(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】動脈アクセスのためのデュアルルーメンシース
(51)【国際特許分類】
A61M 25/01 20060101AFI20241017BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20241017BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
A61M25/01 510
A61M25/09 530
A61M25/14 512
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206608
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2022172912の分割
【原出願日】2016-08-17
【審査請求日】2023-12-27
(32)【優先日】2015-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コーベット スコット シー.
(72)【発明者】
【氏名】ファントゥッツィ グレン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キルヒホフ フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブルソー デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ズィース トルステン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0116848(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0141738(US,A1)
【文献】特開2003-275318(JP,A)
【文献】特表平9-504444(JP,A)
【文献】特表2009-534110(JP,A)
【文献】特表2012-527322(JP,A)
【文献】特開2012-231969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/01
A61M 25/09
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮ポンプ(60)の挿入のためのシースアセンブリ(100)であって、該シースアセンブリ(100)は、
血管開口部(12)を通して血管(10)に挿入するために寸法付けられた管状シースボディ(102)を含み、該管状シースボディ(102)が、
近位端部分(106)と、遠位端部分(108)と、長手方向軸(110)と、外面(112)と、該長手方向軸(110)に対して平行な第一のルーメン(116)を画定する内面(114)とを有する壁(104)であって、該第一のルーメン(116)が、該経皮ポンプ(60)の一部分の通過を可能にするように寸法付けられている、壁(104);
該壁(104)内で該内面(114)と該外面(112)との間に配置され、かつ該近位端部分(106)から該遠位端部分(108)まで延びる、第二のルーメン(118)であって、ガイドワイヤ(50)の通過のために寸法付けられている、該第二のルーメン(118);および
該第二のルーメン(118)を塞ぐように位置付けられた、該シースアセンブリ(100)に解放可能に固定された近位端(121)を有するスタイレット(120)
を含み、該シースアセンブリが、該シースボディの近位端部分(106)に結合されたハブ(126)をさらに含み、該ハブ(126)が、
該第一のルーメン(116)と流体連通している第一のポート(128)、および 該第二のルーメン(118)と流体連通している第二のポート(130)であって、該スタイレット(120)の近位端を固定するように構成されている、該第二のポート(130)を含み、該スタイレット(120)の該近位端(121)が、該第二のポート(130)に固定されたとき、該スタイレット(120)の該近位端(121)は、該第二のポート(130)を横切る液密シールを形成することを特徴とし、
該壁(104)の該外面(112)は、挿入の深さを決定するためのマークを備え、該マークは、
放射線不透過性である、該シースアセンブリ(100)。
【請求項2】
スタイレット(120)の長さが第二のルーメン(118)の長さに等しい、請求項1記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項3】
第二のルーメン(118)が、近位区域直径(119)を有する近位区域(118a)と、遠位区域直径(219)を有する遠位区域(118b)とを有し、該近位区域直径(119)が該遠位区域直径(219)よりも大きい、請求項1記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項4】
遠位区域直径(219)がスタイレット(120)の外径に等しい、請求項3記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項5】
第二のルーメン(118)が抗血栓剤でコートされている、請求項1記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項6】
壁(112)の外面が、親水性コーティングおよび組織接着を減らすためのコーティングのうち少なくとも1つを含む、請求項1記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項7】
シースボディ(102)の遠位端部分(108)がテーパ状であり、かつ遠位端面まで延びるテーパ面(103)を含み、該遠位端面が、該シースボディ(102)の長手方向軸(110)と直交する、請求項1記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項8】
第二のルーメン(118)が、シースボディ(102)の遠位端部分(108)のテーパ面(103)を貫いて延びる出口(107)を有する、請求項7記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項9】
管状シースボディ(102)に回転可能に結合された安定化構造体(150)をさらに含む、請求項1記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項10】
安定化構造体(150)が長手方向軸(110)を中心に回転可能である、請求項9記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項11】
安定化構造体(150)が、患者への縫合のために構成された特徴を含む、請求項10記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項12】
安定化構造体(150)が一対の縫合ウイング(152、154)を含み、各ウイングが、縫合糸を固定するための複数のリブ(160~162)を有する、請求項11記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項13】
シースボディ(102)が、6.67mm以下の経皮アクセス部位を通して導入されるように寸法付けられている、請求項1記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項14】
前記マークは、断層撮影法を使用して画像化される、請求項1記載のシースアセンブリ(100)。
【請求項15】
前記断層撮影法は、CT、MRIまたはX線である、請求項14記載のシースアセンブリ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる、2015年8月17日に出願された米国特許出願第14/827,741号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
経皮心臓内血液ポンプアセンブリのような血液ポンプは、心臓に導入されて心臓からの血液を動脈に送り出す。血液ポンプアセンブリは、心臓中で作動すると、左心室から血液を引き出し、血液を大動脈に押し込む、または右心室から血液を引き出し、血液を肺動脈に押し込む。血液ポンプアセンブリは、心臓処置中に外科的または経皮的に血管系に導入される。1つの一般的な手法において、ポンプアセンブリは、ピールアウェイ式(peel-away)導入シースを使用するカテーテル挿入処置によって大腿動脈に挿入される。
【0003】
ピールアウェイ式導入シースは、動脈切開部を通して大腿動脈に挿入されて、ポンプアセンブリのための挿入経路を形成する。次いで、ポンプアセンブリの一部分が導入装置のルーメンを通して動脈の中に進められる。ひとたびポンプアセンブリが挿入されると、ピールアウェイ式導入シースを剥離させることができる。その後、再配置シースをポンプアセンブリに沿って動脈切開部の中に進めることができる。導入シースを再配置シースで置き換えると、導入シース中の血餅形成を防止し、動脈切開部からの出血を防止または低減し、血液が大腿動脈を通って脚部に流れるのを可能にすることができる。しかし、導入シースが取り出されたのち、動脈へのワイヤアクセスは失われる。ガイドワイヤアクセスの喪失は、処置後に血管を閉じること、または動脈切開部中で装置を交換することをより困難にする。
【0004】
ガイドワイヤアクセスを維持するために、一部の医師は、ピールアウェイ式導入シースを動脈切開部中に長時間にわたって残しておく。動脈切開部中のピールアウェイ式シースの長期的存在は、動脈切開部の戻りを減少させ、したがって、動脈切開部の最終直径を増大させるおそれがある。この直径の増大は、ピールアウェイ式導入シースが最終的に取り出されたのち、動脈切開部からの出血のリスクを高めるおそれがある。さらに、動脈中のピールアウェイ式シースの長期的存在は、大腿動脈を通過する灌流を減らし、それによって虚血のリスクを高めるおそれがある。
【0005】
加えて、臨床医は、カテーテル挿入処置中に患者の動脈圧をモニタすることを選択することもある。患者の動脈圧の計測は、多くの場合、さらなるカテーテルの配置を要する。さらなるカテーテルの存在は、手術部位に体積を加えることになり、また、別のアクセスポイントを介する動脈系への挿入を要する。
【発明の概要】
【0006】
概要
改善されたデュアルルーメン再配置シースのためのシステム、方法、および装置が提示される。デュアルルーメンシースは、導入シースが取り出されたのち動脈切開部へのガイドワイヤアクセスを維持するために、動脈切開部に挿入されることができる。デュアルルーメンシースは、経皮ポンプの一部分の通過のためのサイズにされた第一のルーメンおよびガイドワイヤの挿入のためのサイズにされた第二のルーメンを含む。第二のルーメンは、経皮ポンプに沿って動脈切開部に挿入されるガイドワイヤを受けて、経皮ポンプの挿入経路へのガイドワイヤアクセスを維持する。デュアルルーメンシースの第二のルーメンを使用してガイドワイヤアクセスを維持することにより、ガイドワイヤアクセスを失うことなく導入シースを患者から取り外すことができる。これは、医師が、処置中、導入シースを早めに(たとえば、経皮ポンプの挿入成功から1時間後、30分後、10分後、5分後または直後に)取り出すことを可能にし、それが、血管開口部が、導入シースを患者中により長く残した場合に呈するであろう直径よりも小さな直径まで戻ることを可能にする。たとえば、血管開口部が導入シースのより大きな直径へと永久的に弛緩する前に導入シースが取り出されるならば、2~3フレンチ(0.667mm~1mm)分の戻りが達成され得る。
【0007】
デュアルルーメンシースはまた、医療処置中に第二のルーメン中の血餅形成のリスクを減らすために第二のルーメンに挿入される取り外し可能なスタイレットを含む。第二のルーメンの開通性の維持は、長めの期間(たとえば6時間以上)を要する処置において特に有用である。取り外し可能なスタイレットは、動脈切開部へのデュアルルーメンシースの挿入中および医療処置中、デュアルルーメンシースに可逆的に結合され得る。経皮ポンプが取り外される前にスタイレットは第二のルーメンから取り出されて、第二のルーメンを通したガイドワイヤの挿入を可能にする。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤポートの開通性は、第二のルーメンに塗布される薬物コーティングまたは非薬物コーティングを使用して維持される。特定の実施形態において、第二のルーメンは、開通性を維持するために、制御された流量で液体をフラッシュされる。
【0008】
いくつかの態様において、デュアルルーメンシースはまた、安定化構造体(たとえば縫合パッド)への回転可能な接続を含む。回転可能な接続は、シースの遠位端にある第二のルーメンの出口が動脈壁から離れる方向に回転することを可能にする。これは、ガイドワイヤを動脈壁に対して真正面ではない方向に挿入することを可能にし、それによってガイドワイヤの挿入に伴う摩擦を減らすことにより、ガイドワイヤの挿入を容易にすることができる。加えて、回転は、第二のルーメンが使用されていないとき、第二のルーメンのためのポートが患者に対して平坦に位置することを可能にする。
【0009】
第二のルーメンは、数多くの考え得る他の利点を提供する。たとえば、さらなるカテーテルを要することなく、動脈圧が変換されることを可能にする。圧力の変換は、デュアルルーメンシースが十分な深さまで挿入されたときを医師が決定することを可能にすることができる。圧力を変換するために第二のルーメンが使用される場合、安定化構造体への回転可能な接続によって可能にされるガイドワイヤ出口の回転が、第二のルーメンの出口を動脈壁から離しておくことによって圧力計測の信頼性を改善することができる。加えて、第二のルーメンは、圧力変換器なしで挿入の深さを決定するために使用することもできる。たとえば、挿入の深さは、動脈切開部への貫入を示す、第二のルーメンを通過する血流の開始(「ブリードバック(bleedback)」)を観察することによって決定することができる。圧力変換器が使用されるのか、ブリードバックインジケータが使用されるのかにかかわらず、深さマークをシースの外面上に配置して、挿入の深さの計測を容易にすることができる。深さマークは放射線不透過性であり得る。患者の皮膚に対する動脈切開部の深さの計測値は、そのような計測値を要し得る特定の血管閉止器具のその後の使用を容易にすることができる。
【0010】
1つの局面において、経皮ポンプの挿入のためのシースアセンブリは、血管開口部を通して血管に挿入するために寸法付けられた管状シースボディを含む。管状シースボディは、近位端部分と、遠位端部分と、長手方向軸と、外面と、長手方向軸に対して実質的に平行な第一のルーメンを画定する内面とを有する壁、および壁内で内面と外面との間に配置され、かつ近位端部分から遠位端部分まで延びる第二のルーメンを含む。第一のルーメンは、経皮ポンプの一部分の通過を可能にするように寸法付けられ、第二のルーメンは、ガイドワイヤの通過のために寸法付けられている。スタイレットが、第二のルーメンを実質的に塞ぐために取り外し可能に位置付けられる。
【0011】
特定の実施形態において、スタイレットは、シースアセンブリに解放可能に固定されるように構成された近位端を有する。いくつかの実施形態において、スタイレットの長さは第二のルーメンの長さに実質的に等しい。特定の実施形態において、スタイレットは、血管中のシースの距離を示すために、放射線不透過性であるか、または放射線不透過性のマーカーバンドを含む。特定の実施形態において、シースアセンブリはまた、シースボディの近位端部分に結合されたハブであって、第一のルーメンと流体連通している第一のポートおよび第二のルーメンと流体連通している第二のポートを含むハブを含み、第二のポートは、スタイレットの近位端を固定するように構成されている。シースボディは、約20Fr(6.67mm)以下(たとえば19Fr、18Fr、17Fr、16Fr、15Fr、14Fr、13Fr、12Fr、10Fr、9Fr、8Fr、6Fr、またはそれ未満)の経皮アクセス部位を通して導入されるように寸法付けられ得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、シースボディの遠位端部分はテーパ状であり、かつ遠位端面まで延びるテーパ面を含み、遠位端面は、シースボディの長手方向軸と実質的に直交する。特定の実施形態において、第二のルーメンは、シースボディの遠位端部分のテーパ面を貫いて延びる出口を有する。第二のルーメンは抗血栓剤でコートされていてもよい。いくつかの実施形態において、管状シースボディの壁の外面は、親水性コーティングまたは組織接着を防ぐための任意の他の適当なコーティングを含む。いくつかの実施形態において、管状シースボディの壁の外面は、血管構造へのシースの挿入/取り出し中の摩擦力を減らすための親水性コーティングまたは任意の他の適当なコーティングを含む。いくつかの実施形態において、管状シースボディの壁の外面は、感染リスクを防止または低減するための抗菌コーティングまたは任意の他の適当なコーティングを含む。加えて、いくつかの実施形態において、2つのルーメンの内面は、感染リスクを防止または低減するための抗菌コーティングまたは任意の他の適当なコーティングを含む。特定の実施形態において、壁の外面は、挿入の深さを決定するためのマーク、たとえば、壁の外面上に等間隔で配されたマークを含む。
【0013】
特定の実施形態において、請求項のシースアセンブリはまた、管状シースボディに回転可能に結合された安定化構造体を含む。安定化構造体は長手方向軸を中心に回転可能であり得る。いくつかの実施形態において、安定化構造体は、患者への縫合のために構成された特徴を含む。安定化構造体は一対の縫合ウイングを含み得、各ウイングが、縫合糸を固定するための複数のリブを有する。
【0014】
別の局面において、ガイドワイヤアクセスを維持するための方法は、第一のルーメンおよび第二のルーメンを有するシースを、経皮挿入経路を通してかつ経皮ポンプの一部分に沿って、血管に挿入する工程、血餅形成が第二のルーメンを塞ぐことを防ぎながら、シースを血管中で6時間超の間維持する工程、および、6時間を超えたのち、ガイドワイヤを第二のルーメンを通して経皮挿入経路に挿入する工程を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、開通性の維持は、スタイレットを第二のルーメン中に6時間超の間挿入すること、およびガイドワイヤを挿入する前にスタイレットを取り出すことを含む。特定の実施形態において、開通性の維持は、第二のルーメンにパージ液をフラッシュすることを含む。いくつかの実施形態において、方法はまた、ガイドワイヤを経皮挿入経路中に維持しながらシースを取り出す工程を含む。特定の実施形態において、方法はまた、シースを取り出したのち、経皮器具をガイドワイヤに沿って経皮挿入経路に挿入する工程を含む。いくつかの実施形態において、方法はまた、センサを第二のルーメンの近位入口に結合する工程、およびセンサを使用して第二のルーメンの遠位出口の動脈圧を変換する工程を含む。特定の実施形態において、方法はまた、遠位出口が動脈壁によって塞がれていることを圧力計測値が示すとき、シースを支持構造に対して回転させる工程を含む。いくつかの実施形態において、方法はまた、圧力計測値から挿入の深さを決定する工程を含む。挿入の深さは、シースの外面上に配置された深さマーカーを使用して決定され得る。
【0016】
本開示を考察したのち、当業者には変形および改変が思い浮かぶであろう。開示された特徴は、本明細書に記載される1つまたは複数の他の特徴との任意の組み合わせおよび部分的組み合わせ(複数の従属的組み合わせおよび部分的組み合わせを含む)で実現されてもよい。上記様々な特徴は、それらの任意の構成部分を含め、他のシステムとして組み合わされてもよいし、一体化されてもよい。そのうえ、特定の特徴が省略されてもよいし、実現されなくてもよい。
[本発明1001]
経皮ポンプの挿入のためのシースアセンブリであって、
血管開口部を通して血管に挿入するために寸法付けられた管状シースボディを含み、該管状シースボディが、
近位端部分と、遠位端部分と、長手方向軸と、外面と、該長手方向軸に対して実質的に平行な第一のルーメンを画定する内面とを有する壁であって、該第一のルーメンが、該経皮ポンプの一部分の通過を可能にするように寸法付けられている、壁;
該壁内で該内面と該外面との間に配置され、かつ該近位端部分から該遠位端部分まで延びる、ガイドワイヤの通過のために寸法付けられている第二のルーメン;および
該第二のルーメンを実質的に塞ぐように位置付けられた、該シースアセンブリに解放可能に固定された近位端を有するスタイレット
を含む、シースアセンブリ。
[本発明1002]
スタイレットの長さが第二のルーメンの長さに実質的に等しい、本発明1001のシースアセンブリ。
[本発明1003]
第二のルーメンが、近位区域直径を有する近位区域と、遠位区域直径を有する遠位区域とを有し、該近位区域直径が該遠位区域直径よりも大きい、本発明1001のシースアセンブリ。
[本発明1004]
遠位区域直径がスタイレットの外径にほぼ等しい、本発明1003のシースアセンブリ。
[本発明1005]
第二のルーメンが抗血栓剤でコートされている、本発明1001のシースアセンブリ。
[本発明1006]
シースボディの近位端部分に結合されたハブをさらに含み、該ハブが、
第一のルーメンと流体連通している第一のポート、および
第二のルーメンと流体連通している第二のポート
を含み、該第二のポートが、スタイレットの近位端を固定するように構成されている、本発明1001のシースアセンブリ。
[本発明1007]
壁の外面が、親水性コーティングおよび組織接着を減らすためのコーティングのうち少なくとも1つを含む、本発明1001のシースアセンブリ。
[本発明1008]
壁の外面が、挿入の深さを決定するためのマークを含む、本発明1001のシースアセンブリ。
[本発明1009]
シースボディの遠位端部分がテーパ状であり、かつ遠位端面まで延びるテーパ面を含み、該遠位端面が、該シースボディの長手方向軸と実質的に直交する、本発明1001のシースアセンブリ。
[本発明1010]
第二のルーメンが、シースボディの遠位端部分のテーパ面を貫いて延びる出口を有する、本発明1009のシースアセンブリ。
[本発明1011]
管状シースボディに回転可能に結合された安定化構造体をさらに含む、本発明1001のシースアセンブリ。
[本発明1012]
安定化構造体が長手方向軸を中心に回転可能である、本発明1011のシースアセンブリ。
[本発明1013]
安定化構造体が、患者への縫合のために構成された特徴を含む、本発明1012のシースアセンブリ。
[本発明1014]
安定化構造体が一対の縫合ウイングを含み、各ウイングが、縫合糸を固定するための複数のリブを有する、本発明1013のシースアセンブリ。
[本発明1015]
シースボディが、約20Fr(6.67mm)以下の経皮アクセス部位を通して導入されるように寸法付けられている、本発明1001のシースアセンブリ。
[本発明1016]
ガイドワイヤアクセスを維持するための方法であって、
第一のルーメンおよび第二のルーメンを有するシースを、経皮挿入経路を通してかつ経皮ポンプの一部分に沿って、血管に挿入する工程;
血餅形成が該第二のルーメンを塞ぐことを防ぎながら、該シースを該血管中で6時間超の間維持する工程;および
6時間を超えたのち、ガイドワイヤを該第二のルーメンを通して該経皮挿入経路に挿入する工程
を含む方法。
[本発明1017]
開通性の維持が、スタイレットを第二のルーメン中に6時間超の間挿入すること、およびガイドワイヤを挿入する前に該スタイレットを取り出すことを含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
開通性の維持が、第二のルーメンにパージ液をフラッシュすることを含む、本発明1016の方法。
[本発明1019]
ガイドワイヤを経皮挿入経路中に維持しながらシースを取り出す工程をさらに含む、本発明1016の方法。
[本発明1020]
シースを取り出したのち、経皮器具をガイドワイヤに沿って経皮挿入経路に挿入する工程をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1021]
センサを第二のルーメンの近位入口に結合する工程;および
該センサを使用して該第二のルーメンの遠位出口の動脈圧を変換する工程
をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1022]
遠位出口が動脈壁によって塞がれていることを圧力計測値が示すとき、シースを支持構造に対して回転させる工程をさらに含む、本発明1021の方法。
[本発明1023]
圧力計測値から挿入の深さを決定する工程をさらに含む、本発明1022の方法。
[本発明1024]
挿入の深さが、シースの外面上に配置されたマークに基づいて決定される、本発明1023の方法。
【0017】
前記および他の目的および利点は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて考察することによって明らかになる。図中、全体を通して類似の参照番号が類似の部品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】動脈アクセスのための例示的なデュアルルーメンシースの上面図を示す。
【
図2】
図1のデュアルルーメンシースの側方断面図を示す。
【
図3】
図1のデュアルルーメンシースの遠位部分の横断面図を示す。
【
図4】
図1のデュアルルーメンシースの遠位部分の詳細断面図を示す。
【
図5】経皮ポンプに沿って患者の血管に挿入された
図1のデュアルルーメンシースを示す。
【
図6】ガイドワイヤアクセスを維持するための例示的プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本明細書に記載されるシステム、方法および装置の全体的理解を提供するために、特定の例示的な態様を記載する。本明細書に記載される態様および特徴は、経皮血液ポンプシステムとの関連における使用に関して具体的に記載されるが、以下に概説されるすべての構成部品および他の特徴が、任意の適当なやり方で互いに組み合わされ、バルーンポンプ、外科的切開を使用して埋め込まれる心臓補助装置などを含む他のタイプの心臓治療および心臓補助装置に適合され、適用されてもよいことが理解されよう。
【0020】
本明細書に記載されるシステム、方法および装置は、経皮ポンプの一部分の通過のためのサイズにされた第一のルーメンおよびガイドワイヤの挿入のためのサイズにされた第二のルーメンを有するデュアルルーメンシースを提供する。第二のルーメンは、ガイドワイヤが経皮ポンプの挿入経路に挿入されることを可能にするように位置付けられる。これは、経皮ポンプおよびデュアルルーメンシースが引き抜かれた後でさえ、挿入経路へのガイドワイヤアクセスが維持されることを可能にする。ガイドワイヤアクセスは、のちに1つまたは複数の他の器具(たとえば血管閉止器具)が同じ挿入経路に挿入されることを可能にして、ガイドワイヤアクセスを伴う血管閉止または任意の他の医療処置を容易にする。第二のルーメンは、導入シースが取り出された後でも医師がガイドワイヤアクセスを維持することを可能にするため、医師は、医療処置中に導入シースを早めに取り出すことができる。早めの導入シースの取り出しは、挿入経路がより小さな直径まで戻ることを可能にし、それによってアクセス部位からの出血のリスクを減らす。
【0021】
本明細書に記載されるシステム、方法および装置はまた、第二のルーメンの開通性を維持するスタイレットを含む。スタイレットは、第二のルーメンがガイドワイヤの挿入または圧力計測のために使用されていないとき、第二のルーメンを塞ぐために使用される。たとえば、取り外し可能なスタイレットは、動脈切開部へのデュアルルーメンシースの挿入中および経皮ポンプの動作中に第二のルーメン内に位置付けられ得る。経皮ポンプが取り出される前にスタイレットは第二のルーメンから取り出されて、第二のルーメンを通したガイドワイヤの挿入を可能にする。スタイレットによる第二のルーメンの閉塞は、長期間(たとえば6時間以上)を要する医療処置中に第二のルーメン中の血餅形成を妨げることができる。これは、たとえば、経皮ポンプを取り出す前にガイドワイヤの挿入のための経路を提供するために、医療処置中および医療処置後に第二のルーメンをアクセス可能なままにすることを可能にする。いくつかの実施形態において、血餅形成は、第二のルーメンに塗布される薬物コーティングまたは非薬物コーティングを使用して防止される。特定の実施形態において、血餅形成は、第二のルーメンに制御された流量で液体をフラッシュすることによって妨げられる。
【0022】
デュアルルーメンシースはまた、安定化構造体(たとえば縫合ウイング)への回転可能な接続を含み得る。回転可能な接続は、シースの遠位端にある第二のルーメンの出口が動脈壁から離れる方向に回転することを可能にする。これは、ガイドワイヤを動脈壁に対して真正面ではない方向に挿入することを可能にし、それによってガイドワイヤの挿入に伴う摩擦を減らすことにより、ガイドワイヤの挿入を容易にすることができる。加えて、回転は、第二のルーメンが使用されていないとき、第二のルーメンのためのポートが患者に対して実質的に平坦に位置することを可能にする。
【0023】
第二のルーメンはまた、ガイドワイヤポートと血管の内部との間の流体連通を確立することができる。これは、別個のカテーテルを使用することなく処置中の動脈圧計測(たとえば圧力変換器による)を可能にすることができる。動脈圧の計測は、デュアルルーメンシースが血管に十分な深さまで挿入されたときを医師が検出することを可能にすることができる。安定化構造体への回転可能な接続によって可能にされるガイドワイヤ出口の回転が、第二のルーメンの出口を動脈壁から離しておくことによって圧力計測の信頼性を改善することができる。
【0024】
図1は、特定の実施形態の、動脈アクセスを維持するための例示的なデュアルルーメンシースアセンブリ100を示す。
図2は、断面線2-2から見たシースアセンブリ100の側方断面図を示し、
図3は、断面線3-3から見たシースアセンブリ100の遠位部分の横断面図を示す。シースアセンブリ100は、管状シースボディ102、スタイレット120、ハブ126および安定化構造体150を含む。管状シースボディ102は、血管開口部を通して血管に挿入するために寸法付けられている。いくつかの実施形態において、管状シースボディ102は、動脈切開部を通して大腿動脈に挿入するために寸法付けられている。管状シースボディ102の大部分は、約10Fr、11Fr、12Fr、13Fr、14Fr、15Fr、16Fr、17Fr、20Frまたは任意の他の適当な直径の実質的に均一な外径101を有し得る。管状シースボディは、約20Fr(6.67mm)以下(たとえば19Fr、18Fr、17Fr、16Fr、15Fr、14Fr、13Fr、12Fr、10Fr、9Fr、8Fr、6Fr、またはそれ未満)の経皮アクセス部位を通して導入されるように寸法付けられ得る。管状シースボディは、約80mm、100mm、120mm、140mm、160mmまたは任意の他の適当な長さを有し得る。加えて、管状シースボディ102は、血管開口部にかかる応力を減らすために、ポリエーテルブロックアミド類または任意の他の適当なポリマーのような可撓性材料で製造されてもよい。
【0025】
管状シースボディ102は、壁104、近位端部分106、遠位端部分108、長手方向軸110、外面112、第一の内面114、第二の内面115、第一のルーメン116および第二のルーメン118を含む。管状シースボディ102の遠位端部分108は、テーパ面103、第一のルーメン116と流体連通している第一の出口105および第二のルーメン118と流体連通している第二の出口107を含む。テーパ面103は、11Frから15Frまで(3.667mmから5mmまで)漸次変化する外径を有する。テーパ面103の漸次的変化は、経皮ポンプと挿入部位との間の間隙を埋めるために必要に応じてシースが可変深さまで挿入されることを許し得る。
【0026】
管状シースボディ102の外面112は、動脈切開部への管状シースボディ102の挿入を容易にするために、親水性コーティングでコートされていてもよい。親水性コーティングはまた、血管壁への接着を防ぐことができる。そのような接着は、シースが血管中に長期間(たとえば何日も)置かれたのち取り出される場合に、血管を損傷するおそれがある。処置の期間が増すとともに、血管壁への接着のリスクは増すおそれがある。いくつかの態様において、管状シースボディ102の外面112は深さマークを含む。深さマークは、外面112上にパッド印刷されてもよいしレーザーエッチングされてもよい。特定の実施形態において、深さマークは放射線不透過性である。深さマークは、センチメートル、インチ、ミリメートルもしくは任意の他の適当な計測単位またはそれらの組み合わせであり得る。
【0027】
管状シースボディの第一の内面114は第一のルーメン116を画定する。第一のルーメン116は、経皮ポンプの一部分の通過を可能にするように寸法付けられている。第一のルーメン116は、管状シースボディ102の近位端部分106から遠位端部分108まで、長手方向軸110に対して実質的に平行に延びている。第二のルーメン118は、壁104内で内面114と外面112との間に配置されている。第二のルーメン118は、管状シースボディ102の近位端部分106から遠位端部分108まで、長手方向軸110から外れた位置に、かつ長手方向軸110に対して実質的に平行に、延びている。第二のルーメン118は、ガイドワイヤの通過のために寸法付けられ、第二の内面115によって画定されている(
図3に示すように)。第二の内面115は、第二のルーメン118中の血餅形成を防止するための薬物コーティングまたは非薬物コーティングを含み得る。いくつかの実施形態において、第二の内面はヘパリンでコートされている。第二のルーメン118は、テーパ面103に形成された第二の出口102で終端する。第二の出口102は第一のルーメン116の第一の出口105に隣接する。その結果、ガイドワイヤが第二のルーメン118を通して挿入される場合、ガイドワイヤは、第一のルーメン116を通過して経皮ポンプ(図示せず)の挿入経路に入る。したがって、第二のルーメン118は、第一のルーメン116を通って挿入される経皮ポンプの挿入経路へのガイドワイヤアクセスを維持または回復するために使用され得る。これが、導入シースが取り出された後でさえ、挿入経路へのガイドワイヤアクセスが維持されることを可能にする。ガイドワイヤアクセスは、のちに1つまたは複数の他の器具が同じ挿入経路に挿入されることを可能にして、ガイドワイヤアクセスを伴う血管閉止または任意の他の医療処置を容易にする。たとえば、ガイドワイヤアクセスは、血管閉止器具または圧力計測マイクロカテーテル(たとえばMILLAR Mikro-Tip(登録商標)圧力カテーテル)のその後の挿入を許し得る。圧力計測マイクロカテーテルは、左心室の圧力または任意の他の適当な圧力の計測を可能にし得る。さらに、第二のルーメンは、導入シースが取り出された後でも医師がガイドワイヤアクセスを維持することを可能にするため、医師は、導入シースを早めに取り出すことができる。早めの導入シースの取り出しは、血管開口部がより小さな直径まで戻ることを可能にし、それによってアクセス部位からの出血のリスクを減らす。加えて、第二の出口107は長手方向軸110から外れた位置にあるため、管状シースボディ102の回転は、第二の出口107の位置が調節されることを可能にする。これは、ユーザが、第二の出口107を血管壁から離れた状態に維持して、ガイドワイヤの挿入を容易にする、または動脈圧計測の精度を高めることを可能にすることができる。
【0028】
管状シースボディ102は、その近位端部分106がハブ126に接続されている。ハブ126は、第一のポート128、第二のポート130、第二のポートねじ山131およびベアリング136を含む。第二のポート130は、ガイドワイヤを第二のポート130を通して第二のルーメン118に挿入し、第二の出口107から出すことができるよう、第二のルーメン118に接続されている。ガイドワイヤが第二のルーメン118中にないとき、スタイレット120を第二のポート130に挿入して第二のルーメン118を封止することができる(
図1、2および3に示すように)。スタイレット120は、ヘッド121、スタイレットボディ122、丸みのある端部123およびねじ山126を含む。スタイレットボディ122は、スタイレット120が第二のルーメン118に挿入されたとき、第二のルーメン118を実質的に塞ぐようなサイズである。いくつかの実施形態において、スタイレットボディ122は、金属のような成形可能な材料または延性の材料でできている。これは、スタイレットが、医療処置中またはその前に、血管開口部にかかる応力を減らす形状へと成形されることを可能にし得る。特定の実施形態において、スタイレット120は、血管中の管状シースボディ102の深さを示すために、放射線不透過性であるか、または放射線不透過性マーカーバンドを含む。スタイレットヘッド121のねじ山124が第二のポートねじ山131と可逆的に結合して、スタイレット120を第二のルーメン118内に保持する。スタイレットヘッド121が第二のポート130に可逆的に結合されると、スタイレットヘッド121は、血管からの血液の漏出を防止する、第二のポート130を横切る液密シールを形成する。特定の実施形態においては、スタイレット120の代わりに、圧力バッグが、ねじ山131を使用して第二のポート130に接続される。圧力バッグは、第二のルーメン118の開通性を維持するために第二のルーメン118に流体をフラッシュするために使用することができる。注入ポンプを圧力バッグとともに使用して、患者への液体の流量を調整してもよい。たとえば、流量は、1mL/時、2mL/時、5mL/時、10mL/時または任意の他の適当な流量に制限され得る。いくつかの実施形態においては、血管10内の圧力を計測するために圧力計測装置が第二のポート130に接続される。この圧力計測値を使用して、第二のポート102が血管開口部に十分に深く挿入されたときを決定することができる。たとえば、動脈圧にほぼ等しい圧力が第二のポート130で計測されるとき、第二の出口107は血管と流体連通した状態にあり得る。圧力計測値はまた、医療処置中に患者の血管中の動脈圧をモニタするために使用することもできる。これは、さらなるカテーテルを使用することなく動脈圧計測が実施されることを可能にし得、それが、潜在的に込み入った手術部位で必要な器具の量を減らし得る。
【0029】
ハブ126の第一のポート128は経皮ポンプ(図示せず)の通過を可能にする。第一のポート128はキャップ132およびシール134を含む。キャップ132は、第一のポート128にスナップ嵌めしてシール134を第一のポート128に対して保持する。キャップ132およびシール134はいっしょになって止血弁として働き、経皮ポンプと第一のポート128との間に液密シールを形成する。シール134は、経皮ポンプの一部分の周囲を封止するために撓むことができるよう、シリコーンのようなエラストマーで形成されている。
【0030】
ハブ126はベアリング136によって安定化構造体150に結合されている。安定化構造体150は、ウイング152および154、縫合穴156~159、リブ160~162、およびベアリング136とかみ合うベアリング面164を含む。安定化構造体150のベアリング面164とハブ126のベアリング136との嵌合が、安定化構造体150に対するハブ126の回転を可能にする。上記のように、この回転は、第二の出口107が血管壁から離れる方向を向くように管状シースボディ102が回転することを可能にする。加えて、この回転は、第二のポート130が使用されていないとき、第二のポート130が患者に対して平坦に位置することを可能にする。縫合穴156~159は、ウイング152および154を患者に縫合してシースアセンブリ100を安定させることを可能にする。4つの縫合穴156~159しか示されていないが、任意の適当な数の縫合穴を使用し得る。安定化構造体150はまた、臍帯テープまたは縫合糸で人工血管に容易に取り付けられるように設計されている。この特徴は、ポンプを人工血管に通して配置することを要する腋窩挿入または任意の他の挿入中に有益である。加えて、いくつかの実施形態において、安定化構造体150は、リブ160~162を使用して患者に結合される。たとえば、縫合糸が、リブ160~162の間で安定化構造体の外面165に巻き付けられ得る。このようにして縫合糸が外面165に巻き付けられると、リブ160~162は、縫合糸が長手方向軸110に沿って外面165から滑り落ちることを防止する。特定の実施形態においては、他の安定化装置、たとえば外科用テープ、STATLOCK(登録商標)安定化装置(Bard Access Systems, Inc., Salt Lake City, UT)または任意の他の適当な粘着性安定化装置をリブ160~162の周囲で安定化構造体150に結合し得る。
【0031】
図4は、
図1、2および3のデュアルルーメンシースアセンブリ100の遠位端部分108の詳細断面図を示す。遠位端部分108は、テーパ面103、第一の出口105、第二の出口107、ならびにスタイレットボディ122、第一のルーメン116および第二のルーメン118の各遠位部分を含む。第一のルーメン116は、内径117を有する近位区域116a、内径117よりも小さい内径217を有する遠位区域116bおよびそれらの間の絞り部216を含む。内径117は約13Fr(4.333mm)であり、内径217は約9Fr(3mm)である。絞り部216は、第一のルーメン116の遠位区域116bが経皮ポンプとよりタイトなフィットを形成することを可能にして、許容し得ないほど高い摩擦を近位区域116a中に生じさせることなく血液漏出を防止または低減する。第一のルーメン116と同様に、第二のルーメン118は、直径119を有する近位区域118a、直径119よりも小さい直径219を有する遠位区域118bおよびそれらの間の絞り部218を含む。直径119は約1.1mmであり、直径219は約1mmである。絞り部218は、遠位区域118aにおけるスタイレットボディ122と第二のルーメン118との間のよりタイトなフィットを可能にして、近位区域118bに遊びを可能にして摩擦を減らしながらも血液浸入を減らす。第二のルーメン118とスタイレットボディ122との間の摩擦は、スタイレットボディ122の端部123の丸み付けによってさらに減らされる。スタイレット120が第二のルーメン118に完全に挿入されると、丸みのある端部123が第二の出口107に隣接し、それによって第二のルーメン118への血液浸入を防止または低減する。
【0032】
図5は、経皮ポンプ60に沿って患者の血管10に挿入された
図1のデュアルルーメンシースアセンブリ100を示す。経皮ポンプ60はポンプヘッド66およびカテーテルボディ62を含む。経皮ポンプ60は、血管内血液ポンプ、フレキシブル駆動シャフトによって駆動される血液ポンプ、埋め込み可能なモータを含む血液ポンプ、拡張可能なポンプロータを有する血液ポンプまたは任意の他の適当なポンプであり得る。デュアルルーメンシースアセンブリ100は、血管開口部12を通って矢印70によって示される方向に経皮ポンプ60のカテーテルボディ62に沿って血管10中へと進められる。経皮ポンプ60が最初に血管10に挿入されるとき、デュアルルーメンシースアセンブリ100の第一のルーメン116はカテーテルボディ62にねじ込まれ得る。血管10は大腿動脈であり得、血管開口部12は動脈切開部であり得る。血管開口部12は、カテーテルボディ62の直径64よりもわずかに大きい開口を有し得る。したがって、デュアルルーメンシースアセンブリ100の管状ボディ102は、シースアセンブリ100がカテーテルボディ62に沿って血管10中に進められるとき、血管開口部12とカテーテル64との間の間隙を効果的に埋め得る。管状シースボディ102の外径101は、管状シースボディ102の直径101がその遠位端部分108からその近位端部分106へと増加するように、上述のように漸次変化し得る。これは、管状シースボディ102が血管100中にさらに深く挿入されて血管開口部12とカテーテルボディ62との間のより大きい間隙を埋めることを可能にすることができる。管状シースボディ102の間隙埋め効果は、血管開口部12からの出血を低減または防止することができる。管状シースボディ102は、管状シースボディ102が血管10の形状に追従することを可能にする屈曲部80を形成することができるよう、可撓性である。この可撓性は、管状シースボディ102を変形させるのに必要な力を減らすことにより、血管開口部12にかかる応力を減らすことができる。
【0033】
ひとたび管状シースボディ102が経皮ポンプ60のカテーテルボディ62に沿って血管開口部12とカテーテルボディ62との間の間隙を埋めるのに十分な深さまで進められたならば、デュアルルーメンシースアセンブリ100はカテーテルボディ62に固定されてもよい。この固定は、安定化構造体150を患者の組織14に固定することによって達成され得る。いくつかの実施形態において、これは、安定化構造体150のウイング(図示せず)を患者の組織14に縫合することによって達成される。特定の実施形態において、安定化構造体150は、臍帯テープまたは縫合糸で人工血管に取り付けられる。これは、ポンプを人工血管に通して配置することを要する腋窩挿入または任意の他の挿入中に実施され得る。いくつかの実施形態において、デュアルルーメンシースアセンブリ100の配置の固定は、シール134をカテーテルボディ62の周囲に締め付けることによって、または別個の固着リングによって達成され得る。第二のポート130は、患者組織14に対して平坦に位置するよう、安定化構造体150に対して回転し得る。デュアルルーメンシースアセンブリ100が適切な位置に固定されたのち、医師は経皮ポンプ60の動作を開始し得る。経皮ポンプ60は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中、心臓切開手術中、心臓弁置換手術中、または急性心筋梗塞(AMI)、心原性ショックもしくはST上昇型心筋梗塞(STEMI)の処置中、ならびに任意の他の適当な医療処置中に作動させ得る。特定の実施形態において、経皮ポンプ60は、長期間、たとえば6時間超、12時間超、24時間超、48時間超、72時間超、1週間超または任意の他の適当な期間の間、作動させる。そのような場合、第二のルーメン118を塞ぐおそれがある凝固または第二のポート130からの出血を招くおそれがある、第二のルーメン118への血液浸入を防ぐために、
図1~4のスタイレット120のようなスタイレット(
図5には示さず)がデュアルルーメンシースアセンブリ100の挿入中に第二のルーメン118内に位置付けられてもよい。
【0034】
特定の実施形態において、デュアルルーメンシースアセンブリ100の第二のポート130は、血流を視覚化するための造影剤(たとえばヨウ素またはバリウム化合物)を血管中に送達するために使用される。
【0035】
特定の実施形態においては、第二のルーメン118の開通性を維持するために、圧力バッグがスタイレットの代わりに第二のポート130に接続される。注入ポンプを圧力バッグとともに使用して、患者への液体の流量を調整してもよい。たとえば、流量は、1mL/時、2mL/時、5mL/時、10mL/時または任意の他の適当な流量に制限され得る。いくつかの実施形態においては、血管10内の圧力を計測するために、圧力計測装置が第二のポート130に接続される。この圧力計測値を使用して、第二のポート102が血管開口部12に十分に深く挿入されたときを決定することができる。たとえば、動脈圧にほぼ等しい圧力が第二のポート130で計測されるとき、第二の出口107は血管10と流体連通した状態にあり得る。血管開口部12への貫入が検出されたのち、患者の皮膚に対する血管開口部12の深さは、シースの外面上に配置された深さマークを使用して計測することができる。この深さの計測値は、そのような計測値を要し得る特定の血管閉止器具のその後の使用を容易にすることができる。圧力計測値はまた、医療処置中に血管10中の動脈圧をモニタするために使用することもできる。これは、さらなるカテーテルを使用することなく動脈圧計測が実施されることを可能にし得、それが、潜在的に込み入った手術部位で必要な器具の量を減らし得る。加えて、第二のルーメン118は、血管開口部12への貫入を示す、第二のルーメン118を通過する血流の開始(「ブリードバック」)の観察を可能にすることにより、圧力変換器なしで挿入の深さの決定を可能にすることができる。
【0036】
経皮ポンプ60を取り出すときが来たら、ガイドワイヤ50が第二のポート130を通して第二のルーメン118に挿入され、第二の出口107から血管10に挿入される。したがって、ガイドワイヤ50は、経皮ポンプ60と同じ挿入経路に入り、それによって挿入経路へのアクセスを維持する。デュアルルーメンシースアセンブリ100の挿入中にスタイレットが使用された場合は、スタイレットはガイドワイヤ50の挿入前に取り出される。ガイドワイヤ50は、血液が血管10から第二のポート130を通って流れ出すのを防ぐため、第二の出口107の内径にほぼ一致する外径を有する。たとえば、ガイドワイヤは約1mmの外径を有し得る。加えて、いくつかの実施形態においては、ガイドワイヤ50が所定位置に置かれている間に血液が第二のポート130から出ないことをさらに保証するために、第二のポート130にシールが含まれる。
【0037】
ガイドワイヤ50が血管10中に配置されたのち、ガイドワイヤ50を所定位置に置いたまま、経皮ポンプ60およびデュアルルーメンアセンブリ100を血管開口部12を通して取り出し得る。管状シースボディ102は、親水性コーティングまたは血管10への接着を防止する任意の他の適当なコーティングでコートされて、それによって血管10を損傷することなく管状シースボディ102の取り出しを容易にし得る。ガイドワイヤ50を所定位置に置いたままデュアルルーメンシースアセンブリ100および経皮ポンプ60を取り出すことは、挿入経路11へのガイドワイヤアクセスが維持されることを可能にする。ポンプヘッド66の直径68が第一のルーメン116を通過することができないため、経皮ポンプ60の取り出しは、デュアルルーメンシースアセンブリ100の同時並行的取り出しを要する。理由は、第一のルーメン116の内径が、カテーテルボディ62の直径64の周囲にぴったりフィットするようなサイズであり、ポンプヘッド66のより大きな直径68を受け入れることができないためである。その結果、第一のルーメン116は、挿入経路11へのガイドワイヤアクセスを維持するために使用することができない。したがって、第二のルーメン118が、挿入経路11へのガイドワイヤアクセスを維持するために必要である。
【0038】
経皮ポンプ60およびデュアルルーメンシースアセンブリ100が取り出されたのち、ガイドワイヤ50は血管10および挿入経路11中に留まる。したがって、別の器具をガイドワイヤ50に沿って挿入経路11に挿入し得る。いくつかの実施形態においては、ガイドワイヤ50を使用して血管閉止装置が挿入経路11に挿入される。血管閉止装置は、VASOSEAL血管封止装置、ANGIO-SEAL生体吸収性アクティブ閉止システム、PERCLOSE血管封止装置または任意の他の適当な血管閉止装置もしくは血管閉止装置の組み合わせであり得る。血管閉止装置または他の装置を血管開口部12を通して挿入経路11にうまく挿入したのち、ガイドワイヤ50を血管開口部12から取り出し得る。
【0039】
図6は、ガイドワイヤアクセスを維持するための例示的なプロセス600を示す。例示的なプロセス600は、デュアルルーメンシースアセンブリ100または任意の他の適当なシースツールを使用して実施され得る。工程602において、シースを、経皮挿入経路を通してかつ経皮ポンプの一部分に沿って、血管に挿入する。シースは第一のルーメンおよび第二のルーメンを有する。血管は、大腿動脈のような動脈であり得る。挿入経路は血管開口部(たとえば動脈切開部)を通過する。工程602の前に、導入装置を使用して経皮ポンプが挿入経路に挿入される。したがって、経皮ポンプがシースを既存の挿入経路中に導く。経皮ポンプは、血管内血液ポンプ、フレキシブル駆動シャフトによって駆動される血液ポンプ、埋め込み可能なモータを含む血液ポンプ、拡張可能なポンプロータを有する血液ポンプまたは任意の他の適当なポンプであり得る。患者の血管からの血液の漏出を防ぐために、シースの第一のルーメンが止血弁によって経皮ポンプに対して封止されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、シースは、出血を防ぐために、経皮ポンプと血管開口部との間の間隙を閉じるのに必要な深さで血管に挿入されるだけである。シースが血管に十分に深く挿入されたかどうかを確実に検出するために、第二のルーメンを使用して血管内の圧力を検出することができる。たとえば、動脈圧とほぼ等しい検出圧力は、第二のルーメンの出口が血管に挿入されたことを示し得る。または、第二のルーメンは、血管開口部への貫入を示す、第二のルーメンを通過する血流の開始(「ブリードバック」)の観察を可能にすることにより、圧力変換器なしで挿入の深さの決定を可能にすることができる。血管開口部への貫入が検出されたのち、患者の皮膚に対する血管開口部の深さを、シースの外面上に配置された深さマークを使用して計測することができる。いくつかの実施形態において、深さマークは放射線不透過性であり、断層撮影法(たとえばCT、MRI、X線)を使用して画像化することができる。この深さの計測値は、そのような計測値を要し得る特定の血管閉止器具のその後の使用を容易にすることができる。加えて、ひとたび適切な深さに挿入されたならば、第二のルーメンを使用して処置中の動脈圧を計測することができる。
【0041】
工程604において、血餅形成が第二のルーメンを塞ぐことを防ぎながらシースを血管中で約6時間以上維持する。シースは、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、1週間、2週間または任意の他の適当な期間の間、血管中に維持することができる。この期間中、第二のルーメンを一時的に塞ぐスタイレットを使用して、第二のルーメン中の血餅形成を防ぎ得る。たとえば、
図1~3のスタイレット120を使用して第二のルーメンを一時的に塞ぎ得る。特定の実施形態において、第二のルーメン中の血餅形成は、第二のルーメン中に薬物コーティングまたは非薬物コーティングを使用することによって防止または低減される。コーティングはヘパリンまたは任意の他の適当な物質を含み得る。いくつかの実施形態においては、第二のルーメンに液体(たとえば生理食塩水、グルコース溶液または任意の他の適当な溶液)をフラッシュすることにより、第二のルーメン中の血餅形成を防止または低減する。血餅による第二のルーメンの閉塞を防止することが、第二のルーメンの開通性がガイドワイヤの挿入のために確保されることを可能にする。
【0042】
工程606において、約6時間以上ののち、ガイドワイヤを第二のルーメンを通して経皮挿入経路に挿入する。スタイレットを使用して第二のルーメンを一時的に塞いだ場合は、ガイドワイヤを挿入する前にスタイレットを取り出す。第一のルーメンを通って挿入されている経皮ポンプは、ガイドワイヤの挿入後に取り出し得る。ガイドワイヤが挿入されたのち、ガイドワイヤを所定位置に置いたまま、シースを経皮挿入経路から取り出してもよい。これは、別の器具(たとえば、アクセス閉止器具)が挿入経路に挿入されることを可能にすることができる。これは、ガイドワイヤアクセスを維持するために導入装置に依存することから医師を解放する。したがって、医師は、処置中、導入装置を早めに取り出すことができる。これは、血管開口部のより大きな戻りを可能にし、それによって出血のリスクを減らすことができる。たとえば、挿入から1時間以内に導入装置を取り出すと、約2~3Fr(0.667mm~1mm)分の戻りを可能にし得る。
【0043】
前記は本開示の原理を単に例示したものであり、システム、方法および装置は、限定のためではなく例示のために提示された前記態様以外によっても実施することができる。本明細書に開示されたシステム、方法および装置は、経皮血管内血液ポンプシステムにおける使用に関して示されているが、他の埋め込み可能な血液ポンプまたは埋め込み可能な心臓補助装置のためのシステム、方法および装置にも適用され得ることが理解されよう。
【0044】
本開示を考察したのち、当業者には変形および改変が思い浮かぶであろう。たとえば、いくつかの実施形態において、シースアセンブリは、短期間(たとえば6時間未満)の処置のためのガイドワイヤアクセスを提供するために使用されてもよい。さらに、スタイレットは、第二のルーメンの開通性が他の手段によって適切に維持されるいくつかの実施形態においては省略されてもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、第二のルーメンは液体を断続的または連続的にフラッシュされる。開示された特徴は、本明細書に記載される1つまたは複数の他の特徴との任意の組み合わせおよび部分的組み合わせ(複数の従属的組み合わせおよび部分的組み合わせを含む)で実現されてもよい。上記様々な特徴は、それらの任意の構成部分を含め、他のシステムとして組み合わされてもよいし、一体化されてもよい。そのうえ、特定の特徴が省略されてもよいし、実現されなくてもよい。
【0045】
変更、置換および変形の例は当業者によって確認可能であり、本明細書に開示された情報の範囲を逸脱することなく実施することができる。本明細書の中で引用されるすべての参考文献は、参照により全体として本明細書に組み入れられ、本出願の一部を構成する。