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特許7573084大型複合物の製造中の異質材料のコンパクトな自動検査
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】大型複合物の製造中の異質材料のコンパクトな自動検査
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/95 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023167819
(22)【出願日】2023-09-28
(62)【分割の表示】P 2019143778の分割
【原出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2023165947
(43)【公開日】2023-11-17
【審査請求日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】16/117,938
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ・サファイ
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-261885(JP,A)
【文献】特開2009-115613(JP,A)
【文献】特開2008-294317(JP,A)
【文献】特開2014-029336(JP,A)
【文献】特開2018-059899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
B29C 39/00 - B29C 39/24
B29C 39/38 - B29C 39/44
B29C 43/00 - B29C 43/34
B29C 43/44 - B29C 43/48
B29C 43/52 - B29C 43/58
B29C 64/00 - B29C 64/40
B29C 67/00 - B29C 67/08
B29C 67/24 - B29C 69/02
B29C 73/00 - B29C 73/34
B29D 1/00 - B29D 29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y 10/00 - B33Y 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合レイアッププロセス中に複合部品(206)の表面(10)を検査するシステム(100)であって、
複数の水平層(106)を画定するセンサハウジング(102)であって、前記センサハウジングが、
前記表面を照らす複数の発光ダイオード(LED)光供給源(108)と、
複数のカメラ(110)であって、前記複数のカメラの各カメラ(110a、110b、110c)が、前記複数の水平層の当該水平層(106a、106b、106c)内に配置され、光の波長の各範囲を検出する、複数のカメラ(110)と、
前記表面によって反射された光を共通入力レンズ(128)に通して受光するとともに、前記光を前記光の波長に応じて前記複数のカメラの前記カメラ(110a、110b、110c)のうちの1つへ向ける複数の光学装置(112)と、
を備える、センサハウジングと、
前記複数のカメラに通信可能に結合されたコントローラー(104)であって、前記コントローラーが、前記表面によって反射された前記光を示す前記複数のカメラからの信号を受信するとともに、前記複数のカメラからの前記信号を使用して前記表面上に異物デブリ材料あるかどうかを決定する、コントローラー(104)と
を備え、
前記システムが複合レイアップ機(200)に装着されるように構成され、前記システムが前記センサハウジングを冷却する冷却供給源(140)をさらに備える、システム(100)。
【請求項2】
前記複数のカメラが、前記複数の水平層のうちの第1の水平層(106a)内に配置された赤外線カメラ(110a)と、前記複数の水平層のうちの第2の水平層(106b)内に配置された紫外線光カメラ(110b)と、前記複数の水平層のうちの第3の水平層(106c)内に配置された可視光カメラ(110c)と、を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の光学装置が、前記複数の水平層のうちの第1の水平層(106a)内に配置された第1のダイクロイックフィルタ(130)を備え、前記第1のダイクロイックフィルタが、第1の波長範囲の光を前記第1の水平層より高い前記複数の水平層のうちの第2の水平層(106b)へ通すように構成され、前記第1のダイクロイックフィルタが、前記第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲の光を前記複数のカメラのうちの第1のカメラ(110a)へ反射するように構成され、前記第1のカメラが前記第2の波長範囲の光を検出するように構成されている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の光学装置が、前記第2の水平層内に配置された第2のダイクロイックフィルタ(132)をさらに備え、前記第2のダイクロイックフィルタが、第3の波長範囲の光を前記第2の水平層より高い前記複数の水平層のうちの第3の水平層(106c)へ通すように構成され、前記第2のダイクロイックフィルタが、前記第3の波長範囲とは異なる第4の波長範囲の光を前記複数のカメラのうちの第2のカメラ(110b)へ反射するように構成され、前記第2のカメラが前記第4の波長範囲の光を検出するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第3の水平層内に配置されたミラー(134)をさらに備え、前記ミラーが、前記第3の波長範囲の光を前記複数のカメラのうちの第3のカメラ(110c)へ反射するように構成され、前記第3のカメラが前記第3の波長範囲の光を検出するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数のLED光供給源が紫外線光LED光供給源(116)および可視光LED光供給源(118)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記紫外線光LED光供給源が第1のリング(122)内に配置された多数の紫外線光LED(120)を備え、前記可視光LED光供給源が第2のリング(126)内に配置された多数の可視光LED(124)を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
赤外線放射を前記表面の全体にわたって向ける熱励起供給源(212)をさらに備え、前記複数のカメラが、前記表面によって放出された赤外線光を示す信号を出力する赤外線カメラ(110a)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
空気ノズル(138)をさらに備え、前記コントローラーが、前記表面上に異物デブリ材料があるという決定に基づいて、空気を前記空気ノズルに通して前記表面上の異物デブリ材料の方へ向けさせるようにさらに構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記表面上に異物デブリ材料があるかどうかを示すデータを無線で送信する無線周波通信モジュール(146)をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサハウジングを窒素でパージする窒素パージシステム(144)をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラーは、前記表面によって反射された前記光を示す前記信号が前記表面の同じ領域によって反射された光を示すように前記複数のカメラのトリガリングを同期させるようにさらに構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
複合レイアッププロセス中に複合部品(206)の表面(10)を検査する方法(400)であって、
センサハウジング(102)の複数の発光ダイオード(LED)光供給源(108)を使用して前記表面を照らすステップ(402)であって、前記センサハウジングが複数の水平層(106)を画定し、複数のカメラ(110)を備え、前記複数のカメラの各カメラ(110a、110b、110c)が、前記複数の水平層の当該水平層(106a、106b、106c)内に配置され、光の波長の各範囲を検出するように構成されている、ステップ(402)と、
前記センサハウジングの複数の光学装置(112)を使用して、前記表面によって反射され、前記センサハウジングの共通入力レンズ(128)に通して受光された光を、前記光の波長に応じて前記複数のカメラの前記カメラ(110a、110b、110c)のうちの1つへ向けるステップ(404)と、
前記表面によって反射された前記光を示す信号を前記複数のカメラからコントローラー(104)で受信するステップ(406)と、
前記表面によって反射された前記光を示す前記信号を使用して前記表面上に異物デブリ材料があるかどうかを前記コントローラーで決定するステップ(408)と、
を含む方法(400)。
【請求項14】
前記表面上に異物デブリ材料があるという決定に基づいて空気を空気ノズル(138)に通して前記表面上の異物デブリ材料の方へ向けさせるステップ(414)をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に異物デブリ検出に関し、詳細には、複合レイアッププロセス中に異物デブリを検出するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、複合材料に固有の一般に高い強度重量比のために、アルミニウム合金や鋼合金などの従来の材料に代わるものとして様々な構造構成要素にますます使用されている。例えば、複合部品が航空機用の部品として現在使用されている。複合材料は一般に、層状に施された強化繊維網と、強化繊維を実質的にぬらして樹脂と強化繊維との間に密接な接触を形成するポリマー樹脂と、を含む。各層を形成するために高速複合レイアップ機を使用することができる。これらのレイアップ機は、複合材料を最大で毎分3000インチの速度で敷くことができる。
【0003】
しかしながら、硬化前に異物デブリまたは汚染物が成形複合部品上またはその中にあると問題が起こり得る。例えば、少量の閉じ込められた水分もしくは表面に付着した水分または他の種類の汚染物は、硬化が完了した後で複合材料の層間剥離および多孔性を引き起こす可能性がある。加えて、複合レイアップ中に使用される袋詰め材料、テフロン(登録商標)テープ、または呼吸材料の小片などのデブリが、複合層内に閉じ込められた状態になり、結果として複合部品内に層間剥離、多孔性、および/またはしわを引き起こす可能性がある。いくつかの異物デブリ材料は透明であるかまたは複合材料の表面色とよく調和しているので、可視光カメラを用いた異物デブリ材料の検出は困難または不可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異物デブリ材料が硬化前に検出されず除去されなければ、異物デブリ材料に起因するばらつきにより、部品全体が不合格になり得る。かかる部品の不合格は高くつく可能性があり、スケジュール遅延および在庫問題を引き起こす可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一例では、表面を検査するシステムが説明される。このシステムは、複数の水平層を画定するセンサハウジングおよびコントローラーを含む。センサハウジングは、複数の発光ダイオード(LED)光供給源、複数のカメラ、および複数の光学装置を含む。複数のLED光供給源は表面を照らすように構成されている。複数のカメラの各カメラは、複数の水平層の当該水平層内に配置され、光の波長の各範囲を検出するように構成されている。複数の光学装置は、表面によって反射された光を共通入力レンズに通して受光するとともに、この光を光の波長に応じて複数のカメラの上記カメラのうちの1つへ向けるように構成されている。コントローラーは複数のカメラに通信可能に結合される。加えて、コントローラーは、表面によって反射された光を示す複数のカメラからの信号を受信するとともに、複数のカメラからの信号を使用して表面上に異物デブリ材料があるかどうかを決定するように構成されている。
【0006】
別の例では、表面を検査するシステム用のセンサハウジングが説明される。センサハウジングは複数の水平層を画定し、複数のLED光供給源、複数のカメラ、および複数の光学装置を含む。複数のLED光供給源は表面を照らすように構成されている。複数のカメラの各カメラは、複数の水平層の当該水平層内に配置され、光の波長の各範囲を検出するように構成されている。複数の光学装置は、表面によって反射された光を共通入力レンズに通して受光するとともに、この光を光の波長に応じて複数のカメラの上記カメラのうちの1つへ向けるように構成されている。
【0007】
別の例では、表面を検査する方法が説明される。この方法は、センサハウジングの複数のLED光供給源を使用して表面を照らすステップを含む。センサハウジングは複数の水平層を画定し、複数のカメラを含む。複数のカメラの各カメラは、複数の水平層の当該水平層内に配置され、光の波長の各範囲を検出するように構成されている。この方法は、センサハウジングの複数の光学装置を使用して、表面によって反射されセンサハウジングの共通入力レンズに通して受光された光を、この光の波長に応じて複数のカメラの上記カメラのうちの1つへ向けるステップも含む。加えて、この方法は、表面によって反射された光を示す信号を複数のカメラからコントローラーで受信するステップを含む。さらに、この方法は、表面によって反射された光を示す信号を使用して表面上に異物デブリ材料があるかどうかをコントローラーで決定するステップを含む。
【0008】
論じられている形態、機能、および利点は、様々な例で独立に実現することができる、あるいは他の例では組み合わされてもよく、かかる形態、機能、および利点のさらなる詳細は、下記の説明および図を参照して理解することができる。
【0009】
例示的な例の特徴と考えられる新規な形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な例、ならびにこれらの例の好ましい使用モード、他の目的および説明は、本開示の例示的な例の下記の詳細な説明を参照して添付図と共に読んだときに最も良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一例による、表面を検査するシステムを示す図である。
図2】複合レイアップ機に装着された図1のシステムを示す図である。
図3】一例によるタイミング図である。
図4】一例による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、開示される例について、開示される例の全部ではなく一部が示されている添付図面を参照して以下でより詳しく説明する。実際、いくつかの異なる例が提供され得るが、本明細書に記載されている例に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの例は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0012】
本明細書に記載されるのは、異物デブリ材料を検出するシステムおよび方法である。このシステムおよび方法は、複合レイアッププロセス中に表面の異物デブリ材料を検査するために使用することができる。表面を検査する一システム例は、複数の水平層を画定するセンサハウジングを含み、コントローラーも含む。センサハウジングは、複数のLED光供給源、複数のカメラ、および複数の光学装置を含む。複数のLED光供給源は、複数のカメラが表面を撮影することができるように表面を照らすように構成されている。さらに、複数のカメラの各カメラは、光の波長の各範囲を検出するように構成されている。異物デブリ材料は、可視光などの光の第1の波長範囲で透過性であるが、紫外線光などの光の第2の波長範囲内では可視であり得る。したがって、光の異なる波長範囲をそれぞれ検出するように構成されている異なるカメラを使用すると、システムが異物デブリ材料を検出することができる光の全スペクトルを大きくすることができる。
【0013】
各カメラは、センサハウジングの複数の水平層の当該水平層内に配置され、表面によって反射された光をセンサハウジングの共通入力レンズに通して受光するように構成されている。複数の光学装置は、表面によって反射された光をこの光の波長に応じて複数のカメラの上記カメラのうちの1つへ向けるように構成されている。一例として、複数のカメラは、第1の水平層内に配置された紫外線光カメラおよび第2の水平層内に配置された可視光カメラを含むことができる。複数の光学装置は、紫外線光を紫外線光カメラへ向け、可視光を可視光カメラへ向けることができる。例えば、複数の光学装置は、可視光が第2の水平層へと通過できるようにするが、紫外線光を紫外線光カメラへ反射する、第1の水平層内に配置されたダイクロイックフィルタを含むことができる。
【0014】
複数の異なるカメラをそれぞれの水平層内にこのように配置することには、いくつかの利点がある。複数のカメラの各カメラが表面によって反射された光を共通入力レンズに通して受光する能力により、各カメラは表面上の同じ領域を同時に撮影することが可能になる。したがって、その領域に対応する1つのカメラから受信した信号が、その同じ領域に対応する1つまたは複数の他のカメラから受信した信号と共に処理され、それによって異物デブリ材料の検出を改善することができる。各カメラが同じ領域を同時に撮影する能力は異物デブリ材料の箇所を正確に示すのを容易にすることもでき、したがって異物デブリ材料を除去することができる。各カメラが光を異なる当該光学アセンブリに通して受光し、水平方向にかつ/または垂直方向に互いにずらして置かれる従来の検査システムでは、異なるカメラから受信した信号を、異物デブリ材料の箇所を決定するように相互に関連させるのが困難となり得る。この困難は、システムが高速度で移動している複合レイアップ機に装着されるときに増大する。本明細書に記載されているシステムは、各カメラが同じ領域を同時に撮影するので、異なるカメラから受信した信号を合成し一緒に処理するのを容易にする。
【0015】
さらに、単一のセンサハウジング内に各カメラを配置し、各カメラが光を共通入力レンズに通して受光できるようすることで検査システムの全重量を減少させる。検査システムが複合レイアップ機のヘッドに装着される場合、ヘッドは限られた重量を支持するように設計されることがある。この重量は、レイアップ材料(例えば繊維スプール(spool of fiber))と検査システムと他の構成要素との間に配分され得る。検査システムの重量を減少させることにより、複合レイアップ機はより多くのレイアップ材料を支持することが可能になり、それによってダウンタイムを短縮し、効率を高める。検査システムの重量を減少させることにより、複合レイアップ機のヘッドにかかる歪量を低減することもできるので、検査システムはより高速でかつ/またはより高い加速度で移動することが可能になる。
【0016】
システムのコントローラーは複数のカメラに結合され、表面によって反射された光を示す複数のカメラからの信号を受信するように構成されている。コントローラーはまた、表面上に異物デブリ材料があるかどうかを決定するために複数のカメラからの信号を使用するようにも構成されている。例えば、コントローラーが表面上に異物デブリ材料があると決定すれば、コントローラーは、空気を検査システムの空気ノズルに通して表面上の異物デブリ材料の方へ向けさせて、異物デブリ材料が表面から除去され、複合部品内に閉じ込められた状態にならないようにすることができる。
【0017】
いくつかの例では、コントローラーは、表面によって反射された光を示す信号が表面の同じ領域によって反射された光を示すように複数のカメラの当該カメラのトリガリングを同期させるように構成され得る。上記の議論に沿って、これにより、コントローラーは、その領域に対応する1つのカメラからの信号を、その領域に対応する1つまたは複数の他のカメラから受信した信号と共に処理することが可能になり、それによって異物デブリ材料の検出が改善される。検査システムが複合レイアップ機に装着される場合、コントローラーは、複数のカメラの当該カメラが複合レイアップ機のレイアップ速度に応じて動作するフレームレートを調整するように構成され得る。この調整で、検査システムは、複合レイアップ機の速度にかかわらず比較的一定の最小欠陥検出サイズ(例えば、10分の1インチ)を維持することができる。例えば、レイアップ速度が上がると、コントローラーは、複数のカメラの上記カメラのうちの1つまたは複数のフレームレートを増大させることができる。
【0018】
本明細書に記載されているシステムは、製造されている複合部品の表面上の異物デブリ材料の検出を高めるために熱励起を使用することもできる。複数のカメラは赤外線カメラを含むことができ、熱励起供給源は、赤外線カメラの前方に一定距離を置いて配置することができ、したがって、異物デブリ材料があれば、この材料は、異物デブリ材料が熱を吸収し、この熱を、赤外線カメラが異物デブリ材料を有する複合部品の領域を撮影するときまでに検出されるのに十分な熱コントラストで再放出する。事実上、加熱された異物デブリ材料は赤外線エミッタになり得る。この赤外線走査技法により、異物デブリ材料および複合部品によって放出される熱の差に基づいて、可視光に対して透過性であり得る異物デブリ材料の検出が可能になる。
【0019】
上記のシステム、ならびに対応する方法の他の様々な形態および変形形態について、添付図を参照しながら以下で説明する。
【0020】
ここで図1を参照すると、図1は、一例による、表面10を検査するシステム100を示す。図1に示されているように、システム100はセンサハウジング102およびコントローラー104を含む。さらに、センサハウジング102は複数の水平層106を画定し、複数のLED光供給源108、複数のカメラ110、および複数の光学装置112を含む。
【0021】
複数のLED光供給源108は表面10を照らすように構成されている。表面10は複合部品の表面とすることができる。表面10を照らすと光は表面10に反射することができ、次いでこの光は複数のカメラ110で取り込むことができる。複数のLED光供給源108は有線または無線リンク経由でコントローラー104に結合され、それによってコントローラー104は複数のLED光供給源108による照明を制御することができる。コントローラー104により、複数のLED光供給源108は検査中に表面10を絶えず照らすことができる。あるいは、コントローラー104により、複数のLED光供給源108は表面10を周期的に照らすことができる。表面10を絶えず照らすと、システム100の複雑さを軽減することができる。一方、表面10を周期的に照らすと、システム100によって消費される電力量を低減することができる。センサハウジング102の切開上面図114に示されているように、複数のLED光供給源108は、紫外線光LED光供給源116および可視光LED光供給源118を含むことができる。紫外線光LED光供給源116を使用すると、可視光に対して透過性である異物デブリ材料を照らすのに役立つことができる。
【0022】
紫外線光LED光供給源116は、第1のリング122内に配置された多数の紫外線光LED 120を含むことができる。同様に、可視光LED光供給源118は、第2のリング126内に配置された多数の可視光LED 124を含むことができる。この構成により、複数のLED光供給源108は表面10のある領域の比較的均一な照明を提供することが可能になる。あるいは、紫外線光LED 120および/または可視光LED 124は別の幾何形状に配置することができる。センサハウジング102は、複数のLED光供給源108によって提供される照明を集中させるためのバイナリ光学レンズ(binary optical lens)も含むことができる。
【0023】
複数のカメラ110の各カメラは、複数の水平層106の当該水平層内に配置され、光の波長の各範囲を検出するように構成されている。例えば、各カメラは、最小波長と最大波長との間の波長を有する光を検出するように構成され得る。具体的には、複数のカメラ110は、第1の水平層106A内に配置され、第1の波長範囲(例えば、700 nm~1 mm)の光を検出するように構成されている第1のカメラ110Aと、第2の水平層106B内に配置され、第2の波長範囲(例えば、10 nm~400 nm)の光を検出するように構成されている第2のカメラ110Bと、第3の水平層106C内に配置され、第3の波長範囲(例えば、390 nm~700 nm)の光を検出するように構成されている第3のカメラ110Cと、を含む。第1のカメラ110A、第2のカメラ110B、および第3のカメラ110Cはそれぞれ、有線または無線リンク経由でコントローラー104に接続することができ、したがって、コントローラー104は、第1のカメラ110A、第2のカメラ110B、および第3のカメラ110Cを制御することができ、第1のカメラ110A、第2のカメラ110B、および第3のカメラ110Cからデータを受信することができる。
【0024】
第1のカメラ110Aは、赤外線光を検出するように構成されているとともに、表面によって反射された赤外線光を示す信号を出力するように構成されている赤外線カメラとすることができる。本明細書では、「表面によって反射された赤外線光」という言い回しは、熱を吸収し赤外線エミッタとして働いている表面上の異物デブリ材料によって放出される赤外線放射を含むことができる。第2のカメラ110Bは、紫外線光を検出するように構成されているとともに、表面によって反射された紫外線光を示す信号を出力するように構成されている紫外線カメラとすることができる。さらに、第3のカメラ110Cは、可視光を検出するように構成されているとともに、表面によって反射された可視光を示す信号を出力するように構成されている可視光カメラとすることができる。第2のカメラ110Bおよび第3のカメラ110Cはそれぞれ、毎秒150,000ラインの速度で動作することができるラインスキャンカメラとすることができる。この動作速度では、システム100が毎分約3,000インチの速度で移動しているときに10分の1インチという小さな異物デブリ材料を検出することができる。あるいは、第1のカメラ110Aは紫外線カメラとすることができ、第2のカメラ110Bは可視光カメラとすることができ、第3のカメラ110Cは赤外線カメラとすることができる。さらに、第1のカメラ110Aは可視光カメラとすることができ、第2のカメラ110Bは赤外線カメラとすることができ、第3のカメラ110Cは紫外線カメラとすることができる。他の例も考えられる。
【0025】
赤外線カメラ、紫外線カメラ、および可視光カメラを含むことで、異物デブリ材料を光の広域スペクトルにわたって検出する能力もつシステム100を提供することができる。システム100は、反射可視光に基づいて検出されないかもしれないが、反射紫外線光および/または反射赤外線光に基づいて検出され得る異物デブリ材料を検出することができる。システム100は、反射紫外線光に基づいて検出されないかもしれないが、反射赤外線光および/または反射可視光に基づいて検出され得る異物デブリ材料を検出することもできる。さらに、システム100は、反射赤外線光に基づいて検出されないかもしれないが、反射可視光および/または反射紫外線光に基づいて検出され得る異物デブリ材料を検出することもできる。
【0026】
上記の議論に沿って、センサハウジング102内に複数の異なるカメラを設けるとシステム100の全重量を減少させることができる、というのは、各カメラがそのカメラ自体の対応するセンサハウジングを必要としないからである。センサハウジング102内に複数の異なるカメラを設けると、表面10上の異物デブリ材料の箇所を正確に示す複雑さを軽減することもでき、したがって異物デブリ材料を除去することができる。
【0027】
複数の光学装置112は、表面10によって反射された光を共通入力レンズ128に通して受光するとともに、この光を光の波長に応じて複数のカメラ110のカメラのうちの1つへ向けるように構成されている。共通入力レンズ128は、赤外線光、紫外線光、および可視光がセンサハウジング102の中に受光され得るように広帯域入力レンズとすることができる。広帯域入力レンズは、赤外線光、紫外線光、および可視光が通過することができるレンズである。図1に示されているように、複数の光学装置112は、第1の水平層106A内に配置された第1のダイクロイックフィルタ130と、第2の水平層106B内に配置された第2のダイクロイックフィルタ132と、第3の水平層106C内に配置されたミラー134と、を含む。ダイクロイックフィルタは、ある波長範囲内の光を選択的に通し、その波長範囲外にある光を反射する光学装置である。
【0028】
第1のダイクロイックフィルタ130は、第1の波長範囲の光を第2の水平層106Bへ通すとともに、第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲の光を第1のカメラ110Aへ反射するように構成され得る。これを実現するために、第1のダイクロイックフィルタ130は、第1の波長範囲に対応する帯域通過フィルタ130Aで被覆され得る。当業者なら、第1のダイクロイックフィルタ130は、第1のダイクロイックフィルタ130が第1の波長範囲の光を通すとともに、第2の波長範囲の光を反射するように、帯域通過フィルタ130Aの代わりにまたは帯域通過フィルタ130Aに加えて他の光学コーティングで被覆され得ることを理解するであろう。例えば、第1のダイクロイックフィルタ130は、特定のカットオフ波長より短いすべての波長を透過させるショートパスフィルタで被覆することができる。
【0029】
さらに、第2のダイクロイックフィルタ132は、第3の波長範囲の光を第3の水平層106Cへ通すとともに、第3の波長範囲とは異なる第4の波長範囲の光を第2のカメラ110Bへ反射するように構成され得る。これを実現するために、第2のダイクロイックフィルタ132は、第3の波長範囲に対応する帯域通過フィルタ132Aで被覆され得る。当業者なら、第2のダイクロイックフィルタ132は、第2のダイクロイックフィルタ132が第3の波長範囲の光を通すとともに、第4の波長範囲の光を反射するように、帯域通過フィルタ132Aの代わりにまたは帯域通過フィルタ132Aに加えて他の光学コーティングで被覆され得ることを理解するであろう。例えば、第2のダイクロイックフィルタはショートパスフィルタで被覆することができる。
【0030】
さらに、ミラー134は、第3の波長範囲の光を第3のカメラ110Cへ反射するように構成され得る。このようにして、第1のダイクロイックフィルタ130、第2のダイクロイックフィルタ132、およびミラー134は、共通入力レンズ128を通って受光された光の異なる部分を光のそれらの部分の波長に基づいて分離し、光のそれら部分を複数のカメラ110の異なるカメラへ向けることができる。
【0031】
一例として、第1のダイクロイックフィルタ130は、紫外線光および可視光を第2の水平層106Bへ通すとともに、赤外線光を第1のカメラ110Aへ反射するように構成され得る。さらに、次いで、第2のダイクロイックフィルタ132は、第1のダイクロイックフィルタ130を通過した可視光を第3の水平層106Cへ通すとともに、第1のダイクロイックフィルタ130を通過した紫外線光を第2のカメラ110Bへ反射するように構成され得る。さらに、ミラー134は、第2のダイクロイックフィルタ132を通過した可視光を第3のカメラ110Cへ反射するように構成され得る。このようにして、第1のダイクロイックフィルタ130、第2のダイクロイックフィルタ132、およびミラー134は、赤外線光を第1のカメラ110Aへ向け、紫外線光を第2のカメラ110Bへ向け、可視光を第3のカメラ110Cへ向けることができる。
【0032】
センサハウジング102は、望まれない放射がセンサハウジング102内に入らないようにするように構成されている偏光子136も含むこともできる。偏光子136は、例えば、蛍光がセンサハウジング102内に入るのを妨げ、それによってその蛍光が複数のカメラ110のカメラによって検出されるのを妨げることができる。
【0033】
コントローラー104は、プロセッサと、本明細書に記載されている計算装置機能のいずれかを実施するためにプロセッサによって実行可能なプログラム命令を保存する非一時的コンピューター読み取り可能な媒体と、を含むことができる。プロセッサは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マルチコアプロセッサなど、任意のタイプのプロセッサとすることができる。あるいは、コントローラー104は、プログラム命令を実行するように構成されている一群のプロセッサ、または当該プログラム命令を実行するように構成されている複数群のプロセッサを含むことができる。コントローラー104は、ディスプレイ、入力装置、および1つまたは複数の通信ポートも含むことができ、コントローラー104は、通信ポートを介してシステム100の他の装置と通信するように構成されている。
【0034】
コントローラー104は、表面10によって反射された光を示す複数のカメラ110からの信号を受信するように構成され得る。例として、コントローラー104は、表面によって反射された紫外線光を示す信号を紫外線光カメラから受信し、表面によって反射された可視光を示す信号を可視光カメラから受信し、かつ/または表面によって反射された赤外線光を示す信号を赤外線カメラから受信するように構成され得る。
【0035】
加えて、コントローラー104は、複数のカメラからの信号を使用して表面上に異物デブリ材料があるかどうかを決定するように構成され得る。表面10は複合部品の表面とすることができる。したがって、表面10は、反射可視光、反射紫外線光、または反射赤外線光のうちの1つまたは複数に関して、表面上の異物デブリ材料の特性とは異なる特性を有することができる。コントローラー104は、複数のカメラ110から受信した信号の異常を検出し、検出された異常を表面10上の異物デブリ材料を示すものとして識別するために、画像処理技法を使用することができる。
【0036】
例えば、コントローラー104は、表面10の清潔なサンプル上で複数のカメラ110の各カメラを較正することができる。較正プロセスは、複数のカメラ110のための信号強度閾値などの1つまたは複数の閾値レベルを設定することができる。赤外線信号の場合、信号強度は温度を表すことができる。可視光信号または紫外線光信号の場合、信号強度は明るさレベルを表すことができる。異物デブリ材料が表面10上にあるとき、コントローラー104は、第1のカメラ110A、第2のカメラ110B、および第3のカメラ110Cのうちの1つまたは複数から受信した信号が1つまたは複数の閾値レベルを満たす(例えば、受信信号が閾値レベルを上回るまたは下回る)と決定することができる。このようにして、コントローラー104は、異物デブリ材料が表面10上にあると認識することができる。
【0037】
以下でより詳細に説明するように、コントローラー104は、表面によって反射された光を示す信号が表面の同じ領域によって反射された光を示すように複数のカメラ110のカメラのトリガリングを同期させるように構成され得る。例えば、コントローラー104により、複数のカメラ110のカメラのそれぞれがシステムクロックに関して定義された時刻に撮影を開始し、次いで周期的なレートで光を撮影し続けることができる。この同期により、コントローラー104は複数のカメラから受信した信号を同時に処理することが可能になる、というのは、これらの信号はそれぞれ表面10の同じ領域に対応しているからである。
【0038】
コントローラー104は、有線または無線リンク経由で空気ノズル138に結合され得る。表面10が異物デブリ材料を含んでいると決定するのに応答して、コントローラー104は、異物デブリ材料が表面10から吹き飛ばされるように、空気を空気ノズル138に通して表面10上の異物デブリ材料の方へ向けさせることができる。
【0039】
コントローラー104は、システム100が装着されている複合レイアップ機から速度データを受信することもできる。速度データは、システム100が装着されている複合レイアップ機のヘッドが移動している速度を示す光学エンコーダデータとすることができる。コントローラー104は、受信速度データを使用して空気を空気ノズル138に通して方向付けさせるべきときを決定することができ、それによって空気は表面10から異物デブリ材料を吹き飛ばす。
【0040】
コントローラー104は、受信速度データを使用して、複数のカメラ110の当該カメラが動作するフレームレートを調整することもできる。複合レイアップ機のヘッドの速度が上昇するにつれて、コントローラー104は、複数のカメラ110のカメラが動作するフレームレートを増大させることができる。逆に、この速度が低下するにつれて、コントローラー104は、複数のカメラ110のカメラが動作するフレームレートを減少させることができる。この調整で、検査システムは、複合レイアップ機の速度にかかわらず比較的一定の最小欠陥検出サイズ(例えば、10分の1インチ)を維持することができる。
【0041】
システム100は冷却供給源140を含むこともできる。冷却供給源は、システム100が高温環境内で動作するときにセンサハウジング102の温度を下げ、センサハウジング102の構成要素が過熱するのを防止する。例えば、システム100は、樹脂繊維を含侵させるためのヒートガンを有する複合レイアップ機に装着され得る。そのような環境内で、冷却供給源140は複数のカメラ110が加熱するのを防止することができる。冷却供給源140は固体熱電冷却器142を含むことができる。この種の冷却器は、サイズが比較的小さくかつ可動部品が少ないので、システム100の全重量および複雑さを減じるのに有利である。
【0042】
さらに、システム100は、センサハウジング102を窒素でパージするように構成されている窒素パージシステム144を含むことができる。センサハウジング102を窒素でパージすることは、水分および他の気中浮遊汚染物質が複数の光学装置112に影響を及ぼさないようにするのに役立つことができる。例えば、センサハウジング102を窒素でパージすることは、水分および気中浮遊汚染物質がセンサハウジング102内の複数の光学装置112と相互作用する光に干渉しないようにするのに役立つことができる。
【0043】
システム100は無線周波通信モジュール146も含むことができる。無線周波通信モジュール146は、データを無線で送信および/または受信するためのアンテナおよび回路網を含むことができる。無線周波通信モジュール146はコントローラー104に結合され得る。システム100は、表面10上に異物デブリ材料が存在するのを示すデータなどのデータを別の装置に無線で送信するために無線周波通信モジュール146を使用することができる。その場合、他の装置は、オペレータが適切な是正措置を取ることができるように、表面10上に異物デブリ材料が存在するのを示す可聴または可視指示を提供することができる。
【0044】
上述のように、システム100は複合レイアップ機に装着され得る。図2は、複合レイアップ機200のヘッド202に装着された図1のシステム100を示す。図2に示されているように、ヘッド202は複合ロール204を含む。ヘッド202が矢印208で示されている方向に複合部品206を横切って移動するにつれて、ヘッド202は新しい層210を複合部品206上に敷く。異物デブリ材料が複合部品206上に存在するときに問題が起こり得る。複合レイアップ機200のヘッド202にシステム100を装着することにより、システム100は、新しい層210が異物デブリ材料の上に置かれる前に複合部品206上に異物デブリ材料があればこれを検出し除去することが可能になる。
【0045】
図2は、システム100に結合された熱励起供給源212も示す。熱励起供給源212は、複合レイアップ機200の前方に一定距離を置いて熱エネルギーを放出することができ、したがって、異物デブリ材料があれば、この材料は、熱を吸収し、この熱を、第1のカメラ110Aなどの赤外線カメラが異物デブリ材料を有する複合部品206の領域を撮影するときまでに検出されるのに十分な熱コントラストで再放出する。事実上、加熱された異物デブリ材料は、熱励起供給源212が異物デブリ材料を励起した数ミリ秒後にアクティブ赤外線エミッタとなり得る。この赤外線走査技法により、異物デブリ材料および複合部品206によって放出される熱の差に基づいて可視光に対して透過性であり得る異物デブリ材料を検出することが可能になる。
【0046】
図3は一例によるタイミング図300を示す。タイミング図300は、3つの異なるカメラ、すなわち可視光カメラ、紫外線光カメラ、および赤外線カメラの動作を、この3つのカメラが統合ウィンドウ302の間に表面の同じ領域を撮影するように同期させることができる方法を示す。統合ウィンドウ302は周期的に繰り返す期間である。
【0047】
図3に示されているように、図1のコントローラー104などのコントローラーは、統合ウィンドウ302の開始を示す1次同期パルス304を設定することができる。さらに、コントローラーは、統合ウィンドウ302内の取込期間306(無地のブロックで表してある)中に入射光を取り込むように可視光カメラおよび紫外線光カメラを構成することができる。例えば、コントローラーは、可視光カメラおよび紫外線光カメラが統合ウィンドウ302内の4つのサブフレーム308のそれぞれの間に1サブフレーム308につき1回入射光を取り込むように、可視光カメラおよび紫外線光カメラを構成することができる。サブフレーム308の長さは、データ転送期間310(斜線網掛けブロックで表してある)で示されているように、可視光カメラおよび紫外線光カメラがデータを転送する時間を含む。
【0048】
加えて、コントローラーは、熱励起期間312(クロスハッチ網掛けブロックで表してある)中に表面を励起するように熱励起供給源を構成することができる。熱励起期間312の長さは、統合ウィンドウ302の最初の2つのサブフレームにまたがることができる。コントローラーは、統合ウィンドウ302内の少なくとも2つのサブフレームにまたがる取込期間中に入射光(換言すれば「走査」)を取り込むように赤外線カメラを構成することもできる。この配置は有利であり、熱励起供給源によって放出された赤外線光は、赤外線カメラが入射光を取り込んでいるときに赤外線カメラを飽和状態にしないようにする。
【0049】
タイミング図300が示すとおり、本明細書に記載されているシステムは、可視光カメラおよび紫外線光カメラが、赤外線カメラが動作する速度より速い速度で動作できるかもしれないという事実を利用することができる。統合ウィンドウ302のために3つのカメラから受信した信号を処理する場合、コントローラーは、統合ウィンドウ302内の4つの取込期間に対応する、可視光カメラから受信した信号を平均化することができる。同様に、コントローラーは、統合ウィンドウ302内の4つの取込期間に対応する、紫外線光カメラから受信した信号を平均化することができる。この種の平均化は、紫外線光カメラおよび可視光カメラから受信した信号からノイズを低減し、それによってシステムが異物デブリ材料を検出する能力を高めるのに役立つことができる。
【0050】
図4は一例による方法400の流れ図を示す。図4に示されている方法400は、例えば、例えば図1および図2に示されているシステム100、または本明細書で開示されるシステムのいずれかで使用され得る方法の一実施形態を示す。システム100の構成要素など、本明細書に記載されている装置例またはシステム例のいずれも、図4に示されている論理機能を実行するために使用または構成され得る。
【0051】
方法400は、ブロック402~414のうちの1つまたは複数によって例示されている1つまたは複数の操作、機能、または動作を含むことができる。これらのブロックは連続した順序で示されているが、これらのブロックは、並列に実行されてもよく、かつ/または本明細書に記載されているものとは異なる順序で実行されてもよい。また、種々のブロックは、組み合わせてより少ないブロックにされてもよく、分割して追加ブロックにされてもよく、かつ/または所望の実施に基づいて除去されてもよい。
【0052】
本明細書で開示されるこのおよびその他のプロセスならびに方法では、流れ図が本発明の実施形態の1つの可能な実施態様の機能および操作を示すことが理解されるべきである。これに関して、各ブロックは、プロセス内の特定の論理機能またはステップを実行するためのプロセッサによって実行可能な1つまたは複数の命令を含む、プログラムコードのモジュール、セグメント、または一部を表すことがある。プログラムコードは、任意のタイプのコンピューター読み取り可能な媒体またはデータ記憶装置、例えば、ディスクドライブまたはハードドライブを含む記憶装置などに保存され得る。コンピューター読み取り可能な媒体は、非一時的コンピューター読み取り可能な媒体またはメモリ、例えば、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、およびRAMのように短期間にデータを保存するコンピューター読み取り可能な媒体などを含むことができる。コンピューター読み取り可能な媒体は他の揮発性または不揮発性記憶システムでもよい。コンピューター読み取り可能な媒体は、例えば、有形コンピューター読み取り可能な記憶媒体と見なすことができる。
【0053】
最初に、ブロック402で、方法400は、センサハウジングの複数のLED光供給源を使用して表面を照らすステップを含む。表面は複合部品の表面とすることができる。表面を照らすステップには、コントローラーが複数のLED光供給源に表面を絶えず照らさせることが必要であり得る。複数のLED光供給源は、例えば、紫外線光LED光供給源および可視光LED光供給源を含むことができる。いくつかの例では、ブロック402は、熱励起供給源に赤外線放射を表面全体にわたって向けさせるステップも含むことができる。
【0054】
センサハウジングは複数の水平層を画定し、複数のカメラを含むことができる。各カメラは、複数の水平層の当該水平層内に配置され得る。各カメラを異なる水平層に配置することにより、センサハウジンング内の複数の光学装置は、ハウジング内に受光した光の各部分を分離させ、その光の各部分を異なるカメラへ向けることが可能になる。各カメラは、光の波長の各範囲を検出するように構成され得る。例えば、第1のカメラは赤外線光を検出するように構成されている赤外線カメラとすることができ、第2のカメラは紫外線光を検出するように構成されている紫外線光カメラとすることができ、第3のカメラは可視光を検出するように構成されている可視光カメラとすることができる。
【0055】
ブロック404で、方法400は、センサハウジングの複数の光学装置を使用して、表面によって反射されセンサハウジングの共通入力レンズに通して受光された光を、この光の波長に応じて複数のカメラの上記カメラのうちの1つへ向けるステップを含む。複数の光学装置は、第1の波長範囲内の光が通過できるようにするが、第1の波長範囲外にある光を反射する1つまたは複数のダイクロイックフィルタを含むことができる。表面によって反射された光を、その光の波長に応じてカメラのうちの1つへ向けるには、第1のダイクロイックフィルタを使用して赤外線光を赤外線カメラへ反射するとともに、紫外線光および可視光が第1のダイクロイックフィルタを通過できるようにすることが必要であり得る。さらに、次いで、第2のダイクロイックフィルタが、第1のダイクロイックフィルタを通過した紫外線光を紫外線光カメラへ反射するとともに、可視光が第2のダイクロイックフィルタを通過できるようにすることができる。さらに、次いで、ミラーが、第2のダイクロイックフィルタを通過した可視光を可視光カメラへ反射することができる。
【0056】
ブロック406で、方法400は、表面によって反射された光を示す信号を複数のカメラからコントローラーで受信するステップを含む。例として、コントローラーは、表面によって反射された紫外線光を示す紫外線光カメラ信号を紫外線光カメラから受信し、表面によって反射された可視光を示す信号を可視光カメラから受信し、かつ/または表面によって反射された赤外線光を示す信号を赤外線カメラから受信することができる。
【0057】
ブロック408で、方法400は、表面によって反射された光を示す信号を使用して表面上に異物デブリ材料があるかどうかをコントローラーで決定するステップを含む。表面上に異物デブリ材料があるかどうかを決定するには、複数のカメラから受信した信号の異常を検出し、検出された異常を表面上の異物デブリ材料を示すものとして識別するために、画像処理技法を使用することが必要であり得る。
【0058】
例えば、コントローラーは、表面の清潔なサンプル上で複数のカメラの各カメラを以前に較正したかもしれない。較正プロセスは、複数のカメラのための信号強度閾値などの1つまたは複数の閾値レベルを設定することができる。赤外線信号の場合、信号強度は温度を表すことができる。可視光信号または紫外線光信号の場合、信号強度は明るさレベルを表すことができる。次いで、表面上に異物デブリ材料があるかどうかを決定するには、複数のカメラのうちの1つまたは複数から受信した信号が1つまたは複数の対応する閾値レベルを満たす(例えば、受信信号が閾値レベルを上回るまたは下回る)かどうかを決定することが必要であり得る。信号が1つまたは複数の閾値レベルを満たすのに基づいて、コントローラーは、表面上に異物デブリ材料があると決定することができる。逆に、信号が1つまたは複数の閾値レベルを満たさないのに基づいて、コントローラーは、表面上に異物デブリ材料が全くないと決定することができる。
【0059】
随意に、表面上に異物デブリ材料が全くないという決定に基づいて、次いでブロック410で、合格指示を与えることができる。例えば、表面上に異物デブリ材料が全くないと決定すると、コントローラーは、音声要素(例えば、スピーカまたはブザー)が可聴合格指示を与えかつ/または照明要素(例えば、LEDまたはディスプレイ)が視覚的合格指示を与えるようにすることができる。一方、表面上に異物デブリ材料があるという決定に基づいて、次いでブロック412で、不合格指示を与えることができる。合格指示と同じように、不合格指示は可聴指示または視覚的指示とすることができる。
【0060】
方法400は、ブロック414で、表面上に異物デブリ材料があるという決定に基づいて空気を空気ノズルに通して表面上の異物デブリ材料の方へ向けるステップも含むことができる。表面上に異物デブリ材料があると決定すると、コントローラーは、空気を空気ノズルに通し表面の方へ向けさせることができる。このようにして、空気は、表面から異物デブリ材料を吹き飛ばすことができる。
【0061】
1項.表面を検査するシステムであって、複数の水平層を画定するセンサハウジングであって、センサハウジングが、表面を照らす複数の発光ダイオード(LED)光供給源と、複数のカメラであって、複数のカメラの各カメラが、複数の水平層の当該水平層内に配置され、光の波長の各範囲を検出する、複数のカメラと、表面によって反射された光を共通入力レンズに通して受光するとともに、その光を光の波長に応じて複数のカメラの上記カメラのうちの1つへ向ける複数の光学装置と、を備える、センサハウジングと、複数のカメラに通信可能に結合されたコントローラーであって、コントローラーが、表面によって反射された光を示す複数のカメラからの信号を受信するとともに、複数のカメラからの信号を使用して表面上に異物デブリ材料あるかどうかを決定する、コントローラーとを備える、システム。
2項.システムが複合レイアップ機に装着されるように構成され、システムがセンサハウジングを冷却する冷却供給源をさらに備える、1項に記載のシステム。
3項.システムが複合レイアップ機のヘッドに装着されるように構成されている、2項に記載のシステム。
4項.冷却供給源が固体熱電冷却器を備える、2項に記載のシステム。
5項.複数のカメラが、複数の水平層のうちの第1の水平層内に配置された赤外線カメラと、複数の水平層のうちの第2の水平層内に配置された紫外線光カメラと、複数の水平層のうちの第3の水平層内に配置された可視光カメラと、を備える、1項から4項のいずれか一項に記載のシステム。
6項.複数の光学装置が、複数の水平層のうちの第1の水平層内に配置された第1のダイクロイックフィルタを備え、第1のダイクロイックフィルタが、第1の波長範囲の光を第1の水平層より高い複数の水平層のうちの第2の水平層へ通すように構成され、第1のダイクロイックフィルタが、第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲の光を複数のカメラのうちの第1のカメラへ反射するように構成され、第1のカメラが第2の波長範囲の光を検出するように構成されている、1項から5項のいずれか一項に記載のシステム。
7項.第1のダイクロイックフィルタが、第1の波長範囲に対応する帯域通過フィルタで被覆される、6項に記載のシステム。
8項.複数の光学装置が、第2の水平層内に配置された第2のダイクロイックフィルタをさらに備え、第2のダイクロイックフィルタが、第3の波長範囲の光を第2の水平層より高い複数の水平層のうちの第3の水平層へ通すように構成され、第2のダイクロイックフィルタが、第3の波長範囲とは異なる第4の波長範囲の光を複数のカメラのうちの第2のカメラへ反射するように構成され、第2のカメラが第4の波長範囲の光を検出するように構成されている、6項または7項に記載のシステム。
9項.第3の水平層内に配置されたミラーをさらに備え、ミラーが、第3の波長範囲の光を複数のカメラのうちの第3のカメラへ反射するように構成され、第3のカメラが第3の波長範囲の光を検出するように構成されている、8項に記載のシステム。
10項.複数のLED光供給源が紫外線光LED光供給源および可視光LED光供給源を備える、1項から9項のいずれか一項に記載のシステム。
11項.紫外線光LED光供給源が第1のリング内に配置された多数の紫外線光LEDを備え、可視光LED光供給源が第2のリング内に配置された多数の可視光LEDを備える、10項に記載のシステム。
12項.赤外線放射を表面全体にわたって向ける熱励起供給源をさらに備え、複数のカメラが、表面によって放出された赤外線光を示す信号を出力する赤外線カメラを備える、1項から11項のいずれか一項に記載のシステム。
13項.空気ノズルをさらに備え、コントローラーが、表面上に異物デブリ材料があるという決定に基づいて、空気を空気ノズルに通して表面上の異物デブリ材料の方へ向けさせるようにさらに構成されている、1項から12項のいずれか一項に記載のシステム。
14項.表面上に異物デブリ材料があるかどうかを示すデータを無線で送信する無線周波通信モジュールをさらに備える、1項から13項のいずれか一項に記載のシステム。
15項.センサハウジングを窒素でパージする窒素パージシステムをさらに備える、1項から14項のいずれか一項に記載のシステム。
16項.コントローラーは、表面によって反射された光を示す信号が表面の同じ領域によって反射された光を示すように複数のカメラのトリガリングを同期させるようにさらに構成されている、1項から15項のいずれか一項に記載のシステム。
17項.表面を検査するシステム用のセンサハウジングであって、センサハウジングが複数の水平層を画定し、表面を照らす複数の発光ダイオード(LED)光供給源と、複数のカメラであって、複数のカメラの各カメラが、複数の水平層の当該水平層内に配置され、光の波長の各範囲を検出する、複数のカメラと、表面によって反射された光を共通入力レンズに通して受光するとともに、その光を光の波長に応じて複数のカメラの上記カメラのうちの1つへ向ける複数の光学装置と、を備える、センサハウジンング。
18項.複数のカメラが、複数の水平層のうちの第1の水平層内に配置された赤外線カメラと、複数の水平層のうちの第2の水平層内に配置された紫外線光カメラと、複数の水平層のうちの第3の水平層内に配置された可視光カメラと、を備える、17項に記載のセンサハウジンング。
19項.表面を検査する方法であって、センサハウジングの複数の発光ダイオード(LED)光供給源を使用して表面を照らすステップであって、センサハウジングが複数の水平層を画定し、複数のカメラを備え、複数のカメラの各カメラが、複数の水平層の当該水平層内に配置され、光の波長の各範囲を検出するように構成されている、ステップと、センサハウジングの複数の光学装置を使用して、表面によって反射され、センサハウジングの共通入力レンズに通して受光された光を、その光の波長に応じて複数のカメラの上記カメラのうちの1つへ向けるステップと、表面によって反射された光を示す信号を複数のカメラからコントローラーで受信するステップと、表面によって反射された光を示す信号を使用して表面上に異物デブリ材料があるかどうかをコントローラーで決定するステップと、を含む方法。
20項.表面上に異物デブリ材料があるという決定に基づいて空気を空気ノズルに通して表面上の異物デブリ材料の方へ向けさせるステップをさらに含む、19項に記載の方法。
【0062】
異なる有利な配置に関する記述は、例示および説明のために提示されており、網羅的とする、あるいは開示される形の例に限定されるためのものではない。前述の開示を再検討し理解した後、多くの修正形態および変形形態が当業者には明らかとなろう。さらに、様々な例が、他の例と比べて様々な利点をもたらすことができる。選定される1つまたは複数の例は、原理および実際的な用途を最も良く説明するとともに、当業者が検討される特定の使用に適した様々な変更を伴う様々な例の開示を理解できるようにするために、選択され説明される。
【符号の説明】
【0063】
10 表面
100 システム
102 センサハウジング
104 コントローラー
106 水平層
106A 第1の水平層
106B 第2の水平層
106C 第3の水平層
108 LED光供給源
110 カメラ
110A 第1のカメラ
110B 第2のカメラ
110C 第3のカメラ
112 光学装置
114 切開上面図
116 紫外線光LED光供給源
118 可視光LED光供給源
120 多数の紫外線光LED
122 第1のリング
124 多数の可視光LED
126 第2のリング
128 共通入力レンズ
130 第1のダイクロイックフィルタ
130A 帯域通過フィルタ
132 第2のダイクロイックフィルタ
132A 帯域通過フィルタ
134 ミラー
136 偏光子
138 空気ノズル
140 冷却供給源
142 固体熱電冷却器
144 窒素パージシステム
146 無線周波通信モジュール
200 複合レイアップ機
202 ヘッド
204 複合ロール
206 複合部品
208 矢印
210 新しい層
212 熱励起供給源
300 タイミング図
302 統合ウィンドウ
304 1次同期パルス
306 取込期間
308 サブフレーム
310 データ転送期間
312 熱励起期間
400 方法
図1
図2
図3
図4