(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】工具搬送装置、及び、加工システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B23Q3/157 C
B23Q3/157 A
(21)【出願番号】P 2023219454
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2024-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】土井 孝文
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-200329(JP,A)
【文献】登録実用新案第3165158(JP,U)
【文献】実開平04-112748(JP,U)
【文献】国際公開第2009/104280(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0191548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する加工室と、前記加工室に設けられ、工具を着脱可能に保持する主軸とを含む加工機に用いられる工具搬送装置であって、
前記加工機に併設され、複数の工具を載置された状態で並べて収容する工具ストッカと、
前記工具ストッカに収容される工具それぞれが載置される複数のストック位置及び前記主軸に着脱される工具が載置される搬送待機位置に工具を移動させる第1工具搬送機構と、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置に対して水平方向にずれた位置であって前記主軸に工具を受け渡しする工具交換位置に工具を移動させる第2工具搬送機構と、を備え、
前記第2工具搬送機構は、前記加工機内に形成された搬送室を経由して工具を前記搬送待機位置と前記工具交換位置との間で搬送するように構成され
、
前記第1工具搬送機構は、
前記複数のストック位置及び前記複数のストック位置それぞれから前記加工機の前後方向にずれた前記搬送待機位置に工具を移動させる、工具搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記工具ストッカは、
前記複数の工具を、その長手方向に直交する方向に並べて収容する、工具搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記工具ストッカは、
前記複数の工具を、それぞれの長手方向が前記加工機の左右方向に平行となるように前記加工機の前後方向に並べて収容する、工具搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記第1工具搬送機構は、
前記複数のストック位置及び前記複数のストック位置それぞれから前記工具ストッカに収容される工具が並ぶ方向にずれた前記搬送待機位置に工具を移動させる、工具搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記第2工具搬送機構は、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置から前記工具ストッカに収容される工具の長手方向にずれた前記工具交換位置に工具を移動させる、工具搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記第2工具搬送機構は、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置から前記加工機の左右方向にずれた前記工具交換位置に工具を移動させる、工具搬送装置。
【請求項7】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記第1工具搬送機構が工具を移動させる方向は、前記第2工具搬送機構が工具を移動させる方向と交差する、工具搬送装置。
【請求項8】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記第1工具搬送機構及び前記第2工具搬送機構は、前記加工機の天井よりも低い位置に設けられる、工具搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記工具搬送装置は更に、
前記複数の工具それぞれが載置される複数の基台と、
前記複数の基台それぞれと前記第1工具搬送機構とを着脱可能に接続するロック機構と、を備えた工具搬送装置。
【請求項10】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記工具搬送装置は更に、
前記複数の工具それぞれが載置される複数の基台を備え、
前記第1工具搬送機構は、
前記基台において工具が載置されている側から前記基台に接続され、前記基台を移動させることで前記工具を移動させる、工具搬送装置。
【請求項11】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記工具搬送装置は更に、
前記複数の工具それぞれが載置される複数の基台を備え、
前記第2工具搬送機構は、
前記基台において工具が載置されている側の反対側から前記基台に接続され、前記基台を移動させることで前記工具を移動させる、工具搬送装置。
【請求項12】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記第1工具搬送機構は、
前記ストック位置及び前記搬送待機位置に加えて、前記工具ストッカに工具を出し入れするセット位置に工具を移動させる、工具搬送装置。
【請求項13】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記加工機は、
前記第1工具搬送機構を固定する第1固定部と、
前記第2工具搬送機構を固定する第2固定部と、を含み、
前記第1固定部及び前記第2固定部によって前記第1工具搬送機構及び前記第2工具搬送機構を前記加工機に固定することで、前記加工機、前記第1工具搬送機構及び前記第2工具搬送機構を前記工具ストッカから分離可能に構成される、工具搬送装置。
【請求項14】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記工具ストッカは、
前記加工機の側面に隣り合うように設けられ、
前記加工機の高さの中央で前記加工機を上下に二分した場合、側面視で、前記工具ストッカと前記加工機の上部とが重なる面積は、前記工具ストッカと前記加工機の下部とが重なる面積よりも大きい、工具搬送装置。
【請求項15】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記工具ストッカは、
前記複数の工具を収容する工具収容筐体と、
前記工具収容筐体を支持する支持脚と、を含み、
前記支持脚は、
前記工具収容筐体の下に空間を形成するように構成される、工具搬送装置。
【請求項16】
請求項
15に記載の工具搬送装置であって、
前記加工機は更に、
前記ワークを加工することによる加工屑を搬送する加工屑搬送装置を含み、
前記加工屑搬送装置は、
前記工具収容筐体の下の空間に設けられ、前記加工屑を前記加工機から排出する排出部を含む、工具搬送装置。
【請求項17】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記複数のストック位置は、
前記加工機の前後方向に並んで設けられ、
最も前のストック位置と最も後ろのストック位置との前後方向の距離は、前記加工室の前後方向の距離よりも長い、工具搬送装置。
【請求項18】
請求項1に記載の工具搬送装置であって、
前記複数のストック位置は、
前記加工機の前後方向に並んで設けられ、
前記搬送待機位置は、
少なくとも1つのストック位置よりも前方に設けられ、且つ、少なくとも1つのストック位置よりも後方に設けられる、工具搬送装置。
【請求項19】
ワークを加工する加工室と、前記加工室に設けられ、工具を着脱可能に保持する主軸とを含む加工機に用いられる工具搬送装置であって、
前記加工機に併設され、複数の工具を載置された状態で並べて収容する工具ストッカと、
前記工具ストッカに収容される工具それぞれが載置される複数のストック位置及び前記主軸に着脱される工具が載置される搬送待機位置に工具を移動させる第1工具搬送機構と、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置に対して水平方向にずれた位置であって前記主軸に工具を受け渡しする工具交換位置に工具を移動させる第2工具搬送機構と、を備え、
前記第2工具搬送機構は、前記加工機内に形成された搬送室を経由して工具を前記搬送待機位置と前記工具交換位置との間で搬送するように構成され、
前記第2工具搬送機構は、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置から前記工具ストッカに収容される工具の長手方向にずれた前記工具交換位置に工具を移動させる、工具搬送装置。
【請求項20】
ワークを加工する加工室と、前記加工室に設けられ、工具を着脱可能に保持する主軸とを含む加工機に用いられる工具搬送装置であって、
前記加工機に併設され、複数の工具を載置された状態で並べて収容する工具ストッカと、
前記工具ストッカに収容される工具それぞれが載置される複数のストック位置及び前記主軸に着脱される工具が載置される搬送待機位置に工具を移動させる第1工具搬送機構と、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置に対して水平方向にずれた位置であって前記主軸に工具を受け渡しする工具交換位置に工具を移動させる第2工具搬送機構と、を備え、
前記第2工具搬送機構は、前記加工機内に形成された搬送室を経由して工具を前記搬送待機位置と前記工具交換位置との間で搬送するように構成され、
前記加工機は、
前記第1工具搬送機構を固定する第1固定部と、
前記第2工具搬送機構を固定する第2固定部と、を含み、
前記第1固定部及び前記第2固定部によって前記第1工具搬送機構及び前記第2工具搬送機構を前記加工機に固定することで、前記加工機、前記第1工具搬送機構及び前記第2工具搬送機構を前記工具ストッカから分離可能に構成される、工具搬送装置。
【請求項21】
ワークを加工する加工室と、前記加工室に設けられ、工具を着脱可能に保持する主軸とを含む加工機に用いられる工具搬送装置であって、
前記加工機に併設され、複数の工具を載置された状態で並べて収容する工具ストッカと、
前記工具ストッカに収容される工具それぞれが載置される複数のストック位置及び前記主軸に着脱される工具が載置される搬送待機位置に工具を移動させる第1工具搬送機構と、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置に対して水平方向にずれた位置であって前記主軸に工具を受け渡しする工具交換位置に工具を移動させる第2工具搬送機構と、を備え、
前記第2工具搬送機構は、前記加工機内に形成された搬送室を経由して工具を前記搬送待機位置と前記工具交換位置との間で搬送するように構成され、
前記複数のストック位置は、
前記加工機の前後方向に並んで設けられ、
最も前のストック位置と最も後ろのストック位置との前後方向の距離は、前記加工室の前後方向の距離よりも長い、工具搬送装置。
【請求項22】
ワークを加工する加工室と、前記加工室に設けられ、工具を着脱可能に保持する主軸とを含む加工機に用いられる工具搬送装置であって、
前記加工機に併設され、複数の工具を載置された状態で並べて収容する工具ストッカと、
前記工具ストッカに収容される工具それぞれが載置される複数のストック位置及び前記主軸に着脱される工具が載置される搬送待機位置に工具を移動させる第1工具搬送機構と、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置に対して水平方向にずれた位置であって前記主軸に工具を受け渡しする工具交換位置に工具を移動させる第2工具搬送機構と、を備え、
前記第2工具搬送機構は、前記加工機内に形成された搬送室を経由して工具を前記搬送待機位置と前記工具交換位置との間で搬送するように構成され、
前記複数のストック位置は、
前記加工機の前後方向に並んで設けられ、
前記搬送待機位置は、
少なくとも1つのストック位置よりも前方に設けられ、且つ、少なくとも1つのストック位置よりも後方に設けられる、工具搬送装置。
【請求項23】
請求項1乃至
22いずれかに記載の工具搬送装置と、前記加工機とを備えた加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工機で用いられる工具として、一般的な工具よりも長尺なロングツールが知られている。ロングツールは、加工機に設けられた工具マガジンに収まらないことが多い。そのため、ロングツールを使用する場合、工具マガジンとは別にロングツールを収容するロングツールストッカが加工機に設けられる。ロングツールストッカに収容されたロングツールは、工具搬送装置によって加工室内の主軸等に受け渡しされる。このような工具搬送装置は、例えば特許文献1に開示される。
【0003】
特許文献1の工具搬送装置は、それぞれがロングツールを保持し、ロングツールストッカとして機能する複数の保持部材と、各保持部材にそれぞれ対応させて設けられており、ロングツールの長手方向に移動させる複数のエアシリンダとを備える。エアシリンダは、保持部材とともにロングツールを工具交換位置まで移動させる。加工室内の主軸が迎えにくることで、工具交換位置のロングツールは主軸にチャックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の工具搬送装置は、加工機のワークをチャックする主軸の周囲等の空間部に設けられる。これに伴い、ロングツールを収容するロングツールストッカも主軸の周囲等の空間部、すなわち加工機内に設けられる。そのため、加工機のサイズの関係上、収容可能なロングツールの本数が少なくなる。また、加工機の主軸に工具を受け渡すために、複数の保持部材それぞれにエアシリンダ、すなわち工具搬送機構が設けられる。そのため、単純に一軸方向に工具を搬送するだけのものであるにもかかわらず、工具搬送装置の構造が複雑であるとともに部品点数も多い。
【0006】
本発明は、収容可能なロングツールの本数を増やしやすくするとともに簡素な構造でロングツールを搬送することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の工具搬送装置は、
ワークを加工する加工室と、前記加工室に設けられ、工具を着脱可能に保持する主軸とを含む加工機に用いられる工具搬送装置であって、
前記加工機に併設され、複数の工具を載置された状態で並べて収容する工具ストッカと、
前記工具ストッカに収容される工具それぞれが載置される複数のストック位置及び前記主軸に着脱される工具が載置される搬送待機位置に工具を移動させる第1工具搬送機構と、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置に対して水平方向にずれた位置であって前記主軸に工具を受け渡しする工具交換位置に工具を移動させる第2工具搬送機構と、を備え、
前記第2工具搬送機構は、前記加工機内に形成された搬送室を経由して工具を前記搬送待機位置と前記工具交換位置との間で搬送するように構成される。
【0008】
上記の工具搬送装置では、工具を収容する工具ストッカが、加工機とは別に、すなわち加工機外に設けられる。加工機外に設けられた工具ストッカでは、加工機内に設けられる工具ストッカと比べて、工具を収容するスペースを広くとりやすい。そのため、加工機外に設けられた工具ストッカは、様々な大きさ、形状の工具をより多く収容することができる。特に、この構成は、工具が加工機内の工具マガジンに収容できないロングツールである場合に有効である。また、上記の工具搬送装置では、第1工具搬送機構が、工具ストッカに収容された種々の工具を第2工具搬送機構に受け渡しする。第2工具搬送機構は、加工機の主軸に工具を受け渡しする。すなわち、加工機の主軸に工具を受け渡す搬送機構が、第2工具搬送機構という1つの搬送機構に集約される。そのため、加工機の主軸に工具を受け渡すために、複数の工具それぞれに工具搬送機構を設ける必要がない。したがって、上記の工具搬送装置によれば、収容可能なロングツールの本数を増やすとともに簡素な構造でロングツールを搬送することができる。
【0009】
(2)上記(1)の工具搬送装置において、
前記工具ストッカは、
前記複数の工具を、その長手方向に直交する方向に並べて収容してもよい。
【0010】
(3)上記(1)の工具搬送装置において、
前記工具ストッカは、
前記複数の工具を、それぞれの長手方向が前記加工機の左右方向に平行となるように前記加工機の前後方向に並べて収容してもよい。
【0011】
(4)上記(1)の工具搬送装置において、
前記第1工具搬送機構は、
前記複数のストック位置及び前記複数のストック位置それぞれから前記工具ストッカに収容される工具が並ぶ方向にずれた前記搬送待機位置に工具を移動させてもよい。
【0012】
(5)上記(1)の工具搬送装置において、
前記第1工具搬送機構は、
前記複数のストック位置及び前記複数のストック位置それぞれから前記加工機の前後方向にずれた前記搬送待機位置に工具を移動させてもよい。
【0013】
上記(2)~(5)の工具搬送装置によれば、複数の工具がその長手方向に並べられる構成と比べて、工具ストッカ内の収容スペースを効率的に利用できる。
【0014】
(6)上記(1)の工具搬送装置において、
前記第2工具搬送機構は、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置から前記工具ストッカに収容される工具の長手方向にずれた前記工具交換位置に工具を移動させてもよい。
【0015】
(7)上記(1)の工具搬送装置において、
前記第2工具搬送機構は、
前記搬送待機位置及び前記搬送待機位置から前記加工機の左右方向にずれた前記工具交換位置に工具を移動させてもよい。
【0016】
一般に、加工機では、加工室の後ろ(背面側)には主軸を作動させる機器等が配置され、加工室の前(正面側)にはワークを出し入れするドアが設けられる。また、加工室の下は工場等の床に近い。加工室の上は空間がある場合があるが、加工室の上から工具を入れると、工具搬送装置が上下方向に大型化する。これに対し、上記(6)及び(7)の工具搬送装置では、加工機の左右方向のスペースを利用し、工具を工具ストッカから加工機に搬送する。つまり、上記の工具搬送装置は、専用の加工機だけでなく、汎用の加工機に対しても適用されやすい。
【0017】
(8)上記(1)の工具搬送装置において、
前記第1工具搬送機構が工具を移動させる方向は、前記第2工具搬送機構が工具を移動させる方向と交差してもよい。
【0018】
第1工具搬送機構が工具を移動させる方向と第2工具搬送機構が工具を移動させる方向とが同じ場合、その方向に工具搬送装置は大型化しやすい。これに対し、上記(8)の工具搬送装置では、第1工具搬送機構が工具を移動させる方向と第2工具搬送機構が工具を移動させる方向とが異なる。そのため、この工具搬送装置によれば、工具搬送装置の大型化が抑制される。好ましくは、上面視で、第1工具搬送機構が工具を移動させる方向は、第2工具搬送機構が工具を移動させる方向と交差する。より好ましくは、上面視で、第1工具搬送機構が工具を移動させる方向は、第2工具搬送機構が工具を移動させる方向と直交する。
【0019】
(9)上記(1)の工具搬送装置において、
前記第1工具搬送機構及び前記第2工具搬送機構は、前記加工機の天井よりも低い位置に設けられてもよい。
【0020】
例えば、工具を加工機内の搬送室に上から入れる場合を考える。この場合、工具搬送装置は、工具ストッカに収容された工具を加工機の天井よりも高い位置に移動させる必要がある。このような搬送方法の一例として、ガントリーローダを用いた工具の搬送がある。この場合、ガイドレールを加工機の上に設ける必要があり、工具搬送装置が上下方向に大型化しやすい。これに対し、上記(9)の工具搬送装置では、工具を搬送する第1、第2工具搬送機構は、加工機の天井よりも低い位置に設けられる。したがって、この工具搬送装置によれば、工具搬送装置の上下方向の大型化を抑制できる。
【0021】
(10)上記(1)の工具搬送装置において、
前記工具搬送装置は更に、
前記複数の工具それぞれが載置される複数の基台と、
前記複数の基台それぞれと前記第1工具搬送機構とを着脱可能に接続するロック機構と、を備えていてもよい。
【0022】
上記(10)の工具搬送装置では、第1工具搬送機構は工具を直接把持しない。第1工具搬送機構は、基台を移動させることで工具を移動させる。第1工具搬送機構と基台とは、ロック機構によって着脱可能に接続される。そのため、工具の大きさや形状によらず第1工具搬送機構と第2工具搬送機構で受け渡しされる対象の形状を揃えることができ、各工具搬送機構を簡素化しやすい。
【0023】
(11)上記(1)の工具搬送装置において、
前記工具搬送装置は更に、
前記複数の工具それぞれが載置される複数の基台を備え、
前記第1工具搬送機構は、
前記基台において工具が載置されている側から前記基台に接続され、前記基台を移動させることで前記工具を移動させてもよい。
【0024】
このようなものであれば、隣り合う基台同士を隣接させて工具ストッカ内に並べることができる。したがって、上記の工具搬送装置によれば、工具ストッカに収容できる工具の本数をより増やすことができる。言い換えると、第1工具搬送機構が基台の両側面部を一対の爪部を有するハンドで挟み込んで搬送する場合、各基台の間に爪部を侵入させるための隙間を形成する必要があり、各基台間に設置間隔が生じるようにストック位置を設定せざるを得ない。これに対しては上記(11)の工具搬送装置であれば、前記基台の工具載置側と前記第1工具搬送機構との間に接続されるので、そういった隙間を設ける必要がなく、工具ストッカ内のスペースを最大限有効活用できる。
【0025】
(12)上記(1)の工具搬送装置において、
前記工具搬送装置は更に、
前記複数の工具それぞれが載置される複数の基台を備え、
前記第2工具搬送機構は、
前記基台において工具が載置されている側の反対側から前記基台に接続され、前記基台を移動させることで前記工具を移動させてもよい。
【0026】
上記(12)の工具搬送装置では、第2工具搬送機構が下から基台に接続される。そのため、第2工具搬送機構としてコンベヤ等の搬送機構を適用できる。第2工具搬送機構は、工具を上下方向に移動させる昇降機構等を備える必要がない。したがって、上記の工具搬送装置によれば、工具搬送装置の上下方向の大型化を抑制できる。
【0027】
(13)上記(1)の工具搬送装置において、
前記第1工具搬送機構は、
前記ストック位置及び前記搬送待機位置に加えて、前記工具ストッカに工具を出し入れするセット位置に工具を移動させてもよい。
【0028】
例えば、工具ストッカが外部から工具を出し入れする機能を有していない場合、工具ストッカに収容する工具は、最初に加工機の主軸に装着される。その後、工具搬送機構が主軸から工具を受け取った工具を工具ストッカへ搬送する。これに対し、上記(13)の工具搬送装置では、主軸を経由しなくても工具ストッカに工具を出し入れすることができる。したがって、この工具搬送装置によれば、工具ストッカに工具を収容する作業が容易になる。
【0029】
(14)上記(1)の工具搬送装置において、
前記加工機は、
前記第1工具搬送機構を固定する第1固定部と、
前記第2工具搬送機構を固定する第2固定部と、を含み、
前記第1固定部及び前記第2固定部によって前記第1工具搬送機構及び前記第2工具搬送機構を前記加工機に固定することで、前記加工機、前記第1工具搬送機構及び前記第2工具搬送機構を前記工具ストッカから分離可能に構成されてもよい。
【0030】
工具交換位置において、第2工具搬送機構と加工機の主軸とで工具を自動で受け渡しするには、加工機に対する第2工具搬送機構の位置が重要となる。仮に、第2工具搬送機構が工具ストッカに固定されるとする。この場合、工具搬送機構を組み立てるとき、加工機に工具交換位置を認識させる位置合わせ作業が必要になる。同様に、仮に第1工具搬送機構が加工機に固定され、第2工具搬送機構が工具ストッカに固定されるとする。この場合、第1工具搬送機構に搬送待機位置を認識させる位置合わせ作業が必要になる。上記(14)の工具搬送装置では、第1工具搬送機構及び第2工具搬送機構の両方が、加工機に固定される。そのため、例えば加工機に第1工具搬送機構及び第2工具搬送機構が取り付けられた状態で出荷すれば、納入先で工具搬送装置を組み立てる際、上述の位置合わせ作業を行う必要がない。したがって、この工具搬送装置によれば、工具搬送装置の組み立ての作業を容易にすることができる。
【0031】
(15)上記(1)の工具搬送装置において、
前記工具ストッカは、
前記加工機の側面に隣り合うように設けられ、
前記加工機の高さの中央で前記加工機を上下に二分した場合、側面視で、前記工具ストッカと前記加工機の上部とが重なる面積は、前記工具ストッカと前記加工機の下部とが重なる面積よりも大きくてもよい。
【0032】
(16)上記(1)の工具搬送装置において、
前記工具ストッカは、
前記複数の工具を収容する工具収容筐体と、
前記工具収容筐体を支持する支持脚と、を含み、
前記支持脚は、
前記工具収容筐体の下に空間を形成するように構成されてもよい。
【0033】
(17)上記(16)の工具搬送装置において、
前記加工機は更に、
前記ワークを加工することによる加工屑を搬送する加工屑搬送装置を含み、
前記加工屑搬送装置は、
前記工具収容筐体の下の空間に設けられ、前記加工屑を前記加工機から排出する排出部を含んでいてもよい。
【0034】
一般に、加工機の下部の横には、加工屑搬送装置の排出口、加工屑収容バケット等が設けられることが多い。上記(15)~(17)の工具搬送装置では、工具ストッカは加工機の上部に併設される。すなわち、加工屑搬送装置の排出部の上に位置するスペースを利用して工具を収容する。そのため、例えば工具ストッカを前後方向に広げやすい。したがって、この工具搬送装置によれば、工具ストッカに収容できる工具の本数をより増やすことができる。
【0035】
(18)上記(1)の工具搬送装置において、
前記複数のストック位置は、
前記加工機の前後方向に並んで設けられ、
最も前のストック位置と最も後ろのストック位置との前後方向の距離は、前記加工室の前後方向の距離よりも長くてもよい。
【0036】
(19)上記(1)の工具搬送装置において、
前記複数のストック位置は、
前記加工機の前後方向に並んで設けられ、
前記搬送待機位置は、
少なくとも1つのストック位置よりも前方に設けられ、且つ、少なくとも1つのストック位置よりも後方に設けられてもよい。
【0037】
第2工具搬送機構によって搬送される工具は加工機の主軸に受け渡しされる。加工機において加工室内の主軸よりも後ろには、主軸を作動させる機器等の種々の機器が配置される。これらの機器を配置する分、加工機は主軸の位置(主軸が最も後ろに下がった位置)よりも後方に突出している。仮に、主軸と第2工具搬送機構とで工具の受け渡しをする搬送待機位置が、全てのストック位置よりも後ろに設けられるとする。この場合、搬送待機位置すなわち第2工具搬送機構よりも前に全ての工具が収容される。これは、加工機において第2工具搬送機構よりも後方に突出している部分の横にはストック位置が設けられないことを意味する。これに対し、上記(18)及び(19)の工具搬送装置では、搬送待機位置の前及び後ろに少なくとも1つのストック位置が設けられる。この構成では、加工機において第2工具搬送機構よりも後方に突出している部分の横のスペースも有効活用できる。すなわち、上記の工具搬送装置では、加工機の前後方向の長さを有効に利用して工具ストッカに工具を収容する。したがって、この工具搬送装置によれば、工具ストッカに収容できる工具の本数をより増やしつつ工具搬送装置の大型化を抑制できる。
【0038】
(20)本発明の加工システムは、上記(1)~(19)のいずれかの工具搬送装置と、前記加工機とを備える。
【発明の効果】
【0039】
本発明の工具搬送装置によれば、収容可能なロングツールの本数を増やすとともに簡素な構造でロングツールを搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本実施形態の加工システムの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の加工機の構造を模式的に示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の工具搬送装置の正面視での断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の工具搬送装置の右側面視での断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の工具ストッカを加工機から分離させた構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の工具ストッカに収容された工具を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の工具搬送装置における第1工具搬送機構を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の工具搬送装置において第1工具搬送機構と基台とを接続するロック機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0042】
図1は、本実施形態の加工システムの全体構成を示す斜視図である。加工システム100は、工具搬送装置1と、加工機2と、図示しない制御装置とを含む。加工システム100では、加工機2で使用する工具が、工具搬送装置1に収容される。工具搬送装置1は、収容している工具を搬送し、加工機2に渡す。工具搬送装置1は、加工機2から渡された工具を搬送し、収容する。以下、各構成について詳述する。
【0043】
<構成>
[加工機]
加工機2は、ワークを加工する機械である。加工機2は、旋削機能及びミーリング機能を有する複合加工機である。加工機2は、例えば除去加工だけでなく、付加加工も行える物であっても良いし、後述する工具搬送装置を適用可能な態様のものであれば良い。。
【0044】
加工機2は、開閉可能なドア295を含む。ドア295は、加工機2の外装の一部を構成する。ドア295は、ワークを加工する加工室と加工機2の外部とを開通及び遮断する。ドア295は、加工室にワークを搬入、加工室からワークを搬出できるように構成される。ドア295は、加工機2の正面に設けられる。以下、加工機2の正面とは、加工機2においてドア295が設けられた側の面を言う。加工機2の背面とは、加工機2において正面と反対側の面を言う。また、加工機2において背面から正面に向かう方向を前方向と言い、正面から背面に向かう方向を後方向と言う。加工機2において左方向は正面視で加工機2の左に向かう方向を言い、右方向は正面視で加工機2の右に向かう方向を言う。加工機2において上方向は正面視で加工機2の上(天井)に向かう方向を言い、下方向は正面視で加工機2の下(床)に向かう方向を言う。
【0045】
図2は、本実施形態の加工機の構造を模式的に示す模式図である。加工機2は、ワークを加工する加工室21と、加工室に設けられる主軸22とを含む。加工室21は、ワークを加工するための空間である。加工室21は、スプラッシュガード等で形成される。主軸22は、ツールホルダを介して工具を着脱可能に保持する。主軸22は、図示しない主軸頭に回転可能に保持される。主軸頭は、加工機2のベッド29の後端部に立設された図示しないコラムに上下方向(X方向とも言う)及び前後方向(Y方向とも言う)に移動可能に保持される。コラムは、ベッドの後端部の上面に左右方向(Z方向とも言う)に移動可能に支持される。このような構成により、主軸22は、上下方向、前後方向及び左右方向に移動可能となる。また、主軸22は、前後方向と平行な回転軸(B軸とも言う)周りに回転可能に構成される。
【0046】
加工機2は更に、ワーク主軸23と、補助ワーク主軸24と、を含む。ワーク主軸23及び補助ワーク主軸24は、加工室21内に設けられる。ワーク主軸23及び補助ワーク主軸24は、ベッド29上に設けられる。ワーク主軸23及び補助ワーク主軸24はそれぞれ、ワークの端部を把持するチャックを含む。ワーク主軸23及び補助ワーク主軸24は、ワークをその中心軸が左右方向に平行となるように支持する。
【0047】
加工機2は更に、標準工具マガジン25と、標準工具交換装置26と、加工屑搬送装置27と、を含む。標準工具マガジン25は、主軸22に装着する複数の工具251を収容する。標準工具マガジン25は、加工機2内に設けられる。標準工具マガジン25は、加工室21に隣接して設けられる。標準工具マガジン25の少なくとも一部は、加工室21の左に設けられる。標準工具交換装置26は、マガジン式の自動工具交換装置である。標準工具交換装置26は、加工機2内に設けられる。標準工具交換装置26は、標準工具マガジン25と主軸22との間で工具の受け渡しを行う。加工屑搬送装置27は、ワークを加工することによる加工屑を搬送する。加工屑搬送装置27は、加工室21で生じた加工屑を加工機2外に搬送する。加工屑搬送装置27は、加工室21から左右方向に伸びる。加工屑搬送装置27の一部は加工機2内に設けられ、残りは加工機2外に設けられる。加工屑搬送装置27は、加工屑を受け入れる受入部271を含む。受入部271は、加工室21の下に設けられる。加工屑搬送装置27は、加工屑を排出する排出部272を含む。排出部272は、加工機2の外に設けられる。排出部272は、加工機2の右側面の下部から外に突出する。排出部272は、例えば排出口2721を含む。排出部272は、例えば排出口から排出された加工屑を収容するバケット2722を含む。
【0048】
加工機2内には、搬送室28が設けられる。搬送室28は、工具ストッカ11に隣接するように設けられる。搬送室28は、加工機2の外装面(右側面)から加工室21内に突出するように設けられる。搬送室28は、加工室21の天井から加工室21内に突出するように設けられる。搬送室28は、加工機2の右上部に設けられる。搬送室28には、後述する第2工具搬送機構13によって主軸22に受け渡しする工具Tが搬送される。
【0049】
[工具搬送装置]
図3は、本実施形態の工具搬送装置の正面視での断面図である。この図は、工具搬送装置1を前後方向に垂直な面で切断し、正面から見た図である。工具搬送装置1は、工具ストッカ11と、第1工具搬送機構12と、第2工具搬送機構13とを含む。
【0050】
[工具ストッカ]
工具ストッカ11は、複数の工具Tを載置された状態で並べて収容する。ここで、工具Tは、ロングツールと呼ばれる長尺の工具である。工具Tは、加工機2の標準工具マガジン25に収容しきれない大きさを有する。工具Tは、例えばその長手方向の長さ寸法が、標準工具マガジン25において工具が収容される収容部の前後方向又は左右方向の寸法よりも大きいサイズを有する。
【0051】
工具ストッカ11は、加工機2に併設される。より詳細には、工具ストッカ11は、加工機2の右に設けられる。ただし、工具ストッカ11は、加工機2の左に設けられてもよい。工具ストッカ11は、加工機2と繋がるように設けられる。ただし、工具ストッカ11は、加工機2と所定の距離を空けて設けられてもよい。所定の距離は特に限定されず、製品の仕様等に応じて適宜設定される。
【0052】
工具ストッカ11は、支持脚111と、工具収容筐体112とを含む。支持脚111は、工具搬送装置1及び加工機2が設置される施設の床の上に設けられる。支持脚111は、工具収容筐体112を支持する。支持脚111は、工具収容筐体112の下に空間を形成するように構成される。このように支持脚111で工具収容筐体112が上方に支持された状態にして、工具収容筐体112の下方に機器収容空間を形成している。この結果、加工機2の右側に配置される加工屑搬送装置27の排出部272などを配置することができる。すなわち、工具搬送装置1を加工機2に対してオプションとして増設したとしても全体としてのフットプリントはそれほど変わらないようできる。また、工具収容筐体112が排出部272の上方に配置されているので、加工機2の前後方向の幅全体を利用することができる。したがって、内部に収容できる工具Tの本数を水平置きでも多くすることが可能となる。支持脚111は、例えばフレーム構造を有する。一例として、支持脚111は少なくとも4つの支柱で構成される。各支柱は、工具収容筐体112の下面の角部を支持する。
【0053】
工具収容筐体112は、支持脚111の上に設けられる。工具収容筐体112は、実質的に直方体形状を有する。工具収容筐体112は内部に工具を収容する工具収容室を形成する。工具収容筐体112は、正面、背面、上面、下面及び右側面を有し、工具収容筐体112の左側面は開口している。
【0054】
工具収容筐体112は、加工機2の右上部に併設される。工具収容筐体112は、加工機2の右側面に繋がる。工具収容筐体112は、加工機2内に形成される搬送室28に隣接するように設けられる。工具収容筐体112は、支持脚111の下端(床)から所定の高さ位置に設けられる。工具収容筐体112は、加工機2の加工屑搬送装置27(
図2参照)よりも高い位置に設けられる。工具収容筐体112の下には、加工機2の加工屑搬送装置27の排出部272の少なくとも一部が設けられる。
【0055】
図4は、本実施形態の工具搬送装置の右側面視での断面図である。この図は、工具搬送装置1を左右方向に垂直な面で切断し、右側から見た図である。工具収容筐体112は、複数の工具Tを収容できるような前後方向の長さを有する。工具収容筐体112の前後方向の長さは、加工室21の前後方向の長さよりも長い。工具収容筐体112の前面1121は、加工機2の左右方向の中央よりも前に設けられる。工具収容筐体112の前面1121は、前後方向において加工機2の正面のドアと実質的に同じ位置に設けられる。工具収容筐体112の後面1122は、加工機2の左右方向の中央よりも後ろに設けられる。工具収容筐体112の後面1122は、前後方向において加工室21の後面よりも後ろに設けられる。ただし、本実施形態で説明する工具収容筐体112のサイズは一例である。工具収容筐体112のサイズは、収容する工具の種類、本数、大きさ等により適宜変更されてよい。なお、工具収容筐体112の前面1121には、引き出し1123が設けられる。引き出し1123は、前後方向に移動可能である。引き出し1123は、工具収容筐体112の前面1121よりも前に引き出すことが可能である。引き出し1123は、工具ストッカ11の外部から入れられる工具Tを収容可能である。ここで言う工具ストッカ11の外部とは、加工システム100の外部を指す。工具ストッカ11の外部とは、加工機2を指すものではない。
【0056】
複数の工具Tはそれぞれ、その長手方向が左右方向と平行になるように配置される。複数の工具Tは、横並びに配置される。複数の工具Tは、各工具の長手方向に直交する方向に並べられて収容される。複数の工具Tは、前後方向に並べられて収容される。
【0057】
図5は、本実施形態の工具ストッカを加工機から分離させた構成を示す斜視図である。工具ストッカ11は、加工機2、第1工具搬送機構12及び第2工具搬送機構13から分離可能に構成される。
【0058】
[基台]
図6は、本実施形態の工具ストッカに収容された工具を示す図である。図中(A)は右側面視で工具Tを見た図である。工具ストッカ11に工具を収容するために、工具搬送装置1は、複数の基台14を含む。複数の基台14は同様の構成であるため、以下では1つの基台について説明する。基台14は、左右方向を長手方向とする板形状を有する。基台14は、上面側において工具Tを支持するように構成される。基台14による工具の支持方法は特に限定されない。例えば、図中(B)に示されるように、基台14は、工具Tを支持する複数の支持器141を含む。支持器141は基台14の上面であり、工具の載置面側に少なくとも2つ以上長手方向に沿って並べて設けられる。支持器141は例えば概略Vブロック状をなし、基台14に対して着脱可能に構成されている。第1の支持器は、工具の第1端部を支持する。第2の支持器は、工具の第2端部を支持する。例えば工具の重量や長さに応じて支持器141の基台14の上面における長手方向の位置は適宜変更可能に構成される。複数の支持器141は、支持する工具に応じて位置、大きさ、形状等を適宜変更できるように構成される。また、本実施形態では基台14の上面側は後述する第1工具搬送機構12に接続され、基台14の下面側は後述する第2工具搬送機構13に接続される。
【0059】
[第1工具搬送機構]
図7は、本実施形態の工具搬送装置における第1工具搬送機構を示す斜視図である。第1工具搬送機構12は、工具収容筐体112内において工具を加工機2の前後方向に搬送するものである。第1工具搬送機構12は、加工機2の右上部に設けられる。第1工具搬送機構12は、少なくとも一部が加工機2から突出するように設けられる。第1工具搬送機構12は、左右方向において、少なくとも一部が加工機2から突出するように設けられる。第1工具搬送機構12は、加工機2の天井291よりも低い位置に設けられる。第1工具搬送機構12は、工具Tを上下方向及び前後方向に移動させることができる。より詳細には、第1工具搬送機構12は、前後移動機構121と、上下移動機構122と、搬送アーム123とを含む。
【0060】
前後移動機構121は、搬送アーム123を前後方向に移動させる。前後移動機構121は、例えばスライダである。ただし、前後移動機構121は、スライダに限定されない。前後移動機構121は、搬送アーム123を前後方向に移動可能に構成されればよい。前後移動機構121は、案内レール1211と、スライド台1212と、駆動装置1213とを含む。案内レール1211は、加工機2の右上部に設けられる。案内レール1211は、前後方向に伸びる。前後方向において、案内レール1211の両端部はそれぞれ、第1固定部293を介して加工機2に固定される。第1固定部293は例えば加工機2の各機器やスプラッシュガードなどを支持するフレーム等を利用する、あるいは固定されている。したがって、第1固定部293に案内レール1211を固定することにより、案内レール1211は加工機2の各機器対して位置決めされるように構成されている。また、後述するように第2工具搬送機構13についても工具ストッカではなく、加工機2側に固定される。このように工具Tの搬送に係る各搬送機構については加工機2に固定されるようにしているので、加工機2にオプションとしてロングツール用の工具ストッカ11を増設する場合でも各機器の位置調整がしやすい。すなわち、工具搬送装置1の機能として静止している部分は工具収容筐体112に集約し、可動部分であり、位置合わせが必要なものは加工機2に固定されるようにしている。このため、位置合わせが終了してから工具収容筐体112で各搬送機構において加工機2から外部へ露出している部分を覆うだけで工具搬送装置1を組み立てることができる。したがって、オプション機能として増設しやすい。スライド台1212は、案内レール1211に沿って摺動可能に取り付けられる。スライド台1212は、板形状を有する。スライド台1212は、案内レールよりも下方に伸びる。スライド台1212は、案内レール1211に沿って前後方向に移動する。スライド台1212は、駆動装置1213によって移動する。駆動装置1213は、例えばサーボモータである。ただし、駆動装置1213は、これに限定されない。駆動装置1213は、スライド台1212を移動させることができればよい。駆動装置1213は、リニアモータ等の各種モータ、油圧装置、空気圧装置、その他のアクチュエータ等でもよい。
【0061】
上下移動機構122は、搬送アーム123を上下方向に移動させる。上下移動機構122は、案内レール1221と、昇降装置1222とを含む。案内レール1221は、前後移動機構121のスライド台1212に取り付けられる。案内レール1221は、上下方向に伸びる。昇降装置1222は、前後移動機構121のスライド台1212に取り付けられる。昇降装置1222は、油圧装置である。ただし、昇降装置1222は、これに限定されない。昇降装置1222は、搬送アーム123を上下方向に移動させることができればよい。昇降装置1222は、各種モータ、スライダ、空気圧装置、その他のアクチュエータ等でもよい。
【0062】
搬送アーム123は、上下移動機構122の案内レール1221に移動可能に取り付けられる。搬送アーム123は、アーム部1231と、複数の爪部1232とを含む。アーム部1231は、左右方向に伸びる。アーム部1231の左端部は、案内レール1221に移動可能に取り付けられる。アーム部1231の上部は、昇降装置1222に取り付けられる。複数の爪部1232は、アーム部1231の下部に設けられる。複数の爪部1232は、アーム部1231から下方に伸びる。本実施形態では、爪部1232は4つ設けられる。2つ爪部1232は、アーム部1231の先端部(右端部)に、前後方向に所定の間隔を空けて設けられる。残りの2つの爪部1232は、アーム部1231の先端部から左右方向に所定の距離離れた位置に設けられる。残りの2つの爪部1232も、前後方向に所定の間隔を空けて設けられる。前後方向に隣り合う2つの爪部1232の間隔は、工具Tの直径よりも大きい。複数の爪部1232は、工具Tに跨るように設けられる。ただし、複数の爪部1232は、工具Tと接触しない。複数の爪部1232は、ロック機構15を介して基台14に着脱できるように構成される。複数の爪部1232は、ロック機構15を介して基台14に差し込まれるように接続される。
【0063】
[ロック機構]
図8は、本実施形態の工具搬送装置において第1工具搬送機構と基台とを接続するロック機構を示す図である。図中(A)を参照して、ロック機構15は、基台14と第1工具搬送機構12(爪部1232)とを着脱可能に接続する。ロック機構15は、例えばキャッチシリンダである。すなわち、ロック機構15は、第1工具搬送機構12の爪部1232と基台の上面との間に設けられており、凹部151と、凸部152とを含む。なお、この実施形態では凹部151は基台14の上面側に設けられており、爪部1232に凸部152が設けられている。
【0064】
凹部151は、基台14に設けられる。凹部151は、孔形状を有する。凹部151は、基台14の上面に開口する。凹部151は、その内周面に縮径部1511を含む。
【0065】
凸部152は、爪部1232の下端部に設けられる。凸部152は、爪部1232の下端部から下方に突出する。凸部152は、シリンダ1521と、圧力装置1522と、ピストン1523と、弾性部材1524と、複数のボール1525とを含む。シリンダ1521の上端部は、爪部1232に固定される。シリンダ1521の上端部は、圧力装置1522に接続される。圧力装置1522は、空気圧装置、電動アクチュエータ等である。シリンダ1521の下端部は、凹部151に挿入可能に構成される。シリンダ1521の下端部には、複数のボール1525が設けられる。複数のボール1525は、シリンダ1521の外周面から突出可能に設けられる。シリンダ1521内部には、ピストン1523が設けられる。ピストン1523は、シリンダ1521の軸方向に沿って移動可能に構成される。ピストン1523は、シリンダ1521内に設けられた弾性部材1524と接続される。弾性部材1524は、例えばバネである。ピストン1523のロッド部分は、一部が縮径するように構成される。
【0066】
図中(B)を参照して、爪部1232と基台14とを接続する際、すなわちロック機構15の凸部152を凹部151に挿入する際、圧力装置1522が作動する。圧力装置1522は、シリンダ1521内のピストン1523を下方に押し下げる。その結果、複数のボール1525の内側にピストンの縮径している部分が位置するようになる。複数のボール1525は内側に移動可能となり、シリンダ1521の外周面から内側に引っ込むことが可能となる。これにより、凸部152が、凹部151に挿入される。凸部152が凹部151に挿入されると、圧力装置1522は非作動状態となり、ピストン1523が弾性部材1524によって押し上げられる。その結果、図中(A)に示すように複数のボール1525が外側に押し出され、シリンダ1521の外周面から突出する。複数のボール1525の突出した部分は、凹部151の縮径部1511により上方向への移動が規制される。これにより、第1工具搬送機構12は、ロック機構15を介して基台14を移動させることで工具Tを移動させることができる。
【0067】
図4を参照して、第1工具搬送機構12は、セット位置P1、ストック位置P2及び搬送待機位置P3に工具Tを移動させる。第1工具搬送機構12は、工具Tをセット位置P1とストック位置P2との間で搬送するように構成される。第1工具搬送機構12は、工具Tをストック位置P2と搬送待機位置P3との間で搬送するように構成される。第1工具搬送機構12は、工具Tをセット位置P1と搬送待機位置P3との間で搬送するように構成されてもよい。
【0068】
[セット位置]
セット位置P1は、工具ストッカ11の外部から工具ストッカ11内に入れられる工具Tが載置される位置である。セット位置P1は、工具ストッカ11(工具収容筐体112)内に設けられる。セット位置P1は、ストック位置P2及び搬送待機位置P3と前後方向に並ぶように設けられる。より具体的にはセット位置P1、ストック位置P2及び搬送待機位置P3の前後方向の配置間隔は一定に設定されている。各位置に工具Tが載置された基台14がセットされた状態では、基台14の長辺同士がほぼ隙間なく隣接するようになる。ここで、ほぼ隙間なくとは第1工具搬送機構12の爪部1232の幅寸法よりも小さい隙間しか空いていないことをいう。セット位置P1は、ストック位置P2及び搬送待機位置P3の前方に設けられる。セット位置P1は、工具ストッカ11の工具収容筐体112内に押し込まれた状態の引き出し1123上に設定される。セット位置P1には基台14を介して工具Tが載置される。より具体的には、作業者は工具収容筐体112から引き出し1123を前側に引き出した状態とし、引き出し1123上に工具Tが載置された基台14をセットする。ここで、引き出し1123セット後、作業者は引き出し1123を工具収容筐体112内へ押し込むことで、基台14上の工具Tはセット位置P1に配置されるように構成されている。
【0069】
[ストック位置]
ストック位置P2は、工具ストッカ11に収容される工具Tが載置される位置である。工具ストッカ11は複数の工具を収容可能であるため、ストック位置P2は複数設けられる。より具体的には、ストック位置P2に配置されている工具Tは現在行っている加工工程又は次の加工工程では使用されない工具であり、待機中の工具となる。各ストック位置P2は、工具ストッカ11(工具収容筐体112)内に設けられる。各ストック位置P2は、前後方向に並べて設けられる。最も前のストック位置P2と最も後ろのストック位置P2との前後方向の距離は、加工室21の前後方向の距離(加工室21の前面を形成するドアの内面と、加工室21の背面を形成する壁面との間の距離)よりも長い。各ストック位置P2には、基台14を載置可能である。各ストック位置P2には基台14を介して工具Tが載置される。
【0070】
[搬送待機位置]
搬送待機位置P3は、主軸22に着脱される工具Tが載置される位置である。すなわち、搬送待機位置P3は、主軸22に装着される工具Tが載置される位置及び主軸22から取り外され、工具ストッカ11に収容される工具Tが載置される位置である。本実施形態では、搬送待機位置P3は、主軸22から取り外された工具Tが第1工具搬送機構12によりストック位置P2へ搬送されるまでの間に一時的に載置される位置である。また、搬送待機位置P3はストック位置P2にある工具Tが主軸22へ搬送されるまでの間に一時的に載置される位置でもある。主軸22から取り外された工具Tは搬送待機位置P3まで搬送された後、ストック位置P2に載置される。搬送待機位置P3は、工具ストッカ11(工具収容筐体112)内に設けられる。ただし、搬送待機位置P3は、加工機2に形成された搬送室28に設けられてもよい。搬送待機位置P3は、1つ設けられる。搬送待機位置P3は、各ストック位置P2から工具ストッカ11に収容される工具Tが並ぶ方向(前後方向)にずれた位置に設けられる。搬送待機位置P3は、前後方向に並べられる複数のストック位置P2の途中に設けられる。搬送待機位置P3は、少なくとも1つのストック位置P2よりも前方に設けられる。搬送待機位置P3は、少なくとも1つのストック位置P2よりも後方に設けられる。搬送待機位置P3は、前後方向において隣り合う2つのストック位置P2の間に設けられる。搬送待機位置P3は、前後方向において、工具収容筐体112の中央に設けられる。ただし、搬送待機位置P3が設けられる位置は特に限定されない。搬送待機位置P3は、ストック位置P2と異なる位置であればよい。搬送待機位置P3は、第2工具搬送機構13の一部に設けられる。搬送待機位置P3は、左右方向に伸びる第2工具搬送機構13の工具ストッカ11側の端部(右端部)に相当する。
【0071】
[第2工具搬送機構]
図3を参照して、第2工具搬送機構13は、コンベアである。第2工具搬送機構13は、搬送台131と、左右移動機構132とを含む。
図5に示されるように第2工具搬送機構13は第1工具搬送機構12に対して下方に設けられており、ねじれの位置で搬送方向が90度交差するように構成されている。この第2工具搬送機構13は主に工具Tを工具ストッカ11の搬送待機位置P3と、工具主軸22と工具交換が行われる工具交換位置P4との間で搬送する。また、第1工具搬送機構12が基台14の上面側と接続されて工具Tを搬送するのに対して、第2工具搬送機構13は基台14の下面側と接続されて工具Tを搬送する。
【0072】
搬送台131は、板形状を有する。搬送台131は、その上に基台14を載置できるように構成される。搬送台131は、搬送台131に載置された基台14を支持する。搬送台131は、搬送台131に載置された基台14を搬送台131から取り外せるように構成される。搬送台131は、搬送台131に対する基台14の移動を規制する規制機構を含む。規制機構は、例えば位置決めピン等である。搬送台131は、左右移動機構132に取り付けられる。
【0073】
左右移動機構132は、搬送台131を左右方向に移動させる。左右移動機構132は、左右方向に伸びる。左右移動機構132は、図示しない第2固定部を介して加工機2に固定される。第2固定部についても加工機2の各機器を支持するフレームなどに固定されており、第2固定部に対して左右移動機構132が固定されることにより、加工機2の各機器に対して位置決めされる。左右移動機構132は、伝動装置1321と、駆動装置1322とを含む。伝動装置1321は、左右方向に伸びる。伝動装置1321は、搬送台131を支持する。伝動装置1321は、チェーン、ベルト等である。駆動装置1322は、伝動装置1321を駆動する。駆動装置1322は、例えばサーボモータである。駆動装置1322は、サーボモータに限定されず、搬送台131を移動させることができればよい。なお、左右移動機構132は、このような構成に限定されない。左右移動機構132は、搬送台131を移動させることができればよい。左右移動機構132は、各種アクチュエータ、空気圧装置、油圧装置等でもよい。左右移動機構132は搬送台131を搬送待機位置P3側の右側端と工具交換位置P4側の左側端との間で移動させる。搬送台131が右側端に配置された状態においては、搬送台131の上部に取り付けられている基台14上の工具Tは搬送待機位置P3に配置されるとともに、工具ストッカ11内に載置されている複数の各基台14の上面はほぼ面一となるように構成されている。
【0074】
このような構成の第2工具搬送機構13の少なくとも一部は、加工機2内に設けられる。第2工具搬送機構13の少なくとも一部は、加工機2の右上部に設けられる。第2工具搬送機構13は、加工機2の搬送室28から加工室21に突出しないように設けられる。第2工具搬送機構13は、一部が加工機2から工具ストッカ11側に突出するように設けられる。第2工具搬送機構13は、一部が加工機2の右側面292から突出するように設けられる。第2工具搬送機構13は、加工機2の右側面292を貫通するように設けられる。第2工具搬送機構13は、加工機2の右側面292に設けられた開口部を通り、加工機2の右側に突出する。
【0075】
第2工具搬送機構13は、加工機2の天井291よりも低い位置に設けられる。第2工具搬送機構13の一部は、工具ストッカ11内に設けられる。第2工具搬送機構13の右端部は、工具ストッカ11内に設けられる。第2工具搬送機構13の左端部は、加工機2内に設けられる。第2工具搬送機構13の左端部は、加工機2の搬送室28内に設けられる。第2工具搬送機構13の左端部は、加工室と搬送室とを区切るシャッタ281よりも右側に設けられる。第2工具搬送機構13は、工具Tが工具交換位置P4に位置するとき、工具Tの少なくとも一部が加工室21内に突出するように構成される。第2工具搬送機構13は、工具Tの先端部(左端部)が加工室21内に突出するように構成される。この工具Tの基端部が主軸22に装着される。なお、工具交換位置P4については搬送室28に設けられていても良いし、工具交換位置P4に工具Tが配置された状態でその基端部は加工室21内に露出していなくても良い。例えば主軸22の先端部が搬送室28内に侵入して工具Tの基端部との着脱が行われるようにしても良い。
【0076】
[工具交換位置]
工具交換位置P4は、工具Tが主軸22に着脱される位置である。工具交換位置P4は、加工室21内に設けられる。工具交換位置P4は、搬送待機位置P3から工具ストッカ11に収容される工具Tの長手方向(左右方向)にずれた位置に設けられる。すなわち、第2工具搬送機構13は、搬送待機位置P3及び搬送待機位置P3に対して水平方向にずれた位置である工具交換位置P4に工具Tを移動させる。第2工具搬送機構13は、加工機2内に形成された搬送室28を経由して工具Tを搬送待機位置P3と工具交換位置P4との間で搬送するように構成される。言い換えれば、第2工具搬送機構13は、工具Tを搬送待機位置P3と工具交換位置P4との間を往復させることができるように構成される。
【0077】
[制御装置]
図示しない制御装置は、第1工具搬送機構12及び第2工具搬送機構13の動作を制御する。制御装置は、加工機2の動作を制御してもよい。制御装置は、CPU、RAM、ROM等を含むコンピュータで構成される。制御装置は、記録媒体に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、加工システム100の各構成の動作を制御する。
【0078】
<動作>
続いて、加工システム100の動作について説明する。初めに、工具搬送装置1が、工具Tをセット位置P1からストック位置P2に移動させる場合について説明する。
【0079】
図4を参照して、まずオペレータは、工具ストッカ11の引き出し1123を開け、工具Tを引き出しに入れる。オペレータは、工具を入れた引き出し1123を閉じる。これにより、工具Tはセット位置P1に配置される。その後、オペレータは、操作盤を操作する。操作盤には、引き出し1123に工具が収容された旨が入力される。なお、工具のセット位置P1への配置は、人の手によって行われてもよいし、機械で行われてもよい。
【0080】
次に、操作盤からの入力に基づき、制御装置は、第1工具搬送機構12を制御する。第1工具搬送機構12は、セット位置P1に載置された工具Tをストック位置P2へ移動させる。より詳細には、第1工具搬送機構12の搬送アーム123は、初期位置で待機している。初期位置は特に限定されない。初期位置は例えば搬送待機位置P3の上である。次に、搬送アーム123は、制御装置からの指示に基づき、前後方向に移動する。搬送アーム123は、セット位置P1の上で停止する。次に、搬送アーム123は、降下し、セット位置P1に配置された基台に接続される。次に、搬送アーム123は、工具Tを支持している基台を保持したまま上昇し、所定の高さで停止する。次に、搬送アーム123は、前後方向及び上下方向に移動し、予め定められたストック位置P2に基台を載置する。これにより、工具Tがセット位置P1からストック位置P2に移動される。
【0081】
続いて、工具搬送装置1が、工具ストッカ11内に収容される工具Tを加工機2の主軸に渡す場合、すなわちストック位置P2から搬送待機位置P3を経由して工具交換位置P4に移動させる場合について説明する。
【0082】
まず、オペレータは、工具Tを加工機の主軸に取り付ける指示を操作盤に入力する。制御装置は、操作盤からの入力に基づき、第1工具搬送機構12を制御する。第1工具搬送機構12は、制御装置からの指示に基づき上下方向及び前後方向に適宜移動する。第1工具搬送機構12は、ストック位置P2に載置された工具Tを搬送待機位置P3に移動させる。
【0083】
図3を参照して、工具Tが搬送待機位置P3に載置された後、制御装置は、第2工具搬送機構13を制御する。第2工具搬送機構13は、制御装置からの指示に基づき左右方向に移動する。第2工具搬送機構13は、搬送待機位置P3に位置する工具Tを工具交換位置P4に移動させる。制御装置は、工具Tが工具交換位置P4に到達する前に、搬送室28のシャッタ281を開ける。
【0084】
次に、制御装置は、加工機2の主軸22を制御する。主軸22は、制御装置からの指示に基づき上下方向、左右方向及び前後方向に適宜移動する。また、主軸22は、制御装置からの指示に基づき前後方向に平行な軸(B軸)周りに適宜旋回する。主軸22は、制御装置からの指示に基づき工具交換位置P4に位置する工具を保持する。
【0085】
このように加工システム100が動作することで、工具ストッカ11に収容される工具Tが主軸22に装着される。なお、主軸22に装着された工具Tを取り外し、工具ストッカ11に収容する場合は、上述と逆の動作が行われる。
【0086】
以上のように、本実施形態の工具搬送装置1では、工具Tを収容する工具ストッカ11が、加工機2外に設けられる。そのため、工具ストッカ11では、加工機内に設けられる工具ストッカと比べて、様々な大きさ、形状の工具Tをより多く収容することができる。また、工具搬送装置1では、加工機2の主軸22に工具Tを受け渡す搬送機構が、第2工具搬送機構13という1つの搬送機構に集約される。したがって、工具搬送装置1によれば、収容可能な工具T(ロングツール)の本数を増やすとともに簡素な構造でロングツールを搬送することができる。
【0087】
また、工具搬送装置1では、第1工具搬送機構12における複数の爪部1232が、ロック機構15によって基台14に上から差し込まれるように接続される。複数の爪部1232は、ロック機構15によって上に引き抜くように基台14との接続を解除される。このような構成により、例えば爪部が近接離間する構成のハンドで基台を挟み込む構成と比べて、各基台14の間に爪部を侵入させるための隙間を最小限/又は実質的になくすことができる。したがって、工具搬送装置1によれば、工具ストッカ11内のスペースを最大限有効活用できる。
【0088】
更に、工具搬送装置1では、工具Tの搬送に係る第1工具搬送機構12及び第2工具搬送機構13は、工具ストッカ11ではなく加工機2に固定される。そのため、加工機2の各機器と第1,第2工具搬送機構12,13との位置調整がしやすい。したがって、工具搬送装置1によれば、オプション機能として工具ストッカ11を増設しやすい。
【0089】
上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0090】
例えば、上述の実施形態では、第1工具搬送機構12がセット位置P1に設けられた工具を移動させる場合について説明した。しかしながら、工具搬送装置1においてセット位置P1は設けられなくてもよい。この場合、加工機2の主軸22に装着した工具を第2工具搬送機構13及び第1工具搬送機構12が工具ストッカ11に移動させ、ストック位置に載置してもよい。
【0091】
また、上述の実施形態では、搬送待機位置P3が工具ストッカ11内に設けられる場合について説明した。しかしながら、搬送待機位置P3は、加工機2内に形成された搬送室28内に設けられてもよい。この場合、第1工具搬送機構12は、工具ストッカ11内のストック位置P2に載置された工具を、加工機2の搬送室28内の搬送待機位置P3に移動させる。工具交換位置P4についても同様のことが言える。すなわち、上述の実施形態では、工具交換位置P4が加工室21内に設けられる場合について説明した。しかしながら、工具交換位置P4は搬送室28内に設けられてもよい。この場合、搬送室28は、主軸22の少なくとも一部が搬送室28に進入可能に構成される。工具Tの主軸22への着脱は、搬送室28内で行われる。
【0092】
また、上述の実施形態では、ロック機構15が第1工具搬送機構12と基台14とを
接続する場合について説明した。しかしながら、第1工具搬送機構12と基台14との接続は、ロック機構15に限定されない。第1工具搬送機構12と基台14との接続は、例えば近接、離間可能な爪部を有するハンドで行われてもよい。また、第1工具搬送機構12は、直接工具を把持してもよい。
【符号の説明】
【0093】
100 :加工システム
1 :工具搬送装置
2 :加工機
11 :工具ストッカ
111 :支持脚
112 :工具収容筐体
12 :第1工具搬送機構
121 :前後移動機構
122 :上下移動機構
123 :搬送アーム
13 :第2工具搬送機構
131 :搬送台
132 :左右移動機構
14 :基台
15 :ロック機構
151 :凹部
152 :凸部
21 :加工室
22 :主軸
23 :補助ワーク主軸
24 :補助ワーク主軸
25 :標準工具マガジン
26 :標準工具交換装置
27 :加工屑搬送装置
28 :搬送室
291 :加工機の天井
292 :加工機の右側面
293 :固定部
P1 :セット位置
P2 :ストック位置
P3 :搬送待機位置
P4 :工具交換位置
T :工具(ロングツール)
【要約】
【課題】収容可能なロングツールの本数を増やすとともに簡素な構造でロングツールを搬送すること。
【解決手段】工具搬送装置1は、加工機2に併設され、複数の工具Tを載置された状態で並べて収容する工具ストッカ11と、工具ストッカ11に収容される工具Tそれぞれが載置される複数のストック位置P2及び主軸22に着脱される工具Tが載置される搬送待機位置P3に工具を移動させる第1工具搬送機構12と、搬送待機位置P3及び搬送待機位置P3に対して水平方向にずれた位置であって主軸22に工具を受け渡しする工具交換位置P4に工具を移動させる第2工具搬送機構13と、を備える。第2工具搬送機構13は、加工機内に形成された搬送室28を経由して工具を搬送待機位置P3と工具交換位置P4との間で搬送するように構成される。
【選択図】
図3