる2つの強度状態を交互に繰り返す。他の実施形態では、LED110は、異なる強度レベルの2つのオン状態を交互に繰り返すように制御されてもよい。
【0028】
図5に示す低信号トランジスタ112に関して、駆動電流は、「ILED」でマークされ
、DAC113からの「Ib」でマークされたベース電流により制御される。低信号トラ
ンジスタの直流ゲイン「hFE」は、ILED=hFE×Ibの関係を満たす。ベース電流は、「R7」でマークされた抵抗器を流れ、(「U3」でマークされた)DACの(「VDAC」でマークされた)電圧により制御され、MCU制御信号に依存する。ベースとエミッタ間の電圧差が0.7の場合、ベース電流は、
関係:

【数1】
を満たす。
【0029】
したがって、駆動電流は、低信号トランジスタのベース電流により制御され、ベース電流と直流ゲイン値の積(通常100から250の範囲)になる。
【0030】
複数のLEDの実施形態では、いつでも複数のLEDをアクティブにする必要がある場合、または光信号の強度を上げる必要がある場合、付随する抵抗器(固定抵抗器など)の抵抗を3.3オーム(Ω)から1オーム(Ω)へ低下させることで駆動信号の電圧を3.3Vから3.5Vに上げることができ、その結果駆動電流が13mAから20mAに変化する。
【0031】
図8は、光検出器130、TIA140、第1のLPF150、および電圧フォロワ160の回路図を示す。この実施形態では、光検出器130は、図6から図9に示す第1および第2の光検出器130a、130bを含む。光検出器130は、光信号の反射(すなわち反射部分)を検出して電流信号を供給するように動作可能である。装置100が手首部分に装着されると、LED110は手首部分に向けて光信号を放出し、光検出器130a、130bは手首部分からの光信号の反射を検出する。
【0032】
信号処理回路は、電流信号を処理してPPG信号とするように動作可能である。より具体的には、信号処理回路は、PPG信号を提供するために、電流信号に関係する電圧信号をフィルタリングするための0.6Hzから8Hzの通過帯域を提供するように構成される。
【0033】
この実施形態では、TIA140は、光検出器130a、130bに付随して検出器サブ回路140Aを形成し、光検出器130a、130bにより供給される電流信号を電圧信号に変換するように動作可能である。図7は、光検出器130a、130bに付随する
TIA140の回路図を示す。
【0034】
第1のLPF150は、第1のフィルタリングされた信号を出力するために、通常100Hz(6000bpm)から2000Hz(120,000bpm)の範囲の所定のカットオフ周波数を超える電圧信号の周波数成分をフィルタリング(例えば、除去または抑制)するように動作可能である。この実施形態では、第1のLPF150のカットオフ周波数は2000Hzである。第1のLPF150は、トグル信号(80Hzから100Hzの範囲)に付随する情報を保持する高周波ノイズを、信号増幅の前にフィルタリングするために使用される。換言すれば、8Hzのカットオフ周波数を有するLPFが第1のLPF150の代わりに使用された場合、信号処理回路はトグル信号に応答できないであろう。信号が増幅されると、適切なPPG信号振幅を得ることができる。最終的には、生成されるPPG信号のSNRを改善するために、周波数が8Hzを超えるノイズ成分を除去するために、8HzのLPF(下記)を使用することができる。
【0035】
図8の回路図に示す電圧フォロワ160は、第1のLPF150により供給される第1のフィルタリングされた信号を受信し、第1の中間信号を供給するように動作可能である。電圧フォロワ160は、その電圧出力(すなわち、第1の中間信号)がその入力電圧(すなわち、第1のフィルタリングされた信号)に追従することを保証するように構成される。これは、本実施形態では、電圧フォロワ160をTIA140と通信させることで実現される。電圧フォロワ160は、非反転ユニティ演算増幅器を含む。図9に示すように、いくつかの実施形態では、第1のLPF150および電圧フォロワ160は必要でない場合がある。第1のLPF150および電圧フォロワ160は、アクティブLPF150Aを提供するために協働する(例えば、図2を参照)。
【0036】
HPF170(例えば、1次アクティブハイパスフィルタ)は、第2のフィルタリングされた信号を供給するために、通常0.6Hz(36bpm)から0.8Hz(48bpm)の範囲の所定のカットオフ周波数以下の第1の中間信号の周波数成分をフィルタリングするように動作可能である。この実施形態では、HPF170のカットオフ周波数は0.6Hzである。
【0037】
次に、増幅器180は、第2の中間信号を供給するために、75および150から選択されたゲイン値で第2のフィルタリングされた信号を増幅するように動作可能である。ゲイン値は、他の実施形態では他の値でもよい。
【0038】
第2のLPF190(例えば、パッシブローパスフィルタ)は、第3のフィルタリングされた信号を供給するために、通常7.5Hz(450bpm)から8Hz(480bpm)の範囲の所定のカットオフ周波数以下の第2の中間信号の周波数成分をフィルタリングするように動作可能である。この実施形態では、第2のLPF190のカットオフ周波数は8Hzである。第3のフィルタリングされた信号は、PPG信号として機能する。HPF170およびLPF190は協働して通過帯域を供給する。
【0039】
図3は、本発明の別の実施形態による生理学的変化を測定するためのフォトプレチスモグラフィ装置100’のシステムブロック図を示す。図10を参照すると、装置100’は、サンプルホールドスイッチ165および別の電圧フォロワ166をさらに含むという点で、図1の装置100とは異なる。サンプルホールドスイッチ165は、LED110のトグル動作中のLED110の電圧変動を低減するための電圧フォロワ166に先行する。電圧フォロワ166は、サンプルホールドスイッチ165の一部を形成すると考えられてもよい。サンプルホールドスイッチ165は、実装に応じて、アナログスイッチ120とともに、またはアナログスイッチ120の代わりに実装されてもよい。「Analog_Input」とマークされた図8の回路の出力は、図10の回路により受信される。
図4は、装置100’のコンポーネント110から190間の信号通信の例示的なフローを示す。
【0040】
装置100、100’は、他の電圧フォロワを含むか、電圧フォロワ160、166の一部または全部を省略してもよいことに留意されたい。例えば、サンプルホールドスイッチ165のない実施形態では、電圧フォロワ166は省略してもよい。熟練した読者は、少なくとも1つの電圧フォロワが、どんな増幅効果を有さず電圧を維持するための任意の適切な方法で、装置100、100’により使用され得ることを理解するであろう。上記のように、装置100、100’は電圧フォロワを持たない場合がある。
【0041】
図11(a)から11(c)は、それぞれの期間中での、直流信号の振幅対時間の折れ線グラフを示す。図12(a)から12(c)は、それぞれの期間中の交流信号の振幅対時間の折れ線グラフを示す。図13は、3人の被験者に対して、光検出器130を用いて実現される信号対雑音比(SNR)を、単一の光検出器を有する従来の構成を用いて実現されるSNRと比較して示す。2つの光検出器130a、130bを使用すると、SNRが大幅に改善されることになることが理解できる。
【0042】
図14は、カットオフ周波数をそれぞれ0.3Hz、0.5Hz、0.7Hzに設定したHPF170について得られた過渡応答の測定値を示す。カットオフ周波数を0.7Hzに設定すると、直流および他の低周波数成分を迅速に除去できるため、信号処理回路(過渡)の応答特性がより速くなることがわかる。
【0043】
図15(a)および15(b)は、それぞれ第2のLPF190なしおよび第2のLPF190ありのPPG信号の時間領域測定値を示す。図16(a)および16(b)は、それぞれ第2のLPF190なしおよび第2のLPF190ありのPPG信号の周波数領域(FFT)測定値を示す。当業者は、ノイズ成分とみなされ得る8Hzより高く0.6Hzより低い周波数成分が、第2のLPF190により効果的に除去または抑制されることを理解するであろう。8Hzを超える除去対象の周波数成分は図16(a)で長方形のボックスでマークされる。ノイズ成分が除去されると、生成されるPPG信号には、1つ以上の技術的問題に対処するのに特に関係が深い周波数成分のみが含まれる。
【0044】
他の代替構成を以下に説明する。
【0045】
フィルタ150、170、190は、0.6Hzから8Hzの通過帯域を供給するように構成された適切なフィルタリング回路に置き換えることができる。フィルタ回路には、非反転および反転演算増幅器が含まれる場合がある。
【0046】
本明細書で使用される「提供する、供給する」という用語およびその派生語は、「生成する」およびその派生語を意味する場合がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図12(a)】
図12(b)】
図12(c)】
図13
図14
図15(a)】
図15(b)】
図16(a)】
図16(b)】
図17