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特許7573062がん治療における化学療法剤と組み合わせた抗FGFR2抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】がん治療における化学療法剤と組み合わせた抗FGFR2抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241017BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20241017BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241017BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20241017BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241017BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241017BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241017BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALN20241017BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241017BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K31/282
A61K31/519
A61K31/513
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
C12N15/13
C12Q1/6841 Z
C07K16/28
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023060867
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2019562617の分割
【原出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2023093527
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】62/507,053
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/581,992
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515302853
【氏名又は名称】ファイヴ プライム セラピューティクス インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン・エル・コリンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ナティシン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・シャン
(72)【発明者】
【氏名】シアン・チャン
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-527273(JP,A)
【文献】ABIGAEL T GEMO,CANCER RESEARCH,2014年10月,V74 N19,P1-4,http://dx.doi.org/10.1158/1538-7445.AM2014-5446
【文献】Wang et al.,A phase II study of a modified FOLFOX6 regimen as neoadjuvant chemotherapy for locally advanced gast,Br J Cancer.,2016年,114,1326-1333,doi: 10.1038/bjc.2016.126
【文献】Hacibekiroglu et al.,Comparative analysis of the efficacy and safety of modified FOLFOX-6 and DCF regimens as first-line,Mol Clin Oncol.,2015年,3(5),1160-1164,doi: 10.3892/mco.2015.592
【文献】Bendell et al.,FPA144-001: A first in human study of FPA 144, an ADCC-enhanced, FGFR2b isoform-selective monoclonal,J Clin Oncol.,2016年,Vol. 34, Issue 4 suppl.,doi: 10.1200/jco.2016.34.4_suppl.140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C12N、C12Q、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の胃癌または胃食道癌を治療する方法で使用するための薬剤であって、前記薬剤が、アフコシル化抗線維芽細胞増殖因子受容体2IIIb(抗FGFR2-IIIb)抗体、50~100mg/mのオキサリプラチン、100~400mg/mのロイコボリン、及び/または100~400mg/mの5-フルオロウラシル(5-FU)を含み、前記方法が、前記対象に、治療上有効な量の前記抗FGFR2-IIIb抗体並びに前記オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-フルオロウラシル(5-FU)を投与することを含み、
(a)前記抗FGFR2-IIIb抗体が、13~15日ごとに1回、6~15mg/kgの用量で投与され、前記方法が、前記抗FGFR2-IIIb抗体の1回目の投与から7日後に、中間用量の前記抗FGFR2-IIIb抗体を投与することを更に含み、前記中間用量が、7.5mg/kgであり、
(b)前記抗FGFR2-IIIb抗体が、配列中に合計1~10個のアミノ酸置換を含む配列番号4のアミノ配列を有する重鎖可変領域及び配列中に合計1~10個のアミノ酸置換を含む配列番号5のアミノ配列を有する軽鎖可変領域を含み、前記抗FGFR2b抗体-IIIbが、FGFR2-IIIcには結合せずにFGFR2-IIIbに選択的に結合する、配列番号4の重鎖可変領域及び配列番号5の軽鎖可変領域を含む参照抗体の能力を保持する
前記薬剤。
【請求項2】
前記抗FGFR2-IIIb抗体が、位置Asn297のフコースを欠いている、
請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記胃癌が、局所進行性、切除不能または転移性である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
前記アフコシル化抗FGFR2-IIIb抗体の前記重鎖可変領域が、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖超可変領域1(HVR-H1)、
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3
を含み、前記軽鎖可変領域が、
(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖超可変領域1(HVR-L1)、
(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、請求項1に記載の薬剤。
【請求項5】
前記抗FGFR2-IIIb抗体が、15mg/kgの用量で、14日ごとに1回投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項6】
前記抗FGFR2-IIIb抗体並びに前記オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUが、同時投与される、請求項5に記載の薬剤。
【請求項7】
前記抗FGFR2-IIIb抗体並びに前記オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUが、逐次投与される、請求項5に記載の薬剤。
【請求項8】
前記オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUが、前記抗FGFR2-IIIb抗体の投与前に投与される、請求項5に記載の薬剤。
【請求項9】
前記オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUの2回の投与が、前記抗FGFR2-IIIb抗体の投与前に行われる、請求項8に記載の薬剤。
【請求項10】
前記抗FGFR2-IIIb抗体が、前記オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUと同じ日または前記オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUの投与前に投与される、請求項5に記載の薬剤。
【請求項11】
前記方法が、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mのロイコボリン、及び400mg/mの5-フルオロウラシル(5-FU)の静脈内(IV)注入またはIVボーラスによる投与を含む、請求項1に記載の薬剤。
【請求項12】
前記方法が、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mのロイコボリン、及び400mg/mの5-フルオロウラシル(5-FU)の静脈内(IV)注入またはIVボーラスによる投与に続いて、44~48時間にわたる2400mg/mの5-FUのIV注入による投与を含む、請求項1に記載の薬剤。
【請求項13】
前記オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUが、10~21日ごとに1回、10~15日ごとに1回、10日ごとに1回、11日ごとに1回、12日ごとに1回、13日ごとに1回、14日ごとに1回、15日ごとに1回、16日ごとに1回、17日ごとに1回、18日ごとに1回、19日ごとに1回、20日ごとに1回、または21日ごとに1回投与される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項14】
前記オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUが、14日ごとに1回投与される、請求項13に記載の薬剤。
【請求項15】
前記方法が、14日ごとに1回の85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mのロイコボリン、及び400mg/mの5-フルオロウラシル(5-FU)の静脈内(IV)注入またはIVボーラスによる投与に続いて、44~48時間にわたる2400mg/mの5-FUのIV注入による投与を含む、請求項13に記載の薬剤。
【請求項16】
(a)前記抗FGFR2-IIIb抗体が、15mg/kgの用量で静脈内投与され、(b)前記抗FGFR2-IIIb抗体、オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUが、14日ごとに同じ日に投与され、並びに(c)7.5mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体の単回用量が、15mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体の1回目の投与から7日後及び15mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体の2回目の投与の7日前に投与される、請求項1~4又は6~15に記載の薬剤。
【請求項17】
前記胃癌または胃食道癌が、FGFR2-IIIbを過剰発現していることが予め決定されているか、もしくは決定され、及び/または前記胃癌もしくは胃食道癌が、FGFR2遺伝子増幅を有することが予め決定されているか、もしくは決定される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項18】
FGFR2-IIIbの過剰発現が、免疫組織化学染色(IHC)によって決定される、請求項17に記載の薬剤。
【請求項19】
前記過剰発現が、腫瘍細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%における+2または3+のIHCシグナルによって予め決定されているか、または決定される、請求項18に記載の薬剤。
【請求項20】
前記FGFR2遺伝子増幅が、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用してFGFR2と染色体10セントロメア(CEN10)の比を得ることによって予め決定されているか、または決定され、ここで、前記FGFR2遺伝子は、FISHによって決定されるFGFR2/CEN10比が2以上であるとき、増幅しているとみなされる、請求項17に記載の薬剤。
【請求項21】
前記FGFR2増幅が、循環腫瘍DNA(ctDNA)で予め検出されたか、または検出される、請求項20に記載の薬剤。
【請求項22】
治療有効量の抗FGFR2-IIIb抗体、オキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-FUを患者に投与することを含む方法に従って患者の胃癌または胃食道癌を治療するための請求項1~4、6~15、又は17~21のいずれか一項に記載の薬剤の調製のための、抗FGFR2-IIIb抗体、オキサリプラチン、ロイコボリン、及び/または5-FUの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年5月16日に出願された米国仮特許出願第62/507,053号、及び2017年11月6日に出願された米国仮特許出願第62/581,992号の優先権の利益を主張するものであり、当該出願は、その全体が参照により援用される。
【0002】
本出願は、mFOLFOX6化学療法と組み合わせた特定のがんの治療における、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)に対する抗体、例えば、FGFR2アイソフォームFGFR2-IIIb(FGFR2bとしても知られる)に対する抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーメンバーは、チロシンキナーゼ受容体である既知の4つの線維芽細胞増殖因子受容体1~4(FGFR1~4)及びそのアイソフォームに結合し、個々のFGFは、異なるFGFRに様々な程度で結合する(Zhang et al.,J.Biol.Chem.281:15694,2006)。ヒトFGFR2のタンパク質配列は、例えば、GenBank Locus AF487553に提供されている。各FGFRは、3つの免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(D1、D2及びD3)を含む細胞外ドメイン(ECD)、1回膜貫通ヘリックス、及び細胞内触媒キナーゼドメインからなる(Mohammadi et al.,Cytokine Growth Factor Revs,16:107,2005)。FGFは、主に受容体のD2及びD3における領域を介して受容体に結合する。D1とD2との間のリンカーには、酸性アミノ酸が連続している領域があり、「アシッドボックス」(AB)と呼ばれる。D1及びABを含有する領域は、受容体の自己抑制に関与すると考えられており、これは、リガンドへの結合によって緩和される。
【0004】
FGFRは、そのmRNAの選択的スプライシングが複数あることにより、様々なアイソフォームが生じることを特徴とする(Ornitz et al.,J.Biol.Chem.271:15292,1996;FGFR2及びそのアイソフォームの配列については、Swiss-Prot P21802及びアイソフォームP21802-1~P21802-20も参照されたい)。とりわけ、3つ全てのIgドメインを含有する型(αアイソフォーム)、またはD1を除くD2及びD3ドメインの2つのIgドメインのみを含有する型(βアイソフォーム)がある。FGFR1、FGFR2及びFGFR3において、全ての型が、IIIaと示されるD3の前半部分を含有するが、D3の後半部分については2つの選択的エクソンが使用され得ることから、IIIb及びIIIcの型が生じる。FGFR2について、これらの型は、それぞれFGFR2-IIIb及びFGFR2-IIIc(または、単にFGFR2b及びFGFR2c)と示され、対応するベータ型は、FGFR2(ベータ)IIIb及びFGFR2(ベータ)IIIcと示される。FGFR2のFGFR2-IIIb型(K-sam-IIとも示される)は、FGF1及びKGFファミリーメンバー(FGF7、FGF10及びFGF22)の両方に対して高親和性の受容体であるが、FGFR2-IIIc(K-sam-Iとも示される)は、FGF1及びFGF2の両方によく結合するものの、KGFファミリーメンバーには結合しない(Miki et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:246,1992)。実際に、FGFR2-IIIbは、KGFファミリーメンバーに対する唯一の受容体であり(Ornitz et al.,1996,op.cit.)、そのため、KGFRとも示される。
【0005】
FGFR及びそのアイソフォームは、様々な組織で異なる発現をする。FGFR2-IIIb(ならびにFGFR1及びFGFR3のIIIb型)は、上皮組織に発現するが、FGFR2-IIIcは、間葉組織に発現する(Duan et al.,J.Biol.Chem.267:16076,1992;Ornitz et al.,1996,op.cit.)。これらの受容体のFGFリガンドのいくつかは、反対の発現パターンを有する。このように、FGF7(KGF)、FGF10及びFGF22を含むKGFサブファミリーメンバーは、FGFR2-IIIbにのみ結合し(Zhang et al.,op.cit.)、間葉組織に発現することから、上皮細胞のパラクリンエフェクターであり得る(Ornitz et al.,1996,op.cit.)。対照的に、FGF4サブファミリーメンバーFGF4~6は、FGFR2-IIIcに結合し、上皮系及び間葉系の両方で発現することから、オートクリン機能またはパラクリン機能のいずれかを有し得る。FGFR2のアイソフォーム及びそのリガンドの発現パターンから、FGFR2は、上皮間葉相互作用に関与しており(Finch et al.,Dev.Dyn.203:223,1995)、そのため、マウスにおけるFGFR2-IIIbのノックアウトが胚異常及び致死をもたらすことは驚くことではない(De Moerlooze et al.,Development 127:483,2000)。
【0006】
KGF(FGF7)及びKGFR(FGFR2-IIIb)は、多くの膵癌において過剰発現しており(Ishiwata et al.,Am.J.Pathol.153:213,1998)、その共発現は、予後不良と相関している(Cho et al.,Am.J.Pathol.170:1964,2007)。FGFR2遺伝子の体細胞変異は、子宮内膜(子宮)癌の大規模パネルのうち12%で認められ、いくつかの試験症例では、腫瘍細胞の生存に必要であった(Dutt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:8713,2008)。2つの腫瘍において、FGFR2変異は、アペール症候群に関連する、同じS252W置換であることが判明した。FGFR2の増幅及び過剰発現は、特に予後の悪い未分化型びまん性胃癌と関係し、小分子化合物によるFGFR2活性の阻害は、かかるがん細胞の増殖を強く阻害した(Kunii et al.,Cancer Res.68:2340,2008;Nakamura et al.,Gastroenterol.131:1530,2006)。
【0007】
FGFRシグナル伝達の阻害は、抗腫瘍免疫を改善し、乳癌の転移を減じることが報告されている(例えば、T.Ye et al.,Breast Cancer Res.Treat.143:435-446(2014)参照)。抗FGFR2抗体はまた、例えば、胃癌のモデルでも試験されている。具体的な抗FGFR2抗体は、例えば、米国特許第8,101,723B2号に記載されており、これには、ヒトFGFR2-IIIbに結合するが、FGFR2-IIIcにはあまり結合しないか、結合しないモノクローナル抗体及びその逆のモノクローナル抗体が含まれる。米国特許出願公開第2015-0050273A1号は、FGFR2-IIIbに結合する特定のアフコシル化抗体について記載している。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、例えば、対象の胃癌などの消化管癌を治療する方法であって、その対象に、治療上有効な量の抗線維芽細胞増殖因子受容体2(抗FGFR2)及び修正版FOLFOX6(mFOLFOX6)化学療法を投与することを含む、方法を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2抗体は、抗FGFR2-IIIb抗体である。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、次の特性のうちの1つ以上を有する:FGFR2-IIIcに対するよりも高い親和性でFGFR2-IIIbに結合すること、またはFGFR2-IIIcに検出可能なレベルで結合しないこと、ヒトFGFR2に対するFGF2の結合を阻害すること、ヒトFGFR2に対するFGF7の結合を阻害すること、マウス腫瘍モデルにおいて、ヒト腫瘍の成長を阻害すること、ADCC活性を誘導すること、増強されたADCC活性を有すること、アフコシル化されていること、ならびにマウス腫瘍モデルにおいて、腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞及びマクロファージのうちの1つ以上の数を対照と比較して増加させることが可能であること。
【0009】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖超可変領域H1(HVR-H1)、配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖超可変領域L1(HVR-L1)、配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の重鎖可変ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の軽鎖可変ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の重鎖可変ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の軽鎖可変ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の重鎖は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の重鎖は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の軽鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)から選択される。
【0010】
本明細書における方法のいくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、次の特性のうちの1つ以上を有する:位置Asn297のフコースを欠いていること、κ軽鎖定常領域を含むこと、IgG1重鎖定常領域を含むこと、位置Asn297がフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、in vitroで、増強されたADCC活性を有すること、位置Asn297がフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有すること、ならびにマウス腫瘍モデルにおいて、腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞及びマクロファージのうちの1つ以上の数を対照と比較して増加させることが可能であること。
【0011】
本明細書における方法のいくつかの実施形態において、対象は、局所進行性、切除不能または転移性である胃癌を有する。いくつかの実施形態において、胃癌は、胃食道癌である。
【0012】
本明細書における方法のいくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、6~15mg/kg、10~15mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、または15mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、10~21日ごとに1回、10~15日ごとに1回、10日ごとに1回、11日ごとに1回、12日ごとに1回、13日ごとに1回、14日ごとに1回、15日ごとに1回、16日ごとに1回、17日ごとに1回、18日ごとに1回、19日ごとに1回、20日ごとに1回、または21日ごとに1回投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、6mg/kg、10mg/kgまたは15mg/kgの用量で投与され、抗FGFR2-IIIb抗体は、14日ごとに1回投与される。
【0013】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、次の投与レジメンで投与される:(a)6~15mg/kgの用量で、抗FGFR2-IIIb抗体が14日ごとに1回投与される;(b)6mg/kgの用量で、抗FGFR2-IIIb抗体が14日ごとに1回投与される;(c)10mg/kgの用量で、抗FGFR2-IIIb抗体が14日ごとに1回投与される;または(d)15mg/kgの用量で、抗FGFR2-IIIb抗体が14日ごとに1回投与される。いくつかの実施形態において、(a)抗FGFR2-IIIb抗体は、6~15mg/kg、10~15mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、または15mg/kgの用量で、11~17日ごとに1回、12~16日ごとに1回、13~15日ごとに1回、または14日ごとに1回投与され、(b)3~8mg/kg、5~8mg/kg、7~8mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、または8mg/kgの少なくとも1回の中間用量が、(a)の2回の投与の間に投与され、(b)の用量は、(a)の用量よりも少ない。いくつかの実施形態において、(i)(a)の用量は、13~15日ごとに10~15mg/kgであり、(ii)(a)の用量は、13~15日ごとに15mg/kgであり、(iii)(b)の用量は、5~8mg/kgであり、(a)の少なくとも1回の投与から6~8日後及び(a)の後続の投与の6~8日前に投与され、(iv)(a)の用量は、13~15日ごとに10~15mg/kgであり、(b)の用量は、7~8mg/kgであり、(a)の少なくとも1回の投与から6~8日後及び(a)の後続の投与の6~8日前に投与され、(v)(a)の用量は、14日ごとに15mg/kgであり、(b)の用量は、7~8mg/kgであり、(a)の少なくとも1回の投与から7日後及び(a)の後続の投与の7日前に投与され、(vi)(a)の用量は、14日ごとに15mg/kgであり、(b)の用量は、7.5mg/kgであり、(a)の少なくとも1回の投与から7日後及び(a)の後続の投与の7日前に投与され、及び/または(vii)(b)の用量は、(i)~(vi)のいずれかの(a)の用量の1回目の投与後に投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、15mg/kgの用量で14日ごとに1回投与され、抗FGFR2-IIIb抗体の1回目の投与から6~8日後に、抗FGFR2-IIIb抗体が7.5mg/kgの用量で更に投与される。いくつかのそのような実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、15mg/kgの用量で14日ごとに1回投与され、抗FGFR2-IIIb抗体の1回目の投与から7日後に、抗FGFR2-IIIb抗体が7.5mg/kgの用量で投与される。いくつかのそのような実施形態において、7.5mg/kgの用量は、1回のみ、すなわち、15mg/kgの1回目の投与と2回目の投与との間に投与される。
【0014】
本明細書における方法のいくつかの実施形態において、mFOLFOX6は、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mのロイコボリン、及び400mg/mの5-フルオロウラシル(5-FU)の静脈内(IV)注入またはIVボーラスによる投与を含む。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6は、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mのロイコボリン、及び400mg/mの5-フルオロウラシル(5-FU)の静脈内(IV)注入またはIVボーラスによる投与に続いて、44~48時間にわたる2400mg/mの5-FUのIV注入による投与を含む。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6は、10~21日ごとに1回、10~15日ごとに1回、10日ごとに1回、11日ごとに1回、12日ごとに1回、13日ごとに1回、14日ごとに1回、15日ごとに1回、16日ごとに1回、17日ごとに1回、18日ごとに1回、19日ごとに1回、20日ごとに1回、または21日ごとに1回投与される。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6は、14日ごとに1回投与される。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6は、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mのロイコボリン、及び400mg/mの5-フルオロウラシル(5-FU)の静脈内(IV)注入またはIVボーラスによる投与に続いて、44~48時間にわたる2400mg/mの5-FUのIV注入による投与を含み、mFOLFOX6は、14日ごとに1回投与される。
【0015】
本明細書における方法のいくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体及びmFOLFOX6は、同時投与または逐次投与される。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6の1回以上の投与は、抗FGFR2-IIIb抗体の投与前に投与される。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6の2回の投与は、抗FGFR2-IIIb抗体の投与前に投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIB抗体は、mFOLFOX6と同じ日及びmFOLFOX6の投与前に投与される。
【0016】
いくつかの実施形態において、胃癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現することが予め決定されており、及び/または胃癌は、FGFR2遺伝子増幅を有することが予め決定されている。いくつかの実施形態において、方法は、胃癌がFGFR2-IIIbを過剰発現しているかどうかを決定すること、及び/または胃癌がFGFR2遺伝子増幅を有するかどうかを決定することを更に含む。いくつかの実施形態において、FGFR2-IIIb過剰発現は、免疫組織化学染色(IHC)によるタンパク質レベルで決定される。いくつかの実施形態において、過剰発現は、腫瘍細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%における3+のIHCシグナルによって予め決定されているか、または決定される。いくつかの実施形態において、FGFR2遺伝子増幅は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用してFGFR2と染色体10セントロメア(CEN10)の比を得ることによって予め決定されているか、または決定され、ここで、FGFR2遺伝子は、FISHによって決定されるFGFR2/CEN10比が2以上であるとき、増幅しているとみなされる。いくつかの実施形態において、FGFR2増幅は、循環腫瘍DNA(ctDNA)で予め検出されているか、または検出される。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態は、対象の局所進行性、切除不能または転移性胃癌を治療する方法であって、対象に、治療上有効な量の抗線維芽細胞増殖因子受容体2IIIb(抗FGFR2-IIIb)抗体及び修正版FOLFOX6(mFOLFOX6)化学療法を投与することを含み、抗FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、
軽鎖可変領域は、
(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、
【0018】
抗FGFR2-IIIb抗体は、10~15mg/kgの用量で静脈内投与され、続いて、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mのロイコボリン、及び400mg/mの5-フルオロウラシル(5-FU)のIV注入またはIVボーラスによる投与に続いて、44~48時間にわたる2400mg/mの5-FUのIV注入による投与を含むmFOLFOX6が投与され、抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6は、2週間ごとに投与される、方法を包含する。本開示のいくつかの実施形態は、対象の局所進行性、切除不能または転移性胃癌を治療する方法であって、対象に、治療上有効な量の抗線維芽細胞増殖因子受容体2IIIb(抗FGFR2-IIIb)抗体及び修正版FOLFOX6(mFOLFOX6)化学療法を投与することを含み、抗FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、
軽鎖可変領域は、
(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、
抗FGFR2-IIIb抗体及びmFOLFOX6は、13~15日ごとに投与され、任意選択により、3~8mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体の単回用量が、6~15mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体の1回目の投与から6~8日後及び6~15mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体の2回目の投与から6~8日前に投与される、方法を包含する。いくつかのそのような実施形態において、(a)抗FGFR2-IIIb抗体は、15mg/kgの用量で静脈内投与され、(b)抗FGFR2-IIIb抗体及びmFOLFOX6は、14日ごとに同じ日に投与され、(c)7.5mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体の単回用量は、15mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体の1回目の投与から7日後及び15mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体の2回目の投与から7日前に投与される。
【0019】
本明細書のいくつかの実施形態において、胃癌は、腫瘍細胞の少なくとも10%における3+のIHCシグナルによって示されるように、FGFR2-IIIbを過剰発現していることが予め決定されており、及び/または胃癌は、ctDNAにおけるFGFR2遺伝子増幅を有することが予め決定されている。いくつかのそのような実施形態において、対象は、抗FGFR2-IIIb抗体の1回目の投与の前にmFOLFOX6の2回の投与を受けている。
【0020】
本開示はまた、例えば、上記方法のいずれかに従って、患者の胃癌などの消化管癌を治療することにおける使用のための、本明細書に記載される抗FGFR2-IIIb抗体と、オキサリプラチン、ロイコボリン及び5-FUのそれぞれとを含む、組成物を包含する。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載される抗FGFR2-IIIb抗体と、オキサリプラチン、ロイコボリン及び5-FUのうちの少なくとも1つとの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体と、オキサリプラチン、ロイコボリン及び5-FUのうちの少なくとも1つとは、別個の容器または区画にある。いくつかのそのような実施形態において、組成物は、抗体と、オキサリプラチン、ロイコボリン及び5-FUのそれぞれとの組み合わせを、別個の容器または区画に含む。いくつかの実施形態において、組成物は、消化管癌、例えば、胃癌の治療における使用のための説明書を更に含む。
【0021】
本明細書における方法または組成物のいくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、米国特許第8,101,723B2号に記載されるモノクローナル抗体GAL-FR21、GAL-FR22、またはGAL-FR23の重鎖及び軽鎖超可変領域(HVR)H1、H2、H3、L1、L2、及びL3のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の重鎖可変領域は、(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、軽鎖可変領域は、(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号4のアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインを有する。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号5のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを有する。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号4のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号2のアミノ酸配列を含む、重鎖を有する。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号3のアミノ酸配列を含む、軽鎖を有する。いくつかの実施形態において、重鎖は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号2のアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の重鎖可変領域は、(i)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(iii)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、軽鎖可変領域は、(iv)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR1、(v)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号15のアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインを有する。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号19のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを有する。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号19のアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠いている。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、カッパ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、IgG1重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、アフコシル化抗体は、Asn297がフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、in vitro及び/またはin vivoで、増強されたADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)活性を有する。いくつかの実施形態において、アフコシル化抗体は、位置Asn297がフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態において、アフコシル化抗体は、マウス異種移植及び/または同種移植腫瘍モデルにおいて、腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞及びマクロファージのうちの1つ以上の数を対照と比較して(例えば、FGFR2を標的にしない対照抗体と比較して)増加させることが可能である。
【0026】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれも、例示及び説明を与えるものであり、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本明細書で使用されるセクション見出しは、単に構成上のためであり、記載される主題を限定するものと解釈されるものではない。本明細書で引用される全ての参考文献は、特許出願及び特許公報を含め、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】以下の実施例1に記載される臨床試験の用量漸増パートIの投与スケジュールを示す。初回コホートは、用量レベル1であり、追加の登録は、以下の表2に記載される用量制限毒性(DLT)の存在についての解析に従い、図に示されるように、用量レベル1、2、または-1である。
図2】以下の実施例1に記載される臨床試験のパートIのために実施される患者評価を示すフローチャートである。
図3】実施例2に記載される臨床試験の用量漸増(第1相)の投与スケジュールを示す。初回コホートは、コホート1及び2であり、必要に応じて、コホート3が開始され、更に必要に応じて、コホート4(図示せず)も開始する。更なる詳細については、以下の実施例2に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
別途の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学技術用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。更に、文脈により別途の規定がない限り、単数形の用語は複数を包含し、複数形の用語は単数を包含するものとする。
【0029】
組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応、ならびに精製技術に関連して使用される例示的な技術は、当該技術分野において知られている。そのような技術及び手順の多くは、例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))他に記載されている。加えて、化学合成、化学分析、医薬品の調製、製剤化及び送達、ならびに患者の治療についての例示的な技術もまた、当該技術分野において知られている。
【0030】
本願において、「または」の使用は、別段の指示がない限り、「及び/または」を意味する。複数の従属項の文脈において、「または」の使用は、2つ以上の先行する独立項または従属項を択一的に言及するものである。また、「要素」または「成分」などの用語は、特に明記しない限り、1つのユニットを含む要素及び成分、ならびに2つ以上のサブユニットを含む要素及び成分の両方を包含する。
【0031】
本開示に従って使用されるとき、以下の用語は、特に指定のない限り、以下の意味を有するものと理解されるものとする。
【0032】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、区別なく使用され得、ヌクレオチドの高分子化合物を指す。そのようなヌクレオチドの高分子化合物は、天然及び/または非天然ヌクレオチドを含有し得、これらには、限定するものではないが、DNA、RNA及びPNAが含まれる。「核酸配列」は、核酸分子またはポリヌクレオチドを含むヌクレオチドの線状配列を指す。
【0033】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の高分子化合物を指すために本明細書において区別なく使用され、最小の長さに限定されない。そのようなアミノ酸残基の高分子化合物は、天然または非天然アミノ酸残基を含有し得、これらには、限定するものではないが、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体及び多量体が含まれる。完全長タンパク質及びその断片は、いずれも、この定義に包含される。この用語はまた、ポリペプチドの発現後の修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化などを含む。更に、本発明上、「ポリペプチド」は、そのタンパク質が所望の活性を保持する限り、天然配列に対して欠失、付加及び置換(一般に天然では保存的置換)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的変異導入のように意図的なものであってもよいし、タンパク質を産生する宿主による変異またはPCR増幅によるエラーなどの偶発的なものであってもよい。
【0034】
「FGFR2」は、ヒト線維芽細胞増殖因子受容体2を指し、IIIa、IIIb及びIIIcスプライシングフォームなどの、その選択的スプライシングフォームのいずれも含む。FGFR2という用語は、野生型FGFR2及び天然に生じる変異型、例えば、いくつかのがん細胞で認められているFGFR2-S252WなどのFGFR2活性化変異型を包含する。「FGFR2-IIIb」または「FGFR2b」は、ヒト線維芽細胞増殖因子受容体2IIIbスプライシングフォームを指すために、本明細書において区別なく使用される。例示的なヒトFGFR2-IIIb配列は、2013年7月7日付のGenBankアクセッション番号NP_075259.4に示される。非限定的な例示的成熟ヒトFGFR2-IIIbアミノ酸配列は、配列番号1に示される。「FGFR2-IIIc」または「FGFR2c」は、ヒト線維芽細胞増殖因子受容体2IIIcスプライシングフォームを指すために、本明細書において区別なく使用される。例示的なヒトFGFR2-IIIc配列は、2013年7月7日付のGenBankアクセッション番号NP_000132.3に示される。非限定的な例示的成熟FGFR2-IIIcアミノ酸配列は、配列番号12に示される。
【0035】
「FGFR2細胞外ドメイン」または「FGFR2 ECD」は、ヒトFGFR2の細胞外ドメインを指し、その天然バリアント及び遺伝子操作されたバリアントを含む。FGFR2 ECDの一例は、配列番号13に記載される。
【0036】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、少なくとも超可変領域(HVR)の重鎖のH1、H2及びH3ならびに軽鎖のL1、L2及びL3を含む分子であって、抗原に結合することが可能な分子を指す。抗体という用語は、限定するものではないが、抗原に結合することが可能な断片、例えば、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、及び(Fab’)を含む。抗体という用語にはまた、限定するものではないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、及びマウス、ヒト、カニクイザルなどの様々な種の抗体なども含まれる。また、小分子医薬品などの他の分子にコンジュゲートされた抗体、二重特異性抗体及び多重特異性抗体も含まれる。
【0037】
「抗FGFR2」抗体は、FGFR2に特異的に結合する抗体を指す。「抗FGFR2-IIIb」抗体または「抗FGFR2b」抗体は、FGFR2-IIIb(FGFR2bとして知られる)に特異的に結合する抗体を指す。かかる抗体は、FGFR2-IIIcなどのFGFR2の他のアイソフォームに対する親和性よりもFGFR2-IIIbに対して高い親和性を有する。いくつかの実施形態において、この抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能なレベルで結合し得ない。「抗FGFR2抗体」、「抗FGFR2-IIIb抗体」及び「抗FGFR2b抗体」という用語は、かかる抗体のアフコシル化型を特に含む。
【0038】
「重鎖可変領域」という用語は、重鎖HVR1、フレームワーク(FR)2、HVR2、FR3及びHVR3を含む領域を指す。いくつかの実施形態において、重鎖可変領域はまた、FR1の少なくとも一部及び/またはFR4の少なくとも一部を含む。
【0039】
「重鎖定常領域」という用語は、少なくとも3つの重鎖定常ドメイン、C1、C2及びC3を含む領域を指す。非限定的な例示的重鎖定常領域は、γ、δ、及びαを含む。非限定的な例示的重鎖定常領域はまた、ε及びμを含む。各重鎖定常領域は、抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体は、IgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体は、IgD抗体であり、α定常領域を含む抗体は、IgA抗体である。更に、μ定常領域を含む抗体は、IgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体は、IgE抗体である。特定のアイソタイプは、更にサブクラスに分けることができる。例えば、IgG抗体は、限定するものではないが、IgG1(γ定常領域を含む)、IgG2(γ定常領域を含む)、IgG3(γ定常領域を含む)及びIgG4(γ定常領域を含む)抗体を含み、IgA抗体は、限定するものではないが、IgA1(α定常領域を含む)及びIgA2(α定常領域を含む)抗体を含み、IgM抗体は、限定するものではないが、IgM1及びIgM2を含む。
【0040】
「重鎖」という用語は、リーダー配列の有無に関係なく、少なくとも重鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、重鎖は、重鎖定常領域の少なくとも一部を含む。「完全長重鎖」という用語は、リーダー配列の有無に関係なく、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0041】
「軽鎖可変領域」という用語は、軽鎖HVR1、フレームワーク(FR)2、HVR2、FR3及びHVR3を含む領域を指す。いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域はまた、FR1及び/またはFR4を含む。
【0042】
「軽鎖定常領域」という用語は、軽鎖定常ドメインCを含む領域を指す。非限定的な例示的軽鎖定常領域は、λ及びκを含む。
【0043】
「軽鎖」という用語は、リーダー配列の有無に関係なく、少なくとも軽鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、軽鎖は、軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む。「完全長軽鎖」という用語は、リーダー配列の有無に関係なく、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0044】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が超可変性であり、及び/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの領域のそれぞれを指す。一般に、天然4鎖抗体は、Vに3つ(H1、H2、H3)及びVに3つ(L1、L2、L3)の6つのHVRを含む。HVRは、一般に、超可変ループ及び/または「相補性決定領域」(CDR)に由来するアミノ酸残基を含み、後者は、配列可変性が最も大きく、及び/または抗原認識に関与する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)及び96~101(H3)に存在する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35B、H2の50~65、及びH3の95~102に存在する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。超可変領域(HVR)及び相補性決定領域(CDR)という用語は、いずれも、抗原結合領域を形成する可変領域の部分を指す。
【0045】
「親和性」または「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合的相互作用の総和の強さを指す。いくつかの実施形態において、「結合親和性」は、結合ペア(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(K)で表すことができる。
【0046】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」は、特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に分泌型Igが結合し、これにより、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、続いて、細胞毒素により標的細胞を死滅させることを可能にする、細胞傷害の一形態を指す。ADCCを媒介する主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号もしくは同第5,821,337号または米国特許第6,737,056号(Presta)に記載されているものなどのin vitro ADCCアッセイを実施することができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、PBMC及びNK細胞が含まれる。代替的または追加的に、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて、評価されてもよい。Fc領域のアミノ酸配列が改変された更なる抗体、及びADCC活性が増強または減少された更なる抗体は、例えば、米国特許第7,923,538号及び米国特許第7,994,290号に記載されている。
【0047】
「増強されたADCC活性」を有する抗体は、親抗体と比較して、in vitroまたはin vivoで、ADCCの媒介に関してより有効である抗体を指し、ここで、抗体及び親抗体は、少なくとも1つの構造的形態において異なり、アッセイで使用される当該抗体及び親抗体の量は、本質的に同じである。いくつかの実施形態において、抗体及び親抗体は、同じアミノ酸配列を有するが、抗体は、アフコシル化されているのに対し、親抗体は、フコシル化されている。いくつかの実施形態において、ADCC活性は、米国特許出願公開第2015-0050273-A1号に開示されているようなin vitro ADCCアッセイを使用して決定されるが、例えば、動物モデルなどにおける、ADCC活性を決定するための他のアッセイまたは方法も企図される。いくつかの実施形態において、増強されたADCC活性を有する抗体はまた、FcガンマRIIIAに対して、増強された親和性を有する。いくつかの実施形態において、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対して、増強された親和性を有する。いくつかの実施形態において、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対して、増強された親和性を有する。
【0048】
「FcガンマRIIIAに対して増強された親和性」は、FcガンマRIIIA(場合によって、CD16aとも称される)に対して、親抗体よりも大きい親和性を有する抗体を指し、ここで、抗体及び親抗体は、少なくとも1つの構造的形態において異なる。いくつかの実施形態において、抗体及び親抗体は、同じアミノ酸配列を有するが、抗体は、アフコシル化されているのに対し、親抗体は、フコシル化されている。FcガンマRIIIAに対する親和性を決定するための任意の好適な方法が使用され得る。いくつかの実施形態において、FcガンマRIIIAに対する親和性は、米国特許出願公開第2015-0050273-A1号に記載の方法によって決定される。いくつかの実施形態において、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する抗体はまた、増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施形態において、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態において、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対して増強された親和性を有する。
【0049】
本明細書で使用される「キメラ抗体」は、第1の種(例えば、マウス、ラット、カニクイザルなど)に由来する少なくとも1つの可変領域と、第2の種(例えば、ヒト、カニクイザルなど)に由来する少なくとも1つの定常領域とを含む、抗体を指す。いくつかの実施形態において、キメラ抗体は、少なくとも1つのマウス可変領域と、少なくとも1つのヒト定常領域とを含む。いくつかの実施形態において、キメラ抗体は、少なくとも1つのカニクイザル可変領域と、少なくとも1つのヒト定常領域とを含む。いくつかの実施形態において、キメラ抗体は、少なくとも1つのラット可変領域と、少なくとも1つのマウス定常領域とを含む。いくつかの実施形態において、キメラ抗体の可変領域の全てが第1の種に由来し、キメラ抗体の定常領域の全てが第2の種に由来する。
【0050】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」は、非ヒト可変領域のフレームワーク領域内の少なくとも1つのアミノ酸が、ヒト可変領域に由来する該当するアミノ酸で置換されている抗体を指す。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つのヒト定常領域またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、Fab、scFv、(Fab’)などである。
【0051】
本明細書で使用される「ヒト抗体」は、ヒトで産生される抗体、XenoMouse(登録商標)などのヒト免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒト動物で産生される抗体、及びファージディスプレイなどのin vitro法を使用して選択される抗体(抗体レパートリーは、ヒト免疫グロブリン配列に基づく)を指す。
【0052】
「アフコシル化された」抗体または「フコースを欠く」抗体は、その定常領域のグリコシル化においてフコースを欠いている、IgG1またはIgG3アイソタイプ抗体を指す。ヒトIgG1またはIgG3のグリコシル化は、最大2Galの残基を末端に有するコアフコシル化二分岐複合型オリゴ糖グリコシル化のように、Asn297(N297)に生じる。いくつかの実施形態において、アフコシル化抗体は、Asn297のフコースを欠いている。これらの構造は、末端Gal残基の量に応じて、G0、G1(α1,6またはα1,3)またはG2グリカン残基と指定される。例えば、Raju,T.S.,BioProcess Int.1:44-53(2003)を参照されたい。抗体FcのCHO型グリコシル化は、例えば、Routier,F.H.,Glycoconjugate J.14:201-207(1997)に記載されている。抗体の集団のうち、その集団の抗体の5%未満がAsn297にフコースを含むのであれば、その抗体は、アフコシル化されているとみなされる。
【0053】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に帰属する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプによって様々である。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞の活性化が挙げられる。
【0054】
抗FGFR2抗体に関して、リガンドの「結合を遮断する」またはリガンドの「結合を阻害する」という用語は、FGFR2と、ヒト線維芽細胞増殖因子1(FGF1)またはFGF2などのFGFR2リガンドとの間の相互作用を阻害する能力を指す。かかる阻害は、任意の機序を介して起こり得、例えば、これらには、リガンド結合への直接的干渉、例えば、FGFR2上の結合部位の重複によるもの、及び/またはリガンド親和性を変更する抗体によって誘導されるFGFR2の高次構造の変化、または、例えば、FGFR2 ECDもしくはFGFR2 ECD融合分子の場合、FGFR2リガンドへの結合に対する競合によって誘導されるものが含まれる。
【0055】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、典型的に天然に見出される成分の少なくともいくつかから分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、当該ポリペプチドが産生された細胞の成分の少なくともいくつかから分離されている場合、「単離された」という。発現後に細胞によって分泌されるポリペプチドの場合、当該ポリペプチドを産生する細胞から、当該ポリペプチドを含有する上清を物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」こととみなされる。同様に、ポリヌクレオチドは、典型的に自然に見出される、より大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合、ゲノムDNAまたはミトコンドリアDNAなど)の一部でない場合、または、例えば、RNAポリヌクレオチドの場合、当該ポリヌクレオチドが産生された細胞の成分の少なくともいくつかから分離されている場合、「単離された」という。したがって、宿主細胞内のベクターに含有されるDNAポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドが天然でそのベクターに見出されない限り、「単離された」ということもできる。
【0056】
「高いレベル」という用語は、対象の特定の組織におけるタンパク質レベルが、本明細書に記載されるがんまたは他の状態を患っていない個体(複数可)などの対照の同じ組織と比較して、高いことを意味する。高いレベルは、任意の機序の結果、例えば、タンパク質の発現の増加、安定性の増大、分解の減少、分泌の増加、クリアランスの低下などであり得る。
【0057】
タンパク質または細胞型に関する「減少」または「減少する」または「増加」または「増加する」という用語は、腫瘍などの対象の特定の組織における当該タンパク質または細胞型のレベルが少なくとも10%変化することを意味する。いくつかの実施形態において、抗FGFR2抗体などの作用物質は、腫瘍などの対象の特定の組織におけるタンパク質または細胞型のレベルを、当該抗体との接触前のレベルと比較して、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%増加または減少させる。
【0058】
「対象」及び「患者」という用語は、ヒトを指すために、本明細書において区別なく使用される。いくつかの実施形態において、他の哺乳動物、例えば、限定するものではないが、げっ歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、実験用哺乳動物、家畜哺乳動物、競技用哺乳動物、及び愛玩哺乳動物を治療する方法もまた提供される。
【0059】
「試料」という用語は、本明細書で使用されるとき、対象から採取されるか、または対象に由来する組成物であって、例えば、物理学的、生化学的、化学的及び/または生理学的特徴に基づいて、特徴付け、定量及び/または同定される、細胞実体及び/または他の分子実体を含有する組成物を指す。例示的な試料は、組織試料である。
【0060】
「がん」という用語は、制御不能な細胞増殖、抑制不能な細胞成長、及びアポトーシスを介する細胞死の減少に関連する悪性増殖性疾患を指す。「消化管癌」または「GI癌」という用語は、胃癌、大腸癌、または膵臓腺癌などの消化管のがんを指す。いくつかの実施形態において、消化管癌は、「胃癌」または「GC」であり、本明細書で使用されるとき、胃食道癌を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、がんは、FGFR2遺伝子増幅を含むが、いくつかの実施形態では、がんは、FGFR2増幅を含まない。いくつかの実施形態において、増幅が生じる場合、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10(染色体10セントロメア)の比が>3である。いくつかの実施形態において、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10比が≧2である。しかしながら、他の実施形態において、FGFR2レベルは、FGFR2:CEN10比が1~2の間であり、FGFR2の増殖を示さない。いくつかの実施形態において、変異または転座は、FGFR2遺伝子増幅の原因となり得る。
【0062】
FGFR2遺伝子増幅は、例えば、蛍光in situハイブリダイゼーションアッセイ(FISH)を使用して決定され得る。FGFR2遺伝子増幅はまた、血液ベースアッセイまたは「リキッドバイオプシー」によって検出することもできる。血液ベースアッセイのいくつかの実施形態において、FGFR2遺伝子増幅は、循環腫瘍細胞または「CTC」由来のDNAで検出され得る。CTCの検出及び分子特徴付けの方法は、例えば、Alix-Panabieres(2013)Clinical Chemistry 59:1 110-118に記載されている。血液ベースアッセイのいくつかの実施形態において、FGFR2遺伝子増幅は、ctDNAで検出される。「ctDNA」という用語は、「循環腫瘍DNA」を指し、これは、細胞に関連しない、血流中の腫瘍由来の断片化DNAである。ctDNAの検出及び分子特徴付けの方法は、例えば、Han et al.(2017)Genomics,Proteomics&Bioinformatics 15:2 59-72に記載されており、PCRによる方法及び次世代シーケンシング(NGS)を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、がんは、FGFR2-IIIbを過剰発現している。いくつかの実施形態において、がんは、FGFR2-IIIcよりもFGFR2-IIIbを多く過剰発現している。いくつかの実施形態において、がんは、正規化されたFGFR2-IIIc発現レベルよりも2倍、3倍、5倍、または10倍高い正規化レベルでFGFR2-IIIbを発現する。いくつかの実施形態において、がんは、FGFR2-IIIbを過剰発現しているが、FGFR2遺伝子増幅を含まず、他の実施形態において、がんは、FGFR2遺伝子増幅を含み、更に、FGFR2-IIIbを過剰発現している。FGFR2-IIIbの発現は、例えば、正常組織と比較した、患者に由来する腫瘍試料の免疫組織化学染色(IHC)によるタンパク質レベルで決定され得る。「FGFR2-IIIbタンパク質の過剰発現」及び「FGFR2-IIIbの過剰発現」などという用語は、FGFR2-IIIbタンパク質が高いレベルであることを意味し、かかる高いレベルの原因は問わない(すなわち、高いレベルがタンパク質翻訳の増加及び/または分解の減少、他の機序、または機序の組み合わせの結果であるかどうかにかかわらない)。いくつかの実施形態において、FGFR2-IIIbの過剰発現は、例えば、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)解析などの技術を使用して、非がん性組織と比較したmRNAレベルで検出され得る。
【0064】
IHCによるFGFR2またはFGFR2-IIIbの発現レベルは、腫瘍試料に0~3のスケールのIHCスコアを与えることによって決定され得る。本明細書において、反応性が観察されない場合、または腫瘍細胞の10%未満にのみ細胞膜の反応性がある場合、「0」のスコアが与えられる。腫瘍細胞の少なくとも10%に、わずかなもしくはほとんど識別できない細胞膜の反応性がある場合、または細胞がその細胞膜の一部のみで反応性である場合、「1+」のスコアが与えられる。腫瘍細胞の少なくとも10%に、弱~中程度の完全な基底側または側方の細胞膜の反応性がある場合、「2+」のスコアが与えられる。腫瘍細胞の少なくとも10%に、強い完全な基底側または側方の細胞膜の反応性がある場合、「3+」のスコアが与えられる。いくつかの実施形態において、IHCによる腫瘍細胞の1+、2+または3+染色は、FGFR2-IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施形態において、IHCによる腫瘍細胞の2+または3+染色は、FGFR2-IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施形態において、IHCによる腫瘍細胞の3+染色は、FGFR2-IIIbの過剰発現を示す。
【0065】
「修正版FOLFOX6」または「mFOLFOX6」化学療法レジメンは、本明細書に記載される種々の実施形態において提供されるように、オキサリプラチン(例えば、Eloxatin(登録商標))、ロイコボリン(例えば、ロイコボリンカルシウムまたはフォリン酸)及び5-フルオロウラシル(5-FU)の組み合わせがヒト患者にそれぞれIV注入またはIVボーラスにより約2~8時間にわたって投与され、次いで、5-FUの更なる注入がIV注入により約2日間かけて投与される、レジメンを指す。
【0066】
「治療」は、本明細書で使用されるとき、治療的処置を指し、例えば、その目的は、標的とする病的状態または障害の重症度を下げることまたは進行を遅らせることであり、また、例えば、その目的は、状態または障害の再発を抑制することである。ある特定の実施形態において、「治療」という用語は、患者の疾患の治療薬のあらゆる投与または適用を包含し、疾患または疾患の進行を抑制することまたは遅延させること、疾患を、例えば、寛解をもたらすことによって、または失われた、損なわれたもしくは欠陥のある機能を回復もしくは修復することによって、部分的にまたは完全に緩和すること、非効率なプロセスを刺激すること、あるいはプラトーに達した疾患の重症度を下げることを含む。「治療」という用語はまた、任意の表現型特徴の重症度を下げること、及び/または当該特徴の発生、程度もしくは可能性を下げることを含む。治療を必要とする者には、既に障害を持つ者だけでなく、障害の再発リスクがある者または障害の再発を予防もしくは遅延させる必要がある者が含まれる。
【0067】
「有効量」または「治療上有効な量」という用語は、対象の疾患または障害を治療するのに有効な薬物の量を指す。ある特定の実施形態において、有効量は、所望される治療上または予防上の結果を達成するのに必要な投与量及び期間での有効な量を指す。本発明の抗FGFR2抗体及び化学療法レジメンの治療上有効な量は、個体の病状、年齢、性別及び体重、ならびに個体において所望の応答を惹起する抗体(複数可)の能力などの因子に応じて変わり得る。治療上有効な量は、治療上の有益な効果が、抗体(複数可)のあらゆる毒性または有害な影響よりも上回る量を包含する。いくつかの実施形態において、「有効量」という表現は、がんの治療に有効である抗体の量を指す。
【0068】
化学療法レジメンなどの1つ以上の更なる治療薬「との組み合わせ」投与は、任意の順序での、同時(並行)投与及び連続(逐次)投与を含む。
【0069】
「薬学的に許容される担体」は、対象への投与のために、「医薬組成物」を一緒に含む治療薬で使用するために当該技術分野で従来から用いられている、非毒性の固形、半固形もしくは液体の賦形剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤助剤、または担体を指す。薬学的に許容される担体は、採用される投与量及び濃度でレシピエントに対して毒性がなく、製剤の他の成分と適合性があるものである。薬学的に許容される担体は、採用される製剤に適したものである。例えば、治療薬が経口投与される場合、担体は、ゲルカプセル剤であり得る。治療薬が皮下投与される場合、担体は、理想的に、皮膚に対して刺激がなく、注射部位反応を起こさないものである。
【0070】
更なる定義は、以下のセクションにおいて記載され得る。
【0071】
例示的な抗FGFR2抗体
例示的な抗FGFR2抗体には、FGFR2-IIIbに特異的に結合する抗体、すなわち、抗FGFR2-IIIb抗体が含まれる。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合するよりも低い親和性でFGFR2-IIIcに結合する。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能なレベルで結合しない。
【0072】
本明細書の実施形態において使用される例示的な抗FGFR2-IIIb抗体は、2012年1月24日に発行された米国特許第8,101,723B2号に記載のHuGAL-FR21抗体であり、参照により本明細書に明示的に援用される。米国特許第8,101,723B2号の図13及び14は、HuGAL-FR21の可変領域及び完全長成熟抗体鎖のアミノ酸配列を示し、参照により本明細書に援用される。抗体HuGAL-FR21の重鎖可変領域配列は、米国特許第8,101,723B2号の図13において下線が引かれており、参照により本明細書に明示的に援用される。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。本明細書の実施形態において使用され得る更なる抗体には、特定のアフコシル化抗FGFR2-IIIb抗体について記載している米国特許出願公開第2015-0050273-A1号に記載のものが含まれ、参照により本明細書に援用される。
【0073】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR;例えば、CDR)を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0074】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域の少なくとも一部を含む、少なくとも1つの重鎖と、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む、少なくとも1つの軽鎖とを含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、2つの重鎖と、2つの軽鎖とを含み、各重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域の少なくとも一部を含み、各軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0075】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、6つのHVRを含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、上記の6つのHVRを含み、FGFR2-IIIbに結合する。いくつかの実施形態において、抗FGFR-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに結合しない。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0076】
一態様において、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む6つのHVRを含む、抗FGFR2-IIIb抗体と競合する。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0077】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0078】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0079】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(iii)配列番号8から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含む、VHドメインと、(b)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0080】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、当該配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能なレベルで結合することなく、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、配列番号4において、合計で1~10のアミノ酸が置換、挿入及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入または欠失は、HVR以外の領域(すなわち、FR)内にある。任意選択により、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号5のVH配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施形態において、VHは、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、1つ、2つまたは3つのHVRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0081】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号5のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、当該配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに結合することなく、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、配列番号5において、合計で1~10のアミノ酸が置換、挿入及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入または欠失は、HVR以外の領域(すなわち、FR)内にある。任意選択により、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のVL配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施形態において、VLは、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、1つ、2つまたは3つのHVRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列と、配列番号5のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有し、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、当該配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに結合することなく、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、配列番号4において、合計で1~10のアミノ酸が置換、挿入及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、配列番号5において、合計で1~10のアミノ酸が置換、挿入及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入または欠失は、HVR以外の領域(すなわち、FR)内にある。任意選択により、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のVH配列及び配列番号5のVL配列を含み、一方または両方の配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施形態において、VHは、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、1つ、2つまたは3つのHVRを含み、VLは、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、1つ、2つまたは3つのHVRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0083】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体のVHは、上に提供される実施形態のいずれかにおけるものであり、VLは、上に提供される実施形態のいずれかにおけるものである。一実施形態において、抗体は、配列番号4のVH配列及び配列番号5のVL配列をそれぞれ含み、それらの配列の翻訳後修飾を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0084】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖配列を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する重鎖配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、当該配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能なレベルで結合することなく、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、配列番号2において、合計で1~10のアミノ酸が置換、挿入及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入または欠失は、HVR以外の領域(すなわち、FR)内にある。任意選択により、抗FGFR2-IIIb抗体の重鎖は、配列番号2のVH配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施形態において、重鎖は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、1つ、2つまたは3つのHVRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0085】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号3のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する軽鎖配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、当該配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能なレベルで結合することなく、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、配列番号3において、合計で1~10のアミノ酸が置換、挿入及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入または欠失は、HVR以外の領域(すなわち、FR)内にある。任意選択により、抗FGFR2-IIIb抗体の軽鎖は、配列番号3のVL配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施形態において、軽鎖は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、1つ、2つまたは3つのHVRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0086】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖配列を含み、配列番号3のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する重鎖配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、当該配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能なレベルで結合することなく、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する軽鎖配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、当該配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、そのようなFGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能なレベルで結合することなく、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、配列番号2において、合計で1~10のアミノ酸が置換、挿入及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、配列番号3において、合計で1~10のアミノ酸が置換、挿入及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入または欠失は、HVR以外の領域(すなわち、FR)内にある。任意選択により、抗FGFR2-IIIb抗体の重鎖は、配列番号2のVH配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含み、抗FGFR2-IIIb抗体の軽鎖は、配列番号3のVL配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施形態において、重鎖は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、1つ、2つまたは3つのHVRを含み、軽鎖は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、1つ、2つまたは3つのHVRを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0087】
更なる例示的な抗FGFR2抗体は、米国特許第8,101,723B2号に記載のGAL-FR22及びGAL-FR23抗体であり、参照により本明細書に援用される。GAL-FR22の軽鎖及び重鎖可変領域は、例えば、米国特許第8,101,723B2号の配列番号7及び8に提供され、また、KabatのCDRならびに軽鎖及び重鎖可変領域は、当該特許の図16に提供されており、参照により本明細書に援用される。GAL-FR21、GAL-FR22及びGAL-FR23を産生するハイブリドーマは、それぞれ2008年11月6日、11月6日及び8月12日にATCC番号9586、9587及び9408として、American Type Culture Collection(PO Box 1549,Manassas VA,USA,20108)に寄託されている。したがって、いくつかの実施形態において、FGFR2抗体は、これらの3つのハイブリドーマ株のうちの1つから得られる抗体のアミノ酸配列を含む、抗体である。
【0088】
GAL-FR22の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はまた、当該特許の配列番号39及び43に示されており、KabatのCDRは、当該特許の配列番号40~42及び44~46に示されている。したがって、いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体の重鎖可変領域は、(i)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、(ii)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(iii)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、軽鎖可変領域は、(iv)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、(v)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(vi)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2抗体は、重鎖可変ドメインが、配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号39のアミノ酸配列を含む、抗FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態において、抗FGFR2抗体は、軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号43のアミノ酸配列を含む、抗FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号39のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号43のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号43のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0090】
本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、抗FGFR2抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体であり得る。本明細書に記載される組成物または方法のいずれかにおいて、抗FGFR2抗体は、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)2から選択され得る。本明細書に記載される組成物または方法のいずれかにおいて、抗FGFR2抗体は、IgA、IgG及びIgDから選択され得る。本明細書に記載される組成物または方法のいずれかにおいて、抗FGFR2抗体は、IgGであり得る。本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、抗体は、IgG1またはIgG3であり得る。
【0091】
抗体の例示的な特性
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに対する親和性よりも高い親和性でFGFR2-IIIbに結合するか、もしくはFGFR2-IIIcに検出可能なレベルで結合せず、ヒトFGFR2に対するFGF2の結合を阻害し、及び/またはヒトFGFR2に対するFGF7の結合を阻害する。FGFR2への抗体の結合及びFGFR2とFGFとの間の結合の阻害は、例えば、米国特許第8,101,723号に記載のELISAアッセイ、または、例えば、WO2015/-17600の実施例2に記載のチップベースアッセイによって評価することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、ADCC活性を誘導し、いくつかの実施形態において、例えば、WO2015/-17600に記載されるように、増強されたADCC活性を有する。ADCC活性は、例えば、WO2015/-17600の実施例3に記載されるとおりに決定され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、国際出願第PCT/US2016/063332号の実施例1に示されるように、マウスモデルにおいて、ヒト腫瘍の成長を阻害し得る。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、例えば、国際出願第PCT/US2016/063332号の実施例2に記載されるように、マウス腫瘍モデルにおいて、腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞及びマクロファージのうちの1つ以上の数を対照と比較して増加させることが可能である。
【0092】
アフコシル化抗FGFR2抗体
いくつかの実施形態において、抗FGFR2抗体、例えば上記の抗FGFR2-IIIb抗体は、Fc領域に(直接的または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有し(すなわち、アフコシル化抗体)、すなわち、抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、アフコシル化抗体は、Asn297のフコースを欠く、IgG1またはIgG3抗体である。
【0093】
本明細書において、抗体は、複数のそのような抗体が少なくとも95%のアフコシル化抗体を含む場合、アフコシル化されているとみなされる。フコースの量は、Asn297に結合している全ての糖構造の合計(例えば、複合型、混合型及び高マンノース型構造)に対する、Asn297の糖鎖内にあるフコースの平均量を算出することによって決定され得る。抗体中のフコースを検出する非限定的な例示的方法には、MALDI-TOF質量分析法(例えば、WO2008/077546参照)、遊離した蛍光標識オリゴ糖のHPLC測定法(例えば、Schneider et al.,“N-Glycan analysis of monoclonal antibodies and other glycoproteins using UHPLC with fluorescence detection,” Agilent Technologies,Inc.(2012);Lines,J.Pharm.Biomed.Analysis,14:601-608(1996);Takahasi,J.Chrom.,720:217-225(1996)参照)、遊離した蛍光標識オリゴ糖のキャピラリー電気泳動測定法(例えば、Ma et al.,Anal.Chem.,71:5185-5192(1999)参照)及び単糖組成物を測定するためのパルスドアンペロメトリ検出を用いたHPLC(例えば、Hardy,et al.,Analytical Biochem.,170:54-62(1988)参照)が含まれる。
【0094】
Asn297は、Fc領域内の位置297付近(EUナンバリングのFc領域残基)に位置するアスパラギン残基を指すが、所与の抗体配列において、Asn297は、抗体の軽微な配列変化に起因して、位置297から上流または下流の約±3アミノ酸、すなわち、位置294~300の間に位置してもよい。本明細書に記載される抗FGFR2-IIIb抗体において、Asn297は、配列
【化1】
(配列番号2の位置292~296)に認められ、以下の配列表の配列番号2では、太字及び下線付きで示される。
【0095】
フコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「アフコシル化」または「フコース欠損」抗体に関連する公開物の例には、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。アフコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例には、タンパク質のフコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願公開第US2003/0157108A1号(Presta,L);及びWO2004/056312A1(Adams et al.、特に実施例11)及び機能性アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8を欠く細胞株、例えば、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及びWO2003/085107参照)が挙げられる。
【0096】
本明細書の抗FGFR2抗体は、二分されたオリゴ糖を有し得、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐型オリゴ糖は、GlcNAcによって二分されている。そのような抗体は、フコシル化の減少及び/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体の例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号(Umana et al.);及びUS2005/0123546(Umana et al.)に記載されている。いくつかの実施形態において、抗FGFR2抗体は、Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する。そのような抗体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.);WO1998/58964(Raju,S.);及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態において、アフコシル化抗FGFR2抗体は、ヒトエフェクター細胞の存在下で、フコースを含む同じアミノ酸配列を有する抗体よりも効果的にADCCを媒介する。一般に、ADCC活性は、米国特許出願公開第2015-0050273A1号に開示されているin vitro ADCCアッセイを使用して決定され得るが、例えば、動物モデルなどにおける、ADCC活性を決定するための他のアッセイまたは方法も企図される。
【0098】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2抗体は、配列番号2及び3の重鎖及び軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態において、配列番号2及び3の重鎖及び軽鎖配列を含む抗体は、アフコシル化されている。
【0099】
例示的な抗体定常領域
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗FGFR2は、1つ以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態において、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG及びIgDから選択されるアイソタイプものである。いくつかの実施形態において、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものである。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施形態において、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1重鎖定常領域またはヒトIgG3重鎖定常領域を含む抗体が選択される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体は、N297がフコシル化されていないヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0101】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、明記されない限り、または当業者に既知でない限り、免疫グロブリン重鎖の残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)におけるEUインデックスのナンバリングであり、参照により本明細書に明示的に援用される。「KabatにおけるEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0102】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、野生型IgGまたは野生型抗体のFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を有するバリアントFc領域を含む。ある特定の実施形態において、バリアントFc領域は、野生型抗体のFc領域内に2つ以上のアミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態において、バリアントFc領域は、野生型抗体のFc領域内に3つ以上のアミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態において、バリアントFc領域は、本明細書に記載されるFc領域アミノ酸置換を少なくとも1つ、2つまたは3つ以上有する。ある特定の実施形態において、本明細書におけるバリアントFc領域は、天然配列のFc領域及び/または親抗体のFc領域と少なくとも約80%の相同性を有する。ある特定の実施形態において、本明細書におけるバリアントFc領域は、天然配列のFc領域及び/または親抗体のFc領域と少なくとも約90%の相同性を有する。ある特定の実施形態において、本明細書におけるバリアントFc領域は、天然配列のFc領域及び/または親抗体のFc領域と少なくとも約95%の相同性を有する。
【0103】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度が増加または減少するように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または除去は、1つ以上のグリコシル化部位が創出または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって、簡便に達成され得る。
【0104】
抗体がFc領域を含む場合、Fc領域に結合する炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的に、分岐した二分岐型オリゴ糖を含み、これは、一般に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-結合により結合している。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、ならびに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに結合したフコースを含み得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体を作製するために行われ得る。
【0105】
抗体はまた、アミノ酸末端リーダー伸長を有し得る。例えば、アミノ酸末端リーダー配列の1つ以上のアミノ酸残基は、抗体の任意の1つ以上の重鎖または軽鎖のアミノ酸末端に存在する。例示的なアミノ末端リーダー伸長は、3つのアミノ酸残基VHSを含むか、またはこれらからなり、抗体の一方または両方の軽鎖上に存在する。
【0106】
ヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドのin vivoまたは血清半減期は、例えば、バリアントFc領域を含むポリペプチドが投与される、トランスジェニックマウス、ヒトまたは非ヒト霊長類において評価することができる。例えば、Petkova et al.International Immunology 18(12):1759-1769(2006)も参照されたい。
【0107】
例示的なキメラ抗体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗FGFR2抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例として、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)と、ヒト定常領域とを含む。更なる例として、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0108】
非限定的な例示的キメラ抗体には、本明細書に記載される重鎖HVR1、HVR2及びHVR3及び/または軽鎖HVR1、HVR2及びHVR3配列を含む、FGFR2に対するキメラ抗体が含まれる。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるキメラ抗体は、1つ以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態において、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG及びIgDから選択されるアイソタイプものである。いくつかの実施形態において、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるキメラ抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるキメラ抗体は、ヒトIgG4重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるキメラ抗体は、ヒトIgG4定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0110】
上記のように、エフェクター機能が望ましいかどうかは、抗体の目的とする特定の治療方法に依存し得る。したがって、いくつかの実施形態において、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1重鎖定常領域またはヒトIgG3重鎖定常領域を含むキメラ抗体が選択される。いくつかの実施形態において、エフェクター機能が望ましくない場合、ヒトIgG4またはIgG2重鎖定常領域を含むキメラ抗体が選択される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるキメラ抗体は、N297がフコシル化されていないヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるキメラ抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0111】
例示的なヒト化抗体
いくつかの実施形態において、FGFR2に結合するヒト化抗体が使用される。ヒト化抗体は、治療用分子として有用であるが、それは、ヒト化抗体が、抗体治療薬に対する免疫応答をもたらし、治療薬の有効性を低下させ得る、非ヒト抗体に対するヒト免疫応答(ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答など)を低減または排除するからである。
【0112】
ある特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的に、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性が低下するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、HVRまたはCDR(またはその一部)は、非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体はまた、任意選択により、ヒト定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となる抗体)の対応する残基に置換される。
【0113】
ヒト化抗体及びその作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,(2008)Front.Biosci.13:1619-1633に概説されており、更に、例えば、Riechmann et al.,(1988)Nature 332:323-329;Queen et al.,(1989)Proc.Natl Acad.Sci.USA 86:10029-10033;米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,(2005)Methods 36:25-34(SDR(a-CDR)グラフト化について記載);Padlan,(1991)Mol.Immunol.28:489-498(「リサーフェーシング」について記載);Dall'Acqua et al.,(2005)Methods 36:43-60(「FRシャフリング」について記載);ならびにOsbourn et al.,(2005)Methods 36:61-68及びKlimka et al.,(2000)Br.J.Cancer,83:252-260(FRシャフリングに対する「ガイド選択」について記載)に記載されている。
【0114】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.(1993)J.Immunol.151:2296参照);軽鎖可変領域または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;及びPresta et al.(1993)J.Immunol,151:2623参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,(2008)Front.Biosci.13:1619-1633参照);及びFRライブラリのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,(1997)J.Biol.Chem.272:10678-10684及びRosok et al.,(1996)J.Biol.Chem.271:22611-22618参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、1つ以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態において、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG及びIgDから選択されるアイソタイプものである。いくつかの実施形態において、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものである。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヒト化抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施形態において、エフェクター機能が望ましい場合、抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域またはヒトIgG3重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヒト化抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヒト化抗体は、N297がフコシル化されていないヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヒト化抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0117】
ヒト抗体
ヒト抗FGFR2抗体は、任意の好適な方法によって作製することができる。非限定的な例示的方法には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を作製することが含まれる。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551-55(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-8(1993);Lonberg et al.,Nature 368:856-9(1994);ならびに米国特許第5,545,807号、同第6,713,610号、同第6,673,986号、同第6,162,963号、同第5,545,807号、同第6,300,129号、同第6,255,458号、同第5,877,397号、同第5,874,299号及び同第5,545,806号を参照されたい。
【0118】
非限定的な例示的方法にはまた、ファージディスプレイライブラリを使用してヒト抗体を作製することも含まれる。例えば、Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.227:381-8(1992);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-97(1991);及びPCT国際公開第WO99/10494号を参照されたい。
【0119】
いくつかの実施形態において、ヒト抗体は、1つ以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態において、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG及びIgDから選択されるアイソタイプものである。いくつかの実施形態において、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヒト抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヒト抗体は、ヒトIgG4重鎖定常領域を含む。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載されるヒト抗体は、ヒトIgG4定常領域内にS241Pの変異を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヒト抗体は、ヒトIgG4定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1重鎖定常領域またはヒトIgG3重鎖定常領域を含むヒト抗体が選択される。いくつかの実施形態において、エフェクター機能が望ましくない場合、ヒトIgG4またはIgG2重鎖定常領域を含むヒト抗体が選択される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヒト化抗体は、N297がフコシル化されていないヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヒト化抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0121】
例示的な抗体コンジュゲート
いくつかの実施形態において、抗FGFR2抗体は、標識及び/または細胞傷害剤にコンジュゲートされる。本明細書で使用されるとき、標識は、抗体の検出を容易にする部分及び/または抗体が結合する分子の検出を容易にする部分である。非限定的な例示的標識には、放射性同位体、蛍光基、酵素基、化学発光基、ビオチン、エピトープタグ、金属結合タグなどが含まれるが、これらに限定されない。当業者は、目的の用途に応じて好適な標的を選択することができる。
【0122】
本明細書で使用されるとき、細胞傷害剤は、1つ以上の細胞の増殖能力を低下させる部分である。細胞は、例えば、細胞がアポトーシスを生じることまたは別様に死滅すること、細胞が細胞周期の進行を行えないこと及び/または分裂しないこと、細胞が分化することなどの理由から、細胞が増殖できなくなった場合、低下した増殖能力を有する。非限定的な例示的細胞傷害剤には、放射性同位体、毒素及び化学療法剤が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、目的の用途に応じて好適な細胞傷害剤を選択することができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、標識及び/または細胞傷害剤は、化学的方法を使用してin vitroで抗体にコンジュゲートされる。非限定的な例示的化学的コンジュゲート方法は、当該技術分野において知られており、例えば、Thermo Scientific Life Science Research Produces(旧Pierce;Rockford,IL)、Prozyme(Hayward,CA)、SACRI Antibody Services(Calgary,Canada)、AbD Serotec(Raleigh,NC)などから商業的に利用可能なサービス、方法及び/または試薬が含まれる。いくつかの実施形態において、標識及び/または細胞傷害剤がポリペプチドである場合、その標識及び/または細胞傷害剤は、少なくとも1つの抗体鎖を含む同じ発現ベクターから発現させて、抗体鎖に融合された標識及び/または細胞傷害剤を含むポリペプチドを産生することができる。当業者は、目的の用途に応じて、標識及び/または細胞傷害剤を抗体にコンジュゲートするのに好適な方法を選択することができる。
【0124】
抗体をコードする核酸分子
抗体の1つ以上の鎖をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態において、核酸分子は、抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、核酸分子は、抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドと、抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドの両方を含む。いくつかの実施形態において、第1の核酸分子は、重鎖をコードする第1のポリヌクレオチドを含み、第2の核酸分子は、軽鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを含む。
【0125】
いくつかのそのような実施形態において、重鎖及び軽鎖は、1つの核酸分子から、または2つの別個の核酸分子から2つの別個のポリペプチドとして発現される。いくつかの実施形態において、例えば、抗体がscFvである場合、単一のポリヌクレオチドは、互いに連結された重鎖及び軽鎖の両方を含む、単一のポリペプチドをコードする。
【0126】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含み、リーダー配列は、翻訳されたとき、重鎖または軽鎖のN末端に位置する。上述のように、リーダー配列は、天然の重鎖または軽鎖リーダー配列であってもよいし、別の異種リーダー配列であってもよい。
【0127】
核酸分子は、当該技術分野における従来の組み換えDNA技術を使用して構築され得る。いくつかの実施形態において、核酸分子は、選択された宿主細胞における発現に好適な発現ベクターである。
【0128】
抗体の発現及び産生
ベクター
抗体の重鎖及び/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。抗体の重鎖及び/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターもまた提供される。そのようなベクターには、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ベクターは、重鎖をコードする第1のポリヌクレオチド配列及び軽鎖をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖及び軽鎖は、ベクターから2つの別個のポリペプチドとして発現される。いくつかの実施形態において、重鎖及び軽鎖は、例えば、抗体がscFvである場合など、単一のポリペプチドの一部として発現される。
【0129】
いくつかの実施形態において、第1のベクターは、重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、第1のベクター及び第2のベクターは、同様の量(同様のモル量または同様の質量など)で、宿主細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施形態において、5:1~1:5のモル比または質量比の第1のベクターと第2のベクターが宿主細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施形態において、重鎖をコードするベクター及び軽鎖をコードするベクターは、1:1~1:5の質量比で使用される。いくつかの実施形態において、重鎖をコードするベクター及び軽鎖をコードするベクターは、1:2の質量比で使用される。
【0130】
いくつかの実施形態において、ベクターは、CHO細胞もしくはCHO由来細胞、またはNSO細胞におけるポリペプチドの発現に最適化されたベクターが選択される。例示的なそのようなベクターは、例えば、Running Deer et al.,Biotechnol.Prog.20:880-889(2004)に開示されている。
【0131】
いくつかの実施形態において、ベクターは、ヒトを含む動物における抗体重鎖及び/または抗体軽鎖のin vivo発現用のベクターが選択される。いくつかのそのような実施形態において、ポリペプチドの発現は、組織特異的に機能するプロモーターの制御下で行われる。例えば、肝臓特異的プロモーターについては、例えば、PCT国際公開第WO2006/076288号に記載されている。
【0132】
宿主細胞
種々の実施形態において、抗体の重鎖及び/または軽鎖は、細菌細胞などの原核細胞、または真菌細胞(酵母など)、植物細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞などの真核細胞で発現され得る。かかる発現は、例えば、当該技術分野において知られている手順に従って実施され得る。ポリペプチドの発現に使用され得る例示的な真核細胞には、COS7細胞を含むCOS細胞、293-6E細胞を含む293細胞、CHO-S及びDG44細胞を含むCHO細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、ならびにNSO細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗体の重鎖及び/または軽鎖は、酵母において発現され得る。例えば、米国特許出願公開第US2006/0270045A1号を参照されたい。いくつかの実施形態において、特定の真核生物宿主細胞は、抗体の重鎖及び/または軽鎖に所望の翻訳後修飾を行う能力に基づいて選択される。例えば、いくつかの実施形態において、CHO細胞は、293細胞で産生される同ポリペプチドよりもシアリル化の程度がより高いポリペプチドを産生する。
【0133】
1つ以上の核酸の所望の宿主細胞への導入は、限定するものではないが、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、カチオン性脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染などを含む任意の方法によって実施され得る。非限定的な例示的方法は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に記載されている。核酸は、任意の好適な方法に従って、所望の宿主細胞に一過性または安定的にトランスフェクトされ得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、1つ以上のポリペプチドは、任意の好適な方法に従って、ポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子を用いて操作またはトランスフェクトされた動物においてin vivoで産生され得る。
【0135】
抗体の精製
抗体は、任意の好適な方法によって精製され得る。そのような方法には、アフィニティーマトリックスまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用が含まれるが、これらに限定されない。好適な親和性リガンドには、抗体定常領域に結合する抗原及びリガンドが含まれる。例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、または抗体アフィニティーカラムが、定常領域への結合及び抗体の精製に使用され得る。疎水性相互作用クロマトグラフィー、例えば、ブチルカラムまたはフェニルカラムもまた、一部のポリペプチドの精製に好適である。ポリペプチドを精製する多数の方法が当該技術分野において知られている。
【0136】
抗体の無細胞産生
いくつかの実施形態において、抗体は、無細胞系で産生される。非限定的な例示的無細胞系は、例えば、Sitaraman et al.,Methods Mol.Biol.498:229-44(2009);Spirin,Trends Biotechnol.22:538-45(2004);Endo et al.,Biotechnol.Adv.21:695-713(2003)に記載されている。
【0137】
修正版FOLFOX6
修正版FOLFOX6(mFOLFOX6)化学療法レジメンは、オキサリプラチン(例えば、Eloxatin(登録商標))、ロイコボリン(例えば、ロイコボリンカルシウムまたはフォリン酸)及び5-フルオロウラシル(5-FU)の組み合わせがそれぞれ連続して合計約2日間かけて静脈内投与されるレジメンを含む。修正版FOLFOX6は、進行性胃癌に対する第一選択治療として使用されている。胃癌患者220名の治療においてmFOLFOX6と5-FU/LV/シスプラチン(FLP)を比較した無作為化第3相試験は、統計的に有意ではない無増悪期間の改善を報告したが、mFOLFOX6は、好中球減少症、貧血及び末梢神経障害を含む、グレード3/4の有害事象の意味のある減少と関係した(Al-Batran et al.,J.Clin.Oncol.26:1435-42(2008))。その後の研究では、進行性胃癌におけるmFOLFOX6の安全性及び有効性が確認された(B.Keam,BMC Cancer,8:148(2008))。
【0138】
いくつかの実施形態において、オキサリプラチン(例えば、Eloxatin(登録商標))、ロイコボリン(例えば、ロイコボリンカルシウムまたはフォリン酸)及び5-フルオロウラシル(5-FU)の組み合わせは、それぞれIV注入またはIVボーラスにより約2~8時間にわたって投与され、次いで、5-FUの更なる注入がIV注入により約44~48時間かけて投与される。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6レジメンは、1日目に50~100mg/mで、例えば2時間かけて、IVにより投与されるオキサリプラチン、次いで、1日目に100~400mg/mで、例えば2時間かけて、IVにより投与されるロイコボリン、次いで、全て1日目に100~400mg/mで、IVボーラスまたはIV注入により投与される5-FU、続いて、2000~2500mg/mでの、44~48時間、例えば46時間にわたる、5-FUの更なるIV注入を含む。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6レジメンは、1日目に75~100mg/mで、例えば2時間かけて、IVにより投与されるオキサリプラチン、次いで、1日目に200~400mg/mで、例えば2時間かけて、IVにより投与されるロイコボリン、次いで、全て1日目に200~400mg/mで、IVボーラスまたはIV注入により投与される5-FU、続いて、2200~2400mg/mでの、44~48時間、例えば46時間にわたる、5-FUの更なるIV注入を含む。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6レジメンは、1日目に75~90mg/mで、例えば2時間かけて、IVにより投与されるオキサリプラチン、次いで、1日目に300~400mg/mで、例えば2時間かけて、IVにより投与されるロイコボリン、次いで、全て1日目に300~400mg/mで、IVボーラスまたはIV注入により投与される5-FU、続いて、2200~2400mg/mでの、44~48時間、例えば46時間にわたる、5-FUの更なるIV注入を含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、mFOLFOX6レジメンは、1日目に85mg/mで、例えば2時間かけて、IVにより投与されるオキサリプラチン、次いで、1日目に400mg/mで、例えば2時間かけて、IVにより投与されるロイコボリン、次いで、全て1日目に400mg/mで、IVボーラスまたはIV注入により投与される5-FU、続いて、2400mg/mでの、44~48時間、例えば46時間にわたる、5-FUの更なるIV注入を含む。例えば、胃癌の第一選択治療としてのmFOLFOX6の開始用量には、85mg/mのオキサリプラチン、350mgのフォリン酸カルシウム(フォリン酸)、400mg/m用量のフルオロウラシル、続いて46時間かけて注入される2400mg/m用量のフルオロウラシルが含まれ得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、mFOLFOX6レジメンは、10~21日ごとに1回、例えば、10~15日ごとに1回、10日ごとに1回、11日ごとに1回、12日ごとに1回、13日ごとに1回、14日ごとに1回、15日ごとに1回、16日ごとに1回、17日ごとに1回、18日ごとに1回、19日ごとに1回、20日ごとに1回、または21日ごとに1回に投与され得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、mFOLFOX6は、「2週間」ごとに1回投与され得、これは、本明細書における一般的投与レジメンの文脈で使用されるとき、14日±3日ごとに1回、または11~17日ごとに1回を意味する。
【0142】
治療用組成物及び治療方法
がんを治療する方法
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗FGFR2-IIIb抗体などの抗FGFR2抗体の有効量を、修正版FOLFOX6化学療法レジメン(mFOLFOX6)と組み合わせて投与することを含む、がんを治療するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、がんは、胃癌、大腸癌及び膵臓腺癌などの消化管(GI)癌である。いくつかの実施形態において、がんは、切除不能、局所進行性または転移性の胃癌である。
【0143】
方法のいくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、6~15mg/kg、10~15mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、または15mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、7~21日ごとに1回、7~15日ごとに1回、7~10日ごとに1回、10~14日ごとに1回、11~17日ごとに1回、12~16日ごとに1回、13~15日ごとに1回、7日ごとに1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、10日ごとに1回、11日ごとに1回、12日ごとに1回、13日ごとに1回、14日ごとに1回、15日ごとに1回、16日ごとに1回、17日ごとに1回、18日ごとに1回、19日ごとに1回、20日ごとに1回、または21日ごとに1回投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、2週間ごとに1回投与され得、これは、14日±3日ごとに1回、または11~17日ごとに1回を意味する。
【0144】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、2週間ごとに6~15mg/kgの投与レジメンで投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、13~15日ごとに6~15mg/kgの投与レジメンで投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、14日ごとに6~15mg/kgの投与レジメンで投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、2週間ごとに6、10または15mg/kgの投与レジメンで投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、13~15日ごとに6、10または15mg/kgの投与レジメンで投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、14日ごとに6、10または15mg/kgの投与レジメンで投与される。
【0145】
いくつかの実施形態において、2回の投与が2週間の間隔をおいて行われ、その2回の投与の間に中間追加量が一度に投与され、中間追加量は、2回の投与よりも少ない、投与レジメンが使用される。かかるレジメンにおける投与は、循環抗体を適切な濃度または比較的安定した濃度に経時的に維持するのに役立ち得る。例えば、投与後の循環抗体の濃度が投与後約1週間でトラフに低下する場合、トラフ時またはトラフ時付近で低量の追加量を投与し、続けて、追加量から約1週間後に通常量をもう1度投与することは、循環抗体の濃度全体を経時的に安定させ、投与と投与の間で濃度が低くなりすぎるのを防ぐのに役立ち得る。
【0146】
したがって、いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、2週間ごとに6~15mg/kgの投与レジメンで投与され、6~15mg/kg用量よりも低い用量である中間追加量が、2回の6~15mg/kgの投与の1回目から1週間後(7±2日または5~9日後を意味する)及び2回の6~15mg/kgの投与の2回目から1週間前(すなわち、5~9日前)に投与される。いくつかのそのような実施形態において、追加量は、3~8mg/kgである。いくつかの実施形態において、追加量は、直前の用量または直後の用量の半分の用量である。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、2週間ごとに6~15mg/kgの投与レジメンで投与され、3~8mg/kgの中間追加量が、2回の6~15mg/kgの投与の1回目から6~8日後及び2回の6~15mg/kgの投与の2回目から6~8日前に投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、2週間ごとに10~15mg/kgの投与レジメンで投与され、5~8mg/kgの中間追加量が、2回の10~15mg/kgの投与の1回目から6~8日後及び2回の10~15mg/kgの投与の2回目から6~8日前に投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、2週間ごとに15mg/kgの投与レジメンで投与され、7~8mg/kgの中間追加量が、2回の15mg/kgの投与の1回目から6~8日後及び2回の15mg/kgの投与の2回目から6~8日前に投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、13~15日ごとに15mg/kgの投与レジメンで投与され、7~8mg/kgの中間追加量が、2回の15mg/kgの投与の1回目から6~8日後及び2回の15mg/kgの投与の2回目から6~8日前に投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、14日ごとに15mg/kgの投与レジメンで投与され、7~8mg/kgの中間追加量が、2回の15mg/kgの投与の1回目から6~8日後及び2回の15mg/kgの投与の2回目から6~8日前に投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、14日ごとに15mg/kgの投与レジメンで投与され、7~8mg/kgの中間追加量が、2回の15mg/kgの投与の1回目から7日後及び2回の15mg/kgの投与の2回目から7日前に投与される。上記実施形態のいくつかにおいて、追加量は、1回のみ、例えば、1回目の抗体投与と2回目の抗体投与との間の1回のみ患者に投与される。他の実施形態において、追加量は、2回のみ、例えば、1回目の抗体投与と2回目の抗体投与との間、及び2回目の抗体投与と3回目の抗体投与との間の2回のみ投与される。
【0147】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、14日ごとに15mg/kgの投与レジメンで投与され、7.5mg/kgの中間追加量が、2回の15mg/kgの投与の1回目から7日後及び2回の15mg/kgの投与の2回目から7日前に投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、14日ごとに1回、15mg/kgの用量で投与され、1日目に開始した後、抗FGFR2-IIIb抗体は、抗FGFR2-IIIb抗体の1回目の投与から7日後(すなわち、8日目)に、7.5mg/kgの追加量で投与される。いくつかのそのような実施形態において、7.5mg/kgの追加量は、1回のみ、例えば、15mg/kgの1回目の抗体投与と2回目の抗体投与の間にのみ投与される。
【0148】
抗FGFR2-IIIb抗体及びmFOLFOX6は、同時に、例えば同日に、投与されてもよいし(例えば、抗体は、mFOLFOX6レジメンの開始前にIVにより注入される)、逐次的に、例えば異なる日に、投与されてもよい。いくつかの実施形態において、mFOLFOX6は、抗FGFR2-IIIb抗体による治療の開始前に、少なくとも1回または少なくとも2回投与される。いくつかの実施形態において、抗体及びmFOLFOX6は、いずれも、7~21日ごとに1回、7~15日ごとに1回、7~10日ごとに1回、10~14日ごとに1回、11~17日ごとに1回、12~16日ごとに1回、13~15日ごとに1回、7日ごとに1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、10日ごとに1回、11日ごとに1回、12日ごとに1回、13日ごとに1回、14日ごとに1回、15日ごとに1回、16日ごとに1回、17日ごとに1回、18日ごとに1回、19日ごとに1回、20日ごとに1回、または21日ごとに1回投与される。いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6は、2週間ごとに1回投与され得、これは、14日±3日ごとに1回、または11~17日ごとに1回を意味する。
【0149】
いくつかの実施形態において、抗FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、
軽鎖可変領域は、
(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、
抗FGFR2-IIIb抗体は、10~15mg/kgの用量で静脈内投与され、続いて、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mのロイコボリン、及び400mg/mの5-フルオロウラシル(5-FU)のIV注入またはIVボーラスによる投与に続いて、44~48時間にわたる2400mg/mの5-FUのIV注入による投与を含むmFOLFOX6が投与され、抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6は、2週間ごとに投与される。
【0150】
いくつかの実施形態において、対象は、FGFR2遺伝子増幅を含む胃癌を有するが、いくつかの実施形態では、がんは、FGFR2増幅を含まない。いくつかの実施形態において、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用して、例えば、遺伝子座及び染色体10セントロメアに対するプローブにより、遺伝子増幅を評価する。いくつかの実施形態において、増幅が生じる場合、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10(染色体10セントロメア)の比が>3である。いくつかの実施形態において、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10比が≧2である。しかしながら、他の実施形態において、FGFR2レベルは、FGFR2:CEN10比が1~2の間であり、FGFR2の増幅を示さない。
【0151】
いくつかの実施形態において、対象は、FGFR2を過剰発現している胃癌、またはFGFR2-IIIbを過剰発現している胃癌を有する。いくつかの実施形態において、がんは、FGFR2-IIIcよりもFGFR2-IIIbを多く過剰発現している。いくつかの実施形態において、がんは、遺伝子増幅を含まないが、FGFR2-IIIbを過剰発現しており、他の実施形態では、がんは、FGFR2遺伝子増幅とFGFR2-IIIbの過剰発現の両方を含む。いくつかの実施形態において、FGFR2増幅を含むがんは、正規化されたFGFR2-IIIc発現レベルよりも2倍、3倍、5倍、または10倍高い正規化レベルでFGFR2-IIIbを発現する。いくつかの実施形態において、発現レベルは、GUSBに対して正規化される。いくつかの実施形態において、過剰発現は、mRNAの過剰発現である。いくつかの実施形態において、過剰発現は、タンパク質の過剰発現である。いくつかの実施形態において、点変異または転座は、FGFR2の過剰発現の原因となり得る。
【0152】
いくつかの実施形態において、FGFR2またはFGFR2-IIIbの過剰発現は、免疫組織化学染色(IHC)によって決定される。例えば、過剰発現は、腫瘍細胞の少なくとも10%、例えば、腫瘍細胞の少なくとも20%、30%、40%、または50%における1+、2+、または3+のIHCシグナルによって決定され得る。例えば、いくつかのそのような実施形態において、治療される患者は、例えば、腫瘍細胞の少なくとも10%(例えば、細胞膜)で、FGFR2-IIIbについて、2+または3+のIHCシグナルを有し得る。いくつかの実施形態において、患者は、腫瘍細胞の少なくとも10%で、3+のシグナルを有し得る。いくつかの実施形態において、患者は、腫瘍細胞の少なくとも10%で、少なくとも1+のシグナルを有し得る。
【0153】
いくつかの実施形態において、FGFR2またはFGFR2-IIIbの過剰発現は、「Hスコア」で報告され得る。Hスコアを決定するには、まず、例えばIHCにより、固定視野で細胞膜の染色強度を決定し、0、1+、2+、または3+のスコアを得ることができ、次の式を用いてHスコアを算出することができる:1×(IHC強度が1+である視覚化された細胞の%)+2×(IHC強度が2+である視覚化された細胞の%)+3×(IHC強度が3+である視覚化された細胞の%)。理論上、Hスコアは、0~300の範囲であり得、視野中の全細胞が3+のIHC染色である場合、300に等しい。いくつかの実施形態において、治療される患者は、FGFR2、例えばFGFR2-IIIbについて、>20、例えば、>30、>40、>50、もしくは>100、または20~300、20~100、20~50、20~40、もしくは20~30の範囲の初期Hスコアを有する。いくつかの実施形態において、患者は、>10のHスコアを有し、または10~20もしくは15~20の範囲内である。他の実施形態において、患者は、0~10のHスコアを有し、これは、過剰発現がないことを示し得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、がん、例えば、胃癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現していること及び/またはFGFR2遺伝子増幅を有することが既に決定されている。他の実施形態において、本明細書の方法は、例えば、抗FGFR2-IIIb抗体による治療を行うに値するかどうかを決定するために、治療の実施前に、FGFR2IIIb発現及びFGFR2遺伝子増幅状態の一方または両方を評価する。いくつかの実施形態において、本明細書の方法は、(a)腫瘍細胞の少なくとも10%における2+もしくは3+のIHCシグナルによって示されるように、FGFR2-IIIbを過剰発現していること及び/または(b)ctDNAにおけるFGFR2遺伝子増幅を有することが決定されている胃癌を治療するために使用される。いくつかの実施形態において、本明細書の方法は、(a)腫瘍細胞の少なくとも10%における3+のIHCシグナルによって示されるように、FGFR2-IIIbを過剰発現していること及び/または(b)ctDNAにおけるFGFR2遺伝子増幅を有することが決定されている胃癌を治療するために使用される。
【0155】
投与経路、担体及び追加の医薬組成物
種々の実施形態において、抗体は、限定するものではないが、経口、動脈内、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、心臓内、脳室内、気管内、口腔内、直腸、腹腔内、皮内、局所、経皮、及び髄腔内、または移植もしくは吸入を含む、様々な経路によって、in vivo投与され得る。対象の抗体は、固体、半固体、液体または気体の形態の調製物に製剤化され得、これらには、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、浣腸剤、注射剤、吸入剤及びエアゾール剤が含まれる。抗体をコードする核酸分子は、文献に記載されているように、金微粒子上にコーティングされ、微粒子銃装置または「遺伝子銃」によって、皮内送達されてもよい(例えば、Tang et al.,Nature356:152-154(1992)参照)。適切な製剤及び投与経路は、目的の用途に応じて選択され得る。
【0156】
種々の実施形態において、抗体を含む組成物は、薬学的に許容される多種多様な担体を含む製剤として提供される(例えば、Gennaro,Remington:The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons:Drugfacts Plus,20th ed.(2003);Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th ed.,Lippencott Williams and Wilkins(2004);Kibbe et al.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd ed.,Pharmaceutical Press(2000)参照)。ビヒクル、アジュバント及び希釈剤を含む、薬学的に許容される様々な担体が利用可能である。更に、薬学的に許容される種々の補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤、安定剤、湿潤剤なども利用可能である。非限定的な例示的担体には、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0157】
本明細書に記載される抗FGFR2抗体と、本明細書に記載されるオキサリプラチン、ロイコボリン及び5-FUのmFOLFOX6化学療法剤のうちの1つ以上とを含む組成物もまた、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、FGFR2阻害剤及び化学療法剤は、一緒に混ざることがないように、例えば、別個の容器内にそれぞれ含まれるか、または単一容器の別個の区画内にそれぞれ含まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、がん治療における使用のための説明書などの使用説明書を含む。
【実施例
【0158】
以下で論じる実施例は、純粋に本発明の例示を目的にし、決して本発明を限定するとみなされるものではない。実施例は、以下の実験が実施された実験の全てであることまたは唯一の実験であることを示すものではない。
【0159】
実施例1:これまでに未治療の進行性胃癌または胃食道癌を有する患者における、修正版FOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb抗体の、第1相の用量設定安全性導入段階に続く、第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験
プロトコルの概要
以下のプロトコルを最大250の異なる試験施設で世界的に行う。試験は、パート1:第1相の用量設定安全性導入段階及びパート2:第3相試験の2つのパートで行う。
【0160】
パート1の主要目的は、(a)進行性消化管(GI)腫瘍の患者に固定用量の持続静注5-フルオロウラシル、ロイコボリン及びオキサリプラチン(mFOLFOX6)と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの推奨用量(RD)を決定すること、ならびに(b)GI腫瘍の患者にmFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの漸増用量の安全性プロファイルを評価することである。パート1の副次的目的は、(a)GI腫瘍の患者にmFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbへの長期曝露の安全性及び忍容性を評価すること、(b)GI腫瘍の患者にmFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの薬物動態(PK)プロファイルを特徴付けること、ならびに(c)抗FGFR2-IIIbの免疫原性を特徴付けることである。パート1はまた、GI腫瘍患者の血液及び毛嚢試料中の探索的バイオマーカーの評価により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの薬力学(PD)プロファイルを特徴付ける。
【0161】
パートIの主要エンドポイントは、試験責任医師によって抗FGFR2-IIIbに関係すると評価されたグレード2以上の有害事象(AE)の発生及び用量制限毒性(DLT)と定義された臨床検査異常である。パート1の副次的エンドポイントは、(a)AEの発生、臨床検査異常、角膜及び網膜所見、ならびに心電図(ECG)異常、(b)血清中濃度-時間プロファイルから得られる抗FGFR2-IIIbのPKパラメーター、例えば、血清中濃度-時間曲線下面積(AUC)、最高血清中濃度(Cmax)、トラフ血清中濃度(Ctrough)、クリアランス(CL)、消失半減期(t1/2)、分布容積及び蓄積率(適切かつ該当する場合)、ならびに(c)免疫原性試験によって決定される、抗FGFR2-IIIbに対する免疫応答である。このパートはまた、血液及び毛嚢試料中のバイオマーカーを探索してもよい。
【0162】
パート2では、主要目的は、FGFR2bで選択された胃癌または胃食道癌(以後、胃癌またはGCと称される)を有する患者の無増悪生存期間(PFS)の解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利益を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価することである。副次的目的は、(a)FGFR2bで選択されたGCを有する患者の全生存期間(OS)の解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利益を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること、(b)mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの安全性及び忍容性を、FGFR2bで選択されたGCを有する患者のプラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること、(c)FGFR2bで選択されたGCを有する患者で、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbのPKプロファイルを特徴付けること、(d)抗FGFR2-IIIbの免疫原性を特徴付けること、ならびに(e)治療前及び治療中の腫瘍生検での免疫細胞浸潤及び他の探索的バイオマーカーの分析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbのPDプロファイルを、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して特徴付けることである。試験はまた、(a)盲検下独立審査委員会(BIRC)の増悪評価に基づいたPFSの解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利益を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること、(b)FGFR2bで選択されたGCを有する患者の客観的奏効率(ORR)の解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利益を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること、(c)BIRCの増悪評価に基づいたORRの解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利点を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること、(d)FGFR2bで選択されたGCを有する患者の1年のOSの解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利点を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること、(e)FGFR2bで選択されたGCを有する患者の奏功持続期間(DOR)の解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利点を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること、(f)FGFR2状態(腫瘍組織及び/または血液ベース生検[ctDNA]アッセイ)と臨床アウトカムとの関連性を探索すること、(g)腫瘍組織のFGFR2状態と血液ベース生検(ctDNA)アッセイを使用したFGFR2増幅との一致を探索すること、(h)FGFR2bで選択されたGCを有する患者の血液試料中の探索的バイオマーカーの評価により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbのPDプロファイルを、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して特徴付けること、ならびに(i)抗FGFR2-IIIbをmFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、FGFR2bで選択されたGCを有する患者の患者報告アウトカム(PRO)及び生活の質(QOL)アウトカムを、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価することを行ってもよい。
【0163】
パート2のエンドポイントには、無作為化から、試験責任医師の評価に基づいて放射線学的に増悪とされた日(RECIST v.1.1に準ずる)またはあらゆる原因による死亡日のいずれか早いほうまでの期間として定義される主要エンドポイントPFS、及び様々な副次的エンドポイントが含まれる。副次的エンドポイントには、(a)無作為化日からあらゆる原因による死亡までの期間として定義されるOS、(b)RECISTv1.1に準じた、試験責任医師による腫瘍病変評価に基づく客観的な腫瘍縮小効果、(c)AEの発生、臨床検査異常、角膜及び網膜所見、ならびにECG異常、(d)血清中濃度-時間プロファイルから得られる、mFOLFOX6と組み合わせて投与された場合のRDでの抗FGFR2-IIIbのPKパラメーター、例えば、AUC、Cmax、Ctrough、CL、t1/2、分布容積、及び蓄積率(適切かつ該当する場合)、(e)免疫原性試験によって決定される免疫応答、ならびに(f)治療前及び治療中の腫瘍生検試料での免疫細胞浸潤レベル及び他の探索的バイオマーカーが含まれる。試験はまた、(a)少なくとも1回の抗FGFR2-IIIb投与を受け、1年後生存している患者の割合として定義される、1年のOS、(b)RECIST v1.1に準じて試験責任医師によって決定される奏功を有する患者に限定され、かつ、RECISTv1.1に準じて試験責任医師によって決定される最初の奏功から増悪または死亡のいずれか早いほうまでの期間として定義される、DOR、(c)腫瘍組織及び/または血液ベース生検(ctDNA)アッセイで特定されたFGFR2状態とRECIST v1.1に準じた客観的な腫瘍縮小効果との相関関係、(d)腫瘍組織で特定されたFGFR2状態と血液ベース生検(ctDNA)アッセイにおけるFGFR2増幅との間の相関関係、(e)探索的血液ベースバイオマーカー、ならびに(f)EQ-5D-5L及びEORTC QLQ-C30で測定したときのQoLのベースラインからの変化を評価してもよい。
【0164】
試験デザインは、以下のとおりである。試験は、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの安全性、忍容性、PK、PD及び有効性を評価するための2パート多施設試験である。試験は、FGFR2b+胃癌患者における、オープンラベルパート1用量漸増、及び無作為化二重盲検プラセボ対照パート2試験を含む。パート1は、適格性のある進行性GI腫瘍患者における、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbの最低2つの計画用量コホートで構成され、mFOLFOX6と組み合わせて投与される抗FGFR2-IIIbのRDを決定する。パート2は、2つの拡大群(1:1の無作為化)で構成され、FGFR2bで選択された進行性GC患者(FGFR2b発現のプロスペクティブ免疫組織化学染色(IHC)分析及び/またはFGFR2増幅を示す血液ベースアッセイによって決定)における、mFOLFOX6と組み合わせたRDでの抗FGFR2-IIIbの安全性及び有効性を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価することを目的にする。患者は、試験のパート1またはパート2のいずれかに登録され、両方には登録されない。最長14日(2週間)の初期スクリーニング期間後、患者を14日サイクルで2週間ごとにmFOLFOX6(抗FGFR2-IIIbありまたはなし)により治療する。患者は、パート1への登録前にmFOLFOX6化学療法を開始しているか、または受けたことがあってよいが、適格性には、患者が少なくとも追加で2回のmFOLFOX6化学療法サイクルを受ける候補であることが求められる(パート1で患者が受け得るFOLFOXサイクル数に上限はなく、投与を受けない場合もある)。パート1に登録した各患者は、安全性評価及び用量制限毒性の発生について、28日間(DLT期間)観察する。DLT期間の完了時に、患者は、試験責任医師の判断で、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb投与を継続することができる。追加治療は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、14日サイクルで2週間ごとに投与することができる。抗FGFR2-IIIbの投与回数に上限はない。DLT期間以降のmFOLFOX6レジメンの継続投与は、地域の標準治療に従う。パート2では、腫瘍がIHC(2+または3+のスコア)または血液によりFGFR2b陽性であり、進行期胃癌に標準的な第一選択療法であるmFOLFOX6化学療法を2サイクル完了しており、かつインフォームドコンセントに署名している患者を1:1に無作為化して、14日サイクルで2週間ごとに、パート1で得られたデータの評価後に選択されたRDで、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbまたはプラシーボ及びmFOLFOX6により治療を行う。登録患者は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、14日サイクルで2週間ごとに治療を継続することができる。治療決定は全て、現地の評価を使用して、試験責任医師が行う。増悪または同意の撤回以外の理由による試験治療の中止後は、患者が追加の抗がん療法を開始するまで、腫瘍評価を継続する。加えて、パート1及びパート2の両患者は、EOT来院後約3ヶ月±28日ごとに、最後の患者が試験に登録されてから最大24ヶ月後まで、または死亡、追跡不能、同意の撤回もしくは試験依頼者による試験中止(いずれか先に生じたもの)まで、施設来院または電話により、生存に関する長期追跡調査を受ける。
【0165】
パート1は、mFOLFOX6と組み合わせて投与される抗FGFR2-IIIbのオープンラベル用量漸増試験である。パート1に適格である患者は、切除不能、局所進行性または転移性疾患を有する未選択GI癌(FGFR2bを過剰発現する腫瘍ありまたはなし)を有し、抗FGFR2-IIIbとmFOLFOX6化学療法の両方の投与候補である。FGFR2状態は、IHC及び血液ベース生検(ctDNA)アッセイによってレトロスペクティブに決定する。パート1に登録した患者は、以下のように、14日サイクルで2週間ごとに、固定用量のバックボーン化学療法レジメンのmFOLFOX6と組み合わせた、漸増用量の抗FGFR2-IIIbにより治療を行う。
【0166】
抗FGFR2-IIIb投与:抗FGFR2-IIIb IVは、2週間ごとに、mFOLFOX6化学療法の投与前に、各サイクルの1日目に投与する。抗FGFR2-IIIbは、インラインフィルタ付きの末梢静脈または中心静脈カテーテルを介した約30分のIV注入として投与する。
【0167】
バックボーン化学療法レジメン:mFOLFOX6化学療法の投与は、各治療サイクルの1日目に、抗FGFR2-IIIbの投与後(30分の休息後)に開始する。mFOLFOX6レジメンは、次のように、2週間ごとに投与する:オキサリプラチン85mg/mの120分にわたるIV注入、ロイコボリン400mg/mの120分にわたるIV注入、続けて、フルオロウラシル(5FU)400mg/mのIVボーラス、続けて、46時間にわたる持続IV注入としての5-FU 2400mg/m。オキサリプラチンの投与は、事前補液を必要としない。セロトニン拮抗薬(デキサメタゾンありまたはなし)などの制吐薬の前投薬は、臨床的に適応とされる場合、試験責任医師の判断で現地の標準治療に準じて使用されてもよい。用量レベル(パート1) パート1では、標準的な3+3用量漸増デザインで、抗FGFR2-IIIbの2つの用量コホートが予定され、各コホートに最低3人の患者を登録する。予定される用量レベルは、用量レベル1:10mg/kgの抗FGFR2-IIIb、用量レベル2:15mg/kgの抗FGFR2-IIIb、用量レベル-1:6mg/kgの抗FGFR2-IIIb(用量レベル1からの減量が必要な場合のみ)である。
【0168】
全ての用量漸増の決定は、DLT、全体的な安全性、及び忍容性の評価に基づくものであり、各コホートに最後に登録された患者が28日間のDLT期間を完了した後(2治療サイクルの完了後)に行われる。用量漸増の決定は、試験依頼者及び試験責任医師から構成されるコホート審査委員会(CRC)による合意を得る。安全性及びPKパラメーターの検討により、最適な標的曝露を達成するために、代替用量レベルによるコホートの追加の決定が通知される場合もある。用量レベル-1は、用量レベル1で2以上のDLTが観察された場合にのみ登録する。DLTを以下に定義する。
【0169】
用量漸増の決定は、以下のアルゴリズムに基づく:コホート中3名の患者のいずれにもDLTがない場合、次のコホートを開始することができる;コホート中1/3の患者がDLTを示す場合、同じコホートに更に3人の患者を登録する;コホート中の2/3または3/3患者がDLTを示す場合、登録を中止し、また、先のコホートに3人しかいなかった場合には、下のコホート(すなわち、より低い用量レベル)に更に3人の患者を入れる;コホート中1/6の患者がDLTを示す場合、次のコホートを開始することができる;2/6以上がDLTを示す場合、登録を中止し、また、低い用量レベルで、そのコホートに3人の患者しか登録されていなかった場合には、更に3人の患者を入れる。
【0170】
パート2に関する抗FGFR2-IIIbのRDは、全体的な安全性、忍容性及びPKの評価に基づいて、CRCによって特定する。したがって、RDは、特定された最大耐量(MTD)と同じであってもよいし、同じでなくてもよい。例えば、MTDに達しない場合、またはパート1の後続の治療サイクルからのデータが安全性プロファイルについての更なる洞察を提供する場合、RDは、MTDを超えないが、MTDとは異なる用量であり得る。MTDは、DLT期間中に患者の33%未満がDLTを経験する最大用量として定義される。所与の用量レベルで患者3人のうち1人にDLTが観察された場合、3人の追加患者が同じ用量レベルに登録される。ある用量レベルで治療された3~6人の患者のうち2人がDLTを経験するまで、用量漸増を継続することができる(用量レベルは15mg/kgを超えない)。次いで、次に低い用量がMTDとみなされる。MTDまたはRDに一旦到達したら、最大6人の追加患者を追加し、その用量レベルにおける安全性及びPKを更に探ってもよい。したがって、パート1の合計登録数は、約9~12人の患者である。DLT期間中に、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb投与を2回受けない患者はいずれも評価不能とみなし、患者を入れ替える。入れ替えられた患者は、試験依頼者との検討後、試験を継続することができる。28日間のDLT期間中、2回の抗FGFR2-IIIbまたは2サイクルのmFOLFOX6を超える投与はしてはならない。DLT期間の完了時に、患者は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、14日サイクルで2週間ごとに投与されるmFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbの投与を継続することができる。抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6の用量変更基準は、以下に記載される。増悪以前の何らかの理由によるmFOLFOX6化学療法投与の中止の場合(例えば、蓄積毒性または地域の実施基準に準じたmFOLFOX6化学療法の完了)、抗FGFR2-IIIbは、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、単独療法として継続し、2週間ごとに投与してもよい。化学療法に関係する毒性に起因してmFOLFOX6のサイクルが14日を超えて遅れる場合でも、抗FGFR2-IIIb投与は、遅延させてはならず、2週間ごとの投与が継続してなされ得る。投与遅延後のmFOLFOX6の新しいサイクルの開始は、可能であれば、抗FGFR2-IIIbの注入投与と同期させる必要がある(ただし、試験要件ではない)。
【0171】
増悪以前の何らかの理由による抗FGFR2-IIIbの中止の場合(例えば、蓄積毒性)、mFOLFOX6化学療法は、現地の地域実施基準に従って、または試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、投与を継続することができる。
【0172】
FGFR2bで選択された胃癌患者集団における、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbの安全性及び有効性をプラシーボ及びmFOLFOX6と比較して特徴付けることを目的とする、パート2に患者を登録する。パート2への登録は、抗FGFR2-IIIbのRD(15mg/kgを超えない)がパート1のCRCによって特定された場合にのみ開始する。パート2は、二重盲検であり、合計で最大約360人の、FGFR2bで選択された胃癌患者で構成され、2つの治療群:群1:2週間ごとに投与されるRDの抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6、または群2:2週間ごとに投与されるプラシーボ及びmFOLFOX6のうちの1つの投与を受けるように1:1に無作為化する。パート2の登録開始は、試験依頼者の判断で行われる。第一選択のmFOLFOX6化学療法に適格であり、2サイクルのmFOLFOX6を受けている、切除不能、局所進行性または転移性疾患を有する胃癌患者が試験のパート2に登録される。患者は、検証済みIHCまたは血液ベース生検(ctDNA)アッセイによってそれぞれ決定されたFGFR2b過剰発現及び/またはFGFR2増幅に基づいて、登録対象に選択される。IHCを使用したFGFR2b過剰発現または血液ベース生検(ctDNA)アッセイを使用した増幅のいずれも示さない患者は、登録対象にならないが、適格性要件を満たすには、アッセイの一方または両方に基づく陽性で十分である(例えば、血液ベース生検[ctDNA]アッセイは陽性であるが、IHCは陰性)。登録患者は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、14日サイクルで2週間ごとに治療を継続することができる。治療決定は全て、現地を使用して、試験責任医師が行う。
【0173】
組み入れ基準は、以下のとおりである。試験のパート1またはパート2のいずれかに登録する患者は、18歳以上であり、切除不能、局所進行性または転移性の疾患を有し、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスが0~1であり、FGFR2状態を決定するための腫瘍組織を提供し、インフォームドコンセントを提出しなければならず、更に、以下に記載する全ての他の適格基準を満たさなければならない。試験のパート1(用量漸増安全性導入段階)に登録する患者は、以下の組み入れ基準も満たさなければならない:mFOLFOX6が適切な治療とみなされる、組織学的または細胞学的に確認された消化管悪性腫瘍(例えば、胃癌、大腸癌、膵臓腺癌)。転移性疾患に対する先の化学療法レジメンが2以下である(5-FU及び/またはオキサリプラチンによる先のアジュバント化学療法は含まない)。患者は、少なくとも2サイクルのmFOLFOX6化学療法の候補者でなければならない。
【0174】
試験のパート2(用量拡大)に登録する患者は、以下の組み入れ基準も満たさなければならない:組織学的に記録された胃または胃食道接合部腺癌。IHCによって決定されるFGFR2b過剰発現及び/または血液ベース生検(ctDNA)アッセイによって決定されるFGFR2増幅。転移性または切除不能な疾患に対する先の化学療法がない(mFOLFOX6の組み入れ基準#20に記載されている場合を除く)。先の白金系化学療法がない(mFOLFOX6の組み入れ基準#20に記載されている場合を除く)。先のアジュバント療法またはネオアジュバント療法(化学療法及び/または化学放射線療法)を受けている場合は、アジュバント療法の終了と登録との間に6ヶ月を超える期間が経過していなければならない。
【0175】
患者は、mFOLFOX6化学療法の候補者であり、試験登録前に2サイクルのmFOLFOX6化学療法を受けている必要がある(ただし、2サイクルを超えない)。パート1またはパート2のいずれかに登録する患者は、以下を有する場合、除外される:未治療もしくは症候性の中枢神経系(CNS)転移;心機能障害もしくは臨床的に有意な心臓病;高いQTcF;有害事象共通用語規準(CTCAE)グレード2以上の末梢性感覚ニューロパチー;陽性のHER2状態;または試験への参加に伴うリスクを高める可能性がある他の状態。これらの組み入れ基準または除外基準の免除は認められない。
【0176】
パート1では、抗FGFR2-IIIbは、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性、またはプロトコルに規定する試験離脱の他の原因まで、14日(±3日)ごとに約30分かけて試験施設で投与される、静脈内バッグに希釈するための滅菌バイアルで提供される。
【0177】
パート2では、盲検化したIP(抗FGFR2-IIIb/プラシーボ)が提供され、パート1のオープンラベル抗FGFR2-IIIbと同様の方法で投与する。
【0178】
オキサリプラチン、5-FU及びロイコボリンは、通常の施設実施基準に準じて、各施設に提供される。mFOLFOX6レジメンは、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性、またはプロトコルに規定する試験離脱の他の原因まで、14日(±3日)ごとに投与する。最新の地域医薬品添付文書及び完全な処方薬情報を参照する。
【0179】
抗FGFR2-IIIbのPKパラメーター、例えば、AUC、Cmax、Ctrough、CL、t1/2、分布容積及び蓄積率などを評価するために血液試料を採取する。パート1では、以下に概説する時点で、登録された全ての患者の血液試料を採取し、抗FGFR2-IIIbの血清レベルを測定する。パート2では、以下に概説する時点で、パート2に無作為化された最初の60人の患者の血液試料を採取する。パート1及びパート2に関して、抗抗FGFR2-IIIb抗体のための血液試料を、指定された時点で採取する。
【0180】
腫瘍縮小効果の評価は、試験責任医師と、RECIST v.1.1ガイドラインに準じた盲検化した放射線学的中央審査との両方によって行う。BIRCによる独立審査に関する完全な詳細は、独立画像審査書に記載される。
【0181】
有効性の尺度には、臨床検査及び適切なイメージング技術、好ましくは、RECISTガイドラインに準じた適切なスライス厚での胸部、腹部及び骨盤のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンから構成される腫瘍評価が含まれ、必要に応じて、他の評価(磁気共鳴画像法[MRI]、X線、陽電子放射断層撮影[PET]、及び超音波)を実施してもよい。腫瘍評価は、スクリーニング時(パート1及びパート2のサイクル1の1日目から2週間以内)、次いで、1回目の投与から6週間ごとに24週間、それ以後、約12週間ごとに実施する。最初の完全奏効(CR)または部分奏効(PR)が認められた場合、4~6週間後に確定のためのスキャンを実施しなければならない。
【0182】
安全性の尺度には、AE、血液学的検査、臨床化学検査、尿検査、バイタルサイン、体重、併用薬/処置、ECOGパフォーマンスステータス、対象の身体検査、ECG及び眼科検査が含まれる。独立したデータ監視委員会(DMC)がパート2の治療期間全体を通して定期的に安全性試験データ(AE及びSAE)を評価する。
【0183】
パート1では、FGFR2状態を評価するために提出された腫瘍組織を、IHCの使用により、FGFR2b過剰発現についてレトロスペクティブに分析する。試験薬の1回目の投与(サイクル1の1日目)前に、血液ベース生検(ctDNA)アッセイのための試料を採取し、FGFR2増幅についてレトロスペクティブに分析する。探索的バイオマーカー分析のための血液試料は、サイクル1及び2の1日目の投与前、サイクル1の1日目及びサイクル2の1日目の投与から48時間後(3日目)、28日間のDLT期間を超えて治療を継続する患者についてはサイクル3の1日目の投与前、ならびにEOT来院時に採取する。試料採取が可能な全ての患者から、サイクル1の1日目、サイクル3の1日目、及びサイクル5の1日目の投与前、ならびにEOT来院時に、毛嚢試料を採取する。
【0184】
パート2では、FGFR2状態を評価するために腫瘍組織を提出し、これを、IHCの使用により、FGFR2b過剰発現についてプロスペクティブに分析する。ctDNA評価のための血液試料を、FGFR2増幅についてプロスペクティブに分析する。加えて、1回目の投与から6週間ごとに24週間、それ以後、約12週間ごとに血液ベース生検(ctDNA)アッセイを長期にわたって採取し、FGFR2増幅についてレトロスペクティブに分析する。パート2の全ての患者については、EOT来院時にも試料を採取する。パート2の全ての患者については、EOT来院時にも試料を採取する。探索的バイオマーカー分析のための血液試料は、サイクル1及び2の1日目の投与前、サイクル1の1日目及びサイクル2の1日目の投与から48時間後(3日目)、サイクル3の1日目の投与前、ならびにEOT来院時に採取する。
【0185】
新鮮な腫瘍生検は、実施可能な限り必須であり、治療前及びサイクル3の1日目の7日前以内(及び投与の少なくとも24時間前)の治療中に、パート2に無作為化された最大30人の患者に対して実施する。各時間点での実施可能性は、試験責任医師によって評価され、患者の安全性に対する考慮を含めるものとする。生検が実施可能でないと試験責任医師が評価した場合、当該決定は、原資料に記録しなければならない。登録前の12週間以内に生検が採取された患者の場合、当該試料は、PD分析に十分な試料が使用できるであれば(単一パラフィン包埋ブロックまたは約10スライド)、新鮮な治療前生検の要件を満たし得る。パート2の患者はまた、試験依頼者との検討後に、腫瘍縮小効果が記録された際の任意選択の治療中生検及び/または腫瘍増悪が記録された任意選択の治療後生検を受け得る。
【0186】
本試験に計画される総登録数は、最大約372人の患者である。標準的な3+3デザインに準じて、あらゆる用量制限毒性について評価可能な最大約12人の患者をパート1に登録する。パート2については、FGFR2bで選択された胃癌を有する最大約360人の患者を登録し、1:1に無作為化してmFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbまたはプラシーボ及びmFOLFOX6を投与することによって、有効性及び忍容性を試験する。適格性のある患者は、地理上の地域(米国及び欧州対アジア対他の地域)、前治療の状況(de novo対アジュバント/ネオアジュバント)、及び測定可能な疾患状態(測定可能対測定不能)に従って層化する。
【0187】
パート1では、分析は全て記述的であり、適宜、用量群及び全体で示される。記述統計には、連続変数の観察数、平均、標準偏差、中央値、範囲及び四分位範囲、ならびにカテゴリー変数の数及びパーセントが含まれ、95%信頼区間が適宜示される。パート2では、主要な有効性解析は、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbまたはプラシーボ及びmFOLFOX6により治療した患者のPFSの比較である。主要エンドポイントのPFSは、無作為化から、試験責任医師の評価に基づいて放射線学的に増悪とされた日(RECIST v.1.1に準ずる)またはあらゆる原因による死亡日のいずれか早いほうまでの期間として定義される。副次的有効性エンドポイントは、OS及びORRを含む。PFSには中間解析及び主解析があり、いずれもイベントに基づく解析である。登録患者で48例のイベント(PFS主解析における目標96例のPFSイベントの50%)が観察された後の中間分析では、PFSの無益性試験のみが実施され、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較した抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6の組み合わせのHRが0.806を超えることを回避する。中間解析は、最初の患者が登録されてから約20ヶ月後に実施されることが推定される。PFSの主解析は、少なくとも96例のPFSイベントが最初の156人の登録患者で観察されたときに行われ、治療企図(ITT)集団を使用して実施する。主解析には、RECIST v.1.1に準じて試験責任医師が決定した放射線学的増悪イベント及び死亡のみが含まれる。PFSの主解析は、層別ログランク両側検定(有意水準0.05)を使用して行う。層化因子は、音声自動応答/Web登録システム(IXRS)に文書化されている無作為化スケジュールの層化に使用されるものと同じである。層別ログランク検定のp値が統計的に有意であり(<0.05両側)、HRが1未満であれば、PFSに差はないとする帰無仮説を棄却し、プラシーボ及びmFOLFOX6を投与した群と比較して、mFOLFOX6と組み合わせて抗FGFR2-IIIbを投与した群で、PFSが統計的に延長されると推定する。各治療群に関するPFS中央値及び関連する95%信頼区間は、カプランマイヤー法を使用して推定する。ハザード比(HR=λ抗FGFR2-IIIb+mFOLFOX6/λmFOLFOX6)は、治療群を唯一の主効果としたCox回帰モデルを使用し、ログランク検定で使用したのと同じ層化因子で層化して推定する。層化していないHRも示す。
【0188】
OS及びORRを含む副次的エンドポイントの解析は、主要エンドポイントであるPFSが統計的に有意であるときに行い、OS及びORRの形式的な仮説は、0.05の水準で階層的に検定する。OSを最初に検定し、それが有意であれば、次にORRを検定する。主要エンドポイント及び副次的エンドポイントの検定における第一種過誤の確率は、この固定順序検定手順(水準0.05)を採用することによって制御される。PFSの検定が統計的に有意である場合、OSの中間解析及び最終解析が計画される。OSの中間解析は、PFSの主解析時に行う。OSの解析を行う場合、中間時(すなわち、少なくとも96例のPFSイベントが観察された時)、及び最終時(すなわち、249例の死亡が観察された時)のOS解析は、ITT集団で実施する。OSの仮説検定は、層別ログランク両側検定(有意水準0.05)を使用して行う。OSの中間解析及び最終解析では、群逐次法を使用して、O’Brien-Flemingの境界に基づく第一種過誤の確率と、Gammaファミリーに基づく第二種過誤の確率(パラメーター-4)とを確定する。層化因子は、IXRSに文書化されている無作為化スケジュールの層化に使用されるものと同じである。各治療群に関するOS中央値及び関連する95%信頼区間は、カプランマイヤー法を使用して推定する。HRは、治療群を唯一の主効果としたCox回帰モデルを使用し、ログランク検定で使用したのと同じ層化因子で層化して推定する。層化していないHRも示す。ORRは、試験責任医師によってRECIST v.1.1に準じて定義される部分奏効または完全奏効のある患者の割合と定義する。ORRの主解析は、ベースラインを測定することが可能な疾患を有する患者間で実施する。ORRの解析において、ベースライン後に適切な腫瘍評価を受けていない患者は、ノンレスポンダーとしてカウントする。ORRの形式的な仮説検定は、層別化したCochran-Mantel-Haenszel検定を使用して実施する。層化因子は、IXRSに文書化されている無作為化スケジュールの層化に使用されるものと同じである。
【0189】
検出力及び標本サイズ:本試験は、PFSの主解析に十分な検出力を提供するように設計する。プラシーボ及びmFOLFOX6の6ヶ月投与を受けた患者のPFS中央値(mPFS)に基づくと、24ヶ月の受入期間及び6ヶ月の追跡期間後、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較した抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6の組み合わせのmPFSについて、検出力90%を有する0.5のハザード比(HR)(両側、α=0.05)を示すには、約156人の患者(1:1の無作為化)及び目標96例のPFSイベントが必要である。PFSの指数分布を仮定すると、これは、6ヶ月から12ヶ月のmPFSの増加に該当する。現在の設計では、PFSの統計的有意性をもたらす最小観察効果は、6ヶ月から9ヶ月の50%改善(HR=0.67)である。本試験はまた、OSの主解析にも検出力があるようにする。プラシーボ及びmFOLFOX6の10ヶ月投与を受けた患者のOS中央値(mOS)に基づくと、最後の患者の登録から36ヶ月の受入期間及び10ヶ月の追跡期間後、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較した抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6の組み合わせのmOSについて、全体の第一種過誤水準0.05で検出力80%を有する0.7のHRを示すには、試験の登録を最大約360人の患者まで継続し、249例の死亡イベントを目標にする。OSの指数分布を仮定すると、これは、10ヶ月から14.3ヶ月のOS中央値の43%の増加に該当する。現在の設計では、最終解析においてOSの統計的有意性をもたらす最小観察効果は、10ヶ月から12.8ヶ月の28%改善(HR=0.78)である。
【0190】
安全性解析:安全性の解析は、試験期間中にいずれかの試験薬(抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6またはプラシーボ及びmFOLFOX6)の投与を受けた全ての患者を含み、治療後のあらゆる安全性情報を提供する。全てのAEは、国際医薬用語集(MedDRA)を使用してコードする。試験責任医師は、CTCAE v4.03を使用してAEの重症度を分類する。治療下で発現した有害事象(TEAE)は、試験薬の1回目の投与以降に発生日を持つあらゆるイベント、または治療前に存在し治療後に悪化したあらゆるイベントと定義する。最終投与日+30日より前の発生日であるTEAEのみを概要表に記載する。AEを経験した患者の数及びパーセンテージは、器官別大分類、基本語、試験薬との関係、及び各治療群の重症度ごとにまとめる。死亡を含むSAEを経験した患者、または試験からの早期離脱もしくは試験薬の中止に関連するAEを経験した患者については、患者別のリストを提供する。臨床検査データは、臨床検査の種類ごとにまとめる。試験薬の投与後に異常(すなわち、参照範囲外)及び/または臨床的に有意な異常を経験した患者の数及びパーセンテージを、各臨床検査の測定について示す。各臨床検査の測定は、ベースライン及びその後の全ての治療後予定来院についての記述統計を提供する。ベースラインから治療後来院までの変化も提供する。バイタルサインの記述統計も同様に提供する。加えて、CTCAEグレードのベースラインからのシフト(該当する場合)及び高/低フラグによるシフト(CTCAEグレードが定義されていない場合)を治療群ごとに提示する。安全性エンドポイントの形式比較は計画しない。
【0191】
PK解析:PKパラメーターは、非コンパートメント解析を使用して推定されるが、コンパートメント解析を適宜用いてもよい。
【0192】
プロトコルの詳細
1.序文
抗FGFR2-IIIbの背景
線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体(FGFR)経路のがんにおける役割は、よく知られている。FGFは、腫瘍細胞の形質転換及び増殖を刺激し、血管新生を刺激することができる。22のヒトFGFが知られており、個々のFGFの発現は、一般に特定の組織、細胞種及び/または発達段階に限定されている。FGFシグナル伝達は、FGFR1~4と呼ばれるFGF受容体サブタイプを産生する4つの異なる遺伝子によりコードされる膜貫通チロシンキナーゼ受容体ファミリーによって媒介される(Turner and Grose 2010)。
【0193】
FGFR2は、2つのスプライシングバリアントb及びcを有する。一般に、FGFR2bは、上皮起源の組織(例えば、胃、皮膚)に発現する(Miki 1992)。FGFR2bを介してシグナル伝達を行う主なリガンドは、FGF7、FGF10及びFGF22である。FGF/FGFR2経路におけるシグナル伝達の変化(例えば、FGFR2bタンパク質の過剰発現またはFGFR2遺伝子の増幅)は、胃癌、乳癌及び他の癌に関連しており、予後不良を意味すると思われる(Wu 2013,Turner and Grose 2010)。実際、1990年には既に、胃癌(約3~9%)及び乳癌(1~2%)を有する患者のサブセットが、染色体10q26にあるFGFR2遺伝子の増幅を持つことが確認された。胃癌では、FGFR2の増幅により、細胞表面上のFGR2b受容体が高レベルで発現している。
【0194】
FGFR2b特異的抗体
抗FGFR2-IIIbは、ヒトFGFR2b受容体(NCBI参照配列ID NP_001138385.1)に特異的なヒト化モノクローナル抗体(IgG1アイソタイプ)であり、FGFリガンドが受容体に結合するのを遮断する。抗FGFR2-IIIbは、FGFR2b受容体アイソフォームの3番目のIg領域を標的にし、この領域は、選択的スプライシングを受け、リガンド特異性を制御している。この抗体は、グリコシル化されているが、FUT8遺伝子(α1,6-フコシルトランスフェラーゼ)を欠くチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株で産生されるため、抗体の多糖部分にコアフコースがない。コアフコースの不存在は、Fc受容体FcγRIIIaに対して、フコシル化分子と比較してより高い親和性をもたらし、免疫細胞を媒介にした腫瘍細胞殺傷を潜在的に増強する(Shinkawa 2003)。そのため、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を増強するために糖鎖が改変されている(Gemo 2014)。抗FGFR2-IIIbは、FGFR2bを過剰発現する胃癌及び乳癌細胞株の細胞培養において、FGFリガンド刺激によるFGFR2bリン酸化及び細胞増殖を阻害する。抗FGFR2-IIIbはまた、FGFR2bを過剰発現する胃及び乳房異種移植モデルにおいて、腫瘍成長を阻害する。したがって、抗FGFR2-IIIbの3つの潜在的作用機序には、リガンド結合及び下流のシグナル伝達を遮断すること、FGFR2bドライバータンパク質の発現を減少させること、ならびにADCCを増強することが含まれる。
【0195】
抗FGFR2-IIIbは、FGFR2bを過剰発現し、FGFR2遺伝子の増殖がある、FGFR2bが腫瘍成長の誘導因子と考えられる免疫不全マウスの胃癌異種移植片において、完全かつ永続的な腫瘍成長阻害をもたらすことができる(Gemo 2014)。加えて、抗FGFR2-IIIbは、FGFR2bを中程度に発現する4T1同種移植腫瘍モデルにおいて、NK細胞の動員及びそれに伴う腫瘍成長の阻害を示す。これらのデータは、ADCCが、中程度のFGFR2b過剰発現があり、FGFR2遺伝子増幅のない患者に有効であり得、ADCC活性が、これらの患者における作用機序に対する主な寄与因子である可能性を示唆している。
【0196】
更に、抗FGFR2-IIIbは、FGFR2b受容体に特異的であるので、他のFGF/FGFR(FGFR2cを含む)のシグナル伝達に干渉しない。FGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)と対照的に、抗FGFR2-IIIbは、FGF23シグナル伝達を阻害しない。FGF23は、カルシウム/リン酸代謝に関与するリガンドである。したがって、抗FGFR2-IIIbによる治療は、FGFR TKIに関連する著しい用量制限の高リン酸血症を引き起こさないと予想される(Andre 2013,Brown 2005,Dienstmann 2014,Sequist 2014)。
【0197】
mFOLFOX6
持続静注5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びオキサリプラチン(mFOLFOX6)は、承認された化学療法剤であり、転移性胃癌の第一選択治療の標準治療である。5-FUは、世界中で胃癌治療に使用されている主な化学療法剤であり、5-FUとの組み合わせ化学療法により臨床アウトカムの改善がもたらされることが研究で示されてから、他の療法と頻繁に併用されている(Keam 2008)。標準治療のAdrucil(登録商標)もまた、5-フルオロウラシル(5-FU)として知られ、広く使用されている化学療法剤であり、現在、大腸癌、乳癌、胃癌及び膵癌の治療に適応されている。
【0198】
抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6の開始用量の正当性
この用量漸増安全性導入段階試験のパート1では、28日サイクルで2週間ごとにIV注入で投与される開始用量10mg/kgの抗FGFR2-IIIbを計画する。
【0199】
先の第I相臨床試験において、固形腫瘍患者(n=19)及び胃癌患者(n=8)で用量漸増を実施した。用量漸増中、いずれの用量レベルでも用量制限毒性(DLT)はなかった。したがって、抗FGFR2-IIIbの最大耐量(MTD)は、特定されなかった。目標薬物濃度の前臨床モデリング及び観察された忍容性、ならびに観察された有効性のエビデンスに基づいて、15mg/kgを拡大用量として選択した。2週間ごとの15mg/kg投与で、患者の大部分において、OCUM2 FGFR2増殖胃癌異種移植モデルを使用したマウス有効性試験から得られた定常状態における抗FGFR2-IIIbトラフ濃度(Ctrough ss)60μg/mLに到達することが予想される。
【0200】
集団PK解析の公表データに基づくと、ベバシズマブ(Genentech Inc.)、トラスツズマブ(Genentech Inc.)、ペルツズマブ(Genentech Inc.2016)、及びラムシルマブ(Eli Lilly and Company)を含む抗体治療薬の人種ごとのPKに、臨床的に有意な差は観察されなかった。重要なことは、進行中の抗FGFR2-IIIb試験の臨床データが、10mg/kgの用量がヒトで許容されることを裏付けていることである。抗FGFR2-IIIbはまた、53人の患者を最大15mg/kgの用量で治療した世界で初のヒト試験において、許容される安全性プロファイルを示している。
【0201】
mFOLFOX6の開始用量には、85mg/mのオキサリプラチン、350mgのフォリン酸カルシウム(フォリン酸)、400mg/m用量のフルオロウラシル、及び2400mg/m用量のフルオロウラシルが含まれる。オキサリプラチン及びフォリン酸カルシウムは、三方活栓/Yサイトコネクタを使用して、IV注入により同時投与する。用量の少ないフルオロウラシルをIVボーラスで投与し、用量のより多いフルオロウラシルをIV注入で46時間かけて投与する。mFOLFOX6は、14日ごとに投与する。
【0202】
パート2プレスクリーニングの根拠
抗FGFR2-IIIbは、胃癌腫瘍に発現したときのFGFR2b受容体を認識するように設計された抗体である。現在の仮説は、FGFR2bの存在が、FGFR2bで選択された胃癌または胃食道癌を有する患者(パート2)の応答の重要な予測因子であるというものである。これは、FGFR2bを過剰発現する腫瘍のみが抗FGFR2-IIIb治療に応答した異種移植研究)における前臨床観察に基づくとともに、FGFR2b陽性患者で抗FGFR2-IIIb活性の程度が大きいことを示している、進行中の世界で初のヒト試験の初期結果にも基づいている。
【0203】
パート2の患者は、検証済みIHC(2+または3+のスコア)または血液ベース生検アッセイによってそれぞれ決定されたFGFR2b過剰発現及び/またはFGFR2増幅に基づいて、登録対象に選択される。IHCを使用したFGFR2b過剰発現または血液ベース生検アッセイを使用した増幅のいずれも示さない患者は、登録対象にならないが、適格性要件を満たすには、アッセイの一方または両方に基づく陽性で十分である(例えば、血液ベース生検アッセイは陽性であるが、IHCは陰性)。
【0204】
パート2の患者は、転移性または切除不能な疾患に関する先の化学療法を受けていない者であり、先のアジュバント療法またはネオアジュバント療法(化学療法及び/または化学放射線療法)を受けている場合は、アジュバント療法の終了と登録との間に6ヶ月を超える期間が経過していなければならない。これらの患者は、切除不能、局所進行性または転移性の疾患を有し、したがって、その診断直後に治療(mFOLFOX6)を開始することが期待される。
【0205】
IHCの結果は、完了するまでに最大で数週間を要することがあるので、血液ベースアッセイで陰性である患者は、IHCによる適格性の確認を待つ間、化学療法による治療開始が遅れることがある。このため、試験に参加する全ての患者は、登録時に2サイクルのmFOLFOX6を受けていることが求められる。患者は、2サイクル超または2サイクル未満の投与を受けることができない。これは、試験参加者間で治療の不均衡が生じ、試験結果の解釈を潜在的に混乱させる可能性があるためである。mFOLFOX6の最初の2サイクルを投与するのにかかる時間の間に、IHCの結果を得ることができると予想される。この期間中、患者は、まだ試験に登録していないため、mFOLFOX6は、現地の実施基準に従って投与され、有害事象は、試験の一部として記録されない。患者は、血液及びIHCアッセイについて、プレスクリーニングインフォームドコンセントを提出する。IHCの結果が陽性であれば、患者は、2コース目のmFOLFOX6を完了し、スクリーニング期間に入る。次いで、インフォームドコンセントの提出を含む全ての他の適格基準を満たしたら、試験への登録となる。IHCの結果が陰性であり、血液ベース生検も陰性である場合、患者は、試験参加に適さない。
【0206】
腫瘍生検及び血液評価の根拠
本試験のパート2の患者は、組織の結果と血液の結果の両方が必要である。そのため、患者は、組織と血漿の両方を提供できない場合、適格でない。IHCを使用したFGFR2b過剰発現または血液ベース生検アッセイを使用した増幅のいずれも示さない患者は、登録対象にならないが、適格性要件を満たすには、アッセイの一方または両方に基づく陽性で十分である(例えば、血液ベース生検アッセイは陽性であるが、IHCは陰性)。血液検査は、FGFR2のDNA増幅を明らかにするのに対し、IHC検査は、タンパク質発現の程度を示す。Five Primeは、IHCによってFGFR2bを検出するために感度及び特異性が最適化されている、非臨床用途の抗FGFR2b抗体を開発している。
【0207】
胃癌試料を評価する試験において、FGFR2増幅は、IHCのよって検出したとき、有意なFGFR2b表面発現と一貫して関連している(Gemo 2014)。前臨床試験で観察された抗FGFR2-IIIbの抗腫瘍作用が、腫瘍細胞株におけるFGFR2bの過剰発現に基づいて予想された。FGFR2bの過剰発現のない患者は、抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6による治療から有意な利益を得る可能性は低い。抗FGFR2-IIIbによる治療について、FGFR2b陽性腫瘍を有する患者を選択することは、進行中の世界で初の抗FGFR2-IIIbの第1相ヒト試験のデータによって裏付けられている。試験目的及びエンドポイント
【0208】
パート1:主要目的
進行性消化管(GI)腫瘍の患者に固定用量の持続静注5-フルオロウラシル、ロイコボリン及びオキサリプラチン(mFOLFOX6)と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの推奨用量(RD)を決定すること。
【0209】
GI腫瘍の患者にmFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの漸増用量の安全性プロファイルを評価すること。
【0210】
パート1:副次的目的
GI腫瘍の患者にmFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbへの長期曝露の安全性及び忍容性を評価すること。
【0211】
GI腫瘍の患者にmFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの薬物動態(PK)プロファイルを特徴付けること。
【0212】
抗FGFR2-IIIbの免疫原性を特徴付けること。
【0213】
パート1:探索的目的
GI腫瘍患者の血液及び毛嚢試料中の探索的バイオマーカーの評価により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの薬力学(PD)プロファイルを特徴付けること。
【0214】
パート2:主要目的
FGFR2bで選択された胃癌または胃食道癌(以後、胃癌またはGCと称される)を有する患者の無増悪生存期間(PFS)の解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利益を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること。
【0215】
パート2:副次的目的
FGFR2bで選択されたGCを有する患者の全生存期間(OS)の解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利益を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること。
【0216】
mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの安全性及び忍容性を、FGFR2bで選択されたGCを有する患者のプラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること。
【0217】
FGFR2bで選択されたGCを有する患者で、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbのPKプロファイルを特徴付けること。
【0218】
抗FGFR2-IIIbの免疫原性を特徴付けること。
【0219】
治療前及び治療中の腫瘍生検での免疫細胞浸潤及び他の探索的バイオマーカーの分析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbのPDプロファイルを、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して特徴付けること。
【0220】
パート2:探索的目的
盲検下独立審査委員会(BIRC)の増悪評価に基づいたPFSの解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利益を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること。
【0221】
FGFR2bで選択されたGCを有する患者の客観的奏効率(ORR)の解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利益を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること。
【0222】
BIRCの増悪評価に基づいたORRの解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利点を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること。
【0223】
FGFR2bで選択されたGCを有する患者の1年のOSの解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利点を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること。
【0224】
FGFR2bで選択されたGCを有する患者の奏功持続期間(DOR)の解析により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床上の利点を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること。
【0225】
FGFR2状態(腫瘍組織及び/または血液ベース生検)と臨床アウトカムとの関連性を探索すること。
【0226】
腫瘍組織のFGFR2状態と血液ベース生検を使用したFGFR2増幅との一致を探索すること。
【0227】
FGFR2bで選択されたGCを有する患者の血液試料中の探索的バイオマーカーの評価により、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbのPDプロファイルを、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して特徴付けること。
【0228】
抗FGFR2-IIIbをmFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、FGFR2bで選択されたGCを有する患者の患者報告アウトカム(PRO)及び生活の質(QOL)アウトカムを、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価すること。
【0229】
パート1:主要試験エンドポイント
試験責任医師によって抗FGFR2-IIIbに関係すると評価されたグレード2以上の有害事象(AE)の発生及び用量制限毒性(DLT)と定義された臨床検査異常。
【0230】
パート1:副次的エンドポイント
AEの発生、臨床検査異常、角膜及び網膜所見、ならびに心電図(ECG)異常。
【0231】
血清中濃度-時間プロファイルから得られる抗FGFR2-IIIbのPKパラメーター、例えば、血清中濃度-時間曲線下面積(AUC)、最高血清中濃度(Cmax)、トラフ血清中濃度(Ctrough)、クリアランス(CL)、消失半減期(t1/2)、分布容積及び蓄積率(適切かつ該当する場合)。
【0232】
免疫原性試験によって決定される免疫応答を評価すること。
【0233】
パート1:探索的エンドポイント
血液及び毛嚢試料中の探索的バイオマーカー。
【0234】
パート2:主要エンドポイント
無作為化から、試験責任医師の評価に基づいて放射線学的に増悪とされた日(RECIST v.1.1に準ずる)またはあらゆる原因による死亡日のいずれか早いほうまでの期間として定義される、PFS。
【0235】
パート2:副次的エンドポイント
無作為化日からあらゆる原因による死亡までの期間として定義される、OS。
【0236】
RECISTv1.1に準じた、試験責任医師による腫瘍病変評価に基づく客観的奏効率(ORR)。
【0237】
AEの発生、臨床検査異常、角膜及び網膜所見、ならびに心電図(ECG)異常。
【0238】
血清中濃度-時間プロファイルから得られる、mFOLFOX6と組み合わせて投与された場合のRDでの抗FGFR2-IIIbのPKパラメーター、例えば、AUC、Cmax、Ctrough、CL、t1/2、分布容積、及び蓄積率(適切かつ該当する場合)。
【0239】
免疫原性試験によって決定される免疫応答。
【0240】
治療前及び治療中の腫瘍生検試料での免疫細胞浸潤レベル及び他の探索的バイオマーカー。
【0241】
パート2:探索的エンドポイント
少なくとも1回の抗FGFR2-IIIb投与を受け、1年後生存している患者の割合として定義される、1年のOS。
【0242】
RECISTv1.1に準じて試験責任医師によって決定される奏功を有する患者に限定され、かつ、RECISTv1.1に準じて試験責任医師によって決定される最初の奏功から増悪または死亡のいずれか早いほうまでの期間として定義される、DOR。
【0243】
腫瘍組織及び/または血液ベース生検で特定されたFGFR2状態とRECIST v1.1に準じた客観的な腫瘍縮小効果との相関関係。
【0244】
腫瘍組織で特定されたFGFR2状態と血液ベース生検におけるFGFR2増幅との間の相関関係。
【0245】
血液試料中の探索的バイオマーカー。
【0246】
EQ-5D-5L及びEORTC QLQ-C30で測定したときのQoLのベースラインからの変化。
【0247】
試験の全体的なデザイン及び計画
概要
本試験は、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの安全性、忍容性、PK、PD及び有効性を評価するための2パート多施設試験である。試験は、オープンラベルパート1用量漸増安全性導入段階、及び無作為化二重盲検プラセボ対照パート2用量拡大を含む。
【0248】
パート1は、適格性のある進行性GI腫瘍患者における、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbの最低2つの計画用量コホートで構成され、mFOLFOX6と組み合わせて投与される抗FGFR2-IIIbのRDを決定する。パート2は、2つの拡大群(1:1の無作為化)で構成され、FGFR2bで選択された進行性GC患者(FGFR2b発現のプロスペクティブIHC分析及び/またはFGFR2増幅を示す血液ベースアッセイによって決定)における、mFOLFOX6と組み合わせたRDでの抗FGFR2-IIIbの安全性及び有効性を、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して評価することを目的にする。患者は、試験のパート1またはパート2のいずれかに登録され、両方には登録されない。
【0249】
最長14日(2週間)の初期スクリーニング期間後、患者を14日サイクルで2週間ごとにmFOLFOX6(抗FGFR2-IIIbありまたはなし)により治療する。患者は、パート1への登録前にmFOLFOX6化学療法を開始しているか、または受けたことがあってよいが、適格性には、患者が少なくとも追加で2回のmFOLFOX6化学療法サイクルを受ける候補であることが求められる(パート1で患者が受け得るFOLFOXサイクル数に上限はなく、投与を受けない場合もある)。
【0250】
パート1に登録した各患者は、安全性評価及び用量制限毒性の発生について、28日間(DLT期間)観察する。DLT期間の完了時に、患者は、試験責任医師の判断で、治療を継続することができる。追加治療は、臨床的に適応とされる場合、その後、14日サイクルで2週間ごとに投与することができる。
【0251】
パート2では、腫瘍がIHCまたは血液によりFGFR2b陽性であり、進行期胃癌に標準的な第一選択療法であるmFOLFOX6化学療法を2サイクル完了しており、かつインフォームドコンセントに署名している患者を1:1に無作為化して、14日サイクルで2週間ごとに、パート1で得られたデータの評価後に選択されたRDで、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbまたはmFOLFOX6と組み合わせたプラシーボにより治療を行う。
【0252】
初期スクリーニング期間
パート1
スクリーニング期間は、患者が同意説明文書(ICF)に署名したときに開始する。全ての患者が抗FGFR2-IIIbの1回目の投与前の14日(2週間)以内にスクリーニング評価を受ける。同意説明文書の署名後、及び抗FGFR2-IIIbの1回目の投与前に生じる試験手順に関係しないいずれのAEもこの期間中には収集しない。患者は、パート1への登録前にmFOLFOX6化学療法を開始しているか、または受けたことがあってよいが、適格性には、患者が少なくとも追加で2回のmFOLFOX6化学療法サイクルを受ける候補であることが求められる(パート1で患者が受け得るFOLFOXサイクル数に上限はなく、投与を受けない場合もある)。
【0253】
パート2
パート2では、腫瘍がIHCまたは血液によりFGFR2b陽性であり、進行期胃癌に標準的な第一選択療法であるmFOLFOX化学療法を2サイクル完了しており、かつインフォームドコンセントに署名し、他の適格基準を満たす患者を登録する。
【0254】
パート2の適格性は、IHC及び血液によるFGFR2b陽性検査のみを伴うプレスクリーニング期間と、残りの全ての適格基準を確認するスクリーニング期間の2段階で評価する。
【0255】
無作為化
パート1
パート1は、オープンラベル試験である。適格と判断された患者を順次登録する。
【0256】
パート2
プレスクリーニング期間中、FGFR2b陽性について患者を検査する。一方または両方の方法(IHC及び/または血液)による検査陽性の患者をスクリーニング期間に入れる。(注:血液検査が陽性であれば、IHCの結果を待つ必要はない。この時点で、患者は適格であるので、スクリーニング期間を開始するものとする)。
【0257】
適格性を満たす患者をmFOLFOX6と組み合わせたプラシーボまたはmFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbに1:1に無作為化する。
【0258】
パート1(用量漸増安全性導入段階)
パート1は、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbのオープンラベル用量漸増試験である。パート1に適格である患者は、切除不能、局所進行性または転移性疾患を有する未選択GI癌(FGFR2bを過剰発現する腫瘍ありまたはなし)を有し、抗FGFR2-IIIbとmFOLFOX6化学療法の両方の投与候補である。FGFR2状態は、IHC及び血液ベース生検によってレトロスペクティブに決定する。
【0259】
パート1に登録した患者は、以下のように、14日サイクルで2週間ごとに、固定用量のバックボーン化学療法レジメンのmFOLFOX6と組み合わせた、漸増用量の抗FGFR2-IIIbにより治療を行う。
【0260】
抗FGFR2-IIIb投与:
抗FGFR2-IIIb IVは、2週間ごとに、mFOLFOX6化学療法の投与前に、各サイクルの1日目に投与する。抗FGFR2-IIIbは、インラインフィルタ付きの末梢静脈または中心静脈カテーテルを介した約30分のIV注入として投与する。
【0261】
バックボーン化学療法レジメン:
mFOLFOX6化学療法の投与は、各治療サイクルの1日目に、抗FGFR2-IIIbの投与後(30分の休息後)に開始する。mFOLFOX6レジメンは、次のように、2週間ごとに投与する:
【0262】
オキサリプラチン85mg/mの120分にわたるIV注入、ロイコボリン400mg/mの120分にわたるIV注入、続けて、フルオロウラシル(5-FU)400mg/mのIVボーラス、続けて、46時間にわたる持続IV注入としての5-FU 2400mg/m
【0263】
オキサリプラチンの投与は、事前補液を必要としない。セロトニン拮抗薬(デキサメタゾンありまたはなし)などの制吐薬の前投薬は、臨床的に適応とされる場合、試験責任医師の判断で現地の標準治療に準じて使用されてもよい。
【0264】
用量レベル(パート1)
パート1では、標準的な3+3用量漸増デザインで、抗FGFR2-IIIbの2つの用量コホートが予定され、各コホートに最低3人の患者を登録する。予定される用量レベルは、以下のとおりである。
【表1】
【0265】
全ての用量漸増の決定は、DLT、全体的な安全性、及び忍容性の評価に基づくものであり、各コホートに最後に登録された患者が28日間のDLT期間を完了した後(2治療サイクルの完了後)に行われる。用量漸増の決定は、試験依頼者及び試験責任医師から構成されるコホート審査委員会(CRC)による合意を得る。安全性及びPKパラメーターの検討により、最適な標的曝露を達成するために、代替用量レベルによるコホートの追加の決定が通知される場合もある。用量レベル-1は、用量レベル1で2以上のDLTが観察された場合にのみ登録する。
【0266】
パート1の用量漸増の決定には、表2に示すアルゴリズムが使用される:
【表2】
【0267】
パート2に関する抗FGFR2-IIIbのRDは、全体的な安全性、忍容性及びPKの評価に基づいて、CRCによって特定する。したがって、RDは、特定された最大耐量(MTD)と同じであってもよいし、同じでなくてもよい。例えば、MTDに達しない場合、またはパート1の後続の治療サイクルからのデータが安全性プロファイルについての更なる洞察を提供する場合、RDは、MTDを超えないが、MTDとは異なる用量であり得る。
【0268】
MTDは、DLT期間中に患者の33%未満がDLTを経験する最大用量として定義される。所与の用量レベルで患者3人のうち1人にDLTが観察された場合、3人の追加患者が同じ用量レベルに登録される。ある用量レベルで治療された3~6人の患者のうち2人がDLTを経験するまで、用量漸増を継続することができる(用量レベルは15mg/kgを超えない)。次いで、次に低い用量がMTDとみなされる。
【0269】
MTDまたはRDに一旦到達したら、3人の追加患者を追加し、その用量レベルにおける安全性及びPKを更に探ってもよい。したがって、パート1の合計登録数は、約9~12人の患者である。
【0270】
DLT期間中に、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb投与を正確に2回受けない患者はいずれも評価不能とみなし、患者を入れ替える。入れ替えられた患者は、試験依頼者との検討後、試験を継続することができる。28日間のDLT期間中、2回の抗FGFR2-IIIbまたは2サイクルのmFOLFOX6を超える投与はしてはならない。
【0271】
DLT期間の完了時に、患者は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、14日サイクルで2週間ごとに投与されるmFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbの投与を継続することができる。抗FGFR2-IIIbの投与回数に上限はない。DLT期間以降のmFOLFOX6レジメンの継続投与は、地域の標準治療に従う。
【0272】
増悪以前の何らかの理由によるmFOLFOX6化学療法投与の中止の場合(例えば、蓄積毒性または地域の実施基準に準じたmFOLFOX6化学療法の完了)、抗FGFR2-IIIbは、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、単独療法として継続し、2週間ごとに投与してもよい。化学療法に関係する毒性に起因してmFOLFOX6のサイクルが14日を超えて遅れる場合でも、抗FGFR2-IIIb投与は、遅延させてはならず、2週間ごとの投与が継続してなされ得る。投与遅延後のmFOLFOX6の新しいサイクルの開始は、可能であれば、抗FGFR2-IIIbの注入投与と同期させる必要がある(ただし、試験要件ではない)。
【0273】
増悪以前の何らかの理由による抗FGFR2-IIIbの中止の場合(例えば、蓄積毒性)、mFOLFOX6化学療法は、現地の地域実施基準に従って、または試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、投与を継続することができる。
【0274】
パート2:無作為化二重盲検用量拡大
FGFR2bで選択された胃癌患者集団における、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbの安全性及び有効性をプラシーボ及びmFOLFOX6と比較して特徴付けることを目的とする、パート2に患者を登録する。パート2への登録は、抗FGFR2-IIIbのRD(15mg/kgを超えない)がパート1のCRCによって特定された場合にのみ開始する。
【0275】
パート2は、二重盲検であり、合計で最大約360人の、FGFR2bで選択された胃癌患者で構成され、2つの治療群のうちの1つの投与を受けるように1:1に無作為化する:
【0276】
群1:2週間ごとに投与されるRDの抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6、または
【0277】
群2:2週間ごとに投与されるプラシーボ及びmFOLFOX6。
【0278】
パート2の登録開始は、試験依頼者の判断で行われる。
【0279】
第一選択のmFOLFOX6化学療法に適格であり、2サイクルのmFOLFOX6を受けている、切除不能、局所進行性または転移性疾患を有する胃癌患者が試験のパート2に登録される。患者は、検証済みIHCまたは血液ベース生検アッセイによってそれぞれ決定されたFGFR2b過剰発現及び/またはFGFR2増幅に基づいて、登録対象に選択される。
【0280】
登録患者は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、14日サイクルで2週間ごとに治療を継続することができる。治療決定は全て、現地の評価を使用して、試験責任医師が行う。増悪または同意の撤回以外の理由による試験治療の中止後は、患者が追加の抗がん療法を開始するまで、腫瘍評価を継続する。加えて、パート1及びパート2の両患者は、EOT来院後約3ヶ月±28日ごとに、最後の患者が試験に登録されてから最大24ヶ月後まで、または死亡、追跡不能、同意の撤回もしくは試験依頼者による試験中止(いずれか先に生じたもの)まで、施設来院または電話により、生存に関する長期追跡調査を受ける。
【0281】
増悪以前の何らかの理由によるmFOLFOX6化学療法投与の中止の場合(例えば、蓄積毒性または地域の実施基準に準じたmFOLFOX6化学療法の完了)、IPは、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、単独療法として継続し、2週間ごとに投与してもよい。化学療法に関係する毒性に起因してmFOLFOX6のサイクルが14日を超えて遅れる場合でも、IP投与は、遅延させてはならず、2週間ごとの投与が継続してなされ得る。投与遅延後のmFOLFOX6の新しいサイクルの開始は、可能であれば、IPの注入投与と同期させる必要がある(ただし、試験要件ではない)。
【0282】
増悪以前の何らかの理由によるIPの中止の場合(例えば、蓄積毒性)、mFOLFOX6化学療法は、現地の地域医療に従って、または試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、投与を継続することができる。
【0283】
試験スキーマ
試験スキーマを図1(パート1)及び図2(パート2)に示す。
【0284】
試験デザインの根拠
本試験は、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における、抗FGFR2-IIIbの安全性、忍容性、PK、PD及び有効性を評価するための2パート多施設試験である。試験は、オープンラベルパート1用量漸増安全性導入段階、及び無作為化二重盲検プラセボ対照パート2用量拡大を含む。
【0285】
パート1は、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの用量漸増安全性導入段階試験である。標準的な3+3デザインを使用する。パート1に登録した患者は、14日サイクルで2週間ごとに、固定用量のバックボーン化学療法レジメンのmFOLFOX6と組み合わせた、漸増用量の抗FGFR2-IIIbにより治療を行う。パート1に登録した各患者は、安全性評価及び用量制限毒性の発生について、28日間(DLT期間)観察し、データを評価した後に、パート2のRDを選択する。
【0286】
パート1に適格である患者は、切除不能、局所進行性または転移性疾患を有する未選択GI癌(FGFR2bを過剰発現する腫瘍ありまたはなし)を有し、抗FGFR2-IIIbとmFOLFOX6化学療法の両方の投与候補である。FGFR2状態は、IHC及び血液ベース生検によってレトロスペクティブに決定する。
【0287】
パート2では、選択した患者を1:1に無作為化して、14日サイクルで2週間ごとに、抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6またはプラシーボ及びmFOLFOX6により治療する。パート2の患者は、正確に2サイクルのmFOLFOX6を完了しなければならない(それ以上でも以下でもない)。
【0288】
無作為化した患者におけるFGFR2bで選択された胃癌患者のPFS、ORR、及びOSを測定すると、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較して、mFOLFOX6と組み合わせて投与した場合における抗FGFR2-IIIbの臨床所の利点が強調され得る。
【0289】
試験適格性及び離脱基準
患者及び試験施設の計画数
パート1では、標準的な3+3用量漸増デザインで、抗FGFR2-IIIbの2用量コホートが予定され、各コホートに最低3人の患者を登録する。MTDまたはRDに一旦到達したら、3人の追加患者を追加し、その用量レベルにおける安全性及びPKを更に探ってもよい。したがって、パート1の合計登録数は、約9~12人の患者である。
【0290】
パート2では、最大約360人のFGFR2bで選択された胃癌患者を1:1に無作為化して、14日サイクルで2週間ごとに、パート1で得られたデータの評価後に選択されたRDで、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbまたはmFOLFOX6と組み合わせたプラシーボにより治療する。パート2の登録開始は、試験依頼者の判断で行われる。
【0291】
本試験に計画される総登録数は、最大約372人の患者である。
【0292】
試験は、最大250の世界の試験施設で行う。
【0293】
全コホートの組み入れ基準
試験のパート1またはパート2のいずれかに登録する患者は、以下の組み入れ基準を全て満たさなければならない:
1)切除不能、局所進行性または転移性の疾患
2)あらゆる試験関連評価の前に、施設内審査委員会(IRB)/独立倫理委員会(IEC)が承認した同意説明文書(ICF)を理解し、これに署名すること
3)平均余命が少なくとも3ヶ月
4)米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスが0~1
5)ICFに署名した時点で18歳以上
6)登録前の72時間以内の血清β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)妊娠検査が陰性(妊娠可能な女性のみ)
7)性的に活性な患者(妊娠可能な女性及び男性)においては、抗FGFR2-IIIbの最終投与から6ヶ月後まで、2つの効果的な避妊法を使用する意志があり、そのうちの1つは、物理的バリア法(コンドーム、ペッサリー、または子宮頸/膣円蓋キャップ)でなければならない。他の効果的な避妊形態には、次が含まれる。
・スクリーニングから少なくとも6ヶ月前の永続的な不妊手術(子宮摘出及び/または両側卵巣摘出、または手術による両側卵管結紮、または精管切除)
・試験前の少なくとも90日間、安定した経口避妊薬治療もしくは子宮内器具もしくはインプラント装置を使用しているか、または生活様式として性行為を自制している妊娠可能な女性
8)次の検査値によって確認された、十分な血液学的及び生物学的機能:
・骨髄機能
・絶対好中球数(ANC)≧1.5×10/L
・血小板>100×10/L
・ヘモグロビン≧9g/dL
・肝機能
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦3×正常値上限(ULN);肝転移がある場合、≦5×ULN
・ビリルビン≦1.5×ULN
・腎機能
・クレアチニンクリアランス計算値≧50mL/分
9)常用量の抗凝固薬を服用している患者は、安定用量のワルファリンを服用し、患者の状態の治療域内で範囲内の国際標準比(INR)でなければならず、または安定用量の低分子量ヘパリンを服用していなければならない
10)測定可能または測定不能な疾患
11)FGFR2状態を決定するための腫瘍組織
【0294】
試験のパート1(用量漸増安全性導入段階)に登録する患者は、以下の組み入れ基準も満たさなければならない:
mFOLFOX6が適切な治療とみなされる、組織学的または細胞学的に確認された消化管悪性腫瘍(例えば、胃癌、大腸癌、膵臓腺癌)
【0295】
転移性疾患に対する先の化学療法レジメンが2以下である(5-FU及び/またはオキサリプラチンによる先のアジュバント化学療法は含まない)。
【0296】
患者は、少なくとも2サイクルのmFOLFOX6化学療法の候補者でなければならない。
試験のパート2(用量拡大)に登録する患者は、以下の組み入れ基準も満たさなければならない:
1)組織学的に記録された胃または胃食道接合部腺癌
2)IHCによって決定されるFGFR2b過剰発現及び/または血液ベース生検によって決定されるFGFR2増幅
3)転移性または切除不能な疾患に対する先の化学療法がない(mFOLFOX6の組み入れ基準#20に記載されている場合を除く)
4)先の白金系化学療法がない(mFOLFOX6の組み入れ基準#20に記載されている場合を除く)
5)先のアジュバント療法またはネオアジュバント療法(化学療法及び/または化学放射線療法)を受けている場合は、アジュバント療法の終了と登録との間に6ヶ月を超える期間が経過していなければならない
6)患者は、mFOLFOX6化学療法の候補者であり、試験登録前に2サイクルのmFOLFOX6化学療法を受けている必要がある(ただし、2サイクルを超えない)
【0297】
全コホートの除外基準
パート1またはパート2のいずれかに登録する患者は、以下の基準のいずれかに該当する場合、除外される:
【0298】
未処置もしくは症候性の中枢神経系(CNS)転移。無症候性CNS転移を有する患者は、少なくとも4週間臨床的に安定しており、かつ、CNS疾患に関連する症状を管理するための手術、放射線または任意のコルチコステロイド療法などの介入を必要としない限り、適格である
【0299】
以下のいずれかを含む、心機能障害または臨床的に有意な心疾患:
・登録前6ヶ月以内の不安定狭心症
・登録前6ヶ月以内の急性心筋梗塞
・ニューヨーク心臓協会分類II~IVのうっ血性心不全
・制御されていない高血圧(最適な医療管理にもかかわらず、>160/90と定義される)
・β遮断薬またはジゴキシン以外の抗不整脈療法を必要とする心不整脈
・活動性冠動脈疾患
7)QTcF>450ミリ秒(男性)または>470ミリ秒(女性)
8)有害事象共通用語規準(CTCAE)グレード2以上の末梢性感覚ニューロパチー
9)登録前14日以内の全身治療を必要とする活動性感染症または任意の制御されていない感染症
10)既知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)もしくは後天性免疫不全症候群(AIDS)関連疾患、または慢性B型もしくはC型肝炎の病歴
11)間質性肺疾患(例えば、肺炎または肺線維症)の病歴
12)出血傾向または凝固障害のエビデンスまたは病歴
13)登録前28日以内の任意の試験薬または試験療法
14)登録28日以内の放射線治療。患者は、全ての放射線療法関連毒性から回復していなければならない。登録8週間以内に放射性医薬品(ストロンチウム、サマリウム)の使用がない
15)FGF-FGFR経路の任意の選択的阻害剤(例えば、AZD4547、BGJ398、JNJ-42756493、BAY1179470)による前治療
16)NCI CTCAEグレード1を超える、前治療からの継続中の有害作用(グレード2の脱毛症は除く)
17)本臨床試験の登録28日以内、または本臨床試験中における別の治療臨床試験への参加
18)角膜欠陥、角膜潰瘍、角膜炎、円錐角膜、角膜移植の病歴、または眼科医の見解で抗FGFR2-IIIb治療にリスクをもたらし得る他の既知の角膜異常
19)陽性のHER2状態(3+の陽性IHC検査または2+のIHC及び陽性FISHによって定義)。HER2状態は、胃癌のスコアリングガイドライン(HercepTest)に基づく。
20)登録前28日以内の大きな外科的処置は認められない。局所/硬膜外麻酔に必要な手術は、登録から少なくとも72時間前に完了していなければならない。全ての症例において、患者は、治療実施前に十分に回復し、安定していなければならない
21)妊娠中または授乳中の女性(患者が試験薬投与中に授乳を中断し、試験中止から6ヶ月後に再開する場合を除く);妊娠可能な女性は、試験中に妊娠を検討してはならない
22)臨床試験と相容れない任意の重篤または不安定な随伴性全身性障害の存在(例えば、薬物乱用、精神障害、または制御されていない併発病、例えば、活動性感染症、動脈血栓症、及び症候性肺塞栓症)
23)試験への参加に伴うリスクを高める可能性があるか、または試験結果の解釈に干渉する可能性があり、試験責任医師の見解で、患者の試験への参加が適切ではないとされる、任意の他の状態の存在(例えば、ジヒドロピリミジン欠損または胸水)
24)ポリソルベートを含む抗FGFR2-IIIb製剤、または白金含有薬剤、フルオロウラシルもしくはロイコボリンの成分に対する既知のアレルギーまたは過敏症
25)試験責任医師の見解上、試験治療薬の効果決定に影響を及ぼさない別の悪性腫瘍を除く、以前の悪性腫瘍の病歴
これらの組み入れ基準または除外基準の免除は認められない。
【0300】
患者の離脱及び入れ替え
以下のいずれかに該当する場合、患者は、プロトコルに規定された治療法を中止しなければならない:
・患者またはその法律上認められた代理人からの要請による同意の撤回
・試験責任医師が評価した患者の疾患の進行
・許容できない安全上のリスクを患者にもたらす任意の事象
・臨床状態の評価に重大な影響を及ぼす併発病
・試験中の任意の時点での陽性妊娠検査
・試験依頼者またはその認定代理人の特定の要請(例えば、患者の安全上の理由により試験が中止された場合)
【0301】
患者の特定及び登録
患者は、書面によるインフォームドコンセントを提出することができ、全ての組み入れ基準を満たし、いずれの除外基準も満たさないことを要する。試験責任医師及び試験依頼者または試験に登録した任意の患者の被指名人による組み入れ基準または除外基準の免除は認められない。患者の登録前に、全ての適格基準を満たさなければならない。試験のパート1に適格である患者は、最初に利用可能なコホートに登録される。患者は、試験のパート1またはパート2のいずれかに登録することができ、両方には登録されない。
【0302】
パート2では、患者は、最初に、血液ベース生検アッセイと組織検査の両方が必要なプレスクリーニングを受ける。FGFR2陽性と判定された患者は、直ちにスクリーニング期間に入ることができる(すなわち、陽性の血液検査結果を有する患者は、IHC結果を待つ必要はない(表3参照)。パート2の患者はまた、mFOLFOX6のサイクルを2回(ただし、2回を超えない)を完了していなければならない。
【表3】
a:両検査は、中央検査室で実施される。
b:2×10mLが必要
c:IHC:最低でも5スライドが必要。2+または3+のスコアを陽性とみなす。
【0303】
パート1及び2の両方において、試験責任医師は、登録前に、不適格性の所見がエラーと思われる場合、または急性所見が反復検査で適格基準を満たす可能性がある場合、適格性の臨床検査及びバイタルサイン/ECGを繰り返すことができる。血液学的検査及び血液化学検査の結果は、適格性を確認するために、投与後72時間以内に得なければならない。
【0304】
試験薬
識別情報
パート1では、抗FGFR2-IIIbは、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性、またはプロトコルに規定する試験離脱の他の原因まで、14日(±3日)ごとに約30分かけて試験施設で投与される、静脈内バッグに希釈するための滅菌バイアルで提供される。
【0305】
パート2では、プラシーボは、盲検化していない施設薬剤師によって提供される。参加者を[1:1]の比で無作為に割り付け、盲検化したIP(抗FGFR2-IIIb/プラシーボ)を投与する。試験責任医師は、試験の全期間を通して、各参加者が割り付けられた試験治療薬について、盲検化したままである。この盲検を維持するために、盲検化していない薬剤師が全試験治療薬の再構築及び分配に責任を負う。品質保証監査の場合、監査人(複数可)は、施設(複数可)にある盲検化していない試験治療記録にアクセスすることができ、無作為化/分配が正確に行われているかどうか検証する。
【0306】
オキサリプラチン、5-FU及びロイコボリンは、通常の施設実施基準に準じて、各施設に提供される。mFOLFOX6レジメンは、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性、またはプロトコルに規定する試験離脱の他の原因まで、14日(±3日)ごとに投与する。最新の地域医薬品添付文書及び完全な処方薬情報を参照する。
【0307】
投与
1.mFOLFOX6
オキサリプラチン、5-FU及びロイコボリンは、通常の施設実施基準に準じて、各施設に提供される。mFOLFOX6レジメンは、増悪、許容できない毒性、またはプロトコルに規定する試験離脱の他の原因まで、14日(±3日)ごとに投与する。
【0308】
mFOLFOX6の開始用量には、85mg/mのオキサリプラチン、350mgのフォリン酸カルシウム(フォリン酸)、400mg/m用量のフルオロウラシル、及び2400mg/m用量のフルオロウラシルが含まれる。オキサリプラチン及びフォリン酸カルシウムは、三方活栓/Yサイトコネクタを使用して、IV注入により同時投与する。用量の少ないフルオロウラシルをIVボーラスで投与し、用量のより多いフルオロウラシルをIV注入で46時間かけて投与する。mFOLFOX6は、14日ごとに投与することができる。
【0309】
最新の医薬品添付文書及び完全な処方薬情報を参照する。
【0310】
2.オープンラベル抗FGFR2-IIIb(パート1)及び盲検化したIP(パート2)
抗FGFR2-IIIbは、本プロトコルに記載の手順を使用して、本試験の患者にのみ投与する。抗FGFR2-IIIbの用量は、サイクル1の1日目の体重に基づき、患者の体重がサイクル1の1日目から10%を超えて変化する場合は調節する。
【0311】
薬剤師(または他の責任者)は、投与のための溶液を調製する。バイアルの数を計算した後、患者の体重に基づき、試験薬品を0.9%塩化ナトリウム溶液に希釈する。調製した抗FGFR2-IIIbは、調製後8時間以内に投与するものとする(周囲温度)。抗FGFR2-IIIbは、医師の管理下、インラインフィルタ付きの末梢静脈または中心静脈カテーテルを介したIV注入で約30分かけて投与する。パート2について、治療割り付けに関して盲検化されていない薬剤師がプラシーボを提供する。
【0312】
抗FGFR2-IIIbの注入は、早期に停止、軽減、中断、または中止しなければならない。患者が急性輸液反応を起こす場合、注入中だけでなく、注入後30分ごと最低2時間、及び急性輸液反応が解決するまで、患者のバイタルサイン(体温、血圧、脈拍、及び呼吸数)をモニタリングするものとする。
【0313】
患者は、試験参加期間中、抗FGFR2-IIIbの2回の投与が2週間の間隔をおいて行われる。パート1では、DLT期間の完了時に、増悪なく忍容性があれば、患者は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、14日サイクルで2週間ごとに投与されるmFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbの投与を継続することができる。
【0314】
開始用量及び用量変更
3.パート1:用量漸増安全性導入段階
パート1に登録した患者は、上記のように、14日サイクルで2週間ごとに、固定用量のバックボーン化学療法レジメンのmFOLFOX6と組み合わせた、漸増用量の抗FGFR2-IIIbにより治療を行う。
【0315】
用量変更基準
4.オープンラベル抗FGFR2-IIIb(パート1)及び盲検化したIP(パート2)
パート1及びパート2:抗FGFR2-IIIbの用量の減量は、パート1のDLT期間を過ぎて治療を受けている患者、またはパート2の任意の患者に対し、表4に概説するガイドラインに準じて、認めることができる。これらのガイドラインに該当しないと試験責任医師がみなす、用量の減量または中断は、試験依頼者または被指名人との検討及びその承認を必要とする。
【表4】
【0316】
患者は、イベントがベースラインまたはグレード1以下に回復した場合、表4に概説するガイドラインに準じて、試験薬を再開することができる。
【0317】
計画された投与来院には±3日の期間がある。患者は、抗FGFR2-IIIbの投与を7日以内に2回連続で受けてはならない。各サイクルの最初の投与を各サイクルの1日目とみなす。サイクルは、治療遅延がない限り、14日ごとに繰り返す。
【0318】
各患者の開始用量を超える患者内の用量漸増は、認められない。ある理由で患者の用量が減量され、その理由がもう関係なくなった場合、試験依頼者による検討及び承認後に、最初に割り当てられた用量への用量漸増が行われ得る。
【0319】
5.mFOLFOX6
パート1及びパート2:患者は、mFOLFOX6の毒性に関して詳細にモニタリングしなければならない。5-FU及びオキサリプラチンの用量調整は、治療中の患者に認められ得るが、DLT期間中にmFOLFOXのいずれかの成分の用量調整または遅延を必要とする患者は、その用量調整または遅延が抗FGFR2-IIIbに関係すると思われるAEに起因する場合を除き、評価可能とみなされない。この場合、AEは、DLTとみなされる(DLTの定義については下記参照)。パート1のDLT期間を過ぎた患者またはパート2の任意の患者についてのmFOLFOXのいずれかの成分の用量調整は、プロトコルに概説されるガイドラインに準じて、認められる。
【0320】
増悪前にオキサリプラチン投与が何らかの理由で中止された場合、5-FU/ロイコボリン療法は、増悪、許容できない毒性、または試験離脱の他の原因まで、2週間ごとのスケジュールで継続することができる。
【0321】
mFOLFOX6の毒性に対する用量調整について、表5に示す。
【表5】
次のプロトコルから改変:Loupakis F,Cremolini C,Masi G,et al.Initial therapy with FOLFOXIRI and bevacizumab for metastatic colorectal cancer.N Engl J Med 2014;371:1609-18.DOI:10.1056/NEJMoa1403108。
【0322】
用量制限毒性
DLTは、治療の最初の28日間に起きた以下のイベントのいずれかとして定義され、抗FGFR2-IIIbに関して、試験責任医師が評価する。適宜、イベントは、NCI CTCAE(第4.03版)に従って分類する。
・5日間を超えるANC<0.5×10/Lまたは発熱性好中球減少症(すなわち、ANC<1.0×10/L及び38.3℃超の1回の体温、または1時間を超える38℃以上の発熱)。施設内の標準手順に準じてG-CSFの使用が認められる。
・血小板<25×10/Lまたは血小板<50×10/Lであり、医療介入が必要な出血
・長期の(7日を超える)グレード3の血小板減少症
・グレード4の貧血(すなわち、生命を脅かす影響;緊急介入が必要なもの)
・7日以内に解決しないグレード2以上の眼に関する何らかのAE
・AST/ALT>3×ULN、及び同時に発生する総ビリルビン>2×ULNであり、がんによる肝機能とは無関係のもの
・グレード3以上の何らかの非血液学的AE(全身治療で十分に制御できる場合、悪心、嘔吐、及び下痢を除く)。グレード3または4の臨床検査値で、試験責任医師及び試験依頼者の同意により臨床的に重要ではないとされるものは、DLTとみなされない。
・mFOLFOX6のいずれかの成分の少なくとも4日の減量または遅延をもたらす、抗FGFR2-IIIbに関係するいずれかの有害事象
【0323】
推奨用量(RD)及び最大耐量(MTD)
最低用量レベルでの毒性
抗FGFR2-IIIbの最初の用量レベル(10mg/kg Q2W)で予想外にもMTDを上回る場合、続行方法に関する決定は、安全性、忍容性、及びPKデータに基づいてなされ、試験責任医師と試験依頼者の間で合意を得る。
【0324】
用量レベル-1(抗FGFR2-IIIb 6mg/kg Q2W;3~6人の対象)は、用量レベル1で2以上のDLTが観察された場合にのみ登録する。
【0325】
コホート内の用量漸増
パート1では、患者内の用量漸増は認められない。
【0326】
パート2では、患者は、パート1で決定されたRDで治療され、用量漸増は認められない。
【0327】
試験薬注入中の投与中断
抗FGFR2-IIIbの注入は、注入中にグレード3以上の何らかのAEが発生した場合、停止しなければならない。注入中に、気管支痙攣または呼吸困難が患者に発生した場合、注入は、停止するものとする。急性輸液反応の症状には、発熱、冷え、悪寒、蕁麻疹、頭痛を伴う低血圧及び高血圧、喘鳴、呼吸困難、低酸素症、ならびに肺浸潤が含まれ得る。
【0328】
加えて、重症度の低いAE(グレード1または2)が注入中に発生した場合は、試験責任医師の判断で、注入速度を減速してもよいし、注入を停止してもよい。グレード3以下の重度のAEが4時間以内に解消しない場合、以前の半分の速度で注入を開始することができる。注入を再開した任意の時点で同じAEが同じ重症度で再度現れた場合、その注入を中止するものとし、試験依頼者または試験依頼者の被指名人との協議なく、試験薬の更なる投与は行わない。
【0329】
注入を完了する前に患者が急性輸液反応を起こした場合、注入を停止しなければならず、そのイベントが完全に解決するまで、兆候及び症状、ならびに現地の臨床プロトコルに従って、迅速に患者を管理及びモニタリングする必要がある。注入関連事象がグレード1または2のいずれかであり、注入日に完全に解決した患者については、試験責任医師の判断で、前投薬をしながら、より遅い速度で注入を再開することができる。当該患者への後続の注入は全て、前投薬をしながら、注入速度を下げて投与するものとする。前投薬は、適応される場合、コルチコステロイド、ジフェンヒドラミン、アセトアミノフェン及び/または気管支拡張薬などの薬物療法が含まれ得る。グレード3以上の注入関連有害事象を経験した患者、ならびに前投薬及び減速注入にもかかわらず、注入再開後に注入関連反応が再開した患者については、抗FGFR2-IIIbを永続的に中止する。
【0330】
患者が急性輸液反応を起こす場合、注入中だけでなく、注入後30分ごと最低2時間、及び急性輸液反応が解決するまで、患者のバイタルサイン(体温、血圧、脈拍、及び呼吸数)をモニタリングするものとする。
【0331】
mFOLFOX6の毒性に起因する投与の中断及び遅延を表5に記載する(ロイコボリン、5-FU及びオキサリプラチンの製品ラベル参照)。
【0332】
評価のパラメーター及び方法
安全性パラメーター
安全性の尺度には、AE、血液学的検査、臨床化学検査、尿検査、バイタルサイン、体重、併用薬/処置、ECOGパフォーマンスステータス、対象の身体検査、ECG及び眼科検査が含まれる。
【0333】
1.1 患者選択のための腫瘍分析
1.1.1 パート1
パート1に適格である患者は、切除不能、局所進行性または転移性疾患を有する未選択GI癌(FGFR2bを過剰発現する腫瘍ありまたはなし)を有し、抗FGFR2-IIIbとmFOLFOX6化学療法の両方の投与候補である。FGFR2状態は、IHC及び血液ベース生検によってレトロスペクティブに決定する。
【0334】
1.1.2 パート2
本試験のパート2の患者は、腫瘍組織分析及び血液試料分析に同意しなければならない。患者は、検証済みIHCまたは血液ベース生検アッセイによってそれぞれ決定されたFGFR2b過剰発現及び/またはFGFR2増幅に基づいて、登録対象に選択される。IHCを使用したFGFR2b過剰発現または血液ベース生検アッセイを使用した増幅のいずれも示さない患者は、登録対象にならないが、適格性要件を満たすには、アッセイの一方または両方に基づく陽性で十分である(例えば、血液ベース生検アッセイは陽性であるが、IHCは陰性)。登録のためのFGFR2b過剰発現分析に適切な腫瘍標本を得ることは、各試験責任医師の責任である。腫瘍スライドまたは腫瘍ブロック標本の処理、ラベリング及び出荷の手順は、標本採取キットとともに配布されるラボマニュアルに詳述されている。
【0335】
第三者の臨床検査室は、検証済みIHC及び血液ベースアッセイをそれぞれ使用してFGFR2b発現及びFGFR2増幅分析を実施する。
【0336】
パート2について、腫瘍及び血液標本を受領したら、可能な限り効率的に分析を実施し、試験責任医師または被指名人に結果を知らせる。
【0337】
1.2 薬力学解析のための新鮮な腫瘍生検
1.2.1 パート2のみ
腫瘍微小環境における抗FGFR2-IIIbの薬力学作用を評価するために、腫瘍生検試料も採取する。これらの生検試料は、治療前及び治療中に取得し、免疫浸潤及び選択した腫瘍マーカーの発現について調べる。耐性の機序を理解するために、治療中または治療後に応答及び/または悪化した腫瘍の任意選択の生検も取得する。腫瘍生検試料は、限定するものではないが、IHC、qRT-PCR、遺伝子突然変異検出、及び蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を含む、様々な方法を使用して、免疫または疾患関連遺伝子及び/またはタンパク質の発現、ならびに免疫細胞集団の存在について評価することができる。これらの試料はまた、RNAシーケンシングを行い、遺伝子発現経路における抗FGFR2-IIIbの作用、及び応答または応答耐性に関連して特定された遺伝子発現シグネチャーを決定することができる。これらの分析は、将来の治療効果の予測に役立ち得る。腫瘍バイオマーカー発現の他の方法も評価される。
【0338】
新鮮な生検は、実施可能な限り、原発腫瘍または転移性腫瘍部位のものが必須であり、スクリーニング時(投与前少なくとも24時間)及びサイクル3の1日目の7日前以内の治療中(及び投与前少なくとも24時間)に、パート2に無作為化された最大30人の患者に対して行われる。登録前の12週間以内に生検が採取された患者の場合、この試料は、PD分析に十分な試料が使用できるであれば(単一パラフィン包埋ブロックまたは約10スライド)、新鮮な治療前生検の要件を満たし得る。
【0339】
パート2の患者は、腫瘍縮小効果が記録された場合、腫瘍評価後28(±7)日以内に、任意選択の治療中生検も受け得る。パート2の患者はまた、腫瘍増悪が記録された場合、EOT来院時に、任意選択の治療後生検を受け得る。各場合において、生検を行う前に、試験依頼者との協議を行わなければならない。両生検は、任意選択である。
【0340】
各時間点での新鮮な腫瘍試料採取の実施可能性は、試験責任医師によって評価され、患者の安全性に対する考慮を含めるものとする。生検が実施可能でないと試験責任医師が評価した場合、当該決定は、原資料に記録しなければならない。
【0341】
生検病変は、炎症、出血または寸法変化を起こす可能性があり、不正確な腫瘍測定につながることがある。したがって、RECIST v1.1の基準によって応答を評価する際には、生検病変を標的病変に使用しないことが強く推奨される。これらの生検試料は、摘出、切開またはコア針生検とする。穿刺吸引生検または他の細胞学標本は、下流のバイオマーカー分析には十分でない。パラフィン包埋ブロックまたは非染色スライドの形態の腫瘍組織標本は、IHC中央評価に提出する。
【0342】
1.3 腫瘍評価
腫瘍評価は、臨床検査及び適切なイメージング技術(好ましくは、RECIST v1.1に準じた適切なスライス厚でのCTスキャン)から構成されるものとし、必要に応じて、他の評価(MRI、放射線写真、PET、及び超音波)を実施してもよい。ベースライン時の病変を検出するために使用したのと同じ方法を使用して、臨床試験を通して同じ病変を追跡する。スクリーニングの腫瘍スキャンは、サイクル1の1日目の治療開始から2週間以内に行わなければならない。
【0343】
腫瘍縮小効果の評価は、試験責任医師と、RECIST 1.1ガイドラインに準じた盲検化した放射線学的中央審査との両方によって行う。
【0344】
腫瘍スキャンは、スクリーニング時(パート1及びパート2のサイクル1の1日目から2週間以内)及びサイクル4の1日目、サイクル7の1日目、サイクル10の1日目、サイクル13の1日目の開始前7日以内、それ以後、約12週間ごとに実施する。最初のCRまたはPRが認められた場合、4~6週間後に確定のためのスキャンを実施しなければならない。
【0345】
増悪または同意の撤回以外の理由による試験治療の中止後は、患者が追加の抗がん療法を開始するまで、腫瘍評価を継続する。
【0346】
1.3.1 血液ベース生検(ctDNA)
パート1では、試験薬の1回目の投与(サイクル1の1日目)前に、血液ベース生検(ctDNA)アッセイのための試料を採取し、FGFR2増幅についてレトロスペクティブに分析する。
【0347】
パート2では、プレスクリーニングの血液ベース生検(ctDNA)アッセイを行う。この試料は、FGFR2増幅についてプロスペクティブに分析する。加えて、1回目の投与から6週間ごとに24週間、それ以後、約12週間ごとに血液ベース生検(ctDNA)アッセイを長期にわたって採取し、FGFR2増幅についてレトロスペクティブに分析する。パート2の全ての患者については、EOT来院時にも試料を採取する。
【0348】
1.4 毛嚢を使用した薬力学バイオマーカー分析
パート1のみで、眉毛または頭皮からの毛嚢(約10、入手可能である場合)を、試料採取が可能な全ての患者から採取する。毛嚢は、FGFR2b受容体を発現することが知られており、FGFR2bのレベル及び下流のシグナル伝達の変化を使用することにより、FGFR2b受容体を効果的に遮断するために必要な抗FGFR2-IIIbの用量と下流のシグナル伝達とを相関付けることができ、試験のパート2のRDを選択する指針を得ることができる。
【0349】
1.5 血液を使用した薬力学バイオマーカー分析
FGFR経路(例えば:FGF7、FGF10)の探索的バイオマーカー分析のための血清試料は、付録3で指定する時点での投与前に、全ての患者から採取する。
【0350】
1.6 ctDNAのための血液試料
1.7 腫瘍生検を使用した薬力学バイオマーカー分析
免疫細胞浸潤レベル及び他の探索的バイオマーカーは、全ての患者から得た治療前及び治療中の腫瘍生検試料で分析する。
【0351】
1.8 FCGR多型
FCGR2A及びFCGR3AなどのFcガンマ受容体に頻繁に生じる多型についても血液試料を採取する。これらの遺伝子は、予測される抗FGFR2-IIIbの作用機序であるADCC経路の不可欠な部分である白血球上のFcガンマ受容体を発現する。抗FGFR2-IIIbに対する患者応答との相関を得るために、試験の完了時にレトロスペクティブ分析のためのデータを収集する。これらのバイオマーカー検査は、探索的とみなされる。
【0352】
1.9 生活の質スケール
EQ-5D-5L生活の質(QoL)に関する質問票及びEORTC QLQ-C30を投与前の複数の機会で実施する(時点については、付録1参照)。
【0353】
EQ-5D-5L質問票は、EuroQolグループによって開発され、臨床的及び経済的評価に関する効用値を提供する、標準化された尺度である。記述システム及び視覚的アナログスケール(VAS)を使用する。記述システムには、移動の程度、身の回りの管理、ふだんの活動、痛み/不快感、及び不安/ふさぎ込みの5つの項目があり、各項目には、問題はない、少し問題がある、中程度の問題がある、かなり問題がある、及び極度の問題があるの5つのレベルがある。
【0354】
回答者は、5項目のそれぞれにおいて、最も適切な状態に対する四角にチェックマークをつけることで、自身の健康状態を示すように求められる。5項目に対する数字を合わせて、回答者の健康状態を記述する5桁の数字にすることができる。EQ-5D-5L記述システムによって定義された健康状態を1つの指標値に変換し、効用値を算出する。VASは、回答者が20cmの垂直VASで自己評価した健康状態を表現するものであり、エンドポイントは、「想像できる最も良い健康状態」及び「想像できる最も悪い健康状態」と記載されている。
【0355】
欧州がん治療研究機関(EORTC)の生活の質に関する質問票(QLQ)は、国際的な臨床試験に参加しているがん患者の健康に関連する生活の質を評価するための統合システムである。EORTCは、QoL評価にモジュール式アプローチを使用しており、基本質問票(EORTC QLQ-C30)と、必要に応じて一緒に実施される、腫瘍部位、治療法またはQoLの項目に限定されたモジュール(例えば、胃癌専用モジュールはQLQ-STO22である)とから構成される。
【0356】
患者は、5つの機能スケール(身体、役割、感情、社会、及び認知)、3つの症状スケール(疲労、悪心及び嘔吐、ならびに疼痛)、及び全体的な健康状態/QOLスケール、及び6つの単一項目(呼吸困難、不眠、食欲不振、便秘、下痢、及び経済的困難)に対する回答を提供する。
【0357】
1.10 ECOGパフォーマンスステータス
ECOGパフォーマンスステータスは、付録1に概説する時点で全ての患者において評価する。ECOGパフォーマンスステータスは、患者の疾患の進行状況を評価し、患者の日常生活能力への疾患の影響を評価し、適切な治療及び予後を決定するために使用される尺度である。ECOGスケールを付録4に示す。
【0358】
1.11 薬物動態パラメーター
血清中抗FGFR2-IIIb濃度を決定するための血液試料は、薬物動態学、免疫原性及び薬力学の血液試料採取の試験フローチャート(付録3)に概説するように、各患者から取得する。
【0359】
2. 試験の実施
2.1 患者評価の概要
詳細な患者評価のスケジュールを付録1に示す。安全性に関する臨床検査評価の一覧を付録2に示す。試料採取ならびにPK、PD及び免疫原性データ処理の手順を付録3のフローチャートに記載する。
【0360】
2.2 来院による試験評価及び手順
2.2.1 プレスクリーニング期間(パート2のみ-試験前)
あらゆる試験関連手順の前に、署名がなされた書面によるインフォームドコンセント(プレスクリーニングICF)を回収しなければならない。
・FGFR2b発現のプロスペクティブIHC分析及びFGFR2増幅を示す血液ベースアッセイ(上記参照)。
【0361】
2.2.2 スクリーニング期間(-14日目~0日目)
あらゆる試験関連手順の前に、署名がなされた書面によるインフォームドコンセントを回収しなければならない。試験への参加に完全に同意した患者は、抗FGFR2-IIIbの最初の注入投与前の14日(2週間)以内にスクリーニング評価を受ける。以下の手順を実施する。
・適格基準の審査/確認
・病歴及び疾患歴(薬歴を含む)
・アーカイブまたは新たに入手した材料からの腫瘍組織の採取(パート1及びパート2への登録に必要)
・人口統計及びベースライン特性
・完全な身体検査(体重及び身長を含む)
・ECOGパフォーマンスステータス評価
・バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、及び体温[℃])
・記録前に5分休息した後の12誘導ECG
・包括的眼科検査
・安全性に関する血液検査(付録2参照)
・妊娠可能な女性については、72時間前以内の血清妊娠検査(ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン[β-HCG])
・尿検査(タンパク質、グルコース、血液、pH及びケトンに関するディップスティックを含む)
・治療開始前14日以内に実施される腫瘍評価。臨床検査及び適切なイメージング技術を含み、必要に応じて他の評価(MRI、放射線写真、PET、及び超音波)を実施
・無作為化(パート2の患者のみ)
・パート2に無作為化される最大30人の患者に関して:投与前少なくとも24時間の原発性または転移性腫瘍部位の新鮮な組織生検。登録前の12週間以内に生検が採取された患者の場合、この試料は、PD分析に十分な試料が使用できるであれば(単一パラフィン包埋ブロックまたは約10スライド)、新鮮な治療前生検の要件を満たし得る。
・付録3に概説する、血液ベース生検(ctDNA)の試料採取
・FOLFOX投与(パート1については、患者は、試験登録前にmFOLFOX6化学療法を開始していてもよく、適格であるには、少なくとも2サイクルのmFOLFOX6化学療法の候補者でなければならない。パート2については、患者は、無作為化前に2サイクルのmFOLFOX6化学療法を完了している必要がある)。
・AE報告(該当する場合)
【0362】
2.2.3 治療期間
2.2.3.1 サイクル1、1日目
以下の手順を実施する。
・適格基準の審査/確認
・スクリーニングからのあらゆる変化を捕捉するための病歴、疾患歴及び薬歴の更新
・限定的な身体検査(体重及び口内検査を含む)
・患者報告アウトカム(EQ-5D-5L及びEORTC QLQ-C30)
・投与前、及び抗FGFR2-IIIbの注入開始から0.5、1、2及び4時間後におけるバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、及び体温[℃])
・安全性に関する血液検査。適格性を確認するために、試験薬投与前72時間以内に結果を得ること(付録2参照)。
・妊娠可能な女性については、投与72時間前以内の血清妊娠検査(β-HCG)
・尿検査(タンパク質、グルコース、血液、pH及びケトンに関するディップスティックを含む)
・付録3に概説する、PK、免疫原性試験、FCGR、ctDNA及び探索的バイオマーカー分析のための血液試料採取。
・血液ベース生検(ctDNA)の試料採取:パート1では、サイクル1の1日目の投与前に、レトロスペクティブ分析のための血液ベース生検(ctDNA)試料を採取する。この時点の試料は、パート2の患者からは必要ない。
・パート1においてのみ、サイクル1の1日目の投与前に、試料採取が可能な全ての患者から頭皮または眉気の毛嚢試料(約10、入手可能である場合)を採取する。
・AE報告
・併用薬の検討
【0363】
試験薬の投与:
・抗FGFR2-IIIbは、IV注入により30分にわたって投与
・mFOLFOX6化学療法は、30分の休息後に投与
【0364】
2.2.3.2 サイクル1、2日目
以下の手順を実施する。
・投与前、及び抗FGFR2-IIIbの注入開始から0.5、1及び2時間後に測定されるバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、及び体温[℃])
・付録3に概説する、PK及び探索的バイオマーカー分析のための血液試料を採取する。
・mFOLFOX6投与を継続する
・AE報告
・併用薬の検討
【0365】
2.2.3.3 サイクル1、3日目
以下の手順を実施する。
・投与前、及び抗FGFR2-IIIbの注入開始から0.5、1及び2時間後に測定されるバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、及び体温[℃])
・付録3に概説する、PK解析のための血液試料採取
・mFOLFOX6投与を継続する
・AE報告
・併用薬の検討
【0366】
2.2.3.4 サイクル1、8日目
以下の手順を実施する。
・限定的な身体検査(体重及び口内検査を含む)
・投与前、及び抗FGFR2-IIIbの注入開始から0.5、1及び2時間後に測定されるバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、及び体温[℃])
・安全性に関する血液検査。試験薬の投与前72時間以内に結果を得ること(付録2参照)。
・付録3に概説する、PK解析のための血液試料採取
・AE報告
・併用薬の検討
【0367】
2.2.3.5 サイクル2 1日目
以下の手順を実施する。
・限定的な身体検査(体重及び口内検査を含む)
・投与前、及び抗FGFR2-IIIbの注入開始から0.5、1及び2時間後に測定されるバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、及び体温[℃])
・安全性に関する血液検査。試験薬の投与前72時間以内に結果を得ること(付録2参照)。
・付録3に概説する、PK、免疫原性試験及び探索的バイオマーカー分析のための血液試料
・AE報告
・併用薬の検討
【0368】
試験薬の投与:
・抗FGFR2-IIIbは、IV注入により30分にわたって投与
・mFOLFOX6化学療法は、30分の休息後に投与
【0369】
2.2.3.6 サイクル3の1日目及び後続の奇数サイクルの1日目
DLT期間の完了時に、患者は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、14日サイクルで2週間ごとに投与されるmFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbの投与を継続することができる。抗FGFR2-IIIbの投与回数に上限はない。DLT期間以降のmFOLFOX6レジメンの継続投与は、地域の標準治療に従う。
【0370】
以下の手順を実施する。
・限定的な身体検査(体重及び口内検査を含む)
・ECOGパフォーマンスステータス評価
・患者報告アウトカム(EQ-5D-5L及びEORTC QLQ-C30)
・投与前、及び抗FGFR2-IIIbの注入開始から0.5、1、及び2時間後に実施されるバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、及び体温[℃])
・包括的眼科検査
・パート1の患者、ならびに抗FGFR2-IIIb及びFOLFOX6の投与に無作為化したパート2の患者に対するOCTなしの細隙灯検査;サイクル2の1日目以降6週間ごと(サイクル3の15日目、サイクル5の1日目、及びサイクル6の15日目の前)、それ以後、サイクル6の15日目以降12週間ごと。患者が何らかの持続性角膜所見を有する場合、6~8週間ごとに継続する。
・安全性に関する血液検査。試験薬の投与前72時間以内に結果を得ること(付録2参照)。
・妊娠可能な女性については、投与72時間前以内の尿妊娠検査
・尿検査(タンパク質、グルコース、血液、pH及びケトンに関するディップスティックを含む)
・サイクル3の1日目の7日以内に実施される腫瘍評価。臨床検査及び適切なイメージング技術を含み、必要に応じて他の評価(MRI、放射線写真、PET、及び超音波)を実施
・新鮮な生検は、実施可能な限り、原発腫瘍または転移性腫瘍部位のものが必須であり、サイクル3の1日目の7日前以内(及び投与前少なくとも24時間)に、パート2に無作為化された最大30人の患者に対してのみ行われる。
・付録3に概説する、PK、免疫原性試験、血液ベース生検(ctDNA)及び探索的バイオマーカー分析のための血液試料採取。
・パート2についてのみ、血液ベース生検(ctDNA)試料を治療前に採取する。
・頭皮または眉毛の毛嚢試料(約10、入手可能である場合)
・AE報告
・併用薬の検討
【0371】
試験薬の投与:
・抗FGFR2-IIIbは、各サイクルの1日目にIV注入により30分にわたって投与
・mFOLFOX6化学療法は、各サイクルの1日目における抗FGFR2-IIIb投与後、30分の休息後に投与。
【0372】
2.2.3.7 サイクル4の1日目及び後続の偶数サイクルの1日目
以下の手順を実施する。
・限定的な身体検査(体重及び口内検査を含む)
・患者報告アウトカム(EQ-5D-5L及びEORTC QLQ-C30)
・投与前、及び抗FGFR2-IIIbの注入開始から0.5、1及び2時間後に測定されるバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、及び体温[℃])
・パート1の患者、ならびに抗FGFR2-IIIb及びFOLFOX6の投与に無作為化したパート2の患者に対するOCTなしの細隙灯検査;サイクル2の1日目以降6週間ごと(サイクル3の15日目、サイクル5の1日目、及びサイクル6の15日目の前)、それ以後、サイクル6の15日目以降12週間ごと。患者が何らかの持続性角膜所見を有する場合、6~8週間ごとに継続する。
・安全性に関する血液検査。試験薬の投与前72時間以内に結果を得ること(付録2参照)。
・サイクル4の1日目の開始前7日以内に実施される腫瘍評価。臨床検査及び適切なイメージング技術を含み、必要に応じて他の評価(MRI、放射線写真、PET、及び超音波)を実施
・パート2についてのみ、血液ベース生検(ctDNA)試料を治療前に採取する。
・パート1について、抗FGFR2-IIIbの投与前4時間以内、及び後続サイクルの抗FGFR2-IIIb注入終了後15分(±10分)におけるPKのための血液試料。パート2について、抗FGFR2-IIIbの投与前4時間以内、及び抗FGFR2-IIIb注入AE報告終了後15分(±10分)に採取されるPK試料(抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6群に無作為化された患者のみ)
・AE報告
・併用薬の検討
【0373】
試験薬の投与:
・抗FGFR2-IIIbは、各サイクルの1日目にIV注入により30分にわたって投与
・mFOLFOX6化学療法は、各サイクルの1日目における抗FGFR2-IIIb投与後、30分の休息後に投与
【0374】
2.2.4 治療終了来院または早期中止
患者は、最後の試験治療薬投与から約28(±3)日後、または患者が試験を途中で中止する場合、試験施設に戻る。以下の評価を試験終了来院時に実施する。
・限定的な身体検査(口内検査を含む)
・ECOGパフォーマンスステータス評価
・バイタルサイン(5分の休息後の座位脈拍、血圧、呼吸、及び体温[℃])
・5分休息した後の12誘導ECG
・包括的眼科検査
・安全性に関する血液検査(付録2参照)
・妊娠可能な女性については、尿妊娠検査
・尿検査(タンパク質、グルコース、血液、pH及びケトンに関するディップスティックを含む)
・腫瘍スキャン。最終スキャンがEOT来院前の6週間未満に実施されている場合、または腫瘍増悪が事前に決定されている場合は、省略することができる。
・免疫原性試験のための血液試料
・パート2についてのみ、血液ベース生検(ctDNA)試料を採取する
・頭皮または眉毛の毛嚢試料(約10、入手可能である場合)
・パート1の全ての患者及びパート2で抗FGFR2-IIIb投与を受けた全ての患者のPKのための血液試料
・バイオマーカー評価のための血液試料
・AE報告
・併用薬の検討
【0375】
備考:増悪または同意の撤回以外の理由による試験治療の中止後は、患者が追加の抗がん療法を開始するまで、腫瘍評価を継続する。
2.2.5 長期追跡調査
・パート1及びパート2の両患者は、EOT来院後約3ヶ月±28日ごとに、最後の患者が試験に登録されてから最大24ヶ月後まで、または死亡、追跡不能、同意の撤回もしくは試験依頼者による試験中止(いずれか先に生じたもの)まで、施設来院または電話により、生存に関する長期追跡調査を受ける。
・追跡調査期間中、患者が抗がん療法を受ける場合、これを記録するものとする。
・追跡調査期間の最初の6ヶ月間に生じたあらゆる妊娠を試験依頼者に報告するものとする。
・患者は、死亡、追跡不能、同意の撤回、または試験依頼者による試験中止まで、追跡するものとする。
・EOT来院後に発生した重篤なAEは、試験責任医師が試験薬との因果関係があるとみなす場合、試験責任医師が試験依頼者に報告するものとする。
【0376】
3.統計方法
データベースロック前に、以下に概説する解析の詳細な方法について記載する、別個の統計解析計画書(SAP)を確定する。計画された解析からの逸脱は、いかなるものも最終総括試験報告書に記載し、十分な根拠を示す。
【0377】
3.1 試験患者
3.1.1 患者の内訳
試験の各期間(例えば、スクリーニング、サイクル1、及び投与される場合は後続サイクル)に参加した患者及び完了した患者の数及びパーセンテージを示す。離脱の理由についても要約する。
【0378】
3.1.2 プロトコルの逸脱
主要なプロトコルの逸脱を有する患者の数及びパーセンテージの要約を逸脱の種類ごとに提供する。逸脱は、データベースロック前にSAPにおいて定義する。
【0379】
3.1.3 分析集団
試験には、以下の分析集団を定義する。
・安全性集団-任意の部分の少なくとも1回の抗FGFR2-IIIb投与を受けた、全ての患者。
・DLT評価可能集団-試験のパート1に登録し、少なくとも2回の抗FGFR2-IIIb投与を受け、治療のサイクル1を完了したか、またはサイクル1でDLTを経験した、全ての患者。
・PK評価可能集団-少なくとも1回の抗FGFR2-IIIb投与を受け、PKプロファイルの決定に適切なPK評価が得られた、全ての患者。妥当性は、個々に決定され、血液試料の分析前に評価する。
・治療企図(ITT)集団-登録した全ての患者
・有効性評価可能集団-適格基準を満たし、少なくとも1回の抗FGFR2-IIIb投与を受け、少なくとも1回のベースライン後疾患評価を有する、全ての患者
【0380】
3.2 一般的な考慮事項
本試験に計画される総登録数は、最大約372人の患者である。標準的な3+3デザインに準じて、あらゆるDLTについて評価可能な最大約12人の患者をパート1に登録する。
【0381】
パート2については、FGFR2bで選択された胃癌を有する最大約360人の患者を登録し、1:1に無作為化してmFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbまたはmFOLFOX6と組み合わせたプラシーボを投与することによって、有効性及び忍容性を試験する。適格性のある患者は、地理上の地域(米国及び欧州対アジア対他の地域)、前治療の状況(de novo対アジュバント/ネオアジュバント)、及び測定可能な疾患状態(測定可能対測定不能)に従って層化する。
【0382】
検出力及び標本サイズ
本試験は、PFSの主解析に十分な検出力を提供するように設計する。
【0383】
プラシーボ及びmFOLFOX6の6ヶ月投与を受けた患者のmPFSに基づくと、24ヶ月の受入期間及び6ヶ月の追跡期間後、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較した抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6の組み合わせのmPFSについて、検出力90%を有する0.5のハザード比(HR)(両側、α=0.05)を示すには、約156人の患者(1:1の無作為化)及び目標96例のPFSイベントが必要である。
【0384】
PFSの指数分布を仮定すると、これは、6ヶ月から12ヶ月のPFS中央値の増加に該当する。現在の設計では、PFSの統計的有意性をもたらす最小観察効果は、6ヶ月から9ヶ月の50%改善(HR=0.67)である。
【0385】
本試験はまた、OSの主解析にも検出力があるようにする。
【0386】
プラシーボ及びmFOLFOX6の10ヶ月投与を受けた患者のmOSに基づくと、最後の患者の登録から36ヶ月の受入期間及び10ヶ月の追跡期間後、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較した抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6の組み合わせのmOSについて、全体の第一種過誤水準0.05で検出力80%を有する0.7のHRを示すには、試験の登録を最大約360人の患者まで継続し、249例の死亡イベントを目標にする。OSの中間解析及び最終解析では、群逐次法を使用して、O’Brien-Flemingの境界に基づく第一種過誤の確率と、Gammaファミリーに基づく第二種過誤の確率(パラメーター-4)とを確定する。
【0387】
OSの指数分布を仮定すると、これは、10ヶ月から14.3ヶ月のOS中央値の43%の増加に該当する。現在の設計では、最終解析においてOSの統計的有意性をもたらす最小観察効果は、10ヶ月から12.8ヶ月の28%改善(HR=0.78)である。
【0388】
検出力及び標本サイズの推定値は、EAST(登録商標)(V6.4)を使用して推定した。
【0389】
3.3 人口統計、ベースライン特性、及び併用薬
人口統計データ、病歴、併発疾患及び併用薬は、コホート別と、全体について要約する。試験の実施基準を満たすかどうかを判断するために、対応する表及び一覧を提供する。これらには、適格基準を満たさなかった患者の説明、プロトコル違反の評価、試験薬の説明責任、及び試験の全般的実施に影響し得る他のデータが含まれる。
【0390】
安全性集団のベースライン特性を要約する。治療を開始する前に死亡もしくは離脱した患者、または必要な安全性の観察を完了しない患者は、個別にそれを記載し、評価する。
【0391】
3.4 治療コンプライアンス
治療薬投与については、用量投与、用量変更または遅延、累積用量、平均用量、注入回数、及び治療期間を含め、コホート別に要約する。
【0392】
3.5 有効性解析
パート1では、分析は全て記述的であり、適宜、用量群及び全体で示される。記述統計には、連続変数の観察数、平均、標準偏差、中央値、範囲及び四分位範囲、ならびにカテゴリー変数の数及びパーセントが含まれ、95%信頼区間が適宜示される。
【0393】
3.5.1 一次有効性解析
パート2では、主要な有効性解析は、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbまたはプラシーボ及びmFOLFOX6により治療した患者のPFSの比較である。
【0394】
主要エンドポイントのPFSは、無作為化から、試験責任医師の評価に基づいて放射線学的に増悪とされた日(RECIST v.1.1に準ずる)またはあらゆる原因による死亡日のいずれか早いほうまでの期間として定義される。副次的有効性エンドポイントは、OS及びORRを含む。
【0395】
PFSには中間解析及び主解析があり、いずれもイベントに基づく解析である。登録患者で48例のイベント(PFS主解析における目標96例のPFSイベントの50%)が観察された後の中間分析で、PFSの無益性試験のみが実施され、プラシーボ及びmFOLFOX6と比較した抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6の組み合わせのHRが0.806を超えることを回避する。中間解析は、最初の患者が登録されてから約20ヶ月後に実施されることが推定される。
【0396】
PFSの主解析は、少なくとも96例のPFSイベントが最初の156人の登録患者で観察されたときに行われ、治療企図(ITT)集団を使用して実施する。
【0397】
主解析には、RECISTv.1.1に準じて試験責任医師が決定した放射線学的増悪イベント及び死亡が含まれる。
【0398】
PFSの主解析は、層別ログランク両側検定(有意水準0.05)を使用して行う。層化因子は、音声自動応答/Web登録システム(IXRS)に文書化されている無作為化スケジュールの層化に使用されるものと同じである。
【0399】
層別ログランク検定のp値が統計的に有意であり(<0.05両側)、HRが1未満であれば、PFSに差はないとする帰無仮説を棄却し、プラシーボ及びmFOLFOX6を投与した群と比較して、mFOLFOX6と組み合わせて抗FGFR2-IIIbを投与した群で、PFSが統計的に延長されると推定する。
【0400】
各治療群に関するPFS中央値及び関連する95%信頼区間は、カプランマイヤー法を使用して推定する。ハザード比(HR=λ抗FGFR2-IIIb+mFOLFOX6/λmFOLFOX6)は、治療群を唯一の主効果としたCox回帰モデルを使用し、ログランク検定で使用したのと同じ層化因子で層化して推定する。層化していないHRも示す。副次的エンドポイントのOS解析は、主要エンドポイントであるPFSが統計的に有意であるときに行い、OSの形式的な仮説は、0.05の水準で階層的に検定する。主要エンドポイント及び副次的エンドポイントの検定における第一種過誤の確率は、この固定順序検定手順(水準0.05)を採用することによって制御される。
【0401】
3.5.2 二次有効性解析
OS及びORRを含む副次的エンドポイントの解析は、主要エンドポイントであるPFSが統計的に有意であるときに行い、OS及びORRの形式的な仮説は、0.05の水準で階層的に検定する。OSを最初に検定し、それが有意であれば、次にORRを検定する。主要エンドポイント及び副次的エンドポイントの検定における第一種過誤の確率は、この固定順序検定手順(水準0.05)を採用することによって制御される。
【0402】
PFSの検定が統計的に有意である場合、OSの中間解析及び最終解析が計画される。OSの中間解析は、PFSの主解析時に行う。OSの解析を行う場合、中間時(すなわち、少なくとも96例のPFSイベントが観察された時)、及び最終時(すなわち、249例の死亡が観察された時)のOS解析は、ITT集団で実施する。
【0403】
OSの仮説検定は、層別ログランク両側検定(有意水準0.05)を使用して行う。OSの中間解析及び最終解析では、群逐次法を使用して、O’Brien-Flemingの境界に基づく第一種過誤の確率と、Gammaファミリーに基づく第二種過誤の確率(パラメーター-4)とを確定する。層化因子は、IXRSに文書化されている無作為化スケジュールの層化に使用されるものと同じである。
【0404】
各治療群に関するOS中央値及び関連する95%信頼区間は、カプランマイヤー法を使用して推定する。HRは、治療群を唯一の主効果としたCox回帰モデルを使用し、ログランク検定で使用したのと同じ層化因子で層化して推定する。層化していないHRも示す。
【0405】
ORRは、試験責任医師によってRECIST v.1.1に準じて定義される部分奏効または完全奏効のある患者の割合と定義する。ORRの主解析は、ベースラインを測定することが可能な疾患を有する患者間で実施する。ORRの解析において、ベースライン後に適切な腫瘍評価を受けていない患者は、ノンレスポンダーとしてカウントする。ORRの形式的な仮説検定は、層別化したCochran-Mantel-Haenszel検定を使用して実施する。層化因子は、IXRSに文書化されている無作為化スケジュールの層化に使用されるものと同じである。
【0406】
3.5.3 探索的有効性解析
探索的有効性エンドポイントには、全ての登録患者に関する、応答患者の奏功持続期間、1年のOS率、ならびにEQ-5D-5L及びEORTC QLQ-C30によって測定したQoLのベースラインからの変化が含まれる。
【0407】
奏功持続期間は、客観的な腫瘍縮小効果を有する患者に関し、RECIST1.1による客観的な腫瘍縮小効果の最初の放射線学的記録から増悪までの時間、またはあらゆる原因による死亡までの時間と定義する。奏功持続期間の中央値及びその関連95%CIは、カプランマイヤー法を使用して、治療群ごとに推定する。治療群間の差は、層別ログランク検定を使用し、無作為化に使用したのと同じ層化を使用して解析する。
【0408】
1年生存患者の割合として定義される1年のOS率は、カプランマイヤー法を使用して、全生存期間の解析中に推定する。割合の分散は、Greenwoodの公式を使用して推定する。2つの治療群間の1年生存の差の全体的な比較は、z統計量を使用して算出する(t=1年)。
【0409】
EQ-5D-5L及びEORTC QLQ-C30によって測定したQoLにおけるベースラインからの変化については、各ベースライン後評価及び治療終了時におけるベースラインからの変化の要約統計を提示する。該当する場合、反復測定分析法を使用して、治療群間の差を解析する。
【0410】
盲検下独立審査委員会(BIRC)
BIRCは、試験責任医師の評価とBIRCの評価との間の一致を評価するために設立される。予め指定された監査計画は、画像審査書に含まれるが、患者のパーセンテージ、イメージングサブセットの識別、全ての画像を監査する基準、及びPFS結果の現地審査と監査との比較について詳細に記載する。
【0411】
3.6 安全性解析
安全性の解析は、試験期間中にいずれかの試験薬(mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIbまたはプラシーボ及びmFOLFOX6)の投与を受けた全ての患者を含み、治療後のあらゆる安全性情報を提供する。全てのAEは、国際医薬用語集(MedDRA)を使用してコードする。試験責任医師は、CTCAE v4.03を使用してAEの重症度を分類する。
【0412】
治療下で発現した有害事象(TEAE)は、試験薬の1回目の投与以降に発生日を持つあらゆるイベント、または治療前に存在し治療後に悪化したあらゆるイベントと定義する。最終投与日+30日より前の発生日であるTEAEのみを概要表に記載する。AEを経験した患者の数及びパーセンテージは、器官別大分類、基本語、試験薬との関係、及び各治療群の重症度ごとにまとめる。死亡を含むSAEを経験した患者、または試験からの早期離脱もしくは試験薬の中止に関連するAEを経験した患者については、患者別のリストを提供する。臨床検査データは、臨床検査の種類ごとにまとめる。試験薬の投与後に異常(すなわち、参照範囲外)及び/または臨床的に有意な異常を経験した患者の数及びパーセンテージを、各臨床検査の測定について示す。各臨床検査の測定は、ベースライン及びその後の全ての治療後予定来院についての記述統計を提供する。ベースラインから治療後来院までの変化も提供する。バイタルサインの記述統計も同様に提供する。加えて、CTCAEグレードのベースラインからのシフト(該当する場合)及び高/低フラグによるシフト(CTCAEグレードが定義されていない場合)を治療群ごとに提示する。安全性エンドポイントの形式比較は計画しない。
【0413】
3.7 薬物動態解析
PKパラメーターは、非コンパートメント解析を使用して推定されるが、コンパートメント解析を適宜用いてもよい。血清中抗FGFR2-IIIb濃度-時間の個々のデータ及び平均(±SD)データを用量レベルごとに集計し、プロットする。抗FGFR2-IIIbのPKパラメーターは、静脈内注入の入力データを用いて非コンパートメント解析(NCA)法の使用により、血清中試験薬濃度-時間データから推定する。代替的な方法を検討してもよい。PKパラメーターの個々の推定値及び平均(±SD)を用量レベルごとに集計し、まとめる。血清中抗FGFR2-IIIb濃度-時間データ及びPKパラメーターの推定値については、他の記述統計を報告する場合もある。データが許す限り、用量の比例性、試験薬の累積、及び定常状態の到達を評価する。
【0414】
抗FGFR2-IIIb曝露に対する免疫原性の作用を評価する。
【0415】
3.8 中間解析
プラシーボ及びmFOLFOX6と比較した抗FGFR2-IIIb及びmFOLFOX6の組み合わせのPFSのHRが0.806を超えることを回避するために、最初の156人の登録患者で48例のイベント(PFS主解析における目標96例のPFSイベントの50%)が観察された後に、PFSの無益性試験のみが実施される、PFSの中間解析がある。加えて、PFSの検定が統計的に有意である場合、OSの中間解析が計画される。OSの中間解析は、PFSの主解析時に行う。OSを解析する場合、中間解析でのOS解析は、ITT集団で実施し、中間解析での第一種過誤の確率は、解析時における情報の一部(死亡イベント)に応じて、Lan-DeMetsのO’Brien-Flemingのα消費関数を実施することによって決定する。
【0416】
加えて、安全性データは、試験依頼者及びCROのメディカルモニターによる定期的検討を行う。用量漸増段階中には、メディカルモニター及び試験責任医師(複数可)は、用量漸増または減量の前に各用量コホートからの安全性データを検討する。全てのサイクルのAEデータは、利用可能となった時にメディカルモニターに提出する。
【0417】
3.9 計画していた解析の変更
プロトコル中で計画された統計解析の文章と最終SAPとの間に矛盾がある場合、プロトコル修正は生じず、SAPが優先する。
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【表6】
【表7】
備考:Cmax1=1回目の投与後に観察された最高血清中濃度;Cmax1/用量=投与量によって正規化したCmax1;Ctrough1=1回目の投与間隔終了時に観察された血清中濃度;AUClast=投与時点から1回目の投与後の最終定量可能濃度までに観察された濃度-時間曲線下面積。AUClast/用量=投与量によって正規化したAUClast;及びt1/2=消失半減期。
NC=LLOQを下回るCtrough1により、患者3人中2人で報告できなかった要約統計;ND=正確に決定できなかったPKパラメーター。n=3。1人の患者のデータは、当該患者が試験のC1D15に関するデータを有することなく終了したので、報告することができなかった;n=2。消失期は、患者3人のうち1人で1半減期未満であると特徴付けられた。したがって、この患者のデータは、データ解析計画書に規定されているように、半減期の要約統計から除外した;試験患者6人のうち1人は、部分投与を受けたので、パラメーターを要約統計から省いた;n=3。消失期は、患者5人のうち2人で1半減期未満であると特徴付けられた。したがって、これらの患者は、データ解析計画書に規定されているように、半減期の要約統計から除外した。
付録1:評価スケジュール-用量漸増安全性導入段階(パート1)及び用量拡大(パート2)
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0418】
実施例2:これまでに未治療の進行性胃癌及び胃食道癌を有する患者における、修正版FOLFOX6に対する修正版FOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb抗体の第1相/第3相試験
プロトコルの概要
本試験は、本明細書の実施例1に記載される試験の変形版であり、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb抗体の安全性、忍容性、有効性、PK、及びPDを評価するための多施設試験である。試験は、GI腫瘍患者(FGFR2で選択していないもの)におけるオープンラベルの第1相安全性導入段階に続く、FGFR2で選択されたGC患者(FGFR2b過剰発現のプロスペクティブIHC分析及び/またはFGFR2遺伝子増幅を示すctDNA血液アッセイによって決定される)における無作為化オープンラベル第3相を含む。初期スクリーニング期間後、患者を2週間サイクルで抗FGFR2-IIIb抗体と組み合わせたmFOLFOX6またはmFOLFOX6単独により治療する。
【0419】
第1相:用量漸増安全性導入段階
第1相は、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb抗体のオープンラベル用量漸増である。適格性のある患者は、任意の種類の切除不能、局所進行性または転移性GI癌を有し、少なくとも2回のmFOLFOX6化学療法の投与候補である。FGFR2状態は、登録の要件ではない。FGFR2状態は、IHCによってレトロスペクティブに検査し(組織が入手可能である場合)、試料をctDNA血液アッセイから入手する。
【0420】
第1相は、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb抗体の最低2つの用量コホートで構成され、mFOLFOX6と組み合わせて投与される抗FGFR2-IIIb抗体の第3相のRDを決定する。患者は、先にmFOLFOX6化学療法を開始していてもしていなくてもよいし、受けたことがあってもなくてもよい。患者が受けた可能性のある先のmFOLFOX6投与に回数の上限はない。
【0421】
各登録患者は、抗FGFR2-IIIb抗体による治療の初日(サイクル1の1日目[試験1日目])から28日間(DLT期間)、安全性評価、PK及び用量制限毒性の発生について、観察する。患者のコホートを2週間サイクルで標準用量のmFOLFOX6の化学療法レジメンと組み合わせた漸増用量の抗FGFR2-IIIb抗体により治療する。
【0422】
抗FGFR2-IIIb抗体の投与
抗FGFR2-IIIb抗体IVは、2週間ごとに、各サイクルの1日目(2週間=1サイクル)及びmFOLFOX6化学療法の前に投与する。コホート2で治療される患者にのみ、サイクル1の8日目に追加用量の抗FGFR2-IIIb抗体を1回投与する(この日はmFOLFOX6は投与されない)。抗FGFR2-IIIb抗体は、末梢静脈または中心静脈カテーテルを介した約30分のIV注入として投与する。抗FGFR2-IIIb抗体注入のIV投与セットは、0.22μmのインラインフィルタまたは0.22μmのシリンジフィルタを備えなければならない。
【0423】
mFOLFOX6の投与
mFOLFOX6化学療法の投与も、各治療サイクルのサイクル1の1日目(試験1日目)に、抗FGFR2-IIIb抗体の注入が終了してから30分後に開始する。mFOLFOX6は、以下のとおり、2週間ごとに投与する:
-1日目:オキサリプラチン85mg/m2を120分かけてIV注入。
-1日目:ロイコボリン400mg/m2を120分かけてIV注入。Yコネクタを使用する場合は、オキサリプラチンと同時投与が可能であり、Yコネクタを使用しない場合は、逐次投与。
-1日目:オキサリプラチン及びロイコボリンの直後、約5分かけて5FU 400mg/m2をボーラス。
-1日目:5-FUボーラスの直後、5-FU 2400mg/m2を46時間かけて連続IV注入。
【0424】
28日間のDLT期間後、患者は、毒性分析に基づいて、mFOLFOX6または抗FGFR2-IIIb抗体の用量が保持されるか、または減量され得る。前投薬は、試験責任医師の判断で現地の標準治療に準じて使用してもよい。
【0425】
第1相コホート
第1相では、試験する抗FGFR2-IIIb抗体の最初の用量コホートは、6mg/kgである。予定される用量レベルは、以下のとおりである。
-コホート1:2週間ごとに6mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体;
-コホート2:2週間ごとに15mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体;8日目に1回の7.5mg/kg投与(サイクル1のみ);
-コホート3(必要である場合):2週間ごとに15mg/kgの抗FGFR2-IIIb抗体;
-コホート4(必要である場合):最適な標的曝露での忍容性を達成するために、コホート3よりも低いが、コホート1よりも高い用量レベル。
【0426】
6mg/kgの最初のコホートが28日間のDLT期間をクリアした場合、8日目に7.5mg/kgの投与(サイクル1のみ)を含む、2週間ごとの15mg/kgでの2つ目の用量コホートをRolling-6デザインで試験し、6人の患者を登録する。用量漸増の決定は、DLT、全体的な安全性及び忍容性の評価に基づく。用量漸増の決定は、各コホートに最後に登録された患者が28日間のDLT期間を完了した後(抗FGFR2-IIIb抗体及びmFOLFOX6の2治療サイクルの完了後)に行われる。用量漸増の決定は、試験依頼者及び試験責任医師から構成されるコホート審査委員会(CRC)による合意を得る。コホート2で2以上のDLTが観察された場合、コホート1と2の間での用量レベルをRolling6(2週間ごとの15mg/kg)デザインで評価することができる(コホート3)。コホート3で2以上のDLTが観察された場合、コホート3よりも低いが、コホート1よりも高い用量レベルをRolling6デザインで評価することができる(コホート4)。DLTは、試験責任医師が抗FGFR2-IIIb抗体に関係するとみなす、以下のいずれかとして定義する。
・5日間を超えるANC<0.5×10/Lまたは発熱性好中球減少症(すなわち、ANC<1.0×10/L及び38.3℃超の1回の体温、または1時間を超える38℃以上の発熱)。施設内の標準手順に準じてG-CSFの使用が認められる。
・血小板<25×10/Lまたは血小板<50×10/Lであり、医療介入が必要な出血
・長期の(3日を超える)<50×10/Lの血小板
・グレード4の貧血(すなわち、生命を脅かす影響;緊急介入が必要なもの)
・7日以内に解決しないグレード2~3の眼に関する何らかのAE
・グレード4の眼に関するAE
・AST/ALT≧3×ULN、及び同時に発生する総ビリルビン≧2×ULNであり、がんによる肝機能とは無関係のもの
・グレード3以上の何らかの非血液学的AE(悪心、嘔吐、及び下痢を除く)。
・グレード3の悪心、嘔吐または下痢で、72時間の支持療法で解消しないもの
・グレード3の臨床検査値で、72時間以内に解消しない場合、試験責任医師及び試験依頼者の同意により臨床的に重要ではないとされるもの。
・グレード4の悪心、嘔吐または下痢
・グレード4の何らかの臨床検査値
【0427】
以下の表7中の以下のアルゴリズムを用量漸増の決定に使用する:
【表13】
【0428】
第3相に関する抗FGFR2-IIIb抗体のRDは、全体的な安全性、忍容性、及びPKの評価に基づいてCRCによって特定され、サイクル1の8日目にのみ投与される7.5mg/kgを含む、2週間ごとにIV投与される15mg/kgを超えないものとする。RDを決定する際に、CRCは、DLT評価期間中に観察された毒性、DLT評価期間以降に観察されたあらゆる毒性、ならびにDLT基準を満たさない毒性に起因するmFOLFOX6または抗FGFR2-IIIb抗体の減量及び中止を考慮する。データ全体に基づいて、選択される抗FGFR2-IIIb抗体のRDは、投与されるmFOLFOX6の用量強度を下げないことが予想される用量である。したがって、RDは、特定された最大耐量(MTD)と同じであってもよいし、同じでなくてもよい。例えば、MTDに達しない場合、または第1相の後続の治療サイクルからのデータが安全性プロファイルについての更なる洞察を提供する場合、RDは、MTDを超えないが、MTDとは異なる用量であり得る。
【0429】
MTDは、DLT(用量制限毒性)期間中に患者の33%未満がDLTを経験する最大用量として定義される。コホート1で3人の患者のうち1人にDLTが観察された場合、3人の追加患者がその用量レベルに登録される。ある用量レベルで治療された3~6人の患者のうち2人がDLTを経験するまで、用量漸増を継続することができる(用量レベルは第1相で許容された最大用量レベルを超えない)。次いで、次に低い用量がMTDとみなされる。
【0430】
試験デザイン
コホート2(2週間ごとに15mg/kgのコホート、8日目に1回の7.5mg/kg投与[サイクル1のみ]を含む)への登録を開始したら、6人の患者を登録し、安全性及び有効性を調査する。第1相の合計登録数は、約9~21人の患者である。
【0431】
DLT期間中に、DLTまたは抗FGFR2-IIIb抗体に関係するAEではない理由により、コホートに定義された抗FGFR2-IIIb抗体の全回数の投与、及びmFOLFOX6の2回の完全な投与を受けない患者はいずれも評価不能とみなし、患者を入れ替える。入れ替えられた患者は、試験責任医師の判断及び試験依頼者との検討後、試験を継続することができる。28日間のDLT期間中、抗FGFR2-IIIbの追加投与または2回を超えるmFOLFOX6の投与はしてはならない。サイクル2の1日目における抗FGFR2-IIIb抗体及びmFOLFOX6の投与は、同期させる必要はない。例えば、mFOLFOX6にのみ関係し、抗FGFR2-IIIb抗体に関係しないと思われるAEに起因して、mFOLFOX6が遅延する場合、抗FGFR2-IIIb抗体は、mFOLFOX6の投与スケジュールの遅延に関係なく、サイクル1及び2に計画したとおりに投与するものとする。
【0432】
DLT期間の完了時に、患者は、試験責任医師の判断で、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb抗体の投与を継続することができる。追加治療は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性まで、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、2週間ごとに(1サイクル)投与することができる。
【0433】
治療の最初の3サイクル(42日)中に、化学療法に関係する毒性に起因してmFOLFOX6のサイクルが2週間を超えて遅れる場合でも、抗FGFR2-IIIb抗体は、スケジュール(±3日)どおりに投与するものとする。最初の3サイクル後であれば、抗FGFR2-IIIb抗体を最大±7日遅延させて、mFOLFOX6の投与と同期させることができる。抗FGFR2-IIIb抗体またはmFOLFOX6の投与回数に指定された上限はない。DLT期間以降のmFOLFOX6レジメンの継続投与は、以下のスケジュールに従う:
・mFOLFOX6の開始用量には、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mのフォリン酸カルシウム(フォリン酸)、400mg/mのボーラス投与の5-FU、及び2400mg/mの46時間にわたる連続注入投与の5-FUが含まれる。
・mFOLFOX6レジメンは、試験責任医師の評価による放射線学的な増悪(第3相のみ)、臨床的な増悪(第1相のみ)、許容できない毒性、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、2週間(±3日)ごとに投与する。
・1日目:オキサリプラチン85mg/mを120分かけてIV注入
・1日目:ロイコボリン400mg/mを120分かけてIV注入。Yコネクタを使用する場合は、オキサリプラチンと同時投与が可能であり、Yコネクタを使用しない場合は、逐次投与
・1日目:オキサリプラチン及びロイコボリンの直後、約5分かけて5FU 400mg/mをボーラス
・1日目:5-FUボーラスの直後、5-FU 2400mg/mを46時間かけて連続IV注入。
【0434】
mFOLFOX6の継続投与に対する任意の変更は、以下のガイドラインに基づいて行われ得る:
・体重に少なくとも10%の変化があった場合、用量を再計算するものとする。
・各注入中、及び各注入後約72時間は、寒い天候への曝露を回避するように患者に助言する。
・オキサリプラチンを開始する前に、低カリウム血症及び低マグネシウム血症を治す。
・5-FU後の重度の下痢、粘膜炎及び骨髄抑制がある場合は、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ欠損に関する評価を促すものとする。
・ロイコボリン投与は、d,l-ラセミ混合物で与える。LEVO-ロイコボリン(l-ロイコボリン)については、半量で使用する。
・増悪前にオキサリプラチン投与が何らかの理由で中止された場合、5-FU/ロイコボリン療法は、増悪、許容できない毒性、または試験離脱の他の理由まで、2週間ごとのスケジュールで継続することができる。5-FU/ロイコボリン療法が中止された場合、オキサリプラチンも中止しなければならない。
【0435】
mFOLFOX6毒性に対するいくつかの用量調整について、以下の表8に示す。
【表14】
【0436】
試験の第1相部分において、何らかの理由で抗FGFR2-IIIb抗体が永続的に中止される場合、患者は、抗FGFR2-IIIb抗体の最終投与から約28日後に治療終了(EOT)の追跡調査来院を行う。これらの患者に対しては、それ以上の追跡調査は実施されず、抗FGFR2-IIIb抗体治療の追跡調査来院の終了は、試験の終了である。試験責任医師の評価による増悪またはプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれか以外の何らかの理由でmFOLFOX6が中止される場合、抗FGFR2-IIIb抗体は、試験責任医師の判断で、単剤療法として継続してもよい。
【0437】
第3相の無作為化オープン部分
第3相への登録は、抗FGFR2-IIIb抗体のRDがCRCによって特定された場合に開始し、このRDは、第1相で評価及び許容された最大用量レベルを超えない。患者は、第1相または第3相のいずれかに登録され得るが、試験の両方の相に登録されることはない。試験の第3相部分の登録開始は、試験依頼者の判断で行われる。
【0438】
登録の適格性としては、切除不能、局所進行性または転移性GCを有し、標準的な第一選択療法であるmFOLFOX6化学療法の候補者であり、かつ中央施設で実施されるIHC組織検査及び/またはctDNA血液アッセイによりFGFR2陽性である腫瘍を有することが患者に求められる。プレスクリーニング同意説明文書(ICF)は、FGFR2検査のための組織(アーカイブまたは新鮮なもの)及び血液試料の提出前に、患者が署名しなければならない。FGFR2中央検査の結果を受領するには約2週間かかることがあるため、患者は、この中間期間(プレスクリーニング期間)中に、試験責任医師の判断で、最大1回のmFOLFOX6投与を受けることが認められる。この1回の化学療法は、試験の要件ではなく、本臨床試験の部分とはみなされない。
【0439】
IHCによるFGFR2b陽性及び/またはctDNA血液アッセイによるFGFR2遺伝子増幅陽性である腫瘍検査の患者は、全試験参加に同意し(全試験ICFに署名)、スクリーニング期間に入ることができる。全試験ICFの署名から試験登録までの時間は、スクリーニング期間(最大21日)とみなされる。スクリーニング期間中、患者は、全ての適格基準を満たすことを確実にするために、プロトコルに規定されたスクリーニング手順を受ける。
【0440】
試験の第3相部分は、無作為化オープンラベルであり、FGFR2で選択されたGC患者を548人登録し、1:1に無作為化してmFOLFOX6と組み合わせたRDの抗FGFR2-IIIb抗体対mFOLFOX6を投与し、組み合わせの有効性を評価する。患者は、無作為化の3日以内に最初の試験治療薬投与を受けなければならない。治療群は、以下から構成される。
-群1:2週間ごとにmFOLFOX6と組み合わせて投与される抗FGFR2-IIIb抗体、または
-群2:2週間ごとに投与されるmFOLFOX6。
【0441】
増悪以外の何らかの理由による試験治療薬のいずれかの成分(mFOLFOX6、mFOLFOX6の成分、または抗FGFR2-IIIb抗体)の中止は、他の成分の中止を強制するものではない。例外は、何らかの理由による5-FUの中止であり、オキサリプラチン及びロイコボリンの中止を必要とする。mFOLFOX6レジメンの継続投与は、上記のとおり、提供されてもよい。
【0442】
治療の最初の3サイクルについて、抗FGFR2-IIIb抗体は、mFOLFOX6治療の遅延に関係なく、スケジュール(±3日)どおりに投与するものとする。mFOLFOX6が遅延する場合、抗FGFR2-IIIb抗体の最初の3サイクル後であれば、抗FGFR2-IIIb抗体を最大7日遅延させて、mFOLFOX6の投与と同期させることができる。しかしながら、抗FGFR2-IIIb抗体とmFOLFOX6の投与の同期は、プロトコル要件ではない。7日後も患者がmFOLFOX6を受けることができない場合、IMPは、2週間(±3日)ごとの単剤療法として継続するものとする。
【0443】
同意の撤回以外の何らかの理由により全ての試験治療薬(抗FGFR2-IIIb抗体及びmFOLFOX6の全ての成分)を中止する患者は、治療薬の成分(オキサリプラチン、ロイコボリン、5-FU、または抗FGFR2-IIIb抗体)の最終投与から約28日後にEOT安全性追跡調査来院を行う。
【0444】
ただし、増悪または同意の撤回以外の理由により試験治療薬(抗FGFR2-IIIb抗体及び/またはmFOLFOX6)を中止する患者は、放射線学的な増悪または追加の抗がん療法の開始まで、プロトコルのスケジュールに従って、腫瘍評価を受け続け、この時点で、患者は、生存に関する長期追跡調査を受ける。
【0445】
生存に関する長期追跡調査は、EOT来院後約3ヶ月(±1ヶ月)ごとに、最後の患者が試験に登録されてから最大24ヶ月後まで、または死亡、追跡不能、同意の撤回もしくは試験依頼者による試験中止(いずれか先に生じたもの)まで、施設来院、電話により、または患者登録簿を(国内法及び一般的なデータ保護法に従って)使用することによって、完了する。
【0446】
第1相及び第3相の組み入れ基準
試験の第1相または第3相のいずれかに登録する患者は、以下の組み入れ基準を全て満たさなければならない:
・切除不能、局所進行性または転移性の疾患
・あらゆる試験関連評価の前に、施設内審査委員会(IRB)/独立倫理委員会(IEC)が承認した同意説明文書(ICF)を理解し、これに署名すること
・試験責任医師の見解上、平均余命が少なくとも3ヶ月
・米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスが0~1
・ICFに署名した時点で18歳以上
・サイクル1の1日目の治療前96時間以内の血清β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)妊娠検査が陰性(妊娠可能な女性のみ)
・性的に活性な患者(妊娠可能な女性及び男性)においては、抗FGFR2-IIIb抗体の最終投与から6ヶ月後まで、2つの効果的な避妊法を使用する意志があり、そのうちの1つは、物理的バリア法(コンドーム、ペッサリー、または子宮頸/膣円蓋キャップ)でなければならない。他の効果的な避妊形態には、次が含まれる。
・スクリーニングから少なくとも6ヶ月前の永続的な不妊手術(子宮摘出及び/または両側卵巣摘出、または手術による両側卵管結紮、または精管切除)
・試験前の少なくとも90日間、安定した経口避妊薬治療もしくは子宮内器具もしくはインプラント装置を使用しているか、または生活様式として性行為を自制している妊娠可能な女性
・次の検査値によって確認された、サイクル1の1日目の96時間以内の十分な血液学的及び生物学的機能:
骨髄機能
・絶対好中球数(ANC)≧1.5×10/L
・血小板≧100×10/L
・ヘモグロビン≧9g/dL
肝機能
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)<3×正常値上限(ULN);肝転移がある場合、<5×ULN
・ビリルビン<1.5×ULN
腎機能
・Cockroft Gault式を使用したクレアチニンクリアランス計算値≧50mL/分
・常用量の抗凝固薬を服用している患者は、安定用量のワルファリンを登録前6週間服用し、患者の状態の治療域内の国際標準比(INR)でなければならず、または安定用量の低分子量ヘパリンを服用していなければならない
・測定可能または測定不能な疾患
・試験の第1相に登録する患者は、以下の組み入れ基準も満たさなければならない:
・mFOLFOX6が適切な治療とみなされる、組織学的または細胞学的に確認されたGI悪性腫瘍(例えば、GC、大腸癌、膵臓腺癌)
・IHCによるFGFR2b過剰発現のレトロスペクティブ決定のための腫瘍組織(入手可能である場合)
・患者は、少なくとも2回のmFOLFOX6化学療法を受ける候補でなければならない。投与量は以下のとおりであり、上記の毒性ガイドラインの対象である:
・mFOLFOX6化学療法の投与は、各治療サイクルのサイクル1の1日目(試験1日目)に、抗FGFR2-IIIb抗体の注入が終了してから30分後に開始する。mFOLFOX6は、2週間ごとに以下のとおりに投与する:
・1日目:オキサリプラチン85mg/mを120分かけてIV注入。
・1日目:ロイコボリン400mg/mを120分かけてIV注入。Yコネクタを使用する場合は、オキサリプラチンと同時投与が可能。Yコネクタが利用できない場合、逐次投与。
・1日目:オキサリプラチン及びロイコボリンの直後、約5分かけて5FU 400mg/mをボーラス。
・1日目:5-FUボーラスの直後、5-FU 2400mg/mを46時間かけて連続IV注入。1回目の投与後、患者は、ガイドラインに準じた毒性に基づいて、減量、遅延、または中止を受け得る。
【0447】
試験の第3相に登録する患者は、以下の組み入れ基準も満たさなければならない:
・組織学的に記録された胃または胃食道接合部(GEJの近位及び遠位5cmと定義)の腺癌
・C1D1の28日以内に実施される胸部、腹部及び骨盤の放射線イメージング(コンピュータ断層撮影法(CT)が好ましく、磁気共鳴画像法(MRI)は許容される)
・中央施設で実施されるIHC検査によって決定されるFGFR2b過剰発現及び/または中央施設で実施されるctDNA血液ベースアッセイによって決定されるFGFR2遺伝子増幅の腫瘍組織
・患者は、mFOLFOX6化学療法の候補者でなければならない
・転移性または切除不能な疾患に対する先の化学療法がない(プレスクリーニング期間中のFGFR2検査の結果を待つ間に投与される最大1回のmFOLFOX6は除く)
・先の白金系化学療法がない(組み入れ基準#18に記載されている場合を除く)
・先のアジュバント療法またはネオアジュバント療法(化学療法及び/または化学放射線療法)を受けている場合は、アジュバント療法の終了と登録との間に6ヶ月を超える期間が経過していなければならない。
【0448】
第1相及び第3相の除外基準
第1相または第3相のいずれかに登録する患者は、以下の基準のいずれかに該当する場合、除外される:
・未治療もしくは症候性の中枢神経系(CNS)転移(CNSイメージングは必要でない)。無症候性CNS転移を有する患者は、少なくとも4週間臨床的に安定しており、かつ、CNS疾患に関連する症状を管理するための手術、放射線または任意のコルチコステロイド療法などの介入を必要としない限り、適格である
・以下のいずれかを含む、心機能障害または臨床的に有意な心疾患:
・登録前6ヶ月以内の不安定狭心症
・登録前6ヶ月以内の急性心筋梗塞
・ニューヨーク心臓協会分類II~IVのうっ血性心不全
・制御されていない高血圧(最適な医療管理にもかかわらず、≧160/90と定義される)
・β遮断薬またはジゴキシン以外の抗不整脈療法を必要とする制御されていない心不整脈
・活動性冠動脈疾患
・QTcF≧480
・有害事象共通用語規準(CTCAE)グレード2以上の末梢性感覚ニューロパチー
・登録前14日以内の全身治療を必要とする活動性感染症または任意の制御されていない感染症
・既知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)もしくは後天性免疫不全症候群(AIDS)関連疾患、または既知の活性もしくは慢性B型もしくはC型肝炎
・間質性肺疾患(例えば、肺炎または肺線維症)の病歴
・出血傾向または凝固障害のエビデンスまたは病歴
・登録28日以内の放射線治療。患者は、全ての急性放射線療法関連毒性から回復していなければならない。登録8週間以内に放射性医薬品(ストロンチウム、サマリウム)の使用がない
・FGF-FGFR経路の任意の選択的阻害剤(例えば、AZD4547、BGJ398、JNJ-42756493、BAY1179470)による前治療
・NCI CTCAEグレード1を超える、先の全身治療からの継続中の有害作用(グレード2の脱毛症は除く)
・本臨床試験の登録28日以内、または本臨床試験中における、別の治療臨床試験への参加または任意の試験薬の投与
・角膜欠陥、角膜潰瘍、角膜炎、円錐角膜、角膜移植の病歴、または角膜潰瘍の発生リスクを増加させる可能性のある他の既知の角膜異常
・既知の陽性のHER2(3+の陽性IHC検査または2+のIHC及び陽性FISHによって定義)
・登録前28日以内の大きな外科的処置は認められない。局所/硬膜外麻酔に必要な手術は、登録から少なくとも72時間前に完了していなければならない。全ての症例において、患者は、治療実施前に十分に回復し、安定していなければならない
・妊娠中または授乳中の女性(患者が試験治療薬投与中に授乳を中断し、試験中止から6ヶ月後に再開する場合を除く);妊娠可能な女性は、試験中に妊娠を検討してはならない
・臨床試験と相容れない任意の重篤または不安定な随伴性全身性障害の存在(例えば、薬物乱用、精神障害、または制御されていない併発病、例えば、動脈血栓症、及び症候性肺塞栓症)
・試験への参加に伴うリスクを高める可能性があるか、または試験結果の解釈に干渉する可能性があり、試験責任医師の見解で、患者の試験への参加が適切ではないとされる、任意の他の状態の存在
・ポリソルベートを含む抗FGFR2-IIIb抗体製剤、または白金含有薬剤、5-FUもしくはロイコボリンの成分に対する既知のアレルギーまたは過敏症
・以下を除く、過去の悪性腫瘍の病歴:
・根治的に治療された非黒色腫の皮膚悪性腫瘍
・上皮内子宮頸癌
・根治的に治療された乳管または小葉の上皮内乳癌であり、現在全身治療を受けていないもの
・5年を超えて根治的に治療された固形腫瘍で、再発のエビデンスないもの。
【0449】
これらの組み入れ基準または除外基準の免除は認められない。
【0450】
試験治療:
第1相において、抗FGFR2-IIIb抗体は、mFOLFOX6化学療法の投与前に、2週間(±3日)ごとに約30分(±10分)かけて試験施設で投与される、静脈内(IV)バッグに希釈するための滅菌バイアルで提供される。コホート2で治療される患者にのみ、サイクル1の8日目に追加用量の抗FGFR2-IIIb抗体を1回投与する。サイクル2以降、全ての患者は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、2週間ごとに各サイクルの1日目に抗FGFR2-IIIb抗体の投与を受ける。FP144注入のIV投与セットは、0.22μmのインラインフィルタまたは0.22μmのシリンジフィルタを備えなければならない。
【0451】
第3相において、抗FGFR2-IIIb抗体は、第1相の抗FGFR2-IIIb抗体と同様の方法で調製及び投与される。抗FGFR2-IIIb抗体の投与は、試験責任医師の評価による放射線学的もしくは臨床的な増悪、許容できない毒性、または患者がプロトコルに規定する他の離脱基準のいずれかを満たすまで、継続する。
【0452】
オキサリプラチン、5-FU、及びロイコボリン(mFOLFOX6)は、2週間(±7日)ごとに各施設(上記のとおり)で投与される。
【0453】
薬物動態評価
第1相及び第3相に登録された全ての患者で血液試料をそれぞれ指定の時点で採取し、抗FGFR2-IIIbの血清レベルを測定する。
【0454】
PKパラメーターは、非コンパートメント解析を使用して推定されるが、コンパートメント解析を適宜用いてもよい。本臨床試験の血清中濃度-時間データは、統合集団PK解析及び曝露-反応関係の評価のために、他の試験からのデータとともにプールする。
【0455】
免疫原性評価
第1相及び第3相に登録された全ての患者について、抗(抗FGFR2-IIIb抗体)抗体のための血液試料を採取する。抗FGFR2-IIIb抗体に対する免疫応答として定義される免疫原性は、全ての患者から得た、抗FGFR2-IIIb抗体に対する総抗体を測定することによって評価する。免疫原性試験は、スクリーニング、確認、及び滴定から構成される。抗FGFR2-IIIb抗体に対して確認された抗体応答の更なる特性評価を検討してもよい。
【0456】
有効性評価
第3相中の腫瘍縮小効果の評価は、試験責任医師がRECIST v.1.1ガイドラインに準じて実施する。有効性の尺度には、臨床検査及び適切なイメージング技術、好ましくは、RECIST v.1.1ガイドラインに準じた適切なスライス厚での胸部、腹部及び骨盤のCTスキャン(MRIも許容される)から構成される腫瘍評価が含まれる。スキャンは、スクリーニング期間中に行われる(サイクル1の1日目の21日以内)。標準治療の一部としてスクリーニング前に実施されるスキャンは、登録前の28日以下に実施されるのでれば、許容される。スキャンは、サイクル1の1日目から8週間(±7日)ごとに実施する。
【0457】
安全性評価
第1相及び第3相の両方における安全性の尺度には、AE、血液学的検査、臨床化学検査、尿検査、バイタルサイン、体重、併用薬/処置、ECOGパフォーマンスステータス、対象の身体検査、ECG及び眼科検査が含まれる。
【0458】
薬力学評価
第I相
PD評価は、指定の時点で収集する。入手可能であれば、FGFR2状態を評価するために提出された腫瘍組織を、IHCの使用により、FGFR2b過剰発現についてレトロスペクティブに分析する。FGFR2状態の評価のために提出される血液試料は、試験治療薬の1回目の投与前に採取し、ctDNA血液アッセイを使用して、FGFR2遺伝子増幅についてレトロスペクティブに分析する。FGFR経路の探索的バイオマーカー分析のための血液試料は、長期にわたって採取する。
【0459】
第3相
FGFR2状態を評価するために腫瘍組織を提出し、これを、IHCの使用により、FGFR2b過剰発現についてプロスペクティブに分析する。FGFR2状態を評価するために血液試料を提出し、これを、ctDNA血液アッセイの使用により、FGFR2遺伝子増幅についてプロスペクティブに分析する。登録前に、組織または血液のいずれか(両方ではない)からの陽性結果が得られなければならない。
【0460】
本試験に計画される総登録数は、最大約569人の患者である。あらゆる用量制限毒性について評価可能な患者約9~21人を第1相に登録する。第3相については、FGFR2で選択されたGCを有する約548人の患者を登録し、1:1に無作為化してmFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb抗体、またはmFOLFOX6単独を投与することによって、有効性及び忍容性を評価する。適格性のある患者は、地理上の地域(米国及び欧州対日本対アジアの他地域[中国を含む]対世界の他地域)、前治療の状況(de novo対アジュバント/ネオアジュバント)、及び登録前のmFOLFOX6単回用量の投与(ありまたはなし)により層化する。
【0461】
第1相では、分析は全て記述的であり、適宜、用量群及び全体で示される。記述統計には、連続変数の観察数、平均、標準偏差、中央値、範囲及び四分位範囲、ならびにカテゴリー変数の数及びパーセントが含まれ、95%信頼区間が適宜示される。更に、減量または投与中止に至るTEAEの発生を集計し、まとめる。第3相では、主要な有効性解析は、mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb抗体により治療した患者と、mFOLFOX6により治療した患者間のOSの比較である。
【0462】
主要エンドポイントのOSは、無作為化からあらゆる原因による死亡までの期間として定義される。副次的有効性エンドポイントには、PFS及びORRが含まれるが、PFSは、無作為化から、試験責任医師の評価に基づいて放射線学的もしくは臨床的に増悪とされた日(RECIST v.1.1に準ずる)またはあらゆる原因による死亡日のいずれか早いほうまでの期間として定義されるのに対し、ORRは、ベースラインが測定可能な疾患を有し、かつ試験責任医師によってRECIST v.1.1に準じて決定される部分奏効または完全奏効のある患者の割合として定義される。
【0463】
この第3相試験は、抗FGFR2-IIIb抗体とmFOLFOX6の組み合わせの全生存期間(OS)のハザード比(HR)を、mFOLFOX6単独と比較して評価するように設計する。374例の主要死亡イベントが80%の検出力をもたらし、偽陽性エラー率2.5%を有するCox回帰分析(片側)を使用して0.75のOSのHRを検出することができる。OSの指数分布を仮定すると、これは、10ヶ月から13.3ヶ月への生存期間中央値の約33%の増加に該当する。OSの統計的有意性は、推定HR=0.815で生じ、これは、10ヶ月から12.26ヶ月への生存期間中央値の約22.6%の増加に該当する。
【0464】
主要イベントの標的数を達成するためには、44ヶ月の受入期間中に約548人の患者を無作為化(1:1)し、約24ヶ月の更なる追跡調査を含む。
【0465】
OSの仮説を最初に検定する。OSには中間解析と主解析の2つがあり、全てイベントに基づく解析である。
【0466】
OSの中間解析は2回計画され、1回目はOSイベントの50%(約187例のイベント)後、2回目はOSイベントの75%(約281例のイベント)後である。これらの中間解析の回数及び時期に柔軟性をもたせるために、Lan-DeMetsの実施によるO’Brien-Flemingのモニタリング境界を使用して、2.5%の偽陽性エラー率を維持する。
【0467】
OSの主解析は、治療企図(ITT)集団を使用して実施し、層別ログランク検定を使用して行う。層化因子は、音声自動応答/Web登録システム(IXRS)に文書化されている無作為化スケジュールの層化に使用されるものと同じである。
【0468】
各治療群に関するOS中央値及び関連する95%信頼区間は、カプランマイヤー法を使用して推定する。ハザード比(HR=λ抗-FGFR2-IIIB抗体+mFOLFOX6/λmFOLFOX6)は、治療群を唯一の主効果としたCox回帰モデルを使用し、層別ログランク検定で使用したのと同じ層化因子で層化して推定する。層化していないHRも示す。
【0469】
副次的エンドポイントのPFS及びORRの解析は、主要エンドポイントであるOSの解析が統計的に有意である場合に、階層的に検定する。PFS及びORRへの影響に関する形式的な仮説は、0.05の水準で階層的に検定する。PFSを最初に検定し、それが有意であれば、次にORRを検定する。主要エンドポイント及び副次的エンドポイントの検定におけるファミリーワイズの第一種過誤の確率は、このゲートキーピング検定手順(水準0.05)を採用することによって制御される。
【0470】
OSの検定が有意である場合、OS解析の実施時に観察された全てのPFSイベントに基づいて、層化ログランク検定を0.05の水準で使用して、無増悪生存期間(PFS)を検定する。PFSの主解析は、層別ログランク検査(両側)を使用して行う。層化因子は、音声自動応答/Web登録システム(IXRS)に文書化されている無作為化スケジュールの層化に使用されるものと同じである。
【0471】
各治療群に関するPFS中央値及び関連する95%信頼区間は、カプランマイヤー法を使用して推定する。HRは、治療群を唯一の主効果としたCox回帰モデルを使用し、層別ログランク検定で使用したのと同じ層化因子で層化して推定する。層化していないHRも示す。PFS解析は、ITT集団で行う。
【0472】
PFSの検定が有意である場合、ORRの解析を、ベースラインを測定することが可能な疾患を有する患者間で実施する。ORRの解析において、ベースライン後に適切な腫瘍評価を受けていない患者は、ノンレスポンダーとしてカウントする。ORRの形式的な仮説検定は、層別化したCochran-Mantel-Haenszel検定(両側、水準0.05)を使用して実施する。層化因子は、IXRSに文書化されている無作為化スケジュールの層化に使用されるものと同じである。
【0473】
安全性解析:全てのAEは、国際医薬用語集(MedDRA)を使用してコードする。試験責任医師は、CTCAE v4.03を使用してAEの重症度を分類する。治療下で発現した有害事象(TEAE)は、試験治療薬の1回目の投与以降に発生日を持つあらゆるイベント、または治療前に存在し治療後に悪化したあらゆるイベントと定義する。最終投与日+28日より前の発生日であるTEAEのみを概要表に記載する。
【0474】
臨床検査データは、臨床検査の種類ごとにまとめる。試験治療薬の投与後に異常(すなわち、参照範囲外)及び/または臨床的に有意な異常を経験した患者の数及びパーセンテージを、各臨床検査の測定について示す。各臨床検査の測定は、ベースライン及びその後の全ての治療後予定来院についての記述統計を提供する。ベースラインから治療後来院までの変化も提供する。バイタルサインの記述統計も同様に提供する。加えて、CTCAEグレードのベースラインからのシフト(該当する場合)及び高/低フラグによるシフト(CTCAEグレードが定義されていない場合)を同様に提示する。
【0475】
第I相の安全性解析は、安全性集団に含まれる患者について実施する。DLTの発生、TEAEの発生、臨床検査異常(例えば、シフトテーブル)、バイタルサイン、角膜及び網膜所見、ならびにECGを用量レベルごとに集計し、まとめる。更に、減量または投与中止に至るTEAEの発生を集計し、まとめる。
【0476】
第3相の安全性の解析は、試験期間中にいずれかの試験治療薬(mFOLFOX6と組み合わせた抗FGFR2-IIIb抗体またはmFOLFOX6)の投与を受けた全ての患者を含み、治療後のあらゆる安全性情報を提供する。TEAEの発生、臨床検査異常、バイタルサイン、角膜及び網膜所見、ならびにECGを治療群ごとに集計し、まとめる。
【0477】
血清中抗FGFR2-IIIb抗体濃度-時間の個々のデータ及び平均(±SD)データを用量レベルごとに集計し、プロットする。適切かつ該当する場合、PKパラメーターを用量レベルごとに集計し、要約する。データが許す限り、抗FGFR2-IIIb抗体曝露に対する免疫原性の影響を用量レベルごとに評価し、集計し、まとめる。統合集団PK解析及び曝露-反応関係の評価を別個の報告書で提出する。
【0478】
試験コホートの概略図を図3に提供する。
【0479】
配列表
以下の表は、本明細書で参照したいくつかの配列の一覧を提供する。
【表15】
図1
図2
図3
【配列表】
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