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特許7573105ポリマー添加剤の水性分散液及びそのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ポリマー添加剤の水性分散液及びそのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241017BHJP
   C08F 2/26 20060101ALI20241017BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20241017BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20241017BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20241017BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20241017BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20241017BHJP
   C09D 143/04 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C09D201/00
C08F2/26 B
C08F290/14
C08K5/00
C08K5/04
C08L83/07
C09D5/02
C09D143/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023522816
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 CN2020124306
(87)【国際公開番号】W WO2022087876
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、フー
(72)【発明者】
【氏名】ドン、シャンティン
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-012655(JP,A)
【文献】特開平05-140255(JP,A)
【文献】特開平09-208647(JP,A)
【文献】特開平05-287217(JP,A)
【文献】特開平10-337970(JP,A)
【文献】国際公開第2020/010564(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C08F 2/26
C08F 290/14
C08K 5/00
C08K 5/04
C08L 83/07
C09D 5/02
C09D 143/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,000~25,000g/molの重量平均分子量を有するポリマー添加剤の水性分散液であって、前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤の重量に基づいて、
(i)20重量%~85重量%の、式(I)のエチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位
【化1】
(式(I)中、Rは、エチレン性不飽和基であり、j及びkは、それぞれ独立して、0~100の範囲であり、j+k=5~100である)と、
(ii)0.1重量%~10重量%の、アミド、ウレイド、カルボキシル、カルボン酸無水物、ヒドロキシル、リン酸、若しくはスルホン酸基から選択される少なくとも1つの官能基、その塩、又はそれらの混合物を有するエチレン性不飽和官能性モノマーの構造単位と、
(iii)5重量%~79.9重量%の追加のエチレン性不飽和非イオン性モノマーの構造単位と、を含み、
前記水性分散液の凝塊含量が、44マイクロメートルの篩を通して濾過した後に2,000ppm未満である、水性分散液。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和シロキサンモノマーが、式(I)(式中、Rは、-CH=CH、-R-OC(=O)CH=CH、又は-R-OC(=O)C(CH)=CHであり、式中、Rは、C-C二価炭化水素基であり、j+kは、5~50の範囲である)によって表される構造を有する、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤の重量に基づいて20重量%~50重量%の前記エチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位を含む、請求項1又は2に記載の水性分散液。
【請求項4】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤の重量に基づいて1重量%~5重量%の前記エチレン性不飽和官能性モノマーの構造単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性分散液。
【請求項5】
前記ポリマー添加剤が、5,000~10,000g/molの重量平均分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性分散液。
【請求項6】
前記追加のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマーが、アクリルモノマー、スチレンモノマー、アクリルモノマーとスチレンモノマーとの組み合わせ、ビニルエステルモノマー、エチレンモノマーとビニルエステルモノマーとの組み合わせ、ビニルシランモノマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性分散液。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水性分散液を調製するプロセスであって、
連鎖移動剤の存在下におけるモノマー混合物の乳化重合であって、前記モノマー混合物が、前記モノマー混合物の総重量に基づいて、20重量%~85重量%のエチレン性不飽和シロキサンモノマーと、0.1重量%~10重量%のエチレン性不飽和官能性モノマーと、5重量%~79.9重量%の追加のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマーと、を含む、乳化重合を含み、
前記モノマー混合物が、重合前に乳化及び均質化される、プロセス。
【請求項8】
コーティング組成物であって、前記コーティング組成物の総重量に基づいて、(A)0.8重量%~8重量%の請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー添加剤の水性分散液と、(B)25,000g/molを超える重量平均分子量を有するエマルションポリマーと、を含む、コーティング組成物。
【請求項9】
前記ポリマー添加剤中の前記エチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位が、前記コーティング組成物の総重量に基づいて0.2重量%~1.8重量%の量で存在する、請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記コーティング組成物の重量に基づいて1重量%~7重量%の前記ポリマー添加剤の分散液を含む、請求項8に記載のコーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー添加剤の水性分散液及びそれを調製するためのプロセスに関する。
【0002】
序論
水性(aqueous)又は水性(waterborne)コーティング組成物は、環境問題を少なくするために、溶剤ベースのコーティング組成物よりもますます重要になっている。水性コーティング組成物は、通常、バインダーとしてエマルションポリマーを使用して処方され、そのエマルションポリマーは、典型的には、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、又はそれらの混合物等の従来のモノマーの乳化重合によって調製される。乳化重合中にエチレン性不飽和シロキサンモノマー等のより疎水性の高いモノマーをバインダーのポリマー骨格に組み込むことが、防食特性等のコーティングの性能を更に改善するための1つのアプローチであり得る。しかしながら、エチレン性不飽和シロキサンモノマーが全モノマーの4.5重量%を超える量でバインダー中に含まれる場合、従来の乳化重合プロセスでは大量の(例えば、2,000ppmを超える)凝塊が形成される場合があり、これにより、水性シリコーン-アクリルハイブリッドポリマーバインダーの用途が制限される。水性コーティング組成物は、屋外用途における耐汚染性等の他の望ましい特性も有し得る。
【0003】
したがって、コーティング組成物に特に好適であり、防食及び汚れ除去特性等の改善された性能を有するコーティングを提供することができる、前述のバインダーに関する問題のない水性分散液を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記の問題のない新規のポリマー添加剤の水性分散液を提供する。そのようなポリマー添加剤の水性分散液を調製するためのプロセスでは、44マイクロメートルの篩を通して濾過した後に、凝塊含量の低い、例えば、2,000百万分率(ppm)未満の水性分散液を得ることができる。特定の量のポリマー添加剤の水性分散液をコーティング組成物に組み込むことにより、それから作製されるコーティングの防食及び汚れ除去特性を改善することができる。
【0005】
第1の態様では、本発明は、2,000~25,000グラム/モル(g/mol)の重量平均分子量を有するポリマー添加剤の水性分散液であって、ポリマー添加剤が、ポリマー添加剤の重量に基づいて、
(i)20重量%~85重量%の、式(I)、式(II)、又は式(III)のエチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位、
【0006】
【化1】

(式(I)中、Rは、エチレン性不飽和基であり、j及びkは、それぞれ独立して、0~100の範囲であり、j+k=5~100である);
【0007】
【化2】

(式(II)中、Rは、エチレン性不飽和基であり、Rは、ヒドロキシル、アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシ、アルキルエーテル、又はアリールエーテル基であり、mは、1~100である);
【0008】
【化3】

(式(III)中、Rは、エチレン性不飽和基であり、R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシル、アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシ、アルキルエーテル、又はアリールエーテル基であり、nは、1~5であり、pは、1~100である)と、
(ii)0.1重量%~10重量%の、アミド、ウレイド、カルボキシル、カルボン酸無水物、ヒドロキシル、リン酸、若しくはスルホン酸基から選択される少なくとも1つの官能基、その塩、又はそれらの混合物を有するエチレン性不飽和官能性モノマーの構造単位と、
(iii)5重量%~79.9重量%の追加のエチレン性不飽和非イオン性モノマーの構造単位と、
を含み、
水性分散液の凝塊含量が、44マイクロメートルの篩を通して濾過した後に2,000ppm未満である、水性分散液である。
【0009】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の水性分散液を調製するためのプロセスである。プロセスは、
連鎖移動剤の存在下におけるモノマー混合物の乳化重合であって、モノマー混合物が、モノマー混合物の総重量に基づいて、20重量%~85重量%のエチレン性不飽和シロキサンモノマーと、0.1重量%~10重量%のエチレン性不飽和官能性モノマーと、5重量%~79.9重量%の追加のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマーと、を含む、乳化重合を含む。
【0010】
第2の態様では、本発明は、コーティング組成物の総重量に基づいて、(A)0.8重量%~8重量%の第1の態様のポリマー添加剤の水性分散液と、(B)25,000g/molを超える重量平均分子量を有するエマルションポリマーと、を含む、コーティング組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における「水性」分散液は、粒子が水性媒体中に分散していることを意味する。本明細書において「水性媒体」とは、水、及び媒体の重量に基づいて0~30重量%の水混和性化合物(複数可)、例えばアルコール、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル等を意味する。
【0012】
「アクリル」とは、本明細書で使用するとき、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)ヒドロキシアルキルアクリレート等のこれらの修飾形態を含む。この文書全体を通して、「(メタ)アクリル)」という語の断片は、「メタクリル」及び「アクリル」の両方を指す。例えば、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及びアクリル酸の両方を指し、メチル(メタ)アクリレートとは、メチルメタクリレート及びメチルアクリレートの両方を指す。
【0013】
「構造単位」は、指定されたモノマーの「重合単位」としても知られており、重合後のモノマーの残部、すなわち、重合したモノマー又は重合した形態のモノマーを指す。例えば、メチルメタクリレートの構造単位は、
【0014】
【化4】

で示す通りであり、式中、点線は、構造単位のポリマー骨格への結合点を表す。
【0015】
本発明の水性分散液は、ポリマー添加剤を含む。ポリマー添加剤は、1つ以上のエチレン性不飽和シロキサンモノマー、好ましくは、1つ以上の(メタ)アクリレート官能性シロキサンの構造単位を含む。エチレン性不飽和シロキサンモノマーは、式(I)、式(II)、又は式(III)、
【0016】
【化5】

(式(I)中、Rは、例えば、-CH=CH、-R-OC(=O)CH=CH、又は-R-OC(=O)C(CH)=CHを含むエチレン性不飽和基であり、式中、Rは、C-C二価炭化水素基であり、好ましくは、Rは、-CHCHCHOC(=O)CH=CH又は-CHCHCHOC(=O)C(CH)=CHであり、j及びkは、それぞれ独立して、0~100、0~80、0~60、5~50、10~40、又は10~20の範囲であり、j+k=5~100、例えば、5~50、8~50、10~40、10~30、又は10~25である);
【0017】
【化6】

(式(I)中、Rは、例えば、-CH=CH、-R-OC(=O)CH=CH、又は-R-OC(=O)C(CH)=CHを含むエチレン性不飽和基であり、式中、Rは、C-C二価炭化水素基であり、好ましくは、Rは、-CHCHCHOC(=O)CH=CH又は-CHCHCHOC(=O)C(CH)=CHであり、Rは、ヒドロキシル、アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシ、アルキルエーテル、又はアリールエーテル基、好ましくは、ヒドロキシル基、又は1~15個、1~10個、若しくは1~5個の範囲の炭素原子を有するアルキル、アルコキシル、若しくはアルキルエーテル基、例えば、
-CH、-OH、-OCH、又は-OCHCHであり、mは、1~100、5~80、10~60、10~40、又は10~20である);
【0018】
【化7】

(式(III)中、Rは、例えば、-CH=CH、-R-OC(=O)CH=CH、又は-R-OC(=O)C(CH)=CHを含むエチレン性不飽和基であり、式中、Rは、C-C二価炭化水素基であり、好ましくは、Rは、-CHCHCHOC(=O)CH=CH又は-CHCHCHOC(=O)C(CH)=CHであり、R及びRは、同じであるか又は異なり、それぞれ独立して、ヒドロキシル、アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシ、アルキルエーテル、又はアリールエーテル基、好ましくは、ヒドロキシル基、又は1~15個、1~10個、若しくは1~5個の範囲の炭素原子を有するアルキル、アルコキシル、若しくはアルキルエーテル基、例えば、-CH、-OH、-OCH、又は-OCHCHであり、nは、1~5、1~4、1~3、又は1~2であり、pは、1~100、5~80、5~60、8~40、又は8~20である)によって表される構造を有する。好適な市販のエチレン性不飽和シロキサンモノマーとしては、例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なDOWSIL(商標)32メタクリレートシロキサンモノマー(DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である)を挙げることができる。
【0019】
本発明のポリマー添加剤は、ポリマー添加剤の重量に基づいて、20重量%以上、21重量%以上、22重量%以上、23重量%以上、24重量%以上、25重量%以上、26重量%以上、27重量%以上、28重量%以上、29重量%以上、30重量%以上、31重量%以上、32重量%以上、33重量%以上、34重量%以上、35重量%以上、36重量%以上、37重量%以上、又は更には38重量%以上、同時に、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、52重量%以下、50重量%以下、48重量%以下、45重量%以下、42重量%以下、又は更には40重量%以下の量のエチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位を含み得る。
【0020】
本発明のポリマー添加剤は、アミド、ウレイド、カルボキシル、カルボン酸無水物、ヒドロキシル、リン酸、若しくはスルホン酸基から選択される少なくとも1つの官能基、その塩、又はそれらの混合物を有する1つ以上のエチレン性不飽和官能性モノマーの構造単位を含む。好適なエチレン性不飽和官能性モノマーの例は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、若しくはフマル酸等の酸を有するモノマーを含むα,β-エチレン性不飽和カルボン酸;又は例えば無水物、(メタ)アクリル酸無水物、若しくは無水マレイン酸等の酸基を生成するか、又はその後それに変換可能な酸形成基を有するモノマー;スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、ビニルスルホン酸ナトリウム(SVS)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸のナトリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸のアンモニウム塩;アリルエーテルスルホネートのナトリウム塩;アクリルアミド、メタクリルアミド、一置換(メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-第三級ブチルアクリルアミド、N-2-エチルヘキシルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ官能性アルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシルエチルエチレンウレアメタクリレート、Solvayから入手可能なSIPOMER WAM II等のヒドロキシルエチルエチレンウレアアクリレート、メチルアクリルアミドエチルエチレンウレア、又はそれらの混合物等のウレイド官能性モノマーを含む。好ましいエチレン性不飽和官能性モノマーは、アクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される。ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤の重量に基づいて、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、又は更には1.0重量%以上、同時に、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、又は更には1.5重量%以下のエチレン性不飽和官能性モノマーの構造単位を含み得る。
【0021】
本発明のポリマー添加剤は、上記のモノマー以外の1つ以上の追加のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマーの構造単位を含む。本明細書における「非イオン性モノマー」という用語は、pH=1~14のイオン電荷をもたないモノマーを指す。追加のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマーとしては、アクリルモノマー、スチレンモノマー、アクリルモノマーとスチレンモノマーとの組み合わせ、ビニルエステルモノマー、若しくはエチレンモノマーとビニルエステルモノマーとの組み合わせ、ビニルシランモノマー、又はそれらの混合物を挙げることができる。好適なアクリルモノマーの例としては、2~30個の炭素原子又は2~18個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソ-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、デシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート;シクロへキシル(メタ)アクリレート、メタシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)シクロへキシルアクリレートを含むシクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及びメタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリルオキシアルキルトリアルコキシシランを含む(メタ)アクリレート官能性シラン;3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン;3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン; 3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン; 又はそれらの混合物から選択される。好適なスチレンモノマーの例としては、スチレン及び置換スチレンが挙げられる。好適なビニルシランモノマーの例としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、バーサチック酸ビニル、又はそれらの混合物が挙げられる。好適なアルキルアルキルビニルジアルコキシシラン、並びにビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシラン等のビニルトリアルコキシシランの例。好ましい追加のエチレン性一価不飽和非イオン性モノマーは、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、(メタ)アクリレート官能性シラン、スチレン、又はそれらの混合物である。ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤の重量に基づいて、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、又は更には45重量%以上、同時に、79.9重量%以下、79重量%以下、78重量%以下、75重量%以下、72重量%以下、70重量%以下、68重量%以下、65重量%以下、62重量%以下、60重量%以下、59重量%以下、又は更には57重量%以下の追加のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマーの構造単位を含み得る。
【0022】
本発明のポリマー添加剤は、任意選択で、上記のモノマーとは異なる1つ以上のマルチエチレン性不飽和モノマーの構造単位も含み得る。好適なマルチエチレン性不飽和モノマーの例としては、アリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、酢酸アリル、アリル(メタ)アクリルアミド、アリルオキシエチル(メタ)アクリレート、クロチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ジアリル、又はそれらの混合物が挙げられる。ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤の重量に基づいて、0~5重量%、0~2重量%、又は0.1重量%~1重量%マルチエチレン性不飽和モノマーの構造単位を含み得る。
【0023】
好ましくは、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤の重量に基づいて、20重量%~50重量%のエチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位、1重量%~5重量%のエチレン性不飽和官能性モノマーの構造単位、及び45重量%~79重量%の追加のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマーの構造単位を含む。
【0024】
本発明のポリマー添加剤は、2,000g/mol以上、2,100g/mol以上、2,200g/mol以上、2,500g/mol以上、2,800g/mol以上、3,000g/mol以上、3,200g/mol以上、3,500g/mol以上、3,800g/mol以上、4,000g/mol以上、4,200g/mol以上、4,500g/mol以上、4,800g/mol以上、5,000g/mol以上、5,200g/mol以上、又は更には5,500g/mol、同時に、25,000g/mol以下(すなわち、≦25,000g/mol)、22,000g/mol以下、20,000g/mol以下、18,000g/mol以下、15,000g/mol以下、12,000g/mol以下、10,000g/mol以下、9,500g/mol以下、9,000g/mol以下、8,500g/mol以下、又は更には8,000g/mol以下の重量平均分子量(M)を有し得る。Mは、以下の実施例の章に記載の通り、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって求めることができる。
【0025】
本発明のポリマー添加剤の水性分散液は、低い凝塊含量を有する。「低い凝塊含量」は、2,000ppm未満、好ましくは1,900ppm未満、1,800ppm未満、1,700ppm未満、1,600ppm未満、1,500ppm未満、1,400ppm未満、1,300ppm未満、1,200ppm未満、1,100ppm未満、1,000ppm未満、900ppm未満、800ppm未満、700ppm未満、600ppm未満、又は更には500ppm未満の水性分散液の凝塊含量を意味する。凝塊含量は、以下の実施例の章に記載する試験方法に従って、44マイクロメートルのメッシュサイズ(325メッシュ)を有する篩を通して水性分散液を濾過することによって求めることができる。
【0026】
本発明のポリマー添加剤の水性分散液は、連鎖移動剤の存在下で、ポリマー添加剤の構造単位を形成するための上記のモノマーを含むモノマー混合物の乳化重合によって調製することができる。本発明において有用なモノマー混合物は、エチレン性不飽和シロキサンモノマー、エチレン性不飽和官能性モノマー、追加のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマー、及び任意選択でマルチエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含む。ポリマー添加剤を調製するためのモノマー混合物の総濃度は100%に等しい。モノマー混合物は、重合前に、例えばモノマー混合物を反応槽に添加する前に、乳化し、典型的にはホモジナイザー等によって均質化してもよい。均質化プロセスは、重合中の凝塊形成を最小限に抑えるために、ひいては、低い凝塊含量を有する水性分散液を得るために、特定の期間にわたって行ってよい。例えば、均質化プロセスの時間は、例えば、1~5分又は3~5分の範囲であってよい。好適な連鎖移動剤の例としては、3-メルカプトプロピオン酸、n-ドデシルメルカプタン(nDDM)、メチル3-メルカプトプロピオネート(MMP)、ブチル3-メルカプトプロピオネート、ベンゼンチオール、アゼライン酸アルキルメルカプタン(azelaic alkyl mercaptan)、又はそれらの混合物が挙げられる。連鎖移動剤は、ポリマー添加剤の分子量を制御するのに有効な量で使用してよい。例えば、連鎖移動剤は、ポリマー添加剤を調製するために使用されるモノマー混合物の総重量に基づいて、0.01重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、又は更には1重量%以上、同時に、5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、又は更には3.5重量%以下の量で使用してよい。
【0027】
モノマー混合物の重合は、当該技術分野で周知の従来のフリーラジカル重合プロセスによって行ってよい。ポリマー添加剤を調製するためのモノマーは、そのまま添加してもよく、水中のエマルションとして添加してもよく、又はポリマー添加剤を調製する反応期間にわたって、1回以上に分けて若しくは連続的に、線型的に若しくは非線型的に添加してもよく、又はその組み合わせであってもよい。乳化重合プロセスに好適な温度は、摂氏95度(℃)未満、50~90℃の範囲、又は70~90℃の範囲であり得る。ポリマー添加剤を調製する重合プロセスでは、フリーラジカル開始剤を使用してよい。重合プロセスは、熱的に開始されるか、又はレドックスにより開始される乳化重合であってもよい。好適なフリーラジカル開始剤の例としては、過酸化水素、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、アンモニウム及び/又はアルカリ金属過硫酸塩、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸、及びそれらの塩;過マンガン酸カリウム、及びペルオキシ二硫酸のアンモニウム又はアルカリ金属塩が挙げられる。フリーラジカル開始剤は、典型的には、モノマー混合物の総重量に基づいて、0.01重量%~1重量%又は0.05重量%~0.6重量%のレベルで使用してよい。重合プロセスでは、好適な還元剤と結合した上記の開始剤を含む酸化還元系を使用してよい。好適な還元剤の例としては、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、硫黄含有酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩(例えば亜硫酸、重亜硫酸、チオ硫酸、ヒドロ亜硫酸、硫化、水硫化、又は亜ジチオン酸ナトリウム)、重亜硫酸アセトン、グリコール酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、グリオキシル酸水和物、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、及び前述の酸の塩が挙げられる。鉄、銅、マンガン、銀、白金、バナジウム、ニッケル、クロム、パラジウム、又はコバルトの金属塩を使用してレドックス反応を触媒してもよい。任意選択で、金属用のキレート剤を使用してもよい。
【0028】
重合プロセスでは、1つ以上の界面活性剤を、モノマーの重合前若しくは重合中、又はそれらを組み合わせて添加してよい。界面活性剤の一部を重合後に添加してもよい。これらの界面活性剤は、アニオン性及び/又は非イオン性乳化剤を含み得る。好適な界面活性剤の例としては、アルキル、アリール、又はアルキルアリールのスルフェート、スルホネート、又はホスフェートのアルカリ金属又はアンモニウム塩;アルキルスルホン酸;スルホコハク酸塩;脂肪酸;反応性界面活性剤;エトキシ化アルコール又はフェノール;及びそれらの混合物が挙げられる。使用される界面活性剤の量は、典型的には、ポリマー添加剤を調製するために使用されるモノマー混合物の重量に基づいて0.1重量%~6重量%、0.3重量%~3重量%、又は0.5重量%~1.5重量%の範囲である。
【0029】
重合が完了した後、得られたポリマー添加剤を含む水性分散液を、任意選択で、中和剤としての1つ以上の塩基によって、例えば、6~11又は7~9の範囲のpH値に中和してもよい。塩基によって、ポリマー添加剤のイオン性基又は潜在的なイオン性基が部分的又は完全に中和され得る。好適な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属化合物;アンモニア溶液、トリエチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、モノイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、ジメトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリン、エチレンジアミン、2-ジエチルアミノエチルアミン、2,3-ジアミノプロパン、1,2-プロピレンジアミン、ネオペンタンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン、ポリエチレンイミン、又はポリビニルアミン等の一級、二級、及び三級アミン;水酸化アルミニウム;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
水性分散液中のポリマー添加剤粒子は、Brookhaven BI-90 Plus Particle Size Analyzerによって求めたとき、50~500ナノメートル(nm)、60~400nm、又は70~300nmの範囲の数平均粒径を有し得る。
【0031】
ポリマー添加剤の水性分散液は、水性分散液の総重量に基づいて、例えば、30重量%~90重量%、40重量%~80重量%、又は50重量%~70重量%の量の水を更に含む。
【0032】
本発明はまた、(A)ポリマー添加剤の水性分散液と、(B)エマルションポリマーとを含むコーティング組成物、典型的には水性コーティング組成物に関する。本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1.0重量%以上、1.1重量%以上、1.2重量%以上、1.3重量%以上、1.4重量%以上、1.5重量%以上、又は更には1.6重量%以上、同時に8重量%以下、7.9重量%以下、7.8重量%以下、7.7重量%以下、7.6重量%以下、7.5重量%以下、7.4重量%以下、7.3重量%以下、7.2重量%以下、7.1重量%以下、7重量%以下、6.9重量%以下、6.8重量%以下、6.7重量%以下、6.6重量%以下、6.5重量%以下、6.4重量%以下、又は更には6.3重量%以下の量のポリマー添加剤の水性分散液を含み得る。好ましくは、ポリマー添加剤の水性分散液は、エチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位の濃度が、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.2重量%以上、0.22重量%以上、0.25重量%以上、0.28重量%以上、0.3重量%以上、0.32重量%以上、0.35重量%以上、0.38重量%以上、又は更には0.4重量%以上、同時に、1.8重量%以下、1.7重量%以下、1.6重量%以下、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.3重量%以下、1.2重量%以下、1.1重量%以下、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.78重量%以下、0.75重量%以下、0.72重量%以下、又は更には0.7重量%以下の量になる量でコーティング組成物中に存在する。
【0033】
本発明のコーティング組成物は、バインダーとして通常使用される1つ以上のエマルションポリマーを、典型的にはエマルション又は水性分散液の形態で更に含む。本発明において有用なエマルションポリマーは、25,000g/mol超(すなわち、>25,000g/mol)、例えば、30,000g/mol以上、60,000g/mol以上、80,000g/mol以上、100,000g/mol以上、200,000g/mol以上、300,000g/mol以上、又は更には400,000g/mol以上の重量平均分子量(M)を有する。Mは、ポリスチレン標準を使用するGPC分析によって求めることができる。エマルションポリマー粒子は、30ナノメートル(nm)~500nm、70nm~300nm、又は70nm~250nmの粒径を有し得る。エマルションポリマーの粒径は、Brookhaven BI-90 Plus Particle Size Analyzerによって求めることができる。
【0034】
本発明のコーティング組成物中のエマルションポリマーは、アクリルコポリマー及びスチレン-アクリルコポリマーを含むアクリルポリマー、ポリウレタン-アクリルハイブリッドポリマー、又はそれらの混合物から選択され得る。本発明において有用なアクリルポリマーは、アクリルポリマーの重量に基づいて90重量%~99.9重量%の、スチレン、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、又はそれらの混合物等の上記のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマーの構造単位と、0.1重量%~10重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、ホスホエチルメタクリレート、又はそれらの混合物等の上記のエチレン性不飽和官能性モノマーの構造単位とを含み得る。
【0035】
本発明のコーティング組成物は、顔料及び/又は増量剤を含み得る。本明細書において「顔料」は、コーティングの不透明度又は隠蔽能力に実質的に寄与することができる材料を指す。そのような材料は、典型的には、1.8を超える屈折率を有する。無機顔料は、典型的には金属酸化物を含む。好適な顔料の例としては、二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、リン酸亜鉛及びモリブデン酸亜鉛などの耐食性顔料、カーボンブラック、硫酸バリウム、炭酸バリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。TiOは、典型的には、アナスターゼ及びルチルの2つの結晶形で存在する。好適な市販のTiOとしては、例えば、Kronos Worldwide,Inc.から入手可能なKRONOS2310、Chemours(Wilmington,Del.)から入手可能なTi-Pure R-706、Cristalから入手可能なTiONA AT1、及びそれらの混合物を挙げることができる。TiOは、濃縮分散形態でも入手可能であり得る。本明細書における「増量剤」は、1.8以下かつ1.3を超える屈折率を有する粒子状無機材料を指す。好適な増量剤の例としては、炭酸カルシウム、粘土、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸塩、ゼオライト、雲母、珪藻土、固体ガラス又は中空ガラス、セラミックビーズ、霞石閃長岩、長石、珪藻土、焼成珪藻土、タルク(水和ケイ酸マグネシウム)、シリカ、アルミナ、カオリン、パイロフィライト、パーライト、バライト、ウォラストナイト、The Dow Chemical Companyから入手可能なROPAQUE(商標)Ultra E不透明ポリマー(ROPAQUEは、The Dow Chemical Companyの商標である)等の不透明ポリマー、及びそれらの混合物が挙げられる。コーティング組成物は、0~55%、5%~40%、又は10%~35%の顔料体積濃度(PVC)を有し得る。PVCは、以下の等式に従って求めることができる:
【0036】
【数1】
【0037】
本発明のコーティング組成物は、1つ以上の消泡剤を含み得る。「消泡剤」は、本明細書では、泡の形成を減少させ、妨げる化学添加剤を指す。消泡剤は、シリコーン系消泡剤、鉱油系消泡剤、エチレンオキシド/プロピレンオキシド系消泡剤、アルキルポリアクリレート、及びそれらの混合物であってもよい。消泡剤は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0~5重量%、0.05重量%~3重量%、又は0.1重量%~2重量%の量で存在し得る。
【0038】
本発明のコーティング組成物は、「レオロジー改質剤」としても知られている1つ以上の増粘剤を含み得る。増粘剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、粘土材料、酸誘導体、酸コポリマー、ウレタン会合型増粘剤(UAT)、ポリエーテル尿素ポリウレタン(PEUPU)、ポリエーテルポリウレタン(PEPU)、又はそれらの混合物を挙げることができる。好適な増粘剤の例としては、ナトリウム又はアンモニウム中和アクリル酸ポリマーなどのアルカリ膨潤性エマルジョン(ASE);疎水変性アクリル酸コポリマーなどの疎水変性アルカリ膨潤性エマルジョン(HASE);疎水性変性エトキシル化ウレタン(HEUR)などの会合性増粘剤;並びにメチルセルロースエーテル、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、疎水性変性ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、カルボキシメチルセルロース(SCMC)ナトリウム、カルボキシメチル2-ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、2-ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルメチルセルロース、2-ヒドロキシブチルメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルエチルセルロース、及び2-ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース増粘剤が挙げられる。好ましくは、増粘剤は、HEUR、HEC、又はそれらの混合物である。増粘剤は、コーティング組成物の総重量に基づいて0~8重量%、0.05重量%~3重量%、又は0.1重量%~1重量%の量で存在し得る。
【0039】
本発明のコーティング組成物は、1つ以上の湿潤剤を含み得る。本明細書における「湿潤剤」は、コーティング組成物の表面張力を低下させ、コーティング組成物を基材の表面上により容易に広げたり浸透させたりする化学添加剤を指す。湿潤剤は、ポリカルボキシレート、アニオン性、両性イオン性、又は非イオン性であり得る。湿潤剤は、コーティング組成物の総重量に基づいて0~5重量%、0.05重量%~3重量%、又は0.1重量%~2重量%で存在し得る。
【0040】
本発明のコーティング組成物は、1つ以上の造膜助剤(coalescent)を含み得る。本明細書における「造膜助剤」は、周囲条件下でポリマー粒子を連続フィルムに融着させる遅蒸発性溶媒を指す。好適な造膜助剤の例としては、2-n-ブトキシエタノール、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、又はそれらの混合物が挙げられる。好ましい造膜助剤としては、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、n-ブチルエーテル、又はそれらの混合物が挙げられる。造膜助剤は、コーティング組成物の総重量に基づいて0~30重量%、0.5重量%~20重量%、又は2重量%~10重量%で存在し得る。
【0041】
本発明のコーティング組成物は、1つ以上の分散剤を含み得る。分散剤としては、好適な分子量を有するポリ酸、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、ジメチルアミノエタノール(DMAE)、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、ポリリン酸三ナトリウム(TSPP)、クエン酸、及び他のカルボン酸等の非イオン性、アニオン性、及びカチオン性分散剤を挙げることができる。使用されるポリ酸としては、疎水的又は親水的に改質されているもの、例えば、スチレン、アクリレート又はメタクリレートエステル、ジイソブチレン、及び他の親水性又は疎水性コモノマー等の種々のモノマーを有するポリアクリル酸又はポリメタクリル酸又は無水マレイン酸を含む、ポリカルボン酸に基づくホモポリマー及びコポリマー(例えば、GPCによって測定したとき1,000~50,000未満の範囲の重量平均分子量);その塩;又はそれらの混合物を含み得る。分散剤は、コーティング組成物の総重量に基づいて0~5重量%、0.05重量%~3重量%、又は0.1重量%~1重量%の量で存在し得る。
【0042】
上述の構成成分に加えて、本発明のコーティング組成物は、以下の添加剤:緩衝剤、中和剤、保湿剤、防カビ剤、殺生物剤、皮張り防止剤、着色剤、流動剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、接着促進剤、防フラッシュ錆添加剤、防食添加剤、及び粉砕媒剤のうちのいずれか1つ又は組み合わせを更に含み得る。これらの添加剤は、コーティング組成物の総重量に基づいて0~10重量%又は0.1重量%~2重量%の合計量で存在し得る。コーティング組成物はまた、コーティング組成物の30重量%~90重量%、40重量%~80重量%、又は50重量%~70重量%の量の水を含み得る。
【0043】
本発明のコーティング組成物は、エマルションポリマーを、ポリマー添加剤の水性分散液、及び他の任意成分、例えば顔料及び/又は増量剤と混合することによって調製することができる。コーティング組成物中の構成成分は、本発明のコーティング組成物を提供するために任意の順序で混合され得る。また、上記の任意成分のいずれも、コーティング組成物を形成するために、混合中又は混合前に組成物に添加され得る。コーティング組成物が顔料及び/又は増量剤を含む場合、好ましくは、顔料及び/又は増量剤を分散剤と混合して、顔料及び/又は増量剤のスラリーを形成する。
【0044】
本発明のコーティング組成物は、それから作製されたコーティングに、改善された耐食性を提供することができる。本発明はまた、金属などの腐食し易い基材の耐食性を改善する方法を提供する。方法は、コーティング組成物を金属基材に塗布することと、コーティング組成物を乾燥するか又は乾燥させてコーティングを形成することと、を含む。改善された耐食性は、ASTM B117-2011に従って塩水噴霧に少なくとも300時間曝露した後の40~50マイクロメートル(μm)の厚さを有するコーティングについて、「6F」以上のブリスター評点及び「7S」又は更にそれ以上、好ましくは「7P」、「9S」、「9P」、又は「10」の表面錆評点を意味する。コーティング組成物は、GB/T 9780-2013試験法に従って65以上の汚れ除去スコアによって示されるように、コーティングに良好な汚れ除去特性を提供することができる。エチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位を含むバインダーと比較して、本発明のポリマー添加剤の水性分散液は、それを含むコーティング組成物の耐食性及び汚れ除去特性の改善においてより高い効率を提供することができる。例えば、同等の耐食性及び汚れ除去特性を達成するために、本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物の重量に基づいて、エチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位を含むバインダーを含むコーティング組成物よりも低いエチレン性不飽和シロキサンモノマーの構造単位の濃度しか必要としない。
【0045】
本発明はまた、基材、好ましくは外面上にコーティングを生成する方法であって、コーティング組成物を基材に塗布することと、塗布されたコーティング組成物を乾燥するか又は乾燥させてコーティングを生成することと、を含む方法に関する。本発明のコーティング組成物は、様々な基材に塗布され、接着することができる。好適な基材の例としては、木材、金属、プラスチック、発泡体、石、エラストマー基材、ガラス、布、コンクリート、又はセメント系基材が挙げられる。好ましくは顔料を含むコーティング組成物は、海洋保護コーティング、一般工業用仕上げ、金属保護コーティング、自動車用コーティング、交通塗料、外断熱仕上げシステム(EIFS)、木材コーティング、コイルコーティング、プラスチックコーティング、缶コーティング、建築用コーティング、及び土木工学コーティング等の様々な用途に好適である。コーティング組成物は、金属保護コーティング及び建築用コーティングに特に好適である。コーティング組成物は、プライマーとして、トップコート、ワンコートダイレクト・トゥー・メタルコーティングとして、又は他のコーティングと組み合わせて使用して、多層コーティングを形成することができる。
【0046】
本発明はまた、金属基材の耐食性を改善する方法を提供する。方法は、コーティング組成物を提供することと、コーティング組成物を金属基材に塗布することと、コーティング組成物を乾燥するか又は乾燥させて、上記のような改善された耐食性を有するコーティングを形成することと、を含む。本発明はまた、上記で定義した改善された耐食性を有するコーティングを含む、コーティングされた金属物品に関する。
【0047】
本発明のコーティング組成物は、ブラッシング、浸漬、圧延、及び噴霧を含む、現行の手段によって基材に塗布してよい。コーティング組成物は、好ましくは噴霧によって塗布される。空気霧化噴霧、空気噴霧、無気噴霧、大容量低圧噴霧、及び静電ベル塗布などの静電噴霧などの、噴霧のための標準的な噴霧技術及び設備、並びに手動又は自動のいずれかの方法を使用することができる。本発明のコーティング組成物が基材に塗布された後、コーティング組成物を室温(23±2℃)で、又は例えば35℃~60℃の高温で乾燥するか又は乾燥させてフィルム(すなわち、コーティング)を形成することができる。
【実施例
【0048】
次に、本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例において説明し、全ての部及び百分率は、別段明記されない限り、重量による。実施例では以下の材料を使用する。
Dow Chemical Companyから入手可能なDOWSIL32添加剤(DC-32)は、以下の構造を有するメタクリレートシロキサンモノマーである:
【0049】
【化8】

(式中、j+k=12~25)。
【0050】
BASFから入手可能なDISPONIL Fes993界面活性剤(固形分含量29%~31%)は、脂肪族ポリグリコールエーテルサルフェートのナトリウム塩である。
【0051】
Dai-ichi Kogyo Seiyaku Co., Ltd.から入手可能なHITENOL AR1025(固形分含量25%)は、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム塩である。
【0052】
NATROSOL 250 HBR増粘剤は、Ashland Aqualon Companyから入手可能である。
【0053】
The Dow Chemical Companyから入手可能なACRYSOL(商標)RM-8W増粘剤は、非イオン性ウレタンレオロジー改質剤である。
【0054】
OROTAN(商標)681(固形分含量35%)及びOROTAN 1288分散剤(固形分含量45%)、並びにTRITON(商標)EF-406非イオン性界面活性剤(固形分含量70%)は、全てThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0055】
AMP-95中和剤は、Sinopharmから入手可能である。
【0056】
Nopco NXZ消泡剤は、Cognis Corporationから入手可能である。
【0057】
Surfynol TG非イオン性湿潤剤及びTego Airex 902W消泡剤は、いずれもEvonikから入手可能である。
【0058】
DuPontから入手可能なTi-Pure R-706顔料は、二酸化チタン顔料である。
【0059】
カオリン粘土(DB-80)は、Shanxi Jinyang Calcined Kaolin Ltd.から入手可能である。
【0060】
CC-700増量剤は、Guangfu Building Materials Group(China)から入手可能である。
【0061】
HuILi(China)から入手可能なWash clayを増量剤として使用する。
【0062】
バインダー1、バインダー2、及びバインダー3は、全てThe Dow Chemical Companyから入手可能であり、バインダー1は、100%アクリルエマルション(固形分含量:49.0%及びM:340,000~360,000g/mol)であり;バインダー2は、スチレン-アクリルエマルション(固形分含量:47.0%、M:340,000~360,000g/mol)であり;バインダー3は、スチレン-アクリルエマルション(固形分含量:47.5%、M:90,000~110,000g/mol)である。
【0063】
ROPAQUE(商標)Ultra E不透明ポリマーは、The Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0064】
Eastmanから入手可能なTexanolエステルアルコールを、造膜助剤として使用する。
【0065】
プロピレングリコールを、凍結防止剤として使用する。
【0066】
亜硝酸ナトリウム(15%)を、フラッシュ防錆添加剤として使用する。
【0067】
ACRYSOL、OROTAN、TRITON、及びROPAQUEは、全てThe Dow Chemical Companyの商標である。
【0068】
以下の標準的な分析機器及び方法を実施例で使用し、本明細書に記載の特性及び特徴の決定に使用する。
【0069】
GPC分析
GPC分析は、一般的に、Agilent1200により実施した。サンプルを2ミリグラム(mg)/mLの濃度のテトラヒドロフラン(THF)/ギ酸(FA)(5%)に溶解させてサンプル溶液を形成し、次いで、これを、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを通して濾過した後、GPC分析した。GPC分析は、次の条件を使用して実行された。
【0070】
カラム:1本のプレカラム及び2本の混合Bカラム(7.8×300mm);カラム温度:35℃;移動相:THF/FA(5%);流速:1.0mL/分;注入体積:100μm;検出器:Agilent屈折率検出器、35℃;並びに較正曲線:2329000~162g/molの範囲のPS等価分子量を有するPLポリスチレン(PS)Narrow standards(部品番号:2010-0101)。
【0071】
ポリマー添加剤の水性分散液の凝塊含量
水性分散液サンプルを44マイクロメートルの篩を通して濾過した。篩に残った残留物を水で洗浄し、150℃のオーブンに20分間入れた。篩上の残留物の乾燥重量を水性ポリマー分散液の元の湿潤重量で除することによって、凝塊含量を求める。凝塊含量が低いほど、重合プロセスは、水性分散液を調製する際、より安定している。
【0072】
耐塩水噴霧試験
コーティング組成物を、150μmのアプリケーターによってQパネル(冷間圧延された鋼)に塗布した。得られたコーティングフィルムを23℃及び50%の相対湿度(RH)で7日間乾燥させた。耐塩水噴霧特性は、ASTM B117-2011に従って、調製されたままのコーティングされたパネルを塩水噴霧環境(5%塩化ナトリウム霧)に曝露することによって試験した。曝露前に、露出している冷間圧延鋼をテープ(3Mプラスチックテープ#471)で被覆した。カミソリ刃で作製されたスクライブマークは、曝露の直前に上で得たパネルの下半分に刻まれた。パネルを塩水噴霧環境に特定の時間曝露し、次いで、塩水噴霧環境から取り出した。パネルの表面をまず脱イオン(DI)水で洗浄した後、採点した。結果をブリスター/錆評点として提示した。
【0073】
ブリスターの採点は、ASTM D714-02(2009)に従って実施され、表1に示す通り、数字及び/又は1つ以上の文字を含んでいた。文字F、M、MD、又はDは、ブリスターの密度の定性的表示である。数字は、ブリスターのサイズを指し、2は最大サイズ、8は最小サイズ、10はブリスターなしである。数が大きいほど、ブリスターのサイズは小さくなる。錆評点は、表2及び表3に示す通り、ASTM D610-2001によって求められる。「6F」以上及び「7S」以上のブリスター密度評点を有するパネルは、錆の程度について許容可能な評点であり、コーティングの良好な耐食性を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
汚れ除去評価
試験コーティング組成物のフィルムを、150μmアプリケーターを用いて黒色ビニルスクラブチャート上に引き下ろし、一定温度(25℃)及び湿度(50%)で7日間乾燥させた後、汚れを塗布した。GB/T 9780-2013(建築用コーティング及び塗料のフィルムの耐吸塵性及び汚れ除去についての試験方法)に従って、汚れ除去特性を評価した。次いで、各汚れ(それぞれ、酢、紅茶、青黒色インク、水溶性ブラック、アルコール可溶性ブラック、及びワセリンとカーボンブラックとの混合物)を、25ミリメートル(mm)の幅及びチャート断面の長さを有する試験領域に均一に塗布した。試験領域からの流出を防ぐために、液体汚れをガーゼの上に塗布した。汚れをパネル上に留めて、2時間吸収させた後、乾燥ティッシュで拭き取った。次いで、パネルを、1%のAomo粉末溶液を用いて37サイクル/分のスクラブ速度にて、1.5キログラム(kg)の重量下でスクラブ試験機上に置いた。パネルを200サイクルこすり洗いし、次いで、試験機から取り外し、流水下で十分にすすぎ、吊るして乾燥させた。最後に、洗浄した各汚れ領域を、反射率(X)の変化を測定することによって評価した。
【0078】
【数2】

X:反射率によって測定された各汚れの除去能力、%;
:汚れ除去試験完了後の反射率;
:塗膜に汚れを塗布する前の反射率。
【0079】
異なる汚れのXに従って、以下の表から各汚れ除去能力についてのスコア(R)を得ることができる:
【0080】
【表4】
【0081】
汚れ除去能力の合計スコア(R’)を以下のように計算した:
【0082】
【数3】

:各汚れについての除去能力のスコア;
R’:塗膜における6つの汚れ全てについての除去能力の合計スコア。
【0083】
より高いスコアは、より良好な汚れ除去性能を示す。染み除去の合計スコアが少なくとも60であれば、許容可能である。
【0084】
ポリマー添加剤(PA)分散液1(「PA分散液1」)の合成
機械的撹拌器、窒素(N)掃引、熱電対、及び凝縮器を備えた3リットルの5つ口フラスコに、水(420.00g)及びFes993界面活性剤(1.95g)を仕込んだ。フラスコ内の得られた溶液を、86℃に加熱した。開始剤溶液(5.00gの水に溶解させた0.65gの過硫酸ナトリウム(SPS))を添加した。2分間(min)後、水(130.00g)中に2-エチルヘキシルアクリレート(EHA、96.00g)、DC-32(120.00g)、エチルアクリレート(EA、75.00g)、メタクリル酸(MAA、9.00g)、n-ドデシルメルカプタン(nDDM、9.81g)、及びFes993界面活性剤(18.30g)を含む、ホモジナイザーによって細かく撹拌したモノマーエマルションを供給した。同時に、SPS(0.53g)及び水(60.00g)を含む開始剤を、フラスコ温度を約86℃に維持しながら90分間にわたって共供給した。供給終了後、反応を5分間保持した。60℃に冷却した後、硫酸第一鉄溶液(4.00g、0.2%水溶液)及び水(5.00g)中tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP、1.18g)、並びに水(5.00g)中イソアスコルビン酸(IAA、0.58g)を含むチェイサー系を添加した。15分間保持した後、上記と同じチェイサー系を再び仕込んだ。最後に、得られた分散液を周囲温度に冷却し、325メッシュサイズのスクリーン(すなわち、44マイクロメートルの篩)を通して濾過して、全固形分30%のPA分散液1を得た。
【0085】
PA分散液Aの合成
水(130.00g)中EHA(96.00g)、EA(195.00g)、MAA(9.00g)、nDDM(9.81g)、及びFes993界面活性剤(18.30g)を含むモノマーエマルションを使用したことを除いて、上記のPA分散液1の合成と同様にPA分散液Aを調製した。
【0086】
PA分散液Bの合成
水(130.00g)中EHA(180.00g)、DC-32(30.00g)、EA(75.00g)、MAA(15.00g)、nDDM(9.81g)、及びFes993界面活性剤(18.30g)を含むモノマーエマルションを使用したことを除いて、上記のPA分散液1の合成と同様にPA分散液Bを調製した。
【0087】
PA分散液2の合成
水(130.00g)中EHA(150.00g)、DC-32(60.00g)、EA(75.00g)、MAA(15.00g)、nDDM(9.81g)、及びFes993界面活性剤(18.30g)を含むモノマーエマルションを使用したことを除いて、上記のPA分散液1の合成と同様にPA分散液2を調製した。
【0088】
PA分散液3の合成
水(130.00g)中EHA(126.00g)、DC-32(90.00g)、EA(75.00g)、MAA(9.00g)、nDDM(9.81g)、及びFes993界面活性剤(18.30g)を含むモノマーエマルションを使用したことを除いて、上記のPA分散液1の合成と同様にPA分散液3を調製した。
【0089】
PA分散液4の合成
水(130.00g)中EHA(102.00g)、DC-32(120.00g)、EA(75.00g)、MAA(3.00g)、nDDM(9.81g)、及びFes993界面活性剤(18.30g)を含むモノマーエマルションを使用したことを除いて、上記のPA分散液1の合成と同様にPA分散液4を調製した。
【0090】
PA分散液Dの合成
水(130.00g)中EHA(180.00g)、DC-32(30.00g)、EA(75.00g)、MAA(15.00g)、nDDM(9.81g)、及びFes993界面活性剤(18.30g)を含むモノマーエマルションを、フラスコに供給する前にホモジナイザーによって撹拌しなかったことを除いて、上記のPA分散液1の合成と同様にPA分散液Dを調製した。
【0091】
PA分散液Cの合成
水(130.00g)中EHA(60.00g)、DC-32(60.00g)、EA(45.00g)、MAA(135.00g)、nDDM(9.81g)、及びFes993界面活性剤(18.30g)を含むモノマーエマルションを使用したことを除いて、上記のPA分散液1の合成と同様にPA分散液Cを調製した。
【0092】
得られた上記ポリマー添加剤の水性分散液の特性を表5に示す。表5に示すように、PA分散液1~4は全て、より高いレベルの酸構造単位を含むPA分散液C及び均質化プロセスを利用しないことによって調製されたPA分散液Dと比較して、より低い凝塊含量を示した。
【0093】
【表5】
【0094】
実施例(Ex)1~8及び比較(Comp)例A~Cのコーティング組成物
得られた上記ポリマー添加剤分散液(例えば、PA分散液1~4、A及びB)を、表6に示す処方に基づいてコーティング組成物を調製するために使用した。各コーティング組成物を調製するための粉砕段階における全ての成分を逐次添加し、高速分散機を約1,000回転/分(rpm)で使用して30分間均一に混合して、粉砕物を形成した。希釈(letdown)段階におけるプレミックス中の成分を最初に混合し、続いて、上記粉砕物を添加した。次いで、PA分散液を、表7に示す種類及び用量に基づいて希釈段階の最後に添加した。次いで、ACRYSOL RM-8W及び水を更に添加して、コーティング組成物を得た。各コーティング組成物の総重量を1,000gに維持するように、水負荷を調整した。得られたコーティング組成物は耐塩水噴霧性について評価され、結果が表7に示される。
【0095】
【表6】
【0096】
表7に示すように、(各コーティング組成物の総重量に基づく重量で)1.67%~6.67%のPA分散液1、2、3、又は4を含む実施例1~8のコーティング組成物は、300時間の塩水噴霧曝露後に、比較例Aよりもはるかに優れた塩水噴霧耐性を有するコーティングを提供した。対照的に、比較例A及び実施例1と比較して、10%のDC-32の構造単位を含むポリマー添加剤を含む比較例Bは、より劣る耐塩水噴霧性を示した。8.89%のPA分散液3を含む比較例Cのコーティング組成物は、比較例Aと比較して耐塩水噴霧性が劣っていた。
【0097】
【表7】
【0098】
実施例9~13、並びに比較例D及びEのコーティング組成物
得られた上記のポリマー添加剤分散液(例えば、PA分散液1、4、及びA)を、表8に示す処方に基づいてコーティング組成物を調製するために使用した。各コーティング組成物を調製するための粉砕段階における全ての成分を逐次添加し、約1,000回転/分(rpm)の高速分散機を使用して30分間均一に混合してミルベースを形成し、続いて、希釈段階におけるバインダー(バインダー1又は2)及びPA分散液を含む他の成分を逐次添加して、コーティング組成物を得た。バインダー及びPA分散液の用量及び種類を表9に示す。得られたコーティング組成物は汚れ除去耐性について評価され、結果が表9に示される。
【0099】
【表8】
【0100】
表9に示すように、アクリルシリコーンハイブリッドポリマー添加剤を含む実施例9及び10のコーティング組成物は、比較例Dのコーティング組成物と比較して改善された耐汚染性を有するコーティングを提供した。特に、(全コーティング組成物の重量に対して)2.0%のPA分散液1が含まれていた場合、実施例10の得られたコーティング組成物の汚れ除去についての合計スコアは、比較例Dと比較して5ポイント改善された。更に、バインダー2及び1%~2.0%のポリマー添加剤分散液(PA分散液1又は4)を含むコーティング組成物もまた、比較例Eのコーティング組成物と比較して汚れ除去特性の改善を示した(実施例11~13)。
【0101】
【表9】