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特許7573077低粘度シーラント用シラン末端樹脂及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】低粘度シーラント用シラン末端樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/336 20060101AFI20241017BHJP
   C08G 18/71 20060101ALI20241017BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20241017BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08G65/336
C08G18/71 080
C08G18/32 006
C09K3/10 G
C09K3/10 Z
C09K3/10 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023126346
(22)【出願日】2023-08-02
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】202310555315.1
(32)【優先日】2023-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522225055
【氏名又は名称】浙江皇馬科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUANGMA TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Zhangzhen New Industrial Zone, Shangyu District Shaoxing City,Zhejiang 310000 (CN)
(73)【特許権者】
【識別番号】522225066
【氏名又は名称】浙江皇馬尚宜新材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUANGMA SHANGYI NEW MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Shangyu Economic And Technological Development Zone, Hangzhou Bay, Shangyu District Shaoxing City, Zhejiang 312000 (CN)
(73)【特許権者】
【識別番号】522225077
【氏名又は名称】浙江緑科安化学有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG LUKEAN CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Shangyu Economic And Technological Development Zone, Hangzhou Bay, Shangyu District Shaoxing, Zhejiang 312000 (CN)
(73)【特許権者】
【識別番号】522225088
【氏名又は名称】浙江皇馬特種表面活性剤研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGYU HUANGMA SURFACE ACTIVATED REAGENT RESEARCH INSTITUTE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Zhangzhen New Industrial Zone, Shangyu District Shaoxing, Zhejiang 312000 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】董楠
(72)【発明者】
【氏名】金一豊
(72)【発明者】
【氏名】王偉松
(72)【発明者】
【氏名】王馬済世
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-229398(JP,A)
【文献】特開2013-076094(JP,A)
【文献】国際公開第2012/081483(WO,A1)
【文献】特表2022-509658(JP,A)
【文献】特表2013-531723(JP,A)
【文献】特表2021-507051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00- 67/48
C08G18/00- 18/87
C08G71/00- 71/04
C09K 3/00- 3/32
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低粘度シーラント用シラン末端樹脂であって、その構造式は、
であり、ただし、「-----」は、
の繰り返し単位であり、前記繰り返し単位の数≧172であり、Rは、C2nであり、n=1~5であり、Rは、直鎖アルキル基C2m+1であり、m≧1であり、且つ繰り返し単位においてRがメチル基である質量割合は、50~90%であり、Rは、CH又はCHCHであり、Rは、OR又はRであり、
前記シラン末端樹脂の数平均分子量は、15000-30000であることを特徴とする、低粘度シーラント用シラン末端樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法であって、
反応釜に1部のアルコール系開始剤とアルカリ土類金属を加え、窒素置換してから75~150℃まで昇温し、7.5~14.5部のアルキレンオキサイドを加え、圧力を0.0~0.4Mpaに制御し、圧力が下がらなくなるまで熟成し、降温脱気して精製し、低分子ポリマーを得るステップS1と、
反応釜に1部のステップS1で得られた低分子ポリマーを加え、そして総質量の5-15ppmの多金属シアン化物触媒を加え、窒素置換してから120~130℃まで昇温し、脱水し、さらに130-140℃まで昇温した後に250~355部のアルキレンオキサイドを加え、圧力を0.0~0.4Mpaに制御し、圧力が下がらなくなるまで熟成し、降温脱気して排出し、高分子ポリマー樹脂を得るステップS2と、
ステップS2で製造された高分子ポリマー樹脂に有機スズ触媒とイソシアネートシランを加えて反応を行い、反応中に反応混合物を採取して赤外特性ピークテストを行い、反応混合物にイソシアネート赤外特性ピークが存在しなくなる時に反応を終了し、前記シラン末端樹脂を得るステップS3とを含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項3】
前記ステップS1のアルコール系開始剤は、プロピレングリコール、イソブチレングリコール又はデキス1,3-ブチレングリコールのうちの一種であり、前記アルカリ土類金属は、K又はNaであり、前記ステップS1とS2におけるアルキレンオキサイドは、いずれもプロピレンオキサイドとブチレンオキサイド、ヘキシレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、へプタレンオキサイドのうちの一種との混合物であることを特徴とする
請求項2に記載の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記アルキレンオキサイド混合物におけるプロピレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの混合モル比は、1:1~10:1であることを特徴とする
請求項3に記載の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記ステップS1で製造された低分子ポリマーの数平均分子量は、400-800であることを特徴とする
請求項2に記載の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS2の多金属シアン化物触媒に含有される金属イオンは、Co、Zn、Pbのうちの少なくとも二種であることを特徴とする
請求項2に記載の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS2の脱水時間は、30-90minであり、熟成温度は、130~150℃であり、90~110℃まで降温した後に脱気して排出することを特徴とする
請求項2に記載の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS3における有機スズ触媒の添加量は、総投入量の0.05~0.15%であり、前記有機スズ触媒は、ジブチルスズジラウレート又はジオクチルスズジラウレートであり、前記ステップS3における高分子ポリマー樹脂水酸基価とイソシアネートシランのNCOとの質量比は、OH:NCO=0.98~1.02:1であることを特徴とする
請求項2に記載の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記ステップS3における反応温度は、40~100℃であり、反応時間は、2~10hであることを特徴とする
請求項2に記載の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラント技術分野に関し、具体的には低粘度シーラント用シラン末端樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シーラントは、現在では、建築、交通など多くの分野で不可欠な材料であり、組立式建築の盛んな発展に伴い、人々のシーラントに対する関心が高まっており、その性能に対する要求も高まっている。市販されている既存のシーラント製品は、シリコーン系、ポリウレタン及びシラン変性系のシーラントを主とする。ここで、シラン末端樹脂は、ポリエーテルの柔軟性と耐低温性を有するだけでなく、シロキサン基の良好な湿気硬化性、接着性も有し、且つシリコーンシーラントとポリウレタンシーラントの利点と長所を兼ね備えており、優れた耐候性、接着性、塗装性、耐変形変位性を示し、これらの中で目立ったものとなる。しかしながら、従来技術におけるシラン末端樹脂の粘度特性が比較的大きいため、これらのシラン末端樹脂を含有するシーラントの配合成分を調整する時、炭酸カルシウムの添加量を大きくすることでシーラントのコストを下げることはできなくなる。
【0003】
シラン末端樹脂の粘度が大きすぎるという問題を解決するために、一般的には、可塑剤を添加することでシーラントの粘度を下げる。従来技術では、シラン末端樹脂の粘度を下げるために、シラン系封止樹脂を変性することもあった。例えば、中国特許CN104212046Aでは低粘度シラン変性ポリマー樹脂の製造方法が提供されており、それは、二種以上の材料を採取して摂氏10-100度の温度で重合反応を行い、原料を生成するステップと、上記二種以上の原料を割合に応じて混合し、性能の異なるシラン変性ポリマー樹脂を得るステップとを含み、即ち、重合と混合を組み合わせる方法でシラン変性樹脂を得ることによって、樹脂の力学的性能と耐温性能を効果的に調節できるという目的を達成する。中国特許CN103080175AとCN1037041Aはいずれも分子量が相対的に小さい物質の組成物を加えることで粘度降下の目的を達成する。以上の方法ではいずれも高分子物に一定量の小分子物質を混入したが、非活性小分子を加えると、シーラント製品自体の強度を低減させ、活性分子を加えると、シーラント製品の引張性能を低減させる。
【0004】
そのため、分子の内部構造から粘度を下げることができるシーラント用シラン末端樹脂及びその製造方法の開発が非常に必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点を解消するために、本発明の目的は、低粘度シーラント用シラン末端樹脂を提供することであり、このシラン末端樹脂は、短鎖セグメントを導入することで分子内で可塑化し、分子鎖を柔らかくし、動きやすくすることによって、粘度を下げるという目的を達成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に用いられる技術的解決手段は以下のとおりである。
【0007】
低粘度シーラント用シラン末端樹脂であって、その構造式は、
【化1】

であり、ただし、「-----」は、
【化2】

の繰り返し単位であり、前記繰り返し単位の数≧172であり、Rは、C2nであり、n=1~5であり、Rは、直鎖アルキル基C2m+1であり、m≧1であり、且つ繰り返し単位においてRがメチル基である質量割合は、50~90%であり、Rは、CH又はCHCHであり、Rは、OR又はRである。
【0008】
本発明の好ましい実施形態として、前記シラン末端樹脂の数平均分子量は、約15000-3000である。
【0009】
本発明の目的のその二は、上記の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法を提供することであり、それは、
【0010】
反応釜に1部のアルコール系開始剤とアルカリ土類金属を加え、窒素置換してから75~150℃まで昇温し、7.5~14.5部のアルキレンオキサイドを加え、圧力を0.0~0.4Mpaに制御し、圧力が下がらなくなるまで熟成し、90~115℃まで降温して脱気して精製し、低分子ポリマーを得るステップS1と、
【0011】
反応釜に1部のステップS1で得られた低分子ポリマーを加え、そして総質量の5-15ppmの多金属シアン化物触媒を加え、窒素置換してから120~130℃まで昇温し、脱水し、さらに130-140℃まで昇温した後に250~355部のアルキレンオキサイドを加え、圧力を0.0~0.4Mpaに制御し、圧力が下がらなくなるまで熟成し、降温脱気して排出し、高分子ポリマー樹脂を得るステップS2と、
【0012】
ステップS2で製造された高分子ポリマー樹脂に有機スズ触媒とイソシアネートシランを加えて反応を行い、反応中に反応混合物を採取して赤外特性ピークテストを行い、反応混合物にイソシアネート赤外特性ピークが存在しなくなる時に反応を終了し、前記シラン末端樹脂を得るステップS3とを含む。
【0013】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS1のアルコール系開始剤は、短鎖ジオールであり、好ましくは、プロピレングリコール、イソブチレングリコール又はデキス1,3-ブチレングリコールのうちの一種であり、前記アルカリ土類金属は、K又はNaである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS1とS2におけるアルキレンオキサイドは、いずれもプロピレンオキサイドとブチレンオキサイド、ヘキシレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、へプタレンオキサイドのうちの一種との混合物である。好ましくは、アルキレンオキサイド混合物におけるプロピレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの混合モル比は、1:1~10:1であり、さらに好ましくは、アルキレンオキサイド混合物におけるプロピレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの混合モル比は、5:1~10:1である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS1で製造された低分子ポリマーの数平均分子量は、400-800である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS2の多金属シアン化物触媒に含有される金属イオンは、Co、Zn、Pbのうちの少なくとも二種である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS2の脱水時間は、30-90minであり、熟成温度は、130~150℃であり、90~110℃まで降温した後に脱気して排出する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS2ではまず10~30gのアルキレンオキサイドを加え、圧力を0.2~0.9Mpaに制御し、圧力があきらかに下った後に残りのアルキレンオキサイドを加える。
【0019】
本発明の好ましい実施形態として、前記高分子ポリマー樹脂の数平均分子量は、15000~30000である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS1とS2では窒素置換回数はいずれも3回以上である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS3における有機スズ触媒の添加量は、総投入量の0.05~0.15%であり、前記有機スズ触媒は、ジブチルスズジラウレート又はジオクチルスズジラウレートである。
【0022】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS3における高分子ポリマー樹脂水酸基価とイソシアネートシランのNCOとの質量比は、OH:NCO=0.98~1.02:1である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態として、前記ステップS3における反応温度は、40~100℃であり、反応時間は、2~10hである。
【発明の効果】
【0024】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0025】
本発明は、まず、アルコール系開始剤、アルカリ土類金属及びアルキレンオキシドによって低分子量ポリマーを合成し、さらに多金属シアン化物触媒とアルキレンオキシドを加えて高分子量ポリマーを合成し、最後に有機スズ触媒とイソシアネートシランを加えて反応を行ってシラン末端樹脂を得ることで、分子内に分子内に短鎖セグメントを導入し、本来の分子結晶を破壊することに成功し、分子内で可塑化し、分子鎖を柔らかくし、動きやすくすることによって、粘度を下げるという目的を達成した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、具体的な実施形態に結び付けて本発明をさらに説明する。
【0027】
低粘度シーラント用シラン末端樹脂であって、その数平均分子量は、約15000-30000であり、その構造式は、
【化3】

であり、
ただし、「-----」は、
【化4】

の繰り返し単位であり、前記繰り返し単位の数≧172であり、
Rは、C2nであり、n=1~5であり、Rは、直鎖アルキル基C2m+1であり、m≧1であり、且つ繰り返し単位においてRがメチル基である質量割合は、50~90%であり、Rは、CH又はCHCHであり、Rは、OR又はRである。
【0028】
上記の低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法であって、それは、
【0029】
反応釜に1部のアルコール系開始剤とアルカリ土類金属を加え、窒素置換を三回以上行った後に75~150℃まで昇温し、7.5~14.5部のアルキレンオキサイドを加え、圧力を0.0~0.4Mpaに制御し、圧力が下がらなくなるまで熟成し、90~115℃まで降温して脱気して精製し、数平均分子量が400-800である低分子ポリマーを得るステップS1と、
【0030】
反応釜に1部のステップS1で得られた低分子ポリマーを加え、そして総質量の5-15ppmの多金属シアン化物触媒を加え、三回窒素置換してから120~130℃まで昇温し、30-90min脱水し、さらに130-140℃まで昇温した後に250~355部のアルキレンオキサイドを加え(まず、10~30gのアルキレンオキサイドを加え、圧力を0.2~0.9Mpaに制御し、圧力があきらかに下った後に残りのアルキレンオキサイドを加え)、圧力を0.0~0.4Mpaに制御し、130~150℃の温度で、圧力が下がらなくなるまで熟成し、90~110℃まで降温した後に脱気して排出し、数平均分子量が15000~30000である高分子ポリマー樹脂を得るステップS2と、
【0031】
ステップS2で製造された高分子ポリマー樹脂に総投入量の0.05~0.15%の有機スズ触媒、イソシアネートシラン(OH:NCO=0.98~1.02:1)を加え、40~100℃の温度で反応を2~10h行い、反応中に反応混合物を採取して赤外特性ピークテストを行い、反応混合物にイソシアネート赤外特性ピークが存在しなくなる時に反応を終了し、前記シラン末端樹脂を得るステップS3とを含む。
【0032】
上記方法では、ステップS1のアルコール系開始剤は、プロピレングリコール、イソブチレングリコール又はデキス1,3-ブチレングリコールのうちの一種であり、アルカリ土類金属は、K又はNaであり、ステップS1とS2におけるアルキレンオキサイドは、いずれもプロピレンオキサイドとブチレンオキサイド、ヘキシレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、へプタレンオキサイドのうちの一種との混合物である。ステップS2の多金属シアン化物触媒に含有される金属イオンは、Co、Zn、Pbのうちの少なくとも二種である。有機スズ触媒は、ジブチルスズジラウレート又はジオクチルスズジラウレートである。
実施例1:
【0033】
低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法であって、それは、
【0034】
反応釜に100gのプロピレングリコール、総投入量に占める質量分率が0.2%であるNaを加え、三回窒素置換してから100±5℃まで昇温し、プロピレンオキサイドとブチレンオキサイドを9:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイドを952g加え、圧力を0.4Mpa未満に制御し、完了した後に、圧力が下がらなくなるまで熟成し、90℃まで降温して脱気して精製し、数平均分子量が796である低分子ポリマーを得るステップS1と、
【0035】
反応釜に100gのステップS1で得られた低分子ポリマー、総投入量に占める質量分率が0.002%である多金属シアン化物触媒を加え、三回窒素置換してから125±5℃まで昇温し、40min脱水し、さらに130-140℃まで昇温した後にプロピレンオキサイドとブチレンオキサイドを9:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイドを2135g加え(まず、10~30gのアルキレンオキサイドを加え、圧力を0.9Mpa未満に制御し、圧力があきらかに下った後に残りのアルキレンオキサイドを加え)、圧力を0.4Mpa未満に制御し、140±5℃の温度で、圧力が下がらなくなるまで熟成し、20min維持し、110℃±5℃まで降温した後に脱気して排出し、数平均分子量が約15638である高分子ポリマー樹脂を得るステップS2と、
【0036】
ステップS2で製造された高分子ポリマー樹脂に総投入量の0.1%のジブチルスズジラウレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(OH:NCO=0.98:1)を加え、100℃の温度で反応を3h行い、反応中に反応混合物を採取して赤外特性ピークテストを行い、反応混合物にイソシアネート赤外特性ピークが存在しなくなる時に反応を終了し、シラン末端樹脂を得るステップS3とを含む。
実施例2:
【0037】
低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法であって、それは、
【0038】
反応釜に100gのプロピレングリコール、総投入量に占める質量分率が0.2%であるNaを加え、三回窒素置換してから100±5℃まで昇温し、プロピレンオキサイドとペンチレンオキサイドを9:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイドを952g加え、圧力を0.4Mpa未満に制御し、完了した後に、圧力が下がらなくなるまで熟成し、降温して脱気して精製し、数平均分子量が約780である低分子ポリマーを得るステップS1と、
【0039】
反応釜に100gのステップS1で得られた低分子ポリマー、総投入量に占める質量分率が0.002%である多金属シアン化物触媒を加え、三回窒素置換してから120±5℃まで昇温し、40min脱水し、さらに130-140℃まで昇温した後にプロピレンオキサイドとペンチレンオキサイドを9:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイドを2229g加え(まず、10~30g加え、圧力を0.6Mpa未満に制御し、圧力があきらかに下った後に残りのアルキレンオキサイドを加え)、圧力を0.4Mpa未満に制御し、130±5℃の温度で、圧力が下がらなくなるまで熟成し、20min維持し、110℃±5℃まで降温した後に脱気して排出し、数平均分子量が15486である高分子ポリマー樹脂を得るステップS2と、
【0040】
ステップS2で製造された高分子ポリマー樹脂に総投入量の0.1%のジブチルスズジラウレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(OH:NCO=0.98:1)を加え、100℃の温度で反応を5h行い、反応中に反応混合物を採取して赤外特性ピークテストを行い、反応混合物にイソシアネート赤外特性ピークが存在しなくなる時に反応を終了し、シラン末端樹脂を得るステップS3とを含む。
実施例3:
【0041】
低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法であって、それは、
【0042】
反応釜に100gのプロピレングリコール、総投入量に占める質量分率が0.2%であるNaを加え、三回窒素置換してから100±5℃まで昇温し、プロピレンオキサイドとヘキシレンオキサイドを9:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイドを1052g加え、圧力を0.4Mpa未満に制御し、完了した後に、圧力が下がらなくなるまで熟成し、降温して脱気して精製し、数平均分子量が785である低分子ポリマーを得るステップS1と、
【0043】
反応釜に100gのステップS1で得られた低分子ポリマー、総投入量に占める質量分率が0.002%である多金属シアン化物触媒を加え、三回窒素置換してから120~130℃まで昇温し、40min脱水し、さらに130-140℃まで昇温した後にプロピレンオキサイドとヘキシレンオキサイドを9:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイドを2216g加え(まず、10~30g加え、圧力を0.6Mpa未満に制御し、圧力があきらかに下った後に残りのアルキレンオキサイドを加え)、圧力を0.4Mpa未満に制御し、145±5℃の温度で、圧力が下がらなくなるまで熟成し、20min維持し、110℃±5℃まで降温した後に脱気して排出し、数平均分子量が15758である高分子ポリマー樹脂を得るステップS2と、
【0044】
ステップS2で製造された高分子ポリマー樹脂に総投入量の0.10%のジブチルスズジラウレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(OH:NCO=0.98:1)を加え、100℃の温度で反応を5h行い、反応中に反応混合物を採取して赤外特性ピークテストを行い、反応混合物にイソシアネート赤外特性ピークが存在しなくなる時に反応を終了し、シラン末端樹脂を得るステップS3とを含む。
実施例4:
【0045】
低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法であって、それは、
【0046】
反応釜に100gのプロピレングリコール、総投入量に占める質量分率が0.2%であるNaを加え、三回窒素置換してから100±5℃まで昇温し、プロピレンオキサイドとへプタレンオキサイドを9:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイドを952g加え、圧力を0.4Mpa未満に制御し、完了した後に、圧力が下がらなくなるまで熟成し、降温して脱気して精製し、数平均分子量が805である低分子ポリマーを得るステップS1と、
【0047】
反応釜に100gのステップS1で得られた低分子ポリマー、総投入量に占める質量分率が0.002%である多金属シアン化物触媒を加え、三回窒素置換してから120~130℃まで昇温し、40min脱水し、さらに130-140℃まで昇温した後にプロピレンオキサイドとへプタレンオキサイドを9:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイドを2162g加え(まず、10~30g加え、圧力を0.6Mpa未満に制御し、圧力があきらかに下った後に残りのアルキレンオキサイドを加え)、圧力を0.4Mpa未満に制御し、140±5℃の温度で、圧力が下がらなくなるまで熟成し、20min維持し、105℃±5℃まで降温した後に脱気して排出し、数平均分子量が約15907である高分子ポリマー樹脂を得るステップS2と、
【0048】
ステップS2で製造された高分子ポリマー樹脂に総投入量の0.1%のジブチルスズジラウレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(OH:NCO=0.98:1)を加え、100℃の温度で反応を6h行い、反応中に反応混合物を採取して赤外特性ピークテストを行い、反応混合物にイソシアネート赤外特性ピークが存在しなくなる時に反応を終了し、シラン末端樹脂を得るステップS3とを含む。
比較例1
【0049】
シラン末端樹脂の製造方法であって、それは、
【0050】
反応釜に100gのプロピレングリコール、総投入量に占める質量分率が0.2%であるNaを加え、三回窒素置換してから100±5℃まで昇温し、プロピレンオキサイドを1052g加え、圧力を0.4Mpa未満に制御し、完了した後に、圧力が下がらなくなるまで熟成し、降温して脱気して精製し、数平均分子量が790である低分子ポリマーを得るステップS1と、
【0051】
反応釜に100gのステップS1で得られた低分子ポリマー、総投入量に占める質量分率が0.002%である多金属シアン化物触媒を加え、三回窒素置換してから125±5℃まで昇温し、40min脱水し、さらに130-140℃まで昇温した後にプロピレンオキサイドを2178g加え(まず、10~30gのプロピレンオキサイドを加え、圧力を0.6Mpa未満に制御し、圧力があきらかに下った後に残りのプロピレンオキサイドを加え)、圧力を0.4Mpa未満に制御し、145±5℃の温度で、圧力が下がらなくなるまで熟成し、20min維持し、110℃±5℃まで降温した後に脱気して排出し、数平均分子量が15796である高分子ポリマー樹脂を得るステップS2と、
【0052】
ステップS2で製造された高分子ポリマー樹脂に総投入量の0.10%のジブチルスズジラウレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(OH:NCO=0.98:1)を加え、100℃の温度で反応を5h行い、反応中に反応混合物を採取して赤外特性ピークテストを行い、反応混合物にイソシアネート赤外特性ピークが存在しなくなる時に反応を終了し、シラン末端樹脂を得るステップS3とを含む。
【0053】
実施例1~4及び比較例1で得られた製品に対して液相分析を行い、結果を表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から分かるように、比較例1では、主鎖は、ポリオキシプロピレンエーテル鎖であり、動粘度は、32600mpa.s、25℃であり、実施例1~4の動粘度よりもはるかに高く、本発明では、加えられたセグメントにおけるRのアルキル基鎖が長いほど、製品の粘度が低くなり、分子鎖が柔らかくなり、動きやすくなることを示した。
実施例5
【0056】
低粘度シーラント用シラン末端樹脂の製造方法であって、それは、
【0057】
反応釜に100gのイソブチレングリコール、総投入量に占める質量分率が0.3%であるNaを加え、三回窒素置換してから100±5℃まで昇温し、プロピレンオキサイドとペンチレンオキサイドを一定の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイド混合物を345g加え、圧力を0.4Mpa未満に制御し、完了した後に、圧力が下がらなくなるまで熟成し、降温して脱気して精製し、数平均分子量が約400である低分子ポリマーを得るステップS1と、
【0058】
反応釜に100gのステップS1で得られた低分子ポリマー、総投入量に占める質量分率が0.005%である多金属シアン化物触媒を加え、三回窒素置換してから120~130℃まで昇温し、40min脱水し、さらに130-140℃まで昇温した後にプロピレンオキサイドとペンチレンオキサイドを5:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイド混合物を3680g加え(まず、10~30g加え、圧力を0.6Mpa未満に制御し、圧力があきらかに下った後に残りのアルキレンオキサイドを加え)、圧力を0.4Mpa未満に制御し、145±5℃の温度で、圧力が下がらなくなるまで熟成し、20min維持し、110℃±5℃まで降温した後に脱気して排出し、数平均分子量が15000である高分子ポリマー樹脂を得るステップS2と、
【0059】
ステップS2で製造された高分子ポリマー樹脂に総投入量の0.10%のジブチルスズジラウレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(OH:NCO=1:1)を加え、100℃の温度で反応を3h行い、反応中に反応混合物を採取して赤外特性ピークテストを行い、反応混合物にイソシアネート赤外特性ピークが存在しなくなる時に反応を終了し、シラン末端樹脂を得るステップS3とを含む。
実施例6
【0060】
本実施例と実施例5との相違点はただ、プロピレンオキサイドとペンチレンオキサイドを6:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイド混合物を3680g加えることである。
実施例7
【0061】
本実施例と実施例5との相違点はただ、プロピレンオキサイドとペンチレンオキサイドを7:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイド混合物を3680g加えることである。
実施例8
【0062】
本実施例と実施例5との相違点はただ、プロピレンオキサイドとペンチレンオキサイドを8:1の質量比に応じて混合した後に得たアルキレンオキサイド混合物を3680g加えることである。
比較例2
【0063】
本実施例と実施例5との相違点はただ、プロピレンオキサイドを3680g加えることである。
【0064】
実施例5~8及び比較例2で得られた製品に対して液相分析を行い、結果を表2に示した。
【0065】
【表2】
【0066】
表2から分かるように、製品の粘度は、ソフトセグメントの増加に伴って低下する。プロピレンオキサイドとペンチレンオキサイドとの割合が5:1である時、製品粘度はわずかに低下し、この原因は、ペンチレンオキサイドの増加に伴い、付加反応が困難となり、分子分布係数が1.101に達し、分子分布が広くなることにより樹脂の粘度が大きくなることである。
応用実施例1
【0067】
実施例1~4及び比較例1、実施例5~8及び比較例2で製造されたシラン末端樹脂をそれぞれシーラントに応用し、同じ方法でシーラントを製造した。前記シーラントの配合成分は、以下の質量百分率の成分からなる。
シラン末端樹脂 18%
フィーラー 50.2%
可塑剤 25%
チキソトロープ剤 1.2%
安定剤 0.6%
シラン助剤 4.5%
触媒 0.5%。
【0068】
上記配合成分では、フィーラーは、ナノ炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムを質量比2:1で混合した混合物であり、可塑剤はDINPであり、チキソトロープ剤はポリアミドワックスであり、安定剤は、酸化防止剤1076と光安定剤を質量比で1:1で混合した混合物であり、光安定剤は市販されている一般的な光安定剤であり、シラン助剤はビニルトリメトキシシラン(使用量が2%である)とKH792(使用量が2.5%)との混合物であり、触媒は、ジブチレンジラウレートである。
【0069】
測定により得られたシーラントの押出性、引張性能、引裂強さなどの性能について、結果を表3と表4に示した。
【0070】
【表3】
【0071】
表3から分かるように、実施例1~4は、比較例1に比べて押出性が明かに向上し、実施例1~4で製造されたシラン末端樹脂製品の応用中の流動性が向上し、且つ引張率と引裂強さがいずれも向上し、シラン末端樹脂の分子内部の柔軟性が向上し、応用中の引っ張り性が向上し、それによってシラン末端樹脂の応用中の接着機械的性能を向上させたことを示した。
【0072】
【表4】
【0073】
表4から分かるように、実施例5~8のシラン末端樹脂は、ペンチレンオキサイドの使用量の増加に伴い、押出性が良くなった。比較例2では、純粋なプロピレンオキサイドで製造されたシラン末端樹脂の押出性は、ただ302g/15sであり、破断強さは、0.60MPaであり、伸び率は308%まで降下し、引裂強さは、14.8kN/mであり、実施例5~8のポリエーテルセグメントの分岐度の高いシラン末端樹脂よりも著しく低い。
【0074】
上記実施形態は、本発明の好ましい実施形態だけであり、これによって本発明の保護範囲を限定することはできず、当業者が本発明に基づいて行う如何なる非実質的な変更及び置き換えも本発明の特許請求の範囲に属する。
【要約】      (修正有)
【課題】低粘度シーラント用シラン末端樹脂、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルコール系開始剤、アルカリ土類金属及びアルキレンオキシドによって低分子量ポリマーを合成し、さらに多金属シアン化物触媒とアルキレンオキシドを加えて高分子量ポリマーを合成し、最後に有機スズ触媒とイソシアネートシランを加えて反応を行ってシラン末端樹脂を得ることで、分子内に短鎖セグメントを導入し、本来の分子結晶を破壊することに成功し、分子内で可塑化し、分子鎖を柔らかくし、動きやすくすることによって、粘度を下げるという目的を達成した。
【選択図】なし