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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】フェノール発泡体及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEZ
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023526006
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 KR2021016168
(87)【国際公開番号】W WO2022098196
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0148782
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルエックス・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LX HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】98, Huam-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,チェフン
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ソンジェ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ギルホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,セビョル
(72)【発明者】
【氏名】パク,インソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドフン
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ヒェミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ゴンピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョンフィ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハンス
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが90mm~300mmであるフェノール発泡体であって、
前記発泡体のいずれか表面から、その表面に沿って厚さ方向にN(N≧7の奇数)本の厚さ10mm~30mmの切片に均分したとき、第1表層部(N)の独立気泡率は、第2表層部(N)の独立気泡率よりも低く、前記N本の切片のうち最小独立気泡率を有する切片(Nmin)は、前記第1表層部(N)と中間切片(N)との間に位置
前記第1表層部(N )の独立気泡率と、前記第2表層部(N )の独立気泡率との差は、0.1%~3%であり、
前記第1表層部(N )の独立気泡率と、前記第2表層部(N )の独立気泡率は、それぞれ85%以上であり、
前記最小独立気泡率を有する切片(N min )の独立気泡率は、70%以上であり、
前記第2表層部(N )が最大独立気泡率を有し、
前記第2表層部(N )と、前記最小独立気泡率を有する切片(N min )との独立気泡率の差は、1%~7%である、
フェノール発泡体。
【請求項2】
前記発泡体の全体厚に対するd1とd2の比率は、0.2:0.8~0.45:0.55であり、
前記d1は、前記発泡体の全体厚に対する、前記第1表層部(N)から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)までの厚さの比率であり、前記d2は、前記発泡体の全体厚に対する、前記第2表層部(N)から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)までの厚さの比率である、
請求項1に記載のフェノール発泡体。
【請求項3】
25℃、相対湿度60%の条件下、7日経過後の発泡体の撓みが0.1cm~0.7cmである、
請求項1又は2に記載のフェノール発泡体。
【請求項4】
EN13823に従って、70℃で、7日間乾燥した後、110℃で、14日間乾燥した後、平均温度20℃で測定した熱伝導率が0.018W/m・K~0.022W/m・Kである、
請求項1又は2に記載のフェノール発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール発泡体及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱材は、建築物におけるエネルギー損失を防ぐために必ず使用される物品である。地球温暖化により世界にグリーン成長の重要性が強調されていることから、エネルギー損失を最小化するため断熱性はさらに重要とされている。
【0003】
通常、断熱材の厚さを厚くすると、断熱性の確保は容易であるものの、断熱材の厚さが一定以上を超えると、厚さ方向に位置に応じて物性が変化し、発泡体が損傷しやすく、撓むなど、見掛け及び物性が低下し、熱伝導率まで低下する問題が発生する。
【0004】
これによって、従来には高厚みの製品の物性を確保するために、発泡体全体において均一な物性を示し、発泡体の厚さ方向の中間部分(中心)を基準に対称的な物性を有する発泡体を製造しようとする傾向があった。
【0005】
しかし、現実的に、厚さ全体にわたって物性の偏差を減らしながら対称構造を成すことは容易でなく、コスト及び生産効率面で非経済的であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高厚みの発泡体の独立気泡率の分布を調節して生産効率を高め、より経済的に優れた物性を示す高厚みのフェノール発泡体を提供することである。また、本発明の目的は、発泡体の設置過程で発泡体が損傷することを防止して、発泡体の製造に際してだけでなく、長期間の使用過程でも、優れた断熱性及び圧縮強度などの物性を一定以上に維持し、撓みの発生を防止することができるフェノール発泡体を提供することである。
【0007】
また、本発明の目的は、前記フェノール発泡体を製造する方法を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による厚さが90mm以上であるフェノール発泡体であって、前記発泡体のいずれか表面から、その表面に沿って厚さ方向にN(N≧7の奇数)本の切片に均分したとき、第1表層部(N)の独立気泡率は、第2表層部(N)の独立気泡率よりも低く、前記N本の切片のうち最小独立気泡率を有する切片(Nmin)は、前記第1表層部(N)と中間切片(N)との間に位置するフェノール発泡体を提供することができる。
【0010】
また、本発明によるフェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡組成物を、ノズルを用いて面材上に吐出するステップと、前記吐出した発泡組成物を発泡及び硬化するステップとを含み、前記ノズルは、長さ(L)/幅(W)が1以上2以下である形状の吐出口を有するフェノール発泡体の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるフェノール発泡体は、高厚みの発泡体であって、より経済的に発泡体の設置過程における損傷を防止して、発泡体の製造に際してだけでなく、長期間の使用過程でも優れた断熱性及び圧縮強度などの物性を一定以上に表し、撓みの発生を防止することができる。
【0012】
また、本発明によるフェノール発泡体の製造方法は、生産効率を高めて、より経済的に前記物性を有するフェノール発泡体を提供することができる。
【0013】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明するとともに記述する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一具現例によるフェノール発泡体を厚さ方向にN本(N=9)均一に切断したことを示した模式図である。
図2】本発明の一具現例による発泡組成物を吐出するノズルの吐出口を模式化した図面である。
図3】本発明の他の具現例によるコンベヤー上の下部面材に複数の吐出口を配置したことを簡略に示した模式図である。
図4】本発明のさらに他の具現例によるフェノール発泡体の撓み程度を測定する方法を簡略に示した模式図である。
図5】本発明のさらに他の具現例によるフェノール発泡体の寸法安定性を測定する方法を簡略に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想を容易に実施することができる。本発明を説明するにあたり、本発明に係る公知の技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、詳細な説明を省略する。以下では、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施例を詳説することとする。図面における同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素を示すために使われる。
【0016】
以下では、本発明の幾つかの具現例によるフェノール発泡体を説明することとする。
【0017】
本発明の一具現例は、厚さが90mm以上であるフェノール発泡体であって、前記発泡体のいずれか表面から、その表面に沿って厚さ方向にN(N≧7の奇数)本の切片に均分したとき、第1表層部(N)の独立気泡率が第2表層部(N)の独立気泡率よりも低く、前記N本の切片のうち最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が、前記第1表層部(N)と中間切片(N)との間に位置するフェノール発泡体を提供する。
【0018】
通常、発泡体は、厚さが厚いほど、断熱性の確保が容易である。しかし、発泡体の厚さが一定以上を超えると、発泡体の厚さ方向中心部の硬化反応によって内部発熱が大きくなるうえに、外部に熱が放散されにくく、発泡組成物の内部温度が過度に上昇する。これによって、発泡体の中心近くの気泡が破裂するなど、発泡体の厚さ方向に位置に応じて物性が顕著に変化し得、発泡体が損傷しやすく、撓みが発生し得る。発泡体に撓みが発生すると、見掛けの不良及び施工の不良が発生する可能性が大きく、長期間にわたり製品が収縮するなどの問題が発生する。そして、厚さが厚くなったにもかかわらず、熱伝導率は、却って低下し得る。これによって、従来には高厚みの製品の物性の確保と、撓みの防止のため、発泡体全体の物性を均一にし、発泡体の厚さ方向に中間部分を基準に物性が対称を成す発泡体を製造しようとする傾向があった。しかし、現実的に高厚みの発泡体において、厚さ全体にわたって物性を均一にしつつ、対称構造を成すことは容易でなく、コスト及び生産効率面で非経済的であるという問題がある。
【0019】
また、発泡体は、製造の際には、上部表層部及び下部表層部の区分が可能であるものの、施工の際には、発泡体の上下を区分し難しい。これによって、上部表層部と下部表層部のうちどの部位に衝撃が加わったかによって、物性の弱い部位が受ける衝撃は、大きく相違し得る。特に、断熱材は、例えば、天井用又は床用の断熱材などは、設置過程で作業者によって任意に位置が設定され、踏まれ、セメントなどを注いでから一定時間に熟成する過程を経ることになる。よって、製造の際には優れた物性を示す発泡体であっても、設置過程で発泡体の物性が弱い部位は、大きく損傷して、発泡体の使用中に断熱性及び圧縮強度などの物性が顕著に低下し、撓みが発生し得、これによって、熱伝導率が低下し得る。
【0020】
前記フェノール発泡体は、約90mm以上の厚さを有するものであって、発泡体の厚さ方向に中間部分を基準に非対称構造を有し、かつ発泡体における最小独立気泡率を有する位置を調節して、発泡体全体において断熱性、圧縮強度など、優れた物性を示し、撓みを防止することができる。そして、設置過程でフェノール発泡体の両表面のいずれか面に衝撃が加わっても、発泡体における弱い部位が受ける衝撃を同一、類似に下げることができる。これによって、前記フェノール発泡体は、施工過程を経た後にも長期間優れた物性を示すことができる。前記フェノール発泡体は、約110mm以上、約150mm以上、約180mm以上~300mmの厚さを有することができる。
【0021】
前記フェノール発泡体は、発泡体の表面から、その表面に沿って厚さ方向にN(N≧7の奇数)本の切片に均分したとき、第1表層部(N)の独立気泡率が第2表層部(N)の独立気泡率よりも低く、前記N本の切片のうち最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が、前記第1表層部(N)と中間切片(N)との間に位置する。
【0022】
本発明は、発泡体の厚さによる独立気泡率の分布を測定するために、発泡体の表面から、その表面に沿って厚さ方向にN(N≧7の奇数)本の切片に均等に切断する。このとき、厚さは、面材上の発泡組成物が成長する方向(Z方向)を意味し、前記厚さ方向と垂直な面が表面であって、発泡体製造の際に面材が付着する面を意味する。前記発泡体は、面材がある場合、面材を除去し、正確な独立気泡率を測定するために、面材が付着していた発泡体の両表面をそれぞれ5mmずつ切断する。
【0023】
その後、前記発泡体の表面から、その表面に沿って厚さ方向にN(N≧7の奇数)本の切片に均分する。そして、各切片の独立気泡率を測定する。Nは、偶数を含む常数でも構わないが、発泡体における厚さ方向中心部を基準に物性が対称を成すかをより明確に確認するために、Nは、奇数であるのが好ましい。各々の切片は、約10mm~約30mmの厚さを有することができる。
【0024】
前記フェノール発泡体は、第1表面及び第2表面を含み、前記第1表層部は、第1表面を含み、第2表層部は、前記第2表面を含む切片を意味する。前記発泡体の両表面を含む両端の2本の切片のうち、独立気泡率が低い切片をN(第1表層部)、他の切片をN(第2表層部)と示し、Nから順にN、N、N、N、...及びNと個々の切片を示す。そして、前記切片のうち、真ん中に位置した切片は、中間切片(N)と示す。すなわち、中間切片(N)は、前記第1表層部(N)及び前記第2表層部(N)の厚さ方向の1/2地点に位置した切片を意味する。例えば、図1は、本発明の一具現例によるフェノール発泡体を厚さ方向に9本(N=9)均一に切断したことを示した模式図であって、前記発泡体の両表面を含む両端の2本の切片のうち、独立気泡率が低い切片は、N(第1表層部)、他の切片は、N(第2表層部)となり、中間切片(N)は、Nとなる。そして、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が4番目切片、つまりNに位置したものを示したことである。
【0025】
前記フェノール発泡体は、第1表層部(N)の独立気泡率が第2表層部(N)の独立気泡率よりも低くて、非対称構造を成し、このとき、前記N本の切片のうち最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が、前記第1表層部(N)と中間切片(N)との間に位置する。これによって、前記第1表層部及び第2表層部のいずれか面に衝撃が加わっても、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が受ける衝撃を同一、類似に低くして、発泡体全体において優れた断熱性などの物性とともに撓みを防止することができる。
【0026】
通常、高厚みの発泡体の場合、物性が厚さ方向に対称する分布を有するようにして、発泡体全体の物性を向上させようとするが、コストがかかり過ぎ、生産効率が落ちるところ、非経済的である。そして、発泡体の厚さが厚くなるほど、物性が対称構造の分布を有するようにすることは、現実的に不可能に近い。
【0027】
このため、前記フェノール発泡体は、第1表層部(N)の独立気泡率が第2表層部(N)の独立気泡率よりも低くて、非対称構造を有するようにして、より経済的に発泡体を製造しながらも、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が、第2表層部(N)の独立気泡率よりも低い独立気泡率を有する前記第1表層部(N)と中間切片(N)との間に位置して、目的とする効果を達することができる。例えば、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が中間切片(N)と独立気泡率の高い第2表層部(N)との間に位置する発泡体において、第1表層部(N)に衝撃が加わる場合は、問題にならない。しかし、第2表層部(N)に衝撃が加わる場合、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)方向に撓みが大きく表れ、発泡体が大きく損傷して、使用過程で物性が顕著に低下し得る。前記フェノール発泡体は、前記構造を有することで、発泡体の厚さ方向において、物性が完全に対称を成す発泡体と同一、類似の効果を奏することができるところ、経済的である。
【0028】
前記第1表層部(N)の独立気泡率と、前記第2表層部(N)の独立気泡率との差(=|第2表層部(N)の独立気泡率-第1表層部(N)の独立気泡率|)は、約0.05%~約5%であってもよい。例えば、約0.1%~約5%又は約0.1%~約3%であってもよい。前記第1表層部(N)と前記第2表層部(N)との独立気泡率の差が、上記範囲未満である場合には、コストが上昇し、生産効率が落ちて非経済的であり、上記範囲を超える場合には、発泡体全体は、優れた物性を有するようにするのに限界がある。
【0029】
前記第1表層部(N)の独立気泡率と、前記第2表層部(N)の独立気泡率は、それぞれ約85%以上であってもよい。例えば、約85%~約100%であってもよい。前記第1表層部(N)及び前記第2表層部(N)は、上記範囲の独立気泡率を有することで、優れた初期熱伝導率とともに、発泡体と空気の置換を防止して、断熱性能の経時変化量を低くし、優れた断熱性を示すことができる。
【0030】
前記フェノール発泡体は、前記第2表層部(N)が最大独立気泡率を有し、前記第2表層部(N)と前記最小独立気泡率を有する切片(Nmin)との独立気泡率の差(△C2=|第2表層部(N)の独立気泡率-切片(Nmin)の独立気泡率|)は、約1~約20%であってもよい。例えば、約1~約15%又は約1%~約7%であってもよい。このとき、前記最小独立気泡率を有する切片(Nmin)と前記第2表層部(N)との独立気泡率の差が上記範囲を超える場合、気泡中の発泡剤と空気との置換速度が上昇して、熱伝導率の経時変化量が大きくなるだけでなく、高温環境下での収縮応力に耐えられる機械的強度が損傷してしまい、寸法変化率が顕著に悪化し得る。これによって、発泡体は、撓み現象が容易かつ大きく現れる。そして、前記第1表層部(N)と前記最小独立気泡率を有する切片(Nmin)との独立気泡率の差(△C1=|第1表層部(N)の独立気泡率-切片(Nmin)の独立気泡率|)は、約0.1~約20%であってもよい。例えば、約0.1~約10%であってもよい。
【0031】
前記最小独立気泡率を有する切片(Nmin)は、約70%以上の独立気泡率を有することができる。例えば、約70%~約89%であってもよい。前記フェノール発泡体は、前記切片(Nmin)の独立気泡率を上記範囲に調節して、長期間にわたり低い熱伝導率を維持して、撓みの発生を防止し、寸法安定性を向上させることができる。例えば、上記範囲未満である場合、気泡内発泡剤と空気との置換速度が上昇して、熱伝導率の経時変化量が大きくなり得る。
【0032】
前記フェノール発泡体は、前記発泡体の全体厚に対するd1とd2の比率が約0.2:0.8~約0.45:0.55であってもよい。前記d1は、前記発泡体の全体厚に対する、前記第1表層部(N)から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)までの厚さの比率(d1=第1表層部(N)の上部面から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)の1/2地点までの厚さ/発泡体の全体厚)であり、前記d2は、前記発泡体の全体厚に対する、前記第2表層部(N)から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)までの厚さの比率(d2=第2表層部(N)の下部面から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)の1/2地点までの厚さ/発泡体の全体厚)であってもよい。このとき、前記発泡体の全体厚は、面材が付着していた発泡体の両表面をそれぞれ5mmずつ切断した後の発泡体の厚さを意味する。そして、前記d1及びd2は、図1に示すように、前記第1表層部の上部面又は前記第2表層部の下部面から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)の厚さ方向の1/2地点までの垂直距離の比率を意味する。
【0033】
前記最小独立気泡率を有する切片(Nmin)は、前記第1表層部(N)と前記第2表層部(N)との関係において、前記地点に位置して、前記第1表層部及び第2表層部のいずれか面に衝撃が加わっても、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が受ける衝撃を同一、類似に低くして、発泡体全体において優れた断熱性などの物性とともに撓みを防止することができる。例えば、前記最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が上記範囲を外れて、第1表層部(N)にさらに近く位置する場合、第1表層部(N)側の物性が顕著に低下して、発泡体全体の物性を一定以上に均一にすることが難しく、面材を含む第1表層部(N)の収縮が見掛けに表れ、第1表層部(N)方向に製品の撓みが大きく発生して、圧縮強度が低下するなどの問題があり得る。そして、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)は、第2表層部(N)にさらに近く位置する場合、第2表層部(N)に衝撃が加わったとき、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が受ける衝撃の程度が急速に増加して、損傷しやすく、第2表層部(N)方向に製品が大きく撓むなどの問題があり得る。
【0034】
前記フェノール発泡体は、各々の表層部(N,N)と、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)との間の独立気泡率の差(△C1,△C2)を各々の表層部と最小独立気泡率を有する切片までの距離の比率(d1,d2)で割った値(Y)が、(|(△C2/d2)-(△C1/d1)|)=約0.1~約9であってもよい。例えば、約0.1~約6.5又は約0.1~約5であってもよい。前記Y値が上記範囲を超えると、厚さ方向に特定の位置で受ける衝撃が大きくなるか、発泡体全体の物性が低下して、撓みが発生する問題があり得る。
【0035】
前記フェノール発泡体は、上記のような独立気泡率の分布を有することで、発泡体全体において、優れた物性を示すことができ、長期間の使用にもかかわらず、優れた熱伝導率を維持することができる。
【0036】
具体的に、前記フェノール発泡体は、KS M ISO 844による圧縮強度が約100kPa~約200kPaであってもよい。例えば、約115kPa~約200kPaであってもよい。圧縮強度は、発泡体が破断するときの圧力を意味する。前記フェノール発泡体は、上記範囲の圧縮強度を有することで、物性間に優れた均衡を維持し、流通及び施工後にも優れた長期耐久性を示すことができる。
【0037】
前記フェノール発泡体は、約0%~約2.0%の寸法変化率を有することができる。例えば、前記フェノール発泡体は、約0%~約1.0%又は約0%~約0.7%の寸法変化率を有することができる。このとき、寸法変化率は、実験例4に記載の方法で測定することができる。
【0038】
発泡体は、図4に示すように、25℃、相対湿度60%で、7日経過すると、発泡体の表面部が床面に向かって凹に撓む場合(I)、或いは発泡体の表面部が天井に向かって凸に撓む場合(II)が発生し得る。このとき、上記(I)の場合は、角部分(P1~P4)の変化が、そして、上記(II)の場合は、発泡体の長さ方向の2辺と床面との間の最大隔離距離(R1,R2)が、発泡体が外部衝撃に対して受ける損傷及び発泡体の全体変形に影響を及ぼし得る。前記フェノール発泡体は、上記(I)の場合、及び/又は上記(II)の場合において、それぞれ約0cm~約1.5cmの平均撓みを有することができる。または、それぞれ約0.1cm~約0.7cm又は約0.1cm~約0.5cmの平均撓みを有することができる。
【0039】
前記フェノール発泡体は、KS L 9016による平均温度20℃で測定した熱伝導率が、約0.017W/m・K~約0.020W/m・Kであってもよい。
【0040】
そして、前記フェノール発泡体は、EN13823に従って、70℃で、7日間乾燥した後に、110℃で、14日間乾燥した後、平均温度20℃で測定した熱伝導率が約0.018W/m・K~約0.022W/m・Kであってもよい。
【0041】
前記フェノール発泡体は、独立気泡率を上記のような分布で含み、優れた圧縮強度などの物性を示し、撓みを防止して、長期熱伝導率においても約10%以下の経時変化を示すことができる。
【0042】
本発明の他の具現例は、フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡組成物を、ノズルを用いて面材上に吐出するステップと、前記吐出した発泡組成物を発泡及び硬化するステップとを含み、前記ノズルは、長さ(L)/幅(W)が1以上2以下である形状の吐出口を有するフェノール発泡体の製造方法を提供する。
【0043】
上記製造方法によって前述したように、特定した独立気泡率の分布を有し、発泡体全体において優れた物性を有するフェノール発泡体をより経済的に製造することができる。そして、上記製造方法に従って製造された前記フェノール発泡体は、前記第1表層部及び前記第2表層部のいずれか面に衝撃が加わっても、最小独立気泡率を有する切片(Nmin)が受ける衝撃を同一、類似に低くして、発泡体全体において優れた断熱性、圧縮強度などの物性とともに撓みを防止することができる。前記フェノール発泡体の厚さ、独立気泡率など、上述した事項は、下記で特に記載したことを除いては、前述のとおりである。
【0044】
通常の厚さを有するフェノール発泡体の場合、発泡組成物を第1面材上に、1つのノズルを用いて連続して吐出した後、硬化炉内コンベヤーの間で板状に成形すると、発泡組成物が設定された厚さまで迅速に発泡、硬化反応し、反応時に生成された反応熱は、表面の面材を介して容易に放射されて、厚さ全体にわたって均一な物性を有することが難しくない。一方、厚さ90mm以上のフェノール発泡体の場合、発泡体の厚さ方向中心部の硬化反応によって内部発熱が大きくなり、外部に熱が放散しにくく、発泡組成物の内部温度が過度に上昇する。これによって、発泡体の中心近くの気泡が破裂しやすい。また、第1面材(下部面材)上に吐出した発泡組成物は、第2面材(上部面材)方向(Z方向)に膨張することにおいて、製品の厚さが厚い場合、発泡-硬化に要する時間が相対的に長くなる。これによって、発泡組成物が第1面材(下部面材)に留まる時間が長くなり、第1面材(下部面材)に発泡組成物が次第に蓄積されて、相対的に過度な膨張が発生し、第1面材(下部面材)近くの気泡が破裂しやすい傾向を示し、発泡体の厚さが厚くなるほど、物性のバラツキが顕著に現れ、これによって、発泡体の全体物性が低下し得る。これを克服するために、上下部面材上に、各々のノズルを用いて個別に発泡組成物を吐出させる方法が提案されたりもするが、かかる方法は、複雑な装置が必要であり、コストが上昇する問題がある。
【0045】
本発明の他の具現例による前記フェノール発泡体の製造方法は、フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡組成物を、ノズルを用いて面材3上に吐出するステップを含む。このとき、前記ノズルの入口である吐出口10は、長さ(L)/幅(W)が1以上2以下である形状を有することができる。例えば、図2に示したように、長さ(L)が幅(W)よりも長い楕円状を有することができ、前記長さ(L)/幅(W)が1超2以下であってもよい。前記吐出口は、組成物が吐出する入口を意味する。このとき、楕円において、長さ(L)は長軸、幅(W)は短軸の長さを意味する。図3に示したように、前記吐出口の長さ(L)方向は、発泡体の厚さ方向(Z方向)と平行であり、前記吐出口の幅(W)方向は、発泡体の幅方向(Y方向)と平行な方向に位置することができる。
【0046】
前記ノズルの吐出口は、1以上2以下である長さ(L)/幅(W)(aspect ratio)を有することができる。例えば、前記ノズルの吐出口は、1超2以下である楕円状の吐出口を有することができる。これによって、硬化している気泡が発泡組成物の移動によって崩れることを防止し、発泡組成物が吐出される面材(例:下部面材)近くにおいて、発泡組成物が過度に発泡及び膨張するなどの問題を防止することができる。例えば、ノズルの吐出口が楕円ではない、長方形構造を有する場合、吐出口の角近くに硬化物が蓄積するなどの問題があり得る。そして、前記吐出口が円形又は楕円状を有するものの、長さ(L)/幅(W)が上記範囲未満である場合、発泡組成物が吐出する下部面材近くにおいて、過度な発泡及び膨張が発生して、気泡が容易に破泡するなどの問題があり得る。長さ(L)/幅(W)の比が上記範囲を超える場合、発泡組成物が発泡体の幅方向(Y方向、発泡組成物の吐出方向と直交する方向)に広がる量が増加しながら、加熱によって硬化している気泡が発泡組成物の移動によって崩れ、発泡体の厚さ方向(Z方向)への発泡及び膨張速度がさらに遅くなり、発泡組成物が下部面材近くに留まる時間及び量が多くなる問題と、気泡が破泡するなどの問題があり得る。
【0047】
前記吐出口は、約10mm~約100mmの長さ(L)を有することができる。前記吐出口の長軸である長さ(L)が上記範囲未満である場合、ノズルの吐出時に発生する圧力が上昇し得、上記範囲を超える場合、圧力が低くなりながら適宜な発泡が行われない問題があり得る。
【0048】
前記発泡組成物は、約30kg/min~約100kg/minに吐出し得る。
【0049】
前記吐出時の前記発泡組成物の粘度は、25℃で、約5,000cps~約40,000cpsであってもよい。前記発泡組成物は、上記範囲の粘度を有することで、発泡及び硬化に適宜なスラーリ状に吐出することができる。
【0050】
前記吐出時の前記発泡組成物の温度は、約0℃~約40℃であってもよい。温度範囲が上記範囲未満である場合、吐出物の粘度が過度に上昇して、吐出し難しい問題があり、上記範囲を超える場合、発泡剤が容易に揮発して、熱伝導率が低下する問題があり得る。
【0051】
前記フェノール発泡体の製造方法は、図3に示したように、発泡組成物の流れ方向(X軸、つまり面材3の走行方向)と直交する方向(Y軸方向、発泡体の幅方向)に沿って配置された前記吐出口10を有する複数のノズルを備えることができる。具体的に、前記ノズルは、約4本~約12本であってもよい。前記ノズルは、等間隔で並列に配置されていてもよい。
【0052】
前記製造方法は、前記吐出口10を有する前記本数のノズルを均一な間隔で並列配置して、発泡組成物が成長する方向(Z軸方向、発泡体の厚さ方向)にだけではなく、発泡組成物の流れ方向(X軸、つまり面材の走行方向)と直交する方向(Y軸方向、発泡体の幅方向)に均一な膨張を誘導することができる。このため、気泡の成長及び分布を適宜調節することができる。
【0053】
前記発泡組成物は、フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む。前記フェノール系樹脂は、フェノール及びホルムアルデヒドが反応して得ることができ、例えば、レゾール系フェノール樹脂(以下、「レゾール樹脂」)を含むことができる。前記フェノール系樹脂は、前記フェノール発泡体内に約30重量%~約90重量%、又は約50重量%~約90重量%、又は約55重量%~約90重量%の含量で含まれていてもよい。前記フェノール発泡体は、前記フェノール系樹脂を上記範囲内の含量で含むことで、小さい大きさの発泡セルを安定的に形成し、優れた熱伝導度を具現することができる。
【0054】
前記フェノール発泡体は、発泡剤を含むことができる。例えば、前記発泡剤は、ヒドロフルオロオレフィン(hydrofluoroolefin,HFO)系化合物、炭化水素系化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つを含むことができる。具体的に、前記ヒドロフルオロオレフィン系化合物は、例えば、モノクロロトリフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロブテン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。そして、前記炭化水素系化合物は、炭素数1本~8本の炭化水素を含むことができる。例えば、前記炭化水素系化合物は、ジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。または、前記炭化水素系化合物は、炭素数1本~5本の炭化水素であって、ジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み、環境にやさしいと共に、優れた断熱性を示すことができる。前記発泡剤は、前記フェノール発泡体を約100重量部を基準に約6重量部~約13重量部となるように含まれていてもよい。
【0055】
前記フェノール発泡体は、硬化剤を含む。前記硬化剤は、酸性硬化剤であって、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つの酸性硬化剤を含むことができる。
【0056】
前記酸性硬化剤は、前記フェノール発泡体100重量部に対し、約9重量部~約20重量部の含量で含まれていてもよい。前記フェノール発泡体は、前記硬化剤を上記範囲の含量で含み、適正の架橋、硬化及び発泡性を示すことができる。
【0057】
前記フェノール発泡体の製造方法は、前記吐出した発泡組成物を発泡及び硬化するステップを含む。前記フェノール発泡体は、硬化炉内コンベヤーの間で板状に発泡及び硬化することができる。例えば、約40℃~約90℃の温度条件下で発泡及び硬化し得る。また、前記発泡及び硬化は、約2分~約20分の間に行うことができるものの、これに制限されず、発明の目的及び用途によって適宜に異なり得る。
【0058】
本発明のさらに他の具現例は、前記フェノール発泡体を含む断熱材を提供する。前記フェノール発泡体は、優れた圧縮強度、撓みの防止及び優れた断熱性を同時に満たせ、建築用断熱材の用途に使用することができる。
【0059】
前記建築用断熱材は、例えば、前記フェノール発泡体の一面又は両面上に面材をさらに含むことができ、前記面材としてアルミニウムを含み、難燃性をさらに向上させることができる。
【0060】
(実施例)
実施例1:
レゾール樹脂100重量部に対して、硬化剤としてトルエンスルホン酸18重量部、発泡剤としてシクロペンタン10重量部、および界面活性剤を含む発泡組成物(25℃、20,000cps)を準備した。
【0061】
長さ(L)/幅(W)が1.5である楕円吐出口(長さ(L)=10mm)を有するノズルを、コンベヤー7の移動方向(X軸、つまり面材の走行方向)と直交する方向(Y軸方向、発泡体の幅方向)に沿って下部面材上に等間隔で6本を並列配置した。
【0062】
そして、10m/minの速度で移動し、幅1200mm及び厚さ190mmの大きさを有し、70℃雰囲気温度であるコンベヤー上に、前記個々の吐出口を用いて前記発泡組成物を40k/min吐出し、発泡及び硬化して、厚さ190mmのフェノール発泡体を製造した。
【0063】
実施例2:
長さ(L)/幅(W)が1である円形吐出口(長さ(L)=10mm)を有するノズルを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でフェノール発泡体を製造した。
【0064】
比較例1:
長さ(L)/幅(W)が2.5である楕円吐出口(長さ(L)=10mm)を有するノズルを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でフェノール発泡体を製造した。
【0065】
比較例2:
長さ(L)/幅(W)が0.5である楕円吐出口(長さ(L)=10mm)を有するノズルを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でフェノール発泡体を製造した。
【0066】
評価
実験例1:各切片の独立気泡率
実施例及び比較例のフェノール発泡体に付着した面材を除去し、面材が付着していた発泡体の両表面をそれぞれ5mmずつ切断した。
【0067】
その後、前記発泡体の表面から、その表面に沿って厚さ方向に9本(N=9)の切片に均一に切断し、切断前の発泡体の厚さ方向全体にわたって中間部分を含むように、2.5cm(L)×2.5cm(W)×2.0cm(T)の大きさの発泡体切片を製造した。このとき、前記発泡体の両表面を含む両端の2本の切片のうち、独立気泡率が低い切片をN(第1表層部)、他の切片をN(第2表層部)と示し、Nから順にN、N、N、N、N、N、N、及びNと個々の切片を示した。これによって、中間切片(N)は、Nとなる。
【0068】
そして、前記個々の試片(N~N)に対して、KS M ISO 4590 測定方法で独立気泡率測定機器(Quantachrome,ULTRAPYC 1200e)装備を用いて各切片の独立気泡率を測定し、その結果を下記の表1に記載した。
【0069】
そして、d1は、発泡体の全体厚に対する、前記第1表層部(N)から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)までの厚さ(=N~Nmin厚さ)の比率(d1=N~Nminの厚さ/発泡体の全体厚)であり、d2は、発泡体の全体厚に対する、前記第2表層部(N)から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)までの厚さ(=N~Nmin厚さ)の比率(d2=N~Nminの厚さ/発泡体の全体厚)を意味する。このとき、前記発泡体の全体厚は、面材が付着していた発泡体の両表面をそれぞれ5mmずつ切断した後の発泡体の厚さを意味する。そして、前記N~Nminの厚さ及びN~Nminの厚さは、図1に示すように、前記第1表層部の上部面又は前記第2表層部の下部面から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)の厚さ方向の1/2地点までの垂直距離を意味する。すなわち、d1は、第1表層部(N)の上部面路から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)の1/2地点までの厚さ/発泡体の全体厚、d2は、第2表層部(N)の下部面路から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)の1/2地点までの厚さ/発泡体の全体厚を意味する。
【0070】
【表1】
【0071】
実験例2:圧縮強度
実施例及び比較例のフェノール発泡体を150mm(L)×150mm(W)×面材を含む発泡体の厚さどおりの試片に準備し、前記試片をLloyd instrument社のLF Plus万能材料試験機(Universal Testing Machine)の広い板の間に置いて、UTM装備で試片の厚さの10%mm/min速度で設定し、圧縮強度実験を開始して、厚さが減少する間に示される第一圧縮降伏点での強度を記録した。圧縮強度は、KS M ISO 844規格の方法で測定しており、その結果を下記の表2に記載した。
【0072】
実験例3:撓み
図4は、本発明による面材を含むフェノール発泡体の撓み程度を測定する方法を簡略に示した模式図である。実施例及び比較例の面材を含むフェノール発泡体の表面が、床面に接するように偏平な床に置いた。そして、前記床面と接する前記フェノール発泡体表面の4角(頂点)地点と、床面からの間隔(p1,p2,p3,p4)を測定した。そして、フェノール発泡体の長さ方向の2辺と床面との間の間隔の最大隔離距離(r1,r2)を測定した。このとき、発泡体が床面と密着している場合、各々の間隔は、「0」となる。
【0073】
そして、25℃、相対湿度60%の条件下で、7日間、前記フェノール発泡体を放置し、その後、フェノール発泡体の撓み程度を測定した。発泡体の表面部が床面に向かって凹に撓む場合(I)は、上記と同様の方法によって4本の角(頂点)地点と床面からの間隔(P1,P2,P3,P4)を測定し、下記の式1によってフェノール発泡体に撓みが発生した程度を表2に記載した。そして、発泡体の表面部が天井に向かって凸に撓む場合(II)は、フェノール発泡体の長さ方向の2辺と床面との間の間隔の最大隔離距離(R1,R2)を測定し、下記の式2によってフェノール発泡体に撓みが発生した程度を表2に記載した。
【0074】
[式1]
撓み発生程度(△S)=[|P1-p1|+|P2-p2|+|P3-p3|+|P4-p4|]/4
【0075】
[式2]
撓み発生程度(△S’)=[|R1-r1|+|R2-r2|]/2
【0076】
実験例4:寸法安定性
図4は、本発明のフェノール発泡体の寸法安定性を測定する方法を簡略に示した模式図である。
【0077】
実施例及び比較例のフェノール発泡体を100mm(L)×100mm(W)×面材を含む発泡体の厚さどおりの試片に準備した。そして、図5のように、試片の長さ(L)及び幅(W)方向において、均等なn(n=3)本地点に線を引いて、25℃で、前記個々の線の初期長さ(a)を測定した。
【0078】
そして、前記試片を70℃のオーブンで48時間放置した後、各地点の以後長さ(a’)を測定し、初期寸法で変化した寸法変化率(%)を下記の式3によってそれぞれ測定し、その平均値を表2に記載した。寸法安定性は、KS M ISO 2796規格の方法で測定した。
【0079】
[式3]
寸法変化率(%)=(|初期長さ(a)-以後長さ(a’)|/初期長さ(a))×100
【0080】
上記式3において、前記初期長さ(a)は、発泡体の長さ(L)及び幅(W)方向において、均等なn本地点の各線の長さであり、前記以後長さ(a’)は、前記発泡体を70℃のオーブンで48時間放置した後、前記各地点の各線の以後長さ(a’)を意味する。このとき、nは、2~5であってもよい。
【0081】
実験例5:初期熱伝導率
実施例及び比較例のフェノール樹脂発泡体を、いずれか表面から50mmとなるように切断し、300mm×300mmの大きさに切断して試片を準備し、前記試片を70℃で、12時間で乾燥して前処理した。そして、前記試片に対して、KS L 9016(平板熱流計法測定方法)の測定条件に従って、平均温度20℃で、HC-074-300(EKO社)熱伝導率機器を用いて熱伝導率を測定し、その結果を下記の表2に記載した。
【0082】
実験例6:長期熱伝導率
実施例及び比較例のフェノール樹脂発泡体を、いずれか表面から50mmとなるように切断し、300mm×300mmの大きさに切断して試片を準備し、前記試片をEN13823に従って、70℃で、7日間乾燥した後、110℃で、14日間乾燥した後、平均温度20℃で、HC-074-300(EKO社)熱伝導率機器を用いて熱伝導率を測定し、その結果を下記の表2に記載した。
【0083】
【表2】
【0084】
上記表1に示すように、実施例のフェノール発泡体は、優れた圧縮強度と共に、撓み程度を充分抑制して、優れた熱伝導率を示すことが分かる。以上のように、本発明について例示の図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書に開示の実施例と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内における通常の技術者によって様々な変形が行われることは明らかである。なお、本発明の実施例を前述しながら本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、当該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
【符号の説明】
【0085】
d1 発泡体の全体厚に対する、第1表層部(N)から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)までの厚さ
d2 発泡体の全体厚に対する、第2表層部(N)から最小独立気泡率を有する切片(Nmin)までの厚さ
10 ノズルの吐出口
L 吐出口の長さ
W 吐出口の幅
3 面材
7 コンベヤー
100 フェノール発泡体
図1
図2
図3
図4
図5