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特許7573126超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/10 20060101AFI20241017BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20241017BHJP
   C22B 9/04 20060101ALI20241017BHJP
   C22B 9/10 20060101ALI20241017BHJP
   C22B 9/16 20060101ALI20241017BHJP
   C22C 30/06 20060101ALI20241017BHJP
   C22C 33/04 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C21C7/10 Z
C21C7/00 B
C22B9/04
C22B9/10 101
C22B9/16
C22C30/06
C22C33/04 H
C22C33/04 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023572990
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2022095043
(87)【国際公開番号】W WO2022218444
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522275980
【氏名又は名称】大冶特殊鋼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DAYE SPECIAL STEEL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.316 Huangshi Avenue Huangshi, Hubei 435001, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 暁利
(72)【発明者】
【氏名】王 立
(72)【発明者】
【氏名】雷 応華
(72)【発明者】
【氏名】張 志成
(72)【発明者】
【氏名】李 林森
(72)【発明者】
【氏名】曹 政
(72)【発明者】
【氏名】高 首磊
(72)【発明者】
【氏名】張 暁磊
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-006927(JP,A)
【文献】特開平07-070691(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1516724(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第103173692(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103233174(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104593692(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/00 - 7/10
C22B 9/00 - 9/16
C22C 30/06
33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法であって、
前記VIM炉で行う溶錬ステップと、注湯ステップとを含み、
前記溶錬は、溶融期と精練期とを含み、前記溶錬の後期は精練後期を指し、前記溶錬の後期に、前記VIM炉に窒素含有物質を添加してN含有量を調整し、
前記窒素含有物質は、ベーキング処理後の窒素含有物質であり、前記ベーキングの温度が750~1100℃、時間が6時間以上であり、
前記溶錬の後期に、前記窒素含有物質を添加する前に、前記VIM炉に不活性ガスを充填し、前記窒素含有物質の添加から注湯開始までの時間は14~15分であり、前記不活性ガスはアルゴンガスであり、前記VIM炉内のアルゴンガスの圧力が10000pa以上であり、
前記溶錬ステップにおいて、溶錬前にVIM炉に原料を添加する際、金属クロムの添加量は、金属クロム原料の全質量の80~85%であり、残りの15~20%の前記金属クロムは、必要量に応じて溶錬後期に前記不活性ガスを充填する前に添加されて成分を調整し、
質量%で、前記超高N含有量高温合金の成分組成は、C:0.02~0.10%、Cr:23.00~27.00%、Ni:35.00~39.00%、W:≦0.50%、Mo:≦1.00%、P:≦0.04%、S:≦0.03%、Mn:≦1.50%、Si:≦1.00%、B:≦0.01%、Nb:0.40~0.90%、Co:≦3.00%、N:0.15~0.30%、Al:≦0.40%、Ti:≦0.20%、Cu:≦0.50%、Fe:残り、である、
ことを特徴とする超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法。
【請求項2】
前記超高N含有量高温合金におけるN質量含有量は、2000~3000ppmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法。
【請求項3】
前記超高N含有量高温合金におけるN質量含有量は、2700~3000ppmである、
ことを特徴とする請求項2に記載の超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法。
【請求項4】
前記窒素含有物質は、窒素含有質量%が3%以上の窒素含有合金である、
ことを特徴とする請求項1に記載の超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法。
【請求項5】
前記窒素含有物質は、窒化クロム鉄、窒化マンガン、窒化アルミニウムのうちの少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項4に記載の超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法。
【請求項6】
前記ベーキングを行う装置は、VIM炉と同じ作業場に位置する、
ことを特徴とする請求項5に記載の超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法。
【請求項7】
前記不活性ガスの充填は、前記注湯が終了するまで続く、
ことを特徴とする請求項1に記載の超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法。
【請求項8】
前記超高N含有量高温合金は、鉄、ニッケルを基にして、600℃以上の高温で持続的に働くことができる金属材料の一種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法。
【請求項9】
前記超高N含有量高温合金は、応力作用下で長期的に働く金属材料の一種である、
ことを特徴とする請求項8に記載の超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金業界の高温合金の真空溶錬分野に属し、具体的には超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高N含有量高温合金は、発電所でよく使われる材料であり、鍛造品、リング部品など多くの製品を製造するために用いられる。使用環境及び合金の清浄度に対する特別な要求の影響を受けるため、当該合金の製錬はVIM炉を用いて生産しなければならない。VIM炉で超高N含有量高温合金を製錬する過程で、高真空状態では、窒素元素は真空システムから揮発しやすく、理想的な目標値を得ることができない。VIMの高真空環境では、通常、超高含有量N元素の制御を効果的に実現することができず、伝統的な溶錬プロセスで得られる良品率が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術に存在する不足及び欠陥に対して、本発明の目的の1つは、超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法(超高N含有量高温合金のVIM炉溶錬過程におけるN含有量の精密制御方法とも言える)を提供することである。このプロセス方法を採用することで、窒素元素の目標含有量を保証し、製品の良品率を大幅に高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の技術的課題を解決するために採用する技術案は以下の通りである。
【0005】
超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法は、VIM炉で行う溶錬ステップと、注湯ステップとを含み、前記溶錬の後期に、VIM炉に窒素含有物質を添加してN含有量を調整する。ここで、前記VIM炉は真空誘導溶錬炉である。
【0006】
上記超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法において、好ましい実施形態として、前記超高N含有量高温合金におけるN質量%は、1500~3000ppm、好ましくは2000~3000ppm、より好ましくは2700~3000ppmである。すなわち、前記注湯ステップの後、得られた超高N含有量超高温合金におけるN含有量は1500~3000ppm、好ましくは2000~3000ppm、より好ましくは2700~3000ppmである。
【0007】
上記超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法において、好ましい実施形態として、前記窒素含有物質は、窒素含有質量%が3%以上の窒素含有合金であり、さらに好ましくは、窒化クロム鉄、窒化マンガン、窒化アルミニウムのうちの少なくとも1種であり、好ましくは、前記窒素含有物質(例えば窒化クロム鉄)は、ベーキング処理後の窒素含有物質であり、より好ましくは、前記ベーキングの温度が750~1100℃、時間が6時間以上である。通常、窒素含有物質(例えば窒化クロム鉄)に対してベーキングを行わないことに対して、本発明は革新的に窒素含有物質(例えば窒化クロム鉄)に対してベーキングを行って窒素含有物質中のガスを除去し(ここでは主にHを除去し)、窒素含有物質と鋼液との温度差を縮小させ、反応によるNの収量に激しい影響を与えることを避ける。より好ましくは、前記ベーキングを行う装置は、VIM炉と同じ作業場に位置する。このうち、温度が750℃未満であると、H除去に効果がなく、温度が1100℃を超えると、窒化クロム鉄に溶解されたNの一部が分解される。最終的には、Nの収率に影響するとともに、ベーキング時間は、Hを除去する効果を奏するために、6時間以上とすることが好ましい。
【0008】
上記超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法において、好ましい実施形態として、前記溶錬の後期に、前記窒素含有物質(例えば窒化クロム鉄)を添加する前に、前記VIM炉に不活性ガスを充填し、好ましくは、前記不活性ガスはアルゴンガスであり、前記VIM炉内のアルゴンガスの圧力が10000pa以上であり、アルゴンガスの圧力は、機器が許容できる力の範囲内で大きいほど好ましいように設定される。アルゴンガスの圧力が小さすぎると、生成物合金のN含有量が要求に達しなくなり、窒素含有物質(例えば窒化クロム鉄)が添加された後のN収率が低くなる。真空誘導炉の真空システムは動的平衡のプロセスであり、一部のNは真空システムから炉外に排出するので、窒素含有物質(窒化クロム鉄など)をより多く補充する必要があり、コストが上昇したり、最終成分が不合格になったりするため、廃棄に判定されることは原因である。一方、高圧力のアルゴンガスを充填することは、鋼液面に対して圧縮応力の作用があり、窒素含有物質(窒化クロム鉄など)によって鋼液に持ち込まれたNが液面から排出する抵抗を増加させるとともに、増大した炉内圧力も炉内システムの動的平衡の進行を遅らせることができる。好ましくは、前記不活性ガスの充填は、前記注湯が終了するまで続く。
【0009】
好ましくは、前記溶錬は、溶融期と精練期とを含み、前記溶錬の後期は精練後期を指す。
【0010】
上記超高N含有高温合金のVIM炉製錬方法において、好ましい実施形態として、前記窒素含有物質(例えば窒化クロム鉄)の添加から注湯開始までの時間は15分以下である。窒素含有物質(窒化クロム鉄など)の添加から注湯開始までの時間が長すぎると、合金中のNの収率が低下する。
【0011】
上記超高N含有高温合金のVIM炉製錬方法において、好ましい実施形態として、前記溶錬ステップにおいて、溶錬前にVIM炉に原料を添加する際、金属クロムの添加量は、金属クロム原料の全質量の80~85%であり、残りの15~20%の前記金属クロムは、必要量に応じて溶錬後期に不活性ガスを充填する前に添加されて成分を調整する。
【0012】
上記超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法において、本発明の前記超高N含有量高温合金は、鉄、ニッケルを基にして、600℃以上の高温で持続的に働くことができる金属材料の一種であり、好ましくは、応力作用下で長期的に働く金属材料の一種である。
【0013】
上記超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法において、好ましい実施形態として、質量%で、前記超高N含有量高温合金の成分組成は、C:0.02~0.10%、Cr:23.00~27.00%、Ni:35.00~39.00%、W:≦0.50%、Mo:≦1.00%、P:≦0.04%、S:≦0.03%、Mn:≦1.50%、Si:≦1.00%、B:≦0.01%、Nb:0.40~0.90%、Co:≦3.00%、N:0.15~0.30%、Al:≦0.40%、Ti:≦0.20%、Cu:≦0.50%、Fe:残り、である。
【0014】
超高N含有量高温合金であって、前記超高N含有量高温合金は、上記超高N含有量高温合金のVIM炉製錬方法を用いて製造されたものである。
【0015】
本発明はVIM溶錬により高真空状態で理想的な目標のN含有量を得る技術原理は、窒化クロム鉄の固定的な窒素含有量が他の合金原料よりはるかに大きいため、窒化クロム鉄をこの高温合金のN元素の持ち込み媒体とする。しかし、VIMが高真空状態で製錬されてN元素が自由状態の形で真空システムから炉外に排出されるため、有効で正確な窒素含有量の制御は非常に困難である。したがって、本発明は窒化クロム鉄の添加タイミングを制御する(精練後期に添加する)ことによって、添加条件を制御し(窒化クロム鉄を添加する前に高圧不活性ガスを充填し、N元素の収率を向上させる)、窒化クロム鉄の添加から注湯までの時間を制御する。N元素の収率を保証する場合、インゴットに鋳造し、理想的な目標値の高温合金製品を得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来技術に比べて以下のような積極的な効果を有する。
【0017】
(1)本発明の方法は簡単で、実行容易で、有効であり、専用装備及びプロセス装備を追加する必要はない。
【0018】
(2)本発明(高温合金、合金の割合は鉄鋼よりはるかに高い)は、原材料や溶錬プロセスなどの総合的な改善を通じて、VIM炉溶錬過程におけるN元素の収率を高め、この高温合金のN元素含有量の正確な制御を実現したため、窒素元素の目標含有量を保証し、理想的な製品を得ることができる。
【0019】
(3)本発明は、高真空状態におけるN元素の収率の問題を効果的に解決し、リング部品などの製品の良品率を高め、製造企業の生産コストを低減する。
【0020】
(4)本発明は、窒化クロム鉄に対して合理的なベーキングを行うことによって、窒素元素の収率を保証するとともに、窒化クロム鉄の水分が鋼液にHを持ち込むことを低減することができる。
【0021】
(5)本発明は、10000Pa以上のArガスを充填することにより、従来の高真空状態から高圧力状態に変化し、鋼液面を密集した圧力応力にさせ、鋼液のNに対する溶解度を増強し、ひいては収量を高めることができる。
【0022】
(6)本発明は、アルゴン充填後、窒化クロム鉄の添加から注湯までの時間を制御し、Nの収量を保証し、窒化クロム鉄の未完全溶融による異金属介在欠陥の発生を防止する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的、技術案及び利点を突出的に表現するために、以下、実施例に基づいて本発明をさらに説明し、例は本発明を限定するものではなく、本発明への説明によって表現されるものである。本発明の技術案は、以下に列挙される具体的な実施形態に限定されるものではなく、各具体的な実施形態間の任意の組み合わせも含む。
【0024】
本発明の窒化クロム鉄は、窒素含有量が3wt%以上の任意の番号の窒化クロム鉄であってもよく、以下の実施例ではFeNCr3-Aの番号の窒化クロム鉄を例に説明する。
【0025】
<実施例1>
本発明の実施例1は、公称容量6トンのVIM炉を用いてこの超高窒素含有量高温合金を製錬し、以下のステップを含む。
【0026】
ステップ1:窒化クロム鉄ベーキング:工場内の高温焼鈍炉で窒化クロム鉄をベーキングする。
【0027】
ここで、前記窒化クロム鉄のベーキングのパラメータは、N含有量(窒化クロム鉄に占めるNの質量割合)が5.1%、ベーキング(加熱)温度が930℃、ベーキング時間が8.5時間である。
【0028】
ステップ2:溶錬前の仕込み:Ni、Fe、Nb、Crなどの原材料を次々とVIM炉に入れる。窒化クロム鉄残留物は100%、添加しない。金属クロム残留物は20%、添加しない。
【0029】
ステップ3:溶錬過程:原料を溶錬し(溶融期と精錬期とを含み、溶融期完成の指標は、完全溶融温度1530℃、精錬期の温度1510℃、時間130分を監視するものである)、精錬後期に金属クロムの必要な量を添加して成分を調節し、その後、精錬後期に炉内にアルゴンガスを充填して炉内の圧力を10000paとし、続いて窒化クロム鉄を添加し、N含有量を調整する。
【0030】
ステップ4:注湯過程:溶錬過程で得られた鋼液を注湯し、窒化クロム鉄の添加から注湯開始(出鋼)までの時間は14分である。
【0031】
ステップ5:検証:標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.061%、Cr:25.40%、Ni:37.03%、P:0.006%、S:0.002%、Mn:0.74%、Si:0.470%、B:≦0.01%、Nb:0.63%、N:0.2857%、Al:0.230%、Ti:0.05%、Cu:0.01%、H:0.0001%である。
【0032】
窒素収率(すなわち窒素収量率:得られた生成物における窒素含有量と使用原料における持ち込まれた窒素含有量の比)と良品率はそれぞれ76.92%と100%である。
【0033】
<実施例2>
本発明の実施例2は、公称容量6トンのVIM炉を用いてこの超高窒素含有量高温合金を製錬し、以下のステップを含む。
【0034】
ステップ1:窒化クロム鉄ベーキング:工場内の高温焼鈍炉で窒化クロム鉄をベーキングする。
【0035】
ここで、前記窒化クロム鉄のベーキングのパラメータは、N含有量が5.1%、ベーキング(加熱)温度が930℃、前記ベーキング時間が8.5時間である。
【0036】
ステップ2:溶錬前の仕込み:Ni、Fe、Nb、Crなどの原材料を次々とVIM炉に入れる。窒化クロム鉄残留物は100%、添加しない。金属クロム残留物は20%、添加しない。
【0037】
ステップ3:溶錬過程:原料を溶錬し(溶融期と精錬期とを含み、溶融期完成の指標は、完全溶融温度1530℃、精錬期の温度1510℃、時間130分を監視したものである)、溶錬過程に金属クロムの必要な量を添加して成分を調節し、その後、精錬後期にアルゴンガスを充填して圧力を10000paとし、続いて窒化クロム鉄を添加し、N含有量を調整する。
【0038】
ステップ4:注湯過程:溶錬過程で得られた鋼液を注湯し、窒化クロム鉄を添加してから注湯開始(出鋼)までの時間は15分である。
【0039】
ステップ5:検証:標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.060%、Cr:25.60%、Ni:37.00%、P:0.005%、S:0.001%、Mn:0.76%、Si:0.440%、Nb:0.63%、N:0.2893%、Al:0.250%、Ti:0.04%、Cu:0.01%。H:0.0001%である。
【0040】
窒素収率と良品率はそれぞれ76.90%と100%である。
【0041】
<実施例3>
窒化クロム鉄のベーキング温度を800℃とした以外は実施例1と同様である。
【0042】
ステップ5:検証:標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.061%、Cr:25.30%、Ni:37.05%、P:0.005%、S:0.002%、Mn:0.75%、Si:0.500%、B:≦0.01%、Nb:0.65%、N:0.2937%、Al:0.250%、Ti:0.05%、Cu:0.01%、H:0.00015%である。
【0043】
窒素収率と良品率はそれぞれ76.70%と100%である。
【0044】
<実施例4>
窒化クロム鉄のベーキング温度を1050℃とした以外は実施例1と同様である。
【0045】
ステップ5:検証:標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.059%、Cr:25.33%、Ni:37.00%、P:0.004%、S:0.001%、Mn:0.70%、Si:0.480%、B:≦0.01%、Nb:0.62%、N:0.2900%、Al:0.250%、Ti:0.04%、Cu:0.01%、H:0.00015%である。
【0046】
窒素収率と良品率はそれぞれ76.80%と100%である。
【0047】
<比較例1>
窒化クロム鉄のベーキング温度を650℃とした以外は実施例1と同様である。
【0048】
ステップ5:検証:標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.061%、Cr:25.35%、Ni:37.01%、P:0.005%、S:0.001%、Mn:0.72%、Si:0.500%、B:≦0.01%、Nb:0.65%、N:0.2955%、Al:0.250%、Ti:0.05%、Cu:0.01%、H:0.00035%である(合金の使用中にH含有量が低いほど好ましく、Hが高すぎるとユーザーの使用中の耐久性及び疲労寿命に影響を与える)。
【0049】
窒素収率は76.80%である。
【0050】
<比較例2>
窒化クロム鉄のベーキング温度を1200℃とした以外は実施例1と同様である。
【0051】
ステップ5:検証:標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.060%、Cr:25.30%、Ni:37.05%、P:0.005%、S:0.001%、Mn:0.72%、Si:0.460%、B:≦0.01%、Nb:0.60%、N:0.2890%、Al:0.250%、Ti:0.05%、Cu:0.01%、H:0.00009%である。
【0052】
窒素収率は63.34%である。
【0053】
<比較例3>
アルゴンガスを充填して炉内の圧力を9000Paとした以外は実施例1と同様である。
【0054】
ステップ5:検証:標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.059%、Cr:25.33%、Ni:37.10%、P:0.005%、S:0.001%、Mn:0.70%、Si:0.510%、B:≦0.01%、Nb:0.66%、N:0.2910%、Al:0.260%、Ti:0.06%、Cu:0.01%、H:0.0001%である。
【0055】
窒素収率と良品率はそれぞれ74.38%と100%である。
【0056】
<比較例4>
窒化クロム鉄の添加から出鋼までの時間は17分であること以外は実施例1と同様である。
【0057】
標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.062%、Cr:25.28%、Ni:37.15%、P:0.005%、S:0.001%、Mn:0.60%、Si:0.500%、B:≦0.01%、Nb:0.67%、N:0.2913%、Al:0.250%、Ti:0.06%、Cu:0.01%、H:0.0001%である。
【0058】
窒素収率と良品率はそれぞれ75.80%と100%である。
【0059】
<比較例5>
本比較例は、実施例1のステップ1、すなわち窒化クロム鉄ベーキングのステップを省略し、その他のステップは実施例1と同様である。
【0060】
標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.059%、Cr:25.30%、Ni:37.20%、P:0.005%、S:0.001%、Mn:0.68%、Si:0.520%、B:≦0.01%、Nb:0.68%、N:0.2910%、Al:0.250%、Ti:0.06%、Cu:0.01%、H:0.0005%である。
【0061】
未ベーキングの窒化クロムであれば、主に大量のH元素が窒化クロムから合金中に持ち込まれることになり、H元素の含有量が高すぎて廃棄物になる。
【0062】
窒素収率と良品率はそれぞれ76.15%と0.0%である。
【0063】
<比較例6>
本比較例は、実施例1の溶錬過程における炉内にアルゴンガスを充填するステップを省略し、すなわち精練後期にアルゴンガスを充填しなく、その他のステップは実施例1と同様である。
【0064】
標準要求に従って鋳物成分含有量(wt%)を検証すると、C:0.059%、Cr:25.34%、Ni:37.15%、P:0.005%、S:0.001%、Mn:0.71%、Si:0.520%、B:≦0.01%、Nb:0.65%、N:0.1010%、Al:0.270%、Ti:0.06%、Cu:0.01%、H:0.0001%である。
【0065】
アルゴンガスを充填しない場合、炉に投入された窒化クロム鉄が溶融分解された後、窒素元素の一部が遊離状態のN2として高真空状態で真空システムから炉外に排出される。これによって、窒素元素の収率が低くなり、合金における窒素元素が標準要求を満たすことができず、最終的に廃棄物となる。
【0066】
窒素収率と良品率はそれぞれ33.34%と0.0%である。